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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(166)平成25年 7月24日 東京地裁 平23(ワ)3608号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(166)平成25年 7月24日 東京地裁 平23(ワ)3608号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成25年 7月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)3608号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求一部認容  上訴等  控訴(後取消、請求棄却、上告受理申立)  文献番号  2013WLJPCA07248001

要旨
◆企業再生を目的とするアドバイザリー契約を締結した者が,契約上求められる適法かつ有効な行為を助言すべき義務に違反したとして損害賠償義務を負うとされた事例

裁判経過
控訴審 平成26年 1月23日 東京高裁 判決 平25(ネ)5108号 損害賠償請求控訴事件

参照条文
破産法160条1項

裁判年月日  平成25年 7月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)3608号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求一部認容  上訴等  控訴(後取消、請求棄却、上告受理申立)  文献番号  2013WLJPCA07248001

東京都港区〈以下省略〉
破産者株式会社アイビー興産破産管財人
原告 X
同破産管財人代理 A
同 B
同 C
同 D
同 E
同 F
東京都中央区〈以下省略〉
被告 みらいエフピー株式会社
同代表者代表取締役 G
同訴訟代理人弁護士 小島冬樹
同 信國篤慶
同 金丸和弘

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,4387万4653円及びこれに対する平成23年2月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,これを20分し,その3を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求(1と2は選択的請求)
1  被告は,原告に対し,5億円及びこれに対する平成23年2月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,5億円及びこれに対する平成23年2月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,破産者株式会社アイビー興産(以下「破産会社」という。)が,被告との間で,本業を存続させることを目的として事業譲渡等の助言を受ける旨のアドバイザリー契約を締結し,被告が破産会社に対し同契約に基づき①破産会社に損害を生じさせない内容の助言等を行う義務(以下「本件義務①」という。)又は②助言業務の提供に当たって法令を遵守すべき義務(以下「本件義務②」という。)を負っていたにもかかわらず,被告が提案した事業譲渡を実行した結果,破産会社において,当該事業譲渡の対象となった資産のうち担保が付けられていた部分を差し引いた残額17億9050万2824円相当の資産を喪失したとして,破産会社破産管財人である原告が,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づき,喪失した資産の時価相当額及び報酬相当額に係る損害の一部の賠償及び遅延損害金の支払を求める事案である。
1  争いのない事実等(以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。)
(1)  当事者等
ア 破産会社(旧商号は磯部塗装株式会社。平成21年2月17日に株式会社アイビー興産に商号変更)は,塗料及び塗装用機械器具の販売等を目的とする株式会社であり,Hが代表取締役の地位にあった。(甲2)
イ アイエスエレクトロニクス株式会社(平成21年2月17日に磯部塗装株式会社に商号変更。以下,商号変更の前後を通じ,「アイエス社」という。)は,塗料及び塗装用機械器具の販売等を目的とする株式会社で,事業譲渡がされた当時,破産会社の完全子会社であり,同年4月17日までHが代表取締役を務め,同日以降はHの甥であるIが代表取締役を務めている。(甲7)
ウ 被告は,企業の事業譲渡,資産売買,資本参加,業務提携及び合併に関する調査,企画並びにそれらの斡旋,仲介に関する業務等を目的とする株式会社であり,従業員として弁護士,公認会計士等の企業再生の専門家を擁し,未上場企業を中心に,企業再生業務を含む各種フィナンシャルアドバイザリーを中心としたサービスを提供している。(甲3,4)
(2)  事実経過
ア 破産会社の事業は,大別して,創業当時からの事業(塗装工事事業,建築・土木事業及び不動産賃貸事業等)のうち本業として営んでいる塗装工事事業と,平成5年ころから営んでいる,ビュファ・コンクリート・プロテクシーヨン・ジャパン株式会社(以下「ビュファ社」という。)等を取引先とする塗料及び建築資材等の販売事業(以下「ビュファ社関連事業」という。)の2つに分かれていた。(甲10,11,28,乙64)
ビュファ社関連事業の中には,商品販売取引のほか,2種類の取引があり,そのうちの1つは,ビュファ社等との間で,次のとおり,輸入特殊塗料の卸売に係る取引(以下「本件材料販売取引」という。)をするものであった。(甲10,11,28,42,乙15)
(ア) 取引内容
株式会社リーフ等合計11社(以下「本件特約店」という。)が,ビュファ社から工事の発注を受け,破産会社は,本件特約店から当該工事に必要な製品(輸入特殊塗料)の発注を受けてビュファ社から当該製品を購入し,これを本件特約店に掛け売りをする。
(イ) 支払方法
破産会社は,本件特約店に対する売掛債権については,本件特約店から銀行振込により弁済を受け,ビュファ社に対する売掛債務については,ビュファ社に対して5か月サイトの手形を振り出す方法により弁済をする。なお,当該手形の決済原資は,本件特約店から支払われる上記の弁済金である。
イ ビュファ社は,平成21年1月頃,経営難となり,本件材料販売取引において,本件特約店に対する工事代金の支払を停止し,本件特約店は,これを理由として,破産会社に対する支払を拒絶するようになった。(甲10,28,乙15,64)
その結果,破産会社は,同月に満期が到来する手形は手持資金で決済したものの,同月下旬時点で,同年2月20日を満期とする約10億円の手形の決済資金が不足することとなった。(甲10,11,12の1ないし20,乙59)
ウ 破産会社は,本業について,取引先の流出を防止し,従業員の雇用を守ることを目的として,平成21年1月30日,被告との間で,所定の業務委託報酬により,破産会社の事務処理及び助言等をするアドバイザリー業務に係る契約(以下「本件アドバイザリー契約」という。)を締結した。(甲5,6,10,28,乙15)
エ 被告は,平成21年2月10日,破産会社に対し,次のとおり,アイエス社との間で事業譲渡等に係る契約(以下「本件事業譲渡契約」といい,この事業譲渡を「本件事業譲渡」という。)を締結することを助言した。(甲8,乙64)
(ア) 破産会社は,アイエス社に対し,全資産のうち本業に係る28億1811万1180円相当の資産を譲渡する(2条1項)。破産会社の本業に従事する従業員はアイエス社が引き継ぐ。
(イ) アイエス社は,破産会社の負債のうち本業に係る29億2818万4399円相当の債務について重畳的債務引受けをする(2条1,2項)。
(ウ) アイエス社は,破産会社に対し,事業譲渡資産の対価として100万円を支払う(3条1項)。
オ 破産会社は,平成21年2月17日,この助言に従ってアイエス社との間で本件事業譲渡契約を締結し,同日,破産会社は,商号を磯部塗装株式会社から株式会社アイビー興産に変更し,アイエス社は,商号をアイエスエレクトロニクス株式会社から磯部塗装株式会社に変更し,その後,破産会社は,上記エ(ア)に係る資産の譲渡を実行した。(甲2,7,8,10,11,乙64)
カ 破産会社は,平成21年2月20日,上記イの手形について不渡りを出した。
キ 破産会社は,顧問弁護士でもある破産申立代理人弁護士に委任して,平成21年12月25日,東京地方裁判所に対して破産手続開始の申立てをし,平成22年1月6日午後5時,破産手続開始決定を受け,同日,原告が破産管財人に選任された。(甲1,2)
ク 原告は,本件事業譲渡が破産債権者を害する行為に該当し,破産会社及びアイエス社はそのことについて認識があったとして,破産法160条1項1号に基づいて本件事業譲渡を否認する旨の請求を破産裁判所に対してしたところ,同裁判所は,平成22年11月30日,本件事業譲渡が否認権行使の対象となるとして,アイエス社に対し,破産会社からアイエス社に移転したことが明白な土地の原状回復を命ずるとともに,その余の財産については特定が困難であるとして,20億5631万1180円の支払を命ずる旨の決定をした。(甲13)
上記決定に対し,異議の訴えが提起されている。
(3)  本件アドバイザリー契約に基づく報酬及び被告の責任制限条項
本件アドバイザリー契約には,(1)損害賠償の請求額は合計で業務委託報酬相当額までとし(9条1項),(2)当該業務委託報酬額は,被告に対する損害賠償請求の場合には,被告が受領済みの業務委託報酬相当額を意味するものとし,被告は受領済みの業務委託報酬相当額の全部又は一部を返還することを超えて損害賠償の支払義務を負わないこと(9条2項)が定められている(以下,この合意を「本件責任制限合意」という。)。(甲5)
また,業務委託報酬については,当初,本件アドバイザリー契約3条及び業務委託報酬に関する覚書において定められていたが,その後,被告と破産会社は,本件事業譲渡にかかる業務委託報酬について,平成21年2月20日,①5億円以下の部分についてはその3%,②5億円超10億円以下の部分についてはその2%,③10億円を超える部分についてはその1%に相当する金額とする旨合意した。(甲5,6,乙3)
そして,被告は,同月末までに,破産会社から,本件アドバイザリー契約に基づく業務委託報酬として合計4387万4653円の支払を受けた。(甲11,乙3)
2  争点
(1)  本件義務①に係る債務不履行責任の有無(争点1-1)
(原告の主張)
ア 本件アドバイザリー契約は,破産会社の「企業再生を目的」として,破産会社の「財務改善」に関する事務処理及び助言等を委任するものであるから,被告は,破産会社に対し,本件アドバイザリー契約に基づき,破産会社の財務を悪化させ,又は破産会社に損害を与える内容の助言等をしてはならないという義務(本件義務①)を負う。
また,被告は,準委任契約である本件アドバイザリー契約に基づく善管注意義務を負うところ,本件アドバイザリー契約は,破産会社の「企業再生を目的」として,破産会社の利益のために行うものである以上,当該善管注意義務の内容として,上記の義務が当然に内包される。
イ(ア) しかしながら,被告が本件アドバイザリー契約に基づいて立案し,実行を指導した本件事業譲渡は,破産会社に対して損害を生じさせるものである。すなわち,破産会社は,本件事業譲渡の実行により,アイエス社に対して,時価28億1811万1180円の資産を譲渡し,譲渡代金として100万円を受領したのみであるから,その差額である28億1711万1180円を失った。
なお,当該資産には,時価合計10億2660万8356円の担保設定済み不動産が含まれていたところ,破産会社は,本件事業譲渡がなければ,少なくとも譲渡資産から上記担保設定済み不動産の価額を控除した残額17億9050万2824円相当の資産を引き続き所有していたはずであるから,本件事業譲渡によって,少なくとも17億9050万2824円の損害を被ったといえる。
(イ)a 被告は,完全親会社が完全子会社に対して資産及び負債を譲渡した場合には,完全親会社の財産状態が増減することはありえないと主張する。
しかしながら,完全親会社といえども,完全子会社とは別の法人格である以上,完全子会社の資産・負債と親会社の資産・負債とを一体視することは許されないし,本件事業譲渡の結果,アイエス社の株式価値が移転した資産と同額分上昇するものでもない。
また,完全親会社が完全子会社から譲渡資産を再度譲り受けるためには,完全子会社に対して適正な対価を支払わなければならず,吸収合併による場合には債権者異議手続が必要であるから,完全親会社である破産会社の自由な意思により,アイエス社から譲渡対象資産を返還させることができるものではなく,その意味においても,破産会社とアイエス社の各資産・負債を一体と見ることはできない。
b 被告は,アイエス社が重畳的債務引受けをし,破産会社とアイエス社の内部負担割合が0:100であったから,破産会社が本件事業譲渡によって譲渡した資産の価値を上回る額の債務を実質的・経済的に免れた旨主張する。
しかしながら,本件事業譲渡契約上,内部負担割合は「破産会社は譲渡対象資産に含まれる不動産を処分したことにより得られた額であり,アイエス社はその余の部分とする。」旨定められているから,被告の主張はその前提を欠く。
内部負担割合が被告の主張のとおりであるとしても,本件事業譲渡においては,重畳的債務引受けがされたにすぎず,破産会社は譲渡対象の債務を免れていないから,債務消滅の利益を考慮することはできず,譲渡資産に相当する求償権を取得したこともない。
重畳的債務引受けの後,アイエス社の弁済等により破産会社の債務が消滅したとしても,引受債務の消滅の利益を同額の資産の取得と同視することはできない。すなわち,譲渡人が債務超過かつ支払不能状態である場合において,債務の消滅が譲渡資産と対価性を有するというためには,当該債務消滅行為がなければ負債相当額の資産の逸失を余儀なくされる状況にあり,当該債務消滅行為の有無によって譲渡人の財産状態に変動がないという関係が存することが必要であるところ,本件においては,破産会社は,債務超過かつ支払不能に陥っており,破産管財人等による案分弁済のみが予定され,重畳的債務引受けに係る債務につき全額の弁済を余儀なくされる状況にはないことから,破産債権に該当する債務の消滅は,当該債務額での資産の取得とは同視し得ず,対価の相当性を肯定することはできない。
また,仮に事後的にアイエス社が引き受けた債務を弁済し,その結果,破産会社の債務が消滅した場合においても,破産会社は当該債務消滅時に支払不能状態であり,支払不能時に破産債権に該当する債務消滅を対価として資産を譲渡することは法律上禁止された違法な行為であるから,破産会社が本件事業譲渡を行うべき理由は全くない。
c 仮に,アイエス社が引受債務を事後的に弁済し,その結果,債務が消滅したことによって何らかの利益が破産会社に生じるとしても,破産手続が予定されている本件においては,当該債務消滅の利益は,最大でも消滅した債務額に予想破産配当率を乗じた額にとどまる。なぜならば,消滅の対象となる債務に係る債権の実質的価値は,倒産により著しく低下し,全額の弁済ではなく,破産配当率の範囲での案分弁済が予定されているにすぎないからである。
ウ したがって,破産会社に莫大な損害を与える本件事業譲渡を立案し,実行させたことは,被告が,破産会社の財務を悪化させ,又は破産会社に損害を与える内容の助言等をしてはならないという義務に違反することは明白である。
よって,被告は,原告に対し,本件義務①の債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。
(被告の主張)
ア(ア) 破産会社は,平成21年1月30日の時点で,可能な限り破産会社の本業を存続させて,従業員の雇用,取引先を守ることを目的として,被告に事務処理及び助言等を依頼し,ビュファ社から支払の確約を得られなかった同年2月6日以降,手形が不渡りとなることを想定した措置を執らざるを得なくなり,最低限,破産会社の破産によって直ちに本業を含む全事業が停止しないよう,本業を保全することを要望し,そのための施策を選択して実行することとしたのであるから,同日以降,被告が負っていた債務の具体的な内容は,本業の保全に関する事務処理及び助言等を行うことである。
被告が本件アドバイザリー契約に基づいて何らかの善管注意義務を負うとすれば,その内容は,同契約の債務の本旨に従い,同契約の目的に適合するように事務を処理すべき義務であり,企業再生とは,破産会社における事業の存続に限らず,他の法人格において事業を存続させることを含むものであり,本業である事業を存続させて,従業員の雇用,取引先を守るための施策について事務処理及び助言等を行うことであるから,具体的な債務の内容を離れて,「委託者に損害を生じさせる助言等をしてはならない義務」を負うものではない。
(イ) 破産会社が手形不渡りにより倒産すれば,全事業が破綻し,スクラップ・バリューしか残らないことになるため,被告は,緊急避難的措置として,本件事業譲渡により本業を完全子会社に譲渡して存続させ,本業の事業を保全した状態で,平成21年2月20日満期の手形が不渡りとなれば速やかに破産手続開始の申立てを行い,完全子会社であるアイエス社に譲渡された本業の取扱いについては,事業を継続させるか,清算するか等を含め,破産管財人(原告)の判断に委ねるというスキーム(以下「本件スキーム」という。)を破産会社に提案し,必要書類の原案作成等の事務処理をすることにより,本件アドバイザリー契約上の債務を履行した。
本件スキームは,破産管財人が,本業を含む破産会社の事業全体を清算すべきであると判断した場合には,事業存続が叶わないことも念頭に置いたものであるが,本業がスクラップ・バリューになることは全ての債権者にとって不利益であるから,破産管財人も完全子会社において本業を継続すべきであると判断するであろうことが合理的に期待されていた。
イ(ア) 完全親会社である破産会社が完全子会社であるアイエス社に対して資産・負債を譲渡した場合,アイエス社の資産・負債が増加し,それが破産会社の所有するアイエス社株式の価値に反映されるから,本件事業譲渡によって破産会社の財産状態が変動することはない。
また,本件事業譲渡の譲受人が完全子会社である以上,譲渡人であり親会社である破産会社は,本件事業譲渡後に,自らの意思決定により,アイエス社からその事業を譲渡(返還)させ,又はアイエス社を吸収合併する等により,本件事業譲渡の対象事業を再度破産会社自身の所有とすることが容易であるから,実質的・経済的に見れば,破産会社は,本件事業譲渡後においても,譲渡対象事業の価値をそのまま把握しているのであって,その資産は何ら減少していない。
したがって,本件事業譲渡は,完全親会社である破産会社に損害を生じさせるものではない。
(イ) 本件事業譲渡においては,譲渡対象債務の価額が譲渡対象資産の価額を上回っていた。そして,債務引受けの方法として,免責的債務引受けのために,手形の満期(平成21年2月20日)までに債権者の同意を得ることが不可能であったため,重畳的債務引受けの方法がとられたが,その内部負担割合は破産会社が0%,アイエス社が100%と合意されており,本件事業譲渡契約書11条の記載は誤記である。
このため,本件事業譲渡の後においても,①アイエス社が譲渡対象債務を弁済すれば,形式上破産会社に残っていた連帯債務は当然に消滅し,②仮に破産会社が譲渡対象債務を弁済した場合でも,破産会社はアイエス社に対してその全額を求償することができ,その際,譲渡対象資産を引当てとして求償権の満足を得ることができるから,実質的・経済的に見れば,本件事業譲渡の前後を通じて,破産会社の「財産」は何ら減少していない。
(2)  本件義務②に係る債務不履行責任の有無(争点1-2)
(原告の主張)
ア 被告は,弁護士や公認会計士を擁する専門家として,企業再生に関して受任をした以上,助言業務の提供に当たり,法令を遵守し,適法かつ有効な行為を助言すべき義務を負う。この法令遵守義務の存在は,本件アドバイザリー契約においても確認されている(8条)。
イ(ア) しかしながら,本件事業譲渡は,次のとおり,債務超過かつ支払不能の状態にあった破産会社の財産及び破産債権者を害する詐害行為として破産法160条1項1号により否認されるべきものであり,実際に既に否認され,現に破産会社及び債権者は害されているから,破産法265条以下の罰則規定に照らしても,違法であることは明らかである。
すなわち,本件事業譲渡は,ビュファ社関連事業に係る債権者も含めた総債権者の共同の担保となるべき約28億円の資産について,破産会社がアイエス社に譲渡をする一方,アイエス社からわずか100万円の対価を受け取るというものであって,その差額分だけ債権者の共同担保としての財産を減少させる行為であるから,債権者を害するといえる。
また,破産会社は,本件事業譲渡の日である平成21年2月17日において,同月20日以降の手形決済ができず,倒産が避けられない状態であり,現に,本件事業譲渡後も,手形債務をはじめビュファ社関連事業に係る債務を一切支払うことのないまま,破産手続開始決定を受けたのであるから,本件事業譲渡の時点で既に支払不能状態であったことは明らかである。
さらに,本件事業譲渡の当時,破産会社の代表者とアイエス社の代表者はいずれもHであり,同人が本件事業譲渡契約を締結しているのであるから,破産会社とアイエス社はいずれも債権者を害することを当然に知っていたといえる。
したがって,本件事業譲渡は,破産法160条1項1号の破産債権者を害する行為に該当し,詐害行為否認の対象となる。
(イ) 被告は,破産会社から提供を受けた説明及び資料により,ビュファ社関連事業はビュファ社を中心として資金が循環している取引(循環取引)であることを明確に認識していた。なお,循環取引は,一度その枠組みが破たんすれば,全体として取引の枠組みが破たんするという特徴を有するから,循環取引であることの認識を有していれば足り,架空循環取引であることの認識までは必要ない。
このことに加え,被告は,ビュファ社が本件特約店に対する支払を怠り,本件特約店から本件材料販売取引による代金が一切支払われなかったことにより,破産会社が手形不渡りの危機に陥ったことなどを知っていたのであるから,本件事業譲渡日である平成21年2月17日までに,同月20日に手形不渡りを出すことが確実であり,当該手形債務について一般的かつ継続的に支払うことができない状態に陥ることを確実に予期していた。
したがって,被告が,破産会社に対し,本件事業譲渡を立案し,実行させたことは,助言業務の提供に当たって法令を遵守すべき義務に違反する。
(被告の主張)
ア 本件事業譲渡は,次のとおり,破産法160条1項1号の破産債権者を害する行為には該当しない。
(ア) 上記(1)(被告の主張)イ(ア)のとおり,破産会社は,本件事業譲渡後も,完全子会社であるアイエス社の株式を介して譲渡対象資産の価値を把握しており,破産会社の財産は何ら減少していない。また,同(イ)のとおり,実質的・経済的に見れば,本件事業譲渡によって,譲渡した資産の価値を上回る額の負債を免れている。
したがって,本件事業譲渡は,破産会社の財産を減少させる行為には当たらない。
(イ) 破産法160条1項1号の破産債権者を害する行為というためには,破産者の純資産を減少させる行為に加えて,その行為が,破産者が債務超過の状態になった後にされたものであるか,少なくともその行為によって破産者が債務超過の状態に陥ることが必要であるところ,本件事業譲渡の時点においては,破産会社は,債務超過の状態にはなく,本件事業譲渡によって債務超過に陥ったのでもないのであって,一時的にビュファ社関連事業に係る債権の入金が滞っているにすぎず,いずれ回収可能であると見込まれていた。
また,破産債権者を害する行為の時期については,支払不能の状態となった後であれば足りるとする考えもあるが,破産会社は,本件事業譲渡の時点において,弁済期の到来した債務について一般的かつ継続的に弁済ができない状態にはなく,むしろ遅滞なく弁済を継続しており,支払不能ではなかった。
さらに,破産債権者を害する行為の時期について,破産会社の債務超過や支払不能が確実に予期される時期以降であれば足りるとしても,本件事業譲渡時点において,破産会社は債務超過でも支払不能でもなく,またその発生が確実に予測されていたものでもない。
したがって,本件事業譲渡は,破産債権者を害する行為ではない。
イ 次の諸点に照らすと,破産会社及び被告は,破産債権者を害することを「知って」本件事業譲渡を行ったものではない。
(ア) ビュファ社は,本件事業譲渡の当時,塗装業界において優良企業であると認識されており,被告がビュファ社関連事業について実施した資料の精査や破産会社の役職員に対するインタビュー等の短期集中的な調査では,ビュファ社関連事業における一連の取引に関して,何らの問題も発見されなかった。
そのため,破産会社及び被告は,本件事業譲渡の当時,ビュファ社関連事業の取引は実体のある取引であり,ビュファ社による本件特約店に対する債務の不払は,一時的な資金不足であって,これが解消されれば,ビュファ社から本件特約店に対する支払がされ,本件特約店から破産会社に対する支払もされるものと判断していた。
(イ) 破産会社及び被告は,本件事業譲渡当時,仮に破産会社が本件事業譲渡を実行せず,そのまま倒産状態に至った場合には,本業の資産の価値が大きく毀損されると想定しており,本件事業譲渡を実行することにより,これを実行しなかった場合と比べて,破産会社の財産状態が向上するものと認識していた。
(ウ) 破産会社及び被告は,破産会社がビュファ社関連事業において振り出した手形が金融機関により割り引かれていることを認識しておらず,同事業の債権者はビュファ社その他のごく限られた取引当時会社のみであると認識しており,同事業について金融機関が債権者として存在することを全く認識していなかった。
実際,破産会社は,債権者として認識していた全ての金融機関に対して事前に説明をした上で本件事業譲渡を実行しているところ,このことからも,破産会社としては,本件事業譲渡によっていずれの債権者も害されることはないとの認識であったことが裏付けられる。
(エ) 破産会社及び被告は,破産手続開始決定がされた後,破産管財人が債権認否においてビュファ社の債権を認めないこととした上で,取引当事会社と協議・交渉し,破産会社,ビュファ社及び本件特約店による三角相殺をすること等により債権債務関係を処理し,適切な解決がされると考えていた。
(3)  債務不履行責任に係る損害(争点2)
(原告の主張)
ア 上記(1)(原告の主張)イ記載のとおり,破産会社は,本件事業譲渡を実行した結果,時価28億1811万1180円から譲渡対価100万円を控除した28億1711万1180円の損害,又は少なくとも同額から別除権等の評価額を控除した17億9050万2824円の損害を被った。
また,破産会社は,本件事業譲渡後,本件事業譲渡の成功報酬として,被告に対し,4387万5000円を支払い,当該支払額相当の損害を被った。
イ 破産会社には単独で本件事業譲渡のスキームを構築・実行する能力はなく,被告による立案及び実行指導がなければ本件事業譲渡が実現しなかったことは明白であり,また,専門家である被告が本件事業譲渡を立案した場合に,破産会社がその助言・指導に従うことは,被告にとって通常当然に予見し得る。
したがって,被告の債務不履行行為である本件事業譲渡のスキームの立案及び実行指導と破産会社の上記損害との間に因果関係があることは明らかである。
破産会社が本件事業譲渡の実施について破産申立代理人弁護士に相談しており,当該弁護士が被告の提案内容の不備を看過したとしても,そのことは当該弁護士の責任を生じさせるにすぎず,上記因果関係を否定することにはならない。
ウ したがって,被告は,原告に対し,債務不履行に基づき,18億3437万7824円のうち5億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の主張)
ア 原告の主張する損害に対する反論は,上記(1)(被告の主張)イのとおりである。
イ 破産会社は,破産申立代理人弁護士による法的な判断の下,本件事業譲渡の内容を十分に理解した上で,自ら主体的に本件事業譲渡を実行したものであるから,本件事業譲渡の結果生じた「損害」は,破産会社自身の決定・実行行為の結果により生じたものであって,被告の事務処理や助言等によって生じたものとはいえず,被告の助言等との間に因果関係がない。
(4)  本件責任制限合意の適用の可否(争点3)
(原告の主張)
責任制限の合意は,債務者の故意又は重大な過失による責任については適用されないものと解すべきである。
ア 上記のとおり,本件事業譲渡は,破産会社に損害を生じさせることが明らかな内容であるところ,被告は,本件事業譲渡が破産会社に損害を生じさせる不利な内容のものであり,かつ,その実行により破産会社に現に損害が発生することを知悉した上で,本件事業譲渡に関する助言等を行ったものということができ,被告の債務不履行は故意によるものといえるから,被告の当該行為について,本件責任制限合意は適用されない。
イ 仮に,被告において,本件事業譲渡が破産会社に損害を生じさせることを認識していなかったとしても,被告は事業再生の専門家であるから,このような認識を欠いたことについて重大な過失が認められることは明白であって,本件責任制限合意が適用される余地はない。
(被告の主張)
否認ないし争う。
(5)  不法行為に基づく損害賠償責任の有無(争点4)
(原告の主張)
ア(ア) 上記(2)(原告の主張)イ(ア)のとおり,本件事業譲渡は,破産法160条1項1号の破産債権者を害する行為に該当し,詐害行為否認の対象となる。
(イ) 本件事業譲渡の目的は,ビュファ社関連事業に係る債権者にのみ破産による不利益を押し付け,本業に係る債権者に破産手続による処理が全く及ばないようにすることにあるところ,これは債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るという破産法の原則を没却する違法かつ不当なものである。
また,破産会社及びアイエス社は,本件事業譲渡によって,ビュファ社関連事業に係る債権者という特定の債権者のみが害されることを十分に認識していたのであるから,これらの者に対する害意の存在は明らかである。
そして,被告は,本件事業譲渡を主導的な立場で立案し,その実行に際しても,破産会社に具体的な指示を行うほか,自ら契約書や債権者への説明資料を作成するなど,終始積極的に関与した。その上,被告は,アイエス社のI(Hの甥)に対する新株発行が実行された後,同人から横浜化成株式会社への実体を伴わない「名義貸し」の株式譲渡スキームを提案して実行させ,原告の調査に対しても,その事実を隠匿し,原告のアイエス社に対する管理処分権の行使を妨害した。
したがって,被告の本件事業譲渡に関する一連の指導助言行為は,原告に対する不法行為を構成する。
イ 上記(1)(原告の主張)によれば,被告の指導助言行為により,破産会社には,少なくとも譲渡対象資産から担保不動産の価値及び譲渡代金100万円を控除した17億9050万2824円の損害が生じた。
ウ 被告は,本件事業譲渡を自ら立案した上で,これが破産会社及び破産債権者に損害を生じさせる詐害行為であることを認識しながら,「倒産隔離」の名の下に,支払不能かつ債務超過の状態に陥っていた破産会社に実行させたのであるから,故意に破産会社の責任財産を絶対的に減少させ,損害を与えたことは明らかである。
エ 被告の助言等の行為と上記イの損害との間に因果関係があることについては,上記(3)(原告の主張)イのとおりである。
(被告の主張)
ア 破産法においては,ある行為が結果として債権者を害したとしても,その行為時点において,債務者がそのような結果を積極的に意図していた場合でない限り,当該行為が違法とされるものではないところ,上記(2)(被告の主張)イのとおり,破産会社は,本件事業譲渡によって,債権者に不利益を与えるとの認識すらなかったのであって,まして,債権者を害する積極的な意図など一切なかった。
したがって,本件事業譲渡が違法と評価される余地はない。
イ また,本件事業譲渡の違法性とは別に,被告自身の行為について違法性が認められない限り,被告の行為が違法とされることはない。
(ア) アドバイザリー契約において,施策を決定してそれを実行したことにより生じた結果について責任を負うべき者は,委託者である破産会社自身であり,受託者である被告は,施策の決定・実行に際して,事務処理に協力し又は助言を行うにすぎない。本件アドバイザリー契約上も,破産会社は「事業譲渡に関する事項」等を「自ら主体的に実施する」ものであり,「自らの最終的判断,危険負担及び責任において本件目的を履践する」などとして,その旨が明記されている。
現に,破産会社自身も,このような理解を前提として,被告とは別に,法律専門家である破産申立代理人弁護士に依頼し,同弁護士と相談しながら,法的な当否の判断を含め,自らの判断で施策を決定して実行していた。
したがって,被告が破産会社に対して本件事業譲渡の実行を「指導」し,主体的に遂行したとはいえない。
(イ) 上記(2)(被告の主張)イのとおり,被告は,本件事業譲渡によって破産会社の債権者が害されるとの認識がなく,破産会社及びその債権者双方にとって利益となるよう事務処理及び助言等を行い,本件アドバイザリー契約上の債務を誠実に履行したのであるから,「行為の違法性が特に強い場合」には該当しない。
(6)  不法行為責任に係る損害(争点5)
(原告の主張)
上記(3)(原告の主張)のとおり,破産会社は,本件事業譲渡を実行した結果,資産の喪失により17億9050万2824円の損害を被り,また,被告に対し本件事業譲渡の成功報酬4387万5000円を支払うという損害を被ったものであり,被告の不法行為と破産会社の上記損害との間に因果関係があることは明らかである。
したがって,原告は,被告に対し,不法行為に基づき,18億3437万7824円のうち5億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の主張)
争う。
被告の主張は,上記(3)(被告の主張)のとおりである。
第3  争点に対する判断
1  認定事実
前記争いのない事実等と掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
(1)  取引関係
破産会社は,ビュファ社等との間で,本件材料販売取引のほか,次のような塗装工事に係る取引(以下「本件工事取引」という。)をしていた。(甲10,11)
ア 破産会社は,三洋電機株式会社又はビュファ社が受注した塗装工事を一括して受注し(下請),これをビュファ社に一括して発注(孫請)する。
他方,破産会社は,株式会社美和テック又はテイエスビーエンジニアリング株式会社(豊田通商株式会社,三洋電機株式会社及びビュファ社が共同で出資した会社)に対し,上記工事に必要な材料を発注する。なお,この材料はビュファ社製であり,株式会社美和テック又はテイエスビーエンジニアリング株式会社は,豊田通商株式会社を介してビュファ社から購入している。
イ 破産会社は,三洋電機株式会社から銀行振込により工事代金の支払を受ける。
また,破産会社は,ビュファ社に対して銀行振込により工事代金の支払をし,株式会社美和テック又はテイエスビーエンジニアリング株式会社に対しては,5か月サイトの手形を振り出す方法により弁済をしている。
(2)  事実経過
ア ビュファ社は,平成20年11月及び同年12月の支払について,破産会社に対し,数日の貸付けを依頼し,数日後にいずれも返済したが,同年12月末頃,平成21年1月の本件特約店に対する支払が間に合わない可能性がある旨を連絡した。
破産会社は,同月下旬頃,本件特約店に対し,販売代金を早急に入金するよう求めたものの,本件特約店から,ビュファ社から本件特約店に対する工事代金の入金がなければ,本件特約店から破産会社に対する販売代金を支払うことができないとの回答を受け,結局,本件特約店から同月分の売掛金の支払を受けることができなかった。
破産会社は,ビュファ社に対して,今回の経緯と今後の状況の説明を求めたものの,明確な回答を得ることはできなかった。
(甲11,27,31,乙64)
イ 被告は,破産会社の顧問弁護士(後の破産申立代理人弁護士)により破産会社を紹介され,平成21年1月29日,被告の代表者であるG,執行役員であるJ,FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)1部部長であるK,FAS2部部長兼法務部長であり弁護士であるL,企業調査部長であり公認会計士であるMが出席し,破産会社の当時の代表取締役であるH及び取締役のNと打合せをした。
その際,Hは,被告に対し,破産会社においては,ビュファ社関連事業の入金の多くが滞っており,同年2月20日に満期となる手形が不渡りとなる可能性があり,その場合には,本業を含む破産会社の全事業が停止して破たんするおそれがあり,このような中で,破産会社としては,できる限り本業である塗装工事事業等を存続させ,従業員の雇用や取引先を守りたいと述べた。
(甲27,乙64)
ウ 被告は,平成21年1月30日,破産会社との間で本件アドバイザリー契約を締結し,破産会社と打合せをし,本業とビュファ社関連事業とを切り分ける手法として,①新設分割により本業に係る資産,債務,雇用契約その他の権利義務を新設分割設立会社に承継させる方法と,②本業に係る事業を新設会社又は関連会社に譲渡する方法とを比較した結果,②の事業譲渡を選択することを決め,また,譲渡先を被告の完全子会社であるアイエス社とすることを決めた。
なお,被告は,いずれの場合においても,破産会社について,破産手続開始決定がされることを前提としており,被告が比較検討のために作成した説明資料には,事業譲渡による場合,破産会社が法的倒産手続に移行した後,事業譲渡が否認されるリスクがある旨の記載がある。
(甲11の1,乙59,64)
エ 被告は,本件アドバイザリー契約に基づく助言等を提供する前提として,本件アドバイザリー契約締結後直ちに,Mを中心として,破産会社の財務状況等の調査を実施した。
その結果,本業について,平成20年9月期の実績ベースによる月平均の当期損益はおよそ1289万円余りの損失と計算され,他方,ビュファ社関連事業について,年平均の同当期損益は1億7535万円余り(月平均は1461万円)の利益と計算された。
(乙4,6から8,64)
オ 破産会社の破産申立代理人弁護士は,平成21年2月6日,ビュファ社を訪問し,同月13日までの支払を求めたが,ビュファ社からは,支払えるよう努力しているといった曖昧な内容の回答しか得られず,支払の確約を得ることはできなかった。
そのため,破産会社及び被告は,同月20日満期の手形が不渡りになることを前提とした措置を執ることとし,被告は,同月10日,破産会社に対し,本件事業譲渡を提案した。
(甲10,乙64)
カ 破産会社及び破産申立代理人弁護士は,被告同席の下,平成21年2月17日,破産申立代理人弁護士の事務所において,破産会社の債権者である金融機関(破産会社と取引のあった全ての金融機関であり,具体的には,東京都民銀行,東日本銀行,日本政策金融公庫,みずほ銀行,三井住友銀行及び三菱東京UFJ銀行である。)に対し,ビュファ社の資金繰りの悪化から会社の継続が危ぶまれる状況が発生していること,破産会社については法的手続も視野に入れていること,アイエス社に破産会社の資産約28億4000万円を譲渡すると共に約29億円の負債について重畳的債務引受けをさせることなどの本件事業譲渡のスキームについて説明をし,同日,本件事業譲渡を行う予定であると説明した。
破産会社とアイエス社は,上記の説明会の終了後,本件事業譲渡契約を締結し,同月19日に本件事業譲渡に係る移転手続が完了した。
(甲8,28,乙15,60,61)
キ 本件事業譲渡当時,破産会社の財務は,赤字であった本業(平成20年9月期で4億2602万1668円の当期純損失)をビュファ社関連事業による利益(同月期で6億0137万2591円の当期純利益)が支えるという状態であった。(甲9,29,乙4から8)
なお,金融商品会計基準上,本件事業譲渡によっても,破産会社は第一次債務者としての地位から免責されないため,金融負債は消滅せず,アイエス社への求償金を債権として計上することになるが,破産会社は,実態開示を重視するためとして,譲渡対象負債を消滅させ,アイエス社に対する求償金も債権として計上しない会計処理をした。(甲11の2)
ク 破産会社は,平成21年2月20日に1回目の不渡りを出したが,不渡りとなった手形の被裏書人又はその取立委任を受けた者の中には,上記説明会に出席した金融機関のほか,横浜銀行,りそな銀行,北陸銀行,商工組合中央金庫が含まれていた。(甲12(枝番を含む。))
ケ 破産会社の本業が大きな赤字であったことから,本件事業譲渡後にアイエス社における本業の運転資金を確保するため,Hの個人資産である不動産を第三者に売却し,その売却代金の一部をアイエス社に貸し付けることとした。
Hは,平成21年2月26日,株式会社三樹に対し,東京都江東区東陽所在の不動産を5億4000万円で売却し,同日,手付金5400万円を,同年3月12日,残金4億8600万円をそれぞれ受領し,同月16日までに,アイエス社に対し,合計1億9900万円を貸し付けた。(甲11の1,乙15,54から58)
コ 破産会社は,アイエス社の全株式400株を保有していたところ,アイエス社は,Hの甥であるIに対し,1株5万円で普通株式800株を発行することとし,当該新株発行の当時,アイエス社の一株当たりの純資産は10万1595円であったため,1株当たり5万円での新株発行が株主以外の者に対する「特に有利な金額」による発行に該当するものであったことから,平成21年2月9日,アイエス社の臨時株主総会を開き,上記新株発行を可決した。
アイエス社は,Iに対して上記株式を割り当て,Iは,同月16日,4000万円を払い込み,アイエス社の全株式の3分の2を保有する株主となった。
(甲11の2,19,乙37の1,46)
なお,Kは,同月12日,Hに対し,破産会社の破産手続開始決定前に,アイエス社が増資をしない場合には,破産会社の100%子会社として,破産会社の破産管財人により第三者に株式を売却される可能性が高いとして,スポンサーである横浜化成株式会社と被告を交えて打合せをすべきであるとの電子メールを送信している。(甲17)
サ 破産会社は,平成21年2月23日,2回目の手形不渡りを出し,同月26日,銀行取引停止処分を受けた。(甲13,21の1及び2)
シ 破産会社とアイエス社は,平成21年3月31日,アイエス社の決算期に基づく本件事業譲渡の対象財産の確定に伴う修正として,本件事業譲渡の対象となる資産の額を合計24億5593万7983円,負債の額を25億1987万8531円に変更し,資産過多分としてさらに50万3100円をアイエス社が破産会社に支払う旨合意した。(乙32,65)
ス アイエス社は,平成21年4月3日,横浜化成株式会社との間で,横浜化成株式会社の支援によりアイエス社が事業再生を行うことなどを目的として,横浜化成株式会社が第三者に対してアイエス社を支援することを表明すること,アイエス社の株式800株を取得して横浜化成株式会社の連結子会社とすること,2億5000万円を上限とする手形割引の方法に限定して支援をすることとする合意書等を交わし,横浜化成株式会社は,Iから株式800株を1株5万円で買い取り,IのHに対する債務を免責的に引き受け,上記株式をHに引き渡すことにより債務の弁済に代えることができることなどの合意をした。これらの合意書ないし覚書などの文書は,被告において作成している。(甲11の2,乙20の1から5,21から24,65)
Hは,同月17日にアイエス社の代表取締役を辞任し,同日,Iが同社の代表取締役に就任し,アイエス社は,同月22日,説明会において,主要取引先に対し,被告作成に係る「弊社グループ再編についての経過ご報告」と題する書面を用いて,横浜化成株式会社が66.7%を出資し,手形割引による資金などの支援を受けることとなったことを説明した。(乙51)
セ ビュファ社は,平成21年4月,2回目の手形不渡りを出し,銀行取引停止処分を受け,ビュファ社の債権者から,同年7月,破産手続開始の申立てをされたのに対し,同年9月29日,民事再生手続開始の申立てをした。ビュファ社の民事再生手続について,同年10月,破産会社の破産管財人であるX弁護士が調査委員に選任され,民事再生手続開始の申立てが棄却され,同年11月2日,ビュファ社について破産手続開始決定がされて,X弁護士が破産管財人に選任された。(乙26,63)
なお,株式会社帝国データバンクは,同月7日付けの「TEIKOKUNEWS」において,ビュファ社の関係者が,ビュファ社が関与している塗料の取引の中に架空取引が含まれていたと述べた旨の記事を掲載している。(乙9)
ソ アイエス社は,本件事業譲渡後,本業の事業を継続して行っており,重畳的債務引受けによる債務を順次弁済し,平成21年12月22日(破産会社の破産手続開始申立ての日の3日前)の時点で,上記債務のうち,取引により発生した債務は全て弁済済みであり,残存しているものは金融機関からの借入金債務のみであった。(甲42,乙74)
2  争点1-1(本件義務①に係る債務不履行責任の有無)について
(1)  原告は,本件アドバイザリー契約が,破産会社の「企業再生を目的」として,「財務改善」に関する事務処理及び助言等を委任するものであるから,被告が,破産会社の財務を悪化させ,又は損害を与える内容の助言等をしてはならないという義務(本件義務①)を負っていると主張している。
確かに,本件アドバイザリー契約(甲5)は,その目的として,破産会社の企業再生を目的とし,破産会社が行う,財務改善,会社分割,事業譲渡,資産譲渡等に関する事項について,被告が事務処理及び助言等を行うと定めているから,契約書の記載に照らせば,一般的抽象的には,被告は,破産会社が財務改善を行う際には,その財務を悪化させ,又は損害を与える内容の助言等をしてはならないということができる。
しかしながら,他方で,財務改善に限定しても,各企業の具体的状況は様々であり,財務改善のために必要とされる施策が多種多様なものとなることは明らかであって,企業再生のために,財務状況が悪化し,あるいは,損害が発生する内容の施策であったとしても,その財務改善のための施策が必要である場合があることは容易に推測されるところである。
したがって,上記契約書の記載から,直ちに,助言等を必要としている企業の具体的状況やどのような財務改善を目的として助言を求めているのかにかかわらず,財務を現状から悪化させることがなく,あるいは,一切の損害を与えない内容の助言をすべき具体的義務を負っているということはできない。
(2)  前記争いのない事実等に記載のとおり,本件アドバイザリー契約は,破産会社の本業である塗装工事事業について,取引先の流出を防止し,従業員の雇用を守ることを目的として締結されたものであり,財務改善のための施策の助言等を直接の目的として締結されたものではないところ,原告は,本件アドバイザリー契約に係る契約書の記載から,被告が本件義務①を負うと主張するのみで,破産会社の具体的状況や本件アドバイザリー契約の締結において具体的に求めていた事項から,本件義務①が具体的義務として発生していたことを基礎づける事情の主張はされていない。
本件アドバイザリー契約の契約書の記載のみでは,被告が,本件アドバイザリー契約において,同契約に基づく具体的義務として,本件義務①を負っていたということはできないことは上記のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の上記主張は理由がない。
3  争点1-2(本件義務②に係る債務不履行責任の有無)について
(1)  本件義務②の存在
被告が弁護士及び公認会計士等の企業再生の専門家を擁する各種フィナンシャルアドバイザリーを中心としたサービスを提供する株式会社であることは前記争いのない事実等に記載のとおりであるから,職業倫理上の法令遵守義務を負うのみならず,本件アドバイザリー契約(甲5)にも法令遵守義務の定めがあるから,一般的に,被告は,本件アドバイザリー契約に基づき,助言等を行うに当たり,法令を遵守し,適法かつ有効な行為を助言すべき義務を負うものといえる。
そして,本件アドバイザリー契約が企業再生を目的とするものであり,被告には,破産法を遵守すべき義務があるから,被告は,本件アドバイザリー契約に基づき助言等を行うに際し,少なくとも,破産手続において否認権の行使を受けることのないようにすべき義務を負うものというべきである。
(2)  原告は,破産会社が債務超過かつ支払不能の状態にあり,本件事業譲渡が破産法160条1項1号により否認されるべき違法なものであったと主張しており,破産裁判所がその旨の決定をしている(甲13)ことは前記争いのない事実等に記載のとおりであるところ,被告は同号の要件に該当しないと主張しているから,これについて検討する。
ア 本件事業譲渡が破産債権者を害する行為に当たるか否か
(ア) 本件事業譲渡の時点で,ビュファ社関連事業の入金の多くが滞っており,破産会社が債権を有している本件特約店からは,ビュファ社からの工事代金の入金がなければ債務の弁済ができないとの回答がされていたこと,ビュファ社からは支払の確約が得られなかったこと,本件特約店からの債務の弁済がされなければ,破産会社は平成21年2月以降に満期が到来する手形を決済することができない状況にあったことは上記認定のとおりである。
そして,ビュファ社破産管財人の報告(乙63)によると,ビュファ社は複数の循環取引を同時に行っており,実際の工事の割合は3%にすぎず,架空循環取引の割合が売上の97%に達していたことが認められ,本件事業譲渡後,破産会社に残されたビュファ社関連事業に係る債務について,弁済がされたこと及び平成21年1月以降ビュファ社から本件特約店に対し支払がされたことを示す証拠はないから,平成20年12月末頃に,ビュファ社が破産会社に対して,平成21年1月の本件特約店に対する支払が間に合わない可能性があるとの連絡をした時点において,ビュファ社は既に架空循環取引における支払をすることができない状態にあったものと推認される。
ビュファ社が本件特約店に支払ができない場合には,架空循環取引における取引の枠組が破綻し,破産会社もビュファ社関連事業において振り出していた5か月サイトの手形について決済ができなくなるのであるから,被告及び破産会社が当時そのことを認識していたか否かは別として,客観的には,破産会社は,本件事業譲渡がされた時点において,支払不能の状態にあったものというべきである。
なお,被告は,破産会社は遅滞なく弁済を継続しており,支払不能ではなかったと主張し,入金出金予定表(乙14)を提出するが,当該予定表はアイエス社の資金繰りに過ぎず,ビュファ社関連事業を含む破産会社の事業全体に係る債務の弁済を示すものではなく,ビュファ社の支払の有無にかかわらず,破産会社が弁済を継続することができたことを認めるに足りる証拠はないから,被告の主張は採用できない。
(イ) 上記認定のとおり,被告が提案した本件事業譲渡は,破産会社の総債権者の共同担保となるべき資産のうち本業に係るもの(本件事業譲渡当時の時価28億1811万1180円相当)を破産会社からアイエス社に移転するものであり,原告の主張によると,当該資産には,時価合計10億2660万8356円の担保設定済不動産が含まれていたというのであるから,本件事業譲渡により,破産会社からアイエス社に対し,17億9150万2824円相当の資産が移転されたことになる。
他方,アイエス社は,破産会社の負債のうち合計29億2818万4399円相当の債務について重畳的債務引受けをしたことも前記争いのない事実等に記載のとおりであるから,破産会社は上記債務を免れておらず,その負債額は本件事業譲渡の実行前と変わらないにもかかわらず,破産会社が本件事業譲渡の対価として受領した金額は100万円にすぎず,これは譲渡された資産と比較して極めて低廉であるといわざるを得ない。
(ウ) これについて,被告は,破産会社は本件事業譲渡後も,完全子会社であるアイエス社の株式を介して譲渡対象資産の価値を把握しており,破産会社の財産は減少していない旨主張する。しかしながら,本件事業譲渡においては,アイエス社は資産の移転を受けるとともに負債について重畳的債務引受けをしているから,完全親会社は,基本的には当該資産から当該負債を控除した価値を把握しているにすぎず,譲渡対象資産の価値そのものを把握しているものではない上,当該株式の価値は,その後の完全子会社の活動によっても左右されるものであるから,破産会社は,アイエス社の株式の価値を通じて,譲渡対象資産を把握しているとはいえない。また,確かに,完全親会社は,株主総会を通じて間接的に完全子会社の意思決定をすることができるものの,完全親会社は,完全子会社とは法人格が異なる以上,完全子会社の資産であっても,これを取得するためには適正な対価を支払う必要があるから,譲渡対象資産をその価値のまま自由に完全親会社に移転させることができるとはいえない。更に,被告は,破産会社とアイエス社との間で,本件事業譲渡と同じ内容の事業譲渡契約をすればよいとも主張するが,破産裁判所がした否認権行使に係る決定(甲13)においても,譲渡対象不動産の一部を除き,回復すべき財産の特定が困難であるとされており,アイエス社が,本件事業譲渡により譲渡された事業を継続して行っていることに照らせば,本件事業譲渡時の資産及び負債がそのまま残されているものではないことは明らかであるから,本件事業譲渡と同じ内容の事業譲渡契約ができるものではない。
(エ) 被告は,①本件事業譲渡においては,譲渡対象債務の価額が譲渡対象資産の価額を上回っていること,②債務の引受けについては重畳的債務引受けの方法がとられたものの,その内部負担割合は譲渡人である破産会社が0%,譲受人であるアイエス社が100%と合意されたのであるから,実質的・経済的に見れば,本件事業譲渡の前後を通じて,破産会社の財産は減少していない旨主張する。しかしながら,上記①の点については,本件事業譲渡において,債務については重畳的債務引受けをしているにとどまり,これらの債務に対応する破産会社の債務の減少は生じていないのであるから,譲渡対象資産の額を上回る債務を免れているとはいえない。次に,上記②の点のうち,内部負担割合の合意について検討すると,本件事業譲渡契約(甲8)には,破産会社の負担割合が,譲渡対象資産を構成する不動産の処分により得られた額との記載があり,少なくとも,破産会社が0%,アイエス社が100%との記載はされていない。また,アイエス社の代理人弁護士は,上記の記載を踏まえて,原告に対し,アイエス社に所有権が移転した不動産の売却金額相当額(1億8400万円)については破産会社が負担すべきであり,上記負担割合の合意の趣旨について,金融機関が破産会社から貸金の回収をした場合において,破産会社からアイエス社に対する求償権の発生を回避するためである旨主張している(乙28)。
被告は,上記の負担割合に係る記載(甲8)は誤記であると主張するが,当初譲渡対象資産に含まれていなかった資産で,その後に譲渡対象とされた資産について,具体的な指摘がされていない上,破産申立代理人弁護士と被告との間で本件事業譲渡契約案について,電子メールにより修正しながら作成したもので(乙12の1及び2),その重要性にかんがみ誤記を見過ごすとは考え難いし,被告が,原告からの質問票(甲11の1)に対する回答においては,破産会社が担保として提供している有価証券のうち譲渡対象ではない分の評価に相当する額を破産会社の負担割合とする旨の誤記であったとするなど,被告の主張は一貫していない。アイエス社代理人弁護士の主張(乙28)するとおりであったとすれば,重畳的債務引受けした債務額は,譲渡対象資産の額を下回るのであり,仮に,被告が主張するとおり,破産会社の負担割合が0%であったとしても,破産会社とアイエス社はそれぞれ譲渡対象債務について連帯債務者の関係に立つから,破産会社のアイエス社に対する事前求償権は当然には発生しない上,事後求償権は将来発生する可能性があるにとどまるから,本件事業譲渡の時点で当然に資産として評価することはできず,会計上,債務が消滅したのと同等の評価ができるというものでもない。したがって,本件事業譲渡の時点で,譲渡対象資産の額を上回る債務を免れたもの,あるいは,実質的に消滅したものといえるものではないから,被告の上記主張は採用できない。
(オ) 以上のとおりであるから,本件事業譲渡は,破産債権者を害する行為に当たるものというべきである。
イ 次に,破産会社及びアイエス社が,破産債権者を害することを知っていたかについて検討する。
(ア) ビュファ社関連事業について,破産会社が,本件特約店からの支払がされなければ,少なくとも平成21年2月以降に満期が到来する手形を決済することができず,本件特約店はビュファ社からの工事代金の支払がなければ破産会社に対する支払をすることができないこと及び被告の調査によると,平成20年9月期において,破産会社は本業では損失を計上していたことはいずれも上記認定のとおりである。
そして,破産会社及びアイエス社の代表取締役であったHが,平成21年1月29日の打合せの際,被告に対して,ビュファ社関連事業において破産会社が振り出している手形が不渡りになる可能性があり,その場合には,本業を含む全事業が停止して破綻するおそれがあると説明していたことも上記認定のとおりである上,H作成の陳述書(甲27,31)によると,ビュファ社関連事業について年商約381億円を計上しながら,対応する商品の保管場所や工事現場を一度も見たことがなく,ビュファ社の代表者からは工事現場を見せることを拒絶されたというのであり,平成20年11月頃から,ビュファ社から借入れの申し入れがされるようになり,平成21年1月以降支払の督促のため訪れた本件特約店が,大規模な建設工事を施工できるような規模ではなく,営業時間中であるにもかかわらず,ビュファ社の本社が閉鎖されていたことなどから,同月末から同年2月初め頃には,ビュファ社関連事業の債権の回収は見込めないと考えていたことが認められる。
(イ) 上記認定の事実によると,Hは,本件事業譲渡の時点において,ビュファ社関連事業について債権の回収ができず,したがって,5か月のサイトで振り出していた手形が不渡りになることにより,本業を含む全事業が破綻することを認識していたものというべきである。
そして,Hは,破産会社及びアイエス社の代表取締役として,本件事業譲渡が,アイエス社に対し,破産会社の資産をわずかな対価で譲渡し,債務については重畳的債務引受けをするに止まるものであることなど,本件事業譲渡契約の内容についても認識していたから,破産会社及びアイエス社は,本件事業譲渡が,破産債権者を害するものであることを知っていたものというべきである。
ウ 以上のとおりであるから,本件事業譲渡は,破産債権者を害することを知ってした行為として,破産法160条1項1号所定の否認対象行為に該当するものと認められる。
(3)  被告の債務不履行
ア 本件事業譲渡が,本件アドバイザリー契約に基づき,被告が提案したものであることは争いのない事実等に記載のとおりであるから,被告は,否認対象行為に該当する内容の助言ないし提案をしたものであり,被告の上記提案は,本件義務②に違反するものというべきである。
イ 次に,被告が上記提案をするに際し,破産会社が支払不能の状態にあったことを認識しており,否認対象行為に該当することを知っていたかについて検討する。
(ア) 破産会社及びアイエス社の代表取締役であったHが,平成21年1月29日の打合せの際,被告に対して,ビュファ社関連事業において破産会社が振り出している手形が不渡りになる可能性があり,その場合には,本業を含む全事業が停止して破綻するおそれがあると説明していたことは上記認定のとおりである。また,被告は,同年2月10日,本件事業譲渡を提案する際(甲10),ビュファ社関連事業について,本件工事取引では,破産会社は,ビュファ社から受注した工事をビュファ社に再度発注し,工事に使用する材料も,ビュファ社から株式会社美和テックなどが購入した材料を買い受けて,工事現場に直送するものであり,本件材料販売取引では,ビュファ社から工事を受注した本件特約店に対し,破産会社がビュファ社から購入した材料を売却するものであるが,いずれも実際に工事が行われているとした上,ビュファ社からの支払がなければ,本件特約店が破産会社に対し債務の弁済をすることができないため,破産会社が振り出した手形の決済ができず,不渡りとなることを前提として,倒産隔離のため,本件事業譲渡を提案したものである。
そして,被告は,これ以前に行った財務調査により,破産会社が,本業では損失を計上しており,ビュファ社関連事業の利益により全体として利益を計上している状態にあることを認識していたことも上記認定のとおりであり,ビュファ社関連事業に係る債務を,本業による利益から弁済することが困難であることを認識していたと推認される。
したがって,被告は,ビュファ社からの支払がされない限り,破産会社が,ビュファ社関連事業についても債務の弁済ができない状態となり,全体として支払不能となることを認識していたものというべきである。
(イ) そこで,ビュファ社からの支払がされる可能性について,被告がどのように認識していたかであるが,上記のとおり,ビュファ社関連事業における本件材料販売取引及び本件工事取引は,いずれもビュファ社を中心とする入り組んだ形の取引であって,同一取引内で資金が循環する取引であることの認識はあったといえるから,ビュファ社が支払を停止すれば,その取引の全体が破綻することを推測することは可能であった。
被告は,ビュファ社の資金不足が,一時的な資金ショートによるものであると判断したと主張しており,ビュファ社関連事業が取引実体がある蓋然性が高いと判断している(甲10)が,その根拠は,注文書等の書面が作成され,その通りの入金がされていることのみであり,他方で,破産会社担当者からは,実際の工事や製品の移動を見たことがないとの説明を受けていたものである。
そして,H作成の陳述書(甲27,31)には,破産会社が,平成20年11月頃から,ビュファ社からの借入の申込みを受けており,平成21年1月以降,本件特約店に支払を督促するまで,本件特約店と直接接触したことがなく,督促のために訪問した本件特約店が,大規模な建設工事を施工できるような規模ではなかったこと及び営業時間中であるにもかかわらず,ビュファ社の本社が閉鎖されていたことなどの記載があるから,被告は,少なくとも,Hないし破産会社の担当者からの事情聴取により上記の事情を知ることが可能であったというべきである。
上記のとおり,ビュファ社が一時的な資金ショートのため資金不足に陥っていたとの被告の判断の根拠となる事情は不明であり,ビュファ社関連事業における取引が,実体のある取引であると判断した根拠も,発注書等の書面の存在とこれに伴う入金のみであって,併せて,工事及び製品の移動を確認したことがないとの申告を得ていることに照らせば,実体のある取引であることを積極的に裏付ける事情であるとはいい難い。
さらに,被告が平成21年1月30日付けで作成した説明資料(乙59)では,ビュファ社について「倒産見込み」であると記載し,会社分割を選択した場合,「分割効力発生前に不渡り(銀行取引停止)となるが,分割においては,手続に実質1か月かかる。」と記載しているから,被告は,上記説明資料を作成した時点で,破産会社が近いうちに銀行取引停止処分を受けると認識していたことが推認される。
(ウ) 本件事業譲渡の時点において,客観的には,破産会社は支払不能の状態にあったと認められることは上記のとおりであり,上記(イ)の事情を考慮すると,被告は,ビュファ社の資金不足が一時的なものではなく,継続して支払がされないことを認識していたか,あるいは,認識していないことについて過失があったものというべきである。
なお,被告は,破産会社及び被告が,本件事業譲渡を実行することにより,これを実行しなかった場合と比較して,破産会社の財産状態が向上するものと認識していたと主張するが,少なくとも,破産会社のみの財産状態が向上したものといえないことは既に認定したとおりである。また,被告は,破産会社について破産手続開始後に,破産会社,ビュファ社及び本件特約店による三角相殺をすること等により債権債務関係を処理し,適切な解決がされると考えていたとも主張するが,仮に,破産手続において,債権債務が適切に処理されるとしても,そのことから,被告がビュファ社からの支払が早期にされ,破産会社もビュファ社関連事業に係る債権者に対して弁済を継続することが可能になると認識していたといえないことは明らかであるから,上記の主張は上記判断を左右するものではない。
さらに,ビュファ社の破産管財人が,架空の循環取引の割合が売上げの97%に達しており,このことが判明したのは民事再生手続において調査委員に選任された数か月後のことであって,選任された当時は全く分からなかった(乙63)と説明しているが,ビュファ社による支払の可能性について判断するためには,その取引について完全に解明されることまでが必要であるとはいい難いから,上記の事情も上記判断を左右するものではない。
ウ 以上のとおりであるから,被告は,破産会社が本件事業譲渡時点において支払不能の状態にあったことを認識し,あるいは,認識しないことに過失があったものというべきであり,また,上記認定のとおり,企業再生の専門家を擁する被告が,本件事業譲渡を検討・提案するに際し,本件事業譲渡には否認のリスクがあることを認識していた(乙59)のであるから,被告が,破産会社に対し,否認対象行為に該当する本件事業譲渡を提案したことについて,本件義務②違反による債務不履行があるというべきである。
したがって,被告は,破産会社に対し,本件義務②違反による債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。
4  争点2(債務不履行責任に係る損害)及び争点3(本件責任制限合意の適用の可否)について
(1)  破産会社の損害について
ア 本件事業譲渡により,破産会社の資産のうち,17億9150万2824円相当の資産がアイエス社に移転されたことになり,その対価が100万円であったことは上記のとおりである。
なお,本件事業譲渡後,アイエス社の決算期に基づく本件事業譲渡の対象財産の確定に伴う修正として,資産の額が24億5593万7983円に修正されたことも上記認定のとおりであるところ,仮に,資産の額が上記のとおり減額されるとしても,本件事業譲渡により,10数億円の資産が破産会社からアイエス社に移転されたことに変わりがない。
そして,前記争いのない事実等及び上記認定のとおり,破産会社は,被告の提供した助言に従って本件事業譲渡を実行したものであるから,被告の本件事業譲渡に係る助言と資産の喪失による損害の発生との間には因果関係が認められる。
被告は,上記損害は,破産会社自身の決定・実行行為の結果により生じたものであって,被告の事務処理や助言等によって生じたものとはいえないと主張するが,破産会社が,被告による提案ないし助言とは関わりなく事業譲渡の手法を採用したことを示す事情は見当たらないから,被告の主張は採用できない。
イ 他方,破産会社は,被告に対し,本件アドバイザリー契約に基づく業務委託報酬として,4387万4653円を支払ったことも上記のとおりであるが,当該業務委託報酬については,破産会社が,被告から,本件義務②に反することなく本業の維持に関する助言等をした場合であっても支払義務を負うものであるから,被告の本件義務②違反の行為と業務委託報酬の支払との間には因果関係が認められない。
(2)  本件アドバイザリー契約には本件責任制限合意があるから,破産会社の被告に対する損害賠償請求は,業務委託報酬額である4387万4653円に制限される。
ア これについて,原告は,①被告が破産会社に現に損害が発生することを認識した上で,本件事業譲渡に関する助言等を行ったのであるから,被告の債務不履行責任は故意によるものであり,②被告がこのような認識を欠いていたとしても,被告は事業再生の専門家であって,認識を欠いたことについて重大な過失が認められるから,本件責任制限合意は適用されないと主張する。
そこで検討すると,本件アドバイザリー契約は,受託者が事業再生の場面において助言を提供するに当たり,損害賠償額が巨額になる可能性があることから,その賠償額を業務委託報酬の範囲に限定するというものであり,その趣旨に照らすと,本件責任制限合意は,被告に故意又は重大な過失がある場合には適用されないものと解するのが相当である。
イ そこで,被告の債務不履行が故意又は重過失に基づくものであるかについて検討するが,被告が,ビュファ社関連事業について,ビュファ社からの支払が平成21年1月以降されないことを明確に知りながら,本件事業譲渡を提案したことを認めるに足りる証拠はない。
また,ビュファ社関連事業に係る取引が,架空の循環取引であることが判明するのには,ビュファ社の民事再生手続における調査委員の調査をもってしても数か月を要するものであったことは上記のとおりである。そして,架空の循環取引であることが明らかにならないとしても,ビュファ社がその後の支払をすることができない状況にあることを推認するに足りる事情は,Hないし破産会社の担当者からの事情聴取ないし本件特約店に対する調査等を行うことにより知ることができたものというべきであるが,他方で,被告が,破産会社から相談を受けてから本件事業譲渡の提案をするまでの期間はわずか2週間足らずであり,この間に破産会社の財務状況に対する調査も行わなければならなかったことからすれば,破産会社が被告に相談をする以前に破産申立代理人弁護士に委任しており,同弁護士からも,ビュファ社関連事業に関する情報提供がされたことが窺われないことを考慮すると,本件事業譲渡を提案した当時,客観的にはビュファ社からの支払の見込みはなく,破産会社が支払不能であったことを認識していなかったことに重大な過失があるとまではいえない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
(3)  以上によれば,原告の請求は,被告に対し,債務不履行に基づき,4387万4653円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年2月19日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
5  争点4(不法行為に基づく損害賠償責任の有無)について
原告は,被告が破産会社に対し,本件事業譲渡の提案ないし助言をしたことが,原告に対する不法行為に当たると主張するものと解されるが,被告のどのような行為が,原告のいかなる権利ないし利益を侵害するのかが明らかではなく,具体的な主張を欠いているから,失当である。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の不法行為による損害賠償請求は理由がない。
6  以上のとおりであるから,原告の請求は,上記の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石栗正子 裁判官 谷口吉伸 裁判官 國原徳太郎)

 

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