【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(119)平成19年11月12日 東京地裁 平17(ワ)19137号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(119)平成19年11月12日 東京地裁 平17(ワ)19137号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成19年11月12日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)19137号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2007WLJPCA11128003

要旨
◆訴外会社の株主であり、被告A社との株式交換により訴外会社が吸収合併されたため被告A社の少数株主となった原告らが、本件株式交換に際し、被告AB社間の仮装取引により被告A社の企業価値が著しく高く評価されたため本来よりも遥かに少ない株式数の割当てしか受けることができず株主価値が毀損されたとして、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案において、本件認定事実からすると、被告会社同士の業務委託契約に業務の実体があったことは明らかで仮装取引とは認められない以上、不法行為の主張はその前提を欠くとして、原告らの請求を棄却した事例

評釈
小林俊明・ジュリ 1401号116頁
岩田合同法律事務所・新商事判例便覧 2843号(旬刊商事法務1849号)

参照条文
民法709条

裁判年月日  平成19年11月12日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)19137号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2007WLJPCA11128003

東京都世田谷区〈以下省略〉
原告 X1
タークスアンドケイコス諸島 グランドターク〈以下省略〉
原告 リスボア社
上記代表者取締役 A
上記両名訴訟代理人弁護士 宮下正彦
同 長井真之
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 株式会社大塚商会
上記代表者代表取締役 B
東京都大田区〈以下省略〉
被告 Y1
東京都文京区〈以下省略〉
被告 Y2
上記3名訴訟代理人弁護士 岡田淳
同 関戸麦
同 宮谷隆
同 平田厚
同 横田真一朗
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 株式会社データクラフトジャパン
上記代表者代表取締役 C
上記訴訟代理人弁護士 福田雅英
上記訴訟復代理人弁護士 山川亜紀子

 

 

主文

1  原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告らは,原告X1に対し,連帯して,金7926万5616円及びこれに対する平成16年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告らは,原告リスボア社に対し,連帯して,金7739万5368円及びこれに対する平成16年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,株式会社ピー・ティー・エス(以下「PTS」という。)の株主であった原告らが,被告株式会社大塚商会(以下「被告大塚商会」という。)と被告株式会社データクラフトジャパン(以下「被告DCJ」という。)とが仮装取引を行ったことにより,PTSと被告DCJとの株式交換に際して,被告DCJの企業価値が著しく高く評価されたために,原告らが被告DCJ株式について本来割当てを受けることができるはずであった株式数よりもはるかに少ない株式数の割当てしか受けることができず,原告らにおいて,本来割当てを受けるべき株式数と実際に割当てを受けた株式数の差に相当する額の損害等を被ったとして,不法行為に基づき,被告らに対し,連帯して,原告X1について7926万5616円及びこれに対する不法行為が行われた日の翌日以降である平成16年10月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,原告リスボア社(以下「原告リスボア」という。)について7739万5368円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実
証拠(甲1,2(断りのない限り,枝番号を含める。以下同じ。),10,11,15,19,26,乙イ3,4,10,14ないし16,26)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  原告X1は,PTSの株主であった者で,aトラストに自身の資産を信託している。
原告リスボアは,アイルランドに居住するAが平成9年ころに設立した信託会社で,同人の財産を管理しており,PTSの株式を保有していた。
PTSは,コンピューター教室の運営,コンピューターに関する企業内教育,訓練及びセミナーの開催等を目的として設立された株式会社であり,後記のとおり,平成12年9月19日付けで被告DCJの前身である株式会社ネットウェーブ(以下「ネットウェーブ」という。)と株式交換を行い,平成13年4月11日,被告DCJに吸収合併された。
被告大塚商会は,システムインテグレーション事業(コンピューター,複写機,通信機器及びソフトウェアの販売並びに受託ソフトの開発等)及びサービス・サポート事業(サプライ供給,保守,教育支援等)を主な業務とする株式会社で,平成12年に東証第一部に上場した。
被告Y2は,平成9年3月末,当時勤務していたネットワンシステムズ株式会社(以下「ネットワンシステムズ」という。)を退職した後,ネットウェーブ及び被告DCJの代表取締役に就任していたことがある者である。
被告Y1は,平成9年4月に,当時勤務していたネットワンシステムズを退職した後,ネットウェーブ及び被告DCJの取締役に就任していたことがある者である(以下,被告大塚商会,被告Y2及び被告Y1を「被告大塚商会ら」と総称する。)。
被告DCJは,平成9年5月1日,被告大塚商会らの出資により,コンピューター,通信機器,その周辺機器及び関連ソフトウェアの製造,開発,仕入,販売,修理,リース,レンタル,保守業務及び輸出入等を目的として設立された株式会社であり,設立時から平成12年9月20日までは,ネットウェーブという商号であった(以下,被告DCJ及びネットウェーブを適宜「被告DCJ」又は「被告ネットウェーブ」という。)。
データクラフトアジア・リミテッドは,シンガポールにおいて設立された会社であり,データクラフトアジア・インベストメンツ・ビー・ウィは,オランダにおいて設立された会社であって,データクラフトアジア・リミテッドの100パーセント子会社である(以下,両社を併せて「DCA」という。)。DCAは,後記のとおり,平成11年に被告ネットウェーブ及びPTSのいずれも発行済株式総数の75パーセントの株式を保有して両社の親会社となった。
Dは,オーストラリアのビクトリア州において法律業務を行うことが認められているソリシター(事務弁護士)であり,DCAに対する法律相談等の業務に従事している。
(2)  平成6年11月1日,PTSが設立され,原告X1は,遅くとも平成7年5月に,Aは,遅くとも平成8年6月に,それぞれPTSの取締役に就任した。
(3)  平成9年5月1日,被告大塚商会らの出資により,被告ネットウェーブが設立され,被告Y2が代表取締役に就任したほか,被告Y1も取締役に就任した。その出資金額(株数)は,被告大塚商会が2億円(4000株),被告Y2が7500万円(1500株),被告Y1が2500万円(500株)で,合計3億円(6000株)であった。
(4)  被告大塚商会及び被告ネットウェーブは,平成9年12月19日付けで被告ネットウェーブが被告大塚商会に対して業務を提供する旨の業務委託契約(以下「NIC業務委託契約」という。)を締結したほか,①平成11年7月1日付け,②平成12年7月1日付け,③平成13年7月1日付けで,それぞれ,被告ネットウェーブが被告大塚商会に対して業務を提供する旨の3通(営業支援に関するもの,ネットワークに関する販売促進支援に関するもの及び技術支援に関するもの)の業務委託契約書を取り交わした(以下,上記①ないし③の業務委託契約書を総称して「本件業務委託契約書」といい,そこに表象される契約を総称して「本件業務委託契約」という。)。上記③の業務委託契約書には,被告大塚商会と被告ネットウェーブとの間の業務委託の期間は,平成13年12月31日までとされている。
被告大塚商会が本件業務委託契約書に基づいて被告ネットウェーブに対して支払った業務委託代金(以下「本件業務委託代金」という。)は,総額4億8000万円であり,これにNIC業務委託契約に基づく業務委託代金を加えると,総額5億4600万円となる。
(5)  平成11年7月28日,被告大塚商会は保有している被告ネットウェーブ株式のうち3000株を,被告Y2は同じく1050株を,被告Y1は同じく450株を,それぞれDCAに対して売却(以下「本件NW株式譲渡契約」という。)し,これにより,DCAは,被告ネットウェーブの発行済株式総数の75パーセントを保有することになった。本件NW株式譲渡契約においては,代金の一部を被告ネットウェーブの将来時点の業績に応じて変動させる旨の代金調整条項(以下「本件代金調整条項」という。)が設けられた。
DCAは,同年12月14日,PTS全株主との間でPTS株式300株の株式売買契約(以下「本件PTS株式譲渡契約」という。)を締結し(実行されたのは平成12年1月である。),これにより,PTS株式についても発行済株式総数の75パーセントを保有するに至った。この際,原告X1は,この時点で保有していたPTS株式80株のうち60株を,原告,リスボアは,この時点で保有していたPTS株式84株全部を,それぞれDCAに売却し,原告X1の保有するPTS株式数は20株となった。
(6)  被告ネットウェーブとPTSとの間で,平成12年9月19日付けで,株式交換契約(以下「本件株式交換契約」といい,これに基づく株式交換を「本件株式交換」という。)が締結され,当時,被告ネットウェーブの発行済株式総数が6000株,PTSの発行済株式総数が400株であったところ,被告ネットウェーブ株式2.5株を1株に株式併合した上,同株式とPTS株式とを1対1で交換することになった(したがって,株式交換比率は,6対1となる。)。本件株式交換は,平成13年1月5日に実行された。
これに先立ち,DCAの依頼を受けた監査法人トーマツ(以下「トーマツ」という。)は,本件株式交換における株式交換比率を決定するための指針として,被告ネットウェーブ及びPTSの平成12年6月30日時点の発行済総株式の総株価を,被告ネットウェーブについて51億4081万9000円,PTSについて8億6706万円と算出した(およそ,5.93対1となる。)。
本件株式交換により,PTS株式を20株保有していた原告X1又はaトラストには,被告ネットウェーブ株式20株が割り当てられた。
(7)  被告大塚商会及びDCAは,平成12年10月5日付けで,本件代金調整条項の廃止を合意した。
(8)  被告ネットウェーブとPTSとの間で,平成13年1月30日付けで,被告ネットウェーブを存続会社とし,合併期日を同年4月1日とする合併契約が締結され,同月11日,PTSは解散した。
(9)  原告リスボアは,遅くとも平成13年7月ころまでには,被告DCJ株式19株を受領した。
(10)  原告ら及びDCAは,平成14年1月29日付けで,原告ら及びDCAが被告大塚商会らに対して潜在的に有する請求権に関する相互の協力及び回復額又は賠償の分配の方法について取決めをする契約(以下「レター契約」という。)を締結した。レター契約8条(a)には,同契約当事者及びその関係会社等が相互に免責される旨,ただし,故意又は重過失の行為については免責しない旨が規定されている。Dは,レター契約締結の交渉に関与した。
(11)  DCAと被告大塚商会らは,平成14年4月25日ころ,本件NW株式譲渡契約に関連する和解(以下「本件和解」という。)をした。
(12)  DCAは,平成14年8月ころ,レター契約に基づき,原告リスボア及びaトラストに対し,それぞれ23万2574.93米ドル及び7949万7664円を支払い,被告DCJ株式158株の受領を求めた。
2  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  被告らの不法行為事由の有無
(原告らの主張)
ア 以下のとおり,被告らの行為は,不法行為を構成する。
(ア) 被告らは,被告大塚商会らにおいては,本件NW株式譲渡契約における本件代金調整条項に基づいてDCAが被告大塚商会らに支払う売買代金を増額させる目的の下,被告ネットウェーブにおいては,DCAに対してコミットメント(確約)していた利益の実現を図る目的の下,共謀して,被告ネットウェーブの売上げを実際よりも高く見せるため,被告大塚商会と被告ネットウェーブとの間で,真実は業務の実体がないにもかかわらず,本件業務委託契約書を作成して正常な取引を装い,被告大塚商会から被告ネットウェーブに対して業務委託代金の名目で多額の金銭の支払を行わせ,その結果,被告ネットウェーブの名目上の売上げ及び営業利益は,被告ネットウェーブの真実の業務に基づく売上げ及び営業利益より,上記支払の行われた金額分だけ増大し,さらに,将来の被告ネットウェーブの売上げ及び営業利益についての見込額も,本来算定されるべき見込額を大きく上回ることとなった。
(イ) 被告らは,被告ネットウェーブとPTSとの本件株式交換での株式交換比率を決定するに当たり,両社の企業価値が,その売上高及び営業利益並びにそれらの予測値による影響を受けるDCF法により算定されること,ないしは,売上高及び営業利益による影響を受ける方法によって算定されることを認識しており,また,上記のとおり,被告大塚商会から被告ネットウェーブに対して,業務の実体のないものについて業務委託代金として金銭の支払が行われていたので,被告ネットウェーブの売上高及び営業利益として算定されているものの中には,本来であれば売上高及び営業利益として評価されるべきではないものが含まれ,その売上高及び営業利益が水増しされた状態であることを当然に知っていた。
(ウ) 被告らは,上記のとおり被告ネットウェーブの水増しされた売上高及び営業利益の数値を使用してDCF法により被告ネットウェーブの企業価値を算定すれば,本来の企業価値よりも高い企業価値が算定されてしまうことに加え,かかる算定に基づいて株式交換が実行されれば,株式交換の相手方であるPTSの株主に対し,偽りの交換比率に基づいて株式交換が行われることになることを認識しており,それにもかかわらず,水増しされた売上高及び営業利益を修正させることなく,これを使用して被告ネットウェーブの企業価値を算定させ,その算定結果に基づいて株式交換比率を決定させて本件株式交換の手続を進行させた。
(エ) その結果,被告ネットウェーブの企業価値が過大に評価される一方,PTSの企業価値が被告ネットウェーブとの関係において過小に評価され,これに基づいて不当に株式交換比率が決定されたため,PTSの株主であった原告らにおいて,不当に定められた交換比率により,本来得られるはずの被告ネットウェーブ株式数より少ない株式数しか得ることができず,損失を被った。
(オ) 被告大塚商会らは,業務委託代金が現実に支払われているから経理操作や水増しではないなどと主張するが,被告らは,真実は業務の実体がないにもかかわらず,DCAから受領する株式譲渡代金を増額させるため,被告大塚商会から被告ネットウェーブに対して金銭の支払を行わせ,本件株式交換に当たっても被告ネットウェーブの企業価値を不当に大きく見せるべく,本件業務委託契約書を交わさせ,株式交換比率の算定においても,これを利用したのであり,被告ネットウェーブの企業価値が売上高を基礎として算定されるDCF法等によるものである以上,真実の取引による売上げではないものを売上げとして計上する行為は,売上高の水増しによる経理操作に他ならず,現実に金銭の支払が行われていることによって,その性質が変わるものではない。
イ 以下のとおり,本件業務委託契約の実体がなかったことは明らかである。
(ア) 本件業務委託契約書は,記載された業務の内容が抽象的で,各業務が特定されておらず,各業務の終了如何を問わず,被告ネットウェーブに対して毎月一定の金額が支払われる旨規定されており,いかにも業務の実体のない支払のために作成された現実性の欠如した契約書である。
(イ) 被告らは,業務の実体があるかのように装うため,本件業務委託契約に基づく業務に係る作業時間を計上させて「技術支援費明細票」(甲7,40)を作成していたが,同明細票の記載内容は,被告ネットウェーブの内部において各従業員について集計され作成されている作業時間の内訳書(甲29)の内容との間に齟齬があり,また,同明細票中,作業時間が記載された欄には,きりの良い数字ばかりが並んでいて現実味に欠け,したがって,本件業務委託契約に基づいて行ったとされている業務は,実際には存在しなかったものと考えるほかない。
(ウ) 本件業務委託代金の支払は,被告大塚商会及び被告ネットウェーブにおいて「業務支援費」などと呼ばれ,極秘扱いとなっていた。
(エ) Aは,被告DCJの従業員が「Y2さんが(被告DCJを)辞めるから大塚商会からの手数料が止まるだろう」と言うのを聞いたが,特定の社長が辞任することによって支払が止められるような手数料が,実際の業務に対応するものとは考え難い。
(オ) 以下の事情は,被告大塚商会から被告ネットウェーブに対して「業務委託代金」として交付されていた金員が実質的な取引の対価ではなかったことを示すものである。
a 被告Y2は,平成11年12月末ころ,電子メールにおいて,本件業務委託代金を「支援金」(被告大塚商会が被告ネットウェーブを支援するために支出される金員と解釈すべきである。)と呼び,その支援金が被告ネットウェーブにとって一大事である旨述べ,被告大塚商会の関連会社の役員に対して,当該支援金についての早急な打ち合わせを求めている。
b Eと被告Y2との間の電子メールでは,本件業務委託代金の支払が,被告大塚商会の上場に支障を生じさせるのであれば,その支払を直ちに中止することを考えなければならないことや,被告大塚商会の監査法人から問題視されていることが指摘されている。
監査法人から問題視されること自体,被告大塚商会から被告ネットウェーブに対する本件業務委託代金の支払が,合理的に説明することのできない問題であったことを示すものである。
c 本件業務委託契約は,監査法人が少なからず問題視している一方,被告大塚商会においては目的達成のために不可欠であり,その正当化を図ることが必要なはずであるが,被告大塚商会の担当者は,被告ネットウェーブが被告大塚商会に対して業務委託代金を請求する際の書面の作成について,内容の厳密性を求めず,いい加減な態度を取っており,これは,実際には,本件業務委託契約の実体が存在しないものであったから,そのようにしか対処の仕様がなかったことを示すものである。
d 被告ネットウェーブにおける最高意思決定機関といえる経営会議において,本件業務委託契約に係る業務支援内容を示す証拠書類,請求書の作成の仕方等について入念な打ち合わせが行われており,これは,監査法人に問題視された本件業務委託契約につき,実体があるかのような状況を作出しようとしている状況を表すものである。
e 被告大塚商会は,本来被告ネットウェーブにおいて作成するはずの業務委託代金についての提案書を作成しており,これは,被告ネットウェーブから被告大塚商会に対する請求内容の妥当性を説明することができるようにするためのものである。
ウ 動機
被告らには,以下のとおり,被告ネットウェーブの株式の価値,売上げないし企業価値を上げようとする動機があった。
(ア) 直接的には,本件株式交換に際して,株式交換比率を被告ネットウェーブに有利にすることにあった。
(イ) 被告大塚商会らは,平成11年7月28日,DCAとの間で本件NW株式譲渡契約を締結したが,同契約条項には,売買代金の50パーセントが,被告ネットウェーブの将来の収益によって調整される旨の本件代金調整条項が置かれていて,被告ネットウェーブの収益が良いほど,被告大塚商会らが受領する譲渡代金が増えることになっており,被告大塚商会においては,被告ネットウェーブに対し,対価関係なく業務支援費4億8000万円以上を支払っても,十分に利益となるものであった。
被告大塚商会と被告ネットウェーブは,平成9年10月1日にネットワーク・インテグレート・センター(以下「NIC」という。)が開設されたことに伴ってNIC業務委託契約を締結したところ,NICが閉鎖された平成10年6月30日ころ以降は当該業務が不要となったにもかかわらず,平成11年7月1日からは,業務委託代金を大幅に増額させた本件業務委託契約を締結し,不自然な契約を行っている。これは,被告大塚商会らが本件代金調整条項による株式譲渡代金を増額させるために行ったことを示すものである。
本件代金調整条項が廃止された後にも本件業務委託契約が継続されたのは,被告らにおいて,本件代金調整条項の廃止と共に本件業務委託契約も直ちに終了させることが余りに不自然であると考えたからにすぎない。
(ウ) 被告ネットウェーブ並びに同被告に所属していた被告Y2及び被告Y1は,親会社であるDCAに対し,一定の利益を上げることをコミットメントしており,その利益を達成するには,被告大塚商会からの業務支援費が必要であった。
エ 本件和解及びレター契約に基づく支払
(ア) DCAは,被告らの架空の本件業務委託契約により,被告ネットウェーブに期待どおりの収益が安定して上がっていると思っていたことから,本件NW株式譲渡契約につき,本件代金調整条項に基づいても,将来,売買代金が減額されることにはならないと考えて本件代金調整条項の廃止に応じたところ,実際には,本件業務委託契約が実体のない契約であったことから,動機の錯誤及び詐欺等を被告大塚商会らに対して主張し,これにより,DCAと被告大塚商会らとの間に紛争が生じた。
被告大塚商会らは,上記紛争について,DCAとの間で本件和解を成立させ,DCAに対する損害賠償を行ったところ,原告らとDCAは,レター契約を締結し,業務の実体のない本件業務委託契約により被告ネットウェーブの株価が水増しされていたことに起因する被告らに対する損害賠償請求に関して全面的に協力し合う旨の合意をしていたのであるから,被告大塚商会らがDCAに対して損害賠償をしたということは,被告大塚商会らにおいて,本件業務委託契約により被告ネットウェーブ株式の価格を水増ししたことを認めたことにほかならない。
(イ) DCAは,レター契約の履行として,原告らに対して金銭を支払ったところ,レター契約には,DCAが被告大塚商会らから和解等によって得た利益等を原告らに対して分配する旨定められているのであるから,レター契約の履行として支払が行われたということは,原告ら及びDCAの被告大塚商会らに対する潜在的な請求権,すなわち,本訴において原告らが主張している請求権についての和解が成立したということであり,したがって,被告大塚商会及びDCAが,原告らが本訴において追及している被告大塚商会らの責任が存在することを確認しているに等しいものである。
また,DCAは,被告大塚商会らとの和解交渉の中で,原告らに対し,原告らが被告大塚商会らを免責するよう申し出たが,原告らが被告大塚商会らを免責するとすれば,その免責の対象は,本訴請求内容以外にはあり得ないものであるから,本件和解における争点は,本訴請求の争点と同一のものであったといえる。
(ウ) なお,DCAと原告らの間でレター契約が締結されたこと自体,原告らがDCAに提供した情報が被告らの不正行為を証明するのに非常に有益であったこと,DCAにおいて,被告らによる不正行為の存在をほぼ確信したことの現れであるし,DCAの関係者が作成又は送信した平成14年2月5日付けの書類や同年4月22日の電子メールも,DCAにおいて被告らの不正行為の存在を確信していたことを示すものである。
オ 損害及び因果関係について
(ア) トーマツは,被告ネットウェーブの企業価値の算定に当たって,当然,被告ネットウェーブにおいて当時営業利益を生み出していた本件業務委託契約を考慮していた。また,トーマツは,平成12年6月30日時点における被告ネットウェーブの企業価値を算定したものであるが,その評価書には,平成15年度までの売上予測値を評価の対象に含めていることが明言されている。
(イ) 本件株式交換前にPTSの資産状況が悪化したのは,同社の主要な収益部門(アウトソーシング部門及びシステムエンジニアリング部門)を被告ネットウェーブに営業譲渡したからであり,PTS及び原告らはかかる事実を隠匿していたものではないし,被告大塚商会らは,上記営業譲渡前のPTSの企業価値を前提に株式交換比率を算定することを合意していたのであり,上記営業譲渡と本件株式交換は,被告ネットウェーブとPTSの合併のスキームの中で一体となっていたものであった。
(被告大塚商会らの主張)
ア 被告大塚商会と被告ネットウェーブとは,実際に共同して事業(協業)を行っており,被告大塚商会がNIC業務委託契約及び本件業務委託契約に基づいて支払った業務委託代金は,この協業において被告ネットウェーブが提供したネットワークシステム関連の豊富な知識,経験等による業務支援・コンサルティングサービスともいえる業務に対する対価である。
被告ネットウェーブによる被告大塚商会に対する業務支援は,その内容及び形態が様々であり,かつ継続的に発生するものであったため,被告大塚商会は,これらを実績毎に評価するのではなく,毎月一定の業務委託代金が発生するという形態の業務委託契約を被告ネットウェーブとの間で締結することにした。
原告らは,本件業務委託契約書における業務の内容が抽象的であるなどと主張するが,契約当事者間において,具体的な業務を念頭に置きつつ,当該業務を抽象的に記載することは,契約実務ではごく一般的に行われている。また,本件業務委託契約書に記載された業務の内容は,まさに被告ネットウェーブが行った具体的な業務の内容そのものであり,その記載された業務と実際に行われた業務との間に齟齬はない。
以上のとおり,本件業務委託契約に実体があったことは明らかである。
イ 原告らは,本件業務委託契約が売上げ及び利益を不当に高く計上するという経理操作であるから被告らの行為が不法行為に該当すると主張するところ,そもそも,経理操作ないし水増しとは,現実には支払われていないにもかかわらず架空の売上げ及び利益を会計帳簿に記載することを意味するが,本件においては,業務委託代金が現実に支払われたこと自体は争いがなく,会計帳簿に記載された売上げ及び利益は,被告ネットウェーブの現実の売上げ及び利益となっているのであり,当該売上げ及び利益を前提として被告ネットウェーブの企業価値を算定することは,被告ネットウェーブの企業価値の正当な評価に他ならないのであって,その余の点について議論するまでもなく,原告らの主張するような経理操作すなわち不法行為が成立する余地はない。現実に対価が支払われている以上,被告らにどのような注意義務が存在し,どのような行為が注意義務に違反するのかを具体的に摘示しない限り,主張自体失当である。
ウ 原告らが主張する動機について
(ア) 被告大塚商会は,DCAから本件株式交換及び合併に関する最初の提案がされた時点(早くとも平成12年6月)以前から,NIC業務委託契約及び本件業務委託契約を締結していたのであるから,株式交換比率の点は,被告大塚商会が本件業務委託契約を締結する動機たり得ない。
(イ) 被告大塚商会らは,本件NW株式譲渡契約(本件代金調整条項を含む。)の締結以前からNIC業務委託契約及び本件業務委託契約を締結しており,平成12年10月5日付けの本件代金調整条項廃止後も,引き続き本件業務委託契約を更新していたものであるから,本件代金調整条項の点も,原告らが主張するところの架空の業務委託契約を締結する動機たり得ない。
エ 本件和解について
被告大塚商会らとDCAとの本件和解における争点は,本件NW株式譲渡契約の解釈の問題(本件業務委託代金が本件代金調整条項の対象に含まれれば株式譲渡金額が増加する一方,含まれないのであれば減少する。)であったので,本訴における不法行為とは争点が全く異なる。被告大塚商会らは,紛争の長期化を防止するという経営上の判断から本件和解を成立させたが,同和解において被告大塚商会らが損害賠償に応じたことはない。
オ 以下のとおり,原告らには損害がなく,また,原告らの主張する損害と被告らの行為との間には因果関係がない。
(ア) 原告らは,本件株式交換における株式交換比率の算定に際してトーマツが本件業務委託契約の対価を考慮していたと主張するが,①トーマツが企業価値算定に際して本件業務委託契約を考慮していたのか,②考慮していたとしても,将来のどの程度の期間の対価を考慮していたのか,③本件業務委託契約以外にいかなる要素を収益予測の根拠として考慮していたのか,といった点が不明であるし,一般に株式交換比率の決定等の株式交換契約の締結に際しては,監査法人や法律事務所によるデューディリジェンス,取締役会による承認,臨時株主総会による決議といった何段階ものプロセスが介在し,最終的に交換当事者が交渉して承認した結果として交換比率が決定されるのであるから,仮に,本件業務委託契約が何らかの意味で不相当との評価を受けたとしても,これと最終的に算定された株式交換比率との決定との間には因果関係が存在しない。
(イ) PTSの経営状況は,平成12年6月期において,営業利益,経常利益共にマイナス(赤字)の状況であり,PTSは,被告ネットウェーブと合併されなければ,倒産も危惧される状況であったのであるし,本件株式交換の実行直前の同年10月23日には,同年9月末の監査において,1800万円のコストの計上漏れ及び2800万円の売上げの先上げが発見されたため,これらを差し引いたPTSの純資産はほぼ皆無に近いことから,同年10月末には債務超過になる可能性が高く,その場合,日本の当時の商法上,合併を行うことができないため,株式交換の実行ができなくなる可能性が高いことが,PTSの監査法人であるトーマツから指摘されていた。
したがって,本件株式交換における株式交換比率の前提となる企業価値比率(5.93対1)は,実際よりもPTSに有利に算定されていたものであり,本件株式交換によって原告らに損害が生じることはない。
なお,原告らが主張するように,PTSの主要な収益部門を被告ネットウェーブに営業譲渡したという事実はない。
(ウ) 原告らは,被告ネットウェーブの真の企業価値に基づいて算出されていれば,原告らが割当てを受けられるはずであった被告ネットウェーブ株式の価値に相当する損害を被った旨主張するところ,平成18年9月30日現在,被告ネットウェーブは債務超過の会社であるから,現在の被告ネットウェーブ株式は無価値であり,原告らには損害が発生していない。
(被告DCJの主張)
ア 被告ネットウェーブは,本件業務委託契約に関し,被告大塚商会から現実に業務委託代金の支払を受けており,これによる売上げ及び利益は現実のものであり,水増しでも粉飾でも架空でもない。
また,本件業務委託契約に実体がないことを示す十分な証拠はない。Dは,本訴の証拠調べの際,本件和解において,本件NW株式譲渡契約締結の際における開示義務違反の点と,本件業務委託契約に実体があったか(報酬がサービスに見合ったものであったか)という点が問題となり,前者については,強く指し示す証拠があったが,後者については,可能性を指し示す証拠が一部あったが,決定的ではないものであり,DCAとしては結論に至らなかった旨証言している。
イ 被告ネットウェーブは,被告大塚商会らとDCAとの本件NW株式譲渡契約とは無関係で,本件株式交換に際しても,交換比率によって被告ネットウェーブが利得を得る立場にはないのであるし,原告らが主張するように,被告ネットウェーブがDCAに対して利益をコミットメントした事実もないのであるから,被告ネットウェーブにおいて,原告らの主張する売上げの水増しをする動機は存在しない。
ウ 仮に,原告ら主張の売上げの水増しがあったとしても,トーマツが被告ネットウェーブの企業価値の算定に際して,原告ら主張の売上げの水増しを考慮したのか否か,どのように考慮し,評価にどう影響したのかは不明であるし,実際の株式交換比率は,様々な要素が考慮された上,当事者間の合意によって決定されるものであるから,これが株式交換比率の決定に影響があったのか,どう影響したのかは不明である。
また,PTSの業績は非常に悪い状況にあり,しかも,本件株式交換契約締結後の平成12年10月にPTSの純資産不足や債務超過の恐れが判明したにもかかわらず,本件株式交換契約締結時に定められた株式交換比率は修正されなかったのであり,これによれば,本件株式交換比率がPTSにとって不当であったとはいえないことが明白である。
(2)  原告X1が本件株式交換によって損害を受けたといえるか。
(被告DCJの主張)
原告X1は,本件PTS株式譲渡契約の後,残りの保有株式20株をaトラストに譲渡し,本件株式交換によって被告ネットウェーブ株式20株の交付を受けたのは原告X1ではなく,aトラストであるから,原告X1は,本件株式交換時,PTSの株主ではなく,そもそも本件株式交換により被告ネットウェーブ株式を得べかりし地位にはなかったのであるから,原告X1には,およそ損害の発生を観念することができない。
(3)  原告リスボアが本件株式交換によって損害を受けたといえるか。
(原告リスボアの主張)
原告リスボアは,本件PTS株式譲渡契約の際に,その時点で保有していたPTS株式84株をすべてDCAに譲渡したが,原告リスボアが保有していたPTS株式をすべて譲渡したのは,当時PTSの最大株主であったトゥエンティ・ファースト・センチュリー・プロパティーズ・リミテッド社(以下「TF社」という。)が,税務上の理由から一度に多数の株式をDCAに対して譲渡することができなかったため,かかる制約のない原告リスボアが,自己の保有する株式すべてをDCAに譲渡したからである。この際,原告リスボアは,実際にはPTS株式を保有し続ける意図を有していたので,TF社との間で,後に原告リスボアがTF社からPTS株式を譲り受ける旨合意した。
原告リスボア及びTF社は,上記合意に基づき,本件株式交換の前である平成12年7月3日,平成14年2月15日を実行日としてPTS株式19株を合計7923万円で譲り受ける旨の株式譲渡契約を締結し,同株式譲渡契約の実行のため,平成12年9月23日,エスクロー契約を締結した上,原告リスボアにおいて,エスクロー口座に売買代金7923万円を入金し,TF社において,PTS株式をエクスロー代理人に預託し,原告リスボアは,PTS株式19株について潜在的な実質株主として利害を有するに至ったものである。
その後,TF社からエスクロー代理人に預託されていたPTS株式19株について本件株式交換が実行され,また,平成13年7月6日までには,TF社に対して上記売買代金が支払われ,原告リスボアは,PTS株式19株と交換された被告DCJ株式19株を受領した。
上記のとおり,被告DCJの企業価値は水増しされていたものであるから,そのような被告DCJ株式19株とPTS株式19株が同価値として交換された以上,原告リスボアは,被告らの不法行為による損害を被ったことに変わりはない。
また,DCAは,一貫して,原告リスボアが本件株式交換の際の実質的なPTS株主であると認識し,これを前提とした対応をしてきたものであるし,レター契約に基づく支払も原告リスボアに対してなされたものである。
(被告らの主張)
原告リスボアは,本件PTS株式譲渡契約の際,保有のPTS株式をすべてDCAに対して譲渡したのであるから,本件株式交換時点において,PTSの株主ではなく,本件株式交換によって被告ネットウェーブ株式を得べかりし地位にはなかったので,原告リスボアには,およそ損害の発生を観念することができない。
原告リスボアの主張によれば,原告リスボアは,本件株式交換の後である平成13年7月に,TF社から被告DCJ株式19株を取得したにすぎない。原告リスボアは,TF社との株式譲渡契約等について縷々主張するが,原告リスボアが本件株式交換時点においてPTS株主ではなかったという事実に影響はなく,原告リスボア主張の損害は,TF社との間での契約解釈又は債務不履行の問題として処理されるべきである。
(4)  損害額
(原告らの主張)
ア 割り当てられなかった株式に相当する損害
(ア) 本件業務委託契約による利益を控除して被告ネットウェーブの企業価値を再算定すると,被告ネットウェーブの価値は13億7833万3000円となり,被告ネットウェーブとPTSの企業価値の比率は1.59対1であったことになるので,この比率に基づいて株式交換が行われた場合,原告リスボアは,被告ネットウェーブ株式を51株,原告X1は,被告ネットウェーブ株式を54株受領することができたはずであり,次のとおり,213万7224円(平成15年6月30日における被告ネットウェーブ株式一株当たりの資産価値)に上記株式数と原告らが実際に受領した株式数との差を乗じた金額が,原告らの損害となる。
原告X1 213万7224円×34=7226万5616円
原告リスボア 213万7224円×32=6839万1168円
(イ) DCAは,本件株式交換時において,被告ネットウェーブ及びPTSについて発行済株式の75パーセントの株式をそれぞれ保有していたのであり,DCAにとっては,株式交換比率がいかなるものであれ,総資産に影響を及ぼすものではないから,株式交換比率の相違によって,株式交換が成立しなくなることはなかった。
(ウ) 原告らにとって損害が発生した時点は,本件株式交換が行われた時点であるから,その時点における被告ネットウェーブの一株当たりの評価額を基準としたものであり,これは,まさしく通常損害に属するものである。
イ 弁護士費用
原告ら 各700万円
ウ 被告ネットウェーブの企業価値の再算定費用
原告リスボア 200万4200円
エ 合計
原告X1 7926万5616円
原告リスボア 7739万5368円
(被告大塚商会らの主張)
ア 原告らは,自らが算定する企業価値比率(1.59対1)に基づく株式交換が行われたと仮定した上で,株式交換後の被告ネットウェーブの企業価値を前提に損害額を算出しようとするものであるが,仮に,本件株式交換の株式交換比率の前提となった企業価値比率に,原告ら主張のような誤りがあったとすれば,そもそも,被告ネットウェーブとPTSとの間で株式交換が行われたかどうかすら不明であるし,原告らが正しいと主張する企業価値比率に基づいて株式交換が行われたことを示す証拠はない。
そもそも,原告らは,株式交換比率の前提となる企業価値比率が1.59対1であると主張するが,その根拠としている原告ら提出の被告ネットウェーブの株主価値算定書(甲13)は,根拠のない恣意的な数字及びシナリオに基づいて算出されたものである。
イ 損害額算定の基準日を平成15年6月30日とすることには,根拠が全くない。原告らが,被告ネットウェーブ株式について,本来なら受領することができたのに受領することができなかった株式数を損害として主張するのであれば,特段の事情がない限り,その損害額は,本訴の口頭弁論終結時を基準とすべきである。
(被告DCJの主張)
ア 原告らの主張は,被告らの不法行為がなければ,被告ネットウェーブの価値が13億7833万3000円と評価され,PTSの価値についてはトーマツの評価額がそのまま用いられ,当事者間において,これらの評価をそのまま機械的に用いて株式交換比率が決定されるという仮定がすべて成り立つことを前提としているが,これらの仮定は,いずれも非現実的であり,そのような仮定は,そもそも成立しない。
イ 原告らは,被告DCJの株主価値算定書(甲14)に基づき,被告DCJの平成15年6月30日における株価が213万7224円である旨主張するが,上記算定書には,213万7224円から非流動性ディスカウントとして30パーセントの控除を行った上,株価を149万6057円と算定する旨記載されている(なお,原告らは,被告ネットウェーブの企業価値の再算定に当たっては,非流動性ディスカウントが行われた数値を主張している。)。
また,上記算定書は,原告らが提供した数値(しかも,作成者の不明な被告DCJの予算書によるものである。)や原告らの考案したシナリオが前提とされ,評価方法についても原告らが指定し,他の方法の検討が行われていないものであって,原告らの情報と指示に基づく試算書,ないしは原告らの主張そのものにすぎず,証拠価値がないことは明白である。
さらに,上記算定書は,被告DCJの利益につき,当該期における実績と全く乖離した予測値を用いて算定を行ったものであり,何ら価値がない。
なお,世界的な四大会計事務所であるアーンスト・アンド・ヤング及びKPMG並びに他の被告DCJの少数株主に対する株式買取価格によれば,被告DCJの株価は,一株当たり4万1071.5円とするのが相当である。
(5)  損益相殺
(被告DCJの主張)
原告らに損害が認められるとしても,原告らは,レター契約により,それぞれ被告DCJ株式79株を受領し得る地位にあり,また,それぞれ23万2574.93米ドル及び7949万7664円の支払を受けているのであり,原告らの上記利得は,本訴請求に関連するものであるから,原告らの損害の認定又は算定に当たり,控除されるべきことは当然である。
(6)  原告らが被告DCJに対して請求することが商法上許容されるか。
(被告DCJの主張)
原告らの主張の本質は,株式交換比率の不公正による過少割当てにあり,原告らの請求が,被告DCJの株主としての地位を前提とし,これに基づいて被った損害の賠償を求めるものであることは明らかである。
そして,株主が株主の地位に基づいて被った損害について会社に対して損害賠償責任を追及できるとすると,会社財産が減少し,他の株主の犠牲の下に損害賠償を受けることとなるので株主平等原則に反し,また,実質的には株主への出資金の払戻しに他ならず,資本充実の原則に反することとなるので,会社は,株主が株主としての地位に基づいて被った損害については,損害賠償義務を負わないと解するべきである。
原告らは,株主として本件株式交換比率が不当に定められたというのであれば,株式買取請求権,株式交換無効の訴え等,法令で明文をもって認められている救済手段を行使すべきであった。
(原告らの主張)
原告らは,被告らが被告ネットウェーブの売上高,営業利益等を不正に操作し,これにより作出された事態を,本件株式交換を行うに当たって是正せずに原告らに損害を与えたことを違法であると主張しているものであり,株主としての地位に基づく請求をしているものではない。
(7)  原告らが被告DCJを免責したか。
(被告DCJの主張)
レター契約8条(a)は,原告ら及びDCAが,レター契約の各当事者及びその関係者,関係会社等を,本件PTS株式譲渡契約,PTSと被告ネットウェーブとの合併並びにPTS,被告ネットウェーブ及び被告DCJの経営又は運営に関して免責する旨規定している。
レター契約締結当時,DCAは,被告DCJの発行済株式の75パーセントの株式を保有していたのであるから,被告DCJがDCAの関係会社として免責の相手方に含まれることは明らかであるし,レター契約は,原告らが被告ネットウェーブの資産水増しの証拠としてDCAに対して示した情報を根拠とする潜在的被申立人(被告大塚商会らであり,被告DCJは除外されている。)に対する潜在的請求に関し,原告らとデータクラフトグループ間での相互の協力及び回復額又は賠償の分配の方法についての合意を書面化したものであるから,上記情報に関連する請求について相互に免責することがレター契約中の免責合意の趣旨であり,したがって,上記情報に関連する請求すなわち原告らの本訴請求が免責の対象となっていること,及び,当該免責合意中の,重過失又は故意による行為を免責しない旨のただし書部分が本件情報に関連する請求すなわち原告らの本訴請求に適用がないことも明らかであるから,本訴請求について,被告DCJは,完全に免責されている。
また,上記免責とレター契約上のDCAの利得分配義務とは,同時履行の関係にはなく,上記免責の効果は,レター契約締結時点で確定的に発生しているものであるし,そもそも,DCAは,レター契約4条に基づく利益の分配を原告らに対して行うなど,レター契約上の義務をすべて完全に履行している。
(原告らの主張)
ア レター契約は,原告らとDCAとの間で,被告ネットウェーブの株式価値水増しについての被告らに対する損害賠償請求に関して全面的に協力し合うこと,原告らがDCAに対して情報の収集及び被告大塚商会らとの交渉を委任し,和解の成立により得られる利益を共有することを合意したものである。
レター契約8条(a)は,上記の協力を条件として,原告らとDCA及びその関連会社の相互免責を規定したもので,同契約に基づくDCAの義務と,原告らの行う免責とは対価関係ないし牽連関係にあるから,被告DCJにおいてDCAが上記義務を履行したことを立証(例えば,本件和解の内容を具体的に開示し,その内容に応じたレター契約の履行がなされていることを示すこと。)しない限り,被告DCJが原告らとの関係で上記条項に基づく免責を受けることはあり得ない。
イ 被告ネットウェーブは,故意又は重過失による売上げの水増しによって原告らに損害を与えたものであるから,上記免責規定のただし書の適用により,免責されない。このただし書は,その文言からして,被告DCJの主張するような制限などなく,一般的に適用される。
(8)  消滅時効及び債務承認
(被告大塚商会らの主張)
ア 原告X1は,平成13年2月23日から被告DCJの取締役に就任しているところ,本件業務委託契約は同年12月まで継続しており,被告大塚商会からは毎月業務委託代金が支払われていたのであるから,原告らは,遅くとも,平成13年の前半には本件業務委託契約の存在を知っていたのであり,同時点を起算点とすれば,原告らの損害賠償請求権は時効消滅している。
イ なお,本件和解は,本訴とは当事者及び争点が異なる無関係のものであり,かつ,被告らが損害賠償に応じたといった事実が一切ないことからすれば,本件和解が,債務承認として,本訴における原告らの請求権の時効中断事由となることはない。
(被告DCJの主張)
原告X1は,平成13年2月より被告DCJの取締役であるし,Aは,同年4月以降,被告DCJの従業員であるから,原告らは,遅くとも同年9月までに,原告ら主張の各取引の存在等を了知していたものであり,したがって,原告らの被告DCJに対する請求権は時効消滅している。
(原告らの主張)
ア 原告らは,平成13年10月下旬ころ,架空取引の存在を知り,更にその後,原告らに何らかの損害が生じていることを知るに至ったものである。原告らは,平成16年10月14日付け通知書で被告らに対して損害賠償請求に関する通知をした上,その到達から6か月以内に調停を申し立て,同調停の不調から1か月以内に本訴を提起しているので,時効は中断している。
イ また,被告大塚商会らは,平成14年6月ころ,本件和解に基づき,DCAに対する損害賠償を行ったので,債務承認によって時効が中断している。DCAは,レター契約に基づき,原告らを代理して本件和解をしたものであるから,本件和解による時効中断効は,原告らに及ぶ。
なお,上述のとおり,本件和解における争点は,本訴と同一のものであったといえるものであるし,また,DCAが原告らに対して被告大塚商会らに対する免責を申し出ているところ,これは,被告大塚商会らがDCAを介して,原告らに対して免責を申し出たというものであり,被告大塚商会らが原告らに対して原告らに対する債務の存在を認めたものと評価できるものである。
第3  当裁判所の判断
1  前記前提事実に加え,証拠(甲1,2,5ないし7,8の1,9ないし11,15ないし19,26,28,30,31,33,39,40,乙イ3ないし6,8,10ないし21,23ないし26,乙ロ2ないし5,9ないし11,証人F,証人D,原告リスボア代表者,被告Y2本人,被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  被告Y2は,平成9年3月当時,ネットワーク・コンサルティングやネットワークの設計及び管理等のネットワークインテグレーション事業を主に営む大手の株式会社であるネットワンシステムズにおいて,東日本営業部長の職にあって,主に官公庁や多数の大企業のネットワーク構築の責任者の地位にあり,被告Y1は,同じころ,同社において,被告Y2の部下で,東日本営業部の第1グループを統括する職にあった。
被告大塚商会は,もともとパソコン,サーバー,パッケージソフト等の販売を主に行い,次第にネットワークシステム事業への進出を企図するようになったが,ネットワークシステム関連の複雑な技術の知識及び経験が不足していたことから,同事業は必ずしも順調に進んでいたわけではなく,平成9年当時,有力な提携先を模索していたところ,ネットワンシステムズを退職した被告Y2及び被告Y1に対し,ネットワークシステムサービス事業を目的とする新会社の構想を提案した。
これにより,被告大塚商会と新会社(被告ネットウェーブ)との協業を通じて,被告大塚商会の得意分野であるパソコン,サーバー等の技術力及び販売力と,被告Y2及び被告Y1の得意分野であるネットワークシステムサービスの技術力と販売力とを合わせ,パソコン,サーバー,ネットワークシステム等をトータルシステムとして,大企業や官公庁の顧客へ提供することを可能とするという構想の下,平成9年5月1日,被告大塚商会らの出資により被告ネットウェーブが設立され,被告Y2がその代表取締役に就任した。
(2)  被告ネットウェーブは,その設立後,以下のとおり,被告大塚商会と事業を行い,被告大塚商会は,これにより,実際に大企業や官公庁からの発注を受けた。
ア 被告ネットウェーブ内に,被告大塚商会と共に営業活動を行う部署を設けた。
イ 被告大塚商会と共同で,平成9年10月1日,被告ネットウェーブ内にNICを設置し,ネットワークエンジニアの配置やネットワーク機器の検証環境等の整備等をするとともに,被告ネットウェーブにおいて被告大塚商会の従業員に対する技術教育を行った。
ウ 被告Y1及び被告ネットウェーブの従業員が被告大塚商会の東京本社に常駐したり,被告Y1が被告大塚商会の地方の支店及び営業所に赴くなどして,被告大塚商会の営業戦略の立案に協力したり,営業担当者への教育を行ったり,個別案件の相談に乗ったり,ネットワークシステム保守業務のスキーム構築の支援を行うなど,日常的にネットワークシステム関連の専門知識やスキルを伝えた。
エ 被告ネットウェーブの従業員が,被告大塚商会の営業に同行して企業や官公庁を訪問し,パソコン,サーバー,ネットワークシステム等の提案を行ったり,被告大塚商会の営業担当者から個別案件についての相談を受けて提案書作成の指導,協力を行った。
オ 被告Y2及び被告Y1が被告大塚商会の各種会議に毎月参加し,被告大塚商会におけるネットワークシステムのビジネスプランの作成,見込み顧客に対する戦略,提案書作成,営業販促用の製品プロモーション企画,コンピューターベンダーとの調整等についての協力,支援を行った。
カ 被告Y2及び被告Y1が,被告大塚商会においてその顧客向けに開催しているセミナーに参加してネットワークシステムについて最新情報を伝える講師を務め,被告大塚商会において開催している営業イベントに当たっては,被告ネットウェーブの従業員がその開催前に被告大塚商会の従業員に対して最新のネットワークシステムに関する知識を教示したり,当該イベント会場に赴いて,被告大塚商会の顧客に対して最新のネットワークシステムに関する提案を行ったり,当該イベント後の営業活動の指導,協力を行った。
キ 被告ネットウェーブが,被告Y2及び被告Y1の人脈を用いて,被告大塚商会に対して顧客を紹介することもあった。
(3)ア  被告大塚商会及び被告ネットウェーブは,NICの業務等について,平成9年12月19日付けで,平成10年1月1日から1年間の期限で,被告ネットウェーブが,ルータ及びスイッチ等を中心としたネットワーク製品の販売技術支援,全国の営業拠点への技術支援等の業務を被告大塚商会から受託し,業務委託代金を月500万円とするNIC業務委託契約を締結した。
イ  被告大塚商会及び被告ネットウェーブは,NICが廃止されることに伴い,NIC業務委託契約の業務委託代金を月300万円に減額する旨の平成10年6月30日付け覚書を交わし,同年12月10日付け覚書をもって,NIC業務委託契約を平成11年12月31日まで延長することに合意した後,同年5月31日付け「契約解除に関する覚書」をもって,同年6月30日に終了させることを合意した。その間,被告Y2は,被告大塚商会に対し,被告ネットウェーブが提供している業務ないし労力の対価が月300万円では低すぎ,業務委託代金としては月2000万円が適当であるとして,業務委託代金の値上げを要請し,被告大塚商会がこれを受け入れた。
ウ  被告大塚商会及び被告ネットウェーブは,平成11年7月1日付けで,期間をいずれも同日から平成12年6月30日までとして,①被告ネットウェーブにおいて被告大塚商会の営業への同行及び営業活動の支援や被告大塚商会の客先提出のための提案書,技術資料等の作成支援等の営業支援を行い,その業務委託代金を月700万円とする旨の業務委託契約(以下「営業業務委託契約」という。),②被告ネットウェーブにおいて被告大塚商会内に対する新製品及び新技術の情報提供やセミナーの企画サポート及び説明員の派遣等のネットワークに関する販売促進支援を行い,その業務委託代金を月500万円とする旨の業務委託契約(以下「販促業務委託契約」という。),③被告ネットウェーブにおいてCISCOを主とするネットワークに関する技術情報提供やネットワーク機器及びOSの検証情報の提供等の技術支援を行い,その業務委託代金を月800万円とする旨の業務委託契約(以下「技術業務委託契約」という。)をそれぞれ締結(以上の業務委託代金合計は月2000万円となる。)した。
被告ネットウェーブ内において,従前はNIC業務委託契約に基づく業務委託代金について,営業での売上げという扱いをしていたところ,平成11年7月1日以降の本件業務委託契約に基づく本件業務委託代金については,営業ではなく,本部での売上げという扱いとすることとなり,これが営業担当の従業員に知られると,営業担当から,本件業務委託代金を営業での売上げに振り分けるよう依頼される事態が予測されたので,被告Y2は,役員に対し,本件業務委託代金について口外しないよう指示した。
エ  その後,被告大塚商会及び被告ネットウェーブは,被告大塚商会の従業員のネットワークシステムに関する知識,技能等が向上し,それに伴って被告ネットウェーブが提供する業務ないし労力が減ったとして,平成12年7月1日付けで,期間をいずれも同日から同年12月31日までとし,業務委託代金をいずれも減額した上,上記同様の①営業業務委託契約,②販促業務委託契約及び③技術業務委託契約を締結し,業務委託代金合計は月1500万円となった。
また,被告大塚商会及び被告ネットウェーブは,今後も被告大塚商会の従業員の上記技能等が向上していくことを予測し,それに伴って今後も被告ネットウェーブが提供する業務ないし労力も減っていくものと見込み,同日付けで,業務委託代金を以後半年毎に減額させていく旨の覚書を交わした。もっとも,被告Y2は,実際には,未だ被告ネットウェーブが提供する業務ないし労力がそれほど減っていないとして,同年11月1日付けで被告大塚商会に対し,同年7月1日付けの業務委託契約による業務委託代金合計月額1500万円を,翌年の平成13年12月まで延長することを要請した。
オ  被告大塚商会と被告ネットウェーブは,平成13年7月1日付けで,期間をいずれも同日から同年12月31日までとし,業務委託代金いずれも減額した上,上記同様の①営業業務委託契約,②販促業務委託契約及び③技術業務委託契約を締結し,業務委託代金合計は,月1000万円となった。
カ  被告大塚商会と被告ネットウェーブの間の本件業務委託契約は,平成13年12月31日に終了した。
(4)  被告ネットウェーブは,業務委託代金合計が月額2000万円となった平成11年7月以降,被告大塚商会に対し,業務内容を報告する書類を作成して交付していたが,被告大塚商会の監査法人又は被告大塚商会の経理部が,当該書類の内容がネットワークシステム等の専門的なものであって,専門外の者には容易に理解することができないなどとして,本件業務委託契約に基づく業務の内容,本件業務委託代金の支払等について疑問を呈したり説明を求めることが度々あり,これを受け,被告Y2,被告大塚商会及び同被告の子会社である株式会社ネットワールドの役員であり被告ネットウェーブの取締役にも就任していたEとの間で,また,被告ネットウェーブの経営会議において,被告大塚商会に対して提出する業務内容を報告する書類,請求書等の作成方法等について検討されることがあった。これにより,被告ネットウェーブは,業務内容について改めて書類を作成するとともに,被告ネットウェーブの従業員が本件業務委託契約に基づく業務に費やした時間を記載した「技術支援費明細票」を新たに作成するなどした。
(5)  本件PTS株式譲渡契約の際,TF社は,保有していたPTS株式99株のうち,合計38株を19株ずつ2回にわたってDCAに対して売却した。
(6)  平成12年1月14日,被告Y2がPTSの取締役に就任し,同年6月30日,従前PTSの代表取締役であったGが代表取締役を辞任し,Hが代表取締役に就任した。
(7)  平成12年3月31日時点でのPTSの株主構成は,DCAが281株(70.25パーセント),TF社が80株(20パーセント),原告X1が20株(5パーセント),Hが19株(4.75パーセント)であった。
(8)  平成12年6月30日時点での被告ネットウェーブの株主構成は,DCAが4500株(75パーセント),被告大塚商会が1000株(16.7パーセント),被告Y2が270株(4.5パーセント),従業員持株会が130株(2.2パーセント),被告Y1が50株(0.8パーセント),Iが50株(0.8パーセント)であった。
(9)  被告ネットウェーブは,平成12年6月ころ,DCAから,被告ネットウェーブとPTSの合併を提案されたが,PTSは,平成11年10月から平成12年6月までの期における経常利益及び営業利益がいずれもマイナスであるなど,その経営状況は芳しいものではなく,また,被告大塚商会内では余り評判の良くない会社であったため,被告大塚商会及び被告Y2において,被告ネットウェーブとPTSとの合併に反対したり,被告大塚商会において,上記合併の条件として本件代金調整条項の廃止を申し出たものの,結局,被告ネットウェーブの75パーセントの株式を保有するDCAにより,両社の合併の計画が進められ,具体的には,株式交換によりPTSを被告ネットウェーブの完全子会社にした上,合併を行うこととなった。
トーマツが被告ネットウェーブ及びPTSの平成12年6月30日時点の発行済総株式の総株価を算出するに当たって採用した算出方法は,DCF方式と呼ばれるもので,当該会社の価値が,当該会社が将来得る当該会社のキャッシュフローから派生するという理論に基づき,将来の見積もりキャッシュフローの現在価値により決定され得るというものである。
(10)  平成12年9月19日付けの本件株式交換契約では,実行日が同年11月7日と定められたが,その後,同月9日,同月29日,平成13年1月の第1週と,順次延期され,実際に実行されたのは,同月5日であった。
その間,PTSの同年9月末の監査において,1800万円のコストの計上漏れ及び2800万円の売上げの先上げがあり,これを差し引いたPTSの純資産が136万円ほどであることが発見され,同年10月23日までには,PTSの監査法人から,上記監査結果及びPTSが同月末には債務超過になる可能性が高い旨の報告がなされ,これらを受け,被告大塚商会と被告ネットウェーブの間では,当時の日本の商法では,合併を行うことができなくなり,同年11月29日に予定されていた株式交換の実行をすることもできなくなることが懸念され,本件株式交換契約において定められた6対1の株式交換比率の見直しの必要性等被告ネットウェーブとPTSの株式交換及び合併についての相談がなされた。
(11)  平成12年10月5日付けで本件代金調整条項が廃止され,本件NW株式譲渡契約の譲渡代金として,DCAから被告大塚商会らに対して一定額が支払われることが確定した。
(12)  Hは,平成13年1月29日,PTSの代表取締役を辞任し,被告ネットウェーブとPTSとの合併契約が締結された同月30日,被告Y2がPTSの代表取締役に就任した。
原告X1は,同年2月23日,被告DCJの取締役に就任した。また,Aは,同年4月19日にPTSが合併に伴って解散した後,遅くとも同年9月ころまでには,PTSから被告DCJへ転籍した。
被告Y2は,同年12月3日,被告DCJの代表取締役を辞任した。
(13)  Aは,被告DCJに勤務するようになって以降,被告大塚商会から被告DCJに支払われている本件業務委託代金の存在を認識したが,これに対応する業務が存在せず,被告大塚商会らにおいて,本件NW株式譲渡契約に基づく譲渡代金を増額させるため,架空取引に基づき被告ネットウェーブに対する支払を行い,これにより本件株式交換の際にも,被告ネットウェーブの企業価値が不当に高く評価されたものと考え,以後,被告らが業務の実体のない本件業務委託契約及びそれに基づく支払によって被告ネットウェーブの利益を水増ししたことの証拠を収集することに努めるとともに,弁護士に対し,DCAと締結するレター契約の草案の作成を依頼した。
(14)  Aは,平成13年12月7日,DCAの当時の最高経営責任者(CEO)であるJらに対し,被告大塚商会らが,本件NW株式譲渡契約に基づく譲渡代金を増額させるため,被告大塚商会と被告ネットウェーブの間に,業務の実体のない業務委託契約を締結させて不当に被告ネットウェーブの収益を高めた旨及び自身がその証拠を保有している旨報告した上,弁護士に作成させたレター契約の草案(被告大塚商会らから得られる利益を,DCAに70パーセント,原告らに30パーセントの比率で分配する旨記載されている。)を示し,契約書に署名することに同意しない限り,それ以上の情報提供をしないなどと告げた。
原告らとDCAの間では,同月18日までには,DCAが被告大塚商会らから得た利益の30パーセントが原告らに分配される旨の基本的合意が形成され,その後,本件業務委託契約,本件NW株式譲渡契約等に起因する原告ら及びDCAの被告大塚商会らに対する請求権についての行使方法,当該請求について和解をする際の手続,被告大塚商会らから得た利益の分配方法等についての交渉が行われ,弁護士を介しながら,10回ほどレター契約の草案のやり取りが行われて契約条項の検討及び改訂がなされた。その間,原告らからDCAに対し,Aが保有している上記の証拠及び情報が開示され,また,DCAは,プライスウォーターハウスクーパースに対して調査を依頼した。
Jは,平成14年2月5日付け書面で,DCAの取締役及び取締役代理に対し,レター契約の草案を示した上,「Aは,被告Y2において,DCAからの支払を最大限に引き出すため,被告大塚商会と共謀して,被告大塚商会と被告ネットウェーブ間の取引を偽装したことを示す証拠を発見したようである」,「Dは,相当な時間を費やして,A及び原告X1との合意について交渉を行い,Aが保有する証拠の検討を行った。同証拠は,東京の二つの国際的法律事務所によっても検討された」,「Dによれば,Aが保有している証拠には,被告大塚商会らが当初の株主間契約に違反したことをかなり強く示す証拠があるとのことである」,今後の方針として,「①A及び原告X1とレター契約を締結し,②被告大塚商会らに対して書面を送付して,明らかになった特定の契約違反についての協議の結果が出るまで,最終支払を留保する旨知らせ,交渉を行うことを要請し,③被告大塚商会らとの交渉には,DCAの優秀な弁護士を同席させ,2000万米ドルを上限とする補償を求める」,「現段階において,このような状況がどのような進展をみせるのかについては確信が持てない」旨報告した。
(15)  DCAは,平成14年2月ころ,Aからの上記報告及び開示された証拠並びに情報に基づき,本件業務委託契約が本件NW株式譲渡契約に基づく譲渡代金額に影響を与える可能性があると考え,被告大塚商会らに対する交渉を開始させたが,DCAと被告大塚商会らとの間では,①本件NW株式譲渡契約の際に,DCAに開示されるべき契約書が存在したか,ないしは,本件業務委託契約書がDCAに開示されなかったことが本件NW株式譲渡契約違反となるかという点,②本件業務委託代金がその業務に見合った金額であったかという点,③被告大塚商会に本件NW株式譲渡契約違反があったかという点,④本件NW株式譲渡契約の解釈等が争点となった。
被告Y2の被告DCJ勤務当時の秘書であったKは,平成14年2月初めころ,被告Y2が使用していたパソコンのデータを廃棄した。
(16)  レター契約には,冒頭に「本書簡は,被告DCJに関する,DCA,原告リスボア及びaトラストの被告大塚商会らに対する一定の潜在的な請求権に関する我々の議論をフォローアップするものである。Aと原告X1は,相互の協力及び回復額又は賠償の分配の方法についての全体的な理解について,書面で再確認することが必要であると考えている。」旨記載されており,その骨子は下記のとおりである。

ア DCA及び原告らは,合理的かつ法律的に可能な範囲で,情報の収集,共有及び開示並びに和解又は直接的若しくは間接的な解決において協調し,かつ完全に協力する(2条)。
イ DCA又はその関係会社が被告大塚商会らとの間の和解,判決等により得た利益等は,DCA又はその指定する者に対して70パーセント,原告らにそれぞれ15パーセントの割合で分配される(4条)。
ウ DCA及び原告らは,それぞれ,被告大塚商会らに対して自己の請求を進めるか否かを決定し,かつその解決の方法を支配する唯一の権利を有する(6条)。
エ 本書簡契約に定める当事者の約束を約因として,原告ら及びDCAは,他方当事者並びにその関係会社,役員,取締役及び代理人を,本件PTS株式譲渡契約,PTSと被告ネットウェーブとの合併並びにPTS及び被告ネットウェーブ又は被告DCJの経営又は運営に関する請求から免責することに合意する。ただし,重過失又は故意による作為については免責しない(8条(a))。
(17)  Aは,平成14年4月20日,Dに対し,電子メールにおいて,DCAが被告大塚商会らとの和解により得られる経済的利益について述べながら,被告DCJの現時点の価値が4000万ドルから5000万ドルである旨指摘した。これに対する返信として,Dは,同月22日,電子メールにおいて,被告DCJの価値が事実上4000万ドルを超えるとの意見には正当性がないこと,被告DCJの価値が1000万ドルから2000万ドルであること,被告DCJの業績が著しく低迷し続けていること,今年はおそらく損失が出るであろうことを指摘した上,被告DCJの過去の僅かな利益について「artificial」と表現した。
(18)  平成14年4月25日,原告X1が被告DCJの取締役を辞任し,Aが被告DCJの取締役に就任した。
(19)  Dは,平成14年4月29日,Aに対し,原告らが被告大塚商会らに対する請求を放棄することについての意見を尋ねた。
(20)  DCAは,平成14年5月10日,被告大塚商会らとの間で株式の売買契約を締結した。
(21)  被告Y1は,平成14年5月10日,被告DCJの取締役を辞任した。
(22)  原告らは,平成14年6月12日ころに本件和解の成立及びその骨子を知って以降,DCAに対し,本件和解の内容についての詳細な情報を提供することを求めたが,DCAは,これに応じなかった。
DCAは,同年8月2日付け書面で,原告らに対し,レター契約4条に基づく義務の履行として原告らに支払う金額等を報告したが,同書面には,ソフトウェア契約に基づいてDCAが158万5000ドルの利益を受領した旨,「株式譲渡契約に基づく最終分割支払に関する貯蓄額」が5億4810万円である旨及び被告DCJ株式を528株受領した旨記載されている。
(23)  Aは,平成15年12月31日,被告DCJの取締役を退任した。
(24)  原告らは,平成16年2月,シンガポール高等裁判所に対し,DCAを被告として,原告らがDCAとレター契約により委任契約を締結したなどと主張して,当該委任契約に基づく本件和解に関する情報及び書類の開示並びにレター契約4条に基づく金銭の支払等を求める訴訟を提起したが,同裁判所は,平成17年9月,原告らの請求をいずれも棄却した。
原告らは,上記裁判に対して不服申立てをしたが,当該不服申立ては,平成18年3月,シンガポール最高裁判所によって退けられた。
(25)  被告DCJの株主名簿上,平成16年9月30日時点での株主構成(発行済総株式数2800株)は,DCAが2670株,データクラフトジャパン従業員持株会が52株,Iが20株,aトラストが20株,Hが19株,原告リスボアが19株である。
(26)  被告DCJは,平成15年10月1日から平成16年9月30日までの期,平成16年10月1日から平成17年9月30日までの期,平成17年10月1日から平成18年9月30日までの期につき,いずれもその期末において債務超過となっている。
(27)  DCAは,データクラフトジャパン従業員持株会,I及びHから被告DCJ株式合計91株の譲渡を受けたので,現在の被告DCJの株主は,DCA,aトラスト及び原告リスボアである。
2  争点(1)(被告らの不法行為事由の有無)について
(1)  原告らは,本件業務委託契約が業務の実体のない契約で,被告らが,本件業務委託契約書を作成して実体のない業務についての業務委託代金の名目で,被告大塚商会から被告ネットウェーブに対する多額の金銭の支払を行わせた旨主張し,これを前提として被告らの不法行為責任を主張するので,本件業務委託契約が業務の実体のない契約であったか否かについて検討するに,上記認定事実によれば,被告ネットウェーブが被告大塚商会に対し,ネットワークシステム関連の営業活動の支援業務,販売促進についての支援業務,技術についての支援業務を提供したこと,これらの業務が本件業務委託契約書に沿ったものであることが認められ,本件業務委託契約に業務の実体があったことは明らかであり,本件業務委託契約が実体のない契約であるとか,業務が架空であったとか,対価なく本件業務委託代金が支払われたと認めることはできない。
(2)  この点,原告らは,本件業務委託契約が業務の実体がなかったことの根拠として,被告ネットウェーブの従業員が本件業務委託契約に費やした時間を記載した「技術支援費明細票」(甲7,40)には,きりの良い数字ばかりが並んでおり,被告ネットウェーブにおいて別に集計及び作成がされていた作業時間内訳書(甲29)の内容との間に齟齬がある旨主張するとともに,原告リスボア代表者は,上記作業時間内訳書は,顧客に対するタイムチャージの請求の基となるものであるから,当該顧客に関して費やした作業時間を正確に記録する必要がある旨供述する。
しかしながら,上記認定事実によれば,上記明細票は,ネットワークシステムに詳しくない被告大塚商会の監査法人又は被告大塚商会の経理部に対して,本件業務委託契約に係る業務の内容を報告,説明するために作成されたもので,しかも,その業務委託代金は,タイムチャージではなく,毎月定額が支払われることとなっていたのであるから,必ずしも,現実に従業員が費やした作業時間を正確に記録することが求められていたわけではないことが窺えること,本件業務委託契約に基づく業務に従業員が費やした作業時間について,上記作業時間内訳書においていかなる記載をすることになっていたのかは不明であること,上記明細票と上記作業時間内訳書とで齟齬が生じているとしても,明らかになっているのが,平成11年7月1日から平成13年12月31日までの本件業務委託契約期間のうち,二人の従業員についての平成13年5月15日から17日まで及び同月22日から24日までの作業時間だけであることからすれば,原告リスボア代表者の上記供述及びこれを基礎とする原告らの上記主張を採用することはできない。
(3)  また,原告らは,被告大塚商会,被告ネットウェーブ等において,本件業務委託契約に係る業務内容の証拠書類の作成について打ち合わせが行われていたこと,被告大塚商会の監査法人が本件業務委託契約について問題視していたことをその根拠として主張する。
確かに,上記認定事実のとおり,被告大塚商会の監査法人又は被告大塚商会の経理部が本件業務委託契約に基づく業務の内容等について疑問を呈したり説明を求めることが度々あり,被告ネットウェーブから被告大塚商会に対して提出される業務内容を報告する書類等の作成方法等についての打ち合わせが行われていたことが認められるが,業務を遂行した場合に,当該業務が遂行されたことを報告するための書類が作成されたり,その書類の作成方法について契約当事者間において打ち合わせが行われたりすることは何ら不審なことではなく,また,当該契約における実務担当者ではない経理部や社外の監査法人において当該契約内容ないし当該業務内容について疑問を呈して説明を求めることが度々あったからといって,直ちに当該業務の実体について疑義が生じるものではないというべきであるから,原告らの上記主張も採用することができない。
(4)  さらに,原告らは,本件和解が成立して被告大塚商会らがDCAに対して損害賠償をしたということが,被告大塚商会らにおいて本件業務委託契約により被告ネットウェーブ株式の価格を水増ししたことを認めたことにほかならないとか,原告らとDCAとの間でレター契約が締結されたこと自体,DCAにおいて,被告大塚商会らが不正行為をしたことをほぼ確信していたことの現れであると主張するほか,DCAがレター契約に基づいて原告らに対する支払を行ったことや,J及びDが作成した書面又は電子メールも,DCAにおいて上記不正行為の存在を確信していたことを示している旨主張する。
まず,本件和解の成立に係る原告らの主張につき,確かに,上記認定事実によれば,本件和解に当たって被告大塚商会らとDCAとの間では,①本件NW株式譲渡契約の際に,DCAに開示されるべき契約書が存在したか,ないしは,本件業務委託契約書がDCAに開示されなかったことが本件NW株式譲渡契約違反となるかという点,②本件業務委託代金がその業務に見合った金額であったかという点,③被告大塚商会に本件NW株式譲渡契約違反があったかという点,④本件NW株式譲渡契約の解釈等が争点となったものであり,さらに,本件和解の内容は,形式はどうあれ,被告大塚商会らがDCAに対して利益をもたらすものであったことが窺えるが,一般に,和解が成立したことをもって,必ずしも,一方当事者において,前提となった争点すべてについて完全に非を認めたものと評価できるものではないというべきであるし,上記認定事実及び弁論の全趣旨に照らしても,被告大塚商会らにおいて,上記②の点について非を認め,更に,原告らが本訴で主張しているように,業務の実体のない業務委託契約を締結して,その業務委託代金の名目で被告ネットウェーブに対する支払を行わせて被告ネットウェーブの売上げを水増ししたとの事実関係をも認めた上で,本件和解に至り,それによる損害を填補したものと認めることもできないから,原告らの上記主張を採用することはできない。
また,DCA及びその関係者の認識に係る原告らの主張については,Jが作成した平成14年2月5日付け書面,Dが同年4月22日にAに対して送信した電子メールのほか本件全証拠によっても,同人ら又はDCAにおいて,上記②の点又は原告らが本訴で主張している被告大塚商会らの不法行為の存在について確信を有していたと認めることはできないのであるから,原告らの上記主張を採用することもできない。
(5)  その他,原告らは,本件業務委託契約に係る業務の実体がなかったことの根拠を縷々主張するが,これらの主張についても,事実に基づかないものであるか,憶測に基づく独自の見解というべきものとして,いずれも採用することができないものであるし,他に,本件業務委託契約に業務の実体があった旨の上記認定を覆すに足りる的確な証拠はない。
(6)  以上説示したところによれば,本件業務委託契約が業務の実体のない契約であったことを前提として被告らに不法行為が成立する旨を主張する原告らの主張は,その前提を欠くものとして失当たるを免れない。
第4  結論
よって,原告らの被告らに対する請求は,その余の点につき検討するまでもなく,いずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 土肥章大 裁判官 山崎惠 裁判官 宇波なほ美)

 

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