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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(230)平成23年 4月21日 東京地裁 平21(ワ)11680号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(230)平成23年 4月21日 東京地裁 平21(ワ)11680号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成23年 4月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)11680号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2011WLJPCA04218002

要旨
◆脅迫罪で起訴され無罪となった原告が、被告に対し、被告が原告から脅迫されたとして告訴し、捜査及び公判においてもその旨供述したため、原告は長期間身柄を拘束されたとして、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案において、原告、被告等が行った共同事業の経緯、被告の供述内容、供述経過等に照らせば、被告は、上記告訴及び供述の内容が虚偽であることを認識しながら、上記告訴等に及んだと認められるとして被告の不法行為責任を肯定し、休業損害及び慰謝料から刑事補償法に基づく補償金を控除した額を損害額と認め、原告の請求を一部認容した事例

参照条文
民法709条
民法710条

裁判年月日  平成23年 4月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)11680号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2011WLJPCA04218002

川崎市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 高野隆
同 趙誠峰
同訴訟復代理人弁護士 小松圭介
東京都大田区〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 長家広明
同 髙田智美

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,653万3333円及びこれに対する平成18年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の,その余を被告の負担とする。
4  この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,原告に対し,金2039万円及びこれに対する平成18年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  争いのない事実等(末尾に証拠等の記載のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)  当事者
ア 原告は,平成17年2月当時,運送業及び中古車販売業を営む有限会社aコーポレーション(同年6月6日に株式会社に組織変更。以下,組織変更の前後を問わず,「aコーポレーション」という。)を実質的に経営しており,aコーポレーションの代表取締役には,名目上,原告の妻であったA(以下「A」という。)を就任させていた。
原告は,かつて暴力団に所属していたことがあり,平成13年7月5日,横浜地方裁判所で,恐喝罪により,懲役3年,執行猶予5年の有罪判決(以下「判決①」という。)の言渡しを受け,平成14年6月26日,さいたま地方裁判所で,傷害の罪により,懲役1年,執行猶予5年(保護観察付き)の有罪判決(以下「判決②」という。)の言渡しを受けていた(甲36,弁論の全趣旨)。
イ 被告は,平成17年2月当時,被告の父親が代表取締役,被告が取締役にそれぞれ就任していた有限会社b(以下「有限会社b」という。)を実質的に経営していたが,有限会社bは,自動車板金修理業のフランチャイズチェーンを営むc倶楽部株式会社(以下「c倶楽部」という。)の経営母体であったdシステム株式会社(以下「dシステム」という。)及びdシステムの子会社であり,インターネットを通じて中古自動車の会員制オークションを運営する株式会社e(以下「e社」という。)から,債権調査業務の委託を受けており,被告は,その関係で,dシステムの経営管理部顧問及びe社の債権管理部長の肩書を与えられていた。
(2)  平成17年10月8日までの経緯
ア e社は,中古車販売業者を対象として,「○○ネット」というインターネットを介して全国各地の中古車のオークションに参加し,入札及び落札することを可能とし,その中古車の仕入れ代金について,金融機関(株式会社スルガ銀行)からの融資を仲介するなどの会員制サービスを展開しており,e社の親会社であるdシステムが,オークションによる中古車販売業の最大手である株式会社USS(以下「USS」という。)と提携していたことから,「○○ネット」の会員は,USSの運営するオークションに参加することができた。
しかし,平成17年ころ,dシステムとUSSとの上記提携関係が解消されることに伴い,「○○ネット」の会員は「○○ネット」を通じてUSSのオークションに参加できないこととなり,「○○ネット」の会員がUSSの運営するオークションに参加するには,新たにUSSの会員になることが必要となった。そこで,被告は,「○○ネット」の会員であったaコーポレーションへの説明のため,同年2月14日,原告と面談した(甲21,甲23,乙10,弁論の全趣旨)。
イ その後,被告は,平成17年3月ころから,aコーポレーション又は原告に対して資金提供をするようになり,aコーポレーションに対し,株式会社b名義で,同月28日に200万円,同月31日に300万円,同年4月19日に100万円の合計600万円(以下「本件600万円」という。)を川崎信用金庫の原告名義の総合口座に振り込み,同じく株式会社b名義で,埼玉縣信用金庫岩槻支店のaコーポレーション代表取締役A名義の普通預金口座に同年5月10日に500万円を2回にわたって合計1000万円(以下「本件1000万円」という。)を振り込んだ。さらに,被告は,被告個人名義で,同年6月24日,同月30日及び同年7月29日に各500万円の合計1500万円を株式会社みずほ銀行越谷支店のaコーポレーション代表取締役A名義の普通預金口座に振り込み,同年8月4日,同支店のaコーポレーション車両販売部名義の預金口座に500万円(以下,上記1500万円と併せて「本件2000万円」といい,本件600万円,本件1000万円及び本件2000万円を併せて「本件振込金」という。)を振り込んだ(乙2)。
そして,原告と被告は,共同で事業を行うことを合意し,被告は,同年7月7日,原告との共同事業を行う会社として,有限会社bを株式会社に組織変更の上,商号を株式会社fトラスト(以下「fトラスト」という。)に変更し,原告がfトラストの代表取締役に就任した(甲4)。
ウ 原告と被告は,最初の共同事業として豚しゃぶ店を開店することとし,fトラストは,平成17年9月13日付けで,東京都世田谷区〈以下省略〉所在のマンション「gマンション」1階所在20.19坪につき,店舗(以下「本件店舗」という。)とする目的で賃貸借契約を締結し,その際,aコーポレーションがfトラストの連帯保証人となり(乙7),また,fトラストは,同年10月初旬ころ,内装工事業者に本件店舗の施工を発注した(甲11から14まで)。本件店舗の設計費及び内装工事費は1000万円であり,着手金として430万円の支払を要したことから,被告がその一部の250万円を同月11日までに用意することとなった。
エ 原告と被告は,平成17年10月7日午前10時,共同事業について打合せをする予定となっていたが,被告がこれを順次延期したことから,原告と被告が東京都世田谷区〈以下省略〉所在のfトラストの事務所(以下「本件事務所」という。)で会ったのは同月8日午前2時30分ころであり,別れたのは同日午前7時ころであった。
(3)  原告が脅迫の罪で起訴された経緯等
ア 被告は,平成17年10月16日,蒲田警察署に,原告が被告に対し,同月8日未明,本件事務所において,「お前の頭に鉛ダマぶちこんだろか。奈落の底まで引きずり下ろしたる。地獄を見せたる。弁護士なんか何でもない。逃げ込むなら警察に駆け込んだ方がええぞ。俺たちは甘くねえぞ。今はヤクザじゃないが,電話1本30秒でいつでもヤクザに戻れる。」などと怒号し,250万円を要求した旨申告する内容の被害届を提出して恐喝未遂罪で告訴し(以下,上記告訴を「本件告訴」という。),捜査段階においても,警察官や検察官に対して同趣旨の供述をした。
イ 原告は,平成17年11月1日,本件告訴に係る恐喝未遂罪の被疑事実で逮捕され,同月4日,同被疑事実により勾留され,同月22日,身柄勾留のまま,脅迫罪で東京地方裁判所に起訴された(以下,原告が上記脅迫罪で起訴された事件を「本件事件」という。)。本件事件の第2回公判は平成18年1月24日,第3回公判は同年2月7日,第4回公判は同年3月2日にそれぞれ開かれ,被告は,これらの各公判期日の証人尋問において,原告が被告に対して上記言辞を用いて脅迫をした旨供述した(以下,本件事件の捜査段階及び公判廷において被告がした供述を「本件供述」という。)。
ウ 東京地方裁判所は,平成18年6月19日,東京地方検察庁の請求に基づき,原告に対する判決①及び判決②のそれぞれの執行猶予の取消決定をした。原告は,上記取消決定に対し即時抗告をしたが,東京高等裁判所は,同月29日に上記即時抗告を棄却したため,原告は,最高裁判所に対し,特別抗告をしたが,最高裁判所は,同年7月19日,上記特別抗告を棄却した。判決①及び判決②の各刑については,同月14日に執行指揮がされ,同日から判決①の刑の執行が開始された(甲36)。
エ 東京地方裁判所は,平成19年3月27日,本件事件につき,公訴事実の存在について,なお合理的な疑いを容れる余地があり,犯罪の証明がなかったことに帰することを理由に,原告を無罪とするとの判決を言い渡し,上記無罪判決は,同年4月11日,控訴期間の経過により確定した(甲7,甲8)。なお,東京地方検察庁は,同月10日,原告に対する判決①に基づく刑の執行を停止し,原告は,同日釈放され,同月20日,判決①及び判決②の刑の執行が免除された(甲9,甲10)。
(4)  刑事補償
原告は,平成19年7月17日,東京地方裁判所から,原告に対して刑事補償法に基づく補償金として640万円を交付する旨の決定を受け,上記決定に基づいて上記金員の支払を受けた。
2  原告は,被告が虚偽の内容の本件告訴及び本件供述をしたことにより,平成17年11月1日から平成19年4月10日まで合計526日にわたって身柄を拘束されたと主張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告に対し,2039万円及びこれに対する本件事件の公判廷において被告が最後に本件供述をした日であり,最後の不法行為の日となる平成18年3月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。
3  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  被告による本件告訴及び本件供述が虚偽の内容のものであり,原告に対する不法行為を構成するか(争点(1))
(原告の主張)
ア 本件告訴及び本件供述の虚偽性
原告は,被告との共同事業である本件店舗の開業に向けて準備しており,本件店舗の内装工事費の着手金430万円を平成17年10月11日までに設計事務所に支払わなければならず,被告がそのうち250万円を用意することとなっていたが,被告は,同日までに上記250万円を用意することができなくなった。
原告と被告は,同月8日午前2時30分ころから,本件事務所において話し合い,原告は,これまでも被告に約束をほごにされるなどして振り回されてきたことから,これ以上被告と共同事業を続けていくことはできないと思い,被告に対し,fトラストの代表取締役を辞め,共同事業を中止させてほしい旨告げた。しかし,被告は,原告に対し,共同事業の中止を思いとどまるよう説得し始め,暴力団員Bの名前を出したり,「謝り方が足りないのかな。」などと言って土下座をしたりした。そのため,原告は,結局,本件店舗の立ち上げまではfトラストの代表取締役を続け,被告との共同事業を進めることにし,上記着手金430万円の支払を同月17日に延ばし,被告がそれまでに250万円を用意することを確認して被告と別れたのであり,その過程において原告が被告に対して脅迫的言辞を用いて脅迫したことはなく,本件告訴及び本件供述の内容は虚偽である。
イ 被告の虚偽の内容の告訴及び供述をする動機の存在
被告は,本件告訴当時,被告が実質的にh社(以下「h社」という。)の屋号で経営している会社(商業登記簿上の商号は,株式会社h1社[以下「h1社」という。])の役員に対する給与の支払が滞ったり,上記役員から借り入れた金員の返済が滞ったりしており,その責任を問われていたことから,被告がh社の資金を原告との共同事業の資金に流用していることについて横領罪や背任罪で刑事告訴されるおそれがあったのであるから,これを免れるため,虚偽の内容の告訴及び供述をする動機があった。
(被告の主張)
原告の上記主張を争う。
ア 本件告訴及び本件供述の真実性
被告は,平成17年9月26日,原告から,本件店舗の内装工事費の着手金のうちの250万円を同月末日までに用意するよう要求されたが,同日までにこれを用意することができなかった。
被告は,上記250万円を用意するため,同年10月7日,友人に借金を申し込むなどしていたが,そのうちに原告との共同事業を思い直し,これ以上,原告に言われるがままに資金を提供することはできないと考えるに至り,原告に対し,同月11日に上記250万円を渡すことができなくなったと電話で伝えたところ,原告は,被告に対し,「fトラストの事業は,豚しゃぶ店も含めて全部やめる。やめるけど,その何倍もの重いものを背負わせてやる。」と強い口調で言い,被告と直接会って話すことを申し入れたので,被告は,これを承諾した。
被告は,同月8日午前2時ころ,本件事務所に入り,原告と共同事業の件について話し合った。その際,被告は,原告が共同事業を止めると言い出したため,これまでに原告やaコーポレーションに貸し付けた本件振込金を含む金員を返してほしい旨告げたところ,原告は,途端に,被告に対し,「そっちから見て貸したことになっている金は全部返す。金は返すが,その何倍もの重いものを背負わせてやる。共同事業を解消したら,おまえは敵だ。日本一の敵だ。」などと言い出し,脅迫的な言葉を浴びせ続け,h社の資金以外にも被告の裁量で使えるお金があるだろう,約束を守るためならその金を使えなどと申し向け,同月11日に支払う予定の本件店舗の内装工事の着手金250万円を用意させようとした。また,原告は,被告に対し,本件事務所や本件店舗の鍵を今日は返せないと言ったので,被告は,鍵を返してもらうために再び原告と会わなければならないので,絶望的な気持ちになった。
被告は,原告と3時間ほど話した後,いったん,本件事務所を出て車に乗り込んだが,原告が被告に対して「このまま帰るなら事務所をめちゃくちゃにしてやる。」と大声で怒鳴ったため,再び本件事務所に戻り,原告と話し合った。その際,被告は,dシステムの経営管理部顧問又はe社の債権管理部長として,共同事業の話とは別に,aコーポレーションが「○○ネット」を利用して中古車を購入した際に中古車購入代金として融資を受けた417万円(以下「本件未精算金」という。)を返済してもらわなければならなかったことから,原告に対し,「共同事業はやめるとしても,e社から借りている417万円の返済はしてもらえるんですよね。」と恐る恐る尋ねたところ,原告は,さらに激高し,「あんた面白いこと言うね。」,「お前の頭に鉛ダマぶち込んだろか。」,「地獄を見せたる。」,「車を亀戸の事務所前に並べたる。」などと怒鳴り続けたため,被告は土下座をして謝罪したが,原告の怒りは収まらず,被告は,その場から解放されたい一心で,やむを得ず,同月14日までに上記250万円を準備することを約し,同月8日午前7時ころに本件事務所を出て,原告から逃れたのであり,本件告訴及び本件供述の内容は,真実である。
イ 被告の虚偽の内容の告訴及び供述をする動機の不存在
被告がh社の資金を原告との共同事業の資金に使っていたことは,h社の役員も知っており,被告は,役員らに対して安定的に給料を支払っていたため,被告によるh社の資金の利用が特段問題になることはなかった。もっとも,本件事件の公判当時,h社役員の退任を巡り,役員からのh社の借入金の弁済が問題となり,被告が原告に資金を提供したことが交渉材料に利用される可能性が生じた。そこで,被告が本件事件の担当検事にそのことを話したところ,同検事が,被告に対し,本件振込金の出所を明らかにしたくないのであれば,その点に関する質問に対しては証言を拒絶して良いと助言したため,被告は,本件振込金に関する質問がされたら,刑事訴追を受けるおそれがあるとの理由で証言を拒絶しなければならないと思い込み,本件事件の証人尋問において,証言拒絶をしたにすぎず,被告としては,本件告訴及び本件供述当時,被告がh社の役員から横領や背任の罪で刑事告訴を受ける可能性はないと考えていたものであり,被告に虚偽の告訴や供述をする動機はなかった。
(2)  原告の損害(争点(2))
(原告の主張)
ア 休業損害
原告は,被告の本件告訴を原因として逮捕された当時,被告との共同事業の準備のために,aコーポレーションの経営から退き,aコーポレーションから報酬を受けていなかったが,それまではaコーポレーションから毎月60万円以上の役員報酬を受けていた。原告は,被告による本件告訴及び本件供述により,逮捕勾留され,526日間にわたって身柄を拘束されたのであるから,原告の休業損害は,1039万円である。
イ 慰謝料
原告は,被告の本件告訴等により,526日間,身柄を拘束され,その間,収入が得られなかったため,妻子の生活のために自宅マンションを売却せざるを得ず,妻Aとも離婚し,3人の子供とも別居することとなった。また,原告は,拘禁によるストレスから体重120kgあったのが,63kgまで減少したほか,本件告訴により逮捕された当時患っていた白内障についても,釈放後まで手術を受けられなくなったことから症状が悪化し,視力が低下した。このように,本件告訴及び本件供述を原因とする身柄の拘束により原告に生じた精神的苦痛は想像を絶するものであり,それに対する慰謝料としては,1000万円を下らない。
(被告の主張)
原告の上記主張を争う。
ア 休業損害
原告は,平成17年5月16日にaコーポレーションの代表者がAからC(以下「C」という。)に変更された後,aコーポレーションの経営から手を引いている上,原告が本件告訴に係る恐喝未遂罪の被疑事実で逮捕された当時,aコーポレーションは,多額の債務を負っており,非常に厳しい経営状態であったのであるから,本件告訴及び本件供述により身柄拘束されなかったとしても,原告がaコーポレーションから毎月60万円の役員報酬の支払を受けられていたはずはない。
イ 慰謝料
上記のとおり,aコーポレーションは,経営状態が厳しかったのであり,原告が自宅マンションを売却したのは,aコーポレーションの負債の返済資金を捻出するためであって,原告が身柄を拘束されたこととは無関係である。
また,原告は,恐喝等の被疑事実により2回逮捕され,身柄を拘束された経験があるから,身柄拘束への対応も可能であったはずであり,そのストレスにより食欲が不振になったということは疑わしい上,白内障についても,釈放後まで手術を受けられなかったことにより悪化した程度が明らかでない。
第3  当裁判所の判断
1  本件告訴及び本件供述が虚偽の内容のものであり,原告に対する不法行為を構成するか(争点(1))について
(1)  前記第2の1の争いのない事実等,証拠(甲2,甲4,甲7,甲11から14まで,甲16,甲20から31まで,甲37,甲38,乙3,乙8,乙9の1及び2,乙10から12まで[相反する部分を除く。],乙18,乙20から22まで,乙26,原告本人,被告本人[相反する部分を除く。])及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 平成17年10月7日の前までの経緯
(ア) 被告は,平成17年2月当時,被告の父親が代表取締役,被告が取締役にそれぞれ就任していた有限会社bを実質的に経営していたが,有限会社bは,dシステム及びその子会社であるe社やc倶楽部から債権調査業務の委託を受けており,被告は,その関係で,dシステムの経営管理部顧問及びe社の債権管理部長の肩書を与えられており,その主たる業務は,「○○ネット」を通じて中古車を購入した中古車販売業者に対する債権の回収業務であった。
(イ) 被告は,平成16年ころ,印刷会社でカタログやカレンダーの企画を担当していたD(以下「D」という。),広告代理店を営んでいたE(以下「E」という。)及び広告業界の仕事をしていたF(以下「F」という。)に対し,c倶楽部の広告の仕事や株式会社日本航空(当時)の広告や旅行ガイドブックの製作を行う会社としてh社を立ち上げること,h社の代表取締役としてDを就任させ,E及びFを役員に就任させることを提案し,D,E及びFはこれに応じた。そして,被告は,h社とするために,同年9月30日,株式会社ユーコンからh1社の全株式を買い取った。そして,同年から平成17年夏ころまでに,h社のために将来的には出資金に切り替える予定で,Dから約500万円,Dの母であるGから800万円,Eから140万円,Fから約300万円程度の提供を受けていた(以下,これらの金員を併せて「本件金員」という。)。しかし,h1社の当時の役員の辞任届がそろわないなどしたため,被告は,h1社の商号及び役員の登記の変更手続を行わないまま,h社という屋号を用いて営業を開始した。Dは,有限会社bの行う調査業務も担当していた。
(ウ) e社は,中古車販売業者を対象として,「○○ネット」というインターネットを介して全国各地の中古車オークションに参加し,入札及び落札することを可能とし,その中古車の仕入代金について,金融機関(株式会社スルガ銀行)からの融資を仲介するなどの会員制サービスを展開しており,e社の親会社であるdシステムが,オークションによる中古車販売業の最大手であるUSSと提携していたことから,「○○ネット」の会員は,USSの運営するオークションに参加することができた。
(エ) 原告は,運送業及び中古車販売業を営むaコーポレーションを実質的に経営しており,平成17年2月当時,aコーポレーションの代表取締役には,名目上,原告の妻であったAを就任させていた。aコーポレーションは,「○○ネット」の会員であった。
原告は,かつて暴力団に所属していたことがあり,平成13年7月5日,恐喝罪により,懲役3年,執行猶予5年の有罪判決である判決①の言渡しを受け,また,平成14年6月26日,傷害罪により,懲役1年,執行猶予5年(保護観察付き)の有罪判決である判決②の言渡しを受けていた。
(オ) 平成17年2月ころ,dシステムとUSSとの提携関係が終了することに伴い,「○○ネット」の会員がUSSの提供する中古車オークションを利用することができなくなった。
被告は,同月14日,このことを原告に説明するため,aコーポレーションの事務所に赴いて原告と面会した。被告は,原告と最初に面会する前に,原告には暴行又は脅迫による逮捕歴が2度あり,組織暴力団の組長であって切れると怖いというような情報を得ていた。しかし,上記面会の際,原告は,上記事情の説明に対し,紳士的に対応したため,被告は安堵し,aコーポレーションが今後もUSSの中古車販売オークションに参加するためには,USSに加入する必要があることを説明するとともに,USSに加入するために,aコーポレーションの代表者を変更し,保証人を2名付けることを提案するなどした。
(カ) 被告は,上記面会をきっかけに,原告と会食を重ね,その過程で,原告の人柄に魅力を感じるようになり,平成17年3月10日以降,原告に対し,株式会社クレディセゾン(以下「クレディセゾン」という。)とdシステム及びc倶楽部との資本及び業務提携が成功すれば,成功報酬として約4億円の報酬が入るので,そのうち1億円を元手に原告と被告による共同事業を始めないかと持ちかけた。
その後,被告は,原告に対し,aコーポレーションの代表取締役を原告の知人のトラック関係の雑誌の編集者であり,原告が紹介したCに変更すること,aコーポレーションの中古車購入資金については,USSのファイナンスを利用することを前提に検討するが,原則として,現状の仕入代金の範囲内であれば,被告が手当てすること,aコーポレーションを有限会社から株式会社に変更し,h社の職務を行っていたHを取締役に,Dを監査役にそれぞれ就任させること,上記共同事業として飲食店を経営すること,有限会社bを株式会社に組織変更した上で原告を代表取締役に就任させ,上記共同事業のための会社とすることなどを提案し,原告は,これを承諾した。そこで,上記提案に基づき,同年5月16日,aコーポレーションにつき,Aに代わってCが代表取締役に,Hが取締役に,Dが監査役にそれぞれ就任し,同年6月1日,株式会社に組織変更され,有限会社bにつき,同月30日,借主をfトラスト,連帯保証人をaコーポレーションとして本件事務所の賃貸借契約が締結され(その賃貸借契約書が乙5である。),同年7月7日,株式会社に組織変更された上,商号をfトラスト,主な事業目的を飲食店経営に変更され,原告がfトラストの代表取締役に就任した。
被告は,原告に対し,同年3月28日に200万円,同月31日に300万円及び同年4月19日に100万円の本件600万円を振り込み,同年5月10日に本件1000万円を振り込み,同年6月24日,同月30日,同年7月29日及び同年8月4日に各500万円の本件2000万円を振り込んだ。被告は,h社の資金のうち,少なくとも2000万円を本件振込金の原資に充てていた。
(キ) 原告と被告は,上記共同事業として豚しゃぶ店を運営することを合意し,被告は,平成17年7月ころ,原告に対し,当時,資本及び業務提携を検討していたジャック・ホールディングス株式会社,c倶楽部連名のクレディセゾンあての「資本・業務提携契約のご案内」と題し,対外厳秘と記載された書面(甲21添付の別紙その③),クレディセゾン,dシステム及びc倶楽部などの基本合意書(案)(同別紙その4)を提示するなどして,近いうちに上記成功報酬が支払われる予定であると告げたため,原告は,豚しゃぶ店の開業手続を進め,同年8月下旬には,被告と共に,豚しゃぶ店の調理師の採用面接を行い,被告の了解を得た上で,同年9月13日付けで本件店舗の賃貸借契約を締結した。その際,aコーポレーションがその連帯保証人となった。本件事務所の賃料,敷金,内装及び家具の費用,本件店舗の賃料及び敷金は,fトラストが支払ったが,すべて被告が負担した。
原告は,被告の了解を得た上で,本件店舗の設計を「HAPTIC DESIGN」という名称で設計事務所を経営していたIに依頼し,本件店舗の内装工事の施工を同人を通じて「POINT LINK」という名称の施工業者であるJに発注することとし,同年10月初旬ころ,I及びJとの間で,本件店舗の設計費を80万円,内装工事費を920万円とすること,初回の支払として,内装工事費の内金350万円及び上記設計費80万円を合わせた着手金430万円を同月11日に支払うことを取り決めた。そして,原告と被告は,被告がh社の取引先から同月7日に約400万円の買掛金の回収ができる見込みであったため,被告が着手金430万円の一部である250万円を用意し,原告が残りの180万円を用意することとした。
h社の事業は,一向に黒字化せず,有限会社bの他の事業の収入でその赤字を補てんすることを続けていた。
イ 平成17年10月7日及び同月8日の状況等
原告と被告は,原告が被告から上記250万円を受け取るため,平成17年10月7日午前10時に本件事務所で会うことを約束していた。
原告は,同日午前9時ころ本件事務所に到着し,被告が来るのを待っていたが,被告は同日午前10時を過ぎても本件事務所に現れず,被告から,度々電話で遅れる旨の連絡を受けていた。原告は,同日午後5時ころになっても被告が現れず,同日,午後10時ころから,Cが編集する雑誌に掲載する記事の打合せをする約束があったため,被告に対し,後日会うことを提案したが,被告がどうしても同日中に会いたいと言ったため,本件事務所で待つことにした。被告は,同月8日午前零時ころに本件事務所に到着し,原告の指示で打合せが終わるまで車の中で待機していた。同日午前2時ころ,原告から本件事務所に入ってくるよう連絡を受けた被告は,本件事務所に入ると,原告に対し,h社の取引先からの約400万円の支払が1週間延期になったため,被告が用意するはずであった上記250万円を持ってくることができなくなったので,上記着手金430万円の支払を約1週間延ばしてほしい旨申し入れた。これに対し,原告は,被告に対し,以前からも度々被告に約束をほごにされていたこともあり,被告が資金を用意するとの約束を破ったことを非難するとともに,fトラストの代表者を辞め,被告との共同事業も中止させてほしいと申し入れたところ,被告は,原告に対し,既に本件事務所や本件店舗を借りてしまっているし,豚しゃぶ店の従業員として雇用する予定の者をどうするのかなどと言って,原告に上記共同事業の解消を踏みとどまるよう迫り,その場で土下座をしたりした。被告が土下座をしても原告が上記共同事業の解消を撤回する様子がなかったため,被告は,以前に原告に対して暴力団関係者であり,殺人を犯して懲役8年の刑に服したことがある者として話題にしたことのあるBの名前を出し,Bが原告に電話するなどと言って翻意を求めた。原告は,暫く検討した結果,暴力団関係者が出て来て家族に迷惑がかかるのは困るし,自分自身にとっても面倒なことになるのは避けたいと考え,また,aコーポレーションが本件事務所や本件店舗の賃貸借契約の保証人になっていることや本件事務所で使用する電子機器のリース契約を原告名義で締結していることなどから,豚しゃぶ店の立ち上げまでは共同事業を続けることにし,上記着手金430万円の支払を延期してもらうよう頼むこととした。被告は,同月14日までには上記250万円を準備すると申し入れたが,原告は,同日が金曜日であり,これまでにも被告からの支払が遅れることがあったため,被告に対し,余裕をもたせるために,上記着手金430万円の支払を同月17日にすることを提案し,被告がそれまでに上記250万円を準備することを約束したので,同月8日午前7時ころ,原告と被告は,本件事務所を出て別れた。同月8日,原告が被告に対して脅迫的な文言を使ったことは一切ないし,本件未精算金の件は話題に出たこともなかった。
被告は,前記クレディセゾンとdシステム及びc倶楽部との資本及び業務提携が実現しなかったために,このころには資金が底を突いてしまっていた。
ウ 平成17年10月8日より後の経緯等
(ア) 被告は,dシステムの顧問弁護士から紹介されたK弁護士,L弁護士及びM弁護士を代理人として委任し,これらの弁護士は,平成17年10月14日,被告の代理人として,原告に対し,原告が被告やh社に対し,執ように250万円の融資を要求し,被告がこれを拒絶するや,脅迫的言辞を用いて威迫するなどの行為に出たこと,被告には上記融資に応ずる義務はなく,上記脅迫的言辞を手段として金員を要求することは,刑事罰の対象となる場合もあるため,即刻中止するよう警告する旨の「通知書」と題する書面(甲16,以下「本件通知書」という。)を送付した。また,被告は,同月16日,蒲田警察署に本件告訴をした。
(イ) 原告は,平成17年11月1日,本件告訴に係る恐喝未遂罪の被疑事実で逮捕され,同月4日,同被疑事実で勾留され,同月22日,身柄勾留のまま,脅迫罪で東京地方裁判所に起訴された。
(ウ) 本件事件の公判は,平成18年1月24日に第2回公判期日が,同年2月7日に第3回公判期日が,同年3月2日に第4回公判期日がそれぞれ開かれ,被告は,これらの公判期日において,本件供述をした。
被告は,原告の弁護人から本件振込金に関して質問された際,h社の他の出資者から不正な資金流用を行ったことを理由に刑事告訴されるおそれがある旨回答し,証言を拒絶した(乙11の22頁及び58頁)。
(エ) 東京地方裁判所は,平成19年3月27日,本件事件につき,公訴事実の存在について,なお合理的な疑いを容れる余地があり,犯罪の証明がなかったことに帰することを理由に,原告を無罪とするとの判決を言い渡し,上記無罪判決は,同年4月11日,控訴期間の経過により確定した。
(オ) 被告は,平成17年11月10日,株式会社ユーコンに対し,h1社の全株式を返還した。また,同年秋ころには,h社の屋号で行っていた株式会社日本航空(当時)関連の広告事業を受注できないことになったので,被告は,h社の屋号で行っていた事業から撤退することを決めたが,そのころ,D,E及びFから被告がh社の資金をD,E及びFの同意を得ることなく本件振込金に充てたこと(被告は,陳述書(乙28)及び本人尋問で,D,E及びFがh社の資金が原告に提供されていることを知っていたはずであるとか被告は少なくともDに対してはそのことを明確に話しており,その同意を得ていた旨供述するが,被告は,上記陳述書の前に提出した陳述書(乙18)には,上記資金の提供につき,D,E及びFの同意を得ていない旨記載しており,これらの者が上記資金の提供を知っていたはずであるとは記載していないこと,Dについても上記資金の提供につき,いつどのような態様で話したのかあいまいであることに照らして採用することができない。)が,背任又は横領に当たるのではないかとの指摘も受けたことから,同年12月ころ,本件金員をD,E及びFに対して返還することとなり,D及びEに対してはFを介して返還することとなった(なお,Gの提供した金員もDに返還することとなった。)。そこで,被告は,平成18年3月31日,Fに対し,利息を含めて1816万円の借入債務を負担しており,上記金員を同年4月から毎月5日限り30万円に分割して支払う旨記載した「出資金等借用証書」と題する書面(乙21)を作成して交付し,さらに,同月5日,同旨の債務弁済契約公正証書(乙22)を作成した。
(2)  上記認定事実につき,被告の本件供述(乙10から12まで)のほか,本人尋問における結果中には,本件未精算金の返還を求めたところ,原告は,被告に対し,「あんた面白いこと言うね。」,「お前の頭に鉛ダマをぶち込んだろか。」,「奈落の底まで突き落としてやる。」,「地獄を見せたる。」,「なめたら,どういう目に合うか思い知らせてやる。」,「おれは,いつでもやくざに戻れるんだ。電話一本30秒で戻れるんだ。Nのおやじの名前を使ってもいいと言われているんだ。」などと怒鳴り続けたため,原告から解放されたい一心で,原告に対し,上記共同事業を続けましょうと言って本件事務所を出た旨の供述部分がある。
しかし,上記供述部分は,以下の諸点に照らして採用することができない。
①上記認定のとおり,aコーポレーションの代表取締役の変更や被告の関係者の取締役や監査役への就任,株式会社への組織の変更,原告と被告との共同事業を提案し,aコーポレーション又は上記共同事業のための資金を提供したのは被告であり,上記共同事業として豚しゃぶ店の本件店舗の開店に向けての進行も被告の意向に沿って進められたものであり,本件店舗の開店のために負担した資金も相場を超えるものではなく,被告が原告に強いられて予想外の出費をさせられたものではなく(上記供述部分のうち,被告が原告から当初上記共同事業としての豚しゃぶ店の開店及び営業するための費用として400万円程度で足りるとの説明を受けたとの部分は,本件店舗の場所等に照らして不自然であって採用することができない。),被告が原告から精神的に強い圧迫を受けていたとは考えられないにもかかわらず,被告が原告に対して本件未精算金の返還を求めた際に原告が上記のような脅迫的言辞に及び,被告がこれに従ったというのは不自然である。②被告は,原告に対し,上記共同事業のための準備を進める中で本件未精算金の返済を求めたことがうかがわれないにもかかわらず,いきなり本件未精算金の返還を求めたというのは唐突感を否めないし,上記供述部分によれば,被告は,原告からの言葉によって強い圧迫を受けていたにもかかわらず,上記申入れをしたことになるので,なおさら唐突な印象を受ける。③上記供述部分のとおりであれば,被告は,上記共同事業の解消を希望していたのであるから,被告からの資金の提供の遅滞により被告に対する不信感を強めた原告が上記共同事業の解消を求めたにもかかわらず(原告が真意では上記共同事業を中止するつもりがなかったことを認めるに足りる証拠はない。),これに応じないこととなったという経緯は不自然である。④平成17年10月8日午前7時ころ,原告と被告が上記共同事業の件での話合いを終え,本件事務所を出たところ,本件事務所前で2人の警察官が,近所の者の通報によって路上に停められている被告の車両の確認等を行うためにいた(甲23の65頁,甲26の8頁,乙10の63頁及び69頁,乙11の74頁)にもかかわらず,被告が上記警察官に対して原告から脅迫的言辞を用いて威迫された旨訴えていないところ,上記供述部分は,原告から本件事務所や本件店舗の鍵を返せないと言われ,少なくとももう一度原告に会わなければならないと思い絶望的になり,警察官に原告から脅迫を受けたことを申し出ることを考えることができなかったと説明するが,前記のとおり,上記供述部分によると,被告が原告に対して上記共同事業の継続を申し入れたというのであり,上記鍵を被告に返すという事態は考えられないのであるから,極めて不合理である。⑤証拠(乙11の15頁,乙16,原告本人)によれば,被告は,同月9日又は10日ころ,原告に対し,電話で,中古車の購入の仲介に関して連絡をしていることが認められるところ,被告の上記行動は,原告の上記脅迫的言辞により威迫された者の行動としては極めて不自然である。⑥被告から依頼を受けた弁護士が,被告の説明を基に作成した本件通知書には,原告が被告又はh社に対し,執ように250万円の融資を求め,被告がこれを拒絶すると脅迫的言辞を用いて威迫する行為に出たと記載されているところ,同記載の内容は,上記供述部分と食い違っている。⑦被告は,原告の上記脅迫的言辞について,本件訴訟の本人尋問において,原告が被告の前で暴力団関係者に電話をかけ,「4000万円くらいの金をつまませてくれねえか。返済はおれのスポンサーがするから。」と話したり,被告に対して「e社は管理がずさんだろ,おまえなら引っ張れるだろう。」とe社の債権管理部長の地位を利用してe社から金員を流用してくるよう脅された旨供述するところ,原告がこのような言葉を述べたのであれば,被告に対する脅迫に当たると解されるにもかかわらず,被告は,本件事件の公判廷において,上記のような事実があったとの供述を一切していない。このように,本件告訴の核心である原告による脅迫的言辞の内容として被告が供述する内容が変遷することは,上記供述部分の信用性を強く疑わせるものである。⑧被告は,本件事件当時,D,G,E及びFからh社の屋号で行っていた事業につき約1800万円にも上る本件金員の提供を受けており,h社の資金のうち,少なくとも2000万円をD,E及びFの同意を得ることなく本件振込金の原資に充てていたところ,上記事業は,一向に黒字化せず,クレディセゾンとdシステム及びc倶楽部との資本及び業務提携の話も進まず,成功報酬を受領することができるか未確定の状況にあり,資金が底を突いた状況にあったのであるから,D,E及びFから上記資金の提供につき責任の追及を受ける可能性があることを懸念していたものと推認され(被告本人の陳述書[乙18,乙28]及び本人尋問の結果は,不自然であり,採用することができない。),実際,同年秋ころには,これらの者から上記資金の提供が背任又は横領に当たるとの指摘を受ける状態に陥っているのであるから,上記責任の追及を免れるため,上記資金の提供が被告の脅迫によるものであると装う目的で内容虚偽の本件告訴及び本件供述をする動機があったということができる。
上記認定事実によれば,被告は,本件告訴及び本件供述の内容が虚偽であることを認識しながら,本件告訴及び本件供述に及んだのであるから,被告の本件告訴及び本件供述は,原告に対する不法行為を構成するというべきである。
2  原告の損害(争点(2))について
(1)  休業損害
前記1で認定した事実及び証拠(甲24の32頁)によれば,原告は,大学を卒業後,平成8年ころ以降,aコーポレーションを含む中古車販売業や運送業を営む会社を経営してきたが,本件告訴に基づいて逮捕された平成17年11月1日当時,aコーポレーションの経営から手を引き,aコーポレーションから収入を得ることがなくなっており,被告と前記共同事業である豚しゃぶ店の開業に従事し,原告からの資金の提供により月額100万円以上の収入を得ていたこと,原告は,かつて暴力団に所属し,判決①及び判決②による前科を有していること,その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,原告は,本件告訴及び本件供述により身柄を拘束された期間において,少なくとも月額50万円以上の収入を得ることができたということができる。
証拠(甲1,甲22,甲23,原告本人)によれば,原告は,Aと婚姻し,Aとの間に平成3年○月○日生,平成6年○月○日生及び平成9年○月○日日生の3人の子をもうけたが,平成14年11月末ころ,O(以下「O」という。)と知り合い,平成15年8月ころから,Oとの交際を開始し,平成17年2月ころには,週の半分以上をOのマンションに寝泊まりするようになっており,将来的には,Aと離婚してOと婚姻したいと考えていたのであり,Aとの婚姻関係は,原告が本件告訴により身柄を拘束された平成17年11月1日当時既に破たんに近い状況にあったことが認められ,原告が上記身柄を拘束されている間に生活費の負担を免れていたことを考慮し,休業損害からその2割を控除するのが相当である。
そうすると,原告の休業損害は,693万3333円([50万円×17月+50万円×10日÷30日]×0.8[円未満切捨て])となる。
(2)  慰謝料
前記第2の1の争いのない事実等及び証拠(甲37,原告本人)によれば,原告は,被告による本件告訴及び本件供述により,平成17年11月1日から平成19年4月10日まで526日もの長期間にわたり身柄を拘束され,拘禁によるストレスもあり,体重が半分近くに減少したことが認められる。
原告は,上記身柄拘束が原因で,妻子の生活のために自宅マンションを売却せざるを得ず,妻Aとも離婚し,3人の子とも別居することとなった上,本件告訴により逮捕された当時患っていた白内障についても,釈放後まで手術を受けられなくなったことから症状が悪化し,視力が低下したと主張する。しかし,前記(1)で認定したとおり,本件告訴により逮捕された当時,Aとの婚姻関係は,既に破たんに近い状況にあったのであり,上記身柄拘束により,Aと離婚し,3人の子とも別居することとなったということはできない。また,証拠(甲32から34まで)によれば,原告は,本件告訴により逮捕された当時,左眼が白内障に罹患していたこと,上記身柄拘束期間中にも右眼も白内障に罹患したこと,白内障の治療は,投薬による治療は効果が期待できず,手術による治療が最も適していること,しかし,上記身柄拘束期間中,眼科専門医による定期的な診察を受け,同専門医により,直ちに手術をしなければ失明するというようなものではなく,手術の緊急性が認められないとの診断を受けていたことが認められるのであるから,原告は,上記身柄の拘束によって白内障が進行し,視力が大幅に低下したということができない。さらに,証拠(甲6)によれば,原告が上記身柄拘束中であった平成18年8月29日に川崎市中原区下小田中所在の自宅マンションを売却したことは認められるが,原告が上記身柄拘束がなければ上記自宅マンションを売却しなかったと認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件に現れた一切の事情を考慮すると,違法な本件告訴及び本件供述による原告の受けた精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては600万円が相当であるというべきである。
(3)  損害額
前記第2の1の争いのない事実等のとおり,原告は,刑事補償法に基づく補償金として640万円の交付を受けているので,これを原告の損害額から控除すると,原告の損害額は,653万3333円(693万3333円+600万円-640万円)となる。
3  以上の次第で,原告の請求は,主文1項記載の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中村也寸志 裁判官 倉地真寿美 裁判官 鈴木美智子)

 

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