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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(196)平成24年 8月24日 東京地裁 平22(ワ)11628号 残余財産分配請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(196)平成24年 8月24日 東京地裁 平22(ワ)11628号 残余財産分配請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件

裁判年月日  平成24年 8月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)11628号・平23(ワ)10673号
事件名  残余財産分配請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴請求一部認容、反訴請求棄却  文献番号  2012WLJPCA08248003

要旨
◆株式会社の発行する株式や新株予約権等の取得・保有などの事業を行うことを目的として締結された投資事業有限責任組合契約における有限責任組合員である原告らが、同組合の無限責任組合員であり清算人となった被告に対し、主位的に、本件契約上の残余財産分配請求権に基づき、予備的に、不当利得返還請求権に基づき、金員の支払を求めた(本訴)ところ、被告が、原告らの決定により本件組合が解散したことは民法651条2項の趣旨及び本件契約における義務違反であるとして、原告らに対し、債務不履行又は不法行為による損害賠償を求めた(反訴)事案において、残余財産分配請求の被告適格を認めるとともに、被告主張の業務のうち本件組合の清算人報酬として認められる報酬額を認定するなどして、本訴請求を一部認容する一方、本件解散が、不当であるとも、権利濫用とも認められないとして、反訴請求を棄却した事例

出典
ウエストロー・ジャパン

参照条文
民法415条
民法643条
民法651条2項
民法667条
民法680条
民法709条
投資事業有限責任組合契約に関する法律9条1項

裁判年月日  平成24年 8月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)11628号・平23(ワ)10673号
事件名  残余財産分配請求本訴事件、損害賠償請求反訴事件
裁判結果  本訴請求一部認容、反訴請求棄却  文献番号  2012WLJPCA08248003

平成22年(ワ)第11628号 残余財産分配請求本訴事件
平成23年(ワ)第10673号 損害賠償請求反訴事件

東京都千代田区〈以下省略〉
原告(反訴被告) 株式会社三井住友銀行
同代表者代表取締役 A
東京都千代田区〈以下省略〉
原告(反訴被告) 株式会社みずほ銀行
同代表者代表取締役 B
東京都千代田区〈以下省略〉
原告(反訴被告) 三菱UFJリース株式会社
同代表者代表取締役 C
原告(反訴被告)ら訴訟代理人弁護士 島田邦雄
同 半場秀
同 川島亜記
同 武藤雄木
同訴訟復代理人弁護士 中山靖彦
東京都港区〈以下省略〉
被告(反訴原告) 株式会社カレイド・ホールディングス
同代表者代表取締役 D
同訴訟代理人弁護士 浜田卓二郎
同 兼田俊男

 

 

主文

1  被告(反訴原告)は,原告(反訴被告)株式会社三井住友銀行に対し,2億2110万8846円及びこれに対する平成21年10月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告(反訴原告)は,原告(反訴被告)株式会社みずほ銀行に対し,2億2110万8846円及びこれに対する平成21年10月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  被告(反訴原告)は,原告(反訴被告)三菱UFJリース株式会社に対し,2211万0878円及びこれに対する平成21年10月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4  原告(反訴被告)らのその余の本訴請求及び被告(反訴原告)の反訴請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は,本訴反訴を通じ,被告(反訴原告)の負担とする。
6  この判決は,第1項から第3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求等
1  本訴請求
(1)  請求の趣旨
ア 被告(反訴原告)は,原告(反訴被告)株式会社三井住友銀行に対し,2億4884万9992円及びこれに対する平成21年10月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
イ 被告(反訴原告)は,原告(反訴被告)株式会社みずほ銀行に対し,2億4884万9992円及びこれに対する平成21年10月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
ウ 被告(反訴原告)は,原告(反訴被告)三菱UFJリース株式会社に対し,2488万4993円及びこれに対する平成21年10月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  請求の趣旨に対する答弁
ア 被告(反訴原告)の本案前の答弁
本件訴えを却下する。
イ 被告(反訴原告)の本案の答弁
原告らの請求を棄却する。
2  反訴請求
(1)  請求の趣旨
原告(反訴被告)らは,被告(反訴原告)に対し,連帯して,15億2950万5600円及びこれに対する平成23年4月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  原告(反訴被告)らの本案の答弁
被告(反訴原告)の請求を棄却する。
第2  事案の概要
1(1)  本訴事件は,「KALEIDO CP FUND 1投資事業有限責任組合」(平成16年12月21日の名称変更以前の名称は「KALEIDO CP FUND Ⅰ投資事業有限責任組合」。以下,名称変更の前後を通じて「本件組合」という。)の有限責任組合員であった原告(反訴被告)株式会社三井住友銀行(以下「原告三井住友銀行」という。),原告(反訴被告)株式会社みずほ銀行(以下「原告みずほ銀行」という。)及び原告(反訴被告)三菱UFJリース株式会社(平成19年4月1日,ダイヤモンドリース株式会社と吸収合併する以前の商号は「UFJセントラルリース株式会社」。以下商号変更の前後を通じて「原告三菱UFJリース」といい,原告(反訴被告)3名を併せて「原告ら」という。)が,本件組合の清算人である被告(反訴原告)(以下,「被告」という。)に対し,被告が本来原告らに分配されるべき残余財産の未払分を取得していると主張して,被告に対し,主位的に,原告らと被告との間で締結された本件組合に係る投資事業有限責任組合契約(以下「本件契約」という。)上の残余財産分配請求権に基づき,それぞれ上記本訴請求の趣旨記載の金員及びこれに対する被告が原告らに残余財産を分配した日の翌日である平成21年10月17日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による金員の支払を,予備的に,不当利得返還請求権(民法703条)に基づき,それぞれ上記各金員及びこれに対する同日から支払済みまで,商事法定利率である年6分の割合による金員の支払を求めた事案である。
(2)  反訴事件は,被告が原告らに対し,有限責任組合員である原告らの決定による本件組合の解散(以下「本件解散」という。)が,民法651条2項の趣旨や本件契約の義務に違反する不当なものであり,原告らは被告が被った損害を賠償する義務があると主張して,本件契約上の債務不履行または不法行為に基づき,連帯して15億2950万5600円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成23年4月13日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による金員の支払を求めた事案である。
2  前提となる事実(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)
(1)ア  原告三井住友銀行,原告みずほ銀行は,それぞれ銀行業を営む株式会社である。原告三菱UFJリースは,リース業等を営む株式会社である。
イ  被告は,有価証券及び金銭債権の取得,保有並びに売買,投資事業組合財産の運用及び管理,経営コンサルティング等を目的とする株式会社である。
(2)  原告三井住友銀行と被告は,平成16年12月6日,以下のとおりの内容で,原告三井住友銀行を有限責任組合員,被告を無限責任組合員として,本件契約を締結し,本件組合に係る投資事業有限責任組合契約が成立した。本件契約には,大要,以下のような定めがあった(甲1,4)。
ア 組合の事業(5条)
(ア) 株式会社の設立に際して発行する株式の取得及び保有並びに有限会社又は企業組合の設立に際しての持分の取得及び当該取得に係る持分の保有
(イ) 株式会社の発行する株式若しくは新株予約権又は有限会社若しくは企業組合の持分の取得及び保有
(ウ) 指定有価証券の取得及び保有
(エ) 事業者に対する金銭債権の取得及び保有並びに事業者の所有する金銭債権の取得及び保有
(オ) 事業者に対する金銭の新たな貸付け
(カ) 事業者を相手方とする匿名組合契約の出資の持分又は信託の受益権の取得及び保有
(キ) 事業者の所有する工業所有権又は著作権の取得及び保有
(ク) 前号までの規定により本件組合がその株式,持分,新株予約権等を有している事業者に対して経営又は技術の指導を行う事業
(ケ) 投資組合等に対する出資
イ 存続期間等(1条26号,6条1項,2項本文)
本件契約の存続期間は,効力発生日である平成16年12月6日から10年間とし,投資期間は効力発生日から5年間とする。
ウ 出資(8条1項,2項)
本件組合の出資一口の金額は100万円とし,原告三井住友銀行及び被告は,前者については29億円(その後,50億円に変更された。),後者については100万円をそれぞれ上限額として,本件契約の定めるところに従い,無限責任組合員からの通知に従い無限責任組合員の指定する金額を出資する。
エ 無限責任組合員及び有限責任組合員の権限(11条1項,13条1項)
無限責任組合員は,本件契約第5条に規定する本件組合の事業の遂行のため,本件組合の名において,①組合財産の運用,管理及び処分,②投資証券等の議決権その他組合財産に係る権利の行使,③本組合の業務執行として投資先事業者に対する経営又は技術の指導等その他本件組合の目的の達成のために必要な一切の業務を執行し,裁判上及び裁判外で本件組合を代表する権限を有する。有限責任組合員は,本件組合の業務執行及び代表権限を一切有しない。
オ 利益相反(15条2項)
無限責任組合員は,原則として①投資総額が総組合員の出資約束金額の合計額4分の3に達する時,又は,②投資期間の満了時のいずれか早い時までの間は,①本件組合の事業と同種又は類似の事業を行うこと,及び②本件組合の事業と同種又は類似の事業を目的とする他の組合,会社又はその他の団体の組合員(無限責任組合員及びジェネラル・パートナーを含む。),社員(無限責任社員を含む。),株主,出資者,取締役又は業務執行者となることができないものとする。
カ 方針会議(17条)
無限責任組合員が本件組合に係る投資を行う場合には,事前に無限責任組合員が有限責任組合員の従業員等の中から指名した者及び後記投資委員会の構成員により構成される方針会議に付議しなければならず,方針会議の構成員は,投資方針及び投資手法が本件組合の社会的信用を著しく毀損する虞れのある場合,投資先事業者等に法令違反が認められる場合にのみ不承認の意思表示をすることができる。
キ 投資担当者及び投資委員会(21条)
(ア) 投資担当者
組合財産の運用は,無限責任組合員において投資活動に従事する職責にある以下の者が担当する。
主たる投資担当者
被告代表取締役D(以下「D」という。)
投資担当者
E(以下「E」という。)
F(以下「F」という。)
被告は主たる投資担当者又は投資担当者(以下「投資担当者ら」という。)のうち,いずれかの者が投資活動に従事できなくなった場合,無限責任組合員は,各組合員にその旨を遅滞なく通知し,その通知が全組合員に到達した後,90日以内に,諮問委員会(無限責任組合員の指名及び出資約束金額の合計額の3分の2以上の有限責任組合員の承認により選任された有限責任組合員の役員又は従業員により構成される委員会で,本件組合における重要事項の決定について承認を行う(16条)。)の承認を経て,投資担当者に相応しいと判断した人物を指名する。この代替の投資担当者らの指名について,上記90日を過ぎても諮問委員会の承認が得られなかった場合には,無限責任組合員は,その代替案を各組合員に遅滞なく提示し,各組合員との間で以後の対応について協議する。
投資担当者らの2分の1以上の者が本件組合の投資活動に従事できなくなった場合には,本件組合は原則として投資活動を停止する(21条3項)。
(イ) 投資委員会
無限責任組合員は,無限責任組合員の取締役会の下位機関として,組合財産の運用管理及び処分等,無限責任組合員の行う一定の事項について意思決定を行うために投資担当者ら全員により構成される合議体である投資委員会を設置する(21条5項)。
ク 組合財産の分配(28条2項)
無限責任組合員は,本件契約の定めるところに従い,無限責任組合がその裁量によって決定する時において分配額を確定し,組合員についてはそれぞれのその持分金額に応じ比例按分した上,組合財産の分配を行うものとする。
ケ 無限責任組合員に対する報酬(32条2項,3項)
(ア) 管理報酬
無限責任組合員は,各半期の管理報酬として,総組合員の出資約束金額の合計額の1.0%相当額に消費税を加算した額を,当該半期開始後速やかに,現金前払いで受領する。
(イ) 成功報酬
組合財産の分配を行う際に,当該分配までに全ての組合員及び脱退組合員に対して行われた組合財産の分配額の累計額及び当該分配における分配可能額の合計額が,全ての組合員等の出資履行金額を上回る場合には,無限責任組合員は,成功報酬として,当該処分利益から処分等に要した諸費用や公租公課を控除した残額(ただし,当該分配における分配可能額と全ての組合員等についての分配累計額の合計額を合算した額から,全ての出資履行金額の合計額を控除した差額を上限とする。)の20%に相当する金額又は現物分配の場合当該投資証券を受領することができる。
コ 組合員の加入(35条1項)
無限責任組合員は,無限責任組合員がその裁量により定める本件契約期間中の一定の日までの間に限り,全組合員を代理して,原告三井住友銀行以外の者を本件組合に加入させることができる。
サ 無限責任組合員の除名(39条1項)
無限責任組合員が①本件契約に従った出資の払込義務を7日以上遅滞した場合,②本件組合の業務執行又は本件組合を代表するに際し,重大な違法行為を行った場合,③その他本件契約上の重大な義務に違反した場合には,出資約束金額の合計額の4分の3以上に相当する有限責任組合員は,無限責任組合員を除名することができる。
シ 解散及び清算人の選任,権限(42から44条関係)
本件組合は,①本件組合の存続期間の満了(42条1項1号),②有限責任組合員全員の脱退(同条項3号),③有限責任組合員の全員一致により解散が決定されたとき(同条項5号)等,本件契約に定める事由により解散し,原則として,無限責任組合員が清算人となり,清算人は,その役務の提供に対し,適正な報酬を得ることができる。(42条1項,43条1項,2項)。
清算人は,①現務の結了,②債権の取立て及び債務の弁済,③組合員への残余財産の分配,④その他上記の職務を行うため必要な一切の行為に関する事項について,職務を執行し,本件組合を代表する裁判上及び裁判外の一切の権限を有する。(44条)
ス 清算手続(45条2項)
清算人は,その就任後速やかに,組合財産から一切の組合債務及び清算手続に要する費用を弁済した残余財産を,組合員についてはその持分金額,脱退組合員については脱退当時のその持分金額(各組合員の出資履行金額に,事業年度毎に本件契約の定めに従い当該組合員に帰属すべき損益を加減し,当該組合員に対し本件契約の規定により分配された金銭又は投資証券等若しくは投資知的財産権の価額を減じた金額を意味する(1条41号)。)に応じ比例按分した額を,当該組合員及び当該脱退組合員に分配するものとする。
(3)  原告みずほ銀行及び同三菱UFJリースは,平成17年3月31日,被告との間で,有限責任組合員として本件組合に加入する契約を締結し,原告みずほ銀行は50億円を,同三菱UFJリースは5億円を上限額として,本件契約の定めるところに従い,無限責任組合員からの通知に従い無限責任組合員の指定する金額を出資することを約した。
(4)  原告らは,本件契約に基づき,以下のとおり出資した。
原告三井住友銀行
平成16年12月6日から平成20年11月30日までの間
総額41億4401万5654円
原告みずほ銀行
平成17年3月31日から平成20年11月30日までの間
総額41億4401万5654円
原告三菱UFJリース
平成17年3月31日から平成20年11月30日までの間
総額4億1440万1553円
本件組合は,平成20年11月30日までに,大新東株式会社(以下「大新東」という。),株式会社レナウン(以下「レナウン」という。)及び内海造船株式会社(以下「内海造船」という。)への投資事業を行った。本件組合による上記投資は,本件組合が直接当該投資対象会社へ出資を行うのではなく,本件組合がそれぞれ各社に投資するための子ファンド及び孫ファンド(以下「子ファンドら」という。子ファンドらは,それぞれ投資の入れ物という趣旨で「ビーグル」とも呼ばれる。)を設立し,本件組合は,これら子ファンドらの持分を保有し,直接的にはそれらの子ファンドらが本件組合から資金を調達して上記各会社の株式を取得するという形態で行われた。
(5)  原告らは,平成20年11月30日付けで,本件契約42条1項5号に基づき,その全員の一致により,本件組合の解散を決定し,これにより,本件組合は同日解散した。そして,本件契約43条1項に基づき,被告が清算人に就任した。
(6)  被告は,平成21年10月16日,原告三井住友銀行本店営業部に設置された本件組合名義の普通預金口座(以下「本件組合口座」という。)に預託されていた本件組合残余財産の総額19億9182万7469円から,無限責任組合員の成功報酬を含む組合債務等2億7948万9040円を控除した残額17億1233万8429円につき,以下のとおり原告らに残余財産として分配を行った(甲9の1から3まで)。
原告三井住友銀行 5億0032万1584円
原告みずほ銀行 5億0032万1584円
原告三菱UFJリース 5003万2144円
残金 6億6166万3117円
被告は,上記組合債務等相当額2億7948万9040円に加え,6億6156万3000円について,清算人報酬として,その余の10万0117円について,被告自身に対する残余財産分配金として,被告名義の預金口座に振り込んだ(したがって,本件組合の清算に当たり,被告が被告名義の預金口座に振り込んだ金員の合計額は,9億4105万2040円となる。)。これにより,本件組合口座内の預金は全額払い戻された。
3  争点
(1)  争点1(残余財産分配請求の被告適格)について(本訴請求)
(被告の主張)
本訴請求は,残余財産分配請求であるところ,原告ら主張のように本件組合に残余財産が残っているとすれば,本件組合は,解散されても清算が結了するまでは存続しているから,被告とすべきは法人でない社団(民事訴訟法29条)としての本件組合であり,被告は,「本件組合清算人株式会社カレイド・ホールディングス」として本件組合を裁判上及び裁判外で代表するに留まる。したがって,被告は,本訴請求の被告たり得ない。
(原告らの主張)
被告は,原告らに支払うべき本件組合の残余財産のうち一部しか支払わず,清算人報酬であると主張する6億6156万3000円を含む9億4105万2040円を組合財産から自己名義の預金口座に振り込んでいるが,被告に清算人報酬請求権は発生しておらず,被告は本件組合の財産の移動をする正当な理由がないから,上記金員は組合財産としての性質を失っておらず,本来原告らに分配されるべき未払分の残余財産を被告が占有していることになる。そして組合の残余財産がある構成員の占有に係る場合の解散に伴う残余財産分配の方法としては,当該構成員から他の構成員に対する組合財産の交付という形態をとるから,原告らは,被告に対し,残余財産分配請求として未払の残余財産の支払を直接請求することができる。
(2)  争点2(本件組合の清算人報酬の発生の有無)について(本訴請求)
(原告らの主張)
ア 被告には,本件組合の清算業務に係る報酬請求債権は存在しない。本件契約においては,清算人はその役務の提供に対し,「適正な報酬」を得ることができるとされるところ,本件組合は,解散前は,預金及び未収収益のほかには,被告が本件組合の投資用ビーグルとして組成した「KAREIDO MARINE投資事業有限責任組合」(以下「KM組合」という。)の持分権を保有していたものにすぎなかった(有限責任組合員であったに留まる旨の主張と解される。)。KM組合は本組合の解散前に解散しているが,被告の本件組合清算人としての主な業務は,KM組合がその資産を全て現金化した後に,KM組合から金員を取り立てたというものに過ぎず,極めて単純かつ軽微な事務にとどまっており,被告が主張する6億6156万3000円もの清算人報酬が発生することはあり得ない。
また,KM組合の保有していた株式の売却を被告が行ったのは事実であるが,それは,あくまでもKM組合の清算人の業務として行われたものであって,本件組合の清算人としての業務ではない。しかも,被告は,清算人報酬とは別途,KM組合からの分配について,その分配額が全組合員の出資履行額を超える部分の20%相当額を本件契約に基づく無限責任組合員の成功報酬として受領している。したがって,本件組合の清算人としての報酬に,KM組合の所有していた株式の売却に関する成功報酬の要素を加味する必要はない。
さらに,本件契約においては,有限責任組合員全員一致で本件組合の解散を決定できることとされており,残存期間において被告が得られるはずであった管理報酬を補償する理由はない。
しかるに,被告は本件組合財産から理由のない清算人報酬として6億6156万3000円を取得し,原告らの残余財産分配請求権を侵害している。
イ 以上によれば,本件組合残余財産19億9182万7469円から組合債務等4億1841万7270円(成功報酬は甲9の1から9の3までと異なり,本件契約46条2項,32条3項に基づき,4億1824万8280円と計算した。)を控除した15億7341万0199円全額が,原告らに対する分配の対象となる。これによれば,原告らそれぞれが取得した残余財産分配請求権は以下のとおりである。
原告三井住友銀行 7億4917万1576円
原告みずほ銀行 7億4917万1576円
原告三菱UFJリース 7491万7137円
被告 14万9910円
これに対する既払金は,以下のとおりである。
原告三井住友銀行 5億0032万1584円
原告みずほ銀行 5億0032万1584円
原告三菱UFJリース 5003万2144円
これら残余財産分配請求権の履行期は,遅くとも後述の残余財産の一部の分配の日である平成21年10月16日である。
また,仮に,被告名義の預金口座への入金という行為によって,組合財産としての性質が失われているとしても,原告らは被告に対し,不当利得返還請求権を有している。すなわち,被告には,本件組合の清算人報酬は発生していないところ,被告は正当な理由なく,6億6156万3000円を組合財産から自己の口座に入金している。
以上によれば,原告らは,上記残余財産分配請求権の額からそれぞれ上記既払金を控除した以下の金員の分配を受けられなくなっている一方で,これにより被告は同額の利得をしていると認められるから,原告らは被告に対し,不当利得返還請求権を有している。そして,被告は法律上の原因がないことを知りながら上記金員を取得しており,悪意の受益者であるから,その受けた利得に利息を付して返還すべき義務を負っている。
原告三井住友銀行 2億4884万9992円
原告みずほ銀行 2億4884万9992円
原告三菱UFJリース 2488万4993円
(被告の主張)
ア 被告の行った清算業務は,以下のとおり複雑困難なものであり,その報酬は,6億6156万3000円を下らない。
本件組合は解散当時,原告ら及び「BLUE OCEAN投資事業組合」(以下「BO組合」という。)を有限責任組合員,被告を無限責任組合員とするKM組合を通じて内海造船の発行済株式の34%を保有していたが,KM組合は,投資リスクの分散のため,本件組合が共同投資家の投資事業組合であるBO組合と共同で内海造船株式に投資するために組成した共同投資用の,いわば空箱的なビーグルにすぎず,被告の業務は本件組合とKM組合とに分けられるものではなく,一体となって成果を生むものであった。すなわち,本件組合の清算業務として本件組合の保有するKM組合の持分の処分を行うためには,その前提として,KM組合の解散及び清算手続並びに内海造船の株式の売却,そして本件組合とBO組合との共同投資の解消というプロセスを経なければならない。
以上のような本件組合の投資の仕組み,本件組合及びBO組合のいずれの無限責任組合員も被告が務めているため,被告に二重の管理・成功報酬が発生しない仕組みにするという必要から,KM組合のレベルでは,無限責任組合員への報酬は一切発生せず,これに相当する報酬は,本組合及びBO組合契約において発生させる仕組みをとっていた。
原告らは,以上の仕組みを十分理解し,了承(合意)していたのであり,清算人の報酬についても,KM組合で必要となる費用を本件組合が負担することを了解(合意)していた。
イ 以上を前提として,被告は,本件組合の清算業務として以下の業務を行った。
(ア) 本件組合の解散以後も,投資先企業価値の維持・向上のために遂行した業務
被告は,投資資金の最大回収を図るため,清算期間中も解散前と同様の無限責任組合員としての業務を継続した。その具体的内容は以下のとおりである。
a 既に投資回収が完了した投資先(大新東,レナウン)に関わる投資ストラクチャー(投資ビーグル)の清算・結了・分配に関わる業務
b 内海造船の事業価値の維持・向上に関わる業務
c 内海造船の株式の売却に関わる業務
これらの業務は被告が本件組合の無限責任組合員として行っていた業務執行と同等のものであり,清算以前の無限責任組合員の管理報酬と同等額である2億1000万円が,清算人報酬として発生する。
(イ) 突然の解散により追加的に発生した業務
本件組合の解散当時,本件組合が行っていた内海造船への投資は,単なる株式投資ではなく,その経営に参画しながら経営指導等を行い,その事業価値向上に努めるという経営参加型投資であったところ,本件組合は,本件契約上予定されていた投資期間1年と回収期間5年を残したままの異例の解散をすることとなった。しかもその時期は,金融危機(いわゆるリーマンショック)の直後であった。このような状況下で,被告が本件組合の無限責任組合員として,内海造船の経営責任も果たしつつ,最大限の回収を目指して同社株式の売却を行うために,被告は,以下のとおりの極めて困難な追加的業務を行わなければならなかった。
a KM組合の投資先である内海造船の経営陣及び第2株主で前親会社である日立造船との信頼関係の維持
b 造船業界及び株式市場関係者に対する情報漏洩リスクを管理しながらの売却手続
c 金融危機(いわゆるリーマンショック)直後の極めて異常な状況下での売却手続
d 本件組合が突然解散になったことに伴う共同投資家との調整業務
e 清算プロセスの報告業務
これらの追加的業務は,通常の無限責任組合員業務に比肩するものであり,その追加的報酬は2億1000万円が相当である。
(ウ) KM組合の保有する株式の解散時市場価格を上回る価額での売却
本件組合の解散当時の資産はKM組合の持分であり,その回収業務は,KM組合の保有する株式からの回収であった。原告らの要請により,被告は,金融危機(いわゆるリーマンショック)の直後で株式市場が大幅に下落している状況の中で,KM組合の保有する内海造船株式を短期間に大量に売却し,現金化する必要に迫られた。しかし被告は,解散時205円であった株式を409円で売却し,19億2000万円の回収に成功した。仮に金融危機がおきず,安定した株式市場環境で,大手の機関投資家に対し,市場外でまとまった株数を引き受けてもらう手法(ブロックトレード)が可能であったとしても,その回収可能額はせいぜい6億2000万円程度に留まったと考えられるから,被告が実際に回収した19億2000万円との差額である13億円の20%に当たる2億6000万円が成功報酬見合い分の報酬として相当である。
(エ) まとめ
被告が本件組合の清算人として行った業務は以上のとおりであり,その合計額は6億8000万円となり,これが適正な清算人報酬であるところ,被告が清算人報酬として取得した6億6156万3000円はその範囲内であり妥当である。したがって,原告らに,未払分の残余財産分配請求権は存在しない。
また,原告らには残余財産分配請求権は存在しないのであるから,被告は残余財産を利得したとはいえず,悪意の受益者でもない。したがって,原告らには,不当利得返還請求権は存在しない。
(3)  争点3(本件解散の不当性の有無〔本件組合の解散には民法651条2項の趣旨に則りやむを得ない事由が必要とされているのに,その事由がないのに,または,契約上被告の同意が必要であるのに,同意を得ることなく,権利を濫用して,本件解散を行った義務違反等があるか〕)について(反訴請求)
(被告の主張)
ア 本件解散にやむを得ない事由がないこと
本件組合とその業務執行を委ねられている無限責任組合員との関係には,民法上の委任契約の規定が準用されるべき,又はその趣旨に則った解釈がされるべきである。そして,本件組合の解散は,受任者である無限責任組合員の除名と同一の効果があり,無限責任組合員である被告に対する委任の解除と同一視できるから,その効果については,民法651条2項を準用,又はその趣旨に則った解釈がされるべきであるところ,本件組合の解散は,以下のとおり,その時期は,被告にとって不利な時期であり,解散のやむを得ない事由もなかった。したがって,原告はこれにより被告に生じた損害を賠償する義務がある。
(ア) 解散は,被告に不利な時期にされたこと
本件組合の解散の日は,平成20年11月30日であるところ,①本件組合は投資期間中であり,残存期間が6年余りもある時点での解散であったこと,②無限責任組合員である被告が,内海造船の経営に参加する方式(ハンズオン方式)で投資中だったこと,③無限責任組合員である被告が,競業禁止期間(本件契約15条2項)であったためにいわゆる2号ファンドを作れない時期であったことからすれば,有限責任組合員たる原告らによる本件組合の解散の時期は,無限責任組合員たる被告にとって「不利な時期」の解除に該当する。
また,仮に以上の事由が民法651条2項の「不利な時期」に当たらないとしても,同項は,受任者の利益を目的としない無償の委任契約でさえ,解除が受任者にとって不利な時期にされた場合は,委任者はその損害を賠償すべきとしているのであるから,委任が受任者の利益のためにもされている本件組合の解散の場合は,それが正当な理由のない解散であるならば,どのような時期の解散であっても,受任者に不利な時期の解散である。
(イ) やむを得ない事由の不存在
本件組合の解散は,有限責任組合員である原告らの一方的な決定によるものであり,いわば無限責任組合員である被告の除名である。本件契約に適用される投資事業有限責任組合契約に関する法律(以下「本件法律」という。)は民法680条を準用するところ,同条は,「組合員の除名は,正当な理由がある場合に限り,他の組合員の一致によってすることができる。」と定めている。また,本件契約上は,有限責任組合員が無限責任組合員を除名できるのは,無限責任組合員が本件組合の業務執行等につき重大な違法行為を行った場合など,重大な義務違反をした場合とされている(39条)。したがって,民法651条2項にいう「やむを得ない事由」とは,民法680条にいう「正当な理由」,あるいは本件契約所定の「重大な義務違反をした場合」に比すべき事由というべきである。
しかし,被告は,本件組合の解散時までに,有限責任組合員たる原告らの出資約束額105億円のうち出資された87億円を運用し,既に182億円の分配を原告らに行っており,無限責任組合員として本件組合のために十分な成果を挙げた。原告らが問題とするEやFの退職後も被告の業務遂行能力に問題はない。また,レナウン株式の売却手続についても手続違反はない。Fは,被告の再三の呼び掛けに応じず,投資委員会に出席しなかったことは事実であるが,投資委員会は売却先の決定も含め善管注意義務のもとに判断を行ったし,レナウン株式の売却先である「SPICA2号投資組合」は,原告らのレピュテーション(企業に対して世間や人々が抱く印象の総体)を毀損(きそん)するような相手ではない。
したがって,被告には「重大な義務違反」はなく,本件組合の解散に「正当な理由」はない。
イ 本件解散は権利の濫用であること
本件組合の解散は,本件契約42条1項5号に基づくものであるが,本条項は,無限責任組合員の合意を当然の前提として合意されたものである。しかるに,本件解散は無限責任組合員の合意を得ずにされたものであり,専ら原告らの本件契約に基づく出資約束義務,及び被告に対する管理報酬支払義務を逃れることを目的とするものであり,権利の濫用である。
ウ 以上のとおり,原告らによる本件解散は「やむを得ない事由」も,被告の同意も存在しない不当なものであり,無限責任組合員の除名事由を潜脱するためにされものであって解散権の濫用であり,被告に対する本件契約上の義務違反又は不法行為が成立する。したがって,原告らには本件解散により被告が被った損害を賠償すべき責任がある。これは組合の債務であるから,原告らは出資の限度で連帯して責任を負う(本件法律9条2項)。
(原告らの主張)
ア やむを得ない事由の存在
本件組合の解散について,民法651条2項を準用又は同条項の趣旨を考慮する余地はない。有限責任組合員である原告らが,無限責任組合員に業務執行を委任しているとしても,組合そのものの存続を失わせる解散と業務執行の委任のみ解除する行為とは全く異なる。また,本件法律は,16条に準用する民法の組合及び委任の条文を明記しているが,民法651条2項は準用されていないし,投資事業を営むための団体である投資事業有限組合の趣旨目的からしてもその解散に「正当な事由」を要求することは合理性がない。さらに,投資事業有限責任組合の解散に民法651条2項を準用したりその趣旨を考慮する余地があるとしても,同条項は強行規定ではなく,本件契約42条1項5号には,有限責任組合員の全員一致による解散決定を本件組合の解散事由とすることが定められているから,結局,民法651条2項を準用したり,その趣旨を考慮する余地はない。
しかし仮に,本件契約に651条2項が準用されたり,同条項の趣旨が考慮されるとしても,本件組合が解散に至ったのは,①被告の内紛により投資担当者であるF及びEが被告を離職したため,本件契約21条により本件組合が新規投資の停止に至ったこと,②Fの離職後,原告らの要請により,被告とFの間で業務委託契約が締結され,Fが本件組合の投資委員会に出席して助言することが定められたにもかかわらず,被告は同人の助言を得ないまま,突如レナウンの株式を,投資家としての実体が明らかでないSPICA2号投資事業組合に対し売却するという本件組合の組合財産運用についての重大な手続違反があったこと,③上記①②の事情により,原告らは,被告に対する信頼を維持することができなくなり,Dと面談し,被告自ら本件組合を脱退することを申し入れたが,被告はこれを拒絶したことにより,本件組合を解散せざるを得なくなったという事情によるものであった。
以上のとおり,本件解散は,被告の重大な手続違反のために,原告らと被告の信頼関係が破壊されたことによるものであり,「やむを得ない事由」がある。
イ 本件解散は権利の濫用ではないこと
本件契約42条1項5号は,明文どおり,有限責任組合員である原告らの全員一致により,何らの留保なくいつでも本件組合を解散できる旨の規定であり,被告の同意は要件となっておらず,権利の濫用でもない。
ウ 以上のとおり,本件解散には,そもそも「やむを得ない事由」は必要とされないし,仮に必要とされるとしても,原告らには本件解散をすべき「やむを得ない事由」があったといえる。また,本件解散に被告の同意は必要ではない。したがって,本件解散は何ら不当なものではなく,被告に対する本件契約法の義務違反も,不法行為も成立しない。
(4)  争点4(損害)について(反訴請求)
(被告の主張)
上記のとおり,本件組合は出資約束期間中に不当に解散させられたため,投資先企業において当初の計画に沿った事業が困難となり,被告は金融危機(いわゆるリーマンショック)による株式市場が最悪の時に事業者の株式の売却を迫られることになった。これにより被告に生じた損害は,以下のとおりである。
ア 本件組合の残存期間5年間(残存期間は6年だが,内1年分は清算人となった被告の清算人報酬に含まれる。)に支払われるべき管理報酬相当額10億5000万円
本件契約には投資期間が終了しても,被告は本組合の存続期間中,年間2億1000万円(総組合員の出資約束額の合計額の1.0%)を管理報酬として組合財産から受領できる旨の定めがあるが,本件解散により,被告は残存期間に本件組合から支払われるべき管理報酬相当額を逸失した。
イ 成功報酬相当額4億7950万5600円
本件組合の解散がなければ,被告は,KM組合の投資事業組合契約(以下「KM契約」という。)の残存期間を有効に利用して,内海造船株式の評価が回復した後に売却でき,その場合の同株式の市場価格やプレミアムを考慮すると,回収額は36億6000万円(市場株価443円の終値に対し99%のプレミアムを上乗せした金額で譲渡していた。)にのぼっていたことが予想される。そして,ここからKM組合の投資コストを控除した差額である24億の20%である4億7950万5600円が被告の成功報酬となるはずであった。しかし、実際の解散時は金融危機(いわゆるリーマンショック)により株式の市況は最悪であり,被告は,本来可能であった上記成功報酬相当額を失うことになった。
(原告らの主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提となる事実,証拠(甲1から21,乙1から16,22から38,証人Gの証言及び被告代表者Dの本人尋問の結果)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  Dは,日本興業銀行に勤務した後,平成13年5月,本件法律に基づくファンド運営を行う会社である株式会社MKSパートナーズに入社し,平成16年8月末,同社を退職し,同年9月,被告を設立した。被告は,平成16年11月1日,当時UFJ銀行に勤務していたFとの間で,「就労合意書」(乙35)を締結し,雇用契約を締結した(乙29,35,36)。
(2)  被告は,原告三井住友銀行との間で,平成16年12月6日,本件契約を締結した。本件契約は,当時経済産業省が公表していた投資事業有限責任組合契約のモデル契約を基として作成された(甲20,乙36)。本件契約締結の際,本件組合の存続期間について,本件契約に規定されている10年間は,必ず存続させなければならないとか,中途で組合を解散する場合を想定した話し合いがされたことはなかった(甲20,この点はDもその本人尋問で認めている。)。
(3)ア  本件組合は,平成16年12月ころから,第1号案件として,大新東(当時JASDAQ市場上場。)への投資を,平成17年10月,レナウン(東京証券取引所第一部上場。)への投資を,さらに平成18年2月,日立造船株式会社の子会社である内海造船への投資を開始した(甲20,乙29,36)。
イ(ア)  大新東については,総額40億円の投資案件であったが,本件組合が投資用ビーグルである匿名組合を通じてそのうち26億円を,本件組合が共同投資家を募って組成した匿名組合が残額の14億円を,それぞれ被告が出資するカレイドDST有限会社(以下「カレイドDST」という。)に出資し,その資金によりカレイドDSTが大新東の株式を取得する方法で投資を行った。
(イ) レナウンについては,総額約100億円の投資案件であったが,本件組合が投資用ビーグルである匿名組合を通じて,そのうち約26億6000万円を出資し,被告が共同投資家を募って組成した2つの匿名組合らの出資及びシニアローン(劣後債でない通常の貸出金)によって残額の約73億4000万円を調達し,これらを被告が出資するカレイドELEGANCE有限会社(以下「カレイドELEGANCE」という。)に出資し,同社がさらにレナウンに対する投資用ビーグルである匿名組合であるSPICA投資事業組合に出資し,その資金により同組合がレナウンの株式を取得する方法で同社へ投資を行った(甲20,乙29,36)。
(ウ) 内海造船については,総額35億円の投資案件であったが,本件組合及び共同投資家の匿名組合であるBO組合を有限責任組合員とする投資用ビーグルであるKM組合を設立し,本件組合は21億円を,BO組合は14億円を,同組合に対して出資し,KM組合はその資金で日立造船から内海造船の株式を取得する方法で内海造船へ投資を行った(甲16,20,乙2,3,4,5,29,36)。
被告,本件組合及びBO組合の間で締結された平成18年2月14日付けKM組合に係る投資事業有限責任組合契約(甲16。以下「KM組合契約」という。)には,以下のような定めがある。
a 存続期間
効力発生日である平成18年2月14日から5年間(6条)
b 組合員
無限責任組合員は被告とし,有限責任組合員は本件組合,BO組合とする(4条)。
c 無限責任組合員の権限(11条)
業務執行,組合財産の運用等は,無限責任組合員の権限とする。
d 清算人の権限(39条)
清算人は,①現務の結了,②債権の取立て及び債務の弁済,③組合員への残余財産の分配,④その他上記の職務を行うため必要な一切の行為に関し,職務を執行し,KM組合を代表する裁判上及び裁判外の一切の権限を有する。
e 清算人の選任及び報酬(38条)
KM組合が解散した場合,原則として無限責任組合員が清算人となる。清算人は,その役務の提供に対し,適正な報酬を得ることができる。
また,被告は内海造船との間で,被告が内海造船の経営指導をすることを内容とする契約を締結し,その報酬は,平成20年5月30日まで,「出資履行戻し(トランザクション報酬(無限責任組合員が,本件組合の事業に関し,投資先事業者等又はその他の者から,その固有の地位において受領するアドバイザリー報酬,取引報酬その他の報酬を意味する(本件契約1条34号))」として原告らに払い戻されていた(乙23,38)。
ウ  上記の各投資案件のために設立された投資用ビーグルは全て被告が無限責任組合員となっていたが,KM組合も含め,いずれも無限責任組合員の管理報酬,成功報酬に関する規定はない(甲16,乙5)。
(4)  平成19年3月,被告は,カレイドDSTが保有する大新東の株式の一部をシダックス株式会社に売却し,その売却利益138億9388万3000円をカレイドDSTから本件組合への金銭分配としてカレイドDSTから回収し,各組合員に分配した(乙23,36)。
(5)  平成19年5月下旬ころ,DとFが原告三井住友銀行に来訪し,Fが被告を退職予定であることを告げた。また,このころ,Eが被告を退職した。被告は,Fの後任となる投資担当者候補の人物を推薦したが,原告らが年齢,投資業務経験の点などから反対し,本件組合の諮問委員会でこの人物の就任が付議されず,本件組合の投資担当者に就任しなかった(甲20)。
平成19年11月29日,原告らの要請により,被告とFは,契約期間を平成20年5月29日から同年11月28日までとして,Fが本件組合の投資委員会へ出席し,助言すること等を内容とする委任契約(以下「F委任契約」という。)を締結した。また,被告,F,及び原告らは,同日,「KALEIDO CP FUND 1投資事業有限責任組合委任契約に関する覚書」(甲19。以下「覚書」という。)を取り交わし,①本件契約に定める,被告から諮問委員会への照会に対する承認事項として,F委任契約の委任の解除,変更を含めること,委任契約の契約期間中にF委任契約を解除,変更する場合には,本件組合の諮問委員会の事前の承諾を得ること,②被告は,Fが覚書締結日時点において,本件組合の投資活動に投資担当者として従事していない状態であることを認識し,本件契約に従い,主たる投資担当者及び投資担当者の2分の1以上の者が本件組合の投資活動に従事できない状態が治癒されるまでの間,組合契約21条3項(本件組合の新規の投資活動の原則停止)が有効であることを確認すること,③被告は本件契約にかかわらず,原則1か月に1回,原告らに対し,組合の運営及び組合財産の運用状態につき報告する集会を開催するものとし,その集会において,原告らは被告に対し,意見を述べることができること,原告ら全員の要請があった場合には,Fは,委任契約期間中,その集会に参加することを内容とする合意をした(甲20,乙36)。Fは,同日,被告を退職し,原告らは平成19年12月から,覚書に基づき,被告の組合財産の運用状況のモニタリングを開始した。
(6)  カレイドDSTは,平成20年7月,保有する大新東の全株式をシダックス株式会社に売却し,被告は,その売却利益を本件組合への匿名組合配当金としてカレイドDSTから回収し,各組合員に分配し,さらに,平成20年10月7日,各組合員に対し,カレイドDSTの清算金を分配した(乙23,36)。
(7)  被告は,平成20年5月ころから,SPICA投資事業組合が保有するレナウンの株式の売却を検討し,平成20年8月26日,投資委員会においてレナウンの株式を,かざかファイナンス株式会社の投資用ビーグルであるSPICA2号投資事業組合に売却することを実質的に決定した。このレナウン株式の売却を実質的に決定した投資委員会にFは出席しておらず,また,売却先について,被告は事前に原告らの了解を得ていなかった(甲20,乙36)。被告は,同年9月5日,上記決定に基づきレナウンの全株式をSPICA2号投資事業組合に売却し,原告らにこれを報告した。
(8)  原告らは,平成20年9月ころ,本件組合への出資解消に向けた協議を開始し,同年10月10日,Dと面談し,原告らとしては,本件組合の解散又は無限責任組合員の除名を検討していることとともに,被告自らの脱退を申し入れたが,被告はこれを拒絶した(甲20,乙36)。同年11月ころ,本件組合を解散した場合の本件組合の清算人としての報酬について,被告から,本件組合が期間満了時まで存続した場合に被告が受領する管理報酬の総額が支払われるべきである旨要請したのに対し(甲10の1から3まで),原告らは認められない旨の回答をした(甲11,乙7,乙30)。
(9)  KM組合は,平成20年11月28日解散し,被告が清算人に就任した。また,本件組合は,本件契約42条1項5号に基づき,有限責任組合員である原告ら全員の一致により,同月30日に解散し,被告が清算人に就任した(当事者間に争いがない。)。被告は,同年12月8日付け「清算手続きに関するご案内」と題する文書(乙10)で,原告らに対し,①被告が本件組合の清算人として清算手続を開始したこと,②本件契約に基づき,財産目録,貸借対照表,及び財産処分の具体案については準備ができ次第送付すること,③KM組合が同月28日で解散したこと,④内海造船株式の売却に向けて,候補先とコンタクトを開始していることなどを通知した。同書面に添付されている清算手続のスケジュール表(乙11)には,被告は内海造船の株式をTOBの方法(株式公開買付)により売却することを予定している旨の記載がある。
(10)  被告は,平成21年3月19日,同月31日,同年4月9日,同月16日,同月23日,同年5月1日,同月11日,同月18日,同年6月1日,原告らに対する清算人業務の報告会を実施した。また,報告のための説明資料として「内海造船 売却プロセス説明資料」(乙14)が作成され,原告らに交付された(甲20,乙32)。その際,原告らからは,買い手候補先の名前を開示してもらいたいなどの質問があったが,被告は内海造船の株式の売却先についてはインサイダー情報であるから開示できないと回答した(当事者間に争いがない。)。
被告は,KM組合の清算人として,KM組合の保有する内海造船の株式774万9000株(取得価格477円,解散時の市場価格は205円であった。)のうち220万株を平成21年5月20日,日立造船に1株473円で譲渡し,残りの株式554万9000株を,同年8月25日,内海造船に1株362円で譲渡した(乙13)。被告は,KM組合の残余財産31億7207万4818円のうち,本件組合に19億2403万2119円を,BO組合に12億4715万4350円を,(KM組合の無限責任組合委員としての)被告に88万8349円を分配し,これにより,KM組合の残余財産の処分は全て完了した。
(11)ア  被告は,同日,原告らに対し,「KALEIDO CP FUND1投資事業有限責任組合に係る残余財産の分配に関するご案内」と題する書面(甲9の1から9の3まで)により,本件組合の残余財産の内訳及び各組合員への分配を以下のとおり行うことを通知した。
(ア) 財産目録
項目 金額
投資事業有限責任組合 19億2403万2119円
預金 6053万6197円
未収収益 725万9153円
合計 19億9182万7469円
(イ) 債務金額
項目 金額
未払金
税理士法人支払報酬 15万7500円
清算人報酬 6億6156万3000円
成功報酬 2億7932万0050円
登記費用 6000円
振込手数料等 5490円
合計 9億4105万2040円
(ウ) 清算金((ア)-(イ)) 10億5077万5429円
(エ) 各組合員への分配額((ウ)を各組合員の持分で按分した額)
原告三井住友銀行 5億0032万1584円
原告みずほ銀行 5億0032万1584円
原告三菱UFJリース 5003万2144円
被告 10万0117円
イ  被告は,同日(平成21年10月16日),原告らに対し,上記のとおり本件組合口座から残余財産の分配を行い,清算人報酬とする上記6億6156万3000円を含む9億4105万2040円を自己名義の口座に取得した。これにより,本件組合口座内の預金は全額払い戻された(甲13)。
(12)  原告らは,被告に対し,平成21年10月21日付け「清算人報酬に係る協議書」(乙15)と題する文書で,KM組合が保有していた内海造船の株式のうち,本件組合の持分相当額である18億4958万5869円の約3%相当額である5826万1955円で清算人報酬を合意することを提案したが,被告は,同月30日付け「回答書」(乙16)によりこれを拒絶した。
(13)  本件組合がその存続期間である平成16年12月6日から平成20年11月30日(第1期から第4期)までに実施した投資総額は約87億円(大新東約26億円,レナウン約26億6000万円,内海造船21億円及び諸費用)であり,被告が解散までに原告らに配当した金額の総額は172億円であった。
被告は,解散までの管理報酬として合計8億3000万円を受領した。また,成功報酬は合計26億7103万6189円(第3期に14億1296万0561円(税込14億8360万8589円),第4期に8億3982万7346円,清算期に3億9833万1696円(税込4億1824万8280円)の支払を受けた(この点,被告は,原告らに対し,上記(11)のとおり被告の成功報酬は2億7932万0050円と主張する一方,原告らは,これを上回る上記4億1824万8280円を被告の成功報酬として自認しているが,被告は,本件組合口座から清算人報酬として6億6156万3000円,成功報酬として2億7932万0050円,及び諸経費等の合計16万8990円の合計9億4105万2040円を自己名義の口座に振り込んでいるところ,原告は,被告に対し,上記自認した成功報酬を控除して残余財産の分配を求めているのであるから,事実上,原告ら主張どおりの成功報酬の支払を受けたといえる。)(甲5,21)。
2  争点1(残余財産分配請求の被告適格)について
本訴請求の訴訟物は,被告に対する残余財産分配請求権と不当利得返還請求権であるところ,これらはいずれも財産上の給付請求であり,原告らから財産上の給付義務者と主張されている者が被告適格を有する(被告の主張は,自身が残余財産分配義務を負っていないとの否認に過ぎない。)。
また,前記前提となる事実(2)シ及び(5)によれば,被告は本件組合の清算人として,自己の名をもって裁判上及び裁判外の一切の権限を有すると同時に,被告は本件組合の無限責任組合員として本件組合の債務に対し,連帯して無限定の責任を負うのであるから(本件法律9条1項),原告らは被告に対し,直接残余財産分配請求を行うことができるというべきである。
3  争点2(本件組合の清算人報酬発生の有無)について
(1)  本件組合解散後も,投資先企業価値の維持・向上のために遂行した業務
ア 既に投資回収が完了した投資先(大新東,レナウン)に関わる投資ビーグルの清算・結了・分配に関わる業務
前記前提となる事実(2)シによれば,本件組合の清算業務は,①本件組合の現務の結了,②債権の取立て及び債務の弁済,③組合員への残余財産の分配,その他上記職務を行うため必要な一切の行為と定められているところ,本件組合が持ち分を有する投資ビーグルの清算・結了・分配に関わる業務は,原則としては当該投資ビーグルの清算人の業務であって,当然には上記本件組合の清算人業務とはいえないというべきである。
また,前記認定事実(6)(7)(13)によれば,本件組合の行った投資案件のうち,大新東については,被告は平成20年7月に,カレイドDSTの保有する大新東の株式を全部売却し,同年9月5日に,カレイドELEGANCEの保有するレナウンの全株式を売却しており,本件組合は,本件解散時にはKM組合の持分しか有していなかったことが認められる。そして,被告が本件解散後,本件組合の清算期間中に,本件組合の清算業務として,上記2件の投資案件の清算・結了・分配に関わる業務を行ったという形跡はない。
以上のとおり,被告主張の上記業務は本件組合の清算人業務であるとはいえず,また,仮にそうみなされる余地があったとしても,被告がこれについて具体的業務を行った形跡はないため,上記業務について清算人報酬の発生する余地はない。
イ 内海造船の事業価値の維持,向上に関わる業務及び内海造船の株式の売却に関わる業務
この点,被告は,KM組合は,投資リスクの分散のため,本件組合が共同投資家の投資事業組合であるBO組合と共同で内海造船株式に投資するために組成した共同投資用の,いわば空箱的なビーグルにすぎず,被告の業務は本件組合とKM組合とに分けられるものではなく,一体となって成果を生むものであったものであることを強調し,KM組合のレベルでは,無限責任組合員への報酬は一切発生せず,これに相当する報酬は,本組合及びBO組合契約において発生させる仕組みをとっていたと述べる(乙29,36,被告代表者D本人尋問の結果)。そして,前記認定事実(3)(6)(9)(10)によれば,①被告はKM組合の清算人報酬を受領した形跡がないこと,②内海造船への投資の回収は,その仕組み上,KM組合の所有する株式の売却を前提としており,被告は実際にもKM組合解散後,KM組合の保有する内海造船株式を全て売却したこと,③被告は内海造船と経営指導契約を締結し,平成20年5月30日まで被告に対する経営指導報酬が「出資履行戻し(トランザクション報酬)」として原告らに払い戻されていたことが認められる。
しかしながら,前記前提となる事実(2)シ及び前記認定事実(3)イ(ウ)及び(9)によれば,本件契約及びKM組合契約はそれぞれ別個に,清算人の清算業務について,①本件組合の現務の結了,②債権の取立て及び債務の弁済,③組合員への残余財産の分配,その他上記職務を行うため必要な一切の行為と定め,清算人報酬については清算人が適正な報酬を得ることができると定めていること,また,KM組合は本件解散に先立ち解散し,被告はKM組合の清算人に就任していたことが認められ,そうすると,被告がこれらの業務を行ったとしても,それが本件組合の清算人報酬となるとの合意があるとは認めるに足りず,それは被告がKM組合の清算人として行った業務であって,KM組合の清算人報酬が発生することはあっても,本件組合の清算人報酬が発生することはない。本件契約(本件組合に係る投資事業有限責任組合契約)は,この種の契約に通じた専門家同士が交渉,契約締結に至ったものであり,特に清算人報酬のような当事者双方にとってそれぞれの利害に直結する重要な内容については,強行法規に反しない限り,原則として,当事者が契約としてその合意内容を書面に明記した内容が合意の内容となると解するべきであり,本件契約並びにKM組合契約の清算人の清算業務内容及び報酬規定が別個に存在し,その内容が上記認定のようなものである以上,それを超えて被告主張のような合意がされた,或いは被告主張の清算人報酬を発生させるような法的な事実があるとまでは認めがたいといわざるを得ない(なお,被告は,経済産業省がモデル契約の解説の中で,無限責任組合員が清算人となる場合に,清算人の報酬の中に管理報酬や成功報酬を含めて積算することがあることを指摘しているとして,モデル契約の趣旨に沿って契約を解釈すべきであると主張するが,上記解説ではそのような契約をすることもあり得ることを指摘しているのであって,そのような契約となっていないのに,常にそのように解釈すべきであるとしているわけではない。)。
以上のとおり,被告の主張する上記業務は,本件組合の清算人業務とは認められないものであるから,その報酬が発生する余地はない。
(2)  突然の解散により追加的に発生した業務
ア ①KM組合の投資先である内海造船の経営陣及び第2株主である日立造船との信頼関係の維持,②造船業界及び株式市場関係者に対する情報漏洩リスクを管理しながらの売却手続,③金融危機(いわゆるリーマンショック)直後の極めて異常な状況下での売却手続については,上記(1)イと同様,KM組合の清算人としての業務であるというべきであり,これらの業務について本件組合の清算人報酬が発生する余地はない。
なお,被告は,上記業務に多大な努力を払ったこと,特に,内海造船の株式売却手続においては,スケジュールに準じて国内外のM&Aアドバイザーにヒアリングを行い,59社の売却候補先(ロングリスト)を抽出し,このロングリストから売却先の絞り込みを行い,平成20年5月20日の日立造船との合意に至るまで株式売却のために行った買手候補先との面談は75回にのぼるなどと主張をする。しかし,内海造船株式の売却には大変な労力が必要であったとの趣旨のDの供述(被告代表者Dの本人尋問の結果,乙36)は抽象的で被告の上記主張の裏付けたり得ず,このほか,これらの業務の具体的内容を認定するに足る証拠はない。
イ 本件組合が突然解散になったことに伴う共同投資家との調整業務
被告が主張する上記業務の具体的内容としては,KM組合からの投資資金の回収方法について,BO組合は現物分配を望んだのに対し,本件組合の有限責任組合員である原告らは現金化した上での分配を希望したために発生した調整業務と解されるところ,KM組合の解散と財産の清算の経過は前記認定事実(9)(10)のとおりであり,被告主張の上記事実があったと認めるに足りる証拠はない。したがって,そもそも内海造船の株式売却に当たり被告に本件組合と共同投資家との利害調整が必要であったという事実自体認めるに足りないといわざるを得ない。
ウ 清算プロセスについての報告業務
上記業務は,被告が原告らに対し,KM組合からの資金回収業務の経過を説明する業務であるから,KM組合からの回収業務に附随する業務として,本件組合の清算人業務に該当するといえる。そして,前記認定事実(10)によれば,被告が原告らに対し,平成21年3月から6月1日の間の9回,原告らに報告をしたこと,また,その際,原告らからは,買い手候補先の名前を開示してもらいたいなどの質問があったが,被告は内海造船の株式の売却先についてはインサイダー情報であるから開示できないとしたことが認められる。
被告はさらに,原告らに対する週次の説明が被告にとって多大な負担になったと主張する。しかし,原告は,毎回の報告会の具体的内容について,毎回時間としては1時間程度,提供された資料は1,2枚程度のものであったと主張し,Gもこれに沿う供述をするところ,報告会に割かれた時間,報告会の具体的内容,そのために必要だった作業,業務についてはこれ以上何ら証拠がなく,この程度の内容の報告であれば,被告の主張のように,被告にとって多大な負担となったとまではいえないというべきである。
以上によれば,上記業務がKM組合からの回収業務に附随する業務として,被告に対して当然に求められる限度を超えて,多大な負担を課すものであったとは認めらない。
(3)  KM組合の保有する株式の解散時市場価格を上回る価額での売却
被告は,解散時205円であった内海造船の株式を409円で売却し,19億2000万円の回収に成功したので,その成果見合い分の清算人報酬が発生していると主張する。しかし,前記(1)イのとおり,内海造船株式の売却は基本的にはKM組合の清算業務であるから,本件組合の清算人報酬が発生する余地はない。
これに対し,被告は,KM組合には無限責任組合員の管理報酬の規定がないことをもって,KM組合の清算人としての成功報酬を本件組合の清算人報酬として評価すべき根拠として主張する。しかし,前記前提となる事実(2)ケ(イ),(4)及び前記認定事実(3)のとおり,本件組合は投資対象会社へ直接投資を行うのではなく,KM組合ほか,子ファンド,孫ファンドを介して投資する仕組みをとっていること,本件契約には,無限責任組合員の業務執行に対する対価としての管理報酬のほか,その成功報酬の規定も定められていることに照らせば,仮に子組合であるKM組合においても本件組合の成功報酬とは別個に成功報酬が発生するとすれば,被告はKM組合の成功報酬を二重に取得することになり,上記本件組合の投資の仕組みに照らし,明らかに不当であり,その意味で,KM組合の無限責任組合員でもある被告の報酬の二重取りの危険を回避するため,KM組合に独自の管理報酬規定がないのはむしろ当然といえる。
そして,前記認定事実(13)によれば,原告らは,被告の無限責任組合員としての成功報酬として,4億1824万8280円が発生することを自認しており,この金額は,本件組合口座から被告が自己名義の口座へ振り込んだ金員に含まれるから,被告は,事実上,本件組合の清算期間中に上記成功報酬を受領していることが認められる。
他方,清算人の報酬については,前記のとおり,本件組合とKM組合とでそれぞれ別個の清算人報酬の規定が置かれているのであり,無限責任組合員の報酬とは,明らかに別の定め方をしているといえる。
以上によれば,内海造船株式の売却について本件組合の清算人報酬が発生しているとは認められない。
(4)  KM組合が保有する資金を現金化した後,同組合から金員を取り立てる業務
上記業務が本件組合の清算業務であることは当事者間に争いはない。しかしながら,被告は,上記業務によって清算人報酬が発生するのか否か,発生するとしてその具体的金額については何ら具体的主張立証をしない。
しかし,乙15によると,原告らは,平成21年10月21日付け「清算人報酬にかかる協議書」と題する書面において,KM組合が保有していた内海造船の株式のうち,本件組合の持分相当額である18億4958万5869円の約3%相当額である5826万1955円が適正な清算人報酬と考えられるとして,被告に提案したこと(ただし,被告がこれを拒んだため合意は成立していない。)が認められ,本件組合の清算人としての固有の業務,すなわち前記(2)ウ(清算プロセスについての報告業務)及び本項((4))の内容に照らして総合考慮すると,この業務に関する報酬(本件契約43条2項)は,原告らが提案した上記5826万1955円が相当であると認められる。
(5)  以上によれば,被告の主張する業務のうち,被告に本件組合の清算人報酬として認められるのは,前記(2)ウ(清算プロセスについての報告業務)及び(4)(KM組合が保有する資金を現金化した後,同組合から金員を取り立てる業務)であり,その適正な報酬は5826万1955円であると認められ,それ以外の被告の主張に係る業務は本件組合の清算業務とは認められない。
そうすると,本件契約によれば,下記の計算式のとおり,本件組合口座から被告が清算人報酬として取得した6億6156万3000円のうち,4億6432万8570円は原告らに分配されるべきものである。
本件組合の残余財産 19億9182万7469円
組合債務等(原告ら自認額) △4億1841万7270円
被告への報酬相当額 △5826万1955円
分配対象額 15億1514万8244円
うち原告三井住友銀行分配額 7億2143万0430円
(既払額 △5億0032万1584円)
未分配額 2億2110万8846円
うち原告みずほ銀行分配額 7億2143万0430円
(既払額 △5億0032万1584円)
未分配額 2億2110万8846円
うち原告三菱UFJリース分配額 7214万3022円
(既払額 △5003万2144円)
未分配額 2211万0878円
原告らへの未払分配額合計 4億6432万8570円
この点,前記前提となる事実(6)及び前記認定事実(11)によれば,平成21年10月16日,被告は本件組合口座から上記6億6156万3000円を含む9億4105万2040円を自己名義の口座に払い戻したことが認められ,組合財産たる上記金員は,被告の固有財産に混同した。そのため,原告らはなお被告に対し,組合財産の分配請求権を有するかが問題となる余地もある。しかし,投資事業有限責任組合については,本件法律上,民法上の組合と同様に破産に関する規定がなく,組合財産の公示の義務付けや株式会社の資本金に相当するような組合財産の一定額維持を義務付ける規定も設けられていないことからして,法人の財産のように,被告の財産と明確に区別されておらず,組合員の責任は,組合の責任に対して補充性も認められない。そして,いずれにしろ,被告は本件法律上,組合債務について無限の責任を負うものである(本件法律9条1項)。そうすると,仮に6億6156万3000円が被告の固有財産に混同したために組合の固有財産としての区別が不可能であるとしても,原告らは被告に対し,上記金員について本件契約に基づく残余財産分配請求権を有しているというべきである。
また,仮に残余財産が被告の固有財産と混同したことにより,残余財産分配請求権が消滅したとしても,被告は,法律上の原因なくして上記金員を取得し,原告らにはそれぞれ分配額済みの金銭との差額の限度で損失が発生しているから,原告らは,不当利得返還請求権に基づき,被告に対し,上記金員の返還請求権を有するというべきである。そしてこの場合,被告は悪意の受益者であるから,その受けた利得に利息を付して返還する義務を負う。
(6)  よって,被告は,原告三井住友銀行及び同みずほ銀行に対し,持分金額に応じ比例案分することにより計算されたそれぞれ2億2110万8846円,原告三菱UFJリースに対し,2211万0879円の残余財産分配義務,及びそれぞれ前記各金員に対する被告が原告らに残余財産を分配した日(平成21年10月16日)の翌日である同月17日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務(残余財産分配義務の履行遅滞に基づく)を負う。
4  争点3(本件解散の不当性の有無〔本件組合の解散には民法651条2項の趣旨に則りやむを得ない事由が必要とされているのに,その事由がないのに,または,契約上被告の同意が必要であるのに,同意を得ることもなく,権利の濫用により,本件解散を行った義務違反等があるか〕)について
(1)ア  本件組合は,本件法律の適用を受けるところ,本件法律は,業務を執行する無限責任組合員と有限責任組合員の関係について,16条で民法の委任の規定の一部を準用しているが,民法651条1項,2項は準用されていない。本件法律が投資事業有限責任組合に適用される委任の規定を明記している以上,準用されていない条文については,その準用を殊更に除外していると解すべきである。
被告は,専ら本件組合の有限責任組合員の利益のためになされたものであり,そのような場合,「やむを得ない事由」又は「正当な事由」なく解散されたことによる無限責任組合員の損失を填補することを条件とする慣行が定着しているなどとし,本件組合の解散が,実質的には被告が辞任を拒んだことに対する「除名」(本件契約39条1項,前提事実(2)サ)であって,被告に「重大な義務違反」がなければできない「除名」を潜脱するためにしたものであるなどとして,民法651条2項の趣旨により,原告らは,本件解散により被告が被った損害を賠償すべきであると主張する。しかし,本件組合の存続を前提とする「除名」と本件組合自体が消滅する「解散」とが法的性質を異にすることは明らかであり,本件法律があえて準用を除外している民法651条2項の趣旨から損害賠償義務を認めるような解釈をすべきであるなどとは到底いえない。
したがって,本件契約に民法651条2項が準用される余地はなく,また,その趣旨により,本件解散に「やむを得ない事由」又は「正当な理由」がない限り,原告らが被告の被った損害を賠償すべきという解釈をすることはできない。
イ  また,前記認定事実(2)によれば,本件契約締結時において,原告ら及び本件組合は,本件組合を本件契約上の存続期間中は,かならず存続させなければならないとか,本件組合が存続期間満了前に解散した場合を想定した話し合いがされたことがなかったのであるから,原告らと被告との間で,組合が中途解散した場合に,原告らが被告に対する損害を賠償する義務を負うという合意がされたとは認めるに足りない。かえって,前記認定事実(2)によれば,本件契約42条1項5号の規定(有限責任組合員の全員一致の決定による解散)は,本件組合は,何らの留保なく有限責任組合員の全員一致のみを要件としていつでも解散できると規定されており,そのような趣旨であると解され,かつ,同号による解散がされた場合における被告の損害に関する賠償その他の規定は置かれていないのであるから,本件組合が中途解散された場合に,原告らが被告に対し,損害賠償義務を負うことは想定されていなかったというべきである。先にも述べたとおり,本件契約は,この種の契約に通じた専門家同士が交渉,契約締結に至ったものであり,本件組合の解散事由及びそれに伴う損害賠償の要否などのように当事者双方にとってそれぞれの利害に直結する重要な内容については,強行法規に反しない限り,原則として,当事者が契約としてその合意内容を書面に明記した内容が合意の内容となると解するべきであり,そのような規定が置かれていない以上,契約により被告主張の損害賠償請求権が生じる余地はないというべきである。
以上のとおり,本件契約の規定によっても,本件契約に民法651条2項を準用し,またはその趣旨に則った解釈をすべき理由はなく,本件解散について「やむを得ない事由」や「正当な事由」が必要であるとはいえない。したがって,本件解散が不当なものとはいえない。
(2)  解散の時期及びやむを得ない事由の有無について
以上のとおり,本件契約に民法651条2項の準用又はその趣旨により損害賠償が認められるという解釈がされることはないし,本件契約上もそのような合意があるとはいえないので,その余の点を判断するまでもなく被告の反訴請求は棄却されるべきであるが,仮に本件解散に「やむを得ない事由」又は「正当な事由」が必要となるとしても,前記認定事実(5)(7)によれば,①本件組合は平成19年11月にFが被告を退職したことにより,新規投資ができなくなったこと,②これに伴い,被告は,同月,Fとの間で,Fが本件組合の投資委員会において,助言をすることなどを内容とする業務委託契約を締結し,原告らも自ら被告による本件組合財産の運用状況等についてモニタリングを開始したこと,③被告は平成20年9月,投資委員会においてFの助言を受けることも,原告らの承認を受けることもなくレナウン株式をかざかファイナンスに売却したことが認められる。本件組合の投資のための手続は,業務執行を担う無限責任組合員である被告と,業務執行について権限を有しない有限責任組合員である原告らとの信頼関係を維持するために重要な規定であり,以上の事実を総合すれば,被告の手続違反等により,被告との信頼関係が失われ,本件組合を解散せざるを得ない状況になったことが認められる(この点は,被告の業務執行の具体的内容が適正であったか否かを問わないというべきである。)。
したがって,本件解散には「やむを得ない事由」又は「正当な事由」がなかったとはいえない。
(3)  権利の濫用(被告の同意の要否ほか)について
前記認定事実(2)によれば,本件契約42条1項5号(有限責任組合員全員の一致による解散の決定)は,有限責任組合員たる原告らの全員一致により何らの留保なしにいつでも本件組合を解散できる旨の規定であり,被告の同意が前提になっていたとは認められない。
この点,上記本件契約42条1項5号の規定について,被告は,同号は特定の企業グループの利益に偏った投資がされることを防止する趣旨で,無限責任組合員が合意することを前提として締結されたものだと主張し,Dもこれに沿う供述をする(被告代表者Dの本人尋問の結果)。しかし,原告らはこれを否認し,証人Gもこれに沿う供述をするところ(甲20,証人Gの証言),同号には,無限責任組合員の合意を解散条件とするとの文言はない。むしろ,仮に原告らが特定の企業グループの利益に偏った投資がされるという懸念を有していたのであれば,本件契約17条の方針会議の不承認事項にもそのような場合が挙げられていてしかるべきであるところ,同条の不承認事項は法令違反のみであることが認められる。また,甲10の1から3まで,甲12の1から3まで及び証人Gの証言によれば,被告は本件解散の前後において,自己の取得すべき清算人報酬について,原告らに対して再三要請をしてはいるが,本件解散自体が不当であるとか,許されないとかの主張はしていなかったと認められる(これに反するDの供述は採用できない)。以上によれば,被告及び原告らとの間で被告の主張するような合意がされていたとは認め難い。
また,確かに,前記前提となる事実(5)及び前記認定事実(9)によれば,①本件解散は,本件組合の投資期間(本件契約発効日から5年間)中の解散であったこと,②本件解散が世界的な金融危機の直後であったことなどの事情等,一面,被告にとって事実上,不利な時期の解散であったとの被告の主張に沿う事実も認められる。しかし,これらの事情を総合しても,前記(1)イのとおり,本件契約においては42条1項5号により原告らの全員一致によっていつでも解散できることが定められ,本件契約上本件組合は中途解散されることもあり得ることが明示されていた以上,本件解散が不当なものであったとは認められない。他に,本件解散が権利の濫用であることを基礎づけるような事情は見出し難い。
(4)  まとめ
以上によれば,本件契約には民法651条2項の準用は認められないし,仮に認められたとしても,同項ただし書のやむを得ない事由が認められる。また,本件解散に被告の同意は必要ではなく,権利の濫用であるともいえないから,被告の原告らに対する損害賠償請求権(反訴)は認められない。
5  よって,原告らの本訴請求は,主文第1項から3項まで掲記の限度で理由があるからこれらをいずれも認容し,原告らのその余の本訴請求及び被告の原告らに対する反訴請求は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用については民事訴訟法61条,64条ただし書を,仮執行宣言については同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 三角比呂 裁判官 足立堅太 裁判官 髙畑桂花)

 

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