【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(325)平成19年 4月26日 東京地裁 平17(行ウ)537号 障害補償給付不支給処分取消請求事件 〔レースライダー事件・第一審〕

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(325)平成19年 4月26日 東京地裁 平17(行ウ)537号 障害補償給付不支給処分取消請求事件 〔レースライダー事件・第一審〕

裁判年月日  平成19年 4月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(行ウ)537号
事件名  障害補償給付不支給処分取消請求事件 〔レースライダー事件・第一審〕
裁判結果  請求棄却  文献番号  2007WLJPCA04268003

要旨
◆モーターサイクルのレースライダーである原告がバイクメーカーである訴外会社とライダー契約を締結していたが練習走行中に転倒して脊髄を損傷し両下肢完全麻痺等の障害を負ったため労災による障害補償給付を請求したところ、所轄労基署長が労働者には当たらないとして不支給処分としたことから当該処分の取消を求めた事案において、原告が訴外会社との関係で指揮監督関係を認める根拠となる事情が見当たらず、報酬も労務提供の対価と見ることは困難であることなどから実質的な使用従属関係にはなく労働基準法上の労働者には当たらないとして、原告の請求を棄却した事例

裁判経過
控訴審 平成19年11月 7日 東京高裁 判決 平19(行コ)185号 障害補償給付不支給処分取消請求控訴事件 〔レースライダー事件・控訴審〕

評釈
Westlaw Japan・新判例解説 675号(2007WLJCC123)

参照条文
労働基準法9条

裁判年月日  平成19年 4月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(行ウ)537号
事件名  障害補償給付不支給処分取消請求事件 〔レースライダー事件・第一審〕
裁判結果  請求棄却  文献番号  2007WLJPCA04268003

名古屋市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 上山雅也
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 長勢甚遠
処分をした行政庁 磐田労働基準監督署長飯村義昭
同訴訟代理人弁護士 櫻庭信之
同指定代理人 安藤直人
同 吉川雪敏
同 後藤充宏
同 齊藤明宏

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

 

事実及び理由

第1  請求
磐田労働基準監督署長が平成13年10月25日付けで原告に対してした労働者災害補償保険法に基づく障害補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。
第2  事案の概要
本件は、ヤマハ発動機株式会社(以下「ヤマハ」という。)の指定するモーターサイクルのライダーとしてレースに参加するなどしていた原告が、練習走行中に転倒して傷害を負い、後遺障害が残ったことにつき、ヤマハの労働者としての業務上の障害である旨主張して、原告をヤマハの労働者と認めなかった磐田労働基準監督署長がした障害補償給付を支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求めた事案である。
1  前提事実(争いのない事実には証拠等を掲記しない。)
(1)  ヤマハにおけるライダー(乙38、弁論の全趣旨)
ヤマハには、モーターサイクルのライダーとして、①レース及びレースマシンの開発テストに参加することを業務内容とする「レースライダー」(「ファクトリーライダー」ともいう。)、②レースマシンの開発テストに参加することを業務内容とする「テストライダー」、③ヤマハに従業員として雇用され、市販車の開発部門に所属し、業務の一環として一般道路やテストコースを走行する開発テストに従事する「社内ライダー」の3種類が存在する。
ヤマハは、高度の技術を持った者を得るため、レースライダー及びテストライダーとの間で、「ライダー契約」と称する契約を、1年又は複数年の契約期間を定めて締結していた。
(2)  原告とヤマハとの間の平成9年までの契約
ア 原告は、平成5年から同9年まで、毎年、ヤマハとの間で、契約期間を各年1月1日から12月末日までの1年間として、原告が一定のレースにライダーとして参加すること等を内容とするライダー契約を締結し、これに基づき、ヤマハのレースライダーとしてレースに参加するなどの活動をしていた(乙1ないし3、原告本人)。
イ ヤマハと原告との間のライダー契約においては、ヤマハが原告に対し下記(ア)ないし(カ)の業務を委託し、これを原告が受託することとされた。
(ア) 各年の契約書の別紙に記載された特定のモーターサイクルのレース及びヤマハの指定するモーターサイクルのレースにライダーとして参加する業務(以下「レース参加業務」という。)
(イ) ヤマハの指定するモーターサイクルのテストにライダーとして参加する業務(以下「テスト業務」という。)
(ウ) ヤマハの指定する販売促進活動及びその他の催事に参加する業務
(エ) 雑誌、新聞、テレビ、ラジオ等への取材対応、出演等の業務
(オ) スポンサー、顧客等に対する挨拶、歓談、サイン、記念撮影、パーティ出席等の対応業務
(カ) ヤマハと原告とが別途協議のうえ定める業務
ウ ヤマハと原告との間のライダー契約においては、業務遂行に対する基本報酬は、平成7年は550万円、同8年は660万円、同9年は900万円と定められ、これを12回に分割して支払われた。そのほかに、原告がレースで3位以内に入賞したり、全日本選手権シリーズランキングでチャンピオンとなった場合には、ヤマハが原告に対し所定額の報奨金を支給することとされていた。(乙1ないし3)
(3)  原告とヤマハに係る平成10年の契約
ア 原告は、平成9年11月18日、有限会社a(以下「a社」という。)を設立し、その代表取締役に就任した。
イ a社は、平成10年1月1日、ヤマハとの間で契約期間を1年としてライダー契約を締結した(以下「本件ライダー契約」という。)。本件ライダー契約においては、a社が、ヤマハから上記(2)イの(ア)ないし(カ)の各業務を受託し、これらの業務をa社が原告に行わせること(本件ライダー契約1条1項1号ないし6号、2項)、ヤマハがa社に支払う基本報酬は1000万円とし、原告が上記(2)イの(ウ)ないし(カ)の各業務を行った場合には所定の方法で算出した額の個別報酬を、原告がレースで3位以上に入賞した場合及び全日本選手権シリーズランキングでチャンピオンとなった場合には所定額の報奨金を支給すること(同契約2条、3条)等が定められた。
(4)  事故の発生と原告の障害
ア 原告は、平成10年10月29日、宮城県柴田郡〈以下省略〉のスポーツランド菅生サーキットで開催された全日本ロードレース選手権最終戦にライダーとして参加した際、練習走行中に転倒し、車両とともにスポンジバリアに激突した(以下「本件事故」という。)。
イ 原告は、本件事故後、宮城県白石市内の病院に搬送され、さらに仙台市内の病院に転送された後、平成10年11月16日、名古屋市にある中部労災病院に転院した。原告は、同病院において「外傷性脊髄損傷」の傷病名のもと療養を継続し、同11年1月31日に治癒と診断され、下位体幹、両下肢完全麻痺等の障害が残った。(乙4)
(5)  本件処分
ア 原告は、平成12年5月31日、磐田労働基準監督署長に対し、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく障害補償給付の支給を申請したが、同署長は、同13年10月25日、原告は労働基準法9条に規定する労働者に該当しないとの理由で、障害補償給付を支給しない旨の処分をした(本件処分)。
イ 原告は、平成13年12月5日、本件処分を不服として、静岡労働局労働者災害補償保険審査官に対し審査請求をしたが、同審査官は、同14年4月23日、原告の審査請求を棄却する旨の決定をした。
ウ 原告は、平成14年5月28日、上記イの決定を不服として、労働保険審査会に対し再審査請求をしたが、同審査会は、同17年5月11日、原告の再審査請求を棄却する旨の裁決をした。
2  争点
原告は労災保険法に基づく保険給付の対象としての「労働者」に該当するか否か。
【原告の主張】
(1) 原告の業務
原告は、本件ライダー契約に基づき、主としてレース参加業務及びテスト業務を行い、その他、ヤマハから指示された販売促進、広告宣伝等の業務にも従事していた。ヤマハにとって、レースへの参戦は販売促進のための営利活動であり、バイクのテスト走行は市販車の開発に直結する活動であった。
(2) 時間的場所的拘束
原告は、全国のサーキットにおいて、月平均1、2回程度の頻度でレース参加業務に従事し、レースが開催される週は、概ね木曜日が移動日、金曜日が公式練習、土曜日が予選、日曜日が決勝、月曜日が移動日となっていた。原告は、公式練習、予選及び決勝の日には、通常午前8時にサーキットに入り、午後6時ころまで拘束された。また、原告は、隔週の木曜日と金曜日に、静岡県袋井市の袋井ヤマハテストコースでテスト業務に従事したが、その他の全国のサーキットでテストが行われた際にもテスト業務に従事し、年に2回程度は海外で行われるテストにも出張して従事した。
年間を通して見ると、3月中旬から11月上旬がレースのシーズンであり、それ以外の時期には、テスト業務に従事したほか、各種イベントに出席することが義務付けられていた。原告は、ヤマハからレースやテストに万全の体調で臨むことを求められていたため、オフの日にもトレーニングをするなど、常にレースやテストを意識した生活をしていた。原告は、私的にレースに出場することや兼業を禁じられ、レース出場に必要なライセンスカードもヤマハに取り上げられていた。
このように、原告は、ヤマハによって、ほぼ年間を通じて時間的にも場所的にも拘束されていた。
(3) ヤマハからの指揮監督等
原告は、ヤマハの指定するレースにヤマハの指定するマシンを使用して参加するのみで、自らレースやマシンを選ぶことはできず、原告が平成10年に出場するレースのクラスを変更したのも、原告の希望ではなくヤマハの指示によるものであった。原告は、着用するレーシングスーツ等の用具類やそれらに貼付するステッカーのデザイン、サーキット内での服装等についてもヤマハの指定に従わねばならなかった。レースやテストにかかるガソリン代、整備費等の諸経費、交通費、宿泊費等はヤマハが負担した。また、原告は、本件ライダー契約により、業務上知り得た企業秘密につき守秘義務を課せられ、業務遂行上の著作、発明等の成果に係る権利や、原告の肖像権はヤマハに帰属することとされた。その他、催事における発言やファンへの対応についても、原告はヤマハから細かい指示を受けていた。いずれの業務についても、原告に代わって他の者が遂行することは認められていなかった。
このように、原告は、ヤマハの完全な指揮監督下にあった。
(4) 報酬
原告は、業務全般の対価として、出来高払いではなく、固定した基本報酬の支給を受けており、基本報酬額を12で割った金額が毎月支給されていた。ヤマハにおいて基本報酬額は年功序列で定められていた。また、レースで一定の成績を収めると報奨金が支給されたが、これは一種の賞与であった。
(5) その他
本件ライダー契約の当事者は原告ではなくa社であるが、a社は税務対策として設立したものに過ぎず、実質的には原告個人と同一視されるものである。
(6) 結論
以上のように、原告は、ヤマハとの間の本件ライダー契約に基づき、ヤマハからの指揮監督下で、ほぼ年間を通じた時間的場所的拘束の下、レース参加業務及びテスト業務等に従事し、その対価として報酬を受け、ヤマハのマシン開発及び市販車の売上げ増に貢献してきたのであるから、ヤマハの労働者であり、労災保険給付を認められなければ著しく社会正義に反する。
【被告の主張】
(1) 労働者性の判断基準
労災保険給付の対象となる「労働者」の意義は、労働基準法9条にいう「労働者」と同一である。
労働基準法9条にいう「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいうと定義されているところ、ここにいう「使用される者」とは、使用者との使用従属関係の下に労務を提供する者ということができる。そして、「使用従属関係」とは、指揮監督下の労働に服するということであり、具体的には、仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由、時間的・場所的拘束、業務遂行上の指揮監督、報酬の支払条件及び方法、税務処理の状況その他の状況を総合的に考慮して判断することになる。
(2) 原告の労働者性について
本件事故当時、原告は、自身が代表者を務めるa社とヤマハとの間の本件ライダー契約に基づき業務を行っていたのであるから、ヤマハとの関係でも、a社との関係でも、原告を労働者と認める余地はない。
このことを措きつつ、上記(1)の判断基準に照らし、原告の業務に関わる諸要素を総合勘案して原告の労働者性を検討すると、以下のとおりである。
ア 使用従属性に関して
(ア) 指揮監督下の労働
原告が本件ライダー契約で決められたレース出場を受託した以上、レース本番及びテスト走行のため、時間と場所が一定の条件で拘束されるのは、業務の特性からして当然のことであるから、その点に関して諾否の自由が制限されていたとしても、ヤマハと原告との間の指揮監督関係を肯定する理由にはならない。原告の業務には代替性がなかったが、これもライダー契約が個々のライダーと締結される以上は当然である。また、レース中の走行方法は専らライダーの裁量に委ねられたほか、副業も禁じられていなかった。
要するに、原告は本件ライダー契約に基づき包括的な仕事の依頼を受託したのであって、業務中にヤマハから個別の指示を受けていたのではない。また、労務の提供に代替性がなかったとしても、ライダー契約の性質上当然であり、これをもってヤマハとの間の指揮監督関係があるとはいえない。
(イ) 報酬の労務対償性
原告の報酬は、拘束時間や日数が当初の予定より延びた場合も変わることがない。この点は、使用従属性を弱める要素となる。
イ 労働者性の判断を補強する要素
(ア) 事業者性の有無
原告が使用するマシンがヤマハから貸与されることは契約の目的上当然であるが、ヘルメット等の着衣類及び用具等は、a社の費用負担とされていた。また、原告の基本報酬額は、同種の業務を行うテストライダー及び原告と同世代の社内ライダーの年収に比べて著しく高額であった。さらに、本件ライダー契約においては、a社又は原告が第三者に損害を与えた場合はa社の責任と費用負担において処理解決する旨定められていた。
これらの点は、原告の事業者性を強め、労働者性を弱める要素である。
(イ) 専属性の程度
原告は、ライダー契約により、ヤマハの承諾なしに第三者と同一又は類似の契約を締結することを禁じられ、原告の肖像等もヤマハが独占的に無償で使用することを許諾し、第三者に対しては使用を許諾しないこととされているが、これはライダー契約が目的とする業務の性質によるものであり、労働者性を補強する要素としての専属性の表れではない。
ウ その他
(ア) 報酬の税務処理
本件事故当時の平成10年は、ヤマハとa社との間で本件ライダー契約が締結され、報酬はa社に対して源泉徴収されることなく支払われた。したがって、ヤマハが平成10年に支払った報酬は、原告の一定の労務に対する対価と見ることはできない。
(イ) 福利厚生等
原告にはヤマハの就業規則や健康保険が適用されず、会社内に専用の机、ロッカー、タイムカードのようなものはない。原告は、ヤマハの社員やパート従業員が有している従業員番号を持っていないので、一般開放されていない福利厚生施設の利用やヤマハ商品の社員割引を受けることはできない。
エ まとめ
以上のとおり、判断基準に照らして原告の業務に関わる諸要素を総合勘案しても、原告とヤマハとの間に指揮監督関係を認めることはできず、原告がヤマハとの間の実質的な使用従属関係の下に労務を提供し賃金を受けていたとはいえない。
(3) 結論
以上のとおり、原告は労働基準法9条にいう「労働者」とは認められないから、労災保険法に基づく保険給付の対象とはならない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前記第2の1(前提事実)に加え、証拠(各項に記載したもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)  原告がヤマハのレースライダーとなった経緯
原告は、5歳でポケットバイクのレースに出場し始め、12歳でミニバイク(50cc)のレースに出場するようになり、16歳の時に自動二輪免許を取得してからは250ccにランクを上げ、静岡県磐田市にある株式会社bに住み込んでアルバイトをしながらマシンの提供を受けてレースに出場していた。原告は、平成3年に関東選手権SP250ccチャンピオンとなるなど優秀な成績を挙げたため、ヤマハを含む複数のオートバイメーカーから勧誘を受け、平成5年、ヤマハとライダー契約を締結してレースライダーとなり、以後平成9年までの間、毎年ヤマハとの間のライダー契約を更新し続けた。(乙11、14、33、原告本人)
(2)  本件ライダー契約締結の経緯
原告は、平成10年のライダー契約を結ぶに当たっては、契約当事者をa社とすることにし、a社は、平成10年1月1日、ヤマハとの間で本件ライダー契約を締結した(前記第2の1(3)イ)。この際、ヤマハは、原告が250ccクラスで良好な成績を収めていたことから、さらに上のクラスであるスーパーバイククラスへの変更を勧めたところ、原告がこれに応じたため、本件ライダー契約において、原告が出場するレースはスーパーバイククラスと指定された(乙38、64)。
(3)  本件ライダー契約に基づく原告の服務及び待遇等
ア 毎年の12月、翌年の年間のモーターサイクルレースのスケジュールがレースの主催者によって決定され、これを踏まえてヤマハは原告又はa社との間で翌年のライダー契約を締結し、その後2月ころにレース本番、開発テスト、事前テスト、その他イベント等を含めた具体的な年間スケジュールを決定していた。原告が平成10年に本件ライダー契約に基づき業務に就いた日は、レースが61日、開発テストが56日、事前テストが30日、サイン会等が3日の合計150日であり、業務のない日に出勤する義務はなかった。(乙36、38、64、証人A)。
原告には、ヤマハの就業規則の適用はなく、一定時刻まで業務に従事する義務もなく、予定したすべての業務が終了すれば引き上げてよいことになっていたほか、仮に遅刻した場合もそのことのみを理由に報酬がカットされることはなく、逆に予定よりも遅い時刻まで業務に従事しても残業手当は支給されなかった(原告本人、証人A)。
イ 本件ライダー契約に基づきa社がヤマハから受給することとされた基本報酬額は1000万円であるが、これは、前年の原告のレースにおける年間総合結果(全日本選手権250ccランキング2位)が大きな要素となり、その他、原告の前年の年俸、テスト実績などが加味されて決定された(乙17、33、36)。レースライダーの報酬額は、参戦するクラスと成績によって変わるので、200万円程度の者もいれば、国際的なトップクラスの者では億単位に及ぶ者もいるが、a社が受給した基本報酬1000万円という金額は、国内ではトップクラスに近い額であり、これに対してヤマハにおけるテストライダーの年収は300万円から400万円程度であった(乙64)。なお、原告がレースやテストに参加するための交通費及び宿泊費は、基本報酬の決定に際して考慮され、a社の負担とされた(乙36)
ウ 原告は、ヤマハの一般の従業員と異なり、社内での自分用のロッカーや机などを持っておらず、タイムカードでの出退勤管理も受けていなかった。また、原告は、パートタイマーも含めヤマハの従業員全員が持っている従業員番号も有していないため、一般公開されていないヤマハの福利厚生施設や、ヤマハ商品の社員割引を利用することもできず、健康保険も適用されなかった。(乙60ないし62、64、証人A)
エ その他、本件ライダー契約においては、以下のことが定められている(甲5)。
(ア) a社は、業務遂行時に、原告に対してヤマハの指定するモーターサイクルを使用させる(5条1項)。a社は、原告が使用するヘルメット、レーシングスーツその他の着衣類及び用具等を、a社の費用負担で準備し、原告に着用させる(同条2項)。a社は、原告が使用するヘルメットのメーカー及びデザイン、ヘルメットに貼付するステッカーの寸法、デザイン及び貼付位置等並びに原告が使用するレーシングスーツその他の着衣類及び用具等のメーカーについて、ヤマハの事前の承諾を得なければならない(同条3項、4項)。a社は、原告が使用するレーシングスーツその他の着衣類及び用具等をヤマハが指定するデザインにしなければならず、それらに貼付するワッペン等の寸法、デザイン、貼付位置等についてはヤマハが指定し、a社はその他のワッペン等を貼付してはならず、原告をして貼付させてはならない(同条5項、6項)。
(イ) a社は、ヤマハ及びヤマハが指定する第三者が、原告の写真、イラストその他の肖像、氏名、サイン、意見等を独占的に無償で使用することを許諾し、ヤマハ以外の第三者に対し、それらの使用を許諾しないことを約する(6条)。
(ウ) 業務に関するスポンサー契約は、ヤマハのみがこれを行い、スポンサー料の分配は、ヤマハとa社で別途協議して定める。ただし、ヘルメット及びレーシングスーツその他の着衣類及び用具等については、ヤマハの事前の承諾を得た場合には、a社又は原告がスポンサー契約を締結することができる。(7条)
(エ) a社は、業務遂行中にa社又は原告が第三者に損害を与えた場合には、自己の責任と費用負担において処理解決する(13条)。
(オ) a社は、ヤマハの事前の承諾を得ることなく、第三者と同一又は類似の契約を締結してはならず、原告をして締結させてはならない(15条1項)。a社は、業務を第三者に再委託してはならない(同条2項)。
(カ) a社は、業務遂行上知り得たヤマハの営業上、技術上の秘密及びその他の秘密を第三者に漏洩してはならず、原告をして漏洩させてはならない(16条)。
(キ) 業務遂行に係る著作、発明、考案、意匠及びノウハウ等の一切の成果並びにその成果に係る著作権、工業所有権及び工業所有権を受ける権利は、ヤマハに帰属する(17条)。
(4)  原告のレース参加業務の内容
ア 原告が平成10年に参加したレースは、本件ライダー契約で指定(前記第2の1(3)イ、(2)イ(ア))された①1998年度全日本ロードレース選手権スーパーバイククラス全9戦、②1998年度鈴鹿8時間耐久レース、③1998年度ワールドスーパーバイク選手権第13戦SUGO大会の計11戦であり、これ以外のレースを指定されることはなかった。(甲5、乙36)
イ レースが行われるシーズンは、例年3月下旬から11月上旬までであり、平成10年も、原告は3月下旬から本件事故発生日の10月29日までの間、月平均1.5回程度の頻度でレースに参加した。原告が平成10年に参加したレースが行われた場所は、宮城県から山口県までの各所のサーキットであった。レースが開催される週の原告の日程は、木曜日が移動日、金曜日が公式練習、土曜日が予選、日曜日が決勝、月曜日が移動日というものであった。原告は、公式練習日、予選日及び決勝日は、通常午前9時にサーキット場に入り、終了時刻は公式練習日と予選日にミーティングが行われるため不規則であったが、通常は午後7時ころであった(乙36、38)。
ウ 原告がレースで使用するマシンは、本件ライダー契約5条1項(前記(3)エ(ア))に従い、ヤマハが準備し、その整備はヤマハの社員及びヤマハが業務委託したメカニックがヤマハの費用負担において行った。レースで着用するスーツやヘルメット等の用具に関しては、同契約5条2項ないし6項(前記(3)エ(ア))に従い、原告は、平成10年には、a社が同契約7条(前記(3)エ(ウ))によりヤマハの承諾を得て契約したスポンサーから調達した物品を使用した。(甲5、15、乙11、26、27、38、原告本人)
エ ヤマハは、レースにあたって、最低でも、監督1名、メカニック3名、チーフエンジニア1名、エンジニア1名のレーススタッフを用意する。レースにおける走行中は、メカニックと監督がライダーに対しボードを使って後続車あるいは先頭車との間隔、現在の順位、残り周数等の必要な情報を示す。走行方法については、事前に監督が指示を出すこともあるが、細かな指示を出すことはレースの特性からして難しい上、スタートした後のライダーのコントロールは不可能であり、監督の指示を容れて走行するか否かはライダーの判断によることになる。また、一般に、監督はライダーやスタッフの意見を極力取り入れた指示を出し、まとまらない場合には監督が決定、指示することもあるが、ライダーに目に余る指示無視がある場合にペナルティを課せられることがあるのみで、大半は指示に反しても口頭注意のレベルに留められる。(乙17、38、64、証人A)
オ ヤマハとしては、基本的に、レースに参加する以上は勝つことが目的であり、最初から入賞を度外視して参加することはなかった(乙38、証人A)。しかし、例えばライダーが公式練習中に転倒して負傷し、好成績が望めないような場合などには、やむなく主にデータを取ることを目的としてレースに参加することもあった(乙38、原告本人)。ヤマハにとって、ライダーの評価は1位に入賞することが第1のポイントであるが、マシンの評価能力、すなわち、レース中のマシンの状態を正確に把握し、捉えた現象を正確に伝える能力も重要と考えられている(乙38、証人A)。
(5)  原告のテスト業務の内容
ア ヤマハでは、毎年初めに1年分のテストの実施計画の概略を決定し、テスト実施の1、2か月前に最終的に実施の有無を決定してライダーに案内している(乙17)。
開発テストは、静岡県袋井市にあるヤマハのテストコースで行われ、レース用マシンの操縦安定性、エンジン性能の向上、タイヤの選定を主なテスト項目とし、その目的は、より早いレースマシンを作り上げることにあり、その成果が、5年ないし10年先の生産車用の技術としてフィードバックされる結果となる。ヤマハのテストコースでの開発テストの開始時刻及び終了時刻は1日目は午後1時から午後5時まで、2日目は午前10時から午後5時までを基本にしているが、実際には不規則であった。(乙11、17、38)
開発テストにおけるライダーの業務は、ヤマハが進めているオートバイ開発にライダーとして参加し、エンジニアの指示に従ってレースマシンに乗車し、ライダーの立場からマシンの状態等をエンジニアにコメントすることであった(乙36、38)。開発テストでは、マシンはライダーの意見を反映させ、その体型や好みに合わせてセッティングされた(乙64)。テスト走行に際しては、テストの目的と内容を監督がライダー及びメカニックに伝えるが、監督は、走行するのがライダーである以上、ライダーの意見を優先しながら方針を決定する。特に、ライダーからの安全に対する意見は尊重される。(乙17)
イ 原告は、隔週木曜日と金曜日(1か月に4日間)、ヤマハのテストコースで、レース用マシンを使用しての開発テストを行ったほか、レースに勝つためのタイヤやエンジンの調整、データ取りを目的として、レースの実施される前の週に、全日本ロードレース選手権が開催される全国のサーキットにおいてテストを行った(甲15、乙11、17、64)。その他、平成10年以前には、レースのシーズンオフにあたる11月から3月までの期間に、海外で1週間程度かけて開発テストを実施していた。(乙11、38)
(6)  原告のその他の業務の内容
原告は、平成10年、レース参加業務及びテスト業務のほかに、本件ライダー契約の定め(前記第2の1(3)イ、(2)イ(ウ))に基づき、ヤマハが主催するイベントに出席する業務を3回行った(乙36)。本件ライダー契約では、イベント参加業務の報酬は1日につき3万円と定められていた(3条、甲5)。a社は、これに従い、原告がイベントに参加した場合、ヤマハから1日当たり3万円の個別報酬を受けた(甲5、乙17)。原告は、イベントに際して、守秘義務(前記(3)エ(カ))を守るよう心がけて発言した(原告本人)。なお、ライダーの体調的理由や日程調整不能、イベント先とライダーとの関係等を理由に、ライダー本人からイベントへの不参加を申し出ることは可能であり、実際、派遣を中止したり代理のライダーを派遣したことがある(乙17)。
原告は、平成10年に、本件ライダー契約1条1項6号に定める「別途協議のうえ定める業務」(前記第2の1(3)イ、(2)イ(カ))を行ったことはなかった(乙36)。
(7)  原告のオフの過ごし方
原告は、ヤマハからレースやテストに万全の体調で臨むことを求められていたため、オフの日には、トレーニングジムに通ったり、水泳をしたり、走り込みをしたりして体力トレーニングをしたり、自らのバイクでダートコースを走行練習するなどしたほか、ヤマハがレースに使用するバイクを整備する工場でメカニックやエンジニアとディスカッションを行うなどしていた(甲15、原告本人)。しかし、レース出場に必要な原告のライセンスカードをヤマハが預かっていたため、原告が私的にレースに出場することはできず、それ以外のアルバイトをすることも禁じられていた(甲15、乙14、原告本人)。また、原告は、ヤマハから、スキーやスノーボード等の危険なスポーツ等はしないよう指示されていた(原告本人)。
2  原告の労働者性について
(1)  労災保険法上の「労働者」の意義
労災保険法の保険給付の対象となる労働者の意義については、同法にこれを定義した規定はないが、同法が労働基準法8章「災害補償」に定める各規定の使用者の労災補償義務を補填する制度として制定されたものであることにかんがみると、労災保険法上の「労働者」は、労働基準法上の「労働者」と同一のものであると解するのが相当である。そして、労働基準法9条は、「労働者」とは「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と規定しており、その意とするところは、使用者との使用従属関係の下に労務を提供し、その対価として使用者から賃金の支払を受ける者をいうと解されるから、「労働者」に当たるか否かは、雇用、請負等の法形式にかかわらず、その実態が使用従属関係の下における労務の提供と評価するにふさわしいものであるかどうかによって判断すべきものである。
そして、実際の使用従属関係の有無については、業務遂行上の指揮監督関係の存否・内容(業務指示等に対する諾否の自由の有無、使用者とされる者と労働者とされる者との間における具体的な指揮命令の有無、時間的及び場所的拘束性の有無・程度、労務提供の代替性の有無)、支払われる報酬の性格・額、事業者性の有無(業務用機材等機械・器具の負担関係、専属性の程度)、使用者の服務規律の適用の有無、公租などの公的負担関係、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断するのが相当である。
(2)  原告の労働者性の判断
本件ライダー契約の当事者は、ヤマハとa社であり、ヤマハと原告との間には何らの契約関係にもない以上、法形式上は、原告をヤマハの労働者と認める余地はない。平成9年以前は原告とヤマハとの間でライダー契約が締結されていたところ、原告がa社を設立し、a社とヤマハとの間で本件ライダー契約が締結されたのであって、契約の内容は原告個人が契約していたときと変わりはないけれども、ライダー契約は個人との間だけではなく、その個人が設立した会社との間でも締結できるのであり、この点からも使用従属関係を前提とする通常の労働関係とは相当異質であるというべきである。
さらに、上記(1)を踏まえ、前記第2の1の前提事実及び前記1の認定事実に照らして、実質的な使用従属関係の有無という観点から、原告の労働者性につき判断する。
ア 指揮監督関係の有無について
(ア) 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
一般に、具体的な仕事の依頼、業務従事の指示等に対して拒否する自由を有しない場合には、指揮監督関係を推認させる重要な要素になると考えられる。しかし、契約では業務内容は全く定められず又は概括的に定められるだけで、具体的な業務内容は個別の指示による場合と異なり、当事者間の契約において個別具体的な業務内容が定められ、あるいは一定の包括的な業務内容が定められている場合には、これに伴う個々の具体的な仕事の依頼について拒否する自由がないとしても、それは当該契約において定められた業務を行う義務があるということであって、当事者間の指揮監督関係を推認させるものではない。
本件についてみると、レース参加業務及びテスト業務に関しては個々の仕事について原告に拒否する自由があったとはいえない。しかし、原告が参加するレースは、本件ライダー契約において具体的に特定されており(前記1(4)ア)、ヤマハが指定したマシンでレースに臨むことや、出場するレースのクラスをスーパーバイククラスとすること、着用するスーツ等の用具のデザイン等につきヤマハの承諾を得ることについても、本件ライダー契約の時点でヤマハと原告との間に合意が成立していた(前記1(2)、(4)ウ)。また、テスト業務のうち、事前テストについては、レースに出場する以上、これを各レースに先立って実施することが当然に予定されていたと考えられる。したがって、原告は、本件ライダー契約で指定されたスーパーバイククラスのレースに、ヤマハが指定したマシンを使用し、ヤマハが承諾したスーツ等を着用して出場することを受任したと同時に、出場する各レースの事前テストに従事することも受任したということができる。そうだとすると、これらの業務について原告に諾否の自由がなかったとしても、それは本件ライダー契約により当然負うべき義務であり、ヤマハと原告との間の指揮監督関係を推認させる事実には当たらない。
他方、開発テストに関しては、本件ライダー契約で実施時期や回数が個別具体的に特定されていたわけではないものの、ヤマハが随時実施の日時場所を決定するのではなく、毎年初めに1年分のテストの実施計画の概略を決定し、実施時期は隔週木曜日及び金曜日、実施場所はヤマハのテストコースという大枠が決まっており、テスト実施の1、2か月前に最終的に実施の有無を決定して、ライダーに案内していたこと(前記1(5))からすれば、ヤマハが原告に対し個々の開発テストでの走行を個別に依頼ないし指示をしていたと見るのは相当ではなく、むしろ、原告は、概ね1か月に4日間の頻度で通年実施される開発テストに従事することを、本件ライダー契約において包括的に受任していたものと評価するのが相当である。そうだとすると、ヤマハが開発テスト実施の1、2か月前に具体的な開発テスト参加の指示を出す際に、これに対する諾否の自由がないとしても、それは本件ライダー契約で走行テストに参加する業務を包括的に受任した以上、当然負うべき義務であり、ヤマハと原告との間の指揮監督関係を推認させる事実には当たらない。
さらに、前記1(6)のとおり、イベントへの出席業務については、体調や日程調整不能等を理由にライダーの側から不参加を申し立てることが可能だったことから、諾否の自由の制約の度合は低いと認められること、原告は平成10年にわずか3日従事したに過ぎず、本件ライダー契約に基づく業務としては付随的なものに過ぎないと認められることからすると、ヤマハと原告との間の指揮監督関係を推認させるとはいえない。
以上からすると、原告の本件ライダー契約に伴う業務については、諾否の自由がないとしても、ヤマハと原告との間の指揮監督関係を推認させる事実には当たらないというべきである。
(イ) 業務遂行上の具体的な指揮命令の有無
一般に、業務の内容及び遂行方法について具体的な指揮命令を受けていることは、指揮監督関係の基本的かつ重要な要素である。
本件についてみると、まず、前記1(4)エのとおり、レース参加業務に関しては、監督が原告に対し事前に走行方法につき指示をすることがあっても、レースというものの特性上、細かい指示までは出すことができず、スタート以降は監督の指揮下を離れ、走行方法はライダーである原告の裁量に委ねられていた。しかも、一般に、監督はライダーの意思を極力取り入れた指示を出すものであって、指示に反した走行をした場合にも重いペナルティが予定されているわけではない。また、前記1(4)オのとおり、勝つことではなく主にデータをとることを目的としてレースに出場することも皆無ではなく、そのような場合には、勝つことを目的にして出場する場合よりもライダーの裁量が制約され、監督の指示に従う度合が強いと思われるものの、原告も供述するとおり、そのような目的でレースに出場するのは、ライダーの負傷などレース直前に不測の事態が生じた極めて例外的な場合に過ぎない。
テスト業務についても、走行方法に関しては、本番のレースよりはスタッフからの指示に従う度合が大きいと思われるものの、業務内容の性質上、指示に従う必要が大きいのであって、組織上の指揮とは異なる。しかも、走行後にライダーがマシンの状態等をコメントし、スタッフはこれを反映させて、ライダーの個性に合わせてマシンをセッティングすること(前記1(5))からも明らかなとおり、指示に従う必要が大きい業務であっても、ライダーは単に指示どおりにマシンを走行させることのみを業務としていたのではなく、スタッフに対し対等な立場で意見を述べ、これをスタッフが尊重するという関係にあったと認めることができる。
さらに、イベントに出席する業務に関しては、本件ライダー契約に基づく業務としては付随的なものにすぎないことは上記(ア)で述べたとおりである上、原告は本件ライダー契約で明示的に定めた守秘義務に違反しないよう発言に気をつけていたのみで(前記1(6))、ヤマハから具体的に発言等に関する指示を受けていたとは認められない。
なお、原告は、ヤマハが原告の肖像等を独占的に無償で使用し得ることとされていること、原告が守秘義務を負わされていること、業務遂行上の著作、発明等の権利がヤマハに帰属することなどをもって、原告がヤマハの指揮監督下にあったとも主張するが、これらの権利義務関係は、レース参加業務やテスト業務の業務内容がモーターサイクルの技術開発と結び付き、かつ商品のイメージ等とも密接に関係するため、本件ライダー契約に定めを置いたこと(前記1(3)エ(イ)、(カ)、(キ))に伴うものと考えられ、ヤマハの原告に対する指揮命令関係を基礎づける事情とはいえない。
以上のとおり、ヤマハが原告に対し業務の遂行方法について指示する場面はなかったわけではないものの、そこではライダーである原告の意思が尊重され、その裁量の幅が広いことからすると、通常の事業組織内における上命下達の指揮命令関係とは大きく異なるものだということができる。したがって、ヤマハと原告との間に業務の遂行方法にかかる指揮命令関係があったと認めることは困難である。
(ウ) 拘束性の有無
原告には、レース参加業務、テスト業務及びイベント出席等その他の業務に伴い、所定の日時に所定のサーキット等の場所に来る義務があったと認められるものの、タイムカードによる出退勤管理も受けず、本件ライダー契約所定の業務がない日には出勤義務もなく(前記1(3)ア、ウ)、原告がオフに行ったトレーニング等の活動(前記1(7))も、ヤマハの要望に沿うものとはいえ、ヤマハからの具体的な指示に基づくものとは認められず、むしろ原告の自己研鑽であると認めることができる。
結局、原告が受けた時間的場所的拘束は、本件ライダー契約所定の業務が行われる日時場所へ出向くことのみであったと認められるところ、このような拘束は、本件ライダー契約に伴う当然の義務であり、これをもって指揮監督関係を推認することはできない。
(エ) 代替性の有無
本件ライダー契約では、a社は原告に所定の業務を行わせることとされ、第三者への再委託は禁じられていたから(前記1(3)エ(オ))、原告の業務には代替性がなかったことが認められる。しかし、代替性の不存在は、本件ライダー契約が特定のライダーである原告にレース参加業務及びテスト業務を行わせること自体を内容とすることに由来することは明らかであり、このことをもって、ヤマハと原告との間の指揮監督関係を推認することはできない。
イ 報酬の労務対償性
報酬が、時間給、日給、月給等、時間を単位として計算される場合には、当該報酬は、使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供したことに対する対価であると見ることができるから、使用従属性を補強する重要な要素となる。
しかし、a社の平成10年の報酬は、本件ライダー契約で定められた基本報酬の1000万円であり、この額は前年の原告のレースにおける年間総合結果のほか、原告の前年の年俸、テスト実績などが加味されて決定されたこと(前記1(3)イ)、報奨金もレースの結果に応じて支払われるため(前記第2の1(3)イ)、一種の成功報酬と見ることができることからすると、仮にこれらの報酬を実質的にはヤマハから原告に支払われた報酬と見た場合でも、原告がヤマハの指揮監督の下に一定時間労務を提供したことに対する対価であると判断することは困難である。
ウ 事業者性の有無
(ア) 機械、器具の負担関係
本人が著しく高価な機械、器具を所有して業務に当たる場合は、本人の計算と危険負担に基づき事業経営を行う事業者としての性格が強く、労働者性が弱いと認められる。
本件において、原告が使用するマシンはヤマハの所有であるが(前記1(4)ウ)、これはヤマハのマシンを使用してレースに参加するという本件ライダー契約の目的からして当然のことであり、原告の労働者性を基礎づける事情であるとはいえない。むしろ、原告がレース等で使用するスーツ等の用具の調達がa社の裁量に委ねられ、実際にa社とメーカーとの間の契約に基づき調達した用具を原告が使用していたこと(前記1(4)ウ)は、原告の事業者性を強め、労働者性を弱める事情であるというべきである。
(イ) 報酬の額
報酬が当該企業において同様の業務に従事している正規従業員に比して著しく高額である場合には、当該報酬は労務提供に対する賃金ではなく、自らの計算と危険負担に基づき事業経営を行う事業者に対する代金の支払と認められ、その結果、労働者性を弱める要素となる。
本件についてみると、本件ライダー契約に基づくa社の平成10年の基本報酬額1000万円であり、国内のライダーとしてはトップクラスに近いことが認められる(前記1(3)イ)。加えて、原告の業務と比較的類似する業務に従事しているといえる社内ライダーの平均年収が300万円から400万円程度であることに照らしても、a社の基本報酬額は極めて高額であり(前記1(3)イ)、このことは原告の事業者性を強め、労働者性を弱める事情であるというべきである。
(ウ) 損害負担
業務を行う本人が、業務遂行上の損害に対する責任を自ら負う場合には、当該本人は自らの計算と危険負担に基づき事業を行うものと見ることができ、事業者性を補強する要素になるというべきである。
本件ライダー契約においては、業務遂行中にa社又は原告が第三者に損害を与えた場合には、a社が自己の責任と費用負担において処理解決することと定められており(前記1(3)エ(エ))、このことは、原告の事業者性を強め、労働者性を弱める事情であるというべきである。
エ 専属性の程度
他社の業務に従事することが制度上制約され、又は時間的余裕がなく事実上困難である場合には、専属性の程度が高く、経済的に当該企業に従属していると考えられることから、労働者性を補強する要素になるということができる。
本件についてみると、本件ライダー契約は、a社が第三者と同一又は類似の契約を締結することを禁じており(前記1(3)エ(オ))、ヤマハへの一定程度の従属性を認めることができる。しかしながら、原告がヤマハ以外の企業のライダーも並行して務めることは現実的にあり得ず、同一又は類似契約の締結を禁じることは、モータースポーツ活動の特殊性に由来するものというべきであって、これを原告の労働者性を基礎づけるものと見ることは困難である。
オ その他の事情
本件ライダー契約に基づく平成10年分の報酬は、ヤマハからa社に対し、源泉徴収されることなく支払われたこと(乙32)、原告は他のヤマハの従業員と異なり、一般開放されていない福利厚生施設を利用することはできず、健康保険も適用されないこと(前記1(3)ウ)は、いずれも原告の労働者性を弱める事情であるというべきである。
カ 総合判断
以上のとおり、原告については、ヤマハとの間の指揮監督関係を認める根拠となるような事情が見当たらず、報酬も労務提供の対価と見ることが困難である反面、自らの計算と危険負担で事業を行う者としての性格を基礎づける事情及び原告の労働者性を弱める事情が複数認められることからすると、ヤマハと原告との間に実質的な使用従属関係を認めることはできない。
(3)  まとめ
結局、本件ライダー契約の形式に照らして、ヤマハと原告との間の業務に関する実態に照らしても、原告を労働基準法9条にいう「労働者」と認めることはできない。
3  原告のその余の主張について
原告は、レースがヤマハの市販車の技術開発及び販売促進に貢献することを強調するが、その点が、原告が労働者と認められるか否かの認定判断を左右する事情であるとは解し難い。
4  結論
以上によれば、原告が労働者ではないことを理由として、原告に対し障害補償給付を支給しないこととした本件処分に違法はなく、その取消しを求める原告の請求は理由がない。
(裁判長裁判官 中西茂 裁判官 齋藤巌 裁判官 別所卓郎)

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Notice: Undefined index: show_google_top in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296

Notice: Undefined index: show_google_btm in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296