【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(158)平成25年12月16日 東京地裁 平22(ワ)1629号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(158)平成25年12月16日 東京地裁 平22(ワ)1629号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成25年12月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)1629号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2013WLJPCA12168008

要旨
◆匿名組合形式のFXファンドに投資した弁護士である原告が、同ファンドを運用するM社の1人株主で事実上の業務執行責任者であるAは、恣に費消する意図を秘してFX自動売買システムを利用し資金運用する等申し向け、原告を誤信させて投資させ分別保管していなかった投資資金の私的流用、不正流出をしたとして、これに関与したとする被告らに対し、損害賠償を求めた事案において、本件では出資金の分別保管義務にもかかわらず分別保管態勢がなかったM社から資金の不正な外部流出が認められ、また、原告が受けた説明は虚偽であり欺罔に当たるから、少なくともAは不法行為責任を負うものの、監査役としての任務懈怠が認められる被告Y9以外の各被告らに責任は認められず、Y9の任務懈怠も原告の損害との間に相当因果関係はないとして、請求を棄却した事例

参照条文
民法96条1項
民法709条
民法719条1項
会社法362条1項
会社法363条1項
会社法429条1項
会社法430条
金融商品取引法21条1項4号
金融商品取引法29条の2第1項
金融商品取引法29条の4第1項1号ニ
金融商品取引法36条1項
金融商品取引業等に関する内閣府令9条2号イ

裁判年月日  平成25年12月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)1629号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2013WLJPCA12168008

東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 浅野健太郎
東京都豊島区〈以下省略〉
被告 Y1
東京都墨田区〈以下省略〉
被告 Y2
千葉県長生郡〈以下省略〉
被告 Y3
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 Y4
千葉県習志野市〈以下省略〉
被告 Y5
東京都江戸川区〈以下省略〉
被告 Y6
東京都江東区〈以下省略〉
被告 Y7
埼玉県飯能市〈以下省略〉
被告 Y8
上記被告ら訴訟代理人弁護士 清水和彦
東京都国分寺市〈以下省略〉
被告 Y9

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は,原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
1  被告らは,連帯して,原告に対し,3021万円及びこれに対する平成21年8月11日から年5%の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告らの負担とする。
3  仮執行宣言
第2  事案の概要等
1  本件は,匿名組合形式の外国為替証拠金取引(以下「FX」という。)ファンドに投資した原告が,実際には同ファンドを運用していた訴外マーヴェラスキャピタルインベストメント株式会社(以下「MCI」という。)の100%株主であり事実上の業務執行責任者であるとする訴外A(以下「A」という。)において恣に費消するつもりであったのにこれを秘してFX自動売買システムを利用して資金運用する等申し向けられ,そのように誤信して投資してしまったところ,自己の投資した資金が分別保管されず,私的に流用されたり,関係会社に不正に流出されたりしてしまい損害を被ったとして,これに関与したとする被告らに対し,投資額相当の損害賠償を求めた事案である。
2  前提事実
当事者間に争いのない事実,かっこ内に摘示した証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が容易に認められる。
(1)原告
MCIが運用していたFXファンドに投資した者である。職業は弁護士である。
(2)MCI(甲共1,乙ク13)
平成19年12月14日,設立された投資事業組合財産の運用及び管理,投資ファンドの運用等を目的とする株式会社である。平成20年5月7日,投資運用業及び第二種金融商品取引業の登録をした。平成21年8月11日,自己破産を申し立て,破産手続開始決定を受けた。
(3)JHL(甲共15,甲共23)
東京都中央区に本店を置く株式会社エムエムピージェイは,平成17年4月14日に設立された,東南アジアのリゾートの企画,開発,レストランの運営等を目的とする株式会社である。設立時の商号は,グリーン華舞株式会社であったが,平成20年12月10日,株式会社日本健康総合研究所に変更され,さらに平成21年12月1日,現在の商号に変更された。以下では,商号変更の前後を問わず,「JHL」という。
(4)ACP(甲共14)
株式会社エーシーピー(以下「ACP」という。)は,平成18年3月9日に設立された,有価証券の保有,売買,投資及び運用,投資事業組合財産の運用及び管理,ベンチャー企業への投資等を目的とする株式会社である。
(5)被告Y1(以下「Y1」という。甲共23,甲共51,乙ソ6,被告Y1本人)
MCIの管理部長として稼働していた。
JHLの取締役である。
ACPの株主で,平成19年2月ころから平成22年10月ころまでの間,同社に従業員としても勤務していた。
ACP在勤中はMCIから受託した事務も遂行していた。
(6)被告Y2(以下「Y2」という。乙ソ8,被告Y2本人)
ACPの取締役としての登記はないが,同社の「執行役社長」ないし「執行役員社長」との肩書きのある名刺を使用していた者である。
別途,a社という屋号でPR業務を受託する個人営業も営んでいる。
(7)被告Y3(以下「Y3」という。甲共15,甲共23,乙ソ13)
平成20年12月10日,JHLの取締役に就任し,平成21年12月1日,退任し,平成22年4月23日,その旨の登記を経た。
平成21年4月1日,JHLの代表取締役に就任し,同年12月1日,退任し,平成22年4月23日,その旨の登記を経た。
Aの父である。
(8)被告Y4(以下「Y4」という。乙ソ11)
ACPの従業員である。
ACPが受託していたMCIの経理業務を担当していた。被告Y5との関係では,部下に当たる。
(9)被告Y5(以下「Y5」という。乙ソ12)
ACPの従業員で,経理課長である。
ACPが受託していたMCIの経理業務を担当していた。
被告Y4の上司に当たる。
(10)被告Y6(以下「Y6」という。乙ソ14)
以前,ロシアにおいてFXを行っていたことのある者である。
MCIにおいて,執行役員の肩書きを与えられ(なお,執行役員の実態があったかについては争いがある。),FXの自動売買ソフトウェアのロジック開発,すなわち自動売買ソフトの仕組みの開発や,ソフトウェアの運用を行っていた。
(11)被告Y7(以下「Y7」という。甲共71,乙ソ10,被告Y7本人)
株式会社フィルモアファーイースト(以下「フィルモアファーイースト」という。)の代表取締役である。
(12)被告Y8(以下「Y8」という。甲共14,乙ソ9,証人B)
平成18年12月30日,ACPの代表取締役に就任した者である。もっとも,常勤ではなく,月に1日程度の出勤であった。
(13)被告Y9(以下「Y9」という。甲共1,乙ス1)
登記上,平成21年4月10日,MCIの監査役に就任した者である。
平成21年4月16日には,JHLに従業員として入社した。
(14)A(甲共14,甲共15,甲サ2)
平成18年12月30日までACPの代表取締役かつ取締役であった。
JHLの平成20年12月10日から平成21年12月1日までの監査役であった。退任登記は平成22年4月23日になされた。
MCIの取締役会決議において,業務執行代理人の肩書きを付与され,全ての業務執行権を付与されていた。
(15)B(以下「B」という。甲共1)
MCIの代表取締役である。
(16)平成20年12月18日付け匿名組合契約の締結(甲共3,甲共4,甲共75)
原告は,平成20年12月18日,MCIとの間で,大要以下の内容の匿名組合契約を締結し(以下「第1契約」という。),同月19日,出資金及び申込手数料の合計1010万5000円をMCIの三井住友銀行の預金口座に振込送金した。
出資口数 10口1000万円
出資の対象となる営業
MCIにおけるFXによる運用事業(ただし,第三者へ委託し運用する場合がある。),匿名組合契約の締結及び匿名組合契約に基づく出資金の受入れ,並びに匿名組合契約に基づく営業者としての権利の行使及び義務の履行その他これらに関連又は付随する一切の取引又は行為(以下「本事業」という。)
出資金額からの分配額の限度比率 月利7.0%とする。
営業者の成功報酬
本事業の利益額に前記出資金額からの分配額の限度比率を超えた部分を営業者報酬とし,計算期間毎に精算する。
申込手数料 10万5000円
出資金の運用・管理
営業者は,投資,運用の決定をはじめ自己の判断に基づいて自己の名において本事業を遂行する。ただし,法に定められた資格を有する第三者(銀行,証券会社,その他財産運用の許可を得た者)へ委託し,運用することがある。営業者は,出資金をはじめ本匿名組合の財産のうち現にMCIが運用事業を行っていない財産については,営業者の判断により適当と思われる金融機関への預金,又は郵貯銀行への貯金など安全性の高い方法により管理する。
契約期間
設定日から1年1か月とするが,元本が85%に減少した時点で事業を終了する。
(17)平成21年3月16日付け匿名組合契約の締結(甲共6ないし甲共8)
原告は,平成21年3月16日,MCIとの間で,出資口数を20口2000万円とする他は,平成20年12月18日付け匿名組合契約と同様の内容の匿名組合契約を締結し(以下「第2契約」という。),平成21年3月16日,出資金2000万円を,同月18日,申込手数料10万5000円をMCIの三菱東京UFJ銀行の預金口座に振込送金した。
(18)配当状況
平成21年2月13日 55万9685円 第1契約
同年3月13日 55万9685円 第1契約
同年4月15日 55万9685円 第1契約
315円 振込手数料
同年5月15日 55万9685円 第1契約
315円 振込手数料
同年6月15日 55万9685円 第1契約
315円 振込手数料
111万9685円 第2契約
315円 振込手数料
同年7月24日 111万9685円 第2契約
315円 振込手数料
同月29日 56万0000円 第1契約
315円 振込手数料
(19)MCIに対する行政処分(甲共11)
MCIは,平成21年8月6日,①同年6月30日現在,純財産額が5000万円に満たない(金融商品取引法52条1項3号),②業務開始以降,運用財産と自己の固有財産及び他の運用財産とを分別して管理せず,運用財産の大部分を自己の運転資金等に流用していた(同法42条の4),③業務開始以降,自己の名義をもって,金融商品取引業の登録を行っていない者に自己が運用する匿名組合の出資持分の募集の取扱を行わせていた(同法36条の3)ことから,金融庁による同日以降平成22年2月5日までの業務停止命令及び業務改善命令を受けた。
(20)分離前相被告らからの解決金入金状況
原告は,本件と同じ事実関係に基づく不法行為に基づく損害賠償請求債権を訴求していた分離前の相被告らから以下のとおり解決金名下の入金を受け,遅延損害金,元金の順に充当した。
分離前の相被告C 平成24年1月16日 1500万円
同D 同年3月28日 20万円
同E 同年12月20日 50万円
同F 平成25年6月25日 20万円
同年7月26日 5万円
同年8月22日 5万円
同年9月27日 5万円
第3  争点
1  本件の争点は,①MCIにおける出資金の分別保管義務の有無②MCIにおける出資金の分別保管態勢の有無,③MCIにおける運用財産の不正流出の有無,④MCIにおける運用財産の不正流出に対する各被告の責任原因の有無,⑤原告に対する欺罔行為の有無,⑥原告に対する欺罔行為に関する各被告の責任原因の有無,⑦原告の損害額,⑧各被告の行為と原告の損害との間の相当因果関係の有無である。なお,以下では,訴訟代理人弁護士を共通にする被告Y1,同Y2,同Y3,同Y4,同Y5,同Y6,同Y7及び同Y8をまとめて「8名被告ら」という。
2  MCIにおける出資金の分別保管義務の有無
(1)原告の主張
MCIは第二種金融商品取引業の登録を受けた金融取引業者として,原告ら顧客からの出資金につき分別保管義務を負っていた。
(2)被告らの主張
否認ないし争う。
3  MCIにおける出資金の分別保管態勢の有無
(1)原告の主張
MCIにおいては,出資金の分別保管態勢が欠如していた。すなわち,顧客から集めた出資金を自己の固有財産及び他の運用財産と分別して管理せず,顧客から集めた出資金を原資として,FXファンドの販売を委託していた訴外ステディ株式会社に約定の上限額のコミッションを支払った。実際には,FXファンドの運用によってはほとんど利益が上がっていなかったのであるから,不正な出資金の流出である。
(2)被告らの主張
否認ないし不知。
4  MCIにおける運用財産の不正流出の有無
(1)原告の主張
ア MCIのFXファンドに投資された資金の大半は,FX取引により運用されることはなく,わずかな資金だけがFX取引により運用されてはいたものの,運用成績も芳しくなく,ほとんど利益が出ていなかった。
それにも関わらず,MCIは運用が堅調であり,上限利回り月7パーセントの配当が問題なくできるとして,顧客から集めた出資金を原資に蛸足配当を続けた。
イ また,Aは,MCIの普通預金通帳及び銀行届出印を自由にできたことを奇貨として,預金を引き出し,個人的に流用していた。
ウ MCIの資金使途の概況は別紙記載のとおりである。
(2)被告らの主張
否認ないし不知。
5  MCIにおける運用財産の不正流出に対する各被告の責任原因の有無
(1)原告の主張
ア 被告Y1について
(ア)不正流出に関する共同不法行為責任
被告Y1は,Aと共謀の上,MCIの銀行預金通帳や銀行印を用いて現金を引き出し,ACP,JHLといった関連会社にMCIが投資家らから集めた資金を振り込むことによりMCIの資金の不正流出に関する具体的指示を行っていた。被告Y1は,MCIの管理部長として資金全体を把握して,被告Y4らに資金移動の指示を行ったり,人事の採用責任者となったり,金融庁と担当者として折衝したりし,MCIの経営全般を掌握していた。また,被告Y1は,ACPの発行済株式総数の80%を有する株主としてACPを支配し,MCI,ACP,JHLから構成されるハッピーライフグループの会議の一員としてMCIからの不正な資金流出を決定していたところ,ACPはMCIの不正な資金流出の受け手であり,ACP側の者として,不正流出をAと共謀の上,共同して行っていたものである。
従って,MCIが原告を含む投資家らから集めた資金の不正流出についてのAの不法行為につき,共同不法行為責任を負う。
(イ)MCIの事実上の取締役としての賠償責任
被告Y1は,MCIの実印,通帳,銀行印を管理し,MCI,ACP,JHLの資金の移動について被告Y4に指示を行い,被告Y4や被告Y5をしてMCIの資金を不正に流出させていた。また,被告Y1は,MCIのオーナーとも言うべきAとの結びつきが非常に強く,Aのパートナーであって,MCIのナンバー2であり,Aと共にMCIのオーナーズルームで執務する等していた。
以上からすると,被告Y1は,MCIの事実上の取締役である。
しかるところ,被告Y1は,事実上の取締役として,投資家らから集めた資金の分別管理態勢を構築することを怠り,MCIから,これら資金を金銭消費貸借等の名目でACPやJHLへの送金を行ったり,MCIの増資を行ったり,蛸足配当や蛸足コミッション支払等に費やし,不正な資金流出を行い,原告に出資金相当の損害を負わせたので,これにつき取締役と同様の賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
(ウ)JHLの取締役としての賠償責任
被告Y1は,平成20年12月10日から平成21年12月1日までの間,JHLの取締役であったところ,JHLは,MCIからの不正な資金流出の受け手であったので,被告Y1には,JHLの取締役としての任務懈怠が認められ,取締役としての賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
また,JHLは,MCIの不正な資金流出の受け手として当該不正な資金流出に加担しており,原告に対し損害賠償責任を負うところ,被告Y1は,JHLの取締役としての任務を怠り,JHLにおいて,MCIから不正に流入した資金合計1億1850万円を含むその資産を全て社外に流出させ,原告からJHLに対する損害賠償請求を不可能ならしめた。被告Y1は,これにつき,故意又は少なくとも重過失があるから,賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
イ 被告Y2について
(ア)不正流出に関する共同不法行為責任
被告Y2は,MCIからの不正な資金流出の受け手であるACPの実質的代表者であった。ACPは,MCIが原告を含む投資家らから集めた資金を実態のない金銭消費貸借や,実際上は無価値な債権買取代金名下に受け入れていた上,後出のグローパートナーへの実態のない不動産調査委託料名下のMCIの支払の際の経由会社となっていた。被告Y2は,MCI,ACP,JHLから構成されるハッピーライフグループの会議の一員としてMCIからの不正な資金流出を決定していたほか,a社なる屋号で個人としてMCIから実態のないコンサルタント業務料名下に月額21万円の支払を受けていた。これらからすると,MCIから不正に資金を流出させたAの不法行為を共謀の上,共同して行った者であるから,共同不法行為責任を負う。
(イ)ACPの事実上の取締役としての賠償責任
被告Y2は,ACPの「執行役員社長」の肩書きのある名刺を使用し,対外的に会社を代表していたほか,対内的にも営業会議を開催する等代表者として活動しており,ACPの事実上の代表取締役であった。
しかるところ,被告Y2は,MCIからACPへの送金が実態のない金銭消費貸借名下の不正な資金流出であることを知りながら総額3億2703万9224円の送金を受けており,故意又は少なくとも重過失があり,ACPの事実上の取締役として,取締役と同様の賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
また,ACPは,上記送金を受けた3億2703万9224円を含むその資産を全て社外に流出させ,原告によるACPへの損害賠償請求を不可能ならしめているところ,被告Y2は,これにつき,ACPの事実上の代表取締役として故意又は少なくとも重過失があり,ACPの事実上の取締役として,取締役と同様の賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
ウ 被告Y3について
(ア)不正流出に関する共同不法行為責任
被告Y3は,MCIからの不正な資金流出の受け手であるJHLの代表者であり,MCIはJHLに対し,投資家らから集めた資金のうち,合計1億1850万円を不正に流出させている。また,被告Y3は,JHLが行っていた農業事業や障害者支援をMCIの詐欺による投資の募集の宣伝文句に利用させた。さらに,被告Y3は,JHLがMCIから得た資金を財団法人日本漢方医療振興財団(以下「漢方財団」という。)の買収に1億円を費やす等し,本来は小さな農場を営むのみで経費がほとんどかからないはずであるのに,MCIからJHLに流出した資金を全て消滅させた。加えて,MCI,ACP,JHLから構成されるハッピーライフグループの会議の一員としてMCIからの不正な資金流出を決定していた。これらにより,被告Y3はMCIが原告を含む投資家らから集めた資金を不正に流出させたAの不法行為を共謀の上,共同して行ったのであるから,共同不法行為責任を負う。
(イ)JHLの代表取締役としての賠償責任
被告Y3は,JHLの代表取締役であるところ,その任務を怠ってMCIからJHLへの不正な資金流出に関与し,原告に出資金相当の損害を与えており,これにつき故意又は少なくとも重過失があるので,賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
また,JHLは,MCIの不正な資金流出の受け手として当該不正な資金流出に加担しており,原告に対し損害賠償責任を負うところ,被告Y3は,JHLの取締役としての任務を怠り,JHLにおいて,MCIから不正に流入した資金合計1億1850万円を含むその資産を全て社外に流出させ,原告からJHLに対する損害賠償請求を不可能ならしめた。被告Y3は,これにつき,故意又は少なくとも重過失があるから,賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
エ 被告Y4について
被告Y4は,MCIから経理事務等の委託を受けていたACPの管理部長として,ハッピーライフグループ各社の資金繰を担当していた。被告Y4は,被告Y1の指示により,MCIの資金を引き出しては他人名義の口座に入金したり,ACPやJHLの口座を利用して資金を隠匿する等の不正な資金流出の実行行為を担当していた。場合によっては,被告Y4自身が最終決裁者となって資金移動を行ったものもある。被告Y4は,MCI,ACP,JHLの入出金一覧表を作成していたが,使途不明金のうち多くを故意に記載しなかった。本来,分別保管する必要のある投資家の資金を流用したMCIの増資や蛸足配当,蛸足コミッションの支払についても,被告Y1の指示の下に実行した。被告Y4は,Aの個人名義の口座の管理にも関わっており,Aへの不正なMCIの資金流出を認識していた。被告Y4は,不正な資金移動のつじつまを合わせるための契約書等の作成も担当していた。
仮に被告Y4において,Aとの共謀が認められないとしても,被告Y4は,MCIが投資ファンドを運用しているにもかかわらず分別保管がなされていないことや,原告を含む投資家らからの預り資産と比してごく少額しか実際のFX運用に回されていないことを認識していた一方,総額11億円以上の投資家らからの資金の流出の直接に関わっていたのであるから,少なくとも重大な過失が認められる。
オ 被告Y5について
被告Y5は,ACPの経理課長として,被告Y1の指示により,MCIの資金を引き出しては他人名義の口座に入金したり,ACPやJHLの口座を利用して資金を隠匿する等の不正な資金流出の実行行為を担当していた。被告Y5は,MCI,ACP,JHLの入出金一覧表を作成していたが,使途不明金のうち多くを故意に記載しなかった。本来,分別保管する必要のある投資家の資金を流用したMCIの増資や蛸足配当,蛸足コミッションの支払についても,被告Y1の指示の下に実行した。被告Y5は,Aの個人名義の口座の管理にも関わっており,Aへの不正なMCIの資金流出を認識していた。
仮に被告Y5において,Aとの共謀が認められないとしても,被告Y5は,MCIが投資ファンドを運用しているにもかかわらず分別保管がなされていないことや,原告を含む投資家らからの預り資産と比してごく少額しか実際のFX運用に回されていないことを認識していた一方,総額11億円以上の投資家らからの資金の流出の直接に関わっていたのであるから,少なくとも重大な過失が認められる。
カ 被告Y6について
被告Y6は,AがMCIから横領した資金を利用して購入した静岡県内所在のマンションに実態のない根抵当権の設定を受け,AがMCIから不正に得た資産の隠匿に協力したので,Aと共同不法行為責任を負う。
被告Y6は,平成21年夏ころ,MCIの運転資金が苦しくなってきたのでもっと出資を集めろと指示しているが,MCIにおいて当時,投資家らから集めた資金合計23億円のうち,運用されたのが2億円程度であることをFXの運用担当者として認識していたにもかかわらず,かかる指示をすることは詐欺の指示というべきである。MCIを舞台としたAの詐欺のタネとなるFX自動売買システムを開発してMCIに持ち込んでおり,MCIを舞台としたAによる,MCIからの不正流出による詐欺のスキームにおいて重要な役割を果たしている。これらからしても被告Y6はAと共同不法行為責任を負う。
キ 被告Y7について
被告Y7は,Aと共謀の上,MCIが投資家らから集めた資金であり本来,分別管理されていて被告Y7への貸付はできないことを認識しながら,実態のない金銭消費貸借名下に不正に支出された1500万円を資金提供名下に受領しており,Aと共同不法行為責任を負う。
ク 被告Y8について
(ア)不正流出に関する共同不法行為責任
被告Y8は,MCIからの不正な資金流出の受け手であったACPの代表取締役として,実態のない金銭消費貸借契約書に自ら署名押印し,AによるMCIからACPへの金銭消費貸借名下の合計3億2703万9224円の不正な資金流出に加担した。また,ハッピーライフグループの会議の一員としてMCIからの不正な資金流出を決定していた。これらからすると,MCIから不正に資金を流出させたAの不法行為を共謀の上,共同して行った者であるから,共同不法行為責任を負う。
(イ)ACPの代表取締役としての賠償責任
被告Y8は,ACPの代表取締役としてAが不正な行為を行わないか相当に注意を払う義務があったところ,その任務を怠ってAによるMCIからACPへの不正な資金流出をなすがままにしたり,実態のない金銭消費貸借契約書にACPの代表取締役として署名押印して関与し,原告に出資金相当の損害を与えており,これにつき故意又は少なくとも重過失があるので,賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
また,ACPは,Aから実際は無価値なAの後出のグローパートナーに対する債権を1億3700万円で買い取る等上記送金を受けた3億2703万9224円を含むその資産を全て社外に流出させ,原告によるACPへの損害賠償請求を不可能ならしめているところ,被告Y8は,これにつき,ACPの代表取締役として故意又は少なくとも重過失があり,取締役としての賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
ケ 被告Y9について
(ア)MCIの監査役としての賠償責任
被告Y9は,ハッピーライフグループの会議に出席しており,MCIが投資家らからの出資金を分別保管していないことを容易に知り得る立場にあった。被告Y9は,平成21年4月10日以降,MCIの監査役であったにもかかわらず,本来は必要な原告ら投資家らからの出資金を分別管理する態勢の欠如の対策を行う適法性監査や,取締役・使用人等に対する業務報告請求権の行使,業務財産状況調査権(会社法381条2項)の行使,監査報告書への取締役による監査妨害等の記載,監督機関である金融庁への申告等の監査役としての業務を一切行わず,原告に出資金相当の損害を被らせたもので,監査役としての賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
(イ)JHLの取締役としての賠償責任
被告Y9は,JHLの取締役であったが,JHLがMCIより不正な資金流出を受けて行った1億円での漢方財団の買収について,何らデューデリジェンスも行わないばかりか,取締役会で買収の是非についても行わずに実行させるがままとし,MCIから流出した資金を消滅させてしまった。これは,JHLの取締役としての任務懈怠であり,取締役としての賠償責任を負う(会社法429条1項,430条)。
(2)被告Y1の主張
ア 不正流出に関する共同不法行為責任について
否認ないし争う。
MCIの銀行預金通帳や銀行印,代表印を管理したこともないし,現金引出や振込の具体的指示を行っていたこともないから,MCIからの資金の不正流出に関する指示を行ったこともない。金銭消費貸借契約書の作成のサポートを依頼された程度の関与しかしていない。確かに,MCIの代表者Bから運転資金不足を相談され,MCIに貸付を行い,平成20年6月23日,これの返済を受けたことはあるが,これを以てMCIの経営に関与していたということはできない。
ACPの株主であることは認めるが,ACPを支配していたような事実はない。
MCIやJHLの株式も有しておらず,オーナーということはない。
ハッピーライフグループの会議には出席していたが,これはグループの資金をコントロールするための会議ではなく,資金をコントロールしていたこともない。
イ MCIの事実上の取締役としての賠償責任について
否認,不知ないし争う。
被告Y1は,MCIの事実上の取締役であったことはない。部外者であり,MCIにおいていかなることが行われていたか知る由もない。
ウ JHLの取締役としての賠償責任について
否認,不知ないし争う。
JHLないし被告Y1において,原告とMCIとの間の契約上,出資金の使途が限定されているかどうか知る由もなく,MCIの内部の状況も不明であるから,MCIによる資金提供が不正なものであるか知る由もない。
(3)被告Y2の主張
ア 不正流出に関する共同不法行為責任について
否認ないし争う。
被告Y2は,ACPの実質的代表者ではなく,営業部門の執行役員としてACPの事業であるフリーペーパーの発行事業の責任者を務めていたに過ぎず,MCIからACPへの資金提供には関与していない。
MCIからACPに金銭消費貸借契約に基づく資金提供があったこと及びその契約書であるプロジェクトファイナンス契約書をタイピングする限度でその作成に関わったことは事実であるが,これは実態のある取引である。MCIは利息を受領していた。もっとも,その詳細は不知。その際,MCIの代表者Bからは,ACPの事業計画について説明を求められたりしたことはある。
ハッピーライフグループの会議でグループの資金移動を決定したことはない。
イ ACPの事実上の取締役としての賠償責任について
否認,不知ないし争う。
被告Y2は,ACPの事実上の代表取締役ではない。
MCIからACPに金銭消費貸借契約に基づく資金提供があったことは事実であるが,これは実態のある取引である。その詳細は不知。
MCIからACPへの資金移動がなぜ,会社法429条1項,430条の責任となるのか,どのようなACPの事実上の取締役としての「職務を行う」について「悪意又は重過失」があったのか不明である。
ACPが原告に対して損害賠償義務を負う根拠も不明である。
(4)被告Y3の主張
ア 不正流出に関する共同不法行為責任について
否認ないし争う。
MCIからの資金移動については何ら関与していない。
MCIからJHLに金銭消費貸借契約に基づく資金提供があったことは事実であるが,これは実態のある取引である。
JHLが農業事業を行っていたのは事実であるが,これをMCIが営業トークに用いていたかは知る由もない。
漢方財団の買収は,被告Y3がJHLの取締役に就任する平成21年3月以前に,被告Y3の先代のJHLの代表者であるG(以下「G」という。)が取りまとめたものを引き継いだに過ぎず,これについて被告Y3が不法行為責任を負うことはない。
JHLは,MCIに立替合意書(乙イ3等)に基づき平成21年6月12日,6500万円をMCIに貸し付けている。
JHLがMCIから融資を受けた1億3000万円のうち,1億円は漢方財団の買収に用いた他,農場の運営経費や,役員や従業員合計5名の人件費として費消した。うち4名はMCIの事務所で勤務していたものである。何ら不正な費消はない。
ハッピーライフグループの会議でグループの資金移動を決定したことはない。
イ JHLの代表取締役としての賠償責任について
否認ないし争う。
MCIからJHLへの資金移動がなぜ会社法429条1項,430条の責任を生じさせるのか,被告Y3において,どのようなJHLの取締役としての「職務を行う」について「悪意又は重過失」があったのかが不明である。
JHLないし被告Y3として,原告とMCIとの間の契約において出資金の使途がどのように限定されているか知る由もなく,これをJHLとの関係で主張できるはずもないから,JHLの取締役としての被告Y3の責任との関係で主張できない。
漢方財団の買収は,被告Y3がJHLの取締役に就任する平成21年3月以前に,被告Y3の先代のJHLの代表者であるGが取りまとめたものを引き継いだに過ぎず,これについて被告Y3が不法行為責任を負うことはない。
JHLは,MCIに立替合意書(乙イ3等)に基づき平成21年6月12日,6500万円をMCIに貸し付けている。
JHLがMCIから融資を受けた1億3000万円のうち,1億円は漢方財団の買収に用いた他,農場の運営経費や,役員や従業員合計5名の人件費として費消した。うち4名はMCIの事務所で勤務していたものである。何ら不正な費消はない。被告Y3がJHLの取締役に就任した平成21年3月以前の貸付に係る事情については不知。
JHLが原告に損害賠償責任を負う理由も不明である。
(5)被告Y4の主張
否認ないし争う。
MCIの入出金を実際に行っていたのは,H(以下「H」という。)の息子であるIである。
被告Y4は,MCI,JHL及びACPの経理を担当していたが,管理部門の担当者であったに過ぎず,MCIの経理処理及び資金移動は,MCIの代表者兼ACPの管理部長であるBないし副社長のHの指示に基づいて行っていた。資金繰を担当していたこともない。
被告Y4は,経理の全容や,預り金の額,売上額等を把握することは求められておらず,接することもなかった。
被告Y4は,分別管理義務を負っておらず,これに関する義務違反は認められない。
(6)被告Y5の主張
否認ないし争う。
MCIの入出金を実際に行っていたのは,Hの息子であるIである。
被告Y5は,MCI,JHL及びACPの経理を担当していたが,管理部門の担当者であったに過ぎず,MCIの経理処理及び資金移動は,MCIの代表者兼ACPの管理部長であるBないし副社長のHの指示に基づいて行っていた。
被告Y5は,経理の全容や,預り金の額,売上額等を把握することは求められておらず,接することもなかった。
被告Y5は,分別管理義務を負っておらず,これに関する義務違反は認められない。
(7)被告Y6の主張
否認ないし争う。
被告Y6がAから設定を受けた静岡県内所在のマンションについての根抵当権は,実態のあるもので,これは被告Y6がAとの間で契約したFX自動売買システムの著作権譲渡契約の代金担保のためのものであった。
MCIの経営が破綻しそうなときでさえ,被害を出さないようにするため,何とか立て直す方法を模索していたが,何の相談もなく経営を破綻させて被害を確定させたのはBである。
(8)被告Y7の主張
被告Y7は,MCIについて部外者であり,その内情や資金の使途に制限があることを知る由もなかった。
被告Y7が1500万円をMCIから貸し付けられたことは事実であるが,これについては,MCIと被告Y7の経営するフィルモアファーイーストとの間で,MCIがフィルモアファーイーストの抱える新人アーティストの原盤権を証券化し,MCIが出資を募集する提携業務があり,このアーティストファンドの収益により償還する旨の協議をMCIの代表者Bと行っていたもので,実態がある。その後,このファンドによる資金調達はできなくなったが,これはMCIが廃業したことによるものである。
(9)被告Y8の主張
ア 不正流出に関する共同不法行為責任について
否認,不知ないし争う。
被告Y8は,MCIについて部外者であり,その資金の使途に制限があるとしてもこれを知る由もなかった。
ACPがMCIから金銭消費貸借契約に基づき資金提供を受けたのは事実であるが,これは実態のあるプロジェクトファイナンスである。MCIからACPが借入をする際は,MCIの代表者Bから都度,返済計画について質問されたり,事業計画の不備を指摘されることがあり,罵声を浴びせられることもあった。平成20年7月1日から平成21年7月29日までの間,合計1000万円の弁済も行っている。
MCIからACPが借り入れた資金のうち,1億円は,平成18年に借り入れたAからの貸付金の弁済に充てた。その後,これは,MCIの増資の資金に充てられたと聞いている。
ハッピーライフグループの会議でグループの資金移動を決定したことはない。
イ ACPの代表取締役としての賠償責任
否認,不知ないし争う。
ACPがMCIから金銭消費貸借契約に基づき資金提供を受けたのは事実であるが,これは実態のあるプロジェクトファイナンスである。
MCIからACPへの資金移動がいかなる理由で会社法429条1項,430条の責任を生じさせるのか,被告Y8において,どのようなACPの取締役としての「職務を行う」について「悪意又は重過失」があったのかが明らかでない。
ACPがいかなる理由で原告に損害賠償責任を負うのかも不明である。
(10)被告Y9の主張
ア MCIの監査役としての賠償責任について
被告Y9がMCIの監査役に就任したのは,平成21年4月末ころである。
被告Y9は,平成21年5月初めころ,同年6月中旬ころ及び同年7月初旬ころ,MCIの監査役としての業務を行おうとMCIの代表者Bに監査を行いたいと電話や直接口頭で告げる等したが,何らMCIの業務状況について開示されることがなく,監査を行えないままになったに過ぎない。
被告Y9がハッピーライフグループの会議に一,二回出席したことは事実であるが,資金コントロールに関与したことはない。
原告の投資額がいくらで,いくらが返済されたのか等一切知る由もない。
イ JHLの取締役としての賠償責任
被告Y9がハッピーライフグループの会議に一,二回出席したことは事実であるが,資金コントロールに関与したことはない。
6  原告に対する欺罔行為の有無
(1)原告の主張
MCIは,顧客からの出資金を分別保管せず,Aが個人的に流用するがままにしたり,関係会社に不正流出させたりしており,本来は払うべきでないFXファンドの販売委託業者(以下「レップ」という。)へのコミッションを多額に出し,出資金を満足に運用せず,FXに運用した資金の運用状況も芳しくない状況で,ほとんど利益が出ておらず,顧客からの新たな出資金を既存の出資金に対する配当に回す,いわゆる蛸足配当の状況であった。
しかるに,MCIの顧問の肩書きでMCIのFXファンド販売の営業を行っていたHは,原告に対し,①1000万円以上1億円未満の場合の配当は毎月,出資額の7%を上限としている,②MCIはFXの自動売買取引で,最低でも毎月20%程度の利回りを上げる一方,レバレッジを全くかけない低リスクの運用を行っており,ローリスク・ハイリターンの取引である,③万が一,元本が85%に減少した場合,契約期間中でも運用を中止し,償還手続を取るので損失リスクは出資金の15%の範囲内である等虚偽の説明をして原告をその旨誤信させ,第1契約を締結させ,10口分1000万円の出資を行わせた。
その後,MCIは,実際の状況は上記から変化がないにもかかわらず,毎月の運用は堅調であると報告した上,原告に上限利回りの月7%に相当する配当を重ねて行い,FXファンドの運用が好調であるかのように装い,原告をその旨誤信させて,第2契約を締結させ,20口分2000万円の出資を行わせた。
これらは,Aが原告らMCIの顧客からの出資金を自己の恣に費消するつもりであったのに,これを秘してFX自動売買システムを使用して出資金を運用する旨原告を欺いて出資金を詐取したMCIを舞台とする詐欺の一環として行われたものである。
(2)8名被告らの主張
原告に対するHの欺罔行為については不知。
MCIにおいて,原告の出資金をFXで運用する態勢は存在しており,実際に運用してもいたのであるから,欺罔行為があったとはいえない。
確かに,MCIは,出資金をFX以外にも支出しているが,第1契約及び第2契約において,出資金は,FXのほか,関連する取引を行うことが可能であり,一定の費用が出資者の出資金の負担となると定められていた。そうすると,MCIが出資金を関連企業やAに移動させたとしても,これが直ちに第1契約や第2契約の各約定と異なる資金運用となるものでもない。
(3)被告Y9の主張
否認ないし不知。
7  原告に対する欺罔行為に関する各被告の責任原因の有無
(1)原告の主張
ア 被告Y1について
被告Y1は,Aと共に,MCI,ACP,JHLで構成されるハッピーライフグループのオーナーであり,その財務を統括して資金の管理状況をコントロールしていたので,被告Y1はAと共謀の上,共同して原告に欺罔行為を行ったもので,共同不法行為責任を負う。
イ 被告Y2について
被告Y2は,MCIからの不正な資金流出の受け手であるACPの実質的代表者として,Aと原告に対する詐欺のスキームにおいて重要な役割を果たしており,Aと共同して原告に欺罔行為を行ったものである。被告Y2は,Aとの長年の付き合いで,Aの詐欺遍歴を熟知しており,Aと共謀の上,上記欺罔行為を行ったもので,共同不法行為責任を負う。
ウ 被告Y3について
被告Y3は,MCIからの不正な資金流出の受け手であるJHLの代表者として,Aの原告に対する詐欺のスキームにおいて重要な役割を果たしており,Aと共同して原告に欺罔行為を行ったものである。被告Y3は,Aの父であり,Aの詐欺遍歴を熟知しており,Aと共謀の上,上記欺罔行為を行ったもので,共同不法行為責任を負う。
エ 被告Y4について
被告Y4は,MCI,ACP及びJHLの経理担当者として,MCIが投資家らから集めた資金を不正流出させる実行行為を担当しており,Aの詐欺のスキームにおいて重要な役割を果たしており,Aと共同して原告に欺罔行為を行ったものである。被告Y4は,Aとは,同人が以前経営していた後出のグローパートナー時代からの付き合いであり,Aの詐欺遍歴を熟知しており,Aと共謀の上,上記欺罔行為を行ったもので,共同不法行為責任を負う。
オ 被告Y5について
被告Y5は,MCI,ACP及びJHLの経理担当者として,MCIが投資家らから集めた資金を不正流出させる実行行為を担当しており,Aの詐欺のスキームにおいて重要な役割を果たしており,Aと共同して原告に欺罔行為を行ったものである。被告Y5は,Aとは,同人が以前経営していた後出のグローパートナー時代からの付き合いであり,Aの詐欺遍歴を熟知しており,Aと共謀の上,上記欺罔行為を行ったもので,共同不法行為責任を負う。
カ 被告Y6について
被告Y6は,MCIを舞台としたAの詐欺のタネとなるFX自動売買システムを開発してMCIに持ち込み,FXの運用(FX運用システムの開発委託の窓口業務を含む。)を担当する等,FXファンドを看板とするMCIを舞台としたAの詐欺スキームにおいて重要な役割を果たしており,Aと共同して原告に欺罔行為を行ったものである。被告Y6は,Aとは四半世紀にわたる付き合いであり,これまでもAによる数々の詐欺事件に関わってきており,親友として同じマンションに居住するなど常に行動を共にしてきており,Aと共謀の上,上記欺罔行為を行ったもので,共同不法行為責任を負う。
キ 被告Y8について
被告Y8は,MCIからの不正な資金流出の受け手であるACPの代表者として,Aの原告に対する詐欺のスキームにおいて重要な役割を果たしており,Aと共同して原告に欺罔行為を行ったものである。被告Y8は,Aとは,Aが従前経営していた後出のグローパートナー時代からの付き合いで,Aの詐欺遍歴を熟知しており,Aと共謀の上,上記欺罔行為を行ったもので,共同不法行為責任を負う。
(2)被告Y1の主張
否認,不知ないし争う。
被告Y1は,MCIの部外者であったため,MCIでいかなることが行われているかを知る立場になかった。
(3)被告Y2の主張
否認,不知ないし争う。
被告Y2は,ACPの実質的代表者ではない。
被告Y2は,MCIの部外者であったため,MCIでいかなることが行われているかを知る立場になかった。
(4)被告Y3の主張
否認,不知ないし争う。
被告Y3は,MCIの部外者であったため,MCIでいかなることが行われているかを知る立場になかった。
被告Y3は,平成21年4月1日にJHLの代表者に就任したもので,同日以前に原告が行った第1契約(平成20年12月18日付け)及び第2契約(平成21年3月16日付け)に係る欺罔行為とするものについて関与していない。
(5)被告Y4の主張
否認,不知ないし争う。
被告Y4は,MCIの管理部門の業務を受託していたACPの従業員としてMCIの経理業務を行っていたが,MCIの代表者兼ACPの管理部長であるBや,MCIの副社長取締役のHの指示に基づき,通常の業務として資金移動を行っていたに過ぎず,不正な資金流出であるかについて当時,認識はなかった。
(6)被告Y5の主張
否認,不知ないし争う。
被告Y5は,MCIの管理部門の業務を受託していたACPの従業員としてMCIの経理業務を行っていたが,MCIの代表者兼ACPの管理部長であるBや,MCIの副社長取締役のHの指示に基づき,通常の業務として資金移動を行っていたに過ぎず,不正な資金流出であるかについて当時,認識はなかった。
(7)被告Y6の主張
否認,不知ないし争う。
被告Y6がMCIのFX運用に従事していたことは事実であるが,MCIが投資家らから集めた資金全体をどのように管理運用しているか知る由もなく,原告を含む投資家らからどのように資金を募っているのか勧誘状況を知る由もない。
(8)被告Y8の主張
否認,不知ないし争う。
被告Y8は,MCIの部外者であったため,MCIでいかなることが行われているかを知る立場になかった。
8  原告の損害額
(1)原告の主張
第1契約及び第2契約に基づく出資金及び手数料の合計3021万円が原告の損害である。
原告がACPやJHLに対する債権を有しているとしても,ACPやJHLは無資産状態であり,債権の実現可能性はないので,原告に損害は存するというべきである。
(2)8名被告らの主張
否認する。
原告において,8名被告らの責任原因として,ACP又はJHLからの資金流出を主張するのであれば,原告が主張している原告のACP又はJHLへの債権はなお存在しているのであるから,損害はないはずである。
(3)被告Y9の主張
否認ないし争う。
9  各被告の行為と原告の損害との間の相当因果関係の有無
(1)原告の主張
Aとの共同不法行為によって各被告が原告に行った詐欺と原告の損害は,相当因果関係を有する。
Aとの共同不法行為によって,あるいはMCIの取締役ないし監査役としての義務の懈怠により各被告が行ったMCIからの資金の不正流出と原告の損害とは,相当因果関係を有する。
ACPやJHLからの資金流出に関する被告Y1,被告Y2,被告Y3,被告Y8及び被告Y9のこれら会社の取締役としての義務の懈怠と原告の損害とは,相当因果関係を有する。
(2)8名被告らの主張
否認ないし争う。
被告Y3については,平成21年4月1日に至ってJHLの代表取締役に就任したに過ぎず,これ以前の第1契約及び第2契約に係る出資金及び手数料に関する損害との間では相当因果関係がない。
(3)被告Y9の主張
否認ないし争う。
第4  当裁判所の判断
1  認定事実
当事者間に争いのない事実,かっこ内に摘示した証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)横浜市西区に本店を置く株式会社エムエムピージェイは,平成13年5月2日に設立された,東南アジアのリゾートの企画,開発,レストランの運営等を目的とする株式会社である。設立時の商号は,株式会社グローパートナーで,本店を東京都千代田区に置いていたが,平成21年12月1日に現在の商号に変更し,本店も東京都中央区を経て現在地に移転した。以下では,商号の変更の前後を問わず,「グローパートナー」という。Aは,平成13年12月10日から平成21年12月1日まで,多少の空白はあったものの,同社の代表取締役であった(甲共16)。
(2)MCI,ACP及びJHL等は,ハッピーライフグループないしハッピーライフプロジェクトを名乗る団体を構成しており,その組織図も作成されていた(甲共25)。
(3)MCIを含むハッピーライフグループは,グループ会議を開催しており,これには,Aも参加していた。ここでは,グループ内での資金コントロールが決定されていた。また,平成21年7月9日に,グループミーティングと称する会合も行っているが,これにはA,MCIの代表者B,H,被告Y1,被告Y2,被告Y9,分離前の相被告J(以下「J」という。)及びKが参加していた。この際の議事録には,ルール決定機関により定められた方針に則り正しく費用が活用されているか,また適正な契約により取引が進められているかを監督する等の重要な事項についての決裁権を有する合同株主総会の構成員として,Aと被告Y1の名が挙げられていた(甲共33,甲共67ないし甲共70,証人B)。
(4)MCIの内部の書類においては,代表取締役のBの上位に会長としてAが記載されていた。
また,MCIにおける投資運用委員会の構成員は,A,B,H,分離前の相被告J,L,M(株式会社鉄人の従業員。)とされていた。
Aは,この他,投資運用本部の最上位の本部長とされていた(甲サ4)。
(5)MCIは,設立当初,東京都中央区日本橋小網町に本店を置いていたが,平成20年3月,東京都中央区銀座6丁目に本店を移し,さらに平成21年4月,東京都中央区日本橋本町に本店を移転した(甲共1)。日本橋本町の本店には,オーナーズルームと呼ばれる部屋があり,Aや被告Y6,Lらが席を置いていた。日本橋本町の本店には,「ハッピーライフグループ」なる受付サインが設置されており,これには,MCIと共に,ACP及びJHL等が記載されていた(甲共17,甲共28,甲共29)。
(6)MCIの設立時の資本金は,Aが全額出資したものであるが,これは,NTTデータの株式(5000万円相当)及び未上場会社の株式を現物出資したものであった。これら株式は,いずれもAがその後MCIから取り戻した。これら株式について,Aは,いずれかから借りてきた株であると述べている。設立時で未だ金融商品取引法上の登録を経ていないMCIは,同法の登録を経るまでは営業ができず収入がなかったため,ACPからの貸付金等により経費をまかなう赤字状態にあった。
その後,MCIは,同法による登録を経て投資家らからの資金を一応,運用していたが,会社設立後の赤字を投資家らからの資金により穴埋めする等しており,同法上の規制により必要な純資産額5000万円をそのままでは計上できなくなっていたため,平成20年1月18日にMCIが1億円の増資をすることとなった。この際,Aが全額の出資を引き受けたが,この1億円は,MCIの銀行口座の預金をAの銀行口座に送金した後,Aの銀行口座から振り込まれたものであった。これについて,Aは,名義を貸したに過ぎないとしている(甲共32の1,甲共39,甲共41,甲共71,甲ア4,甲サ1,乙ソ7,証人A)。
(7)MCIの株主は,当初,Aが100%株主であったが,平成20年7月15日,当時の発行済株式総数7000株のうち300株が分離前の相被告Eに譲渡された。もっとも,これについては平成21年4月14日,Aに再譲渡され,以後は増資後も含め,Aが100%株主であった(甲共32の1,甲共32の2)。
(8)MCIにおいては,顧客から集めた出資金約22億7500万円の一部を海外の証券会社の口座を利用し,FX取引により運用していたが,これは最大で4億円ないし5億円程度であり,平成21年6月当時,約3億5000万円程度であった。運用益としては,1日に700万円を超える利益があがることがあったり,86%の勝率を上げることもあったりした。破産管財人の調査により使途が判明した出資金の額は,以下のとおりである(概数である。なお,レップとはMCIのFXファンド等の金融商品を販売する代理店のことで,コミッションとは販売手数料報酬のことである。)。
投資家への配当金 5億4000万円
レップに対するコミッション 5億1700万円
ACP等の関連会社への事業資金の貸付 6億6600万円
他事業への投資・貸付金等 1億2000万円
事務所敷金,内装,備品,移転費用等 1億1300万円
当初,運用は被告Y6がインターネット経由で,手作業により運用していた。その後,インターネット上で入手できるソフトウェアを利用するようになり,システム開発等を業務とする株式会社鉄人のLに依頼してソフトウェアの改修をしたが,いくつか新しい機能を付け加えてMCI用にカスタマイズする程度であった。もっとも,平成21年6月ころには,Hの判断で使用が中止された。(甲共17,甲共48,甲共65,甲共71,乙ク16,証人B,証人Y6)。
(9)MCIのFX取引は,上記のとおり,コンピュータのソフトウェアによる自動売買で行っていたが,使用するソフトウェアは複数用意されており,実際に取引させた実績や過去の値動きを使用して仮想運用させるシミュレーション取引を繰り返した結果を比較し,成績の良いものを取捨選択して,いくつかのソフトウェアに運用させていた。この取捨選択は,A,B及び被告Y6の3名で協議して決定していた。1つのソフトウェアについては,仮想FX取引口座での取引状況がインターネット上においてリアルタイムで公開されており,成績が良かったこともあって顧客を誘引するのに役立っていた(証人A,被告Y6本人)。
(10)FX取引においては,月間30%から月間50%の利益をあげることもあり得るのであり,実例もあるが,1年間続けられるかというと疑問が残る。また,運用額にもよる(証人H)。
(11)MCIでは,当初,ファンド毎に預金口座を設けて投資家からの資金を受け入れていたが,これは募集を行う当初だけ使用し,これが終わり3か月ほどすると,三菱東京UFJ銀行のMCIの経費等をまかなっている預金口座に資金を移動していた。
その後,三井住友銀行の預金口座が投資家からの資金の送金先に使用されるようになったが,これは出資金の受入専用ではなかった。
MCIの三井住友銀行の預金口座から三菱東京UFJ銀行の預金口座への資金が移動されることがあったが,その際はいったん三井住友銀行の預金口座から現金で引き出し,これを三菱東京UFJ銀行の預金口座へ入金する取扱を行っていた。これはAの指示によるものであった。
他方,三菱東京UFJ銀行の預金口座から他の預金口座へ資金が移動されることはなかったが,三菱東京UFJ銀行の預金口座にある資金の中からMCIの経費等を支出したことはあった(乙ソ12,被告Y5本人)。
(12)被告Y4は,AがBに対し,MCIの三井住友銀行の預金口座に対する入金合計7億6704万4000円をどのように振分けるかについて話した際のメモ(甲共20)を作成した(被告Y4本人)。これには,以下のとおり記載があった。
Aへ 2億3530万円
うち1億8930万円をAへ
うち300万円を被告Y9へ
うち300万円を被告Y7へ
うち3000万円をACPへ
うち1000万円をJHLへ
うち2000万円をグローパートナーへ
MCIの本口座へ 1億7765万円
クリーン化 3億3833万9000円
その他 1509万6270円
三井住友銀行預金口座残高 65万8730円
上記のうち,三井住友銀行預金口座残高の額は,実際のMCIの三井住友銀行の預金口座の平成21年6月11日時点の残高(甲共76)と一致する。
また,上記の合計額7億6704万4000円は,実際の三井住友銀行預金口座からの出金額のうち,手書きで誤入金に対する返金の趣旨の記載のあるものを除いた額の合計7億7000万円余りと概ね一致する。
(13)MCIにおいては,資金繰表が作成されていた。これは,予定される入金と出金が記載されていたが,海外のFX取引口座の残高が記載されておらず,MCIの財産状況を全て把握できるようなものではなかった。その他の月次試算表等の経理書類は,総務関係の業務を委託しているACPからさらに税理士事務所に関係書類を送付して作成させていたが,匿名組合形式のFXファンドごとの入金を別に記載した書類は作成されておらず,FXファンドごとの収支や残高を的確に示す貸借対照表(商法539条1項)等の会計書類の作成は,資料が不足していたために破産管財人も作成することができなかった(甲ア4,甲ク5,乙ク2,証人B,証人K,証人A)。
(14)ACPにおいては,MCIのそれと同様の資金繰表が作成されていた。これには,ACPがAの分離前の相被告Cに対する債務を代わりに弁済するかのような記載がある。
(15)Aは,継続的に電子メールによりMCI及びACPの各資金繰表の送付を受けていた(証人A,被告Y4本人)。
(16)ACPにおいては,被告Y4により日ごとに預金残高票及び現金残高票が作成されていた(乙ソ1の1,乙ソ1の2,乙ソ11,被告Y4本人)。
(17)MCIにおいては,経理帳簿類は,暗証コードでロックがかけられたコンピュータの中にデータで保存されており,これを閲覧できたのはA,被告Y1,被告Y5及び被告Y4であった(証人K)。
(18)MCIの設立時の取締役であるDの認識では,確実にMCIの金銭の出入りを把握していたと言えるのはAのみで,Aの右腕ともいうべき被告Y1にその可能性があるが,Aの指示の下で金銭の管理を行っていた被告Y4や被告Y5は全体像を把握していなかった(乙サ2)。
(19)Aは,MCIの組成した各ファンドの配当率を,実際の収益にかかわらず比率で決定していた(証人B)。
(20)MCIは,FXファンドを複数組成して販売していたが,その目標利回りは,年12%から年192%,運用期間はフィルモアファーイーストのアーティストファンドを除き1年間から5年間といったものであった(甲共24)。
(21)MCIは,日本オクトーバーフェスト推進協議会に対し,合計6000万円の投資を行っていたが,これは,投資資金に対する年5%の割合による配当が予定されており,投資実行日から129日後に元本及び配当を一括償還するという条件であった。この他,海外でのレストラン事業への出資等も行っていた(甲共34の1ないし甲共34の3,被告Y1本人)。
(22)ACPにあっては,登記上の代表取締役は被告Y8であったが,実態としては,Aが実権を握っており,被告Y8は代表取締役としての権限を行使しようとせず,専門とするデザインの領域で,ACPが発行する広報誌の製作に当たっていた(証人A)。
(23)Hは,在米経験がありFX取引会社を日本において設立したこともある経歴を有するが,平成20年9月,一般投資家へのFXの講義やFX取引のアドバイスを行う者として雇用された。営業も依頼されたが,自身は担当できないとして,ステディ株式会社を紹介した。平成21年4月ころには,MCIの取締役に就任し,その後,運用本部長の地位に就いた(甲共65)。
(24)MCIにおいては,直接,分離前の相被告Jら自社の営業担当者がFXファンドへの投資を勧誘する他,レップを通じても勧誘を行っていた。成約に至った場合,レップには最大で出資額の20%の割合のコミッションが支払われた(証人B,証人H)。
(25)MCIは,顧客から集めた出資金も入金されていた三井住友銀行の口座から引き出した現金を貸付金名下にACPの銀行口座に入金していた(甲共39)。
(26)MCI名義の三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行の各預金通帳には,原告を含む個人宛ての振込送金が多数記録されており,出資金に対する配当金名下に支払う原資が預金されていたものと認められる(甲共75,甲1の2)。
(27)MCI内部で作成された残高試算表には,Aからの貸付金が1億6000万円存在する旨の記載があったが,これに関する借用書は存在していなかった。Aは,MCIから3000万円を受領したことがあったが,これについて,借用書をMCIに差し入れていた。もっとも,破産管財人に対しては,これが実質的にはAのMCIに対する貸金債権への弁済である旨説明していた。また,Aは,このAからMCIへの貸付金の原資はAがACPに対し譲渡したAのグローパートナーに対する債権1億8080万円分の譲渡代金であると破産管財人に説明したが,破産管財人はグローパートナーに弁済資力がなく,実質的に無価値の債権の譲渡代金であり,AがACPから不正に出金するための口実に過ぎなかったのではないかと疑念を抱いていた(甲共39,甲共41)。
(28)グローパートナーは,平成18年3月31日当時,純資産額が2億4894万円のマイナスとなり,1株当たりの純資産額もマイナス1749円78銭となっていて,半期報告書(甲ア3,甲ク10)には,継続企業の前提に関する重要な疑義が存するとされる状況であった。インターネット上には,平成19年7月の段階で未公開株式投資勧誘・怪しい投資勧誘情報交換に関する掲示板にグローパートナー株式に関する投稿が記載されたり(甲ク11の2),平成21年1月の段階で,グローパートナーの事業所が不明であるとした上,同社株式について「伝統と歴史の後悔株」と評する記事が掲載されており(甲ク11の1),これらの真偽は別にしても,MCI設立以降の時点におけるグローパートナーの株式の経済的価値は相当に低いものであった。
(29)MCIは,平成19年12月1日,ACPとの間で,顧客及びレップのデータ管理,支払及び送金処理業務全般等の事務代行業務を委託する業務委託契約を締結した。委託費は,当初,月額30万円だが,金融商品取引法所定の登録を完了して営業を開始した後は,月額60万円とされていた(甲共45)。
(30)被告Y1は,MCIが第二種金融商品取引業の登録を行う際,担当した行政書士の連絡先となっていた(甲共36)。
(31)MCIは,平成20年5月7日,第二種金融商品取引業についての登録を受けた(甲共71)。
(32)MCIの代表者Bと被告Y1は,平成20年6月5日,金融庁監督局証券課に赴き,MCIのような第二種金融商品取引業者が金融商品仲介業者の母店となるかについて相談を行ったところ,できない旨の回答を得た。これは換言すると,MCIにおいて,レップ等の仲介業者を利用して営業を行うことができないことを意味していた(甲共38)。
(33)MCIは,平成20年7月1日,Aが代表取締役を務めるグローパートナーとの間で,MCIの経営,管理等について助言,指導を行うサービスの提供を受けるコンサルタント業務契約を締結し,報酬として月額210万円を支払う旨約束した。これに基づき,少なくとも平成21年5月29日,コンサルティングフィー名下に210万円が支払われた。その際の支払依頼書には,被告Y5及び被告Y4が押印している(甲共49,甲共58の1)。
(34)MCIとa社の屋号で個人営業していた被告Y2は,平成20年7月1日,被告Y2がMCIの広報等について助言,指導を行うサービスを月額21万円(消費税込み)で行う等を内容とするコンサルタント業務契約書を締結した(甲共42の2)。
MCIと被告Y2が代表者を務める株式会社a社は,平成21年4月1日,同社がMCIの広報等について助言,指導を行うサービスを月額21万円(消費税込み)で行う等を内容とするコンサルタント業務契約書を締結した(甲共42の1)。
被告Y2は,MCIの代表者であるBが記者会見を行う等のイベントの際,これをサポートすることがあった(証人B)。
(35)MCIは,ACPとの間で,ACPが行う健康情報マガジン発行事業及びその付帯事業に対し,プロジェクトファイナンス名下に金員を出資し,月利1%の配当を得た後,2年間で元本を償還する内容の契約書を以下のとおり締結した(乙イ2の1,乙イ2の2,乙エ2の1,乙エ2の2,乙オ2の1,乙オ2の2,乙ケ2の1,乙ケ2の2)。これらを含むMCIのACPに対するプロジェクトファイナンスは多数にのぼり,その合計額は3億3100万円に対し,返済された額は1000万円に留まった(乙イ2の3,乙エ2の3,乙ケ2の3)。
平成20年7月1日 100万円
平成21年7月30日 800万円
(36)MCIは,ACPに対し,以下のとおり業務委託費名下の支払を行った(乙イ1の5,乙エ1の3,乙エ1の5,乙オ1の3,乙オ1の5,乙ケ1の3)。
平成20年5月分 同年7月31日ころ 52万5000円
同年6月分 同年8月29日ころ 157万5000円
(37)MCIは,平成20年10月・11月号,平成20年12月・平成21年1月号のACP発行のフリーペーパー誌において,ロシアで原型が開発された人口知能型自動売買システムによりFXで資金運用する金融商品を販売している旨宣伝していた(乙ソ4の2,乙ソ4の3)。
(38)株式会社鉄人は,平成20年の後半に,Aを通じてMCIの経理やコミッションの管理を行う業務システムの開発を依頼された。同社は,同社の社内でこの業務を行った(甲共17)。
(39)Aは,平成20年10月から同年11月ころにかけての間にMCIにおけるFX取引による運用益がなかなか出ないと認識を得た。また,遅くともそのころにはMCIが投資家らからの資金の分別管理義務に違反していることを認識していた(証人A)。
(40)Aは,平成20年10月31日,ACPに対し,Aがグローパートナーに対して有する貸金債権1億3700万円を同額で譲渡する債権譲渡契約書を締結した(甲共56)。
(41)ACPは,平成20年12月22日,以下のとおり金員を支給した(甲共61)。
被告Y4 164万7605円
被告Y8 283万2000円
被告Y2 422万6515円
B 784万9832円
被告Y6 784万9832円
(42)ACPは,MCIから以下のとおり,いずれも年5%の割合による利息約束の下,金銭を借り受けた旨の金銭借用証書(甲ケ3の1ないし甲ケ3の22)があるが,これには,被告Y8がACPの代表者として押印した(乙ソ9)。これらは,上記MCIからACPへのプロジェクトファイナンス名下の貸付金の表(乙イ2の3等)と対応するものもあるが,対応しないものや,同表に記載がありながら,金銭借用証書がないものもある。
貸付日 交付額 返済日
平成20年12月9日 100万円 平成21年12月8日
平成20年12月22日 2000万円 平成21年12月21日
平成20年12月24日 1000万円 平成21年12月22日
平成21年1月6日 500万円 平成22年1月4日
平成21年1月13日 1500万円 平成22年1月12日
平成21年1月28日 1000万円 平成22年1月27日
平成21年2月9日 300万円 平成22年2月8日
平成21年2月16日 2000万円 平成22年2月15日
平成22年2月26日 2300万円 平成22年2月25日
平成21年3月3日 500万円 平成22年3月2日
平成21年3月18日 1000万円 平成22年3月17日
平成21年3月24日 1000万円 平成22年3月23日
平成21年3月30日 1150万円 平成22年3月29日
平成21年4月9日 500万円 平成22年4月8日
平成21年4月15日 300万円 平成22年4月14日
平成21年4月17日 700万円 平成22年4月16日
平成21年4月23日 330万円 平成22年4月22日
平成21年4月27日 100万円 平成22年4月26日
平成21年4月28日 200万円 平成22年4月27日
平成21年4月30日 800万円 平成22年4月28日
平成21年5月28日 100万円 平成22年5月27日
平成21年5月29日 700万円 平成22年5月28日
合計 1億8080万円
(43)MCIは,平成20年12月25日,Aが代表取締役を務めるグローパートナーとの間で,不動産投資案件の調査業務を委託する業務委託契約を締結した。委託料については,グローパートナーが見積書を交付し,MCIが了承した額とするものとされていた。委託料の支払いは,ACP内のグローパートナー専用口座宛とされていた。これに基づき,少なくとも平成21年2月2日,ACP名義の銀行口座宛てに1000万円が支払われた。その際の支払依頼票には,少なくとも被告Y4が押印している(甲共44(ただし,作成日が平成21年12月25日とあるのは,平成20年12月25日の誤記と認められる。),甲共58の2)。
(44)MCIと被告Y7が代表者を務めるフィルモアファーイーストは,平成20年10月31日,MCIがフィルモアファーイーストに対し,同日以降2年間の間に総額30億円を出資し,これをフィルモアファーイーストが有する原盤権及び音楽著作権から発生する印税からの配当で回収する出資契約書を締結した(甲共46)。
(45)MCIのFX取引による運用の成績は,平成20年12月時点で,プラスにはなっていなかった(被告Y6)。
(46)原告は,第1契約に先立つ平成20年12月6日,MCIのレップとなっていたステディ株式会社の取締役となっていた知人を介し,HからMCIのFXファンドに関する説明を受けた。Hは,その際,①MCIの行うFX取引は,自動売買システムによるもので,勝率が8割を超えており,最低でも月20%程度の利回りで運用していること,②FX取引は,本来,レバレッジをかけて行うが,MCIにあっては,安全を期すべく,レバレッジをかけずに運用している,それでもこの利回りなので,ローリスク・ハイリターンの取引である,③元本が85%まで減少した場合は運用を中止して償還手続を行うので,損失リスクは元本の15%である,④MCIは投資運用業・第二種金融商品取引業の登録を経ており,金融庁の監督下において,適時適正な運用を行っている,投資運用業の登録を経るためには,厳格な要件があり,MCIはその厳格な要件を充足している会社であるとの説明を受けた。その後も,原告は,知人を介してHから,運用は順調である旨聞いていた(乙ク27,乙ク29)。
(47)被告Y1は,平成20年12月26日ころ,Aから,被告Y7がアーティストファンドを作り出資者を募る計画があると話を聞き,メモ(甲共21)を作成した(乙ソ6)。その際,Aは,1口15万円で募る出資金のうち45%を被告Y7の経営するフィルモアファーイーストに,残り55%をMCIで運用するといった内容の話をしていた。実際,そのように取り決められていた(甲共45,甲ア4,乙ソ10,証人A,被告Y1本人)。
(48)MCIと被告Y7が代表者を務めるフィルモアファーイーストとの間では,フィルモアファーイーストが顧客を紹介した場合のコミッションについて,顧客の入金額の45%をフィルモアファーイーストが取得するものと約束がされていた(甲共47)。
(49)MCIが平成21年2月9日,原告に発行したマンスリーレポート兼配当計算書には,「1月は,確実に勝てる場合にしか取引を行っていません。目標利回りの最低ラインは確保できておりますので,予定利回りである7%を配当と致します。」との記載がある(甲共5)。
(50)Aは,平成21年3月3日,ACPに対し,Aが株式会社サンライズテックに対して有する貸金債権2000万円を同額で譲渡する債権譲渡契約書を締結した(甲共55)。
(51)Aは,平成21年3月18日,ACPに対し,Aが被告Y6に対して有する貸金債権2380万円を同額で譲渡する債権譲渡契約書を締結した(甲共54)。
(52)被告Y9は,JHLの登記上平成21年4月1日にJHLの取締役に就任し,同月23日にその旨の登記を経たが,同年12月1日,これを退任し,平成22年4月23日,その旨の登記を経たものと記載されている(甲共15)。
(53)被告Y9は,MCIの登記上,平成21年4月10日にMCIの監査役に就任し,同月13日にその旨の登記を経たものと記載されている(甲共1)。
(54)被告Y9は,平成21年4月15日,Aから無利息で300万円を借り受けた(甲共27)。
(55)MCIは,平成21年4月7日から同年6月8日までの間にbマンション内に4つの住居を賃借する賃貸借契約を締結していたが,その月額賃料は合計450万円であった。うち2つの住居の入居者は,Aと,残る2つの住居の入居者は被告Y6とされていた(甲共52の1ないし甲共52の4)。
(56)被告Y7は,MCIから,いずれも無利息で,以下のとおり貸付を受けた(甲キ3の1ないし甲キ3の4,乙ソ10)。
貸付日 交付額 返済日
平成21年4月17日 300万円 同年7月17日
平成21年4月30日 300万円 同年7月17日
平成21年5月8日 200万円 同年8月7日
平成21年5月29日 300万円 同年8月31日
合計1100万円
(57)Aは,平成21年5月24日,GP2号匿名組合代表組合員Nとの間で,同月29日から平成23年4月まで,分割して合計2700万円を株式買戻代金名下に支払う債務弁済契約を締結した(甲共22)。
(58)被告Y1は,平成21年5月25日,被告Y4に対し,グローパートナーの債権者への償還表の作成を依頼したり,株式買戻しによる返済が始まる旨を通知する電子メールを送信した(甲共57)。
(59)Aは,平成21年5月25日,GP1号匿名組合代表組合員Oとの間で,同月29日から平成23年4月まで,分割して合計2115万円を株式買戻代金名下に支払う債務弁済契約を締結した(甲共22)。
(60)被告Y5は,弟にMCIのFXファンドへの投資を勧め,同人は,平成21年6月4日及び同月19日,合計200万円を出資する匿名組合契約書をMCIに差し入れて出資を行うに至った(乙ソ2の1から乙ソ2の3,乙ソ12,被告Y5本人)。
(61)MCIは,平成21年6月12日,JHLに対し,立替金名下で6500万円を無利子で融資を受けたので,平成21年7月31日までに返済する旨の立替金合意書を差し入れた(乙イ3,乙エ3,乙オ3,乙ケ3,乙ソ3)。
(62)被告Y4は,平成21年6月ころ,Bの下に入力したMCIの資金繰表を持参して決裁を仰いだ際,Bから資金が不足している旨言われたことがあった(乙ソ11,証人B)。
(63)Hは,平成21年6月ころ,MCIがFX取引により利益をあげていないことに気付いた(証人H)。
(64)Hは,平成21年6月から同年7月にかけて,MCIの資金繰りが厳しいことを把握し,役員報酬の支払を停止するようにした(甲共65,証人H)。
(65)MCIの平成20年7月1日から平成21年6月30日までの間の合計残高試算表において,MCIは,平成21年6月30日現在,純資産がマイナス9億6475万5035円と,当期純損失が11億2546万5106円と計算された。もっとも,この残高試算表には,65万円余りがあるはずの三井住友銀行の預金口座の残高が反映されておらず,必ずしも正確なものではない(甲共76,甲ク9)。
(66)MCIが平成21年7月7日,原告に発行したマンスリーレポート兼配当計算書には,「少ないチャンスを活かしながら,着実なところで運用を行っております。そのような中,運用手法全体のとしての利益確保に努めたことにより,出資金額の7%を配当原資といたしました。」との記載がある(甲共9)。
(67)MCIが平成21年7月15日,原告に発出した「お詫び」には,「2009年6月度の配当金お支払い日が,7月24日(金曜日)となります旨ご通知申し上げます。本来であれば例月通り7月15日をお支払日としておりました」,「資金管理体制には問題なく,運用に関しては順調に利益が出ております。今回の配当についてはマンスリーレポートにあります通り,配当率月上限となりますことを併せてご報告申し上げます。」との記載がある(甲共10)。
(68)平成21年7月20日ころ,MCIのレップの1つがMCIに無断で,MCIと共同で組成したオリジナルな運用ファンドがあるとして独自に投資家から資金を集めた事案が発覚し,MCIは,同月30日,これを金融庁に報告したところ,MCIの管理体制に疑義が持たれた。MCIの代表者Bは,金融庁から呼び出され,同年8月5日までにMCIの財務実態,営業体制について報告するよう,報告命令(平成21年法律第51号による改正前の金融商品登録法56条の2第1項)を受けた。これにより,Bは,MCIにおいて分別保管が行われておらず,投資家らから集めた出資金が相当に欠損していることが発覚するものと覚悟した(甲共71,乙ク16)。
(69)MCIにおいて,平成21年7月22日ころ,従業員を試用するか禀議書が作成されたが,これには,代表者であるBが「執行権限者」として押印し,Aが「決済権限者」として押印していた。押印場所は,一番右端が発議した担当者であり,一番左がA,代表者はその右であった(甲共30)。
(70)平成21年7月度のMCI関係者の賃金ないし役員報酬の額(税引前)は以下のとおりである(乙ク15)。
A 300万円
MCI代表者B 330万円
被告Y6 230万円
H 280万円
被告Y9 20万円
(71)MCIの破産管財人は,平成21年11月27日ころ,破産裁判所に対し,以下の債務者に対する債権について,回収の見込みがないとして破産財団から放棄する許可を申し立てた(乙ク18)。
ACP 合計5億1180万円
JHL 合計1億1850万円
被告Y7 合計1100万円
被告Y9 300万円
H 500万円
(72)MCIの破産管財人は,平成21年12月1日,債権者集会において報告を行った。ここでは,
① MCIが総額約22億7500万円の資金を投資家らから集めたこと,
② これらは,投資家らへの配当金として約5億4000万円,代理店に対するコミッションとして約5億1700万円,関連会社への事業資金の貸付金として約6億6600万円,他事業への投資や貸付金等として約1億2000万円が費やされたこと,
③ 投資家らから集めた資金のうち,FX投資に充てられた資金は数億円に過ぎず,実際に行われたFX投資については損失を出している状況であったこと
を報告した。
同期日段階での一般債権の届出額は,合計21億0079万2048円であったが,その大半が出資金であった。同期日時点で判明している財団債権が破産財団を大幅に超えており,一般債権への配当は見込まれない状況であった(乙ク16)。
(73)原告は,Aに対し,第1契約及び第2契約に係る出資金及び送金手数料相当額合計3021万円についての不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を行ったところ(当庁平成21年(ワ)第41122号),平成22年9月7日,これについて一度も口頭弁論期日に出頭しないまま全額認容する判決が言い渡され,これは確定した(甲共13,甲共64)。
(74)被告Y2,被告Y8,被告Y4及び被告Y5は,それぞれの平成22年9月1日準備書面において,ほぼ同様の文面で,いずれもMCI,ACP及びJHL3社の資金コントロールについては,ハッピーライフグループの会議で決定していた旨の主張を記載していた。このうち,少なくとも被告Y8の準備書面(甲共68)については,Aが文章を起案したものであった(甲共67ないし甲共70,被告Y8本人)。
2  MCIにおける出資金の分別保管義務の有無
MCIは,金融商品取引業者であったのだから,運用財産と自己の固有財産及び他の運用財産とを分別して管理する義務を負っていた(金融商品取引法42条の4)。
3  MCIにおける出資金の分別保管態勢の有無
MCIにおいては,①設立当初の運転資金となるべき資本が実質的に確保されておらず,設立当初の人件費,事務所費用等の運営経費を貸付金により調達し,顧客からの出資金が入るとこれから運営経費をまかなう状況であったこと(前記認定事実(6)),②MCIは,投資家らからの資金の全額を海外に設けていたFX取引口座に送金していたわけではなく(前記認定事実(11)),海外のFX取引口座において投資資金が分別管理されていたわけではないこと,③MCIは,当初,一応はファンド毎に預金口座を設けていたが,これは募集当初の話で,これが終わり3か月ほどすると引き出して,三菱東京UFJ銀行のMCIの経費等もまかなっている預金口座に入金していたこと(前記認定事実(11)),④原告を含む顧客からの入金が認められる三井住友銀行の預金口座については,会計帳票の作成の委託を受けていた税理士事務所が作成した(乙ソ11)平成21年6月末日時点での合計残高試算表(甲ク9)の貸借対照表に同日時点で存在するはずの65万円余りが計上されておらず(前記認定事実(65)),当該口座の存在自体が税理士事務所から隠蔽されていたことがうかがわれること,⑤同口座からの出金額は,被告Y4により作成された,AがBに三井住友銀行のMCIの預金口座への入金額の振り分けのメモ(甲共20)記載の合計額と概ね一致しており,同メモは実際に行われた出金と振り分けを概ね正しく記載していると認められるところ,これによれば,投資家らからの出資金をMCIの用やAの用に何ら区別なく用いていることがうかがわれ,ここから引き出した現金を三菱東京UFJ銀行のMCIの経費等をまかなっている預金口座等に入金していた旨の被告Y5の供述も事実と認められること(甲共39,甲共75,被告Y5本人),⑥MCIにおいては,各ファンドごとの収支や残高を的確に示す貸借対照表等の会計書類も作成されていなかったこと(前記認定事実(13)),⑦MCIの配当は,実際の収支にかかわらずAが配当率を決めることにより行っていたこと(前記認定事実(19)),⑧後述するとおり,グローパートナーとの間で取引を装ってAにMCIが出資を受けた資金が流れる態勢が作られていたと認められること,⑨破産管財人の調査によっても,FXファンドへの投資名下に受け入れた出資金について,相当の額をFX投資以外の用途に用いたことが判明していること(乙ク16),⑩金融庁の検査においても分別保管されていなかったことが判明していること(甲共11)等の点からすると,MCIにおいては,設立当初から出資金を分別保管する態勢はなかったものと認められる。
4  MCIにおける運用財産の社外流出の有無
この点,①前記のとおり,MCIの三井住友銀行の預金口座からの出金の振り分けは,概ね被告Y4の作成したメモのとおりであると認められるところ,これにはMCIの海外におけるFX取引口座への送金の記載はない一方,Aを介して同人,被告Y9,被告Y7,ACP,JHLへ資金が流れることが記載されているところ,このうちAや被告Y9(甲共27),被告Y7(甲キ3の1ないし甲キ3の4,乙ソ10)への貸付に利息が付された形跡がなく,到底,投資資金の運用とはいえないことからこれらは社外流出と言わざるを得ない。また,②MCIからACPへのプロジェクトファイナンス名下の貸付は,基本契約となる契約(乙イ2の1等)では月利1%の貸付だったはずであるのに,個別の金銭借用証書(甲ケ3の1ないし甲ケ3の22)では年利5%とされている上,赤字で推移していたフリーペーパー事業が各ファンドの運用期間内に毎月,FXファンドの配当につながるほどの利益を上げる見通しも著しく乏しい状況で(MCIはACPの株式を取得していないから未公開株の公開にともなう利益といった収益は想定されていない。),毎月の配当を予定していたFXファンドへの投資金の運用としては全く想定されていない運用であり,銀行預金に準ずるような安全性の高さもなく,これも社外流出と言わざるを得ない。加えて,③MCIからJHLへの貸付も,事業計画及びこれによるMCIへの利益配分予定が明らかでない(JHLについてもMCIは株式を取得していないから未公開株の公開に伴う利益といった収益は想定されていない。)。被告Y3は,漢方財団の買収によりバイオや農業,化学の専門家等のそうそうたる面々とのつながりができ,厚生労働省へのパイプができる,これとJHL独自の農法による農業で大きな利益が期待できる旨供述するが,比較的短期の運用期間で,毎月配当できるだけの利益をあげることを前提とした各ファンドの運用としては全く想定されていないというべきで,銀行預金に準ずるような安全性の高さもなく,これも社外流出と言わざるを得ない。さらに,④Aへ回った資金のうち,一部はAのグローパートナーへの貸金債権の譲渡代金の支払名下に移転したことがうかがわれるが,グローパートナーは著しい債務超過でおよそグローパートナーへの債権に経済的価値があるとは考えられず,MCIの破産管財人が見抜いたとおり,実際にはAへの社外流出を法的な根拠のあるものと装うための口実に過ぎないと見るべきである。この他,⑤投資家らへの配当も実際には利益があがっていないのに行われた蛸足配当であり,社外流出の一種というべきである。以上に加え,⑥MCIの会計帳簿が適切に記帳されていなかったために的確な認定は困難であるとしても,投資家らからの資金のうち,一部しかFX取引により運用されていなかったにもかかわらず,多額の欠損が出ていた結果に鑑みれば,これら資金が出資された趣旨に反して相当額が社外流出したものと認められる。
以上によれば,MCIからの運用資金の社外流出の事実が認められる。
そして,これらは,次々にFXファンドへの出資を募集して蛸足配当をするといった不正流出そのものであるとか,いずれも原告がFXファンドに出資した趣旨に反した運用であるといった不正流出と認められるものばかりで,投資家の1人であった原告との関係でも不法行為を構成し得る。
これについて,①AはMCIを実質的に支配しており,資金繰表によりMCIの国内における入金状況を把握する一方(前記認定事実(15)),FX取引を担当させるコンピュータソフトウェアの選定に当たり実際の運用状況や運用成績を把握しており(前記認定事実(9),(39)),蛸足配当となることを承知の上で,配当率を実際の運用成績やMCIの財務状態に関わりなく定めていたと認められること(前記認定事実(4),(18),(19)),②AはMCIの資金流出先のACPを実質的に支配していた上(前記認定事実(22)),ACPが貸金債権を有していたグローパートナーの元代表取締役として同貸金債権が実質的には無価値であることを承知していたことから,ACPがMCIの投資資金の支出先として適切でないことを十分に承知していたと認められること,③MCI,ACP,JHLを含むハッピーライフグループの重要な事項についての決裁権を有し(前記認定事実(3)),JHLがMCIの投資資金の支出先として適切でないことを十分に承知していたと認められること等からすると,少なくともAは不法行為責任を負うというべきである。
5  MCIにおける運用財産の不正流出に対する各被告の責任原因の有無
(1)被告Y1について
ア 不正流出に関する共同不法行為責任について
被告Y1が不正流出に関する共同不法行為責任を負うには,故意又は過失が必要となり,①MCIからの資金流出の事実,並びに②MCIからの資金流出が不正であることについての認識ないし認識し得べきことが必要となる。後者②は,不正であることを基礎付ける事実,すなわち,MCIからの資金流出が原告の出資したFXファンド等の各ファンドの出資の趣旨に反し,これら出資金を原資としていることについての認識ないし認識し得べきことが認められるかにかかってくる。
そこで検討するに,被告Y1は,コンピュータ内の経理帳簿を閲覧できたのであり(前記認定事実(17)),MCIの経理を担当していた被告Y4にグローパートナーの債権者への償還表を作成するよう依頼する等(前記認定事実(58)),Dが述べるように(前記認定事実(18))MCIの金銭の出入りを把握していた可能性はある。
しかしながら,仮に被告Y1がMCIの金銭の出入りを把握していたとしても,被告Y1がMCIの募集していたFXファンド等の各ファンドの内容を把握していたことを認めるに足りる証拠はなく,MCIからの資金流出が原告の出資したFXファンド等の各ファンドの出資の趣旨に反していることについて認識し,又は認識し得べき状況であったと断じることは困難で,これに関する原告の主張は採用できない。
イ MCIの事実上の取締役としての責任について
MCIは取締役会設置会社であるところ(甲共1),取締役会設置会社の取締役は原則として業務執行権限を有さず(会社法363条1項),中心的な業務は,業務執行の決定や代表取締役の業務執行の監督である(同法362条1項参照)。
原告は,被告Y1が被告Y4や被告Y5をしてMCIの資金を不正に流出させていた,MCIのオーナーとも言うべきAとの結びつきが強いナンバー2であることから,被告Y1はMCIの事実上の取締役である旨主張するが,これらは業務執行の決定や代表取締役の業務執行の監督等の取締役会設置会社の取締役の業務とは言えず,原告の主張を前提としても被告Y1をMCIの事実上の取締役ということはできない。
原告が被告Y1を事実上の代表取締役と主張する趣旨であっても,MCIにおいては登記上の代表取締役Bも相当,MCIの業務執行に関与していた他(甲共71等,証人B),前記のとおりAが実質的にMCIを支配していたことに照らすと,採用できない。
ウ JHLの取締役としての賠償責任
JHLやJHLの取締役としての被告Y1の側において,MCIからの資金が不正なものであると認識し,又は認識し得べきであったというには,不正であることを基礎付ける事実,すなわち,MCIからの資金流出が原告の出資したFXファンド等の各ファンドの出資の趣旨に反していることについての認識ないし認識し得べきことが必要となる。
しかしながら,JHL社内においてはもちろん,被告Y1においても,かかる認識や認識し得べき事情は認められないのは前記アと同様である。
また,原告は,被告Y1がJHLの取締役としての任務を懈怠し,JHLの財産を社外に流出させ,結果として原告からJHLに対する損害賠償請求を不可能ならしめた旨も主張するが,上記のとおり,原告からJHLに対する損害賠償請求権自体が認められない。
以上によれば,被告Y1がJHLの取締役として賠償責任を負う旨の原告の主張も採用できない。
(2)被告Y2について
ア 不正流出に関する共同不法行為責任について
被告Y2が不正流出に関する共同不法行為責任を負うには,故意又は過失が必要となり,①MCIからの資金流出の事実,並びに②MCIからの資金流出が不正であることについての認識ないし認識し得べきことが必要となる。後者②は,不正であることを基礎付ける事実,すなわち,MCIからの資金流出が原告の出資したFXファンド等の各ファンドの出資の趣旨に反し,これら出資金を原資としていることについての認識ないし認識し得べきことが認められるかにかかってくる。
そこで検討するに,被告Y2は,MCIの財務状況を知り得る立場になく,MCIからの資金流出の全体像を知り得る立場になかった。被告Y2が一部の資金流出を認識しており,MCIの広報を担当し,MCIの販売するFXファンド等の商品について一定の知識を有していたと認められるにしても(被告Y2本人),MCIの財務状況を知り,又は知り得べき地位や状況にあったことを証拠上認めることはできず,MCIの資金流出が各ファンドの出資金を原資とした不正なものであることについて,認識し又は認識し得べきであったと認めることはできない。
原告は,被告Y2が個人として,又はその後,自身が代表を務める株式会社クリエイティブ名義でMCIの広報等に関するコンサルタント契約に基づきコンサルタント料を受け取ったことを不正流出であると主張するが,被告Y2がMCIの代表者であったBの記者会見等のイベント時にサポートを行っていたことからすると,実態を欠いた契約ということもできないし,その対価が不相当に高額であることを認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,被告Y2が不正流出に関する共同不法行為責任を負う旨の原告の主張は採用できない。
イ ACPの事実上の取締役としての責任について
被告Y2は,ACPの「執行役社長」ないし「執行役員社長」の肩書きの記載された名刺を使用しており(前記前提事実(6)),事実上の代表取締役と言う余地はある。
しかしながら,ACPや被告Y2において,MCIの財務状況を知り得る状況であったことは認められず,同社からの送金の原資がFXファンド等の投資家らからの資金であったことを認識し得る状況であったとは認められない。確かに,ACPは会社としてMCIから経理事務等の業務委託を受けていたが(前記認定事実(29)),実務を担当していた被告Y4や被告Y5が作成していた資金繰表等の帳票は海外のFX取引口座の残高を反映していないもので(前記認定事実(13)),MCIの全容を明らかにするものとは言えず,ACPが会社としてMCIの財務状況を知り得る状況であり,ひいてはMCIからの資金が不正なものであったと知り得る状況であったとは認められない。
さらに,被告Y2において,MCIからACPへの資金移動の全てを把握していたと認めるに足りる証拠もない。
これを前提とすると,ACPが原告に対する損害賠償責任を負うことを前提として,被告Y2がACPの事実上の取締役としてACPの財産を流出させたことにつき賠償責任を負う旨の原告の主張も採用できない。
以上によれば,被告Y2がACPの事実上の取締役としての賠償責任を負う旨の原告の主張は採用できない。
(3)被告Y3について
ア 不正流出に関する共同不法行為責任について
被告Y3が不正流出に関する共同不法行為責任を負うには,故意又は過失が必要となり,①MCIからの資金流出の事実,並びに②MCIからの資金流出が不正であることについての認識ないし認識し得べきことが必要となる。後者②は,不正であることを基礎付ける事実,すなわち,MCIからの資金流出が原告の出資したFXファンド等の各ファンドの出資の趣旨に反し,これら出資金を原資としていることについての認識ないし認識し得べきことが認められるかにかかってくる。
そこで検討するに,被告Y3は,MCIの財務状況を知り得る立場になく,MCIからの資金流出の全体像を知り得る立場になかった。そうすると,MCIからJHLへの資金移動は,一応,融資の形式をとっており外形上の法的根拠は存するので,被告Y3が正当な取引であるとの認識を有していた可能性は否定できない。他方,被告Y3において,これがMCIの投資家らからの資金を不正に流用したものであるとか,MCIの財産状況を危うくするような資金移動であることを認識するべくもなく,故意や過失を認めることは困難である。
また,被告Y3がJHLの農業関連の事業をMCIの宣伝に利用させたとしても,被告Y3がMCIにおいて詐欺的なFXファンド等の募集が行われていたことを認識し,または認識し得べきであったことを認めるに足りる証拠はないから,同様に故意や過失を認めることが困難である。
さらに,MCIからJHLに移動した資金を流失させたとの点についても,そもそもこれが原告との関係で不法行為となるのは,原告がJHLに対し,損害賠償債権を有していることが前提となる。そこで検討するに,JHLが会社としてMCIからの資金の貸付等の資金移動について,これが詐欺的なFXファンドの募集により集められた資金であることや,FXファンド等のファンド投資の趣旨から著しく外れた運用であることについて認識し,又は認識し得べきであったことを認めるに足りる証拠はなく,原告はJHLに対する損害賠償債権を有さない。
以上によれば,被告Y3が不正流出に関する共同不法行為責任を負うことはない。
イ JHLの代表取締役としての賠償責任
前記のとおり,被告Y3においては,MCIからの資金がMCIの投資家らからの資金を不正に流用したものであるとか,MCIの財産状況を危うくするような資金移動であることを認識するべくもないことからすると,MCIからの資金を受け入れたことに関して,被告Y3のJHLの代表取締役としての任務懈怠に係る損害賠償責任は認められない。
また,JHLが原告に対して損害賠償責任を負わないことからすると,JHLの資金を流失させたことに係る被告Y3のJHLの取締役としての損害賠償責任は,その前提を欠く。
以上によれば,被告Y3のJHLの代表取締役としての損害賠償責任も認められない。
(4)被告Y4について
確かに,被告Y4はMCIの資金移動の実務担当者であり,MCIの資金の移動状況については把握し得る立場にあった。
しかしながら,被告Y4においては,FXファンド等の運用状況を把握していたわけではなく,海外に設けられたFX取引口座の状況について把握していたわけでもなく,ひいては最終的なMCIの収支状況を把握していたわけでもない(前記認定事実(13))。そうすると,MCIからの資金の移動を認識したとしても,これが投資家らからの出資金を,その趣旨に著しく反する使途で流出させるものであるか,あるいはMCIの財産状況そのものを悪化させるようなものであるか,さらには何ら法的根拠のない支出であるのか等について直ちに認識できたとはいえない。また,金融商品取引業に関する専門知識を有していた形跡はなく,MCI社内において,金融商品取引法上の規制に対応すべく態勢を整備したり,態勢の運用を監督したりする地位にもなかったことからすると,各資金移動が不正なものである事実を積極的に探知すべきものであったということも困難である。
以上によれば,被告Y4には,故意はもちろん過失を認めることも困難で,不正流出に関する不法行為責任は認められない。
(5)被告Y5について
確かに,被告Y5は,MCIの資金移動の実務担当者であり,MCIの資金の移動状況はある程度把握できる立場にあった。
しかしながら,被告Y5においては,FXファンド等の運用状況を把握していたわけではなく,海外に設けられたFX取引口座の状況について把握していたわけでもなく,ひいては最終的なMCIの収支状況を把握していたわけでもない(前記認定事実(13))。そうすると,MCIからの資金の移動を認識したとしても,これが投資家らからの出資金を,その趣旨に著しく反する使途で流出させるものであるか,あるいはMCIの財産状況そのものを悪化させるようなものであるか,さらには何ら法的根拠のない支出であるのか等について直ちに認識できたとはいえない。むしろ,自身の弟に対し,MCIのFXファンドへの出資を勧め,実際に契約を締結させるに至っていることからすると(前記認定事実(60)),MCIのFXファンドの運用はそれなりに好調であると誤信していた形跡すらあると言うべきである。また,金融商品取引業に関する専門知識を有していた形跡はなく,MCI社内において,金融商品取引法上の規制に対応すべく態勢を整備したり,態勢の運用を監督したりする地位にもなかったことからすると,各資金移動が不正なものである事実を積極的に探知すべきものであったということも困難である。
以上によれば,被告Y5には,故意はもちろん過失を認めることも困難で,不正流出に関する不法行為責任は認められない。
(6)被告Y6について
被告Y6は,FXファンドの投資資金の運用をコンピュータソフトウェアによる自動売買により行う運用担当者であり,運用実績を参照してどのソフトウェアに自動売買を行わせるかを選択する者の1人であったことからすると(前記認定事実(9)),MCIにおけるFXファンドの運用状況を十分に把握していたものと認められる。
他方,FXファンドの募集条件やその説明,実際にどのくらい出資があったのかを把握していたことを認めるに足りる証拠はない。原告は,被告Y6が平成21年夏ころ,MCIの運転資金が苦しくなってきたのでもっと出資を集めろと指示した旨主張するが,これを裏付ける証拠はない。また,被告Y6がA所有の不動産に根抵当権を設定したこと自体はAの資産隠しへの協力であるとの疑念を払拭できないが,これから直ちにAによるMCIを舞台とした詐欺的な投資の募集と資金の流失の全体像を被告Y6が把握していたとすることも困難である。そうすると,募集条件やその説明が自身の把握する運用の実態に反するものであったのか,配当が蛸足配当なのか等について,これを認識し,又は認識し得べきであったと認めることは困難である。
FX自動売買システムをMCIに持ち込んだことについても,実際にFX口座を設けて取引を行っており,それなりに利ざやを稼ごうとして一時的には高い利益を上げたこともあることからすると(前記認定事実(8)),MCIを舞台としたAの詐欺の道具として導入したとまで言うことは困難である。
以上によれば,被告Y6に不正流出に関する不法行為責任は認められない。
(7)被告Y7について
被告Y7は,MCIにおいては部外者であり,MCIがどのような約定の下で投資資金を集めているのか,MCIの内部においてどのように投資された資金が管理されているか等を把握し得る立場になかったことからすると,自身が受けた資金が不正に支出されていたものであるかを知り得る立場になかったというべきである。
以上によれば,被告Y7に不正流出に関する不法行為責任は認められない。
(8)被告Y8について
ア 不正流出に関する共同不法行為責任について
被告Y8が不正流出に関する共同不法行為責任を負うには,故意又は過失が必要となり,①MCIからの資金流出の事実,並びに②MCIからの資金流出が不正であることについての認識ないし認識し得べきことが必要となる。後者②は,不正であることを基礎付ける事実,すなわち,MCIからの資金流出が原告の出資したFXファンド等の各ファンドの出資の趣旨に反し,これら出資金を原資としていることについての認識ないし認識し得べきことが認められるかにかかってくる。
そこで検討するに,被告Y8は,MCIの財務状況を知り得る立場になく,MCIからの資金流出の全体像を知り得る立場になかった。被告Y8が一部の資金流出を認識しており(前記認定事実(42)),ACPの発行するフリーペーパーの製作の際にMCIのFXファンドに関する広告やこれに類する記事を目にして一定の知識を有していた可能性はあるにしても(前記認定事実(37)),MCIの財務状況を知り,又は知り得べき地位や状況にあったことを証拠上認めることはできず,MCIの資金流出が各ファンドの出資金を原資とした不正なものであることについて,認識し又は認識し得べきであったと認めることはできない。
イ ACPの代表取締役としての賠償責任について
ACPや被告Y8において,MCIの財務状況を知り得る状況であったことは認められず,同社からの送金の原資がFXファンド等の投資家らからの資金であったことを認識し得る状況であったとは認められない。確かに,ACPは会社としてMCIから経理事務等の業務委託を受けていたが(前記認定事実(29)),実務を担当していた被告Y4や被告Y5が作成していた資金繰表等の帳票は海外のFX取引口座の残高を反映していないもので(前記認定事実(13)),MCIの全容を明らかにするものとは言えず,ACPが会社としてMCIの財務状況を知り得る状況であり,ひいてはMCIからの資金が不正なものであったと知り得る状況であったとは認められない。また,ACPとMCIとの間で取り交わされた金銭借用証書は,MCIからACPにプロジェクトファイナンス名下になされた貸付金の表(乙イ2の3等)と対応しないものがあるが(前記認定事実(42)),貸付金の総額は金銭借用証書記載の貸付額の合計を大幅に上回っており,記載の正確さに疑義はあるが,直ちに実態のないものとまで断ずることはできない。
さらに,被告Y8において,MCIからACPへの資金移動の全てを把握していたと認めるに足りる証拠もない。
これを前提とすると,ACPが原告に対する損害賠償責任を負うことを前提として,被告Y8がACPの事実上の取締役としてACPの財産を流出させたことにつき賠償責任を負う旨の原告の主張も採用できない。
以上によれば,被告Y8がACPの代表取締役としての賠償責任を負う旨の原告の主張は採用できない。
(9)被告Y9について
ア MCIの監査役としての賠償責任について
被告Y9は,平成21年4月13日,MCIの監査役として登記されているところ(前記認定事実(53)),これから間をおかず同月15日に被告Y9がAから無利息で貸付を受けていることからすると(前記認定事実(54)),遅くとも同月13日までに被告Y9は実際にMCIの監査役に就任したものと認められる。
監査役,殊に金融商品取引業として登録された会社の監査役は,金融商品取引法の下で,顧客に対し誠実に業務を行う義務を課され(金融商品取引法36条1項。なお,同条項所定の「役員」に監査役が含まれることにつき同法21条1項4号),同法29条の2第1項3号,8号及び金融商品取引業等に関する内閣府令9条2号イでは,金融商品取引業の登録の際,役員の氏名の申請,役員の履歴書の提出が求められており,金融商品取引法29条の4第1項1号ニでは,「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない」場合に登録が拒否されると定められていることからしても,監査役として積極的に取締役の職務執行を監査する義務を負っており,その一環として,①顧客の出資した資金の分別管理態勢が確立されているか監査したり,②運用資金が社外流出されていないか監査したり,③虚偽の運用成績を報告していないか監査する義務を負っていたというべきである。
しかるに,被告Y9は,漫然とBらに対し監査はどのように行うのかを尋ねた程度であるというのであるから,監査役としての任務懈怠の事実は認められる。ただ,これが直ちに損害賠償責任に結びつくかについては,相当因果関係の検討も要するので後述する。
イ JHLの取締役としての賠償責任について
前記のとおり,JHL自体が原告に対して損害賠償責任を負わない以上,JHLからの資産流失についての任務懈怠の有無にかかわらず,被告Y9がJHLの取締役としての責任を負うことはない。
6  原告に対する欺罔行為の有無
原告が平成20年12月6日にHから受けたFXファンドに関する説明は,前記認定事実(46)のとおりであるところ,①既に同月時点でMCIのFX取引はプラスになっていなかったこと(被告Y6),②MCIは,当初から運転資金を欠いた赤字状態で出発し,レップに多額の報酬を支払ったり,グローパートナーや,ACP,JHL,被告Y2等に,実態の有無は別にして多額の報酬を支払う契約を締結し,これらに基づき支払ったりしており,MCIへの投資自体が高いリスクを伴うもので,損失リスクが元本の15%とは言えないこと,③MCIは,第二種金融商品取引業の登録を受けた者が投資家らの資金の安全を確保するための基本的義務である分別管理義務も果たしておらず,到底,適時適正な運用を行っているとは言えなかったことからすると,虚偽の説明であり,欺罔行為というべきである。
しかるに原告は多額の資金をMCIのFXファンドに出資しており,原告はHの説明を真実と誤信して第1契約を締結し,その後,上限の利率の配当を得たことから引き続きHの説明を真実と誤信して第2契約を締結したものと認められる。
以下の点からすると,これら欺罔行為については,少なくともAが不法行為責任を負うべきことは明らかである。すなわち,①AはMCIを実質的に支配しており,資金繰表によりMCIの国内における入金状況を把握する一方(前記認定事実(15)),FX取引を担当させるコンピュータソフトウェアの選定に当たり実際の運用状況や運用成績を把握しており(前記認定事実(9),(39)),蛸足配当となることを承知の上で,配当率を実際の運用成績やMCIの財務状態に関わりなく定めていたと認められること(前記認定事実(4),(18),(19)),②AはMCIの資金流出先のACPを実質的に支配していた上(前記認定事実(22)),ACPが貸金債権を有していたグローパートナーの元代表取締役として同貸金債権が実質的には無価値であることを承知していたことから,ACPがMCIの投資資金の支出先として適切でないことを十分に承知していたと認められること,③MCI,ACP,JHLを含むハッピーライフグループの重要な事項についての決裁権を有し(前記認定事実(3)),JHLがMCIの投資資金の支出先として適切でないことを十分に承知していたと認められること,④設立時の資本金も増資時の資本金も,いずれもAが引き受けており,MCIが当初から運転資金を欠いた赤字会社として出発していることを十分承知していたと認められること(前記認定事実(6))等によれば,Aは不法行為責任を負うべきである。
7  原告に対する欺罔行為に関する各被告の責任原因の有無
(1)被告Y1について
被告Y1において,MCIのFXファンド募集条件やその説明内容が実際の運用実態と異なることを認識し,又は認識し得べきことを認めるに足りる証拠はなく,被告Y1が原告に対する欺罔行為について共同不法行為責任を負うことはない。
(2)被告Y2について
被告Y2において,MCIのFXファンド募集条件やその説明内容が実際の運用実態と異なることを認識し,又は認識し得べきことを認めるに足りる証拠はなく,被告Y2が原告に対する欺罔行為について共同不法行為責任を負うことはない。
(3)被告Y3について
被告Y3において,MCIのFXファンド募集条件やその説明内容が実際の運用実態と異なることを認識し,又は認識し得べきことを認めるに足りる証拠はなく,被告Y3が原告に対する欺罔行為について共同不法行為責任を負うことはない。
(4)被告Y4について
被告Y4において,MCIのFXファンド募集条件やその説明内容が実際の運用実態と異なることを認識し,又は認識し得べきことを認めるに足りる証拠はなく,被告Y4が原告に対する欺罔行為について共同不法行為責任を負うことはない。
原告は,被告Y4とAとがグローパートナー時代からの付き合いである旨指摘するが,グローパートナーにおいて投資詐欺的な行為が行われていたことを認定するに足りる証拠はなく,被告Y4とAが言わば詐欺仲間といった関係にあるとまで認定することはできず,グローパートナー時代から付き合いがあったとの事実は,単に付き合いが長かったことを示すに留まり,これを以て被告Y4がAと共同不法行為責任を負うべきであるということはできない。
(5)被告Y5について
被告Y5において,MCIのFXファンド募集条件やその説明内容が実際の運用実態と異なることを認識し,又は認識し得べきことを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,弟にMCIのFXファンドへの投資を勧めていたほどで(前記認定事実(60)),かかる認識はなかったと認められることからすると,被告Y5が原告に対する欺罔行為について共同不法行為責任を負うことはない。
原告は,被告Y5とAとがグローパートナー時代からの付き合いである旨指摘するが,グローパートナーにおいて投資詐欺的な行為が行われていたことを認定するに足りる証拠はなく,被告Y5とAが言わば詐欺仲間といった関係にあるとまで認定することはできず,グローパートナー時代から付き合いがあったとの事実は,単に付き合いが長かったことを示すに留まり,これを以て被告Y5がAと共同不法行為責任を負うべきであるということはできない。
(6)被告Y6について
被告Y6において,MCIのFXファンド募集条件やその説明内容が実際の運用実態と異なることを認識し,又は認識し得べきことを認めるに足りる証拠はなく,被告Y6が原告に対する欺罔行為について共同不法行為責任を負うことはない。
原告は,被告Y6とAとが長い付き合いである旨指摘するが,Aが常習的に詐欺を行っていたとまで認定するに足りる証拠はなく,被告Y6とAが言わば詐欺仲間といった関係にあるとまで認定することはできないから,これを以て被告Y5がAと共同不法行為責任を負うべきであるということはできない。
(7)被告Y8について
被告Y8において,MCIのFXファンド募集条件やその説明内容が実際の運用実態と異なることを認識し,又は認識し得べきことを認めるに足りる証拠はなく,被告Y8が原告に対する欺罔行為について共同不法行為責任を負うことはない。
原告は,被告Y8とAとがグローパートナー時代からの付き合いである旨指摘するが,グローパートナーにおいて投資詐欺的な行為が行われていたことを認定するに足りる証拠はなく,被告Y8とAが言わば詐欺仲間といった関係にあるとまで認定することはできず,グローパートナー時代から付き合いがあったとの事実は,単に付き合いが長かったことを示すに留まり,これを以て被告Y8がAと共同不法行為責任を負うべきであるということはできない。
8  被告Y9の行為と原告の損害との間の相当因果関係の有無
被告Y9のMCIの監査役としての任務懈怠と原告が損害として主張する第1契約及び第2契約に係る出資金及び振込手数料相当の損害との相当因果関係を検討する。
MCIは設立当初から運転資金を欠いていて赤字状態で出発した会社であった上(前記認定事実(6)),Aは既に平成20年10月から同年11月ころまでの間にMCIのFX取引による運用益がなかなかあがらないことを認識していたことや(前記認定事実(39)),平成21年5月にはBがMCIの資金繰りの心配をしだし(甲共71),同年6月には資金不足が生じ(前記認定事実(62)),同月末日時点での合計残高試算表上での当期純損失が11億円余りとなる状態であり(前記認定事実(65)),結局,同年8月に自己破産に至ったことに照らすと(前記前提事実(2)),被告Y9がMCIの監査役に就任した時点では,いかに被告Y9が監査役としての職務を励行したとしても最早,MCIの財務状態を好転させ,原告の出資金等の損害を回復することは不可能であったというべきである。
また,当時,MCIからACPやJHL,Aに流出した資産を回収する可能性があったことを認めるに足る証拠はなく,破産管財人がこれらのうちAを除く流出先からの回収を断念するに至っていることや(前記認定事実(71)),Aからの回収は原告自身も行えていないことからすると(弁論の全趣旨),被告Y9がMCIの監査役に就任した時点では,MCIの財務状態の悪化は既に決定的で原告がMCIから損害賠償を受ける見込みはなく,A等の資金流出先から資金を回収することが可能であったかについても,相当に疑問が残る。
以上によれば,被告Y9のMCIの監査役としての任務懈怠と原告の損害との間の相当因果関係は認められない。
9  まとめ
以上で検討したところによれば,その余の点を検討するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないので棄却することとして主文のとおり判決する。
(裁判官 足立堅太)

 

〈以下省略〉

 

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