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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(27)平成28年 4月22日 東京地裁 平25(行ウ)5号 法人税更正処分取消等請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(27)平成28年 4月22日 東京地裁 平25(行ウ)5号 法人税更正処分取消等請求事件

裁判年月日  平成28年 4月22日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(行ウ)5号
事件名  法人税更正処分取消等請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴(上告受理申立て、上告)  文献番号  2016WLJPCA04226009

裁判経過
上告審 平成30年 1月25日 最高裁第一小法廷 決定 平29(行ツ)208号・平29(行ヒ)237号
控訴審 平成29年 2月23日 東京高裁 判決 平28(行コ)205号 法人税更正処分取消等請求控訴事件

評釈
佐藤修二・NBL 1081号89頁
林仲宣・ひろば 69巻11号72頁
山口敬三郎・税理 61巻8号129頁
西山智紀・岡山大学法学会雑誌 68巻2号249頁
酒井克彦・会社法務A2Z 116号58頁
品川芳宣・TKC税研情報 25巻5号34頁
長島弘・月刊税務事例 48巻7号19頁
増田英敏=伊東努・TKC税研情報 26巻2号18頁
林仲宣=谷口智紀・税務弘報 64巻9号90頁
木山泰嗣・税理 60巻6号104頁
山口敬三郎・税理 61巻7号130頁

裁判年月日  平成28年 4月22日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(行ウ)5号
事件名  法人税更正処分取消等請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴(上告受理申立て、上告)  文献番号  2016WLJPCA04226009

沖縄県中頭郡〈以下省略〉
原告 有限会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 O
同 P
同 Q
同補佐人税理士 B
同 C
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 D
処分行政庁 沖縄税務署長 E
被告指定代理人 W1
同 W2
同 W3
同 W4
同 W5

 

 

主文

1  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成21年3月1日から平成22年2月28日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,欠損金額1億5045万3186円,翌期へ繰り越す欠損金1億5045万3186円を下回る部分を取り消す。
2  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成21年3月1日から平成22年2月28日までの事業年度の法人税に係る過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
3  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用はこれを20分し,その19を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成18年3月1日から平成19年2月28日までの事業年度(以下「平成19年2月期」という。)の法人税の更正処分のうち,所得金額3億1961万3063円,納付すべき税額(当該事業年度に納付すべき税額の総額をいう。以下同じ。)1億0436万0100円を超える部分を取り消す。
2  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成19年3月1日から平成20年2月29日までの事業年度(以下「平成20年2月期」という。)の法人税の更正処分のうち,所得金額3843万3583円,納付すべき税額1075万7100円を超える部分を取り消す。
3  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成20年3月1日から平成21年2月28日までの事業年度(以下「平成21年2月期」という。)の法人税の更正処分のうち,所得金額1億4248万1353円,納付すべき税額4195万1700円を超える部分を取り消す。
4  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成21年3月1日から平成22年2月28日までの事業年度(以下「平成22年2月期」という。)の法人税の更正処分のうち,欠損金額1億5091万6652円,翌期へ繰り越す欠損金1億5091万6652円を下回る部分を取り消す。
5  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成19年2月期の法人税に係る過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
6  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成20年2月期の法人税に係る過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
7  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成21年2月期の法人税に係る過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
8  沖縄税務署長が平成23年6月29日にした平成22年2月期の法人税に係る過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
第2  事案の概要
本件は,原告が,処分行政庁である沖縄税務署長から,平成19年2月期から平成22年2月期までの各事業年度(以下「本件各事業年度」という。)において,役員4名に支給した役員報酬ないし役員給与及び代表取締役を退任した者に対して支給した退職給与について,いずれも不相当に高額な部分の金額があり,当該金額は各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入されないとして本件各事業年度の法人税についての更正処分(以下,それぞれ本件各事業年度についてされた更正処分を「平成19年2月期更正処分」,「平成20年2月期更正処分」,「平成21年2月期更正処分」,「平成22年2月期更正処分」といい,これらを総称して「本件各更正処分」という。)を受けるとともに,それぞれ過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)を受けたことについて,上記役員報酬ないし役員給与及び退職給与の支給額はいずれも適正であるとして,本件各更正処分の一部及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
1  関係法令の定め
別紙1「関係法令の定め」に記載したとおりである(別紙1で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。
2  前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者において争うことを明らかにしない事実又は当裁判所に顕著な事実である。)
(1)  当事者等
ア 原告は,酒類(米こうじ(黒こうじ菌を用いたものに限る。)及び水を原料として発酵させたアルコール含有物を単式蒸留器により蒸留したものである泡盛等の単式蒸留しょうちゅう)の製造及び販売等を目的として昭和60年8月28日に設立された有限会社であり,法人税法2条9号に規定する普通法人で,同条10号(平成27年法律第9号による改正前のもの)に規定する同族会社に該当し,法人税法35条(平成22年法律第6号による改正前のもの)に規定する特殊支配同族会社に該当する。
イ Fは,原告が設立された時に原告の取締役に就任し,平成6年10月25日,代表取締役に就任し,平成21年6月30日,代表取締役を辞任した。
ウ Fの長男であるA,Fの妻であるG及びFの二男であるHは,いずれも平成15年1月20日,原告の取締役に就任し,Aは,平成21年6月29日,代表取締役に就任した(以下,F,A,G及びHを総称して「本件役員ら」という。)。
エ 原告は,本件各事業年度において,毎年3月1日から翌年2月末日までを事業年度としていた。
(2)  本件役員らの役員報酬ないし役員給与(旧法人税法34条1項の適用される平成19年2月期については役員報酬,法人税法34条2項の適用される平成20年2月期から平成22年2月期については役員給与。以下,本件各事業年度におい本件役員らに対して支給した役員報酬ないし役員給与を「本件役員ら給与」という。)並びにFの退職慰労金(以下「本件退職給与」という。)と損金の額の算入
ア 原告は,平成18年4月12日に開催された社員総会における決議により,以下のとおりの本件役員ら給与の額を確定し,これらを所得の金額の計算上,損金の額に算入し,別表1-1の確定申告の欄記載のとおり,平成19年2月期の法人税の確定申告をした。
F ●●●
G ●●●
A ●●●
H ●●●
イ 原告は,平成19年4月26日に開催された定時株主総会における決議により,以下のとおりの本件役員ら給与の額を確定し,これらを所得の金額の計算上,損金の額に算入し,別表1-2の確定申告の欄記載のとおり,平成20年2月期の法人税の確定申告をし,その後別表1-2の修正申告の欄記載のとおり修正申告をした。
F ●●●
G ●●●
A ●●●
H ●●●
ウ 原告は,平成20年4月28日に開催された定時株主総会における決議により,以下のとおりの本件役員ら給与の額を確定し,これらを所得の金額の計算上,損金の額に算入し,別表1-3の確定申告の欄記載のとおり,平成21年2月期の法人税の確定申告をし,その後別表1-3の修正申告の欄記載のとおり修正申告をした。
F ●●●
G ●●●
A ●●●
H ●●●
エ 原告は,平成21年6月29日に開催された臨時株主総会における決議により,以下のとおりの本件役員ら給与の額を確定するとともに,Fに対し,本件退職給与●●●を支給することとし,これらを所得の金額の計算上,損金の額に算入し,別表1-4の確定申告の欄記載のとおり,平成22年2月期の法人税の確定申告をした(乙5)(なお,所得の金額について「△」を付したときは,当該金額が欠損金額であることを表し,納付すべき法人税の額について「△」を付したときは,当該金額が還付金額であることを表す。以下同じ。)。
F 〈中略〉
G ●●●
A ●●●
H ●●●
(3)  本件各更正処分等
沖縄税務署長は,平成23年6月29日,原告の本件各事業年度の法人税につき,原告が損金の額に算入した本件役員ら給与及び本件退職給与のうち,以下のとおりの不相当に高額な部分の金額については,損金の額に算入されないとして,別表1-1から1-4までの更正処分等の欄記載のとおり,本件各更正処分等をした。
すなわち,沖縄税務署長は,別紙2の1に記載したとおり,原告と類似する法人を抽出し,その代表取締役及び取締役の報酬ないし給与の額(個々の法人における最高額)のうち,代表取締役及び取締役についてそれぞれ最も高い額のものを選定したところ,本件役員ら給与のうち,選定した額を超える部分をもって,不相当に高額な部分の金額であるとした(別紙2で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。
また,沖縄税務署長は,別紙2の1に記載したとおり,原告と類似する法人を抽出し,その代表取締役の給与の額(個々の法人における最高額)のうち,最も高い額のものを選定したところ,本件退職給与のうち,選定した額(月額)にFの勤続年数15年及び功績倍率3倍を乗じた金額を超える部分をもって,不相当に高額な部分の金額であるとした。(甲1の1~4)
ア 平成19年2月期
本件役員ら給与 最高額の報酬 不相当に高額な部分
F 〈中略〉
イ 平成20年2月期
本件役員ら給与 最高額の給与 不相当に高額な部分
F 〈中略〉
G 〈中略〉
A 〈中略〉
H 〈中略〉
合計 ●●●
ウ 平成21年2月期
本件役員ら給与 最高額の給与 不相当に高額な部分
F 〈中略〉
G 〈中略〉
A 〈中略〉
H 〈中略〉
合計 ●●●
エ 平成22年2月期
本件役員ら給与 最高額の給与 不相当に高額な部分
F 〈中略〉
本件退職給与 適正な退職給与 不相当に高額な部分
F 〈中略〉
上記の平成22年2月期更正処分は,Fに対して代表取締役として支給された4か月分の役員給与●●●のうち,類似法人が代表取締役に対して支給した役員給与の最高額(年額)●●●の4か月分相当である●●●を超える●●●と,Fに対して支給された本件退職給与●●●のうち,類似法人が代表取締役に対して支給した役員給与の最高額(月額)である●●●に勤続年数15年及び功績倍率3.0倍を乗じた●●●を超える〈中略〉の合計●●●が,不相当に高額な部分の金額であるというものである。
(4)  異議申立て
原告は,平成23年8月25日,沖縄国税事務所長に対し,本件各更正処分等について,異議申立てをしたところ,同年11月24日,異議申立てを棄却する旨の決定がされた。
(5)  審査請求
原告は,平成23年12月19日,国税不服審判所長に対し,本件各更正処分等について,審査請求をしたところ,平成24年12月18日,審査請求を棄却する旨の裁決がされた。
(6)  訴えの提起
原告は,平成25年1月7日,本件訴えを提起した。
3  本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張
本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張は,後記4に掲げるほか,別紙3「本件各更正処分等の根拠及び適法性」に記載のとおりである(別紙3で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。
4  争点
(1)  本件役員ら給与のうち,不相当に高額であるとして損金の額に算入されない部分の有無及びその額
(2)  本件退職給与のうち,不相当に高額であるとして損金の額に算入されない部分の有無及びその額
5  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(本件役員ら給与のうち,不相当に高額であるとして損金の額に算入されない部分の有無及びその額)
(被告の主張の要旨)
ア 本件役員ら給与の額には,以下のとおり,法人税法34条に規定するの金額があることは明らかである。
(ア) 本件役員らの職務内容
本件役員らの平成15年1月20日から平成21年6月28日までの職務の内容については,要旨,次のとおりであるところ,これらは,いずれも酒類の製造及び販売等を目的とする一般的な法人の役員において想定される職務内容を超えているものとは認められず,本件各更正処分時における調査担当者の調査に基づいても,本件各事業年度の間に本件役員ら給与を大幅に増額させなければならないほどの職務内容の変化を示す事実は認められない。
a Aは,主に泡盛製造及び使用人への指揮監督,Hは,主に営業,資材及び設備投資を担当していたが,F,A及びHの3人で相談しながらそれら職務を行っていた。
b Aは,a協同組合と原料米の仕入れの交渉を行っていた。
c Gは,経理全般,商品の棚卸し,空き瓶の管理等の事務的な仕事を全て行っていた。
d 使用人の採用,給与,賞与などの人事関係については,本件役員らが相談しながら行っていた。
e Fは,業務の全般的な指揮監督を行っていた。
f 非常勤役員のIは,会社及び工場に時々顔を出し,経理及び事務的な仕事の指揮監督並びに泡盛製造の指揮監督を行っていた。
(イ) 原告の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況について
a 原告の収益の状況について(別表3)
原告が平成15年7月1日以降の各事業年度において計上した売上げ,売上総利益,営業利益,経常利益,役員給与等の総額,改定利益(経常利益に役員給与等を加算した金額)の金額は,別表3のとおりである(なお,平成16年7月1日から平成17年2月28日までの事業年度(以下「平成17年2月期」という。)は,決算期変更により事業年度が8か月しかないため,同事業年度の上記各金額に8分の12を乗じて12か月に換算した金額により表示している。)。
原告の売上金額は,〈中略〉
b 原告の使用人に対する給与の支給の状況と本件役員ら及びIに対する役員給与の支給の状況について(別表4,5)
原告が平成15年7月1日以降の各事業年度において支給した役員給与の総額及び使用人に対する給与の総額は別表4のとおりであり,本件役員ら及びIに支給した役員給与等の金額は別表5のとおりである(なお,平成17年2月期については,前記aで述べたのと同様に,これら総額に8分の12を乗じて12か月に換算した金額により表示している。)。
原告の役員給与の総額が〈中略〉
(ウ) 類似法人における役員給与の支給状況について
a 抽出の方法
旧法人税法施行令69条1号及び法人税法施行令70条1号に定める「その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する報酬(給与)の支給の状況」については,別紙2のとおり,原告と同業種・類似規模法人(類似法人)及び役員報酬ないし役員給与の支給事例を抽出したところ,通達指示・依頼に基づき回答があった法人は別表6-1から6-4までのとおりであり,延べ34法人が抽出された。
そして,役員報酬ないし役員給与の支給状況を把握するための法人の選定に当たっては,経常利益金額ではなく,改定利益金額によることとし,対象事業年度において,役員報酬ないし役員給与を加算した経常利益(改定利益)金額が倍半基準に該当しない事業年度を除外した(別表6-1から6-4までの改定利益の比較割合の欄参照)。
次に,旧法人税法施行令69条1号及び法人税法施行令70条1号に規定する判断基準である「事業規模が類似する」法人については,対象事業年度において,純資産額が倍半基準に該当しない事業年度を除外した(別表6-1から6-4までの純資産額の比較割合の欄参照)。
さらに,抽出法人の決算書等の記載内容を確認したところ,リキュール類など単式蒸留しょうちゅう以外の売上げが5%以上見込まれる事業年度,及び代表取締役に対する役員給与の額が前年に比較して3分の1以下となっている事業年度が認められたが,このような特殊性が高いと認められる事業年度を除外した。
以上のように,被告において,沖縄国税事務所の通達指示・依頼に基づき報告された類似法人のうち,規模,収益等の状況が原告と類似する法人における役員報酬ないし役員給与の支給事例をもって適正報酬・適正給与額を算定すべく比較検討を行い,原告と類似する法人として,事業年度により5又は4法人(以下「比較法人」という。)を抽出した(別表7-1から7-4までのとおり,別表6-1につき番号7,12,13,29及び33の各法人,別表6-2につき番号7,12,14,15及び29の各法人,別表6-3につき番号7,15,27及び29の各法人,別表6-4につき番号7,15,29及び32の各法人。)。
b 抽出の合理性
別紙2の1に記載された抽出基準は,原告と業種及び事業規模等において類似性を有する法人となるように設定したものであり,これにより抽出した類似法人の役員給与支給事例は,沖縄国税事務所長からの管内各税務署長及び熊本国税局への通達指示及び依頼といったいわゆる通達回答方式による方法に基づき,沖縄国税事務所及び熊本国税局管内の各税務署長が抽出条件に該当するものを機械的に抽出したものであるから,いずれもその抽出に当たって恣意の介入する余地はない。
したがって,抽出された役員給与事例については,正確性と普遍性が担保され,調査結果が合理的なものであることは明らかである。
c 比較法人の役員報酬ないし役員給与の支給状況との比較
別紙2及び前記aのとおりの抽出の結果,旧法人税法施行令69条1号及び法人税法施行令70条1号に定める「その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する報酬・給与の支給状況」は,別表7-1から7-4までのとおりである。
また,本件役員らに対する本件各事業年度の役員報酬ないし役員給与と比較法人の平均役員報酬ないし役員給与とを対比すると別表8-1から8-4までのとおりである。
この点,比較法人の役員報酬ないし役員給与の最高額を採用した場合には,比較法人の中にたまたま不相当に高額な部分の金額が含まれる役員給与を支給しているものがあった場合には不合理な結果となるし,平均値を算出することによって比較法人間に通常存在する諸要素の差異やその個々の特殊性が捨象され,より平準化された数値が得られるのであるから,平均値を用いることは法令の趣旨にも沿うものであり,合理的である。よって,別表8-1から8-4までの「比較法人の平均役員報酬・役員給与」欄記載の比較法人の役員報酬ないし役員給与の平均額を用いることとした。
そして,本件役員らの職務内容と比較法人の役員の職務内容とが大きく異なる事情もうかがわれないことなどに照らせば,原告が本件役員らに対して支給する役員給与の額には不相当に高額な部分の金額があることは明らかである。
(エ) 本件役員らの適正給与の額
以上のとおり,原告が本件各事業年度において本件役員らに支給した役員報酬ないし役員給与の額に不相当に高額な部分の金額があることは明らかであり,旧法人税法34条1項及び法人税法34条2項の規定により,その不相当に高額な部分の金額については,損金の額に算入されないこととなる。
そして,本件役員らの適正報酬・給与の額は,下記bの理由により,前記(ウ)bにより比較法人の支給事例に基づき算出した平均役員報酬ないし役員給与の額と考えるのが合理的というべきであり,当該適正役員報酬ないし役員給与を超えて原告が本件役員らに支給した役員報酬ないし役員給与の額(以下「過大役員給与」という。)である,下記aの金額(別表8-1から8-4までの「過大役員給与額」欄記載の金額)は,本件各事業年度における損金の額に算入されないこととなる。
a 損金の額に算入されない額
(a) 平成19年2月期
F ●●●
G ●●●
A ●●●
H ●●●
合計 ●●●
(b) 平成20年2月期
F ●●●
G ●●●
A ●●●
H ●●●
合計 ●●●
(c) 平成21年2月期
F ●●●
G ●●●
A ●●●
H ●●●
合計 ●●●
(d) 平成22年2月期
F ●●●
G ●●●
A ●●●
H ●●●
合計 ●●●
b(a) 本件役員らの職務の内容は,前記(ア)のとおりであり,酒類の製造及び販売等を目的とする一般的な法人の役員において通常想定される職務内容を超えているとは認められない。そうすると,本件役員らの適正報酬・給与の額は,多く見積もっても比較法人が支給した代表取締役及び取締役の役員報酬ないし役員給与の最高額の平均額を超えるものではないと考えるのが合理的である。
(b) また,前記(イ)a,bのとおり,原告の〈中略〉ことが相当と認められる個別事情も認められないことからも,比較法人が支給した代表取締役及び取締役の役員報酬ないし役員給与の最高額の平均額を上回るだけの対価を認めなければならない理由は存在しない。
イ 原告の主張に対する反論
(ア) 本件役員らの職務の内容
泡盛メーカーの役員の一般的な職務内容としては,①製造計画及び製造に係る指揮監督・意思決定等,②営業活動に係る指揮監督・意思決定等,③設備投資の計画・意思決定等,④従業員の採用・給与等の人事業務,⑤財務状況の把握及び分析,⑥法人業務全般の指揮監督,⑦法人を代表しての対外折衝などが考えられ,他に蔵置場及び蔵置所を所有する場合は,その指揮監督等も役員の職務となり得る。
原告の主張する追加業務は,上記一般的な職務内容に含まれ,役員給与を増額させなければならないほどの特段の職務内容の追加があったとは認められない。
また,原告の各事業年度の粗利益率及び改定営業利益率は,〈中略〉にあり,原告の主張する本件役員らによる製造機械及び製造ラインの製作により,収益構造がどのように改善したかは判然としない。
(イ) 原告の収益の状況と本件役員ら給与の額について
原告は,〈中略〉過大とはならない旨主張する。
しかしながら,役員報酬の伸び率が利益額の伸び率と一致するとの前提を置く根拠はないし,平成18年2月期以前の本件役員ら給与の額が適正額よりも抑えられていたと認めるべき根拠はないことなどからすると,原告の主張は理由がない。
(ウ) 原告の使用人に対する給与の支給の状況と本件役員ら給与の額について
原告は,本件役員ら給与の額を検討するに当たり,使用人に対する給与の支給状況を検討すべきではなく,この検討が必要となるのは,使用人兼務役員の場合に限られる旨主張する。
しかし,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条は,職務執行の対価として相当である役員給与額を判断する基準として,その勘案すべき要素の一つに,その法人の「使用人に対する給与の支給の状況」を明示して挙げているところ,使用人は法人と雇用関係にあり,自らの労働の対価を決定する権限を持たないことから,使用人に対する給与の額については恣意性の入る余地が少ないと考えられるのに対し,法人の役員は,法人の委任を受けてその業務を執行する立場にあり,法人が獲得した利益の分配にあずかる地位にもあるため,その給与の額のうちに,法人利益の分配と目される部分の金額が潜在する可能性があるのであるから,役員給与の相当性を判断する要素の一つとして,使用人に対する給与の支給状況を採用し,これに照らして判断することは客観的かつ合理的であるというべきである。
したがって,使用人に対する給与の支給状況の検討が必要となるのは,使用人兼務役員の場合に限定されるとする原告の主張には理由がない。
(エ) 比較法人の抽出
原告は,企業経営者の場合には,高い経営能力を有する者がそうでない者よりも多くの役員報酬を受けることになることを前提として主張するが,そのような前提の存在を認めるべき根拠はなく,経営能力の高低と役員給与額の高低が必ずしも一致するということはできない。そもそも,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号においては,役員給与の相当性を判断するに当たり,その法人と同種の事業を営む法人で事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況に照らして判断することとされているところ,高い経営能力を有する役員が必ずより多くの役員給与を受けるという原告の上記主張を前提とすれば,その判断の際には,当該役員の経営能力と類似法人の役員の経営能力を個々に比較して優劣をつけるという判断をする必要があることとなるが,そのような判断は極めて主観的,恣意的なものとならざるを得ず,客観性を欠くこととなるから不合理である。
a 倍半基準
総売上金額は法人の事業規模を示す最も重要な指標の一つであることから,総売上金額に着目した基準である倍半基準は,事業規模の類似する同業者を抽出するための基準として優れた合理性を有するものとして一般に承認されているものであり,他方,旧法人税法施行令69条1号及び法人税法施行令70条1号が定める類似法人の抽出は,適正役員給与月額を算定する一つの資料,指標を得るための手段にすぎないことに鑑みれば,類似法人の範囲を事業規模の点から一定の範囲内に絞るために使用される倍半基準の適用においては,事業規模に関する指標である売上金額のみに適用することで十分というべきである。
b 抽出地域の限定及び業種の限定
原告は,同業種法人は,日本全国から,酒類製造業全部について抽出すべきである旨主張する。
しかし,製造業における製造コストや設備費,人件費等は地域によって異なるのが一般的であり,比較的近接した地域においては,製造コスト等に類似性が認められること,また,一般的にみて同業種・類似規模で同地域にあれば,その法人も同様の経済状況にあり,その役員の役務に対する給与として通常支払われる額も類似するといえることから,類似法人の抽出範囲を沖縄国税事務所及び熊本国税局管内としたことに合理性が認められることは明らかである。
また,類似法人を抽出する上で,業種を同業種の法人に限定することは,旧法人税法施行令69条1号及び法人税法施行令70条1号が「同種の事業を営む法人」と規定することに基づくものであるところ,その抽出においては,業種,業態,規模(売上金額,期末資産合計額,従業員数),収益状況等ができるだけ当該法人と類似するものであることが望ましいとされているのであるから,類似法人を抽出するに当たり,原告の製造する酒類のほとんどが単式蒸留しょうちゅうであることを踏まえて,単式蒸留しょうちゅうを製造する法人を抽出することに何ら不合理はない。
仮に業種を酒類製造業界全体とすれば,原材料も製造工程も全く異なる酒類を製造する法人をも同業種として含めることとなるが,本件においては,かかる基準で抽出しなければ類似法人が得られないなどの特段の事情が生じているものではないから,酒類製造業界全体という抽出範囲を採用すべき合理的な理由はないというべきである。
(オ) 本件役員ら給与の相当額
本件において,本件役員ら給与の額のうちの不相当に高額な部分の金額の算定に当たっては,別表7-1から7-4までのとおり,本件役員らと同様の地位にある比較法人の代表取締役及び取締役の給与額を採用することとし,同様の地位にあるものが複数名いる場合には,より保守的に役員給与の支給額の最高額を採用した上,その平均値を算定している。
ウ 法人税法34条2項の適用について
原告は,平成17年の会社法の改正,平成18年の法人税法の改正により,役員賞与に対する規律が役員報酬に対する規律と変わらないものとなり,損金算入できる役員給与の支給方法があらかじめ支給額を決定せねばならないものに限定されることとなったから,旧法人税法34条1項が担ってきた隠れた利益処分及び恣意的な役員報酬の給付の防止という意義は消失したとして,法人税法34条2項は死文化しており,同項が納税者に適用されれば,違法事態の発生を意味するなどと主張する。
しかし,原告の主張は,合理的な根拠を示すことなく,独自の見解を展開して法人税法の規定について死文化したなどと主張するもので理由がないところ,旧法人税法34条1項及び法人税法34条2項の趣旨,平成18年法律第10号による法人税法34条の改正の趣旨を踏まえでも,原告の主張は理由がない。
(ア) 旧法人税法34条1項及び法人税法34条2項の趣旨について
旧法人税法34条1項及び法人税法34条2項の趣旨は,法人によっては実際は賞与に当たるものを報酬の名目で役員に給付する傾向があるため,そのような隠れた利益処分に対処し,課税の公正を確保しようとするところにある。
a 旧法人税法34条1項の趣旨
法人が支給する役員給与については,役員に直接的に経済的利益を帰属させるという態様からお手盛り的な支給が懸念され,会社法制上も特段の手続的規制に服するものとされているところ,税法上の観点からは,このような性質の経費の損金算入を安易に認め,結果として法人の税負担の軽減を容認することは,課税の公平上問題がある。加えて,役員給与については,支給を受ける側の課税関係において,未払計上の場合にあっては所得税法上の賞与に該当しない部分について現実の支払時点まで個人所得税の負担が生じないこととされ,また,未払計上でない場合にあっても支給額に応じて逓増する給与所得控除部分が課税されないことから,法人段階での安易な損金算入を認めれば,法人・個人を通じた税負担の軽減効果が高く,課税上の弊害が極めて大きい仕組みとなってしまう。
そこで,我が国の税制では,従来から役員給与の支給の恣意性を排除することが適正な課税を実現する上で不可欠であると考え,具体的には,法人段階で損金算入される役員給与の範囲を職務執行の対価として相当とされる範囲に制限することとされてきたところである。これは,役員報酬が不相当に高額であれば役務提供の対価として当該事業年度の期間収益に対応する費用という性格を超えたものになるという考え方によるものである。
b 平成18年の法人税法34条の改正内容及びその趣旨について
平成18年の法人税法34条の改正は,平成17年11月に「役員賞与は発生した会計期間の費用として処理する」との会計基準が明示され,平成18年に施行された会社法においては,役員報酬と利益処分とされてきた賞与との区分なく職務執行の対価である報酬等とされるなど,周辺制度が変更されたことを機に,役員給与の損金算入の在り方を見直すこととしたものである。
平成18年の改正後の法人税法34条においては,役員給与が職務執行の対価として相当な範囲内か否かの基準を,従来の役員報酬に相当するものだけでなく,事前の定めにより支給時期や支給額に対する恣意性が排除されているものや,法人の利益と連動する役員給与についてもその適正性や透明性が担保されていることを条件に損金に算入することを認めることとしたものである。
c 旧法人税法34条1項の規定の内容及び趣旨は法人税法34条2項の規定に引き継がれていること
法人税法34条は前記bのとおり改正がされたが,役員報酬について不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額を法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入しないとする旧法人税法34条1項の規定内容は,改正後においても削除されることなく法人税法34条2項に引き継がれている。このことからすれば,課税の公平性を確保する観点から,職務執行の対価としての相当性を確保し,役員給与の金額決定の背後にある恣意性の排除を図るという,旧法人税法34条1項の基本的な考え方は,平成18年の改正後も継続しており,その意義は何ら変わるものではないと解される。
(イ) 従前の役員給与の損金不算入規定が担ってきた意義は消失したとの原告の主張に理由がないこと
平成18年の改正後の法人税法34条の下で,同条1項に基づき損金算入が認められる事前確定届出制度等により,期中に恣意的な役員給与の給付を行うことがなくなったとしても,期初の段階で役員給与の総支給額を恣意的に決定することは依然として可能であり,例えば,同族会社に代表される閉鎖的な性格の強い法人においては,できる限り役員給与を拡大し,損金算入額を多くしようとすることが当然に想定され,株主総会等で決定される役員の給与額は必ずしもその職務執行の対価として相当であるとは限らない。
また,前記(ア)aで述べたとおり,法人段階での安易な損金算入を認めてしまえば,法人・個人を通じた税負担の軽減効果が高く,課税上の弊害が極めて大きく生じることとなるのは,平成18年の改正前後で変わるところはない。
(ウ) 原告が主張するように,期初において予算計画を策定して役員給与を決定していたとしても,そのことから直ちに法人税法34条2項を適用する余地がなくなるような法令上の根拠は認められない。
この点をおくとしても,税務調査時における原告の説明によると,平成22年7月12日時点では,報酬については業績に応じて決めているのであって,行き当たりばったりに決めているわけではないと説明していたが,これに先立つ平成22年2月10日時点では,役員報酬額は経営状況を見て役員4人で決めており,算定根拠及び参考資料とした資料はないとしているのであって,説明が変遷している上,当初の説明は,本件における原告の主張と齟齬している。
また,原告が異議申立て及び審査請求段階において添付書類として提出した予算計画書(乙31,32参照)は,本件で提出する予算計画書(甲6)と数値に多数の食い違いがあり,実際に後者の予算計画書に記載された予算計画が存在していたかどうかについては合理的な疑いが存する。
(エ) したがって,法人税法34条2項の意義が「究極的な場合」に過大役員報酬として否認できるようにするためにあるとか,死文化したなどという原告の主張は,法令を正解せずに独自の見解を述べるものにすぎず,何ら理由がない。
エ 本件各更正処分等の違憲性について
(ア) 原告は,本件各事業年度を含む現在においては,同業種・類似法人の役員給与データを入手できる社会状況が消失していることから,法人税法34条2項の不相当に高額な役員給与の額を把握する上で,法人税法施行令70条1号イの規定を用いるとしても,納税者側で認識可能な3要素(当該役員の職務の内容,その内国法人の収益,その内国法人の使用人に対する給与の支給状況)を用いて相当額を算定し,同業種・類似法人の役員給与額を確認的に使用するという運用以外には,憲法84条に違反しない運用方法はなく,この方法に反した処分は,納税者が予測できない事項に基づくものとして,憲法84条に違反する旨主張する。
しかしながら,租税法においては,多分に専門的技術的かつ細目的な事項が存在するから,それぞれ諸条件等が異なる個々の課税客体について,公平に課税するとともに,課税標準算出の手続等を明確にするためには,専門的で複雑な規定を必要とし,これらの課税要件全てを法律で規定することは実際上困難であって,一定の範囲で課税要件等を法律よりも下位の法形式である政令省令等に委任されることも憲法上許容されている。
また,類似法人の役員給与額を確認的に用いる以外の運用は採り得ない旨の主張は,法人税法34条2項及び法人税法施行令70条1号の文理を離れた法令にない要件を付加する独自の解釈に基づくものといわざるを得ず,これらの規定の解釈としてそもそも採用し得ない。
原告の主張するとおり,納税者が容易に入手できる3要素のみを殊更重視すると,恣意的な判断に流れやすくなることとなり,むしろ法的安定性と予測可能性の確保をその機能とする租税法律主義(憲法84条)の要請に反することともなってしまう。
その上,原告の主張においても,上記3要素を用いて相当額を算定した上で,類似法人の役員給与額を確認的に使用するという方法が,具体的にどのようなものであるのかは明らかでないし,類似法人の役員給与データを入手できる社会状況が消失した旨の主張も,財務省や国税庁がホームページ上で公表している「法人企業統計年報特集」,「民間給与実態統計調査」や税務関係の雑誌である「週刊税務通信」の掲載記事や,税務関係の書籍にも参考となる資料が数多く掲載されているし,b社の○○レポートのサンプルには,役員数や役員報酬の金額が記載されているのであって,これらの資料から,類似法人の一人当たりの平均役員給与額を算定することも可能であることからすれば,理由がない。
(イ) 原告は,本件各更正処分の適正役員報酬ないし役員給与を超えて原告が本件役員らに支給した役員報酬ないし役員給与(過大役員給与)の額は,事業規模が類似する同業種法人の役員給与支給額を用いない限り,一義的に導くことが決してできず,原告において本件各更正処分の適法性を検証することが不能な処分となっているから,適正手続の保障を定めた憲法31条に違反する旨主張する。
しかし,憲法31条が課税処分に及ぶとしても,それは飽くまで行政手続である課税処分における適正手続の保障にとどまり,それを超えて,納税者が課税処分に至る経過についてその根拠となった資料等を網羅的に逐一検証できなければならないことまでをも保障したものとは解されない。
しかるに,本件各更正処分は,通則法28条所定の更正通知書に法人税法130条2項所定の更正の理由を附記するなど,租税法規の規定に沿って適法に行われたものであり,憲法31条に何ら違反しない。
(ウ) 原告は,被告が採用した総売上金額の0.5倍以上2倍以下の範囲内(倍半基準)で一定の基準に従い類似法人を抽出し,その各類似法人の代表取締役の給与額及び取締役のうち最高の給与額の平均額を用いて,本件役員ら給与に不相当に高額な部分の金額があるかを判断するという方法(以下,このような方法により役員給与に不相当に高額な部分の金額があるかを判断する方法を「平均額法」という。)では,少なくない上場企業が過大役員給与の認定を受けるべきであるのに,現実には,被告はその上場企業に対して過大役員給与を理由とする課税処分を一切行っておらず,一方で原告に対して本件各更正処分等をしたのは,合理的な理由を欠いた不平等な課税処分であり,憲法14条にも違反すると主張する。
しかし,原告の主張する各上場企業の比較のみをもって,過大役員給与の認定を受けるべきか否かを判断することはできないし,実際に過大役員給与を理由とした課税処分がされたか否かも明らかではないから,原告の主張は前提を欠き,失当である。
また,憲法14条1項は,国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく,合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨の規定であって,事実上の差異に相応して法的取扱いを区分することは,その区分が合理性を有する限り,何ら同条に違反するものではない。ここで,法人税法34条2項は,「不相当に高額な部分の金額」を捉える上で,類似法人の役員給与の支給状況のみならず,「当該役員の職務の内容,その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況」を踏まえて相当額を把握することとしているのであり,原告と原告が取り上げた各上場企業との間で,類似法人の給与の検討において倍半基準や平均額法を用いるという条件のみを一致させたとしても,そのことのみで,両者において,同項適用上,事実上の差異がないということはできず,原告の主張には理由がない。
(原告の主張の要旨)
ア 被告は,本件役員ら給与が過大であり,その相当額がいくらかについて主張立証責任を負っているところ,以下のとおり,被告の主張立証は失当である。
(ア) 本件役員らの職務の内容
被告は,泡盛メーカーの役員の職務内容を抽象的に述べるところ,このように抽象的に職務内容を把握すれば,どの泡盛メーカーの役員の職務内容も同一のように見えてしまうものとなろう。しかし,現実には,各企業ごとに経営成績や財政状態は全く異なった結果となっており,これは各社の役員の具体的職務執行の違いによるものであるところ,原告は,他の泡盛メーカーと比して,圧倒的に良好な成績を収めているのである。
本件役員らは,各種製造機械及び製造ラインを自らの力で作ることができる特殊技術を有し,安く購入してきた中古機械により,原告の商品製造に最も適した機械・製造ラインを製作するということを行ってきており,これにより優良な収益構造をもたらしている。
また,原告においては,平成18年以降,本件役員らの職務内容が大きく追加されており,これに伴い,役員給与が増額された。
a A
原告は,Aを担当役員として,平成18年4月に研究設備を備えた研究所を立ち上げ,新たに研究開発業務・科学的品質管理業務を行うようになった。
また,原告は,平成18年6月,東京営業所を開設し,Aが同営業所の担当責任役員として管理監督業務を行うようになった。
このように,Aには,平成18年から,2つの職務が追加されたことから,〈中略〉された。
b G
原告は,従前,社会保険労務士事務所や税理士事務所にアウトソーシングしていた財務データ作成作業を,平成17年頃から徐々にGを担当役員として自社で行う方向に切り替えるようになり,平成18年以降,自社で独立して財務データ作成作業をするようになった。
このように,Gには,平成18年から,新たな職務が追加されたことから,〈中略〉された。
c H
原告は,従前,沖縄・九州・関西を営業エリアとしていたが,平成18年6月に東京営業所が開設されたのを機に,関東以北及び海外にまで営業エリアが広がることとなったため,営業担当役員であるHの営業エリアが広がることとなり,その成果として〈中略〉することとなった。
このように,Hには,新たな職務が追加されたことから,〈中略〉された。
d F
前記aからcまでのとおり,各役員の担当職務が追加されたことに伴い,代表取締役社長であるFが総理しなければならない職務も追加されることとなった。
このように,Fには,新たな職務が追加されたことから,〈中略〉された。
(イ) 原告の収益の状況と本件役員ら給与の額について
被告は,原告の〈中略〉ことを非難する。
しかし,●●●が適正額の最高額であることの主張立証はなく,むしろ平成8年頃以降,原告の売上高や利益額の増加割合に比して,役員らの給与の額の増加割合は大幅に抑えられていたのであって,●●●が適正額の最高額であるとはいえない。
(ウ) 原告の使用人に対する給与の支給の状況と本件役員ら給与の額について
役員は経営判断を行うのに対し,使用人は経営判断を行わないのであって,両者の職務内容は質的に全く異なり,役員給与の額と使用人に対する給与の額とは,そもそも何らの比例関係に立つものではない。
したがって,当該役員が使用人兼務役員である場合を除いては,役員給与の過大性を判断するに際し,使用人に対する給与の支給の状況を検討することは,そもそも失当である。
(エ) 比較法人の抽出
経済合理性に照らすと,優秀な経営者は,そうでない経営者よりも役員報酬が高くなり,また,同等の能力の経営者同士は,同等の水準の役員報酬になるのであるから,本件役員ら給与が適正であるかを検討するに当たり他の法人の役員給与の額を用いる場合,かかる他の法人の役員は,本件役員らと同等以上の経営能力を持つ者となっていなければならない。
そして,このように比較する際に他の法人を抽出するに当たっては,客観性を担保できる程度の相当程度の数の法人を抽出する必要があり,同業種法人は全て漏れなく抽出されていなければならない。
a 倍半基準
被告が採用する倍半基準によると,売上高が2分の1から2倍の範囲に入る法人のみを抽出し,それ以外の法人は全て抽出しないこととなる。
しかし,費用低減の重要性が認識される現代の経営において,役員の経営能力が,売上げが2倍を超える法人の経営能力と同等ないしそれ以上あるという例は多数存在するから,倍半基準によると,本来抽出されなければならない同等の経営能力を有する役員に係る同業種法人の抽出漏れを招いてしまう。
実際,本件においても,本件役員らと同等ないしそれ以上の経営能力を有する役員に係る同業種法人である〈中略〉であるため,比較法人として抽出されていない。
b 抽出地域の限定及び業種の限定
同等の経営能力を有する役員に係る同業種法人は,日本全国から漏れなく抽出されなければならないが,被告は,沖縄国税事務所・熊本国税局管内に限定して抽出しており,このような抽出方法は失当である。
また,清酒業と焼酎業は,製造面・販売面において類似性が高いという特徴があり,原告と比較する法人の抽出に当たっては,単式蒸留しょうちゅう製造業のみならず,酒類製造業全部を抽出すべきところ,被告は,単式蒸留しょうちゅうに業種を限定して抽出しており,このような抽出方法は失当である。
(オ) 比較法人の資料から適正給与額を導く手法
被告は,本件役員ら給与の額が,比較法人の役員給与の平均額であると主張する。
しかし,役員給与は各法人において具体的事情に応じ個別的に定めているもので,類似法人として業種等の条件がほぼ同一の法人を抽出できた場合であっても,法人間で報酬額に多少の差異があるのが通常であるゆえ,そもそも平均値が適正給与額の上限であるとすべきことには,何らの合理的理由もない。
また,経済合理性に照らしても,優秀な経営者は,そうでない経営者よりも役員給与が高くなり,また,同等の能力の経営者同士は,同等の水準の役員報酬になることからすれば,被告の主張が正しいものとなるのは,本件役員らの経営能力が,比較法人の役員らの平均以下であることが主張立証されなければならないが,そのような主張立証は一切ない。
さらに,適正給与額の上限が,比較法人における役員給与の最高額とするには,本件役員らの経営能力が比較法人の役員と比べて最高に秀でたものとなっていないといえなければならないところ,被告からはそのような主張立証は一切ない。
したがって,適正給与額が,比較法人の役員給与の平均額であることはもとより,最高額であるともいえず,比較法人の資料から適正給与額を導く手法は,いずれも失当である。
イ 法人税法34条2項の適用について
過大役員給与を定めた法人税法34条2項は,以下に述べるとおり,既に死文化した規定であり,同項を原告に適用すること自体がそもそも誤っており,本件各更正処分等は取り消される必要がある。
(ア) 平成18年の法人税法改正
平成17年に会社法が成立する前は,役員賞与は利益処分と位置付けられており,これを受けて旧法人税法では役員賞与は損金不算入と規定されていた(平成18年法律第10号による改正前の法人税法35条)ところ,役員賞与として支給すべきものを役員報酬名目で支給するという隠れた賞与支給が横行すると,当該規定は骨抜きになってしまい,期中に納税額を抑えるだけのために合理的な理由なく役員報酬を増額する等の恣意的な役員報酬の給付も許してしまうことになるため,これらを防止すべく,過大役員報酬の規定が置かれた。
しかし,平成17年の会社法の成立に伴い,利益処分とされていた役員賞与は,費用として整理され,平成18年法律第10号による改正前の法人税法35条は,削除されることとなり,隠れた賞与支給は観念することすらできなくなったのであり,また,平成18年法律第10号による改正により,法人税法34条1項は,損金算入が認められる役員給与の支給方法は,定期同額給与(同項1号)又は事前確定届出給与(同項2号)という期初段階であらかじめ支給額を決定しなければならないものに限定されることとなり,期中における恣意的な役員給与の支給も不可能となった。
このように,平成18年の法人税法の改正によって,隠れた賞与支給概念が消失し,期中における恣意的な役員給与の支給が不能となったのであって,法人税法34条2項の趣旨は実現されて死文化し,納税者への同項の適用は観念されないものとなった。
(イ) 被告の主張の論理的帰結によっても法人税法34条2項は死文化したとの結論に至ること
被告は,法人税法34条2項の趣旨は,隠れた賞与支給の防止にあると主張するところ,前記(ア)で述べたところからすれば,平成18年の法人税法改正によって法人税法34条2項の規定は死文化した,との内容に帰結する。
したがって,被告において,同項を納税者に適用するとの事態は本来あってはならず,これを適用すれば,異常事態の発生を意味するから,これを適用して課税した本件各更正処分等は,取り消されるべきである。
(ウ) 原告への法人税法34条2項の適用の可否
法人税法34条2項の規定が存置されたのは,損金算入できる役員給与の支給形態が,定期同額給与と事前確定届出給与の二つに限定されることとなり,期中にその支給額を変更することについて,極めて厳しい制限がかかるようになったことからすれば,期初の段階において,事業継続のために必要な利益が確保されないような予算計画が立てられ,その原因が役員給与の高額化にあるというような究極的な場合に過大役員報酬として否認できるようにするためであり,このような場合に適用されるにすぎない。
しかるに,原告においては,新事業年度開始の1ないし2か月前から予算計画の作成を開始し,売上高,粗利益率,売上総利益,必要的販管費及び事業利益を客観的合理的に算出した上,目標経常利益の枠内で役員報酬の支給枠を算出し,最終的にその支給枠の中で役員報酬を決定してきたのであって,期初の段階で必要な利益が確保されないような予算計画が立てられてはいないから,法人税法34条2項の適用の余地はない。
ウ 本件各更正処分等の違憲性について
(ア) 法人税法34条2項,法人税法施行令70条そのものは違憲性を有するものではないが,憲法84条の趣旨からすれば,納税者側からも十分に認識可能な,法人税法施行令70条1号イで明示された要素のうち,①当該役員の職務の内容,②その内国法人の収益,③その使用人に対する給与の支給の状況に基づき,職務対価相当額を求めた後,その相当性補強の一環として,④事業規模類似の同業種法人における役員給与の支給状況を用いて確認する場合には,納税者の予測可能性の担保されたもので,特に違憲の問題は生じない。
しかし,上記④を用いなければ職務対価相当額が導かれないのであれば,法律で納税者側で把握することの不可能な事項によって課税処分を行うことが法定されていない限り,納税者の予測可能性が害された違憲の課税であるというべきところ,法人税法34条2項には,その旨の明文の規定がないから,本件各更正処分等は,憲法84条に反するものである。
(イ) 中小企業である納税者側において,事業規模が類似する同業種事業法人における役員給与支給額を把握することは,現在不可能であり,課税庁から事業規模類似同業種法人の役員給与支給額が提示されても,法人名等の一切が秘匿されていることにより,その内容が正しいか,意図的に納税者側に有利な資料が除外されていないか,といったことを納税者側では一切検証することができない。
そして,本件各更正処分の過大役員給与認定額は,事業規模類似同業種法人の役員給与支給額を用いない限り,一義的に導くことが決してできない金額となっており,原告において,その適法性を一切検証することが不能となっているから,本件各更正処分は,憲法31条に違反するものとして取り消されなければならない。
(ウ) 被告主張の倍半基準及び平均額法により,上場企業の役員給与について検討すると,自動車業界については,c社の同業種類似法人として抽出されるd社及びe社の役員給与と比較して,c社の代表取締役であるJの役員給与は,過大役員給与となり,電気機器業界については,f社の同業種類似法人として抽出されるg社,h社,i社,j社及びk社の役員給与と比較して,f社の代表取締役であるKの役員給与は,過大役員給与となり,総合商社については,l社の同業種類似法人として抽出されるm社,n社,o社及びp社の役員給与と比較して,l社の代表取締役であるLの役員給与は,過大役員給与となる。
被告は,上記各上場企業については,過大役員給与額に係る課税処分を行わず,原告に本件各更正処分をしたところ,合理的な理由を欠いた不平等な課税処分であるから,本件各更正処分は,憲法14条に違反する。
(2)  争点(2)(本件退職給与のうち,不相当に高額であるとして損金の額に算入されない部分の有無及びその額)
(被告の主張の要旨)
ア Fに支給された本件退職給与の額には,以下のとおり,法人税法34条2項に規定する相当であると認められる金額を超える部分の金額があることは明らかである。
(ア) Fのその内国法人の業務に従事した期間について
Fは,原告が設立された昭和60年8月28日から原告の取締役として業務に従事しているが,平成21年6月30日に原告の代表取締役を辞任した後も原告の取締役として登記されていることからすれば,形式的には分掌が変更されたのみであり,退職した事実は認められない。
しかしながら,分掌変更後の給与の額がそれ以前の半分以下となり,かつ,非常勤になったことからすれば,分掌変更の時をもって退職したと同様の事情にあると認められなくもない。
そうすると,本件役員が原告の業務に従事した期間は,24年と考えるのが相当である。
(イ) 退職の事情について
Fの退職に係る事情についてみると,原告には役員の従事期間等に関する規定はないことから,いわゆる定年退職には該当せず,また,健康上の理由など特殊事情も認められない。
(ウ) 類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況について
法人税法施行令70条2号に定める「その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況」については,別紙4のとおり,類似法人の退職給与の支給事例を抽出した。
a 功績倍率法について
法人税法施行令70条2号に規定される,従事した期間,退職の事情,類似法人の退職給与の支給状況等に照らし「その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額」を具体的に判定するためには,功績倍率法(退職する役員の最終月額給与の額に,その役員のその内国法人の業務に従事していた年数及び功績倍率を乗じて算出する方法)が客観的であり合理的と認められる。
b 類似法人の類似する役員の対処金の支給状況との比較
原告におけるFの退職給与の額の算定における功績倍率は3倍であるところ,類似法人における功績倍率は別紙4の3のとおり2.7倍である。
したがって,原告が採用した功績倍率は類似法人が採用した功績倍率を0.3ポイント上回るが,類似法人が1社しか抽出できなかったこともあって,直ちに原告が採用した功績倍率が高率であるとまでは認められない。
また,類似法人の代表取締役の退職の事情は定年であるが,原告には役員に対する定年等に関する規定は存在しないことから,必ずしも同様の事情にあるとは認められないが,退職の事情が定年であるか否かによって功績倍率に大幅な影響があるものとも認められない。
一方,功績倍率が,その退職した役員のそれまでの法人に対する業績への貢献度合いを示すものであることからすれば,原告自らが採用した功績倍率が類似法人のそれとわずか0.3ポイントしか乖離がないことから,原告が採用した3倍の功績倍率は妥当な範囲と考えられる。
(エ) Fの適正退職給与の額
Fの適正役員給与の額は,前記(1)(被告の主張の要旨)ア(エ)で述べたとおりであり,功績倍率法における最終月額報酬の額は〈中略〉(別表7-4参照)となり,当該金額に本件役員の原告の業務への従事期間である24年と,原告が採用した功績倍率3倍を乗じた金額は●●●となる。
したがって,Fに支給した本件退職給与の額には法人税法34条2項に規定する相当であると認められる金額を超える部分の金額があることが明らかであり,本件退職給与●●●のうち,適正退職給与の額である●●●を超える●●●は,平成22年2月期の損金の額に算入されず,平成22年2月期更正処分における役員退職金の損金不算入の額とした金額を上回る。
イ 原告の主張に対する反論
(ア) 比較法人の適切性
原告は,別表7-4の15番及び32番の法人は,比較対象として適切でないと主張する。
しかし,上記各法人を含めた比較法人は,前記(1)(被告の主張の要旨)ア(ウ)のとおり,恣意の介入する余地のない客観的な条件によって抽出されたものであり,このような過程で抽出された法人を適切な理由もなく排除するのは適正額の算定の合理性を保つ上で許されるものではない。
すなわち,売上高や改定利益の金額と役員給与の適正額は必ずしも比例的関係になく,改定利益の金額や自己資本比率が低いことをもって原告よりも経営判断が劣っていると断言できるとはいい難く,役員給与の適正額が低くなるともいい難いし,そもそも原告よりも経営判断が劣っているか否かという要素は極めて主観性が強く,恣意的な判断が介入する余地が大きいから,役員給与の適正額の算定において考慮すべきものとは認められない。
(イ) 功績倍率
原告は,Fの功績倍率は,Fの功績やIの功績倍率が●●●であったことなどからすれば,●●●とするのが適正であると主張する。
しかしながら,Iへの退職給与が税務調査の際に否認されなかったとしても,功績倍率が●●●であることにつき税務上何ら問題がないと是認したものではないことはもとより,その後の事業年度の他の役員らに対する役員給与等に係る申告内容をそのまま是認する根拠となるものではない。
また,平均功績倍率法は,当該退職役員の当該法人に対する功績はその退職時の報酬に反映されていると考え,同種類似の法人の役員に対する退職給与の支給の状況を平均功績倍率として把握し,比較法人の平均功績倍率に当該退職役員の最終報酬月額及び勤続年数を乗じて役員退職給与の適正額を算定する方法であるところ,ある法人のある役員の退職給与に係る適正額の算定において,当該法人の他の役員の功績倍率を直接用いて算定すべきものではない。
前記ア(ウ)のとおり,Fの功績倍率は3.0としたのは何ら不合理ではなく,原告の主張は理由がない。
(原告の主張の要旨)
本件退職給与については,前記(1)(原告の主張の要旨)で述べたもののほか,以下の点により,不相当に高額であるとはいえない。
ア 比較法人の不適切性
被告が比較法人とする4法人(別表7-4)のうち15番と32番は,比較の対象として不適切である。
(ア) 15番
売上高や改定利益(経常利益に役員給与を加算した額)は,役員給与の支給原資であり,これらが原告より低ければ,当該法人の役員給与の適正額は,高度の蓋然性をもって原告の役員給与より低いこととなる。
この点,15番の法人は,別表6-4のとおり,売上高と改定利益の双方の数値が原告より大幅に小さく,比較の対象として不適切であり,除かれなければならない。
(イ) 32番
32番の法人は,原告より売上高は多いが,改定利益が原告より大幅に劣っており,経営効率が非常によくない。自己資本比率の点でも,原告は●●●であるのに,32番の法人は55%と極端に悪い。
このように,32番の法人は,経営陣の経営判断が原告と比較にならないほど劣っており,比較の対象として不適切である。
(ウ) 小括
別表7-4から15番及び32番の法人を除くと,最終月額報酬は〈中略〉となり,功績倍率を3としてFの退職金適正額を計算すると,●●●となる。
〈中略〉
本件退職給与は●●●と上記の範囲内に入るものであるから,何ら過大ではない。
イ 功績倍率
Fは,零細泡盛製造業者にすぎなかった原告を,他の酒類製造企業と競争可能な泡盛製造の代表企業にまで押し上げ,酒類業界におけるその不動の地位を確立せしめるに至った。
また,Fは,経営者として,原告に多大な資本蓄積をもたらしてもおり,他にも先見性の高い経営判断を行ってきている。
平成17年2月期にIが役員を退任する際,功績倍率を●●●とし,沖縄税務署の調査を受けても何ら指摘されなかったことからすると,この功績倍率は適正であることとなる。そして,Iの功労加算割合は30%として算定されたものと評価される一方,上記のような業績への貢献をしたFの功労加算割合は,50%と評価すべきものであるから,Fの功績倍率は●●●とするのが適正である。
〈中略〉
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(本件役員ら給与のうち,不相当に高額であるとして損金の額に算入されない部分の有無及びその額)
(1)ア  旧法人税法34条1項は,内国法人がその役員に対して支給する報酬の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入しない旨を定めている。この規定の趣旨は,役員報酬は役務の対価として企業会計上は損金の額に算入されるべきものであるところ,法人によっては実際は賞与に当たるものを報酬の名目で役員に給付する傾向があるため,そのような隠れた利益処分に対処する必要があるとの観点から,役務の対価として一般に相当と認められる範囲の役員報酬に限り,必要経費として損金算入を認め,それを超える部分の金額については損金算入を認めないことによって,役員報酬を恣意的に決定することを排除し,実体に即した適正な課税を行うことにあると解される。
そして,旧法人税法34条1項は,平成18年法律第10号により改正されているところ,同改正は,会社法制や会計制度において,従前は利益処分として会計処理されてきた役員賞与について,費用として会計処理されることとなるなど制度が変更されたことを機にされたものである(乙19,20)。
同改正後の法人税法34条は,内国法人がその役員に対して支給する給与について,同条1項において,定期同額給与,事前確定届出給与のうち一定のもの又は利益連動給与のうち一定のもののいずれにも該当しないものの額は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入しないものとし,同条2項において,同条1項の規定の適用があるものを除き,不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入しない旨を定めているところ,これも旧法人税法34条1項と同様に,課税の公平性を確保する観点から,職務執行の対価としての相当性を確保し,役員給与の金額決定の背後にある恣意性の排除を図るという考え方によるものと解される。
イ  そして,旧法人税法施行令69条は,旧法人税法34条1項の規定を受けて,「不相当に高額な部分の金額」を,同条1号又は2号のいずれか多い金額とし,同条1号において,役員に支給した報酬のうち,当該役員の職務の内容,当該法人の収益及び使用人に対する給料の支給の状況,当該法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員報酬の支給の状況等に照らし相当であると認められる金額を超える部分の金額と定め,法人税法施行令70条1号も,役員に対して支給した給与について同様に定めている。
ウ  そこで,以下においては,上記のような旧法人税法34条1項及び法人税法34条2項の趣旨を踏まえ,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号の規定に照らし,本件役員ら給与の額が,「不相当に高額な部分の金額」を含むものであるか否か及びその額について,検討することとする。
(2)  後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告の事業の内容等,本件役員らの職務の内容,原告の収益及びその使用人に対する給料の支払の状況,沖縄国税事務所長が類似法人及び類似法人における役員報酬ないし役員給与の支給事例を抽出した方法及びその結果について,以下の事実が認められる。
ア 原告の事業の内容等(甲31~33,原告代表者)
原告は,単式蒸留しょうちゅうである泡盛を製造販売することを事業の内容とする法人であり,Fによる,①平成2年頃の大量生産の可能な●●●蒸留器の開発,②平成7年の●●●,③平成7年のコマーシャルの成功等により成長し,また,他の役員も含めた役員らの能力により,製造ラインを外注せずに自ら製造ができることも経営の効率化に貢献しているところ,平成18年6月,東京営業所を開設して,関東地方を始めとする全国への販売を強化し,海外への営業も本格的に行うようになった。
イ 本件役員らの職務の内容(乙10)
(ア) Aは,父であるF及び弟であるHと相談しながら,主担当として泡盛製造及び使用人への指揮監督をし,また,a協同組合との間で原料米の仕入交渉を担当していた。
(イ) Hは,F及びAと相談しながら,主担当として営業,資材及び設備投資を担当していた。
(ウ) Fの妻であるGは,経理全般のほか,商品の棚卸し,空き瓶の管理等の事務的な仕事を行っていた。
(エ) Fは,代表取締役として,業務の全般的な指揮監督を行っていた。
ウ 原告の収益の状況
原告の収益の状況は,別表3のとおりであり,本件各事業年度以前から本件各事業年度にかけての〈中略〉
エ 原告の使用人に対する給料ないし給与の支払の状況等
原告の使用人に対する給料ないし給与の支給の状況は,別表4のとおりであり,原告の役員に対する役員報酬ないし役員給与の支給の状況は,総額については別表4,各役員に対する額については別表5のとおりである。
オ 類似法人における役員報酬ないし役員給与の支給事例の抽出等(乙12~15,17)
沖縄国税事務所長が類似法人及び類似法人における役員報酬ないし役員給与の支給事例を抽出した方法及びその結果は,別紙2及び別表6-1~6-4までのとおりである。
(3)  被告は,本件訴訟において,本件役員ら給与について,各比較法人における代表取締役及び取締役の受ける役員報酬ないし役員給与のうち,最高額のものを平均したものと対比して,これを超える部分が不相当に高額な部分の金額であると主張するが,前提事実(3)のとおり,処分行政庁は,本件役員ら給与のうち,各類似法人の代表取締役及び取締役の受ける役員報酬ないし役員給与のうち最高額のものを超える部分が不相当に高額であるとして本件各更正処分等をしていることを考慮し,以下においては,本件役員ら給与のうち,上記最高額を超える部分が不相当に高額な部分の金額であるか否かとの観点から,本件各更正処分等の適法性について検討する。
ア 本件役員らの職務の内容
(ア) 原告の業務の内容や規模等,本件役員らの職務の内容は,前記(2)アないしウに認定したとおりである。一般に,酒類の製造及び販売等を業とする法人の役員としては,①製造計画及び製造に係る指揮監督・意思決定等,②営業活動に係る指揮監督・意思決定等,③設備投資の計画・意思決定等,④従業員の採用・給与等の人事業務,⑤財務状況の把握及び分析,⑥法人業務全般の指揮監督,⑦法人を代表しての対外折衝などが考えられるところ,本件役員らの職務の内容も,上記①ないし⑦のような職務の内容に比して格別なものがあるということはできず,一般的に想定される範囲内のものであるというほかはないから,特別に高額な役員報酬ないし役員給与を支給すべきほどの職務の内容であるとまでは評価し難いというべきである。
(イ) これに対し,原告は,本件役員らは,各種製造機械及び製造ラインを自らの力で作ることができる特殊技術を有しており,これにより製作した機械・製造ラインが優良な収益構造をもたらしている,平成18年以降,Aについては,立ち上げた研究所や開設した東京営業所の担当となった,Gについては,自社で独立した財務データ作成作業をするようになった,Hについては,営業エリアが広がり,大手の食品総合卸と取引を開始することとなった,Fについては,代表取締役として,これら各役員について増えた担当職務について総理しなければならない職務が増えたなどと主張し,これに沿う記載のある本件役員らの陳述書(甲31~33)や,原告代表者の供述も存在する。
しかしながら,本件役員らの職務の内容についての原告の上記主張を前提としても,本件役員らの職務の内容が,酒類の製造及び販売等を業とする法人の役員として,特別に高額な役員報酬ないし役員給与の支給を受けるべきほどの職務の内容であったとまでは評価し難いし,前記(2)ウ(別表3)で認定した原告の収益の状況からすると,〈中略〉,原告の主張する本件役員らの職務内容,特に平成18年以降増加したという職務内容が,原告の売上げや利益の増加に貢献したとは評価し難いというべきである。
イ 原告の収益及び使用人に対する給料ないし給与の支払の状況
(ア) 原告の収益の状況については,前記ア(イ)で述べたとおり,〈中略〉
また,原告の使用人に対する給料ないし給与の支給の状況は,前記(2)ウ(別表4)のとおり,〈中略〉
以上のような収益の状況や使用人に対する給料の支払状況に対し,原告の役員らに対する給与の総額は,前記(2)エ(別表3)のとおり,本件各事業年度のうちの〈中略〉という状況で,前提事実(2)のとおり,原告がした確定申告や修正申告において損金の額に算入した本件役員ら給与の額もこれと同様の増減をしている。
(イ) 原告は,①原告の収益の状況と本件役員ら給与の額の関係については,●●●における本件役員ら給与が適正額の最高額であるとはいえず,むしろ,それまで原告の売上高や利益額の増加割合に比して,役員らの給与の額は大幅に抑えられていた,②原告の使用人に対する給料の支給の状況と本件役員ら給与の額の関係については,役員は経営判断を行うのに対し,使用人は経営判断を行わないから,何ら比例関係に立つものでなく,使用人兼務役員の場合でない限り,使用人に対する給与の支給の状況を検討すること自体が失当である旨主張する。
しかしながら,旧法人税法施行令69条1号及び法人税法施行令70条1号イは,不相当に高額な部分の金額の検討に当たり,その内国法人の収益及びその使用人に対する給料ないし給与の支払の状況を掲げており,使用人兼務役員の場合に限り使用人に対する給料ないし給与の支払の状況を検討すべきものとはしていないのであるから,これらの要素を検討することは,法令の規定に沿ったものであるということができるし,単にその内国法人の収益又はその使用人に対する給料ないし給与の支給の状況のみから,役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額が決定されるのではなく,他に役員の職務の内容やその内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する報酬ないし給与の支給の状況等に照らして,役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額が決定されることからすれば,原告の主張は採用することができない。
ウ 同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する報酬ないし給与の支給の状況
(ア) 処分行政庁の上級庁である沖縄国税事務所長において,類似法人及び類似法人における役員報酬ないし役員給与の支給事例を抽出した方法及び結果は,前記(2)オ(別紙2及び別表6-1から6-4まで)のとおりである。
別紙2のとおり,沖縄国税事務所長は,類似法人を抽出するに当たり,沖縄国税事務所及び熊本国税局管内の単式蒸留しょうちゅうの製造免許(本免許)を付与された法人で,原告の本件各事業年度と半年以上事業期間を同じくする事業年度につき,総売上金額が,原告の本件各事業年度の総売上金額の0.5倍以上2倍以下の範囲内の範囲内(いわゆる倍半基準)の法人として延べ34法人を抽出した。旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号は,不相当に高額な部分の金額の検討に当たり,その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する報酬ないし給与の支給の状況を考慮要素として掲げているところ,上記のとおり,沖縄国税事務所長が類似法人を抽出し,その代表取締役及び取締役それぞれのうちの最高額の役員報酬ないし役員給与を抽出した方法は,法令の文理に照らし,合理的であると評価することができる。
(イ) 原告は,本件役員ら給与が適正であるかを検討するに当たり他の法人の役員給与の額を用いる際,他の法人を抽出するに当たっては,当該法人の役員が本件役員らと同等以上の能力を持つ者となっていなくてはならないから,客観性を担保することができる程度の相当数の法人を抽出し,同業種法人は全て漏れなく抽出されていなければならないところ,①本件役員らと同等ないしそれ以上の経営能力を有する役員に係る同業種法人には,原告の売上高の3倍以上の売上高である法人があるにもかかわらず,沖縄国税事務所長が用いた売上高についての倍半基準では,これらが抽出されないこととなる,②抽出地域も日本全国から漏れなく抽出し,業種についても酒類製造業全部を抽出する必要があったとして,沖縄国税事務所長による抽出方法は失当である旨主張する。
a 旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号は,「事業規模が類似する」法人の役員に対する報酬ないし給与の支給の状況を,不相当に高額な部分の金額の判断の基準の一つとしているところ,売上金額は,法人の事業規模を示す最も重要な指標の一つであるということができ,事業規模の類似性を判断するに当たり,対象法人の売上金額の0.5倍以上2倍以内の範囲から類似法人を抽出することは,合理的であるといえる。
原告は,比較法人となるべき法人の役員らの能力は,本件役員らの能力と同等以上でなくてはならないとの観点から,同等以上の能力を持つ役員らを擁する法人が比較法人として抽出されるべきであるのに,その売上金額が原告の売上金額の2倍以上であることから抽出されていないとして,倍半基準を用いることは不合理である旨主張する。しかしながら,原告の上記主張は,役員の経営能力それ自体を評価することが前提となっているものというべきであるが,主観的・恣意的な要素を排除して経営能力それ自体を評価することは極めて困難であり,このような評価を前提として類似法人を抽出することは客観性を欠いた抽出方法であるといわざるを得ない上,「事業規模が類似する」という法令の文言からも離れた抽出方法によることになるから,原告の上記主張は採用することができない。
b また,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号が,その役員報酬ないし役員給与の支払状況の比較対象とすべき法人として「同種の事業を営む法人」を掲げているのは,同種の事業を営む法人であれば,その法人の業務内容が類似するため,収益率等も類似すると考えられ,そのような法人における役員報酬ないし役員給与の支払状況を比較することで,できるだけ客観的な適正報酬を算出しようとするためであると考えられるから,「同種の事業」とは,できるだけ対象となる法人と類似するものが望ましく,製造業にあっては,その製造される製品が類似することが望ましいといえる。そして,単式蒸留しょうちゅう以外の酒類は,単式蒸留しょうちゅうとは原材料や製造工程が異なることからすると,製品が類似するということはできず,沖縄国税事務所長において,類似法人の抽出に当たり,単式蒸留しょうちゅうの製造免許を付与され,その製造をしている法人を対象としたことは,合理的であるといえる。
また,証拠(乙16)によれば,単式蒸留しょうちゅうについては,熊本国税局管内における製成数量が全国における製成数量の8割以上を占めていることが認められるところ,製造業における製造コストや設備費,人件費等は,地域によって異なるのが一般的であり,同一国税局管内や近接した国税局管内という比較的近接した地域においては,製造コスト等に類似性が認められるものが多いと考えられること等からすれば,類似法人の抽出範囲を沖縄国税事務所及び熊本国税局管内としたことも合理的であるというべきである。
(ウ) 上記のとおり,類似法人の抽出方法等は合理的であると評価することができるところ,かかる方法により抽出された別表6-1から別表6-4までの比較法人の代表取締役及び取締役の役員報酬ないし役員給与の最高額についてみると,いずれの対象事業年度についても,7番又は29番の法人の代表取締役及び取締役の給与が最高額となっている。このうち,7番の法人については,〈中略〉となっており,29番の法人については,〈中略〉となっている。このように,7番の法人については,総売上金額が原告をやや上回り,改定利益や純資産額は,それ以上に原告を上回っており,29番の法人については,総売上金額は原告より低いが,改定利益や純資産額は,原告を上回っており,原告との比較においても相当に経営状況がよいと評価することができる。
エ 本件役員ら給与の額に不相当に高額な部分の金額があるか否か及びその額
(ア) 以上のとおり,本件役員らの職務の内容は,酒類の製造及び販売等を目的とする法人の役員として,一般的に想定される範囲内のものであるということができ,特別に高額な役員報酬ないし役員給与を支給すべきほどの職務の内容であるとまでは評価し難いところ(前記ア),本件各事業年度における原告の売上げや収益が,〈中略〉にあり,〈中略〉にもかかわらず,〈中略〉しており,それに見合う顕著な職務内容の増加も認められない(前記イ)のに対し,本件役員ら給与の額は,類似法人の中で役員報酬ないし役員給与の最高額となっている7番又は29番をも上回るのであり,しかも上記2法人は,原告との比較においても,相当に経営状況がよいと評価することができる(前記ウ)ことからすれば,本件役員ら給与には,不相当に高額な部分の金額があるというべきであり,少なくとも,類似法人の代表取締役及び取締役らの役員報酬ないし役員給与の最高額を上回る部分は,不相当に高額な部分の金額に該当するというべきである。
(イ) 原告は,適正給与額の上限を比較法人の役員給与の最高額とするには,本件役員らの経営能力が比較法人の役員と比べて最高に秀でたものとなっていないといえなければならないところ,被告は,そのような主張立証を一切しない旨主張する。
しかしながら,前記ウで述べたとおり,役員の経営能力を比較対象として,その報酬ないし給与に不相当に高額な部分の金額があるか否かを判断することとなれば,主観的・恣意的なものにならざるを得ない上,前記(ア)のとおり,本件役員ら給与の額のうちの不相当に高額な部分の金額に係る判断は,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号で掲げられた考慮要素に照らして導いたものであるから,原告の主張は採用することができない。
オ したがって,本件役員ら給与のうち,前提事実(3)で処分行政庁が不相当に高額であるとした部分,すなわち,類似法人の代表取締役又は取締役の役員報酬ないし役員給与の最高額を超える部分である以下の金額は,不相当に高額であるというべきである。
(ア) 平成19年2月期
F ●●●
(イ) 平成20年2月期
F ●●●
G ●●●
A ●●●
H ●●●
合計 ●●●
(ウ) 平成21年2月期
F ●●●
G ●●●
A ●●●
H ●●●
合計 ●●●
(エ) 平成22年2月期
F ●●●
(4)  法人税法34条2項の適用について
ア 原告は,平成18年法律第10号による改正前の法人税法35条において,役員賞与は損金の額に算入されない旨が規定されていたものの,役員賞与として支給すべきものを役員報酬名目で支給すると当該規定が骨抜きになってしまうことや,期中に恣意的に役員報酬を増額することにより納税額を軽減させることに対処するため,旧法人税法34条1項において,過大役員報酬の損金不算入が規定されていたところ,平成17年の会社法の成立に伴い,利益処分とされてきた役員賞与は費用として整理され,平成18年法律第10号により改正前の法人税法35条は削除されることとなり,隠れた賞与支給は観念することすらできなくなったのであること,また,同改正により,法人税法34条1項は,損金算入が認められる役員給与の支給方法を,定期同額給与又は事前確定届出給与という期初段階であらかじめ支給額を決定しなければならないものに限定し,これら以外の給与については損金に算入しないこととして,期中における恣意的な役員給与の支給も不可能になったことから,同項の規定の適用があるものを除き過大役員報酬の損金不算入を定める法人税法34条2項は,死文化し,納税者への適用は観念されないものとなった旨主張する。
イ 法人税法21条は,内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は,各事業年度の所得の金額とする旨を定め,同法22条1項は,内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨を定めた上,同条3項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めのあるものを除き,同項各号で掲げる金額とし,同条4項は,同条3項各号に掲げる額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨を定めている。
法人税法34条2項は,役員給与のうち不相当に高額な部分の金額については,損金の額に算入しない旨を定めているところ,その趣旨は,前記(1)アにおいて述べたとおり,従前は利益処分として会計上処理されてきた役員賞与について,費用として処理されることとなったことをも踏まえて改正されたものであって,同法22条3項の規定における別段の定めとして,会計処理上は損金の額に算入するものを,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入しないものとしているものであり,その規定ぶりは,旧法人税法34条1項と同様のものである。
また,平成18年法律第10号による改正により法人税法34条1項に定められた定期同額給与及び事前確定届出給与についても,これらに該当すれば,期中において恣意的に役員給与を増額するものではないということはできても,必ずしも期初の段階で職務執行の対価としての相当性を超える役員給与を定めることが排除されるものではないから,これらに該当するということから直ちに職務執行の対価として相当性を有することとなるものとはいうことはできない。
以上のとおりの平成18年法律第10号による改正の内容や経緯等に鑑みれば,法人税法34条2項は,旧法人税法34条1項と同様,課税の公平性を確保する観点から,職務執行の対価としての相当性を確保し,役員給与の金額決定の背後にある恣意性の排除を図るという考え方によるものと解されるのであって,その適用の余地がないといえないことは明らかである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(5)  本件各更正処分等の違憲性について
ア(ア) 原告は,憲法84条の趣旨からすれば,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号イで明示された要素のうち,納税者側からも十分に認識可能な①「当該役員の職務の内容」,②「その内国法人の収益」,③「その使用人に対する給料の支給の状況」に基づき,職務対価相当額を求めた後,その相当性の補強の一環として,④事業規模類似の同業種法人における役員給与の支給状況を用いて確認する場合には,納税者の予測可能性が担保され,違憲の問題は生じないが,上記④を用いなければ職務対価相当額が導かれないというのであれば,法律により納税者側で把握することの不可能な事項によって課税処分を行うことが定められていない限り,納税者の予測可能性が害された違憲の課税であるというべきであり,法人税法34条2項には,その旨の明文の規定がないから,本件各更正処分等は,憲法84条に反するものである旨主張する。
(イ) 憲法84条は,課税要件及び租税の賦課徴収の手続が法律で明確に定められるべきことを規定するところ,前記のとおり,旧法人税法34条1項及び法人税法34条2項は,内国法人がその役員に対して支給する報酬ないし給与の額のうち「不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額」は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入しない旨を定め,これらを受けて,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号イは,上記「政令で定める金額」として,内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した報酬ないし給与の額が,①当該役員の職務の内容,②その内国法人の収益及び③その使用人に対する給料ないし給与の支給の状況,④その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する支給の状況等に照らし,当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額を掲げる。
上記のような憲法84条の規定からすれば,課税要件等に関わる租税法規は,できるだけ明確に定められることが求められるというべきであるが,他方において,納税者の実質に応じた課税の公平を確保することも求められることを考慮すると,原告の主張する納税者の予測可能性を含め,当該租税法規が憲法84条の規定に反しないか否かについては,当該法規の趣旨,目的とするところを合理的,客観的に解釈し,その法規が課税の根拠,要件を規定したものとして一般的に是認し得る程度に具体的で客観的なものであるか否かという観点から判断するのが相当である。
上記のような観点から検討するに,一般に,個々の法人における役員に対する報酬ないし給与の額について,「不相当に高額な部分の金額」の上限を確定的に定めることは,その性質上,極めて困難であり,かえって実質的な課税の公平を害するおそれが生ずることは明らかである。他方において,上記①ないし④のような考慮すべき事項をみると,上記①ないし③の事項については,納税者において把握している事項である。そして,上記④の事項についても,証拠(乙24~27)によれば,一般に公表された統計等により,法人の規模や業務に応じた役員報酬ないし役員給与の傾向ないし概要を把握することは可能であることが認められるところ,このことからすれば,同事項についても入手可能な資料等から一定程度の予測は可能であるというべきであって,これらの各事項を前記に述べたような,旧法人税法34条1項及び法人税法34条2項の規定の趣旨に照らして考慮すれば,納税申告の時点において,「不相当に高額な部分の金額」について,必ずしも確定的な金額までは判明しないとしても相応の予測は可能であるというべきである。したがって,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号イの規定は,法律により委任された課税要件を規定したものとして一般的に是認し得る程度に具体的で客観的なものであるというべきである。
以上によれば,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号イに規定する上記①ないし④の事項を考慮して旧法人税法34条1項及び法人税法34条2項の「不相当に高額な部分の金額」を判断し,これらの規定を適用することについて,憲法84条の規定に違反するものということはできない。
イ(ア) 原告は,本件各更正処分の過大役員給与の認定は,同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員給与支給額を用いない限り,一義的に導くことが決してできず,原告においてその適法性を一切検証することができないから,憲法31条に違反する旨主張する。
(イ) しかし,行政手続に憲法31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても,納税者において,課税処分に至る経過についてその根拠となった資料等を網羅的に逐一検証できなければならないことまでをも保障したものとは解されず,本件各更正処分等が憲法31条に違反するとはいえない。
ウ(ア) 原告は,上場企業については,倍半基準により類似法人を選定すれば,過大役員給与となる場合があるのに,過大役員給与に係る課税処分を行わない一方で,原告に対して本件各更正処分をしたことは,憲法14条に違反する旨主張する。
(イ) 憲法14条1項は,国民に対して絶対的な平等を保障したものではなく,合理的理由のない差別をすることを禁止したものであって,国民各自の事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは,その区別が合理性を有する限り,何ら同規定に違反するものではない。
そして,旧法人税法施行令69条及び法人税法施行令70条1号は,旧法人税法34条1項及び法人税法34条2項に定める「不相当に高額な部分の金額」について,類似法人の役員報酬ないし役員給与の支給状況のみならず,当該役員の職務の内容,その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況も踏まえて判断することとしているのであって,前記に述べたところに照らし,これを踏まえてされた本件各更正処分等の判断に合理性があることは明らかである。したがって,原告の主張する上場企業について,単に売上金額についての倍半基準及び平均額法によれば,過大役員給与となる場合があるということをもって,本件各更正処分等が憲法14条に違反する旨の原告の主張は理由がない。
(6)  以上検討のとおり,本件役員ら給与には,不相当に高額な部分の金額があり,前記(3)オで認定した本件役員ら給与の額については,損金の額に算入することができないというべきである。
2  争点(2)(本件退職給与のうち,不相当に高額であるとして損金の額に算入されない部分の有無及びその額)
(1)  法人税法34条2項は,内国法人がその役員に対して支給する給与(前項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入しない旨を定め,これを受けて法人税法施行令70条2号は,法人税法34条2項に規定する政令で定める金額は,内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額が,当該役員のその内国法人の業務に従事した期間,その退職の事情,その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし,その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額とする旨を定める。
ところで,証拠(甲1の4,乙9)によれば,本件退職給与〈中略〉は,前提事実(2)エのとおり,平成21年6月29日に開催された原告の臨時株主総会において,功績倍率法(退職する役員の最終月額給与の額に,その役員のその内国法人の業務に従事していた年数及び功績倍率を乗じて算出する方法)により,Fの代表取締役としての最終月額給与〈中略〉に代表取締役としての在職期間15年及び功績倍率3.0を乗じて算定されたものであることが認められ,前提事実(3)エのとおり,平成22年2月期更正処分においては,Fの代表取締役としての最終月額給与の適正額は●●●であることを前提に,代表取締役としての在職期間15年及び功績倍率3.0を乗じて算定した●●●を超える部分は不相当に高額であるとされている。
本件訴訟においては,Fが原告の業務に従事した期間を24年とすることは,当事者間に争いがなく,また,被告は,功績倍率を3倍とすべきと主張するから,少なくとも功績倍率が3倍を下回るものではないことも当事者間に争いがない。
これに対し,Fの最終月額給与の相当額について,被告は,別紙2のとおり抽出した類似法人から,さらに抽出した比較法人(類似法人の改定利益金額及び純資産額について,原告の本件各事業年度の改定利益金額及び純資産額のそれぞれ0.5倍以上2倍以下の範囲内に該当しない事業年度を除外し,特殊性が高いと認められる事業年度を除外して本件各事業年度ごとに抽出したもの。)がそれぞれ支払う代表取締役の給与のうちの最高額を平均したものである●●●であり,これに功績倍率法により,上記の24年及び3倍を乗じた●●●が,退職給与の相当額である旨主張するので,まずは,Fに対する最終月額給与に不相当に高額な部分の金額があるか否か及びその額について検討することとする。
(2)  原告の平成22年2月期についての比較法人及びその代表取締役に対する最高の給与額は,別表6-4及び別表7-4のとおりであり,各比較法人がそれぞれ支払う代表取締役給与額(年額)のうちの最高額は,番号7が〈中略〉,番号15が●●●,番号29が●●●,番号32が●●●であり,その平均額は●●●であるところ,1法人のみが突出して高額の役員給与を支払ったり,突出して低額の役員給与を支払ったりする状況にはないものの,4法人のうち2法人が〈中略〉以上,2法人が●●●以下となっており,2法人ごとにまとめてみると,それぞれに大きな乖離があることが明らかである。しかも,比較法人として抽出された4法人の代表取締役に対する給与の平均額は,年額〈中略〉となり,各比較法人の代表取締役に対する給与の額とは,いずれも大きく乖離したものとなっているといわざるを得ないが,各比較法人の役員給与について,平均額に比して高額であったり,低額であったりすることについて特殊事情があると認めるに足りる証拠はない。
このような各比較法人がそれぞれ支払う代表取締役の給与のうちの最高額の分布及びその平均額等に鑑みると,その平均額については,比較法人間に通常存在する諸要素の差異やその個々の特殊性が捨象され,平準化された数値であると評価することは困難であるといわざるを得ないから,Fに対する役員給与については,その職務の内容等が,原告の経営や成長等に対する相応の貢献があったとはいえない程度のものであるなど,代表取締役として相応のものであるとはいえない特段の事情のない限り,比較法人の代表取締役に対する給与の最高額の平均額を超える部分をもって不相当に高額な部分の金額であるとすることはできないというべきである。そして,前記のとおり,各比較法人のうち代表取締役に対する給与額の最高額の高い上位2法人についてみると,その額(年額)は番号29が●●●,番号7が●●●であり,これら2法人について,不相当に高額な部分の金額の含まれる役員給与を支給しているということをうかがわせる事情は見当たらないことを考慮すると,上記最高額を超えない限りは不相当に高額な部分の金額があるとはいえないと解するのが相当である。
そこで本件において,Fの職務の内容等を検討すると,前提事実及び証拠(甲5,32)によれば,Fは,昭和40年に高等学校を卒業すると同時に,原告の前身であるq酒造所で働くようになり,昭和60年に原告が設立された際に専務取締役に,平成6年に代表取締役に就任しているところ,q酒造所で働き始めて以来,幅広い層に楽しまれる泡盛の開発を続け,それに成功するなどし,平成21年6月に代表取締役を退任するまで代表取締役を務め続けたこと,原告が,平成8年以降,売上高や経常利益を大きく伸ばすなどの成長をしたことが認められるところであり,これらの事情によれば,Fも原告の成長に際し,実質的にも相応の貢献をし,代表取締役の退任時まで原告の経営に貢献したものと評価することができる。
上記のとおり,本件においては,代表取締役に対する役員給与の最高額について,比較法人4法人のうち上位2法人と下位2法人との間に大きな乖離がみられ,しかも,その平均額についても各比較法人の代表取締役に対する役員給与の最高額との間に大きな乖離がみられるという状況であるところ,上記のようなFの原告における従前の職務の内容等に照らすと,原告の経営や成長等に対する相応の貢献があったというべきであって,その職務の内容等が代表取締役として相応のものであるとはいえない特段の事情があるとは認められないから,Fの代表取締役としての役員給与のうち,上記の平均額を超える部分が,不相当に高額な部分の金額であるとすることはできない。そして,上記のとおり,比較法人の代表取締役に対する給与について,不相当に高額な部分の金額があるとはいえない本件においては,Fの役員給与が上記の最高額を超えない限りは,不相当に高額な部分の金額があるとはいえないと解すべきである。
この点に関し,被告は,原告の代表取締役に対する適正給与の額は,各比較法人がそれぞれ支払う代表取締役の役員給与のうちの最高額の平均額を超えるものではなく,比較法人として抽出されたものから,適切な理由もなく除外するのは許されないと主張するが,本件で抽出された比較法人の代表取締役の役員給与の分布状況等や,Fの原告における職務の内容に照らして,上記のとおり,最高額を超えない限りは,不相当に高額な部分の金額があるとはいえないと判断をしたものであるから,被告の主張は採用することができない。
(3)  以上に従い,Fに対する退職給与に不相当に高額な部分の金額があるか否かを検討すると,比較法人の代表取締役に対する給与の最高額である年額●●●を12か月で除した給与月額●●●に業務への従事期間24年と,功績倍率3倍を乗じた●●●を超えない限りは不相当に高額な部分の金額があるとはいえないというべきところ,原告がFに対して支給した本件退職給与は,前提事実のとおり,〈中略〉であるから,不相当に高額な部分の金額があるとはいえないこととなる。
3  以上によれば,本件役員ら給与のうち,前記1(3)オの部分は,不相当に高額であるから,平成19年2月期については●●●,平成20年2月期については合計●●●,平成21年2月期については合計〈中略〉,平成22年月期については●●●を損金の額に算入することができないこととなる。
そして,証拠(甲1の1~4)及び弁論の全趣旨によれば,本件各事業年度における原告の納付すべき税額又は翌期へ繰り越すべき欠損金及び過少申告加算税は,別紙5のとおりとなる。そうすると,平成22年2月期更正処分の取消しを求める請求は,欠損金額1億5045万3186円,翌期へ繰り越す欠損金1億5045万3186円を下回る部分(還付金に相当する税額5万1599円を下回る部分を含む。)の取消しを求める限度で理由があり,また,これを前提に平成22年2月期更正処分のうち取り消されるべきもの以外の部分により新たに納付すべきこととなった税額はなく,過少申告加算税を課することができないから,平成22年2月期の過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める請求は理由がある。したがって,上記の限度でこれらを取消し,その余の請求はいずれも理由がないから,いずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 舘内比佐志 裁判官 荒谷謙介 裁判官 宮端謙一)

 

〈以下省略〉

 

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