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「営業支援」に関する裁判例(22)平成29年 9月27日 東京高裁 平28(ネ)2882号 業務委託報酬請求控訴事件、附帯控訴事件

「営業支援」に関する裁判例(22)平成29年 9月27日 東京高裁 平28(ネ)2882号 業務委託報酬請求控訴事件、附帯控訴事件

裁判年月日  平成29年 9月27日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ネ)2882号・平28(ネ)3877号
事件名  業務委託報酬請求控訴事件、附帯控訴事件
裁判結果  原判決一部変更、附帯控訴棄却  文献番号  2017WLJPCA09276008

要旨
◇控訴人会社が、被控訴人会社からコンピュータープログラム言語変換ソフトの開発等の依頼を受け、被控訴人会社との間の業務委託契約に基づき、委託業務を行ったと主張して、被控訴人会社に対し、主位的に、本件業務委託契約に基づき、予備的に、商法512条に基づき、未払報酬合計額及びその遅延損害金の支払を求めたところ、原審が、主位的請求を棄却し、予備的請求を一部認容したことから、控訴人会社が控訴したのに対し、被控訴人会社が附帯控訴した事案

裁判経過
第一審 平成28年 4月27日 東京地裁 判決 平25(ワ)26555号 業務委託報酬請求事件

裁判年月日  平成29年 9月27日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ネ)2882号・平28(ネ)3877号
事件名  業務委託報酬請求控訴事件、附帯控訴事件
裁判結果  原判決一部変更、附帯控訴棄却  文献番号  2017WLJPCA09276008

平成28年(ネ)第2882号業務委託報酬請求控訴事件,
同第3877号附帯控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成25年(ワ)第26555号)

東京都中央区〈以下省略〉
控訴人兼附帯被控訴人(原告) X株式会社(以下「控訴人」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 北原弘也
同 鈴木潤子
同 浦山慎介
横浜市〈以下省略〉
被控訴人兼附帯控訴人(被告) 株式会社Y(以下「被控訴人」という。)
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 今村誠
同 江端重信

 

 

主文

1  本件控訴に基づき原判決主文2,3項を次のとおり変更する。
(1)  被控訴人は,控訴人に対し,3116万6534円及びこれに対する平成25年10月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  控訴人のその余の予備的請求を棄却する。
2  控訴人の主位的請求を棄却した部分に関する本件控訴を棄却する。
3  本件附帯控訴を棄却する。
4  訴訟費用(控訴費用,附帯控訴費用を含む。)は,第1,2審とも,これを2分し,その1を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。
5  この判決は,主文第1項(1)のうち原審認容部分を超える部分に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  控訴及び附帯控訴の趣旨
1  控訴の趣旨
(1)  原判決を次のとおり変更する。
(2)  被控訴人は,控訴人に対し,6785万2050円及びこれに対する平成24年3月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  附帯控訴の趣旨
(1)  原判決中,被控訴人敗訴部分を取り消す。
(2)  前項の部分につき,控訴人の請求を棄却する。
第2  事案の概要等(以下,理由説示部分を含め,原判決の略称をそのまま用いる。)
1  事案の概要
本件は,控訴人が,被控訴人からコンピュータープログラム言語変換ソフトの開発等の業務(本件業務:①開発業務(言語変換ツール)・②カスタマイズ業務,③言語変換業務・④営業支援業務)の依頼を受け,被控訴人との間で,報酬特約付業務委託契約(本件業務委託契約)が成立したと主張して,(1)主位的に,(報酬特約付)本件業務委託契約に基づき,(2)仮に本件業務委託契約が認められないとしても予備的に,商法512条に基づき,被控訴人に対し,未払報酬又は「相当な報酬」として合計6785万2050円及びこれに対する平成24年3月1日(被控訴人による最終支払日の翌日)から支払済みまでの商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は,控訴人と被控訴人との間には本件業務委託契約が成立したとは認められないとして控訴人の主位的請求を棄却した上,本件業務のうち本件開発業務についてだけ商法512条を適用して,被控訴人に対して「相当な報酬」1700万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成25年10月17日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものとして控訴人の予備的請求を一部認容したことから,控訴人が,主位的請求棄却・予備的請求一部棄却部分を不服として本件控訴を提起し,他方,被控訴人は,予備的請求一部認容部分を不服として本件附帯控訴を提起した。
2  本件における基礎的事実並びに争点及び争点に対する当事者双方の主張は,後記3において原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2(原判決2頁11行目から同20頁初行まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
なお,以下において「基礎的事実」とは補正後のものをいう。
3  原判決の補正
(1)  原判決2頁14行目の「である(弁論の全趣旨)。」を「であるが,グルーブ14社全体では資本金4億5000万円以上で従業員数も8000名を超え,年間売上高も420億円を超える規模を有している(乙1,2,弁論の全趣旨)。」に,同16行目の「である」を「で,従業員数は約2000名である」にそれぞれ改める。
(2)  原判決3頁2行目の「注文書」の前に「被控訴人が定める様式の」を加え,同頁4行目の「(甲3,弁論の全趣旨)。」の次に行を改めて,次のとおり加える。
「 そのため,被控訴人と控訴人との間においては,本件基本契約の上記規定に基づき,被控訴人(調達課)が,控訴人に対し「注文書(当初書面)」(単価,金額は未定とされている。)を発行した上,「見積依頼書」を発行するなどして代金額の見積りを依頼し,これに対し,控訴人は,「御見積書」を発行して見積金額を提示し,被控訴人は,この見積金額に異議がなければ控訴人に対し,「注文書(補充書面)」を発行することにより正式に契約の申し込みを行い,控訴人がこれを承諾することにより個別契約が成立するという受発注手続が行われた(乙3の1の1ないし乙3の43の2,なお,乙4の1ないし5,5の1の1ないし5,弁論の全趣旨)。」
(3)  原判決5頁9行目の「撤退した。」の次に行を改め,次のとおり加える。
「(7) 被控訴人における物品及び役務の調達権限等
被控訴人の組織分掌においては,作業外注,要員外注及び購買の発注業務,価格管理,取引先管理(信用審査,口座管理等)を所管業務とするのは技術本部技術部調達課(以下「被控訴人調達課」という。)と定められており,他方,b本部c部の所管業務は,業種系企業に対するトータルソリューションサービスのうち直受顧客に対するトータルソリューションサービスとされている(乙17,27,証人C)。」
(4)  原判決6頁13行目末尾に行を改め,次のとおり加える。
「 本件カスタマイズ業務には,次の2つのものがある。
① 個別案件に係る本件カスタマイズ業務
被控訴人の商談において顧客から引き合いがあり,上記サンプルを試作する段階で,当該プログラムの特性や本件ツールの適用性を把握し,後に被控訴人が受注した場合に備えて,本ツールの改良等を行う業務
② 性能向上に係る本件カスタマイズ業務
個別の受注等を前提とせずに,本ツールの精度をより高め,汎用的な適用が可能となるよう,その性能の向上を目的として改良を行う業務(上記①を以下「個別案件に係る本件カスタマイズ業務」,同②を「性能向上に係る本件カスタマイズ業務」という。)。」
(5)  原判決7頁10行目の「ている。すなわち,」から同12行目の「になり,また」までを削る。
(6)  原判決8頁6行目の「形で」を「名目で」に改め,同8行目の「そこで」を「もっとも,ここでいう「個別案件に対する報酬」とは,本件業務の報酬として他の業務や案件と一体的に算出されたものであり,個別案件における言語変換業務ごとの報酬を特定して算出したものではなく,控訴人は,被控訴人のCから指示された金額を「御見積書」に記載し,被控訴人の調達課に送付していた。したがって,本件工数清算合意による報酬は,Cが指示した金額分だけが本件個別契約(43件)によって支払われる報酬に仮託して支払われていたにすぎなかった。」に改め,同23行目の「として」から同24行目の「(消費税抜)」までを削る。
(7)  原判決9頁2行目の「残額826万9140円」を「残額765万円及び岡山県税務案件で発生した出張日当及び交通費61万9140円」に改め,同16行目の「合意された。」の次に「すなわち,被控訴人の調達部門は,個別案件ごとに,当該個別案件についての被控訴人内部における事業分門や間接部門の人件費等のコストを踏まえ,控訴人に対する発注金額を検討した上で注文書を発行していたものであり,これと別に本件ツールの開発費用のみを支払うことはない。したがって,本件個別契約の報酬額は当該個別案件に係る言語変換業務と無関係に算出されたものではなく,本件個別契約に基づく報酬合意とは異なる報酬合意が存在しているわけではない。」を加える。
(8)  原判決10頁11行目から12行目を「イ 控訴人は,本件ツールの開発費用につき言語変換業務の個別案件の代金への「上乗せ」によってのみ回収を図り,その代金によって回収されない場合は当該費用は賄われないことを了解していたこと」に,同13行目の「DとEは」から同14行目の「合意しており」までを「ここでいう「上乗せ」とは以下の趣旨である。すなわち,本件ツールは控訴人が被控訴人から再受託した個別案件に係る言語変換業務の業務遂行に使用するツールであるところ,かかるツールの開発費用は被控訴人から受諾業務である言語変換業務の個別案件の原価の一つとして認識され,その金額を原価に加算した上,これに控訴人自身の利益を加えて個別案件の受注金額を算出し,これにより本件ツールの開発費用を回収することが予定され,個別案件の発注がない場合には別途その支払分を被控訴人に請求しない旨を了解していたことは明らかであり」に,それぞれ改める。
(9)  原判決14頁22行目から同20頁初行までを以下のとおり改める。
「(控訴人の主張)
ア 基本的主張
(ア) 本件業務は,商人である控訴人が,その「営業の範囲内」において行ったものである。
(イ) 本件業務が「他人(被控訴人)のためにした行為」であることについて
a 本件業務(本件開発業務,本件言語変換業務,本件カスタマイズ業務及び本件営業支援業務)は,原判決別紙「受託業務の進行表」(以下「別紙進行表」という。)に記載のとおり,控訴人の担当従業員らによって行われたものである。ただし,同表記載の「本件言語変換業務」と原判決別紙「本件個別契約一覧表」(「別紙一覧表」という。)記載の言語変換業務との関係は不明である。
b 本件業務は,いずれも控訴人が被控訴人のDからの委託を受け行ったものである上,被控訴人の利益となる行為に当たる。すなわち,そもそも本件開発業務(本件ツールの開発)がなければ被控訴人の本件サービス事業は成り立たないこと,本件言語変換業務は,被控訴人の行う本件サービス事業自体の目的であること,本件カスタマイズ業務は,本件ツールの精度を高めるとともに,作業量を減少させ,被控訴人が顧客に提示する見積額の減額,納期の短縮をもたらし,被控訴人の受注競争力を高めるものであること,そして,本件営業支援業務は個別案件の受注に不可欠なものであることからみて,いずれも被控訴人の利益となる行為である。以上によれば,本件業務は,商法512条の「他人のためにした行為」に該当する。
なお,たとえ本件業務が控訴人の利益にも寄与するものであったとしても,それと併せて被控訴人の利益のためにも本件業務が行われていたのであるから,本件業務が上記「他人のためにした行為」に当たることは明らかである。
(ウ) 本件業務の「相当な報酬」について
a 平成20年4月から平成23年3月までの間の「相当な報酬」
① 工数(作業時間)の正確性
控訴人の社員は,基本的に被控訴人のオフィスに常駐し,被控訴人の指示により被控訴人の顧客先に出張して作業を行っていたが,いずれも月曜日から金曜日までの各日始業から終業まで作業をしていたのであり,単価にかける作業工数は「1.0(か月)」となるのが原則であるところ,控訴人の社員が上記期間内に被控訴人オフィスにおいて本件業務に係る作業に従事した時間は,原判決別紙「Q移行案件 稼動実績」(以下「稼働実績表」という。)のとおりである。
被控訴人は,稼働実績表の工数につき,正確な作業時間を示すものではない旨主張するが,稼働実績表の工数は,EとDが各々把握していた控訴人の社員の作業時間(なお,控訴人の社員は被控訴人オフィスの在席時間中,常に本件業務に従事していたものであるから,在席時間は正味作業時間を示すものである。)を相互に確認し,その結果を正確に反映したものである。
なお控訴人の従業員であるOは,Dからの依頼により本件業務以外の介護案件の業務に従事していたことがあるが,これについては被控訴人のCも了解していた。いずれにしても控訴人の従業員が本件業務以外の業務をしたのは,上記介護案件に関する作業以外にはない。
ちなみに,被控訴人が工数清算方式を改め,個別案件ごとに当該案件のための作業報酬を定める方式に変更したいと提案した後の平成23年4月以降は,個別案件に直結しないカスタマイズ業務に関する業務はなくなった。そして同月以降は,合意額に未払報酬の一部が上乗せして支払われることになった。
② 単価の相当性
被控訴人のD(平成22年7月以降は後任のI(以下「I」という。))と控訴人のEは,協議の上で,控訴人作業員の経験及び技術を評価し,業界の相場を考慮して稼働実績表の原価欄に記載されているとおり(例えば,番号1のJの「750.0」とは,工数1.0当たり75万円であることを意味する。),各技術者の単価を決定した。DとEは,長年この業界に従事し,作業員である控訴人の社員のことを良く知っている者であって,かかる両名が各作業者の経験及び技術並びに業界の相場等に応じて各技術者の単価を決定していること,また,被控訴人の本部長の地位にあるH及び部長の地位にあるCがこれを了承していたことからみて,稼働実績表の単価は相当なものである。
加えて,本件業務委託契約に先行する秋田県庁案件では,EとDの合意により,単価について,システムエンジニアは月額80万円,プログラマーは月額65万円としているところ,本件業務は,個別案件の受注が具体的になっていないため,秋田県庁案件に比べシステムエンジニアの単価を低く設定していることや,ソフトウェア開発技術者料金調査の結果及び被控訴人の親会社の発注単価と比較しても,上記単価は相当である。
③ 以上から,上記平成20年4月から平成23年3月までの間における稼働実績表の工数に,同表の単価を乗じて算出される金額は,上記期間の本件業務に対する報酬として相当な報酬である。
b 平成23年(2011年)4月~6月までの岡山県庁税務案件に係る本件言語変換業務についての「相当な報酬」
平成23年4月以降,報酬の算定方式が工数清算方式から事前確定方式に切り替わった際,控訴人と被控訴人において,岡山県庁税務案件について,予定工数及び従前の単価に基づき報酬額を915万円とする旨の合意した事実が認められないとしても,この案件の実績工数は予定工数を下回ることはなく,従前の単価は相当なものであるから,915万円は岡山県庁税務案件の作業に係る控訴人の報酬として相当な報酬である。そして,被控訴人は岡山県庁税務案件につき控訴人に対し150万円を支払っているから,残額765万円及び上記岡山県庁税務案件に係る出張日当及び交通費61万9140円の合計826万9140円が,上記岡山県庁税務案件に関する「相当な報酬」に該当する。
(エ) まとめ
よって,控訴人は,被控訴人に対し,商法512条に基づき,平成23年3月までの本件業務の相当報酬額1億7826円から既払額1億1791万8000円を控除した6034万2000円及び平成23年4月以降の本件業務の相当報酬額826万9140円から既払金399万0140円を控除した427万9000円の合計額6462万1000円に消費税を加えた6785万2050円の支払を求める。
イ 被控訴人の後記(被控訴人の主張欄ア記載)の主張に対する反論
(ア) 被控訴人は,「個別案件と係わらない性能向上に係る本件カスタマイズ業務が行われた事実は存在せず,また,かかる業務が行われた事実は認められない」旨主張するが,控訴人は,少なくとも以下の性能向上に係る本件カスタマイズ業務を行っており,その「相当な報酬」の合計は1638万2000円に上る。
a 平成22年(2010年)2月5日から同年7月30日までの間に行われた性能向上に係る本件カスタマイズ業務について
① 個別案件に係る本件カスタマイズ業務との区別が可能なもの
別紙進行表の原資料である表(甲17の36ないし58・なお以下これらの表を一括して「本件進行表」という。)「1.進捗」「進捗状況」欄(2月5日から7月30日)には「変換ツール改修随時対応中」との記載があるところ,この「進捗状況」欄の記載に対応する「案件名」欄には個別案件が記載されておらず,かつ,実際,上記期間中は個別案件の受注もなかったのであるから,上記「変換ツール改修随時対応中」とは「性能向上に係る本件カスタマイズ業務」を意味しているものと解される。そうすると上記期間中,控訴人の従業員によって,上記性能向上に係る本件カスタマイズ業務が行われていたものというべきである。
なお,本件進行表(甲17の46以下)記載のEの「進捗状況」欄は空白になっているが,これは同人が管理業務にも従事していたからであって,性能向上に係る本件カスタマイズ業務に関与していなかったことを意味する。
② 個別案件の失注に伴うもの
本件進行表(甲17の46ないし53)の「進捗状況」欄(4月17日から6月12日)にはOが行った「p社―リソース調査対応中」との記載があり,この記載は,p社案件のカスタマイズ業務が行われていたことを意味するところ,この案件は結局失注し,個別契約の締結には至らなかったが,このような場合であっても,途中まで行われていたp社案件のカスタマイズ業務は,性能向上に係る本件カスタマイズ業務と同列に取り扱われるべきである。
③ 以上のとおり,上記①②の性能向上に係る本件カスタマイズ業務はいずれも認定可能であって,かつ,商法512条の「他人のために行為をしたとき」に該当するところ,これらの性能向上に係る本件カスタマイズ業務に対する「相当な報酬」は,別紙「性能向上のカスタマイズの報酬表」記載のとおり1494万5000円が相当である。
b 平成22年(2010年)1月の性能向上に係る本件カスタマイズ業務
本件進行表(甲17の32ないし35)によれば,控訴人の従業員は,平成22年(2010年)1月8日から同年2月4日までの間,「変換ツール改修随時対応中」と記載された業務を行っており,かかる業務は,上記aで検討したとおり,性能向上に係る本件カスタマイズ業務を意味するものであるが,上記期間中,同時に並行してq銀案件(以下「本件q銀・言語変換業務」という。)が行われていたところ,本件カスタマイズ業務と本件q銀・言語変換業務との業務割合は,控えめにみて半々であるから,本件カスタマイズ業務に対する「相当な報酬」は,別紙「q銀案件の報酬表」記載の金額(287万5000円)の約2分の1に当たる143万7000円が相当である。
(イ) 被控訴人は,①別紙進行表記載の本件言語変換業務は,平成22年(2010年)9月から10月の間に行われたk社案件に関する本件言語変換業務を除き,その全てが本件個別契約(43件)に基づき行われたものであるとした上,②本件言語変換業務及び受注した個別案件に係る本件カスタマイズ業務は,控訴人が本件個別契約を履行するに当たり,その前提として行った本件個別契約の対象業務の一部であって,その対価は,本件個別契約に定める対価に含まれているのであるから,報酬についての合意があり,商法512条の請求はできない旨主張する。
a しかし,被控訴人の上記主張①は,別紙一覧表に記載された本件個別契約が予定する言語変換業務を,単に別紙進行表上に転記しただけのものであって,同表に記載のある言語変換業務が上記k社のものを除き本件個別契約に基づき行われたものであると認めるに足る具体的な立証はない。
b また,この点は措き,本件進行表の記載を仔細に検討すると,以下のとおり控訴人が行った言語変換業務の中には,本件個別契約の予定する通常の業務の範囲に含まれないものとして,上記ア(ウ)bで主張した岡山県庁税務案件に係る本件言語変換業務(②)のほかに,平成22年(2010年)1月の本件q銀・言語変換業務(①)が存在している。
以下,この①の本件q銀・言語変換業務について主張した後,上記ア(ウ)bで主張した岡山県庁税務案件に係る本件言語変換業務につき主張を補充する。
① 平成22年(2010年)1月の本件q銀・言語変換業務に関する主張
ⅰ 本件進行表(甲17の32ないし35)のとおり,控訴人社員は,平成22年(2010年)1月8日から同年2月4日までの間,〈a〉「q銀本移行第3,第4ロット分対応」〈b〉「q銀本移行第4ロット分対応」〈c〉「q銀本移行残務整理」と記載された業務を行っているところ,これらは,本件個別契約(No.16~20)に基づく言語変換業務の終了後に新たに発注された業務(本件q銀・言語変換業務)であるから,本件個別契約の対象業務の一部ではなく,商法512条の「他人のためにした行為」に該当する。
ⅱ ところで,控訴人の担当従業員は,上記(ア)bのとおり,上記期間中,本件カスタマイズ業務も同時並行して行っており,同業務と本件q銀・言語変換業務との業務割合は,概ね半々である。したがって,本件q銀・言語変換業務に対する「相当な報酬」は,別紙「q銀案件の報酬表」記載の金額(287万5000円)の約2分の1に当たる143万8000円が相当である。
② 平成23年(2011年)4月~6月までの岡山県庁税務案件に係る本件言語変換業務に関する補充主張
本件進行表(甲17の91~100)のとおり,控訴人は,平成23年(2011年)4月2日から同年6月30日までの間,岡山県庁税務案件についての言語変換業務を行っている。この業務の「相当な報酬」は,工数清算方式によると別紙「岡山県庁税務案件の報酬表」のとおり1021万3000円であるが,被控訴人は,これを915万円と算定し,そのうち150万円については,本件個別契約(No.36)の報酬として支払い,その余の765万円は,被控訴人のEからの依頼を受け「未発注の残高」として取り扱い,本件個別契約(No.36)の報酬合意に含まれないことを明確にした。したがって,上記「未発注の残高」に相当する部分は,本件個別契約(No.36)の対象業務の一部には含まれず,商法512条の請求ができる。
ウ 本件開発業務に関する費用等の上乗せ分の控除について(反論)
(ア) 被控訴人の主張は,本件開発業務に関する費用の本件個別契約の報酬に対する上乗せ部分があったことを前提とするが,否認する。
本件開発業務が終了した2008年9月から2009年9月までの間に支払われた本件個別契約の報酬は6000万円であるところ,この金額は,工数清算方式によって算出された7000万円弱を大きく下回っており,仮に本件個別契約の報酬に本件開発業務の費用が上乗せられていたならば,このような乖離が生じるはずはない。本件開発業務終了後の平成20年10月以降,本件個別案件の作業に要した工数に対応する金額(個別案件に係るカスタマイズ等)が予想外に多くなり,結果的に本件開発業務に係る報酬を上乗せする余裕はなかった。現に,本件稼働表によれば本件開発業務の報酬(2978万円余り)は漸減してはずであるが,殆ど減少していないのは(2900万円),その表れである。本件個別契約の報酬には当該個別案件処理(言語変換+カスタマイズ)の対価だけが含まれるのであって,本件開発業務の対価などが入り込む余地はなく,その上乗せが行われた余地はない。
(イ) 被控訴人の主張は,「上乗せをしたことにより,被告(被控訴人)の取り分は本来の取り分より20パーセントぐらい少なくなった」とのD証言(証人・17頁)を前提としている。しかし,上記D証言は,乙25の「外注比率」が77パーセントとあるのをみて,自己が認識していた外注比率は50パーセントであったことから推測で20パーセントと述べただけで,確たる根拠に基づくものではなく到底信用することはできない。被控訴人の主張は前提を欠くものというべきである。
エ 無報酬の特約について(反論)
否認する。そもそも本件開発業務の費用を本件個別契約の報酬に上乗せして回収することは,無報酬の特約があることと矛盾する。被控訴人のDは,控訴人の取締役であるGに対して,平成20年4月1日付け覚書の案(本件覚書)を示した当時から,本件ツールの開発費用を支払う約束があるものと認識していたのであるから(証人D・19~20頁),本件覚書をGに示したとしても,そこに被控訴人に対して本件ツールの開発を無報酬で行わせる意思などなかったものというべきである。
(被控訴人の主張)
ア 控訴人の基本的主張(控訴人の主張欄ア)について
(ア) 上記基本的主張(ア)は特に争わない。
(イ) 上記基本的主張(イ)(商法512条に基づく請求)に対して
a 上記基本的主張(イ)aについて
① 別紙進行表記載の本件言語変換業務は,平成22年(2010年)9月から10月の間に行われたk社案件に関する本件言語変換業務を除き,その全てが本件個別契約(43件)に基づき行われたものである。
② 本件カスタマイズ業務のうち性能向上に係る本件カスタマイズ業務が行われた事実については否認する。そもそも個別案件とは関係のない性能向上に係る本件カスタマイズ業務など存在するはずはなく,現に,性能向上に係る本件カスタマイズ業務が行われたことを裏付ける客観的な証拠はない。したがって,性能向上に係る本件カスタマイズ業務の関係で商法512条の「相当な報酬」は発生しない。
b 上記基本的主張(イ)bについて
① 商法512条の「他人のためにした行為」と認められるには,他人のためにする意思をもって行為したことが客観的な証拠によって認定される必要があり,単に当該行為が客観的に他人の利益になる行為であるというだけでは足りないものと解されるところ,開発された本件ツールの納品,検収等はなく,被控訴人の資産にも計上されたことがないので,本件ツールは専ら控訴人が使用することが想定され,控訴人に利益をもたらすものであり,その権利も控訴人に帰属するから,本件開発業務は被控訴人のためにした行為ではない。
また,性能向上に係る本件カスタマイズ業務及び本件営業支援業務は,本件ツールを使用して行うQ言語変換業務の効率化により,控訴人の人件費等の負担の削減及びそれに伴う控訴人の利益率の向上並びにQ言語変換業務の受注拡大による控訴人自身の売上げ拡大を図ることにあり,いずれも控訴人自身の利益を図るものであるから,本件開発業務,性能向上に係る本件カスタマイズ業務及び本件営業支援業務は,いずれも商法512条の「他人のためにした」ものとはいえない。
なお,Eによる管理業務は,控訴人内部の業務効率の適正化による人件費等の負担の適正化や労働法令遵守等のために行われるものであり,控訴人自身の利益のために行われたものにほかならない。
② 本件言語変換業務及び受注した個別案件に係る本件カスタマイズ業務は,控訴人が合計43件の本件個別契約を履行するに当たり,その前提として行った本件個別契約の対象業務の一部であって,その対価は,本件個別契約に定める対価に含まれているのであるから,本件言語変換業務及び受注した個別案件に係る本件カスタマイズ業務は,商法512条の予定する「他人のためにした行為」には当たらない。
c 上記基本的主張(ウ)aについて
① 同①(工数(作業時間)の正確性)について
稼働実績表のうち,平成23年3月までの工数については,C及びDが把握していた各作業者の1か月ごとの被控訴人オフィス又は出張先でのおおよその在席状況を数値化したものに過ぎない上,平成23年4月以降の工数についても,Cが岡山県庁税務案件の同月以降の作業分及び岡山県庁給与案件で必要な人員を大まかに事前に推測した内容を記載したものをEが転記しただけのものであって,いずれもその正確性に疑問がある。また,稼働実績に基づかない合意による工数や,本件業務と無関係の工数も計上されている(例えば控訴人従業員のOは本件業務のほかに介護案件に作業にも従事していた(乙32)のほか,本件カスタマイズ業務とは読み取れないもの(①平成22年4月のL,E,O,R,U及びSの各業務,②同年5月のEを除く同人らの各業務,③同年6月のO,R,U及びSの各業務,④同年7月のR,U及びSの各業務,⑤同年8月のL,R及びGの各業務,⑥同年9月のRの各業務,⑦同年10月のO,R,U,S及びV1の各業務を水増して記載している。)。したがって,稼働実績表によって本件業務の工数を算定することはできない。
② 同②(単価の相当性)について
控訴人が主張する各作業員の単価は,D及びCが作成したQ移行原価発生内訳(山積表・甲31ないし33,乙25)記載の単価を根拠とするものであるが,そもそもこの単価は,Dが控訴人から本件ツールの開発費用回収のために個別案件に上乗せされてもやむを得ない上限金額の目安を把握するために作成したものであり,正式な査定も経ない便宜的な数字にすぎない。また,その金額は,当時の被控訴人程度の規模の企業が同様の業務を外注した場合の単価や,秋田県庁業務の単価よりも高額であり,相当とはいえない。
d 上記基本的主張(ウ)bについて
平成23年4月以降の岡山県庁税務案件に係る本件言語変換業務は,本件個別契約(No.34)に基づき同年3月まで行われていた岡山県庁税務案件に係る業務が作業期間内に終了しなかったことから行われたものであるから,新たな発注に基づき行われた言語変換業務ではない。そして,上記岡山県庁税務案件については,本件個別契約(No.36)の報酬合意により最終的に150万円が追加払いされることになったのであるから,結局,上記岡山県庁税務案件に係る業務の報酬は,本件個別契約(No.36)の報酬合意によって全て賄われている。したがって,上記150万円を超える部分(未発注の残高)も同個別契約の対象業務に含まれているものというべきである。
イ 控訴人の上記の反論(控訴人の主張欄イ)に対して,
(ア) 控訴人は,上記控訴人の主張イ(ア)a①②のとおり,「平成22年(2010年)2月5日から同年7月30日までの間に行われた本件カスタマイズ業務には個別案件に係る本件カスタマイズ業務と区別が可能な性能向上に係る本件カスタマイズ業務や個別案件の失注に伴う性能向上に係る本件カスタマイズ業務が存在している」旨主張する。
しかし,本件進行表(甲17の46以下)の「進捗状況」欄には「岡山県庁―事前調査対応中」と記載されており,これは平成22年4月17日の週から岡山県庁の言語変換業務の案件についてカスタマイズ業務等が開始されたことを意味すること,同表(甲17の34)の「進捗状況」欄には「岡山県庁―サンプル対応」と記載されており,これは同年2月頃から岡山県庁税務案件に係るカスタマイズが開始されていたことを意味すること,そして,証人D(13頁)は,その尋問で,上記期間中(2月から7月)は岡山県庁税務案件のカスタマイズ業務が中心であったと明確に証言しており,控訴人のEも同旨の陳述書を提出していること(甲48・46頁)などからみて,上記期間中,控訴人が主張するような個別案件とは関係のない性能向上のカスタマイズ業務が行われていたものとは認められない。
なお,同表(甲17の34以下)の「E」欄は空白であって,同人が性能向上のカスタマイズに従事していたことの証拠とはならない。
(イ) また,控訴人は,平成22年1月の本件q銀・言語変換業務と同時期(平成22年1月8日から同年2月4日)に行われたカスタマイズ業務は,本件進行表によると「変換ツール改修随時対応中」と記載されており,これは「性能向上に係る本件カスタマイズ業務」に当たる旨主張するが,本件進行表の上記記載だけでは上記期間中に行われたカスタマイズ業務が性能向上に係る本件カスタマイズ業務であるとの立証があったとはいえず,上記(ア)と同様,性能向上に係る本件カスタマイズ業務が行われていたとは認められない。
(ウ) さらに,控訴人は,上記(控訴人の主張)欄のイ(イ)b①のとおり,「本件q銀・言語変換業務は,本件個別契約(No.16~20)に基づく言語変換業務の終了後に新たに発注された言語変換業務であるから,本件個別契約の対象業務の一部ではない」旨主張する。
しかし,本件q銀・言語変換業務は,本件個別契約(No.16~20)に基づく業務の延期に伴う業務であるから,本件個別契約(No.16~20)の予定する通常の業務の範囲に含まれるものというべきであり,控訴人の上記主張は理由がない。
ウ 本件開発業務に関する費用等の上乗せ分の控除について
(ア) 本件個別契約の報酬には本件開発業務の費用分が上乗せされていることは否定し難い事実である。
(イ)a Dは,その尋問で,「上乗せをしたことにより,被告(被控訴人)の取り分は本来の取り分より20パーセントぐらい少なくなった」と証言しており(証人D・17頁),これは,約2年間にわたり本件個別契約の初受注状況を見てきた者の証言として信用性が高い。
上記D証言にいう被控訴人の「本来の取り分」とは,被控訴人が顧客から受注した売上金額(乙25の2枚目の〈案件概要〉の「金額」欄)をいうものと解するのが自然であるから,結局,上記売上金額の20パーセントが本件開発業務の費用として本件個別契約の報酬に上乗せられていたもの認められる。
b そして,かかる売上金額に対する上乗せは,平成23年(2011年)3月まで続いており,その際の売上金額の合計は1億8540万円に上る(乙43)。したがって,本件個別契約(No.1~34)の報酬には,少なくとも上記1億8540万円の20パーセントである3700万円程度の「上乗せ」がなされているものというべきである。
また,同年4月以降については,〈a〉本件個別契約(No.37,39及び40・岡山県庁給与案件関係)の報酬にSの工数に相当する金額分の「未発注の残高」の上乗せと〈b〉本件個別契約(No.42,43・Sの派遣契約)の報酬のうち半額分の「未発注の残高」の上乗せが行われていたものと評価すべきであるから,これに基づき同月以降の上乗せ額を計算すると,①本件個別契約(No.37,39及び40)に関してSの岡山県庁給与案件(甲19)の予想工数である1か月あたり45万円の5か月分に相当する225万円,②本件個別契約(No.42,43)の報酬額の半額である105万円余りのほか,③平成23年9月頃被控訴人のCから控訴人に交付された表(甲21)のNo.18記載の「岡山(給与)差額・13万円2000円」とNo.22の「岡山(税追加)差額・36万8000円」の合計50万円(甲21のNo.18と22)を合算した380万円余りが上乗せられるべきである。
c 以上によれば,本件個別契約の報酬に「上乗せ」された金額は4000万円を下らないものというべきである。
エ 無報酬の特約の有無について
(ア) 本件開発業務については,主位的には本件ツールの開発が始まった当初の平成20年4月時点,又は予備的には同年6月又は9月の時点において,控訴人と被控訴人の間で,本件ツールの開発の対価を無報酬とすることが確認され,その後も,控訴人は,本件ツールの開発費用が本件個別契約の報酬代金によってしか回収されないことを了解していた。
このことは,①被控訴人のDが作成し,これを控訴人の取締役であるGに示した本件覚書中に「Q言語移行サービスの受注が発生しないときは,その開発費用を請求しないこと」とする条項が存在していること,②控訴人のEは,同年6月頃,Dから被控訴人としては本件ツールの開発費用は個別案件の受注代金の中から回収してもらう意向であることを伝えられた際,これに特に異議を述べていないこと,③また,Eは,平成23年1月初め頃,被控訴人のCから本件覚書を示されたにも拘わらず,これに特に異議を述べていないことなどからみて明らかである。
(イ) 以上によれば,控訴人と被控訴人の間には,本件ツール開発の対価を無報酬とする旨の特約があったものというべきである。そして,性能向上に係る本件カスタマイズ業務は,本件ツールの汎用的性能を向上させる点で,本件開発業務の延長線上の補充開発行為にほかならず,上記無報酬の特約の適用がある。また,取引慣行上,最終的には控訴人自身の利益につながる営業支援活動についてその協力先である被控訴人に対価を請求することは考えられず,しかも,被控訴人は顧客から営業活動自体の対価を得ることができるものではないから,本件営業支援業務が無報酬とされていたことは当然である。」
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所も,控訴人の主位的請求は,本件業務委託契約(本件各報酬合意)が認められず理由がないから棄却し,他方,予備的請求については,商法512条に基づき本件開発業務の「相当な報酬」として3116万6534円及びこれに対する本件訴状送達の日(履行の請求の日)の翌日である平成25年10月17日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと判断する。
以下そのように判断した理由について詳述する。
2  当裁判所が認定した事実
基礎的事実のほか,証人D,同G,同E及び同C並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(以下「認定事実」という。)。
(1)  本件ツール開発以前の業務委託(秋田県庁業務)
ア 被控訴人は,平成19年6月頃,d社から,i株式会社(i社)に委託する予定で,秋田県庁業務を受注した。しかし,秋田県庁業務に係るQ言語プログラムには,i社の言語変換ツールでは変換できないものが多いこと等の問題があった。そこで,被控訴人は,控訴人に対し,「標準的でないQ言語に対するi社のツールによる変換率が高まるように修正すること,同ツールによる変換後のCOBOL言語を今後の保守の便宜のために修正すること,及び同ツールでは変換できないステップを手作業でCOBOL言語へ変換すること」を委託した。
イ 控訴人の取締役であるG,常務取締役のF及び社員のL(L)は,上記委託を受け,秋田市内の被控訴人オフィスに出張して,上記各業務の作業に従事した。
なお,その際,被控訴人b本部c部副技師長のDは,同部部長のCから被控訴人の社員も使うよう指示され,実際に被控訴人の社員を2名,上記作業に参加させたところ,ミスが多いなどの問題が生じた。
(以上につき甲46,乙5の1の1ないし乙5の3の5,12の1・2,27,28,証人D,弁論の全趣旨)。
(2)  本件開発業務の依頼とその実施及び報酬支払をめぐるやり取り
ア Dは,被控訴人b本部c部の副技師長として,平成20年2月頃,秋田県庁業務に従事していたGらに対し,「3月に秋田の仕事が終了したら,eオフィスに来て,新しい言語変換ツールを作ってくれないか。」などと述べた。その後,D,G及びLは,秋田県庁業務を終え,同業務のバックアップ作業に従事するためeオフィスに常駐していたEほか3名の控訴人の社員と合流した。
そして,Dは,同年4月頃,E及びGに対し,改めて,本件ツールの開発を申し入れたところ,eオフィスに常駐していた控訴人の社員とDとの間において進捗会議がもたれ,本件ツールの内容について,被控訴人が従前使用していたi社のツールよりも言語変換効率を上げ,併せて保守性も強化することなどが話し合われた。
(甲46,48,乙28,証人D,同E,弁論の全趣旨)
イ 控訴人は,平成20年4月以降,被控訴人のeオフィスにおいて,本件開発業務に着手し,本件ツールの企画,設計,構築を行うとともに,システムテスト,運用テストを実施した(甲48,証人E,弁論の全趣旨)。
一方,被控訴人のDは,その頃から,本件開発業務等に要した費用を「未発注の残高」として概算で把握するため,工数清算方式に基づき,本件ツールの開発作業等に従事した控訴人の作業員の氏名,1月当たりの単価,在席時間の記録を開始した(甲31ないし33,乙25,証人C・9頁)。
また,Dは,本件ツールの開発について,ノウハウのない要員を参加させることにより原価が増加することを防ぐため,予め,要員を追加する場合は控訴人の社員を第一優先とすることなどを明らかにするとともに,被控訴人内部での説明に使用することなどを目的として,パソコンで,被控訴人側の責任者をD,控訴人側の責任者をGとする平成20年4月1日付け覚書の案(以下「本件覚書」という。乙7)を作成し,そのデータをパソコン内に保存した。
本件覚書には,本件ツール開発は被控訴人の共同にて実施すること(第1項),ツール開発費用はQ言語移行の受注確定により支払い(第2項),Q言語移行サービスの受注が発生しないときは,その開発費用を請求しないこと(第3項),第3項の対価として,ツール開発の要員追加やQ言語移行サービスの受注増加に対する要員増加は,控訴人を第一優先とすること(第4項)等が記載されており,被控訴人のb本部c部本部長のH及び同部部長のCに見せることが予定されていた。
Dは,平成20年4月頃,控訴人の取締役であるGに対し,内部の手続で用いるものであるなどといって,パソコンの画面上で,本件覚書を見せた。Gは,本件覚書の記載内容に対して,特に異議等を述べず,結局,同覚書は,そのままパソコン内にデータとして保存され,責任者とされるDやGにより押印されることはなかった。
(以上につき甲46,47,乙7,証人D,同G)。
ウ Dは,平成20年6月頃,本件ツールの開発について,早ければ2か月程度で完成するものと考え,開発費用は1000万円程度であろうから,被控訴人の研究開発費を用いて開発することとして,H及びCに対し,控訴人への開発報酬を研究開発費から支弁することが可能かを確認したところ,Hから研究開発費から支弁は不可能との回答があった。
この回答を受け,Dは,既に本件サービス事業に関し顧客からの引き合いがあり,早い時期に個別案件を受注できるはずであると見込みを前提に,H及びCと相談の上,本件個別案件において,本件ツールを使用したQ言語変換業務の作業報酬を支払うに際して,その原価(コスト)の一部として上乗せすることにより,控訴人に本件ツールの開発コストを回収してもらうこととし,その旨をEに伝えたところ,Eは異議を述べなかった(証人E)。
(以上につき甲46,乙25,28,36,37,証人D・17,27頁,証人C・6,9,25,26,37頁)
エ 控訴人は,平成20年9月頃までに,本件ツールを完成させ,その頃,本件開発業務は終了した。
なお,被控訴人は,平成25年10月の時点において,「Q言語コンバージョンサービスを利用すれば,低コスト・短期間でQソースをCOBOLソースに変換致します」などと,本件ツールを用いたQ言語変換サービスを自社のホームページに掲載している(甲4)。
(3)  本件開発業務以外の業務の実施及び報酬支払の状況等
ア(ア) 被控訴人は,本件ツールが完成した平成20年9月以降も,控訴人に対し,顧客から受注した本件個別案件に係るQ言語変換業務を発注し,控訴人は本件ツールを用いて,別紙一覧表記載の43件についてQ言語変換作業を行い,被控訴人は,平成24年2月29日までに,本件個別契約に係る報酬合計1億4346万9824円を支払った。
上記受発注手続は,以下の手順で行われた。
① 被控訴人のCは,控訴人による見積金額をの提示に先立って,控訴人に対し,顧客からの受注金額や被控訴人内のコスト見積り等のほか,控訴人が本件開発業務等に要した費用のうち「未発注の残高」をも併せ考慮した上,被控訴人の希望する発注金額を算出し,これを提示する。
② 控訴人は,上記提示額をそのまま「御見積書」に記載して,これを被控訴人に提出する。
③ 上記「御見積書」を受け取った被控訴人調達課は,その金額を審査した上,控訴人に対し,上記金額が記載された注文書(補充書面)を発行する(申込)。
④ 控訴人は,上記注文書(補充書面)を異議なく受け取り(承諾),これにより本件個別契約が成立する。なお,被控訴人調達課において,控訴人に発行する上記注文書の金額に異議を述べたことはなかった。(以上につき補正後の基礎的事実(2),乙25,36,37,証人C,同D)
(イ) なお,本件個別契約の報酬中には,被控訴人が顧客から受注した売上金額(乙25の2枚目の〈案件概要〉の「金額」欄の「売上物件」「確定物件」)の20パーセントに相当する金額が本件開発業務の費用として上乗せられており,控訴人は,その平成21(2009)年上期までの間に,実質的な上記開発費用分の上乗せとして約1659万円(上記乙25・2枚目の「売上物件」「確定物件」の合計額である8295万円の20パーセント)の支払を受けた(乙25,証人D,弁論の全趣旨)。
(以上につき基礎的事実(5),乙3の1の1ないし乙3の43の2)。
イ(ア) 控訴人は,本件ツールの完成後も,随時,本件カスタマイズ業務を行って本件ツールの改良作業を行うとともに,本件営業支援業務を行った(甲17の1ないし128)。
被控訴人が顧客から言語変換業務を受注するに当たっては,被控訴人は,顧客のプログラムを事前に調査し,言語変換業務の概算見積りをしたり,実際に当該プログラムを変換してサンプルを試作し,それをもって顧客にプレゼンテーションをするようにしており,そのため,顧客からそのプログラムの全部又は一部を預かる。そして,控訴人は,被控訴人から依頼を受け,その調査・分析・検討する作業をし,その結果に基づき,概算見積りを作成し,サンプルを試作した上,これらを被控訴人に渡す。以上が本件営業支援業務の内容であって,本件進行表(甲17)の「状況」欄には「サンプル対応」「見積り対応」などとして記載されている(甲17の34と35,甲48,弁論の全趣旨)。
また,控訴人は,上記サンプルの試作段階で,当該プログラムの特性や本件ツールの適用性も把握し,被控訴人が受注した場合に備えて,本ツールの改良等も行う(個別案件に係る本件カスタマイズ業務)。さらに,個別の受注がない場合にも,控訴人は,本ツールの精度をより高め,汎用的に適用できる性能の向上を目的として改良する作業も行った(性能向上に係る本件カスタマイズ業務)。これらが本件カスタマイズ業務の内容であって(甲48,弁論の全趣旨),本件進行表(甲17)の「1.進捗」の「進捗状況」欄に「変換ツール改修随時対応中」などと記載されている(甲17の36以下)。
(イ) 上記43件の本件個別案件のうち,d1社秋田県庁案件(別紙一覧表No.3)及びCB案件(別紙一覧表No.6ないし8)においては,同案件のQ言語プログラムの命令は,本件ツールに登録されているものの,その解釈(処理の流れ)が登録されているものと異なることが判明したため,当該案件のQ言語プログラムの命令解釈を本件ツールに追加するカスタマイズ業務が行われた。また,q銀案件(別紙一覧表No.16ないし20)においては,同案件のプログラムに用いられている帳票に非常に特殊な構造を持つものがあり,それに対応するため大がかりなカスタマイズが行われ,岡山県庁税務案件では,同案件のQ言語プログラムが非常に複雑であったため,それに対応するためのカスタマイズが行われた。なお,平成22年4月から同年7月までの本件カスタマイズ業務の内容は,主にこの岡山県庁税務案件の個別案件に係る本件カスタマイズ業務と性能向上に係る本件カスタマイズ業務であった(甲17・枝番省略,48)。
ウ G及びEを含む控訴人の社員とC,D及び被控訴人の社員(被控訴人の産業システム部部長M,同部課長のI等)は,被控訴人のeオフィスにおいて,控訴人の行っているQ言語変換作業等について,当初は週2回程度,後には週1回程度の頻度で進捗会議を行った。そして,この会議では,控訴人の社員が実施している作業の進捗や,今後の実施作業に関する報告が行われた(甲46,48,証人D,同E)。
(4)  工数清算方式の前提となる控訴人の作業員の作業時間の確認と報酬をめぐるやり取り
ア 上記作業時間の確認状況
(ア) D(Dの退職後はCないしI)及びEは,平成20年4月から平成23年3月までの間,本件ツールの開発作業等に従事した控訴人の作業員の氏名,1月当たりの単価,在席時間を各自で把握した上,相互に,毎月ないしは3か月に1回程度の頻度で,定期的に把握した上記在席時間,単価等の確認を行っていた(甲46,48,証人D,同E,弁論の全趣旨)。
(イ) D(CないしI)は,自己の把握していた上記の数値を「山積表」(甲31ないし33,乙25)に記入して管理していたが,ただ,単価については,被控訴人が控訴人に外注する際の単価情報がなかった。そこで,Dは,控訴人から上乗せを要求されてもやむを得ない金額を把握することが山積表作成の目的であると考えていたことから,自身が平成16年まで在籍していた被控訴人の親会社であるd社がソフトウェア開発を外注する際の発注単価をベースに,それより若干低い金額を単価として山積表に記載した。
一方,控訴人のEは,本件業務が平成24年1月に終了した後の同年9月頃,被控訴人に対し,未払報酬残高の説明をするために,被控訴人側から提示された山積表を,控訴人が把握・管理していた工数の内訳や金額と照らし合わせて確認して転記することにより稼働実績表を作成した。
(以上につき甲31ないし33,46,乙25,28,証人D,証人E)。
イ 本件個別案件の報酬をめぐる控訴人と被控訴人間のやり取り
(ア) 被控訴人のCは,平成20年9月頃,控訴人に対し,控訴人開発本部宛ての「Q移行作業お支払い時期のお願い」と題する書面を発行し,「現在Q言語移行作業でご尽力いただいておりますが,各社からの引合はあるものの,なかなか受注に至らず,苦戦している状況です。つきましては,これまで作業していただいた分のお支払い時期について下記のとおりとさせて頂きたく,甚だ勝手なお願いではございますが,ご検討の程,よろしくお願い致します。」として,次のとおり伝えた(甲6,弁論の全趣旨)。
a f社Q言語コンバージョン作業 230万円 平成20年9月末
b j社向けQ言語移行パイロット作業 20万円 平成20年9月末
c k社殿パイロットテスト 250万円 平成20年10月末予定
d l社 950万円 平成20年11月中旬予定
e m社 900万円 平成20年11月中旬予定
f n社案件又はo社 878万5000円 平成20年11月中旬を予定
g 合計 3228万5000円
(イ) 控訴人と被控訴人は,平成20年9月以降,半期ごとに,半期決算のため,各年度の9月末及び3月末時点における,本件個別案件に関する控訴人の売掛金残高,被控訴人の買掛金残高を確認することを目的として,控訴人作成の「残高確認書」と題する書面を取り交わしていたところ,残高確認書には,下記のとおり個別案件に基づく報酬の未払金額(売掛金額・買掛金額)のみが計上され,上記アの「未発注の残高」の記載はされていなかった(乙10の1ないし7)。
a 平成20年9月30日現在の売掛・買掛金額 262万5000円
b 平成21年3月31日現在の売掛・買掛金額 1050万円
c 平成21年9月30日現在の売掛・買掛金額 367万5000円
d 平成22年3月31日現在の売掛・買掛金額 219万1875円
e 平成22年9月30日現在の売掛・買掛金額 499万8000円
f 平成23年3月31日現在の売掛・買掛金額 2183万4960円
g 平成23年9月30日現在の売掛・買掛金額 493万7289円
(ウ) 被控訴人のCは,平成21年5月以降,約半年ごとに,控訴人開発本部宛てに,「貴社に対しまして,下記のとおり着手済み(仕掛中)で,未発注分が存在すると認識しております。」との添え書きがある「Q移行作業残高確認の件」と題する書面を発行し,控訴人に対し,下記のとおりの「未発注の残高」が存在することを確認するとともに,同残高aは平成21年5月以降に,同bは同年10月以降に,同cは同22年4月以降に,同dは同年10月以降に,同eは同23年4月以降に,同fは同年10月以降に,それぞれ順次分割発注する旨を申し添えた(甲7ないし12)。
なお,同aの未発注の残高を記載した上記書面には,上記(イ)のbに係る残高(乙10の2)は,発注・納品検証済みで貴社口座に振り込まれてない残高である旨の断り書きが付記されている(甲7)。
a 平成21年3月末日時点 4498万4100円(消費税込み)
b 平成21年9月末日時点 4472万1600円(消費税込み)
c 平成22年3月末日時点 4275万2850円(消費税込み)
d 平成22年9月末日時点 6362万5800円(消費税込み)
e 平成23年3月末日時点 6335万9100円(消費税込み)
f 平成23年9月末日時点 6890万2050円(消費税込み)
(エ) Eは,平成22年11月頃,Cに対し,Q言語変換業務の個別案件が当初の想定ほど受注に至らず,「未発注の残高」の解消が進んでいないため,今後の対応を協議したいと相談した。そこで,Cは,同月30日に,被控訴人の横浜本社を訪れた控訴人のF及びEに対し,下記の内容の「Q移行作業お支払い計画のご説明」と題する書面(甲18)を交付して,平成23年4月分以降については新たに「未発注の残高」を積み上げることを止め,それまでに発生した「未発注の残高」のみを個別案件の代金に上乗せすることを提案した(乙27,証人C)。

「これまでは,案件の受注有無によらず,引合い案件の事前調査作業などに常駐してご協力いただいておりました。御社へのご発注も,常駐している期間に応じた金額で清算しておりました。この方式ですと,作業開始時期が遅れや,失注した場合の清算がすべて弊社負担となり,残高は増加する一方です。今後につきましては,常駐期間に応じた金額ではなく,案件単位に御見積りして頂き,そのお見積額に残高返済額を上乗せした額で発注させて頂きたく,よろしくお願い致します。」
(オ) Eは,平成23年8月31日頃,被控訴人の産業・流通システム本部産業システム部宛に,同日付け「Q移行作業におけるお願い事項」と題する書面(乙29)を送付した。同書面には,「2008年度よりの継続課題となっております開発費用の未清算残高の解消につきまして,御社には都度善処を賜っておりますが,絶対的な受注量が少ない状況下,弊社が期待する清算速度には到底及ばす,業績にも多大な影響を及ぼしております。」,「事態の早期解決に向けて,今後は両社合意の元で改めて「清算計画」を策定賜り,計画に沿って着実に推進していくことを切に希望致します。」等の記載があった。
(5)  平成23年4月以降の個別案件の実施とその終了等
ア 控訴人は,平成23年3月頃,岡山県庁税務案件の作業に従事していたところ,この作業は,同年3月末日までに終了することが予定されていた(乙3の34の4)。しかし,岡山県庁のホストコンピューターを思うように使うことができないなどの顧客都合により開発効率が低下したため,上記作業は,同年4月以降にずれこむこととなり同年6月30日まで続いた(岡山県庁税務事案に係る本件言語変換業務)。Cは,この延長作業分について,元請であるd社からの代金が上乗せされたことから,これに「岡山県Q言語本移行作業フェーズ3-1」という作業名を付し,本件個別契約(No.36)を締結し,その報酬として控訴人に上記150万円を支払った(甲13の1・2,乙3の36の4,乙27,証人C,弁論の全趣旨)。
イ 被控訴人としては,上記(4)イ(エ)のとおり,平成23年4月以降,新たな「未発注の残高」を計上することを取り止める意向を示していた。しかし,上記(5)アのとおり,岡山県庁税務案件は,顧客都合による開発効率の低下という作業期間の延長事由が発生しなければ,平成23年3月で作業が終了する予定であった。また,その延長作業として行われた本件言語変換業務について,控訴人従業員が被控訴人オフィスに在席した時間(工数)と控訴人の主張する単価により算出した報酬は915万円に上った。そこで被控訴人のCは,同年4月分以降の岡山県庁税務事案に係る本件言語変換業務については,控訴人からの依頼により,特例として,上記915万円に日当・交通費(61万9140円)を加えた合計976万9140円から,上記アの追加支払額150万円を差し引いた826万9140円を上記(4)イ(ウ)で認定したような「未発注の残高」として取り扱うこととした(甲17の91~100,19,21,49,証人E,同C)。
ウ 控訴人は,平成23年5月から同年7月にかけて,岡山県庁給与案件を900万円(消費税抜)で受注し(別紙一覧表No.37,39及び40・甲20,乙3の37の4,乙3の39の4,乙3の40の4),また,同年9月に岡山県庁税務案件の追加分業務を126万7900円(消費税抜)で受注した(別紙一覧表No.41・甲20,乙3の41の4)。これらの金額は,平成23年上半期の報酬額を工数清算方式で計算した場合の額(岡山県庁給与案件については870万円であり,Gの日当16万8000円を加えても886万8000円。岡山県庁税務案件の追加分については90万円)をいずれも上回っていた(甲21,48)。
エ 被控訴人が,岡山県庁案件を受注したのを最後に,新規の個別案件の受注が途絶え,岡山県庁案件は平成24年1月末に終了したことから,控訴人の作業員は被控訴人のオフィスから撤退した(弁論の全趣旨)。
(6)  本件業務終了後におけるやりとり等
ア 控訴人のEは,平成24年1月31日,被控訴人のCに対し,「当面の受注の見通しが立たない状況下ですので,今後の清算につきまして,御社様と仕切り直しの協議を進めさせて頂きたいと存じます。」との記載があるメールを送信するとともに(乙30),同年2月21日にもメールを送信し,同年1月末日時点における残高確認書類の提示と,今後の清算に関する方針の提示を求めた(甲14)。
イ さらに,Eは,平成24年3月5日頃,Cに対し,メール(甲15の1)を送信したところ,これには,「何より来月の合併を皮切りに今後御社内の組織変更等が予想される中で「やがてうやむやにされてしまうのではないか?」ということを強く懸念しております。」,「まずは御社内で御調整していただくのが最善策かと思います。困難なようでしたら,①弊社より直接T本部長様,N部長様に申入れをします それもを不調なら,②正面切って御社に申し入れることをせざるを得なくなります。」との記載があった。
3  主位的請求について
(1)  争点1(本件業務委託契約の成否及び未払報酬)
ア 上記の点に関する控訴人の主張(引用に係る原判決「第2 事案の概要」の2(1)(原告の主張)ア及びイ(ア)(イ)・補正後の原判決5頁12行目から8頁19行目まで)は,要するに,①被控訴人のb本部c部副技師長であったDが,平成20年4月頃,被控訴人を代理して,控訴人の代理人である開発部長のEとの間(以下これを「控訴人との間」と略記する。)で,「被控訴人が本件業務を控訴人に委託する」旨の契約を締結した(本件業務委託契約),②そして,その際,Dは,被控訴人を代理して,控訴人との間で,「被控訴人が本件業務の報酬(以下「本件報酬」という。)として工数清算方式により算出された金員を支払う」を旨を合意し(以下「本件報酬合意①」という。),③さらに,平成22年11月30日,被控訴人のb本部c部部長のCは,被控訴人を代理して,控訴人との間で,平成23年4月以降の報酬については工数清算方式を変更して,事前確定方式により算出された金額を支払う旨を合意した(以下「本件報酬合意②」といい,本件報酬合意①と合わせて「本件各報酬合意」という。)というものであるから,かかる控訴人の主張が認められるためには,前提として,「被控訴人の担当者であるDと控訴人のEとの間において,平成20年4月頃に,本件業務委託契約と本件報酬合意①が成立していたこと」が必要である。
イ そこで検討するに,認定事実(1)(2)のほか,本件進行表の記載に加え,甲46,乙28,証人D及び同Eの各証言及び弁論の全趣旨によれば,①被控訴人b本部c部の副技師長であるDは,平成20年4月頃,控訴人のEに対し,本件サービス事業に使用することを目的として,「3月に秋田の仕事が終了したら,eオフィスに来て,新しい言語変換ツールを作ってくれないか。」などと言って,本件ツールの開発を申入れを行った,②控訴人は,この申入れを受け,同月,Dらとの進捗会議により本件ツールの内容を決定した上,控訴人の作業員多数を被控訴人のeオフィスに常駐させ,被控訴人のサーバー等を利用して,本件ツールの開発に着手し,その業務が終了した同年9月頃からは随時,本件ツールを使用して本件言語変換業務や本件営業支援業務を行うとともに,本件カスタマイズ業務にも取りかかった,③被控訴人は,本件ツールを用いたQ言語変換サービスを自社のウェブページに掲載したというのであるから,被控訴人b本部c部の副技師長であったDは,平成20年4月ころ,控訴人の担当者との間で,口頭により,本件業務委託契約を取り交わしたものというべきである。
そして以上に加え,認定事実(4)(5)によれば,③Dは,同年4月頃から,控訴人のEとともに,本件業務を遂行する控訴人の作業員の作業時間をチェックした上,工数清算方式に基づき,控訴人の作業員の工数及び単価等を記載した「山積表」を作成し,その結果を両名で定期的に確認していた,④被控訴人のCは,平成20年9月頃,控訴人に対し,控訴人開発本部宛ての「Q移行作業お支払い時期のお願い」と題する書面を発行し,それまでに作業を行った本件業務の報酬の支払予定時期を明らかにしていた,⑤被控訴人のCは,平成21年5月以降,約半年ごとに,控訴人開発本部宛てに,「貴社に対しまして,下記のとおり着手済み(仕掛中)で,未発注分が存在すると認識しております。」との添え書きがある「Q移行作業残高確認の件」と題する書面を発行し,本件言語変換業務の報酬とは別に,工数清算方式により算出された「未発注の残高」を明らかにしていた,⑥被控訴人のCは,平成22年11月30日,控訴人のF及びEに対し,工数清算方式によると作業開始時期の遅れや失注した場合の清算が全て被控訴人の負担となり残高は増加する一方となることを記載した「Q移行作業お支払い計画のご説明」と題する書面(甲18)を交付していた,というのであるから,これらの事情は,被控訴人との間で本件報酬合意①が成立していたとする証人E及び同Gの各証言(陳述書も含む。)の信用性を裏付けているようにもみえる。
ウ しかし,基礎的事実(7)のとおり,被控訴人における物品及び役務の調達に係る契約締結権限は,被控訴人の調達課にあるところ,被控訴人の企業規模等からみて,かかる被控訴人の調達課の権限が,軽々に,トータルソリューションサービスを所管するb本部c部に委譲されていたとは考え難く,また,そうした委譲が行われたことを認めるに足る的確な証拠も見当たらない。そうすると,同部所属の副技師長であるDはもとより,同部部長のCらが,本件業務委託契約を締結する権限を有していたとは到底認められず,担当者レベルでの事実上の申し合わせ程度であればともかく,控訴人の担当者(E)との間で,多大な出費を伴い,かつ法的拘束力を生じさせるような本件報酬合意①を成立させる意思を有していたとみるのは,無理があるといわざるを得ず,そのことは,控訴人側も知っていたとうかがうことができる。すなわち,被控訴人の調達課は,控訴人を含む取引先に対し,「未手配案件の作業着手に関するお願いの件」と題する書面(乙6)を配布し,「弊社内では調達部門による正式手配をせずに,申請元部門から取引先殿へ作業着手依頼をすることの無い様に指導しております。」と周知しており,Eもこれを見ていた(証人E)のである。
また,そもそも,本件報酬合意①は,委託業務に従事した作業員ごとの単価に実績工数(作業時間)を乗じて事後的に報酬を算定する工数清算方式に依拠するものであって,それ自体,被控訴人に大きな負担が生じるリスクを内包している。そうすると基礎的事実(1)で認定した被控訴人及び控訴人双方の企業規模や控訴人の主張に係る報酬金額(優に2億円を超える金額)からみて,このようなリスクを伴う業務委託契約の申込は,本件基本契約5条に則り,その作業外注の発注権限を有する調達課を通じて,工数清算方式によって算出した金額の記載がある注文書を発行することにより行われることが予定されていた。
ところが,控訴人の主張に係る本件業務委託契約(本件業務委託合意とその対価としての本件各報酬合意)の申込みに関するものであると認めるに足る契約書や注文書等の書面が作成された形跡は見当たらないばかりか(なお,乙3の2の1(注文書(当初書面))が本件報酬合意①の存在を裏付ける注文書に当たらないことは,原判決がその32頁11行目から23行目までに認定,説示するとおりである。),かえって,認定事実(3)のとおり,本件個別契約に係る本件言語変換業務の発注等がいずれも書面によって行われ,その書面(注文書(補充書面))には被控訴人のCから提示された,工数清算方式によって算出された金額とは異なる金額が記載されているにも拘わらず,このことについて控訴人のEらは格別異議を述べていないことに照らすと,控訴人と被控訴人間に本件報酬合意①が成立していたものとみることはできない。
エ さらに,山積表では,控訴人主張の報酬が「未発注の残高」として確認され(甲7ないし12),発注済みのものについての残高確認書(乙10の1ないし7)と区別されており,いまだ契約上の報酬債権として把握されていないことがうかがわれる。また,平成24年11月15日に行われた控訴人と被控訴人との会議において,控訴人のEは,「元々契約はなかった。」,「契約自体は存在していない。」と発言しており,結局,担当者間において,「プロジェクトとしてやるべきことを申し合わせて作業を行ってきた。」,「月毎の工数については確認をしており」というにとどまっている(甲23)。これらのことからすると,控訴人においても,正式な契約が成立していないことを前提としつつ,担当者間の合意に基づいて作業をし,出来高についても確認してきたのであるから支払ってほしいと主張していたに過ぎないものとみられる。
(2)  結論
以上によれば,その余の争点を検討するまでもなく,控訴人と被控訴人との間に本件業務委託契約が成立していたものとは認められず,これを前提とする控訴人の上記主位的請求は理由がない。
4  予備的請求について
以下,争点4すなわち予備的請求として,控訴人の被控訴人に対する商法512条に基づく「相当な報酬」請求の可否について検討する。
(1)  控訴人がソフトウェアの受託開発,販売,保守等を目的とする株式会社であることは当事者間に争いはない。
また,商法512条にいう「営業の範囲内において」とは,営業の目的たる行為のみならず,広く営業の利益又は便宜を図るための一切の行為を包含するものと解されるところ,本件業務の内容は,認定事実(2)(3)で認定したとおりであるから,本件業務は,控訴人がその「営業の範囲内において」行った業務に当たる。
(2)  そこで以下,控訴人による本件業務の遂行は,商法512条にいう「他人のために行為をしたとき」に当たるか否かについて検討する。
ア 認定事実(2)によれば,控訴人は,別紙進行表に記載のとおり,本件業務を行った事実が認められ,この認定に反する証拠はない。
イ 商法512条にいう「他人のために」とは,その行為の法律上又は事実上の効果がその他人に帰属することをいう。したがって,ここで「他人のために行為をしたとき」に当たるためには,行為者の主観においてそうであるだけでは足りず,客観的にみて,他人(報酬の被請求者)のためにする意思でもって行われたものであることを必要とするが(最高裁昭和50年12月26日第2小法廷判決・民集29巻11号1890号参照),自己の利益を図る意思と併存しても当該要件の充足を妨げるものではないと解される。
認定事実(1)ないし(3)によると,①被控訴人のb本部c部副技師長のDは,同部長(C)及び同本部長(H)の了解の下,平成20年4月頃,控訴人に対し,本件業務を依頼したところ,控訴人は,この申入れを受け,同月,Dらとの進捗会議により本件ツールの内容を決定した上,控訴人の社員多数を被控訴人のeオフィスに常駐させ,被控訴人のサーバー等を利用して,本件ツールの開発に着手し,その企画,設計,構築を行うとともに,システムテスト,運用テストを実施して同年9月頃までには本件ツールを完成させたこと,そして,②本件ツールの開発については控訴人と被控訴人の双方が利益を上げることが念頭に置かれていたことは否定し難く,実際に,本件ツールを使用した本件サービス事業で利益を得ているほか,Dも当初は被控訴人社内の研究開発費により開発費用を支弁しようと試みた経緯があること,③開発及びカスタマイズの効果である本件ツールは被控訴人のサーバーに保存されており,控訴人は被控訴人の同意なしにそれを利用できないこと(証人E),④被控訴人は本件ツールを用いたQ言語変換サービスを自社のホームページに掲載していること(甲4)を総合すると,本件業務は,その効果が被控訴人の利益に資するものであって,客観的にみて,控訴人が被控訴人のためにもする意思をもってされた行為であると認められるから,商法512条の「他人のためにした行為」に当たるものというべきである。
(3)  無報酬の合意,個別案件に伴う報酬合意があるか。
商人である控訴人がその営業の範囲において被控訴人のために本件業務をしたとしても,本件業務の全部又は一部を無報酬とする旨の合意をし,又は,「相当な報酬」よりも低額の報酬とすることで合意をしている場合には,相当な報酬を請求することはできないが,そのような合意が存在することについては,被控訴人が主張立証責任を負う(なお,原判決38ページないし41ページは,これが「他人のため」の要件の問題であるかのような判示をしているが,そうではない。)。
そこで,被控訴人が主張する無報酬の合意が認められるかであるが,原判決が判示するとおり(原判決47ページ1行目ないし10行目),かかる合意を認めるに足りる十分な証拠はない。ただし,認定事実(4)イ(エ)のとおり,Cは,平成22年11月30日付けの書面(甲18)において,平成23年4月以降については,作業開始時期が遅れたことによる工数の増加や失注した場合の負担について,案件単位で見積りしてもらいたい旨を申し入れ,Eもこれに対し,特段の異議を述べていないので,同月以降については,当事者間の協議において山積表の「未発注の残高」に加えることが合意されない限り,無報酬となることが合意されたものとみられる。
次に,低額の報酬とする合意が存在するかであり,本件では,本件個別案件については,本件個別契約において報酬額が定められているので,本件個別契約の対象となった業務の範囲については,合意された報酬額を超えて商法512条に基づく相当の報酬を請求することはできない。原判決は,本件開発業務についてのみ,本件個別契約の対象とは認められないとしたが,この点について,検討する。
ア 本件開発業務について
本件開発業務の報酬について,本件個別契約において,合意されたと認めるに足りる証拠はない。本件個別契約は本件個別案件について締結されたものであること,認定事実(2)ウのとおり,本件個別案件において,本件ツールを使用したQ言語変換業務の報酬を支払うに際して,その原価の一部として上乗せすることにより,本件ツールの開発コストを回収してもらうとのDの提案を控訴人側も了承したこと,その後も担当者間では「未発注の残高」として山積表において残高が確認されていたこと(甲7ないし12)が認められるのであって,控訴人側は本件ツールの開発コスト(本件開発業務の報酬)をすべて回収することを前提として,その回収の方法として上乗せの合意をしたに過ぎないと認められる。したがって,本件開発業務の報酬について合意がされたとは認められない。
イ 本件言語変換業務について
(ア) 認定事実(3)によれば,別紙進行表のとおり,控訴人は,本件ツールが完成する直前の平成20年8月頃から,被控訴人から発注を受け,本件言語変換業務を行ったものである。
そして,被控訴人は,別紙進行表記載の本件言語変換業務は,平成22年9~10月のk社案件(甲17の65~71)を除き,本件個別契約に基づき行われたものであると主張するのに対し,控訴人は,別紙一覧表記載の個別案件を本件進行表を介して別紙進行表上に転記しただけであって,同表記載の言語変換業務が本件個別契約に基づくものであることの具体的な立証はない旨主張する。しかし,本件個別契約に係る注文書等(乙3・枝番省略)の記載内容と上記「進行表」の原資料である本件進行表(甲17・枝番省略)の記載内容を比較検討すると,別紙進行表記載の言語変換業務は,(下記(イ)で検討する①平成22年1月のq銀案件(甲17の31ないし35)と②平成23年4月~6月の岡山県庁税務案件(甲17の91~100)を措くとして),本件個別契約(No.1~18,21~34,38~41)に基づき行われたものということができ,この認定を覆すに足る証拠はない。
すなわち,本件言語変換業務は,①平成22年1月のq銀案件と②平成23年4月~6月の岡山県庁税務案件を措くとして,それ以外は全て本件個別契約が予定する通常の業務そのものであって,報酬の合意が認められるから,商法512条の「相当な報酬」を請求することはできない。
(イ) そこで,①平成22年1月のq銀案件と②平成23年4月~6月の岡山県庁税務案件が本件個別契約の予定する通常の業務に含まれるか否かについて検討する。
a 平成22年1月のq銀案件について
① 平成22年(2010年)1月8日から同年2月4日までの間に行われた本件q銀・言語変換業務(本件進行表に〈a〉「q銀本移行第3,第4ロット分対応」〈b〉「q銀本移行第4ロット分対応」〈c〉「q銀本移行残務整理」と記載された業務)について,被控訴人は,「これらは本件個別契約(No.16~20)の延期に伴う業務であるから,同個別契約が予定する通常の業務の範囲に含まれ,その報酬合意の対象となるから商法512条の「他人のためにした行為」には含まれない」と主張するのに対し,控訴人は,「本件q銀・言語変換業務は,本件個別契約(No.16~20)に基づく業務の終了後に新たに発注された業務であるから,同個別契約の予定する通常の業務の範囲には含まれない」旨反論する。
② そこで検討すると,確かに,乙3の20の1ないし4によれば,q銀案件に係る本件個別契約(No.16~20)の最終の納品日は平成21年12月25日であり,その作業期間は同月9日から同月25日までであるから,最後の本件個別契約(No.20)の報酬は,明示的に合意されている作業期間である同日までの作業に対するものであると認められるところ,本件進行表(甲17の33,34)の「2動向等」の「状況」欄によれば,「q銀(r社殿案件)」の「1月7日」の記載として,「01/07時点でr社殿より第4ロットの分割依頼あり(182本と221本に分割し,1/15,1/22の納品)」との記載があり,この記載は,q銀案件に関して顧客(r社)から「第4ロットの分割依頼」すなわち新たな注文があったことを意味するようにみえる。
しかし,本件進行表(甲17の25,27及び31)の「2.動向等」の「状況」欄を仔細に検討すると「q銀(r社殿案件)」の「11/19追加」として「本移行第1フェーズ分は今月末送付予定。全体としては年内予定。」(甲17の25)とされていたものが,同じく「q銀(r社殿案件)」の「12/3変更」として「第1ロット98本を12/4,第2ロット334本を12/18,第3ロット(1)180本を12/25,第3ロット(2)179本を1/8,第4ロット403本を1/22の納品」(甲17の27)とされ,さらに,「q銀(r社殿案件)」の「1/7追加」として「01/07時点でr社殿より第4ロットの分割依頼あり(182本と221本に分割し,1/15,1/22の納品)」と記載されていることが認められ,これらの記載によれば,q銀(r社殿)案件に係る言語変換業務においては,平成21年11月19日の時点では上記第1ロットから同第4ロットまでの全体を平成21年内に納品する予定であったものが,同年12月3日の時点で,上記第3ロット(2)179本と同第4ロット403本が,年明け後の平成22年1月8日と同月22日に納品する予定に変更され,さらに,同月7日の時点において上記第4ロットの403本を188本と221本に分割して同月15日と同月22日順次納品することに再変更されたものとみるのが自然である。したがって,本件進行表(甲17の33,34)の上記「01/07時点でr社殿により第4ロットの分割依頼あり(182本と221本に分割し,1/15,1/22の納品)」との記載は,新たな言語変換業務の注文依頼ではなく,本件個別契約(No.20)によって既に発注された「q銀(r社殿案件)」に係る納入時期・方法について,顧客(q銀(r社))から上記「第4ロット403本」を分割して納品する依頼があったことを意味しているに過ぎないものと解するのが合理的である。
そして以上に加え,乙3の16の3,乙3の17の3,乙3の18の3,乙3の19の3及び乙3の20の3によれば,q銀案件に係る本件個別契約(No.16~20)における言語変換対象プログラムはの本数は合計で1250本(各個別契約250本×5)であるところ,本件進行表(甲17の34)に記載されている実際の作業本数は上記「本移行第1フェーズ分」1194本に,パイロット分合計35本を加えても本件個別契約(No.16~20)が予定していた上記1250本内に収まっていることなどを総合考慮すると,平成22年1月に行われた本件q銀・言語変換業務は,本件個別契約(No.16~20)が予定する通常の業務の範囲内のものであったと推認され,この推認を妨げるに足る証拠はない。
③ 以上によれば,本件q銀・言語変換業務は,q銀案件に係る本件個別契約(No.16~20)の履行として行われたものであって,報酬の合意の対象であったと認められる。
b 平成23年4月~6月の岡山県庁税務案件について
① 控訴人は,本件岡山県庁税務案件について,その実績工数は予定工数を下回ることはなく,単価も相当であるから,同案件に係る控訴人の報酬としては915万円が「相当な報酬」であるところ,被控訴人は同案件につき控訴人に対し150万円を支払っているから,残額765万円及び上記岡山県庁税務案件に係る出張日当及び交通費61万9140円の合計826万9140円が,上記岡山県庁税務案件に関する「相当な報酬」に該当する旨主張したのに対し(引用に係る補正後の原判決「第2 事案の概要」の2(1)控訴人の主張ア(ウ)b),被控訴人は,本件岡山県庁税務案件は,その直前(平成23年3月)まで行われていた本件個別契約(No.36)に係る岡山県庁税務案件が作業期間内に終了しなかったため行われたものであるから同個別契約の予定する通常の業務の範囲内のものである旨反論したところ(同2被控訴人の主張ア(イ)d),控訴人は,上記残額765万円について被控訴人は控訴人からの依頼を受け「未発注の残高」として取扱い,本件個別契約(No.36)の報酬合意に含まれないことを明確にしており同個別契約の通常の業務の範囲内に含まれないと再反論している(同2控訴人の主張イ(イ)b②参照)。
② そこで,検討するに,認定事実(5)ア及びイによれば,〈a〉本件個別契約(No.35)に係る岡山県庁税務案件は,平成23年3月末日までに終了することが予定されていたところ,岡山県庁のホストコンピューターを思うように使うことができないなどの顧客都合により開発効率が低下し,作業量が増加したため,作業が同年4月以降にずれこむことになった,〈b〉その結果,控訴人は,同月2日から同年6月30日までの間,岡山県庁税務案件に係る本件言語変換業務を行ったところ,その作業期間の延長分について元請であるd社から代金150万円の上乗せがされたため,被控訴人は,この延長作業分に「岡山県Q言語本移行作業フェーズ3-1」との作業名を付し,本件個別契約(No.36)を成立させ,その報酬として上記150万円を支払った,〈c〉被控訴人としては,同年4月以降は「未発注の残高」の積み上げを止める予定でいたものの,本件岡山県庁税務言語変換業務について控訴人従業員が被控訴人オフィスに在席した時間(工数)と控訴人の主張に係る単価により算出した報酬額(915万円)が上記150万円を大きく上回っており,かつ,上記延長作業が必要となった理由が上記のとおり顧客都合により開発効率が低下したことにあったため,被控訴人らの依頼を受け,特例として,本件岡山県庁税務言語変換業務に係る上記915万円から150万円を控除した残額765万円と同業務のための出張費用61万9140円(甲49・以下「残額765万円等」ともいう。)だけは「未発注の残高」として取り扱うこととした,というのであるから,これらの事情を総合すると,被控訴人が残額765万円等を「未発注の残高」として取り扱うことにした趣旨は,本件個別契約(No.36)の報酬として支払った150万円を超える部分については,これを同個別契約の報酬合意の対象から外し,後日,個別案件の報酬に上乗せる形で清算することを予定していたものと解するのが合理的である。
③ 以上によると,本件岡山県庁税務言語変換業務のうち本件個別契約(No.36)の報酬として支払われた150万円を超える部分は,本件個別契約の予定する通常の業務の範囲を超えるものと認められ,報酬の合意が存在するとは認められない。
ウ 本件カスタマイズ業務について
(ア) 認定事実(3)イのとおり,本件カスタマイズ業務には個別案件に係る本件カスタマイズ業務と性能向上に係る本件カスタマイズ業務の2つが予定されていた。すなわち,控訴人は,引き合いのあった被控訴人の顧客から,被控訴人を介して,事前にそのプログラムの全部又は一部を預かり,その調査,分析等の作業を行った上,その結果に基づき概算見積りを作成し,サンプルを試作し,これを顧客に提供する業務を行っているが(本件営業支援行為),そのサンプルの試作段階で,当該プログラムの特性や本件ツールの適用性を把握し,被控訴人が受注した場合に備えて,本件ツールに改良等を加える「個別案件に係る本件カスタマイズ業務」をするとともに,その機会に,本件ツールの精度を高め,汎用的に適用することができるよう改良作業を行う「性能向上に係る本件カスタマイズ業務」を行っていた。
以下,それぞれの行為に対する商法512条の適用可能性につき検討する。
(イ) 個別案件に係る本件カスタマイズ業務について
個別案件に係る本件カスタマイズ業務は,本件開発業務の延長上の作業であるという性質があることは否定できない。
しかし,本件開発業務自体は,平成20年9月頃に完了している上,個別案件に係るカスタマイズは,上記(ア)で指摘したとおり,受注後の本件言語変換業務の準備ないし遂行の際に判明した個別案件ごとの問題点に対応するために必要な作業であるから,本件個別契約に係る本件言語変換業務に付随する業務と考えるのが自然である。
そうすると,個別案件に係る本件カスタマイズ業務は,本件個別契約に基づく本件言語変換業務に付随する業務として,同個別契約の通常の業務の範囲内に含まれるものと解するのが合理的である。
(ウ) 性能向上に係る本件カスタマイズ業務について
性能向上に係る本件カスタマイズ業務は,本件ツールの精度を高め,汎用性を向上させることを目的として行われる改良業務であるから,本件開発業務の延長上の作業であるという性質があることは否定できないが,別紙進行表によれば,本件開発業務自体は,平成20年9月頃までに完了しているので,これとは区別されるべきであり,また,本件個別案件に係る言語変換業務とも内容において区分けが容易であるから,これとも区別することができる。
そして,控訴人は,前記引用に係る補正後の原判決「第2 事案の概要」の2(控訴人の主張)イ(ア)aにおいて,本件個別案件に係る本件カスタマイズ業務と区別可能な性能向上に係る本件カスタマイズ業務をいくつか主張し,性能向上に係る本件カスタマイズ業務は,本件個別契約における報酬の定めの対象となっていないと主張している。
そこで以下,検討する。
a 平成22年2月5日から同年7月30日までの間に行われた本件カスタマイズ業務について
控訴人は,「上記期間中,個別案件の受注がないことから,この間に行われたカスタマイズ業務は,性能向上に係る本件カスタマイズ業務である」旨主張するのに対し,被控訴人は,専らD証言等に基づき上記期間中(2月から7月)は岡山県庁税務案件のカスタマイズ業務が中心であったと反論する。
確かに,証人Dは,その尋問で,「自分が退職する3か月前の2010年(平成22年)3月頃から,それまで未サポートがかなりあった岡山案件のためのカスタマイズ業務を行っていた」と証言している(証人D・13頁)。これに対し,控訴人のEは,その陳述書(甲48・46頁)で,「進行表の平成2010年2月から7月までの「本件カスタマイズ業務」の内容は,主に個別案件のためのカスタマイズや後述のベースアップのためのカスタマイズになります。」と記載している。
この点,本件業務の内容については控訴人社内において経時的に作成された業務日報類似の報告書として本件進行表(甲17・枝番省略)が存在しており(証人E・20頁,弁論の全趣旨・控訴人作成の平成26年7月2日付け証拠説明書1枚目の(注)参照),かかる進行表は,本件業務の遂行過程において作成された「重要な報告文書」としての性質を有するものと解されるから,訴訟になってからの供述よりも信用性が高いと考えられる。
そこで,本件進行表の記載内容を検討すると,同表(甲17の36ないし58)の「1.進捗」の「進捗状況」欄(2月5日から7月30日)には「変換ツール改修随時対応中」との,それ自体性能向上のための改良作業であることをうかがわせる記載があること,そして,その記載に対応する「案件名」欄には個別案件が付記されておらず,現に,別紙一覧表(特に乙3の21の1以下)をみても上記期間中に個別案件が受注された事実は認められないこと,そして,Eの上記陳述書においても性能向上に係る本件カスタマイズ業務(ベースアップのためのカスタマイズ・甲48・51頁(6)参照)が行われたとされていること(甲48・46頁)などに照らすと,控訴人は,上記期間中,本件進行表記載のとおり,自社の担当従業員に対して,性能向上に係る本件カスタマイズ業務を行わせていたことが認められ,この認定は上記D証言等によって左右されないものというべきである。
そして,上記認定の性能向上に係る本件カスタマイズ業務が,客観的にみて,被控訴人のために開発された本件ツールの性能向上を目的とするものであるから,商法512条の「他人のためにした行為」に当たることは明らかである。
b 平成22年4月17日から同年6月18日の間に行われたp社案件のカスタマイズ業務について
本件進行表(甲17の46ないし53・4月17日の週から6月18日の週までの間)の「1.進捗」の「進捗状況」欄には「O|p社―リソース対応中」,また,「2.動向等」の「状況」欄には「p社―サンプル対応」として「⇒ほぼ受注確定案件として,リソース調査対応中」との記載が存在しているが,その一方で,別紙一覧表の記載からみて,このp社案件は受注に至った形跡がうかがわれないことからみて,上記期間中,控訴人は,ほぼ受注確定事案との認識の下,控訴人従業員のOに命じて,p社案件に係るカスタマイズ業務を行っていたところ,同案件は結局失注したものと認められ,この認定を左右するに足る証拠はない。
そうすると,これらの業務について,報酬の合意が存在しないことは明らかである。
c 平成22年(2010年)1月のq銀案件に係るカスタマイズ業務
本件進行表(甲17の32ないし35)の「1.進捗」の「進捗状況」欄によれば,控訴人の従業員は,平成22年(2010年)1月8日から同年2月4日までの間,「変換ツール改修随時対応中」と記載された業務を行っていることがうかがわれるが,ただ,その左側の「案件名」欄をみると上記業務は「q銀―変換案件(変換のみ)」との個別案件名が付されていることからみて,上記「変換ツール改修随時対応中」と記載された業務は,本件q銀・言語変換業務に付随して行われたカスタマイズ業務であると認められるところ,本件q銀・言語変換業務それ自体は,上記アで検討したとおり,本件個別契約(No.16~20)の予定する通常業務の履行として行われたものであるから,本件q銀・言語変換業務に付随する上記カスタマイズ業務も,本件個別契約(No.16~20)の予定する通常業務の範囲に含まれるものとして,その報酬合意によって賄われていると解するのが自然かつ合理的である。
エ 本件営業支援業務について
認定事実(3)イのとおり,本件営業支援業務は,控訴人において,被控訴人が顧客から預かったプログラムを調査,分析,検討をし,その結果に基づき概算見積りを作成し,サンプルを試作するなどとして,被控訴人の顧客からの受注を支援するものであって,本件言語変換業務に密接に付随する業務であるということができる。そうすると本件営業支援業務は,本件個別契約の予定する通常の業務の範囲に含まれているものというべきであるから,本件個別契約における報酬の定めの対象となる。もとより,受注に至らなかった案件に係る本件営業支援業務については,そもそも報酬の合意が存在しないことは明らかである。
(4)  以上のとおり,商法512条は,本件業務のうち本件開発業務のほか,本件言語変換業務の一部(本件岡山県庁税務言語変換業務の一部)と本件カスタマイズ業務の一部(以下これらを「商法512条の適用がある本件業務」ともいう。)についてのみ適用されるので,以下これらの業務に係る「相当な報酬」について検討する。
ア 本件開発業務の「相当な報酬」について
この点,当裁判所は,原判決別紙「本件開発業務の相当報酬」に記載のとおり,上記「相当な報酬」は2900万円であると判断する。
その理由は,下記のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の3(4)ア及びイ記載(原判決41頁25行目から46頁5行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
【原判決の補正】
(ア) 原判決42頁19行目の「それに」を「その原価に」に,同20行目から21行目にかけての「上記1(2)イ」を「認定事実(2)ウ」に,同25行目の「上記(3)エ」を「認定事実(3)ウ」にそれぞれ改める。
(イ) 原判決43頁10行目の「甲57」の次に「,63,64」を,同11行目の「がいつこの作業を」から同12行目の「ことからすれば」までを「は,この介護関係の作業を所定の作業時間外において行っていたものと認められ(甲57,63,64,66),本件で請求されている作業時間(工数)には含まれておらず,被控訴人のDと控訴人のEは,被控訴人オフィスに常駐する控訴人の従業員と机を並べ作業し,定期的に互いに把握した本件業務に係る工数を相互に確認していたというのであるから」に,同18行目の「上記1(2)エ」を「認定事実(2)エ」にそれぞれ改める。
(ウ) 原判決44頁初行から2行目にかけての「相当である。」の次に「なお,被控訴人は,当審において,別紙進行表は,その原資料である本件進行表(甲17・枝番省略)の記載からは本件カスタマイズ業務とは読み取れないものを本件カスタマイズ業務として水増し記載するなどして作成されたものであって,これらの別紙進行表を基に本件業務の「相当な報酬」を算定することはできない」を旨主張するが,認定事実(1)ないし(5)で認定した本件業務の経緯等を踏まえ,前後の文脈等から本件進行表の記載内容を合理的に解釈すると「○○」「p社―リソース調査対応中」「岡山県庁―事前調査対応」「管理業務」「岡山県庁―○○関連,事前調査・仕様検討対応中」等はいずれも本件カスタマイズ業務を意味するものと解するのが合理的であるから,上記別紙「受託業務の進行表」は,本件カスタマイズ業務を水増し記載して作成されたものとまではいい難く,被控訴人の上記補充主張を採用することはできない。」を加える。
(エ) 原判決46頁初行から2行目にかけての「乙12は,」の次に「被控訴人が上記秋田県庁案件において利益を確保することが可能であるか否かを判断するために作成された「仮見積書」に過ぎないため,そこに記載された工数は,」を,同行の「甲56の1,」の次に「甲57,証人D」をそれぞれ加える。
イ 本件言語変換業務の一部に関する「相当な報酬」について
上記(2)イ(イ)で説示したとおり,岡山県庁税務事案に係る本件言語変換業務の報酬に関して,控訴人と被控訴人が残額765万円及び同業務のための出張費用61万9140円(残額765万円等)を山積表の「未発注の残高」として取り扱うことにした趣旨は,本件個別契約(No.36)の報酬として支払った150万円を超える部分について,これを同個別契約の報酬合意の対象外として取り扱うことを目的としたものと解されるから,本件岡山県庁税務言語変換業務のうち,この対象外とされた部分に関する「相当な報酬」は,上記の残額765万円に,同業務のための出張費用61万9140円を加えた826万9140円であると認められ,この認定を左右するに足る証拠はない。
ウ 本件カスタマイズ業務の一部に関する「相当な報酬」について
(ア) 平成22年2月5日から同年7月30日までの間に行われた本件カスタマイズ業務の「相当な報酬」について
前記のとおり,控訴人は,上記期間中,自社の担当従業員に対して,前記相当な単価でもって,性能向上に係る本件カスタマイズ業務を行わせていたものであるところ,本件進行表(甲17の36~58)によれば,上記担当従業員のうちV2,O,R,S,G,Uの工数は,別紙「性能向上のカスタマイズの報酬表」に記載(黄色塗り部分)のとおりであると認められ,この認定を左右するに足る証拠はない。
他方,E(E)については,別紙進行表上の上記期間のうち平成22年5月以降の作業は「管理業務」と記載されているところ,同表の原資料である本件進行表(甲17の46~58・同年4月17日~7月30日)の「1.進捗」「進捗状況」欄によるとEの作業内容について記載がなく全て「空欄」となっていることに照らすとEは,同年4月17日から同年7月30日までの期間中,上記「管理業務」のほかに,性能向上に係る本件カスタマイズ業務も行っていたものとは認められず,他に,上記期間中,Eが性能向上に係る本件カスタマイズ業務を行ったことを認めるに足る的確な証拠はない。
そうすると本件進行表(甲17の36~45)によれば,Eが他の担当従業員とともに上記性能向上に係る本件カスタマイズ業務に従事していた期間は平成22年2月5日から同年4月16日までであるところ,その間の工数は,別紙「性能向上のカスタマイズの報酬表」に記載(黄色塗り部分)のとおりであると認められ,この認定を左右する足る証拠はない。
(イ) 平成22年4月17日から同年6月18日の間に行われたp社案件の「相当な報酬」について
前記のとおり,控訴人は,上記期間中,自社担当従業員のOに対して,前記相当な単価でもって,p社案件に係る業務を行わせていたが,受注に至らず,個別契約も存在しないものであるところ,本件進行表(甲17の46~53)によれば,上記Oの工数は,別紙「性能向上のカスタマイズの報酬表」に記載(緑塗り部分)のとおりであると認められ,この認定を左右するに足る証拠はない。
(ウ) 以上によれば,上記(ア)の性能向上に係る本件カスタマイズ業務及び上記(イ)の業務に関する「相当な報酬」は,下記a及びbを合計した1428万7500円である。
a V2,O,R,S,G,Uに関する報酬分は,①平成22年2月分が212万5000円,②同年3月分が212万5000円,③同年4月分が265万円,④同年5月分が215万円,⑤同年6月分が215万円,⑥同年7月分が215万円の合計1335万円
b Eの報酬分は,①平成22年2月分が37万5000円,②同年3月分が37万5000円,③同年4月分が18万7500円(=単価75万円×1/4)の合計93万7500円
エ まとめ
以上によれば,後記(4)における控除前の商法512条の適用のある本件業務に関する「相当な報酬」の合計は,下記のとおり5155万6640円となる。

① 本件開発業務関係 2900万円
② 本件言語変換業務関係 826万9140円
③ 本件カスタマイズ業務関係 1428万7500円
④ 合計 5155万6640円
(4)  本件開発業務に関する費用等の上乗せ部分の控除
ア 本件開発業務に係る費用の「上乗せ分」について
(ア) 認定事実のとおり,(ア)被控訴人のDは,b本部c部本部長のHや同部部長のCと相談の上,平成20年6月頃,控訴人のEに対し,本件ツールの開発費用については,本件言語変換業務に係る個別案件の原価に上乗せすることによって回収してほしい旨を伝えたところ,控訴人のEは,これに異議を述べなかった,(イ)被控訴人のCは,控訴人に対し,顧客からの受注金額や被控訴人内のコスト見積り等のほか,山積表の「未発注の残高」をも併せ考慮した上,被控訴人の希望する発注金額を算出し,これを提示したところ,控訴人は,その金額を「御見積書」に記載して,これを被控訴人に提出した,(ウ)被控訴人の調達課は,その金額を審査した上,控訴人に対し,上記金額が記載された注文書(補充書面)を発行したが,その際,被控訴人の調達課において,控訴人に発行する上記注文書の金額に異議を述べたことはなかったというのであるから,控訴人と被控訴人との間においては,本件ツールの開発費用の一部を本件言語変換業務に係る個別案件の原価に上乗せする旨の合意が存在したものというべきである。
(イ) 被控訴人は,かかる合意の存在を前提に,前記引用に係る補正後の原判決「第2 事案の概要」の2(被控訴人の主張)ウ(原判決10頁19行目から末行まで)のとおり,本件ツールの開発費用の上記上乗せは,平成23年3月までに3700万円程度の金額に上っていたと主張するのに対し,控訴人は,同2(控訴人の主張)ウのとおり,上記上乗せ合意それ自体は否定しないものの,実際に本件個別契約の報酬に本件ツール開発費用が上乗せされていたかは疑問であると主張する。
そこで,検討するに,被控訴人の申請に係る証人のCはもとより,控訴人と被控訴人双方の申請に係るDも,実際に,本件ツール開発費用の上記上乗せが行われていたことを当然の前提とした証言を行っていることに加え,個別案件に係る山積表(乙25の2枚目・引合案件及び支払想定表(訂正版))記載の外注費率をみると平成20年下期(08/下)以降のものに関しては優に70パーセントを超えていること,認定事実(4)イのとおり控訴人と被控訴人の間では「未発注の残高」の確認とその支払方法の確認が随時行われており,その際,控訴人から上記上乗せがされていないとの不満等を露わにした形跡は窺われないことなどに照らすと,本件個別契約の報酬に上記上乗せが行われていたこと自体は否定し難い事実というべきである。
(ウ) そこで,問題は,上記のとおり本件個別契約の報酬決定に当たって,「未発注の残高」のうち,どの程度の金額が上乗せられていたかである。
この点,Dは,その尋問において,「Q移行原価発生内訳(訂正版)」及び「引合案件及び支払想定表(訂正版)」(乙25の2枚目)を示され,「上乗せがなければ被告(被控訴人)の取り分は50パーセントぐらいだったが,上乗せをしたことにより,被告(被控訴人)の取り分は本来の取り分より20パーセントぐらい少なくなった」と証言している。そして,上記「Q移行原価発生内訳(訂正版)」及び「引合案件及び支払想定表(訂正版)」は,平成21年8月31日の時点で,本件業務の実質的な責任者であったDが,本件業務の遂行過程(作成日は平成21年8月31日)で,上司であるCとともに,上記上乗せ金額の上限を把握することを目的として作成された書面(山積表)であるから(証人C・9頁),かかる書面に依拠してされた上記D証言の信用性は高いものというべきである(ちなみに,本件個別契約(No.16・Q言語変換1(q銀))に係る外注見積評価表(乙36)中の調達課作成の「発注元記入欄」〈受注状況〉によれば,金額「30M¥」のうち控訴人の取り分は70パーセントに相当する「21M¥」と記載されており,上記D証言を客観的に裏付けている。)。
そして,上記D証言にいう被控訴人の「本来の取り分」とは,被控訴人が顧客から受注した売上金額(乙25・2枚目でいうと,これは〈案件概要〉「金額」欄の「売上物件」と確定物件」欄所定の金額を合計した金額をいう。)をいうものと解するのが合理的であるところ,かかる受注・売上金額が記載された「乙25(2枚目)の〈案件概要〉「金額」欄の「売上物件」と「確定物件」欄所定の金額」によれば,平成21年8月31日(2009年上期)までの上記受注・売上金額は合計8295万円であるから,認定事実(3)アのとおり,上記時点までにおける本件ツール開発費用の実質的な上乗せ金額は,少なくとも1659万円であったものというべきである。
(エ) もっとも,被控訴人は,上記時点(平成21年8月31日(2009年上期))以降も同23年3月までの間,同様の割合(受注・売上金額の20パーセント)で本件ツール開発費用の実質的な上乗せが行われていたとして,その金額は3700万円程度である旨主張し,これに沿う計算書(乙43)とCの陳述書(乙44)を提出しているが,そもそも上記時点(平成21年8月31日(2009年上期))以降も,同様の割合で本件ツール費用の実質的な上乗せが行われていたことを客観的に裏付ける証拠はなく,上記D証言は,上記「Q移行原価発生内訳(訂正版)」及び「引合案件及び支払想定表(訂正版)」に依拠して行われた限度で,その信用性を肯定するのが相当であるから,上記時点(平成21年8月31日(2009年上期))以降の上乗せに関する被控訴人の主張を採用することはできない。
イ Sの派遣に係る「上乗せ分」について
(ア) 被控訴人は,上記3(被控訴人の主張)ウ(イ)bのとおり,平成23年4月以降については,〈a〉本件個別契約(No.37,39及び40・岡山県庁給与案件関係)の報酬にSの工数に相当する金額分の「未発注の残高」の上乗せと〈b〉本件個別契約(No.42,43・Sの派遣契約)の報酬のうち半額分の「未発注の残高」の上乗せが行われていたものと評価すべきであるから,これに基づき同月以降の上乗せ額を計算すると,①本件個別契約(No.37,39及び40)に関してSの岡山県庁給与案件(甲19)の予想工数である1か月45万円の5月分に相当する225万円,②本件個別契約(No.42,43)の報酬額の半額である105万余りのほか,③平成23年9月頃被控訴人のCから控訴人に交付された表(甲21)のNo.18記載の「岡山(給与)差額・13万円2000円」とNo.22の「岡山(税追加)差額・36万8000円)の合計50万円(甲21のNo.18と22)を合算した380万円余りが上乗せられるべきである」旨主張する。
(イ) そこでまず,被控訴人の上記主張①について検討すると,本件進行表(甲17の95以下)によれば,Sは,本件個別契約(No.35,38)の契約期間(派遣期間)中,本件個別契約(No.37,39及び40)に係る岡山県庁給与案件の言語変換業務に従事していたのであるから,その報酬は既に本件個別契約(No.35,38)によって清算されていたものというべきところ,岡山県庁税務案件及び同県給与案件における作業予定者及び作業工数を記載した甲19によれば,岡山県庁給与案件に係る本件個別契約(No.37,39及び40)の報酬には上記Sの予定工数である1か月45万円の5か月分に相当する225万円が含まれている。そうすると,Sの予定工数に係る上記225万円は,「未発注の残高」として,本件個別契約(No.37,39及び40)に上乗せされているものと認めるのが相当である。
(ウ) 次に,被控訴人の上記主張②について検討すると,この点,控訴人は,本件個別契約(No.42,43)に係る派遣業務の半分は実体のない架空の発注である旨主張するが,本件進行表(甲17の114以下)によれば,本件個別契約(No.42,43)の契約期間(派遣期間)中もSは,実際に「Q移行の懸案整理」等の作業を行っていたものであるから,少なくとも同個別契約の報酬の半額に相当する105万106円は,「未発注の残高」として上記上乗せが行われていたものというべきである。
(エ) さらに,被控訴人の主張③についてであるが,平成23年9月頃被控訴人のCから控訴人に交付された甲21及び弁論の全趣旨(控訴人は控訴人準備書面(10)5頁で下記の認定事実を自認している。)によれば,上記「岡山(給与)差額・13万円2000円」(No.18記載)と「岡山(税追加)差額・36万8000円)」(No.22の)の合計50万円が,Sの派遣に係る本件個別契約(No.35,38,42及び43)の報酬に上乗せして支払われたものであることが認められ,この認定に反する証拠はない。
(オ) 以上によれば,Sの派遣に係る実質的な「上乗せ分」は合計380万106円であったと認められる。
ウ まとめ
以上によれば,被控訴人は,本件個別契約の報酬を決めるに当たって,上記ア及びイの合計2039万0106円の実質的な上乗せを行っていたものと認められるから,商法512条の適用がある本件業務に対する「相当な報酬」を決定するに当たっては,上記(3)エ記載の5155万6640円から上記上乗せ金額を控除すべきである。
よって,商法512条の適用がある本件業務に対する「相当な報酬」は,3116万6534円であると認められる。
なお,商法512条に基づく相当報酬債権は,「履行の請求」により遅滞に陥るところ(民法412条3項),商法512条に基づく相当報酬債権について,本件訴状により請求する以前に明確に請求していたことを認めるに足りる証拠はないから,遅延損害金については,本件訴状送達の日の翌日である平成25年10月17日から発生すると認めることとする。もっとも,この点,控訴人は,甲12,乙29及び30を根拠として上記「履行の請求」の日は平成24年1月31日である旨主張するが,これらの書証は全て未払金の清算を求めるものに過ぎず,民法412条3項所定の「履行の請求」には当たらないものというべきであるから,控訴人の上記主張は理由がない。
(5)  結論
以上によれば,控訴人の予備的請求は,商法512条に基づき本件開発業務の「相当な報酬」として3116万6534円及びこれに対する本件訴状送達の日(履行の請求の日)の翌日である平成25年10月17日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度である理由があることに帰する。
第5  結語
以上の次第であるから,控訴人の本件各請求のうち主位的請求は理由がないからこれを棄却し,他方,予備的請求については,商法512条に基づき本件開発業務の「相当な報酬」として3116万6534円及びこれに対する本件訴状送達の日(履行の請求の日)の翌日である平成25年10月17日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の予備的請求は理由がないから棄却すべきであるところ,これと一部結論を異にする原判決は相当でないから,本件控訴に基づき原判決主文第2,3項を上記認容額のとおり変更し,本件附帯控訴は棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第9民事部
(裁判長裁判官 齊木敏文 裁判官 伊良原恵吾 裁判官 增永謙一郎)

 

〈以下省略〉

 

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