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「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(8)平成30年 8月23日 東京地裁 平28(ワ)30778号 貸金請求事件

「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(8)平成30年 8月23日 東京地裁 平28(ワ)30778号 貸金請求事件

裁判年月日  平成30年 8月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)30778号
事件名  貸金請求事件
文献番号  2018WLJPCA08238006

裁判年月日  平成30年 8月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)30778号
事件名  貸金請求事件
文献番号  2018WLJPCA08238006

東京都新宿区〈以下省略〉
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 西本俊介
神奈川県川崎市〈以下省略〉
被告 Y

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
被告は,原告に対し,202万0800円及びうち200万円に対する平成27年4月1日から支払済みまで年18パーセントの割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告と訴外株式会社a(以下「a社」という。)との間の金銭消費貸借契約に基づく借主の債務を被告が連帯保証したとして,原告が,被告に対し,保証債務の履行として,貸金元金200万円,約定利息金2万0800円及び元金に対する期限の利益喪失日の翌日である平成27年4月1日から支払済みまでの約定利率による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)
(1)  当事者等
ア 原告は,大手通信サービス業の1次代理店として営業する会社である。
イ 被告は,いずれも大手通信サービス業の代理店業務を行っていた株式会社b(平成13年7月設立,以下「b社」という。)及びa社(平成19年12月設立)の代表取締役であった者である。
ウ b社及びa社は,溝の口(神奈川県川崎市高津区)に本社を置き,渋谷,町田,千葉及び名古屋に営業所を置いていた。なお,両社は,仕入先となる通信会社別に社名を使い分けるため,複数の法人として設立されたが,事務所及び従業員を共用して同種の営業をしており,実質的に同一の企業である。(以下,両社を合わせて「a/b社」という。)
《弁論の全趣旨(平成29年5月8日付け被告準備書面3参照)》
(2)  原告によるa/b社に対する支援
ア 被告は,a/b社の資金繰りに窮し,平成26年(以下,平成26年の日付については,年の表記を省略する。)9月末に支払うべき給与等の支払をなし得ない状態となったことから,同月28日,同業者であり,かねて知人として交流があった原告代表者に対し,a/b社に対する支援を求めて相談した。
イ a/b社は,経理,営業所長及び名古屋営業所の従業員に対する支払を除き,9月末支払分(8月稼働分)の給与の支払をすることができなかった。被告は,10月1日及び同月6日にも原告の会社へ行き,原告代表者と打ち合わせた。
ウ 上記打合せを踏まえ,原告は,a/b社の従業員のうち,本社及び関東の営業所(渋谷,町田,千葉)に勤務していた者の一部を10月16日付けで雇い入れ,これらの者に対し,a/b社が支払うべき給与(8月から10月15日までの稼働分の給与)を肩代わりして支払った。
なお,この支払は,雇い入れた従業員に対して貸し付け,試用期間経過後も在籍した場合には貸付金の返済義務を免除するという形で行われた。
《甲6,7,弁論の全趣旨》
(3)  原告被告間の業務委託契約
ア 原告と被告は,上記(2)ウの関東の社員らの受入れと同じころ,被告を原告の役員として処遇し,「ゼネラルマネージャー」の役職名のもと,被告が直販事業の責任者としての業務等を行い,原告がその対価として月額100万円の報酬,交通費の全額及び住宅手当として住居費(賃料)の50%を支払うことを合意した(以下「役員業務委託契約」という。)。
イ 被告は,役員業務委託契約に基づき,原告の役員として稼働したが,原告は,12月24日,同契約を解除した。
(4)  原告からの200万円の送金及び金銭消費貸借契約書の作成
ア 原告は,11月28日,銀行振込により200万円を被告ないしa/b社に送金した。
イ 被告は,原告を貸主,a社を借主,被告を連帯保証人とする11月28日付け金銭消費貸借契約書(甲1,以下「本件契約書」という。)に,a社を代表して記名押印し,かつ,連帯保証人として署名押印して,原告に差し入れた。
ウ 本件契約書には,①a社が原告より200万円を借り受け,平成27年1月31日,同年2月28日,同年3月31日及び同年4月30日に,各50万5200円(元金50万円及び利息金5200円の合計)を返済する旨,②被告はa社の債務につき連帯保証する旨,③遅延損害金の利率は年18パーセントとする旨,④元金の返済を3か月以上延滞したときは,期限の利益を喪失する旨などの規定がある。
(5)  被告による相殺の意思表示
被告は,平成29年12月22日,本件第4回弁論準備手続期日において,原告に対し,原告の本件契約書に基づく貸金返還請求権と被告が下記3(3)及び(4)のとおり主張する債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。
2  争点
(1)  金銭消費貸借契約の成否・効力
(2)  被告ないしa社の原告に対する反対債権の存否及び額
ア 原告は,a/b社の名古屋営業所における営業を承継することを合意したか。
イ 名古屋営業所について被告ないしa社が立て替えた経費等の額
ウ 役員業務委託契約に基づく手当等の未払額
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(金銭消費貸借契約の成否・効力)について
【原告の主張】
ア 原告は,11月28日,a社に対し,本件契約書記載のとおり200万円を貸し付けたものであり,a社及び連帯保証人である被告に対し,その返還を求めることができる。
イ 被告は,名古屋営業所の経費を原告が支払うべきであるのに,貸付けという名目で被告に肩代わりさせているだけであると主張するが,下記(2)において述べるとおり,原告が名古屋営業所を受け入れる旨の合意をした事実はない。
【被告の主張】
ア 原告の主張アは否認する。原告から振り込まれた200万円は,貸金ではない。
イ 原告代表者と被告は,9月28日,10月1日及び同月6日の打合せの結果,①原告が,a/b社の関東の従業員の一部を10月16日付けで,名古屋営業所を11月1日付けで,いずれも受け入れること,②従業員のa/b社在籍期間の賃金については,次のスケジュールに従い,原告が支払うことを合意した。
・関東の従業員について
8月稼働分(9月30日支払分) 支払日 10月15日
9月稼働分(10月31日支払分) 支払日 10月31日
10月1日から15日まで稼働分 支払日 11月28日
・名古屋営業所の従業員について
9月稼働分(10月31日支払分) 支払日 10月31日
10月稼働分(11月28日支払分) 支払日 11月28日
ウ 原告は,前記前提事実(2)ウのとおり,関東の従業員に対する支払はしたが,名古屋営業所の従業員に対する支払をしなかった。
原告代表者は,10月27日の役員会議後,被告に対し,同月31日支払分は被告から支払ってほしいと言ってきた。被告は,原告代表者からa/b社の従業員を受け入れたために一時的にキャッシュフローが悪いので支払ってくれと言われ,納得はしていないが,仮支払をした。
さらに,原告代表者は,11月24日の役員会議後,同月28日支払分についても,被告から支払うよう求めてきた。被告が,名古屋営業所を維持するためには400万円は必要と伝えたところ,原告代表者は,200万円までしか出せないといい,しかも原告役員を納得させるため200万円の借用書を書くよう求めてきた。
本件契約書は,11月28日付けとなっているが,実際に渡されたのは,12月に入ってからである。被告は,200万円を借りたのではないので契約書に押印せずに保管していたが,12月24日に役員業務委託契約を即時解除された際に,本件契約書の提出を迫られた。提出しないと12月30日に被告への報酬が支払われない可能性があり,資金繰りに重大な支障をきたす恐れがあったので,やむなく押印して原告の経理へ提出した。
本件契約書は,このような経緯で作成されたものであり,a社は,実際には200万円を借りたものではない。原告は,本来原告が支払うべき名古屋営業所の経費を,貸付けという名目で被告に肩代わりさせているだけである。
(2)  争点(2)ア(原告は,a/b社の名古屋営業所における営業を承継することを合意したか。)について
【被告の主張】
ア 原告代表者と被告は,上記(1)の被告の主張イのとおり,関東の従業員だけでなく,名古屋営業所についても,11月1日付けで原告が受け入れることを合意した。また,名古屋営業所の経費も原告が支払うことを合意した。
原告は,前記前提事実(2)ウのとおり,関東の従業員の一部を受け入れ,10月15日,支払が遅れていた9月末支払分の給与相当額を支払ったが,同日,関東のその他の従業員(アルバイト)の受入れを突然拒否した。その際,原告から,被告が受入れ拒否に応じなければ,名古屋営業所の受入れを拒否すると言われたので,被告は,やむを得ず関東のアルバイトの受入れ拒否を応諾した。
原告代表者は,11月1日,名古屋営業所において,同営業所の従業員らに「今日からみなさんは原告の従業員」と通知した。また,同営業所の全従業員が原告本社に履歴書を送付し,人事に受理された。雇用保険についても,11月1日以降は原告の雇用として加入手続がなされた。
名古屋営業所の従業員らは,12月17日に開催された原告の社員総会に出席し,忘年会にも参加した。
イ 以上のとおり,原告が名古屋営業所の受入れを了承し,現に受け入れていたことは明らかであるのに,原告は,12月24日,被告との役員業務委託契約を突然解除した際の話合いにおいて,名古屋営業所についてはそもそも原告と契約していないなどと言い出した。
同月26日,原告代表者が,名古屋営業所の従業員らに対し,「そもそもみなさんとは契約を結んでいない」と説明すると,従業員全員が紛糾し,営業所長も泣きながら原告に移籍した事実を訴えた。原告代表者と従業員らは,同月28日にも話合いをし,名古屋営業所は同月末で閉鎖されることとなった。
被告が,同月29日,原告代表者に連絡して,名古屋営業所の11月稼働分の人件費を支払うよう求めると,原告代表者は,前日の話合いにおいて原告が支払うことを約束していたにもかかわらず,被告から振り込むようにと言ってきた。被告は,振込依頼書がないと振り込めないと伝え,原告から振込依頼書を取り付けた。同日の原告代表者からのLINEメッセージ(乙2)のとおり,原告が人件費の代行支払を被告に依頼していることからも,11月1日以降,名古屋営業所を運営していたのが原告であることは明らかである。
原告は,被告との役員業務委託契約を解除して名古屋営業所の管理をする者がいなくなり,同営業所において11月1日から始めた新事業も未だ軌道に乗っておらず,黒字化するまでに時間がかかると判断したから,名古屋営業所ごと契約がなかったことにしてしまおうと考えたのだと推測される。
【原告の主張】
ア 被告の主張は否認する。
名古屋営業所の従業員については,直接面接をした後に,場合によっては受け入れる旨を被告に伝えただけであり,原告に受け入れる旨の合意はしていない。
11月1日に原告の従業員であると通知したのは原告の東京の本社に異動する人だけに対してであって,それ以外の者には通知していない。
イ 原告は,10月12日の時点では,名古屋営業所の受入れを検討する姿勢を見せていたが,検討期間が必要であるため,結論は保留にしていた。
しかし,10月の終わりころ,被告から,名古屋営業所を利用して副収入を得たいとの申入れがあり,原告としては,名古屋営業所の利益を被告に取られる一方で原告側が経費だけ負担するという悪条件を飲むことはできなかったので,名古屋営業所の受入れを断った。もっとも,被告が名古屋営業所の従業員に原告が名古屋営業所を受け入れる旨を伝えてしまったため,被告から原告にその話と合うような対応をしてほしい旨の要請があったので,原告は,形式的には被告の要請を受けることにした。
そして,被告からは,名古屋営業所が原告にとって重荷になるのであれば,被告が名古屋営業所で別事業を行って費用も被告側で負担することで原告の重荷にならないようにするとの申入れがあったので,原告はこの申入れについては受け入れた。
ウ 被告は,被告が自ら名古屋営業所を運営し,同営業所の従業員の給与も支払うことを承諾したが,名古屋営業所の従業員への体裁を取り繕い,被告が私欲のために副収入を得ることを従業員に知られないようにするために,原告に対し,原告名義で同営業所の従業員の給料を支払ってほしい旨の申入れをしてきた。同申入れは,原告に負担しか課さないものであり,原告として受け入れることは難しい内容であることから,原告は被告の申入れを断り,名古屋営業所の受入れを先延ばしにしていた。
被告からの要請があったので,原告は,名古屋営業所の従業員に対しては原告が名古屋営業所を受け入れているかのような素振りは見せていたが,実際に名古屋営業所の売上金が原告に入ってきたことはなく,名古屋営業所の従業員の給与を原告が支払ったこともない。
そのような中,被告から,名古屋営業所の従業員の給与を支払わなければならないが,被告の財政状況が悪いので,200万円を貸し付けてほしい旨の要望があったため,原告は,a社及び被告に200万円を貸し付けたのである。
エ その後,原告は,12月24日には,被告及び名古屋営業所を受け入れることを正式に断り,名古屋営業所の従業員に伝えたところ,猛烈な反対を受けたので,同月28日,原告の東京営業所か新潟営業所で就業できることを条件に受け入れる旨を名古屋営業所の従業員に伝えた。結局,平成27年1月4日に,名古屋営業所の従業員から東京や新潟での就業はできない旨の回答を受けたので,原告としては名古屋営業所を受け入れることが出来ないことが正式に決まった。原告は,名古屋営業所の従業員とは雇用契約を締結していない。
オ 12月29日のLINEメッセージ(乙2)は,原告が名古屋営業所の従業員の受入れを再度保留にしていた間に,被告からの要望に応じ,被告から口頭で送付を依頼された内容を原告代表者が送付したのであり,原告が名古屋営業所の従業員を受け入れることを示す資料とはならない。
(3)  争点(2)イ(名古屋営業所について被告ないしa社が立て替えた経費等の額)について
【被告の主張】
被告ないしa社は,次のとおり,名古屋営業所の営業について原告が支払うべき経費等を支払った。
ア a/b社在籍期間中の賃金
9月稼働分(10月31日支払) 28人,総額377万6406円
10月稼働分(11月28日支払) 26人,総額338万9176円
イ 原告雇用期間中の賃金
11月稼働分(12月30日支払) 25人,総額321万3936円
12月稼働分(1月30日支払) 21人,総額275万9931円
ウ 営業所家賃
11月分 21万8000円+振込手数料540円
12月分 21万8000円+振込手数料756円
エ 交通費
11月新幹線代 9万1170円
12月新幹線代 6万9980円
オ 通信費
11月通信費 34万5881円
12月通信費 24万0808円
カ 消耗品
11月消耗品の一部 2万2433円
12月消耗品の一部 1万0797円
キ 社員総会経費(レンタカー代及び宿泊費)
6万7645円
このほか往復高速代と数回分のガソリン代を支出した。
【原告の主張】
原告は,名古屋営業所に関して経費を負担すべき義務を負わない。
(4)  争点(2)ウ(役員業務委託契約に基づく手当等の未払額)について
【被告の主張】
ア 12月通勤交通費 1万4940円
イ 住宅手当
10月16日から半月分 8万円
11月分 16万0324円
12月分 16万0324円
ウ 解雇予告手当 100万円
原告被告間の役員業務委託契約は,実質的には雇用契約に等しいものであったので,即時解雇に当たっては1か月分の報酬に相当する予告手当が支払われるべきである。
【原告の主張】
役員業務委託契約は,雇用契約ではない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提事実と証拠(各項末尾に掲げるもののほか,乙17,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  関東の一部従業員の原告への移籍について
ア 原告代表者と被告は,a/b社の救済策に関し,9月28日,10月1日及び同月6日に面談して打合せをした。
被告は,a/b社の全ての営業所及び従業員を原告が引き継ぎ,給与及び事務所経費等の支払を原告が肩代わりすることを要望していたが,原告代表者は,社内での検討を踏まえ,10月12日,被告に対し,「当社で見れる範囲は名古屋までという結論に至りました。」「リスクをとってもいいという範囲で名古屋のみなら二ヶ月分の給与のみでの救済で行けると踏んだからです。」「当社としては,溝ノ口の固定費の重さ,ロケーションの曖昧さも踏まえ,溝ノ口の吸収は厳しいと判断しました。」「もちろん名古屋だけというのは虫がよすぎるので,Yさんの判断にお任せします。」との回答をLINEのメッセージで送信した。《乙1》
イ 被告は,溝の口本社事務所の承継を断られたことを踏まえ,a/b社の溝の口本社及び関東の営業所の従業員のうち,原告の新宿本社に通勤して就労することができる者をリストアップし,原告に受入れを求めた。
原告は,10月15日夜,リストアップされた者のうち,アルバイト以外の社員及び一部のアルバイトを集め,原告代表者及び原告の役員らが面談をした上で,これらの従業員に対し,9月30日にa/b社から支払われるべきであった給与に相当する額の現金を手渡し,翌日以降,原告の従業員として就労させた。
原告は,これらの者に対しては,10月31日及び11月28日にも,a/b社からの9月分及び10月分(10月15日まで分)の給与相当額の金銭を交付したが,原告は,これらの金員について,平成27年1月15日の試用期間終了日まで勤務した場合には返済を免除するとの条件で,従業員に対する貸付けとして処理した。《甲6,7》
ウ 原告は,被告がリストアップした従業員のうち,10月15日に面談の上採用した者以外については,10月16日,原告への受入れを拒絶した。
(2)  名古屋営業所従業員に対する10月分までの給与の支払について
ア 被告は,10月16日以降,a/b社の残務処理に当たりながら,並行して,役員業務委託契約に基づき,原告の本社に役員として勤務し,毎週月曜日に開催される役員会議にも出席していた。
イ 原告代表者は,10月27日の役員会議の後,被告に対し,名古屋営業所の従業員に対する給与(9月分給与,支払日10月31日)は,被告が支払うよう求めた。
被告は,10月31日,b社の名義で雇用していた名古屋営業所の従業員28名(アルバイトを含む。)に対し,9月分の給与として,総額377万6406円を振り込んで支払った。《乙4①ないし③》
ウ 名古屋営業所の事務所は,a社の名義で賃借した貸室であった。
被告は,11月分の家賃を,10月31日,b社ないしa社の銀行口座から振り込んで支払った。《乙5①》,
エ 原告代表者は,11月1日,名古屋営業所に出張し,社員7,8名の前で,「皆さんは今日から原告の従業員である。」旨の挨拶をした。
その後,名古屋営業所の従業員は,約20名のアルバイトを含む全員が履歴書等の必要書類を原告に提出し,b社は,同社のもとで雇用保険に加入していた社員について,10月31日を離職日として雇用保険被保険者資格の喪失を届け出た。一方,原告は,名古屋営業所の社員9名について,11月1日を入社日として,雇用保険の加入手続をした。《乙3,11,16④》
オ 11月1日以降,名古屋営業所においては,被告が調達してきた商材を取り扱い,被告がその営業を統括する形で事業を継続した。事務所の賃貸借契約における借主はa社のままであり,電話等の回線契約の名義もa社のままであった。《乙5②,乙7①ないし〈21〉》
カ 原告代表者は,11月24日の役員会議の後,被告に対し,名古屋営業所の従業員に対する給与(10月分給与,支払日11月28日)についても,被告が支払うよう求めた。
被告は,名古屋営業所を維持するためには400万円は必要であると伝えたが,原告代表者は,貸付けの形で200万円までしか出せないと述べ,原告が従業員に対して直接給与相当額を支払うということはしなかった。
原告は,11月28日,a社宛てに200万円を振り込み,被告は,これに被告が名古屋営業所の取引先から前倒しで入金してもらったコミッション等の資金を加えて,同日,従業員26名(アルバイトを含む。)に対し,10月分給与総額338万9176円を支払った。《乙4④⑤,14》
原告は,その後,被告に対し,本件契約書の書式を交付し,署名した上で原告に提出するよう求めた。
(3)  名古屋営業所における11月及び12月の営業について
ア 上記(2)エ及びオのとおり,名古屋営業所の従業員らは,11月1日以降は,原告の雇用保険に加入し,a社名義で賃借した事務所において,被告が調達してきた商材を取り扱っていた。
イ 名古屋営業所の社員らは,12月17日,名古屋から原告の本店がある新宿までレンタカーで出張し,原告全社員が集まる「社員総会」及びその後の忘年会に出席し,新宿で宿泊した。社員総会では,名古屋営業所の紹介も行われた。《乙10①②》
ウ 被告は,12月24日,原告の役員全員に呼び出され,「明日から来なくていい」と言い渡され,役員業務委託契約を一方的に解除された。そして,原告の役員らから本件契約書の提出を求められ,被告に対する役員報酬が支払われなくなることを恐れたため,これに記名押印・署名押印した上で,原告に差し入れた。《甲1》
エ 原告代表者は,12月26日,名古屋営業所に赴き,従業員に対し,「そもそも原告は,みなさんとは契約を結んでいない。」などと述べて,原告が従業員らを雇用したことを否定した。
従業員らは,原告代表者の説明を受け入れず,場が紛糾した。
オ 原告代表者は,12月28日,再度名古屋営業所に赴き,従業員に対し,東京又は新潟への異動が可能であれば原告において受け入れる旨などを説明した。
(4)  名古屋営業所従業員に対する11月分及び12月分の給与の支払について
ア 被告は,12月29日午後2時42分頃,原告代表者に対し,「明日の振込お願いします。手数料等は後日計算後にご請求お願いします。」とのメールを送信した。《乙13》
イ 原告代表者は,同日午後4時31分頃,被告に対し,LINEを用いて,「明日の給与の件ですが,私が物理的に支払い不可能です。」「Yさんの100万は三井住友より振り込もうと思ってますが,給与は代行での支払いいただけませんか?」「また,弊社の雇用は社員7名のみの私としては認識です。」と連絡した。
被告は,これに対し,LINEで「代行支払の件,承知しました。アルバイトもBさんに書類提出していますのでX社雇用の認識です。自分の108万円ありがとうございます。」という返事を送信した。
原告代表者は,その返事として,「アルバイトは履歴書のみです。」と述べて,アルバイトの雇用はしていないと主張し,被告の報酬については,「100万円を従業員の支払い確認後入れます」と述べ,さらに,従業員の給与について「また,代行的に支払ったという互いの証明はどうしましょう?」と被告に問いかけた。これに対し,被告が,「代行支払依頼書的なものをください。」と応えると,原告代表者は,午後7時25分頃,「かしこまりました!これは,メールでお送りすればいいですか?」と返信した。《乙2,11,13》
ウ 原告代表者は,同日午後7時58分頃,被告に対する返信メールに「給与の立替払いの依頼及びその清算について」と題するa社宛ての書面のファイルを添付し,メール本文に「支払い依頼書をお送りいたします。」と記して送信した。
同書面には,「下記の試用期間中の弊社社員6名及び委託スタッフ1名に対し,平成26年11月度の給与及び委託料の立替払いを依頼いたします。」との記載があり,「記」として,7名分の社員名,支払依頼金額,雇用保険料及び源泉所得税と,各金額の合計額が列記されている。同書面による支払依頼金額は,合計165万1186円であった。
なお,同書面には,立替払いの依頼の後に,「また,その清算につきましては,貴社よりご入金予定の下記スタッフの出向費と相殺させていただき,雇用保険料(1.35%)及び源泉所得税に関しては,弊社より貴社に下記の通りご請求させていただきます。」との記載があるが,「入金予定のスタッフの出向費」との文言は,原告被告間の話合いもなされないままに,原告代表者の一存で加えられたものである。《乙12,13,原告代表者・33頁》
エ 被告は,12月30日,上記支払依頼書に記載された7名を含む名古屋営業所の従業員25名(アルバイトを含む。)に対し,11月分の給与として,総額321万3936円を振り込んで支払った。
なお,このうち上記7名に対する支払額は,合計164万1190円であった。《乙4⑥ないし⑧》
オ 被告は,平成27年1月30日,名古屋営業所の従業員21名(アルバイトを含む。)に対し,12月分の給与として,総額275万9931円を振り込んで支払った。
なお,このうち上記7名に対する支払額は,合計163万6136円であった《乙4⑨⑩》
2  争点(1)(金銭消費貸借契約の成否・効力)について
(1)  原告は,本件契約書記載のとおり,原告からa社に対する200万円の貸付けが成立した旨を主張し,これに対し,被告は,原告は,本来は原告が支払うべき名古屋営業所の経費を被告に肩代わりさせているのであると主張して,上記金員の返還義務を争っている。
この点,11月28日に原告が被告ないしa社に200万円を振り込んで給付したこと及び被告が本件契約書を作成して原告に差し入れたこと自体については争いがなく,これらの事実によれば,原告とa社の間では,上記200万円について,本件契約書の記載どおりの約定による金銭消費貸借契約の成立(意思表示の合致)が,原告と被告との間では,連帯保証契約の成立が,いずれも認められる。
(2)  被告の主張は,上記200万円は原告が負担すべき経費の支払に当てられたことから,そもそも貸金ではないと主張するものであり,これは,心裡留保ないし通謀虚偽表示による上記契約の無効を主張するものと解されないこともない。
そこで検討するに,上記1(2)の認定事実によれば,被告は,11月28日を支払期日とする名古屋営業所の経費の支払,中でも従業員の10月稼働分の給与の支払に当てるため,原告から200万円の給付を受けたものであるところ,同経費の支払は,本来,従業員の使用者であるa/b社が行うべきものであって,原告が支払義務を負うものではない。
被告は,原告代表者との打合せの結果,従業員のa/b社在籍期間の賃金について,関東の従業員だけでなく,名古屋営業所の従業員についても,原告が肩代わりすることが合意されていたと主張するところ,確かに,関東の従業員のうち,10月16日付けで原告に雇用された一部の者については,10月15日までの稼働分に対応する給与相当額を原告が負担した事実は認められるけれども(上記1(1)イ),その後,原告は,関東のその余の従業員の受入れを拒否し(同(1)ウ),名古屋営業所従業員の9月分給与の支払も行わなかったこと(同(2)イ),また,そもそも上記合意内容を明らかにする書面が何ら作成されていないことからすると,原告と被告との間で,名古屋営業所の従業員のa/b社在籍期間の賃金について,原告が肩代わりする旨の明確な合意が成立していたことを認めるのは困難である。
(3)  そうすると,上記200万円については,a/b社が支払うべき経費の支払の原資として,原告からa/b社に提供されたものであって,後日の返済ないし精算が予定されていたものと解するのが相当である。
したがって,これがそもそも「貸金」ではない旨を述べる被告の上記主張は,採用することができない。
3  争点(2)(被告ないしa社の原告に対する反対債権の存否及び額)について
(1)  争点(2)ア(原告は,a/b社の名古屋営業所における営業を承継することを合意したか)について
ア 被告は,11月1日以降,名古屋営業所における営業の主体は原告であったとして,同営業所の人件費のみならず,事務所家賃等の経費についても,被告ないしa/b社が立替払した額について,原告が主張する貸金返還請求権との相殺を主張する。他方,原告は,名古屋営業所を受け入れた事実を否認し,人件費及びその他の経費のいずれについても,被告に対する償還義務を負うことを争っている。
イ この点,まず,事務所家賃や通信費等,人件費以外の経費については,上記1の認定事実によれば,事務所の賃貸借契約や回線契約の主体がa/b社から原告に変更されたことはなく,11月1日以降も,これらの経費の第一次的な支払義務を負っていたのはa/b社であったこと(上記1(2)オ),また,11月以降の名古屋営業所における売上げも,原告ではなく,被告ないしa/b社に入金されていたこと(同カ)が認められるところであり,他方,これらの経費及び売上げの精算について,原告と被告ないしa/b社との間で何らかの合意が成立したことを認めるべき証拠はない。
そうすると,被告ないしa/b社が支出した名古屋営業所の経費について,直ちに原告から償還されるべきものと認めることはできない。
ウ もっとも,原告代表者が11月1日に名古屋営業所に赴き,「今日から原告の社員である」旨を述べ,名古屋営業所の従業員のうち9名については,同日以降,原告の雇用保険に加入させたこと(上記1(2)エ),名古屋営業所の従業員らが,12月17日に開催された原告の社員総会に参加したこと(同(3)イ),12月26日に原告代表者が名古屋営業所の従業員らの雇用を否定すると,従業員らは原告代表者の説明を受け入れず,紛糾したこと(同(3)エ),原告代表者が,12月29日,被告に対し,原告が「雇用」した社員7名について,給与の「代行での支払」を依頼したこと(同(4)イ,ウ)を総合すると,名古屋営業所の従業員のうち,少なくとも給与の代行支払の依頼がなされた7名については,11月1日以降,雇用契約に基づいて原告が支払し,給与の支払義務を負担していたものと認められる。
この点,原告代表者は,名古屋の従業員に対しては,被告から話を合わせるよう要請され,原告は,形式的には受け入れているかのような素振りをみせていたにすぎないとか,支払依頼書の発行に至るまでのLINEのやり取りも被告に求められたとおりに送信したものである等と述べるが,同供述は,上記認定事実に照らし,不合理であって,信用することができない。
(2)  争点(2)イ(名古屋営業所について被告ないしa社が立て替えた経費等の額)について
上記(1)において検討したところによれば,名古屋営業所について被告ないしa/b社が支払った経費のうち,原告代表者から代行支払の委託があった7名分の給与については,被告ないしa/b社による支払と同時に,原告はこれを償還すべき義務を負うものといえ(民法650条1項),上記1(4)エ及びオによれば,その額は,12月30日支払われた11月分給与について164万1190円及び平成27年1月30日支払われた12月分給与について163万6136円であるものと認められる。
これ以外の経費については,上記(1)イに述べたとおり,原告から直ちに償還されるべきものとは認められない。
(3)  争点(2)ウ(役員業務委託契約に基づく手当等の未払額)について
ア 原告と被告との間の役員業務委託契約において,原告が月額100万円の報酬のほか,交通費の全額及び住宅手当として住居費(賃料)の50%を支払う旨の合意がなされていたことについては,当事者間に争いがない。
そして,証拠《乙8,9の①ないし⑤,被告本人》によれば,被告の12月分の通勤定期代は1万4940円であり,10月16日から12月までの被告住居の賃料は合計40万円(月額16万円×2.5か月分)であったことが認められるから,原告は,被告に対し,交通費の支給として1万4940円及び住宅手当の支給として賃料の50%に相当する20万円の合計21万4940円を支払うべきこととなる。なお,支払期については,原告被告間の約定内容は不明であるが,役員業務委託契約の解除日である12月24日には到来したものと認めるのが相当である。
イ 被告は,役員業務委託契約が実質的には雇用契約であったとして,解雇予告手当が支払われるべきであったと主張するが,同契約が雇用契約であったと認めるに足りる証拠はなく,上記主張は採用することができない。
4  結論
以上によれば,原告は,被告に対し,本件契約書による連帯保証契約に基づき,平成27年1月31日,同年2月28日,同年3月31日及び同年4月30日に,各50万5200円の返済を受けるべき債権を有していたが,他方において,原告は,役員業務委託契約に基づく交通費及び住宅手当合計21万4940円並びにa/b社が立て替えた平成26年12月30日支払の11月分給与164万1190円及び平成27年1月30日支払の12月分給与163万6136円を支払うべき反対債務を負ったものということができる。
そして,被告の相殺の意思表示により,これらの債権債務は相殺適状時に遡って対当額について消滅するところ,その結果,下記のとおり,原告の本訴請求債権は,その全額が弁済期の到来と同時に消滅したものと認められる。
弁済期 原告の債権 被告側債権 被告側債権残額
H26.12.24 21万4940円 21万4940円
H26.12.30 164万1190円 185万6130円
H27.1.30 163万6136円 349万2266円
H27.1.31 50万5200円 298万7066円
H27.2.28 50万5200円 248万1866円
H27.3.31 50万5200円 197万6666円
H27.4.30 50万5200円 147万1466円
したがって,原告の請求は理由がないこととなるから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第17部
(裁判官 早田久子)

 

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