「営業支援」に関する裁判例(97)平成21年12月25日 東京高裁 平21(ネ)1043号 損害賠償本訴請求、各損害賠償反訴請求控訴事件
「営業支援」に関する裁判例(97)平成21年12月25日 東京高裁 平21(ネ)1043号 損害賠償本訴請求、各損害賠償反訴請求控訴事件
裁判年月日 平成21年12月25日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平21(ネ)1043号
事件名 損害賠償本訴請求、各損害賠償反訴請求控訴事件
裁判結果 控訴一部認容・原判決変更 上訴等 上告、上告受理申立て 文献番号 2009WLJPCA12256004
要旨
◆被控訴人らとの間でフランチャイズ契約を締結し、食堂経営をしていた控訴人らが、被控訴人らに詐欺的な契約勧誘及の不法行為及び経営指導義務違反の債務不履行があるとして、加盟金等の返還及び損害賠償の支払を求めたのに対し、被控訴人a社が、控訴人らに、競業避止義務違反に基づく営業差止めと違約金の支払を求めた事案において、実際には、店舗確保が困難であるのに、被控訴人b社の援助により店舗確保は容易であると説明したこと等から、被控訴人らの勧誘は詐欺に当たる違法行為であるとして、また、被控訴人a社は経営指導義務についての債務不履行責任を負うとした上で、被控訴人a社が控訴人らに対して、競業避止義務違反に基づく営業差止めと違約金の支払を求めることは、信義則違反、権利濫用として許されないとして、原判決を変更し、控訴人らの請求を一部認容し、被控訴人a社の請求を棄却した事例
新判例体系
民事法編 > 民法 > 民法〔明治二九年法律… > 第一編 総則 > 第一章 通則 > 第一条 > ○基本原則 > (三)権利の濫用 > Dノ二ノ七 違約金の請求
◆フランチャイズ契約において、フランチャイズ側に詐欺的行為があり、かつ経営指導義務違反があるときには、フランチャイジーが契約脱退後に別の食堂の経営を行ったとしても、フランチャイザーがその営業の差止め及び違約金を請求することは、権利の濫用に当たり許されない。
民事法編 > 民法 > 民法〔明治二九年法律… > 第三編 債権 > 第一章 総則 > 第二節 債権ノ効力 > 第一款 債務不履行の… > 第四一五条 > ○債務不履行による損… > (二)故意過失 > (2)ノ二 説明告知… > (ト)フランチャイザー
◆フランチャイズ契約において、フランチャイザー側に、実際には店舗確保が困難なのに、フランチャイザーの援助により店舗確保は容易であると説明したことなどの詐欺的な契約締結の勧誘及び、専門性の乏しいスーパーバイザーによる臨店指導しか実施しなかったことなどの経営指導義務違反があるときには、フランチャイジーからの損害賠償等の請求が認められる。
裁判経過
第一審 平成21年 1月27日 東京地裁 判決 平17(ワ)22482号・平18(ワ)10402号・平18(ワ)10403号・平18(ワ)10404号・平18(ワ)10405号 損害賠償請求事件、各損害賠償請求事件
出典
判時 2068号41頁
参照条文
民法1条2項
民法1条3項
民法90条
民法91条
民法415条
民法709条
民事訴訟法248条
裁判年月日 平成21年12月25日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平21(ネ)1043号
事件名 損害賠償本訴請求、各損害賠償反訴請求控訴事件
裁判結果 控訴一部認容・原判決変更 上訴等 上告、上告受理申立て 文献番号 2009WLJPCA12256004
控訴人 株式会社X1(以下「控訴人X1社」という。)
代表者代表取締役 A〈他2名〉
控訴人ら訴訟代理人弁護士 神田高
同 坂本雅弥
被控訴人 株式会社フジオフードシステム(以下「被控訴人FF」という。)
代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 鈴木敬一
同 廣田真穂
被控訴人 株式会社ベンチャー・リンク(以下「被控訴人VL」という。)
代表者代表取締役 C
訴訟代理人弁護士 川村明
同 左高健一
同 檜山聡
同 井上葵
同 山本泰輔
主文
一 原判決を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人FFは、控訴人X1社に対し、一二四六万円及びこれに対する平成一七年一一月四日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人VLは、控訴人X1社に対し、一〇五〇万円及びこれに対する平成一七年一一月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(3) 被控訴人FFは、控訴人X2社に対し、二〇〇〇万円及びこれに対する平成一七年一一月四日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
(4) 被控訴人VLは、控訴人X2社に対し、一九八〇万円及びこれに対する平成一七年一一月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(5) 被控訴人FFは、控訴人X3社に対し、一七四〇万円及びこれに対する平成一七年一一月四日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
(6) 被控訴人VLは、控訴人X3社に対し、一六八〇万円及びこれに対する平成一七年一一月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(7) 控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。
(8) 被控訴人FFの控訴人らに対する反訴請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを一〇分し、その一を控訴人らの負担とし、その八を被控訴人FFの負担とし、その余を被控訴人VLの負担とする。
三 この判決の第一項(1)から(6)までは、仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の申立て
一 控訴人らの控訴の趣旨
(1) 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。
(2) 被控訴人らは、各自、控訴人X1社に対し、三〇〇〇万円及びこれに対する平成一七年一一月四日(被控訴人VLは同月三日)から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
(3) 被控訴人らは、各自、控訴人X2社に対し、二〇〇〇万円及びこれに対する平成一七年一一月四日(被控訴人VLは同月三日)から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
(4) 被控訴人らは、各自、控訴人X3社に対し、二二七二万一七一九円及びこれに対する平成一七年一一月四日(被控訴人VLは同月三日)から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
(5) 被控訴人FFの反訴請求のうち控訴人ら敗訴部分をいずれも棄却する。
(6) 控訴人X2社の被控訴人FFに対する当審における予備的請求
被控訴人FFは、控訴人X2社に対し、三〇〇万円及びうち二〇〇万円に対する平成一七年一一月二一日から、うち一〇〇万円に対する平成一八年一一月二八日から各支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 控訴の趣旨に対する被控訴人らの答弁
(1) 本件控訴をいずれも棄却する。
(2) 控訴人X2社の被控訴人FFに対する当審における予備的請求を棄却する。
第二 本訴事件についての当事者の主張
一 控訴人らの請求の原因
(1) 控訴人らは、被控訴人FF及び同被控訴人から加盟店募集業務を委託された被控訴人VLから「ごはん家まいどおおきに食堂」フランチャイズ基本契約(以下「本件FC契約」という。)などの締結の勧誘を受け、被控訴人FFとの間で(控訴人X1社及び控訴人X2社は店舗物件を確保する前に)下記の本件FC契約等を締結し、被控訴人FF及び同被控訴人からスーパーバイジング業務を委託された被控訴人VLの経営指導の下で「ごはん家まいどおおきに食堂」のフランチャイズ店を下記のとおり開店(一部は契約で定めたエリアの外で開店)し、営業してきた。ただし、控訴人X2社は、一部の契約につき、エリアの内外のいずれにおいても店舗を確保することができず、全く出店しなかった。
ア 控訴人X1社
本件FC契約 出店エリア荻窪(二店舗)(荻窪エリアでは未出店。現実に開店したのは契約エリア外の新川店及び幡ヶ谷店) 加盟金一〇五〇万円支払
イ 控訴人X2社
① 本件FC契約 出店エリア大塚(契約エリア内で東池袋店開店) 加盟金五二五万円及び加盟保証金一〇〇万円支払
② 本件FC契約 出店エリア高円寺(未出店) 加盟金五二五万円及び加盟保証金一〇〇万円支払
③ 「神楽食堂串家」フランチャイズ基本契約(以下「串家FC契約」という。)出店エリア荻窪(未出店) 加盟金六三〇万円及び加盟保証金一〇〇万円支払
ウ 控訴人X3社
① 本件FC契約 上野六丁目店(既存店)譲受 加盟金八四〇万円支払
② 本件FC契約 門前仲町店(既存店)譲受 加盟金八四〇万円支払
(2) 契約の勧誘における被控訴人らの責任
勧誘に当たっての被控訴人らの下記の行為は、詐欺及び欺まん的顧客誘引(昭和五七年公正取引委員会告示一五号の八)であって、不法行為に該当する。このような経緯で締結された本件FC契約及び串家FC契約は、公序良俗に反するものとして無効である。また、これらの契約のうち、当初の契約で定められたエリア内において現実に店舗を開店することができなかったものは、錯誤により無効である。
ア 控訴人X1社に対する勧誘
平成一二年五月三〇日に出店エリアを荻窪(二店舗)とする本件FC契約を締結した。実際には荻窪エリアでは出店できず、エリア外で新川店と幡ヶ谷店を開店せざるを得なかった。
被控訴人らは、出店エリア(荻窪)が店舗物件の確保が困難なエリアであることを知りながら、そのことを控訴人X1社に告げなかった。
控訴人X1社は、契約締結後、荻窪エリアで店舗物件を見つけることができず、支払済みの加盟金一〇五〇万円を没収される危機に直面し、被控訴人VLから紹介を受けた他のエリアの物件で開店せざるを得なくなり、新川店及び幡ヶ谷店を開店した。幡ヶ谷店の紹介物件は、違法建築であったため、店舗面積を減らさざるを得なかった上、開店が二箇月も遅れた。
以上によれば、被控訴人らによる勧誘は、詐欺及び欺まん的顧客誘引に当たる。
イ 控訴人X2社に対する勧誘
平成一二年一一月二一日に出店エリアを大塚及び高円寺とする二個の本件FC契約を締結し、平成一三年一一月二八日に出店エリアを荻窪とする串家FC契約を締結した。実際に出店できたのは、大塚エリア(東池袋店)だけであった。
被控訴人らは、出店エリアにおける店舗物件確保の確たる見込みがないのに、控訴人X2社に対し、出店が容易であるかの虚偽の説明をした。
また、被控訴人らは、スーパーバイザー(以下「SV」という。)による実効性のある臨店指導を実施する予定がないのに、SVの臨店指導があるから飲食店経営の素人である控訴人X2社でも経営に心配はないという説明をした。
さらに、被控訴人VLの担当者は、売上や損益の見込みについて、客観的根拠が薄弱であるのに、営業利益は売上の二一%であり、ロイヤルティ(売上げの六%相当)を支払っても、売上の一五%が利益となるなどの説明をした。実際には、大塚エリア(東池袋店)についての売上は、被控訴人VLの予測(月額五四〇万円から六〇〇万円)は大きく外れ、月額三〇〇万円台ないし四〇〇万円台と低迷を続けた。
以上によれば、被控訴人らによる勧誘は、詐欺及び欺まん的顧客誘引に当たる。
ウ 控訴人X3社に対する勧誘
平成一五年一一月二八日にまいどおおきに食堂の既存のフランチャイズ店二店を譲り受ける形で二個の本件FC契約を締結し、平成一六年四月一日から経営を開始した。
被控訴人VLの加盟店募集担当のD及びSVのEは、平成一五年夏ころ、控訴人X3社の代表者であるFに対し、当時有限会社a(以下「a社」という。)がフランチャイズ店として経営していたまいどおおきに食堂の上野六丁目店(以下「上野店」という。)及び門前仲町店(以下「門仲店」という。)の二店を一括して譲り受けて、本件FC契約を締結することを勧誘した。Dの説明は、a社は首都圏撤退(本店のある静岡に店舗を集中)の方針であるため二店一括譲渡が条件となる、上野店の売上月額は九〇〇万円ないし一〇〇〇万円で全国トップに近い成績であり、門仲店の売上月額は五〇〇万円に満たないものの、両食堂を併せると利益が出る、被控訴人VLにより適切な経営指導が行われる、経営譲渡前にa社経営中の上野店及び門仲店での研修実施が可能であるなどと説明した。
Fは、平成一五年夏、上野店の直近一年間(平成一四年七月から平成一五年六月まで)の真実の売上月額は八〇〇万円台であるのに、Dから、上野店の売上月額につき九〇〇万円台や一〇〇〇万円台の数値が記載された平成一三年七月から平成一四年六月までの損益計算書(甲B三)を直近一年間の損益計算書として交付され、直近一年間の売上高を誤信した。Fは、真実の売上月額を知らされていれば、利益が上がらないと考えて、本件FC契約を締結しなかった。
その後も、a社経営中の上野店及び門仲店での研修が実現せず、平成一六年四月一日の営業開始後は、四月や五月の上野店の売上月額が想定を下回ったことから被控訴人VLの担当者にa社経営時の売上数値の共有等を求めたが、被控訴人VLは資料の提出を引き延ばし、ようやく平成一六年九月に資料が提出されて、DやEによる前記説明や交付資料の内容が虚偽であることが明らかとなった。
以上からすれば、被控訴人らの控訴人X3社に対する本件FC契約の勧誘は、詐欺ないし欺まん的顧客誘引に当たる。
(3) 経営指導における被控訴人らの責任(被控訴人FF債務不履行、被控訴人VL不法行為)
ア SVによる指導の不備
本件FC契約のロイヤルティは売上の六%という高額であるが、これは被控訴人らによる加盟店への経営指導義務の履行の対価であり、その経営指導義務の履行を具体的に担っているのはSVであった。SVの主力は、被控訴人FFからスーパーバイジング業務の委託を受けた被控訴人VLのSVであった。
被控訴人らのSVの指導の実情は、①数箇月に一回しか臨店せず、臨店日時も分からないため、継続的な指導ができない、②メニューの改善や原価を下げるための調理指導ができない、③思い付きを言うだけで、具体的な改善策の指導がない、④他店での成功例を話すが、当該店舗の実情に即した具体的指導がないというものであり、系統的かつ具体的な経営指導の能力がなかった。
イ その他の指導の不備
被控訴人FFは、メニューの開発、更新を怠って顧客を飽きさせ、リピーター獲得による加盟店の営業成績向上に支障をきたした。
被控訴人らの実施する研修(ベンチマーキング会議やマジックフォーラム等)は、各加盟店の創意工夫による成功事例を、被控訴人らの工夫であるかのように紹介するものにすぎない。
被控訴人FFは、平成一六年四月に一斉値下げを実施したが、目論んでいた客数の増加が実現せずに失敗し、その結果、加盟店は、売上の減少と損益の著しい悪化に見舞われた。加盟店は、窮状を訴えてロイヤルティの軽減を求めたが、被控訴人FFはロイヤルティの減額に応じなかった。
被控訴人らの指導する商品陳列方法は、他の食堂でも見かけるありふれたチョイス方式(客が商品陳列台から購入商品を選ぶ方式)にすぎず、被控訴人らは控訴人X1社から教示を受けるまで商品販売の基本であるABC分析(売れ筋商品をランク付けしてグループ化し、それぞれの販売数及び在庫数をチェックして、売れ筋商品がどれかを常に把握することにより、売上げを伸ばす手法)を全く知らなかったことなどからも明らかなとおり、被控訴人らには、フランチャイズチェーン運営の基本的ノウハウが欠如していた。
ウ 以上の事実は、被控訴人FFの本件FC契約の債務不履行に当たり、また、被控訴人FFによる控訴人らに対する不法行為を構成する。
エ 被控訴人VLは、被控訴人FFから控訴人ら加盟店に対する経営指導を委託され、経営指導を誠実に行うべき信義則上の義務を負っていたもので、被控訴人VLのSVによる指導の不備は、控訴人らに対する不法行為を構成する。
(4) 控訴人X1社に生じた損害(三〇〇〇万円)
ア 控訴人X1社は、(1)ア記載の加盟金(合計一〇五〇万円)を被控訴人FFに支払い、これと同額の損害を被った。
イ 控訴人X1社は、被控訴人FFが本件FC契約上負う経営指導義務を履行しなかったことにより、新川店及び幡ヶ谷店の損益が悪化し、損害を被った。その損害額は、支払済みのロイヤルティの額である四〇二九万七四七五円を下らない。
ウ 上記アは被控訴人FFの不当利得、上記イは被控訴人FFの債務不履行により控訴人X1社に生じた損害であるとともに、両者とも、被控訴人らの共同不法行為による損害でもある。
よって、控訴人X1社は、被控訴人ら各自に対して、三〇〇〇万円(アの全額一〇五〇万円及びイの一部である一九五〇万円の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成一七年一一月四日(被控訴人VLについては同月三日)から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(5) 控訴人X2社に生じた損害(二〇〇〇万円)
ア 控訴人X2社は、(1)イ記載の加盟金及び加盟保証金(合計一九八〇万円)を被控訴人FFに支払い、これと同額の損害を被った。
イ 控訴人X2社は、被控訴人FFが本件FC契約上負う経営指導義務を履行しなかったことにより、東池袋店の損益が悪化し、損害を被った。その損害額は、支払済みのロイヤルティの額である一〇〇三万四九七〇円を下らない。
ウ 上記アは被控訴人FFの不当利得、上記イは被控訴人FFの債務不履行により控訴人X2社に生じた損害であるとともに、両者とも、被控訴人らの共同不法行為による損害でもある。
よって、控訴人X2社は、被控訴人ら各自に対して、二〇〇〇万円(アの全額一九八〇万円及びイの一部である二〇万円の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成一七年一一月四日(被控訴人VLについては同月三日)から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(6) 控訴人X3社に生じた損害(二二七二万一七一九円)
ア 控訴人X3社は、(1)ウ記載の加盟金(合計一六八〇万円)を被控訴人FFに支払い、これと同額の損害を被った。
イ 控訴人X3社は、被控訴人FFが本件FC契約上負う経営指導義務を履行しなかったことにより、上野店及び門仲店の損益が悪化し、損害を被った。その損害額は、支払済みのロイヤルティの額である五九二万一七一九円を下らない。
ウ 上記アは被控訴人FFの不当利得、上記イは被控訴人FFの債務不履行により控訴人X3社に生じた損害であるとともに、両者とも、被控訴人らの共同不法行為による損害でもある。
よって、控訴人X3社は、被控訴人ら各自に対して、二二七二万一七一九円(ア及びイの合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成一七年一一月四日(被控訴人VLについては同月三日)から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(7) 控訴人X2社の被控訴人FFに対する当審における予備的請求
ア 控訴人X2社は被控訴人FFに対して、両者間の下記契約に基づき、各契約ごとに一〇〇万円(合計三〇〇万円)を加盟保証金として交付した。各契約は終了したので、被控訴人FFは、控訴人X2社に対し、同額の返還義務を負う。
① 平成一二年一一月二一日付け大塚エリアに係る本件FC契約
遅くとも平成一七年一一月二〇日終了
② 平成一二年一一月二一日付け高円寺エリアに係る本件FC契約
遅くとも平成一七年一一月二〇日終了
③ 平成一三年一一月二八日付け串家FC契約
遅くとも平成一八年一一月二七日終了
イ よって、加盟保証金返還請求権に基づき三〇〇万円及びこれに対する各契約終了日の翌日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求の原因に対する被控訴人らの認否、反論
(1) 控訴人らの請求の原因(1)の事実は認める。
(2) 控訴人らの請求の原因(2)の主張は争う。
ア 控訴人X1社に対する勧誘について
被控訴人FFと控訴人X1社が平成一二年五月三〇日に出店エリアを荻窪(二店舗)とする本件FC契約を締結したが、控訴人X1社が荻窪エリアでは出店せず、新川店と幡ヶ谷店を開店したことは認める。
本件FC契約上店舗物件の確保は加盟店の責任であり、控訴人X1社代表者はそのことを十分理解した上で本件FC契約を締結しているのであって、その過程に何ら欺罔行為は存しない。控訴人X1社は、当初予定されていた荻窪地域での出店に代えて、中央区新川及び渋谷区幡ヶ谷に出店し、食堂営業を継続してきたのであって、被控訴人らの控訴人X1社に対する本件FC契約の勧誘には何ら問題がない。
イ 控訴人X2社に対する勧誘
平成一二年一一月二一日に出店エリアを大塚及び高円寺とする二個の本件FC契約を締結し、平成一三年一一月二八日に出店エリアを荻窪とする串家FC契約を締結したこと、実際に出店したのは大塚エリアだけであったことは認める。
本件FC契約及び串家FC契約上、店舗物件の確保は加盟店の責任であり、被控訴人FFは高円寺エリアや荻窪エリアについても複数の物件を紹介したが、控訴人X2社は自らの経営判断により出店しなかったのであって、その過程において、被控訴人らに欺罔など一切存在しない。
被控訴人VLの担当者が控訴人X2社主張の利益率や売上額に関する説明をしたことはない。仮に説明をしたとしても、例示として説明したにすぎず、利益を保証する旨の説明はしていない。
ウ 控訴人X3社に対する勧誘
平成一五年一一月二八日にまいどおおきに食堂の既存のフランチャイズ店二店を譲り受ける形で二個の本件FC契約を締結し、平成一六年四月一日から経営を開始したことは認める。
Dは、控訴人X3社代表者Fに対し、本件FC契約締結前に、次のとおり上野店及び門仲店の損益計算書を交付しており、上野店の営業状況等につき虚偽の説明を行ったことはないから、被控訴人らの控訴人X3社に対する本件FC契約の勧誘には何ら問題がない。
(ア) 平成一五年夏ころ、a社作成に係る上野店の半期分の損益計算書合計四枚(平成一三年七月から平成一五年六月までの分。甲B三はその一部)及び門仲店の半期分の損益計算書合計二枚(平成一四年七月から平成一五年六月までの分)を交付した。
(イ) 平成一五年八月末から九月ころ、a社作成に係る上野店及び門仲店の直近(平成一五年五月から七月まで)の損益計算書(丙五の一・二)を交付した。
(ウ) 平成一五年一〇月九日、被控訴人VLが作成した上野店及び門仲店の同年一月から七月までの損益計算書(丙二)を交付して、上野店及び門仲店の収益状況や改善点等につき説明している。
(エ) 平成一五年一一月に、Eが上記損益計算書(丙二)を基に作成した上野店及び門仲店の同年一月から八月までの損益計算書(乙B八)を交付した。
(3) 控訴人らの請求の原因(3)の主張は争う。
被控訴人らは、本件FC契約上、控訴人主張のような経営指導義務を負わない。SVによる指導方法には、臨店以外に電話や電子メール等の方法があり、そのほかにもベンチマーキング会議等の集合研修、マニュアルや文書の直接送付等の方法がある。これらを通じて、被控訴人らは、控訴人らに具体的な指導援助を行っていた。かえって、控訴人らに、マニュアルを読まない、SVの指導に従わないなどの問題があったものである。なお、加盟店に対して調理の指導を行うのは被控訴人FFのトレーナーの役割であって、SVの役割ではない。SVの役割は、店舗の業績の向上のために問題点を洗い出し、改善方法を伝えることである。
メニューを決定する権限は被控訴人FFにあり、控訴人らの要望は被控訴人FFの定めた基準を満たさなかった。控訴人ら希望のメニューが導入されなかったとしても、被控訴人らに経営指導義務違反はない。
(4) 控訴人らの請求の原因(4)から(6)まで(損害)は争う。
(5) 控訴人らの請求の原因(7)についての被控訴人FFの主張
控訴人らの請求の原因(7)のアの事実は認める。控訴人X2社がその主張に係る加盟保証金返還請求権を有することは争わない。
被控訴人FFは、第三の一(2)イの違約金請求権と対当額で相殺する。
第三 反訴事件についての当事者の主張
一 被控訴人FFの請求の原因
(1) 本件FC契約の競業避止義務規定
本件FC契約には競業避止義務規定がある。その内容は、加盟店は、本件FC契約期間中及び契約終了後二年間、契約店舗と同一又は類似する営業を自ら行い、若しくは第三者をして行わせてはならず、これに違反すると加盟金の三倍相当額を請求後三〇日以内に支払うというものである。
(2) 控訴人らの競業避止義務違反
控訴人らは、次のとおり競業避止義務に違反して、契約期間中又は契約終了後二年経過前に、契約店舗と同一又は類似の営業形態の食堂を開始したから、被控訴人FFに対して下記の違約金支払義務を負う。また、被控訴人FFは、控訴人らに対し、下記各店舗の営業の差止めを求める。
ア 控訴人X1社
平成一七年六月ころから原判決別紙物件目録四記載の「新川小町食堂」、「幡ヶ谷小町食堂」、「錦糸町小町食堂」及び「御徒町小町食堂」の営業を開始した。
違約金額は、一店舗につき加盟金五〇〇万円の三倍である一五〇〇万円となり、四店舗分六〇〇〇万円を請求する。
イ 控訴人X2社
平成一七年九月一日ころから原判決別紙物件目録一記載の「味祭や」の営業を開始した。
違約金額は、一店舗につき加盟金五〇〇万円の三倍である一五〇〇万円となり、これと同額を請求する。
ウ 控訴人X3社
平成一七年八月一日ころから原判決別紙物件目録二記載の「上野昭和通り食堂」及び「深川食堂」の営業を開始した。
違約金額は、一店舗につき加盟金八〇〇万円の三倍である二四〇〇万円となり、二店舗分四八〇〇万円を請求する。
(3) 控訴人らの公序良俗違反、信義則違反の主張は争う。
二 請求の原因に対する控訴人らの認否、反論
(1) 本件FC契約に被控訴人FF主張の規定があることは認める。
控訴人らと被控訴人FFとの本件FC契約終了から二年経過しているから、競業避止義務違反を理由とする請求をすることはできない。
(2) 控訴人X3社が「上野昭和通り食堂」を営業したことは否認する。
「味祭や」、「御徒町小町食堂」は既に閉店した。
(3) 公序良俗違反、信義則違反
ア 本件FC契約中の競業避止義務規定は、公序良俗違反により無効である。本件FCの食堂における陳列方法はありふれたチョイス方式であり、SVの指導、メニュー改善、加盟店が窮地に陥った際の救済策等もなく、ABC分析等の手法が未確立であることなどからすれば、本件FCに競業避止義務規定をもって保護すべき独自のノウハウはないからである。
イ 被控訴人FFは、本件FC契約についての競業避止義務違反があっても、被控訴人FFに対する訴訟を提起しない元加盟店に対しては損害賠償請求を行わず、訴訟を提起した控訴人らに対しては損害賠償請求を行っている。すなわち、競業避止義務規定を、元加盟店に被控訴人FFに対する訴訟を提起させないための威迫的手段として用いている。このような競業避止義務規定の用い方は、著しく不公平かつ不公正であって、信義誠実の原則に違反する。
理由
一 《証拠省略》によれば、以下の事実を認定することができる。
(1) 被控訴人FFの東京地区進出の状況
ア B(昭和○年生)は、若いころから、大阪府を中心に、「まいどおおきに食堂」などの名称で、多数の大衆的な食堂を直営で経営してきた。そのうち、「まいどおおきに食堂」の特徴は、和食を中心とする家庭の日常食を提供し、客が料理を陳列棚から自分で選んで取るという方式(セルフチョイス方式)を採用し、オフィス街、単身者居住地域、通勤途上の駅周辺など住宅地や商業地に幅広く立地し、各店の料理、価格、内装、外装等を統一的なものとするというものであった。「まいどおおきに食堂」のこのようなスタイルは、日本国内においては、他にもよく見かけるありふれた形式のものであった。
被控訴人VLは、昭和六一年に設立された中小企業向け情報収集及び情報提供を目的とする株式会社であり、その後、フランチャイズチェーン店の加盟店募集及び加盟店の指導業務の代行事業にも進出するようになった。被控訴人VLは、平成七年、その発行する株式を東京証券取引所市場第一部に上場した。
Bは、被控訴人VLと出会い、一並びの日(平成一一年一一月一一日)に被控訴人FFを設立した。設立に当たっては、B及び被控訴人VLなどが主要な株主となった。
被控訴人FFの事業目的は、被控訴人VLと提携、協力して、「まいどおおきに食堂」や「神楽食堂串家」などの食堂チェーンを、直営店方式及びフランチャイズ方式を組み合わせて、全国展開することであった。Bにとっては、フランチャイズ方式による事業展開及び首都圏など関西地区以外の地域への進出は、初めての経験であった。
被控訴人FFと加盟店が締結するFC契約(控訴人X3社のように既存店舗を譲り受ける場合を除く。)は、店舗候補物件を確保しないまま先に契約を締結し、その後に店舗候補物件探しを開始するところが、わが国におけるフランチャイズ契約の標準的な内容と異なる特徴を形成しており、異彩を放つものであった。
被控訴人FFは、平成一一年の設立直後は、被控訴人VLと協力して東京地区への展開を開始し、東京地区における直営店方式による「まいどおおきに食堂」の経営及び東京地区におけるフランチャイズチェーン本部の運営(加盟店募集、店舗運営のノウハウの指導等、プライベートブランド商品の提供など)に着手した。被控訴人FFは、フランチャイズチェーン本部の運営業務のうち、①加盟店募集業務、及び②店舗運営ノウハウの指導等の業務のうちスーパーバイジング業務(加盟店を訪問するなどして店舗経営・運営のノウハウを指導・管理する業務)を被控訴人VLに委託した。この委託契約に基づき、加盟店からの加盟金収入やロイヤリティ収入の一定割合が、報酬等の名目で被控訴人FFから被控訴人VLに支払われていた。したがって、契約締結数及び加盟店数の増加は、被控訴人FFのみならず、被控訴人VLの売上げや利益の増加をももたらすものであり、被控訴人VLにも契約締結数を増加させる動機があったものと推認される。
イ 直営店の苦戦
被控訴人FFは、首都圏におけるまいどおおきに食堂(直営店及びFC店を含む。)の店舗数の急速な増加策をとることとしたが、平成一一年の設立直後においては、被控訴人VLと協力して、まず、東京都内における直営店の開店に努めた。直営店設置の目的は、FC店のモデルになること、店舗運営のノウハウを蓄積してFC事業に貢献すること及び直営店においてFC店の従業員の研修を実施することであった。
平成一二年以降直営店の開店が続いたが、開店した直営店には、立地が悪いなどの理由で経営が思わしくない店(神田司町店、神田明神店、百人町店、東新宿店など)が多かった。そのため、直営店の経営立て直しが被控訴人FFの社員の重要な仕事の一つとなったが、努力にもかかわらず、立地の悪さなどから、再建できずに閉店に至る直営店も多かった。このような直営店の店舗物件探しの過程で、被控訴人らは、立地の良い物件を探すのが容易でないことを知った。
ウ FC契約締結数の急増(加盟金収入の増加)とFC店の開店難
被控訴人FFは、平成一二年以降、加盟店募集業務の委託先の被控訴人VLと協力して、法人企業(業種を問わない。)を対象とする加盟店募集を積極的に行い、加盟契約件数及び加盟店数の急速な増加に力を入れた。その結果、東京地区の加盟契約締結件数は急激に増加した。
加盟契約締結件数の急激な増加に伴い、FC店の開店数も増加をみたが、開店数については、加盟契約数の増加ほどの勢いはなかった。そして、加盟契約を締結して高額の加盟金(一店舗当たり五〇〇万円から八〇〇万円まで)を支払ったのに、店舗物件が確保できないなどの理由で開店できない加盟店が、急激に増加していった。控訴人らの調査(甲一四)によれば、平成一三年六月時点で判明した契約済みの三一エリア(開設の権限が付与された店舗軒数は四九)のうち、当初契約エリアで平成一八年までの間に開店することができたものは、半数を大きく下回る一〇エリア、一〇店舗にとどまる。いったん開店した一〇店舗のうち平成一八年までの間に閉店した店舗数は、半数近くの四店舗にのぼる(なお、契約済みであるのに開店できない加盟店が非常に多いという調査結果は、公知の事実である被控訴人FFの有価証券報告書の記載と合致し、信用することができる。)。
したがって、東京進出初期の被控訴人FFのFC事業における収入は、開店できないためにロイヤリティを支払わない加盟店が多数存在していたから、加盟金収入がロイヤリティ収入などをしのいで売上高の重要な部分を占めていたものと推認される。また、加盟店が実際に開店できるかどうかにかかわらず、契約締結数を増やせば増やすほど、売上、純利益、純資産などの数値が好成績を残すという仕掛けになっていたものと推認される。
エ ヘラクレス市場上場の異例の早期実現
被控訴人FFは、株式会社設立後わずか三年という異例の短期間で、平成一四年一二月に、大阪証券取引所のヘラクレス市場(グロース市場)に、その発行する株式を上場した。ヘラクレス市場(グロース市場)は、事業規模は小さいが潜在的成長性に富んだ新興企業を対象とする市場であることは公知の事実である。
そして、上記上場に当たり大阪証券取引所が被控訴人FFの上場審査をした際には、被控訴人FFの平成一二年及び平成一三年の事業実績が審査の対象となり、加盟金収入の大幅な増加による純利益、純資産等の数値の好成績が、設立後わずか三年という異例の短期間での上場の実現に貢献したものと推認される。
オ 本件FC契約の標準的な内容
東京地区における平成一二年ころの「まいどおおきに食堂」フランチャイズ基本契約における標準的な加盟金の額は一店舗当たり五〇〇万円(平成一三年は六〇〇万円、平成一五年は八〇〇万円)であり、標準的な契約の内容は、次のとおりである。なお、「神楽食堂串家」フランチャイズ基本契約の内容も、これと同様である。
(ア) 被控訴人FFは、加盟店に対し、所定の区域(通常は鉄道駅を中心とする半径五〇〇メートル以内の区域)に、「ごはん家まいどおおきに食堂」を一店舗(又は複数店舗)開店する権限を付与する。
(イ) 加盟店と被控訴人FFは、主従関係の存在しない独立した事業主体として経営に専念する。加盟店は、契約店舗の運営が全て加盟店自身の独立した自己責任に基づく判断と営業努力によって行われるものであることを十分に自覚し、その成否は加盟店の運営努力にかかるものであることを了解の上本チェーンに加盟するものとする。
(ウ) 加盟店は、契約締結の日から一一箇月以内に、(ア)の区域内において、自己の責任と費用分担により開店場所(候補物件)を確保する。被控訴人FFは、加盟店の要請又は自らの判断により開店場所の選定等に関して適宜立地診断等の助言を与えることができ、加盟店は助言を前提として候補物件を選定する。助言の有無内容にかかわらず、加盟店は候補物件確保の責任を負い、候補物件の選定に関する最終責任は加盟店が負う。
加盟店は、候補物件を確定しようとする場合には、物件概要を被控訴人FFに書面で届け出た上で、被控訴人FFと店舗開設契約を締結するものとする。
(エ) 加盟店は契約締結時に所定の加盟金を支払い、この加盟金は、理由の如何や契約店舗の開設又は営業開始の有無を問わず、一切返金しない。加盟店は加盟保証金一〇〇万円を被控訴人FFに預託し、加盟店申出による中途解約の場合を除き、契約終了時に加盟店が被控訴人FFに負う債務の額を控除して返還される。
(オ) 加盟店は、加盟店の売上月額の六%をロイヤルティ(うち二%はコンピューターシステム使用料)として、翌月末日までに被控訴人FFに支払う。
(カ) 被控訴人FFは、加盟店に対し、契約店舗の運営につき、次の指導援助を行う。
① 開店に関する業務
② 店舗の設計・施工、設備・備品類の備置、それらの改善及び改装
③ 食材及び商品提供、受発注業務
④ 提供する料理メニュー、商品構成
⑤ 従業員の採用、教育研修
⑥ 販売促進活動及び広告宣伝活動
⑦ 経営及び会計業務
⑧ その他契約店舗の運営
(キ) 加盟店は、契約店舗の開店に先立ち、被控訴人FFが実施する加盟研修に、加盟店の費用負担で、加盟店の代表者本人又は専属従業員を参加させ、被控訴人FFから加盟研修の終了認定を受けることを条件として、契約店舗を開店することができる。
(ク) 加盟店は、本チェーンの統一性保持のため、設備、什器備品、ディスプレイ、ユニフォーム、料理メニュー、価格等について、被控訴人FFの定めた仕様、指示等に従うものとする。
(ケ) 契約期間は、契約締結日より五年間とする。期間満了の一二〇日前までに書面による更新しない旨の意思表示がない場合には、同一内容で自動的に三年間更新されるものとし、以後の期間満了の際も同様とする。
(コ) 加盟店は、契約期間中及び契約終了後二年間は、契約店舗と同一又は類似する営業を自ら行い、若しくは第三者をして行わせてはならない。加盟店がこの競業避止義務に違反した場合は、加盟金の三倍相当額を被控訴人FFの請求後三〇日以内に被控訴人FFに支払う。
(サ) 本契約締結後一一箇月以内に、(ウ)に従い契約店舗の開店場所が確定されず、又は本部の責任以外の原因により契約店舗の開店もしくは契約店舗建築(内装を含む)の着工に至らない場合は、被控訴人FFは、本契約を無催告解除できる。
(シ) なお、被控訴人FFと控訴人X3社との間の本件FC契約についてはSVに関する次の内容の規定があった。(甲B一、二)
① SVは、加盟店に対し、店舗運営の全般にわたり、臨店、エリアごとの会議、テレビ会議、電子メール及び電話等の方法により継続的指導を行い、加盟店から要望があった場合は、上記の方法で個別指導を行う。
② SVが継続的指導及び個別指導により臨店を行う場合、加盟店はSVの交通費・宿泊費を被控訴人FFに支払い、SVが個別指導により臨店を行う場合には、さらに、被控訴人FF所定のSVの日当を被控訴人FFに支払う。
カ 加盟店へのマニュアルの交付
被控訴人FFは、加盟店に対し、契約締結後、「ごはん家まいどおおきに食堂フランチャイズマニュアルVol.1」及び「ごはん家まいどおおきに食堂フランチャイズマニュアルVol.2」を交付した。
経験者の援助無く素人だけで飲食店を営業することは、上記のようなマニュアル文書がなければ困難であるが、当時のわが国のフランチャイズチェーンの一般水準からみて、被控訴人FF作成のマニュアルは、格別に優れたものではなく、むしろ陳腐なものであった。加盟金やロイヤリティの額に割高感を持つ加盟店においては、これらのマニュアルに物足りなさを感じる加盟店が多かった。
キ 東京地区におけるFC店の開店難の実情
加盟店募集の段階における被控訴人らの勧誘担当者の説明は、加盟店自身が物件を探すのと同時に、加盟店が被控訴人VLに対して物件探索依頼書を提出すれば被控訴人VLも物件探索を行う(被控訴人VLは賃料一箇月分相当額の成功報酬を受領する。)ことになっており、被控訴人VLは約三〇〇〇店の不動産業者と連絡をとり、常時三〇名のアルバイトが物件を探索するので、被控訴人VLに頼めば物件は見つかるから心配ないというものであった(乙D六八参照)。加盟店は、店舗候補物件を調達せずに先に契約を締結するのであるから、店舗物件の確保ができずに開店できなかった場合であっても加盟金を没収される(加盟金の返還請求ができない。)というリスクを負うこととなり、このリスクを認識していたが、被控訴人らの店舗物件の確保は心配ないという前記の説明があったため安心して、物件が見つからないことは通常はない(見つからないリスクは小さい。)と考えて、本件FC契約を締結した。
実際には、店舗物件を確保しないで本件FC契約を締結した加盟店は、軒並み店舗の確保に苦戦した。自ら物件を見つけることができず、被控訴人VLに探索を頼んでも物件が見つからず、開店できない加盟店が続出した。当初契約で予定されたエリア内では立地条件の悪い物件しか確保できない場合もあった。
店舗物件を確保できないまま契約後一一箇月経過すると、被控訴人FFが契約の解除権を取得し、加盟店は、いつ契約を解除されても文句が言えないという不安定な地位に置かれた。
当初契約で予定されたエリア内では物件が見つからないところ、被控訴人FFがエリア外の物件を紹介してきたため(弁論の全趣旨によれば被控訴人FFが店舗物件を確保できない加盟店用に留保していた物件と推認することができる。)、契約内容(出店エリア)を変更して、被控訴人FFに紹介された場所で開店する場合があった。
店舗物件が見つからず、エリア変更も行わずに、開店することができないまま、契約を解除され又は契約期間を終了する(いずれも加盟金は没収される。)場合もあった。
ク 立地診断
加盟店は、自ら見つけたか、被控訴人VLの紹介によるかを問わず、候補物件が見つかると、被控訴人VLによる有料(一〇万円又は一五万円)の立地診断を受けることとなっていた。そして、立地診断に合格しなければ、店舗候補物件を確保したことにはならず、オ(ウ)の店舗開設契約の締結に応じてもらえないことになっていた。開業準備説明会資料(乙D六八)には、被控訴人VLが実施する有料(一〇万円~一五万円)の立地診断を必ず受けるべきこと及び「診断の合格が出た店舗のみが出店可能店舗となります」との記載がある。
立地診断は、おおむね次のようなものであった。
「最低基準クリア評価」と「正式立地診断」の二段階に分かれる。
「最低基準クリア評価」においては、①半径五〇〇メートル内についての人口総数又は従業者数のいずれかの基準値をクリアし、かつ②歩行者店前通行量についての昼間又は夜間のいずれかの基準値をクリアし、かつ③車からの視認性及び歩行者視認性の基準値をいずれもクリアしなければならない。この条件を満たさない場合は、立地診断不可となる。
「正式立地診断」においては、時間帯別評価として、「総合」、「昼間」、「アイドルタイム(午後の閑散時間帯)」、「夜間」、「深夜」、「早朝」、「土日」の各項目ごとの評価がされ、その他の診断項目として一〇項目(「周辺店舗状況」、「店舗分布指標」、「店前道路環境」、「店前歩行者通行量」、「視認性評価」、商圏ポテンシャル評価として「基本指標」、「世帯数実数」、「世帯数比率」、「年齢別人口実数」、「年齢別人口比率」)について各項目ごとの評価がされた上で、総合評価がされるというものであった。各項目の評価及び総合評価においては、「S・Aランク(出店推奨)」、「Bランク(出店可能)」、「Cランク(出店検討可能)」、「Dランク(出店不可)」というランクが用いられた。
ケ 加盟店が開店に要する費用と開店後の収益状況
加盟店は、一店舗を開店するのに、加盟金(五〇〇万円ないし八〇〇万円)、加盟保証金一〇〇万円のほかに、什器備品等に五〇〇万円以上、店舗賃貸借の新規契約の敷金等に数百万円、店舗内装工事費用に数百万円、FC契約後開店までの期間の賃料や雇用した店長の給与等などの費用がかさみ、これら初期投資の総額は二〇〇〇万円以上に及ぶのが通常であり、これらの投資金額を銀行からの融資で調達することも、普通のことである(甲八七)。
これだけの初期投資を回収する(銀行借入の元本の返済資金を作る。)ためには、開店後、売上金額の六%相当額のロイヤリティを支払ってもなお年間数百万円程度の利益を出すことができる収益構造となることが必要である(甲八七)。そのためには、FC本部によるFC店への経営指導、援助等も不可欠である。
ところが、開店後の被控訴人FFによるFC店への経営改善のための援助は手薄であり、開店前の立地診断が甘いこともあって、初期投資を回収できる見込みのないFC店が続出した。控訴人らも同様に、初期投資を回収できる見込みがない状態で経営を続けざるを得なかった。
コ SVによる指導の実態
当初は、被控訴人VLのSVが、控訴人らを含む東京地区のFC加盟店の指導を担当した。SVによるまいどおおきに食堂FC加盟店への経営指導は、通常の経営者からみると、同種のFCチェーンのSVによる指導に比べて、内容面においてレベルが低く、指導の頻度の面において非常に手薄に感じるものであった。なお、平成一七年からは、被控訴人VLのSVではなく、被控訴人FFのSVが東京地区のFC加盟店を指導していくこととなった(乙A六の二枚目中、乙A七の二枚目下)。
控訴人らをはじめとする加盟店がSVに関して抱いていた不満の標準的な内容は、次のとおりである。
① 臨店回数が非常に少なく、数箇月以上の長期間にわたりSVの訪問がないことがある。SVが次回いつ来るのかも分からない。
② SVが頻繁に交代する。わずか二~三箇月で、次のSVに交代することすらある。交代の際、前任者との間で引き継ぎがされておらず、新任のSVに店の特徴や問題点を一から説明し直さないといけない。
③ 経験のない若手のSVが多い。良い知恵が欲しいのに、子供みたいな答えしか返ってこない。
④ SVに、飲食業についての経験、知識、能力がない。
⑤ SVに、SV業務についての経験、知識、能力がない。
⑥ コストダウン、客数や客単価増加策などを、各加盟店の特徴に応じてあみ出す力がない。
⑦ チェックリストによるチェックしかできない。創意工夫能力に欠ける。応用力がない。
⑧ 加盟店からの意見、苦情の理解、吸収能力がない。
加盟店からの意見、苦情を本部に正確に伝達する能力がない。
加盟店からの意見、苦情について、長期間放置したままで、回答が返ってこないことがある。
サ 店長研修の実態
当時(平成一二年から一五年ころまで)の東京地区のFC店は、新たに店長となる人物については、東新宿店(被控訴人FFの直営店)で店長研修を受け、調理、仕入れ、コスト管理、接客、アルバイト管理など一通りの業務をこなせるように指導教育するという建前であった。しかしながら、東新宿店には、店舗運営に必要な数の従業員(パート、アルバイトを含む。)を配置せず、FC店から派遣されてくる研修生を労働力としてあてにして店舗を運営しており、研修生がいなければ従業員不足で店舗運営に支障が生じるという実態であった。当時は、店舗数の増加(新規開店数の増加)に伴い、店長研修の需要が高く、ほぼ常時研修生がいるという状態であることから可能な措置であった。しかしながら、その実態は、直営店(東新宿店)の人件費を加盟店が負担すること、すなわち直営店による加盟店の搾取にほかならなかった。そして、被控訴人FFの社員であり、東新宿店の店長であったGは、次の研修生が引き続いて来る見込みがない場合には、前の研修生について、研修成績が悪いという虚偽の理由で研修期間を延長する(延長期間の研修生の給与も加盟店負担)という病理的な運用が、当たり前のように行われていた。
店長研修と銘打っても、アルバイトと同様に働かせるだけであるから、研修生は、店長として必要な経営ノウハウを十分身につけることができないまま研修を終了するのが実態であり、この観点からも、加盟店の営業成績向上を妨げていた。
シ 平成一六年四月の一斉値下げ、加盟店のFC本部からの離反
東京地区の加盟店は、オーナー会を結成し、互いに情報交換しつつ、結成当初は、被控訴人らと共存共栄を図るべく協調姿勢を取っていた。
オーナー会は、その一方で、被控訴人らに要望の申し入れをするようになっていった。オーナー会からの要望事項は、SVの指導力向上及び臨店回数の増加、客を飽きさせないためのメニューの変更など、被控訴人らによる加盟店支援の弱点の強化を求めるものが多かった(甲七~一一)。
しかしながら、オーナー会からの要望はもっともなものが多いのに、これに対する被控訴人らの反応は、非常に鈍かった。このような状況の下で、SVによる指導が役に立たない、メニューの変更が少なく客が飽きる、被控訴人らによる経営指導が貧弱な割にロイヤリティが高いなどの点を中心に、オーナー会(東京地区のFC加盟店)の不満が高まっていった。
平成一六年四月、被控訴人FFは、まいどおおきに食堂の価格一斉値下げを実施した。客単価を下げることにより、来客数を大幅に増加させて、売上額を大幅に上昇させることを企図したものであった。しかしながら、客数の増加は実現せず、売上額は減少した。値下げと同時に何らかのコストダウン策が実施されたわけではなかったため、各加盟店は損益の悪化に苦しむこととなった。オーナー会においては、ロイヤリティの減額、仕入れ原価の圧縮その他の経費の縮減などの要望が増えていった。また、平成一六年四月の一斉値下げによる各加盟店の経営困難を原因として、まいどおおきに食堂のフランチャイズから脱退する加盟店も目立つようになった。
平成一六年九月三日には、オーナー会の代表とB社長との面談も行われ、B社長が現場の実態を知らないことが明らかになっていった。
ス 神楽食堂串家フランチャイズ
被控訴人FFとフランチャイズ基本契約を締結して神楽食堂串家を開店した店舗についても、閉店が相次いでおり(甲六九)、まいどおおきに食堂と同様の事態であったものと推認される。
(2) 控訴人X1社
ア 控訴人X1社の代表取締役であるAは、昭和五〇年から昭和六三年まで、日本における創業まもないころのセブン・イレブン・ジャパンにSVとして勤務し、加盟店の指導教育業務の幹部の地位にあった。昭和六三年に独立して、セブン・イレブン加盟店の経営指導を主たる業務とする控訴人X1社を設立し、平成五年には警備業を営む株式会社X1社警備システムを設立した。グループ内の従業員に高齢者が多いことから、高齢者でも従事できる和食の飲食業に注目していたところ、平成一一年六月ころ、Bが大阪で営む「まいどおおきに食堂」が、高齢者でも従事できる業態として、フランチャイズ方式で全国展開予定という内容の新聞記事を見たことがきっかけで、興味を持ち、大阪に行って、食堂を視察したり、説明を受けたりした。
平成一一年一一月の被控訴人FF設立後、Aに対する勧誘担当となった被控訴人VLの店舗開発担当のH(女性)は、JR荻窪駅エリアが、学生やサラリーマンの乗降客が多いので最適立地であると説明し、荻窪エリアについてのFC契約締結を勧めた。荻窪エリアにおける店舗候補物件の確保については被控訴人VLが良い物件を紹介するから大丈夫であるとHが言うので、Aは、店舗候補物件が確保できないリスクは小さいものと判断して、本件FC契約を締結することを決意した。Aは、平成一二年五月三〇日に、被控訴人FFとの間で、本件FC契約を締結し、JR荻窪駅を中心とする半径五〇〇メートルのエリアにまいどおおきに食堂を二店舗(駅の南北に各一店ずつ)開店する権限の付与を受けた。控訴人X1社は、被控訴人FFに、加盟金一〇五〇万円(一店舗当たり五二五万円)と加盟保証金二〇〇万円(一店舗当たり一〇〇万円)を支払った。なお、加盟保証金合計二〇〇万円は、後日控訴人X1社に返還された。
控訴人X1社は、平成一二年五月三〇日に契約を締結すると、直ちに、二店舗分の店長二名を採用し、この二名を一箇月の店長研修に派遣した。
イ 控訴人X1社は、契約を締結すると、直ちに、荻窪エリアにおいて店舗候補物件探しを開始した。Aは、荻窪地域の不動産仲介業者をしらみつぶしに四〇軒程度訪問した。しかしながら、当時、外食産業は競争が激しく、外食産業の店舗に適した物件についても激しい獲得競争が繰り広げられていた。まいどおおきに食堂のように東京地区になじみのない外食チェーンは、その中で劣勢を強いられており、Aは、店舗候補物件を全く見つけることができなかった。ある仲介業者からは「X1社さんに紹介できる物件が出てくるのには、五、六年かかりますよ」と言われる始末であった。控訴人X1社は、FC契約締結と同時に、物件探索依頼書を提出して店舗候補物件の探索を被控訴人VLに依頼したが、被控訴人VLも、荻窪地域での店舗候補物件を見つけることができなかった。Aは、契約締結後一一箇月以内に店舗候補物件を確定させないとFC契約の解除事由となり、契約解除の場合には加盟金一〇五〇万円が没収され、雇用した店長二名の人件費も完全に無駄になり、巨額の損害が発生するというリスクに直面した。
Aは、被控訴人FFのBに店舗が見つからない件について相談したところ、Bから「荻窪エリアにこだわる必要はない。空いている他の地区で物件を見つけて出店すればよい。」と言われた。Aは、被控訴人VL立地開発部のIから中央区新川二丁目のbビル一階を、荻窪店の一店目の代替物件として紹介を受けた。加盟金の没収を恐れたAは、この話に飛びついた。なお、この中央区新川の物件は、被控訴人FFが店舗物件が見つからない加盟店のために留保していた物件であると推認され、既に他の加盟店から立地が悪いとして開店を断られた物件であった。
ウ 被控訴人らは、平成一二年一二月八日付けで中央区新川二丁目bビル一階の店舗候補物件の立地診断報告書(乙D二)を作成した。立地診断報告書の内容は、下記のとおりである。
「最低基準クリア評価」
① 半径五〇〇メートル内についての従業者数の基準値をクリアした(人口総数の基準値はクリアしなかった。)。
② 歩行者店前通行量について昼間及び夜間の基準値をクリアした。
③ 車からの視認性も歩行者視認性も基準値をクリアしなかった。
③の基準をクリアしていないため、立地診断不可の判定となるはずであった。
「正式立地診断」
① 時間帯別評価では、Bが三個(昼間、アイドルタイム及び夜間)、Cが一個(深夜)、Dが二個(早朝及び土日)であったが、総合評価はBであった。
② 項目別評価では、Aが一個(年齢別人口比率)、Bが一個(世帯数比率)、Dが八個(周辺店舗状況、店舗分布指標、店前道路環境、店前歩行者通行量、視認性評価、商圏ポテンシャル評価の基本指標、世帯数実数、年齢別人口実数)であった。
③ 立地診断総合評価は、B(出店可能)であった。
この立地診断報告書(乙D二)には、次のような不可解な点があった。
「最低基準クリア評価」をクリアしていないから、「正式立地診断」に進むまでもなく立地診断不可の判定となるはずであるのに、立地診断不可の判定がされていない。
立地総合評価がB(出店可能)であることは、項目別評価で一〇項目中八項目がD(出店不可)であることからみて、常識では考えられない高評価である。また、総合評価の欄の「人口総数は低いデータが出ていますが昼間人口においては基準値をはるかに上回る事を考え合わせれば出店検討は可能と考えられます」という記述も、項目別評価一覧で一〇項目中八項目がD(出店不可)であることからみて、客観的評価とはかけ離れた記述である。仮にこの記述を容認するとしても総合評価はC(出店検討可能)にとどまるはずである。
時間帯別評価の総合評価がBであることは、時間帯別評価の六項目中、Bが三個にとどまり、Cが一個、Dが二個もあることからみて、バランスを欠く評価である。
総合評価の欄には、「人口、昼間人口共に基準値を大きく上回る地域です」という記述と、「人口総数は低いデータが出ています」という記述があり、「人口」と「人口総数」は同一の意味の用語であるとみられることから、この点についての記述が相互に矛盾している。
また、基礎データが同一であるにもかかわらず、「最低基準クリア評価」においては車からの視認性が三点、歩行者視認性が三・五点であるのに、「正式立地診断」においては車からの視認性が五点、歩行者視認性が五点となっており、結論が相互に矛盾している。
控訴人X1社は、立地診断総合評価(B、出店可能)を信じて新川店への出店を決め、平成一三年二月二五日に新川店を開店した。
エ 控訴人X1社は、新川店と同様に、被控訴人VL立地開発部のIから、荻窪店の二軒目の代替物件として、控訴人X1社の本社所在地近くの渋谷区幡ヶ谷の不動産の紹介を受けた。加盟金の没収を恐れたAは、この話にも飛びついた。
被控訴人らは、渋谷区幡ヶ谷二丁目の店舗候補物件の立地診断報告書(乙D一〇)を作成した。立地診断報告書の作成日付は不明であり、その内容は、下記のとおりである。
「最低基準クリア評価」
① 半径五〇〇メートル内についての人口総数の基準値をクリアした(従業員数の基準値はクリアしなかった。)。
② 歩行者店前通行量について昼間の基準値をクリアした(夜間の基準値はクリアしなかった。)。
③ 車からの視認性は基準値をクリアしなかったが、歩行者視認性は基準値をクリアした。
③の基準をクリアしていないため、立地診断不可の判定となるはずであった。
「正式立地診断」
① 時間帯別評価では、Aが一個(昼間)、Bが二個(夜間及び土日)、Cが二個(深夜及び早朝)、Dが一個(アイドルタイム)であったが、総合評価はAであった。
② 項目別評価一覧では、Sが一個(世帯数実数)、Aが二個(店前道路環境、世帯数比率)、Bが一個(視認性評価)、Cが二個(店前歩行者通行量、年齢別人口比率)、Dが四個(周辺店舗状況、店舗分布指標、商圏ポテンシャル評価の基本指標、年齢別人口実数)であった。
③ 立地診断総合評価は、A(出店推奨)であった。
この立地診断報告書(乙D一〇)には、次のような不可解な点があった。
「最低基準クリア評価」をクリアしていないから、「正式立地診断」に進むまでもなく立地診断不可の判定となるはずであるのに、立地診断不可の判定がされていない。
立地総合評価がAであることは、項目別評価一覧でSが一個、Aが二個にとどまり、Dが四個もあることからみて、著しくバランスを欠く評価である。
時間帯別評価の総合評価がAであることは、時間帯別評価の六項目中、Aが一個にすぎず、B及びCが各二個、Dが一個であることからみて、常識では考えられない高評価である。
控訴人X1社は、立地診断総合評価(A、出店推奨)を信じて幡ヶ谷店への出店を決め、店舗内装工事を開始したところ、当該物件が違反建築であったことから、店舗として使用を予定していた四〇坪の貸室のうち二〇坪分が使用できなくなり、予定していたバックルーム(物品保管庫、事務所、更衣室)を設置できない状態で開店せざるを得なくなった。
平成一三年六月二五日に幡ヶ谷店を開店した。
オ 平成一五年七月、被控訴人VLは、まいどおおきに食堂の全店売上アップ・赤字ゼロを実現するため、被控訴人VL社員が新川食堂に来て大量の弁当を買い付けたほか、形式的に売上げを増加させるため、食品庫にある食材(米、味噌、調味料等)まで買い付けていったことがあった。
カ 控訴人X1社は、平成一七年一月一五日、被控訴人FFに対して、書面による契約を更新しない旨の意思表示を行い、期間満了(平成一七年五月二九日)の一二〇日前に更新しない通知をしたことから、FC契約は、新川店についても、幡ヶ谷店についても、平成一七年五月二九日の経過をもって終了することとなった((1)オ(ケ)参照)。
キ 新川店と幡ヶ谷店の開店後の経営指導は、被控訴人FFから委託を受けた被控訴人VLのSVが担当することとなっていた。
新川店についても、幡ヶ谷店についても、平成一三年の開店時から平成一四年末までの間は、SVが臨店した記録すら残っていない。Aの記憶によれば、被控訴人VLから派遣されるSVは経験のない若者であり、料理も、仕入れコストなどのコスト管理も何もできず、二~三箇月に一回程度しか臨店せず、いつ来るかも分からず、指導に継続性がなく、気付いたことをしゃべるだけで改善方法を伝えず、その店に合ったやり方が指導できないというものであり、真実を伝えるものと推認される。
ク 新川店についての平成一五年以降の臨店状況は、次のとおりである。
平成一五年には、被控訴人FFの直営店である東新宿店(研修担当店)の店長でトレーナーであったGが、同年六月ころまで臨店担当となったが、次回いつ来るのかも分からず(乙D四七の臨店指導報告書の次回臨店日時欄は空欄である。)、店舗チェックリストに記載されている事項の形式的なチェックが中心であり(乙D四三、四四、四六、四九、五〇)、加盟店の指導よりも被控訴人らの社内向けの自己の指導実績の報告に熱心であった(乙D四五、四八)。Gの作成した社内報告(乙D四五)に「コストコントロール、特に人件費の重要性と低減方法を説明した」とあるが、被控訴人らの指導する人件費の低減方法とは、売上実績が予想を下回るようなときには、一度決定したアルバイトのシフト(勤務時間)を変更(勤務時間の減少)して、アルバイトへの給与支給額を減額するというものであって(「ごはん家まいどおおきに食堂フランチャイズマニュアルVol.1」(乙四)の五頁)、アルバイトの任意の同意を得られない場合の給与不支給は労働契約上問題があり、アルバイトの同意を得たとしても、いったん決定したシフトにつき一方的に雇用主から変更を申し入れるようなことをしていては、将来良質のアルバイトを確保することが困難になることは明らかであって、加盟店の利益にならない指導であった。このほか、被控訴人らは、雨が降って客が少ない日には、一度決定したアルバイトのシフト(勤務時間)を、当日に変更(勤務時間の減少)して、アルバイトを早めに帰してアルバイトへの給与支給額を減額するという指導を行っており、コンプライアンス上問題があった。
平成一五年七月以降は、前年までと同様に、臨店記録がほとんど残っておらず、JSVによる七月四日の臨店記録(チェックリストの八六番以降が削除された不自然な形態のもの。乙D二一)があるのみである。
平成一六年になると、KSVによる臨店の記録があるが(平成一六年末ころまで担当。乙D二四)、チェックリストの点検による形式的な事項の指摘が中心で、平成一六年四月の一斉値下げによる赤字に悩む控訴人X1社のニーズに応える指導はできなかった。平成一六年六月二五日に、KがベテランのLFC支援部長及びEを同行して新川店に臨店し、コストダウンのための要望や、七月二五日東京オーナー会会場の手配などをA(加盟店側)から聞いた記録があるが(乙D二五)、このことは、逆にK単独ではコストダウンそのほかの加盟店にとって切実な問題点を吸い上げて整理検討していく能力や指導能力がなかったことをうかがわせるものである。平成一六年四月の一斉値下げによる赤字に悩む加盟店をよそに、SVは頻繁に交代を繰り返した。
ところが、平成一七年一月の控訴人X1社による契約不更新通知後は、MSV及びその後任のNSVが臨店し、それまでとは比べものにならないくらいていねいな臨店報告書を作成するようになった(乙D三、四、二八ないし三〇)。
ケ 幡ヶ谷店についての平成一五年以降の臨店状況も、おおむね、新川店と同様である。
東新宿店(直営店)勤務のトレーナーであったGが、平成一五年三月三〇日、同年四月二五日及び同年六月二〇日に幡ヶ谷食堂に臨店したが、相変わらず次回はいつ来るのかも分からず(乙D三九の臨店指導報告書の次回臨店日時欄は空欄である。)、店舗チェックリストに記載されている事項の形式的なチェックが中心であった(乙D三八、四二)。トレーナー経験者であるため調理関係の指導はできたが、コストダウンそのほかの経営指導をした形跡はない。
平成一六年になると、KSVによる臨店の記録があるが(平成一六年末ころまで担当。乙D一四)、チェックリストの点検による形式的な事項の指摘が中心で、平成一六年四月の一斉値下げによる赤字に悩む控訴人X1社のニーズに応える指導はできなかった。マーケット診断(乙D一六)に至っては、作成年も作成者も不明である上に、のぼり等により視認性を高めることがリピーター増加の施策となるとの奇妙な指導内容となっている。
ところが、平成一七年一月の控訴人X1社による契約不更新通知後は、新川店と同様に、MSV及びその後任のNSVが臨店し、それまでとは比べものにならないくらいていねいな臨店報告書を作成するようになった(乙D一一、三三ないし三五)。
(3) 控訴人X2社
ア 染色業者である控訴人X2社は、染色業の将来に期待が持てず、経営の多角化を考えていたところ、飲食業にも興味を持ち、平成一二年秋、社長のOが、被控訴人FFが開催した本件FCの説明会に参加した。
説明会において、被控訴人FF又は被控訴人VLの担当者は、被控訴人FFのノウハウとSV等の本部サポートがあるから飲食業経験のない者でも営業可能であること、売上に対する営業利益は二一%で、ロイヤリティ六%を支払っても一五%の利益が出ること、被控訴人VLの店舗確保援助システムにより適切な店舗物件が確実に確保できることなどを説明した。Oは、ロイヤリティが売上げの六%というのは少し高いと思ったが、被控訴人VLが店舗物件確保を援助してくれるので、加盟金を支払ったのに開店できないまま加盟金を没収されるリスクは小さいものと考えた。
出店エリアについては、本社所在地(東京都新宿区下落合)に近い高田馬場駅又は早稲田駅周辺が希望であったが、結局、あまりなじみのない高円寺エリア(JR高円寺駅を中心とする半径五〇〇メートルの区域)及び大塚エリア(JR大塚駅を中心とする半径五〇〇メートルの区域)を選んだ。なじみがなくても、被控訴人VLが食堂に適した店舗物件を確保してくれるであろうから安心であると考えていた。FC契約は、平成一二年一一月二一日に締結した。加盟金一〇五〇万円(一店舗当たり五二五万円。消費税込み)及び加盟保証金二〇〇万円(一店舗当たり一〇〇万円)を支払った。
イ 大塚エリアについての物件候補探しは難航し、被控訴人VLの担当者であるIは、JR大塚駅の近くの物件を見つけることができなかった。Iは、JR大塚駅からの道のりが約五〇〇メートルもある大塚エリアの外縁部に位置する物件(数十メートル先はエリアの範囲外)をようやく紹介するにとどまった。当該物件は、春日通りに面していたが、隣接する新大塚エリア(地下鉄丸ノ内線新大塚駅を中心とする半径五〇〇メートルの区域で、春日通りがエリアの中心付近を貫通している。)にも近く、将来新大塚エリアにまいどおおきに食堂が開店すると、まいどおおきに食堂同士で商圏が競合するおそれのある物件でもあった(甲A一添付の図面)。しかしながら、控訴人X2社は、後記立地診断の結論を信じてしまい、紹介を受けた物件において利益が上がるものと考えて、まいどおおきに食堂(東池袋食堂)を開店する方向で、開店の準備に入った。
ウ 被控訴人らは、大塚エリアの前記候補物件についての立地診断を行い、平成一三年四月一九日付けで立地診断報告書(乙A三)を作成し、控訴人X2社に提出した。立地診断報告書の内容は、下記のとおりである。
「最低基準クリア評価」
① 半径五〇〇メートル内について人口総数及び従業者数の基準値をクリアした。
② 歩行者店前通行量について昼間及び夜間の基準値をクリアした。
③ 車からの視認性及び歩行者視認性については、いずれも基準をクリアしなかった。
③の基準をクリアしていないため、立地診断不可の判定となるはずであった。
「正式立地診断」
① 時間帯別評価では、Bが一個(深夜)、Cが三個(アイドルタイム、夜間及び土日)、Dが二個(昼間及び早朝)であったが、総合評価はCであった。
② 項目別評価一覧では、Sが三個(世帯数実数、世帯数比率及び年齢別人口実数)、Bが一個(店前道路環境)、Cが一個(年齢別人口比率)、Dが五個(周辺店舗状況、店舗分布指標、店前歩行者通行量、視認性評価、商圏ポテンシャル評価の基本指標)であった。
③ 立地診断総合評価は、C(出店検討可能)であった。
この立地診断報告書(乙A三)には、次のような不可解な点があった。
「最低基準クリア評価」をクリアしていないから、「正式立地診断」に進むまでもなく立地診断不可の判定となるはずであるのに、立地診断不可の判定がされていない。
項目別評価一覧の一〇項目のうち半数の五項目がD(出店不可)であるのに、総合評価がC(出店検討可能)となったことは、バランスを欠く評価である。
エ 東池袋食堂の開店予定が平成一三年の夏過ぎころに見込まれるようになり、高円寺エリアでの店舗物件が確保できていなかったにもかかわらず、被控訴人FFのP部長のアドバイスにより(被控訴人VLの店舗開発担当者も高円寺エリアは開店できると言っていた。)、控訴人X2社は、二店舗用の要員として店長候補者を二名採用し、被控訴人FFの直営店である東新宿食堂に店長研修に派遣した。しかしながら、前記認定のとおり、その研修の実情は東新宿食堂の本来の店員と同様に働かされるだけのものであって、店長としての調理、仕入れ、コスト管理、接客、アルバイト管理などの経営ノウハウを十分に身につけることができず、東池袋食堂の営業成績が伸びなかったことの一つの原因となった。
オ 平成一三年ころは、被控訴人FFの東京進出と急激な加盟店増加策に伴うまいどおおきに食堂の新規開店ラッシュの状況にあり、店舗内装の設計業務、施工業務が遅延していた。設計は、社長のBの承諾がなければ最終確定しないという仕組みとなっており(この点において、設計遅延による売上げ、利益の減少は被控訴人FFの責任であるが、これにより増加するコストは加盟店が負担させられた。)、設計の完成予定が一箇月も二箇月も延びることが常態化していた。東池袋食堂に関しては、被控訴人FF側の都合により、五回以上も設計変更があった。開店遅延期間中の店舗の賃料や雇用済みの店長、アルバイトの給与は加盟店の負担となり、加盟店の経営を圧迫することとなった。しかしながら、被控訴人FFは、そのような加盟店の窮状には目を配ろうとしなかった。
カ 被控訴人VLの立地開発担当者Iは、控訴人X2社に対して、東池袋食堂の損益分岐点は、売上月額五四〇万円であろうと予測し、売上月額五四〇万円は実現可能であると述べていた。
平成一三年一一月六日、大塚エリア内に東池袋食堂を開店した。東池袋店は、開店月である平成一三年一一月(営業日数は二五日)は一日平均二一万四〇七六円(三〇日分に換算すると六四二万二二八〇円)の高い売上げを示した。しかしながら、一般的に、開店直後は、試みに店を訪れる客が多くなるため、売上額が高くなるのは当たり前のことであり、その後の客数や売上の減少をいかに少なく食い止めるかが経営上のポイントとなるものである。しかしながら、控訴人X2社は、この東池袋食堂が開店直後の好成績を収めている時期である平成一三年一一月二八日に、出店エリアを荻窪とする串家FC契約を締結してしまった。被控訴人VLの開発部門の人間に、串家も加盟店の数が増えており、被控訴人VLの援助があるから店舗物件の確保は容易であるし、もう少したつと加盟金の額も値上がりするから今入った方がよいと言われて、加盟金六三〇万円(消費税込み)及び加盟保証金一〇〇万円を支払って加盟したものである。
キ 控訴人X2社は、被控訴人VLの担当者の説明により、高円寺エリアのまいどおおきに食堂と荻窪エリアの神楽食堂串家の店舗物件の確保は、確実であると考えていた。高円寺エリアについては、被控訴人VLの作成したエリア一覧表においては「推奨エリアベスト10」に入っており(甲二)、首都圏で数十ある候補エリアのうち一〇位以内の収益力があるエリアであると広告宣伝されていた。
しかしながら、高円寺エリアのまいどおおきに食堂、荻窪エリアの神楽食堂串家については、被控訴人VLがまともな候補物件を紹介しないために、店舗物件が見つからないまま推移した。被控訴人VLは、立地条件の悪い物件をいくつか紹介したことがあったが、控訴人X2社は、当然のことながら、これを断った。
さらに、被控訴人FFは、高円寺エリアの代替物件として、直営店であるまいどおおきに食堂神田司町店を控訴人X2社が譲り受けて経営することを申し入れたが、神田司町店は利益のあがっていない店であったため、控訴人X2社はこれを断った。
ク 東池袋店の営業成績、SVによる指導
東池袋店は、平成一四年一一月までは、売上月額が四七二万円から六一六万円までの範囲内で推移した。しかしながら、平成一四年一二月以降は売上月額が五〇〇万円を超えることがなくなり、売上月額が四〇〇万円を下回ることも珍しくなくなり、赤字の月が増えていった。一日当たりの来客数も、平成一四年一一月までは二二六名から二六九名までの範囲内で推移したが、平成一四年一二月以降は二〇〇名を下回る月が圧倒的に多くなっていった(甲A四、五)。
売上減少の原因は、一つには被控訴人FFのFC本部が決めるメニューのマンネリ化により客に飽きられて常連客が離れていくこと、他方においては店長が店長研修において十分な経営ノウハウを身につけることができないことがあった。担当のSVに本部の統一メニューの多様化や、各店舗に独自メニューを認めることを意見具申しても、FC本部からの検討結果が返ってくることはなかった。当時の被控訴人FFのFC本部は、新規加盟契約の締結には熱心であったが、既存の加盟店の苦情にまともに応えていくという意識に乏しかった。
ケ 東池袋食堂は、開店当初の時期においては、SVによるまともな経営指導をほとんど受けることができなかった。SVは、臨店回数が少なく、臨店しても適切な指導をすることができず、経営改善のためにはほとんど役に立たない状態であった。東京地区において、まいどおおきに食堂の店舗数が急増したにもかかわらず、被控訴人FFからの委託を受けてSVを派遣することになっていた被控訴人VLが、SVの質及び量の整備や臨店記録の作成などの業務執行方法の整備を怠っていたためであった。平成一三年一一月の開店から約二年間の間の臨店記録は、証拠提出すらされていない状態である。
コ 控訴人X2社は、平成一七年八月一八日付けの書面をもって、被控訴人FFに対して本件FC契約を解除する旨通知し、東池袋店を閉店した。
(4) 控訴人X3社
ア 静岡県内で飲食店チェーンなどを経営するa社は、被控訴人FFのまいどおおきに食堂チェーンの加盟店となり、平成一三年六月に上野店を、平成一四年六月に門仲店を開店し、(1)シ記載のオーナー会にも加盟していた。a社は、店舗展開を静岡県内に集中することに経営方針を変更し、上野店及び門仲店を一括して譲渡する方針を立てて、被控訴人らにもその旨伝えたことから、被控訴人らにおいて、譲渡先を探していた。上野店は、開店後の最初の一年間(平成一三年七月から平成一四年六月まで)は売上げも好調であったが、平成一四年七月からは売上げの減少に苦しむようになっていた。門仲店は、平成一四年七月の開店当初から、売上げはさほど好調ではなかった。
被控訴人FFから加盟店開発業務の委託を受けていた被控訴人VLは、平成一五年春、まいどおおきに食堂チェーンの東京都内の既存の加盟店に、上野店及び門仲店の一括譲受を打診した。しかしながら、オーナー会の中では上野店も門仲店も利益が見込めないという情報が広がっていたことや、当時まいどおおきに食堂についての被控訴人らの経営指導が不十分であり、その割にロイヤリティが高いという不満を持つ加盟店(オーナー)が多かったこともあって、既存加盟店からは譲受に応じる者は出なかった。
イ 控訴人X3社は、飲食店チェーンなか卯のフランチャイズ加盟店として、東京都内でなか卯の店舗を数軒経営している会社であったが、狂牛病問題などを経験して、単一事業だけの経営に不安を感じるようになり、事業の多角化、新規事業への参入を検討し始めた。
控訴人X3社の社長であるFは、飲食業の事業拡大(店舗数拡大)の検討の際には、①新規出店よりも既存店買収の方法により新規参入のリスクを軽減すること、②対前年比で売上が増加しており将来の成長が見込める店舗を買収すること、という方針を有していた。また、Fは、既存店舗の譲受の検討の際には、直近の損益計算書の売上額と経費を重視し、直近の売上額を前提にして、自己の経験とノウハウにより経費をどの程度削減できるか、その結果損益の改善がどの程度見込めるかという点を、検討の中心としていた。Fは、当該既存店舗の開店当初の売上額は当てにならないし(試しに訪れる客の存在などから高めの額が出るのが通常である。)、一年以上も前の売上高もその後の事情の変化の影響を反映していないから当てにならないと考えていた。この判断は、わが国の都市部における一般消費者相手の事業経営に関しては、経済常識にかない、常識的、合理的判断であるということができる。
控訴人X3社は、平成一五年春、被控訴人VLのD(店舗開発担当)からまいどおおきに食堂の既存店舗の営業譲渡を受ける話を勧められ、検討を開始した。
Dは、Fに対して、本件FCにはSVの経営指導を初めとする様々な加盟店サポート体制があり、経営不振店に対しても十分な営業支援が受けられるという説明をした。
Dは、まず、被控訴人FF直営店の神田明神店と東新宿店をFに紹介し、両店の直近の損益計算書のデータを閲覧させた。Fは、神田明神店は売上額が低いことを理由に、東新宿店は売上額は高いものの店舗面積が広いため高額の固定経費(家賃等)の削減が困難で損益改善の見込みがないことを理由に、いずれも譲り受けを断った。
ウ その後の平成一五年夏ころ、Dは、まいどおおきに食堂の既存店の経営者に譲受を断られたa社経営の上野店及び門仲店について、両店を譲り受けてはどうかとFに申し入れた。
a社経営時代の上野店の売上月額の推移は次のとおりであった。
平成一三年八月以降平成一四年の年末までは、毎月売上月額が九〇〇万円を超え、一〇〇〇万円を超える月も七回あった。ところが、平成一五年一月以降は売上月額が七〇〇万台又は八〇〇万円台になり、七〇〇万円台の月も年の半分を占めた(一月、二月、六月、八月、九月、一一月)。平成一六年に入ると、売上月額は、恒常的に七〇〇万円台になった。
Dは、平成一五年夏に、上記のとおり、上野店の直近の売上月額が七〇〇万台又は八〇〇万円台であるにもかかわらず、上野店は売上月額が九〇〇万円から一〇〇〇万円ある店で利益を出せる、門仲店は厳しい状況であるが、両店ともSVのバックアップがあれば必ず売上は伸びるという虚偽の説明をした。上野店が黒字なのに譲渡する理由については、a社が首都圏撤退、静岡県内出店集中という方針を立て、両店の一括譲渡を希望しているからであると説明した。
Fは、自己の方針に従い、Dに対して、上野店及び門仲店の直近一年間(平成一四年七月から平成一五年六月まで)の損益計算書の閲覧を求めた。これに応じてDがFに閲覧させた損益計算書は、門仲店については直近一年間のものであったが、上野店については平成一三年七月から平成一四年六月までのもの(売上月額が九〇〇万円から一〇〇〇万円程度のもの)であり、これを直近一年間のものと偽って閲覧させた。これらは、いずれもa社作成のものであり、Dのノートパソコンの画面で閲覧した。Fは、両店のうち上野店の直近一年間の損益計算書を印刷して交付することを求めた。Dは、これに応じて印刷した平成一三年七月から平成一四年六月までの上野店の損益計算書(甲B三)を、直近一年間のものと偽ってFに交付した。
Fは、上野店は売上月額九〇〇万円程度あれば自己の経営術により利益を出すことができるし、門仲店は利益を出すことは難しいが経営の足を引っ張ることはないだろうと考えて、両店の一括譲受に応じた。
平成一五年一〇月九日ころ、控訴人X3社のF並びに被控訴人VLのD及びE(SV)との間で、上野店及び門仲店の譲受による控訴人X3社のFC加盟についての話し合いがもたれたが、その際平成一五年一月から七月までの上野店及び門仲店の損益計算書(丙二、正しい金額が記載された被控訴人VL作成のもの)がFに示されたことを認めるに足りない。
平成一五年一〇月一五日ころ、Fは、被控訴人VLのDとともに、a社のQ社長と面談した。このころに、平成一五年五月から同年七月までの三箇月分の上野店及び門仲店の損益計算書(正しい金額が記載されたa社作成のもの、丙五の一・二)や、同年一月から八月までの損益計算書(正しい金額が記載された被控訴人VL作成のもの、乙B八)が被控訴人VLからFに交付されたことは、これを認めるに足りない。
控訴人X3社は、平成一五年一一月二八日、被控訴人FFとの間で開店場所を上野店及び門仲店とする二個のFC契約を締結し、加盟金一六八〇万円(一店舗当たり八四〇万円、消費税込み)を支払った。また、控訴人X3社は、平成一五年一二月一一日、a社との間で上野店及び門仲店の営業譲渡契約を締結した。上野店及び門仲店は、平成一六年三月末日まではa社が経営し、同年四月一日から控訴人X3社による経営が始まった。
エ 控訴人X3社は、a社経営中の上野店及び門仲店で両店で働く予定の社員を事前研修させることを希望したが、a社の意向により実現しなかった。控訴人X3社は、開店前の平成一六年二月、両店で働く予定の社員を、研修のために直営店の東新宿食堂に派遣した。研修初日の朝の指定された時刻に東新宿店に赴いたが、東新宿店の研修担当トレーナーのGは、一時間半以上も遅刻して東新宿店に出勤してきた。その後の東新宿店における研修内容もひどいもので、研修員はGには教わりたくないという強い不満をいだくほどであった。
オ 控訴人X3社による営業が始まった日の翌日である平成一六年四月二日、被控訴人VLのDがFにメール(甲B一五、「上野六丁目食堂、門前仲町食堂PL数値をお送りいたします。」と題するもの)を送信した。メール本文の内容は、下記のとおりであり、上野店及び門仲店の開店時から平成一五年一二月までの損益計算書(正しい金額が記載された被控訴人VL作成のもの)が添付されている。
「首記の件、上野六丁目、門前仲町食堂のPLをお送りさせていただきます。昨日(控訴人X3社による営業開始の初日でSVが応援に行ったと推認される。)、Rさん(控訴人X3社の営業部長)からPLが届いてないとの事で、SVのEと確認しあいましたところ、F社長にお送りできていないことが判明しました。当方も、SVとの確認不足で、てっきりお送りいただいているものかと思いました。誠に申し訳ございませんでした。添付のファイルをご確認ください。こちらはa社さんが入れている本社の人件費などは抜いた数値となっております。」
Dは、前年の夏に上野店の虚偽の損益計算書をFに交付したこととの辻褄を合わせることを忘れて、真実の数値が記載された損益計算書を、控訴人X3社に送付してしまったのであった。
Fは、メール添付の被控訴人VL作成の損益計算書の上野店の平成一五年の売上数値が月額九〇〇万円に満たず(甲B一五)、平成一四年七月から同一五年六月までのものとして被控訴人VLから受領したa社作成の損益計算書(甲B三)の数値(月額九〇〇万円~一〇〇〇万円以上)と比べて低いことを不審に思った。平成一六年四月二日当時は、上野店及び門仲店の控訴人X3社による経営開始直後の時期で多忙であり、控訴人X3社の経営による実際の月次売上額も未だ判明していなかったため(四月分は四月末、五月分は五月末にならないと分からない。)、直ちに数値についての疑問を被控訴人VLにぶつけることはしなかった。
控訴人X3社による営業開始後一箇月を経過した平成一六年四月末の時点で、四月分の上野店の売上月額が七四八万円程度にとどまり、前年に受領した損益計算書(甲B三)における売上月額九〇〇万円以上に届かないので、Fは不審を強めた。Fは、平成一六年五月ころから、SVのEに対して、a社経営時代の上野店の各月の売上月額を確認したい旨繰り返し要求した。しかしながら、被控訴人VLは、過去に虚偽の損益計算書を交付したことが明らかになってしまうことに気付いて対応に困り、これに伴いSVのEは上野店及び門仲店への臨店を避けるようになり、平成一六年六月末には上野店及び門仲店の担当SVがEからKに交代するに至った。
カ 後任のSVとなったKは、就任直後の平成一六年七月七日に上野店に臨店した際、Fからa社経営時代の売上月額を届けるように要求を受けた(同日のKの臨店報告書(乙B二)の「SVへのご要望」欄に「上野六丁目食堂様の昔のデータを共有させていただきたい」という記載がある。)。しかしながら、Kは、なかなか売上高情報の送付に応じず、次の臨店の機会である平成一六年八月二五日(門仲店に臨店)においても、Fから再び同様の要求を受けた(同日のKの臨店報告書(乙B三)の「SVへのご要望」欄に「上野六丁目食堂様の昔のデータを共有できるか確認」という記載がある。)。Kは、平成一六年九月一日にようやく、a社経営時代の上野店及び門仲店の月別売上一覧(甲B六。損益計算書ではなく売上月額だけが記載されているもの)をメールでFに送信し、同月七日にも同様の記載のある月別売上一覧の資料(甲B四。損益計算書ではなく売上月額だけが記載されているもの)をFに交付した。
これにより、平成一五年夏に平成一四年七月から同一五年六月までのものとしてDから受領したa社作成の損益計算書が、実は平成一三年七月から同一四年六月までのものであることが判明し、Fは詐欺の被害にあったと確信した。
キ 被控訴人らに詐欺にあったと確信したFは、上野店及び門仲店の買い取りを要求したが、被控訴人FFはこれに応じなかった。
Kは、その後上野店及び門仲店に臨店せず、平成一六年一一月には代理のSSVに門仲店のチェックリスト項目の点検をさせに行かせてお茶を濁し、平成一七年一月ころには担当SVがMに代わり、同年四月ころにはSVがNに代わった。これらのSVの臨店報告書など(乙B四ないし七、一一ないし一三)からうかがわれる仕事振りは、単にチェックリストの項目をチェックするにとどまるなど、加盟店の経営改善に資するものとはいえない水準のものであった。
ク 平成一七年四月二〇日に、Fは、被控訴人FFのTに対し、「当社の加盟の決断をした最大のポイントは、前年対比一〇〇%を超えている業態であり、且つ、将来的にも有望な業態であるという報告を頂いたからです」、「数ヶ月後に判明した事実として、明らかに直近PLが虚偽の数字であったと判明しております。(九月KSV)」、「現実に当社が経営を始めた、二〇〇四年四月からの数字は、明らかに事業計画と乖離したものでした。当初は食堂経営を始めたばかりで、未熟な点が多いためと思い、SVに相談を持ちかけたりもしました。具体的な指導としては、この商品をこのようにして売り、食材の発注をこうすれば等々ありましたが、原価率三二%以内で収まると言っていたものが、三五%を超えてしまいました。二四時間営業ですので、ロスは殆ど出ないにもかかわらずこの数字でした。また、当時のSVは、この時にしか臨店していません(ESV)。この点に関しては加盟前のベンチャーリンクの説明では、不振店対策は様々な業態で行っており、このように実績も出ていると、具体的な資料まで見せられました。しかし当社の要望には、結果として何も策は無いままでした。」などと記載したメールを送付し、加盟金一六八〇万円の返却と店舗の返却を要望した。
ケ 控訴人X3社は、平成一七年七月二六日付けの書面をもって、被控訴人FFに対して本件FC契約を解除する旨通知し、そのころ、上野店及び門仲店を閉店した。
二 被控訴人らは上記認定事実とは異なる主張をするが、いずれも採用することができない。その理由は、次のとおりである。
(1) 控訴人X2社の関係
ア 被控訴人らは、控訴人X2社の東池袋店が営業不振に陥った原因として、茶髪の高校生や日本語が不自由な中国人を店員として雇用したことを挙げる。しかしながら、茶髪の高校生が客に不快感を与えたことや、中国人店員が日本語が不自由であったことを的確に認めるに足りる証拠はない。また、担当のSVが、東池袋店に対して、これらの点を問題点として指摘した上で、具体的かつ実行可能な改善策を適切に指導したことを認めるに足りる証拠はない。被控訴人らの派遣するSVの質(能力の低さ、専門性の欠如)の問題は、被控訴人らの指摘するアルバイト店員の質の問題に匹敵するほど根の深い問題であったとうかがわれるのであって、SVが具体的かつ実行可能な改善策(どのような募集等の活動をすれば、被控訴人らの指摘する問題のないアルバイトが応募してくるか等)を策定する能力があったかどうかは、非常に疑わしいところである。
イ 被控訴人らは、店長不在の時期に売上が減少したかの主張をするが、その事実を的確に認めるに足りる証拠はない。店長不在の時期(甲A五によれば平成一五年八月から一〇月まで)があったことは控訴人X2社も認めるところであるが、そのことと売上減少との間の因果関係を認めるに足りる証拠はない。
店長研修を受けても東新宿店でアルバイト店員と同様に働かされるだけで、研修の効果がほとんど上がらなかったことは、前記認定のとおりであって、店長研修を受けない店長(U)がいた時期(平成一五年一月から七月まで)に売上の減少が見られたこと(月額五〇〇万円に到達しなくなった。甲A五)と店長研修不受講との間の因果関係を認めるに足りる証拠もないというほかはない。
ウ 被控訴人らは、東池袋店は仕入れや在庫管理の方法を被控訴人らのマニュアルの通りに実施しなかったから、利益が出なかったと主張する。しかしながら、平成一六年四月二二日にSVがF値(売上額に対する食材仕入額の割合)が四〇%を超え、ロス(食材廃棄)率が八%を超えている状態を指摘し、同年六月三〇日にも仕入れ原価ダウンの問題を指摘したが(乙A四、一六)、その後の臨店報告書にはこの点に関する指摘がないことから仕入れに関する問題は改善した(甲A四によれば食材仕入原価を抑える効果はあったものとうかがわれる。)ものと推認される。しかしながら、この点の改善にもかかわらず売上の減少傾向を食い止めることはできなかったことから、仕入れ等の方法は、東池袋店の経営不振の最大の原因ではなかったものと推認される。また、被控訴人らは、平成一六年四月までの間(平成一三年一一月の開店から二年半近くの間)、仕入コストの問題を東池袋店に指導することができなかったわけで、その経営指導態勢が著しく貧弱であったことに変わりはない。
平成一五年までのSVの指導記録について全く証拠提出がないことから、このころまでのSV指導が相当杜撰であったとうかがわれる(記録もとらず、各店の問題点やその改善の経緯を系統的に記録するシステムすらとられていなかったものとうかがわれる)。被控訴人らが飲食店の素人でもSVが経営指導するから経営は可能であると説明していたことも考えると、被控訴人らの経営指導態勢の杜撰さが、東池袋店の経営不振の主因であったともみられる。
エ 証人Lは、東池袋店の運営上控訴人X2社に多々問題点があったと縷々供述する。しかしながら、L証言のうち、控訴人らが月次の損益計算書を送ってこないという部分は、反対趣旨の甲B九、乙A四、五に照らして措信できない。また、L自身が東池袋店に臨店した際に厨房のグリストラップにごみが溜まっていて側溝から水があふれてくるという部分は、L自身が東池袋店に臨店した際の記録はない(乙A四は控訴人X2社の事務所を訪問した際の記録にすぎない。)うえに、グリストラップ清掃の問題点を指摘するVSVの店舗チェック報告書(乙A九)の記載に照らしても証言内容が大げさに過ぎる(VSVは平成一六年二月から東池袋店に臨店しており、乙A九は同年一一月の臨店の報告書であって、それまではグリストラップ清掃の問題はなかったことがうかがわれる。)から採用できない。その他にも証言内容が大げさに過ぎたり、迫真性に欠く点がみられることに照らし、L証言は採用することができない。
(2) 控訴人X3社の関係
ア 被控訴人らは、契約締結前に控訴人X3社に対し上野店の平成一四年七月から平成一五年六月までの損益計算書を交付したと主張し、D供述(陳述書丙三及び証言)には、これに沿う供述をする部分がある。しかしながら、以下の事情を考慮すると、これを採用することができない。
Dは、陳述書(丙三)において、a社作成の損益計算書であって契約締結前に控訴人X3社に交付したのは、上野店の平成一三年七月から平成一五年六月までの期間につき半期分毎に記載したもの合計四枚及び門仲店の平成一四年七月から平成一五年六月までの期間につき半期分毎に記載したもの合計二枚で、両店分を合わせると合計六枚であり、「間違いなく上記の六枚でした」と強調する陳述をしている。しかしながら、Dは、証人尋問においては、上記の六枚のほかに、被控訴人VLがDの証人尋問期日(控訴人X3社代表者本人尋問が実施された期日の二期日も後)に突然証拠として提出した丙五の一(a社作成の上野店の平成一五年五月から七月までの損益計算書)も、契約締結前に控訴人X3社に交付したと述べ、供述を変遷させている。そして、その理由として、陳述書作成の際は丙五の一が見つかっていないので思い出せなかったが、証言をするに当たり、既提出の書証のほかにも資料があるはずだと言って調べてもらったら丙五の一が出てきたという趣旨の証言をする。しかしながら、そうであれば、Dには陳述書作成時にもほかにも資料があるという認識があったとみるのが自然であって、証人尋問期日直前になってから他にも資料があるはずだと言い始めるのは著しく不自然である。また、陳述書には、上記の六枚以外にもFに交付した損益計算書があるかもしれないという記述があるべきである。そうすると、「間違いなく上記の六枚でした」とする陳述書記載は、陳述書作成当時のDの記憶を正確に記述したものとはいえず、信用がおけない。
また、丙五の一(a社作成の上野店の平成一五年五月から七月までの損益計算書)が発見されているのに、DがFに交付したという上記六枚の損益計算書が被控訴人VL内部において発見されていないのも不審であるし、丙五の一の提出時期が、原審における弁論準備手続及び控訴人X3社代表者本人尋問期日が終了した後であって、Dの証人尋問期日当日であることも、かなり不審である。
さらに、丙五の一がa社から被控訴人VLに送付された理由としては、様々な理由が想定されるのであって、控訴人X3社に見せるためと断定することは到底できない。例えば、加盟店は、他に営む事業と区別して契約店舗の売上、経営数値等をFC本部に報告する義務を負い、FC本部は報告に疑義がある場合には加盟店に立入検査をすることができるという規定があり(甲A一のFC契約書二四条。L証人が証言(証言調書一一頁)するところでもある。)、被控訴人FFからスーパーバイジング業務を委託されている被控訴人VLにおいても、業務遂行上加盟店の経営数値等を把握する必要から加盟店から損益計算書を取り寄せることが十分に予想され、そのほかにも送付を求める事情には様々なものがあり得ると考えられるから、「この時期に被控訴人VLがa社から両食堂の最新の損益計算書を取り寄せたのは、両食堂の譲受けの提案を検討していた控訴人X3社代表者において、Dから従前交付されていた資料に対する追加分としてその時点で入手し得る最新のデータを求めたためであったと推認するのが自然」(原判決四五頁)と断定することは到底できない。
また、控訴人X3社による上野店営業開始の翌日である平成一六年四月二日付けDのF宛メール(甲B一五)には、PLをFに送っていなかったという趣旨の記載がある上、メール添付の資料について「こちらはa社さんが入れている本社の人件費などは抜いた数値となっております。」と断っているのは、被控訴人VLは、控訴人X3社による上野店営業開始以前には、控訴人X3社に対して、a社作成の損益計算書(甲B三)しか送付したことがなく、被控訴人VLが作成した上野店や門仲店の損益計算書(乙B八、丙二など。a社作成の損益計算書からa社本社の人件費などのFC加盟店固有の経費ではないものを控除する等、被控訴人VLによる加工がされた数値が記載されている。)は交付されていなかったことをうかがわせるものである。
平成一六年九月にSVのKがFに交付したa社経営時代の上野店のデータは、損益計算書ではなく売上月額のみを記載した一覧表であり、したがって、Fは損益計算書ではなく売上月額のデータの交付をKに要求していたものと推認され、このことは、既存店舗の譲受の検討の際に、直近の売上額を前提にして、経費がどの程度削減可能で、その結果損益がどうなるかを検討の中心としていたというFの事業方針と合致するものである。他方、契約締結前にDが供述するような被控訴人VLによる支援(a社作成の損益計算書には怪しい点があるので、被控訴人VLのデータより補正する。)が必要であったことを裏付けるような事実関係は、本件全証拠によってもこれを認めるに足りない。
さらに、Fが上野店の真実の売上月額を知っていたとすれば、このような経営状況の悪い店舗を買うという決断をすることは不自然であるし、上野店の売上、収益増加策として提案されたというクレンリネスの強化策などだけで、上野店の経営が大丈夫であるとFが判断したかどうかも疑問である。
イ E供述(丙四の陳述書及び証言)にも、上記被控訴人ら主張に沿って供述をする部分があるが、以下の事情を考慮すると、採用することができない。
Eは、平成一六年四月の上野店の売上月額が低いのを不審に思ったFから平成一六年五月以降a社経営時代の経営状況が実際にどうだったか説明を求められたことはない旨供述する。しかしながら、平成一六年七月からEの後任のSVとなったKが、就任後直ちにF社長よりa社経営時代の売上月額の情報を届けるように要求を受け、Kの次回臨店時(平成一六年八月二五日)にも再度同様の要求を受けたこと(K作成の臨店報告書である乙B二及び三の「SVへのご要望」欄には、いずれも「上野六丁目食堂様の昔のデータを共有させていただきたい」などの記載がある。)に照らし、SVがKに交代する以前から前任のSVであるEに対しても同様の要求をしていたとみるのが自然であり、Eの供述は不自然であって、信用できない。
Eは、自己の臨店報告書を証拠提出できない理由として、被控訴人VLを退職する際に社内規定に従って自己のパソコンのデータを消去したことを挙げる。ところで、Eは、他方では、「店舗担当以外のSVが店舗訪問をすることもある。その理由は、食堂チームのSV部が一体となって加盟店を指導したほうが厚い指導ができ、チームとして活動していたことにある」という趣旨の供述をしている。チームとして活動していたのであれば、ある社員が作成した臨店報告書をチームとして保管する必要があり、当該社員が退職したらその社員が作成した臨店報告書のデータが破棄されるというのは不自然である。したがって、Eの供述のうちデータを破棄したこと又はSVがチームとして仕事をしていたことのいずれかは虚偽であることが明白であって、そのような虚偽を含むEの供述全体の信用性は、低いものというほかはない。
ウ なお、平成一六年四月二日にDからFに送付されたメールには上野店と門仲店の開店時から平成一五年一二月までの損益計算書(被控訴人VL作成のもので、真実の売上月額が記載されている。)が添付されており、これによって、Dが直近の一年間のものとして交付した損益計算書(甲B三)の内容が虚偽であったことが控訴人X3社にとって認識可能になったものではあるが、Fは、この損益計算書(甲B三)が誤っている可能性もあり、a社経営時代の真実の売上月額はいくらかを、控訴人X3社からの質問に答える形で被控訴人VL自身に回答させて、自己が本当に詐欺の被害にあったものか確認しようとしていたものとみられる。平成一六年九月になって初めて虚偽のデータを渡されたことが分かったという本件訴訟における主張も、被控訴人VLに回答させた上で何が正しいのか確認したいというFの意思の反映であり、格別の不自然さはない。いずれにせよ、契約締結後の平成一六年四月になって初めて真実の情報が控訴人X3社に伝達されたことに変わりはなく、乙B八、丙二、丙五の一などの損益計算書が契約締結前に控訴人X3社に交付されていたことを認めるに足りる証拠はない。
三 被控訴人らによる業務の実態について
一の(1)から(4)までの認定事実に、前掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると、さらに、以下の各事実を推認することができる。
(1) 東京都内における外食産業用店舗物件の確保の困難性
外食産業が年々成長を続け、様々な新業態も現れて過当競争気味になり、外食産業相互間の競争も激しいものとなっていることは、公知の事実であるところ、この事実に前記認定事実(①被控訴人FFが東京都内でまいどおおきに食堂の直営店を開設しようとしたが、良い立地の店舗物件を確保することができず、立地の良くない店舗を数軒開店することはできたものの、開店後の直営店事業も苦戦を強いられ、経営不振の直営店の再建を社員に命じたが失敗し、結局のところ直営店が続々と閉店したこと、②本件FC契約の加盟店で店舗物件を確保しないで契約締結したものは、軒並み店舗の確保に苦戦し、当初契約で予定されたエリア内で物件を見つけた場合でも立地条件が悪い物件しか確保できないか、当初契約で予定されていたエリア内で物件がみつからずに被控訴人FFにエリア外の物件(通常は立地の良くない物件である。)を紹介してもらった上で営業エリアを変更して開店するか、店舗が見つからずエリア変更もできずに開店不能のままで契約解除又は契約期間満了となるかのいずれかであったこと)を併せて考慮すると、平成一一年以降現在までの間、東京都内において新規に外食産業(まいどおおきに食堂のように東京都内における認知度の低いもの)用の店舗物件を確保することは、特段の事情のない限り容易でなく、特定の駅から半径五〇〇メートル以内という限定された範囲内で一一箇月という限定された期間内に店舗物件を確保することができる可能性は低かった事実(ことに好立地の良質な外食産業用の店舗物件の確保はほとんど不可能であった事実)を推認することができる。
(2) 店舗物件の確保が困難であることについての被控訴人らの認識
(1)の事実によれば、被控訴人らは、東京進出初期の店舗確保困難の事態を直接経験したことから、店舗物件を確保せずに本件FC契約に加盟した加盟店は、契約後、契約したエリア内で一一箇月以内に店舗物件を確保することができないという事態に直面するリスク(可能性)が高いことを認識していたことを推認することができる。
また、(1)の事実によれば、被控訴人らは、店舗物件の確保は、被控訴人VLが不動産仲介業者と提携し、三〇人のアルバイトが物件情報の探索に従事しても、その困難性は容易に解消しないことをも認識していたことを推認することができる。もし、被控訴人VLの上記物件探索網が有効に機能するのであれば、直営店にも立地条件の良い優良店が多数現れるはずであるが、前掲各証拠によれば、東京地区の直営店には立地条件の良い優良店は、ほとんど存在しないと認められるからである。
(3) 店舗物件確保可能性に関する虚偽の事実の故意による伝達
そうすると、被控訴人らは、東京地区のまいどおおきに食堂の新規加盟店は、そのうちかなりの数が、加盟金を払ったまま開店できずに契約解除又は契約期間満了となるか、当初契約したエリアとは異なる人気のないエリアにおいて開店せざるを得なくなることを認識しつつ、そのことを隠し、逆に被控訴人VLの物件探しの援助などにより店舗候補物件確保は容易であると虚偽の事実を述べて、加盟の勧誘をしていた事実を推認することができる。
また、前掲各証拠によれば、契約と異なるエリアで開店する場合には、店舗物件を見つけることができなかった加盟店用に被控訴人FFが留保していた物件などが加盟店に紹介されること、紹介される物件は契約締結前(加盟金を支払う前)であれば多くの加盟店がFC契約締結に応じないような人気のない物件であるのが通常であることを推認することができる。
開店準備説明会資料(乙D六八の六頁)には、「本部・被控訴人VL(立地開発室)の動き」と称して、「約三〇〇〇店の不動産業者と連絡 常時三〇名のアルバイトが探索」と記載があり、加盟企業の「物件探索依頼書提出」により「被控訴人VLにて物件情報提供、本部申請、データ調査、交渉まで一貫して代行いたします。」と記載されていた。これは、被控訴人VLに頼めば、店舗候補物件が確実に確保できるという印象を与えるのに十分である。
被控訴人VLは、平成一三年六月六日、加盟店勧誘資料として「エントリー状況表」と題し、エリア名(首都圏の商業地や住宅地の名の通った駅の名称)、店舗状況(半分以上に「★OPEN済・物件確定」とか「☆候補物件あり」というマークを付したもの。ただし、当時控訴人X2社において店舗物件が確定していた大塚エリアには「★OPEN済・物件確定」の印ではなく「☆候補物件あり」という印しかついておらず、高円寺エリアには契約締結済みであるが店舗候補物件が見つかっていないことが表示されていないなど、実態を正確に伝える内容になっていない。)などを記載した資料(甲二)を作成した。また、「ごはん家まいどおおきに食堂参照データ」と題し、「推奨エリアベスト10」(被控訴人VLの援助の下でも控訴人X2社が店舗物件を確保できなかった高円寺エリアが含まれている。)とか「優良出店候補地一覧」と題して、各エリアが契約済みかどうかを記載した資料(甲二。半分以上が契約済みと記載されているが、契約済みのエリアで加盟店が店舗物件の確保に苦労していることは記載されていない。)を作成した。これらの資料は、早くFC契約をしないと優良エリアが他社に取られてしまうと思わせる一方で、そのエリア内での店舗物件の確保は困難であるという実態を隠して、応募企業に対してエリア獲得についての競争心理を煽るという広告宣伝効果を有していたものと認められる。
(4) 加盟店が店舗物件を確保できない場合における被控訴人らの得失
加盟店が契約後一一箇月以内にエリア内に店舗物件が確保できない場合には、被控訴人FFは、FC契約の解除権を取得する。この場合、被控訴人FFは、契約を解除して加盟金を没収することができる。また、店舗物件(立地条件が良好である保証はない。)が確保できる別のエリアの物件での開店を勧誘した上で、加盟店に契約内容の変更(独占的営業権を取得できるエリアの変更)を促して、店舗数を増加させることもできる。
このように、加盟金の没収を恐れる加盟店は、新規契約の場合なら契約しなかったであろう魅力のない商圏をエリアとする契約への変更を余儀なくされることがある。他方、被控訴人FFは、新規契約としては契約を締結して加盟金収入を得るのが困難なエリアについて、他のエリアからの変更契約により契約を獲得することができる上、変更前のエリアについても新たな加盟店を募集して再度加盟金を取得することができるという利益を享受することになる。
控訴人X1社が本件FC契約の新規勧誘を受けた際、新川店や幡ヶ谷店の所在地をエリアとするのであれば、契約の締結には応じなかったと推認されるが、エリアを荻窪とする本件FC契約を締結した後には新川店や幡ヶ谷店での開店に応じたことも、以上の説示を裏付けるものである。
なお、被控訴人FFは、一一箇月以内に開店できなくても解除権を発動したことはないと主張する。しかしながら、仮に控訴人X2社との契約期間中に、別の企業が高円寺エリアに店舗物件を確保した上で本件FC契約の締結を申し込んできたら、被控訴人FFが控訴人X2社に対する解除権を発動したか、立地条件の不利なエリアへの変更を強いたであろうことは、容易に想像することができる。このことは、被控訴人FFが普段は競業避止条項を発動しないが、本件のように加盟店から損害賠償請求訴訟を提起されるという事態に直面すると、競業避止条項の発動に訴えていることからも、容易に想像することができる。
一一箇月以内に開店しないことが解除事由になっていることが控訴人X1社が新川店等の開店に応じた主要な動機となっているところ、被控訴人FFが一一箇月以内に開店しないことを解除事由として本件FC契約に規定する狙いの一つが、エリア外での開店にも応じるように加盟店を誘導する点にあることも、経験則上明らかである。
(5) 店舗物件確保前の契約締結にこだわる被控訴人らの意図
わが国の小売業や飲食店業の標準的なフランチャイズ契約においては、店舗物件を確保してからフランチャイズ契約を締結する場合が多いことは、公知の事実である。
本件FC契約や串家FC契約についてみると、わが国の通例に従って店舗物件を確保した後に契約することとすれば、加盟希望者が開店希望地域においてなかなか店舗物件を確保できないことから、契約締結数が減り、被控訴人らの加盟金収入が減少し、店舗数もあまり増加しないこととなる。他方、店舗確保前に契約をすることとすれば、契約締結数が増えて加盟金収入が増加し、契約締結後エリア内で店舗が確保できない場合も増えるが、加盟金没収を恐れてエリア外の店舗(通常は立地条件の悪い店舗)での開店に応じる加盟店もあるから、店舗物件確保後に契約を締結する場合と比べて、店舗数も増加する。
被控訴人らは、以上のような点を考慮して、加盟店の利益を犠牲にしてでも被控訴人らの加盟金収入(被控訴人VLは委託報酬)を増加させ、かつ店舗数を増加させるために、フランチャイズ契約としては異例の店舗確保前の契約締結という方式を採用したものとみることができる。契約時に加盟金の一割か二割程度を頭金として受領し、店舗確保時又は開店時に加盟金の残金を受領するという方式も考えられるところ、これでは加盟店に有利であるが、被控訴人らにとっては加盟金収入額が減少する点で不利であるから、そのような方式は採用しなかったものとみられる。
また、このようにして平成一二年及び一三年に増加した加盟金収入は、被控訴人FFの売上高、純利益及び純資産の増加並びに株式上場の実現に寄与したものと推認される。大阪証券取引所の上場審査(平成一四年に実施されたものと推認される。)においては、平成一二年及び一三年の純利益及び純資産などの数値が重視されたことは容易に推認される。そして、この加盟金収入の増加が、純利益及び純資産の数値の改善を通じて、被控訴人FFのヘラクレス市場への株式上場が会社設立後わずか三年で実現したことの主要な原動力の一つとなったとみるのが自然である。
Bや被控訴人VLは、株式上場が実現すれば、上場時に行われるのが通例の創業者らによる株式の売出しによって、莫大な創業者利益を得ることができる。また、上場すれば、被控訴人FFにおいては、役員へのストックオプション制度の導入も容易になり、広く一般投資家から事業資金を調達することも容易となる等のメリットがある。したがって、大阪証券取引所の上場審査基準をクリアするために加盟金収入を増加させることも、店舗開設前の契約締結により加盟金収入の増加を図った主要な目的の一つであったと推認するのが常識的である。
(6) 被控訴人らによる杜撰な立地診断
前記認定事実によれば、被控訴人VLが実施する立地診断は、有料であるにもかかわらず、著しく杜撰で、信頼性に欠けるものであった。経済常識を基準とすれば、このような立地診断を有料で行うことは、詐欺に等しいと言っても言い過ぎではないほどのものであった。
そして、前記認定事実によれば、少なくとも平成一六年ころまでの東京地区においては、とにかくFC店舗数を増加させるため、立地診断の採点を著しく甘い基準で行い、被控訴人FFのFC加盟店としては利益が上がらない可能性が極めて高いような立地の物件も合格扱いにして、店舗数を増加させ、ライバル企業との出店競争上優位に立つとともに、ロイヤリティ収入を増加させるという営業方針がとられていたものと推認される。
なお、基本契約書五条一項、二項には、候補物件確保は加盟店の責任であるという趣旨の記載がある。しかしながら、他方においては、基準を満たさず立地診断が不合格となった物件においては、被控訴人らは加盟店を開店させてはならないというのが、本件FC契約及び串家FC契約の趣旨であるとみられる。候補物件については必ず立地診断を経た上で本部合格の判定を得なければならないという趣旨の説明図(乙D六八)があり、基本契約書三条によれば被控訴人FFは店舗開設契約を締結せずに開店を拒否する権限を有するとみられるからである。
このような仕組みの下においては、基準を満たさずに立地診断が不合格となることが明白な物件について、故意に立地診断合格の判断をして加盟店に店舗を開設させることも、違法行為に該当するものというべきである。被控訴人FFは、開店させさえすれば加盟店が損失を生じても売上の六%のロイヤルティを取得することができるし、加盟店の増加によりライバル店との出店競争に優位に立つという利益を取得するのに対して、加盟店においては、真実の立地診断の結果(不合格)を伝えられた場合には、通常は、赤字の場合でも売上の六%のロイヤルティを支払わなければならないことを避けるために、店舗を開設しないとみられるからである。
(7) SVの臨店指導の本件FC契約上の位置付け
次のアからエまでの事実によれば、本件FC契約上は、経営指導について専門性を有するSVによる加盟店に対する臨店指導を行うことが、被控訴人FFの加盟店に対する義務になっていたものと解される。
ア わが国においては、SVによる臨店、経営指導はFC契約の不可欠の要素であり、経営指導についての専門性を有するSVによる指導を受けることができるのが通常であると広く認識されていること。特に、知名度の低いフランチャイズチェーンに加盟する場合、これらの指導がなければ、フランチャイズにかかる料金を支払う意味は皆無であること。
イ 被控訴人らは、アのような認識が一般的であることを知りつつ、契約勧誘の説明会において、本件契約はこのような一般的な認識とは異なる内容である旨の注意喚起を行っておらず、むしろ逆に、SVによる指導を受けることができることを本件FC契約締結のメリットとして強調して説明を実施したこと。
ウ 被控訴人FFが、有価証券報告書その他の公表資料において、被控訴人VLが「まいどおおきに食堂」加盟店に対し訪問による経営指導を行うと明記してきたことは、公知の事実であること。
エ 被控訴人FF作成のフランチャイズマニュアルVol.1には、SVが一箇月に六日間も臨店するという内容の店長の月間スケジュールが記載されていること(乙四の一八頁)。
(8) 専門性を有するSVの育成確保の被控訴人らによる懈怠
前記認定事実によれば、次の事実が推認される。
ア 被控訴人VLは、被控訴人FFとの委託契約の締結に伴い、これに従事する人材(店舗開発業務、スーパーバイジング業務)を新たに大量に確保する必要が生じた。しかしながら、特にSVの人材確保については、即戦力となる経験者の中途採用や未経験者(新卒社員など)の研修教育による早期戦力化などの方法によっても、容易ではなかった。本件のまいどおおきに食堂のように、FC店舗数が急速に増加するような場合には、必要な質、量の人材を確保することは、ますます困難であった。
イ 被控訴人FFも、被控訴人VLに委託していない業務(立地開発、商品開発、社員の教育研修、FC店舗の従業員の教育研修等)に関して人材を確保する必要が生じたが、同様に、店舗数の急激な増加に対応できるペースで確保することは困難であった。
ウ 東京進出の初年度となる平成一二年には、従業員の採用を積極的に行い、そのような者の中から多数のSVが選ばれたものと推認されるが、未経験者が多く、社内における十分な研修、教育を経ずにSVとして現場に送り出された者が多かったものと推認される。前記認定の加盟店からの苦情の多さやその内容は、上記認定の裏付けとなるものである。
エ 被控訴人FFに平成一三年四月に入社し、平成一五年初めころまで研修担当の仕事をしていたWは、上司からの指示を受けて、加盟店の現状分析をするための道具として「チェックリスト一〇〇」(乙D二一など)を作成し、被控訴人VLのSVに使用させた。各項目を加盟店が履践できているか一つ一つチェックすることにより、初心者でも最低限の現状分析ができるようにしたものであった(W証言)。この「チェックリスト一〇〇」は、平成一六年後半からは、チェック項目を一一〇程度に増やして、「まいどおおきに食堂店舗チェックリスト①~③」(乙A八)に改訂されていった。
このようなチェックリストが必要であった原因は、SVのレベルが低く、担当店舗の現状分析をする能力に欠ける者が目立ったため、このチェックリストをマニュアル的に使用させて、最低限の現状分析ができるようにするためであったと推認される。
オ 加盟店からのSVに関する苦情に被控訴人らが真摯に対応しなかったことなどの前記認定事実によれば、被控訴人らは、SVの量の確保を十分に行わず、SVの質の向上のために必要な社内研修、社内教育を十分に実施せず、これら質及び量の確保のために必要な費用の支出を惜しむ一方で、比較的経費をかけずに実施可能な「チェックリスト一〇〇」の作成とその運用などにより当面を乗り切ろうとしていたものと推認される。経験者とペアで仕事をさせて若手社員を育成するという実例もみられないことから、そのような人的余裕もなかったものと推認される。
他方、加盟店の多くは、契約締結前に、SVの指導の実態が、このような経験と能力に欠ける若手社員による、チェックリストに頼った形式的な現状分析に基づくレベルの低い指導であり、SVの人員も十分に確保されていないことなどを知っていたら、本件FC契約を締結しなかったものと推認される。
(9) 東京地区における被控訴人らのビジネスモデル
以上の事実を総合すると、平成一一年から一六年ころまでの間の東京地区における被控訴人らのビジネスモデル(又は収益の構造)は、次のようなものであったと推認される。
被控訴人らは、直営店の店舗物件探しの過程で立地の良い物件を探すのが容易ではないことを知っていたにもかかわらず、店舗物件の確保が容易で、契約エリアにおいてまいどおおきに食堂を独占的に営業することができ、開店後も他のフランチャイズチェーンと同水準の専門性のある経営指導を受けることができると虚偽の説明を行い、これを誤信した者が応募者の中に多数いることを承知の上で、①上場審査をクリアさせるため、原則として店舗物件確保前に本件FC契約を締結して契約締結数と加盟金収入を増加させ(その結果、上場時の株式売出しにより莫大な創業者利益を取得し得る。)、②店舗確保に苦しむ加盟店に対してはエリア外の物件における開店を勧めて店舗数を増加させ、結局開店できなかった加盟店からも加盟金を没収し、③専門性のあるSVを必要な数だけ養成することを怠り、専門性のあるSVによる経営指導の履行の提供をしないにもかかわらず、店舗の損益状況を問わずに売上の六%のロイヤリティを取得する。
このようなビジネスモデルは、加盟店の一方的な犠牲の上に、被控訴人らが、自らの経費の支出を異常なまでに抑制した上で、自らの利益の極大化のみを図っているもので、極めて利己的な動機に基づくものと評価するほかはないものである。コンプライアンス上の問題があることはもちろんのこと、広く一般投資家から資金を集めて事業を営む上場企業のビジネスモデルとしても、非常に問題があるところである。被控訴人FFが東京地区への展開を企図した際、加盟店にも十分な利益が出るように展開することを希望していたとしても、被控訴人らの現実の言動を見る限り、上記のビジネスモデルとなったことは明らかである。
四 以上の認定事実等に基づき検討する。
(1) 控訴人X1社及び控訴人X2社に対する勧誘について
ア 前記認定事実によれば、被控訴人らは、東京都内における外食産業用店舗物件の確保が困難であることを知りながら、その共同の方針として、本件FC契約の締結勧誘の際には、店舗物件確保困難の事実を告げず、逆に、契約で定められたエリア内での店舗物件の確保は被控訴人VLの支援があるので容易であるとの説明を行うことを定め、この方針に沿って、控訴人X1社及び控訴人X2社に対しても、店舗物件確保困難の事実を告げず、逆に、被控訴人VLの支援があるので容易であるとの説明を行い、その旨誤信した控訴人X1社及び控訴人X2社との間で各本件FC契約を締結したという事実を推認することができる。
一一箇月以内に開店できない場合には支払った加盟金五〇〇万円は没収されるという契約条項になっているのであるから、店舗物件の確保が困難であることを知っていれば、加盟店側は契約を締結しないのが通常であり、被控訴人はそのことを知りながら被控訴人VLの支援により物件の確保が容易であると誤信させているのであるから、被控訴人らのこのような勧誘行為は、詐欺に該当する違法行為である。
このような違法行為をした動機は、加盟店の利益を省みず、被控訴人らのみの利益(加盟金収入の増加、店舗数の増加及びヘラクレス市場への上場)を確保することにあったというべきであり、物件の立地条件が悪くてもずさんな立地診断により立地条件の悪さを隠して開店させたこと、開店後においても、契約勧誘時の説明の趣旨に反して、専門性のあるSVによる加盟店の経営支援を本気で履行しようとはしなかったことなどの事実は、このような利己的な動機を裏付けるものである。
イ ア記載の被控訴人FFの契約締結の動機及び詐欺に該当する勧誘行為の実態を考慮すると、控訴人X1社及び控訴人X2社と被控訴人FFとの間の本件FC契約並びに控訴人X2社と被控訴人FFとの間の串家FC契約は、被控訴人FFが控訴人X1社及び控訴人X2社が外食産業の店舗確保等の情報に疎いことに乗じて、同控訴人らの犠牲の下に、不当な利益を得ようとするものであって、著しく不公正な取引である。形式的には意思の合致が存することを理由として、このような契約についてその効力を全面的に容認することは、わが国の公の秩序、善良の風俗に照らし、許されないものというべきである。
このようなことから、上記本件各FC契約及び串家FC契約のうち、控訴人X1社及び控訴人X2社が各契約時に詐取されたも同然の加盟金及び加盟保証金の支払義務を定めた部分は、公序良俗に反するものとして無効というべきである。
(2) 控訴人X3社に対する勧誘について
ア 控訴人X3社に対する勧誘についても(1)で説示したことが基本的に当てはまるが、それ以外に次の点を指摘することができる。すなわち、控訴人X3社のFの勧誘に当たった被控訴人VLのDは、上野店の平成一三年七月から同一四年六月までの損益計算書を、上野店の平成一四年七月から同一五年六月までの損益計算書であると偽ってFに交付し、これによりFは、平成一四年七月から同一五年六月までの上野店の売上月額が真実は八〇〇万円内外であるのに、九〇〇万円~一〇〇〇万円と誤信し、その結果、上野店と門仲店の譲受けと本件FC契約の締結を決断したものであって、平成一四年七月から同一五年六月までの上野店の真実の売上月額を知っていたら本件FC契約を締結しなかったものである。
このようなDの勧誘行為は、詐欺に該当する違法行為である。そして、このような違法行為をした動機は、加盟店の利益を省みず、被控訴人らの当時の契約締結数及び加盟店数の急拡大政策の下で、a社からの譲受人を探して、新たに加盟金収入を得るとともに、店舗数の減少を食い止めるという被控訴人らの会社ぐるみの利己的な方針にあったものと認めることができる。
イ ア記載のDの違法勧誘をした動機及び詐欺に該当する勧誘行為の実態を考慮すると、控訴人X3社と被控訴人FFとの本件FC契約は、控訴人X3社が上野店の経営状況についての正確な情報を知らないことに乗じて、控訴人X3社の犠牲の下に、加盟金収入その他の不当な利益を得ようとするものであって、著しく不公正な取引である。形式的には意思の合致が存することを理由として、このような契約についてその効力を全面的に容認することは、わが国の公の秩序、善良の風俗に照らし、許されないものというべきである。
したがって、控訴人X3社と被控訴人FFとの本件FC契約のうち加盟金の支払義務を定めた部分は、上記(1)イと同様、公序良俗に反するものとして無効というべきである。
(3) 経営指導義務違反について
前記認定事実によれば、本件FC契約においては、被控訴人FFは、加盟店である控訴人らに対して、経営指導について専門性を有するSVを臨店させて加盟店の経営指導を行う債務を負っていたものというべきである。
しかしながら、前記認定事実によれば、被控訴人FF及びその履行補助者である被控訴人VLは、経営指導について専門性のあるSVを必要な人員だけ揃える努力をすることを契約の準備段階から完全に怠り、SVの多くをチェックリスト項目の形式的チェック(これ自体は専門性を有する業務とはいえない。)しかできないような経験と能力に乏しい若手社員をもって充て、SVの研修、教育に費用と時間をかけることも怠ったまま、このような若手社員SVを中心に加盟店への臨店をさせたにとどまるものである。経営指導を行う債務は、一定の結果を実現することを債務の内容とするものではないことを考慮に入れても、このように最初から専門性のあるSVの即戦力採用も社内育成も十分に行わず、加盟店の多くが専門性の乏しい若手社員のSVの臨店しか受けることができない状態を続けることは、経営指導義務の債務不履行に該当すること、これにより控訴人らに損害が生じたことは、明らかである。したがって、被控訴人FFは、この経営指導義務の債務不履行により控訴人らに生じた損害(利益の減少又は損失の増加)を賠償する義務を負う。他方、被控訴人VLについては、加盟店勧誘時とは異なり、虚偽の事実を告げる等の行為をしていないのであるから、経営指導不行届をもって不法行為に該当するとみるのは困難である。
五 損害
(1) 控訴人X1社
ア 加盟金一〇五〇万円の返還請求について
上記説示のとおり、控訴人X1社と被控訴人FFとの本件FC契約のうち加盟金の支払義務を定めた部分は、公序良俗に反し無効である。したがって、控訴人X1社による加盟金一〇五〇万円(二店分、消費税込み)の支払は根拠のないものとなり、その支払を受けた被控訴人FFは、一〇五〇万円を控訴人X1社に返還すべき義務を負う。
また、控訴人X1社は、被控訴人らの共同不法行為(詐欺)により本件FC契約締結の意思表示をして、加盟金一〇五〇万円を被控訴人FFに支払ったのであるから、この一〇五〇万円は、不法行為と相当因果関係のある損害である。よって、共同不法行為者である被控訴人らは、各自一〇五〇万円を控訴人X1社に賠償する義務を負う。
イ 経営指導義務違反による損害賠償請求について
被控訴人FFが経営指導義務の債務不履行により控訴人X1社に生じた損害(利益の減少又は損失の増加)を賠償する義務を負うことは、前説示のとおりである。しかしながら、この損害の性質上、その額を立証することは極めて困難である。控訴人X1社は、支払済みロイヤリティの額が損害であると主張するが、そのように断定することはできない。そうすると、民事訴訟法二四八条により、口頭弁論の全趣旨及び本件全証拠(特に、甲D二、乙D二〇)に基づき相当な損害額を認定することとなるが、本件においては、被控訴人FFの経営指導義務の不履行により一箇月につき一店舗当たり二万円相当の損害(損益の悪化)が生じたものと認めるのが相当である。
新川店の営業期間は五一箇月であるから同店の損害額は一〇二万円となり、幡ヶ谷店の営業期間は四七箇月であるから同店の損害額は九四万円となる。そうすると、損害の合計額は一九六万円である。
ウ よって、控訴人X1社に対し、被控訴人FFは一二四六万円、被控訴人VLは一〇五〇万円を支払うべき義務を負う。
被控訴人らは、一〇五〇万円の限度で連帯支払義務を負う。
(2) 控訴人X2社
ア 加盟金及び加盟保証金合計一九八〇万円の返還請求について
控訴人X2社と被控訴人FFとの本件FC契約及び串家FC契約のうち加盟金及び加盟保証金の支払義務を定めた部分は、公序良俗に反し無効である。したがって、控訴人X2社による加盟金及び加盟保証金合計一九八〇万円(三店分、消費税込み)の支払は根拠のないものとなり、その支払を受けた被控訴人FFは、一九八〇万円を控訴人X2社に返還すべき義務を負う。
また、控訴人X2社は、被控訴人らの共同不法行為(詐欺)により本件FC契約締結の意思表示をして、加盟金及び加盟保証金合計一九八〇万円を被控訴人FFに支払ったのであるから、この一九八〇万円は、不法行為と相当因果関係のある損害である。よって、共同不法行為者である被控訴人らは、各自一九八〇万円を控訴人X2社に賠償する義務を負う。
イ 経営指導義務違反による損害賠償請求について
被控訴人FFに本件FC契約上の経営指導義務の債務不履行があるが、損害の性質上その額を立証することは極めて困難であることは、(1)イに記載のとおりである。
そうすると、民事訴訟法二四八条により、口頭弁論の全趣旨及び本件全証拠(特に、甲A四、乙A一四)に基づき相当な損害額を認定することとなるが、本件においては、被控訴人FFの経営指導義務の不履行により一箇月につき一店舗当たり二万円相当の損害(損益の悪化)が生じたものと認めるのが相当である。
東池袋店の営業期間は四五箇月であるから同店の損害額は九〇万円となる。
ウ よって、控訴人X2社に対し、被控訴人FFは二〇〇〇万円(ア及びイの合計額二〇七〇万円は控訴人X2社の請求額二〇〇〇万円を超過する。)、被控訴人VLは一九八〇万円を支払うべき義務を負う。
被控訴人らは、一九八〇万円の限度で連帯支払義務を負う。
(3) 控訴人X3社
ア 加盟金一六八〇万円の返還請求について
控訴人X3社と被控訴人FFとの本件FC契約のうち加盟金の支払義務を定めた部分は、公序良俗に反し無効である。したがって、控訴人X3社による加盟金一六八〇万円(二店分、消費税込み)の支払は根拠のないものとなり、その支払を受けた被控訴人FFは、一六八〇万円を控訴人X3社に支払うべき義務を負う。
また、控訴人X3社は、被控訴人らの共同不法行為(詐欺)により本件FC契約締結の意思表示をして、加盟金一六八〇万円を被控訴人FFに支払ったのであるから、この一六八〇万円は、不法行為と相当因果関係のある損害である。よって、共同不法行為者である被控訴人らは、各自一六八〇万円を控訴人X3社に賠償する義務を負う。
イ 経営指導義務違反による損害賠償請求について
被控訴人FFに本件FC契約上の経営指導義務の債務不履行があるが、損害の性質上その額を立証することは極めて困難であることは、(1)イに記載のとおりである。
そうすると、民事訴訟法二四八条により、口頭弁論の全趣旨及び本件全証拠(特に、甲B五、乙B九、一〇)に基づき相当な損害額を認定することとなるが、本件においては、被控訴人FFの経営指導義務の不履行により一箇月につき一店舗当たり二万円相当の損害(損益の悪化)が生じたものと認めるのが相当である。
上野店及び門仲店の営業期間はいずれも一五箇月であるから各店の損害額は三〇万円(合計六〇万円)となる。
ウ よって、控訴人X3社に対し、被控訴人FFは一七四〇万円、被控訴人VLは一六八〇万円を支払うべき義務を負う。
被控訴人らは、一六八〇万円の限度で連帯支払義務を負う。
六 被控訴人FFの反訴請求(競業避止義務違反関係)について
(1) 被控訴人FFは、本件各FC契約の競業避止義務条項(一(1)オ(コ))を根拠として反訴請求をするが、被控訴人FFが、控訴人らに対して、本件FC契約の終了後も競業避止条項を適用して、競業避止義務の履行を求めて差止請求をしたり、競業避止義務の不履行による違約金を請求したりすることは、被控訴人らが前記認定のとおり詐欺的行為によって本件FC契約の締結を控訴人らに勧誘し、かつ、フランチャイズとしての経営指導を行わず、控訴人らがノウハウをほとんど受けていないという経緯に照らすと、信義誠実の原則に違反し、権利の濫用であって、許されないものというべきである。
(2) したがって、被控訴人FFの営業差止請求及び競業避止義務違反による違約金請求は、全部理由がない。
七 結論
以上によれば、控訴人X1社の請求は被控訴人FFに対し一二四六万円、被控訴人VLに対し一〇五〇万円の限度で、控訴人X2社の請求は被控訴人FFに対し二〇〇〇万円、被控訴人VLに対し一九八〇万円の限度で、控訴人X3社の請求は被控訴人FFに対し一七四〇万円、被控訴人VLに対し一六八〇万円の限度でそれぞれ認容すべきであり、被控訴人FFの反訴請求は全部棄却すべきである。これと異なる原判決は、主文のとおり変更すべきである。なお、控訴人X2社の当審における予備的請求は、これに対応する主位的請求(加盟保証金の返還請求)が全部認容されたことから、判断の必要がないものである。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 南敏文 裁判官 小泉博嗣 野山宏)
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