【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業 スタッフ」に関する裁判例(19)平成21年 1月21日 東京地裁 平18(ワ)14587号 特許確認等請求、反訴請求、不当利得返還請求事件 〔バナバ茶事件〕

「営業 スタッフ」に関する裁判例(19)平成21年 1月21日 東京地裁 平18(ワ)14587号 特許確認等請求、反訴請求、不当利得返還請求事件 〔バナバ茶事件〕

裁判年月日  平成21年 1月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)14587号・平18(ワ)23109号・平19(ワ)14939号
事件名  特許確認等請求、反訴請求、不当利得返還請求事件 〔バナバ茶事件〕
裁判結果  第1事件本訴・第2事件一部認容、第1事件反訴請求棄却  文献番号  2009WLJPCA01219002

要旨
◆原告が被告会社に対し、本件各商品の売掛金の支払等を求めるとともに、被告らに対し、原告と被告会社間の本件独占販売契約は、被告Aが有する米国の特許権が有効であり権利行使可能であることが前提であったにもかかわらず、同特許権が無効又は権利行使不可能となったため、損害を被ったと主張して、詐欺による不法行為に基づき、損害賠償金の連帯支払等を求め(第1事件本訴、第2事件)、被告会社が原告に対し、原告の本件訴訟の提起は不当訴訟であり、不法行為を構成するなどと主張して、損害賠償金の支払を求めた(第1事件反訴)事案において、被告Aには、少なくとも米国特許2に反衡平行為で権利行使不可能という瑕疵があることを知りながら、これを秘して、取引の再開を持ちかけた点で、故意による詐欺行為があったものといわざるを得ず、被告Aは民法709条に基づき、被告会社は会社法350条に基づき、連帯して、損害金を支払う義務があるなどとして、原告の請求の一部を認容し、その余の請求及び被告の反訴請求を棄却した事例

裁判経過
控訴審 平成21年12月 9日 知財高裁 判決 平21(ネ)10016号 特許確認等請求控訴事件 〔血糖値上昇抑制乃至下降用組成物事件・控訴審〕

評釈
佐藤聖也・特許ニュース 12690号4頁(IP研究会 監修:青山紘一)
知的財産研究センター研修チーム・知的財産権判決速報 407号17頁
荒垣恒輝・特許ニュース 12477号1頁(要約)

参照条文
民法415条
民法420条
民法703条
民法704条
会社法350条

裁判年月日  平成21年 1月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)14587号・平18(ワ)23109号・平19(ワ)14939号
事件名  特許確認等請求、反訴請求、不当利得返還請求事件 〔バナバ茶事件〕
裁判結果  第1事件本訴・第2事件一部認容、第1事件反訴請求棄却  文献番号  2009WLJPCA01219002

平成18年(ワ)第14587号特許確認等請求事件(以下「第1事件本訴」という。),
平成18年(ワ)第23109号反訴請求事件(以下「第1事件反訴」という。),
平成19年(ワ)第14939号不当利得返還請求事件(以下「第2事件」という。)

東京都千代田区<以下略>
第1事件本訴原告,第1事件反訴被告及び第2事件原告
研光通商株式会社
(以下「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 外山興三
同 大久保宏昭
同 原田芳衣
京都府福知山市<以下略>
第1事件本訴被告,第1事件反訴原告及び第2事件被告
株式会社ユース・テクノコーポレーション
(以下「被告会社」という。)
京都府福知山市<以下略>
第1事件本訴被告 A
(以下「被告A」という。)
被告両名訴訟代理人弁護士 富田純司
同 木暮信吉

 

主文

1  第1事件本訴
(1)  売掛金請求
被告会社は,原告に対し,840万円及びこれに対する平成18年5月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  損害賠償請求等
被告らは,原告に対し,連帯して,3187万5000円及びこれに対する平成20年1月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  原告のその余の第1事件本訴請求を棄却する。
2  第2事件(過誤払金)
(1)  被告会社は,原告に対し,249万3161円及びこれに対する平成19年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  原告のその余の第2事件請求を棄却する。
3  第1事件反訴
被告会社の反訴請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用等
(1)  訴訟費用は,全事件を通じ,原告に生じた費用の5分の4を被告らの連帯負担とし,その余を各自の負担とする。
(2)  この判決の第1項(1)及び第2項(1)は,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1  請求
1  第1事件本訴
(1)  売掛金請求
主文第1項(1)と同旨
(2)  損害賠償請求等
ア 主位的請求
被告らは,原告に対し,連帯して,4187万5000円及びこれに対する平成20年1月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 予備的請求
被告会社は,原告に対し,2887万5000円及びこれに対する平成20年1月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  第2事件(過誤払金)
被告会社は,原告に対し,279万5832円及びこれに対する平成19年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  第1事件反訴
(1)  不当訴訟(訴え変更後の請求)
原告は,被告会社に対し,418万円及びこれに対する平成20年4月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  本件独占販売契約の引取保証義務違反等
ア 主位的請求
原告は,被告会社に対し,5億7544万1372円及びこれに対する平成20年4月9日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
イ 予備的請求
原告は,被告会社に対し,7817万9200円及びこれに対する平成20年4月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  第1事件本訴
(1)  売掛金請求
第1事件本訴請求(1)は,原告が被告会社に対し,本件各商品の売掛金及び遅延損害金の支払を求めたものである。
(2)  損害賠償請求等
第1事件本訴請求(2)主位的請求は,原告が被告らに対し,原告と被告会社間の後記本件独占販売契約は,被告Aが有する米国の特許権が有効であり権利行使可能であることが前提であったにもかかわらず,同特許権は,被告Aが特許明細書に虚偽の臨床試験データを記載するなどして無効又は権利行使不可能となったため,損害を被ったと主張して,詐欺による不法行為に基づき,被告会社から購入した本件各商品の既払代金及び弁護士費用の損害賠償金(民法709条,会社法350条)並びに遅延損害金の連帯支払を求めたものである。
同予備的請求は,原告が被告会社に対し,本件独占販売契約は詐欺取消し又は錯誤により無効であるとして,本件各商品の購入代金につき不当利得金及び利息の支払を求めたものである。
2  第2事件(過誤払金)
第2事件は,原告が被告会社に対し,原告が被告会社の口座に誤って振り込んだ金員について,不当利得金と利息又は遅延損害金の支払を求めたものである。
3  第1事件反訴及び相殺の主張
(1)  不当訴訟(訴え変更後の請求)
第1事件反訴請求(1)は,被告会社が原告に対し,原告の本件訴訟(訴え変更後)の提起は不当訴訟であり,不法行為を構成すると主張して,応訴のための弁護士費用の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めたものである。
(2)  本件独占販売契約の引取保証義務違反等
第1事件反訴請求(2)主位的請求は,被告会社が原告に対し,原告が本件独占販売契約上の最低引取保証義務に違反したことが債務不履行に該当すると主張して,損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めたものである。
同予備的請求は,被告会社を介さないで本件各商品を米国に輸出したことが,平成11年覚書又は本件独占販売契約違反の債務不履行又は不法行為に該当すると主張して,損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めたものである。
(3)  相殺の抗弁
ア 第1事件本訴請求(1)(売掛金請求)に対し
被告会社は,原告の第1事件本訴請求(1)(売掛金請求)に対して,上記(2)の本件独占販売契約上の最低引取保証義務違反の債務不履行に基づく損害賠償金の一部を自動債権とする相殺の主張をした。
イ 第2事件請求(過誤払金)に対し
被告会社は,原告の第2事件請求(過誤払金)に対して,
① 平成17年6月20日付け投資家への文書送付行為による不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金,
② 平成18年11月の株主への文書送付行為による不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金,
③ 臨時株主総会招集行為による不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金,
④ 不当訴訟(訴え変更前の訴え)を理由とする損害賠償金
を自動債権とする,上記の順序による相殺を主張した。
4  前提事実
(1)  当事者
ア(ア) 原告は,化学工業薬品の輸出入,医薬原料,健康食品の輸出入,医薬品及び動物医薬品の一般販売等を業とする株式会社である。
(イ) Bは,原告の代表取締役である(以下「B社長」ということがある。)。
イ(ア) 被告会社は,バナバ抽出エキス,バナバ茶,バナバ葉,バナバ錠剤などバナバに関する商品全般及びグァバ葉等の機能性食品の製造販売及び研究開発を業とする株式会社である。
(イ) 被告Aは,被告会社の代表取締役である(以下「A社長」ということがある。)。
ウ 株式会社常磐植物化学研究所(以下「常磐」という。)は,医薬品をはじめ化粧品,健康食品,植物添加物等に利用するための植物成分の抽出,精製,分析評価をすることを業とする株式会社である。
(以上,争いのない事実)
(2)  本件発明
ア 経過
原告社員であるC(以下「C」という。)は,平成8年ころ,原告社員から,当時日本においてバナバ茶を販売していた被告会社を紹介された。被告会社は,米国市場で,原告の米国子会社を通じて,バナバ茶を販売することを希望したが,原告は,米国では茶に対する関心が低いため,米国市場では売上げが伸びないと考えて,両者は合意に至らなかった。
当時,バナバ葉に含まれる有効成分のうちコロソリン酸に血糖値上昇の抑制作用等があることは既に知られていたが,Cは,バナバ葉に含まれるコロソリン酸を規格化し,その抽出物(エキス)を製造することを思い付き,被告Aに提案した。そして,平成9年8月ころまでに,両者の間で,バナバ葉が含有するコロソリン酸を規格化し,米国での販売に適したエキスを製造するための共同開発を行うことを合意した。
イ 抽出方法
(ア) バナバ葉からコロソリン酸を抽出する方法として,煮出しなどによる熱水抽出方法が知られていたが,この方法では,コロソリン酸の抽出量はわずかであった。そこで,原告は,平成10年4月ころ,常磐に対し,バナバ葉に含まれるコロソリン酸を高濃度で抽出する方法の研究,開発及び抽出物の試作を依頼した(甲2)。
(イ) 常磐の担当者D(以下「D」という。)は,同年4月20日ころ,コロソリン酸抽出実験に着手し(甲4),同年9月ころまでに,バナバ葉からエタノール抽出によって高濃度のコロソリン酸を抽出する製法を確立し,エキスの製造に成功した(甲4,5の1及び2)。
(以上,争いのない事実)
ウ 臨床試験
(ア) 被告Aは,東京CRO株式会社(以下「東京CRO」という。)に対し,平成9年10月ころ,熱水抽出方法により製造したエキスである被告会社の商品「バナバミン」を用いてヒト臨床試験を行うことを依頼した。
東京慈恵会医科大学のE教授らは,東京CROから依頼されて,「バナバミン」を用いてヒト臨床試験を実施した。東京CROは,被告Aに対し,平成10年11月ころ,「バナバミン服用グループは血糖値が20mg,約15%下がった。また低血糖を招かない安全なものである」旨の結果を報告した(乙22。以下「平成10年熱水抽出臨床試験」という。)。E教授らは,平成11年5月20日発行の「薬理と治療 Vol.27 No.5」(乙23)に同旨の臨床試験結果を公表した。
(乙21~27,被告A本人,弁論の全趣旨)
(イ) なお,被告会社は,平成13年2月14日,サントリーや三井物産株式会社(以下「三井物産」という。)との間で「バナバ素材の健康食品の開発に関する覚書」(乙71)を締結し,E教授らによるエタノール抽出エキスによる臨床試験を実施し,E教授らは,その結果を平成14年4月5日受付で「健康・栄養食品研究 Vol.5 No.2 2002」(乙72)に掲載したが,本件特許出願当時は,エタノール抽出エキスによるヒト臨床試験を行っていない。
(乙71,72,弁論の全趣旨)
(ウ) 被告Aは,商品化のために最も適当な濃縮物中のコロソリン酸含有物の濃度を,濃縮物100mg当たり0.1~15mgと特定し(以下「本件発明」という。),特許出願を行うこととした。
(被告A本人)
(3)  日本特許出願
ア 出願
被告会社及び三井物産は,次のとおり,本件発明について特許出願をした(以下,「日本特許出願」という。その明細書(甲1。以下「日本特許明細書」という。)の記載内容は,別紙1のとおりである。)。
出願番号  特願平10−349667号
発明の名称  血糖値上昇抑制乃至下降用組成物
出願日  平成10年12月9日
発明者  被告A
請求項1  乾燥したバナバ葉の熱水抽出物もしくはアルコール抽出物の濃縮物を主成分とし,該濃縮物100mg当たりコロソリン酸含有量が0.1~15mgである,血糖値上昇抑制乃至下降用組成物。
請求項2  経口投与錠剤の形態を有する請求項1記載の血糖値上昇抑制乃至下降用組成物。
イ 特許拒絶査定
(ア) 拒絶理由通知
特許庁審査官は,被告会社らに対して,平成18年8月11日付け(起案日)の拒絶理由通知書(乙28)により,日本特許出願の請求項1及び2の発明は,次のとおり進歩性欠如の無効理由がある旨の拒絶理由を通知した。
「下記刊行物1(特開平5−310587号公報)に記載されているように,バナバ葉の抽出物が,血糖値上昇抑制乃至下降作用を有することは本出願前周知技術であり,かつ,その有効成分がコロソリン酸であることも,下記刊行物2(Murakami, Chikage et al, Screening of plant constituents for effect on glucose transport activity on Ehrlich ascites tumor cells, Chemical & Pharmaceutical Bulletin, 1993年, Vol.41, No.12, pp.2129-2131),3(YAMASAKI K. et al, EFFECT ON SOME SAPONINS ON GLUCOSE TRANSPORT SYSTEM, ADV EXP MED BIOL, 1996年, No.404, pp.195-206)に記載されている。よって,バナバ葉の抽出物の濃縮物中に有効成分であるコロソリン酸がなるべく高くなるようにすること及びその際の含有量を請求項1記載の所定の量とすることは,当業者であれば必要に応じ適宜為し得る程度のことである。したがって,請求項1,2記載の発明は,下記刊行物1~3記載の技術に基づいて,当業者であれば容易に為し得たものと認める。」
(イ) 拒絶査定
被告会社らは,平成18年10月16日,請求項1を「乾燥したバナバ葉をエタノールまたはエタノール水溶液で抽出して得られる抽出物の濃縮物を主成分とし,該濃縮物100mg当たりコロソリン酸含有量が0.1~15mgである,血糖値上昇抑制乃至下降用組成物」と,請求項2を「乾燥したバナバ葉をメタノールまたはメタノール水溶液で抽出して得られる抽出物の濃縮物を主成分とし,該濃縮物100mg当たりコロソリン酸含有量が0.1~15mgである,血糖値上昇抑制乃至下降用組成物。」と,請求項3を「経口投与錠剤の形態を有する請求項1または2記載の血糖値上昇抑制乃至下降用組成物。」と補正し,手続補正書と意見書(乙34の1及び2)を提出した。
特許庁審査官は,同年11月10日,次のとおり拒絶査定(乙35)をした。
「引用文献2には,バナバからメタノール抽出でコロソリン酸を得ることが記載されているので,請求項1,2に記載されたバナバ葉をエタノールあるいはメタノールで抽出し,所定量のコロソリン酸を含有する濃縮物を得ることは,当業者であれば容易に為し得ることである。」
(ウ) 拒絶査定の確定
被告会社らは,拒絶査定を検討し,「エタノールとメタノールはいずれも低級アルコールとして多用されており,抽出溶媒としては略同等の機能を有するため,抽出溶媒の限定による進歩性の主張は困難と考え」(乙36),審判請求をせず,上記拒絶査定は,同年12月14日確定した。
(以上,争いのない事実,乙36)
(4)  米国特許1及び2
ア 米国特許1
被告Aは,次の米国特許を有していた(以下「米国特許1」という。その明細書(甲8の1。以下「米国特許1明細書」という。)の記載内容は,別紙2のとおりである。)。
特許番号 US6,485,760号
発明の名称 オオバナサルスベリを用いて血糖値の上昇を阻害する若しくは血糖値を下げる方法
出願日  平成11年11月10日
優先日  平成10年12月9日(日本特許出願に基づく)
登録日  平成14年11月26日
発明者  被告A
請求項1  血糖値の上昇が問題となっている患者における血糖値の上昇を抑制する組成で,患者に対し経口投与によりオオバナサルスベリの熱水抽出物若しくは含水エタノール抽出物を含有する成分で,さらにコロソリン酸含有の濃度が100mg中0.1~15mgで,さらに1日当たり,体重1kg当たり50mg~1000mgの上記抽出物を投与し,血糖値上昇を抑制する効果を得られるもの。
請求項2~請求項17  省略
イ 米国特許2
(ア) 被告Aは,次の米国特許を有していた(以下「米国特許2」又は「459特許」という。その明細書(甲8の2。以下「米国特許2明細書」という。)の記載内容は,別紙3のとおりである。)。
特許番号  US6,716,459号
発明の名称  血糖値の上昇を阻害する若しくは血糖値を下げるための組成
出願日  平成14年8月20日(米国特許1の分割出願)
優先日  平成10年12月9日(日本特許出願に基づく)
登録日  平成16年4月6日
発明者  被告A
請求項1 「1 A composition for inhibiting an increase in, or lowering, a blood sugar level, in a human patient in need thereof, consisting essentially of:
a concentrate of ethanol or ethanol aqueous solution extract of leaves of Lagerstroemia Speciosa, Linn. or Pers, having a corosolic acid content of 0.01 to 15 mg per 100 mg of the concentrate.」
(訳文:血糖値の上昇が問題となっている患者における血糖値の上昇を抑制する若しくは血糖値を低下させる組成で,バナバのエタノール若しくは含水エタノール抽出物を含有する成分で,さらにコロソリン酸含有の濃度が100mg中0.1~15mgであるもの。)
請求項2 「2 The composition according to claim 1, wherein said ethanol solution contains 50 to 80 by weight of ethanol.」
(訳文:請求項1に記載された方法で含水エタノールのエタノール組成が50~80%であるもの。)
(イ) 米国特許2明細書には,以下の記載がある。
a DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION(訳文:発明の詳細な説明)
「2 Prior Art of the Invention」(訳文:従来の技術)
「Further, there has been no specific clinical knowledge of component(s) of the extract of leaves of Lagerstroemia Speciosa, Linn. or Pers. which has/have activity in the therapy of human diabetes.…
The present inventor has therefore studied a relationship between component(s) of an extract of leaves of Lagerstroemia Speciosa, Linn. or Pers. and an increase in human blood sugar level on the basis of clinical tests. When a composition which was a concentrated extract of leaves of Lagerstroemia Speclosa, Linn. or Pers. and which had a specific content of corosolic acid was administered to mild-case diabetes patients who had a fasting blood sugar level of slightly higher than approximately 110 mg/dl and who were insulin-non-dependent, it was found that an increase in blood sugar level was inhibited and that the blood sugar levels decreased on average.
According to studies by the present inventors,it has been also found that the composition which had a specific content of corosolic acid can be obtained by extracting, concentration and drying leaves of Lagerstroemia Speciosa, Linn. or Pers., under a specific condition.」(2欄1行~4行,9行~25行)
(訳文:また,バナバ葉の抽出物中如何なる成分が,それがヒトの糖尿病治療の効果があるという臨床知識は存在しなかったのである。…
そこで本発明者は,バナバ葉の抽出物中の成分とヒト血糖値の上昇あるいは抑制との関係を臨床実験に基づいて調べた。空腹時の血糖値が約110mg/dlよりやや高い軽症糖尿病患者であって,インシュリン非依存型の患者に対して,バナバ葉の抽出濃縮物であって,コロソリン酸をある特定割合含有する組成物を投与すると,血糖値の上昇が抑制され,かつ,平均的に低下が確認された。
また,本発明者の研究によれば,前記コロソリン酸を一定割合含有する組成物は,乾燥したバナバ葉を一定条件下で抽出,濃縮及び乾燥することにより得られることが判明した。)
b EXAMPLES(訳文:実施例)
「Example 1
(1) Preparation of concentrate from dry leaves of Lagerstroemia Speciosa, Linn. or Pers.
1kg of dry leaves of Lagerstroemia Speciosa, Linn. or Pers, from the Philippines were cut, placed in 5 liters of a 80 wt % #ethanol aqueous# solution and extracted under reflux under heat(approximately 85℃)for 1.5 hours. After the extraction, the leaves of Lagerstroemia Speciosa, Linn. or Pers. were separated by filtration, again placed[sic]a 80 wt % # ethanol aqueous# solution and extracted under reflux under heat (approximately 85℃) for 1.5 hours. The leaves of Lagerstroemia Speciosa, Linn. or Pers. were separated by filtration. Extracts obtained by the first and second extraction procedures were combined, and 500 g of activated carbon was added to carry out decolorization. After the activated carbon was removed, ethanol and water were removed under reduced pressure at 60℃ to give a concentrate. Then, the concentrate was maintained further under reduced pressure at 60℃ to give a dry solid. The solid was pulvcrized to give 150 g of a powdery concentrate.」(5欄35行~54行。#で挟むことによる強調は,引用者)
(訳文:実施例1
(1) 乾燥バナバ葉からの濃縮物の調製
フィリピン産の乾燥バナバ葉1kgを切断し,80重量%#エタノール水溶液#5リットル中に入れ加熱環流下(約85℃)にて1.5時間抽出操作を行った。抽出後バナバ葉を濾別し,再び80重量%#エタノール水溶液#中に入れ,加熱環流下(約85℃)にて1.5時間抽出操作を行いバナバ葉を濾別した。1回目及び2回目の抽出液を合わせて500gの活性炭を加えて脱色処理を行った。活性炭を除去した後,60℃減圧下にエタノール及び水を除去して濃縮物を得た。次いで,60℃にてさらに減圧下に保持して乾燥固形物を得た。この固形物を粉砕して粉末濃縮物150gを得た。)
「(2) Analysis of corosolic acid
One gram of the powder concentrate obtained in the above (1) was dissolved in 10 ml of methanol and analyzed by high-performance liquid chromatography (HPLC) to show a corosolic acid content of 30 mg in the above concentrate (corresponding to 3 mg of corosolic acid per 100 mg of the concentrate.)」(5欄55行~62行)
(訳文:(2) コロソリン酸の分析
前記(1)で得られた粉末状の濃縮物1gをメタノール10mlに溶解し,高性能液体クロマトグラフ(HPLC)にて分析したところ,コロソリン酸が前記濃縮物当たり30mg(濃縮物100mg当たり3mgに相当)含有されていた。)
「(3) Preparation of tablet
The powdery concentrate obtained in the above (1) was used to prepare tablets containing the following components for a clinical test.」(5欄64行~最終行)
(訳文:(3) 錠剤の調製
前記(1)で得られた粉末状の濃縮物を用いて下記組成物の臨床試験用の錠剤を作った。)
「The above components were homogeneously mixed and prepared into tablets having a weight of 250 mg each (“tablets A” hereinafter) with a tablet machine.
Further, tablets containing no powdery concentrate(” tablets B” hereinafter) which were indistinguishable from the tablets A were prepared in the same manner as above except that diluents alone were used without the powdery concentrate.」(6欄14行~21行)
(訳文:前記組成を均一に混合して打錠機にて1錠が250mgの錠剤(以下”A錠”という。)を調製した。一方,前記組成において粉末状の濃縮物を含有しない賦形剤のみでA錠とは識別困難な錠剤(以下”B錠”という。)も調製した。)
「(4) Clinicaltest
Twenty-two mild-case insulin non-dependent patients having a a fasting blood sugar level of approximately 100 to 210 mg/dl were classified into two groups.
The Group Ⅰ(11 patients of one group) were allowed to take three tablets A each time after meals three times a day with a cup of water for 4 weeks from the beginning of the first to the end of the fourth week, and the tablets B were administered under the same conditions for 4 weeks from the beginning of the fifth week.
On the other hand, the Group Ⅱ(11 patients of the other group) were allowed to take three tablets B each time after meals three times a day with a cup of water for 4 weeks from the beginning of the first to the end of the fourth week, and the tablets A were adminstered under the same conditions for 4 weeks from the beginning of the fifth week.
In the beginning of the adminstration, after 4 weeks and after 8 weeks from the adminstration, bloods of the patients were sampled three times and studied for blood sugar levels. Table 1 shows the results.」(6欄22行~40行)
(訳文:(4) 臨床試験
空腹時の血糖値が約100~約210mg/dlの軽度糖尿病患者であってインシュリン非依存型糖尿病患者22人を選び2つのグループに分けた。Ⅰ群(11名)には,第1週から4週間の間一日3回食後に1人当たり毎回A錠を3錠コップ一杯の水で飲用させ,第5週から4週間同様の条件でB錠の投与を行った。
一方,Ⅱ群(11名)には,第1週から4週間の間一日3回食後に1人当たり毎回B錠を3錠コップ一杯の水で飲用させ,第5週から4週間同様の条件でA錠の投与を行った。
各患者の投与開始時,4週間経過時及び8週間経過時の3回採血し,血糖値を調べた。その結果を下記表1に示した。)

「The talbets A were studied for a significant difference to show a Prob>(T) value of 0.0030 and that the tablets A had a high-degree significant difference in decreasing the blood sugar level.」(6欄52行~55行)
(訳文:A錠の有意差を調べたところ,Prob>(T)の値は0.0030であり,血糖値の低下に高度に有意差有と認められた。)
c 米国特許商標庁による米国特許2の許可理由(Reason for allowance)」(甲29)には,以下の記載がある。
「The prior art does not teach or fairly suggest the claimed composition.
The prior art of MURAKAMI et al.(Chem. Pham. Bull.(1993) vol.41(12), pages 2129-2131) teaches an extract of Laegerstromia comprising 0.17 mg of corosolic acid per 100 mg of concentrate(p.2131), but MURAKAMI’s extract is a methanol extract. The prior art of TSUNODA et al.(JP 07228539) teaches that Laegerstromia leaves may be subjected to extraction with organic solvents, including ethanol, but is silent with regard to the amount or concentration of corosolic acid in the resulting concentrate. As TSUNODA and MURAKAMI teach extraction with different solvents, and the content of a concentrate resulting from extraction with different solvents would be expected to be different, one skilled in the art would not have reasonable[sic]expected that a concentrate resulting from the extraction method of TSUNODA would comprise the same amount of corosolic acid as that in the concentrate of MURAKAMI. For these reasons, the claims are allowable.」
(訳文:クレームの対象となっている組成物について,先行技術においては,何ら教示又は示唆はされていない。ムラカミ氏らによる先行技術(ケミカル・ファーマシー・ブレティン(1993)41巻(12),2129−2131頁)においては,濃度0.17%のコロソリン酸を含むバナバの抽出方法(2131頁)が教示されているが,ムラカミ氏による抽出方法においては,メタノールが用いられている。ツノダ氏らによる先行技術(JP07228539)においては,バナバ葉は,エタノールを含む有機溶媒によって抽出されやすいということについては教示されているが,濃縮物中のコロソリン酸の量,又は濃度については言及されていない。ツノダ氏とムラカミ氏は,異なる溶媒を用いての抽出方法を教示しているところ,異なる溶媒を用いて抽出した濃縮物の容量も異なると考えられるので,当業者であれば,ツノダ氏の抽出方法による濃縮物の容量とムラカミ氏の濃縮物のコロソリン酸の量が同じであるとは考えなかったであろう。これらの理由により,本クレームは認められるべきである。)
(以上,争いのない事実)
(5)  本件米国訴訟の提起と米国特許1及び2の無効
ア 米国における被告らの特許侵害訴訟の提起
被告らは,平成18年4月24日,米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所において,原告の米国子会社である米国法人ソフト・ジェル・テクノロジーズ・インコーポレイテッド(以下「ソフト・ジェル」という。)及びケムコ・インダストリーズ・インコーポレイテッド(以下「ケムコ社」という。)や原告の米国子会社の取引先であるアイオベイト社等に対し,米国における本件各商品の販売等が米国特許1及び2を侵害するとして,販売等の差止め,損害賠償等を求める訴えを提起した(甲13。以下「本件米国訴訟」という。)。
米国特許1に基づく被告らの請求について,同裁判所は,平成19年7月13日,ソフト・ジェルらの略式判決の申立てを認めた。
(争いのない事実)
イ 米国特許2の無効
(ア) 平成19年9月4日,同地方裁判所は,本件米国訴訟について,次のとおり,米国特許2は無効及び権利行使不可能であるとして,ソフト・ジェルらの略式判決の申立てを認めた(甲31)。
a 実施可能要件(enablement requirement)の欠如による無効
「実施可能要件は,『明細書には,発明,及びその作成・使用の過程と方法を,関連する,またはもっとも近接するあらゆる当業者が同様にこれを作成・使用できるように,完全,明確,簡潔,そして正確な用語により記載するものとし,発明を実施する上で発明者の考える最もよい方法を記載するものとする。』とある(35 U.S.C§112)。」(甲31の3頁下から3行目~4頁3行目。訳文:2頁下から5行目~3頁3行目)
「ここで,459特許の明細書は,エタノールまたはエタノール水溶液による抽出方法をただ1つだけ開示している。…この方法がコロソリン酸濃度15%を超えないことについては,争われていない。…その代わり,当該濃度を超えるためには,明細書に記載されていない,A氏の特別な研究に関する知識がなければならない。」(甲31の5頁15行目~下から2行目,同頁 訳文:3頁下から13行目~6行目)
「当業者が15%のコロソリン酸濃度に到達するためには,過度の実験作業を行わなければならない…」(甲31の8頁13行目~15行目,訳文:6頁11行目~13行目)
「さらに,15%のレベルに達するために特別なバナバ葉が必要とされる限りにおいて,明細書は不可欠な出発物質の開示を欠いていることになる。…原告らは,…当業者が明細書を用いて,実際に15%を達成したことについて何らの証拠も提出していない一方,当業者が明細書に記載されている方法では,過度の実験作業なくして15%のサンプルを獲得できないことについての証拠が存在する。
したがって,明確かつ説得的な証拠に基づき,459特許は実施可能要件を欠くことにより無効である。」(甲31の9頁15行目~26行目,訳文:6頁下から6行目~7頁6行目)
b 反衡平行為(Inequitable conduct)による権利行使不可能
「特許が反衡平行為により権利行使不可能であるというためには,(1)重大な事実について,積極的に誤った陳述をした,重大な情報を開示しなかった,または重大な誤った情報を提出したこと,及び(2)米国特許商標庁を欺く意図を有していることについての,明白かつ説得的な証拠がなければならない。…」(甲31の9頁最終行~10頁3行目,訳文:7頁8行目~11行目)
「ここで,459特許は,22名のインシュリン依存度の低い患者への臨床実験について言及し,この実験の結果を表にして記載している(明細書6欄22行~55行)。特に,本件特許では,明細書に記載されたエタノール抽出方法を用いて得られた粉末に濃縮物を含む『A錠』を,これらの患者の1グループに投与したと述べている(明細書5欄35行~6欄55行)。A氏は,実験は本件特許において重要な部分であったと証言している。しかし,A氏はまた,実験は行われていなかったと証言している。」(甲31の11頁下から5行目~12頁5行目,訳文:8頁下から12行目~6行目)
「A氏は,さらに,E教授のデータは,臨床実験があったかのように見せかける本件特許記載の表のデータを作成するために用いた,唯一の参考資料であったと証言している。」(甲31の12頁下から2行目~13頁1行目,訳文:9頁下から4行目~2行目)
「この証拠は,459特許が述べるところに反し,臨床研究の結果は,例1(Example1)で特定された方法によって作られた成分から生じた結果ではないことを立証しているのである。」(甲31の13頁下から12行目~10行目,訳文:10頁下から14行目~12行目)
「結局,明細書の特許請求の範囲であるところの,エタノール抽出によって得られた錠剤を用いて臨床実験が行われたことについては,なお何らの証拠が存在しない。」(甲31の14頁3行目~5行目,訳文:11頁4行目~6行目)
「459特許では,臨床実験はあたかもエタノール抽出方法によって製造された錠剤を用いて実施されたかのように記述されており,それは合理的な特許審査官にとって重要であろう事項である。459特許の場合には,特にヒトに対する実験が重要である。459特許には,以下の記載がある。
『また,バナバ葉の抽出物の成分について,それがヒトの糖尿病治療の効果があるという臨床知識は存在しなかったのである…そこで発明者は,臨床実験により,バナバ葉の抽出物の成分とヒトの血糖値の上昇との相関関係を研究したのである。』(明細書2欄1行~4行,9行~13行)
明細書のこの部分は,議論の余地はあるものの,誤解を招きやすいものではない。なぜならば,臨床実験は確かにコロソリン酸と糖尿病との相関関係を示すものだからである。しかし,459特許に記載された臨床実験の結果は,それが「タブレットA」がエタノール抽出方法によって得られたものであると記載していること,そしてクレームがエタノール抽出方法によって得られたコロソリン酸濃縮物のためのものであることから,誤解を招くものである。さらに言えば,459特許についての米国特許商標庁の許可理由書においては,エタノール抽出方法が他との区別の目安になる特徴であるとしている。
故意について,直接の証拠はないが,状況の全てに鑑みれば,A氏は不注意により勘違いをしたのではなく,陳述書において,ヒト臨床実験がエタノール抽出方法によって製造された錠剤を用いて行われたと,故意に欺罔しようとしたと認められる。…
したがって,459特許は反衡平行為により権利行使不可能である。」(甲31の14頁11行目~15頁15行目,訳文:11頁11行目~33行目)
(イ) 判決の確定
平成20年1月10日付けで被告らの米国特許1及び2に基づく請求をいずれも棄却する旨の終局判決が出され(甲34),被告らは,同判決に対して控訴を提起したが,同年9月10日,控訴は棄却され(甲43),同判決は,上告受理申立等がされることなく,間もなく確定した。
(以上,争いのない事実,弁論の全趣旨)
(ウ) 争点効
米国において,特許侵害訴訟における特許無効の判断には,争点効(コラテラル・エストッペル)が生じ,事実上対世効が認められている。
(甲45,弁論の全趣旨)
(6)  原告と被告会社の取引経緯
ア 本件独占販売契約締結以前の取引
(ア) 本件各商品の商品化
原告,常磐及び被告会社は,平成10年12月ころ,本件発明に基づき,米国での販売用に,①「バナバアルコール抽出エキス1%」(以下「本件1%品」という。),及び②「バナバアルコール抽出エキス3%」(以下「本件3%品」という。「本件1%品」と併せて「本件各商品」という。)を商品化し,平成11年1月から,米国市場において,ソフト・ジェル等を介して,本件1%品の販売を開始した。
(イ) 平成11年覚書の締結
原告と被告会社は,平成11年11月17日,覚書(乙37。以下「平成11年覚書」という。)を取り交わした。
平成11年覚書には,次の条項がある。
「第一条(製品の範囲と指示)
葉,花及び地上部の溶媒抽出物(含水エタノール及びエタノール含有溶媒による抽出物を言う)の取扱の全ては甲(原告)の指示に従うものとする。
第二条 葉,花及び地上部(以下本原料という)の溶媒抽出物(以下本製品という)の商流)
第一項(物の流れ)
甲は乙(被告会社)より本原料を購入し株式会社常磐植物化学研究所に販売し,株式会社常磐植物化学研究所はこの本原料を溶媒抽出し液体又は,粉末(固体)の形態の本製品を作る。甲はこの本製品を購入するものとし,乙は株式会社常磐植物化学研究所とは直接の交流は行わない。

第三項(本製品の販売)
基本的に甲が本製品を販売する。従って,乙は甲の同意なく本製品を海外・国内に販売しない。…
第五条(協議事項)
この有効期間は締結の日から1年間とし,双方に異議がない場合は自動的に継続する。
変更に際しては協議するものとする。」
(ウ) 原告,被告会社及び常磐の役割
この共同事業において,被告会社は,原告に原材料であるバナバ葉を販売し,原告は,バナバ葉を常磐に転売し,常磐は,本件1%品を製造し,原告は,常磐から本件1%品を買い取って,ケムコ社等に輸出し,米国市場で販売した。
原告は,常磐から購入した本件1%品の一部につき,帳簿上,いったん被告会社に転売し,被告会社から買い戻す形を採っており,そのことによって,被告会社は,売買差額として,1kg当たり2万円の利益を得ていた。
被告会社は,平成13年ころ,上場を目指して公認会計士の監査を受けるようになったが,公認会計士から,上記原告からの本件1%品の購入と販売は,入荷及び出荷の事実のない売上げであり,利益に操作性があるように見える不明瞭な取引であり,1kg当たり2万円のマージンを得る理由が明確ではないとして,いったん,実際に,被告会社が常磐から本件1%品を購入し,品質検査をした上で,原告に販売する流れに改善するよう指導された(乙41)。
しかし,平成11年覚書では,被告会社は常磐と直接の交流を行わない旨定められていたため(2条1項),上記商流は変更されなかった。
(エ) 原告から被告会社への売買差額の支払
a 原告が,平成11年1月21日から本件独占販売契約締結までの間に,常磐から購入した本件各商品の購入時期,数量,米国への輸出時期及び被告会社への売買差額の支払の有無(「売買差額請求分」欄に○印がないものは,支払有りを意味する。)は,別紙4取引経過一覧表(甲32)の1~66のとおりである。
b 上記取引のうち,原告が被告会社に売買差額を支払わなかった取引は,次のとおりである。
① 平成12年から平成13年に購入し輸出した本件1%品のうち,合計968.6kg分(同表9,10,12,13,15,17,20,21,23~25,28,29及び32),
② 平成13年から平成14年5月末までに購入し,平成17年2月以降に原告の在庫を減らすために米国子会社に輸出し,米国子会社において在庫となっている本件1%品合計2350kg分(同表39~41及び53~62),
③ 平成15年に購入した本件3%品合計500kg(同表63~66)
(以上,争いのない事実,甲32,証人C,原告代表者,弁論の全趣旨)
(オ) 取引の停止
原告は,平成14年5月末の取引を最後に,本件1%品の購入を停止した。この時点で,原告又は原告の米国子会社における本件1%品の在庫は,約3000kgになっていた。
原告と被告会社は,遅くとも,平成15年11月25日に被告会社取締役会の承認の下,原告が所有していた被告会社の株式を他に売却した際に,平成11年覚書を合意解約した。
(甲32,乙44,45,99,弁論の全趣旨)
イ 本件独占販売契約の締結及びその後の取引
(ア) 本件独占販売契約の締結
原告は,被告会社との間で,平成17年1月26日,「米国市場における条件付独占販売基本契約書」(甲9の1)を取り交わし(以下「本件独占販売契約」という。),米国内での本件各商品の販売を再開した。
(イ) 本件独占販売契約の内容
本件独占販売契約の内容は,次のとおりである。
「第1条(米国市場における期間限定での条件付独占販売権付与)
甲(被告会社)は,乙(原告)に対し,平成17年1月1日から平成21年12月31日までの5年間,本契約に定める条件により,甲が所有する特許権の商品「バナバ抽出エキス」について米国市場における独占販売権を付与する。但し,甲乙協議により,期間を延長する場合がある。
第2条(商品内容)
甲が乙に販売する商品の内容は次の通りとする。
A−1 バナバアルコール抽出エキス1%(本件1%品)
A−3 バナバアルコール抽出エキス3%(本件3%品)
第3条(販売条件)
乙は,本件販売条件として次の通り最低引き取り数量を保証するものとする。
平成17年1月1日~12月31日 10,000kg
平成18年1月1日~12月31日 20,000kg
平成19年1月1日~12月31日 30,000kg
平成20年1月1日~12月31日 30,000kg
平成21年1月1日~12月31日 30,000kg
2 甲および乙は,発注単位,単価,納入条件等について協議し,6ヶ月毎に定める。
3  上記の引き取り数量達成率が年度毎に60%未満の場合は,甲は,乙に対し90日間の予告期間をもって独占販売権を解除することができる。

第5条(販売努力)
乙は,甲から買い受けた本件商品を健康食品向けに販売するものとし,販路の開拓,維持,確立に向けて誠実に努力する。
第6条(販売目標管理)
甲および乙は,本契約第3条に定める最低引取り保証数量の進捗状況について,原則として3ヶ月毎に協議し,協力して販売数量達成の実現をはかる。
第7条(販売協力)
甲は,乙の要請があるときは,本件商品の説明書,カタログなど本件商品の販売促進に必要な資料を無償で乙に提供する。
2  本件商品の販売促進に必要な広告・宣伝に要する費用は乙が負担する。

第16条(期限の利益喪失・解除)
乙において,次の各号の一に該当したときは,乙は当然に期限の利益を失い,甲は,乙に対し,本契約上の債務全額を請求することができ,何ら催告することなく,個別契約ないし本契約を解除することができる。
①  一回でも個別契約その他の債務の支払いを怠ったとき

⑥ 本契約または個別契約に違反したとき

第17条(協議)
甲および乙は,本契約に定めなき事項について疑義が生じた場合は,お互いに誠意を持って協議し定める。」
(ウ) 本件確認書
被告会社は,本件独占販売契約の締結と同時に,原告あてに,次の内容の確認書(以下「本件確認書」という。)を差し入れた(甲9の2)。
「平成17年1月26日付『米国市場における条件付独占販売基本契約書』に関し,次の内容につき確認いたします。
第3条 3.項の『数量達成率が年度毎に60%未満の場合は,甲は,乙に対し90日間の予告期間をもって独占販売権を解除することができるものとする。』につきまして,自動的に解除ということではなく,甲および乙の協力関係により目標達成に向けて努力するものとし,万一達成率が60%未満の場合は,その原因や課題について甲乙協議し,合意の上判断することとします。」
(エ) 購入数量
原告は,本件独占販売契約締結後,別紙4取引経過一覧表の67~70とおり,本件1%品を,平成17年2月に300kg,同年3月に300kg,同年7月に500kgの合計1100kgを購入し,被告会社に対し,合計2887万5000円(消費税相当額を含む。)を支払った。
(以上,争いのない事実)
(7) 本件訴訟における原告の請求内容の変遷
ア 原告の訴え提起時の請求の内容
(ア) 日本特許出願についての持分確認請求
本件訴訟の提起当時の原告の請求第1項は,本件発明は,原告社員であるCが,バナバ葉に含まれる成分のうち,抗糖尿病作用のための有効成分としてコロソリン酸を規格化することを着想し,常磐社員のDが,バナバ葉からコロソリン酸をアルコール抽出によって高濃度で抽出する方法を確立し,被告Aが上記製法によって得られた濃縮物につき臨床実験を通じて血糖値の上昇抑制ないし下降の効果を確認し,その効果を生じさせるために適切な濃度を特定することにより完成されたものであるから,三者の共同発明であり,原告はCから日本特許の特許を受ける権利の3分の1を譲り受けたと主張して,日本特許出願の出願人である被告会社及び三井物産に対して,日本特許出願の特許を受ける権利につき,3分の1の持分を有することの確認を求めるものであった。
(イ) 独占販売権を有することの確認請求
本件訴訟の提起当時の原告の請求第2項は,本件独占販売契約は,いまだ終了していないと主張して,被告会社に対して,原告が,本件独占販売契約に基づき,米国における独占販売権を有することの確認を求めるものであった。
(ウ) 売掛金請求
本件訴訟の提起当時の原告の請求第3項は,現在の第1事件本訴請求(1)と同じである。
(エ) 損害賠償請求
a 本件訴訟の提起当時の原告の請求第4項の一部は,被告らが本件発明の特許を受ける権利を侵害したこと及び本件米国訴訟を提起したことを理由に,不法行為による弁護士費用等の損害賠償3000万円及び遅延損害金の支払を求めるものであった。
b 本件訴訟の提起当時の原告の請求第4項のその余は,被告らが本件米国訴訟を提起したことは,不法行為又は本件独占販売契約上の債務不履行に当たると主張して,被告らに対して,連帯して,逸失利益の損害賠償1883万2515円及び遅延損害金の支払を求めるものであった。
イ 訴えの変更
(ア) 日本特許出願についての持分確認請求の取下げ
原告は,前記(3)イ(イ)のとおり,日本特許出願について平成18年12月14日に拒絶査定が確定し,特許を受ける権利を確認する利益がなくなったので,平成19年2月1日,上記ア(ア)の請求を取り下げた。
(イ) 独占販売権を有することの確認請求の取下げ
原告は,本件米国訴訟において,米国特許2が無効である旨の略式判決が出されたため,平成19年12月4日,上記ア(イ)の請求を取り下げた。
(ウ) 損害賠償請求の変更
原告は,上記米国判決を受けて,平成19年12月4日,従前の特許を受ける権利の侵害及び本件米国訴訟提起による損害額4883万2515円に加え,被告らの詐欺行為を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求(第1事件本訴請求(2))として,2887万5000円の請求を追加した。
さらに,原告は,平成20年1月18日,従前の特許を受ける権利の侵害及び本件米国訴訟提起による損害賠償の訴えを取り下げて,上記被告らの詐欺行為を理由とする損害賠償請求の損害として,弁護士費用1300万円を追加した。
(エ) まとめ
したがって,取下げにより終了した原告の請求は,
①  日本特許について特許を受ける権利の確認請求,
②  本件独占販売契約上の地位確認請求
③  被告らの特許を受ける権利の侵害及び本件米国訴訟提起を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求
である。
(以上,弁論の全趣旨)
(8) 売掛金請求(第1事件本訴請求(1))の請求原因
ア 売買契約
(ア) 原告は,平成18年3月1日,被告会社との間で,本件1%品310kgを,1kg当たりの単価2万円,合計651万円(消費税相当額を含む。)で売り渡す契約を締結し,同月3日,これを引き渡した。
(イ) 原告は,同月10日,被告会社との間で,コロソリン酸18%品100kgを,1kg当たりの単価1万8000円,合計189万円(消費税相当額を含む。)で売り渡す契約を締結し,同月18日,これを引き渡した。
イ 支払期限
原告と被告会社は,上記ア(ア)及び(イ)の売買代金合計840万円を,平成18年4月30日限り支払う旨合意した。
ウ まとめ
よって,被告会社主張の相殺の抗弁が成り立たない限り,被告会社は,原告に対し,上記売買代金840万円及びこれに対する支払期限の翌日である平成18年5月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
(争いのない事実)
(9) 過誤払金返還請求(第2事件)の請求原因
ア 原告による誤振込み
(ア) 原告は,平成19年1月31日,279万5832円(以下「本件過誤払金」という。)を,原告の取引先であるユース株式会社と間違えて,被告会社(株式会社ユース・テクノコーポレーション)名義の銀行口座に送金した(甲39)。
(イ) 原告は,上記振込先の誤りに気付き,同年2月1日,被告会社に誤振込みの事実を伝えるとともに,本件過誤払金の返還を請求した。
イ まとめ
よって,被告会社主張の相殺の抗弁が成り立たない限り,被告会社は,原告に対し,不当利得に基づき,279万5832円及びこれに対する平成19年2月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息を支払う義務がある。
(以上,争いのない事実)
5  争点
(1)  争点1 売掛金請求(第1事件本訴請求(1))に対する相殺の抗弁の成否
(2)  争点2 詐欺による不法行為の成否及び損害額(第1事件本訴請求(2)ア)
(3)  争点3 錯誤等による不当利得の成否及び損失額(第1事件本訴請求(2)イ)
(4)  争点4 過誤払金返還請求(第2事件)に対する相殺の抗弁の成否
(5)  争点5 本件独占販売契約の引取保証義務違反を理由とする債務不履行の成否及び損害額(第1事件反訴請求(2)ア及び第1事件本訴請求(1)に対する相殺の抗弁)
(6)  争点6 被告会社を介さないで本件各商品を売却したことについて債務不履行又は不法行為の成否及び損害額(第1事件反訴請求(2)イ)
(7)  争点7 被告会社の信用毀損の不法行為の成否及び損害額(第2事件請求に対する相殺の抗弁①~③)
(8)  争点8 不当訴訟による不法行為の成否及び損害額
ア 争点8−1 訴え変更前の請求(第2事件請求に対する相殺の抗弁④)
イ 争点8−2 訴え変更後の請求(第1事件反訴請求(1))
6  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1(売掛金請求に対する相殺の抗弁の成否)
(被告会社の主張)
ア 反対債権
後記(5)(被告会社の主張)のとおり。
イ 相殺の意思表示
被告会社は,原告に対し,平成20年10月20日の本件第15回弁論準備手続期日において,被告会社の上記反対債権の一部937万8628円をもって,原告の売掛金債権840万円及びこれに対する平成18年5月1日から平成20年4月8日まで年6分の割合による遅延損害金97万8628円の合計937万8628円と対当額で相殺する旨の意思表示をした。
(原告の主張)
ア 反対債権
後記(5)(原告の主張)のとおり。
イ 相殺の意思表示
被告会社の主張イは認める。
(2)  争点2(詐欺による不法行為の成否及び損害額)
(原告の主張)
ア 被告Aの故意及び欺罔行為
(ア) 被告Aは,①米国特許2明細書の記載のみでは15%の濃度のコロソリン酸を含むバナバエキスを抽出することが不可能であること及び②エタノール抽出エキスを用いたヒト臨床試験を行っていないことを知っていたから,米国特許2に無効又は権利行使不可能とする重大な瑕疵があることを認識していた。
(イ) 被告Aは,原告に対し,米国特許2を行使することにより中国やインドからの廉価な類似品を市場から排除することができる旨の説明をし,本件独占販売契約の締結を勧誘した。
(ウ) 被告らは,詐欺の故意はなかった旨主張するが,溶媒を用いて成分の抽出を行う場合,抽出物にはその溶媒に溶解する成分しか含まれないし,含有される成分の量や構成比も,使用した溶媒への溶解度によって変化するから(証人C),溶媒が異なると,同じ効果が期待できないことは当然のことである。特に,米国特許2において有効成分とされているコロソリン酸は,水に溶けにくい性質を持っているから,熱水抽出物で実施例記載のコロソリン酸を含有する抽出物を作成すること自体,不可能である。
仮に,平成10年熱水抽出臨床試験を参考にして,何らかの発明が完成されていたとしても,その発明は,エタノール抽出エキスを用いたヒト臨床試験によって効果が確認される米国特許2明細書に記載された発明とは異なる発明である。
イ 原告の誤信
(ア) 原告は,上記ア(イ)の説明を受け,米国特許権2を被告らと共同行使することにより,上記類似品を市場から排除して,本件各商品の売上げを回復することができると考えて,本件独占販売契約を締結した。
(イ) 被告らの積極主張に対する反論
a 後記被告らの主張イ(イ)aのうち,①~④は認め,⑤は否認する。
原告は,米国特許2明細書記載のエタノール抽出エキスによるヒト臨床試験が行われていないことを被告らから知らされたことはなく,米国特許2にこれを無効又は権利行使不可能とする瑕疵があることを知らなかった。
b 同(イ)bのうち,原告が米国特許2は冒認出願であると考えていたことは認め,その余は否認する。
c(a) 同(イ)cのうち,(a)は認め,(b)は否認する。
(b) 上記資料(乙91の1の3頁及び4頁)は,エタノール抽出エキスによるヒト臨床試験データの不存在の点については全く触れていない。
(c) 上記資料は,本件独占販売契約の締結交渉の過程で,原告が被告会社との取引交渉を有利に進めるために,米国特許2等の弱点を検討し,指摘した書面であり,原告が米国特許2等が無効であると認識していたことを示すものではない。
(ウ) 信義則違反
後記被告らの主張イ(ウ)は否認する。
ウ 被告らの不法行為責任
(ア) 上記被告Aの行為は,原告に対する詐欺行為であり,不法行為(民法709条)を構成する。
(イ)a 上記被告Aの行為は,被告会社の代表取締役である被告Aが被告会社の職務を行うにつきされた行為である。
b よって,被告会社も,会社法350条に基づき,原告に生じた損害を賠償する義務がある。
エ 損害
(ア) 本件各商品の購入費用2887万5000円
前提事実(6)イ(エ)のとおり,原告は,本件独占販売契約に基づき,被告会社から,本件1%品を合計1100kg購入し,被告会社に対し,合計2887万5000円(消費税相当額を含む。)を支払った。
(イ) 弁護士費用
a 原告は,本件訴訟の準備及び追行を原告訴訟代理人外山弁護士らに委任し,相当額の弁護士費用を支払う旨約束した。
b 原告が負担する弁護士費用のうち,1300万円が被告らの上記不法行為と相当因果関係を有する損害である。
オ まとめ
よって,被告らは,原告に対し,民法709条,会社法350条に基づき,連帯して,合計4187万5000円及びこれに対する不法行為の後である平成20年1月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
(被告らの主張)
ア 被告Aの故意及び欺罔行為
(ア) 原告の主張ア(ア)は否認し,(イ)は認める。
(イ) バナバエキスにおいては,熱水抽出エキスに含まれているものはエタノール水溶液抽出エキスに必ず含まれており,熱水抽出エキスで効果があったものであれば,エタノール水溶液抽出エキスにおいても同等以上の効果が期待できることは,当業者において科学常識である(乙85)。
被告Aは,この科学常識に基づいて,熱水抽出エキスによる臨床試験をすれば,日本においても米国においても特許が取得できると信じていたものであり,詐欺の故意はない。
イ 原告の誤信
(ア) 認否
同イ(ア)は否認する。原告に錯誤はない。
(イ) 被告らの積極主張
a① 原告には,本件独占販売契約の締結前に,米国特許2明細書を確認する機会があったこと,
② 原告らは,本件米国訴訟においてその瑕疵を自ら主張したこと,
③ 原告は,平成10年熱水抽出臨床試験が熱水抽出エキスにより行われたものであることを熟知していたこと,
④ 原告は,平成10年熱水抽出臨床試験の後,すぐに米国子会社においてヒト臨床試験を行っていること
⑤ 以上①~④からすると,原告は,米国特許2明細書に記載されたエタノール抽出エキスでのヒト臨床試験が行われていないことを知っていた。
b 原告は,米国特許2は冒認出願であると考えていたのであるから,米国特許2には瑕疵があり,無効や権利行使不可能をきたすことを知っていた。
c(a) また,原告は,被告らに対して,平成16年2月に医家向け医薬品のライセンス交渉の際や平成18年3月に本件独占販売契約の解除につき争いが生じた際に,①コロソリン酸の糖尿病に対する有効成分の確認が既知であること,②標準化が原告の米国子会社で既にされていること,③溶媒の問題,④精製製剤の他の成分の未確認の問題,⑤投与量の問題,⑥薬物動態試験のデータがない問題,⑦本件1%品については既にデータが常磐に存在することを指摘し,米国特許2に無効原因がある旨指摘していた(乙90の1及び2,91の1及び2)。
(b) よって,原告は,米国特許2には瑕疵があり,無効や権利行使不可能をきたすことを知っていた。
(ウ) 信義則違反
原告は,本件訴訟の当初は本件独占販売契約が有効である旨主張しており,また,本件独占販売契約締結の当初から,在庫品を被告会社を介さないで販売し,本件独占販売契約に従った履行をする意思がなかったのであるから,原告が,本件独占販売契約について,詐欺や錯誤の主張をすることは,信義則に違反し,許されない。
ウ 被告らの不法行為責任
原告の主張ウ(ア)は否認し,(イ)のうちaは認め,bは否認する。
エ 損害
同エ(イ)のうち,aは不知,bは否認する。
オ まとめ
同オは争う。
(3)  争点3(錯誤等による不当利得の成否及び利得額)
(原告の主張)
ア 錯誤無効
(ア) 前記(2)(原告の主張)イ(ア)のとおり,本件独占販売契約において,米国特許2が有効であることは重要な前提事実であり,原告は,米国特許2が有効で,権利行使可能であり,それを利用して類似品を米国市場から排除することができると誤信して,本件独占販売契約を締結した。
(イ) したがって,本件独占販売契約は,原告の要素の錯誤により,無効である。
(ウ) 後記被告会社の主張ア(イ)(重大な過失)は否認する。
イ 詐欺取消し
(ア) 前記(2)(原告の主張)ア(ア)及び(イ)並びにイ(ア)のとおり,原告は,被告Aの欺罔行為により,米国特許2がエタノール抽出エキスによるヒト臨床試験を行っていないことなどのため無効又は権利行使不可能であるにもかかわらず,このような瑕疵がなく,これを利用して類似品を米国市場から排除することができると誤信して,本件独占販売契約を締結した。
(イ) 原告は,被告会社に対し,平成19年12月7日の本件第9回弁論準備手続期日において,本件独占販売契約を詐欺を理由に取り消す旨の意思表示をした。
ウ 不当利得
本件独占販売契約は,錯誤無効又は詐欺取消しにより遡及的に無効となるから,被告会社は,原告が本件独占販売契約に基づき被告会社に対して支払った売買代金合計2887万5000円について,法律上の原因なく利得し,原告は,同額の損失を被った。
エ まとめ
よって,被告会社は,原告に対し,民法703条,704条に基づき,不当利得金2887万5000円の返還及びこれに対する被告会社が悪意となった後である平成20年1月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息を支払う義務がある。
オ 不法原因給付
後記被告会社の主張オは否認する。
(被告会社の主張)
ア 錯誤無効
(ア) 原告の主張アは否認する。原告に錯誤はない。
また,本件独占販売契約は,本件各商品について米国での独占販売権を付与する契約であり,原告は,米国特許2だけでなく,原告の米国子会社であるケムコ社が有する特許と共同して警告活動をすることにより,市場支配性の効果を発揮することを企図していたから,米国特許2に決定的排除力があることは期待していなかった(乙60)。したがって,米国特許2が有効であることは,本件独占販売契約の要素に当たらない。
(イ) 少なくとも,原告には,重大な過失があった。
イ 詐欺取消し
(ア) 同イ(ア)(欺罔行為)は否認する。
(イ) 同イ(イ)(取消しの意思表示)は認める。
ウ 不当利得
同ウは否認する。
エ まとめ
同エは争う。
オ 不法原因給付
原告は,米国特許2が無効であるとの認識を持ちながら,米国特許2の排他力を利用して本件各商品を販売したものであり,第三者に対する詐欺行為を行ったものである。そして,被告会社に対する売買代金名下の支払は,詐欺行為による利益を分配したものであり,不法原因給付に該当するから,被告会社に対して不当利得として返還を求めることはできない。
(4)  争点4(過誤払金返還請求における相殺の抗弁の成否)
(被告会社の主張)
ア 反対債権1(信用毀損の不法行為)
被告会社は,後記(7)(被告会社の主張)のとおり,原告に対し,次の債権を有する。
① 平成17年6月20日付け投資家への文書送付行為による不法行為に基づく損害賠償請求権70万円及びこれに対する平成17年6月20日から平成19年1月31日まで年5分の割合による遅延損害金5万6671円の合計75万6671円
② 平成18年11月の株主への文書送付行為による不法行為に基づく損害賠償請求権100万円及びこれに対する平成18年11月28日から平成19年1月31日まで年5分の割合による遅延損害金8904円の合計100万8904円
③ 臨時株主総会招集行為による不法行為に基づく損害賠償請求権130万円及びこれに対する平成18年12月20日から平成19年1月31日まで年5分の割合による遅延損害金7657円の合計130万7657円
イ 反対債権2(不当訴訟(訴え変更前の請求))
被告会社は,後記(8)ア(被告会社の主張)のとおり,原告に対し,次の債権を有する。
④ 訴え変更前の請求が不当訴訟であることを理由とする不法行為による損害賠償請求権488万円
ウ 相殺の意思表示
被告会社は,原告に対し,平成20年10月20日の第15回弁論準備手続期日において,被告会社の上記①ないし④の請求権をもって,①から④の順序で,原告の不当利得返還請求権279万5832円と対当額で相殺する旨の意思表示をした。
(原告の主張)
被告会社の主張ア及びイは否認し,ウ(相殺の意思表示)は認める。
(5)  争点5(本件独占販売契約の引取保証義務違反を理由とする債務不履行の成否及び損害額)
(被告会社の主張)
ア 引取義務
(ア) 原告は,本件独占販売契約により,被告会社から,次の数量の本件各商品を引き取る義務がある。
平成17年分 10トン
平成18年分 20トン
平成19年分 30トン
平成20年分 30トン
平成21年分 30トン
上記数量は,本件1%品についてのものであり,本件3%品であればその3分の1が相当する。
(イ)a 原告の自認
(a) 原告は,訴状において,本件引取保証が数量保証であることを自認している。
(b) また,原告は,最低購入保証数量条項に関して,保証でありしかも責任が伴うものであることを対外的に表明している(乙29の1)。
b 本件確認書の解釈
本件確認書(甲9の2)は,原告から「独占販売権」消滅の要件を重くしてほしい旨の要望があったため,作成したものであるが,本件確認書には,努力目標とは記載されていない。
(ウ)a 違約金条項の不存在
後記原告の主張ア(ウ)aのうち,(a)は認め,(b)は否認する。
Fは,被告会社の社員ではなく,当時仲介者的に本件独占販売契約の締結に関与していた者にすぎない。
また,違約金条項がないことは,賠償額の予定(民法420条)がされなかったことを意味するが,損害賠償義務を負わないことを意味しない。
b 在庫品の存在
同ア(ウ)bは否認する。
「2004/12/08研光通商様との話し合い」と題する書面(甲27の2)中の「⑤ 一年半しないと,UTCオフィシャル製品を買おうとしない→A理解」は,米国の競合会社が1年半くらいしないと被告会社の特許の許諾を受けた製品を買おうとしないだろうという趣旨であり,在庫のせいで1年半は売れないことを意味していない。
イ 本件独占販売契約の解除
(ア) 後記(6)(被告会社の主張)イのとおり,原告は,本件独占販売契約を締結した平成17年1月26日以降,被告会社を介さないで,本件各商品を販売した。
(イ) 被告会社は,原告に対し,平成19年1月31日,被告らの同日付け準備書面6の送達により,上記被告会社を介さないで販売した本件各商品について,同書面到達後2週間以内に回復措置をとることを催告した。
(ウ) よって,本件独占販売契約は,本件独占販売契約第16条①違反により,平成19年2月14日の経過により終了した。
ウ 損害
(ア) 取引価格
a 被告会社と原告は,本件1%品について,被告会社の取得する販売差額を1kg当たり1万円(被告は1万5000円で常磐から購入し,2万5000円で原告に販売する。)と定めた。
b 被告会社と原告は,本件3%品について,被告会社の取得する販売差額を1kg当たり3万円と定めた。
(イ) 損害額
よって,被告会社は,平成17年分8.9トン(前提事実(6)イ(エ))につき売買差額8900万円,平成18年分20トンにつき同2億円,平成19年から平成21年分については,各年3億円から中間利息を控除した残金のうち各年1億円,合計3億円を請求する。
エ 催告
被告会社は,原告に対し,平成20年4月8日,同日付けの準備書面送達により,その支払を催告した。
オ まとめ
よって,原告は,被告会社に対し,本件独占販売契約の引取保証義務違反を理由とする債務不履行による損害金5億8900万円及びこれに対する平成20年4月9日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
(8900万円+2億円+3億円)−937万8628円=5億7962万1372円
被告会社は,一部相殺に供した後の残金5億7962万1372円のうち5億7544万1372円及びこれに対する平成20年4月9日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
カ 本件独占販売契約の無効等
後記原告の主張カは否認する。
(原告の主張)
ア 引取義務
(ア)a 被告会社の主張ア(ア)は否認する。
b 本件独占販売契約第3条は,単なる努力目標を定めたものにすぎず,原告はその不履行により何ら義務を負わない。
c 仮に,原告が本件独占販売契約上何らかの義務を負うとしても,原告の不履行の効果は,独占販売権の解除をされることだけであり,得べかりし利益の損害賠償義務は生じない。
(イ)a 原告の自認
同ア(イ)aは否認する。それらは,自認には当たらない。
b 本件確認書の解釈
同ア(イ)bは否認する。本件確認書(甲9の2)の記載内容(前提事実(6)イ(ウ))は,最低引取数量が努力目標であることを示している。
(ウ)a 違約金条項の不存在
(a) 本件独占販売契約には,最低購入保証が実現できなかった場合の違約金条項がない。
(b) 当初案には違約金条項があったが,契約の交渉過程において,「両社が達成に向けて努力する前提のため」(平成16年12月22日付け有限会社フィスコムのFからCあてのEメール−甲28),削除された。
b 在庫品の存在
原告は,平成11年以降の取引により,大量の在庫を抱えていた。
原告は,被告会社に対して,その旨を伝え,努力目標であるとしても非現実的な数字であることを告げ,併せて,本件独占販売契約が締結された後もまずは在庫の処分を済ませてから新たな引取りを始めたい旨申し入れ,被告らもこれを了承していた(甲27の2)。
しかし,原告は,被告らから,本件独占販売契約に引取保証条項が存在することが被告会社の事業遂行に関する株主への説明のために不可欠であると懇願されたため,被告会社との間で,同数量が努力目標であるということを明確に合意し,その旨の本件確認書(甲9の2)を差し入れさせた上で,本件独占販売契約の契約書自体には「保証」という文言を用いることを承諾した。
イ 本件独占販売契約の解除
同イのうち,(ア)(債務不履行)は否認し,(イ)(解除の意思表示)は認め,(ウ)(契約の終了)は否認する。
ウ 損害
同ウは否認する。
エ 催告
同エは認める。
オ まとめ
同オは争う。
カ 本件独占販売契約の無効等
本件独占販売契約は,前記(3)(原告の主張)ア(錯誤無効)及びイ(詐欺取消し)のとおり,詐欺又は錯誤により無効であるから,原告は,本件独占販売契約3条による引取義務を負わない。
(6)  争点6(被告会社を介さないで本件各商品を販売したことについて債務不履行又は不法行為の成否及び損害額)
(被告会社の主張)
ア 平成11年1月から平成15年9月まで
(ア) 平成11年覚書
原告は,平成11年覚書(乙37)の下,本件各商品については,被告会社を通じて購入し,被告会社に売買差額を支払うことを約束していた(乙58)。
(イ) 本件1%品
a 原告は,本件覚書の存続中に,本件1%品合計968.6kg(別紙4取引経過一覧表9,10,12,13,15,17,20,21,23~25,28,29及び32)を,被告会社を介さないで販売した(前提事実(6)ア(エ)b参照)。
b 原告は,被告会社に対し,本件1%品1kg当たり2万円の売買差額を支払う義務がある。
c よって,原告は,被告会社に対し,合計1937万2000円を支払う義務がある。
(ウ) 本件3%品
a 原告は,平成15年に,本件3%品合計310kg(別紙4取引経過一覧表63~65)を,被告会社を介さないで販売した(前提事実(6)ア(エ)b参照)。
b 原告は,被告会社に対し,本件3%品1kg当たり4万円の売買差額を支払う義務がある。
c よって,原告は,被告会社に対し,合計1240万円を支払う義務がある。
d 後記原告の主張(ウ)b(サンプル品)は否認する。
e 同(ウ)c(原葉代金での代替)は否認する。この時に取引されたバナバ葉は,コロソリン酸を多く含むものであったため,1kg当たり1000円という価格になったものであり,妥当な価格であった(乙48~57)。
イ 平成17年1月26日以降
(ア) 本件独占販売契約による義務
原告は,本件独占販売契約に基づき,被告会社を介して本件各商品を購入する義務があり,本件独占販売契約前に購入したものであっても,被告会社に売買差額を支払っていないものについては,本件独占販売契約に基づき,売買差額を支払う義務を有していた。
(イ) 本件1%品
a 原告は,平成17年1月26日以降,本件1%品合計2350kg(別紙4取引経過一覧表39~41及び53~62)を,被告会社を介さないで販売した。
b 原告は,被告会社に対し,本件1%品1kg当たり1万円の売買差額を支払う義務がある。
c よって,原告は,被告会社に対し,2350万円を支払う義務がある。
(ウ) 本件3%品
a 原告は,平成17年1月26日以降,本件3%品合計790kg(別紙4取引経過一覧表66及び71~73)を,被告会社を介さないで販売した。
b 原告は,被告会社に対し,本件3%品1kg当たり2万円の売買差額を支払う義務がある。
c よって,原告は,被告会社に対し,1580万円を支払う義務がある。
d(a) 後記原告の主張イ(ウ)b(a)のうち,原告主張の振込みの事実は認め,その余は否認する。
(b) また,被告会社は,平成18年2月1日に,同金員を原告に返還した(乙47)。
(エ) 本件独占販売契約の無効
後記原告の主張イ(エ)は否認する。
ウ 不法行為
原告の上記ア及びイの行為は,詐欺行為であり,不法行為も構成する。
エ 損害
(ア) 売買差額
被告会社は,上記ア及びイの売買差額合計7107万2000円の損害を被った。
(イ) 弁護士費用
a 被告会社は,反訴請求の提起及び追行を被告ら訴訟代理人富田弁護士らに委任し,相当額の弁護士費用を支払う旨約束した。
b 本件と相当因果関係のある弁護士費用は,請求額の1割である710万7200円である。
オ まとめ
よって,原告は,被告会社に対し,平成11年覚書契約若しくは本件独占販売契約の債務不履行又は詐欺の不法行為に基づいて,合計7817万9200円及びこれに対する準備書面送達の日の翌日である平成20年4月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
(原告の主張)
ア 平成11年1月から平成15年9月まで
(ア) 平成11年覚書
a 被告会社の主張ア(ア)は否認する。
b 平成11年覚書は,被告会社に対する売買差額の支払義務を定めていない。被告会社は,原葉の納入により,それに見合う経済的利益を得ている。
原告は,共同事業を背景とした好意に基づいて,被告会社に利益を得させるために,いったん常磐から購入した商品を被告会社に転売し,それを買い戻す形式を採っていた。しかし,被告会社の公認会計士から不適切との指摘(甲25)を受けてからは,原告と被告会社は,上記迂回取引を自粛していた。
乙58は,平成11年覚書の検討段階での一草案にすぎない。
(イ) 本件1%品
同ア(イ)のうち,aは認め,b及びcは否認する。
(ウ) 本件3%品
a 同ア(ウ)のうち,aは認め,b及びcは否認する。
b 本件3%品500kg(別紙4取引経過一覧表の63~66)は,平成15年にサンプルとして製造したものである。
c 原告は,被告会社の公認会計士から迂回取引は問題である旨の指摘を受けたため,被告会社から継続的に本件各商品を購入することを自粛していたが,資金的に困窮を極めていた被告会社から,本件各商品を購入できないのであれば,原葉を高く買ってほしいと懇願されたため,通常は1kg当たり450円であった原葉を,1kg当たり1000円で購入し,試験的に本件3%品を製造した。
イ 平成17年1月26日以降
(ア) 本件独占販売契約による義務
a 同イ(ア)は否認する。
b 本件独占販売契約は,本件独占販売契約締結後は,被告会社を介して本件各商品を購入する旨定めているものであって,本件独占販売契約締結前に原告が常磐から購入した在庫品を被告会社を介さないで販売しても,本件独占販売契約に違反するものではない。
c すなわち,原告は,本件独占販売契約交渉の段階から,上記在庫の存在を明らかにし,同在庫を優先的に処分しない限りは,被告会社から新たに商品を購入することができない旨伝えていた。
そして,交渉の末,上記在庫の存在を勘案して,本件独占販売契約上の最低引取保証の数量を減らすとともに,本件確認書を交わすことで実質的にこれを努力目標の数値とした。
(イ) 本件1%品
a 同イ(イ)のうち,aは認め,b及びcは否認する。
b 本件1%品2350kg別紙4取引経過一覧表の39~41及び53~62)は,いずれも本件独占販売契約締結以前に被告会社から購入した原葉で製造されたか,原告が常磐より購入した商品であり,原告の米国子会社の在庫となっている。
(ウ) 本件3%品
a 同イ(ウ)のうち,aは認め,b及びcは否認する。
b(a) 原告は,平成18年1月に常磐から本件3%品(別紙4取引経過一覧表71)を購入し,同年2月に原告の米国子会社に輸出した分につき,原告は,平成17年11月30日に被告会社が受領すべき利益である210万円を先払いした(甲26)。
(b) 被告会社の主張イ(ウ)d(b)(210万円の返還)は認める。ただし,上記210万円の返還により,遡って正常な取引でなかったことになるものではない。
c 平成18年4月購入分200kg及びび平成18年8月購入分200kg(別紙取引経過一覧表の72及び73)の本件3%品は,被告会社が原告に対し,米国で訴訟を提起して一方的に連絡を絶ってしまった後に,原告が常磐から購入して米国に輸出したものであり,被告会社を通じた取引を行うことが事実上不可能であった。
(エ) 本件独占販売契約の無効
本件独占販売契約は,前記(3)(原告の主張)ア(錯誤無効)又はイ(詐欺取消し)のとおり,詐欺取消し又は錯誤により無効であるから,原告が被告会社から購入する義務はない。
ウ 不法行為
同ウは否認する。
エ 損害
同エのうち,(ア)(売買差額)は否認し,(イ)(弁護士費用)のうち,aは不知,bは否認する。
オ まとめ
同オは争う。
(7)  争点7(信用毀損の不法行為の成否及び損害額)
(被告会社の主張)
ア 平成17年6月20日付け投資家への文書送付行為
(ア) 文書の送付
原告は,平成17年6月20日,被告会社の投資家26社に対して,「Use-Techno Corp.への出資御願いの件」と題する書面(乙29の1の10頁及び11頁)を送付した。
同書面には,次の記載がある。
「Use Techno社の経営陣にGを非常勤役員として送り込み同社現営業スタッフの教育を弊社米国子会社SoftGel Technologies Inc.と共同で行うことにより経営の改革を推進し,大幅な営業成績の改善と,利益ある操業実現に専念させる。」
(イ) 不法行為
a 原告の取締役を被告会社の取締役として送り込むことは,まだ確定的な事実ではなかった。
b 原告の同文書送付は,被告会社に対する投資可能性を奪うものであり,被告会社の信用や名誉を毀損する不法行為である。
(ウ) 損害
その結果,被告会社は,70万円の損害を被った。
(エ) まとめ
よって,原告は,被告会社に対し,不法行為による損害賠償金70万円及びこれに対する不法行為の日である平成17年6月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
イ 平成18年11月の株主への文書送付行為
(ア) 文書の送付
原告は,被告会社の株主全員に対し,平成18年11月1日ころ,「株式会社ユーステクノコーポレーションの法人,個人株主の皆様」と題する書面(乙29の1)を,同月27日ころ,「株式会社ユーステクノコーポレーションの法人,個人株主の皆様(№2)」と題する書面(乙33の1)をそれぞれ送付した。
同書面には,次の記載がある。
① 「・・・『(注 平成17年6月ころ)A社長が社長職を退任して,相談役の閑職に就き,一切経営に干渉しない』ことを基本とするものでした。彼自身に対し,当時の同社役員からも同様の要求が為され,最終的にA氏も弊社の条件に同意しました。」(乙29の1の1頁下から10行~7行)との記載部分のうち,「最終的に同意した」という部分
② 「この原因は,私の観るところ,A社長の経営思想を欠いた経営感覚にあります。」(同4頁7行),「・・・ハッキリ言えることは『A氏は人格的,能力的に果たして実業家として適正な人物かどうか,おおいに疑問』ということです。」(同7頁最終行~8頁2行),「・・・A氏は狂人としか思えません」(同8頁下から5行~4行),「・・・過去,投資家より集めた7−8億円もの資金は全く無駄に浪費され,」(同8頁6行)
③ 「当社が得た情報によれば,中国及びインドの商社はA氏に依って組織され,彼等にはパテントの心配をすることなく,インド品及び中国品を弊社の需要家に売り込むよう,販売活動を行いました。」(同4頁17行~19行)
④ 「『・・・両社に無断で,必要データを入手し,勝手にパテント申請した』というものです。」(同6頁下から14行~13行),「・・・必要データについては常磐植物化学研究所・弊社が所有する資料を無断盗用してカモフラージュしたものです。」(同6頁下から11行~10行),「A氏の盗用」(同6頁下から4行),「・・・率直に申し上げれば 『UTCとA氏は他社の製造方法を盗用し特許を成立させた』 ということです。」(乙33の1の2頁12行~13行)
⑤ アイオベイト社との和解に関する記載(乙29の1の6頁7行~13行)については,当事者間に守秘条項があることを知りながら,同社と和解したこと並びにその和解内容を恣意的に解釈し開示している。
⑥ 「・・・上記基本契約書は,名称はともあれ,契約書としては認識しておらず,実態としては単なる目標数量としか認識しておりません。」(乙33の1の3頁下から14行~13行)
(イ) 不法行為
これらの文書の送付は,被告会社の信用や名誉を毀損する不法行為である。これらの文書の送付は,株主権の行使の外形を採っているが,原告は,米国訴訟を有利に運ぶためにこれらを送付したものであり,株主権の濫用である。
(ウ) 損害
その結果,被告会社は,100万円の損害を被った。
(エ) まとめ
よって,原告は,被告会社に対し,不法行為による損害賠償金100万円及びこれに対する不法行為の後である平成18年11月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
ウ 臨時株主総会の招集
(ア) 原告の行為等
a 原告は,平成18年12月20日,被告会社の21名の株主と共同して,被告会社の役員全員の解任を求める臨時株主総会招集請求を行った(乙65)。
b 被告会社は,平成19年2月15日,臨時株主総会を開催したが,当日出席したのは,原告と他1名のみであり,出席株主の株式総数は1.8%にとどまり,法定の3%に達しなかったため,流会となった(乙66,67)。
(イ) 不法行為
原告の上記臨時株主総会の招集は,本件米国訴訟を有利に進めることを目的とする不当なものであり,株主権の濫用であり,不法行為となる。
(ウ) 損害
被告会社は,130万円の損害を被った。
(エ) まとめ
よって,原告は,被告会社に対し,不法行為による損害賠償金130万円及びこれに対する不法行為の日である平成18年12月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
(原告の主張)
ア 平成17年6月20日付け投資家への文書送付行為
(ア) 被告会社の主張アのうち,(ア)(文書の送付)は認め,その余は否認する。
(イ) 上記文書を送付した当時,被告会社は,新たな投資を得なければその存続が危ぶまれる状況にあった。
原告は,同書面において,取引面において本件独占販売契約を締結して被告会社を支援していくため,被告会社からの要請に基づき,今後は安定的な収益が期待できる旨を述べて,新規投資を勧誘したものであり,被告会社にとって不利益になる内容ではない。
イ 平成18年11月の株主への文書送付行為
(ア) 同イのうち,(ア)(文書の送付)は認め,その余は否認する。
(イ) 原告は,被告会社の株主であり,株主同士が情報を交換し,会社の経営や役員の選任,解任などについて意見を述べ,賛同を求めることは,株主権の行使として当然に許される。
被告会社は,A社長の手がけた事業が失敗し,原告との間で,本件独占販売契約に基づき新たに始めた共同事業も成果が上がらず,危機的な状況が改善できる目途も立たないのに,被告Aは,しばしばその所在がわからなくなるなど,株主に対し,十分な説明をしていなかった。
そこで,原告は,被告Aを被告会社の経営者として不適切であると考えて,株主に対して,上記書面を送付し,臨時株主総会を招集した。
原告は,臨時株主総会において,
① A社長の解任,
② 新社長の選任,
③ UTC直近の決算書,財務諸表を基に,第三者の公認会計士による同社の財務内容についてのコメントと,可能性についての質疑応答,
④ UTCのメインバンクの京都銀行からの長期借入金の返済状況についての説明と満期期日を延長したことについての説明を同行より聴取し,さらに今後の同行のUTCに対する方針につき説明を受ける。
の4つのことについて,株主間で相談するという経営立て直し,健全化のための具体的な提案を行っている。
このような行為は,株主として正当な権利の行使であって,何ら違法なものではないし,被告会社にとって利益になる行為である。
また,原告は,株主としての権利を行使するため,公共の利害に関する事実に係り,公益を図る目的で上記文書を送付したものである。文書に記載された内容は,真実であり,少なくとも原告が真実であると信じたことにつき,相当の理由がある。
ウ 臨時株主総会の招集
(ア) 同ウのうち,(ア)(原告の行為等)は認め,その余は否認する。
(イ) 株主総会を招集することは,株主の権利であり,原告に不当な目的はない。原告は,被告会社の長期に及ぶ経営不振とA社長の投資家からの信用の失墜という状況下で,経営者の交代を求めて株主総会を招集することは,株主に株主総会招集請求権を認めた法の趣旨に合致するものである。
(8)  争点8(不当訴訟)
ア 争点8−1(訴え変更前の請求)
(被告会社の主張)
(ア) 不当訴訟
a 原告は,①被告会社が米国の裁判所において原告の米国子会社に対して提起した本件米国訴訟を牽制し,米国子会社を援護し,あるいは本件米国訴訟のための資料を得るために,本件訴訟を提起したものである。②米国の特許に無効理由があれば,原告は本件各商品を販売できなかったのであるから,原告に本件米国訴訟を提起されたことによる逸失利益の損害が生じるはずがない,そして,原告は,損害が発生しないことを知っていた。③原告は,米国特許権が有効であることを前提に本件各商品を販売していたのであるから,その特許権に基づいて訴訟が提起されたからといって,特許権の無効を主張して損害賠償を請求することは,クリーンハンドの原則に違反する。
b よって,原告の本件米国訴訟提起を理由とする逸失利益の損害賠償請求(前提事実(7)ア(エ)b)は,公序良俗違反であり,不法行為に該当する。
(イ) 損害
a 被告会社は,原告の上記訴えに応訴をするために,本訴被告ら代理人である富田弁護士らに委任し,相当額の弁護士費用を支払う旨約束した。
b 原告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,488万円が相当である。
(ウ) まとめ
よって,原告は,被告会社に対して,不法行為による損害賠償488万円を支払う義務がある。
(原告の主張)
被告会社の主張のうち,(イ)aは不知,その余は否認する。
イ 争点8−2(訴え変更後の請求)
(被告会社の主張)
(ア) 不法行為
a 原告は,本件独占販売契約を締結する前に米国特許2が無効であり権利行使可能でないことを知り,又は容易に知ることができた。
b したがって,詐欺行為の不法行為並びに錯誤又は詐欺取消しを理由とする被告会社に対する第1事件本訴(2)の請求は,不当訴訟であり,不法行為に該当する。
(イ) 損害
a 被告会社は,原告の上記訴えに応訴をするために,本訴被告ら代理人である富田弁護士らに委任し,相当額の弁護士費用を支払う旨約束した。
b 原告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,418万円が相当である。
(ウ) まとめ
よって,原告は,被告会社に対し,不法行為による損害賠償金418万円及びこれに対する平成20年4月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
(原告の主張)
被告会社の主張のうち,(イ)aは不知,その余は否認する。
第3  当裁判所の判断
1  事実認定
(1)  本件発明
ア 原告社員であるCは,平成8年ころ,原告社員から,当時日本においてバナバ茶を販売していた被告会社を紹介された。被告会社は,米国市場で,原告の米国子会社を通じて,バナバ茶を販売することを希望したが,原告は,米国では茶に対する関心が低いため,米国市場では売上げが伸びないと考えて,両者は合意に至らなかった。
当時,バナバ葉に含まれる有効成分のうちコロソリン酸に血糖値上昇の抑制作用等があることは既に知られていたが,Cは,バナバ葉に含まれるコロソリン酸を規格化し,その抽出物(エキス)を製造することを思い付き,被告Aに提案した。そして,平成9年8月ころまでに,両者の間で,バナバ葉が含有するコロソリン酸を規格化し,米国での販売に適したエキスを製造するための共同開発を行うことを合意した。
(前提事実(2)ア)
イ(ア) バナバ葉からコロソリン酸を抽出する方法として,煮出しなどによる熱水抽出方法が知られていたが,この方法では,コロソリン酸の抽出量はわずかであった。そこで,原告は,平成10年4月ころ,常磐に対し,バナバ葉に含まれるコロソリン酸を高濃度で抽出する方法の研究,開発及び抽出物の試作を依頼した(甲2)。
(イ) 常磐の担当者Dは,同年4月20日ころ,コロソリン酸抽出実験に着手し(甲4),同年9月ころまでに,バナバ葉からエタノール抽出によって高濃度のコロソリン酸を抽出する製法を確立し,エキスの製造に成功した(甲4,5の1及び2)。
(前提事実(2)イ)
ウ 被告Aは,コロソリン酸が抗糖尿病作用,血糖上昇抑制作用を有する物質であることは周知であるが,ヒト臨床試験を行えば,用途発明として特許取得の可能性があると考え(乙27),東京CROに対し,平成9年10月ころ,熱水抽出方法により製造したエキスである被告会社の商品「バナバミン」を用いてヒト臨床試験を行うことを依頼した。
東京慈恵会医科大学のE教授らは,東京CROから依頼されて,「バナバミン」を用いてヒト臨床試験を実施した。東京CROは,被告Aに対し,平成10年11月ころ,「バナバミン服用グループは血糖値が20mg,約15%下がった。また低血糖を招かない安全なものである」旨の結果を報告した(乙22。弁論の全趣旨。平成10年熱水抽出臨床試験)。E教授らは,平成11年5月20日発行の「薬理と治療 Vol.27 No.5」(乙23)に同旨の臨床試験結果を公表した。
被告Aは,商品化のために最も適当な濃縮物中のコロソリン酸含有物の濃度を,濃縮物100mg当たり0.1~15%と特定して,特許出願を行うこととした。
(前提事実(2)ウ)
(2)  特許出願
ア 被告会社は,平成10年11月27日,常磐の主任研究員H(以下「H」という。)に対し,特許出願のため,バナバアルコール抽出エキスの製造工程を照会し(甲6の1),Hは,同月28日,被告会社に対し,製造工程を記載した書面をファクシミリで送付した(甲6の2)。
イ 被告Aは,同年12月9日,日本において,被告Aを発明者とし,被告会社及び三井物産を共同出願人として,本件発明について特許出願をした。
しかし,日本特許出願は,平成18年11月10日,「引用文献2には,バナバからメタノール抽出でコロソリン酸を得ることが記載されているので,請求項1,2に記載されたバナバ葉をエタノールあるいはメタノールで抽出し,所定量のコロソリン酸を含有する濃縮物を得ることは,当業者であれば容易に為し得ることである」から進歩性を欠くとして,拒絶査定され,同拒絶査定は,同年12月14日,確定した。
(以上,前提事実(3)ア及びイ)
ウ 被告Aは,平成11年11月10日,米国において,日本特許出願に基づく優先権を主張して,米国特許1を出願し,平成14年11月26日登録された。
また,被告Aは,平成14年8月20日,米国において,米国特許1の分割出願として,米国特許2を出願し,平成16年4月6日登録された。米国特許2の内容は,日本特許出願と同じである。
(前提事実(4)ア及びイ)
エ 日本特許出願や米国特許1及び2に記載された臨床試験データは,いずれも,前記(1)ウの平成10年11月にE教授から報告を受けた熱水抽出方法によって製造された「バナバミン」を用いたヒト臨床試験のデータがそのまま記載されており,エタノール抽出方法を用いたエキスを使用したヒト臨床試験のデータではない。
被告Aは,このことを知っていた。
(被告A本人)
(3)  本件米国訴訟と米国特許2の無効
ア 被告らは,平成18年4月24日,カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所において,原告の米国子会社であるソフト・ジェルやケムコ社,原告の米国子会社の取引先であるアイオベイト社等に対し,米国における本件各商品の販売等が米国特許1及び2を侵害するとして,その販売等の差止め,損害賠償等を求める訴えを提起した(本件米国訴訟。甲13)。
イ 同裁判所は,米国特許1に基づく請求については平成19年7月13日,米国特許2に基づく請求については同年9月4日,米国特許2は実施可能要件を欠き,反衡平行為(Inequitable conduct)があったから,無効及び権利行使不可能であるとして,ソフト・ジェルらの略式判決の申立てを認め(甲31),平成20年1月10日,被告らの米国特許1及び2に基づく請求をいずれも棄却する旨の判決をした(甲34)。同判決は,同年9月10日,控訴棄却され(甲43),上告受理申立等がされることなく,間もなく確定した。
同判決には,争点効(コラテラル・エストッペル)があり,事実上対世効が認められている。
(前提事実(5)ア及びイ)
(4)  原告と被告会社の取引経緯
ア 本件各商品の商品化
原告,常磐及び被告会社は,平成10年12月ころ,本件発明に基づき,米国での販売用に,①「バナバアルコール抽出エキス1%」(本件1%品)及び②「バナバアルコール抽出エキス3%」(本件3%品)を商品化し,平成11年1月から,米国市場において,ソフト・ジェル等を介して,本件1%品の販売を開始した。
(前提事実(6)ア(ア))
イ 平成11年覚書の締結
原告と被告会社は,平成11年11月17日,平成11年覚書(乙37)を取り交わした。
同覚書の第2条第1項(物の流れ)には,「甲(原告)は乙(被告会社)より本原料を購入し株式会社常磐植物化学研究所に販売し,株式会社常磐植物化学研究所はこの本原料を溶媒抽出し液体又は,粉末(固体)の形態の本製品を作る。甲はこの本製品を購入するものとし,乙は株式会社常磐植物化学研究所とは直接の交流は行わない。」と定められており,原告が常磐から購入した本件各商品につき,いったん被告会社に転売し,被告会社から買い戻す形を採用する旨の記載はない。
また,第5条(協議事項)には,「この有効期間は締結の日から1年間とし,双方に異議がない場合は自動的に継続する。変更に際しては協議するものとする。」と定められている。
(前提事実(6)ア(イ))
ウ 売買差額の支払状況
原告は,常磐から購入した本件1%品の一部につき,帳簿上,いったん被告会社に転売し,被告会社から買い戻す形を採って,被告会社に対して,1kg当たり2万円の売買差額を支払っていた。
被告会社は,平成13年ころ,上場を目指して公認会計士の監査を受けるようになり,公認会計士から,上記原告からの本件1%品の購入と販売は,入荷及び出荷の事実のない売上げであり,利益に操作性があるように見える不明瞭な取引であり,1kg当たり2万円の売買差額を得る理由が明確ではないと指摘された。
そこで,原告と被告会社は,しばらくの間,上記迂回取引を自粛することとし,原告は,平成12年から平成13年に購入,輸出した本件1%品のうち,合計968.6kg分については迂回取引を行わず,被告会社に売買差額を支払わなかった。
(前提事実(6)イ(ウ),甲32,乙38,証人C,原告代表者)
エ 取引の停止
(ア) 原告は,別紙4取引経過一覧表1~62のとおり,被告会社から購入したバナバ葉を常磐に転売し,常磐が製造した本件1%品を買い取り,原告の米国子会社であるケムコ社等に輸出した。米国への輸出量は,平成13年がピークであり,平成14年に入ると,中国やインドなどから廉価な類似品が販売されたため,売上げが急激に減少し,原告は,大量の在庫を抱えるようになった。
また,原告のB社長は,平成14年2月にカリフォルニア州アナハイムで開催された博覧会で,被告Aが中国やインドの商社と接触している様子を見かけ,原告に対する背信行為であると考え,平成14年5月末を最後に,常磐から本件1%品を購入することを停止した。
(イ) 原告は,この時点で,本件1%品約3000kgの在庫を抱えており,平成17年1月19日時点でも,在庫として,2350kgを有していた。
平成17年2月以降,原告は,在庫を減らすために上記在庫品を米国子会社に輸出したが,米国子会社の在庫となったままである。
原告は,この本件1%品の在庫2350kg分について,被告会社に対して,上記ウの売買差額を支払っていない。
(ウ) A社長は,原告に対し,平成15年6月,取引高の激減を理由に,平成11年覚書の解消を申し入れた(乙99の5頁)。原告と被告会社は,遅くとも,平成15年11月25日,被告会社取締役会の承認の下で原告が所有していた被告会社の株式を他に売却した際に,平成11年覚書を合意解除した。この際,被告会社と原告との間で,売買差額の支払について話し合われたことを認めるに足りる証拠はない。
(以上,前提事実(6)ア(エ)及び(オ),甲32,乙29の2,44,99,原告代表者,被告A本人)
オ 3%品の製造
原告は,平成15年2月ころ,被告会社から依頼されて,試験的に本件3%品を製造することとし,原葉を1kg当たり1000円で購入し(乙50,51,54,55),本件3%品の製造を常磐に依頼した。そして,同年8月から12月にかけて,本件3%品合計500kg(別紙4取引経過一覧表の63~66)を常磐から購入し,内310kg(同63~65)は平成15年8月から9月にかけて,残り190kg(同66)は平成17年12月22日に,米国に輸出した。
原告は,被告会社に対し,この本件3%品合計500kgについての売買差額を支払っていない。
(前提事実(6)ア(エ)b,乙50,51,54,55,甲32,38,弁論の全趣旨)
カ 本件独占販売契約の締結
(ア) 事前交渉
a 被告Aは,平成16年10月ころ,原告に対して,共同で米国特許1及び2を行使することにより,他社の類似品を排除することができるとして,米国市場での本件各商品の販売事業を再開するよう申し入れた。
(甲21,22,33,38,乙91の1,2)
b 原告は,前記エのとおり,廉価な類似品が販売されたことから米国での本件各商品の売上げが伸びず,平成14年ころに被告会社からの購入を停止し,平成15年11月には平成11年覚書を合意解除し,被告会社の株式も他に売却したが,原告と被告会社が共同して米国特許1及び2,特に米国特許2を行使すれば,廉価な類似品を排除して市場を独占することができると考え,本件各商品の米国市場での販売を再開することとした。
(甲22,27の1及び2,甲33,38,乙60,63,証人C,原告代表者)
c 原告は,被告会社に対し,当時既に大量の在庫を抱えていたことから,在庫を販売した後でなければ本件独占販売契約に基づき被告会社から本件各商品を購入することができない旨を伝え,本件独占販売契約に原告の最低引取保証条項を入れることに難色を示した。また,原告は,米国特許1及び2による他社の排除が功を奏するまでに少なくとも1,2年はかかるから,3年の契約期間では短く,5年の契約期間を主張した(甲27の2,乙45,63)。
しかし,被告会社から,被告会社の株主に対する説明や投資家の新規投資を引き出すためには,契約書に最低引取保証条項を入れる必要があると言われたため,原告は,やむを得ず同条項を残すこととし,同契約書の草案に記載されていた商品の単価や最低引取数量が未達成の場合の違約金条項を削除し(甲28),さらに,後記のとおり本件独占販売契約書と一体のものとして,被告会社から原告にあてた本件確認書を差し入れさせ,当初の契約期間を5年とすることで,被告会社と合意した。
(甲22,27の2,28,33,乙45,63,原告代表者)
d 原告は,平成17年6月20日,被告会社の投資家26名にあてて,「Use-Techno Corp.への出資御願いの件」と題する書面(乙29の1の10頁及び11頁)を送付し,3億円の出資を依頼した。同書面には,その理由として,①原告が被告会社と平成14年にいったん取引を中断し,出資関係を清算したが,平成16年12月に被告会社の営業方針が原告の希望に添うことになったため,コロソリン酸1%含有バナバExtractの対米輸出を再開したこと,②平成17年中に10トン,2.5億円の購入予定を確立したこと,③コロソリン酸の事業を成功させるために,3億円の資金が必要であることが記載されている。また,「Use-Techno社の経営陣にGを非常勤役員として送り込み同社現営業スタッフの教育を弊社米国子会社SoftGel Technologies Inc.と共同で行うことにより経営の改革を推進し,大幅な営業成績の改善と,利益ある操業実現に専念させる。」と記載されていることは当事者間に争いがない。
(イ) 本件独占販売契約の締結
原告は,被告会社との間で,平成17年1月26日,前提事実(6)イ(イ)の内容を有する本件独占販売契約を締結し,米国内での本件各商品の販売を再開した。
同契約書(甲9の1)の第3条1項には,原告の最低引取保証が,同条3項には,引取数量達成率が年度毎に60%未満の場合,被告会社は原告に対し,90日間の予告期間をもって独占販売権を解除することができる旨が定められているが,商品の単価や違約金条項はない。
同日付けで被告会社から原告に差し入れられた本件確認書(甲9の2)には,「第3条3項の『数量達成率が年度毎に60%未満の場合は,甲は,乙に対し90日間の予告期間をもって独占販売権を解除することができるものとする。』につきまして,自動的に解除ということではなく,甲および乙の協力関係により目標達成に向けて努力するものとし,万一達成率が60%未満の場合は,その原因や課題について甲乙協議し,合意の上判断することとします。」と記載されている。
(前提事実(6)イ(ア)~(ウ))
(ウ) 本件独占販売契約後の取引
a 原告は,本件独占販売契約締結後,本件1%品を,別紙4取引経過一覧表の67~70のとおり,平成17年2月に300kg,同年3月に300kg,同年7月に500kgの合計1100kgを購入し,被告会社に対し,合計2887万5000円(消費税相当額を含む。)を支払った。
(前提事実(6)イ(エ))
b また,別紙4取引経過一覧表のとおり,平成18年1月以降,本件3%品(別紙4取引経過一覧表71~73)を常磐から直接合計600kg購入し,米国に輸出した。
原告は,平成17年11月30日,上記本件3%品200kg(同71)を直接常磐から購入し,被告会社に対して,1kg当たり1万円,合計210万円(消費税込み)の売買差額を前払いしたが,被告会社は,原告に対して,平成18年2月1日,210万円を返金した。
(被告会社を介さないで販売したこと及び原告が210万円を支払ったことと被告会社が同額を返金したことは,当事者間に争いがない。甲32,甲26,乙47の1,2,乙62の1~4)
c また,原告と被告会社は共同して,原告の米国子会社ソフト・ジェル名で,平成17年2月ころ,競合品を販売する業者に対して,米国特許1及び2等を侵害するとして,警告書(乙77の1)を送付した。
(甲33,乙77の1)
キ 本件独占販売契約の解消に至る経緯
(ア) 平成17年12月27日までの経緯
a 平成17年7月以降,原告は,販売不振を理由に,被告会社からバナバエキスを購入することを中止した。
(乙39,42の1~7,43の1~4,68)
b 同年9月3日,A社長は,原告のG専務取締役とCにあてて,本件各商品の購入を要請し,本件独占販売契約には90日前の解約条項があることに触れ,購入できないのであれば,早めの契約変更も可能である旨記載したファクシミリ(甲23)を送信した。
また,被告会社は,同月12日,原告のG専務にあてて,15%品も米国特許の範囲内であるから製造販売してもらいたい旨記載した書面(甲37)を送信した。
(甲23,37)
c これに対し,B社長は,被告会社に対し,同月6日,原告は在庫として4トン以上を抱えていること,現在の販売数量と警告相手の対応などから本件1%品の売上げがどの程度伸びるのかは疑問があること,被告側が提案する18%品は,臨床試験結果と米国特許により守られているのでなければ,注文できないこと,契約に基づき達成率から原告が独占販売権を委託する相手としてふさわしくないと判断するのであれば,他の販売会社を検討してよいこと,その場合でも原告が被告会社より購入した原葉で製造したエキス及び被告会社から購入したエキスについては特許への抵触を問題としないでほしいこと,原告の株式公開に向けての準備中の現状から,これ以上の購入ができないことを記載した書面(乙38)をファクシミリで送信した。
A社長は,同月19日,Cにあてて,原告の上記9月6日付けの書面は,本件独占販売契約を解消するという趣旨であるか否かを確認する旨のメール(乙32)を送信した。
(乙38,32)
d さらに,A社長は,同年10月1日,B社長に対し,購入できないのであれば,本件独占販売契約を原告側から解消するか否か,原告が在庫を販売する場合に被告会社に対してライセンス料として一定の金額を支払うか否かなどを問いただす内容の書面(乙39)を送付した。
これに対して,B社長は,同月25日,A社長に対し,本件3%品について,アイオベイト社との間で契約を締結できたこと,本件3%品200kgを発注する予定であること,今後は次第に売上げが改善する旨記載した書面(乙95)を送付した。
そして,前記カ(ウ)bのとおり,原告は,同年11月30日,被告会社に対し,本件3%品200kgの売買差額の前払いとして210万円を送金した。
(争いのない事実,乙39,95)
e しかし,その後も本件1%品の購入はなく,A社長は,同年12月24日,B社長にあてて,同月27日に面談をしたい旨申し入れるとともに,同月27日に確認したい内容をまとめた書面(乙40の2頁以降)を送付した。同書面には,「3.現契約解消に関する確認 ①以上の理由から現契約・・・だけは,御社のご都合で解約せざるを得なくなりました。先ず,この点を確認させていただきます。(お世話になりましたが残念な結果と相成りました。) ②契約数量は過大であったかもしれません。何れにせよ,B社長様ご指摘の通り,現契約・・・が一旦解消し,新たな関係を構築する準備を始めるべきと,考えます。」と記載されていた。
(乙40)
f 同年12月27日,A社長らは,B社長らと面談し,本件独占販売契約の継続が困難であることでは認識が一致した。
しかし,B社長が本件独占販売契約の合意解除に同意したことを認めるに足りる証拠はない。被告らの主張に沿う被告A本人尋問の結果(乙68,甲10を含む。)は,①それを裏付けるに足りる合意書等の提出がないこと,②A社長は,平成17年12月27日の前にもその後にも,原告からは解除しない,解除するのであれば被告会社からすべきである旨主張していること(乙38,甲11)から,採用することはできず,他にこの点を認めるに足りる証拠はない。
(乙68,原告代表者,被告A本人)
(イ) 平成17年12月27日以降の経緯
a 平成18年2月20日,A社長は,B社長に対し,本契約は平成17年12月27日に終了したこと,最低購入保証の履行を求めること,原告は米国での独占販売権も特許権に基づく販売権も有していないことなどを記載した書面(甲10)を送付した。
これに対し,B社長は,同月27日,A社長に対し,原告から本件独占販売契約を解消したことはない旨記載した書面(甲11)を送付した。
(甲10,11)
b そこで,A社長は,同年4月24日,B社長に対し,再度,本件独占販売契約は,平成17年12月27日をもって解消した旨を記載した書面(甲12)を送付し,同日,被告らは,本件米国訴訟を提起した。
(前提事実(5)ア,甲12)
c B社長は,同年5月1日,本件米国訴訟の提起に対して異議を述べるとともに(甲14),同年6月9日付けで原告代理人弁護士名義で,①本件独占販売契約は終了していないこと,②本件発明は,C,D,被告Aの共同発明であり,日本特許出願について特許を受ける権利の確認を,米国特許について,発明者の名義変更を求めること,③売掛金840万円の支払を請求することを内容とする内容証明郵便(甲15)を送付し,同年7月7日,東京地方裁判所において,本件訴訟(第1事件本訴の訴え変更前の請求)を提起した。
(甲14,15)
(ウ) 本件訴訟提起後の経緯
a 原告は,被告会社の株主全員に対し,平成18年11月1日ころ,「株式会社ユーステクノコーポレーションの法人,個人株主の皆様」と題する書面(乙29の1)を,同月27日ころ,「株式会社ユーステクノコーポレーションの法人,個人株主の皆様(№2)」と題する書面(乙33の1)をそれぞれ送付した。
(争いがない事実)
b 原告は,同年12月20日,被告会社の21名の株主と共同して,被告会社の役員全員の解任を求める臨時株主総会招集請求を行った(乙65)。
被告会社は,平成19年2月15日,臨時株主総会を開催したが,当日出席したのは,原告と他1名のみであり,出席株主の株式総数は1.8%にとどまり,法定の3%に達しなかったため,流会となった(乙66,67)。
(争いがない事実)
2  判断
(1)  詐欺による不法行為の成否及び損害額(争点2)について
ア 詐欺行為
(ア) 前記1(3)イのとおり,米国の裁判所は,米国特許2に基づく請求について,平成19年9月4日,実施可能要件を欠き,反衡平行為(Inequitable conduct)があったから,無効及び権利行使不可能であるとの判断を示し,その旨の判決は確定したところ,前記1(2)エ及び(4)カ(ア)のとおり,被告Aは,米国特許2の発明の詳細な説明に記載された唯一の実施例が実際には行われていないエタノール抽出エキスに基づく臨床試験の結果を記載したものであることを知りながら,原告にそのことを告げずに,米国特許1及び2の行使により廉価な類似品を排除できることを大きな理由にして,取引の再開を持ちかけたものであるから,被告Aには,少なくとも米国特許2に反衡平行為(Inequitable conduct)で権利行使不可能という瑕疵があることを知りながら,これを秘して,取引の再開を持ちかけた点で,故意による詐欺行為があったものといわざるを得ない。
(イ) 被告らは,熱水抽出エキスで効果があったものであればエタノール水溶液抽出エキスにおいても同等以上の効果が期待できることは,当業者において科学常識であり,被告Aは,この科学常識に基づいて,熱水抽出エキスによる臨床試験をすれば,日本においても米国においても特許が取得できると信じていたものであり,詐欺の故意はない旨主張する。
しかしながら,米国特許2が権利行使不可能と判断されたのは,ヒト臨床試験の結果実際に効果があったか否かではなく,重要な情報につき,明細書に故意に虚偽の記載をしたためであるところ,被告らの上記主張は,化学物質の用途発明において,効果を裏付ける唯一の実施例につき,故意に虚偽の記載をしたことを何ら否定するものではないから,理由がないことが明らかである。
イ 原告の誤信
(ア) 前記1(4)カ(ア)bの事実によれば,原告は,被告Aの詐欺行為により,米国特許2の権利行使不可能等の瑕疵はなく,米国市場で米国特許2を行使して他社商品を排除することができ,売上げを伸ばすことができるものと考えて,本件独占販売契約を締結したものと認められるから,その意思表示の要素に錯誤があると認められる。
(イ)a 被告らは,①本件独占販売契約の締結前に,原告には,米国特許2明細書を確認する機会があったこと,②原告らは,本件米国訴訟においてその瑕疵を自ら主張したこと,③原告は,平成10年熱水抽出臨床試験が熱水抽出エキスにより行われたものであることを熟知していたこと,④原告は,平成10年熱水抽出臨床試験の後,すぐに米国子会社においてヒト臨床試験を行っていることからすると,原告は,米国特許2明細書に記載されたエタノール抽出エキスでのヒト臨床試験が行われていないことを知っていた旨主張する。
しかし,①日本特許出願や米国特許1及び2の出願は,被告Aが行ったものであり(前記1(2)),原告がこれらに関与していないこと,②原告側が同明細書の記載内容を知ったのは,平成14年10月ころであると認められるところ(甲38),この頃には既にE教授らによるエタノール抽出エキスによるヒト臨床試験の結果が公表されていたものであるから(前提事実(2)ウ(イ)),出願の細かな経緯や特許の申請手続をよく知らない者であれば,明細書に記載された実施例等が出願後にされたものか否かを見抜けなかったとしても不思議ではないこと,③平成16年2月に医家向け医薬品のライセンス交渉の際や平成18年3月に本件独占販売契約の解除につき争いが生じた際に,原告が米国特許1及び2の有効性を検討した際にも,米国特許2の実施例1の記載が虚偽であることは無効理由として挙げられていないこと(乙90,91)からすると,原告は,本件独占販売契約の締結前に,米国特許2明細書に記載のある実施例1のヒト臨床試験の結果が,実際にはエタノール抽出エキスを用いたものではなく,E教授のヒト臨床試験の結果を流用した虚偽のものであることを知らなかったと認めるのが相当である。上記被告らの主張③の原告は,平成10年臨床試験が熱水抽出エキスにより行われたものであることを熟知していたことや④原告は,平成10年臨床試験の後,すぐに米国子会社においてヒト臨床試験を行っていることは,上記認定を左右するものではない。
よって,被告らの上記主張は,採用することができない。
b 被告らは,原告は,本件発明はC,D,被告Aの共同発明であると主張しており,米国特許2は冒認出願であると考えていたのであるから,米国特許2には瑕疵があり,無効や権利行使不可能をきたすことを知っていたから,原告には錯誤はない旨主張する。
しかし,原告が,平成16年2月ころに,米国特許1及び2の有効性を検討しているが,契約交渉のために検討したものにすぎないこと(乙91の1,2),原告は,平成18年3月に,常磐が先行する発明者となる可能性があることを知り,米国特許1及び2に無効理由があると考えて,本件米国訴訟及び本件訴訟において,冒認出願である旨の主張をしていること(乙90の1及び2)からすると,本件独占販売契約を締結した際に,米国特許1及び2に冒認出願の無効理由があると考えていたものとは認められない。
よって,被告らの上記主張は,採用することができない。
ウ 信義則違反
被告らは,詐欺による不法行為を理由とする原告の請求が信義則違反に該当する旨主張するが,本訴の当初,米国特許2が有効であることを前提とした主張をしていたからといって,その後に本件米国訴訟において出された判決に基づいて,訴えを変更して詐欺による不法行為を理由とする請求をすることが信義則に反するとはいえないし,本件独占販売契約締結の当初から本件独占販売契約に従った履行をする意思がなかったことを認めるに足りる証拠もないから,被告らの上記主張は,理由がない。
なお,原告が詐欺による不法行為の成否に対しても不法原因給付の主張をしていると解したとしても,原告は,米国特許2に瑕疵があることを知らなかったものであるから,不法原因給付の主張は,その前提を欠き,理由がない。
エ 損害
(ア) 本件各商品の購入費用
前記1(4)カ(ウ)aのとおり,原告は,本件独占販売契約締結後,本件1%品を合計1100kgを購入し,被告会社に対し,合計2887万5000円(消費税相当額を含む。)を支払っており,損益相殺等の主張はないから,原告は,被告Aの詐欺行為により同額の損害を被ったものと認められる。
(イ) 弁護士費用
弁論の全趣旨によれば,原告は,本件訴訟の提起及び追行を原告訴訟代理人外山弁護士らに委任し,相当額の弁護士費用を支払う旨約束したことが認められる。
本件事案の態様,認容額その他本件に顕れた諸般の事情を総合すると,原告が負担する弁護士費用のうち,上記被告らの不法行為と相当因果関係のある損害は,300万円であると認められる。
オ まとめ
したがって,被告Aは民法709条に基づき,被告会社は会社法350条に基づき,連帯して,合計3187万5000円及びこれに対する不法行為の後である平成20年1月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
(2)  本件独占販売契約の引取保証義務違反等について
ア 本件独占販売契約の引取保証義務違反を理由とする債務不履行(争点5)について
(ア) 上記(1)のとおり,原告は,被告Aの詐欺行為により本件独占販売契約を締結する旨の意思表示をしたものであるところ,原告が,被告会社に対し,平成19年12月7日,同契約を詐欺を理由に取り消す旨の意思表示をしたこと(前記第2,6(3)(原告の主張)イ(イ))は当事者間に争いがないから,本件独占販売契約は,遡及的に無効となる。
したがって,本件独占販売契約上の引取保証義務違反に基づく被告会社の請求は,その余について判断するまでもなく,理由がない。
(イ) 念のため,本件独占販売契約が有効であった場合について判断する。本件独占販売契約の第3条3項は,「上記の引き取り数量達成率が年度毎に60%未満の場合は,甲は,乙に対し90日間の予告期間をもって独占販売権を解除することができるものとする。」と,独占販売権の解除について定めているが,損害賠償については何ら触れていないこと(前記1(4)カ(イ)),本件確認書において,最低引取数量の60%に満たない場合であっても,自動的に解除するということではなく,双方で協力し目標達成に向けて努力するものとし,万一達成率が60%未満の場合は,その原因や課題について甲乙協議し,合意の上判断するという趣旨であることが確認されていること(前記1(4)カ(イ)),最低引取保証義務違反があった場合の違約金条項等が契約締結前の交渉で削除されたこと(前記1(4)カ(ア)c),本件独占販売契約締結当時,原告は約2350kgの在庫を抱えていて,米国特許1及び2による他社の排除が功を奏するまでの1,2年は最低引取保証の数量を実現することは困難な状況であったこと(前記1(4)エ及びカ(ア)c),当時,被告会社は,株主に対する説明や投資家に新規投資を勧誘するために,契約書に最低引取保証数量を明記する必要があったこと(前記1(4)カ(ア)c)などからすると,本件独占販売契約の第3条1項の最低引取保証に違反した場合,その効果として,本件確認書により加重された要件での本件独占販売契約又は独占販売権の解除は認められるが,損害賠償義務は負わないことが合意されていたものと認めるべきである。
イ 被告会社を介さない本件各商品を売却したことについて債務不履行又は不法行為の成否(争点6)について
(ア) 本件独占販売契約の債務不履行又は不法行為の成否
本件独占販売契約は,前記ア(ア)のとおり,詐欺取消しにより遡及的に無効であるから,原告は,本件独占販売契約に基づき被告会社から購入する義務はない。
また,原告が,本件独占販売契約に基づく購入義務を負わないから,原告が,被告会社を介さないで本件各商品を購入したことが,不法行為に当たらないことも明らかである。
よって,被告会社の本件独占販売契約の債務不履行又は不法行為に基づく請求は理由がない。
(イ) 平成11年覚書の債務不履行又は不法行為の成否
a 被告会社は,平成11年から平成17年1月に本件独占販売契約を締結するまでの取引について,①本件1%品968.6kgの売買差額,②平成15年に製造した本件3%品310kgの売買差額(別紙4取引経過一覧表63~65)を請求している。
確かに,原告は,平成11年以降,常磐から購入した本件1%品の一部について,いったん被告会社に転売し,被告会社から買い戻すという迂回取引を帳簿上することにより,被告会社に売買差額を支払っていたこと(前記1(4)ウ)からすると,売買差額が支払われていない分についても原告に平成11年覚書に基づく売買差額の支払義務があるのではないかと考えられないわけではない。
しかし,平成11年覚書には,原告が被告会社に売買差額を支払う旨の定めはなかったものである(前記1(4)イ)。しかも,被告会社は,平成13年ころ,上場を目指して公認会計士の監査を受けるようになり,公認会計士から,上記原告からの本件1%品の購入と販売は,入荷及び出荷の事実のない売上げであり,利益に操作性があるように見える不明瞭な取引であり,1kg当たり2万円の売買差額を得る理由が明確ではないと指摘されたため,原告と被告会社は,上記迂回取引を自粛していたものであり(前記1(4)ウ),平成15年11月に平成11年覚書を合意解除した際に,被告会社と原告との間で,売買差額の支払について話し合われたことを認めるに足りる証拠はない(前記1(4)エ(ウ))。これらの事実からすると,売買差額の支払約束はなく,恩恵的に支払っていたにすぎない旨の証拠(甲22,38,証人C,原告代表者)に反して,売買差額の支払約束があったものと認めることはできない。
b さらに,平成15年に製造した本件3%品310kgの売買差額(別紙4取引経過一覧表63~65)については,被告Aからの申入れにより,新たに,原告が被告会社から原葉を購入して試験的に製造して販売したものであり(前記1(4)オ),この本件3%品について,売買差額を支払う旨の合意があったとは認められない。
(ウ) まとめ
よって,被告会社を介さない本件各商品を売却したことについて債務不履行又は不法行為をいう被告会社の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
(3)  売掛金請求に対する相殺の抗弁の成否(争点1)について
ア 被告会社は,本件独占販売契約の引取保証義務違反を理由とする債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償債権による相殺を主張するが,前記(2)アのとおり,被告会社主張の債権の成立が認められないから,この相殺の抗弁は理由がない。
イ よって,前提事実(8)ウのとおり,被告会社は,原告に対し,売買代金合計840万円及びこれに対する平成18年5月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
(4)  不当訴訟(訴え変更後の請求)(争点8−2)について
ア 訴えの提起が不法行為となるのは,提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて訴えを提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限られる(最高裁昭和63年1月26日判決民集42巻1号1頁参照)。
イ 前記(1)のとおり,原告の第1事件本訴中の損害賠償請求等(訴え変更後)の主位的請求は,弁護士費用の一部を除き理由があるので,事実的,法律的根拠を欠くものであったと認めることは到底できない。
ウ よって,被告会社の不当訴訟(訴え変更後の請求)の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
(5)  過誤払金返還請求に対する相殺の抗弁の成否(争点4)について
ア 相殺の主張(信用毀損の不法行為の成否)(争点7)について
(ア) 平成17年6月20日付け投資家への文書送付行為
a 原告は,平成17年6月20日,被告会社の投資家26社に対して,「Use-Techno Corp.への出資御願いの件」と題する書面(乙29の1の10頁及び11頁)を送付し,同書面には,「Use Techno社の経営陣にGを非常勤役員として送り込み同社現営業スタッフの教育を弊社米国子会社SoftGel Technologies Inc.と共同で行うことにより経営の改革を推進し,大幅な営業成績の改善と,利益ある操業実現に専念させる。」との記載があること(第2の6(7)被告会社の主張ア(ア))は,当事者間に争いがない。
b 被告会社は,原告の取締役を被告会社の取締役として送り込むことはまだ確定的な事実ではなかったものであり,原告の同文書送付は被告会社の信用や名誉を毀損する不法行為である旨主張する。
しかしながら,同文書(乙29の1の10頁及び11頁)全体の趣旨は,原告から被告会社への協力の一環として,「Use Techno社の経営陣にGを非常勤役員として送り込み同社現営業スタッフの教育を弊社米国子会社SoftGel Technologies Inc.と共同で行うことにより経営の改革を推進し,大幅な営業成績の改善と,利益ある操業実現に専念させる。」ことを述べるが,これが被告会社と合意に至ったとまで述べているものではなく,しかも,「以上を通じて,Use Techno社を将来弊社の関係会社として位置づけ,相互に緊密な関係を樹立することにより新規投資家及び現在株主の皆様の期待に応えたく考えます。貴社による新規投資を通じて,弊社及びUse Techno社の新たな出発に御援助頂きたく,ここに御願い申し上げる次第であります。」(同11頁下から5行~2行)と,原告の出資や協力内容を説明して,新規投資を誘おうとするものであるから,虚偽の事実を述べるものと認めることはできないし,同書面全体として,被告会社の信用や名誉を毀損するものと認めることもできない。
c したがって,平成17年6月20日付け投資家への文書送付行為を理由とする相殺の抗弁は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
(イ) 平成18年11月の株主への文書送付行為
a 原告が被告会社の株主全員に対し,平成18年11月1日ころに「株式会社ユーステクノコーポレーションの法人,個人株主の皆様」と題する書面(乙29の1)を,同月27日ころに「株式会社ユーステクノコーポレーションの法人,個人株主の皆様(№2)」と題する書面(乙33の1)をそれぞれ送付したこと,並びにその記載内容(第2の6(7)被告会社の主張イ(ア))は,当事者間に争いがない。
b ①「『(注 平成17年6月ころ)A社長が社長職を退任して,相談役の閑職に就き,一切経営に干渉しない』ことを基本とするものでした。彼自身に対し,当時の同社役員からも同様の要求が為され,最終的にA氏も弊社の条件に同意しました。」(乙29の1の1頁下から10行~7行)との記載部分のうち,「最終的に同意した」という部分については,被告会社自身,「最終的に同意した」以外の部分の真実性を争っていないし,「株式会社ユーステクノコーポレーションの法人,個人株主の皆様」と題する書面(乙29の1)も,「・・・更に驚いたことには,A氏自身が同意した社長退任を撤回し,それまでと同様,同氏を中心に経営を進めることになり,A氏に裏切られた結果となりました。」(1頁下から3行~1行)と記載しているし,本件独占販売契約の締結の前後には,原告との交渉にFらが仲介者的に関与していたものであるから(甲21,28,弁論の全趣旨),原告が被告Aが社長職を退任し,経営に干渉しないことに同意したと信じたことには,少なくとも相当の理由があったと認められる。
c ②「この原因は,私の観るところ,A社長の経営思想を欠いた経営感覚にあります。」(乙29の1の4頁7行),「・・・ハッキリ言えることは『A氏は人格的,能力的に果たして実業家として適正な人物かどうか,おおいに疑問』ということです。」(同7頁最終行~8頁2行),「・・・A氏は狂人としか思えません」(同8頁下から5行~4行),「・・・過去,投資家より集めた7−8億円もの資金は全く無駄に浪費され,」(同8頁6行)の部分は,被告会社の経営者としての被告Aの経営手腕について批判的な意見を述べるものであり,その前提となる被告会社の本件各商品の米国における売上げ,本件米国訴訟を提起したこと,被告会社の経営状態が悪化していたこと(甲21,22,32,33,乙62の1,3,97,弁論の全趣旨)等の事実に基づく意見であること,本件各書面は,「早急にUTC臨時株主総会を開催し下記の件について皆様と御相談したく考えております。(1) A社長の解任…」「尚,前述した UTC臨時株主総会の早期開催と,そこで必要事項を討議,決議するという私の考えに御賛同頂ける場合,同封した返信用葉書に同意の旨を記入のうえ,弊社常務取締役管理本部長…まで御連絡頂きたく御願い申し上げます。」(乙29の1),「私が本年11月1日付で皆様に御送りした掲題の書状のなかの“株式会社ユーステクノコーポレーション(UTC)の臨時株主総会を早急に開催すべき”との主張に対して多数の方々から御賛同を戴き,その結果臨時株主総会開催請求権確立に必要な同社発行済株式総数の3%以上を確保することが出来ましたので,弊社としては,今後然るべき手続きを経て出来るだけ早い時期に臨時株主総会開催をUTCに請求する考えです。」(乙33の1)と記載されており,被告会社の株主である原告が,少数株主権を行使して,被告会社の代表者である被告Aの解任等を議題とする臨時株主総会を招集するため,原告に賛同する株主を募るために送付された書面であると認められることからすると,辛うじて公平な論評の範囲内にあるものと認められる。
d ③「当社が得た情報によれば,中国及びインドの商社はA氏に依って組織され,彼等にはパテントの心配をすることなく,インド品 及び中国品を弊社の需要家に売り込むよう,販売活動を行いました。」(乙29の1の4頁17行~19行)の部分は,受け手をして,A社長が信用の置けない人物であり,ひいては被告会社が信用の置けない会社であると信じさせるものと認められる。
そして,この点の真実性又は相当性を認めるに足りる的確な証拠の提出はなく,株主同士の情報交換であることを理由に正当化することもできない。
よって,原告は,これにより被告会社に生じた信用毀損の損害を賠償する義務がある。
e ④「『・・・両社に無断で,必要データを入手し,勝手にパテント申請した』というものです。」(乙29の1の6頁下から14行~13行),「・・・必要データについては常磐植物化学研究所・弊社が所有する資料を無断盗用してカモフラージュしたものです。」(同6頁下から11行~10行),「A氏の盗用」(同6頁下から4行),「・・・率直に申し上げれば 『UTCとA氏は他社の製造方法を盗用し特許を成立させた』 ということです。」(乙33の1の2頁12行~13行)のうち,乙29の1中の記載部分は,「弊社(注 原告)の主張は,」(6頁下から16行)及び「というものです。」(6頁下から13行)とあるように,係属中の訴訟における原告の主張内容であることが明示されていることから,被告会社の信用又は名誉を毀損するものとは認められない。
乙33の1中の記載部分は,それだけを取り出して見れば,原告の主張内容とは受け取られないおそれがあるが,乙33の1自身,「さて,先日皆様あて御送りした書状のなかで述べた,弊社がUTCと現在係争中の下記2点について,皆様の誤解,疑念を招かぬよう再度詳しく説明させて頂きたく思います。」(1頁下から11行~10行)というものであるから,係属中の訴訟における原告の主張内容であると受け取られ,被告会社の信用又は名誉を毀損するものとは認められない。
また,被告Aが単独で特許出願することについて,常磐や原告会社の了解を得ていないことは事実であり(甲7,22),前記のとおり,本件各書面は,株主権を行使するために株主に対して情報を提供するものであることからしても,同記載部分について違法性があるとは認められない。
f ⑤アイオベイト社との和解に関する記載(乙29の1の6頁7行~13行)については,守秘義務違反自体は原告の責任を基礎付けるものではないし,恣意的に解釈しているとの点についても,被告会社は,それぞれの立場の違いによる見方の相違を超え,真実と異なる記述があるとまで主張しているものではないから,この点についての被告会社の主張は理由がない。
g ⑥「・・・上記基本契約書は,名称はともあれ,契約書としては認識しておらず,実態としては単なる目標数量としか認識しておりません。」(乙33の1の3頁下から14行~13行)は,その記載内容自体から,訴訟の一方当事者である原告の主張を述べているにすぎないと受け取られるものであるから,被告会社の信用又は名誉を毀損するものとは認められない。
h 損害額
(a) 上記記載内容,同書面の配付先その他一切の事情を考慮すれば,上記dの信用毀損行為により被告会社に生じた損害を30万円と認めるのが相当である。
(乙99)
さらに,上記30万円に対する平成18年11月28日から平成19年1月31日までの年5分の割合による遅延損害金は,2671円となる。
30万円×0.05×65/365=2671円
(b) 相殺の意思表示(前記第2,6(4)(被告会社の主張)ウ)は,当事者間に争いがない。
(c) そうすると,本件過誤払金返還請求は,249万3161円及びこれに対する平成19年2月2日から支払済みまで年6分の割合による利息又は遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
279万5832円−30万2671円=249万3161円
(ウ) 臨時株主総会の招集について
a 原告は,平成18年12月20日,被告会社の21名の株主と共同して,被告会社の役員全員の解任を求める臨時株主総会招集請求を行い,被告会社は,平成19年2月15日,臨時株主総会を開催したが,当日出席したのは,原告と他1名のみであり,出席株主の株式総数は1.8%にとどまり,法定の3%に達しなかったため,流会となったこと(第2の6(7)被告会社の主張ウ(ア))は,当事者間に争いがない。
b 被告会社は,原告の上記臨時株主総会の招集は,本件米国訴訟を有利に進めることを目的とする不当なものであり,株主権の濫用である旨主張するが,これを裏付けるに足りる的確な証拠はない。かえって,当時,被告会社の経営状態が悪化していたこと(乙62の1,3,弁論の全趣旨)からすると,経営者の解任等を目的として株主が株主総会を招集することは,法律が少数株主に認めた株主権の行使として,何ら違法なものではなく,同株主総会が,結果として,開催のために必要な法定の株式数を有する株主の出席がなかったために流会になったからといって,原告の少数株主としての権利行使が不当な目的に基づくものであったと認めることはできない。
よって,臨時株主総会の招集を理由とする相殺の抗弁は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
イ 相殺の主張(不当訴訟−訴え変更前の請求)(争点8−1)について
(ア) 被告会社は,本件米国訴訟の提起を理由とする訴え変更前の原告の逸失利益の損害賠償請求(前提事実(7)ア(エ)b)は,①本件米国訴訟を牽制し,米国子会社を援護し,あるいは本件米国訴訟のための資料を得るために提起したものである。②米国特許1及び2に無効理由があれば,原告は本件各商品を販売できなかったのであるから,本件米国訴訟を提起されたことによる逸失利益の損害が生じるはずがない。③原告は,米国特許1及び2が有効であることを前提に本件各商品を販売していたのであるから,その特許権に基づいて訴訟が提起されたからといって,米国特許権1及び2の無効を主張することは,クリーンハンドの原則に違反するから,公序良俗違反であり,不法行為に該当する旨主張する。
しかし,①原告が本件米国訴訟を牽制等するために本件訴訟を提起したことを裏付けるに足りる証拠はなく,②訴え変更前の原告の逸失利益の損害賠償請求は,米国特許に無効理由等はなく,したがって本件独占販売契約が有効に存続していることを前提とする請求であったものであり(前提事実(7)ア(エ)b),しかも,前記(1)イのとおり,原告が米国特許1及び2に無効理由等があることを知っていたと認めることはできないものであるから,事実的,法律的根拠を欠くものと認めることはできない。③また,従前特許権が有効であることを前提に販売をしていたからといって,その後に被告らから本件米国訴訟を提起された後,原告が対抗手段として米国特許権の無効を主張することが信義則に反するとはいえない。
(イ) よって,訴え変更前の請求が不当訴訟であることを理由とする相殺の抗弁は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
第4  結論
よって,原告の第1事件本訴請求及び第2事件請求は,主文第1項(1)及び(2)並びに第2項(1)掲記の限度で理由があるが,その余の請求は理由がないから棄却し,被告の反訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし,原告勝訴部分のうち主文掲記の限度で仮執行宣言を付するのが相当であると認め,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 市川正巳 裁判官 大竹優子 裁判官 中村恭)
*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。