【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(394)平成13年 1月31日 東京地裁 平11(ワ)1718号 損害賠償等請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(394)平成13年 1月31日 東京地裁 平11(ワ)1718号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成13年 1月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平11(ワ)1718号・平10(ワ)27231号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容、請求棄却  文献番号  2001WLJPCA01310015

要旨
◆弁護士Aと依頼者Bらとの間でBらの子の交通事故死による損害賠償請求について委任契約が締結されていたが、Bらが事件処理方針をめぐってAと対立し、全国交通事故遺族の会総会及び司法記者クラブで配布したビラの記述の一部がAの名誉を毀損したとして不法行為に基づく損害賠償が認められた事例
◆弁護士が原告である名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟において、被告らの陳述書には穏当さに欠ける記述がみられるものの争点との関連性、必要性が認められ、被告らによる陳述書の作成・提出行為は訴訟活動として是認され、違法性を有しないとされた事例
◆弁護士が原告である名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟等において、被告ら訴訟代理人から提出・陳述された準備書面には穏当さに欠ける記述がみられるものの防御方法としての関連性、必要性が認められ、訴訟活動として是認され、違法性を有しないとされた事例
◆弁護士Aが、依頼者Bらのほか、Bらの代理人である弁護士を被告として名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟を提起したことが不当訴訟に当たらないとされた事例

出典
新日本法規提供

参照条文
民法709条
民法710条

裁判年月日  平成13年 1月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平11(ワ)1718号・平10(ワ)27231号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容、請求棄却  文献番号  2001WLJPCA01310015

本訴原告・反訴被告 A
本訴被告 B
本訴被告 C
本訴被告 D
右二名訴訟代理人弁護士 井上曉
本訴被告 全国交通事故遺族の会こと

本訴被告四名訴訟代理人弁護士 F
同 G
同 篠宮晃
本訴被告・反訴原告 F
本訴被告・反訴原告 G
右二名訴訟代理人弁護士 井上曉

 

主  文

一  本訴被告B、同C及び同Dは、本訴原告に対し、連帯して三〇万円及びこれに対する平成一〇年一二月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二  本訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三  反訴原告F及び同Gの請求をいずれも棄却する。
四  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを五分し、その三を本訴原告・反訴被告の、その一を本訴被告B、同C及び同Dの、その一を本訴被告・反訴原告両名の負担とする。

 

事実及び理由

(以下においては、本訴原告・反訴被告を「原告」、本訴被告Bを「被告B」、同Cを「被告C」、同Dを「被告D」、両名を併せて「被告C夫婦」、同全国交通事故遺族の会ことEを「被告E」、本訴被告・反訴原告Fを「被告F」、同Gを「被告G」とそれぞれ略称する。)
第一  請求
一  本訴の請求の趣旨
1  被告らは、原告に対し、連帯して三〇〇万円及びこれに対する被告Fについては平成一〇年一二月八日、その余の被告らについては同月六日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2  被告B及び同Fは、原告に対し、連帯して五〇万円及びこれに対する平成一一年一一月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3  被告Fは、原告に対し、三〇万円及びこれに対する平成一一年五月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4  被告E及び同Bは、「全国交通事故遺族の会」の会誌「いのち」に、別紙一の1記載の謝罪広告を、同2記載の条件で一回掲載せよ。
5  被告Eは、原告に対し、右4の謝罪広告が掲載された会誌「いのち」を、その発行後七日以内に一部送付せよ。
二  反訴の請求の趣旨
1  原告は、被告F及び同Gに対し、七二二万八五〇〇円及びこれに対する平成一一年二月二日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。
2  原告は、被告Fに対し、一〇三万九四〇〇円及びこれに対する平成一二年九月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二  事案の概要
本訴は、かつて被告C夫婦との間でその子の交通事故死による損害賠償に関し弁護士委任契約を締結していた原告が、1 全国交通事故遺族の会の総会及び司法記者クラブなどにおいて配布された別紙二のビラ(甲二。以下「本件ビラ」という。)中に原告の名誉及び信用を毀損する記載が存在するが、その本件ビラの作成又は配布に被告らが関与したとして、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償及び謝罪広告の掲載等を求める(以下「本訴1」という。)とともに、2(一) 本件訴訟において取り調べられた被告B作成の陳述書(乙一)中の別紙三記載の部分が原告の名誉を毀損するとして、被告B及び同人の訴訟代理人としてそれを提出した被告Fに対し、また、(二) 本件訴訟及び別件訴訟において被告Fが訴訟代理人として作成、提出した準備書面中の別紙四の1及び2記載の部分が原告の名誉を毀損するとして、被告Fに対し、それぞれ不法行為に基づく損害賠償を求める(以下「本訴2」という。)事案である。
反訴は、1 本訴1は、原告が被告F及び同Gの弁護士業務を妨害するなどの目的で提起したものであり、それにより損害を被ったとして、被告F及び同Gが、原告に対し、不法行為に基づく損害賠償を求める(以下「反訴1」という。)とともに、2 本訴2の請求の拡張の申立ては、原告が被告Fの弁護士業務を妨害する目的でしたものであり、それにより損害を被ったとして、被告Fが、原告に対し、不法行為に基づく損害賠償を求める(以下「反訴2」という。)事案である。
一  前提となる事実(証拠を掲記しない事実は、当事者間に争いがない。)
1  当事者等
(一) 原告
原告は、第一東京弁護士会に所属する弁護士である。
(二) 被告ら等
全国交通事故遺族の会(以下「遺族の会」という。)は、交通事故の被害者の立場から交通事故を防止するための活動及び交通事故によって被害者や遺族に生じる種々の問題に対して支援、救済するための活動を行うことなどを目的として、平成三年四月二八日、被告Eによって設立された団体であり、交通事故の遺族によって組織されている(乙四、五)。
被告Eは、その遺族の会の会長である。
被告Bは、遺族の会の会員かつ理事であり、遺族の会の中で「伏見さんを支援する有志グループ」(以下「有志グループ」ともいう。)を結成した者である。
被告C及び同Dは夫婦であり、いずれも遺族の会の会員である。
被告Fは第二東京弁護士会に所属する弁護士、被告Gは東京弁護士会に所属する弁護士であり、いずれも後記5の別件訴訟において被告C夫婦の訴訟代理人を受任した者である。
2  本件事故の発生
被告C夫婦の二女である亡H(当時九歳。以下「亡H」という。)は、平成八年七月一一日午後四時五八分ころ、神奈川県三浦郡葉山町一色一五二五番地の五先路上(側溝部を含む幅員三・六メートル)を、被告D及び亡Hの同級生三人と共に、横に並んで歩いていた。I(以下「I」という。)は、その後方から原動機付き自転車を運転して進行してきたが、亡Hらを認めて、減速した。他方、被告Dも、原動機付き自転車が進行してくるのに気付いたので、亡Hらに対し注意するように声を掛け、亡Hと同級生二人は道路の左端に、被告Dと同級生の一人は道路の右端に寄った。これを見たIが加速してその場を通過しようとしたところ、亡Hは、道路の右側に向かって横断を開始し、Iの原動機付き自転車と衝突して、路上に転倒し、脳挫傷兼頭蓋内出血などの傷害を負い、同日午後七時七分、搬送先の同県鎌倉市山崎所在の湘南鎌倉総合病院において死亡した(甲一八、一九、乙二五、四〇、四四、弁論の全趣旨。以下「本件事故」という。)。
3  本件委任契約の締結
被告C夫婦は、原告との間で、平成九年三月二八日、本件事故による損害賠償請求に関し、弁護士委任契約を締結した(以下「本件委任契約」という。)。
4  本件総会の開催
遺族の会の第二三回総会(以下「本件総会」という。)が、平成一〇年五月一〇日、東京都文京区本郷所在の文京区民センターにおいて開催され、その際、本件ビラが配布された(甲一ないし三の1ないし3)。
5  別件訴訟の提起及び本件記者会見の実施
被告C夫婦は、原告に対し、平成一〇年五月二七日、本件委任契約に関し、訴訟提起のための着手金及びみなし報酬金の各支払債務の不存在確認、支払済みの着手金の一部返還、原告の侮辱ないし脅迫による不法行為に基づく損害賠償並びに原告が預かり保管する書類の返還を求める訴えを、東京地方裁判所に対し提起した(当庁平成一〇年(ワ)一一三〇六号債務不存在確認等請求事件。甲二〇。以下「別件訴訟」という。)。
有志グループは、同日、東京地方裁判所庁舎内の司法記者クラブにおいて、別件訴訟の提起に関して記者会見を行った(以下「本件記者会見」という。)。その際、本件ビラが配布された。
二  本訴1に関する当事者の主張(本訴の請求の趣旨1、4及び5関係)
1  原告の主張
被告らは、次の(二)ないし(五)の各行為によって、次の(一)の本件ビラを作成又は配布して、原告の名誉及び信用を著しく毀損した。こうした被告らの共同不法行為により、原告は多大な精神的苦痛を被ったが、それを慰謝するためには三〇〇万円が相当である。また、原告の名誉を回復するためには、金銭賠償に加え、遺族の会が発行する会誌「いのち」に、別紙一の1記載の謝罪広告を同2記載の条件で掲載し、その掲載誌を原告に送付すべき旨を命ずるのが相当である。
(一) 本件ビラの記載
本件ビラの内容は別紙二のとおりであり、そこには、次のaないしjの記載がされている。
「しかし加茂弁護士は、aこの直後に豹変します。b裁判官でもないのに、事故の過失割合を決めて、全面的に争おうとする伏見さんに妥協を押しつけようとしました。cすなわち加茂弁護士のねらいは、類型化されたパターンにはめ込んで、事故の早期解決を急ぐことだけでした。伏見さんの反論に対し、『d自分の言うとおりにしろ』と強要し、e法律という刃を振りかざして脅迫まがいの言動をたびたび行いました。なんと、親しみを感じて『加茂さん』と呼びかけていた伏見さんに『f先生と呼ばない』と怒り出す始末でした。
やがてg弁護士は解約を条件に、それまで何もしなかったにも拘わらず、高額な着手金を放棄を強要し、h挙げ句はやってもいない裁判の成功報酬の請求書まで送りつけてきました。これから起こそうとする裁判の必要資料などをi差し押さえ、返還を求める伏見さんに対し『法律家としてできる最大限の制裁を加える』とまでj脅迫状を送りつけてきました。」
右記載のうち、a、d、e、g及びjの部分は全く事実無根であり、また、b、c、f、h及びiの部分は被告C夫婦に都合がいいように極端に事実を歪曲し、ことさらに原告を誹謗中傷するものである。
(二) 被告Bの不法行為
(1)  被告Bは、被告C夫婦と共同して、不特定多数の遺族の会の会員又は第三者に配布する目的で本件ビラを作成した。そして、被告Bは、本件総会において、受付担当者及び有志グループの者に対し、取材に来たマスコミ関係者を含む出席者全員に本件ビラを配布するように依頼し、それを配布させた。
(2)  被告Bは、本件記者会見を開き、そこにおいて、本件ビラを、自ら不特定多数の者に配布するとともに、有志グループの者、被告C夫婦、被告F及び同Gにも依頼して、配布させた。
(3)  被告Bは、被告C夫婦に対し、平成一〇年五月二九日、被告C夫婦がサンデー毎日、週刊ポスト及び週間読売の各編集部を訪問するに当たり、本件ビラを右各編集部に交付するよう指示し、交付させた。
(三) 被告C夫婦の不法行為
(1)  被告C夫婦は、被告Bが不特定多数の者に配布する目的で本件ビラを作成することを承諾するとともに、本件総会において、多数のマスコミ関係者や来賓が訪れる機会をねらって、原告の名望を失墜させるべく、本件ビラを、受付担当者及び有志グループの者をして出席者全員に配布させ又はその配布を黙認した。
(2)  被告C夫婦は、本件記者会見において、不特定多数の記者に別件訴訟の訴状の写しと共に本件ビラを配布して、その内容を報告するとともに、被告B、有志グループの者、被告F及び同Gが本件ビラを配布することを黙認した。
(3)  被告C夫婦は、被告Bから指示を受けて、平成一〇年五月二九日、サンデー毎日、週刊ポスト及び週間読売の各編集部を訪問し、右各編集部に、本件ビラのほか、「私たちが加茂弁護士を訴えるわけ・・・」と題する書面(甲九の4。以下「訴えるわけ」という。)、毎日新聞に連載されていた原告の著述である「弁護士カモ君のコンポート」のうち「クオリティー・オブ・ライフ」(甲九の2。以下「クオリティー・オブ・ライフ」という。)の写しなどの文書を配布し、右各編集部にいる不特定多数の者に閲覧させた。
(四) 被告Eの不法行為
(1)  被告Eは、あらかじめ被告C夫婦から原告とのトラブルを伝え聞き、被告C夫婦の言葉を一方的に信じて、本件総会において、前記(二)(1) のとおり、被告Bが受付担当者及び有志グループの者をして出席者に対し本件ビラを配布させるのを知りながら、何ら制止しなかったばかりか、かえってそれらの行為をそそのかし又は容認して、被告B及び被告C夫婦の不法行為を援助した。
(2)  被告Eは、本件記者会見において、不特定多数の記者に、別件訴訟の訴状の写し、「訴えるわけ」と共に、本件ビラを配布して、原告を誹謗中傷する内容の報告をした。
(五) 被告F及び同Gの不法行為
被告F及び同Gは、本件記者会見に立ち会い、(1)  不特定多数の記者に別件訴訟の訴状の写しと本件ビラを自ら配布するともに、(2)  被告C夫婦が記者に別件訴訟の訴状の写しを配布すること及び被告B又は有志グループの者が記者に本件ビラを配布することを容認して、それらを援助した。
(六) 被告らの主張する真実性、相当性の抗弁に対する反論
(1)  弁護士は、在野の一法律家にすぎず、国会議員のように公益を代表する者とは明確に立場が異なるから、本件ビラには、公共性も公益性もない。原告が執筆活動をし、著述を有していることと、公共性、公益性とは関係がない。
本件ビラの記載内容は、原告個人を誹謗中傷するもので、原告に対する人身攻撃に出たものである。
(2)  被告Bは、本件ビラの作成の過程で、原告に対し、原告と被告C夫婦との間の関係、経緯等について何一つ確認しなかった。また、被告らの主張するところは、原告が発言していないこと、又はかなりニュアンスが異なる言い方をしたことをねじ曲げているものである。したがって、真実性の証明はされていないし、また、真実と信ずるにつき相当な理由があったともいえない。
2  被告らの主張
(一) 本件ビラの記載内容が原告の名誉及び信用を毀損するものであることは否認する。また、被告らの各行為に関する主張は、以下のとおりである。
(1)  被告Bの主張
前記原告の主張(二)(1) のうち、被告Bが、本件総会に出席する遺族の会の会員に配布する目的で本件ビラを作成したこと、本件総会において本件ビラを受付に置き、これを受付担当者が本件総会に出席した遺族の会の会員に配布したことは認める。その余の事実は否認する。
同(2) のうち、被告Bが、本件記者会見において、その場にいた記者(不特定多数ではない。)に本件ビラを配布したことは認める。その余の事実は否認する。
同(3) の事実は否認する。
(2)  被告C夫婦の主張
前記原告の主張(三)(1) ないし(3) の各事実は否認する。
なお、同(3) に関し、被告Bから示唆を受け、平成一〇年五月二九日、サンデー毎日、週刊ポスト及び週間読売の各編集部を訪問したのは、被告Dのみである。
(3)  被告Eの主張
前記原告の主張(四)(1) のうち、被告Eがあらかじめ被告C夫婦から原告とのトラブルを伝え聞いたことは認めるが、その余の事実は否認する。
なお、同(2) に関し、被告Eは原告を誹謗中傷などしておらず、真実を語ったにすぎない。
(4)  被告F及び同Gの主張
被告Fは、平成一〇年五月二七日の本件ビラが配布された時刻には、司法記者クラブにいなかった。また、同Gは、右時刻に、司法記者クラブの最後方の扉近くに立っていたにすぎず、その際には、本件ビラを手にしたことすらなかった。したがって、同人らが別件訴訟の訴状の写しと本件ビラを配布した事実はない。
また、そもそも被告F及び同Gは、被告C夫婦らの行為について、それを容認せずに何らかの行為をしなければならない義務を負うものではない。
司法記者クラブの記者は、不特定多数とは言えない。
(二) 真実性、相当性の抗弁
以下のところによれば、被告らの本件ビラの作成又は配布行為は、違法性を欠き、不法行為を構成しない。
(1)  本件ビラの記載内容は、弁護士としての原告の業務活動の当否に関するものであるから、公共の利害に関する事実に係るものである。
(2)  被告Bが本件ビラを作成、配布したのは、本来、社会的、公益的役割を担うべく期待されている弁護士が、市民の期待を損なう業務活動を行っているのを目の当たりにして、それをただすためであった。したがって、その目的がもっぱら公益を図ることにあったことは明らかである。
(3)  本件ビラに摘示された事実は、以下のとおり、その重要な部分については全て真実である。
aの部分について 原告は、その著作の中で被害者の精神的救済を標榜していたにもかかわらず、被告C夫婦に対し、「親のしつけが悪い」、「今回のような態様で、子供が事故にあったときには、親がその責務を果たさなかったと判断されても、致し方ありません」などと記載した文書(甲一六の1)を送り付けた。
bないしeの部分について 原告は、平成九年六月六日の被告Cとの電話での会話の際、「私の意見に従わないで解約したら、成功報酬を頂くことになりますからね。」などと、また、同月二三日の原告の事務所における被告C夫婦との面談の際、「プロの言うことに間違いはない。素人は口出しするな。」、「自分はこの道のプロで交通事故賠償に関する日本有数のスペシャリストである。専門家としての私の意見に耳を傾けなさい。私の意見に耳を傾けずに解約するならみなし報酬を払って下さい。」などと述べ、さらに、被告C夫婦に対し、「裁判の手法にはずれたとっぴょうしもない主張や行為は、善良な弁護士である限りできないと言うことです。」などと記載した文書(甲一六の1)を送付した。
fの部分について 原告は、本件委任契約の解約に当たり、被告C夫婦に対し、「そもそも弁護士のことを先生と呼ぶべきであり、そこからして(そうしない)あなたたちは非常識だ」などと怒鳴った。
gないしjの部分について 原告は、被告C夫婦が本件委任契約を解約しようとした際、不当にもみなし報酬の請求を行い、また、被告C夫婦が、第一東京弁護士会から可能であるとの回答を得ていたことなどから支払済みの着手金の一部の返還を求めた際、「これ以上身勝手なことを言って、例えば訴えるなどして私の仕事に害を与えるようなことをしたら、営業妨害で逆に訴えますよ。そうすれば、あなたの銀行口座を差し押さえることもできるのですからね。」、「そちらがその気なら私も徹底的にやりますからね。」などと述べた。また、原告は、被告C夫婦に対し、平成九年一一月、みなし報酬金の請求書を送り付け、平成一〇年三月には、みなし報酬金の請求を撤回しない旨、被告C夫婦から預かり保管している書類の返還を拒否する旨、更には「貴殿らがもし当職に対し攻撃を加える場合には、当職は法律の許す範囲内で、貴殿らに対し、容赦なく、徹底的に法的制裁を加えます」との各記載をした文書を送付した。
なお、gの部分は、依頼者である被告C夫婦が最も望んでいた事故原因の真相解明に関する原告の姿勢について言及するものであり、原告が事故現場にさえ赴いていないことなどからして真実である。また、iの「差し押さえ」との部分は、その直後の「返還を求める伏見さんに対し」という記載と併せて読めば、「押しとどめ」という意味で用いられていることが明らかである。
(4)  被告Bは、本件ビラの作成、配布に先立ち、甲一三の2、一五、一六、五二、五三、五七ないし六〇、乙二一、二六の1及び2、二七の1及び2を全て読了していた。
三  本訴2に関する当事者の主張(本訴の請求の趣旨2及び3関係)
1  被告Bの陳述書について(本訴の請求の趣旨2関係)
(一) 原告の主張
被告Bは、本件訴訟において、陳述書(乙一)を作成し、書証として提出し、それが平成一一年一一月二四日に取り調べられた。被告Bは、その中で、別紙三の1ないし8のとおり真実に反する記載をして、原告の名誉を著しく毀損した(そのうちでも、特に傍線を引いた部分)。
被告Fは、右陳述書を書証として提出し、被告Bの名誉毀損行為を援助した。被告Fの右提出行為は、正当な主張、立証活動の範囲を逸脱するものである。すなわち、被告Fは、依頼者である被告Bとの関係で善管注意義務を負っており、依頼者が作成した陳述書の中に違法性を帯びる表現が含まれている場合には、その表現を変更又は削除する義務があるところ、それを尽くさなかった点において過失があるというべく、原告に対する関係でも、民法七〇九条の過失がある。
したがって、被告B及び同Fは共同不法行為責任を免れず、これにより原告が被った精神的打撃を慰謝するためには、五〇万円の損害賠償が相当である。
(二) 被告B及び同Fの主張
右陳述書は、被告Bが本訴1におけるその主張事実を立証するために作成したものであり、ことさらに虚偽の事実及び本訴1と関連性のない事実を記載したものではない。また、右陳述書の提出に先立ち、原告は、その準備書面において、自分が「被告C・昌子という非常識極まりない夫婦に遭遇した被害者」である、「(被告C夫婦らの)言動は、片思いの恋愛感情が、その相手方からつれなくされることによって、怨恨に転じた場合のストーカー的言動に酷似している」などと主張し、右陳述書における表現行為を引き出すような言辞を用いていたのである。こうしたことからすると、右陳述書の記載内容は、社会的に許容された範囲を逸脱するものではなく、違法性が阻却される。
また、陳述書は作成者本人が自ら体験した事実関係に基づきその意見や考えを開陳する書面であるところ、訴訟代理人である弁護士が本人の作成した陳述書を提出する行為は、そこに差別表現などの一見して明らかに違法な表現があるときを除いては、弁護士としての正当な職務活動に属し、違法性がない。
2  被告Fの準備書面について(本訴の請求の趣旨3関係)
(一) 原告の主張
被告Fは、原告の著述であるエッセイ「海からの風」の記載内容を採り上げ、別紙四の1のとおり記載した準備書面を作成して本件訴訟において提出し、また、同様に別紙四の2のとおり記載した準備書面を作成して別件訴訟において提出し、その平成一一年五月一四日の口頭弁論期日において陳述し、それらの中で、ことさらに原告を誹謗中傷して、その名誉を毀損した。「海からの風」は本件訴訟にも別件訴訟にも全く関連性はないから、被告Fの右各行為は、訴訟追行上の必要性もなく、正当な弁論活動の範囲を著しく逸脱しており、違法である。また、「海からの風」の記載内容は、事実に基づくものである。
これにより原告が被った精神的打撃を慰謝するためには、三〇万円の損害賠償が相当である。
(二) 被告Fの主張
本件訴訟及び別件訴訟は、被告C夫婦が原告の著述に感銘を受けたことが契機になって始まった弁護士としての原告に対する委任関係が、その著述と実像との乖離により解消されざるを得なくなったことをめぐるトラブルといえるのである。したがって、これまでの原告の著述活動及びその内容を明らかにすることは、本件訴訟及び別件訴訟と十分な関連性を有するものであり、また、そのことは、被告Fにとって弁護士として当然の職責である。また、「海からの風」の中で裁判所書記官の行為として述べられている部分は真実ではなく、被告Fの準備書面の記載内容は原告を誹謗中傷するものではない。
四  反訴1に関する当事者の主張
(一)  被告G及び同Fの主張
原告は、被告G及び同Fが被告C夫婦の原告訴訟代理人となって別件訴訟を提起したことに遺恨を抱き、自らの質問の一つについて被告Gらが答えなかったということのみを理由として、同人らに対し応訴の煩わしさを強い、その弁護士業務を妨害する目的で、また、自らを被告とする別件訴訟の訴訟追行行為から手を引くように威嚇する目的で、同人らに対し本訴1を提訴して、同人らの弁護士業務を妨害した。
原告の右不法行為により、被告G及び同Fは多大な精神的損害を被ったが、それを慰謝するためには各三〇〇万円の損害賠償が相当である。また、被告G及び同Fは、本訴1に対する応訴並びに反訴1の提起及びその訴訟追行のため、弁護士への委任を余儀なくされ、訴訟代理人弁護士に対し一二二万八五〇〇円の支払を約し、右同額の損害を被った。
(二)  原告の主張
被告G及び同Fの主張は否認する。原告は、別件訴訟の準備書面(甲二二)の中で被告G及び同Fが自認するところから、同人らが前記二で述べたような不法行為を行ったと判断したからこそ、同人らを訴えたにすぎない。
五  反訴2に関する当事者の主張
(一)  被告Fの主張
原告の本訴2の請求の拡張の申立ては、ひとえに被告Fの業務活動を妨害するため、具体的には、右申立て後に実施される予定であった本件訴訟の原告本人尋問において尋問者となる同人を牽制するためにされたものであり、これにより同人の弁護士業務が妨害された。このことは、原告が半年又は一年以上も前の訴訟上の行為を原因として右申立てを行っていることや、右申立てにおいて原告が問題にしている被告Fの行為が不法行為に当たらないことは、弁護士として当然認識されるべき事柄であることからしても、裏付けられる。
これにより、被告Fが被った精神的損害を慰謝するためには、八〇万円の損害賠償が相当である。また、これにより、被告Fは、本訴2に対する応訴並びに反訴請求の拡張及びその訴訟追行のために弁護士への委任を余儀なくされ、訴訟代理人弁護士に対し二三万九四〇〇円の支払を約し、右同額の損害を被った。
(二)  原告の主張
被告Fの主張は否認する。複数の訴訟代理人の中で誰が原告本人尋問における尋問を行うかは事前に分からなかったのであるから、原告には、被告Fの尋問を牽制することを意図する余地はなかった。
原告が請求の拡張の申立てにより本訴2を請求したのは、別件訴訟の弁論が終結し、その区切りがついたからにほかならない。
六  本件における主要な争点
以上二ないし五によれば、本件における主要な争点は、以下のとおり整理される。
(本訴1に関し)
1-1 本件ビラが原告の名誉又は信用を毀損するか否か。
1-2 本件ビラの作成、配布への被告らの関与の有無及びその態様
1-3 本件ビラの作成、配布行為が、公共の利害に関する事実に係り、公益を図る目的に出たものか否か。
1-4 本件ビラの摘示事実の真実性の証明又は真実であると信ずるについての相当性の有無
1-5 謝罪広告の可否及び慰謝料の額
(本訴2に関し)
2-1 被告B及び同Fによる別紙三の記載を含む陳述書(乙一)の作成又は提出行為の違法性の有無
2-2 本件訴訟及び別件訴訟における被告Fによる別紙四の記載を含む準備書面の提出、陳述行為の違法性の有無
(反訴1に関し)
本訴1の提起の違法性の有無
(反訴2に関し)
本訴2の請求の拡張の申立ての違法性の有無
第三  当裁判所の判断
一  本件委任契約の経緯等について
前記前提となる事実に、証拠(甲九、一三ないし一七、二〇、二四、三〇ないし四六、五一、五二、五六ないし六〇、六九、七二、七五、九二、乙二四ないし二七、四〇、四二、四六ないし四八(以上、枝番を含む。)、原告、被告C及び同D本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、本件委任契約の経緯等について、以下の各事実が認められる。
1  被告C夫婦は、本件事故の損害賠償に関し、相手方のIが契約していた保険会社との交渉が進まず、専門家への相談を考えていたところ、毎日新聞に原告が「弁護士カモ君のコンポート」と題して連載していたエッセイ中の平成八年一一月二四日に掲載された「クオリティー・オブ・ライフ」を目にし、この連載に興味を持った。
「クオリティー・オブ・ライフ」というエッセイには、「和解案の過失割合に抵抗」との副題の下に、交通事故の被害者が自ら保険会社と交渉し更に裁判に踏み切ったものの、その和解手続において過失相殺をめぐり難航している事案が紹介された後、「これでは納得できないというSさんの気持ちはよくわかる。この種の訴訟では、賠償金額がふえても過失割合にこだわるひとは意外に多い。金額が以前の3倍にふえたのだから、よいではないか、と割りきるのは、法律家の意見にすぎない。それを押しつけると、その後の人生に影をおとすことがある。責任があることの烙印を押されたように、本人は感じるからだ。」、「かつて医者は病巣をとりのぞくことのみに腐心し、術後の患者の人生には思いを馳せなかった。弁護士も賠償金をとることだけに目を奪われてはならない。依頼人のメンタルケアが必要なのである。」などの記載がされており(甲九の2)、読者には、事後にわたる精神的なケアをも含めて依頼者の相談に応じる原告の姿勢が印象付けられる内容となっている。
被告C夫婦は、その後も原告の右連載を読み、原告の右のような姿勢に共感して、本件事故の損害賠償請求について原告に相談することにした。
2  被告C夫婦は、平成九年三月二五日、原告の事務所を訪れ、原告に対し、「クオリティー・オブ・ライフ」を読み、精神的なケアをも含め本件事故の損害賠償請求の事務を依頼したいと考えるに至った旨を述べ、本件事故の刑事記録の写し、事故現場の写真などの書類を交付の上、本件事故の概要を説明した。これを受けて、原告は、精神的なケアについても弁護士として対応可能なことを説明した。また、原告は、被告C夫婦から交付された書類と説明された事故の概要から、五ないし一五パーセントの過失相殺は免れないと判断し、これを前提にして請求金額を算出の上、その場合の着手金についても説明して、被告C夫婦に提示した。また、原告は、交通事故に関する自己の著作二冊を被告C夫婦に渡し、よく考えて委任するか否か決めるように述べた。
同月二七日ころ、原告は、被告C夫婦に対し、「私としては、できる限り過失を少なくする方向で最善を尽くしたいと存じますが、過失を0とすることは、法律的に不可能と思われます。その点を予めご了承下さいますよう、お願い申し上げます。」などと記載した文書(甲三二)と共に、委任契約書の用紙などを送付したところ、翌二八日ころ、被告C夫婦から原告に対し、熟慮の末、原告に依頼するのが最善と考えた旨の手紙(甲三三)を添えて、署名捺印された右契約書及び訴訟委任状が送付され、また、同年四月一日ころ、着手金として九六万八二〇〇円が送金され、原告と被告C夫婦との間で本件委任契約が締結された。
3  原告は、同月三日ころ、自動車損害賠償責任保険金の既払金の内訳を調査して、翌四日、右内訳を前提にして過失相殺のない請求金額を算出の上、次の記載をした文書(甲三六の1、2)を作成して、被告C夫婦に対し送付した。すなわち、相手方はおそらく過失相殺を主張してくると思うが交渉の戦略上当方は過失相殺をしていない、「ただ、このとおりの金額では、示談の成立は困難であり、当方でも訴訟外で示談を成立させる場合には、多少譲歩する必要がでてくるでしょう。」、この金額を請求することについて異存がないか電話が欲しい旨を記載した。その上で、原告は、同月七日、被告C夫婦に電話をかけて、右金額について説明を加え、右金額を保険会社に対し請求することについて被告C夫婦から了解を得た。そして、原告は、保険会社及び本件事故の相手方であるIに対し右金額の請求書を送付した。
同月二二日、保険会社の担当者が、原告の事務所を訪れ、過失相殺の割合を二〇パーセントとして算出した金額を提示してきたが、原告は、被告C夫婦の意向を踏まえて、これを低額にすぎるとして拒否し、特に過失相殺については、被害者は過失相殺をすること自体納得していない旨を説明の上、改めて協議を持つことにした。
原告は、こうした交渉を踏まえ、同日、被告C夫婦に対し、右の交渉経緯を記載した上、「私見では、別紙『C・昌子様に関する損害明細書【第2案】』に示しましたように、¥12,266,593から¥17,087,310位が合意に達しうる範囲ではなかろうかと存じます。もし、1500万円から1700万円で合意できれば、かなり伏見様に有利な額といえましょう。つきましては、どの位まで譲歩できるか、大至急ご検討のうえ、ご回答下さい。」として、過失相殺割合を五ないし一五パーセントとして算出した金額を記載した報告書(甲四一の1、2)を送付した。
4  被告Dは、右報告書中の特に傍線が引かれた部分について、原告が本件事故の現場も見ておらずその状況を十分に把握していないのではないかと不安を覚えた。そこで、被告C夫婦は、再び原告と面談することにし、同年五月八日、原告の事務所に赴いた。
その際、原告は、右の示談交渉の経緯を報告するとともに、過失相殺の割合についてどれくらい譲歩できるかを尋ねたところ、被告C夫婦から、過失相殺はしないことでお願いしたいとの意向が示されたため、過失相殺を全くしないというのは難しいが再度交渉してみる旨を述べるとともに、被告C夫婦から、総額が二〇〇〇万円であれば示談してもよい旨の了解を得た。
そこで、原告は、翌九日、保険会社に電話をかけ、総額二〇〇〇万円での示談の可能性について打診したが、同月二二日、保険会社から、過失相殺の点について見解を異にするため顧問弁護士である山口裕三郎弁護士(以下「山口弁護士」という。)に依頼することにした旨の連絡を受けたため、同日、被告C夫婦に対しその旨を記載した文書をファクシミリにより送信した(甲四二の1、2)。
これを受けて、原告は、同年六月五日、山口弁護士と交渉した。原告は、本件は住宅街で発生した事故であり、被害者が九歳の女の子であったことを勘案すると、過失相殺をすべきでない旨を主張したが、それに対し、山口弁護士からは、過失相殺は二〇パーセントになる、隔たりがあるので訴訟を提起してはどうかと勧められた。そこで、原告は、山口弁護士に対し、東京地方裁判所を合意管轄とするよう求めるとともに(同月九日、その同意を得た。)、同月六日、被告C夫婦に対し、右の交渉経緯を記載の上、「このうえは、訴訟を提起する以外、よりよい解決の道はなさそうです。」、「提訴するということで最終的によろしいかどうか、私あてご連絡下さい。」などと記載した報告書(甲一四の1)を送付した。
5  他方、被告C夫婦は、本件事故について過失相殺を全くしないのは難しいとの原告の説明に納得できなかったことから、自ら文献などを読んだ上、次の文書を作成して、同月五日ころ、原告に対し送付した。すなわち、大人対子供の事故の場合には、両者に歴然とした力の差があることや、「現在の子供たちは車の運転はもちろん、車社会のあり方に意見を述べることも許されていないにもかかわらず、車社会の維持、発展のためと称して『交通ルールを守る』義務を一方的に負わされ、その挙句、ルールを守らなかった過失による損害の責任まで負わされている。」、「交通ルールを守らせることにも少なからず問題があると思われる。近年の子供の交通事故死者数の減少は専ら交通安全教育の徹底の成果であるのかも知れない。しかし、これはつまり子供が注意深く道を歩くようになったことであり、道路で遊ばなくなったということである。子供の遊ぶ権利を大人が奪っているのではなかろうか。道路から子供の姿が見えなくなり、車の利便性は高まるがその利益のために子供の利益を犠牲にして良いはずがない(子どもの権利条約三一条遊ぶ権利の保障)」等の「子供の置かれている社会的立場」などからすると、「子供が被害者となる交通事故は、通常の個人対個人、個人対企業を念頭に置いた処理方法、つまり過失相殺には無理があり、社会的問題として広くとらえ公害事件の様に国家あるいは、自動車に関わる企業が補償を行うべきである。」、結論として、考えられる望ましい賠償方法は、いかなる場合も子供の責任は問われることなく一〇〇パーセント補償される、損害のうち加害者が責任を負わない部分については国が責任を負うべきであることなどを、児童の権利に関する条約などに言及しつつ書面(甲一三の2)にまとめ、「多々、御意見があろうと存じます。御相談の上、今後の交渉にのぞんで参りたいと思っております。どうぞ我ままな依頼者とあきれずおつきあいのほど、よろしくお願い申し上げます。」などと記載した手紙(甲一三の1)を添えて、送付した。
6  原告は、翌六日、被告Cに電話をかけ、前記4のとおりそれまでの交渉の経緯を説明するとともに、提訴することを勧めたが、その際、被告Cから右5の書面に対する意見を求められたため、そのような主張は裁判ではなく政治的活動として行うべきである、児童の権利に関する条約は交通事故とは関係がないなどと説明し、本件委任契約をやめるのであればみなし報酬金を請求することになる旨を伝えた。そして、原告は、山口弁護士との前記4の交渉経緯、管轄合意の結果を踏まえ、同月一〇日、被告C夫婦に対し、次の文書を送付した。すなわち、訴訟を提起する場合には、管轄の合意ができるので東京地方裁判所に提訴すること及び着手金として八四万円を支払ってもらうことになることに加え、「裁判というものは、現在の法制度のもとで、実際におきた事件を審理するものです。法制度そのものの改革を訴える場ではありません。法制度の改革を訴えるのは、立法府である国会で行うことです。」、「伏見様の裁判は、被害者が幼児や児童の場合、はなから過失相殺の対象にすべきではないという法制度の改革を議論する場ではなく、伏見様側の過失をできる限り低くし、少しでも多くの賠償金を獲得するという目的のための裁判であることをご理解下さい。」、「この点はどのような弁護士が代理人につこうと、変えることのできない真理です。」、「上記のことをご理解のうえ、提訴するという方針でよろしいかどうか、至急ご回答下さい。(ちなみに相手方は提訴するよう求めてきており、提訴致しませんと、本件はいつまでも解決しないでしょう。)」などと記載した文書(甲四三)を、過失相殺に関する文献の写しを添えて送付した。
さらに、原告は、翌一一日、被告C夫婦に対し、二歳の幼児の交通事故における過失相殺に関する裁判例を添えて、「本件を考えるうえで参考となる判例がありましたので、お送りします。」、「たとえ幼児であっても、子供又は親に過失があれば、過失の対象にして検討するというのが、現在の日本の法制であり、これは全国どこの裁判所でも共通です。」、「これは交通事故を専門にしている弁護士の間では、常識中の常識であり、『被害者が幼児の場合には、はじめから過失相殺を論議すべきではない』などという主張は通りません。」、「再三申し上げることですが、この点を十分ご理解下さい。」などと記載した文書(甲四五の1)を送付した。
7  これに対し、被告C夫婦は、原告が調査を十分にしないまま提訴を急いでいるようで不安を覚えたため、同月一二日、原告に対し、自分たちの考えを記載した文書(甲一五)をファクシミリにより送信した。その大要は、次のとおりである。
(一) 自分たちは全てを原告に任せるのではなく、自分たちでも考え納得した上で進めたい。原告にとっては非常に煩わしく思われるかもしれないが気持ちを尊重してもらいたい。これ以上我慢できないということであれば辞退してもらっても構わない。
(二) 自分たちもはなから子供を過失相殺の対象にすべきではないという議論が的外れであることは理解できた。しかし、事故によって生じた損害のうち加害者に八割の責任があるとすると、残りの二割の責任が誰にあるのかが問題である。単純に子供にあるとはいえない。
(三) そこで、次の結論に至った。
〈1〉 過失相殺を九(加害者)対一(被害者)とする。
〈2〉 逸失利益 二七〇〇万七一六九円
〈3〉 死亡慰謝料 二二〇〇万円
〈4〉 葬儀費 一五〇万円
〈5〉 加害者の責任となる金額 四五四五万六四五二円 計算式(〈2〉+〈3〉+〈4〉)×〇・九
〈6〉 失った財産 二七〇万〇七一七円 計算式 〈2〉×〇・一
〈7〉 既受領金 二八七〇万九五〇〇円
〈8〉 結論 一九四四万七六六九円 計算式〈5〉-(〈7〉-〈6〉)
考え方 既受領金(自賠責保険)はその性格上、まず被害者の補償に充てるべきである。現在の状況はその本旨に外れ加害者の負担軽減となってしまっている。
(四) 自分たちの主張は法律を変えることを望んでいるのではなく、あくまで現行の法律の範囲内で被害者を軽視していることを改めたい。「今回の裁判で私たちが最もこだわりたいことは、過失相殺された子供の過失の責任が誰にあるかということです。あいまいにされているその点を明らかにしたい」
(五) 自分たちの論点で法律上矛盾があれば教えて欲しい。
8  これを受けて、原告は、翌一三日、被告C夫婦に対し、次の内容の記載をした文書(甲一六の1、2)を、幼児の交通事故における過失相殺に関する文献の写しを添えて、送付した。
(一) 自分たちでも考え納得した上で進めたいという被告C夫婦の考えに対しては、「基本的にはごもっともであり、私もできる限り裁判の進行や裁判所の法的考え方についてご理解いただきたいと願っています。」。「ただしかし、当事者のお考えが専門家からみますと著しい独断であり、その独断にこりかたまって、容易に専門家の意見を聞きいれないということになりますと、大いに問題です。」。「私は『交通事故賠償に関する日本有数のスペシャリスト』と目されています。」。「だから、私の意見には従っていただきたいというつもりはありませんが、少なくとも、専門家としての私の意見に謙虚に耳を傾ける姿勢をおもちいただきたいと思います。」。「民事裁判というものは、いったん提訴した限り、民事訴訟法という法律にのっとり、裁判官の訴訟指揮のもとに進行させられるものです。」。「自分が納得しつつ進める裁判でないなら、裁判などはしたくないというのであれば、裁判はおやめになることです。その代り、本件はいつまでたっても解決しないことになりますが。」
(二) 仮に裁判所が過失割合八対二という判決を下した場合、「この場合には、裁判所は、2割の責任は親である伏見様(特に本件の現場にいたD様)に監護義務を怠った過失があると判断するものと予想されます。」。「昌子様はなぜそのとき、『萌笑ちゃん!車が来たから動いちゃだめよ』と叫んででも、お子さんを制止しなかったのか、ということになります。」。「お子さん側の過失を裁判所が認定する限りは、その親の監護義務違反を認定するのが常です。親は現場にいなかったとしても、『ひごろのしつけが悪い』というように裁判官は考えます。」。「今回は、萌笑さんのお母様である昌子様が現場で同行していたのですから、萌笑さん側の過失を認定する場合には、ますます強く、母親である昌子様の監督義務違反の責任を課してくるでしよう。」
(三) 被告C夫婦の論ずる前記7(三)の計算式に対しては、「伏見様の独断であり、理解に苦しむものです。」
(四) 「以上、私がこの文書で申し上げたことを納得できない場合には、日弁連交通事故相談センター東京支部・・・TEL03(3581)1770へ出向き、この用紙を持参してじっくり相談してみることをお勧めします。」
9  被告C夫婦は、原告の右文書を読み、原告の姿勢に失望し、信頼感を損ねるに至ったが、文書のやりとりだけでは真意が伝わらないと考え、同月二三日、原告の事務所に赴いて原告と面談した。
被告C夫婦は、原告に対し、自分たちは損害賠償請求によって精神的救済を求めているのでも相手に制裁を望んでいるのでもない、自分たちは子供の交通事故に関する現行の賠償額の算定方法には合理性がなく納得がいかないので、納得できる方法を実現するための努力をしたい、そのために原告の力を借りたいなどと述べた。
これに対し、原告は、被告C夫婦の右の主張の問題点について、医療に例えれば、医者に対して手術に用いる道具や薬について注文するようなものであり、被告Cの職業である漆工芸に例えれば、シャボン玉に漆を塗るよう注文するようなものであるなどと言いながら、説明した。また、原告は、被害者の利益が金銭であることは自明のことであることや、被告C夫婦の主張するところに添って訴訟提起することは到底できないことを述べ、さらに、被告C夫婦が弁護士である原告のことを「さん」付けで呼ぶことについて、弁護士に対しては「先生」という敬称を付けるのが通常であり、この点でも被告C夫婦は通常とは異なっているなどと言って、原告の意見を聞くよう説得した。
このようなやりとりの末に、被告C夫婦は、原告に対する信頼感を喪失し、原告に対し、本件委任契約を解約したい旨を申し出たところ、原告は、それならばみなし報酬金を払ってもらうことになる旨を求め、最終的には、原告と被告C夫婦とは、被告C夫婦が原告に対し実費六七六〇円だけを支払うことで本件委任契約を合意解約することにした。
10  原告は、翌二四日、被告C夫婦に対し、本件委任契約の合意解約書の用紙(甲五二)二部を、それらに署名捺印の上、返送するように、そして、「実費をお支払いいただき次第、(そのうちの)一部をお預り中の書類と一緒にお返し致します。」などと記載した文書を添えて送付した。
しかし、被告C夫婦は、右解約書の内容のうち、いかなる機関に対しても一切の訴訟、苦情の申立て等を行わないとの条項に納得できなかったので、返送しなかった。そして、被告Dは、同月二七日、第一東京弁護士会の苦情相談に赴き、そこでの指導を踏まえ、被告Cが、同月三〇日、原告に電話をかけ、支払済みの着手金の半額を返還するよう求めた。ところが、原告は、それを拒み、被告Cに対し、仮に原告の仕事を妨害するようなことがあれば営業妨害として訴えることや、そうなれば、Cの銀行口座を差し押さえることもできることなどを述べた。
そこで、被告C夫婦は、同年七月三〇日、第一東京弁護士会に対し、原告を相手方として、暴言の撤回、謝罪、支払済みの着手金の半額及び原告が預かり保管している書類の返還を求めて紛議調停を申し立て(甲一七)、同年一〇月一日、同年一一月一二日に期日が持たれたが、結局、同年一二月二五日、合意が成立する見込みがないとして、不成立となった。
11  この間の同年一二月一八日、原告は、被告C夫婦に対し、次の各文書を送付した。すなわち、原告は、被告C夫婦に対し、みなし報酬金として二二八万九〇〇〇円の請求をする、「お支払いがない場合には、不本意ながら、裁判所を介した法的措置をとることもありえます。」、「見做し報酬金並びに立替実費のお支払いがない限り、保管中の書類は、第一東京弁護士会報酬規則第四六条により、お返しできませんので、その旨通知します。」、「紛議調停が仮に不調に終わった場合において、貴殿らが第一東京弁護士会又は他の機関に対し、さらに別の申立て等をした場合、その内容や言動のいかんによっては、当職は、断固として厳正なる対抗措置(場合によっては、貴殿らへの法的制裁を求める措置)をとりますので、ご承知おき下さい。」などと記載した文書(甲五六)を、「依頼人が弁護士に対し、いわれなき懲戒を申し立てた場合、刑法上の『誣告罪』になる旨の文献」とのメモ書きを付けた刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの)の誣告罪の規定に関する文献の写し(乙二六の1、2)及び弁護士を中途で解任した依頼者に対しみなし報酬金の支払を命じた裁判例を掲載した法律雑誌のコメント部分の写し(乙二七の1、2)を添えて送付した。
12  このような経緯の後、被告C夫婦は、平成一〇年三月二日、原告に対し、本件委任契約が解約されていることの確認、支払済みの着手金九六万八二〇〇円のうち三分の二の返還、追加着手金及びみなし報酬金の請求の取消し、慰謝料各一五万円の支払並びに原告が預かり保管している書類の返還を求める旨の書面(甲五九の1)を内容証明郵便により送付した。
これを受けて、原告は、同月一三日、被告C夫婦に対し、本件委任契約が被告C夫婦の一方的な解任によって解約されていることを確認すること、受領済みの着手金を返還する根拠がないこと、追加着手金及びみなし報酬金の請求は撤回しないこと、慰謝料を支払う根拠がないこと、原告が預かり保管している書類は「民法二九五条一項の留置権、及び第一東京弁護士会報酬規則第四六条により、当職の請求額のお支払いがない限り、一切お返しできません。」、「貴殿らは、自分たちは交通事故の被害者であり、いかなるわがままも許容され、つねに『精神的な救済』を与えられてしかるべきだと考えておられるかもしれませんが、もしそうだとしたら、それはとんでもない考えちがいです。『精神的な救済』を与えられるべきは、良識のある被害者の場合であり、良識のない被害者の場合は論外です。」、「貴殿らのひとりよがり、身勝手、非常識は、常軌を逸しており、目に余るものがあります。当職の二十二年間に及ぶ弁護士生活の中でも、貴殿らほど、かたよった非常識な人物は存在しません。」、「貴殿らがもし当職に対し攻撃を加える場合には、当職は法律の許す範囲内で、貴殿らに対し、容赦なく、徹底的に法的制裁を加えますので、その旨ご承知おき下さい。」などと記載した文書(甲六〇)を、内容証明郵便により送付した。
二  本件ビラが作成、配布されるに至った経緯について
前記前提となる事実に、証拠(甲一ないし三、五、九、一〇、二七、五九、六〇、乙一、二四、二五、二八、三九、四一、丙一、二(以上、枝番を含む。)、被告B、同C及び同D本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、本件ビラが作成、配布されるに至った経緯について、以下の各事実が認められる。
1  被告C夫婦は、本件事故後一か月過ぎたころ遺族の会を知り、入会し、それから、その会長である被告Eらから精神的なケアやアドバイスを受けるなどしていた。
遺族の会の理事である被告Bは、原告と被告C夫婦との間のトラブルについて、かねてより人づてに聞いていたが、平成九年一二月ころ、被告Cに電話をかけて、力添えできることはないかと申し出た。被告Bは、その後も被告Cと連絡をとる中で、被告C夫婦が困難な状態に陥っていることを知り、この上は会って説明を聞きたいと考え、平成一〇年一月一八日の遺族の会の理事会に出席してはどうかと誘った。そして、右理事会において、被告Cから、原告との間のトラブルの経緯について、その間でやりとりされた書面が示されつつ報告され、被告C夫婦を支援していく方向の話がされた。その際、被告Bは、被告C夫婦に共感するところが多かったこともあり、自分が支援の窓口になることを伝えた。被告Cは、同年三月の理事会にも出席して、その後のトラブルの経緯について、そのころ原告との間でやりとりした書面(甲五九の1、六〇)などを示しつつ、報告した。
ところで、被告C夫婦は、平成一〇年四月六日、被告Eの紹介を受けて、被告G及び同人と同じ事務所に所属する井上直子弁護士とともに、被告Fの事務所に赴き、そこで、被告Fら三弁護士に対し、原告とのトラブルの経緯、更には原告を相手に別件訴訟を提訴したい旨を説明して、その訴訟を委任したい旨依頼した。被告Gは、かねてより無償で遺族の会の顧問を務めており、あらかじめ被告C夫婦から原告との間のトラブルについて相談を受けていたが、右三弁護士は、右依頼を引き受けることにし、その後、提訴に向けて打合せを重ねた。
2  平成一〇年四月一九日、遺族の会の理事会が開催され(以下「四月の理事会」という。)、同年五月一〇日に開催される本件総会の運営について協議が持たれた。その際、被告Cから原告を相手に別件訴訟を提訴するつもりであることなどが報告され、本件総会において原告とのトラブルの経緯について被告Cが報告することが決められた。
そこで、被告Bは、遺族の会の会員がそうしたトラブルに遭わないようにするために、本件ビラを作成し、本件総会において配布することを決意し、右理事会の終了後、その意向を被告Cに伝えた。そして、被告Bは、平成一〇年五月四日には、被告C夫婦の案内で本件事故の現場を検分の上、事前に第一東京弁護士会の紛議調停における状況について同会の副会長らから受けていた説明や、被告C夫婦から聞いた説明、原告と被告C夫婦との間でやりとりされた書面、現地検分の結果などを基にして、本件ビラを作成した。もっとも、その過程で原告に対し事情を確認する等はしなかった。
他方、被告Cは、本件総会での報告に備えて、「私たちが加茂弁護士を訴えるわけ・・・」と題する書面(その内容は、作成日付を除き甲九の4と同一であると認められる。)を作成した。
なお、被告Eは、四月の理事会に出席し、また、被告Bから、本件総会において本件ビラを配布する予定であることを知らされていたが、本件総会まで本件ビラを手にしたことはなかった。また、被告C夫婦も、本件総会まで本件ビラを手にしたことはなかった。
3  平成一〇年五月一〇日、東京都文京区本郷所在の文京区民センターにおいて、本件総会が開催された。本件総会には、一〇〇人程度の遺族の会の会員のほか、マスコミ関係者や来賓も出席した。
午前九時三〇分からの受付開始に先立ち、被告Bは、受付に本件ビラを置き、必要であれば持って行ってもらうよう受付担当者に指示した。また、そのころ、被告Cは、用意してきた右2の「私たちが加茂弁護士を訴えるわけ・・・」と題する書面を一〇〇部程度受付に置いたが、その際、初めて本件ビラに目を通した。本件ビラには、別紙二のとおりの記載がされている。
本件総会においては、午前中、被告Eから、前年度の事業報告、次年度の事業計画、収支などが報告された。そして、午後二時一五分ころから一五分程度、被告Cは、「被害者からの報告」というテーマの下に、右2の「私たちが加茂弁護士を訴えるわけ・・・」と題する書面に沿って、本件事故の概要、原告とのトラブルの経緯、別件訴訟の提訴の内容等について説明、報告した。そして、被告Cの右報告が終わったころ、被告Dは、司会者に促されて、子を連れて会場の前方に出て、出席者に一礼した。
また、本件総会において、被告Bが音頭をとって、「伏見さんを支援する有志グループ」を結成することが発表された。
4  被告C夫婦は、平成一〇年五月二七日午後一時ころ、被告Gと共に東京地方裁判所に赴き、別件訴訟を提起し、所用のあった被告Gと別れた。
ところで、被告Bは、四月の理事会の終了後、本件のような事態を幅広く周知させたいと考え、マスコミにこの問題を採り上げてもらうため、有志グループで本件記者会見を行うことを決意し、それを被告Cにも伝えていた。そして、同日午後三時ころ、東京地方裁判所庁舎内の司法記者クラブにおいて、有志グループが主催して、本件記者会見を行った。記者クラブには、常駐社として読売新聞、テレビ朝日、テレビ東京など一五社が、また、非常駐社として一三社が加盟しており、加盟社の名簿上の記者の合計人数は約二六〇人である。
同日午後三時からの会見に先立ち、被告B、被告C夫婦、被告E及び遺族の会の顧問である田嶋は、あらかじめ用意していた本件ビラ、「訴えるわけ」などの資料を記者席に配布した。
本件記者会見においては、被告C夫婦が壇上の中央に、被告E及び同Bが右側に、田嶋が左側に座った。そして、まず、被告Bが遺族の会の活動内容及び別件訴訟を提起したことを説明した後、被告Cが「訴えるわけ」に沿って、原告を知ってから別件訴訟を提起するに至るまでの経緯について説明を加え、続いて被告E、田嶋の順に話をした上で、記者からの質問に対して応答をした。
なお、被告G及び同Fは、あらかじめ被告Cから本件記者会見を行う予定であることを聞かされていたものの、本件記者会見において発言する等の関与をすることはなかった。すなわち、被告Gは、午後三時ころ記者クラブに赴き、その入り口付近に立って本件記者会見の様子を見、また、記者席に配布された資料を手に取って見たりしたが、それを配布することはしなかった。また、被告Fは、所用のため記者会見の途中の午後三時三〇分ころになって記者クラブに赴き、被告Gと同様に記者クラブの入り口付近に立って本件記者会見の様子を見、やはり資料を手にしたが、それを配布することはしなかった。
本件記者会見の終了後、被告C夫婦は、記者クラブの数名の記者から個別に質問を受け、訴状を見せるなどして回答した。
5  翌五月二八日の読売新聞に、別件訴訟の提起に関する記事(甲五)が掲載された。被告Dは、その記事を入手することができなかったため、東京にある同社の本社を訪れることにした。それを知った被告Bは、より多くの人に本件のような事態を知らせたいと考え、被告Cに対し、被告Dが東京に行く際に他のマスコミにも本件ビラなどを配布したらどうかと助言した。これを受けて、被告C夫婦は、相談の上、そのようにすることにした。
被告Dは、翌二九日、読売新聞本社を訪れ、別件訴訟の提起に関する記事が掲載された同新聞を購入した後、週刊誌「週間読売」の編集部を訪れ、「私は神奈川県葉山町に住む伏見と申します。突然のお便り失礼いたします。私たち夫婦は、一九九六年七月一一日に、次女萌笑を交通事故で亡くしました。このため、私たちは賠償交渉を加茂弁護士に依頼いたしましたが、同封いたしました経緯の説明『私たちが加茂弁護士を訴えるわけ・・・』の理由で、この加茂弁護士を相手に裁判を起こしました。ここに、その内容をご連絡させていただきます。尚、同封いたしました資料は、一昨日提訴した際、東京地裁の記者クラブで行った記者会見でお配りしたものと、そのことを報道した読売新聞のコピーです。」との別件訴訟の提訴内容を記載した書面(乙三九)と共に、本件ビラ、「訴えるわけ」、「クオリティー・オブ・ライフ」、右新聞の写しなどを、受付担当者に渡した。次に、被告Dは、週刊誌「サンデー毎日」の編集部を訪れ、編集部次長に右各文書を渡して、多少の面談をし、さらに、週刊誌「週刊ポスト」の編集部を訪れ、右各文書を受付担当者に渡した。
「サンデー毎日」の平成一〇年六月一四日号には、別件訴訟の提訴に関する記事が掲載され、被告Eのコメントが付されている(甲一〇)。
三  本訴1について
そこで、進んで、前記一及び二で認定した事実に基づいて、本訴1について判断する。
1  争点1-1(本件ビラが原告の名誉又は信用を毀損するか否か)について
ある記述が、他人の名誉を毀損するものであるかどうかは、一般の読み手の普通の注意と読み方とを基準として、読み手が記述全体から受ける印象、認識によって判断すべきものと解される。
そこで、以下、右観点から、別紙二の内容を有する本件ビラが原告の名誉又は信用を毀損するか否かについて検討するに、原告が第二の二1(一)で問題にしているaないしfの部分については、その直前に記載された「伏見さんが民事裁判を起こすべく考えていたとき、ふと目にとまったのが、新聞に掲載された加茂弁護士の記事でした。加茂弁護士は、交通事故を主な仕事にした専門家であり、しかも被害者の立場に立って弁護活動をする『市民派弁護士』と紹介されていました。伏見さんは藁をもすがる思いで加茂弁護士の門を叩いたところ、思った通りの好人物に見受けられ、伏見さんは喜んで代理人契約をすることになりました。」との部分と併せ読むと、一般の読み手に対し次のような印象、認識を抱かせるものになっているというべきである。すなわち、弁護士である原告は、被告C夫婦と委任契約を締結した直後に、それまで示していた態度を翻し(aの部分)、被告C夫婦の意向を無視して自らの結論を押し付けようとし、事件の早期終了のみを目指した(b及びcの部分)。そして、それに反論した被告C夫婦に対し、「自分の言うとおりにしろ」と強要し(dの部分)、法律という刃を振りかざして脅迫まがいの言動をたびたび行い(eの部分)、原告を「先生と呼ばない」と怒ったりもした(fの部分)。
また、本件ビラのうちgないしjの部分は、以上の記述に続くものであるが、それまでの記述と併せ読むと、原告は、依頼された業務を全く行わなかったにもかかわらず、高額な着手金の返還をせず(gの部分)、また、やってもいない裁判の成功報酬を求めるとともに(hの部分)、裁判のために必要な資料の返還を拒み(iの部分)、その返還を求める被告C夫婦に対し「法律家としてできる最大限の制裁を加える」との脅迫状を送付した(jの部分)との印象、認識を読み手に抱かせるものとなっているというべきである。
そして、本件ビラのaないしjにおいて記述されている内容は、原告が被告C夫婦から受任した弁護士業務の遂行についての基本的姿勢を強く非難するものとなっており、また、そこで用いられている表現は、「豹変」、「妥協を押しつけようと」、「強要」、「法律という刃を振りかざし」、「脅迫まがいの言動」、「放棄を強要」、「裁判の必要資料などを差し押さえ」、「脅迫状を送りつけて」等強い調子の用語が多用されるものとなっている。
以上説示したところを総合考慮すると、本件ビラのうちaないしjの部分は、その記述全体を一般の読み手の普通の注意と読み方に従って通読すると、弁護士である原告の社会的評価を低下させ、その名誉又は信用を毀損するものであると判断される。
2  争点1-2(本件ビラの作成、配布への被告らの関与の有無及びその態様)について
そこで、次に、右1で説示したような記載内容を有する本件ビラに関し、被告ら各人がその作成、配布に関与したか否か及びその態様について、前記二で認定した事実に基づいて検討する。
(一) 被告Bについて
被告Bは、同人も自認するとおり、平成一〇年四月一九日に開催された四月の理事会の終了後、本件ビラを自ら作成し、本件総会及び本件記者会見において、それを配布したことが認められる。また、同年五月二九日に被告Dが週刊誌三社の編集部に本件ビラを持参する(以下「五月二九日の配布」という。)に際しては、事前に、被告Cを通じてそうすべきことを助言していたことが認められるところである。
(二) 被告伏見夫妻について
被告Cは、四月の理事会の終了後、被告Bから本件ビラを作成することを聞き、自らは前記二2の「訴えるわけ」を作成して、本件総会に臨んでおり、本件総会当日まで本件ビラに目を通したことがなかったとしても、それまでの被告Bへの報告、相談の経緯にかんがみると、本件総会における配布を、被告Bと共に行ったものというべきである。また、被告Cには、本件記者会見における配布が認められるほか、五月二九日の配布についても、被告Dは同Cと相談したというのであるから、被告Dと共に行ったものというべきである。
被告Dについても、本件総会当日まで本件ビラに目を通したことがなかったとしても、前記一及び二で認定した事実によれば、被告Dは被告Cと夫婦であり、両名は、本件委任契約の締結当時からその後の原告との間のトラブルへの対処に至るまで、終始密接に連携しながら対応していることが認められるところであり、現に、本件ビラの作成の過程でも、平成一〇年五月四日には、夫と共に被告Bを本件事故現場に案内したりしているのである。こうしたことに、被告Dがその後執った行動、すなわち、被告Dが、夫と共に本件記者会見に出席して本件ビラなどを配布し、また、同月二九日には自ら週刊誌三社の編集部に赴いて本件ビラ等を交付していることをも併せ考慮すると、本件総会における配布について、被告Cと同様の関与が推認されるというべきである。また、右のとおり、本件記者会見における配布及び五月二九日の配布についても、認められる。
(三) 被告Eについて
確かに、被告Eは、あらかじめ被告Bから本件総会において本件ビラを配布する予定であることを聞いていたこと、本件総会及び本件記者会見に出席していたこと、本件記者会見においては本件ビラを配布し壇上で発言をしたことなどが認められるところである。
しかしながら、前記二で認定した事実によれば、本件ビラは、四月の理事会の終了後、被告Bが立案してその結成に係る有志グループの名において作成され、また、本件記者会見も遺族の会ではなく有志グループの主催により行われたのである。こうしたことに、本件においては、被告Eが、原告と被告C夫婦との間のトラブルにどの程度関与したのか、また、本件ビラの作成、配布にどの程度関与したのかといった点についての被告Eの関与の態様、程度等について、前記二で認定した以上には明らかでないことを併せ考慮すると、被告Eが、不法行為として違法性を有する程度に、本件総会及び本件記者会見において、被告Bらと共同して本件ビラを配布したと認めることはできないといわざるを得ない。
そして、他に、右の点を証する的確な証拠は存在しない。
(四) 被告G及び同Fについて
被告G及び同Fは、本件記者会見場に居合わせ、その様子を見ていたことは認められるが、その場において本件ビラなどの資料を配布したことは認められない。
この点に関し、原告は、被告G及び同Fは本件ビラの配布を容認していたと主張するが、前記二4で認定した事実に照らし検討すると、同被告らにおいて原告に対する関係でこれを止めるべき作為義務を負っていたことを証する的確な立証は存在しないというべく、原告の右主張は採用できない。
(五) 以上検討したところによれば、本件ビラは、被告Bにより作成され、また、本件総会及び本件記者会見において配布され、さらに、平成一〇年五月二九日には週刊誌三社の編集部に配布されたが、それらには被告B及び同C夫婦が以上において説示した態様で関与したものと認められる。
そして、前記二3ないし5で認定したところからすれば、これらの配布は、不特定多数の者に対してされたものと判断される。
これに対し、被告E、同G及び同Fは、本件ビラの作成、配布に関与しておらず、又は関与の程度からして違法性が認められないものというべく、したがって、同人らに対する原告の本訴1の請求は、既にこの点において理由がない。
3  争点1-3(本件ビラの作成、配布行為が、公共の利害に関する事実に係り、公益を図る目的に出たものか否か)について
ところで、民事上の不法行為たる名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解される(最高裁昭和四一年六月二三日第一小法廷判決・民集二〇巻五号一一一八頁参照)。
そこで、以下においては、右観点に立って、被告B、同C及び同Dに対する関係で、右抗弁の成否(争点1-3及び4)について、順次検討を進めることとする。
まず、本件ビラの作成、配布行為が、公共の利害に関する事実に係り、公益を図る目的に出たものか否か(争点1-3)について検討するに、本件ビラの記載内容は、前記1で説示したとおり、弁護士としての原告の業務活動の当否に関するものであって、公共の利害に関する事実に係るものであると認められる。また、前記二2で認定したところに、証拠(甲一一、一二、乙四ないし八、二八ないし三五)及び弁論の全趣旨から認められる遺族の会の活動状況等を併せ考慮すれば、本件ビラは、被告Bにより遺族の会の会員ひいては一般公衆に対しこうした問題を明らかにする目的で作成され、同人らにより配布されたものであって、公益を図る目的に出たものであると認められる。
また、以上説示したところに、前記二2ないし5で認定した事実をも併せ考慮すると、本件ビラが、原告に対する人身攻撃に出たものであるとの原告の主張は、採用できない。
4  争点1-4(本件ビラの摘示事実の真実性の証明又は真実であると信ずるについての相当性の有無)について
そこで、進んで、本件ビラにおいて摘示された本件委任契約に関するaないしjの事実について、それが真実と認められるか否か、又は真実であると信ずるについて相当の理由があるか否かについて、前記一で認定した事実に基づいて検討する。
(一) まず、本件ビラのうち、aないしeの部分について検討する。
前記一1及び2によれば、被告C夫婦は、精神的なケアをも含めて依頼者の相談に応じる姿勢がうかがわれる原告の著述に関心を抱き、それを原告に伝えた上で本件事故に関する損害賠償請求の事務を依頼したこと、原告は、それを受けて、精神的なケアについては弁護士として対応可能なことを説明し、また、本件事故については、一定程度の過失相殺は免れないものと判断し、それを被告C夫婦に示した上で、本件委任契約が締結されるに至ったことが認められる。
また、前記一3及び4によれば、原告は、右依頼の直後から、依頼者である被告C夫婦の意向を踏まえて、過失相殺をしない示談案を相手方に示し、それに添う主張を展開したこと、しかし、相手方からは過失相殺を求められたので、依頼者である被告C夫婦に対し、そうした交渉経緯を逐一報告するとともに、一定の割合による過失相殺は免れ難いので譲歩してはどうかとの判断を示したこと、ところが、被告C夫婦からはあくまでも過失相殺を行わない方向での解決を求められたので、それに添って、訴訟提起も辞さないというところまで交渉を進めたことが認められる。
他方、前記一4によれば、原告のこうした事務の進め方について、被告C夫婦は、原告が本件事故の現場も見ておらずその状況を十分に把握していないのではないかと不安を抱き、そのような思いから平成九年五月八日には原告の事務所に赴き面談の機会を持ったのである。また、前記一5によれば、本件事故について過失相殺を全くしないのは難しいとの原告の説明に納得できなかったため、同年六月五日ころには、前記一5で認定したような自分たちの考え方を書面にまとめて、「多々、ご意見があろうと存じます。御相談の上、今後の交渉にのぞんで参りたいと思っております。どうぞ我がままな依頼者とあきれずおつきあいのほど、よろしくお願い申しあげます。」などと記載した手紙と共に送付するなどしているところである。このように、右当時、被告C夫婦からは、原告に対し、本件事故の損害賠償について、原告が考え、進めようとしているのとは大きく異なる考え方が示され、その想いを実現するための協力を求められる状況になっていたのである。
しかるに、前記一6によれば、原告は、同月六日には、被告Cに対し、電話により、それまでの自らの考え方を前提として提訴することを勧め、被告C夫婦が書面にまとめて示した考え方については、そのような主張は裁判ではなく政治的活動として行うべきである、児童の権利に関する条約は交通事故とは関係がないなどと対応し、本件委任契約をやめるのであればみなし報酬を請求することになるとの話も持ち出した。さらに、同月一〇日には、被告C夫婦に対し、書面により、提訴を勧め、その場合には着手金として八四万円を支払ってもらうことになる旨を伝えるとともに、その書面に、過失相殺の考え方について前記一6で認定したとおりの記載をし、また、翌一一日には「本件を考えるうえで参考となる判例がありましたので、お送りします。」との記載のほか、「たとえ幼児であっても、子供又は親に過失があれば、過失の対象にして検討するというのが、現在の日本の法制であり、これは全国どこの裁判所でも共通です。」、「これは交通事故を専門にしている弁護士の間では、常識中の常識であり、『被害者が幼児の場合には、はじめから過失相殺を論議すべきではない』などという主張は通りません。」、「再三申し上げることですが、この点を十分ご理解下さい。」などといった記載をした書面を送付したのである。
しかも、前記一7によれば、このような原告からの働きかけに対し、被告C夫婦から、原告に対し、翌一二日には、(1)  自分たちは全てを原告に任せるのではなく、自分たちでも考え納得した上で進めたい、原告にとっては非常に煩わしく思われるかもしれないが気持ちを尊重してもらいたい、(2)  自分たちもはなから子供を過失相殺の対象にすべきではないという議論が的外れであることは理解できた、しかし、事故によって生じた損害のうち加害者に認められる残りの責任が単純に子供にあるとはいえない、(3)  そこで、既受領金(自動車賠償責任保険によるもの)は、その性格上、まず被害者の補償に充てるべきである、現在の状況は、その本旨に外れ加害者の負担軽減となってしまっている、(4)  自分たちの主張は法律を変えることを望んでいるのではなく、あくまで現行の法律の範囲内で被害者を軽視していることを改めたい、(5)  自分たちの論点で法律上矛盾があれば教えて欲しい、との内容の文書が寄せられる状況に至っていたのである。それにもかかわらず、原告は、同月一三日、前記一8で認定した内容の文書(そこには、「お子さん側の過失を裁判所が認定する限りは、その親の監護義務違反を認定するのが常です。親は現場にいなかったとしても、『ひごろのしつけが悪い』というように裁判官は考えます。」、「今回は、萌笑さんのお母様である昌子様が現場で同行していたのですから、萌笑さん側の過失を認定する場合には、ますます強く、母親である昌子様の監督義務違反の責任を課してくるでしょう。」、被告C夫婦の論ずる計算式に対しては、「伏見様の独断であり、理解に苦しむものです。」といった記載もされていた。)を送付し、さらに、そのような原告の姿勢に失望し、信頼感を損ねるに至った被告C夫婦と同月二三日に面談した際にも、前記一9で認定したとおりの対応をしたというのである。
こうした経緯にかんがみると、なるほど、原告が被告C夫婦から受任した事務処理のうち、相手方である保険会社との交渉等の面では、迅速に進められており、特に問題となるところはないものと判断される。しかしながら、委任者である被告C夫婦からは、そのような事務処理に対して、特に過失相殺の在り方について再三にわたり要望が出され、同年六月五日ころ及び一二日にはその想いが文書により届けられていたのである。しかるに、原告は、そうした状況の下でも、相変わらず当初の方針に沿った処理を進めようとし、しかも、被告C夫婦の考え方について「伏見様の独断であり、理解に苦しむものです。」などと記載した文書を送付するなどしているのである。こうした原告の行為については、委任者であるC夫婦との間の意思疎通の点で性急な面があり、また、配慮に欠ける面があったものといわざるを得ない。
そして、以上説示したところからすると、被告C夫婦において、そのような原告の態度、対応を、その著述及び最初の面談の際に受けた印象とは全く異なったものとして受け止めたことは、容易に認定されるところである。また、被告C夫婦が、原告の事務処理の在り方について、過失相殺を受け入れるように勧めるばかりで、その点についての被告C夫婦の考え方に対しては右説示のとおりの対応に終始しているとして、原告が、自分達の意向を無視して自らの結論を押し付け、事件の早期終了のみを目指していると受け止めたこと、さらに、右の如き原告の説得、特に六月六日以降のそれを、被告C夫婦の反論に対し「自分の言うとおりにしろ」と強要するものであると受け止めたことも、十分に認定されるところである。そして、当時、被告C夫婦が以上説示したような想いで原告の事務処理を受け止めていたことは、その作成した陳述書(乙二四、二五)、同人らの本人尋問における供述のほか、被告C夫婦が作成した同年七月二九日付けの紛議調停申立書(甲一七)によっても、明らかである。
ところで、本件ビラにおいて摘示されたaないしeの部分が一般の読み手に対し抱かせる印象、認識は、前記1のとおり、弁護士である原告は、被告C夫婦と委任契約を締結した直後に、それまで示していた態度を翻し(aの部分)、被告C夫婦の意向を無視して自らの結論を押し付けようとし、事件の早期終了のみを目指した(b及びcの部分)。そして、それに反論した被告C夫婦に対し、「自分の言うとおりにしろ」と強要し(dの部分)、法律という刃を振りかざして脅迫まがいの言動をたびたび行い(eの部分)、原告を「先生と呼ばない」と怒ったりもした(fの部分)というものであるが、これを、以上説示したところ及び前記一で認定した事実と対照して検討すると、本件ビラのうちaないしdの部分については、記載内容が真実であることの証明がされたか、少なくとも、被告B及び同C夫婦において記載内容が真実であると信ずるについて相当な理由があったものと判断されるというべきである。
これに対し、eの「法律という刃を振りかざして脅迫まがいの言動をたびたび行いました。」との部分については、前記一で認定した事実にかんがみると、原告がその受任事務処理の過程で被告C夫婦に対しそのような言動を行ったことについては、いまだその証明が尽くされていないといわざるを得ない。そして、その表現振りに照らすと、右被告らにおいて右eの部分の記載が真実であると信ずるについて相当の理由があるということもできない。
(二) 次に、本件ビラのうち、fの部分について検討する。
前記一9によれば、原告は、子供の交通事故に関する現行の賠償額の算定方法には合理性がなく納得がいかない旨を主張する被告C夫婦に対し、そのような主張の問題点について理解を得ようと、不要にも、被告C夫婦が弁護士である原告のことを「さん」付けで呼ぶことについて、弁護士に対しては「先生」という敬称を付けるのが通常であり、この点でも被告C夫婦は通常とは異なっているなどと言って、原告の意見を聞くよう説得したというのである。
そうだとすれば、このような発言は専門家としての立場を利用した言動であったといわざるを得ず、また、前記一9で認定した平成九年六月二三日の原告の事務所におけるやりとりの内容等にかんがみると、法律の素人である被告C夫婦が原告のそのような言動を怒っているものと受け止めることは十分に考えられるところである。
そうすると、fの部分の記載内容が真実であるとの証明がされたか、少なくとも真実であると信ずるについて相当な理由があったものと判断されるというべきである。
(三) 続いて、本件ビラのうち、gの部分について検討する。
(1)  前記一10ないし12によれば、被告らが主張するとおり、原告は、被告C夫婦との本件委任契約の解約後、みなし報酬金の請求を行い、また、被告Cが支払済みの着手金の半額を返還するよう求めた際には、それを拒んだ上、仮に原告の仕事を妨害するようなことがあれば営業妨害として訴えることや、そうなれば、Cの銀行口座を差し押さえることもできることなどを述べたことなどが認められる。
しかしながら、gのうち、「それまで何もしなかったにも拘わらず」との部分については、前記一3ないし8によれば、被告C夫婦から本件事故の損害賠償に関する依頼を受けた原告は、本件委任契約の締結からその解約に至るまでおよそ三か月の間、相手方との交渉、これについての被告C夫婦への報告、法的観点からの相談、助言などの法律業務に従事していたことが認められるものというべく、この部分の記載内容が真実であるとの証明は尽くされていないといわざるを得ない。
この点、被告らは、gの部分は、依頼者である被告C夫婦が最も望んでいた事故原因の真相解明に関する原告の姿勢を指すものであり、原告が事故現場にさえ赴いていないことなどからして真実である旨主張するが、事故現場に臨んでいないことから、直ちに「何もしなかった」ということはできないというべく、被告らの右主張は理由がないというほかない。
(2)  ところで、被告らは、被告Bは、本件ビラの作成、配布に先立ち、甲号証及び乙号証の一部を読了していた旨主張している。
なるほど、証拠(被告B、被告C)によれば、被告Bは、被告C夫婦から甲号証及び乙号証の一部を受領し、それらを読了していたことが認められ、また、前記二2によれば、被告Bは、事前に第一東京弁護士会の紛議調停における状況について同会の副会長らから受けていた説明や、被告C夫婦から聞いた説明、現地検分の結果などをも基にして、本件ビラを作成したことが認められる。
しかしながら、被告Bにおいて右各資料等を子細に検討すれば、本件委任契約の経緯が前記一3ないし8で認定したとおりであったことが理解できたはずであり、結局、同人は、被告C夫婦の説明を安易に信じて、原告と被告C夫婦とのトラブルについて直接原告に問い合わせることもなく、本件ビラを作成、配布したものといわざるを得ない。
そうすると、被告Bが、本件ビラのgの部分を真実であると信じたとしても、そのように信じたことについて相当の理由があったということはできず、被告らの右主張は採用できない。
また、以上説示したところからすると、被告C夫婦についても、本件ビラのgの部分を真実であると信じたとしても、そのように信じたことについて相当の理由があったということはできない。
(四) 最後に、本件ビラの記載のうち、hないしjの部分について検討する。
前記一11及び12によれば、原告は、被告C夫婦に対し、みなし報酬金の支払を請求し、「お支払いがない場合には、不本意ながら、裁判所を介した法的措置をとることもありえます。」、「見做し報酬金並びに立替実費のお支払いがない限り、保管中の書類は、第一東京弁護士会報酬規則第四六条により、お返しできませんので、その旨通知します。」、「紛議調停が仮に不調に終わった場合において、貴殿らが第一東京弁護士会又は他の機関に対し、さらに別の申立て等をした場合、その内容や言動いかんによっては、当職は、断固として厳正なる対抗措置(場合によっては、貴殿らへの法的制裁を求める措置)をとりますので、ご承知おき下さい。」と記載した文書を、刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの)の誣告罪の規定に関する文献の写しなどを添えて送付したこと、原告が預かり保管している書類の返還等を求めた被告C夫婦に対する回答として、「貴殿らがもし当職に対し攻撃を加える場合には、当職は法律の許す範囲内で、貴殿らに対し、容赦なく、徹底的に法的制裁を加えますので、その旨ご承知おき下さい。」などと記載した内容証明郵便を送付したことが認められる。
ところで、本件ビラのhの部分で摘示の対象とされているみなし報酬金について、原告は、本件は、その所属する第一東京弁護士会の弁護士報酬規則四四条三項の委任契約終了につき「依頼者に重大な責任があるとき」に該当する旨主張しているが、以上説示したところにかんがみると、本件がそのような場合に該当することが明らかであるとはいい難い。また、本件ビラのiの部分で摘示されている保管中の資料の返還拒絶権について、原告は、民法上の留置権及び右報酬規則四六条一項をその根拠として挙げているが、民法上の留置権が成立するものとは解し難く、また、乙一二(弁護士報酬規定コンメンタール、日本弁護士連合会調査室編著)によれば、後者の報酬規則と全く同じ規定振りの規定について、「書類等の返還の拒絶は、委任者との間でその旨の特約がなければなし得ないものである。」旨解説されているところである。こうしたところにかんがみると、いずれにしても、原告が主張していた右各権利の存在については、必ずしも明白な根拠に裏付けられたものとはいい難いものであったというべきである。
そして、この点については、原告においても、別件訴訟係属後の平成一〇年一〇月一五日、被告C夫婦に対し、預かり保管していた書類を返還し、また、原告は、同年一一月二七日、被告C夫婦に対するみなし報酬金請求権を放棄する旨の意思表示をし、同年一二月二一日の別件訴訟の口頭弁論期日において、右請求権が不存在であることを認める旨の陳述をしているのである(甲九二及び弁論の全趣旨によりこれを認める。)。
そうだとすると、本件ビラのうちhないしjの部分については、その部分の記載内容が真実であることの証明がされたか、少なくとも真実であると信ずるについて相当の理由があったものと判断されるというべきである。
なお、法律の素人である被告C夫婦にとって、右の如き記載がされた内容証明郵便が脅迫状の如きものとして受け止められたことは、優に認定されるところである。
(五) 以上検討したところによれば、本件ビラで摘示されたaないしjの事実のうち、aないしd、f、hないしjの事実については、真実であることの証明がされたか、又は被告B及び同伏見夫妻において真実であると信ずるについて相当の理由があったものと認められ、この限りにおいて被告らの抗弁は採用できるが、e及びgの事実については、真実であることの証明が尽くされておらず、また、真実であると信じたことについて相当の理由があったとは認められないといわざるを得ず、この点では被告らの抗弁は採用できない。
5  争点1-5(謝罪広告の可否及び慰謝料の額)について
最後に、謝罪広告の可否及び慰謝料の額について検討する。
(一) 本件ビラのうち、e及びgの部分が、弁護士である原告の社会的評価を低下させ、その名誉又は信用を毀損するものであることは前記1のとおりである。
もっとも、前記2(三)で認定したとおり、全国交通事故遺族の会こと被告Eは、本件ビラの作成、配布について、何らの責任をも負うものではない。もともと、本件ビラは、有志グループの名義で作成されたものにすぎず、その作成、配布につき不法行為責任を負うのは、その理事である被告B及びその会員である被告C夫婦にすぎない。さらに、本件ビラの中でも、右被告らが責任を負うのは、そのごく一部分の記載内容についてにすぎないのである。
こうしたことに、その他本件に現れた一切の事情をも併せ考慮すると、本件ビラにより原告が失った社会的評価を回復させるためには、金銭的な賠償で足りるというべく、被告E及び同Bに対し遺族の会の会誌に謝罪広告を掲載することを求める原告の請求は、理由がない。
(二) 次に、慰謝料の額について判断するに、本件ビラは、前記一及び二で認定した経緯の下に作成され、配布されるに至ったものである。そして、前記4(一)で説示したとおり、原告においても、委任事務の処理において性急な面があり、委任者である被告C夫婦との間の意思疎通の面で配慮に欠ける面があったものといわざるを得ない。また、前記一10ないし12で認定した事実にかんがみると、本件委任契約の信頼関係が完全に破綻した平成九年六月二三日以降本件ビラが配布されるに至るまでの間の経緯においても、原告の側にも、被告C夫婦の置かれている立場、状況等に照らし適切でない言動があったものといわざるを得ない。
こうしたことに、その他本件に現れた一切の事情を併せ考慮すると、原告が本件ビラのe及びgの部分の記載により名誉を毀損され、被った精神的損害に対する慰謝料としては、三〇万円が相当である。
6  結論
以上によれば、原告の本訴1の請求は、被告B、同C及び同Dに対し各自連帯にて三〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成一〇年一二月六日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由がある。
四  本訴2について
本訴2においては、本件訴訟における被告B及び同Fによる別紙三の記載を含む陳述書(乙一)の作成又は提出行為の違法性の有無(争点2-1)並びに本件訴訟及び別件訴訟における被告Fによる別紙四の記載を含む準備書面の提出、陳述行為の違法性の有無(争点2-2)の二点が争点になっており、右被告らの本件訴訟及び別件訴訟における訴訟活動が不法行為を構成するか否かが問題となっているのである。
ところで、我が国の民事訴訟制度は、当事者主義及び弁論主義を基本理念としている。そこでは、訴訟資料、証拠資料の提出を当事者の権能と責任に委ね、当事者の積極的な訴訟活動を通じて、公正かつ迅速に私的紛争を解決することが目指され、また、当事者においてそのような積極的な訴訟活動をすることが期待されているのである。そして、当事者には、その訴訟活動を、信義に従い誠実に追行すべきことが求められている(民訴法二条)が、民事訴訟においては、当事者間の利害関係が鋭く対立することが多く、そのため、訴訟追行の過程において、相手方の名誉を損なうような主張、立証をせざるを得ない場合もあり、また、ときに個人的感情の対立が激しくなり、相手方の名誉を損なうような主張、立証に及んでしまうこともなくはない。しかし、当事者がそのような訴訟活動を行ったとしても、民事訴訟手続においては、裁判所の訴訟指揮による是正、あるいは、相手方からの反論、反証の機会が制度上確保されており、それが当該訴訟との関係で関連性、必要性を備えるものであり、かつ、争点に関するものであれば、終局的には当該事件に対する裁判所の判断により、損なわれた名誉を回復することも可能となることがある、という仕組みになっている。
このような当事者主義及び弁論主義を基本理念とする民事訴訟手続における当事者の訴訟活動の特質、民事訴訟制度の仕組み等にかんがみると、当事者又は訴訟代理人の主張、立証の中に相手方の名誉を損なうような表現があったとしても、それが訴訟活動として是認されないわけではなく、直ちには不法行為を構成しないことがあり得るというべきである。
そこで、以下、こうした観点に立って検討する。
1  争点2-1(被告B及び同Fによる別紙三の記載を含む陳述書(乙一)の作成又は提出行為の違法性の有無)について
(一) 被告Bが、本件訴訟において、別紙三のとおりの記載を含む陳述書(乙一)を作成し、それが、同人の訴訟代理人らによって当裁判所に提出され、平成一一年一一月二四日の第五回口頭弁論期日において取り調べられたことは、当裁判所に顕著である。
そして、右陳述書中の原告が問題として指摘している別紙三の1ないし8の記述についてみると、確かに、それらの文言のうちには、原告について、過度に強調、誇張され、的確さや穏当さに欠ける記述が見られるところである。
(二) しかしながら、右陳述書は、全体的にみれば、被告Bが、前記二で認定した経緯の下で知り得た事実等に基づいて、遺族の会の活動状況や、被告C夫婦に対する支援の経緯及びその理由等を記述するとともに、原告の本件委任契約上の事務処理に関して、意見、評価等を開陳するものとなっている。そして、そのような内容は、その立証趣旨が「被告主張事実全般」とされているとおり、本訴1に関し、被告らが主張するところを立証せんがために、作成、提出されたものと認められる。
そして、右陳述書中の原告が問題として指摘している別紙三の1の部分は、本訴1の争点そのものである本件ビラの記載内容に関連するものである。しかも、前記一で認定した本件委任契約の経緯、特に一5以下の経緯の下で見られた原告の言動、姿勢等を踏まえ、被告Bの意見、評価等が開陳されているものである。そして、この点についての当裁判所の判断は前記三4において説示したとおりである。
また、別紙三の2ないし8の部分は、原告のこれまでの著述、特に「弁護士カモ君のコンポート」という毎日新聞における連載及び「弁護士カモ君のちょっと休廷」という著作中の「海からの風」(以下「海からの風」という。)と題するエッセイ等を取り上げ、そのような著述等からうかがわれる原告の人となり、弁護士としての姿勢等について、被告Bの意見、評価等が開陳されているものである。そして、もともと、被告C夫婦が原告に対し委任する契機となったのは、前記一1及び2において認定したとおり、原告の著述等からうかがわれるその人となり、弁護士としての姿勢等であったというのであり、本件訴訟及び別件訴訟は、そのような経緯で成立した委任関係が、前記一で認定した経緯のとおり、被告C夫婦が抱き、希望していたのとは異なる形で原告により委任事務の処理が進められようとしたことから、両者間の信頼関係が破綻するに至ったことに端を発した紛争というべきものである。こうしたことにかんがみると、被告Bが原告の人となり、弁護士としての姿勢等に関する記載を含む乙一の陳述書を作成し、証拠として提出する行為は、本訴1の重要な背景事情を説明しようとするものと評価されるところであって、本訴1との関係で、関連性、必要性の点を備えるものというべきである。
(三) また、右陳述書は、原告がその平成一〇年一二月一四日付け準備書面中において、自分こそ「被告C・昌子という非常識きわまりない夫婦に遭遇した被害者」であると主張し、また、「(被告C夫婦の)言動は、片思いの恋愛感情が、その相手からつれなくされることによって、怨恨に転じた場合のストーカー的言動に酷似している」との別件訴訟における準備書面を書証(甲二五)として提出していることなどを受けて、被告C夫婦を擁護するため作成、提出されたものである(乙一、弁論の全趣旨)。そして、右陳述書は、被告Bの訴訟代理人らによって提出され、本件訴訟の第五回口頭弁論期日において取り調べられたのであるが、これに対しては、原告による反論、反証の機会が十分に保障され、現に、原告はその陳述書の記載内容に対する反論を記載した平成一一年九月八日付け準備書面を提出し、本件訴訟の第一〇回口頭弁論期日において陳述しているところである。
(四) 以上(一)ないし(三)において説示したところによれば、確かに、乙一の陳述書中の別紙三の1ないし8の記述中には、原告について、過度に強調、誇張され、的確さや穏当さに欠ける記述が見られるが、それらの記述が本訴1との関係で関連性、必要性が認められることは前記(二)で説示したとおりであり、また、その記載内容においても、前記(二)で説示したとおり、本件委任契約の経緯等の中に現れた原告の言動、姿勢等を踏まえ、被告Bの意見、評価等を開陳したり、原告のこれまでの著述、特に「弁護士カモ君のコンポート」という新聞の連載及び「海からの風」と題するエッセイ等を取り上げ、そのような著述等からうかがわれる原告の人となり、弁護士としての姿勢等について、被告Bの意見、評価等を開陳したりするものであるというのである。こうしたことに、右(三)において説示した被告Bが右陳述書を作成するに至った経緯、理由、そして、それに対して反論するために原告が本件訴訟において取った対応措置等をも併せ考慮すると、被告B及び同Fによる右陳述書の作成、提出行為は、前記民事訴訟手続における当事者の訴訟活動の特質にかんがみると、本訴1に対する訴訟活動として是認されるというべく、違法性を有しないというべきである。
そして、他に、被告らの右行為をもって不法行為責任を生ぜしめるべき事由について、的確な主張、立証は存在しない。
(五) よって、争点2-1に関する原告の主張は、理由がない。
2  争点2-2(本件訴訟及び別件訴訟における被告Fによる別紙四の記載を含む準備書面の提出、陳述行為の違法性の有無)について
(一) 当裁判所に提出された別紙四の1の準備書面について
原告が問題としている別紙四の1は、被告C夫婦、同B、同Eの訴訟代理人弁護士四人の連名で当裁判所に提出された一九九九年(平成一一年)七月二一日付け被告ら準備書面(一)の第三の三に記載されている。右訴訟代理人らは、右準備書面を右同日当裁判所に提出したが、そのうちの第一及び第二項については同年九月二二日の第四回口頭弁論期日において陳述したものの、その余の部分については、別紙四の1の記載(第三の三に記載されている。)を含め、陳述していないことは、当裁判所に顕著である。
ところで、原告が問題としている別紙四の1の部分を含む右準備書面の第三の部分は、右被告らが書証の申出をした乙二(原告の毎日新聞における連載「弁護士カモ君のコンポート」のシリーズの一つである「ドーミエの描いた人々」と題するもの)及び乙三(「海からの風」と題するエッセイ)について、本件訴訟とは何の関連性もないので、撤回させるか、証拠としての採用を却下すべきである旨の原告の同年五月二七日付け準備書面(五)に対する反論として主張されているものである。その中では、原告の著述を取り上げ、そこからうかがわれる原告の人となり、弁護士としての姿勢等について言及し、「原告は、このような方法でマスコミを利用し、自らを売り込んでいる」、「こうした原告の姿勢が、交通事故の損害賠償請求に関する被告伏見らに対する対応にも如実に現れている」として、乙二及び三が本件訴訟と関連性がある旨を主張する内容となっている。
そして、乙二及び三は、本件訴訟において直接の争点となっていない事項に関する証拠ではあるが、もともと、被告C夫婦が原告に対し委任する契機となったのは、右1でも説示したとおり、原告の著述等からうかがわれるその人となり、弁護士としての姿勢等であったというのであり、本件訴訟及び別件訴訟は、そのような経緯で成立した委任関係が、前記一で認定した経緯のとおり、被告C夫婦が抱き、希望していたのとは異なる形で原告により委任事務の処理が進められようとしたことから、両者間の信頼関係が破綻するに至ったことに端を発した紛争というべきものである。こうしたことにかんがみると、乙二及び三の書証としての提出行為及びそれらが本訴1と関連性を有することを主張しようとする右準備書面の提出行為は、本訴1の重要な背景事情を説明しようとするものと評価されるところであって、本訴1に対する防御方法として、関連性、必要性の点において欠けるところはないというべきである。
加えて、右準備書面に対する原告による反論、反証の機会は十分に保障され、現に、原告は、その内容に対する反論を記載した平成一一年九月六日付け準備書面(八)を提出し、本件訴訟の第一〇回口頭弁論期日において陳述しているところである。
以上説示したところによれば、確かに、本件準備書面中の別紙四の1の記述中には、原告及びその著述の内容について、過度に強調、誇張され、的確さや穏当さに欠ける記述が見られるが、右主張がされるに至った経緯及びその主張が本訴1の訴訟において防御方法として有する関連性、必要性については、右に説示したとおりであり、また、その記載内容においても、原告の「海からの風」と題するエッセイを取り上げ、その記述からうかがわれる原告の人となり、弁護士としての姿勢等について、被告らの訴訟代理人としての意見、評価等を開陳するものとなっているのである。
こうしたことに、それに対して原告が本件訴訟において取った対応措置等をも併せ考慮すると、右訴訟代理人らによる右準備書面の提出行為は、前記民事訴訟手続における当事者の訴訟活動の特質にかんがみると、本訴1に対する防御活動として是認されないわけではなく、違法性を有しないものというべきである。
そして、他に、右被告らの行為をもって不法行為責任を生ぜしめるべき事由について、的確な主張、立証は存在しない。
したがって、別紙四の1に関する原告の主張は、理由がない。
(二) 別件訴訟において陳述された別紙四の2の準備書面について
甲七七及び弁論の全趣旨によれば、原告が問題としている別紙四の2は、別件訴訟の原告である被告C夫婦の訴訟代理人弁護士三人の連名で当庁民事第一〇部に提出された一九九九年(平成一一年)四月一四日付け原告準備書面(八)に記載されているものであり、その内容は、別紙四の1中の「原告」が「被告」となっていることを除き、全く同一であると認められる。
ところで、証拠(甲二〇、二二、二四ないし二六、七二、七五、七七、九二、乙一〇、一一、二二、二三、四〇、四二)及び弁論の全趣旨によれば、別件訴訟の審理においても、本訴1と同様、本件委任契約に関する経緯を主たる争点としていることが明らかであり、そうだとすれば、右(一)において別紙四の1について説示したところがそのまま別紙四の2の主張についても当てはまるものといえる。
そうだとすると、被告C夫婦の訴訟代理人らによる別件訴訟における右準備書面の提出、陳述行為についても、前記民事訴訟手続における当事者の訴訟活動の特質にかんがみると、別件訴訟における攻撃防御活動として是認されないわけではなく、違法性を有しないものというべきである。
そして、他に、右被告らの行為をもって不法行為責任を生ぜしめるべき事由について、的確な主張、立証は存在しない。
したがって、別紙四の2に関する原告の主張は、理由がない。
3  結論
以上によれば、原告の本訴2の請求は、いずれも理由がない。
五  反訴1について
1  反訴1に関する争点は、本訴1の提起の違法性の有無である。
ところで、民事訴訟の提起が相手方に対する違法な行為となるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて訴えを提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和六三年一月二六日第三小法廷判決・民集四二巻一号一頁参照)。
2  そこで、右1に説示した観点に立って、検討する。
原告の被告G及び同Fに対する本訴1の請求を認めることができないことは、前記三において説示したとおりである。
しかしながら、証拠(甲二二、丙二)及び弁論の全趣旨によれば、別件訴訟において被告G及び同Fらが提出した一九九八年(平成一〇年)九月一八日付け準備書面(一)中には、「原告両名代理人弁護士G及び同Fが司法記者クラブの記者会見場で、会見の様子を見聞したことは認め」、「原告両名代理人の内一名が資料配付を手伝ったことは認める。」といった記載がされており、原告は、右準備書面のこうした記載に基づき、被告G及び同Fをも被告として本訴1を提起したものであることが認められる。
そうだとすると、右1で説示した観点に照らすと、原告による被告G及び同Fに対する本訴1の提起が違法であったということはできない。
そして、他に、右訴えの提起が、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであることを証する的確な証拠は、存在しない。
3  以上によれば、被告G及び同Fの反訴1の請求は理由がない。
六  反訴2について
1  反訴2に関する争点は、本訴2の請求の拡張の申立ての違法性の有無である。そこで、以下においても、前記五1で説示した観点に立って、検討することとする。
2  ところで、本訴2の請求の拡張の申立書が被告Fに送達されたのは、同被告が主張するとおり、本件訴訟において原告本人尋問が行われた平成一二年五月三一日の直前の同月二五日であり、また、右申立書は同月二六日付けであって、そこで原告が請求原因としている被告B及び同Fの行為は、半年ないし一年ほど前の事柄である(以上は当裁判所に顕著である)。
しかしながら、こうしたところによっても、右申立てが原告本人尋問において尋問者となった被告Fを牽制するためにされたとの被告Fの主張については、たやすく肯認することはできないといわざるを得ない。このことは、右原告本人尋問において、複数の被告らの訴訟代理人のうちの誰が尋問を行うかは、事前に明らかではなかったこと(当裁判所に顕著な事実である。)に照らしても、明らかである。
そして、他に、右請求の拡張の申立てが、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであることを証する的確な証拠は、存在しない。
3  以上によれば、被告Fの反訴2の請求は理由がない。
七  結語
以上によれば、原告の本訴1の請求は、主文記載の限度で理由があるが、仮執行宣言については、本件に現れた一切の事情を考慮すると相当ではないからこれを付さないこととし、その余の原告の本訴2の請求並びに被告G及び同Fの反訴1の請求及び被告Fの同2の請求は、いずれも理由がない。
したがって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金井康雄 裁判官 藤田広美 裁判官 榎本光宏)

 

別紙〈省略〉

 

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