
「テレアポ 営業」に関する裁判例(17)平成21年12月 3日 東京高裁 平21(ネ)4309号 損害賠償請求控訴事件
「テレアポ 営業」に関する裁判例(17)平成21年12月 3日 東京高裁 平21(ネ)4309号 損害賠償請求控訴事件
裁判年月日 平成21年12月 3日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平21(ネ)4309号
事件名 損害賠償請求控訴事件
裁判結果 原判決変更 上訴等 確定 文献番号 2009WLJPCA12036009
裁判経過
第一審 平成21年 7月24日 千葉地裁松戸支部 判決 平19(ワ)866号 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成21年12月 3日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平21(ネ)4309号
事件名 損害賠償請求控訴事件
裁判結果 原判決変更 上訴等 確定 文献番号 2009WLJPCA12036009
千葉県松戸市〈以下省略〉
控訴人 Y1
同訴訟代理人弁護士 佐藤昇
千葉県船橋市〈以下省略〉
被控訴人 税理士法人X
同代表者代表社員 A
同訴訟代理人弁護士 長濱隆
同 長濱晶子
主文
1 原判決中控訴人に関する部分を次のとおり変更する。
2 控訴人は,被控訴人に対し,1104万9850円及びこれに対する平成19年10月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人のその余の請求を棄却する。
4 被控訴人と控訴人との間で生じた訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを3分し,その2を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 上記取消部分に係る被控訴人の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 被控訴人の請求
税理士法人である被控訴人は,控訴人Y1(以下「控訴人Y1」という。)との間で,平成11年8月の就職時に競業禁止契約(甲1。以下「本件競業禁止契約」という。)を締結し,その際,原審相被告H(以下「原審相被告H」という。)との間で,保証契約(以下「本件保証契約」という。)を締結したところ,控訴人Y1が,被控訴人を退職後に本件競業禁止契約に違反して,原判決別紙の顧客欄に記載された顧客13名(以下「本件各顧客」という。)から,税理士業務及び会計業務を受託してこれを行ったと主張して,①控訴人Y1に対しては,本件競業禁止契約の債務不履行による損害賠償請求権に基づき,②原審相被告Hに対しては,本件保証契約に基づき,連帯して損害金3005万4000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年10月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求めた。
2 原判決
原判決は,控訴人Y1に対する請求については1134万3850円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年10月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求はこれを棄却し,原審相被告Hに対する請求はこれを全部棄却した。
3 控訴
控訴人Y1は,原判決中控訴人敗訴部分の取消しを求めて控訴を提起したが,被控訴人は,控訴も附帯控訴も申し立てなかった。したがって,原審相被告Hに対する原判決は確定した。
4 争いのない事実等,争点及び当事者の主張
争いのない事実等,争点及び当事者の主張は,5において当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1から3(原判決2頁13行目から9頁2行目まで)の記載と同一であるから,これを引用する。
5 当審における当事者の主張
(1) 控訴人
ア 原判決の弁論主義違反について
被控訴人の請求は,民法420条に従った損害賠償の予定に基づく請求であるにもかかわらず,原判決は,実損害を求める請求であると理解して判決しているから,当事者の主張に基づかない判断をしたものとして,弁論主義に違反する。
イ Bの従業員性について
B(以下「B」という。)は,被控訴人の従業員であったものではなく,税理士の名前を借りたいわゆる「ニセ税理士」であるから,Bを被控訴人の従業員であるとして損害を認定することはできない。
ウ 必要経費等の控除について
必要経費等を算定することができないのであれば,民事訴訟法248条に従って裁判所が自ら相当額を判断すべきであり,必要経費等を算定できないので売上げを損害とすることは不合理である。
(2) 被控訴人
ア 原判決の弁論主義違反について
被控訴人は,本件請求においては,債務不履行に基づく実損害の賠償を求めているのであり,原判決が弁論主義に違反する旨の控訴人の主張は,被控訴人の主張を正しく理解していないものである。
イ Bの従業員性について
乙第12号証(覚書)からしても,Bは,被控訴人から,毎月給与を得ていたのであり,実質的にみても,被控訴人の本件各顧客に対する税理士業務を補助していたのであるから,被控訴人の従業員であったことは明らかである。
ウ 必要経費等の控除について
原判決は,差し引くべき金額を認定する基礎となる証拠がないとして,損害額を判断したものであるから,不当なものではない。
第3 当裁判所の判断
1 争点に対する判断の前提となる事実関係について
当裁判所が認定する争点に対する判断の前提となる事実関係は,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1(原判決9頁4行目から11頁22行目まで)に記載する事実関係と同一であるから,これを引用する(ただし,原判決10頁17行目の「チラシ」を「チラシ,ダイレクトメール」に,18行目の「広告活動」を「広告活動や営業社員及びテレアポレディ社員の雇用等」に改める。)。
2 争点(1)(本件競業禁止契約の有効性)について
当裁判所も,本件競業禁止契約は有効であると判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の2(原判決11頁23行目から17頁9行目まで)に記載する理由説示と同一であるから,これを引用する。
(原判決の補正)
原判決13頁26行目から14頁5行目までを次のとおり改める。
「(イ) また,税理士試験の受験資格者として,「税理士又は税理士法人…の「業務の補助の事務」等に従事した期間が通算して3年以上になる者」が規定され(税理士法5条1項1号ホ),税理士となる資格を有する者として,税理士試験の合格者又は試験科目の全部について税理士試験を免除された者で「租税に関する事務又は会計に関する事務…に従事した期間が通算して2年以上ある」者が定められている(税理士法3条1項1号,2号)。」
3 争点(3)(損害額)について
当裁判所は,控訴人の本件競業禁止契約に違反する行為によって受けた被控訴人の損害は,合計1104万9850円であると認定する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の4(原判決17頁22行目から21頁14行目まで)に記載する理由説示と同一であるから,これを引用する。
(1) 原判決17頁26行目の「及び被告Hに対する請求は」を削る。
(2) 原判決18頁1行目の「原告が」の前に「前記引用に係る原判決「事実及び理由」第2の1(5)(原判決3頁22行目から24行目まで)の事実,甲第28号証,被控訴人代表者尋問の結果に後掲各証拠を併せると,」を加え,3行目の「顧問料」を「顧問料及び決算報酬(以下,本項においては顧問料及び決算報酬を併せて「顧問料」という。)」に改める。
(3) 原判決18頁12行目末尾に「(甲7)」を加える。
(4) 原判決18頁17行目末尾に「(甲8,決算報酬支払期は5月)」を加える。
(5) 原判決18頁22行目末尾に「(甲9,決算期は9月)」を加え,25行目の「104万1000円」を「88万3500円(c社の決算期は毎年9月である(甲9の委嘱契約書14条)から,上記期間中の決算報酬は平成19年9月期決算に係る1回のみである。)」に改め,26行目の算式を次のとおり改める。
「3万6300円×20か月+15万7500円=88万3500円」
(6) 原判決19頁1行目末尾に「(甲10,決算期は12月)」を加え,4行目の「58万8000円」を「45万1500円(g社の決算期は毎年12月である(甲10の委嘱契約書14条)から,上記期間中の決算報酬は平成19年12月期決算に係る1回のみである。)」に改め,5行目の算式を次のとおり改める。
「1万5750円×20か月+13万6500円=45万1500円」
(7) 原判決19頁6行目末尾に「(甲11,決算期は4月)」を加える。
(8) 原判決19頁11行目末尾に「(甲12,決算報酬支払期は5月)」を加える。
(9) 原判決19頁16行目末尾に「(甲13,決算報酬支払期は12月)」を加える。
(10) 原判決19頁21行目末尾に「(甲14,決算報酬支払期は8月)」を加える。
(11) 原判決20頁3行目末尾に「(甲15の1,2,決算報酬支払期は6月)」を加える。
(12) 原判決20頁8行目末尾に「(甲16の1,2,決算報酬支払期は5月)」を加える。
(13) 原判決20頁13行目末尾に「(甲17の1,2,決算報酬支払期は4月)」を加える。
(14) 原判決20頁18行目末尾に「(甲18の1,2,決算報酬支払の約定なし)」を加える。
(15) 原判決20頁23行目末尾に「(甲19の1,2,決算報酬支払期は4月)」を加える。
(16) 原判決21頁11行目の「1134万3850円」を「1104万9850円」に,12行目の「104万1000円」を「88万3500円」に,「58万8000円」を「45万1500円」に,14行目の「1134万3850円」を「1104万9850円」に改める。
4 当審における控訴人の主張について
(1) 弁論主義違反について
控訴人は,第2の5(1)アのとおり,原判決は弁論主義に違反している旨主張するが,被控訴人は,原審第2回弁論準備手続期日において,本件競業禁止契約2項に定める損害賠償額は,実質的には控訴人の義務違反によって被る実損害に当たり,同項は,その賠償をする旨約したものであると主張しているのであって,本件請求においては,債務不履行に基づく実損害の賠償を求めていることは明らかであるから,実損害を認定した原判決は,当事者の主張をしない法律要件事実を認定したものではないから,弁論主義に違反しない。
(2) Bの従業員性について
控訴人は,第2の5(1)イのとおり,Bの従業員性を否定する。
しかし,上記引用に係る原判決認定のとおり,被控訴人は,平成14年1月ころから,Bを雇用し,その労働の対価として給与を支払っていたのであるから(甲28,乙12),Bが被控訴人の従業員であることは明らかである。乙第12号証によると,被控訴人とBとの間において,被控訴人が指示する顧問先からの報酬の一定割合がBに対して支払われる約定があったことが認められるが,それらの支払は,毎月定められた支給日に月例給与として被控訴人から支払われていたことが認められるのであって,Bが被控訴人の指揮監督を離れて本件各顧客からの報酬の支払を受けていたと認めるに足りる証拠はない。
(3) 必要経費等の控除について
控訴人は,第2の5(1)ウのとおり,必要経費等を算定することができないのであれば,民事訴訟法248条に従って裁判所が自ら相当額を判断すべきである旨主張する。
しかし,上記引用に係る原判決認定のとおり,被控訴人が本件各顧客から得ていた年額報酬から差し引くべき変動経費の支出が減少したと認めるに足りる証拠がないから,本件各顧客から得る年額報酬を基礎として損害を認定することは,相当なものということができるから,控訴人の上記主張は,採用することができない。
5 結語
以上によれば,被控訴人の控訴人Y1に対する請求は,1104万9850円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年10月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却すべきところ,これと異なる原判決中控訴人に関する部分を上記趣旨に変更することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 渡邉等 裁判官 西口元 裁判官 山口信恭)
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