【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(125)平成19年 4月 5日 東京地裁 平17(ワ)6903号 債務不存在確認等請求本訴事件、譲受債権請求反訴事件、地位確認等請求事件、代弁済請求事件

「営業支援」に関する裁判例(125)平成19年 4月 5日 東京地裁 平17(ワ)6903号 債務不存在確認等請求本訴事件、譲受債権請求反訴事件、地位確認等請求事件、代弁済請求事件

裁判年月日  平成19年 4月 5日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)6903号・平18(ワ)332号・平17(ワ)9037号・平17(ワ)21511号
事件名  債務不存在確認等請求本訴事件、譲受債権請求反訴事件、地位確認等請求事件、代弁済請求事件
裁判結果  一部認容、一部却下、その余の請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2007WLJPCA04058002

要旨
◆Y1社から訴外B社の経営権取得等に関する業務委託を受けたとする原告が、Y1社の子会社に対する貸金債務は上記業務委託の費用であり貸金ではないとして債務不存在の確認を請求するなどした(甲事件本訴)ほか(債権譲渡を受けたとする引受参加人が反訴で貸金の弁済請求)、上記子会社に預けた株券は貸金の担保ではないとして引渡しを求めるとともに、Y1社の持株会社に株主であることの確認を請求し(乙事件)、さらにB社の債務整理に関わる原告の連帯保証債務は上記業務委託に基づくとして代弁済請求をした(丙事件)事案において、上記業務委託は認定できず、他方、上記貸金債権が認められ、原告の株式は担保権実行により所有が失われたとして、原告の請求をすべて棄却し、訴訟参加人の請求のみを認容した事例

参照条文
民法94条1項
民法587条
民法650条2項
民法656条
民事訴訟法49条

裁判年月日  平成19年 4月 5日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)6903号・平18(ワ)332号・平17(ワ)9037号・平17(ワ)21511号
事件名  債務不存在確認等請求本訴事件、譲受債権請求反訴事件、地位確認等請求事件、代弁済請求事件
裁判結果  一部認容、一部却下、その余の請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2007WLJPCA04058002

平成17年(ワ)第6903号 債務不存在確認等請求本訴事件
(以下「甲事件」という。)
平成18年(ワ)第332号 譲受債権請求反訴事件
(以下「甲反訴事件」という。)
平成17年(ワ)第9037号 地位確認等請求事件
(以下「乙事件」という。)
平成17年(ワ)第21511号 代弁済請求事件
(以下「丙事件」という。)

東京都新宿区〈以下省略〉
甲事件原告,甲反訴事件被告, 三澤株式会社
乙事件原告,丙事件原告
(以下「原告」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 下村文彦
同 伊藤恵子
同 植草美穂
同 佐藤慎
同 横地利博
東京都杉並区〈以下省略〉
甲事件被告,丙事件被告 ミサワホーム株式会社
(以下「被告」という。)
同代表者代表取締役 B
東京都新宿区〈以下省略〉
乙事件被告 ミサワホームホールディングス株式会社
(以下「被告」という。)
同代表者代表取締役 C
上記2名訴訟代理人弁護士 松尾翼
同 堤義成
同 田宮武文
同 依田修一
同 栁澤泰
同 村上智裕
同 永井誠
同 松田健一
同 前田美可
東京都新宿区〈以下省略〉
甲事件脱退被告, ミサワキャピタル株式会社
乙事件被告
(以下「被告」という。)
同代表者清算人 渡邊英城
東京都新宿区〈以下省略〉
甲事件脱退被告,乙事件被告 株式会社アイ・エル・エス
(以下「被告」という。)
同代表者代表取締役 E
上記2名訴訟代理人弁護士 渡邊英城
同 若林眞
同 楠本維大
同 望月岳史
東京都千代田区〈以下省略〉
甲事件引受参加人, 有限会社Mita Loan Investors
甲反訴事件原告
(以下「引受参加人」という。)
同代表者取締役 F
同訴訟代理人弁護士 坂井秀行
同 三村藤明
同 古城春実
同 榎本久也
同 柴田義人
同 石原康人
同 村山由香里
同 大島義孝
同 米田紀子
同 栗田口太郎
同 井出ゆり
同 川畑和彦
同 水嶋一途
同 小野塚格
同 祐川直己

 

 

主文

1  原告の引受参加人に対する訴えを却下する。
2  原告の被告ミサワホーム株式会社,被告ミサワホームホールディングス株式会社,被告ミサワキャピタル株式会社及び被告株式会社アイ・エル・エスに対する請求をいずれも棄却する。
3  原告は,引受参加人に対し,12億円並びにうち5億円に対する平成18年1月17日から支払済みまで年14パーセントの割合のよる金員及びうち7億円に対する同日から支払済みまで年18パーセントの割合による金員を支払え。
4  訴訟費用は,甲事件,甲反訴事件,乙事件及び丙事件を通じて原告の負担とする。
5  この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  甲事件
(1)  原告と引受参加人との間において,原告の引受参加人に対する別紙貸金目録1記載の貸金債務及び別紙貸金目録2記載の貸金債務は存在しないことを確認する。
(2)ア  被告ミサワホーム株式会社(以下「被告ミサワホーム」という。)は,原告のため,引受参加人に対し,5億円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
イ  被告ミサワホームは,原告のため,引受参加人に対し,7億円及びこれに対する平成15年10月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  甲反訴事件
主文第3項と同旨
3  乙事件
(1)  原告と被告ミサワホームホールディングス株式会社(以下「被告ミサワホームホールディングス」という。)の間で,原告が別紙株券目録1から100まで記載の被告ミサワホームホールディングスの100万株(以下「本件株式」という。)を有する株主であることを確認する。
(2)  被告ミサワキャピタル株式会社(以下「被告ミサワキャピタル」という。)は,原告に対し,別紙株券目録1から50まで記載の被告ミサワホームホールディングスの株券(以下「本件第1株券」という。)を引き渡せ。
(3)  被告株式会社アイ・エル・エス(以下「被告アイ・エル・エス」という。)は,原告に対し,別紙株券目録51から100まで記載の被告ミサワホームホールディングスの株券(以下「本件第2株券」という。)を引き渡せ。
4  丙事件
被告ミサワホームは,原告のため,株式会社三菱東京UFJ銀行(以下,第2の1項において「三菱東京UFJ銀行」という。)に対し,2億円及びこれに対する平成16年4月15日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  各事件の概要
(1)  甲事件について
原告が,原告の被告ミサワキャピタルに対する別紙貸金目録1記載の貸金債務(以下「本件第1貸金債務」といい,これに対応する債権を「本件第1貸金債権」という。)及び原告の被告アイ・エル・エスに対する別紙貸金目録2記載の貸金債務(以下「本件第2貸金債務」といい,これに対応する債権を「本件第2貸金債権」という。)に係る金員は,いずれも,原告と被告ミサワホームとの間で締結された石原建設株式会社(平成12年4月1日に環境建設株式会社に商号変更。以下,商号変更後も含めて「石原建設」という。)の経営権の取得等に関する業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)に基づき,原告に対して提供された業務委託費用であって,金銭消費貸借契約に基づく貸付金ではないとして,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスから債権譲渡を受けたと主張する引受参加人に対し,本件第1貸金債務及び本件第2貸金債務(以下合わせて「本件貸金債務」といい,これに対応する債権を「本件貸金債権」という。)は不存在であることの確認を求めるとともに,仮に本件貸金債務が存在するとした場合には,これらの債務は,本件業務委託契約に基づいて負担したものであるとして,被告ミサワホームに対し,民法656条,650条2項に基づき,本件貸金債務合計12億円並びに本件第1貸金債務に対する平成15年4月1日(本件第1貸金債務について期限の利益を喪失した日の翌日)から,本件第2貸金債務に対する同年10月1日(本件第2貸金債務について期限の利益を喪失した日の翌日)からいずれも支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の引受参加人への代弁済を求めた事案である。
(2)  甲反訴事件について
引受参加人が,原告に対し,本件貸金債務の合計12億円並びにうち5億円に対する平成18年1月17日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年14パーセントの割合による約定遅延損害金及びうち7億円に対する同日から支払済みまで年18パーセントの割合による約定遅延損害金の各支払を求めた事案である。
(3)  乙事件について
原告が,被告ミサワホームホールディングスの株式1661万8000株を有する株主であるとして,被告ミサワホームホールディングスに対し,上記株式のうち100万株(本件株式)について,原告が株主であることの確認を求めるとともに,原告は,被告ミサワキャピタルに上記1661万8000株のうち734万9000株に係る株券(本件第1株券はその一部。)を,被告アイ・エル・エスに669万5000株に係る株券(本件第2株券はその一部。)をそれぞれ交付したが,これは預託したものであって,金銭消費貸借契約に基づく担保ではないとして,被告ミサワキャピタルに対して本件第1株券の,被告アイ・エル・エスに対して本件第2株券の各引渡しを求めた事案である。
(4)  丙事件について
石原建設が三菱東京UFJ銀行に対して負担する債務につき,石原建設の子会社である石栄開発株式会社(以下「石栄開発」という。)が三菱東京UFJ銀行に対して免責的債務引受けを行い,原告が三菱東京UFJ銀行に対して石栄開発の債務を連帯保証したところ,この連帯保証債務は,本件業務委託契約に基づいて負担したものであるとして,被告ミサワホームに対し,民法656条,650条2項に基づき,上記連帯保証債務のうち2億円及びこれに対する平成16年4月15日(上記債務について期限の利益を喪失した日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の三菱東京UFJ銀行への代弁済を求めた事案である。
2  前提となる事実(証拠等によって認定した事実については,各項の末尾に証拠等を摘示した。)
(1)  当事者等
ア 原告は,G(以下「G」という。)の資産保有会社である。
イ 被告ミサワホームは,Gが創業した住宅メーカーである。被告ミサワホームは,経営状況の悪化から,平成15年に金融支援を受け,平成16年12月28日には,産業再生機構による支援決定を受けた。
ウ 被告ミサワホームホールディングスは,被告ミサワホーム等の株式移転の手続によって平成15年8月1日に設立された被告ミサワホーム等の持株会社である。
エ 被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスは,被告ミサワホームの子会社である。
オ 引受参加人は,金銭債権の売買等を目的とする有限会社である。
(弁論の全趣旨)
カ 石原建設は,土木工事,建築工事等の請負,設計,施工,監理及び測量等を目的とする株式会社である。
(甲3)
キ Gは,被告ミサワホームの設立以来,平成15年8月まで同社の代表取締役を務め,その後,被告ミサワホームホールディングスの設立以来,同年12月1日まで同社の代表取締役を務めていた者である。また,Gは,原告の発行済株式総数の94パーセント以上の株式を保有している。
(甲52,乙30の1から3まで,乙33,原告代表者)
(2)  原告に対する金員の交付(甲事件及び甲反訴事件関係)
ア 被告ミサワキャピタルは,原告に対し,平成14年5月7日,5億円を振込送金して交付した。
また,被告アイ・エル・エスは,原告に対し,平成13年3月28日,73億5800万円を振込送金して交付した。
(甲10の1,2,甲11,15の1,2,甲18)
イ 被告ミサワキャピタルは,平成17年6月23日付けで,本件第1貸金債権を含む被告ミサワキャピタルの原告に対する債権を引受参加人に対して譲渡し,同月24日到達の書面で原告に対して同債権譲渡の事実を通知した。
また,被告アイ・エル・エスは,同月23日付けで,本件第2貸金債権を含む被告アイ・エル・エスの原告に対する債権を引受参加人に対して譲渡し,同月24日到達の書面で原告に対して同債権譲渡の事実を通知した。
(戊2の1,2,戊3の1,2)
ウ 引受参加人は,原告に対し,上記アの各金員はいずれも金銭消費貸借契約に基づく貸付金であり,本件貸金債権は存在すると主張している。
(3)  原告の所有している株式(乙事件関係)
ア 原告は,被告ミサワホームホールディングスの設立以前,被告ミサワホームの株式1511万8000株及びミサワホーム東海株式会社(以下「ミサワホーム東海」という。)の株式100万株を有していた。
イ 被告ミサワホームホールディングスの設立に際し,株式移転により,被告ミサワホーム及びミサワホーム東海の各株式は被告ミサワホームホールディングスに移転した。
上記株式移転における割当比率は,被告ミサワホーム株式1株に対して被告ミサワホームホールディングス株式1株,ミサワホーム東海株式1株に対して被告ミサワホームホールディングス株式1.5株であったため,原告は,上記株式移転により,本件株式を含む被告ミサワホームホールディングスの株式1661万8000株を取得した。
(弁論の全趣旨)
ウ 被告ミサワホームホールディングスは,平成17年4月21日を会日とする臨時株主総会等に関する同月6日付けの「臨時株主総会及び普通株主様による種類株主総会招集ご通知」に同封した「議決権行使書」において,原告を,被告ミサワホームホールディングスの株式55万4286株を有する株主であると扱った。また,同年2月21日付けの被告ミサワホームホールディングス全株主一覧表においては,原告は,55万4286株を有する株主である旨記載されている。
(甲22,23,乙1)
エ 現在,本件第1株券は被告ミサワキャピタルが,本件第2株券は被告アイ・エル・エスがそれぞれ所持している。
(4)  原告の連帯保証債務(丙事件関係)
ア 石原建設は,平成6年3月31日,株式会社三和銀行(その後,株式会社ユーエフジェイ銀行に商号変更し,さらに株式会社東京三菱銀行と合併して株式会社三菱東京UFJ銀行に商号変更した。以下,商号変更後を含めて「三和銀行」という。)から,17億9735万4555円を,返済期日同年5月2日,返済方法期日一括返済の約定で借り入れた。
(甲38)
イ 石原建設は,平成7年当時,過大な借入金債務を負っており,経営を再建し,事業の継続を図るためには債権者らからの債務の減免を得る必要があった。
そこで,石原建設は,平成7年9月28日,三和銀行を含む債権者らとの間で,上記アの借入金を含む債務の弁済について協定を締結し,同協定における弁済計画に即して債務の弁済を行うことを合意し,約1400億円あった負債を300億円程度にまで減少させた(以下「本件協定」という。)。
(甲32,39,乙4)
ウ 本件協定に付帯して,平成7年9月29日,石栄開発は,石原建設の三和銀行に対する上記アの借入金債務のうち8億9317万3094円を,三和銀行の承諾のもと,免責的に引き受けた。
その際,三和銀行と石栄開発は,石栄開発が破産の申立てをした場合,石栄開発は三和銀行に対する一切の債務について当然に期限の利益を失い,直ちに債務を弁済する旨の合意をした。
(甲38)
エ さらに,原告は,平成7年9月29日,三和銀行との間で,上記債務引受けに基づき石栄開発が三和銀行に対して負担する債務について連帯して保証する旨の契約を締結した。
その際,原告と三和銀行は,石栄開発が債務を弁済しない場合に,原告が代位弁済すべき時期を平成19年3月31日とし,ただし,石原建設について本件協定の履行ができないような経営上不測の事態が発生したときは,原告は期限の利益を失い,直ちに残債務を弁済する旨の合意をした。
(甲37)
オ 石原建設は,平成16年4月14日,破産の申立てをし,同日,破産宣告を受けた。また,石栄開発は,平成17年2月16日,破産の申立てを行った。
(甲3,38,乙37)
カ 三和銀行は,石栄開発が破産の申立てをしたため期限の利益を失い,石原建設について本件協定の履行ができないような経営上不測の事態が発生したため,原告は期限の利益を失ったことを主張して,原告に対して上記連帯保証債務の履行として,石栄開発に対する貸金残額5億5908万4811円の支払を請求している。また,三和銀行は,原告の有する債権について債権仮差押えの申立てをし,平成17年7月12日,仮差押決定を受けた。
(甲38)
3  争点
(1)  原告と被告ミサワホームとの間において,本件業務委託契約が締結されたか(争点1,甲事件,甲反訴事件及び丙事件)。
(2)  ミサワバン株式会社(以下「ミサワバン」という。),被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスから原告に交付された資金は,本件業務委託契約に基づき交付されたものか,あるいは金銭消費貸借契約に基づき貸付金として交付されたものか(争点2,甲事件,甲反訴事件及び乙事件)。
(3)  原告が所有していた本件株式は,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスが原告に対して有していた本件貸金債権の担保として差し入れられたものか。また,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスの担保権実行により,原告は本件株式の所有を喪失したか(争点3,乙事件)。
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1(本件業務委託契約の締結の有無)について
(原告の主張)
被告ミサワホームは,石原建設のマンション建築における技術的営業的ノウハウを活用して自社マンション部門を拡充するため,平成4年1月,石原建設の経営権を取得し,被告ミサワホームの支援により石原建設を被告ミサワホームのグループ企業として経営再建し,運営することを方針として決定した。
そして,被告ミサワホームは,同年2月,原告に対し,石原建設の株式の取得を通じて同社の経営権を取得する業務,石原建設の経営再建のための資金を被告ミサワホームの金融子会社から受けてこれを石原建設に対して提供する業務及び石原建設の株式を被告ミサワホームに対して引き渡す業務を委託し,原告はこれを受託した。
したがって,本件業務委託契約は,同月に,原告と被告ミサワホームとの間で締結されたものであり,仮に,同月における本件業務委託契約締結の事実が認められないとしても,遅くとも,原告が被告ミサワホームから石原建設に対する資金提供に中間者として関与させられるようになった平成7年には締結されたものである。
また,本件業務委託契約の締結につき,被告ミサワホームにおける事前の取締役会決議がなかったとしても,平成7年12月26日の被告ミサワホーム取締役会において追認され,又は,遅くとも平成9年1月29日の被告ミサワホーム取締役会において追認された。
そして,原告と被告ミサワホームとの間において本件業務委託契約が締結されたことは,原告による石原建設の株式取得を通じた石原建設の経営権確保及び原告を通じた石原建設に対する資金提供による石原建設の経営再建における被告ミサワホームの関与の事実,被告ミサワホームによる石原建設の経営権支配及び経営再建の支援の事実,原告と被告ミサワホームとの間における従前の業務委託関係から明らかである。
ア 原告による石原建設の株式取得を通じた石原建設の経営権確保及び原告を通じた石原建設に対する資金提供による石原建設の経営再建における被告ミサワホームの関与
(ア) 原告による株式取得を通じた石原建設の経営権取得における被告ミサワホームの関与
原告は,平成4年2月17日,石原建設株式542万2000株を取得し,次いで平成6年7月31日,同株式258万6000株を取得し,さらに平成9年3月25日,同株式3000万株を取得し,石原建設の筆頭株主となって石原建設の経営権を取得した。
そして,このような原告による石原建設の経営権の取得は,原告の経営規模をはるかに超えるものである上,原告が,Gの資産管理会社であって,石原建設や被告ミサワホームとは異なり建設業等を業務としていないことからして,原告と被告ミサワホームとの間の本件業務委託契約締結の事実を裏付けるものである。
とりわけ,石原建設の経営権取得において決定的に重要な役割を有するものであった平成9年3月25日における石原建設株式3000万株の取得は,同年1月29日の被告ミサワホーム取締役会における50億円増資引受け及び支援強化の決議に基づき,石原建設の第三者割当増資引受けによりされたものであって,これが本件業務委託契約に基づき行われたものであることは明らかである。
(イ) 原告を通じた資金提供による石原建設の経営再建における被告ミサワホームの関与
石原建設は,平成7年8月,債権者らとの間で本件協定を成立させたが,同協定成立後,主力銀行が石原建設に対して新たな融資を拒絶するようになったため,石原建設は経営再建のための新たな資金調達先を確保することが必要になった。そのため,原告は,平成8年以降平成14年6月までの間,石原建設に対して,経営再建のための資金を提供した。
そして,この石原建設に対する資金提供は,直接には原告によってされたものであるが,実際には,被告ミサワホームが,石原建設の被告ミサワホームに対する資金提供要請に基づいて自らの判断で資金提供するかどうかを決めたうえ,自社の資金を巧みに金融子会社(当初はミサワバン(平成14年に被告ミサワホームと合併して消滅。)であり,その後,被告ミサワキャピタルや被告アイ・エル・エスを用いるようになった。)を経由させ,更には原告を通過させることにより行っていたものである。
このような石原建設に対する資金提供の手続において,原告の窓口としての役割は必要性に乏しく,また,原告はこれにより何ら利益を得ていない。にもかかわらず,この手続に原告が関与したのは,原告と被告ミサワホームとの間で,石原建設の経営再建等を内容とする本件業務委託契約が締結されていたからにほかならない。
イ 被告ミサワホームによる石原建設の経営権支配及び経営再建の支援
被告ミサワホームは,上記アのように,原告を通じて石原建設の経営権確保や資金提供による石原建設の経営再建に関与するにとどまらず,以下のとおり,自ら直接に,石原建設の経営再建を支援しその経営を支配していたが,これは,石原建設の経営権確保及び経営再建を行っていた主体が,原告ではなく被告ミサワホームであることを意味するものであり,ひいては,原告と被告ミサワホームにおける本件業務委託契約締結の事実を裏付けるものである。
(ア) 被告ミサワホームと前田建設工業株式会社(以下「前田建設」という。)間における石原建設支援に関する協力合意
被告ミサワホームは,平成4年,前田建設と交渉し,被告ミサワホーム及びそのグループ企業が所有していた池袋・板橋・勝どき等の再開発候補地での超高層ビル建築計画における建築工事を前田建設に発注するべく努力することを約し,その上で前田建設に対し,石原建設に対する年間100億円程度の発注,前田建設から石原建設への従業員派遣,前田建設による石原建設の第三者割当増資の引受けを要請し,前田建設はこれを了承した。
その後,前田建設は,被告ミサワホームとの上記合意に基づき,平成4年から平成8年までの間,従前取引関係になかった石原建設に対して合計約650億円相当の下請工事の発注を行うとともに,平成5年以降,2名から3名の従業員を石原建設に役員候補として出向させ,さらには,平成4年3月18日には100万株の,平成8年2月15日には50万株の石原建設による第三者割当増資を引き受けた。
(イ) 石原建設の受注数拡大に向けた支援
被告ミサワホームは,一部の石原建設の取引先(建築工事の発注者)に対し,石原建設の経営状況が悪化することによって石原建設の受注した建築工事が中断し又は工事が開始されなかった場合には,被告ミサワホームが石原建設に代わり当該工事を完成させることを保証する旨の「工事完成保証書」を提出し,石原建設の受注数拡大を支援していた。
また,被告ミサワホームは,同社の手帳において,石原建設の社名を「ミサワホーム会社一覧」の欄に記載することにより,対外的にも石原建設が被告ミサワホームのグループ企業であることを周知させ,石原建設の受注数拡大を支援していた。
(ウ) 本件協定の成立に向けた交渉
石原建設は,平成7年8月,債権者らとの間で本件協定を成立させ,合計108億5800万円の債権放棄を受けることに成功したが,被告ミサワホームは,同協定成立のために石原建設の債権者である金融機関等との交渉を行った。
すなわち,当時,被告ミサワホームの専務取締役であったH(以下「H」という。)は,石原建設の債権者である金融機関と直接交渉し,また,本件協定に否定的であった株式会社さくら銀行(当時の商号)に対しては「ミサワホーム株式会社専務取締役H」名義の文書を提出し,当該文書において石原建設の現状や本件協定の内容を説明するとともに,同行に対して石原建設との間の本件協定に応じるよう説得した。
(エ) 建設省(当時)OBの石原建設代表取締役就任
被告ミサワホームは,石原建設の経営再建の一環として建設省OBを石原建設の代表取締役に招聘することを計画し,被告ミサワホームのI取締役が当時の住宅・都市整備公団や建設省次官と交渉し,その結果,建設省OBを石原建設の代表取締役に招聘することに成功した。
(オ) 石原建設に出向した従業員を通じた石原建設の営業,人事及び金銭収支の決定権の掌握
被告ミサワホームは平成7年9月21日から平成16年5月1日までの間,被告ミサワホームの従業員合計37人を石原建設に出向させて実際に勤務させており,同従業員のうち複数名は石原建設の取締役に選任されている。
そして,被告ミサワホームは,石原建設が一定規模以上の建築工事を受注する場合には被告ミサワホームから出向してきた役員の同意を要することとし,また,石原建設の役員人事においても,石原建設出身の従業員が取締役候補となる場合には被告ミサワホームの同意を要することとし,更には,石原建設の役員退職金や従業員の賞与を減額するなど,石原建設に出向した従業員を通じて石原建設の営業,人事及び金銭収支の決定権を掌握していた。
(カ) 石原建設の第三者割当増資の引受けを通じた資本の増強への援助
被告ミサワホーム及びミサワバンは,平成8年2月,被告ミサワホームにおいては400万株の,ミサワバンにおいては108万株の石原建設による第三者割当増資を引き受けた。
(キ) 石原建設の経営計画の策定
被告ミサワホームは,平成9年1月ころ,当時石原建設が負っていた約300億円の負債の解消を目標とした「プロジェクト300」と題する石原建設の経営再建案を策定し,取締役会において同計画を承認した。
前記ア(ア)の被告ミサワホーム取締役会における50億円の増資引受け決議及びこれに基づく原告による石原建設の増資引受けも,上記計画の一環としてされたものである。
(ク) 石原建設と双葉綜合開発株式会社(以下「双葉綜合開発」という。)との合併
石原建設は平成12年4月1日に双葉綜合開発と合併したが,当該合併における交渉及び契約締結等一切の交渉は被告ミサワホームが行っていた。
すなわち,被告ミサワホームは,平成9年,双葉綜合開発と業務提携をし,そのころ,被告ミサワホームは双葉綜合開発に対して被告ミサワホームのグループ企業のいずれかとの合併を申し出て,以後合併に向けた交渉を行った。その過程で合併先が石原建設に決定し,平成11年12月8日,双葉綜合開発と石原建設は合併契約を取り交わし,平成12年4月1日に両社は合併した。
当該合併の交渉は,当時被告ミサワホームの代表取締役であったG及び同社副社長であったJが行ったが,その一方,被告ミサワホームから出向した役員以外の石原建設の役員は,当該合併に全く関与しておらず,合併されたこと自体,事後的な報告により初めて認識するという状況であった。
(ケ) 石原建設の破産申立て
被告ミサワホームは,平成16年になって,石原建設の破産申立てによる清算を決定し,石原建設は,同年4月14日,取締役会において破産申立てをすることを決議し,同日,破産申立てを行った。
当時の石原建設の取締役会は,取締役13人中7人が被告ミサワホーム又は被告ミサワホームのグループ企業からの出向者であったが,これらの出向者以外の取締役に対しては,同取締役会まで破産の申立てに関する情報を一切知らせず,破産の申立ての是非について検討する間を与えないまま,取締役会決議が強行され,過半数の賛成により破産申立てが決定された。
ウ 原告と被告ミサワホームとの間における従前の業務委託関係
本件業務委託契約締結の事実は,過去,原告と被告ミサワホームとの間における企業買収に関する業務委託の結果,複数の企業が被告ミサワホームの子会社となり,又はその傘下に入ったという実績によっても裏付けられる。
すなわち,原告と被告ミサワホームは,長年の間,被告ミサワホームを業務委託者,原告を業務受託者として,被告ミサワホームが原告に対して被告ミサワホームの企画した企業買収や買収企業の経営再建,又は被告ミサワホーム自身が行い難い同社自身の危機管理業務を委託し,原告がこの委託に基づいて被告ミサワホームのために業務を遂行し,委託業務が完了した段階でその成果物を被告ミサワホームに帰属させるという業務委託関係を形成してきた。
ミサワバン,ミサワセラミックケミカル株式会社,ゼファー株式会社等は,いずれも被告ミサワホームと原告との間の業務委託に基づく原告による買収業務の履行の結果,被告ミサワホームの子会社となり,又はその傘下となった会社である。
(被告ミサワホーム,被告ミサワホームホールディングス,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスの主張)
ア 原告と被告ミサワホームとの間において本件業務委託契約が締結された事実は否認する。
原告は,被告ミサワホームの代表取締役であったG個人の資産管理会社であり,Gの意思にのみ従って,株式の投資,企業の買収等を行っていたのであり,原告による石原建設の経営権の取得及び経営再建の支援についても,Gの意思に基づき,Gの資産管理会社である原告自身の業務として行われたものである。
被告ミサワホームが,石原建設の経営再建の支援として行ったのは,①平成7年9月から平成16年5月まで行った石原建設に対する被告ミサワホームの従業員派遣,②平成8年2月に行った石原建設の第三者割当増資の引受け,③平成10年から平成16年までに行った石原建設の受注した建設工事の有償による工事完成保証及び④平成15年8月に行ったエムウッド事業の譲受け(対価約40億円)のみである。
イ 石原建設の経営権の取得及び経営再建の支援を行った主体が原告又はG個人であること,ひいては原告と被告ミサワホームとの間に本件業務委託契約が存在しないことは,以下の事実からも明らかである。
(ア) 石原建設の経営引継に関する意思表明(乙3)の記載
原告及びGは,平成3年8月21日付けの「石原建設株式会社の経営引継に関する意思表明」と題する書面において,石原建設の株式を取得して石原建設の経営を引き継ぐ旨を明言している。
(イ) 被告ミサワホームの石原建設の経営再建に対する消極的・否定的態度
被告ミサワホームは,一貫して,石原建設の経営再建支援をリスクの高い事業と認識し,石原建設の経営再建支援にのめり込むGの態度を消極的,否定的に捉えていた。
特に,原告において本件業務委託契約を締結したと主張する平成4年2月ころは,まさに被告ミサワホームの専務会が石原建設の支援に反対する旨の方針を明確にした時期と重なるのであって,この時期に本件業務委託契約が締結されたなどということはあり得ない。
また,一般に,他企業の買収は取締役会の決議事項にあたり,同様に,他企業の買収業務を別の企業に委託することも取締役会の決議事項に当たると解されるが,石原建設の経営権を取得すること等の業務の委託を内容とする本件業務委託契約の締結について,被告ミサワホームの取締役会において決議を行ったことはないし,その旨の議事録も作成されていない。
(ウ) Gの雑誌インタビューにおける発言
Gは,平成4年4月に出版された雑誌(乙2)のインタビューにおいても,本件業務委託契約には一切触れておらず,むしろ,G個人が,石原建設の経営再建に乗り出したかのような発言をしている。
(エ) 平成7年11月28日及び同年12月26日に開催された被告ミサワホームの取締役会の内容
Gは,平成7年11月28日の被告ミサワホーム取締役会において,石原建設を資金及び人材面で支援しているのは石原建設の筆頭株主である原告であることを明らかにしており,また,同年12月26日の取締役会議事録を見ても,本件業務委託契約が締結されていたと解する余地はない。
(オ) 原告の主張の変遷
原告は,本件業務委託契約に関する主張を不合理かつ頻繁に変遷させているが,これらの主張の変遷は,すべて,原告が,本件貸金債務を含めた借入金債務を被告ミサワホームに転嫁することを意図したものである。
(カ) 被告ミサワホームによる企業買収の手法
被告ミサワホームは,他企業を買収する旨を取締役会で決議した場合,自ら主体的に買収対象会社の株式取得を押し進めて経営権を支配する手法を採っているのであって,原告に企業買収業務を委託するようなことはしていない。
(キ) G作成に係る念書の存在
Gは,平成14年4月4日,被告ミサワホームに対し,原告が被告ミサワホーム及びその関連会社から借り入れている資金についてはすべて自らに責任があり,この返済については全責任をもって行うこと等を明記した念書(乙5)を差し入れた。
(ク) 被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対して借入金債務があることを前提とした原告の態度
原告は,自己が保有する石原建設の株式を,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対して担保として差し入れた上,石原建設が破産の申立てをした直後,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対し,石原建設の株式が上場廃止となる前に売却して借入金の返済原資としたいので,担保解除をお願いする旨の「担保権解除(差入有価証券)のお願い」(乙13,14)を提出するなど,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対して借入金債務があることを前提とした態度をとっている。
(引受参加人の主張)
原告と被告ミサワホームとの間において本件業務委託契約が締結された事実は否認する。
(2)  争点2(原告の本件貸金債務の有無)について
(被告ミサワホームホールディングス,被告ミサワキャピタル,被告アイ・エル・エス及び引受参加人の主張)
ア(ア) 被告ミサワキャピタルは,原告に対し,平成14年5月7日,5億円を以下の約定で貸し付けた(本件第1貸金債権)。
① 返済期限 平成14年9月30日
② 利息 年5パーセント
③ 遅延損害金 年14パーセント(年365日の日割計算)
(イ) 被告アイ・エル・エスは,原告に対し,平成13年3月28日,73億5800万円を以下の約定で貸し付けた(本件第2貸金債権)。
① 返済期限 平成13年9月30日
② 利息 年2.65パーセント
③ 遅延損害金 年18パーセント(年365日の日割計算)
(ウ) そして,引受参加人は,前記前提となる事実(2)イのとおり,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスから,本件貸金債権を譲り受けた。
(エ) したがって,引受参加人は,原告に対して本件貸金債権を有している。
イ 原告は,本件貸金債権に係る金員は,本件業務委託契約に基づく業務委託費用であって金銭消費貸借契約に基づく貸付金ではない旨主張し,仮に金銭消費貸借契約に基づく貸付金であるとしても,当該契約は通謀虚偽表示に基づくものであって無効であるから,本件貸金債務は存在しない旨主張する。
しかし,本件業務委託契約締結の事実は存在しないのであるから,これが存在することを前提とする原告の主張に理由がないことは明らかである。
(原告の主張)
ア 本件貸金債権に係る金員は,原告が被告ミサワホームから本件業務委託契約に基づく業務委託費用として受領したものであり,金銭消費貸借契約に基づく貸付金ではない。
そして,この業務委託費用,すなわち石原建設の株式の取得費用,経営再建資金などは,プロジェクト資金として仮勘定に計上することができない以上,被告ミサワホームの金融子会社から原告に対する「貸付金」として計上せざるを得ず,そのため,「貸付金」の外観に合わせて,担保権の設定や金利の支払という,貸付けが実際にされていたかのような外観を作る必要があった。
したがって,引受参加人は原告に対して本件貸金債権を有しない。
イ 仮に,本件貸金債権に係る金員が,金銭消費貸借契約に基づく貸付金であるとされたとしても,その実質は,本件業務委託契約に基づく業務委託費用であって,原告並びに被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスはその旨認識していたのであるから,このような金銭消費貸借契約は通謀虚偽表示により無効である。
したがって,いずれにせよ,引受参加人は原告に対して本件貸金債権を有しない。
(3)  争点3(原告による本件株式に対する担保権設定並びに被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスによる担保権実行の有無)について
(原告の主張)
原告は,前記前提となる事実(3)イのとおり,本件株式を含む被告ミサワホームホールディングス株式1661万8000株を所有している。
そして,原告は,被告ミサワキャピタルに対し,平成14年12月24日及び平成15年4月3日,本件第1株券を含む株式移転前の被告ミサワホーム株式667万4000株及びミサワホーム東海株式45万株(株式移転によって,被告ミサワホームホールディングス株式734万9000株となった。)に係る株券を預託し,被告アイ・エル・エスに対し,平成14年5月29日,本件第2株券を含む株式移転前の被告ミサワホーム株式587万株及びミサワホーム東海株式55万株(株式移転によって,被告ミサワホームホールディングス株式669万5000株となった。)に係る株券を預託したところ,被告ミサワキャピタルは本件第1株券を,被告アイ・エル・エスは本件第2株券をそれぞれ所持している。
したがって,原告は,本件株式を保有する株主であり,被告ミサワキャピタルに対しては本件第1株券の引渡請求権を,被告アイ・エル・エスに対しては本件第2株券の引渡請求権をそれぞれ有する。
(被告ミサワホームホールディングス,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスの主張)
原告が,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対して預託したと主張する本件第1株券及び本件第2株券は,本件貸金債権を含む被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスの原告に対する債権の担保として差し入れられたものである。
すなわち,原告は,被告ミサワキャピタルに対し,本件第1貸金債権を含む被告ミサワキャピタルの原告に対する一切の債権を担保するため,平成14年12月20日に被告ミサワホーム株式222万4000株に係る株券を,平成15年4月3日に被告ミサワホーム株式445万株及びミサワホーム東海株式45万株(株式移転によって,被告ミサワホームホールディングス株式734万9000株となった。)に係る株券を,それぞれ担保として差し入れた。
また,原告は,被告アイ・エル・エスに対し,本件第2貸金債権を含む被告アイ・エル・エスの原告に対する一切の債権を担保するため,平成14年5月29日,被告ミサワホーム株式587万株及びミサワホーム東海株式55万株(株式移転によって,被告ミサワホームホールディングス株式669万5000株となった。)に係る株券を,担保として差し入れた。
そして,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスは,原告に対し,それぞれ,平成16年12月29日付けの通知書(平成17年1月4日到達)により,上記担保権の実行を通知した。
したがって,原告は,上記担保権の実行により,本件株式を喪失したのであり,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対する本件第1株券及び本件第2株券の引渡請求権を有しない。
第3  争点に対する判断
1  争点1(本件業務委託契約の締結の有無)について
(1)  原告は,原告と被告ミサワホームとの間において,平成4年2月,石原建設の株式の取得を通じて同社の経営権を取得する業務,被告ミサワホームの金融子会社から石原建設の経営再建のための資金の提供を受けて石原建設に対して提供する業務,原告が取得した石原建設の株式を被告ミサワホームに対して引き渡す業務を被告ミサワホームが原告に委託し,原告がこれを受託する旨の合意が成立し,仮にそうでないとしても遅くとも平成7年には上記合意が成立したと主張する。
(2)  石原建設に対する支援をめぐる経緯について
ア 前記前提となる事実,関係各証拠(各項の末尾に摘示したもの)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実を認めることができる。
(ア) 石原建設は,平成2年12月ころ,巨額の債務保証をしていた企業が倒産したことにより急激に資金繰りが悪化したため,当時石原建設の常務取締役であり,Gと面識があったKを通じ,Gに対して被告ミサワホームによる経営再建の支援を求めた。
Gは,Kの支援要請を受け,平成3年3月ころ,被告ミサワホームの基本的な経営方針を協議する専務会において,石原建設の買収又は支援について提案したが,専務会においては,石原建設の財務状況に改善の見通しがないとして,石原建設の買収又は支援は見送ることとなった。
(甲32,52,証人G)
(イ) 原告及びGは,石原建設の取引銀行33行に提出した平成3年8月21日付けの「石原建設株式会社の経営引継に関する意思表明」と題する書面において,いくつかの条件が満たされるときは,原告及びGは石原建設の株式を取得して石原建設の経営を引き継ぐ旨の意思表明をした。
(乙3)
(ウ) 平成4年2月3日に開催された被告ミサワホームの専務会において,今後,被告ミサワホームとしては石原建設の買収には関与しないとの方針が決定された(この認定に反するGの陳述書(甲52),証人Gの証言は,乙19,22,26,証人Lの証言に照らして採用することができない。)。
(乙19,22,26,証人L)
(エ) 原告は,平成4年2月に542万2000株,平成6年7月に258万6000株の石原建設の株式を取得した。
(甲40,弁論の全趣旨)
(オ) Gは,平成7年6月,石原建設の取締役に就任した。
(乙31)
(カ) 平成7年8月,石原建設と債権者らとの間で,約1400億円あった負債を約300億円程度にまで減少させ,弁済計画に即して弁済することを内容とする本件協定が成立したが,同協定成立後,主力銀行が石原建設に対して新たな融資を拒絶するに至ったため,石原建設において新たな資金調達先を確保することが必要となった。
そこで,原告は,被告ミサワホームの子会社(平成12年ころまではミサワバン,その後は被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エス。)から交付された資金により,石原建設に対して運転資金を提供するようになった。
(甲32,34,35,39,52,乙4,証人G,原告代表者)
(キ) 平成7年9月から,被告ミサワホームの従業員の石原建設への出向が開始された。
(弁論の全趣旨)
(ク) 平成7年11月28日に開催された被告ミサワホームの取締役会において,Gは,石原建設について,現在,原告が筆頭株主となっており資金及び人材面でも支援をしていること,石原建設の関係者は被告ミサワホームをはじめとするグループ企業の支援及び協力を期待していること等を述べ,石原建設の支援に関しての被告ミサワホーム及びそのグループ企業の対応については改めて計数を提出した上で取締役会にて説明し,十分な審議を尽くした上で結論を出したい旨を述べた。
(乙9)
(ケ) 平成7年12月26日に開催された被告ミサワホームの取締役会において,当時原告の専務取締役であったMは,原告が石原建設に対する支援に関わってきたこれまでの経緯を詳細に説明し,原告の石原建設に対する支援が合計100億円に及ぶことを説明した。
続いて,Gは,石原建設が被告ミサワホームのグループ企業に参入することによるメリットを説明した上で,石原建設に対してまず15億円の増資引受け及び20億円の債務保証を行うことを被告ミサワホームの取組方針として承認を得たい旨を述べた。
そして,出席取締役からの意見を踏まえた上で上記取組方針について賛否を諮ったところ,出席取締役全員異議なく賛成し,可決された。
(乙10,証人L)
(コ) 上記の取締役会決議を受けて,被告ミサワホーム及びミサワバンは,平成8年2月,被告ミサワホームにおいて400万株,ミサワバンにおいて100万株,それぞれ石原建設の第三者割当増資を引き受けたが,20億円の債務保証はされなかった。
(弁論の全趣旨)
(サ) Gは,平成8年6月,石原建設の取締役会長に就任した。
(乙31)
(シ) 平成9年1月29日に開催された被告ミサワホームの取締役会において,Gは,被告ミサワホームが石原建設に対して資金及び人材面などで支援してきた経緯を詳細に説明し,次いで,被告ミサワホームの専務取締役であったHは,石原建設の筆頭株主である原告が同社の経営を支援してきた経緯及び実績を詳細に説明し,さらに,石原建設の関係者から,石原建設の経営状況が,原告の石原建設への貸付金60億円をその子会社へ引き継ぐか,又は増資へ振り替えることによって,石原建設の金利負担が軽減されること等についての報告がされた。
その上で,Gは,石原建設から,被告ミサワホームによる人材面での支援の強化,50億円程度の増資引受け及び営業支援の要請がある旨述べた。
そして,出席取締役からの意見を踏まえた上で上記の支援要請について賛否を諮ったところ,出席取締役全員異議なく賛成し,可決された。
(乙17,証人L)
(ス) 原告は,平成9年3月,原告の石原建設への貸付金60億円の増資への振替えにより,石原建設の株式3000万株を取得した。他方,被告ミサワホームによる50億円の増資引受けはなされなかった。
(証人L,弁論の全趣旨)
(セ) 被告ミサワホームは,平成9年,双葉綜合開発との間で,双葉綜合開発が所有する土地に被告ミサワホームが住宅を建築することを内容とした業務提携をしたが,さらに,被告ミサワホームのグループ企業と双葉綜合開発とを合併する旨の話が持ち上がり,平成12年4月1日,石原建設と双葉綜合開発は合併するに至った。
(甲32,33,41,乙37)
(ソ) しかしながら,両者の合併によっても財務内容の抜本的な改善には至らず,平成15年には事業分割による再建スキームの実現とスポンサー探し及び計画達成までのつなぎ資金調達を画策したが,実現せず,今後の資金調達の目処が立たないことから,平成16年4月14日,石原建設は,取締役会において自己破産の申立てをすることを決議し,同日,当庁に破産申立てをし,破産宣告を受けた。上記決議がされた当時,石原建設の取締役13名中7名は被告ミサワホームの出向者又は出身者であった。
(甲3,32,乙37)
イ 石原建設に対する支援をめぐる上記の経緯によれば,①石原建設の経営再建の支援については,平成3年3月ころ及び平成4年2月の被告ミサワホーム専務会において見送られた一方,平成3年8月には,原告及びGにおいて,石原建設の株式を取得して石原建設の経営を引き継ぐ旨の意思表明をしていること,②Gは,平成7年11月28日に開催された被告ミサワホームの取締役会において,原告が石原建設の筆頭株主となっており資金及び人材面でも支援をしていること等を述べた上で,石原建設の支援に関しての被告ミサワホーム及びそのグループ企業の対応については改めて取締役会で十分な審議を尽くした上で結論を出したい旨を述べ,同年12月26日に開催された被告ミサワホームの取締役会においても,石原建設が被告ミサワホームのグループ企業となることによるメリットを説明した上で,被告ミサワホームによる石原建設に対する15億円の増資引受け及び20億円の債務保証につき承認を得たい旨を述べており,原告が平成4年2月及び平成6年7月に行った石原建設の株式取得が被告ミサワホームとの間の本件業務委託契約に基づくこととは相容れない発言をしていること,③証人Gは,被告ミサワホームが直接石原建設の株式を取得すると,石原建設の株式が高騰するという危惧と,石原建設が被告ミサワホームの連結会社となり,被告ミサワホームの財務内容が悪化するという危惧から,石原建設の株式の取得を原告に委託することになった旨証言するが,被告ミサワホームは,平成7年12月26日の取締役会における15億円の増資引受けの決議を受けて平成8年2月に自らの名義で株式を取得しており,少なくともそれ以降,被告ミサワホーム名義での石原建設の株式取得に支障はなくなったと考えられ,かつ,平成9年1月29日の取締役会において約50億円の増資引受けの決議がされたにもかかわらず,平成9年3月に原告はその名義で石原建設の株式を取得していることの各事実が認められ,これらの諸点に照らせば,原告の主張する本件業務委託契約締結の事実を認めるには疑問があるといわざるを得ず,かえって,石原建設の経営権の取得及び経営再建の支援を行った主体が,原告又は原告の発行済株式総数の94パーセント以上を保有するG個人であることが窺われる。
(3)  関係各書証における記載
ア 前記(2)ア(イ)のとおり,原告及びGが石原建設の取引銀行33行に提出した平成3年8月21日付けの「石原建設株式会社の経営引継に関する意思表明」と題する書面には,石原建設について,いくつかの条件が満たされるときは,原告及びGが石原建設の株式を取得して石原建設の経営を引き継ぐ旨の記載がある。
上記の記載は,平成3年当時の石原建設に対する支援の主体が原告及びGであることを明らかにしているということができる。
イ 本件協定における平成7年8月4日付け協定書(甲39,乙4)の別紙「本協定に至った事情」には,石原建設の現況として「現在では金利減免を金融機関にお願いしているほか,三澤株式会社,前田建設工業株式会社に資本参加,人材派遣及び工事発注等の支援をいただく中で,一日も早く経営の健全化を計るため努力をしている状況である。」との記載が,再建への過程として「平成4年3月の第三者割当増資までの間,石栄開発株式会社,株式会社武雄センチュリーホテルの資産の処分の検討あるいは経営の引継ぎについての検討または,銀行への支援要請について三澤株式会社及びG社長のご支援をいただいている。」との記載が,本協定成立のお願いとして「建設業本来の事業の継続・存続につき,三澤株式会社・前田建設工業株式会社のご支援をお願いするということとならざるを得ない状況である。」「圧縮後の借入金元利金については,三澤・前田のご支援の下に会社を挙げて努力し,弁済させていただくというものである。」との記載があり,協定書の末尾には,「本協定を確認致しました。本協定成立後は,三澤株式会社及び前田建設工業株式会社は,相協力して石原建設株式会社再建のために本計画を遂行すべく努力致します。右両者は,石原建設株式会社に対し,代表取締役を含む人材派遣を行うとともに,ミサワグループ及び前田建設工業グループは,石原建設株式会社に対し,受注について支援を行います。」との記載の後に,原告及び前田建設の記名押印がされている。
上記の記載は,本件協定に至るまでの石原建設に対する支援の主体は原告及び前田建設であるとともに,原告とは区別されたミサワグループが受注についての支援を行うことを明らかにしているということができる。
ウ Gが署名捺印した被告ミサワホーム宛の平成14年4月4日付け書面(乙5)には,「今期も環境建設(株)の資金需要を含めて,三澤(株)の資金需要も増加しミサワホーム(株)へ資金の要請を行っております。」「尚,環境建設(株)を含め三澤(株)がミサワホーム(株)及び関連会社から借り入れしている資金については全て私の責任であり,この返済については全責任をもって行います。」との記載がある。
上記の記載は,石原建設の資金需要は原告の資金需要の一部であり,原告が,被告ミサワホーム及びその関連会社から借り入れた資金により石原建設への資金提供を行っていることを示すものであるということができる。
(4)  本件業務委託契約に関する契約書の不存在等について
ア(ア) 本件業務委託契約は,原告の主張するところによれば,原告が,石原建設の株式の取得を通じてその経営権を取得し,被告ミサワホームの金融子会社から経営再建のための資金提供を受けてこれを石原建設に対して提供することにより,石原建設の経営再建を図り,その後に原告が取得した石原建設の株式を被告ミサワホームに引き渡すという上場企業の買収及び再建を内容とする極めて重要なものであるにもかかわらず,本件業務委託契約に関する契約書は作成されていない。このような重要な契約について契約書が作成されていないことは,本件業務委託契約の存在を疑わせるものといわざるを得ない。
(イ) この点,原告は,原告が被告ミサワホームの委託に基づいて企業の買収を行うという手法は,本件業務委託契約の締結以前から特段契約書を作成することなく繰り返し行われてきていたため,本件業務委託契約においても同様に契約書が作成されなかった旨主張する。また,原告代表者は,原告は,被告ミサワホームが自ら処理できない事務の委託を受けて処理をしていたのであり,被告ミサワホームのダミーである旨供述し,証人Gも,鈴木鉄工所,ハマノ工業,日本エタニットパイプ等について,原告が買収を受託する形で行われており,石原建設についても同じであった旨証言し,これらの証言等は原告の主張に沿うものである。
しかし,上記のような理由だけでは,100億円を超える多額の資金を要する企業の買収及び再建を内容とする重要な契約について,契約書が作成されていないことを合理的に説明するには足りない。また,原告と被告ミサワホームとの間で,過去に,企業の買収についての業務委託契約が締結されたと認めるに足りる証拠もない。
(ウ) 原告は,これまでの原告と被告ミサワホームとの間の業務委託契約の存在は,本件業務委託契約締結の事実を裏付ける旨主張し,被告ミサワホームが,昭和62年ころ,コスモポリタン株式会社から貸付債権の担保権実行として取得した株式の売却を原告に委託した事実を指摘し,これに沿う証拠として甲42,43の1及び2,甲44,45,48から51までを提出するとともに,他の業務委託契約を示す証拠として甲36を提出する。
しかしながら,甲42は,被告ミサワホームが所有していた株式を原告に売却することを内容とする契約書,甲51は,原告への売却及び株式購入資金の貸付についての被告ミサワホームの取締役会の承認決議を記載した議事録であり,これをもって直ちに被告ミサワホームの所有する株式の売却を内容とする業務委託契約が存在したと認めるには足りない。
なるほど,甲43の1及び2,甲44,45によれば,被告ミサワホームと同時に,Gが代表取締役を務めていたエム・アール・ディー株式会社もコスモポリタン株式会社から担保権実行として取得した株式を原告に売却したところ,エム・アール・ディー株式会社と原告との間において,原告による株式の買取りと市場での売却は,エム・アール・ディー株式会社の計算において,Gの指示の下に行われたものであることを確認する覚書が存在することが認められ,この事実に照らせば,被告ミサワホームから原告に対する株式の売却も,被告ミサワホームの計算で市場での売却を行うことを目的とするものであった可能性は否定できない。
しかし,仮にそうであったとしても,被告ミサワホームの保有する株式の売却を内容とする業務委託契約と,企業の買収及び再建を内容とする本件業務委託契約とは質的に異なるものであり,これをもって,本件業務委託契約の締結について契約書が存在しないことを合理的に説明するということはできず,原告の上記主張は採用できない。
なお,原告の提出に係る判決(甲36)は,原告と第三者との間で締結された商業,業務施設の建築及び開発の具体的推進に伴う指導,助言業務等を業務内容とする業務委託契約が,通謀虚偽表示により無効とされた事案であって,原告と被告ミサワホームとの間の業務委託契約の存在が認められたという事案ではなく,これをもって,本件業務委託契約の存在を裏付けられるということもできない。
イ 関係各証拠(乙8,39,証人G)及び弁論の全趣旨によれば,被告ミサワホームにおいては,昭和62年8月1日に改定された取締役会規程(乙39)により,1件3億円以上の有価証券の取得及び融資については,重要な財産の処分及び譲受けとして取締役会決議事項とされていたこと,原告による平成4年2月及び平成6年7月の石原建設の株式取得はいずれも3億円以上の有価証券の取得に当たることが認められ,したがって,仮に,被告ミサワホームが石原建設の株式を取得するのであれば,被告ミサワホームの取締役会における承認を要することになるところ,本件業務委託契約の締結及び上記の石原建設の株式取得については,被告ミサワホームの取締役会において決議が行われたことを示す取締役会議事録が存在しない。被告ミサワホームの取締役会においては,石原建設に対する15億円の増資引受け及び20億円の債務保証,石原建設に対する人材面での更なる支援及び50億円程度の増資引受けについては,これを承認する決議を行い,その旨の議事録を作成していることは前記(2)ア(ケ)及び(シ)のとおりであり,その同じ取締役会が,本件業務委託契約の締結については,これを事実上承認していながら,その旨の決議を行わず,あるいはその旨の議事録の作成を行っていないということは不自然といわざるを得ず,このこともまた,本件業務委託契約の存在を疑わせるものである。
(5)  被告ミサワキャピタル等から原告に対して交付された資金について
ア 原告は,原告による石原建設への経営再建資金の提供について,被告ミサワホームが,石原建設の被告ミサワホームに対する資金提供要請に基づいて自らの判断で資金提供するかどうかを決めたうえ,自社の資金を巧みに金融子会社を経由させ,更には原告を通過させることにより行っていたものであるとして,この事実は本件業務委託契約締結の事実を裏付ける旨主張する。
なるほど,甲32から35まで,40,41,52の各陳述書又は供述録取書,証人Gの証言及び原告代表者の供述中には,この主張に沿う部分があり,また,甲52,53,乙34によれば,ミサワバンが,原告に対し,石原建設への転貸を資金使途として,平成7年7月から9月までにかけて合計30億円の貸付けを行うに際し,被告ミサワホームの役員らの決裁を受けていることが認められ,この事実も原告の主張を裏付けるものと一応いうことができる。
イ そこで検討すると,関係各証拠(各項の末尾に摘示したもの)によれば,次の事実を認めることができる。
(ア) 原告と被告ミサワキャピタルとの間において,被告ミサワキャピタルを債権者,原告を債務者とする平成12年5月2日付け手形貸付取引約定書,平成14年2月21日付け取引基本約定書,平成14年11月19日付け有価証券担保約定書が存在し,原告と被告アイ・エル・エスとの間において,被告アイ・エル・エスを債権者,原告を債務者とする平成13年12月13日付け取引基本約定書及び有価証券担保約定書が存在し,原告と被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスとの間において,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスを債権者,原告を債務者とする平成15年9月17日付け根質権設定契約書が存在する。
(丙1から3まで,8の1,丙11,戊1)
(イ) 原告は,被告ミサワキャピタルに対し,借入金の返済期限について,平成14年3月付け書面で同年9月30日までの延期を,同日付け書面で平成15年3月31日までの延期を,同年9月22日付け書面で同年12月1日までの延期を,同月24日付けの書面で平成16年3月31日までの延期をそれぞれ要請しており,利息の支払期限についても延期を要請している。
また,原告は,被告アイ・エル・エスに対し,借入金の返済期限について,平成13年9月28日付け書面で同年12月31日までの延期を,同月28日付け書面で平成14年3月31日までの延期を,同月29日付け書面で同年9月30日までの延期を,同日付けの書面で平成15年9月30日までの延期を,同月29日付けの書面で平成16年9月30日までの延期をそれぞれ要請している。
そして,各書面は,原告が借入金の債務者であることを前提としており,借入金の対象とされている金銭が業務委託契約に基づき交付を受けたものであることを示す記載は一切存在しない。
(丙4の1から4まで,丙5の1及び2,丙10の2から6まで)
(ウ) Gは,平成14年4月4日ころ,被告ミサワホームの副社長であったHから,原告からの借入申込みを拒絶している被告ミサワキャピタルから更なる借入れをするために必要であると要求され,原告の被告ミサワホーム及び関連会社からの借入金についてはすべて自らに責任がある旨記載した被告ミサワホーム宛の同日付け書面を作成した。
(甲47,乙5,27の1及び2,証人G)
(エ) ミサワバン作成に係る平成7年7月3日付け「報告(連絡)書」と題する書面(乙34)及びミサワバン作成に係る同日付け「三澤(株)への融資の件」と題する書面(乙36)には,原告から借入れの申込みがあったことを報告するとともに,原告の資金使途について「石原建設(株)への転貸資金,石原建設(株)と金融機関との協定書締結(9月)までのつなぎ資金」と記載されている。
(乙34,36)
(オ) Gの署名捺印がされている平成8年1月12日付け保証書(乙38)には,「私は左記債務につき保証を致します。記 一・債権者ミサワバン株式会社 二・債務者三澤株式会社 三・極度額金一七億円 四・平成八年一月一二日の取引により生じた債務」と記載されている。
(乙38)
(カ) 原告は,前記(ア)の有価証券担保約定書に基づき,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対し,原告の保有していたスルガコーポレーション株式会社,被告ミサワホーム,ミサワホーム東海,石原建設等の株式を担保として差し入れ,その株券を交付した。
その後,原告は,平成16年4月20日付けで,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対し,石原建設の株式の売却代金を被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対する借入金の返済原資とするため,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに担保として差し入れた石原建設の株式について担保権の解除を求めた(この認定に反する原告代表者の供述は採用できない。)。
(乙13,14,丙7の1から5まで,丙12の1から3まで)
ウ 上記イ(ア)から(オ)の各証拠の記載は,いずれも被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスから原告に対して交付された資金が,原告と同被告らの間の金銭消費貸借契約に基づき貸付金として交付されたものであったことを示すものということができ,また,(カ)に認定した原告の担保差入れ及び担保権解除依頼は,資金が本件業務委託契約に基づき業務委託費用として交付されたこととは相容れない行為である。さらに,原告の発行済株式総数の94パーセント以上を所有するGは,証人尋問において,原告の被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対する借入金債務が200億円程度あることを認める証言をしており,この証言も資金が貸付金として交付されたことを示すということができる。
エ(ア) これに対し,原告は,石原建設に対する資金提供の手続において,原告の窓口としての役割は必要性に乏しく,原告はこれにより何ら利益を得ていない旨,上記イ(ア)の取引基本約定書を作成した理由について,被告ミサワホームは上場会社であるので,形は貸付けという形をとってほしいとHから指示を受けたためであり,上記イ(イ)の借入金の返済期限延期を依頼する書面についても,被告ミサワキャピタルの内部処理のために必要であった旨主張し,原告代表者はこれに沿う供述をする。
しかしながら,平成14年4月24日付けの借入申込書(甲6)による石原建設の原告に対する借入申込みにおいては,利率が年5.3パーセントとされているのに対して,同申込書を受けてされた原告の被告ミサワキャピタルに対する借入申込みに係る借入申込書(甲7)においては,利率が年5パーセントとされており,また,平成13年2月27日付の借入申込書(甲14)による石原建設の原告に対する借入申込においては,利率が年3パーセントとされているのに対して,同申込書を受けてされた原告の被告アイ・エル・エスに対する借入申込みに係る借入申込書(甲17の1)においては,利率が2.65パーセントとされていることが認められ,いずれも,原告に利ざやが生じる形で借入手続がされており,原告が何ら利益を得ていないとはいえない。この事実は,原告から石原建設への資金の転貸が原告の計算においてなされていることを示すものということができ,この事実に照らして,原告の主張は採用することができない。
(イ) また,原告は,石原建設の返済見込みの審査は,被告ミサワホームの関連企業部又はミサワバンが行っており,原告は審査を行っていなかったと主張し,甲34,40にはこれに沿う部分があり,証人G及び原告代表者はこれに沿う証言又は供述をする。
しかしながら,平成6年3月からミサワバンの取締役であったNは,その陳述書(甲35)において,ミサワバンでは,被告ミサワホームの子会社及び関連会社(以下「ミサワグループ」という。)に対する融資を担当していたところ,ミサワグループ内の企業がミサワバンに対して借入申込みをするに当たっては,まずミサワバンではなく被告ミサワホームに出向いて借入れの依頼等を行っていたが,その理由は,被告ミサワホームが財務状況の悪化したミサワバンの経営再建を図っていたため,ミサワバン独自の判断によって融資ができない状況にあったことによるものである旨,これに対し,ミサワバンにおいては,石原建設援助のための融資は,あくまで原告に対する融資として取り上げており,原告は,ミサワホームグループではなく,グループ外の企業であったので,原告又は石原建設から融資申込書の提出があった際には,ミサワバンは原告の返済能力を調査した上で融資するか否かを判断していた旨,ミサワバンで融資を決定した後に,被告ミサワホームに対して伺い書を提出して融資の可否を問い合わせて,その承諾を得た後に融資を実行していた旨述べる。また,証人Lも,ミサワバンの行う融資について,一定金額以上のものについては,被告ミサワホームに報告がされるが,被告ミサワホームではミサワバンの債権について保全がされているか否かをチェックするだけであり,融資の目的については審査していない旨証言する。さらに,ミサワバンが,原告に対し,石原建設への転貸を資金使途として,平成7年7月から9月までにかけて合計30億円の貸付けを行うに際し,被告ミサワホームの役員らの決裁を受けていることは前記アのとおりであるが,甲54,乙34によれば,被告ミサワホームの役員らは「15億円程度は前田グループの保証を取る,又は担保不足分は三澤(株)で工事債権を担保に取る。」旨の意見を付し,ミサワバンは,この意見を受けて,13億円については原告で工事債権を担保に取り,10億円についてはGの保証差入れを取ることで融資を実行したことが認められ,この事実は証人Lの証言を裏付けるものということができる。
そして,以上の供述等は相互に符合するから信用性が高いと認められるところ,上記のNの供述によれば,ミサワバンは石原建設援助のための融資を原告に対する融資として捉え,原告の返済能力を調査して融資の可否を判断していたことが窺えるから,原告の主張は採用することができない。
オ 上記の諸点を併せ考えれば,原告の主張に沿う証拠をもって,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスから原告に交付された資金が本件業務委託契約に基づく業務委託費用費用であると認めることはできないといわざるを得ず,同被告らから原告に資金が交付されたことをもって,本件業務委託契約の存在が裏付けられるという原告の主張は採用することができない。
(6)  これに対し,原告は,本件業務委託契約締結の事実を裏付ける事実として,様々な事実を指摘するので,この点について検討する。
ア 原告は,被告ミサワホームが,前田建設に対し,被告ミサワホーム及びそのグループ企業が所有していた池袋・板橋・勝どき等の再開発候補地での超高層ビル建築計画における建築工事を発注するべく努力することを約した上で,前田建設との間で石原建設の支援に関して協力する旨の合意をしたとして,この事実は本件業務委託契約締結の事実を裏付ける旨主張する。
なるほど,前田建設は,平成4年から平成8年までの間に,合計650億円程度の建設工事を石原建設に対して発注し,また,平成4年4月以降,合計20名の従業員を石原建設に出向させるなどして,石原建設の経営再建を支援したことが認められる(甲41)。
しかし,被告ミサワホームが,前田建設に対し,被告ミサワホーム及びそのグループ企業が所有していた池袋・板橋・勝どき等の再開発候補地での超高層ビル建築計画における建築工事を発注することを約束したと認めることはできず,被告ミサワホームと前田建設との間において,原告主張の合意が存在したと認めるに足りる証拠はない。また,前記(3)イの本件協定書の記載は,石原建設に対する支援の主体は原告及び前田建設であるとともに,原告とは区別されたミサワグループが受注についての支援を行うことを明らかにしているということができることは前記(3)イのとおりであり,そうであれば,前田建設との間で,石原建設の支援に関して協力するとの合意をしたのは,被告ミサワホームではなく原告であると解するのが自然であって,前田建設が石原建設の経営再建を支援したことから,本件業務委託契約の存在が裏付けられるということはできないから,原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,被告ミサワホームは,石原建設の受注した建設工事について工事完成保証をし,また,同社の手帳において,石原建設の社名を「ミサワホーム会社一覧」の欄に記載することにより,対外的にも石原建設が被告ミサワホームのグループ企業であることを周知させ,石原建設の受注数拡大を支援していたとして,これらの事実は本件業務委託契約締結の事実を裏付ける旨主張する。
なるほど,被告ミサワホームは,石原建設の受注した建設工事について,石原建設が破産して建設工事が不可能になっても被告ミサワホームで工事を完成させる旨の保証書を提出していたこと(甲32),また,被告ミサワホームが作成した平成15年及び平成16年の手帳には,ミサワグループとして石原建設が記載されていること(甲30の1及び2)が認められる。
しかし,上記各事実は,被告ミサワホームと石原建設が一定の関係を有することを示すものではあっても,それ自体からして本件業務委託契約の存在を裏付けるとまでいうことはできず,原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は,本件協定の成立に向けて,被告ミサワホームの専務取締役であったHは,石原建設の債権者である金融機関等と直接交渉するなどしたとして,この事実は本件業務委託契約締結の事実を裏付ける旨主張する。
なるほど,Hは,被告ミサワホーム専務取締役H名義で,株式会社さくら銀行専務取締役Oに対し,平成7年4月10日付け文書を提出しており,同文書において,本件協定の内容等を説明した上で,本件協定の成立への協力を求めている(甲31)。
しかしながら,同文書においては,石原建設の支援者として原告及び前田建設についての言及がある一方,被告ミサワホームへの言及はないこと,同文書の末尾には,「今般は関係外の小生がでしゃばり,またこの様な報告書・お願い書まであつかましく提出いたしましたことをお詫びいたします。」旨の記載があることが認められ,この記載に照らすと,Hが,本件協定の成立に向けて石原建設の債権者と交渉するなどしていたとしても,それは被告ミサワホームを代表する立場としてではなく,石原建設の再建を願う立場からH個人として行っていたものとみるのが自然であり,これをもって,本件業務委託契約締結の事実を裏付けるものということはできず,原告の上記主張は採用することができない。
エ 原告は,被告ミサワホームは,平成9年1月ころ,「プロジェクト300」と題する,当時石原建設が負っていた約300億円の負債の解消を目標とした石原建設の経営再建案を策定したとして,この事実は本件業務委託契約締結の事実を裏付ける旨主張する。
なるほど,甲4及び証人Gの証言によれば,Hが,平成9年1月ころ,石原建設の財務の改善を内容とする「プロジェクト300」と題する書面(甲4)を作成したことが認められる。
しかし,同書面の内容をみても,石原建設の負っている300億円の負債を解消するための7項目の方策を箇条書きにしたにすぎず,第1項において,原告が石原建設に対して60億円の貸付けを行っていることが記載されている一方,本件業務委託契約の存在を窺わせる記載は存在しないのであり,これをもって,本件業務委託契約締結の事実を裏付けるものということはできないから,原告の上記主張は採用することができない。
オ 原告は,そのほか,被告ミサワホームが,建設省OBを石原建設代表取締役に招聘したこと,石原建設の営業,人事及び金銭収支の決定権を掌握していたこと,双葉綜合開発との合併においても交渉及び契約締結等一切の業務を取り仕切っていたこと,石原建設の破産申立てを独断で決定したことを挙げ,これらの事実は本件業務委託契約締結の事実を裏付けるものである旨主張し,甲32ないし34,41の各陳述書又は陳述録取書はこれに沿うものである。
なるほど,Gは,平成7年6月,石原建設の取締役に就任し,平成8年6月,取締役会長就任したことは前記(2)ア(オ)及び(サ)のとおりであり,平成9年3月以降,Gが発行済株式総数の94パーセント以上を有する原告が,石原建設の約38.6パーセントの株式を有していたのであるから(弁論の全趣旨),Gが,石原建設の営業,人事及び金銭収支の決定権を掌握し,双葉綜合開発との合併においても一切の業務を取り仕切っていたことが容易に推認される。しかし,Gが被告ミサワホームの代表取締役であったからといって,Gの行為をもって,直ちに被告ミサワホームの行為と解することはできないし,前記(2)に判示したところに照らすと,Gの行為が被告ミサワホームの職務執行としてなされたものであると認めることはできない。
また,平成7年9月から,被告ミサワホームの従業員の石原建設への出向が開始されたことは,前記(2)ア(キ)のとおりであるが,他方,石原建設から被告ミサワホームによる人材面での支援の強化の要請があったことは前記(2)ア(シ)のとおりであるから,被告ミサワホームによる人員派遣をもって本件業務委託契約が裏付けられるということはできない。
さらに,石原建設が取締役会において自己破産の申立ての決議を行った当時,石原建設の取締役13名中7名は被告ミサワホームの出向者又は出身者であったことは,前記(2)ア(ソ)のとおりであるが,そのことから直ちに石原建設の破産申立てが被告ミサワホームの決定に基づくものということはできず,他に,石原建設の破産申立てが被告ミサワホームの決定に基づくものであったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(7)  小括
以上に検討したとおり,石原建設に対する支援をめぐる経緯及び関係各証拠の記載に照らせば,石原建設の経営権の取得及び経営再建の支援を行った主体が,原告又は原告の発行済株式総数の94パーセント以上を保有するG個人であることが窺われ,また,本件業務委託契約に関する契約書や被告ミサワホームの取締役会決議が存在しないこともこれを裏付けており,さらに,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスから原告に交付された資金が本件業務委託契約に基づく業務委託費用であると認めることもできず,結局,原告と被告ミサワホームとの間の本件業務委託契約締結の事実を認めることはできないから,本件業務委託契約の存在を前提とする原告の被告ミサワホームに対する代弁済請求(甲事件及び丙事件)は,いずれも理由がない。
2  争点2(原告の本件貸金債務の有無)について
(1)  前記前提となる事実及び関係各証拠(各項の末尾に摘示したもの)を総合すれば,以下の事実を認めることができる。
ア 被告ミサワキャピタルは,原告に対し,平成14年5月7日,5億円を以下の約定で貸し付けた。
(ア) 返済期限 平成14年9月30日(猶予後の返済期限平成15年3月31日)
(イ) 利息 年5パーセント
(ウ) 遅延損害金 年14パーセント(年365日の日割計算)
(甲5から9まで,丙2,4の2)
イ 被告アイ・エル・エスは,原告に対し,平成13年3月28日,73億5800万円を以下の約定で貸し付けた。
(ア) 返済期限 平成13年9月30日(猶予後の返済期限平成15年9月30日)
(イ) 利息 年2.65パーセント
(ウ) 遅延損害金 年18パーセント(年365日の日割計算)
(甲17の1及び2,丙10の2から5まで,戊1)
ウ 引受参加人は,平成17年6月24日,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスから,上記ア及びイの貸金債権を譲り受け,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスは,原告に対してその旨通知した。
(2)  原告は,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスから交付を受けた上記金員は,本件業務委託契約に基づく業務委託費用であって金銭消費貸借契約に基づく貸付金ではない旨主張し,仮に金銭消費貸借契約が存在するとしても,当該契約は通謀虚偽表示により無効である旨主張する。
しかしながら,本件業務委託契約締結の事実を認めることができないことは前記1において判示したとおりであり,前記1(5)イ(ア)から(オ)の各証拠の記載,同(カ)に認定した原告の担保差入れ及び担保権解除依頼の事実及び原告の被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対する借入金債務が200億円程度あることを認める証人Gの証言に照らせば,上記(1)の金銭消費貸借契約が原告と被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスとの間の通謀虚偽表示によるものであると認めることもできず,原告の上記主張を採用することはできない。
(3)  以上によれば,引受参加人は,原告に対し,本件貸金債権を有していることが認められるから,引受参加人の原告に対する本件貸金債務の履行を求める請求(甲反訴事件)は理由がある。
3  争点3(原告による本件株式に対する担保権設定並びに被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスによる担保権実行の有無)について
(1)  前記前提となる事実,関係各証拠(各項の末尾に摘示したもの)によれば,以下の事実を認めることができる。
ア(ア) 原告は,被告ミサワキャピタルとの間で,平成14年11月19日,有価証券担保約定書を締結し,原告が被告ミサワキャピタルに対しその当時から将来にわたり負担する一切の債務の担保として,原告が被告ミサワキャピタルに有価証券を差し入れる旨を合意した。
(丙3)
(イ) そして,この合意に基づき,原告は,被告ミサワキャピタルに対し,同年12月20日に被告ミサワホーム株式222万4000株を,平成15年4月3日に被告ミサワホーム株式445万株及びミサワホーム東海株式45万株を,それぞれ担保として差し入れ,その株券を交付した。
(丙7の2及び3)
(ウ) これらの株式に対しては,被告ミサワホームホールディングスの設立に伴う株式移転により,被告ミサワホームホールディングスの株式734万9000株が割り当てられた(以下「本件第1担保株式」という。)。
(弁論の全趣旨)
(エ) 被告ミサワキャピタルは,原告に対し,別紙被担保債権目録1記載の貸付日,貸付方法及び金額により貸し付け,平成16年12月29日現在における残高は,別紙被担保債権目録1記載のとおりであった(以下「本件第1被担保債権」という。)。
(甲1,丙13の1)
(オ) 本件第1被担保債権の返済期限は,平成15年3月31日(ただし,別紙被担保債権目録1(19)記載の貸付についてのみ同年9月30日)であった。被告ミサワキャピタルは,原告に対し,平成16年12月29日付け内容証明郵便によって,上記イの有価証券担保約定書に基づく担保権の実行を通知し,同通知書は平成17年1月4日原告に到達した。
これにより,被告ミサワキャピタルは本件第1担保株式を取得したとして,その後,同月6日,本件第1担保株式について,名義書換を行った。
(甲1,丙3,13の1及び2,丙15,17)
イ(ア) 原告は,被告アイ・エル・エスとの間で,平成13年12月13日,有価証券担保約定書を締結し,原告が被告アイ・エル・エスに対しその当時から将来にわたり負担する一切の債務の担保として,原告が被告アイ・エル・エスに有価証券を差し入れる旨を合意した。
(丙11)
(イ) そして,この合意に基づき,原告は,被告アイ・エル・エスに対し,平成14年5月29日に被告ミサワホームの株式587万株及びミサワホーム東海の株式55万株を担保として差し入れ,その株券を交付した。
(丙12の2)
(ウ) これらの株式に対しては,被告ミサワホームホールディングスの設立に伴う株式移転により,被告ミサワホームホールディングスの株式669万5000株が割り当てられた(以下「本件第2担保株式」という。)。
(弁論の全趣旨)
(エ) 被告アイ・エル・エスは,原告に対し,別紙被担保債権目録2記載の貸付日,貸付方法及び金額により貸し付け,同日現在における残高は,別紙被担保債権目録2記載のとおりであった(以下「本件第2被担保債権」という。)。
(甲2,丙14の1)
(オ) 本件第2被担保債権の返済期限は,平成15年9月30日であった。被告アイ・エル・エスは,原告に対し,平成16年12月29日付け内容証明郵便によって,上記ウの有価証券担保約定書に基づく担保権の実行を通知し,同通知書は平成17年1月4日原告に到達した。
これにより,被告アイ・エル・エスは本件第2担保株式を取得したとして,その後,同月6日,本件第2担保株式につき,名義書換を行った。
(甲2,丙11,14の1及び2,丙16,17)
(2)  以上によれば,原告は,担保権の実行により,本件第1担保株式及び本件第2担保株式(本件株式はその一部)を喪失したと認められるから,原告の被告ミサワホームホールディングスに対する本件株式の株主権確認請求(乙事件),原告の被告ミサワキャピタルに対する本件第1株券の引渡請求(乙事件)及び被告アイ・エル・エスに対する本件第2株券の引渡請求(乙事件)はいずれも理由がない。
4  以上によれば,引受参加人の原告に対する本件貸金債務の履行を求める請求(甲反訴事件)は理由があるから認容することとし,原告の引受参加人に対する本件貸金債務の不存在確認請求(甲事件)に係る訴えについては,引受参加人の原告に対する本件貸金債務の履行を求める反訴が提起されている以上,もはや確認の利益を認めることはできないから(最高裁平成13年(オ)第734号同16年3月25日第一小法廷判決・民集58巻3号753頁参照),不適法として却下することとし,原告の被告ミサワホームに対する請求(甲事件の代弁済請求及び丙事件)並びに原告の被告ミサワホームホールディングス,被告ミサワキャピタル及び被告アイ・エル・エスに対する請求(乙事件)は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用につき民事訴訟法61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鹿子木康 裁判官 小川雅敏 裁判官牧野宇周は,差支えのため署名押印することができない。裁判長裁判官 鹿子木康)

 

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