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「営業会社 成功報酬」に関する裁判例(14)平成30年 8月22日 東京高裁 平30(ネ)1929号 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件

「営業会社 成功報酬」に関する裁判例(14)平成30年 8月22日 東京高裁 平30(ネ)1929号 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件

裁判年月日  平成30年 8月22日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(ネ)1929号・平30(ネ)1946号
事件名  損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
裁判結果  控訴棄却、拡張請求認容  文献番号  2018WLJPCA08226003

事案の概要
◇被控訴人会社が、控訴人Y2は訴外Cと共謀して、訴外会社発行に係る転換社債型新株予約権付社債の引受名目で、被控訴人会社から訴外会社に1億円を送金させる方法で騙取し、また、譲渡株式の代金名目で、訴外Cが被控訴人会社に無断で控訴人Y1社の指定する会社に1億5000万円を送金して奪取したなどと主張して、控訴人Y2に対しては共同不法行為に基づき、控訴人Y1社に対しては使用者責任に基づき、2億5000万円の内金1億円等の連帯支払を求めたところ、原審が請求を全部認容したことから、控訴人らが控訴し、被控訴人会社が附帯控訴して請求を拡張した事案

裁判経過
第一審 平成30年 3月 7日 東京地裁 判決 平28(ワ)23315号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成30年 8月22日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(ネ)1929号・平30(ネ)1946号
事件名  損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
裁判結果  控訴棄却、拡張請求認容  文献番号  2018WLJPCA08226003

平成30年(ネ)第1929号,同第1946号
損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件
(原審 東京地方裁判所平成28年(ワ)第23315号)

東京都中央区〈以下省略〉
控訴人兼附帯被控訴人 株式会社Y1(以下「控訴人会社」という。)
同代表者代表取締役 B
東京都港区〈以下省略〉
控訴人兼附帯被控訴人 Y2(以下「控訴人Y2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 佐川明生
同 佐藤未央
東京都中央区〈以下省略〉
被控訴人兼附帯控訴人 株式会社X(以下「被控訴人」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 有賀大輔
同 藤田武俊

 

 

主文

1  控訴人らの控訴を棄却する。
2  被控訴人の附帯控訴に基づき,控訴人らは,被控訴人に対し,連帯して1億5000万円及びうち5000万円に対する平成27年4月21日から,うち1億円に対する同年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  控訴費用及び附帯控訴費用は控訴人らの負担とする。
4  この判決の2項は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

(前注)略称は,原判決の例による。
第1  当事者の求めた裁判
(控訴の趣旨)
1  原判決を取り消す。
2  被控訴人の請求を棄却する。
(附帯控訴の趣旨)
主文2項と同旨(被控訴人は,当審において,請求をこのように拡張した。)
第2  事案の概要
1  本件は,被控訴人が,控訴人らに対し,控訴人Y2がC(C)と共謀して,①株式会社a(a社)発行に係る転換社債型新株予約権付社債の引受名目で,被控訴人からa社に1億円を送金させる方法で騙取し,②譲渡株式の代金名目で,Cが被控訴人に無断で控訴人会社の指定する株式会社f(f社)に1億5000万円を送金して奪取したなどと主張して,控訴人Y2に対し共同不法行為に基づき,控訴人会社に対し使用者責任に基づき,2億5000万円の内金1億円及びうち5000万円に対する不法行為の日である平成27年4月21日から,うち5000万円に対する不法行為の日である同年5月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
2  原審は,被控訴人の控訴人らに対する請求を全部認容した。
これに対し,控訴人らが控訴した。被控訴人は附帯控訴し,当審において,原審における請求を主文2項のとおり拡張した。
3  前提事実は,原判決を次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2の2に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)  原判決5頁15行目の「21日」の次に「,被控訴人の預金口座から」を加える。
(2)  原判決6頁5行目の「株式」の次に「(以下「e社株式」という。)」を加える。
4  争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  争点1(本件送金1について,控訴人Y2にCとの共同不法行為が成立するか)
(被控訴人の主張)
ア 故意による不法行為
(ア) a社は,i社で51点の評価を受けておらず,第1期(平成25年6月末日締め)の経常損益が24万5351円の損失,第2期(平成26年6月末日締め)の経常損益が25万3931円の利益にすぎず,平成27年4月には事務所を閉鎖して事業を停止し,株式会社g(g社)に対する買掛金を支払えずに仮差押命令の発令を受ける状況であり,多くの負債を抱えた破産間近の会社であって,売上げや利益を見込める状態にはほど遠く,社債の償還や利息の支払を受けたり,化粧品代3000万円を支払うことができない会社であった。
しかるに,控訴人Y2は,平成27年4月8日頃,a社発行に係る転換社債型新株予約権付社債代金の名目で被控訴人の資金を奪取することを企て,Cと上記詐欺を行うことを共謀し,同月11日頃,被控訴人代表者に対し,Cを通じて,a社について,i社の評価が51点の優良企業であること,太陽光関連の販売会社で今期10億円の売上げ,来期40億円の売上げ,4億円の利益獲得を計画している会社であり,被控訴人が本件CBによって融資をすれば,3か月後の同年7月末には返済され,仮に返済が受けられなくとも社債の償還及び利息の支払が受けられるから安全であり,被控訴人の系列会社である株式会社d(d社)に化粧品3000万円の売上げが見込めるとともに宣伝効果があり,販路拡大という相乗効果が得られると述べた。
(イ) 控訴人Y2は,本件CBの発行が成立すれば2000万円の収益を得ることができたから,虚偽の事実を告げてでも本件CBの発行に関する契約を締結させる強い動機があった。
(ウ) 以上のとおり,控訴人Y2は,2000万円を獲得するために,Cと詐欺を共謀の上,被控訴人による1億円の融資の回収可能性を何ら考慮せずに虚偽の事実を申し向け,その結果,被控訴人代表者をその旨誤信させて,被控訴人に本件送金1を行わせたのであって,本件送金1について故意による共同不法行為が成立する。
イ 過失による不法行為
仮に,控訴人Y2が自らの説明が事実でないことを認識していなかったとしても,2000万円の報酬を受けながら,自らの説明の真実性,特にa社の経営状態及び財務状態について通常行うような確認・調査を行わないまま,被控訴人代表者に対し虚偽の事実を告知したことに重大な過失があるから,不法行為が成立する。
(控訴人らの主張)
ア 控訴人Y2が,被控訴人の資金を騙取することをCと共謀したこと,被控訴人に対し虚偽の説明を行ったことは否認する。
イ 控訴人Y2は,Cに対してa社の財務内容等その他の事項を伝えたとき,次のとおりこれらが真実であると信じていたから,虚偽の説明について故意も過失もない。
(ア) a社は,i社の平成27年2月6日時点の信用調査において,その信用要素別評価で「50」の評価を受けていた。一般にこの評点は中小企業であれば取引に心配のないレベルであると評価されている。控訴人Y2は,同年4月7日,Cに対し,a社について,i社51点と説明しているが,これは記憶違いによるものであるし,1点の差は客観的な評価に違いはない。また,控訴人Y2は,Cを通じてa社の決算書や試算表等の資料を被控訴人に提供したり,a社を訪れてスタッフが稼働しているのを確認しており,その他の事実についても真実と認識していたか当然のことを説明しただけであって,何ら虚偽の事実を説明したという認識はない。
(イ) 控訴人Y2は,a社から仮差押決定を受けているという報告を受けておらず,知らなかった。a社の代表取締役であったL(1審相被告L。以下「L」という。)ですらa社の経営が悪化していることを知らず,a社の実態を知るE(E),D(D)及びM(1審相被告M。以下「M」という。)が加わったソーシャルネットワーキングサービスのLINEのメッセージのやり取り(本件グループトーク)においても,経営の悪化等に関するやり取りはないのであって,控訴人Y2が虚偽の事実を説明したことはない。
(ウ) 化粧品3000万円分はa社に実際に納品されて,d社に3000万円の売上げが計上されているのであって,その後の控訴人Y2のあずかり知らない事情により代金が支払われなかったにすぎず,控訴人Y2の説明は虚偽ではない。また,化粧品の販売については,売上げの計上という目的に加えて,被控訴人のビジネスが,主婦層から実際に化粧品の販売をしていないにもかかわらず化粧品の販売名目で資金調達をするという,いわゆるネズミ講に近いネットワークビジネス(連鎖販売)を行っていたことを捉えて提案したものである。むしろ,被控訴人代表者は,化粧品の3000万円の売上げが計上されることに魅力を感じ,積極的に本件CBの引受をCに指示していたのが実態である。
(エ) 被控訴人は,本件CB発行に当たり,出資の際に通常行うはずの財務面からの検討を全く行わなかったことから,その回収が不能になったにすぎず,被控訴人と本件CBの発行に関して何ら契約関係になく,しかも被控訴人から報酬も受領していない控訴人Y2が,被控訴人に対し,a社の財務内容について責任を負うものではない。むしろ,控訴人Y2は,本件CBの仲介役であるF(F)とともに,被控訴人の社債権の保全を図るための措置をa社に強く求めていた。
ウ 控訴人Y2がCと共謀した事実はない。
(ア) 控訴人Y2は,本件CB発行の直近の平成27年2月頃,被控訴人が控訴人会社に出資することをきっかけにCと面識を持っただけであるところ,控訴人Y2とCとの間のチャットワーク(甲9)においても,被控訴人からの騙取等の共謀において当然あるはずの金銭の分配についてのやり取りが一切されていないこと,控訴人Y2はCに1円も支払っていないことからすれば,Cとの共謀がなかったことは明らかである。
(イ) 控訴人会社がa社から受領した2000万円は,a社と控訴人会社との間のコンサルティング契約に基づく本件CBの発行に対する報酬であるし,控訴人Y2が本件CBの発行に関する登記書類を作成することも,a社と控訴人会社との間のコンサルティング契約に基づくものであり,共謀の事実を推認するものではない。
エ 本件CBは有効に発行され,登記も完了しており,被控訴人はその意思決定に基づいてこれを引き受けているのであり,引受及び発行に瑕疵はない。被控訴人は,結果的に失敗に終わった本件CBの引受けの損害の責任を控訴人らに転嫁しようとしているにすぎない。
(2)  争点2(本件送金2について,控訴人Y2にCとの共同不法行為が成立するか)
(被控訴人の主張)
ア 控訴人Y2は,平成27年4月頃,被控訴人代表者に対し,被控訴人が控訴人会社からその保有するe社株式を買い取ることで,e社の株主としてマレーシアの人脈を開拓することを提案して被控訴人代表者の承諾を得て,被控訴人からe社株式の売買代金名目で1億5000万円を騙取し,又は被控訴人代表者が承諾しない場合でも,被控訴人代表者に無断で本件譲渡契約書を作成して,同額を控訴人Y2が支配しているf社宛てに送金して奪取することを企て,Cと上記金員騙取等を共謀の上,Cにおいて被控訴人代表者に対しe社株式の購入を申し向けた。しかし,被控訴人代表者から承諾を受けられなかったことから,Cは,被控訴人代表者に無断で,本件譲渡契約書を作成した上で本件送金2を行い,もって不正に送金した。控訴人Y2とCの上記行為は,本件送金2について共同不法行為が成立する。
イ 控訴人Y2とCが上記共謀をしたことは,次の事実から明らかである。
(ア) 控訴人Y2が自ら1億5000万円という金額を提案して,Cに実体又は価値のないe社株式の本件譲渡契約書を作成させ,被控訴人の会計を担当していたCに同金額をf社宛てに振り込ませたところ,控訴人Y2は,このことについて被控訴人の許可を得なくてよいと考えていた。
(イ) 控訴人Y2とCは,平成27年4月30日,チャットにおいて,原判決別紙のとおりのやり取りをした。
ウ e社の実体は不明であり,被控訴人がe社に連絡しても何らの返信もないし,控訴人らは,e社に対し,株式を譲渡した旨の通知を全くしていないだけでなく,そもそも控訴人会社がe社株式を保有していたという明確な証拠がない。e社株式の譲渡についてCが何ら反論をしなかったことも,e社株式の譲渡名目の本件送金2が正当な取引でなかったことを裏付ける。
仮に,控訴人会社がe社株式を有していたとしても,その価値は1091万円であり,本件譲渡契約書における1億5000万円を大きく下回るものであって,e社株式を1億5000万円で譲渡すること自体が,被控訴人に少なくとも1億4000万円の損害を生じさせる行為であり,本件送金2が控訴人Y2及びCによる奪取であることは明らかである。
エ 仮に,e社株式が存在し,かつ,控訴人Y2が,被控訴人の承諾があったと誤信していたとしても,e社株式を1億5000万円で売却すれば被控訴人に1億4000万円の損害が発生することを認識していたといえ,被控訴人に対して損害を加える故意が認められる。そして,e社株式の売買契約の申込み,価格設定,同契約の締結をしている以上,控訴人Y2の行為は,Cの不法行為と客観的関連共同が認められる。
(控訴人らの主張)
ア 控訴人Y2とCとのチャットワーク(甲9)から明らかなとおり,被控訴人代表者は,平成27年4月18日,マレーシアの件を進めてほしい旨述べてe社株式の譲受けを承諾し,その後一旦は躊躇したものの,同月30日にはCからの説明を受けて納得して,被控訴人のマレーシアにおける事業について議論をし,マレーシアでの人脈作りを期待した上で本件送金2を承諾し,Cに指示したのである。
Cが被控訴人代表者に無断で1億5000万円の振込を行うのであれば,被控訴人代表者と打合せを重ねてその意思を確認する必要はなく,本件譲渡契約書のとおり同月30日に振込をしたはずであり,振込が同日から1日遅れた同年5月1日になった事実は,被控訴人代表者の承諾があったことの証左である。
イ 控訴人Y2とCが騙取を共謀していたのであれば,他人の目に触れることのないチャットワーク(甲9)において,控訴人Y2に虚偽の報告をする必要がないのであるから,Cの控訴人Y2に対する報告内容は真実といえる。したがって,控訴人Y2が,Cと共謀して本件送金2を不正に行ったとはいえない。
ウ 控訴人Y2は,Cとともにe社株式を譲渡した後も,被控訴人のために,e社の人脈等を利用して,マレーシアにおいて被控訴人が扱う化粧品等の商品の販売を拡大する方針で一致しており,真にマレーシアでの被控訴人のビジネスの展開を考えていたのであるから,被控訴人の資産の騙取を共謀するはずがない。
エ e社株式の譲受けは,被控訴人代表者自身が承諾,指示して行ったものである。被控訴人は,結果的に失敗に終わった責任を控訴人らに転嫁しようとしているにすぎない。
(3)  争点3(控訴人Y2が控訴人会社の被用者で,本件送金1及び2が控訴人会社の事業の執行に当たるか)
(被控訴人の主張)
控訴人Y2は,本件送金1及び2の当時,控訴人会社の最高経営責任者として,Cと共謀の上,経営指導・経営コンサルタント業の一環として本件送金1及び2を行ったのであるから,控訴人会社の被用者として「事業の執行」について本件送金1及び2を行ったといえ,控訴人会社は使用者責任を負う。
(控訴人会社の主張)
控訴人Y2は,控訴人会社の最高経営責任者と称して控訴人会社の業務に従事していたものの,控訴人会社の役員及び労働者ではなく,指揮命令を受けることはなく,控訴人Y2独自の判断で当該業務を遂行していたにすぎない。
したがって,控訴人Y2は控訴人会社の被用者ではないから,控訴人会社が,控訴人Y2の行為について使用者責任を負う根拠はない。
(4)  争点4(被控訴人の損害額及び因果関係)
(被控訴人の主張)
ア 被控訴人は,本件送金1により1億円を騙取されたから,本件送金1と相当因果関係にある損害が1億円を下らないことは明らかである。
イ 被控訴人は,本件送金2により1億5000万円を奪取されたから,本件送金2と相当因果関係のある損害が1億5000万円を下らないことは明らかである。仮に,e社自体が存在し,控訴人会社がe社株式を保有していたとしても,譲渡に係るe社株式が1億5000万円の価値があることは何ら反証されておらず,むしろせいぜい1091万円の価値しかないのであるから,被控訴人の損害を否定する根拠とはならない。
(控訴人らの主張)
ア 本件送金1について,被控訴人は本件CBの引受けを承諾しているし,本件CB発行は有効に行われているから,被控訴人に損害は生じていない。
イ 本件送金2について,控訴人会社は,平成26年3月11日,I(I)が保有するe社株式を譲り受け,これを保有していたのは明らかであるし,e社は,マレーシアにて登記(登録)されてホームページを開設しているなど,現在でもマレーシアにて事業を行っている実体のある会社である。そして,控訴人会社は,平成27年4月30日,被控訴人に対し,本件譲渡契約書をもって,その保有するe社株式を譲渡代金1億5000万円で譲渡し,同年5月1日,その代金が支払われたことで,e社株式の譲渡の効力は確定的に生じた。
なお,控訴人会社によるe社株式の取得金額は1091万円であるが,通常の転売ビジネスで購入希望者に取得金額を伝えることはないことからも明らかなとおり,取得価格と転売価格の差をもって損害であるとはいえない。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所は,被控訴人の請求をいずれも認容するのが相当であると判断する。その理由は,次のとおりである。
2  認定事実
上記前提事実並びに証拠(甲1ないし19,乙イ1ないし8,乙ロ1,乙ハ1(枝番を含む。),被控訴人代表者本人,控訴人Y2本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)  被控訴人とC及び控訴人らとの関係
ア 被控訴人代表者は,平成18年に被控訴人を設立し,平成22年10月頃,従兄弟から紹介されたCに被控訴人の経理処理を任せるようになった。被控訴人は,平成23年4月,Cとの間で記帳代行等の業務委託契約を締結し,被控訴人代表者が100%出資しているd社も,平成24年3月,同様の業務委託契約を締結した。Cが勤務先を退職すると,平成26年10月からd社においてCを雇い,被控訴人の経理事務に従事させていた。被控訴人代表者は,5年近くCに不正はなく,Cを仕事熱心な人物として信頼していた。
イ Cは,Kを通じて控訴人Y2と知り合い,平成27年3月頃,被控訴人代表者に対し,コンサルタントとして控訴人Y2を紹介した。被控訴人代表者は,控訴人Y2から,d社の株式の店頭公開に向けた協力等を受けることとした。また,被控訴人代表者は,控訴人会社との提携等が大きなビジネスチャンスであると考え,被控訴人は,同年3月及び同年4月,控訴人会社の発行済み株式の10%弱に相当する合計2万5000株を約2億円で取得した(乙イ1,2)。控訴人Y2とのやり取りはCが窓口となった。
ウ Cは,平成27年4月,d社の代表取締役に就任した。
(2)  a社の実態
ア a社は,平成24年9月に,Eの友人の父が営んでいた建設業を法人化するためEが出資して設立された建設会社であり,当初は,Eの友人が,その後はその母Nが代表取締役を務めていた。
イ a社の第1期(平成24年9月3日から平成25年6月30日まで)の売上高は557万4800円,経常損失は24万5351円であり,従業員の状況の申告はなく,常勤役員1名の役員報酬36万円が計上されているのみであり,同期末時点の資産の部の合計は941万5219円,負債の部の合計は166万0570円であり,短期借入金は2万2100円であった。また,a社の第2期(同年7月1日から平成26年6月30日まで)の売上高は713万0392円,経常利益は25万3931円であり,従業員の状況の申告はなく,役員報酬は計上されておらず,同期末時点の資産の部の合計は795万7609円,負債の部の合計は1529円であり,借入金は計上されていなかった。(甲2の1・2)
ウ Eは,平成26年8月頃,太陽光事業に参入しようとしていたところ,妻の友人の元夫であるDがa社に出入りするようになった。その後,Dのつながりで,F,Mなど多数の者がa社の経営に関与するようになり,同年12月,Nは代表取締役を辞任した。
エ a社は,平成26年10月頃,太陽光事業に従事する人員が約30名になり,Eの出資により資本金は3000万円になった。平成27年1月頃には,テレフォンアポインター約100名,営業職約30名,事務職約30名の合計約160名の体制となった。
オ Lは,平成27年1月にa社に入社し,法人向けの太陽光発電の営業職として勤務するようになり,同年3月,E,D及びMから就任を要請されて代表取締役に就任したものの,その後もその業務内容は従前と変わらず,a社の経営は,E,D及びMが行っていた。
カ i社の平成27年2月6日付け報告では,a社について,次のような報告がされていた(乙イ8)。
(ア) 評価は50,信用程度はD,従業員数は25名とされ,第2期末までは,外構,エクステリア工事を事業としていたが,同期末以降,業種変更があり,太陽光発電の設置工事に進出するようになった。
(イ) k銀行及びl銀行との間で銀行取引等があるものの,同日時点では借入れはなく,金融機関からの営業攻勢で,平成27年春頃までには新たな金融機関と取引を行う予定である。資金調達余力について,無借金経営であるから,公的融資制度等を利用して運転資金程度の調達は可能と判断される。
(ウ) 最近の動向と見通しについて,平成27年6月期(第3期)は,本格的に太陽光発電の販売,施工に参入し,通期売上高について,大幅増加の5億3000万円,経常利益1000万円を目標にスタートし,平成26年7月から同年9月までの累計売上高は概ね8000万円弱で推移した。今後は,テレフォンアポインターの増員等により,更なる売上げ寄与が期待されている一方,電力会社の電力買取り拒否の動きもあり,太陽光発電の販売面で懸念がある。同年12月末(上半期)までの売上高は2億7498万円,経常利益は4133万円であり,上記目標は十分にクリアできる。
キ a社は,平成27年3月11日,大阪簡易裁判所から,株式会社mを債権者,顧問契約に基づく報酬等合計37万6048円の請求権を被保全債権とする債権仮差押命令を受け,同年4月17日,東京地方裁判所から,g社のa社に対する太陽光発電製品等の売買代金債権を被保全権利とする債権仮差押命令の発令を受けた(甲3,10)。
ク a社は,平成27年5月末には事業を停止し,g社の申立てにより,同年10月2日,大阪地方裁判所から破産手続開始決定を受けた(甲4)。
(3)  控訴人らとa社との関係
ア 控訴人Y2は,知人のFからDを紹介され,a社に関与するようになった。a社は,平成27年2月頃には資金繰りが厳しくなり,控訴人Y2が中心となって,Fと相談しながらa社に資金を注入するスキームを考案した(甲11)。
イ 控訴人会社は,平成27年初頭頃までに,a社との間で,資金調達のためのコンサルタント業務を控訴人会社が行うことを内容とするコンサルタント契約を締結した。
ウ 控訴人会社とa社は,平成27年4月16日付けで,同年5月1日から,控訴人会社が,a社の発展に寄与するため,a社の経営・企画等について助言,指導を行うサービスを提供すること,月額の基本コンサルタント料が216万円であること,同コンサルタント業務においてa社に経済的入金があった場合,別途成功報酬をその都度取り決めて支払うことなどを内容とするコンサルタント業務契約書を作成した(乙イ5)。
(4)  本件CB引受けの勧誘
ア 控訴人Y2は,平成27年4月7日,Cに対し,被控訴人代表者に対し次のとおり説明して,本件CBの引受けについて被控訴人代表者の承諾を得るよう指示した(甲9)。
(ア) a社は,大阪で太陽光発電設備を電話で販売している控訴人Y2の顧問先の会社であり,i社の評価は51点で,売上げが今期10億,来期40億・利益4億の急成長している会社である。
(イ) 被控訴人がa社から転換社債型新株予約権付社債を引き受けることで,平成27年4月末か同年5月1日に1億円をa社に資金投下し,本件CBの登記をする。本件CBの償還は同年7月末を予定しているところ,本件CBは,転換社債型新株予約権付社債であるから,a社から返済がされなければ,社債を株式に転換することでa社を買収でき,それを防ぎたいa社はしっかり返済することが見込まれる。場合によっては,社債の償還までa社の口座を控訴人Y2とCで管理できる。
(ウ) 上記(イ)を前提に,d社がa社に3000万円で化粧品を売却する契約を結び,その代金は,平成27年5月末,同年6月末,同年7月末にそれぞれ1000万円を支払わせるため,d社に売上げが計上できる。
(エ) a社は,太陽光発電設備を一戸建ての家庭に対する電話販売をしているところ,契約者に対し,契約の粗品として被控訴人の化粧品をプレゼントすることで,d社としても宣伝効果がある。
イ 被控訴人代表者は,平成27年4月11日,Cから,本件CBの引受けに関して上記ア(ア)ないし(エ)の説明を聞き,Cに対し,i社等を利用してa社の財務状況等について調査するよう指示し,Cから財務状況について問題がない旨の回答を受けた。被控訴人代表者は,それ以上に自ら調査等をすることはしなかった。
ウ Cは,平成27年4月11日付けで本件CB引受契約書を作成・押印し,同月21日,本件送金1の振込手続を行った。被控訴人代表者はこれらには関与していないものの,事後的に本件CB引受契約書の作成及び本件送金1について,承諾した。
エ 被控訴人は,本件CB発行に関し,控訴人らに何らの対価も支払っておらず,また,控訴人らとの間に契約関係も存在しなかった。
(5)  本件送金1前後の控訴人Y2とCのチャットワーク上でのやり取り(甲9)
ア Cは,平成27年4月11日,控訴人Y2に対し,請求額に合わせてd社がa社に売却する商品を選定して契約書と請求書を作成すると述べ,これに対し,控訴人Y2は,その選定する商品について,動きが鈍い,売りづらい商品でよい旨回答した。
イ Cは,平成27年4月15日,控訴人Y2に対し,本件CB引受けの実行日について,同月21日とすることを被控訴人代表者に了承をとる予定であるところ,当該日付について被控訴人代表者に問題にさせない旨述べた。
ウ Cは,平成27年4月27日,控訴人Y2に対し,本件CBに関する社債償還請求書をチャットワークにアップロードする方法で送った。
(6)  控訴人Y2とa社の内部者等との本件グループトーク上でのやり取り(甲11)
ア 控訴人Y2は,平成27年4月9日,当時,本件グループトークに参加していたE及びFに対し,本件CB発行によるa社の資金調達について,次のとおり説明した。なお,被告Y2は,同日,本件CB発行に関する上記説明をする前に,重要な話であるとして,M及びLを本件グループトークから脱退させた。
(ア) 資金調達は,平成27年4月末から同年5月15日までの間に,a社の転換社債型新株予約権付社債を発行することで1億円を調達し,転換社債型新株予約権付社債については登記もする。
(イ) 資金調達先は,被告Y2の顧問先である化粧品会社である。
(ウ) 1億円の返済期限は平成27年7月末で,金利は年12%と設定し,返済ができない場合には社債が株式に転換されて,発行済株式の51%以上を化粧品会社に保有され,買収される。同月末まで,a社の銀行口座及び実印は,控訴人Y2が管理する。
(エ) a社に1億円の入金があった瞬間に,業務委託費として2000万円を控訴人会社に支払う。業務委託費についてはFと内諾済みである。また,給与として,月額200万円程度を控訴人会社に支払う必要がある。
(オ) 1億円の低金利の転換社債型新株予約権付社債の見返りとして,当該化粧品会社から3000万円の化粧品を購入することが必須の条件であり,その支払は平成27年5月末,同年6月末,同年7月末にそれぞれ1000万円ずつ行う。a社に納品される化粧品は,太陽光発電設備の販売時に粗品等でプレゼントすることで販売促進に用いるアイデアがある。
イ その後,本件グループトークでは,控訴人Y2を中心に,FやEとの間で,本件CB発行に向けた必要な手続等のやり取りがされ,平成27年4月17日には,Dが本件グループトークに参加した。
ウ Fは,平成27年4月21日,本件グループトークに,「LさんMさんEさん皆さん打ち合わせ参加します」とメッセージを送った。なお,この段階では,M及びLは,本件グループトークに参加していない。
エ Mは,平成27年4月21日正午頃,Fからの指示により,本件グループトークに招待され,参加した。
(7)  本件送金1の引き出し
ア Cは,平成27年4月21日午前10時21分,被控訴人の預金口座から,a社の預金口座に5000万円を振り込んだ(甲6の1)。L及びMは,同日,Dの指示でj銀行梅田支店に赴き,Lがa社の代表取締役としての本人確認に応じ,a社の預金口座から,a社の印鑑及び通帳を用いて,控訴人会社に対し2000万円をアレンジャー報酬名目で送金し,残りの3000万円を引き出して,これをMがその持参した鞄に入れてa社に持ち帰った。
イ Cは,控訴人会社に2000万円の入金が行われたことを確認し,同日午前11時42分,本件送金1に係る2回目の5000万円の振込みを行った(甲6の2)。L及びMは,同日,再度,上記支店に赴き,同様の方法で5000万円を引き出し,Mがこれを鞄に入れてa社に持ち帰った。a社にはD及びFがいた。Mは,この5000万円のうち2500万円を取得した。
(8)  e社株式の購入の勧誘
ア 被控訴人代表者は,平成27年4月,Cから,e社株式の購入の提案を受け,控訴人会社が株式を保有しているマレーシアの会社であるe社の代表者のIがマレーシアで広い人脈を持っているため,マレーシア市場の拡大に当たってよい案件であるという説明を受けたが,e社株式の購入は承諾しなかった。
イ 控訴人Y2は,平成27年4月23日,a社の不備への対応とe社の株式譲渡の件に使う目的で,被控訴人の記名印と実印の持参をCに求め,Cはこれに応じた。被控訴人は,遅くとも同日までに,Cに被控訴人の実印と銀行印を預け,被控訴人の実印は,本件譲渡契約書の作成がされるまではCが保管していた。(甲9)
ウ Cは,被控訴人代表者に無断で,平成27年4月30日付けで被控訴人と控訴人会社との間の本件譲渡契約書(甲7)を作成し,同年5月1日,被控訴人の預金口座から控訴人Y2が支配するf社の預金口座に1億5000万円を振り込んだ(本件送金2。甲8)。
(9)  本件送金2前後の控訴人Y2とCのやり取り(甲9)
ア Cは,控訴人Y2とCのみとのチャットワークとは別のグループチャットにより,e社株式の譲渡に関する説明を控訴人Y2から受けていたところ,平成27年4月16日,控訴人Y2から,e社株式を1億5000万円で売却する話を被控訴人代表者と詰めるよう指示を受けた。Cは,同月17日,控訴人Y2に対し,同月18日に被控訴人代表者とe社の件を詰めると説明し,同日の被控訴人代表者との打合せ後,控訴人Y2に対し,被控訴人代表者が,e社の件を進めてほしいと話していたこと,マレーシアでの人脈作りにかなり期待している様子であることを報告した。
イ 控訴人Y2は,平成27年4月28日,e社株式の譲渡について,同月29日に被控訴人代表者と打合せすることになったというCからの報告に対して,「30日の件は崩れないよう マレーシア調整しているのでお願いします 後は,得意の暴れちゃうでしょ((笑)」と述べ,これに対して,Cは,「マレーシアの件は大丈夫なように上手に話します。後は,お得意の暴れてガチ切れして退職するって叫びます(笑)」と返答し,控訴人Y2は,これに「さすがです (笑い」と応じた。
ウ Cは,平成27年4月30日未明,同月29日に予定されていた被控訴人代表者との打合せが同月30日に延期されたこと,一部確認してから振込にしてほしいと被控訴人代表者が述べていることを報告した。Cは,同日,被控訴人代表者が躊躇し始めたことから「ゴリ押し」したこと,同年5月1日に,f社とIへの振込みを行うことを控訴人Y2に報告したところ,控訴人Y2は,「何で躊躇したんだろう」,「振込 朝一にやっちゃってください そうすれば,文句ないでしょ((笑) やってしまったもん勝ちだよね」,「振込確認したら次の材料しないとね」と返信した。
エ Cは,平成27年4月30日,控訴人Y2に対し,本件送金2を同年5月1日の午前中に手配すること,被控訴人代表者がマレーシアの人脈にかなり期待していることを報告した。
(10)  控訴人Y2とCとのチャットワークでのやり取りにおける態度等
控訴人Y2は,Cとのチャットワークにおけるやり取りにおいて,Cのことを「Cちゃん」などと呼称し,もし被控訴人に何かあった場合には控訴人会社で一緒に働くことを提案したり,Cも被控訴人に何かあった場合には控訴人会社で働くことを希望し,互いの提案等を承諾する旨の発言をしていた。また,控訴人Y2とCとは,チャットワークにおけるやり取りにおいて,被控訴人代表者が,被控訴人のビジネスの状況がねずみ講であることを理解していないことや被控訴人代表者が信用していないKとCが繋がりを持っていることを理解していないことなどについて「(笑)」などと被控訴人代表者を嘲笑するかのような発言を度々していた。(甲9)
(11)  化粧品の売買等
ア a社とd社は,平成27年4月30日,a社がd社から化粧品7605個を3000万円で購入する旨の売買契約を締結し,同年5月1日,同化粧品がa社宛てに発送された。しかし,d社は,同売買契約に係る代金を受領していない。
イ 被控訴人代表者は,平成27年5月末日,Cが上記代金を受領したと虚偽の報告をしていたことを知り,同年6月12日,Cと面談し,a社からの振込がないことを確認し,情報漏えいを防ぎ証拠隠滅を防止するために,Cのパソコンをロックし,Cが控訴人Y2とやり取りをしているチャットワークのデータを入手した。
3  争点1(本件送金1について,控訴人Y2にCとの共同不法行為が成立するか)について
(1)  ①控訴人Y2は,a社の実態が,F,Dなど本来の経営者でも株主でもない外部の者が経営に関与していることを知っていたこと,②控訴人Y2は,平成27年4月,本件CBの発行により被控訴人からa社に1億円を送金させることを企て,同月7日,Cに対し,被控訴人代表者にa社が利益を上げて急成長している会社であるなどと虚偽の説明をするよう指示をしたこと,③Cは,同月11日,被控訴人代表者に対し,控訴人Y2から指示されたとおりの虚偽の説明をしたこと,④被控訴人代表者はCからの上記説明を受けて,その旨誤信し,本件CBを引き受けることとし,その引受代金として本件送金1を行ったこと,⑤控訴人会社は,同年4月21日,本件送金1に係る1回目の5000万円の振込金から報酬名目で2000万円を取得したことは上記認定のとおりである。
これらの事実によれば,控訴人Y2は,被控訴人から1億円を奪うスキームとしてa社の本件CBの発行を企て,Cと詐欺を行うことを共謀の上,Cにおいて被控訴人代表者に対し,本件CBの発行が正常な資金調達であるかのような説明をさせて欺罔し,その結果,被控訴人代表者にその旨誤信させて,本件CBを引き受けさせ,その代金として本件送金1を行わせたことが推認される。
(2)ア  控訴人らは,控訴人Y2には被控訴人代表者に対し虚偽の説明をしたという認識はなかったと主張し,控訴人Y2は原審本人尋問において同旨の供述をする。
しかし,控訴人Y2がCを通じて被控訴人代表者に対しa社に関する説明内容は,売上げが今期10億,来期40億・利益4億の急成長している会社であるというものであるところ,これらの売上額や利益額は何ら裏付けがない虚偽のものであり,控訴人Y2は上記説明内容が虚偽であることを十分認識していたというべきであり,控訴人Y2の上記供述はたやすく信用することができない。
イ  控訴人らは,控訴人Y2はDから資金調達先の紹介を依頼されたにすぎず,a社の財務内容を知らなかったと主張し,控訴人Y2は原審本人尋問において同旨の供述をし,陳述書(乙イ7)にも同趣旨の記載部分がある。
しかし,控訴人Y2は,a社の実態が,F,Dなど本来の経営者でも株主でもない外部の者が経営に関与していることを知っていながら,平成27年4月,本件CBの発行により被控訴人からa社に1億円を送金させることを企てて,Cと詐欺を共謀の上,Cをして虚偽の説明をさせて,被控訴人に本件送金1を行わせたものであることは前示のとおりである。控訴人Y2がその際にa社の詳細な財務内容を知らなかったとしても,そのことは本件CBの発行に関する詐欺の共同不法行為の成立には影響を及ぼさないというべきである。
ウ  控訴人らは,本件CBの発行はa社の代表取締役であるL,実質的に経営していたM及び株主であるEが決定したのであって,控訴人Y2が独断で発行したのではないと主張する。
しかし,代表取締役であるLはa社の経営に関与していないこと,控訴人Y2は本件CBの話をする際に本件グループトークからMを外したことは上記認定のとおりである。また,本件送金1の後引き出された1億円のうち2000万円は控訴人Y2が,2500万円はMがそれぞれ取得したことが認められ,残りの5500万円の使途は不明であるが,少なくともa社の運営資金に充てられたとは認め難い。そうすると,本件CBの発行は,控訴人Y2が主導して被控訴人から1億円を引き出すために行われたものとみることができる。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。
他に上記(1)の推認を左右するに足りる証拠はない。
(3)  以上によれば,本件送金1に係るCの上記行為は不法行為に当たり,かつ,Cの上記不法行為は控訴人Y2との共謀に基づくものであるから,本件送金1について控訴人Y2とCとの共同不法行為が成立する。
4  争点2(本件送金2について,控訴人Y2にCとの共同不法行為が成立するか)について
(1)  ①控訴人Y2はCに対し,控訴人会社が保有するとするe社株式を被控訴人に購入させるよう指示したこと,②Cは被控訴人代表者にe社株式の購入を勧めたが,被控訴人代表者の承諾を得られなかったこと,③これを受けて,Cは控訴人Y2に対し,e社株式代金を強引に振り込む旨の連絡をしたこと,④Cは,被控訴人に無断で,被控訴人から預かっていた実印や銀行印を利用して本件譲渡契約書を作成の上,本件送金2をしたことは上記認定のとおりである。
これらの事実によれば,控訴人Y2とCは,第1次的には,本件CBの引受けのときのようにe社株式の購入を被控訴人代表者に承諾させることを目指し,被控訴人代表者の承諾を得られない場合でもe社株式の購入代金の名目で送金を強行することを共謀したこと,Cは,上記共謀に基づいて被控訴人代表者にe社株式の購入を勧めたものの,その承諾を得られなかったことから,被控訴人に無断で本件送金2を実行したことが推認される。
(2)  控訴人らは,被控訴人はe社株式の購入を承諾していたと主張する。しかし,証拠(甲19,原審被控訴人代表者)によれば,被控訴人は本件CBの引受け及び本件送金1については承諾したのに対し,e社株式の購入及び本件送金2については承諾していなかったことが認められる。これを覆すに足りる証拠はない。
他に上記推認を左右するに足りる証拠はない。
(3)  以上によれば,Cの本件送金2に係る上記行為は被控訴人に無断でその金員を奪取するもので不法行為に当たり,かつ,Cの上記不法行為は控訴人Y2との共謀に基づくものであるから,本件送金2について控訴人Y2とCとの共同不法行為が成立する。
控訴人らは,控訴人会社はIからe社株式を譲り受けて保有していたと主張する。しかし,被控訴人に無断で本件送金2が行われたことについて共同不法行為が成立するのであって,控訴人会社が真にe社株式を保有していたか否かは共同不法行為の成立に影響を及ぼさないというべきである。
5  争点3(控訴人Y2が控訴人会社の被用者であり,本件送金1及び2が控訴人会社の事業の執行に当たるか)について
(1)  民法715条における被用者とは,実質的に使用者の指揮監督の下に事業に従事する者をいう。控訴人Y2は,控訴人会社の役員等ではないが,最高経営責任者としてその業務に従事していること,控訴人Y2は,最高経営責任者として控訴人会社とa社との間のコンサルタント契約を締結し,その業務に関し本件CB引受の代金名下に本件送金1がされたこと,控訴人Y2は,Cを通じて,控訴人会社が保有しているとするe社株式の購入を被控訴人に勧誘し,その中で本件送金2がされたことは上記認定のとおりである。これらの事実に照らすと,控訴人会社の指揮監督の下に事業に従事する者であるといえるから,控訴人会社の被用者に当たる。
控訴人会社は,控訴人Y2が控訴人会社から指揮命令を受けることなく独自の判断で業務を遂行していたにすぎず,控訴人会社の被用者でないと主張する。しかし,控訴人Y2は,控訴人会社とa社とのコンサルタント契約等の業務に関して控訴人会社の最高責任者として振る舞っていることからみて,控訴人Y2が被用者であることは明らかであり,控訴人会社から指揮命令を受けることなく独自の判断で業務を遂行していた者であるとはいえない。したがって,控訴人会社の上記主張は採用することができない。
(2)  控訴人Y2は控訴人会社の最高経営責任者としてその業務に従事しているところ,本件送金1は,控訴人会社とa社との間のコンサルタント契約の業務に関するものとしてされたこと,本件送金1から報酬2000万円を取得したのは控訴人会社であること,本件送金2は,控訴人会社が保有しているとするe社株式の購入を被控訴人に勧誘する中でされたものであること,本件送金2の振込先は控訴人会社の指定するf社であること等に照らせば,本件送金1及び2は控訴人会社の「事業の執行について」されたものに当たる。
(3)  以上のとおり,控訴人会社は,控訴人Y2の不法行為について使用者責任を負うというべきである。
6  争点4(被控訴人の損害額及び因果関係)について
(1)  被控訴人は,控訴人Y2及びCに欺罔された結果,a社に対し本件送金1を行い,これにより送金額1億円の損害が生じている。
控訴人らは,本件CBの発行は有効に行われているから被控訴人に損害はないと主張する。しかし,控訴人Y2及びCが共謀の上,被控訴人に対し欺罔を行い,その結果,被控訴人がその旨誤信して本件送金1を行い,被控訴人に同額の損害を生じさせているのであって,本件CBの発行が有効に行われたか否かは損害の有無に関わりがない。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。
(2)  Cが被控訴人に無断で本件送金2を行ったことにより,被控訴人は送金額1億5000万円の損害が生じている。
控訴人らは,e社株式の譲渡が有効に行われているから,被控訴人に損害はないと主張する。しかし,控訴人Y2及びCが共謀の上,被控訴人に無断で本件送金2を行い,被控訴人に同額の損害を生じさせているのであって,e社株式の譲渡が有効か否かは損害の有無に関わりがない。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。
7  結論
以上によれば,被控訴人の請求(当審における拡張請求を含む。)は,いずれも理由があるから認容すべきである。
よって,被控訴人の請求を認容した原判決は相当であり,控訴人らの控訴は理由がないからこれを棄却し,被控訴人の附帯控訴は理由があるから,附帯控訴に基づき被控訴人が拡張した請求を認容することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第20民事部
(裁判長裁判官 畠山稔 裁判官 池下朗 裁判官 鈴木順子)

 

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