【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(54)平成25年 5月22日 名古屋高裁金沢支部 平23(ネ)259号 地位確認等請求控訴事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(54)平成25年 5月22日 名古屋高裁金沢支部 平23(ネ)259号 地位確認等請求控訴事件

裁判年月日  平成25年 5月22日  裁判所名  名古屋高裁金沢支部  裁判区分  判決
事件番号  平23(ネ)259号
事件名  地位確認等請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却  上訴等  上告、上告受理申立(後、上告棄却、不受理決定)  文献番号  2013WLJPCA05226007

要旨
◆Y2社からY1社に派遣されていたXが、Y1社との労働契約成立を主張して、Y1社に対し期間の定めのない労働契約上の地位確認、賃金支払を求め、Yらに対し不法行為による損害賠償を求めたところ、原審で各請求を棄却されたため控訴した事案において、Y1社とX間に当初より黙示の労働契約が成立していたとはいえず、また、労働者派遣法40条の4の直接雇用契約申込義務は公法上の義務であり私法上の雇用契約申込義務が発生するものではないから、Y1社が派遣可能期間の経過を知りつつXの受入れを継続したことをもって直接雇用契約申込義務を履行したとはいえず同条により労働契約が成立したとはいえないほか、明示の労働契約が成立したとか、Y1社が労働契約成立を否定することが信義則違反や権利濫用に当たるとはいえないとした上、Yらの行為が不法行為を構成するとはいえないとして、控訴を棄却した事例
◆労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性等からすれば、同法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、そのことだけにより、派遣労働者と派遣元との間の労働契約が民法90条違反等の理由により無効になることはなく、企業間の業務請負契約あるいは労働者派遣契約が同様の理由で無効となることもないとされた事例

裁判経過
上告審 平成27年 1月23日 最高裁第二小法廷 決定
第一審 平成23年 9月14日 福井地裁 判決 平21(ワ)136号 地位確認請求事件

出典
労判 1118号62頁

参照条文
民法1条2項
民法1条3項
民法90条
民法623条
民法709条
労働基準法6条
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律2条1号
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律35条の2第2項
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律40条の2第1項
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律40条の4
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律48条1項
職業安定法4条6項
職業安定法44条

裁判年月日  平成25年 5月22日  裁判所名  名古屋高裁金沢支部  裁判区分  判決
事件番号  平23(ネ)259号
事件名  地位確認等請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却  上訴等  上告、上告受理申立(後、上告棄却、不受理決定)  文献番号  2013WLJPCA05226007

控訴人 X
同訴訟代理人弁護士 海道宏実
同 吉川健司
同 村田浩治
同 河村学
同 茂呂信吾
同 島田広
同 村上昌寛
同 吉村悟
同 麻生英右
同 坪田康男
同 黛千恵子
同 三田恵美子
同 北川慎治
同 山本晋太郎
同 端将一郎
同 綿谷史枝
被控訴人(Y1株式会社訴訟承継人) Y3株式会社(以下「被控訴人Y3社」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 国谷史朗
同 魚住泰宏
同 牟礼大介
同 山浦美卯
被控訴人 株式会社Y2(以下「被控訴人Y2社」という。)
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 置田文夫
同 村田純江
同 服部達夫
同 賴政忠
同 荒鹿高行
同 西靖雄

 

 

主文

1  本件各控訴をいずれも棄却する。
2  控訴費用は控訴人の負担とする。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  原判決を取り消す。
2  控訴人が、被控訴人Y3社に対し、期間の定めのない労働契約上の地位を有することを確認する。
3  被控訴人Y3社は、控訴人に対し、平成21年3月15日以降、毎月15日限り、26万1135円を支払え。
4  被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して、100万円及びこれに対する平成21年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  概要
(1)  本件は、控訴人が、被控訴人Y3社(本訴提起時はY1株式会社(以下「Y1社」という。))に対し、①期間の定めのない労働契約上の地位にあることの確認、②賃金請求権に基づき、平成21年3月15日以降、毎月15日限り、26万1135円の支払を求め、被控訴人らに対し、③不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及びこれに対する不法行為の後の日(各訴状送達の日の翌日)である平成21年4月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
(2)  原審は、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が本件各控訴を提起した。
2  基礎となる事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠により容易に認定できる事実)
(1)  当事者
ア Y1社
a株式会社は、平成17年4月1日、a1株式会社と商号を変更した。(証拠〈省略〉)
b株式会社は、平成17年4月1日、b1株式会社と商号を変更した。(証拠〈省略〉)
b1株式会社は、平成20年4月1日、a1株式会社など傘下の子会社7社を吸収合併し、商号をY1株式会社(以下、その時期を問わず「Y1社」という。)とした。(証拠〈省略〉)
Y1社は、本社を大阪府門真市に置き、電気及び電子部品の製造、販売等を業とする株式会社である。
イ 被控訴人Y2社
株式会社cは、昭和53年9月1日に設立された資本金1200万円の会社である。京都市内に本店を置き、平成4年3月5日には商号を株式会社Y2(被控訴人Y2社)と商号を変更した。(証拠〈省略〉)
被控訴人Y2社は、全国各地に事業所を置き、「ファクトリーアウトソーシング、製造業務請負、人材派遣、アウトプレースメント」を事業内容とし、売上高510億円(平成19年度)であった。(証拠〈省略〉)
ウ Y1社及び同社が所属する企業グループと被控訴人Y2社との間には、相互の株式保有などの資本面、役員の派遣などの人事面のいずれにおいても関連はなく、それぞれ独立した株式会社である。
(2)  Y1社と被控訴人Y2社の契約関係
ア 業務請負契約
Y1社は、平成11年8月6日、被控訴人Y2社との間で、キーボードスイッチ又は自動車スイッチの製造業務につき、業務請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結し、また、取引基本契約及び品質保証協定を締結した。(証拠〈省略〉)
さらに、Y1社と被控訴人Y2社は、順次、業務請負覚書(平成14年3月25日付けで、作業毎の単価を定める内容となっている。)、安全衛生管理に関する覚書、機械設備賃貸借に関する覚書及び建物賃貸に関する覚書(いずれも平成15年4月1日付け)を定めていた。(証拠〈省略〉)
イ 労働者派遣契約
Y1社は、平成18年10月31日、被控訴人Y2社との間で、同被控訴人の労働者をY1社に派遣することに関する労働者派遣基本契約を締結した。(証拠〈省略〉)
Y1社は、同年11月1日、被控訴人Y2社との間で、業務内容を民生用スイッチ組立・検査、派遣人員を18名、期間を同日から平成19年4月30日まで、就業場所を福井県f市内のY1社(dグループ)とする労働者派遣個別契約を締結した。(証拠〈省略〉)
その後も、平成18年11月21日付け、平成19年5月1日付け、平成19年11月1日付け、平成20年5月1日付け(派遣人員15名)、平成20年11月1日付け(派遣人員12名)で、同趣旨の労働者派遣個別契約が締結された。(証拠〈省略〉)
(3)  控訴人と被控訴人Y2社の契約関係
ア 控訴人は、被控訴人Y2社との間で、以下のとおり、雇用主を被控訴人Y2社、就労場所をn製作所、仕事内容をマシンオペレーターとする内容の期間雇用契約書に署名した。同契約書によれば、給与は定額の給与(日額基本給8400円、皆勤手当500円、残業・休出手当1時間当たり1400円以上、深夜手当1時間当たり280円以上)を基礎として定められており、月平均所定労働日数は20日とされていた。
契約日 雇用期間
平成17年2月21日 同  日から3か月 (証拠〈省略〉)
同  年5月19日 同月21日から3か月 (証拠〈省略〉)
同  年8月19日 同月21日から3か月 (証拠〈省略〉)
同  年11月18日 同月21日から3か月 (証拠〈省略〉)
平成18年1月18日 同月21日から4か月 (証拠〈省略〉)
同  年5月19日 同月21日から4か月 (証拠〈省略〉)
同  年9月13日 同月21日から4か月 (証拠〈省略〉)
イ(ア) 控訴人は、被控訴人Y2社との間で、以下のとおり、派遣労働者として就労することを内容とする労働契約書(労働者派遣就業条件明示書)に署名した。(証拠〈省略〉)
契約日 雇用期間
平成18年11月1日 同月1日~同月20日 (証拠〈省略〉)
平成18年11月21日 同月21日~翌年2月15日 (証拠〈省略〉)
平成19年2月16日 同日から3か月 (証拠〈省略〉)
同  年5月16日 同日から3か月 (証拠〈省略〉)
同  年8月16日 同日から3か月 (証拠〈省略〉)
同  年11月16日 同日から3か月 (証拠〈省略〉)
平成20年2月16日 同日から3か月 (証拠〈省略〉)
同  年5月16日 同日から3か月 (証拠〈省略〉)
同  年8月16日 同日から3か月 (証拠〈省略〉)
平成21年2月1日 同日から2か月 (証拠〈省略〉)
(イ) 控訴人は、雇用期間を平成20年11月1日から3か月とする同日付け労働契約書(労働者派遣就業条件明示書)(証拠〈省略〉)への署名には応じていない。(証拠〈省略〉)
(ウ) また、上記(ア)及び(イ)の各労働契約書(労働者派遣就業条件明示書)には、派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日として平成21年11月1日が記載され、Y1社は、被控訴人Y2社から、労働者派遣法35条の2第2項の規定による通知(派遣元通知)を受けたことがない。
ウ 控訴人の平成20年12月分給与は総支給額27万5140円、平成21年1月分のそれは27万3066円、同年2月分のそれは23万5198円、同年3月分のそれは11万4906円であった。(証拠〈省略〉)
(4)  人員削減
ア 平成20年9月、リーマンショックが発生した。被控訴人Y2社は、同年10月24日、控訴人を含むY1社のdグループで稼働している派遣労働者に対し、「生産減少に伴う人員削減について」と題する書面により、「この度、○○スイッチ製造チームでは大幅な受注減少に伴う生産減少とクライアントの他工場からの人員受け入れにより在籍人員調整を平成20年11月30日より段階的に実施せざるを得なくなりました。最終的には在籍0となります。」との説明と共に、「生産減少に伴うアンケート」を配付し、①同年11月30日付けで希望退職に応じるか否か、②被控訴人Y2社との契約継続を希望する場合、派遣先としては自宅通勤圏内に限るのか否か、③任地を問わない者については地域、条件、部署、勤務形態の希望があれば聞かせてほしいとするアンケートを実施した。(顕著な事実、証拠〈省略〉)
イ 被控訴人Y2社は、平成20年12月1日、「この度、○○スイッチ製造チームでは大幅な受注減少に伴う生産減少と社員対応化により在籍人員調整を平成21年1月31日までに実施せざるを得なくなりました。」として、上記アと同趣旨アンケートを再度実施した。(証拠〈省略〉)
(5)  是正指導
ア 控訴人は、平成20年10月下旬から同年11月初めにかけて、福井労働局に対し、後記Y1社の請負化計画(第3の1(1)イ(コ))、その突然の中止及び人員削減の発表はおかしい旨相談した。(証拠〈省略〉、控訴人本人(原審))
イ 福井労働局長は、同年12月18日、Y1社及び被控訴人Y2社に対し、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)48条1項に基づき、是正指導書を発出した(以下「本件是正指導」という。)。
この是正指導書の中では、Y1社と被控訴人Y2社との間で、平成11年8月6日から平成18年10月31日までの間、業務請負として行われていた各種スイッチ製造業務の実態は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)の下記事項〈省略〉を満たさないため、適正な請負事業とは判断されず労働者派遣事業に該当すると指摘した上、①適正な労働者派遣契約の締結がされていないことから、労働者派遣法26条1項に違反する、②派遣先事業主(Y1社)・派遣元事業主(被控訴人Y2社)の講ずべき措置が適正に講じられていないことから、労働者派遣法3章3節(Y1社)・同章2節(被控訴人Y2社)の各条項に違反する、③平成18年11月1日から労働者派遣契約に切り替え、同一の就業場所において行わせているこれらの業務については、派遣受入期間の制限を受ける業務であり、既に派遣可能期間である3年を超えており、Y1社については、現在まで継続して労働者派遣の役務の提供を受けていることから、労働者派遣法40条の2第1項に、被控訴人Y2社については、現在まで継続して労働者派遣を行っていることから、労働者派遣法35条の2第1項に違反するとの指摘をし、是正のための措置として、Y1社及び被控訴人Y2社に対して、被控訴人Y2社の各種スイッチ製造業務に係る労働者派遣とY1社のその受入れについて、それぞれ労働者の雇用の安定を図るための措置を講ずることを前提に、労働者派遣とその派遣の役務提供を受けることを中止するよう求めるとともに、これらの措置について平成21年1月23日までに書面で報告することを求めた。(証拠〈省略〉)
(6)  Y1社及び被控訴人Y2社の対応
ア Y1社
(ア) Y1社は、平成21年1月13日、同年3月末日をもって労働者派遣契約を終了させることを被控訴人Y2社と合意し、同月16日、同月20日及び同月28日、本件是正指導に基づき、控訴人を含む対象となる派遣労働者に対して、下記の労働条件を示し、Y1社との労働契約の締結を希望する場合は、説明会の日から1週間以内に意思表示をするよう説明した。(証拠〈省略〉)
契約期間:3か月単位とし、最大でも2年11か月までとする。
賃 金:基本給は時給810円。その他、超勤手当及び通勤費補助あり。賞与はなし。
退職金:なし。
年 金:企業年金の適用なし。
社会保険:各種社会保険に加入(法定資格に基づく)。
勤務時間:通常勤務:午前8時30分から午後5時。経営状況により勤務時間変更の可能性あり。交代制勤務の場合は、別途設定。
年次有給休暇:法定の年次有給休暇を付与。
福利厚生:事業場内の福利厚生施設の利用可。
教育訓練:知識・技能力向上のための教育訓練を必要の都度行う。
(イ) Y1社は、上記各説明会の際、本件是正指導に基づき、対象となる派遣労働者に対し、Y1社の所属する企業グループの会社であるe株式会社(以下「e社」という。)と契約期間の定めのある労働契約を締結することができること、Y1社の説明会の後に、e社の説明会を開催することを説明した。
e社は、その説明会において、①e社が期間の定め(2か月から6か月)のある労働契約を締結するに当たっては、賃金及び福祉条件については被控訴人Y2社と同一とすること、②対象派遣労働者のうち、e社との労働契約の締結を希望する者全員と契約すること、③労働契約の契約期間経過後、正社員登用等の評価制度を導入することなどを説明し、e社との労働契約の締結を希望する場合は、説明会の日から1週間以内に意思表示をするよう説明した。(弁論の全趣旨)
イ 被控訴人Y2社
(ア) 被控訴人Y2社は、同年1月30日、控訴人に対し、別作業をすることを提案し、それができないのであれば休業してもらうことを伝えたところ、控訴人は、直ぐに返答はできない、現在の業務を変更する必要はないと回答した。
被控訴人Y2社は、同年2月2日、控訴人に対し、上記の別作業をすることの提案に対する回答がないのであれば休業してもらうと伝え、控訴人は、同日以降、Y1社において就労していない。
(イ) 被控訴人Y2社は、同月13日、控訴人に対し、「…2009年3月31日をもってY1株式会社△△様との派遣契約を残念ではございますが終了することになりました。」として、今後、①希望退職に応じる、②被控訴人Y2社で仕事を続けたい、③e社での就労を希望する、のいずれを希望するかなどを尋ねるアンケートを配布した。(証拠〈省略〉)
控訴人は、このアンケートへの回答を拒否した。
(7)  組合交渉等
ア h労働組合総連合、i労働組合総連合及び地域労働組合j(以下「控訴人所属労働組合」という。)は、平成21年1月29日、Y1社に対して、控訴人の待遇に関して、控訴人を速やかに正社員と同様の労働条件で雇用することを求め、団体交渉の申入れをした。(証拠〈省略〉)
イ 控訴人所属労働組合は、同年2月20日、Y1社に対して、控訴人の待遇に関して、控訴人を速やかに雇用すること、Y1社がこれまでに提示した労働条件は不十分であり、さらにその他の労働条件を明らかにするよう求め、団体交渉の申入れをした。(証拠〈省略〉)
ウ Y1社は、同月27日、上記申入れに対して、控訴人とY1社との間に労働契約がない以上、団体交渉には応じられないとの回答をした。(証拠〈省略〉)
エ Y1社は、同年3月4日、控訴人所属労働組合との間で、団体交渉ではなく、話し合いには応じた。
オ 控訴人は、Y1社に対し、同月31日付け書面をもって、本件訴訟が係属中であるが、当面は、Y1社からの条件に対し異議をとどめた上で、就労する意思があることを通知した。これに対し、Y1社は、控訴人に対し、同日付け回答書をもって、①控訴人とY1社との間に雇用契約は存在せず、新たな雇用契約が締結されない限り、控訴人をY1社の従業員として認めることはできないこと、②同年1月16日の説明会において、Y1社との間に雇用契約を締結する場合の労働条件の具体的内容、雇用契約を希望する場合には、同月23日までに申し入れる必要がある旨説明し、後日、同月30日まで期間を延長したが、控訴人からその申入れはなかったこと、③同年3月4日の控訴人所属労働組合との話し合いの場において、Y1社との間に雇用契約を締結する場合の労働条件及び雇用契約を希望する場合の申入れの期間が既に経過していることを説明したことなどを回答した。(証拠〈省略〉)
(8)  本訴提起
控訴人は、平成21年3月6日、本訴を提起した。
(9)  被控訴人Y3社によるY1社の吸収合併
被控訴人Y3社は、当審係属後の平成24年4月1日、Y1社を吸収合併し、本件の訴訟手続を受継した。
3  争点
(1)  争点1 黙示的に労働契約が成立していると認められるか。
(2-1) 争点2-1 労働者派遣法40条の4により労働契約が成立していると認められるか。
(2-2) 争点2-2 明示の労働契約が成立したか。
(2-3) 争点2-3 被控訴人Y3社が労働契約の成立を否認することが信義則に反し、権利濫用に該当するか。
(3)  争点3 Y1社及び被控訴人Y2社の行為が不法行為を構成すると認められるか。
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1 黙示的に労働契約が成立していると認められるか。
(控訴人の主張)
ア まとめ
(ア) 労働契約の本質は使用者が労働者を指揮命令及び監督し、労働者が賃金の支払を受けて労務を提供することにあるから、黙示の合意により労働契約を締結したか否かは、当該労務供給契約の具体的実態により両者間に事実上の使用従属関係、労務提供関係、賃金支払関係があるかどうか、形式的に存在する契約の効力はあるか、これらの関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思の合致があるかどうかによって判断すべきである。
(イ) 後記イないしオのとおり、上記(ア)の諸事実が認められるから、控訴人とY1社との間には客観的に推認される黙示の意思の合致があるとみるべきであって、両者の間には雇用契約が存在するというべきである。
イ Y1社による採用行為
(ア) 控訴人は、被控訴人Y2社の社員に対し、Y1社で働きたい旨伝えたところ、被控訴人Y2社の社員は、Y1社の存在するf市で面接を実施することを回答した。これは、面接がY1社のためのものであることを示している。
(イ) 控訴人は、被控訴人Y2社のk営業所社員C(以下「C」という。)から福井県f市所在のファミリーレストランで採用面接を受けたが、給料が高くなる夜勤で働きたいと希望を伝えると、「クライアントに聞いておく。」などと回答がなされ、Cは「クライアントに聞いて受かったら電話します。万が一、Y1社がダメだっだら他の会社に行きますか。」とも聞いてきた。このように、面接ではY1社が採否を決める前提で話しがされた。
(ウ) Y1社のl工場で就労を始めた当日朝、Cは、控訴人に対し、「クライアントが期待しているから頑張って。」と発言した。これは、Y1社が控訴人の資質等を踏まえて採否を決定したことを示している。
(エ) さらに、Cは、契約期間について「とりあえずは最初の期間は3か月にしておくけれど、ずっと働くことができるから。」と述べた。これは、控訴人と被控訴人Y2社の契約期間は形式上のものにすぎず、Y1社で長期間働くことができることを述べたもので、Y1社が控訴人を長期間働くことのできる労働者として採用したことを示している。
(オ) また、Cは、Y1社の工場に行けば、同社の社員が仕事を教えてくれるから大丈夫と説明し、実際、控訴人は、Y1社の社員D(以下「D」という。)から、工場において、担当作業の説明を受け、機械の操作方法等の説明を受けた。これは、Y1社が控訴人をY1社の労働者として採用したことを示している。
(カ) これらの事情からは、Y1社が控訴人の採否を決め、同社の労働者として控訴人を採用したことが認められ、少なくともY1社が控訴人の採用に関与していたことは明らかである。
ウ Y1社による指揮命令
(ア) 控訴人は、Y1社の社員であったDから、成形係の業務に関する研修・指導を受けた。
現実の業務に関する指揮命令も、Y1社の社員であったDやEが行っていた。その指揮命令の下、控訴人を含む他の会社から派遣された者とY1社の社員が混在して業務に従事していた。
(イ) 業務は、午前8時から午後8時30分までのA勤務と、午後8時30分から午前9時までのB勤務の二交替制で行われていた。どの業務に従事するかは、Y1社の社員が決めていた。
(ウ) 控訴人が従事する業務に関し、被控訴人Y2社が指揮命令することはなかった。被控訴人Y2社の作業監督者は、同事業場には存在していなかった。
エ Y1社による労務管理
(ア) 控訴人の出退勤管理は、Y1社が行っていた。具体的には、控訴人に対しては、Y1社の社員と同じように、Y1社の社員から出勤計画表を提出され、それに従うことが義務付けられていた。
控訴人に対する休日出勤命令、早出出勤命令などは、Y1社の社員から直接されていた。
控訴人は、有給休暇を取得する場合、Y1社に連絡していた。
(イ) 控訴人は、主な業務とは別に、以下のような業務指示をY1社の社員から受けていた。
a 控訴人は、出社後の午前8時から10分間、Y1社の社員と共に職場の掃除が義務付けられていた。
b 午前8時30分から行われる入力デバイスチームの朝会への参加が義務付けられていた。朝会では、Y1社の社歌を唱和し、社訓・スピーチを聞かされた。
c その後、成形係での朝会が行われ、業務に関する連絡事項や指示が成形係の係長からなされ、その後、□□班での朝会があり、班長から細かな作業指示が与えられた。
(ウ) 控訴人が業務に従事するための研修・教育も、Y1社の社員によって行われた。控訴人は、入社後しばらくして、「□□成形」工程の射出成形機運転作業について、Y1社から作業能力の確認認定を受けた。
(エ) これらの控訴人の出退勤・作業指示・業務に関する研修・教育等には、被控訴人Y2社は一切関わっていなかった。
オ Y1社による賃金支払
控訴人は、賃金は被控訴人Y2社から振込送金の方法により支払を受けていたが、被控訴人Y2社は、業務や労務管理等に関しての関与が全くなく、賃金の支払代行をしているにすぎなかった。
なお、控訴人の平成21年1月末現在の労働条件は、以下のとおりであった。労働時間は午後8時30分から翌午前8時45分まで(うち休憩時間1時間15分)の11時間勤務で、賃金は時給1184円、時間外給与1480円の毎月末日締め翌月15日払いであった。そして、直前3か月の平均賃金は26万1135円であった。
カ 契約関係の無効
Y1社と被控訴人Y2社が締結した契約関係には、本件是正指導に指摘されている点を含め、労働者派遣法違反をはじめとする違法行為があり、かつ、Y1社及び被控訴人Y2社は、その違法性を認識しながら、これを継続していたものであるから、控訴人と被控訴人Y2社との労働契約を含む三者の間の契約は、民法90条に反し、無効である。
(被控訴人Y3社の主張)
ア まとめ
(ア) 黙示の意思表示は、表示価値のより高い明示の意思表示に反したり、それと対立するものであってはならない。したがって、黙示の意思表示の認定は、挙動や行動と両立し、矛盾しないよう厳格にされなければならず、具体的な事実によって表示された意味の解釈という限界を超えることはできない。
(イ) そして、控訴人と被控訴人Y2社は、労働契約を締結する意思を明示して労働契約を締結し、控訴人、Y1社及び被控訴人Y2社は、それを前提とした行動をしている以上、控訴人とY1社との間に労働契約を締結する意思があったとは到底解することはできない。
(ウ) さらに、黙示の労働契約の成立が認定されるためには、①派遣元が派遣先等に資本上、人事上従属し、派遣先等との関係で独自性がないと認められる事情、②派遣先が、採用、失職、就業条件の決定、殊に賃金を実質的に決定し、その支払を直接行っている事情、③派遣元が派遣労働者の労務管理を行っていない事情、④派遣先等が派遣労働者の配置、懲戒を行っている事情、⑤派遣先等と派遣労働者の間に事実上の使用従属関係があると認められる特段の事情が必要である。
(エ) 本件においては、上記(ウ)の事情はどれも認められないのであるから、黙示の労働契約の成立が認められることはない。
イ Y1社による採用行為
(ア) 控訴人は、訴状や控訴人の意見陳述においては、Y1社による採用への関与には何ら触れていなかったが、本訴提起から1年以上経過してから採用行為へのY1社の関与を主張するようになったもので、控訴人の主張の信用性は極めて乏しい。
(イ) 控訴人主張のCの発言・説明は、いずれも知らない。
(ウ) Y1社が被控訴人Y2社による控訴人の採用に関与したことはない。
ウ Y1社による指揮命令
(ア) Y1社のDが控訴人に対し、当初3か月に限り、安全衛生徹底等の観点から、Y1社に設置された成形機の運転方法等を直接説明したことは、認める。また、被控訴人Y2社に対し、連絡事項と緊急異常時における対応等の申し送りなどをしていたことは認めるが、その余は否認する。Y1社は、派遣労働者を含む他社の労働者に対し、自己の労働者に対して行うのと同程度の指導や教育等はしていない。
(イ) Y1社の労働者が平成18年10月末までの間、控訴人を含む被控訴人Y2社の労働者に対し、作業に関する連絡事項の申し送りをしたことがあることは認め、その余は否認する。控訴人が主に勤務していた成形工程における夜間の時間帯については、控訴人を含む被控訴人Y2社の労働者のみが従事しており、他の会社やY1社の労働者と混在して勤務していたことはない。
(ウ) 控訴人の勤務時間帯は、午後8時30分から翌日午前8時30分まで(後に、午後8時30分から翌日午前8時45分まで)で、Y1社は、被控訴人Y2社の誰が、いつ、どの業務に従事するかを具体的に決定したことはない。
エ Y1社による労務管理
(ア)a 被控訴人Y2社は、平成18年10月末日まで、控訴人を含め自己の労働者に対し、出退勤の確認、勤務管理(勤務状況についての指導)、給与計算、社会保険被保険者資格得喪、福利厚生運営等の基本的な雇用者としての管理を行っており、現場責任者としてm事業所担当チーフをY1社のl工場に定期的に巡回させていた。
チーフは、朝(午前8時から午前10時頃)及び夕方(午後5時から午後8時頃)の時間帯はl工場におり、Y1社のl工場で就業していた。チーフは、朝、タイムカードの前に立ち、被控訴人Y2社の労働者につき、出退勤の確認、個別の連絡・声掛けをし、請負工程を巡回し、勤務状況確認やY1社の責任者と打合せをし、それに基づき被控訴人Y2社の労働者に対する連絡の徹底をしていた。夕方も、再度、被控訴人Y2社の労働者への対応に従事していた。さらに、チーフは必要に応じて、Y1社のl工場において、被控訴人Y2社の労働者の管理監督をしていた。
b 平成18年10月末日まで、控訴人の出退勤は、被控訴人Y2社が管理していた。出勤計画表は、便宜的にY1社の労働者と共通のものを使用し、Y1社も控訴人ら被控訴人Y2社の労働者の出退勤状況を確認していたことは認める。ただし、被控訴人Y2社は、同日まで、Y1社のl工場にタイムカードを設置し、現場責任者による確認と併せて、被控訴人Y2社の労働者の出退勤を管理していた。
被控訴人Y2社の労働者の希望に応じて作成され、同社により管理された出勤計画が、Y1社の労働者の出勤計画表と共通の用紙に記載されてY1社のl工場に掲示されていたことは認めるが、Y1社が、平成18年10月末日まで、控訴人に対し、上記出勤計画に従うよう義務付けたことはない。
休日出勤命令及び早出出勤命令は、被控訴人Y2社の担当者がすることになっていた。
被控訴人Y2社は、平成18年10月末日まで、被控訴人Y2社の労働者に対し、欠勤する場合や年次有給休暇を取得する場合は、被控訴人Y2社に連絡するよう指示し、そのように運用されていた。Y1社に連絡してくる者があった場合、Y1社は被控訴人Y2社に連絡していた。
(イ)a 控訴人が午前8時から約10分間、掃除をしていたことは認める。Y1社は、平成18年10月末日まで、被控訴人Y2社に対し、作業場の安全衛生を確保するために整理整頓の励行と、掃除の実施に関する協力要請をしていた。かかる協力要請に基づき控訴人を含む被控訴人Y2社の労働者が掃除を実施していたもので、Y1社が義務付けたことはない。
b 控訴人がY1社の朝会の場にいたことは認め、その余は否認する。Y1社は、平成18年10月末日以前、被控訴人Y2社の労働者に朝会への出席を義務付けたことはないし、所感などの発表もさせていない。
c 朝会のあとの成形工程のミーティングにおいて、Y1社の社員が被控訴人Y2社の労働者に、作業内容の確認及び事故防止の観点から、生産の進捗状況、品質異常時の対応、安全面での注意事項等を連絡していたという限りで認める。
(ウ) Y1社が控訴人の作業者認定をしたことは認める。これはISOの認定を受けるためで、教育ではない。
オ Y1社による賃金支払
被控訴人Y2社がY1社の賃金の支払代行機関にすぎないなどということはない。
被控訴人Y2社は、平成18年10月末日まで、自己の労働者に対する出退勤の確認、勤務管理、給与計算、社会保険被保険者資格得喪、福利厚生運営などの基本的な雇用管理をし、平成18年11月1日以降は、労働者派遣元として業務を実施している。
カ 契約関係の無効
控訴人の主張カは否認ないし争う。
(2-1) 争点2-1 労働者派遣法40条の4により労働契約が成立していると認められるか。
(控訴人の主張)
ア 労働者派遣法は、製造業など一般業務について、派遣可能期間を超えて派遣労働者を使用するときは、当該派遣労働者に対して雇用契約の申込みをしなければならないと規定する(40条の4)。Y1社は、派遣可能期間の延長に関する労働組合等の意見聴取の手続をしていないので、控訴人については、1年を経過した平成18年2月21日が来るまでに控訴人に対して雇用契約の申込義務を履行しなければならなかった。
Y1社はこれをすることなく、派遣労働者の受入れを継続した。
このような場合には、同日の時点で直接雇用契約申込義務を履行したものと評価すべきであり、派遣労働者の応諾(具体的には就労の継続)により、雇用契約が成立するものと解すべきである。
イ 労働者派遣法40条の4は、派遣元事業主から法の規制に抵触する日について通知があった場合の規定とされているが、派遣先は自ら派遣可能期間の期限を知り得る立場にあり、また、通知自体は派遣元事業主の単なる手続違反にすぎないのであるから、この手続の不存在をもって同条の適用を回避すべき理由とはならない。
ウ Y1社は、控訴人との雇用契約の内容について、特段の意思表示をしていないから、Y1社に雇用される通常の労働者と同様の労働条件で処遇する意思を有していたと推認され、通常の労働者が採用された場合と同様の労働条件となる。仮に、上記主張が認められないとしても、控訴人はY1社に対する労務の提供により賃金を得ていたのであるから、少なくともその労働条件が両者間の契約内容になる。
(被控訴人Y3社の主張)
ア 直接雇用契約申込義務は公法上の義務にすぎず、同条に基づきY1社が控訴人に対して直接雇用契約申込義務を負うことはない。
イ しかも、被控訴人Y2社からY1社に対して抵触日の通知はされていないし、Y1社は、抵触日以降も継続して当該通知を受けた派遣労働者を使用してはいない。
(2-2) 争点2-2 明示の労働契約が成立したか。
(控訴人の主張)
ア 控訴人は、平成21年1月にされたY1社との労働契約の締結の提示(基礎となる事実(6)ア)について、同月22日、被控訴人Y2社・k事業所長F(以下「F」という。)に対し、Y1社との労働契約の申入れを、賃金の額及び雇用期間の定めを留保し、あるいはこれに異議をとどめて承諾するとの意思表示をし、同意思表示は、同年2月13日までに、Fを通じてY1社に到達した。
イ 以上により、控訴人とY1社との間に、契約開始日を同年4月1日とする労働契約が成立した。
(被控訴人Y3社の主張)
ア 控訴人の主張は否認する。
控訴人が労働条件を留保し、あるいはこれに異議をとどめながらY1社の直接雇用を承諾した事実、FがこれをY1社に報告した事実は、いずれも存在しない。控訴人は、Fに対し、その時点での業務を変更する必要はないと言い、Y1社から提示された選択肢のうちどれを選ぶかについて、自分の思いと違う選択肢しかないので回答できないと伝えたため、Fは、Y1社に対し、控訴人の意思をそのまま伝えた。
イ 控訴人の主張によっても、労働契約の本質的な要素である賃金の額及び雇用期間の定めについての確定的な合意は成立していない。
(2-3) 争点2-3 被控訴人Y3社が労働契約の成立を否認することが信義則に反し、権利濫用に該当するか。
(控訴人の主張)
偽装請負を行うなどしてきたY1社が契約の成立を否認することは、信義則に反し、権利濫用に該当する。
(被控訴人Y3社の主張)
控訴人の主張は否認する。
(3)  争点3 Y1社及び被控訴人Y2社の行為が不法行為を構成すると認められるか。
(控訴人の主張)
ア Y1社と控訴人との間に労働契約が認められる場合
(ア) 正社員として取り扱われる利益の侵害
① Y1社及び被控訴人Y2社は、控訴人とY1社との労働契約の成立を認めず、Y1社の雇用責任を回避させる目的で、Y1社と被控訴人Y2社の間で本件請負契約を締結し、被控訴人Y2社と控訴人との間で労働契約を締結したとして、それ以外には契約関係が存在しないかのように偽装した。
これらの契約は、それぞれ職業安定法44条、労働者派遣法40条の2、26条、労働基準法6条に違反する違法なものであった。
② 仮に、就労当初からは黙示の労働契約が成立していないとしても、Y1社は、労働者派遣法40条の4に従い、控訴人に対して雇用契約の申込みをする義務があるのに、これを行わなかった。
③ Y1社及び被控訴人Y2社の偽装行為により、あるいはY1社が労働者派遣法40条の4に違反し、雇用契約の申込みをしなかったことにより、控訴人はY1社の直接雇用労働者として取り扱われる利益(直接雇用労働者であれば認められたであろう安定的処遇、他の直接雇用労働者との平等的処遇)を侵害された。
(イ) 違法解雇
Y1社及び被控訴人Y2社は、これらの違法行為を是正するための申告をした控訴人に対し、労働者派遣法49条の3第2項に違反して、違法な解雇をした。
(ウ) 故意・過失
被控訴人Y2社の業務内容やY1社の企業規模、派遣労働者等の使用実態等からして、Y1社及び被控訴人Y2社には、Y1社の雇用責任回避及び法違反の存在について故意・過失がある。
(エ) 損害
控訴人は、Y1社及び被控訴人Y2社の不法行為により、不安定な間接雇用という形態での就労を余儀なくされ、また違法な解雇をされたことにより、精神的苦痛を被った。
被控訴人Y2社が取得した利益は、控訴人の労働の対価として控訴人が取得すべき賃金の一部であり、被控訴人Y2社が適法に取得し得る利益ではなく、Y1社及び被控訴人Y2社は、控訴人に対し、共同して上記利益相当分の経済的損失を与えている。この点も慰謝料額の算定に当たり考慮すべきである。
控訴人の被った精神的苦痛を金銭的に評価すれば、少なくとも100万円を下回ることはない。
イ Y1社との労働契約が認められない場合(予備的)
(ア) 雇用安定の措置を執るべき義務違反等
① 雇用安定の措置を執るべき義務違反
Y1社及び被控訴人Y2社は、適法な契約を締結し、これを履行し、労働者を適正に利用すべき信義則上の義務を負うところ、Y1社の雇用責任を回避させる目的で、Y1社と被控訴人Y2社との間で本件請負契約を締結し、被控訴人Y2社と控訴人との間で労働契約を締結したが、これらの契約はそれぞれ職業安定法44条、労働者派遣法40条の2、労働者派遣法26条等に違反する違法なものであった。
Y1社及び被控訴人Y2社は、控訴人に対して、控訴人をY1社に直接雇用することも含め、雇用の安定を図りつつ、この違法状態を是正する義務を負っていたにもかかわらず、Y1社及び被控訴人Y2社は、雇用安定のための何らの措置も執らなかった。
② 雇用契約申込義務違反
Y1社は、労働者派遣法40条の4に違反し、控訴人に対して、雇用契約を申し込まなかった。
③ 労働者の適正利用要求に対する報復
Y1社及び被控訴人Y2社は、これらの違法行為を是正するための申告をした控訴人に対し、その報復として、控訴人との労働契約等を解除した。Y1社及び被控訴人Y2社の行為は、労働者派遣法49条の3第2項に違反し、不法行為を構成する。
④ 直接雇用の承諾を無視した行為
控訴人は、Y1社による直接雇用の申出を承諾し、労働条件の向上については、雇用された後に労働組合を通じて交渉していく旨述べていた。
しかし、Y1社は、この承諾さえ無視して、締結すべき契約書を交付することせず、しかも、控訴人所属労働組合と団体交渉をすることも一貫して拒否し続けた。
このようなY1社の態度は、信義に反する行為であり、また、不当労働行為(労働組合法7条1号・2号)にも該当する行為であり、被控訴人Y2社との共謀による不法行為を構成する。
(イ) 故意・過失
被控訴人Y2社の業務内容やY1社の企業規模、派遣労働者等の使用実態等からして、Y1社及び被控訴人Y2社には、Y1社の雇用責任回避及び法違反の存在について故意・過失がある。
(ウ) 損害
控訴人は、Y1社及び被控訴人Y2社の上記(ア)の不法行為により、精神的苦痛を被った。
また、被控訴人Y2社が取得した利益は、控訴人の労働の対価として控訴人が取得すべき賃金の一部であり、被控訴人Y2社が適法に取得し得る利益ではなく、Y1社及び被控訴人Y2社は控訴人に対し、共同して上記利益相当分の経済的損失を与えている。
控訴人の被った精神的苦痛を金銭的に評価すれば、少なくとも100万円を下回ることはない。
(被控訴人Y3社の主張)
ア 認否
Y1社が平成18年2月21日(控訴人の就労から1年経過後の日)、控訴人に対して直接雇用の申込みを行ったことがないことは認め、その余は否認する。
イ 被侵害利益の不存在
(ア) Y1社と控訴人との間に労働契約は存在しないし、Y1社は、採用の自由を有するから、控訴人がY1社に直接正規社員として期間の定めなく雇用され、Y1社から雇用の安定を図る措置を執られることにより就労を継続できる権利ないし法律上の利益は存在しない。
(イ) 労働者派遣法40条の4に基づく直接雇用契約申込義務は、公法上の義務であり、Y1社は、控訴人に対し、同条に基づく直接雇用契約申込義務を負わないし、信義則上、直接雇用の申込みを受ける機会を奪ってはならない義務を負うものともいえず、控訴人がY1社に対し直接雇用の申込請求権を有するわけでもない。したがって、控訴人がY1社において期間の定めなく雇用される利益は、法律上保護される利益とはいえない。
(ウ) 控訴人が直接雇用の申出を承諾した事実はなく、Y1社がこれを無視した事実もないし、控訴人が不当労働行為と主張する不利益取扱い又は団体交渉拒否によって控訴人に生じた被侵害利益は不明である。
ウ Y1社による侵害行為の不存在
(ア) Y1社は、控訴人主張の法的義務を負うものではないが、福井労働局の行政指導に従い、控訴人を含む対象派遣労働者の雇用の安定を図るため、平成21年1月16日、控訴人を含む対象派遣労働者らに対して直接雇用の申込みを行ったが(基礎となる事実(6))、控訴人はこの申込みを承諾しなかった。
(イ) Y1社は、控訴人を解雇しておらず、控訴人と被控訴人Y2社との間の労働契約の終了について何ら関与していない。Y1社と被控訴人Y2社は、行政指導を尊重し、平成21年1月13日、それぞれが控訴人を含む対象派遣労働者の雇用の安定を図るための措置を独自に講じた上で、同年3月末日をもって労働者派遣契約を合意により終了させたにすぎない。控訴人は、被控訴人Y2社と期間の定めのある労働契約を締結し、派遣労働者として働いていたものであり、控訴人と被控訴人Y2社との間の労働契約も、契約期間終了をもって終了したにすぎない。
(ウ) Y1社が控訴人に対していかなる不利益取扱いを行ったのか不明であるし、Y1社及び被控訴人Y2社は、控訴人が労働者派遣法49条の3第1項の申告をしたことを知らず、控訴人がこれを行ったことを理由として、不利益な取扱いを行ったことはない。
エ 損害の不存在
(ア) 被侵害利益が存在しない以上、控訴人に損害は発生しない。控訴人は雇用主に関心がなかったから、精神的苦痛を被ることもない。
(イ) Y1社が労働組合の団体交渉の申入れに応じなかったことによって、控訴人に損害が発生するともいえない。
オ 違法性の不存在
(ア) 仮に、労働者派遣法に適合しない部分があったとしても、控訴人と被控訴人Y2社との間に労働契約が存在する以上、職業安定法44条違反となることはない。また、労働基準法6条に違反することもなく、実際、Y1社が中間搾取を行った事実はない。
(イ) Y1社は、控訴人と労働契約を締結していないから、労働組合法上の使用者に該当しない。また、Y1社及び被控訴人Y2社は、控訴人が労働者派遣法49条の3第1項の申告をしたことを知らず、控訴人がこれを行ったことを理由として、不利益な取扱いを行ったことはないし、不当労働行為意思もない。Y1社は、控訴人の使用者ではないことを理由に、団体交渉には応じていないが、話し合い自体には応じており(基礎となる事実(7)ウ及びエ)、団体交渉に応じていないといえないし、仮に応じていないとしても、団体交渉申入れを行った事項は義務的団体交渉事項といえない。
(被控訴人Y2社の主張)
ア 控訴人は、Y1社のl工場で働きたいと希望していたのであって、Y1社との間で労働契約を締結していたのではない。そして、雇用主が被控訴人Y2社と明示された契約書に署名して、被控訴人Y2社との間に労働契約を成立させているのであるから、控訴人とY1社との間に労働契約成立のための意思が合致することはない。したがって、控訴人とY1社との間に労働契約が成立していることを前提とする主張は失当である。
イ 控訴人と被控訴人Y2社との労働契約、被控訴人Y2社とY1社との本件請負契約には、労働者派遣法その他の法令違反(職業安定法44条、労働者派遣法40条の2、40条の4、労働基準法6条違反等)はない。
したがって、控訴人の正社員として取り扱われる利益を侵害してはおらず、また、控訴人の主張する雇用の安定を図る措置を執るべき義務を負担してはいない。
ウ 控訴人と被控訴人Y2社の労働契約は、期間満了により終了したのであって、被控訴人Y2社は控訴人を解雇していない。
エ 控訴人は、自らの意思で、被控訴人Y2社との間で、短期間の雇用を前提とする労働契約を締結していたのであるから、控訴人主張の精神的苦痛は生じる余地はない。
オ 被控訴人Y2社が得た利益は、被控訴人Y2社とY1社間の本件請負契約及び労働者派遣契約に基づく適法なものである。
第3  当裁判所の判断
1  争点1 黙示的に労働契約が成立していると認められるか。
(1)  控訴人の就労等の実態について
ア Y1社による採用行為及び契約更新手続の有無
(ア) 証拠(証拠・人証〈省略〉、控訴人本人(原審及び当審))及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる(一部は、当事者間に争いがない。)。
a 被控訴人Y2社の求人広告を見た控訴人は、平成17年1月下旬頃、被控訴人Y2社に電話をかけ、数日後、被控訴人Y2社から面談の連絡を受けた。
b 控訴人は、同月末ないし同年2月上旬頃、被控訴人Y2社のm事業所担当チーフであったCの面接及び適性試験を受け、同人から、受かったら連絡する旨告げられた。
c 控訴人は、同年2月中旬頃、Cから採用するとの電話連絡を受け、同月21日、Y1社のl工場の門前でCと待ち合わせることとなった。
d 控訴人は、同月21日、Cから、被控訴人Y2社との間の期間雇用契約書を手渡され、これに署名し、被控訴人Y2社と労働契約を締結した。
e Y1社は、被控訴人Y2社による控訴人の採用に関与していない。
f その後も、控訴人は、基礎となる事実(3)ア及びイ記載のとおり、被控訴人Y2社との間で、契約の更新を繰り返してきた。
以上の事実によれば、被控訴人Y2社が控訴人の採用手続をし、控訴人との間で労働契約を締結し、契約の更新を繰り返してきたものであって、これにY1社が関与したものとは認められない。
(イ) 控訴人は、Y1社が少なくとも控訴人の採用に関与していたと主張し、Cの言動等を指摘し、その主張に沿う内容の供述等(証拠〈省略〉、控訴人本人(原審))をする。
まず、Cの言動を裏付けるのは控訴人の供述等しかないところ、控訴人の主張の経緯に照らせば、その供述等を直ちには信用し難いところである。そして、Y1社は控訴人採用への関与を否定し、その関与を必要とする客観的な状況も認められない上、被控訴人Y2社とY1社とは、資本面・人事面でも関連性のない、それぞれ相当な規模を有する設立目的も経緯も異なる別個の法人格を有する株式会社であること(基礎となる事実(1))にも照らせば、控訴人の主張するCの言動が認められるとしても、その言動から、Y1社が控訴人の採用に関与していたことを認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
したがって、控訴人の上記主張を認めることはできない。
イ Y1社による指揮命令及び労務管理
各項に掲記の証拠によれば、次の事実が認められる(一部は、当事者間に争いがない。)。
(ア) 控訴人は、平成17年2月21日からY1社のl工場でdチーム成形係□□成形班で射出成形機のオペレーターとして稼働し始めたが、成形班のリーダーDから、組織・設備・作業内容等の説明を受け、当初の3か月ほどは設置されている成形機の運転方法等の指導も受けていた。
また、Y1社は、控訴人を含む社外工に対する作業の指導を行い、作業を習得したことを確認し、作業に従事することができる旨の認定を行っていたほか、教育訓練指導も行っていた。(証拠・人証〈省略〉、控訴人本人(原審))
(イ) 控訴人が稼働していた職場においては、Y1社の社員と控訴人を含む社外工が必ずしも明確に区分されることなく業務に従事しており、昼勤務において、Y1社の労働者3名と被控訴人Y2社ほかの請負会社の従業員3、4名が同じフロアで作業に従事していた。夜勤務においては、被控訴人Y2社の労働者だけが作業に従事していた。そのため、Y1社は、被控訴人Y2社に対し、夜勤務について、業務に不慣れな者を従事させないように要望を出していた。
しかしながら、いずれの勤務であっても、被控訴人Y2社が請け負ったとされる作業について、具体的な指揮命令を担当する同被控訴人の担当者はいなかった。そして、問題が生じたときは、控訴人ら被控訴人Y2社の労働者は、同被控訴人に対してではなく、Y1社の従業員に対して報告・相談をし、指示を受けていた。また、昼勤務と夜勤務の間及びY1社正社員と社外工との間の業務の連絡は、主として、引継ぎノートによって行われていた。(証拠・人証〈省略〉、控訴人本人(原審))
(ウ) Y1社では、同社の社員と控訴人を含む被控訴人Y2社ほかの請負会社の従業員が同じ出勤計画表に記載され、そこには「上記計画で出勤をお願いします。尚、納期トラブルが発生した場合は、日程変更をお願いすることがあります。」、「社外工の方は出勤出来ない日に【休】と記入してください」、「社員の方は計画年休日に【年休】と記入してください」などの注意書きがされていた。このようにして、Y1社も、控訴人を含む被控訴人Y2社らの労働者の出退勤状況を確認していた。(証拠・人証〈省略〉、控訴人本人(原審))
(エ) 控訴人は、成形班の職場において、Y1社の労働者と共に、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾の5つを指す。)と呼ばれる活動に参加し、始業時間前である午前8時からの約10分間の掃除に従事し、結果報告をしていた。
さらに、控訴人ら被控訴人Y2社の労働者は、Y1社の朝会の後に実施される成形工程のミーティングにおいて、Y1社の社員から、作業内容の確認及び生産の進捗状況、品質異常時の対応、安全面での注意事項等の連絡を受けていた。(証拠・人証〈省略〉、控訴人本人(原審))
(オ) 被控訴人Y3社は、休日出勤命令及び早出出勤命令は被控訴人Y2社の担当者がすることになっていたと主張し、これに沿う証拠(証拠・人証〈省略〉)もあるが、その具体的な手順やそのような手続で命令が発出されていたことを認めるに証拠はなく、かえって、控訴人の供述等(証拠〈省略〉、控訴人本人(原審))によれば、控訴人は、Y1社の社員からの求めに応じて、休日出勤・早出出勤をしていたことが認められる。
(カ) 被控訴人Y3社は、欠勤する場合や年次有給休暇を取得する場合の手続について、被控訴人Y2社の労働者に対しては、被控訴人Y2社に連絡するように指示がされていたし、そのように運用されていたと主張する一方、Y1社に連絡してくる者があったことも認めている(証拠・人証〈省略〉)。上記指示の周知がさほど困難なことではないことからすれば、Y1社に連絡してくる者がいるということは、この欠勤ないし休暇の取得がY1社にとって考要な情報であったことを示しているものと認められる。
(キ) 被控訴人Y2社は、Y1社のl工場にタイムカードを設置していた。さらに、被控訴人Y2社の現場責任者が、朝夕に被控訴人Y2社の労働者の出退勤の状況を確認し、管理していた。(証拠・人証〈省略〉)
(ク) 被控訴人Y2社は、控訴人を含め自己の労働者に対し、出退勤の確認、勤務管理、給与計算、社会保険被保険者資格得喪、福利厚生運営等の基本的な雇用者としての管理を行っていた。(証拠・人証〈省略〉)
(ケ) 基礎となる事実(3)記載のとおり、控訴人は、平成18年11月1日以降は、被控訴人Y2社からの派遣労働者として、Y1社 l工場において、Y1社の指揮命令下で就労することとなったが、その前後を通じ、就労態様におおむね変動はなかった。(証拠・人証〈省略〉、控訴人本人(原審))
(コ) Y1社は、労働者派遣契約の方式に変更してから3年の平成21年11月1日以後も引き続き社外工の労務提供を受けるために、平成20年2月頃から、再度の請負化を計画した。これに伴い、Y1社の指揮命令なしに業務請負を実施するために、被控訴人Y2社と協力して、委託対象の工程を総合的に管理・把握・指揮していく工程リーダーの育成、人選等を行っていた。ところが、同年9月に発生したリーマンショックによる受注減少に伴い、被控訴人Y2社からの労働者派遣を受ける必要がなくなり、労働者派遣契約を解消することとした。(証拠・人証〈省略〉、控訴人本人(原審))
ウ Y1社による賃金支払
(ア) 控訴人は、被控訴人Y2社は労務管理等に関しての関与が全くなく、賃金の支払代行をしているにすぎず、Y1社が控訴人の賃金を決定し、支払っていたと主張する。
(イ) しかし、控訴人の賃金を含む労働条件は、基礎となる事実(3)記載の控訴人と被控訴人Y2社との間の労働契約に基づいて決定され、同契約に基づいて、前記イ(ク)に認定のとおり、被控訴人Y2社から控訴人に対して賃金が支払われ、被控訴人Y2社によって所得税、社会保険等の徴収手続が行われており、給与額は、基礎となる事実(3)記載の契約によれば、少なくとも平成18年10月末日までは、定額の基本給を基礎として定められていたものであり、控訴人の上記主張事実を認めることはできない。
エ 契約関係の無効
控訴人のY1社のl工場での就労は、少なくとも平成18年10月末日までは、被控訴人らの間の本件請負契約に基づくものではあるものの、上記イ(ア)ないし(コ)に認定の各事実によれば、被控訴人Y2社は、その請け負った業務の遂行管理に係る具体的な指示命令をする担当者を現場に置いておらず、それはY1社の社員によって行われていたものと認められるのであるから、法的に請負契約と評価することはできない。そうすると、Y1社と被控訴人Y2社及び控訴人との関係は、労働者派遣法2条1号の労働者派遣に該当すると解すべきである。そして、このような労働者派遣も、それが労働者派遣である以上は、職業安定法4条6項にいう労働者供給には該当せず、同法44条違反ともならない(最高裁判所平成21年12月18日第二小法廷判決・民集63巻10号2754頁)。
労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性等からすれば、労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、そのことだけにより、派遣労働者と派遣元との間の労働契約が民法90条違反等の理由により無効になることはないし、企業間の業務請負契約あるいは労働者派遣契約が同様の理由で無効となることもないと解される。
(2)  判断
Y1社と控訴人との間に当初より黙示の労働契約が成立したことを基礎付ける事実として控訴人が主張する事実のうち、認定できる事実は、基礎となる事実及び上記(1)で認定した事実のみであるところ、これらの事実から、Y1社と控訴人との間に当初より黙示の労働契約が成立していたものと認めることはできない。
2  争点2-1 労働者派遣法40条の4により労働契約が成立していると認められるか。
(1)  労働者派遣法の規定
ア 労働者派遣法は、派遣可能期間を定めるとともに(同法35条の2、40条の2)、「派遣先は、第35条の2第2項の規定による通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第40条の2第1項の規定に抵触することとなる最初の日以降継続して第35条の2第2項の規定による通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望するものに対して、雇用契約の申込みをしなければならない」(同法40条の4)と定めている。
イ 労働者派遣法は、上記規定の実効性を確保するための主な規定として、以下のとおりの規定を設けている。
(ア) 厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、労働者派遣事業の適正な運営又は適正な派遣就業を確保するために必要な指導及び助言をすることができる。(同法48条1項)
(イ) 厚生労働大臣は、派遣元事業主が当該労働派遣事業に関しこの法律その他労働に関する法律の規定に違反した場合において、適正な派遣就業を確保するため必要があると認めるときは、当該派遣元事業主に対し、派遣労働者に係る雇用管理の方法の改善その他当該労働者派遣事業の運営を改善するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。(同法49条1項)
(ウ) 厚生労働大臣は、…第40条の2第1項、第40条の4…の規定に違反している者に対し、第48条第1項の規定による指導又は助言をした場合において、その者がなお…第40条の2第1項、第40条の4…の規定に違反しており、又は違反するおそれがあると認めるときは、当該者に対し、…第40条の2第1項の規定に違反する派遣就業を是正するために必要な措置をとるべきこと又は第40条の4若しくは第40条の5の規定による雇用契約の申込みをすべきことを勧告することができる。(同法49条の2第1項)
(エ) 厚生労働大臣は、派遣先が第40条の2第1項の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けており、かつ、当該労働者派遣の役務の提供に係る派遣労働者が当該派遣先に雇用されることを希望している場合において、当該派遣先に対し、第48条第1項の規定により当該労働者を雇い入れるように指導又は助言をしたにもかかわらず、当該派遣先がこれに従わなかったときは、当該派遣先に対し、当該労働者を雇い入れるように勧告することができる。(同法49条の2第2項)
(オ) 厚生労働大臣は、前2項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。(同法49条の2第3項)
(2)  雇用契約成立の有無
ア 控訴人は、Y1社は派遣可能期間が経過していることを知りながら同期間を超えて控訴人の受入れを継続したから、このような場合には、直接雇用契約申込義務を履行したものと評価すべきである旨主張する。
しかし、上記(1)に説示のとおり、労働者派遣法は、同法40条の4の規定の実効性を確保するために、厚生労働大臣による指導又は助言、労働契約締結の申込みの勧告、それに従わないときは勧告を受けた者の公表という間接的な方法で労働契約締結の申込みを促すという制度を採用しているに止まっており、このことからすると、同法40条の4の要件を満たした場合であっても、同条の直接雇用契約申込義務は公法上の義務であって、これによって私法上の雇用契約申込義務が発生するものではないと解される。
このような労働者派遣法の解釈を前提とすると、Y1社が派遣可能期間が経過していることを知りながら同期間を超えて控訴人の受入れを継続したことをもって、Y1社が直接雇用契約申込義務を履行したものと認めることはできない。
イ さらに、本件においては、基礎となる事実(3)イ(ウ)記載のとおり、Y1社は、被控訴人Y2社から労働者派遣法35条の2第2項の規定による通知(派遣元通知)を受けたことがなく、同法40条の4の要件を充足していない。
控訴人は、派遣先は自ら派遣可能期間の期限を知り得る立場にあり、また、通知自体は派遣元事業主の単なる手続違反にすぎないから、派遣元事業主から法の規制に抵触する日について通知の不存在をもって同条の適用を回避すべき理由とはならない旨主張するが、そのように解することはできない。
ウ よって、控訴人の争点2-1の主張は理由がない。
3  争点2-2 明示の労働契約が成立したか。
(1)ア  控訴人は、平成21年1月にされたY1社との労働契約の締結の提示に関し、同月22日、被控訴人Y2社のFに対し、Y1社との労働契約の申入れを、賃金の額及び雇用期間の定めを留保し、あるいはこれに異議をとどめて承諾するとの意思表示をした旨主張する。
イ  しかし、労働契約の本質的な要素である期間の定め及び賃金について異議をとどめた意思表示は、新たな申込みとみるべきであって、これによって労働契約が成立したものと認めることは困難であるから、控訴人の主張は、主張自体失当である。
ウ  さらに、控訴人の上記主張に沿う証拠(証拠〈省略〉、控訴人本人(当審))は、控訴人の原審における主張及び証拠(証拠〈省略〉、控訴人本人(原審))等に照らして、不自然であって信用できず、他に上記主張を認めるに足りる証拠はない。
(2)  控訴人は、Y1社による直接雇用の申出を異議をとどめないで承諾し、労働条件の向上については、雇用された後に労働組合を通じて交渉していく旨述べたとも主張する(前記第2、4(3)(控訴人の主張)イ(ア)④)。
しかし、控訴人の上記主張に沿う証拠(証拠〈省略〉、控訴人本人(当審)。ただし、証拠〈省略〉と控訴人本人(当審)とでも、供述内容が微妙に異なっている。)は、控訴人の原審における主張及び証拠(証拠〈省略〉、控訴人本人(原審))等に照らして、不自然であって信用できず、他に上記主張を認めるに足りる証拠はない。
(3)  したがって、控訴人の争点2-2の主張は理由がない。
4  争点2-3 被控訴人Y3社が労働契約の成立を否認することが信義則に反し、権利濫用に該当するか。
(1)  判断
労働者派遣法は、同法40条の4の規定の実効性を確保するために、厚生労働大臣による指導又は助言、労働契約締結の申込みの勧告、それに従わないときは勧告を受けた者の公表という間接的な方法で労働契約締結の申込みを促すという制度を採用しているに止まっており、このことからすると、同法40条の4の要件を満たした場合であっても、同条の直接雇用申込義務は公法上の義務であって、これによって私法上の雇用契約申込義務が発生するものではないと解されること(前記2(2)ア)、並びにY1社は、本件是正指導に基づき、平成21年1月に有期とはいえ労働契約の締結を提案したが、控訴人はこれに応じなかったこと(基礎となる事実(6)ア、前記3)からすると、被控訴人Y3社が控訴人との間の労働契約の成立を否認することが信義則に反し、権利濫用に該当するとはいえない。
(2)  これまでのまとめ
以上に認定判断のとおり、控訴人と被控訴人Y3社との間に労働契約の成立は認められないから、控訴人の被控訴人Y3社に対する期間の定めのない労働契約上の地位にあることの確認請求及び賃金の支払請求は、いずれも理由がない。
5  争点3 Y1社及び被控訴人Y2社の行為が不法行為を構成すると認められるか。
(1)  はじめに
以上のとおり、控訴人と被控訴人Y3社との間には労働契約の成立が認められないから、控訴人の主張のうち「イ Y1社との労働契約が認められない場合(予備的)」について判断する。
(2)  ①雇用安定の措置を執るべき義務違反について
労働者派遣法は、同法40条の4の規定の実効性を確保するために、厚生労働大臣による指導又は助言、労働契約締結の申込みの勧告、それに従わないときは勧告を受けた者の公表という間接的な方法で労働契約締結の申込みを促すという制度を採用しているに止まっており、同条の直接雇用契約申込義務は公法上の義務であって、これによって私法上の雇用契約申込義務が発生するものではないと解されること(前記2(2)ア)、労働者派遣である以上は、職業安定法4条6項にいう労働者供給には該当せず、同法44条違反ともならないこと(前掲最判)、労働基準法6条は「業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と規定するところ、労働者派遣は派遣元と労働者との間に労働契約関係及び派遣先と労働者との間の指揮命令関係を合わせたものが全体として当該労働者の労働関係となるものであり、したがって、派遣元による労働者の派遣は、労働関係の外にある第三者が他人の労働関係に介入するものではないと解されるから、本件において労働基準法6条違反の問題は生じないと解されること、並びにY1社及び被控訴人Y2社は、本件是正指導に基づき、平成21年1月に有期とはいえ労働契約の締結等を提案するとの限度では違法状態の是正を図ったが、控訴人はこれに応じなかったこと(基礎となる事実(6)、前記3)からすると、被控訴人らが雇用安定の措置を執るべき義務に違反したとも、控訴人の法律上保護される利益を侵害したものとも認めることはできない。
(3)  ②雇用契約申込義務違反について
労働者派遣法は、同法40条の4の規定の実効性を確保するために、厚生労働大臣による指導又は助言、労働契約締結の申込みの勧告、それに従わないときは勧告を受けた者の公表という間接的な方法で労働契約締結の申込みを促すという制度を採用しているに止まっており、同条の直接雇用申込義務は公法上の義務であって、これによって私法上の雇用契約申込義務が発生するものではないと解されること(前記2(2)ア)からすると、雇用契約申込義務違反の不法行為が成立するものと認めることはできない。
(4)  ③労働者の適正利用要求に対する報復について
平成20年9月にリーマンショックが発生し、被控訴人Y2社は、同年10月24日には在籍人員調整を実施せざるを得なくなった旨を告知していたこと(基礎となる事実(4))、本件是正指導を受けた後の措置として、Y1社は直接雇用の申込みなどをし、被控訴人Y2社は労働契約を継続することを前提にその意向調査をするなどし、それらの内容は控訴人の要求を満足するものでなかったにしても、控訴人と他の派遣労働者とで異なった労働条件を提示するものではなかったこと(同(6))、並びに控訴人は、Y1社の提案する労働条件での労働契約の締結を承諾せず、また、被控訴人Y2社からの意向調査に対する回答を拒み、労働契約継続の希望を明示しなかったこと(同(6)、前記3)からすると、控訴人と被控訴人Y2社の労働関係が終了したことやY1社との間の労働契約が成立しなかったことが、控訴人が福井労働局へ申告をしたことに対する報復としてされたものであると認めることはできず、他にこの点を認めるに足りる証拠はない。
(5)  ④直接雇用の承諾を無視した行為について
ア 控訴人がY1社による直接雇用の申出を異議をとどめないで承諾し、労働条件の向上については雇用された後に労働組合を通じて交渉していく旨述べたことが認められないことは、前記3(2)のとおりである。
イ Y1社は、控訴人の雇用主に該当しないところ(前記1ないし4)、雇用主であることを前提とする事項に関する団体交渉には応じていなかったものの、控訴人との労働契約締結についての話し合いには応じていたものである(基礎となる事実(7)ウ及びエ)。
ウ したがって、こうしたY1社及び被控訴人Y2社の対応が不法行為を構成するものとは認められない。
(6)  まとめ
以上のとおり、控訴人の被控訴人らに対する不法行為に基づく慰謝料請求は、いずれも理由がない。
6  結論
以上によれば、控訴人の被控訴人らに対する請求はいずれも理由がないから、これらを棄却した原判決は相当であって、本件各控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 市川正巳 裁判官 藤井聖悟 裁判官 小川紀代子)

 

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