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「営業支援」に関する裁判例(84)平成23年 9月20日 名古屋地裁 平20(ワ)3864号 債務不存在確認請求事件、損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(84)平成23年 9月20日 名古屋地裁 平20(ワ)3864号 債務不存在確認請求事件、損害賠償請求事件

裁判年月日  平成23年 9月20日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)3864号・平21(ワ)1915号
事件名  債務不存在確認請求事件、損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2011WLJPCA09206001

要旨
◆原告補助参加人の株主である被告が、原告補助参加人の代表取締役である原告は、顧問委託料、管理委託料、交際費等を支出させた任務懈怠行為により、原告補助参加人に損害を生じさせたとして、原告補助参加人に発生した損害額と同額の賠償を求めたのに対し、原告が、被告の誹謗中傷により原告の名誉を毀損されたとして、慰謝料の支払を求めた事案において、認定事実によれば、本件顧問料及び交際費等の支出につき、原告に善管注意義務は認められないが、原告補助参加人の株主構成を安定させるために設立された実態のない訴外会社に対して管理委託料を支出したことは、善管注意義務違反といえるとして、被告の請求を一部認容する一方、被告の原告に対する言動のうちの一部について名誉毀損が成立するとして、原告の請求も一部認めた事例
◆経営者としての取締役の判断は、前提となった事実認識に不注意な誤りがある、又は、その決定の過程、内容に著しく不合理な点がある場合でない限り、取締役としての善管注意義務に違反するものではないとされた事例

評釈
弥永真生・ジュリ 1434号64頁

参照条文
会社法330条
会社法355条
会社法847条3項
民法644条
民法709条
民法710条

裁判年月日  平成23年 9月20日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)3864号・平21(ワ)1915号
事件名  債務不存在確認請求事件、損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2011WLJPCA09206001

平成20年(ワ)第3864号債務不存在確認請求事件(以下「第3864号事件」という。),
平成21年(ワ)第1915号損害賠償請求事件(以下「第1915号事件」という。)

名古屋市〈以下省略〉
第3864号事件原告・第1915号事件被告(以下,単に「原告」という。) X
同訴訟代理人弁護士 古井戸康雄
同 片山正彦
第3864号事件原告複代理人弁護士 志田祐義
同 宇佐美芳樹
愛知県小牧市〈以下省略〉
第3864号事件原告補助参加人(以下「原告補助参加人」という。) 株式会社Z
同代表者代表取締役 X
同訴訟代理人弁護士 田中清隆
同 小林和正
同 竹内景子
同 三島宏太
同 大瀧保
同 西森由紀子
同 高橋恭司
同 枩藤朋子
東京都八王子市〈以下省略〉
第3864号事件被告・第1915号事件原告(以下「被告」という。) Y
同訴訟代理人弁護士 浅井正
同 山谷彰宏
同訴訟復代理人弁護士 遠藤靖典

 

主文

1  被告は,原告に対し,55万円及びこれに対する平成20年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告は,原告補助参加人に対し,2481万7292円及びこれに対する平成21年4月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告及び被告のその余の請求を,いずれも棄却する。
4  訴訟費用(補助参加費用を含む)は,これを10分し,その2を原告の,その余を被告の負担とする。
5  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
(第3864号事件)
1  被告は,原告に対し,657万8716円及びこれに対する平成20年8月20日(第3864号事件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  仮執行宣言
(第1915号事件)
1  原告は,原告補助参加人に対し,9716万4427円及びこれに対する平成21年4月29日(第1915号事件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  仮執行宣言
第2  事案の概要
本件は,原告補助参加人の株主である被告が,原告補助参加人の代表取締役である原告の任務懈怠行為により,原告補助参加人に合計9716万4427円の損害が生じたとして,会社法847条3項に基づき,原告に対して,原告補助参加人に同額の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求め(第1915号事件。ただし,一部の主張を撤回したため,その主張する損害の総額と求める賠償の総額は一致しない。),原告が,被告による誹謗中傷により原告の名誉が毀損され,精神的苦痛を受けたとして,被告に対して,不法行為に基づく慰謝料300万円,弁護士費用357万8716円及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める(第3864号事件)事案である。
なお,第3864号事件のうち,原告が,被告を相手方として,原告が原告補助参加人に対して被告の主張する損害賠償債務のないことの確認を求める訴えは,訴え取下げにより終了した。
1  前提事実(当事者間に争いのない事実並びに書証及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者等
ア 原告補助参加人(旧商号・Z自転車株式会社)は,自転車及び部分品の製造販売,不動産の賃貸等を目的とする株式会社である。
イ 原告は,原告補助参加人の代表取締役である。
ウ 被告は,平成16年以来,原告補助参加人の株式を継続して保有する株主である。
(2)  被告による訴え提起請求等
ア 被告は,平成19年5月1日付け及び平成20年2月1日付け各訴え提起請求書をもって,原告補助参加人の監査役に対し,原告の原告補助参加人に対する損害賠償責任を追及する訴えを提起するよう請求した(甲2,4)。
イ 原告補助参加人の監査役は,被告のいずれの請求にも応じず,被告に対して,「不提訴理由書」を交付した(甲3,5)。
(3)  原告補助参加人の支出等
原告は,原告補助参加人を代表して,以下の各契約を締結し,支出を決定した。
ア 顧問委託契約の締結及び顧問料の支出
(ア)原告補助参加人は,平成14年3月15日,有限会社f事務所(代表取締役A。以下「f事務所」という。)との間で,原告補助参加人の事業運営について「適切な助言提案や支援活動」を行うことを内容とし,コンサルティング料(以下「顧問料」という。)を月額30万円,期間を平成15年3月31日までとする顧問委託契約を締結した(丙2の1)。
原告補助参加人は,平成16年5月31日,f事務所との間で,上記顧問委託契約の期間を平成17年3月31日まで延長した(丙2の2)。
原告補助参加人は,平成17年4月8日,A個人との間で,原告補助参加人の「(1)経営・マネジメント管理に関する助言,(2)自転車事業・WEB販売に関する助言」を業務範囲とし,報酬額(以下「顧問料」という。)を月額33万3333円,期間を平成17年4月1日から平成18年3月31日までとする「コンサルティング業務委託契約」(以下「顧問委託契約」という。)を締結した(丙2の3)。
原告補助参加人は,平成18年6月期に,Aに対して,上記顧問委託契約に基づき,顧問料合計363万4917円を支払った(争いのない事実)。
(イ)原告補助参加人は,平成17年5月31日,株式会社g(代表取締役B。以下「g社」という。)との間で,委任業務項目を「①甲(原告補助参加人)の経営戦略および経営戦術について甲の社長に直接アドバイスを行う。②甲の新しい成長事業の模索方法に対して甲の社長に直接アドバイスを行う。」とし,期間を平成17年6月1日から同年11月30日まで,契約金額(以下「顧問料」という。)を189万円(うち消費税9万円)とする「業務委任契約」(以下「顧問委託契約」という。)を締結した(丙3の1)。
原告補助参加人は,同年11月30日,g社との間で,上記顧問委託契約を同年12月1日から平成18年5月31日まで延長すると共に,同期間の顧問料を315万円(うち消費税15万円)に改訂する合意をした(丙3の2)。
原告補助参加人は,平成18年6月期に,g社に対して,上記各顧問委託契約に基づき,顧問料合計522万8000円を支払った(争いのない事実)。
(ウ)原告補助参加人は,平成18年1月29日,株式会社h(代表取締役C。旧商号・株式会社h1。以下,総合変更の前後を問わず「h社」という。)との間で,「甲(原告補助参加人)の発展に寄与するため,不動産・建築等の業務を通じて,甲の経営・企画・運営等について助言,指導を行うサービスを提供する」ことを内容とし,報酬(以下「顧問料」という。)を月額20万5000円(税込み)とする「コンサルタント業務契約」(以下「顧問委託契約」という。)を締結した(丙4)。
原告補助参加人は,平成18年6月期に,h社に対して,上記顧問委託契約に基づき,顧問料合計141万9054円を支払った(争いのない事実)。
(エ)原告補助参加人は,平成17年11月1日,株式会社i(代表取締役D。以下「i社」という。)との間で,コンサルティング業務の内容を「甲(原告補助参加人)が中長期事業計画の立案に向けて検討する経営外部環境の調査分析に関する情報提供および助言」とし,期間を平成17年11月1日から同年12月31日まで,報酬(以下「顧問料」という。)を月額52万5000円(うち消費税及び地方消費税2万5000円)とする「コンサルティング契約」(以下「顧問委託契約」という。)を締結した(丙5の1)。
原告補助参加人は,同年12月19日,i社との間で,上記顧問委託契約の期間を平成18年1月1日から同年3月31日まで延長すると共に,顧問料を月額35万円(うち消費税及び地方消費税1万6666円)と改訂する合意をした(丙5の2)。
原告補助参加人は,平成18年6月期に,i社に対し,上記各顧問委託契約に基づき,顧問料合計266万6670円を支払った(争いのない事実。以下,上記(ア)ないし(エ)の各契約を総称して,「本件各顧問委託契約」といい,同契約に基づき平成18年6月期に支払った顧問料を総称して,「本件顧問料」ということがある。)。
イ j産業株式会社への管理委託費の支出
(ア)原告補助参加人は,平成15年7月1日以前から,その所有する不動産の管理業務につき,j産業株式会社(代表者原告。以下「j産業」という。)との間で業務委託契約を締結している。
(イ)j産業は,平成20年まで,上記委託に係る業務を,原告補助参加人に委託し,原告補助参加人の従業員をして行わせていた。
(ウ)原告補助参加人が,上記(ア)の業務委託に基づきj産業に支払った業務委託費から,上記(イ)の再委託に基づきj産業から受け取った事務手数料等を差し引くと以下のとおりとなる。
① 平成16年6月期(乙41の1,弁論の全趣旨)
業務委託費 481万7000円
受取事務代行手数料 90万6000円
受取清掃費 28万5000円
差額 362万6000円
② 平成17年6月期(乙41の2)
業務委託費 581万6000円
受取事務代行手数料 28万6000円
差額 553万円
③ 平成18年6月期(乙41の3)
業務委託費 704万9000円
受取事務代行手数料 27万6000円
差額 677万3000円
④ 平成19年6月期(乙41の4)
業務委託費 652万3000円
受取事務代行手数料 12万円
差額 640万3000円
⑤ 平成20年6月期(乙41の5)
業務委託費 629万4000円
受取事務代行手数料 12万円
差額 617万4000円
以上の差額合計2850万6000円
上記以外にも,j産業の原告補助参加人に対して支払うべき手数料等が相殺処理されたために,平成16年6月期から平成20年6月期までの間に,原告補助参加人からj産業に対して実際に支払われた業務委託費は2481万7292円である。
ウ 交際費の支出
原告補助参加人は,平成18年6月期に,原告に関する交際費として,別紙「交際費明細」のとおり合計527万5643円を支出した(以下「本件交際費」という。)。
エ マンションの賃借及びこれに係る費用の支出
原告補助参加人は,平成18年1月ころ,名古屋市中区丸の内所在のマンションであるaマンション1404号を,期間・平成18年1月から平成19年3月までの約定で賃借し,同室に関し,別紙「モデルルーム関連費用明細」のとおり合計902万7447円を支出した(以下「本件モデルルーム関連費用」という。)。
オ 本社建物・倉庫の建築及びこれに係る費用の支出
原告補助参加人は,平成16年ころ,愛知県小牧市に本社建物・倉庫の建築を決定し,平成17年1月ころ,kリース株式会社との間で工事請負契約を締結して,別紙「本社建物・倉庫建築費明細」のとおり合計5829万5000円を支出した(以下「本件本社建物等建築費」という。)。
カ 土地の売買及びこれに係る支出
原告補助参加人は,平成18年2月21日,長野県安曇野市所在の山林(以下「△△ラボ用地」という。)を取得し,同土地に関して,別紙「△△ラボ用地関連費用明細」のとおり合計793万9710円を支出した(以下「△△ラボ用地関連費」という。)。
キ 自動車2台の売買及びこれに係る支出
(ア)原告補助参加人は,平成18年2月24日,マツダロードスター1台(代金273万2027円)及び日産ムラーノ1台(代金439万5689円)を購入した。
(イ)原告補助参加人は,同年7月31日,上記マツダロードスターを170万円で売却し,同年11月24日,上記日産ムラーノを267万8900円で売却した(以下,上記の車両2台を併せて「本件車両」という。)。
ク 貼用印紙代の支出
原告補助参加人は,第3864号事件の貼用印紙代44万円を支出した。
2  争点及びこれに対する当事者の主張
(1)  原告の取締役としての善管注意義務違反の存否(第1915号事件)
ア 顧問委託契約の締結及び顧問料の支出が善管注意義務に違反すること
(被告の主張)
(ア)本件各顧問委託契約の締結が善管注意義務違反であること
同じ時期に類似する内容の顧問委託契約を4つも締結し,1年で合計1359万6073円もの顧問料を支払うという意思決定は,到底ひとつひとつの顧問委託契約の原告補助参加人にとっての必要性を精査したものとはいえず,著しく不合理である。通常の経営者を基準とすれば,少なくとも同じ時期に類似する内容の顧問委託契約を4つも締結することはあり得ない。
原告補助参加人は,厳しい経営環境にあった原告補助参加人がその危機を乗り越えるため,各専門分野からの顧問団を編成して多様な意見を聞く必要があり,本件顧問料は,「チームZプロジェクト」と名付けた顧問団による経営危機を乗り越えるために必要な支出であったと主張するが,原告補助参加人が経営危機を乗り越えたのは,遊休不動産の転用(不動産賃貸業)による大幅な増収が主な理由であって,それにAらは関与していない。
(イ)Aとの間の顧問委託契約の締結等が善管注意義務違反であること
Ⅰ 原告補助参加人の自転車部門は,平成17年6月期に試算でも7246万1193円の赤字となっており,赤字が出ていること自体,自転車製造部門への助言を主とするf事務所との間の顧問委託契約が意味のないものであったことを示している。したがって,原告が,平成14年3月15日にf事務所と原告補助参加人との間で顧問委託契約を締結させたことは,f事務所に委託事項を遂行する能力がないことを無視して行われていると言わざるを得ない。仮に,平成14年3月15日の上記顧問委託契約締結の意思決定が著しく不合理とはいえないとしても,同契約を平成16年5月31日に継続したことは,f事務所に委託事項を遂行する能力がないことを無視して行われたものであり,著しく不合理である。
Ⅱ そして,平成17年4月18日に顧問料を33万3333円に値上げして,Aとの間で顧問委託契約を締結した原告の意思決定は,Aに委託事項を遂行する能力のないことを無視して行われたことが明らかであるだけでなく,Aの能力を何の検証もすることなく行われたものであり,著しく不合理であって,原告の善管注意義務違反である。
原告は,Aに対し,株主総会における「発言」,「拍手」等の行動を指示しており(乙54),株主総会対策のためにAに顧問料を支払っているかのようにも見受けられる。
Ⅲ よって,平成18年6月期に原告補助参加人がAに支払った顧問料合計363万4917円は,原告の善管注意義務違反により原告補助参加人が被った損害である。
(ウ)g社との顧問委託契約の締結等が善管注意義務違反であること
Ⅰ g社と原告補助参加人との間の顧問委託契約は,委託業務項目が「経営戦略」,「新しい成長事業」のアドバイス等という極めて抽象的なものであり,このような抽象的な委託事項に対して原告補助参加人が多額の顧問料を支払う旨の原告の意思決定は,著しく不合理である。
Ⅱ また,同業務委任契約に基づき,g社の社員であるE及びFが原告補助参加人の役員会に参加し,株主ではない両名が本来出席できない株主総会に出席していることからすると,同顧問委託契約は,会社法968条,970条に違反するおそれがある。
Ⅲ さらに,同社に対する顧問料は,特に具体的な成果があったわけでもないのに値上げされており,この点でも原告の意思決定は著しく不合理である。
Ⅳ よって,平成18年6月期に原告補助参加人がg社に支払った顧問料合計522万8000円は,原告の善管注意義務違反により原告補助参加人が被った損害である。
(エ)h社との間の顧問委託契約締結等が善管注意義務違反であること
Ⅰ h社は風水占いを行う会社であり,原告補助参加人の業務とは無関係である。業務と無関係な会社との間で顧問委託契約を締結する原告の意思決定は,著しく不合理である。
Ⅱ よって,平成18年6月期に原告補助参加人がh社に支払った顧問料合計141万9054円は,原告の善管注意義務違反により原告補助参加人が被った損害である。
(オ)i社との間の顧問委託契約締結等が善管注意義務違反であること
Ⅰ i社と原告補助参加人との間のコンサルティング契約は,コンサルタント業務が「中長期事業計画」という極めて抽象的なものであり,このような極めて抽象的な委託事項に対して多額の顧問料を支払う旨の原告の意思決定は,著しく不合理である。
Ⅱ よって,原告補助参加人が平成18年6月期にi社に対して支払った顧問料合計266万6670円は,原告の善管注意義務違反により原告補助参加人が被った損害である。
(原告及び原告補助参加人の主張)
(ア)本件各顧問委託契約の締結について
Ⅰ 創業以来の原告補助参加人の主力事業である自転車製造販売業は,平成10年前後からの中国や台湾の廉価車の国内大量流入により,製造・販売両面にわたって未曾有の構造変化が起こった。百数十社あった自転車製造企業は,その変化への対応戦略が的確ではなかったため,その殆どが経営破綻した。販売業においても,大規模小売業によって,全国に3万店あった自転車専門店は1万店に減少し,原告補助参加人の販売店網も壊滅状態となった。被告が原告の注意義務違反を主張する時点は,このような自転車メーカーにとって厳しい経営環境下のことである。
原告補助参加人も,平成10年以降赤字転落となり,年々赤字は増大し続け,他方で巨額の借入金もあったため,原告は通常の経営手法では倒産すると判断し,それぞれの専門分野からなる顧問団を編成して対策案のアドバイスを受けて様々な試行錯誤を繰り返し,根本的な企業構造改革を推進した。
その結果,現在の原告補助参加人は,企業規模こそ縮小したものの,借入金を完済して利益体質を回復し,平成19年からは増配して7円配当を実現し,安定経営を続けている。
Ⅱ 原告は,同時期に類似した契約を4つも契約することは不合理であると主張するが,これは我が国企業や政府において日常的に行われている専門家集団によるタスクフォース方式のプロジェクトチームのやり方である。原告補助参加人及び原告は,中長期の新経営戦略をベースにして,自転車事業,不動産事業,長期的戦略,人材育成などにつきそれぞれの専門家のアドバイスを受け,時には会議体によって総合的多角的な新企業戦略の企画立案を受け,新戦略を推進した。
当時の原告補助参加人は,徹底した縮小均衡策の結果,社員は新人を中心として10名以下(最小時期は4名)になっていたから,原告補助参加人内部に専門知識に基づいた的確な戦略を立案する人材は存在しなかった。社内にこれらの要員を採用すると,より多額の費用を要し,何よりも採用に手間取り,環境変化に対応が間に合わず,同業他社と同様,経営が破綻した可能性が高い。
Ⅲ 本件顧問料は,1社平均年額約342万円(月額平均28万円)に過ぎず,投入された各社の社員と負担経費まで考慮すると,産業界全般の顧問起用の実例と比較しても極めて適正な金額である。
また,目的を完了した顧問契約は,随時解除して費用を節減している。
(イ)Aとの間の顧問委託契約締結等について
Ⅰ Aは,lサイクルを自転車業界の首位企業に築き上げた著名な経営者であり,退社後はコンサルタント会社を経営し,国内外に幅広い人脈と経験を有して,業界等しく認める有能な人物である。赤字会社の再建の経験もあり,自転車業界だけでなく,企業戦略の専門家として評価されている。
Ⅱ f事務所及びAは,原告補助参加人と顧問委託契約を締結して以来,「Z社のTU号」で有名なブランドを生かす戦略,今日の原告補助参加人のCI構築や新マーケティング戦略,ファイブレス方式(生産工場を撤収して国内外の他企業に外注委託生産する方式)の提案を行い,日本経済がデフレに巻き込まれるまでの一時期は相応の成果が上がっていた。
しかし,自転車業界の構造変化の進展は予想以上に激しく,原告補助参加人の企業力では,もはや従来型の企業戦略では再建不能と判断した。他方で,環境問題などから未来商品的性格の自転車需要は増大していることから,その自転車継続の有望性を認め,開発を最小限に止めて,リスクの少ない他社製品を仕入れて,インターネット・ダイレクト・マーケティング戦略に転換した。その結果,規模は大幅に縮小したが,平成21年の自転車売上高は前年比156%と成長の兆しを見せている。
Ⅲ 平成17年4月18日に顧問料を値上げしてAと顧問委託契約を締結したのは,原告補助参加人の危機的状況に対応するために,Aが原告補助参加人の再建に専念することとしたためであり,これにより,それまで複数の会社から収入を得ていたAが大幅な減収となることから,このことによりAの活動が制約されれば,原告補助参加人の損失となると考えた原告が,源泉徴収相当分の上乗せをしたものである。
Ⅳ 原告は,平成16年6月期に赤字を出しながら,f事務所と再契約をしたのは不合理であると主張するが,この期は,人的リストラの徹底,不良在庫処分の一掃,工場や倉庫などの設備撤去償却など多額の赤字を一括計上した年である。これこそAの指導により行われたことであり,まさにこの成果によって原告補助参加人の再建が果たされ,生き残りが実現したといっても過言ではない。平成17年6月期以降,原告補助参加人が再び赤字になったことはない。
(ウ)g社との間の顧問委託契約締結等について
Ⅰ g社の役割は,定例会議などで提起される様々な提案を豊富な事業経営の経験から判断し,提言することにあり,その特色は経営理念の提唱になる。
Ⅱ E及びFは,名古屋でも有名な地元上場会社の経営者であって,人格識見共に優れた人物であり,顧問料の期中増額は,Bに加えてこの両名を実務に参画させたことによる。
Ⅲ 顧問料とは,個々の具体的な業務の対価として支払われるものではなく,全体的な貢献度を評価して支払われる。E及びFは,原告が毎月開催する定例会議において,多くの提案を検討して,これが原告補助参加人の再建に生かされている。
(エ)h社との間の顧問委託契約締結等について
h社代表取締役のCは,顧問団中,唯一不動産実務や設計,法律に詳しい専門家で,自転車工場や倉庫跡地の活用について不動産に係わる提案をし得た人物である。現に,①愛知県小牧市の本社跡地を商業用地として転用し,事業用借地権設定契約を締結したり,②本社を移転したりという場面では,唯一の不動産の専門家,また,G建築士と共に建築の専門家として,指導,助言,情報提供などで重要な役割を果たした。風水占いは,Cの個人の趣味であって,原告補助参加人との間の顧問委託契約とは何ら関係ない。
(オ)i社との間の顧問委託契約締結等について
i社の代表取締役であるDは,長年証券会社でいろいろな分野の企業の長期的見通しを検討し,アナリストとして稼働してきた人物で,原告補助参加人の将来で実現可能な新規事業を探すアドバイスをした。
被告は,中長期事業計画という極めて抽象的な委託事項に報酬を支払うのは不合理であると主張するが,この種の長期的な計画に社外の専門家を交えることは他企業にも多く見受けられ,その発想法は原告補助参加人の同様の計画策定に役立った。
i社は,原告補助参加人の自転車メーカーとしての存続の可否を,綿密な現状分析を行った上で,「貴社の今後の進むべき方向は,不動産事業から生まれるキャッシュフローを原資として,既存の自転車事業を抜本的に再生し,貴社の成長する中核事業にしていくことである」と結論づけた。これが,現在の原告補助参加人の基本的な路線となっている。
イ j産業に対する賃貸管理料の支払が善管注意義務違反であるか
(被告の主張)
(ア)原告補助参加人は,j産業に対して,賃貸管理料として毎月家賃相当額の3パーセントを支払い,他方,事務代行手数料等を受け取っている。しかし,原告補助参加人が所有している不動産の清掃・管理業務は,株式会社mに業務委託されており,従業員もおらず何ら事業を行っていないペーパーカンパニーであるj産業に賃貸管理料を支払う必要性は何ら存在しない。また,j産業が原告補助参加人の社員に委託して実務を処理しているのであれば,j産業を通す意味はない。現実に業務を行っていない会社に業務を委託し,原告補助参加人に管理委託費を支払わせることが著しく不合理であることは明らかである。
(イ)現実に賃貸マンションの管理を行っているのはあくまでも株式会社mであり,j産業ではないことは,以下のことから明らかである。
Ⅰ cマンションやdマンションにおいて,株式会社mが管理会社となっている(乙38,39)。
Ⅱ dマンションでは,株式会社mは,ゴミ収集場所清掃,エントランス・通路・階段の拭き掃除という細かい管理作業まで行っている(乙39)。
Ⅲ 原告自身も,取締役Hとのメールの中で,「m社が上手にお客さんを見つけてくれたからです。」と述べ,株式会社mによって賃貸マンションの管理がうまくいっていたことを認めている。
Ⅳ 監査法人n事務所の公認会計士Iも,j産業を,「事業をほとんど実施していない形だけの持ち株会社」と断じて,原告補助参加人からの賃貸管理料の支払や事務手数料の受取りを止めた方がよい旨注意している(乙30)。
(ウ)よって,原告補助参加人が平成16年6月期から平成20年6月期までにj産業に対して支払った賃貸管理料から,j産業が原告補助参加人に支払った事務代行手数料及び清掃費を差し引いた額の合計2850万6000円は,原告の善管注意義務違反によって原告補助参加人が被った損害である。
(原告及び原告補助参加人の主張)
(ア)j産業は,清掃業務の品質管理,空き室対策,既存客定着についてノウハウを有している。
原告補助参加人は,その所有するマンションの管理を,平成14年までは大手不動産管理業者である株式会社oに,その後は株式会社mに委託している。しかし,これら大手管理業者の管理は,賃料の取立てや入居者募集が中心であり,日常的な清掃等の細かい作業は,大手管理業者では行うことができない。これをj産業に担当させることにより,全体として管理費用を低額に押さえることができている。また,j産業による集客,営業支援,既存客流出防止業務などきめ細かいメンテナンスにより,原告補助参加人は,満室保証料を支払うことなく,自力で入居率95ないし98%を維持している。
(イ)j産業が原告補助参加人の従業員を使用したのは,福利厚生費の削減(j産業において従業員を採用して作業をさせれば,年金社会保険料等の福利厚生費が別途発生するが,原告補助参加人の従業員を使用すれば,j産業の負担が避けられる。)のためである。原告補助参加人の社員が削減され,兼務の余裕がなくなってからは人件費立替金をなくして,原告自身が行っていた。
また,j産業を存続させたのは,原告補助参加人の安定株主対策のため,即ち,経営者の相続発生時の議決権の分散を防ぐためという目的もあった。
ウ 本件交際費の支出が善管注意義務違反であるか
(被告の主張)
本件交際費は,①「飲食代 社長」,「社長 接待飲食」,「e社お礼 社長」等と記載されており,私的使用であることが強く疑われるもの,②「飲食代 公認会計士」,「X・H飲食代」等と記載されており,原告の自己飲食であることが強く疑われるもの,③「飲食代」,「海外交際費」としか記載されておらず,正当な交際費ではないことが強く疑われるもの,④概要が何も記載されておらず,正当な交際費ではないことが強く疑われるもの,⑤「講演会費 b社」,「講演会費・その他交際費」,「講演会費」と記載されており,会社の業務との関係が明らかではなく,正当な交際費ではないことが強く疑われるものである。
原告補助参加人の平成18年6月期の交際費は659万9000円であるのに対し,平成19年6月期は85万3235円,平成20年6月期は73万2886円であるから,本件交際費の支出が原告補助参加人にとって問題ないといえるものではない。
特に,愛知県内のいわゆる総会屋である○○グループが組織する団体である「b社」に対する平成17年7月29日,11月30日及び平成18年3月14日の支出合計5万7144円は総会屋(株主)に対する利益供与であり,実体はもちろん法的にも会社の業務と関係がある支出とはいえない。
よって,原告補助参加人が支払った本件交際費合計527万5643円は,原告の善管注意義務違反により原告補助参加人が被った損害である。
(原告及び原告補助参加人の主張)
被告の主張を争う。
本件交際費総額は当該企業必要額としては妥当であり,これを監査した監査法人,監査役,税務署も私的流用はないものと認めている。
また,b社については,当初事情を知らない時点では,有名経済人の経営戦略として講演テープを購入したが,警察情報を得てからは直ちに購入を中止している。意図的な総会屋への利益供与ではない。
エ aマンション1404号の賃借及び本件モデルルーム関連費用の支出が善管注意義務違反であるか
(被告の主張)
(ア)aマンション1404号は,原告が家族と別居して個人的に使用するために賃借した物件である。原告は,平成17年12月ころ,家族と別居して個人的に使用する住宅を確保するため,「アパ・マンション」を原告補助参加人に購入させようとした。しかし,原告補助参加人が原告に代わって「アパ・マンション」を購入する必要性が認められなかったために,原告は,経費が少ない賃借であれば購入よりも説明がつきやすいと考え,aマンション1404号を原告補助参加人に賃借させることにした。
(イ)これは,原告と原告補助参加人従業員Jとのメールで,原告が,「家族との別居が原因ですので不可能です。」と回答していること,Jが,「会社が購入する必要性を十分検討する必要があります。」と述べていることから明らかである(乙31)。
(ウ)個人使用を目的とする物件を,原告補助参加人名義で賃借させ,家賃,内装等の費用を支払わせることが著しく不合理であることは明らかである。
(エ)よって,原告補助参加人が支払った本件モデルルーム関連費用合計902万7447円は,原告の善管注意義務違反により原告補助参加人が被った損害である。
(原告及び原告補助参加人の主張)
原告は,原告補助参加人の保有する名古屋市中区丸の内の本社跡地に高級賃貸マンションを建設する計画を実現するに際し,リスクを最小限に止めるために同規模の丸の内の他の一室を借りて本格投資の前の実験的マーケティングを施行して,その成否を予測しようとした。その実験結果として事業化の困難性を認識し,新事業を断念した。aマンション1404号の短期賃料などの費用の一時的発生があったものの,事業の断念により莫大な額の投資を抑えたリスク管理の手法は,何ら非難されるべきではない。
オ 本件本社建物等建築費のうち当初見積を超える金額の支出が善管注意義務違反であるか
(被告の主張)
Ⅰ 原告補助参加人は,平成16年4月28日に,本社建物・倉庫の建築につき3236万円の見積り(甲22)を取った後に,原告の友人であるG建築士とCに本社建物・倉庫に関与するよう依頼して,建設総予算を5000万円,設計費用を500万円と,当初見積りよりも大幅に増額した。しかも設計費用のうちCに支払ったのは風水占いの費用である。原告がこれら原告の友人らを関与させなければ,当初の見積りか,これに近い金額で収まっていた。
また,原告補助参加人は,平成20年ころに,本社を名古屋市中区丸の内に移転することが決定していた。わずか3年後に本社移転が決まっているにもかかわらず,多額の金を使って本社建物を建設すること自体不合理である。
さらに,本社建物1階にある倉庫と同一敷地内にある倉庫は,いずれも原告補助参加人における自転車製品及び部品を保管する場所であるが,原告補助参加人における自転車製品(部品を含む)の年間売上げは2000万円にも満たないから,倉庫は賃貸で十分であって,あえて倉庫を建設する必要性にも乏しい。
Ⅱ 原告は,本社建物・倉庫建築費として5500万円(建築費用5000万円,設計費用500万円)を支払うことを前提に,本社建物・倉庫建設を行っていることは,メールに記載されている(乙29)。そして,かかるメールに基づいて,見積書が作成され(丙15),支払がされている(乙12)。
Ⅲ よって,当初見積りと実際に支払った本件本社建物等建築費の差額2593万5000円(税込み)は原告の善管注意義務違反の行為により原告補助参加人が被った損害である。
(原告及び原告補助参加人の主張)
被告の主張を争う。
施工業者であるkリース株式会社の当初見積額は,現地を詳細に確認しないまま作成されたたたき台としての見積りであり,その後の現地確認と具体的協議の結果,使用材料の変更や外構工事の追加などで,見積り内容が大幅に変更された。
カ △△ラボ用地の取得が善管注意義務違反であるか
(被告の主張)
Ⅰ △△ラボ用地は,原告の個人的な夢と利用のために取得した土地である。これは,△△ラボ用地が,温泉受湯権とセットで売買の対象とされていることと,原告が自らインターネット上で個人的な夢と認めていること(乙18)からも明らかである。
しかも,原告は,△△ラボ用地の取得は取締役会において議決されたものと述べるが,当時の取締役Hは△△ラボ用地の必要性を明確に否定し,取締役会議事録に反対した旨を記載するよう求めている(乙34)。それにもかかわらず,原告及び原告補助参加人はHについても賛成したとの虚偽の記載をした議事録を作成し(乙24),Hは,原告と対立したまま,取締役会から4か月後に辞任している。
Ⅱ 原告補助参加人は,理念的,根源的な研究や自転車事業の基礎となる技術養成やデザイン研究などの設備,小規模老人ホームのテスト実験と取得理由を主張するが,根源的な研究や自転車事業の基礎となる技術養成やデザイン研究などの設備であれば,温泉受湯権とセットで購入する必要はなく,また,取得後の利用実態もない。
Ⅲ △△ラボ用地の管理会社の管理規約によれば,商業その他営利事業を営むことは禁止されており,高齢者施設及び研究者施設を建設することは不可能である。また,小規模老人ホームのテスト実験は,原告補助参加人の提出する△△ラボに関する資料のどこにも載っていない。さらに,原告補助参加人は,将来の値上がりに備えた先行取得とするが,使用目的も確定しない段階で,将来の値上がりを検証することもなく土地を購入したことは,著しく不合理である。
Ⅳ よって,原告補助参加人が支出した△△ラボ用地関連費合計793万9710円は,原告の善管注意義務違反により原告補助参加人が被った損害にあたる。
(原告及び原告補助参加人の主張)
被告の主張を争う。
企業においては,事業用地の先行取得は,それが漠然とした構想段階であってもしばしば行われることである。原告補助参加人の将来構想として,単なる自転車販売や賃貸不動産経営だけでなく,もっと理念的,根源的な研究や自転車事業の基礎となる技術養成やデザイン研究などの設備を持ちたいとの構想があった。場合によっては,小規模老人ホームのテスト実験としての可能性もあり,折からの不動産ブームもあって取得したものである。計画は中止したが,用地そのものは会社資産となっており,原告の個人的利害によるものではなく,結果において目的が達せられなかったといっても特に非難されるものではない。
キ 本件車両の購入が善管注意義務違反であるか
(被告の主張)
Ⅰ 本件車両を購入するに当たり,原告補助参加人は,具体的な使用計画書を策定していない。具体的な使用計画もなく,1年足らずで売却しなければならない車両を同じ時期に2台も購入するという原告の意思決定は,車両の必要性を精査して行われたものとは言えず,著しく不合理である。
Ⅱ 原告とGとの間のメール(乙35)の内容等に照らすと,本件車両は,j産業の取締役であるGが使用する車両として,原告補助参加人が購入したものであることが明らかである。原告補助参加人に所属していない者の使用を目的とする自動車を,原告補助参加人名義で購入させることは,原告の行為として著しく不合理である。
特に,j産業は,原告補助参加人の大株主であり,その取締役の便宜を図るのは,一部の株主に対する利益供与でもある。
Ⅲ よって,本件車両の購入額から売却額を差し引いた差額の合計274万8816円は,原告の善管注意義務違反により原告補助参加人が被った損害にあたる。
(原告及び原告補助参加人の主張)
被告の主張を争う。
日産ムラーノは,降雪地帯である△△ラボ用地への行き来のために購入したものであり,△△ラボの建設を事実上断念した平成18年12月に売却した。
マツダロードスターは,新規事業である高齢者用高級賃貸マンションの見込み客来客用に,「車を乗り回す元気な老人」をアピールすることを意図して先行取得したものであるが,高齢者用高級賃貸マンションの建設を事実上断念した平成18年7月に売却した。
2台ではなく1台にしておけば良かったなどの反省はあるが,これも新規事業の中止に伴う齟齬から発生した損失として,経営活動の許容される範囲と考えられる。
ク 第3864号事件の印紙代の支出が善管注意義務違反であるか
(被告の主張)
第3864号事件は,原告が被告に対し個人的に提訴している訴訟であり,原告補助参加人の業務とは関係ない。当該訴訟により利益を得るのは原告個人であり,原告が訴訟費用を負担すべきであるにもかかわらず,原告は,当該訴訟費用を原告補助参加人に負担させた。
よって,原告補助参加人が支払った印紙代44万円は,原告の著しく不合理な行為に基づく原告補助参加人の損害にあたる。
(原告及び原告補助参加人の主張)
原告補助参加人は,第3864号事件の印紙代全額を原告訴訟代理人に支払った後,取締役会で審議の結果,同事件のうち原告補助参加人の利害と関係する債務不存在部分(訴額の約95.3パーセント)のみを折半して半額を原告補助参加人が負担し,慰謝料・弁護士費用部分(訴額の約4.7パーセント)を原告個人で負担するのが相当との結論に達した。そこで,原告は,平成20年10月23日,原告補助参加人に対して,上記の計算に従い20万5000円を支払い,原告補助参加人はこれを受領した。
(2)  被告の言動が原告の名誉を毀損するものか(第3864号事件)
(原告の主張)
別紙「名誉毀損行為一覧表」(以下「別紙一覧表」という。)記載の被告の言動により,原告は,その名誉を著しく毀損された。
(被告の主張)
別紙一覧表 のうち,「18年のe社との契約の時も社長本人がお礼を受け取っている」と被告がKに発言したことは否認し,その余の事実は認め,その評価は争う。
(3)  違法性阻却事由の存在
(被告の主張)
仮に,被告の行為が原告の名誉を毀損するものと評価されるとしても,以下のとおり,被告は,公共の利害に関する事実について,専ら公益を図る目的で行ったものであり,かつ,摘示した事実が真実である,若しくは,事実を真実と信じるについて相当の理由があるため,被告の行為は不法行為に当たらない。
ア 摘示した事実が公共の利害に関する事実であること
被告が摘示した事実は,いずれも原告が上場会社である原告補助参加人に種々の態様で損害を与えている(不正を行っている)という内容のものであり,公共の利害に関する事実である。
イ 事実を摘示した目的が公益を図る目的にあること
被告が事実を摘示した目的は,原告補助参加人における原告の不正をただし,原告補助参加人の企業価値を高めること(株主全体の利益に資すること)であるため,公益を図る目的にあることは明らかである。
このような公益を図る目的であるからこそ,被告は株主総会という公の場で原告の責任を追及し,原告を原告補助参加人の代表取締役から解任する議案を提案したのである。仮に被告が自分の株式だけを高額で買い取らせたいと考えていたのであれば,公の場で原告の不正行為を明らかにし,その責任を追及するはずがない。
ウ 摘示した事実が真実であること(真実と信ずるについて相当の理由があること)
(ア)「原告が背任・横領・会計操作をした」との摘示及び「原告が,従業員にプレゼントしたエルメスのハンドバッグを皮革サンプルとして偽装計上させ,代金を横領した」との摘示について
原告は,平成19年6月12日,従業員にプレゼントしたエルメスのハンドバッグ代54万9690円を,原告補助参加人に返金している。これはまさに被告が摘示した事実が真実であることを示している。また,帳簿上,54万9690円が皮革サンプルとして計上されている(乙7)。
よって,上記摘示にかかる事実はいずれも真実であり,そうでないとしても,被告が事実を真実と信ずるについて相当の理由があることが明らかである。
(イ)「原告が会計操作を行い,自転車事業の黒字を装っている」との摘示について
原告補助参加人の自転車事業は平成17年6月期において赤字であった。その赤字の金額は,試算でも7246万1193円である(乙23)。このような莫大な赤字の試算を行っているにもかかわらず,原告補助参加人は,部門別損益計算書を株主に開示せず,自転車事業の継続を進めている。原告補助参加人の内部では,少なくとも平成15年12月に部門別損益計算書が作成されている(乙47の1,2)。このように部門別損益計算書を株主に開示しないことは,莫大な不動産収入を隠れ蓑に自転車事業の赤字を隠すことにほかならない。よって,「原告が会計操作を行い,自転車事業の黒字を装っている」との摘示にかかる事実は真実である。
また,被告は,原告補助参加人の帳簿(乙23)や原告の言動に照らして事実が真実であると考えたのであるから,事実を真実と信ずるについて相当の理由があることも明らかである。
(ウ)「原告が実態の不明な会社(j産業)と取引をしている」との摘示について
上記2(1)イの(被告の主張)に記載のとおり,かかる事実は真実である。
また,被告は,本件訴訟で提出済みの証拠に基づいて事実が真実であると考えているのであるから,事実を真実と信ずるについて相当の理由があることも明らかである。
(エ)「Z自転車名義で借りた賃貸マンションに,原告が居住していた」との摘示について
上記2(1)エの(被告の主張)に記載のとおり,かかる事実は真実である。
また,被告は,本件訴訟で提出済みの証拠に基づいて事実が真実であると考えているのであるから,事実を真実と信ずるについて相当の理由があることも明らかである。
(オ)「原告が事務所建設費を浪費してZ自転車に損害をもたらした」との摘示について
上記2(1)オの(被告の主張)に記載のとおり,原告補助参加人の本件本社建物等建築費の支払については,その合理性に大きな疑問がある。
そして,被告は,本件訴訟で提出済みの証拠に基づいて事実が真実であると考えているのであるから,事実を真実と信ずるについて相当の理由があることも明らかである。
(カ)「原告は,Z自転車の資金を使い原告の個人的な夢である△△ラボ建設用地を750万円で購入した」との摘示について
上記2(1)カの(被告の主張)に記載のとおり,かかる事実は真実である。
また,被告は,本件訴訟で提出済みの証拠に基づいて事実が真実であると考えているのであるから,事実を真実と信ずるについて相当の理由があることも明らかである。
(キ)「原告は,マツダロードスターを,G建築士をZ自転車に招集する目的で,Z自転車に購入させた」との摘示について
上記2(1)キの(被告の主張)に記載のとおり,かかる事実は真実である。
また,被告は,本件訴訟で提出済みの証拠に基づいて事実が真実であると考えているのであるから,事実を真実と信ずるについて相当の理由があることも明らかである。
(ク)「原告に企業価値を毀損された」との摘示について
上記の各摘示の事実が真実であるから,当然,「原告に企業価値を毀損された」事実も真実である。
そして,被告は,本件訴訟で提出済みの証拠に基づいて事実が真実であると考えているのであるから,事実を真実と信ずるについて相当の理由があることも明らかである。
(原告の主張)
ア 公共の利害に関する事実ではないこと
原告補助参加人は,取締役3名,従業員5名という人的規模の小さな会社であり,株主数も,議決権を有しない端株主を含めても648名,議決権を有する株主は300名しかいない。したがって,被告が主張する事実は,小さな会社の内部の出来事に過ぎず,かつ,経営判断に関する是非が主な内容であるため,およそ「公共の利害」に係わる事実とはいえない。
仮に,原告補助参加人という小規模の組織内部の構成員(取締役や株主)に公表することが,それら構成員との関係で「公共の利害」に関わるとしても,被告は,原告補助参加人とは関係のない不特定多数が閲覧可能なインターネット掲示板において,執拗な原告への誹謗中傷を繰り返したり,原告補助参加人と全く関係のない者に原告の誹謗中傷を繰り返したりしている。原告補助参加人と全く関係のないこれらの者との関係では,被告の摘示事実は,明らかに「公共の利害」を逸脱しているものと評価できる。
イ 公益を図る目的のないこと
被告の真の目的は,原告への誹謗中傷を繰り返すといった執拗な攻撃によって,原告の社会的名誉及び原告補助参加人の企業価値が毀損されることを恐れる原告及び原告補助参加人を困惑させ,この困惑に乗じて被告が所有する原告補助参加人の株式を原告ないし原告補助参加人に高値で買い取らせることにあった。このことは,被告がインターネット上で原告を誹謗中傷していること,被告の行為により原告補助参加人が株主を失っていること,被告自身,その所有する株式を高値で買い取るよう要求したことからも,明らかである。
ウ 摘示した事実が真実ではないこと,また,真実と信じるに足りる相当の根拠がなかったこと
(ア)摘示した事実が真実であるかについて
被告が摘示した事実は,いずれも真実ではない。
なお,エルメスのハンドバッグ代金は,原告が台湾出張中に自分名義のキャッシュカードが使用できなかったため,やむなく原告補助参加人名義のキャッシュカードを利用して支払を行ったものであるが,旅費精算の際にこれを相殺し,原告補助参加人に損害を与えていない。もっとも,経理担当者が誤って,原告が相殺によって原告補助参加人に返済した金額をサンプル・研究費として計上してしまい,さらに,原告が相殺により原告補助参加人に代金相当額を返還した証拠が明確になっていなかったため,原告は,平成19年6月12日に,54万9890円を原告補助参加人に入金しており,原告は原告補助参加人に損害を与えたどころか,むしろ利得させている。
(イ)被告に真実と信じるに足りる相当の根拠があったかについて
被告が原告に対する誹謗中傷に用いた「背任,横領,会計操作」という言葉は,単なる経理上のミスを超えて,原告自らが背任,横領,会計操作をする意図を有して,背任,横領,会計操作を行ったことを意味する。「背任,横領,会計操作」は犯罪行為として刑罰法規により刑罰が科せられる行為を意味し,安易に用いられれば事実摘示をされた本人のみならず,周辺の利害関係者にとって極めて深刻な影響を及ぼす言葉である。そこで,当該表現を用いるについては,事実摘示をする者において,誰が見ても事実と信じ込むことが当然だというほどの相当な根拠,つまり,質・量共に十分な事実の真実性を担保する証拠が,事実摘示のそのときに必要である。
被告が,本件訴訟において,原告の「背任,横領,会計操作」が真実であると信じるに足りる相当な根拠として引用する事項は,①事実摘示以前に行われた総勘定元帳の閲覧結果,②原告補助参加人の元従業員からの伝聞供述,③被告のいう送り主不明のCD-ROMに記録されたデータである。しかし,①のみでは,原告の「背任,横領,会計操作」が真実であると信ずるに足る根拠にはなり得ず,②は,原告及び原告補助参加人に対する恨みを持つその経歴や,証人尋問実施や陳述書の提出もしない被告の立証努力の欠如などと相まって,証拠価値は極めて低く,③についても,これに記録されたデータの改ざんの可能性が強く疑われる点,名誉毀損時にCD-ROMが存在していたのかの立証がないことからしても,証拠価値が極めて低く,いずれも,相当の根拠にはなり得ない。
したがって,被告の行為には,違法性阻却事由は認められない。
(4)  原告の損害
(原告の主張)
ア 被告の名誉毀損行為による原告の精神的苦痛を金銭で評価するとすれば,300万円を下らない。
イ 原告は,第3864号事件の訴訟遂行のため,原告代理人弁護士らに対して委任し,その弁護費用は357万8716円(債務不存在の額と慰謝料の請求額の合計額の2.5%及び消費税額)である。
被告による,会社代表者たる原告に対する不当違法な攻撃をこのまま放置することは,会社としてのコンプライアンスにも反し,企業価値を損ね,株主全体の利益を害することになるし,現に株主の中には,放置することに対する強い批判も生じている。原告は,会社の責任ある立場にある者として,違法かつ不当な被告の攻撃に対抗して,自らの費用負担により訴えを提起することを余儀なくされたものであるから,この弁護士費用も被告の不法行為と相当因果関係を有する損害である。
(被告の主張)
原告の主張を争う。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)ア(顧問委託契約の締結及び顧問料の支出が善管注意義務違反であるか)について
ア  株式会社の取締役の企業経営に関する判断は,当該企業,当該事業及びその関連事項につき,当該企業を取り巻く現在及び将来の環境及び情勢という,不確実かつ流動的な諸要素を考慮に入れた上でなされる,企業経営者としての専門的,予測的かつ政策的な総合的判断であるから,おのずと企業経営者としての裁量的な判断となる。そこで,このような経営者としての取締役の判断は,前提となった事実認識に不注意な誤りがある,又は,その決定の過程,内容に著しく不合理な点がある場合でない限り,取締役としての善管注意義務に違反するものではないと解すべきである。
そこで,上記の点について,以下検討する。
イ  Aとの間の顧問委託契約締結等について
(ア)前記前提事実,証拠(甲17,18,丙2の1ないし3,丙7,18,53,55,証人A,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
Ⅰ 原告補助参加人は,昭和13年に設立された株式会社であり,設立当初は,自転車の製造販売を主たる事業とする会社として業績を伸ばし,昭和37年に名古屋証券取引所市場第二部に上場した後,不動産の賃貸,売買,斡旋等を順次会社の目的に追加して経営の拡大を図ってきた。
しかし,近年の廉価な輸入自転車の流通拡大等に対抗することができず,業績が悪化し,平成10年6月期には赤字に転落して多額の債務を抱えるに至った。
Ⅱ 原告及び原告補助参加人は,自社での自転車生産を休止して自転車部門を縮小し,平成10年6月期には32人であった従業員数を平成13年6月には13人と順次削減して社内の合理化を推進するなどの経営改革を行ない,同年5月からはブランド再構築に着手した。
Ⅲ Aは,大手自転車製造販売会社であるlサイクル株式会社において,企画部長,販売子会社社長,本社販売本部長などを経て,平成13年に同社を専務取締役で退職し,同年,コンサルティング会社であるf事務所を設立した者であり,自転車製造販売業全般及び企業経営に関するノウハウや人脈を豊富に有していた。なお,Aと原告との間には,親族関係はない。
Ⅳ 原告は,平成14年3月15日,原告補助参加人とf事務所との間で,原告補助参加人の事業運営について「適切な助言提案や支援活動」を行うことを内容とし,顧問料を月額30万円,期間を平成15年3月31日までとする顧問委託契約を締結し,平成16年5月31日に,期間を平成17年3月31日までとして同契約を延長した(丙2の1,2)。
その後,原告は,同年4月8日に,原告補助参加人とA個人との間で,原告補助参加人の「(1)経営・マネジメント管理に関する助言,(2)自転車事業・WEB販売に関する助言」を業務範囲とし,顧問料を月額33万3333円,期間を同月1日から平成18年3月31日までとする顧問委託契約を締結しているが,これは,Aがf事務所を解散したためにA個人と契約を締結し直したものであり,顧問料が増額となったのは,原告補助参加人とA個人との直接契約となったことによりAの手取額が減額とならないようにしたものであって,実質的な増額というものではなかった(丙2の3,丙55,証人A)。
Ⅴ 上記顧問委託契約に基づき,Aは,原告及び原告補助参加人との間で,月数回の会合出席のほか週に数回のメールや電話による連絡を行ない,その中で,原告及び原告補助参加人に対して,種々の提案を行った。その内容の主要なものは,契約当初における,原告補助参加人の知名度を生かしたブランド戦略や海外委託生産による新商品の企画,新販売網づくりのためのセールス強化策等のオーソドックスなマーケティイング戦略の提案であり,その後は,スーパーやホームセンターによる自転車販売の拡大等に対抗する,消費者へのダイレクト販売業への業種転換の提案などがあり,原告補助参加人はこれを順次採用するに至った。また,原告補助参加人がデザイン研究につき業務を拡大すべきこと,研究施設は都市部を離れた郊外に設けることが適していることについても,積極的な意見を述べた。
Ⅵ 被告は,f事務所ないしはAとの顧問委託契約が,株主総会対策のためであったとの趣旨を主張し,証拠として原告作成名義のメール(平成17年9月22日付け。乙54)を提出する。しかし,原告は当該メールにつき記憶がないと述べるところ,被告は,当該メールの入手経路について不詳者から送付されたCD-ROMに入っていたというのみで,その経緯等を明らかにせず,納得のいく説明をすることができないことからすると,これが,実際に原告が作成したものであるか,また,原告が作成したメールと同一であって何ら手を加えられていないかにつき疑義があり,直ちに信用することはできず,これをもって,原告とAとの関係を忖度することはできないと言わざるを得ない。また,仮に,当該メールが,実際に原告が作成したものであったとしても,その内容は,当時,原告補助参加人の最大株主の役員(取締役)であったAに対する指示であること(甲17,乙2)からすると,これをもって,原告補助参加人とAとの間の顧問委託契約の目的を判断することはできないというべきである。
(イ)上記(ア)に認定した事実に照らすと,原告は,原告補助参加人の創業以来の主力事業である自転車製造販売業の業績悪化に直面し,その打開を試みる上で,業界に精通し,かつ,経験も人脈も有するAの助力を得るために,平成14年3月に,同人が設立したf事務所との間で顧問委託契約を締結したものであり,前提となった事実認識,その意思決定の過程及び内容には何ら不合理な点は認められない。そして,原告が,同契約を延長し,平成17年4月にAとの間の契約に切り替えた点についても,その間に,現に,Aから,原告補助参加人の自転車製造販売業に関して種々の有益な助言を得ていることからすると,合理性があるということができる。また,月額30万円の顧問料も,Aの上記の経歴や原告補助参加人への関与の程度と比較して不自然に高額というものではなく,平成17年4月に増額となった事情も,特段,不合理ということはできない。
被告は,原告補助参加人が赤字であるにも関わらず,f事務所ないしはAとの間の契約を延長,切替したことをもって著しく不合理であると主張するが,会社経営に関する経営者の判断事項は,必ずしも直ちに結果を出せるもののみではないことは当然のことがらであり,このことからすると,その会社経営に関する経営者の判断事項に関して顧問委託契約を締結したからといって,直ちに業績が改善し,事業が黒字になるとは限らないことは自明であり,したがって,赤字が改善しないという一事をもって,顧問委託契約継続の合理性を判断することはできず,むしろ,上記認定のとおり,f事務所ないしはAは,原告及び原告補助参加人に適時に適切な提案を行っていたものと認められることも併せ考えると,被告の上記の主張は採用することができない。
被告は,原告補助参加人が経営危機を乗り越えたのは,不動産賃貸業による大幅な増収が主たる理由であり,f事務所ないしはAはこれに関与していないとして,同人らとの契約が著しく不合理であると主張するが,上記認定の各事実によれば,f事務所ないしはAとの間の顧問委託契約は,主として原告補助参加人の自転車製造販売事業に関してのコンサルティング等を得ることを目的としていたことは明らかであり,原告補助参加人が,従前,自転車製造販売事業を主たる事業とする会社であったことに照らすと,他の事業で当面の経営危機を乗り越えることができたとしてもなお,f事務所ないしはAとの間で顧問委託契約を締結し,その延長,切替をしたことを不合理ということはできず,被告の上記の主張は採用することができない。
したがって,原告が,原告補助参加人とf事務所ないしはAとの間で顧問委託契約を締結し,顧問料を支出したことについて,原告に善管注意義務違反があるということはできない。
ウ  g社との間の顧問委託契約締結等について
(ア)前記前提事実,証拠(甲3ないし6,丙3の1,2,丙7,証人A,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
Ⅰ 原告補助参加人は,平成17年6月期までに合理化に一応の区切りをつけ,工場や本社敷地を商業用地として転用し,賃貸したことによる増益などにより,当期純利益を黒字とすることは得られたものの,事業構造の変革はようやく目処がついた段階であり,「Zブランドを活用し,社会性・収益性・成長性ともに優れた事業を軌道に乗せる」という課題が残されているとの認識にあった(丙18)。
Ⅱ Bは,原告補助参加人の元取締役であり,g社は,Bが設立した企業経営,人材育成等のコンサルティング会社である。E,Fは,いずれも中部地域にある著明な上場会社の代表取締役や取締役を務めていた者である。
Ⅲ 原告補助参加人は,平成17年5月31日,g社との間で,委託業務項目を「①甲(原告補助参加人)の経営戦略および経営戦術について甲の社長に直接アドバイスを行う。②甲の新しい成長事業の模索方法に対して甲の社長に直接アドバイスを行う。」とし,期間を平成17年6月1日から同年11月30日まで,顧問料を180万円(月額30万円・消費税別)とする顧問委託契約を締結し,同年11月30日に,期間を平成18年5月31日までと延長し,かつ,顧問料を300万円(月額100万円・消費税別)に増額した(丙3の1,2)。
Ⅳ 原告は,Bからは,自転車製造販売事業に限らず,企業経営全般について直接コンサルティングを受け,平成17年12月以降は,これに加えて,E及びFから,取締役会への出席や商品企画会議などへの参加を通じて,具体的なアドバイスを得た。
上記の顧問料の増額は,原告及び原告補助参加人に対してコンサルティングないしアドバイスを行う者に,新たにE及びFが加わったためである(甲5,6,弁論の全趣旨)。
(イ)上記(ア)に認定した事実に照らすと,原告は,原告補助参加人の今後の経営戦略,経営戦術あるいは成長事業の模索という分野において助言を得るために,g社との間で顧問委託契約を締結したものであり,g社の代表者であるBは,原告補助参加人の元取締役であって,原告及び原告補助参加人に対するコンサルティングにつき適切な人材であることからすると,原告のg社との間の顧問委託契約の締結に至る意思決定の過程及び内容には,不合理な点はないということができる。そして,その後加わったE及びFも,いずれも中部地方で会社経営に加わった実績のある者であって適切な人材であること,原告ないし原告補助参加人は,B,E及びFから,取締役会への出席等の方法により個別にコンサルティングやアドバイスを受けていること,当初の顧問料も増額後の顧問料も,g社の側でコンサルティングやアドバイスに当たる人数からすると,相当性を欠くものとはいえない。したがって,原告が,g社との間の契約を延長し,かつ,顧問料を増額したことも,不合理な点はないということができる。
被告は,g社との間の契約に定める業務委託項目が極めて抽象的であることをもって,これに対する顧問料の支払が著しく不合理であると主張する。しかし,「経営戦略」の策定や,「新しい成長産業」の模索も,取締役の企業経営に関する判断の一環と解されることに照らすと,その取締役の企業経営に関する判断に資するために締結される顧問委託契約の内容として,「経営戦略」,「新しい成長産業」のアドバイスとの委託業務項目を掲げることは相当であって,不合理と言うことはできないから,上記の被告の主張は採用できない。
被告は,E及びFが,上記の顧問委託契約に基づき原告補助参加人の株主総会に出席したことをもって,会社法968条,970条に違反する旨を主張し,あるいは,株主総会対策の疑いを指摘するが,原告が,上記の顧問委託契約をもって,E又はFに対して,株主等の権利行使に関して不正の請託をし,あるいは,株主の権利行使に関して財産上の利益を供与したことを認めることのできる証拠はなく,また,g社との間の顧問委託契約の目的が株主総会対策にあることを認めることの出来る証拠もないから,原告の上記の主張及び指摘はいずれも採用できない。
したがって,原告が,原告補助参加人とg社との間で顧問委託契約を締結し,顧問料を支出したことについて,原告に善管注意義務違反があるということはできない。
エ  h社との間の顧問委託契約締結等について
(ア)前記前提事実,証拠(甲49,丙4,53,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
Ⅰ 原告補助参加人は,自転車製造販売業が不振となった以降,不動産賃貸業を主たる業務として行っており,また,平成17年ころには,愛知県小牧市に新たに本社建物・倉庫を建築する計画を有していたほか,将来の事業として,高級賃貸マンションの経営や,デザイン研究施設の設立運営等の新たな不動産事業も候補にあがっていた。
Ⅱ 原告は,平成18年1月29日,原告補助参加人とh社との間で,「甲(原告補助参加人)の発展に寄与するため,不動産・建築等の業務を通じて,甲の経営・企画・運営等について助言,指導を行うサービスを提供すること」を内容とし,顧問料を月額20万5000円(税込み)とする顧問委託契約を締結した(丙4)。
Ⅲ 原告は,Cが建築に関するアドバイザー(建築士)であり,原告補助参加人の事業計画として挙がっていた高級老人ホーム,高級賃貸マンション,デザイン研究施設に関するアドバイスを得たと説明する(甲49,原告本人)。
(イ)上記(ア)に認定した事実に照らすと,原告は,原告補助参加人が今後行う事業のうち,建築関連のものにつき,建築士であって建築に関するアドバイザーであるCからアドバイスを得るために,同人が経営するh社との間で顧問委託契約を締結したものであり,その意思決定の前提となる事実に不注意な誤認があるものとは認められず,意思決定の過程及び内容にも,著しく不合理な点があるとはいえない。また,顧問料の額についても,著しく不合理というべき事情は認められない。
被告は,「C」なる者が原告に宛てたメールが添付された原告名義のメール(平成18年1月31日付け。乙37)を提出し,これに,「契約書製作し直しました。月額205,000円(税込)です。内訳は,風水の顧問契約は月額10万円(税込)です。不動産の方は月額105,000円(税込)です。」との記載があること等を根拠に,h社は風水占いを行う会社であり,同社との契約は,原告補助参加人の業務とは無関係であると主張する。しかし,原告は当該メールの存在についても「分からない」と述べるところ,被告は,当該メールについても送付されたCD-ROMに入っていたという以上に,入手経路について納得のいく説明をすることができないことからすると,これが,実際にCが原告に宛てたメールであるか,また,Cが原告に宛てたメールと同一であって何ら手を加えられていないかにつき疑義があり,直ちに信用することはできず,これをもって,原告とh社あるいはCとの関係を忖度することはできないと言わざるを得ない。また,仮に,当該メールが,実際にCから原告に送付されたものであったとしても,当該メールの作成日付は,原告補助参加人とh社とが顧問委託契約を締結した日よりも後であり,「契約書を作成し直した」とあるものの,原告補助参加人とh社との間で,同日以降,顧問委託契約を改訂した事実は認められないことからすると,なお,風水占いを契約内容とする顧問委託契約が締結されたものとは認めることができない。
したがって,原告が,原告補助参加人とh社との間で顧問委託契約を締結し,顧問料を支出したことについて,原告に善管注意義務違反があるということはできない。
オ  i社との間の顧問委託契約締結等について
(ア)前記前提事実,証拠(丙5の1ないし3,丙8,27,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
Ⅰ Dは,野村證券株式会社で財務コンサルティング業務等に従事した後,独立して,i社を設立し,企業や自治体に,経営戦略立案支援,組織変革支援等のコンサルタントを行っている。D自身は,証券アナリストの資格を有している。
Ⅱ 原告は,平成17年11月1日,原告補助参加人とi社との間で,コンサルティング業務の内容を「甲(原告補助参加人)が中長期事業計画の立案に向けて検討する経営外部環境の調査分析に関する情報提供および助言」とし,期間を同日から同年12月31日まで,顧問料を月額52万5000円(税込み)とする顧問委託契約を締結し,同月19日,同社との間で,顧問料を月額35万円(税込み)に減額して,期間を平成18年1月1日から同年3月31日まで延長する合意をした。その後,原告は,同年4月1日,i社との間で,上記顧問委託契約の期間を,さらに同年5月31日まで延長することを合意した(丙5の1ないし3,丙27)。
Ⅲ Dは,上記顧問委託契約に基づき,月に数日,原告補助参加人を直接訪れるなどの方法により,原告補助参加人の企業戦略についてのアドバイスを原告に行った。
原告は,g社によるアドバイスとi社によるアドバイスの違いについて,前者は会社経営者としての見地から,後者は,投資家の見地からのアドバイスを得たと説明する(原告本人)。
(イ)上記(ア)に認定した事実に照らすと,原告は,投資家としての見地からも原告補助参加人の経営戦略において助言を得るために,i社との間で顧問委託契約を締結したものであり,i社の代表者であるDは,証券アナリストの資格を有し,財務コンサルトを業としている者であって,投資家の見地からの経営戦略に対するアドバイスにつき適切な人材であることからすると,原告のi社との間の顧問委託契約締結に至る前提事実につき,特段の誤認はなく,意思決定の過程及び内容が著しく合理性を欠くものということはできない。そして,上記の顧問料の額及び原告がDから,経営戦略に関するアドバイスを得ていることに照らすと,上記の顧問委託契約に基づく顧問料の支払も,不合理とはいえない。
被告は,i社との間の契約内容が「中長期事業計画」という極めて抽象的なものであるから,これに対して多額の報酬を支払う旨の原告の意思決定が著しく不合理であると主張するが,「中長期事業計画」の策定もまた,取締役の企業経営に関する判断の一環であると解されることからすると,上記は,顧問委託契約の内容として相当であって,不合理ということはできないから,上記の被告の主張は採用できない。
したがって,原告が,原告補助参加人とi社との間で顧問委託契約を締結し,顧問料を支出したことについて,原告に善管注意義務違反があるということはできない。
カ  本件各顧問委託契約の締結について
被告は,原告が,同時期に,類似する複数の顧問委託契約を締結していることは,到底一つ一つの契約の必要性を精査しているとはいえず,著しく不合理であると主張する。しかし,上記認定のとおり,原告が,Aらと締結した本件各顧問委託契約は,それぞれ,その意思決定の過程及び内容に著しく不合理である点は認められないのであり,本件顧問料の個別の額のみでなく,その総額も,当時の原告補助参加人の収益状況に照らし,著しく不相当であるとはいえないから,これらを同時期に締結したとしても,そのことにより,本件各顧問委託契約を締結したという原告の意思決定を著しく不合理ということはできない。
したがって,本件各顧問委託契約を締結し,本件顧問料を支出したことを全体として考慮しても,原告に善管注意義務違反があったということはできない。
2  争点(1)イ(j産業に対する賃貸管理料の支払が善管注意義務違反であるか)について
(1)  前記前提事実,証拠(甲17,19,20,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
ア j産業は,原告補助参加人の本店所在地と同一の住所に本店を置き,原告を代表取締役とする昭和59年に設立された会社であり,動産及び不動産の賃貸並びに管理及び売買を目的とする会社である(乙2)。しかし,同社は,もともと,原告補助参加人の株式を多数保有させ,原告補助参加人の創業者一族における相続発生時の株式の分散を防ぐことにより,原告補助参加人の株主構成を安定させ,ひいては経営を安定化させるために設立された会社であった(弁論の全趣旨)。
イ 原告補助参加人とj産業との間で,原告補助参加人が所有する賃貸物件につき,平成14年に締結された管理委託契約が存在するところ,同契約によりj産業が行う管理業務の内容は,当初契約では,共益費管理及び「エレベータ点検,浄化槽点検,共用部分清掃,水道光熱(費)検針,町内会費徴収」であり,これに対する管理委託費は,管理対象物件の毎月の共益費収納額となっていた(甲19)。その後,平成17年1月1日に締結された変更契約では,管理に要する費用の負担区分を変更した上で,j産業の管理委託費を,管理対象物件の毎月の家賃相当額に3%を乗じた額と,毎月の共益費の収納額の合計に増額した(甲20)。
ウ しかしj産業には,当初,従業員は存在せず,上記管理委託契約に基づく実際の管理業務は,原告補助参加人の従業員が兼務で行っており,j産業が自社社員を採用するようになったのは,平成21年であった(丙53)。原告補助参加人の従業員が行った業務に対するj産業から原告補助参加人に対する支払は,相殺計上されている事務代行手数料(乙41の1ないし5)であると解される。
エ 原告補助参加人は,上記の事務代行手数料等を差し引いた差額を,j産業に支払っていた。平成16年6月期から平成20年6月期までの間に,原告補助参加人からj産業に対して支払われた業務委託費の合計は2481万7292円となる。
(2)  上記(1)に認定の事実に照らすと,原告は,平成14年から平成20年までの間,従業員がおらず,j産業として必要な事務や業務は原告補助参加人の従業員が兼務で行っているという状態の下で,j産業と原告補助参加人との間で管理委託契約を締結し,管理委託料を支払っていたものと認めることができる。そして,j産業から原告補助参加人に対しては事務代行手数料が支払われているものの,j産業が取得する管理委託料と事務代行手数料との差額は多額であるところ,j産業にこれを収受させるべき実態があるものとは解されないから,結局,実態のない会社との間で管理委託契約を締結し,管理委託料を支払ったものというべきであり,j産業との間で管理委託契約を締結して管理委託料を支払った原告の決定は,前提となった事実認識に誤りがある,あるいは,その内容において著しく不合理というべきである。
原告及び原告補助参加人は,j産業には,清掃業務の品質管理,空き室対策,既存客定着についてノウハウを有していると主張し,その内容として種々証拠を提出する(丙22,23,60ないし62,63の1,2,丙64ないし68,原告本人)。しかし,その内容は,いずれも平成20年以前は,原告補助参加人の従業員が行っていたものであり,それらをもってしても,当該従業員ないしは原告補助参加人を離れてj産業に固有のノウハウがあったものとは解されないから,上記の原告及び原告補助参加人の主張は採用できない。
また,原告および原告補助参加人は,j産業の経費削減のために原告補助参加人の従業員を使用したと主張するが,その内容は原告補助参加人に利益となるものではない以上,そのことをもって,原告補助参加人の取締役の善管注意義務が免れられるものということはできない。このことは,j産業が原告補助参加人の安定株主対策のために設立された会社であることを考慮しても,何ら変わるものではない。
以上によれば,原告が,原告補助参加人とj産業との間で管理委託契約を締結し,管理委託料を支払ったことについて善管注意義務違反があるということができ,したがって,平成16年6月期から平成20年6月期までの間に原告補助参加人からj産業に対して支払われた業務委託費合計2481万7292円は,原告の善管注意義務違反により生じた原告補助参加人の損害となる。
3  争点(1)ウ(本件交際費の支出が善管注意義務違反であるか)について
(1)  被告は,原告補助参加人の総勘定元帳に記載された交際費の相手科目の記載内容をもって,これが原告の私的使用,自己飲食であることが強く疑われる,あるいは,平成18年6月期の交際費の額が,前後の期に比して高額となっているとして,支出が善管注意義務違反と主張する。
しかし,総勘定元帳に記載された内容,個別の額及び総額を検討してもなお,これが原告補助参加人の業務と関連なく支出されたものとは認めるに足りず,このことは,前後の期の交際費の額との比較においても,同様である。その他,上記交際費の支出が著しく不合理であることを認めることのできる客観的な証拠はない。
被告は,本件交際費のうち,「講演会費 b社」,「講演会費・その他交際費」,「講演会費」と記載されたものにつき,いわゆる総会屋に対する利益供与であると主張する。これにつき,原告は,当該支出は著名人の講演会テープを購入したものであるが,相手方が取引相手として不適切な者であることを警察から聞いた後は直ちに支出を停止しているというのであり(丙53,原告本人),被告提出の証拠(乙44の3)によっても,b社は,名古屋市内において,著名な評論家等を招いて「時局講演会」を年数回開催しているというのであるから,上記の原告の説明は一応首肯することができ,したがって,上記の支出についても,著しく不合理ということはできない。
(2)  したがって,本件交際費の支出につき,原告に善管注意義務違反があるとは認めることができない。
4  争点(1)エ(aマンション1404号の賃借及び本件モデルルーム関係費用の支出が善管注意義務違反であるか)について
(1)  前記前提事実,証拠(甲21,丙11ないし14,17,53,原告本人)および弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 原告補助参加人は,平成18年1月ころ,aマンション1404号を,期間・平成18年1月から平成19年3月までの約定で賃借し,同室について,本件モデルルーム関連費用を支出した。
イ 原告は,平成18年1月以降約5か月間,この部屋に居住したほか,原告補助参加人としても,名古屋市内における役員会等の会場,応接室等として同室を利用していた。
ウ 原告は,小規模社宅の賃料相当額として合計8万2429円を,原告補助参加人に支払った(丙14)。
エ 原告および原告補助参加人は,この賃借につき,当時原告補助参加人が名古屋市中区丸の内で計画をしていた高級老人ホームおよび高級老人向けマンションの実験,テストルーム,モデルルームとして賃借したと主張し,原告も同趣旨を述べる(丙53,原告本人)。また,原告を含む原告補助参加人の役員は,連名で,使用目的を,被告の名古屋市内役員室・応接室,当時事業目的としていた高級老人ホームおよび高級賃貸マンションのモデルルーム等として,aマンション1404号の賃借を取締役会で承認したことに相違ないとする書面を提出する(甲21,丙11)。
(2)  上記(1)に認定した事実によれば,高級老人ホームあるいは高級賃貸マンションの計画のためにわざわざテストルームを賃借する必要があったのか,また,未だ具体的な計画が確定していない段階で,将来,モデルルームとして使用する部屋を賃借しなければならない必要があったのかなどの疑義はあるものの,原告がaマンション1404号を賃借したことにつき,その前提となる事実認識の誤りがあるものではなく,意思決定の過程及び内容に著しく不合理な点があるとまではいうことができない。
これに対して,被告は,原告から原告補助参加人経理担当者に宛てたメール(乙31)を提出し,原告に代わって原告補助参加人がマンションを購入する必要性が認められなかったために,賃借であれば説明がつきやすいと考えて,aマンション1404号を原告補助参加人に賃借させることとしたものであり,同物件は,もっぱら原告の個人使用を目的とするものであると主張する。しかし,原告が居住するマンションを原告補助参加人名義で社宅として取得することが検討されていたことが事実であるとしても,これをもって,直ちに,その後,原告補助参加人名義で賃借した建物が,原告の個人使用のみを目的とするものであるとまでは認められず,上記のとおり,現に,aマンション1404号は役員会等にも利用されていることからすると,上記の被告の主張は採用できない。
また,被告は,原告及び原告補助参加人の準備書面等の記載が変遷していること等をもって,高級老人ホームあるいは高級賃貸マンションのテストルームあるいはモデルルームという取得目的は信用できないと指摘する。確かに,原告補助参加人は,本件訴訟の当初,新事業を断念した後に,社宅及び役員会議室として使用したと主張していたが,これは,賃貸借契約の開始時期と原告の居住開始時期及び役員会がこの部屋で行われるようになった時期とを考えると,誤記と解することができ,また,原告及び原告補助参加人が,当時,名古屋市丸の内所在の所有地に建築するビルにおいて,高齢者対応型賃貸マンションの計画を有していたことは,被告が提出する文書にも記載されていること(乙51,66の2)からすると,テストルームあるいはモデルルームとの原告及び原告補助参加人の説明も,直ちに虚偽であるとはいうことができない。
(3)  したがって,aマンション1404号の賃借につき,原告に善管注意義務違反があるということはできない。
5  争点(1)オ(本件本社建物等建築費のうち見積りを超える金額の支出が善管注意義務違反であるか)について
(1)  前記前提事実,証拠(甲22,丙15,28ないし31,56,57,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 原告補助参加人は,愛知県小牧市に建設予定の本社建物・倉庫につき,請負先であるkリース株式会社から,平成16年4月28日,3236万円の見積書を取り付けた(甲22)。
イ その後,原告補助参加人は,Gを設計・監理者として,同人の設計に基づく建物につき,同年12月2日に,kリース株式会社から,工事価格を事務所棟5220万円,倉庫棟306万円,値引きの上,総額で5100万円とする新たな見積りを得た(丙57)。その見積りの内容は,建物の個数,規格,規模また請負工事の内容が,先の見積りとは異なるものであった(丙15)。
ウ 原告補助参加人は,平成17年1月ころ,kリース株式会社との間で,請負代金額を5100万円(消費税別)とする工事請負契約を締結した(丙56)。
(2)  被告は,上記(1)アの見積価格を超える同ウの代金部分の支出について,原告の善管注意義務違反を主張する。しかし,上記認定のとおり,上記(1)アの見積りと,実際に工事請負契約を締結した工事(同ウの見積り)とは,その内容を異にするのであり,建物建築において,計画当初から実際に建築請負契約を締結する時期までに,種々検討の結果,内容が変更され,これにより請負代金が増額となることは十分に予想されること,原告及び原告補助参加人が当初の見積額に拘束されなければならない事情も特段認められないことからすると,当初の見積りと実際の工事代金額が異なっていることから,直ちに,当該工事代金の支出が必要のないものであって,これを支出する旨の原告の決定に,著しく不合理な点があるということはできない。
被告は,「建築総予算5000万円とする。設計費用は,500万円。この中に山下の風水設計・エクステリア計画・施工アドバイスも含む。」との記載のあるメール(平成16年9月8日付け。乙28)等を提出して,原告は,当初の見積り後に,原告の友人らを関与させて建築総予算を増額したと主張する。しかし,当該メールの内容を直ちに信用するこができないことは,被告がCD-ROMに入って送られてきたと主張する他のメールと同様であり,また,仮に,当該メールが実際に送付されたものであるとしても,最終的に締結された建築請負代金が不相当に増額されたことを認めることのできる証拠はない。
被告は,原告補助参加人が,平成20年ころに本社を名古屋市内に移転することが決定していたのにもかかわらず,本社建物を建築すること自体,合理性がないとも主張し,本社移転の根拠としてメールを提出する(平成17年11月23日付け及び12月6日付け。乙51,52)。しかし,当該メールも,原告は分からないあるいは記憶がないと述べるところ,これも上記のメール同様,被告が入手した経緯について納得のいく説明がないことからすると,直ちにこれを信用することはできない。また,仮に,当該メールが実際に原告により作成されたものであったとしても,その作成時期及び内容に照らすと,上記の建築請負契約が締結された当時に,原告補助参加人が,当該建物を数年内に使用しなくなることを予定していたものとは解されないから,これをもってしても,上記の被告の主張も理由がない。
被告は,さらに,倉庫建設の必要性はないとも主張するが,事業用建物の建設,取得あるいはその内容は,多分に当該企業の将来展望を考慮の上なされるものであることからすると,経営判断の一環をなすものであって,取締役の裁量に属するものであり,したがって,これが善管注意義務違反というためには,上記のとおり,前提となった事実認識に不注意な誤りがある,又は,その決定の過程及び内容が著しく不合理であると認められる場合に限られるところ,被告の指摘するところによっても,原告の決定に前提となった事実認識についての不注意な誤りがある,又は,その決定の過程及び内容が著しく不合理であると言うべき事情は認められない。
(3)  したがって,本件本社建物等建築費の支出に関しても,原告に善管注意義務違反があるということはできない。
6  争点(1)カ(△△ラボ用地の取得が善管注意義務違反であるか)について
(1)  前記前提事実,証拠(丙53ないし55,証人A,同H,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 原告は,△△ラボ用地を取得した理由につき,原告補助参加人の将来構想である,理念的,根源的な研究や自転車事業の基礎となる技術養成,デザイン研究などの設備(「△△ラボ」)の候補地,あるいは,小規模老人ホームのテスト実験の可能性等として先行取得したと述べる(丙53,原告本人)。
イ Aは,原告及び原告補助参加人に対して,今日の自転車業界においては,技術面で商品の差別化を図ることは困難であり,デザインにおいて商品の差別化を図る戦略が効果的であること,原告補助参加人の将来の戦略として,デザイン力の強化に力を入れるべきと意見を述べ,世界の著名なデザイン研究所は,辺鄙で静かなところにあると話したことがあり,これが△△ラボ用地の取得につながったと考えている(丙55,証人A)。
ウ 当時の原告補助参加人の取締役のひとりであったHは,当初,原告補助参加人が事業を拡散することに懸念を覚え,△△ラボ用地の取得に反対したが,その後,Aの説得を受けて,賛成に転じた(丙54,証人H)。
(2)  上記(1)に認定した事実によれば,原告は,原告補助参加人の将来の事業構想のひとつとしてデザイン研究所を考え,その用地の先行取得として△△ラボ用地を取得したものであり,その前提となった事実認識に特段不注意な点があるとは認められず,その決定の過程及び内容に著しく不合理な点があるとも認められない。なお,被告は,取締役であるHが反対しているにもかかわらず△△ラボ用地の取得を決定したとして,決定の過程に瑕疵があるとの趣旨も主張するが,上記のとおり,Hは当初は反対していたものの,その後,賛成に転じたというのであるから,上記の被告の主張は採用することができない。
被告は,△△ラボ用地が温泉受湯権付きで売買されていること,原告が,△△ラボを「私の個人的な夢」と述べていることから(乙18),△△ラボ用地の取得は,原告の個人的な夢と利用のために決定されたものと主張する。しかし,温泉受湯権が付されていることをもって,原告が個人的な利用を意図していたものと解することはできず,会社経営者の個人的な夢と当該会社の将来の事業構想が重なることは,十分にありうることであり,それが会社経営者個人の夢でもあることをもって,直ちに会社にとって利益とならない,不合理な意思決定ということはできないから,上記の被告の主張は採用することができない。
被告は,また,△△ラボ用地は,商業その他営利事業を営むことは禁止されており,高齢者施設や研究所施設を建築することは不可能であるとして,△△ラボ用地の管理会社との間の管理規約(乙82)を提出する。しかし,管理規約9条は,ペンション,飲食店,営業施設の建築を禁止し,同15条は,商業その他営利事業を営むことを禁止するものの,「別荘,住宅,保養所,研修所」の建物建築は認められていることからすると,原告及び原告補助参加人が述べるデザイン研究所や小規模老人ホームの建設が一概に禁止対象に当たるものとは解されないから,上記の被告の指摘を持ってしても,原告の意思決定の前提事実に不注意な誤りがあるということはできない。
(3)  したがって,△△ラボ用地の取得につき,原告に善管注意義務違反があるということはできない。
7  争点(1)キ(本件車両の購入が善管注意義務違反であるか)について
(1)  前記前提事実,証拠(丙53,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 原告補助参加人は,平成18年2月24日,マツダロードスター1台(代金273万2027円)及び日産ムラーノ1台(代金439万5689円)を購入した。
イ 原告補助参加人は,同年7月31日,このうちマツダロードスターを170万円で売却し,同年11月24日には,日産ムラーノを267万8900円で売却した。
ウ 原告は,本件車両の購入目的につき,日産ムラーノは,△△ラボと高齢者向け高級賃貸マンションや有料老人ホームとの間を行き来することを主目的に,マツダロードスターは,高齢者向け高級賃貸マンション等のイメージを見込み客にアピールすることを主目的に購入したものであると説明する(丙53,原告本人)。
エ 実際には,日産ムラーノは,原告補助参加人の女性従業員が,マツダロードスターは,原告が,ガソリン代を負担して使用し,保管していた(原告本人)。
(2)  前記4及び6並びに上記(1)で認定した事実によれば,原告は,長野県安曇野市で取得した△△ラボ用地への往復や,名古屋市中区丸の内で計画されていた老人向け高級賃貸マンション等の見込み客へのアピールを主目的として購入したというのであり,現にこれらの計画が存在したことが認められる以上,この時期に購入することの相当性といった点では,なお,問題となる余地はあるものの,原告の意思決定の前提事実に不注意な誤りがあるということはできず,また,その決定の過程及び内容に著しく不合理な点があるとも認められない。
被告は,具体的な使用計画書を策定せずなされた本件車両の購入の決定は,車両の必要性を精査して行われたものとは言えず,著しく不合理であると主張するが,車両等を購入する際に,具体的な使用計画書を作成して検討することが必ずしも必要とまでは解されず,これがないことのみをもって,購入の決定が著しく不合理ということはできない。
被告は,また,原告名義のGに宛てたメール写し(乙35)をもって,本件車両はGが使用する車両として購入したことが明らかである,原告補助参加人がマツダロードスターを売却したのが平成18年7月31日であるのに対して,計画されていた事業の断念が平成18年12月であること(甲21)からしても,マツダロードスターは新事業とは関連がないとも主張する。しかし,原告は当該メールの記憶がないと述べるところ,被告は,このメールの入手経路を明らかにしないことからすると,これをもって,原告の本件車両の購入動機を忖度することはできないといわなければならない。また,仮に,上記のメールが原告の作成によるものであるとしても,原告は,Gに対して,車両を使用できるが専用ではないと述べているのであり,このことからすると,当該メールをもってしても,本件車両が,社外のGのために購入されたものということはできない。さらに,平成18年12月は,新事業の断念が取締役会で決定された時期であるから,これよりも5か月前にマツダロードスターが売却されていたことをもって,新事業との関連性のないことが明らかとまでいうことはできない。
(3)  したがって,本件車両の購入が,原告の善管注意義務違反ということはできない。
8  争点(1)ク(第3864号事件の印紙代支出が善管注意義務違反であるか)について
被告は,原告補助参加人が第3864号事件の印紙代を負担したことをもって,原告の善管注意義務違反を主張する。
しかし,証拠(甲35,36)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,その後,原告補助参加人との間で,第3864号事件のうち原告補助参加人の利害と関係する債務不存在部分の訴訟費用につき,原告と原告補助参加人が折半で負担し,その余は原告の負担とするのが相当との結論に達し,第1915事件の訴状送達前である平成20年10月23日に,原告が,原告補助参加人に対して,20万5000円を支払い,原告補助参加人がこれを受領したことが認められるのであり,債務不存在部分の訴訟費用の負担を,原告と原告補助参加人とで折半と合意したことにつき著しく不合理であると言うべき事情もないから,当初の原告補助参加人の印紙代負担が,原告の善管注意義務違反に当たるとしても,既に,原告補助参加人の損害は填補されたというべきである。
9  争点(2)(被告の言動は原告の名誉を毀損するものか)について
(1)  別紙一覧表①ないし ,同 のうち「社長本人の横領事件もある」との部分及び同 に記載のとおり,被告が,文書及び電子メールの送付並びにインターネット上への書込みを行い,また,原告補助参加人株主総会での発言,原告補助参加人及び株式会社p組への架電を行ったことは,当事者間に争いがない。
(2)  株式会社p組のKが,被告から電話を受けた際の内容を記載したメモ(甲48)には,別紙一覧表 のうち「18年のe社との契約の時も社長本人がお礼を受け取っている」との文言の記載があることが認められる。しかし,被告の平成20年2月前後の他の言動(甲4,12,13)に照らすと,被告は,「原告がe社へのお礼との名目で,私用の物品購入費用を原告補助参加人に負担させた」との主張を繰り返していたものであり,他に,当時,被告が,原告について,取引先から違法に物品を受領しているとの批判をしていた形跡はないことからすると,上記のメモによっても,被告が,上記の記載のとおりの発言をしたと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(3)  証拠(甲4,32,40,乙19)によれば,別紙一覧表⑪,⑭及び⑲に記載の文言は,いずれも,当該文言自体によっても,また,その前後の文言(ただし⑪については,他に交わされた文言があるものと認めることのできる証拠はない。)を合わせ考慮しても,なお,これをもって,原告の社会的評価を低下させるものとまではいえない。
(4)  証拠(甲2,6ないし8,13,15,27,28,30,37ないし39,41ないし49,乙5,6,丙1,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,その余の,別紙一覧表①ないし⑩,⑫,⑬,⑮ないし⑱,⑳ないし ,同 のうち「社長本人の横領事件もある」との部分及び同 に記載の被告の言動は,いずれも,原告の名誉を毀損する行為であると認めることができる。
10  争点(3)(違法性阻却事由の存在)について
(1)  公共の利害に関する事実であるか
前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,原告補助参加人は,株式を公開している上場会社であり,原告はその取締役の職にある者であるから,その原告の業務に関する行為は,公共の利害に関する事実ということができる。そして,上記の名誉毀損行為に当たる摘示は,いずれも原告の業務に関する行為に係る摘示であるから,公共の利害に関する事実ということができる。
原告は,会社の規模や株主数が少ないこと等をもって,公共の利害に関する事実に当たらないと主張するが,上記のとおり原告補助参加人は上場会社であることからすると,会社の規模や,現に存する株主の数にかかわらず,原告の地位は公的なものということができ,したがって,原告の上記の主張は採用できない。
(2)  被告に公益目的があるか
ア 前記前提事実,証拠(甲2,4,6ないし8,13,15,27,28,30,32,37ないし49,乙5,6,19,62,丙1,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告による上記の名誉毀損行為に当たる摘示は,原告が,原告補助参加人に対して損害を与える行為をしている,あるいは,原告に原告補助参加人の代表取締役としての能力がないというものであり,被告は,原告補助参加人の株主として,原告の行為により原告補助参加人の企業価値が低下した,あるいは,その虞があると考え,原告の不適切な行為の存在を訴えるなどして職務執行停止や解任を求め,インターネット上の上場会社に関する情報を記載することのできる掲示板に書込みをするなどしたものと認めることができ,これらに照らすと,被告には,公益目的があったものと認めることができる。
イ 原告は,被告の真の目的が,原告への誹謗中傷を繰り返すことにより,被告が所有する原告補助参加人の株式を高値で買い取らせることにあったと主張し,現に,本件訴訟係属中に,被告が,その所有する株式を高値で買い取るよう要求したと指摘する。
証拠(乙46,78)及び弁論の全趣旨によれば,原告が第3864号事件を提起した後に,被告は,本件訴訟手続を被告代理人弁護士に委任し,被告代理人弁護士は被告の代理人として,愛知県弁護士会紛争解決センターに,原告補助参加人及び原告ほか新旧の原告補助参加人の取締役,監査役全員を相手方として,あっせん・仲裁の申立てを行ったこと,同申立てにおいて,被告は,あっせん・仲裁手続の場で,原告の辞任を含む,原告補助参加人の「法令遵守を前提とした効率的な経営システムの樹立」について協議の上,しかるべき合意をすることを求め,これが入れられない場合には,原告補助参加人が,全株主に対し,しかるべき価額で株式を買い付ける旨の意思表示をするよう求めたこと,これに対して,原告補助参加人は,あっせん・仲裁手続の場で経営システム等について協議や合意をすることはできない,株式買付けの意思表示を求めるとはどのような趣旨か,対価についても明示せよと答弁したことから,被告は,自己の計算によれば1株当たりの会社資産は1株1000円を超えるから,会社を継続するのであれば,1株700円,会社を解散するのであれば1株500円(いずれも当時の原告補助参加人の株式の市場価格を上回る額)との考えを示し,あっせん・仲裁手続が決裂したこと,その後,被告が第1975号事件の訴え提起をしたことが認められる。これらの経緯,特に,被告が原告補助参加人の新旧役員全員をも相手方としてあっせん・仲裁手続を申し立てていることに照らすと,上記の申立てのうち「経営システムの樹立」についての協議,合意の申し入れは被告の真意ではなく,被告の真意は,あっせん・仲裁手続において株式買取交渉をすることにあったとまではいうことができず,したがって,被告の名誉毀損行為の真の目的が,原告への誹謗中傷を繰り返すことにより,被告が所有する原告補助参加人の株式を高値で買い取らせることにあったともいうことはできず,他に原告の指摘する事情を考慮してもなお,これを認めることはできず,他に原告の主張を認めることのできる客観的な証拠はない。
(3)  事実が真実であること又は真実と信じるについて相当の理由があるか
ア 「原告が背任・横領・会計操作をした」との内容の摘示(別紙一覧表①,④,⑤,⑥,⑩,⑫,⑬,⑮,⑰, , 。ただし,⑤の「該当箇所」欄の下から2行目に「既存」とあるのは「毀損」の,⑩の「文書の標目」欄に「甲29」とあるのは「甲30」の,⑬の「該当箇所」欄の最終行に「同上」とあるのは「p9」の,各誤記であると認められるから,これを訂正する。)及び「原告が従業員にプレゼントしたエルメスのハンドバッグを皮革サンプルとして偽装計上させ,代金を横領した」との摘示(同③,⑥,⑦,⑬,⑮,⑯,⑰, , , )について
(ア)原告補助参加人の総勘定元帳中に,研究費として,平成18年2月28日付けで「現金 サンプル代 社長 549690円」との支出の記載があるところ(乙7),当該支出が,原告が当時の従業員に贈与するために購入したエルメスのハンドバッグの代金であること,被告が,別紙一覧表①及び④の各文書を原告補助参加人の監査役に送付した後である平成19年6月12日に,原告が,原告補助参加人に対して,上記記載の金額を返金処理したことは,証拠(乙80)及び弁論の全趣旨により明らかである。
しかし,原告は,原告が海外出張中に,自己名義のクレジットカードが使用できなかったために,やむを得ず原告補助参加人名義のクレジットカードを使用したが,出張旅費の支払と相殺する形で精算し,原告補助参加人に損害は与えていない,経理担当者が誤って研究費にサンプル代として計上してしまい,かつ,原告が相殺により原告補助参加人に返済した証拠も残っていなかったため,再度返金処理をしたと主張し,原告も同趣旨を述べるところ(丙53,原告本人),原告の述べるところが著しく不自然であって信用できないとまではいうことができず,他に,これが虚偽であって,原告の私用の物品購入につき,原告が故意に原告補助参加人に支出させ,研究費として計上させたことを認めることのできる客観的な証拠はない。したがって,原告の横領行為が真実であることを認めることはできない。
(イ)被告は,ⅰ総勘定元帳に記載があること,ⅱ原告が返金をしたことをもって,「原告が背任・横領・会計操作」をしたとの摘示及び「原告が,従業員にプレゼントしたエルメスのハンドバッグを皮革サンプルとして偽装計上させ,代金を横領した」との摘示につき,真実であると信じたことに相当性があると主張するが,上記のとおり,原告が原告補助参加人に返金をしたのは,別紙一覧表①及び④の摘示より後であることからすると,上記ⅱの事由は別紙一覧表①及び④の摘示について真実であると信じたことの相当性の根拠とすることはできず,上記ⅰの事由のみでは,上記の各摘示につき真実であると信じたことの相当性の根拠の根拠とはなり得ない。そして,上記ⅰ及びⅱの事由をもってしても,なお,一般人をして原告が横領行為を行ったことが真実であると信じることが相当であるということはできない。
被告本人は,このほか,原告補助参加人の元従業員であり,原告がエルメスのハンドバッグを贈与した者から聴き取りをしたとも述べる(丙53,被告本人)。しかし,上記の研究費の記載が,誤記ではなく原告の故意によるものであるか否かにつき,元従業員がどのように述べていたのかは不明であり,このことと,被告が聴き取りをしたと述べる時期は,元従業員が原告補助参加人を退職し,原告及び原告補助参加人と敵対関係にあったことを併せて考えると,これをもってしても,なお,原告が横領行為を行ったことにつき,真実であると信じることが相当であるということはできない。
イ 「原告が会計操作を行い,自転車事業の黒字を装っている」との摘示(⑥,⑫,⑬, )について
(ア)証拠(丙18)及び弁論の全趣旨によれば,原告補助参加人は,平成17年6月期において当期純利益を計上しているものの,自転車事業部門は赤字であったことが認められる。
被告は,同期の自転車部門の赤字額が大きいこと(乙23),原告が,同期の部門別損益計算書を開示せず,自転車事業を継続したこと,過去には部門別損益計算書を作成していた時期があることをもって,上記の摘示は真実であるとする。しかし,被告が過去の部門別損益計算書として指摘する文書(乙47の2)は,その記載内容から,内部的な期中の「部門別営業利益」の集計に過ぎないことが明らかであり,また,当時の原告補助参加人の取締役であり,現在,原告補助参加人の税理事務を担当する公認会計士・税理士であるHによれば,上記の文書(乙47の2)は,その内容も,販売費,一般管理費が適切に各部門に振り分けられていない点で不適切なものであって,原告補助参加人のような小規模な会社では,この振り分けを適切に行うことが難しいため,正確な部門別損益計算書を作成することは困難であるというのであり(証人H),これらを併せ考えると,被告の指摘するところをもってしても,なお,原告に「会計操作」があったとも,「自転車事業の黒字を装った」とも,いうことができず,他にこれを認めることのできる客観的な証拠はない。
(イ)また,原告補助参加人の自転車事業の赤字額が大きいこと,過去に「部門別営業利益」の集計を作成していたことをもって,原告に「会計操作」があったこと及び「自転車事業の黒字を装った」と被告が信じたことにつき相当性があるということはできず,他にこれを認めることのできる客観的な証拠はない。
ウ 「原告が,実体の不明な会社(j産業)と取引をしている」との摘示(⑮, 。ただし, の「該当箇所」欄の上から5行目に「同上」とあるのは「p7」の誤記であることが明らかであるからこれを訂正する。)について
上記2に認定のとおり,j産業には平成20年以前に従業員はおらず,業務委託料と事務代行手数料との差額を取得することのできる実態がないこと,そうであるのに,原告が,原告補助参加人とj産業との間で業務委託契約を締結して,業務委託料を支払っていたことを認めることができ,そうすると,上記の被告の摘示事実は,真実であるものと認められる。
エ 「Z自転車名義で借りた賃貸マンションに,原告が居住していた」との摘示(⑥,⑬, )について
(ア)上記の事実摘示は,当該文書全体の内容に照らすと,原告が,自己が個人的に使用するための部屋を,原告補助参加人名義で賃借させ,不当に諸費用を支払わせているとの趣旨をいうものと解されるが,これが真実であるとは認められないことは,前記4に認定したとおりである。
(イ)被告は,aマンション1404号の賃借前に,原告が原告補助参加人名義で原告の居住用マンションを購入することを検討したが,原告補助参加人の担当者から必要性につき疑義が出されたことを窺わせるメール(乙31)があることをもって,真実であると信じるにつき相当性があると主張する。しかし,前記4(2)に認定のとおり,同メールをもってしても,直ちに,その後原告補助参加人名義で賃借した建物が原告の個人使用のみを目的とするものであるとまでは認められないから,これをもって,真実であると信じるにつき,相当性があるということはできない。
また,被告は,上記摘示事実につき,原告補助参加人の元従業員からの聴き取りにより知ったと述べるが(被告本人),その際に,同従業員が,原告から同居を求められたが拒否したとの話も聞いていることからすると,同人が原告と良好な関係を有していたものではないことは容易に知りうることがらであり,したがって,同従業員の言をもってしても,なお,真実であると信じるにつき,相当性があるということはできない。
オ 「原告が事務所建築費を浪費してZ自転車に損害をもたらした」との摘示(⑥,⑬, )について
(ア)上記の摘示が真実とはいえないことは,前記5で認定したとおりである。
(イ)被告は,メール(乙29),当初見積書(甲22)を根拠に,真実であると信じるにつき相当性があると主張する。しかし,当該メール自体が当時被告の手元に存在したのか,当該メールの入手経路等,当該メール自体が信用することのできるものであるかは明らかではなく,また,当該メールの内容によっても,直ちに,不当に建築請負代金が増額されたものと信じるにつき,相当性があるとまでいうことはできない。
カ 「原告はZ自転車の資金を使い,原告の個人的な夢である△△ラボ建設用地を750万円で購入した」との摘示(⑥,⑨,⑬,⑮。ただし,⑮では「700万円で購入」と摘示。)について
(ア)上記の摘示は,当該文書全体の内容に照らすと,原告が,原告補助参加人の利益にはならないにもかかわらず,自己の夢を実現するために,当該土地を不当に購入したとの趣旨と解されるところ,これが真実であるといえないことは,上記6に認定したとおりである。
(イ)被告は,△△ラボが夢であるとの原告のインターネット上の言(乙18),当時の取締役が反対意見を述べていたことを窺わせるメールの存在(乙34)を根拠に,真実であると信じるにつき相当性があると主張する。しかし,原告が個人の夢と述べているからといって,直ちに原告補助参加人にとって不利益とはいえないことは自明であり,上記のメールの内容によっても,原告補助参加人内部で購入につき議論があったという以上に,原告が不当に△△ラボ用地を取得したことの根拠となるものとはいえず,したがって,なお,被告が上記摘示を真実であると信じるにつき,相当性があるということはできない。
キ 「原告は,G建築士をZ自転車に招集する目的で,マツダロードスターをZ自転車に購入させた」との摘示(⑥,⑨,⑬)について
(ア)上記の摘示が真実であるといえないことは,上記7に認定したとおりである。
(イ)被告は,原告とGとの間のメール(乙35)に照らし,真実であると信じたことに相当性があると主張するが,当該メールの入手経路等,当該メール自体が信用することのできるものであるかは明らかではなく,また,当該メールの内容によっても,直ちに,上記の内容が真実であると信じるにつき,相当性があるとまでいうことはできない。
ク 「原告に企業価値を毀損された」との摘示(⑤,⑥,⑫,⑬,⑰, )について
以上に認定したところによれば,上記ウの範囲で,上記の摘示は真実であるということができる。
11  争点(4)(原告の損害)について
したがって,別紙一覧表①ないし⑩,⑫,⑬,⑮ないし⑱,⑳ないし ,同 のうち「社長本人の横領事件もある」との部分及び同 に記載の被告の言動は,「原告が,実体の不明な会社(j産業)と取引をしている」との摘示及び「原告に企業価値を毀損された」との摘示部分を除き,原告に対する名誉毀損が成立し,被告は,これにより原告に発生した損害について賠償する責を負うということができる。
そして,上記のとおり,一部については真実と認めることのできる摘示が含まれていること,行為の大半は,原告補助参加人又はその監査役に宛てたもの,あるいは原告補助参加人の株主総会における発言であって,これが広く一般に流布されることがそれほど予想できないこと,他方,インターネット上の記載も一部含まれることを考慮すると,上記の被告の行為により受けた原告の精神的損害を慰謝するには,50万円をもって相当と認める。
また,上記の慰謝料の額に照らし,弁護士費用のうち5万円を相当因果関係に立つ損害として認める。
12  結論
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 堀内照美)

 

〈以下省略〉

 

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