「テレアポ 営業」に関する裁判例(9)平成28年 3月 2日 東京地裁 平27(ワ)23587号 発信者情報開示請求事件
「テレアポ 営業」に関する裁判例(9)平成28年 3月 2日 東京地裁 平27(ワ)23587号 発信者情報開示請求事件
裁判年月日 平成28年 3月 2日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平27(ワ)23587号
事件名 発信者情報開示請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2016WLJPCA03028012
裁判年月日 平成28年 3月 2日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平27(ワ)23587号
事件名 発信者情報開示請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2016WLJPCA03028012
さいたま市〈以下省略〉
原告 甲山X
同訴訟代理人弁護士 田村有加吏
同 杉浦宏輝
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 ニフティ株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 荒木泉子
主文
1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下単に「法」という。)4条1項に基づく発信者情報開示請求として,別紙投稿記事目録記載の各投稿記事に係る別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を求めた事案である。
1 争いのない事実等(当事者間に争いがないか,括弧内掲記の証拠によって容易に認定できる事実)
(1) 氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)は,被告を経由プロバイダとして,インターネット上の「アメーバブログ」(http://〈省略〉。以下「本件サイト」という。)に,別紙投稿記事目録記載1の投稿(以下「本件投稿1」という。)及び別紙投稿記事目録記載2の投稿(以下「本件投稿2」という。)の各投稿(以下両投稿を併せて「本件各投稿」という。)をした。
(2) 被告は,法4条1項の開示関係役務提供者である。
(3) 被告は,本件発信者に係る別紙発信者情報目録記載の各情報を保有している。 (弁論の全趣旨)
(4) 原告は,本件発信者に対し,本件各投稿による権利侵害を理由として,差止請求等の準備をしている。 (甲3号証)
2 争点
(1) 本件各投稿に記載がある「甲山」及び「甲山X」が原告を指しているか。
(原告の主張)
本件各投稿に記載がある「甲山」及び「甲山X」が原告を指している。
(被告の主張)
不知
(2) 本件各投稿の流通によって,原告の権利が侵害されたことが明らかか。
(原告の主張)
本件各投稿の流通によって,原告の人格権を明白に侵害する。また,本件各投稿は,いずれも,違法性阻却事由がない。
(被告の主張)
否認する。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(本件各投稿に記載がある「甲山」及び「甲山X」が原告を指しているか)について
本件各投稿に,「甲山」及び「甲山X」についての言及があることは当事者間に争いがないところ,甲3号証によれば,本件各投稿に記載がある「甲山」及び「甲山X」が原告であることを指していることが認められ,この認定に反する証拠はない。
2 争点(2)(本件各投稿の流通によって,原告の権利が侵害されたことが明らかか)について
(1) 本件投稿1について
ア 本件投稿1が,タイトルを「a社『甲山X』のキチガイ電話営業」とし,また,本文中に「とにかく甲山のテレアポは,キチガイで有名です。」,「甲山Xが電話でも失礼だったし,キチガイだと理解いただけましたら,商談拒否,バックレ,ドタキャン,早期解約,不動産関連の業界団体へクレーム一報を!」いう記載があり,また,このうち,「とにかく甲山のテレアポは,キチガイで有名です。」における「キチガイ」の字が通常の字の約2倍の大きさのフォントで強調されているものであることは,甲1号証及び争いがない事実から認められる。そして,このような記載は,原告の名誉感情を害するものであって,社会通念上許される限度を超えた侮辱行為であると認められる。
イ これに対し,被告は,①本件投稿1で書かれているのは,甲山という人物が行っているテレフォンアポイントメントであって甲山という人物自体ではない,②本件投稿1は,キチガイとの言葉を用いて原告の仕事のやり方について正常ではないとの本件発信者の意見を表明するに過ぎないものである,③インターネット上の匿名掲示板や匿名ブログなどではこの程度の表現は氾濫しており,それを目にした者も大して気に留めない程度のものである,と主張する。
しかし,「キチガイ」とは精神状態を表現する用語であるから,一般人の読み方をして①のよう受けとるとはいえない。また,②については,本件投稿1が原告の仕事のやり方について意見を表明するものであったとしても「キチガイ」という侮辱的表現を用いているものであって相当性があるとはいえない。さらに,③については匿名掲示板や匿名ブログにおいては侮辱的表現がより許容されているという社会通念があるとは認められないから採用できない。
ウ なお,争いのない事実である本件投稿1の記載内容及び弁論の全趣旨によれば,本件投稿1について,不法行為の成立を阻却する事由の存在をうかがわせる事情が存在しないと認められる。
エ よって,本件投稿1の流通によって,原告の権利が侵害されたことが明らかであると認められる。
(2) 本件投稿2について
ア 本件投稿2の本文中に,「『甲山X』には注意」,「この甲山とは何者か? 簡単に言ってしまえば,44歳のキチガイBBAです。 電話をかけてきておいて発狂します。 頭がおかしいです。 そういう癖のある人間です(ゲテモノ以下の何者でもないですがw)。 自己中心的で上から目線です。その辺の小学生の方が冷静さと賢さがあります。」との記載があることについては当事者間に争いがない。そして,このような記載は,原告の名誉感情を害するものであって,社会通念上許される限度を超えた侮辱行為であると認められる。
イ これに対し,被告は,①キチガイ,発狂,頭がおかしい,については,原告は正常でないという本件発信者の意見を言葉を変えて表明したものに過ぎない,②本件投稿2は,「ゲテモノ」という言葉を用いて原告は普通とは違って風変わりであるという本件発信者の意見を表明するに過ぎない,③インターネット上の匿名掲示板や匿名ブログなどではこの程度の表現は氾濫しており,それを目にした者も大して気に留めない程度のものである,と主張する。
しかし,①と②については,本件投稿2が本件発信者の意見を表明するものであったとしても「キチガイ」「発狂します」「頭がおかしい」「その辺の小学生の方が冷静さと賢さがあります」という侮辱的表現を用いているものであって相当性があるとはいえない。また,③については,上記(1)イで述べたとおり,採用できない。
ウ なお,争いのない事実である本件投稿2の記載内容及び弁論の全趣旨によれば,本件投稿2について,不法行為の成立を阻却する事由の存在をうかがわせる事情が存在しないと認められる。
エ よって,本件投稿2の流通によって,原告の権利が侵害されたことが明らかであると認められる。
3 結論
以上によれば,原告の請求は理由があるから認容する。
東京地方裁判所民事第12部
(裁判官 村井壯太郎)
〈以下省略〉
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