判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(285)平成20年 7月29日 東京地裁 平20(ワ)10174号 著作権譲渡代金請求反訴事件
判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(285)平成20年 7月29日 東京地裁 平20(ワ)10174号 著作権譲渡代金請求反訴事件
裁判年月日 平成20年 7月29日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平20(ワ)10174号
事件名 著作権譲渡代金請求反訴事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2008WLJPCA07298004
要旨
◆原告が、被告に対し、ソフトウェアの著作権譲渡代金と遅延損害金の支払を求めた事案において、被告が相殺を主張する相殺債権は、被告がコンサルティング契約に基づいて原告に対して取得した報酬請求権や原告に対する債権を被告が第三者から譲り受けたものであるところ、それらの各契約について不明な部分があるが、契約において合意された報酬額が異常に高額であるといった不自然さがあるというわけではないから、これら原告に対する債権は有効に成立したものといえるとした上、被告の相殺の主張を認めて、原告の請求を棄却した事例
参照条文
民法505条1項
裁判年月日 平成20年 7月29日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平20(ワ)10174号
事件名 著作権譲渡代金請求反訴事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2008WLJPCA07298004
東京都文京区〈以下省略〉
反訴原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 田辺信彦
同 菱山泰男
同 橋本裕幸
東京都千代田区〈以下省略〉
反訴被告 株式会社サンライズ・テクノロジー
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 槙桂
主文
1 反訴原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は反訴原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
反訴被告は,反訴原告に対し,11億5000万円及びこれに対する平成19年4月5日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,反訴原告が,反訴被告に対し,ソフトウェアの著作権譲渡代金11億5000万円とこれに対する著作権移転登録手続完了後の日である平成19年4月5日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 争いのない事実等(証拠を掲記したもの以外は,当事者間に争いがない。)
(1)ア 反訴原告は,コンピューターシステムの設計,製造,輸入及び販売,コンピューターソフトウェアの開発,製造,請負,輸出,販売等を業とする株式会社である。
イ 反訴被告は,コンピューターによる経営,事務,技術の諸設計,計算の受託代行業務,コンピューター及び付属機器並びにソフトウェアの販売等を業とする株式会社である。
(2) 反訴原告は,平成18年3月30日付けで,反訴被告との間で,反訴原告から反訴被告に対して次のソフトウェア(括弧内の記号番号は,財団法人ソフトウェア情報センターにおける著作権登録の表示番号。以下,総称して「本件ソフトウェア」という。)の著作権を譲渡し,反訴被告から反訴原告に対して本件ソフトウェアの著作権の移転登録手続完了の日から6か月以内に代金合計11億5000万円(消費税相当額込みで12億0750万円。以下「本件著作権譲渡代金」という。)を支払う旨の譲渡契約(以下「本件著作権譲渡契約」という。)を締結した(甲1)。
① BSS-PACKクライアント(メニュークリエイト)(P第4574号)
② BSS-PACKサーバー(UNIX)(P第4724号)
③ BSS-PACKサーバー(WindowsNT版)(P第5363号)
④ 部品ビュー(P第6339号)
⑤ 部品マイスター(P第5814号)
(2) 反訴原告は,平成18年10月4日までに,本件著作権譲渡契約に基づき,本件ソフトウェアの著作権の反訴被告への移転登録手続を完了した。
(3) 反訴原告と反訴被告との間において,平成18年6月30日付けで,反訴原告の反訴被告に対する本件著作権譲渡代金のうち6億8250万円(消費税相当額込み)の債権と反訴被告の反訴原告に対する同額の売掛金債権(以下「本件相殺債権1」という。)とを対当額で相殺する旨の合意書(甲4。以下,この合意書を「本件相殺合意書1」といい,本件相殺合意書1に係る相殺合意を「本件相殺合意1」という。)が作成されている。
(4) 反訴原告,反訴被告及び株式会社Axis Partners(以下「アクシス」という。)の間において,平成18年6月30日付けで,反訴被告のアクシスに対する3億円の未収入金債権(以下「本件相殺債権2①」という。),アクシスの反訴原告に対する同額の売掛金債権(以下「本件相殺債権2②」という。)及び反訴原告の反訴被告に対する本件著作権譲渡代金のうち3億円(消費税相当額込み)の債権を順次対当額で相殺する旨の合意書(甲5。以下,この合意書を「本件相殺合意書2」といい,本件相殺合意書2に係る相殺合意を「本件相殺合意2」という。)が作成されている。
(5) 反訴原告とアクシスとの間において,平成18年9月30日付けで,反訴原告からアクシスに対して本件著作権譲渡代金のうち2億2500万円(消費税相当額込み)の債権を譲渡(以下「本件債権譲渡」という。)する旨の債権譲渡契約書(甲6。以下「本件債権譲渡契約書」という。)が作成されている。
(6) (3)ないし(5)の本件相殺合意1,本件相殺合意2及び本件債権譲渡がいずれも有効であれば,反訴原告の反訴被告に対する本件著作権譲渡代金の債権は,全額が消滅又は譲渡されたことになる。
2 争点
本件では,本件相殺合意1,2及び本件債権譲渡によって,反訴原告の反訴被告に対する本件著作権譲渡代金の債権が消滅又は移転したかどうかが争われている。
(1) 本件相殺債権1,同2①,②の発生原因事実が存在するか。
(反訴被告の主張)
本件相殺債権1,同2①,②の発生原因事実は次のとおりである。
ア 本件相殺債権1
反訴被告は,平成18年1月5日,反訴原告との間で,反訴被告が反訴原告の債務整理(反訴原告の債権者が反訴原告に対して有する債権の譲渡先を紹介すること,反訴原告に上記債権者又は上記債権者からの債権の譲受人から債権放棄を受けさせること)をすることを内容とするコンサルティング契約(以下「本件コンサルティング契約1」という。)を締結し,平成18年6月30日までに,それに基づく業務を完了し,同契約における合意に基づき,反訴原告に対し,報酬6億8250万円(消費税相当額込)の請求権(これが本件相殺債権1である。)を取得した。
イ 本件相殺債権2
(ア) 本件相殺債権2①
反訴被告は,株式会社丸石サイクルに対して3億円の貸付金債権を有していたところ,平成18年6月30日,石丸サイクルから上記貸付金債権の代物弁済として,後記(イ)のとおり石丸サイクルがアクシスに対して取得した5億円(消費税相当額別)の報酬請求権のうち3億円(同)の部分(これが本件相殺債権2①である。)を譲り受けた。
(イ) 本件相殺債権2②
反訴原告は,平成17年12月1日,アクシスとの間で,反訴原告がアクシスに対して,反訴原告の会社再生計画の立案及び構築,反訴原告の事業支援を行う会社(以下「事業スポンサー」という。)の紹介及び支援の取り付けをすることを内容とするコンサルティング契約(以下「本件コンサルティング契約2」という。)を締結し,その際,反訴原告がアクシスの紹介した事業スポンサーとの間で事業支援に関する合意書を締結した場合,アクシスに対し,成功報酬として,5億円(消費税相当額別)を当該合意書締結から6か月以内に支払うことを約した。
アクシスは,同日,丸石サイクルとの間で,丸石サイクルがアクシスの業務履行支援者として,反訴原告の事業スポンサーの紹介及び支援の取り付けを行うことを委託することを内容とするアドバイザリー業務委託契約(以下「本件アドバイザリー契約」という。)を締結し,その際反訴原告が丸石サイクルの紹介した事業スポンサーとの間で事業支援に関する合意書を締結した場合,丸石サイクルに対し,成功報酬として,5億円(消費税相当額別)を当該合意書締結から6か月以内に支払うことを約した。
丸石サイクルは,反訴原告と事業スポンサーである反訴被告との間で反訴被告が反訴原告の事業継続を支援することを内容とする事業支援に関する合意書(甲15。以下「本件事業継続支援合意書」という。)を締結させた。
以上により,丸石サイクルはアクシスに対して本件アドバイザリー契約に基づき,アクシスは反訴原告に対して本件コンサルティング契約2に基づき,それぞれ5億円(消費税相当額別)の報酬請求権(このうち,アクシスの反訴原告に対する報酬請求権が,本件相殺債権2②である。)を取得した。
(反訴原告の主張)
反訴被告の主張は否認する。
(2) 反訴原告とアクシスとの間で,本件債権譲渡の合意がされたか。
(反訴被告の主張)
反訴原告は,平成18年9月30日,アクシスに対し,反訴原告がアクシスに対して負担する債務(本件コンサルティング契約2に基づく5億円(消費税相当額込みで5億2500万円)の報酬債務から本件相殺合意2により消滅した3億円を控除した残額)の返済に充てる目的で,反訴原告が反訴被告に対して有する本件著作権譲渡代金の債権2億2500万円を譲渡した。
(反訴原告の主張)
反訴被告の主張は否認する。
(3) 本件相殺合意1,2は通謀虚偽表示によってされたものか。
(反訴原告の主張)
本件相殺合意1,2は,いずれも,反訴原告と反訴被告が意を通じて行った虚偽の意思表示であり,通謀虚偽表示であるから無効である。
(反訴被告の主張)
反訴原告の主張は否認する。
(4) 本件著作権譲渡契約は,詐欺による取消し又は錯誤により無効か。
(反訴原告の主張)
反訴被告は,本件ソフトウェアの著作権の代金として11億5000万円を支払う意思がないのに,反訴原告に対しその支払をする旨の虚偽の説明をして本件著作権譲渡契約を締結させたものであるから,詐欺に当たり,反訴原告は,平成19年12月10日に反訴被告に送付された同日付けの準備書面により,本件債権譲渡契約を取り消す旨の意思表示をした。また,反訴被告が当初から譲渡代金を支払わない意思であったとすれば,反訴原告は,この点につき錯誤があったから,本件著作権譲渡契約は,錯誤により無効である。
(反訴被告の主張)
反訴原告の主張は否認する。
第3 争点に対する判断
1 認定事実
証拠(甲7ないし28,乙3,証人C,証人D,原告代表者,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 反訴原告は,平成2年以降,金融機関の資金援助の下,会社の基幹業務を一元管理するためのソフトウェア(ERP)の開発を進め,平成18年ころまで本件ソフトウェアの開発を続けてきたが,平成9年8月ころの金融危機を契機に銀行の反訴原告に対する融資が打ち切られることになったことから,それ以降,反訴原告は,インターナショナル・システム・サービス株式会社(以下「ISS」という。)の資金援助の下で,ソフトウェアの開発を継続してきた。
(2) 平成14年9月30日には,反訴原告が日本政策投資銀行等の金融機関に譲渡担保に供していた反訴原告の唯一の財産ともいうべき本件ソフトウェアのうちP第4574号,P第4724号,P第5363号,P第6339号の4件が譲渡担保権の実行として4000万円で処分されることになり,ISSは,その処分代金4000万円を支出して上記4件のソフトウェアについての権利を取得し,これによって,反訴原告は,これら4件のソフトウェアに対する権利を確定的に喪失した。また,当時,本件ソフトウェアのうち残る1件(P第5814号)についても,ISSその他の債権者に譲渡担保に供されていた
(3) しかし,ISSも,平成17年以降,営業成績の悪化のために経営不振に陥り,次第に反訴原告に対する資金援助を継続することが困難になった。そこで,反訴原告は,平成17年秋ころ以降,新しい事業スポンサーを探す必要に迫られ,反訴原告代表者は,平成18年3月10日,知人等を通じて紹介された株式会社GIP(企業買収等のコンサルティング会社)の代表者の仲介により,反訴被告代表者と面談し,反訴原告及びその代表者の債務整理,反訴原告及びその関連会社であるソフトウェア部品開発株式会社(以下「SBD」という。)の再生支援,本件ソフトウェアの製造販売の継続等について,協力を求めた。GIPが反訴被告を反訴原告の新たな事業スポンサーとして適切であると考えたのは,反訴被告は,ERPの販売実績を有しており,反訴原告を資金面だけでなく販売面でも支援可能であること,反訴被告にとっても本件ソフトウェアを有力な自社製品として持つという事業上の利点があること等を考慮したためであった。
(4) 反訴原告代表者と反訴被告代表者は,協議を重ねた結果,反訴原告が破綻しないように,その運転資金については,反訴被告が資金援助を行うこと,金融機関に対する債務は,できる限り圧縮した上で,反訴被告が反訴原告又はSBDに対して,債権買取費用,債務弁済費用,債権放棄費用等の諸費用を拠出する方法により処理すること,ISSらの債権者が取得し又は担保提供を受けている本件ソフトウェアを反訴原告に取り戻すこと,反訴被告がこれらのことを約束・履行した場合には,反訴原告は,反訴被告に対し,取り戻された本件ソフトウェアの著作権を譲渡することなどを合意した。その結果,反訴原告は,平成18年3月28日ころ,反訴被告との間で,本件コンサルティング契約1の契約書(甲7)を取り交わし,反訴原告のISS外11社に対する債務の整理を依頼すること,反訴被告がISS及びそれ以外の1社の債権者から協力を取り付け,かつ,債権者又は債権の譲渡先が債権放棄をした場合,成功報酬として5億円(消費税相当額別)を支払うこと,さらに,反訴被告が債権総額の5%未満の費用で債権放棄を受けた場合には,追加して1億5000万円の報酬を支払うことを合意した。
(5) なお,平成18年1月末時点における反訴原告の負債総額は14億6538万7000円であり,反訴原告代表者の負債総額は1億5000万円であった。また,当時,反訴原告及び反訴原告代表者は,商工ローンや消費者金融からの借入れによってようやく経営を継続している状態であり,税金・社会保険料等の公租公課を滞納しており,金融機関に対する返済も遅延していて,反訴原告の経営は,破綻に瀕していた。
(6) 平成18年3月には,当初本件コンサルティング契約1で債務整理の対象とされていなかった債権者である群馬銀行の申立てにより,反訴原告代表者の自宅と生家について,競売開始決定がされるなどしたことから,反訴原告と反訴被告は,同銀行の債権を債務整理の対象となる債権に追加する旨の覚書(甲8,9)を取り交わすなどして,本件コンサルティング契約1の内容に変更を加えるなどしたが,結局,反訴被告は,平成18年3月28日から同年5月26日までの間に,ISSを含む反訴原告の債権者に3487万3475円を支払って合計13億2065万8000円の債務免除を受けさせた。その結果,反訴原告は,12億8578万5272円の債務免除益を得,同年4月11日には,本件ソフトウェアのうちISSが取得していた4件について,ISSから4000万円で買い戻して著作権の移転登録を受けた。このほか,反訴被告は,平成18年3月から平成19年3月までの間に,反訴原告とSDBに対して,合計1億8950万円の資金を前渡金や貸付金等の形で拠出した(そのうち1250万円については,平成18年8月2日に返済済みである。)。
(7) さらに,反訴原告は,反訴被告との間で,平成18年3月28日,反訴被告が反訴原告から本件ソフトウェアの著作権を譲り受ける代わりに,反訴被告が反訴原告の従業員の雇用を確保し,反訴原告に本件ソフトウェアに関わる開発業務を委託することによって反訴原告が継続的に事業を行えるように支援することを約する内容の本件事業継続支援合意書(甲15)を取り交わし,同年4月4日,本件著作権譲渡契約書(甲1)を取り交わした。
(8) 他方,反訴原告は,平成17年12月1日付けで,アクシスとの間で,反訴原告の会社再建計画の立案及び構築,反訴原告の事業スポンサーの紹介及び支援の取り付けをアクシスに委託することなどを内容とする本件コンサルティング契約2の契約書(甲13)を取り交わし,アクシスは,同日付けで,丸石サイクルとの間で,同契約に基づく受託事務を丸石サイクルに委託することなどを内容とするアドバイザリー業務委託契約書(甲14)及び業務履行補助契約書(甲17)を取り交わし,これらの契約において,反訴原告と事業スポンサーとの間で事業支援に関する合意書が締結された場合には,成功報酬として5億円(消費税相当額別)を支払うことが合意された。これらの合意に基づき,反訴被告と反訴原告との間で本件事業継続支援合意書(甲15)が取り交わされたことにより,石丸サイクルはアクシスに対し,アクシスは反訴原告に対し,それぞれ,5億円(消費税相当額別)の報酬請求権を取得することとなった。そして,反訴被告は,平成18年6月30日,石丸サイクルとの間で,同社のアクシスに対する上記報酬債権のうち3億円を譲り受ける旨の債権譲渡契約書(甲12)を取り交わした。
(9) 以上の経過を経て,平成18年6月30日付けで,反訴被告と反訴原告との間で本件相殺合意書1(甲4)が,反訴被告,反訴原告及びアクシスの間で本件相殺合意書2(甲5)が,それぞれ取り交わされた。また,同年9月30日付けで,反訴原告とアクシスとの間において,反訴原告が反訴被告に対して有する本件著作権譲渡代金の残余2億2500万円分をアクシスの反訴原告に対する本件コンサルティング契約2に基づく報酬請求権の残額2億2500万円の代物弁済として譲渡する旨の本件債権譲渡契約書(甲6)が取り交わされた。本件相殺合意書1,2及び本件債権譲渡契約書によって相殺や債権譲渡の処理をすることは,GIPや反訴被告が考案して反訴原告に提案し,反訴原告も異議なくこれに従ったものであって,反訴原告,反訴被告,アクシスらの間において,本件著作権譲渡代金や本件コンサルティング契約1,2の報酬金を現実に授受することを前提に,それらの支払の時期や方法が協議されたことはなかった。
(10) ところが,その後,反訴被告が反訴原告に対して本件事業契約支援合意書(甲15)で合意された本件ソフトウェアに関わる開発業務の委託をしなかったことから,期待していた業務委託報酬を得られないこととなった反訴原告は,これを不満とし,本件相殺合意1,2の無効を主張して,本件著作権譲渡代金の名目で金銭の支払を要求するようになった。
2 争点(1)について
1において認定したとおり,本件相殺債権1は,反訴被告が本件コンサルティング契約1に基づいて反訴原告に対して取得した6億8250万円(消費税相当額込み)の報酬請求権である。また,本件相殺債権2①は,丸石サイクルが本件アドバイザリー契約に基づきアクシスに対して取得した5億2500万円(消費税相当額込み)の報酬請求権のうち3億円の部分を反訴被告が譲り受けて取得したものであり,同②は,アクシスが本件コンサルティング契約2に基づいて反訴原告に対し取得した5億2500万円(消費税相当額込み)の報酬請求権である。したがって,これらの債権は,いずれも有効に成立したものというべきである。
もっとも,本件コンサルティング契約1,2及び本件アドバイザリー契約において,いかなる事情に基づいて報酬額が上記のとおりに決定されたのか,アクシスや丸石サイクルがどのような経緯で本件コンサルティング契約2及び本件アドバイザリー契約を締結したのか,それらの契約に基づいて反訴被告の事業スポンサーを探すことに具体的にどのように関与をしたのかなどについては,必ずしも明らかであるとはいえない。
しかし,反訴原告が,反訴原告代表者とともに,本件コンサルティング契約1,2及び本件アドバイザリー契約によって,14億円余りにも上る多額の債務の免除を受けるという利益を得たことからすると,これらの契約において合意された報酬額が異常に高額にすぎて反訴原告に一方的に不利であったともいえず,真意に基づいてそのような報酬額の合意がされたと考えても不自然であるとまではいえないから,これらの契約に基づいて上記報酬請求権が有効に成立したとの上記判断が左右されるものとはいえない。
3 争点(2)について
1において認定したとおり,反訴原告とアクシスとの間で本件債権譲渡の合意がされた事実が認められ,この認定を左右するに足りる証拠はない。
4 争点(3)について
反訴原告は,本件相殺合意1,2は,通謀虚偽表示であるから,無効であると主張する。
しかし,本件相殺合意1,2が通謀虚偽表示であることについては,これを認めるに足りる証拠はない。
むしろ,1において認定した事実からすると,反訴原告は,本件著作権譲渡代金を現実に受け取るよりも,反訴被告との間で取り交わしたた本件事業継続支援合意書(甲15)に基づき,反訴被告から本件ソフトウェアに関わる開発業務を受託して継続的に事業を行えることに期待していたことがうかがわれるから,反訴原告が本件著作権譲渡代金の債権を本件コンサルティング契約1,2に基づく報酬金債務との相殺やその代物弁済に供することに合意したとしても,あながち不自然なこととはいえないというべきである。
5 争点(4)について
反訴原告は,本件著作権譲渡契約は,詐欺又は錯誤に基づいて締結されたものであると主張する。
しかし,本件著作権譲渡契約に詐欺や錯誤の瑕疵があるとしても,そのことは,本件ソフトウェアの著作権が反訴原告に復帰することの根拠とはなり得ても,本件著作権譲渡契約の有効を前提に,それに基づいて本件著作権譲渡代金の請求をする場合には,むしろ,障害となる事実であるというべきであるから,反訴原告の上記主張は採用することができない。
6 結論
よって,反訴原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判官 矢尾渉)
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