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判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(341)平成18年 9月28日 東京地裁 平15(ワ)28609号 損害賠償等請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(341)平成18年 9月28日 東京地裁 平15(ワ)28609号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成18年 9月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)28609号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2006WLJPCA09280008

要旨
◆いわゆる「福岡一家惨殺事件」の真犯人であるかのような記事等を週刊誌に掲載された原告らが名誉を毀損されたとして当該週刊誌を発行する会社及び編集長の両名を被告に損害賠償及び名誉を回復するのに適当な処分として判決結論の広告掲載を請求した事案において、本件各記事において「親族」及び「親族の夫人」と称して対象とされた人物が読者において原告らと特定され、一般読者の普通の注意を読み方を基準にすると当該記事により原告らの社会的評価が低下するもので、違法ないし責任阻却事由たる真実性及び相当性もないとして、原告らの被告らに対する各損害賠償請求の一部をそれぞれ認容し、広告掲載については必要性があるとまでは認められないとして棄却した事例

出典
判タ 1250号228頁
新日本法規提供

参照条文
民法709条
民法710条
民法715条
民法723条

裁判年月日  平成18年 9月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)28609号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2006WLJPCA09280008

原告 丙谷A夫
原告 丙谷B子
上記2名訴訟代理人弁護士 飯田正剛
同 神田安積
被告 株式会社Y1
同代表者代表取締役 U
被告 Y2
上記2名訴訟代理人弁護士 喜田村洋一
同 大村恵実

 

主文

1  被告らは、原告丙谷A夫に対し、連帯して880万円及びこれに対する平成16年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告らは、原告丙谷B子に対し、連帯して220万円及びこれに対する平成16年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用はこれを10分し、その1を被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。
5  本判決は、第1項、第2項に限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告らは、原告丙谷A夫に対し、連帯して7700万円及びこれに対する平成16年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告らは、原告丙谷B子に対し、連帯して3300万円及びこれに対する平成16年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告らは、原告らに対し、連帯して、別紙1記載の「判決の結論の広告」を、被告株式会社Y1発行の「a誌」誌上に、同別紙1記載の条件にて、1回掲載せよ。
第2  事案の概要
本件は、原告らが、被告Y2(以下「被告Y2」という。)が編集長を務め、被告株式会社Y1(以下「被告会社」という。)が発行した週刊誌「a誌」(以下、単に「a誌」という。)誌上に、原告らがいわゆる「福岡一家惨殺事件」(以下「本件事件」という。)の真犯人であるかのような記事等が掲載されたことにより、原告らの名誉が毀損されたと主張して、被告Y2に対し、民法709条の不法行為に基づき、被告会社に対し、同法715条の使用者責任に基づき、それぞれ慰謝料等の損害賠償金の支払及びこれに対する不法行為後である平成16年1月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、同法723条に基づく名誉を回復するのに適当な処分として、「a誌」誌上に判決の結論の広告を掲載することを求める事案である。
1  争いのない事実等(各項目の末尾に証拠等の記載のないものは、争いのない事実である。)
(1)  当事者等
ア 原告丙谷A夫(以下「原告A夫」という。)は、平成15年6月に発生した本件事件の被害者となった戊野D子(以下「D子」という。)の実兄である。原告A夫は、現在、株式会社b(以下「b社」という。)の代表取締役である。
原告丙谷B子(以下「原告B子」という。)は、原告A夫の妻である。
イ 被告会社は、雑誌、図書の印刷、発行及び販売等を業とする株式会社であり、発行部数(実売部数)約55万部の週刊誌「a誌」を発行している。(弁論の全趣旨)
被告Y2は、「a誌」の編集長である。
(2)  本件事件は、中華人民共和国から日本に留学に来た壬E男、辛F男、申G男の3人が、共謀の上、平成15年○月○日午前零時過ぎころ、福岡市内にあった戊野H夫(以下「H夫」という。)の自宅に侵入し、入浴中であったH夫の妻のD子を浴槽内で窒息死させ、子供部屋で寝ていた当時11歳の長男I夫(以下「I夫」という。)を絞殺し、さらに、当時8歳の長女J子(以下「J子」という。)に刃物を突きつけ、人質にした上で、帰宅したH夫から現金約3万7000円などを強奪したあげく、J子を絞殺し、その後、H夫と上記被害者3名の死体を自動車で博多湾の埠頭の岸壁に運び、H夫を海中に投棄して溺死させ、他の3人の死体も海中に遺棄したという、住居侵入、強盗殺人、死体遺棄事件である。
本件事件について、福岡地方検察庁は、平成16年1月30日、壬E男を上記の罪で起訴し、同人は、福岡地方裁判所において、別件の住居侵入及び強盗、建造物侵入及び窃盗、住居侵入及び窃盗並びに傷害事件とともに有罪とされ、平成17年5月19日、死刑判決の言渡しを受けた。
また、辛F男及び申G男は、中華人民共和国に逃亡していたが、同国の捜査機関によって身柄を拘束され、同国の中級人民法院において、一人は死刑、一人は無期懲役の判決を宣告された。(甲6、30)
(3)  被告会社は、以下のとおり「a誌」を発行し、これらは、全国で販売された。(弁論の全趣旨)
ア 週刊誌「a誌」2003年7月10日号(以下「a誌1」という。) 平成15年7月10日発行
イ 週刊誌「a誌」2003年7月17日号(以下「a誌2」という。) 平成15年7月17日発行
ウ 週刊誌「a誌」2003年7月24日号(以下「a誌3」という。) 平成15年7月24日発行
エ 週刊誌「a誌」2003年8月28日号(以下「a誌4」という。) 平成15年8月28日発行
オ 週刊誌「a誌」2003年9月4日号(以下「a誌5」という。) 平成15年9月4日発行
カ 週刊誌「a誌」2003年10月2日号(以下「a誌6」という。) 平成15年10月2日発行
(4)  被告らは、a誌1ないし6において、本件事件に関する記事を以下のとおり掲載した。
ア a誌1の22ページから26ページにおいて、「激震スクープ 福岡一家四人惨殺 捜査陣の標的はこの男女」との表題を付し、「犯行当夜、被害者宅を訪問したのは親族。前日、被害者と親族の諍いがあり、妻は殴打されていた……驚愕の詳細証言。」との見出しを付した記事(甲1、以下「本件記事1」という。)が掲載されたところ、本件記事1には、別紙2記事目録記載の本件記載1の1ないし17の各記載がある。
イ a誌2の158ページから161ページにおいて、「激震スクープ 捜査員が持ち歩く福岡一家四人惨殺「犯人グループ」七人の顔写真」との表題を付し、「D子さんの母は四人の遺体の一人一人に泣きながら、抱きついたという。ところが、その席に明らかに、挙動不審な一組の夫婦がいたのである。」との見出しを付した記事(甲2、以下「本件記事2」という。)が掲載されたところ、本件記事2には、別紙2記事目録記載の本件記載2の1ないし14の各記載がある。
ウ a誌3の147ページにおいて、「福岡一家惨殺 被害者が親友に打ちあけていた親族とのトラブル」との表題を付し、「犯人はなぜ逮捕されない?」との見出しを付した記事(甲3、以下「本件記事3」という。)が掲載されたところ、本件記事3には、別紙2記事目録記載の本件記載3の1ないし7の各記載がある。
エ a誌4の144ページにおいて、「福岡一家四人惨殺 実行犯中国人と黒幕の「接点」」との表題を付し、「暴力団と中国マフィア」との見出しを付した記事(甲4、以下「本件記事4」という。)が掲載されたところ、本件記事4には、別紙2記事目録記載の本件記載4の1ないし5の各記載がある。
オ a誌5の149ページから150ページにおいて、「福岡一家惨殺 捜査本部が行方を追う暴力団幹部」との表題を付した記事(甲5、以下「本件記事5」という。)が掲載されたところ、本件記事5には、別紙2記事目録記載の本件記載5の1ないし5の各記載がある。
カ a誌6の40ページから42ページにおいて、「衝撃スクープついに全容解明へ! 福岡一家惨殺 中国人グループに殺害を指示した日本人」との表題を付し、「福岡の一家四人惨殺事件から早三カ月。別件で逮捕された中国人が犯行を自供したことで捜査は急展開している。中国人犯行グループに殺害を指示したのは誰か?事情聴取を受けた暴力団幹部、H夫さんと金銭トラブルを抱えていた親族との接点はあるのだろうか。」との見出しを付した記事(甲6、以下、「本件記事6」といい、本件記事1ないし6を併せて「本件各記事」という。)が掲載されたところ、本件記事6には、別紙2記事目録記載の本件記載6の1ないし9の各記載がある。
2  争点
(1)  名誉毀損の該当性の有無
ア 本件各記事の対象とされた人物が、読者において原告らと特定されるか否か(争点(1)の1)
(原告らの主張)
(ア) 本件各記事は、原告らの氏名を用いない匿名記事であるが、匿名記事による社会的評価の低下は、当該記事の対象とされた人物と面識があったり、同人について一定の知識、情報を有している者との関係において主として問題となるのであり、このような者が、本件各記事の対象者を原告らであると認識することが可能であれば、原告らに対する名誉毀損が成立する。
そして、以下のとおり、原告らと面識があり、又は、原告らの経歴等について一定の情報を有している者においては、本件各記事の対象者を原告らであると認識することが十分に可能であり、本件各記事の読者の中にこのような者が存在した可能性を否定できないから、本件各記事においてその対象者の社会的評価を低下させるような記載がなされていれば、原告らの名誉を毀損するものということができる。
(イ) 原告A夫の特定性
本件各記事においては、本件記載1の1、2の1、3の1、4の1、5の1、6の1の各表題(以下「本件表題」と総称する。)の記載及び本件記載1の2、2の2、3の2、4の2、6の2の各見出し(以下「本件見出し」と総称する。)の記載の下で、本件事件の真犯人であるかのように断定された「戊野D子さんの親族」の属性につき、次のとおり詳細に摘示している。
a まず、本件記事1の中で、「登記簿によると、親族は平成九年六月に衣料品の販売などを目的とする会社を設立している。」、「取引関係のあったデパート」、「戊野さん夫婦は、その親族が経営する衣料品販売会社にかかわるようになっていた。」、「(親族の会社は)ブランドを持たず、五十歳代以降のミセスを対象にした洋服を製造する会社で、そもそもこの会社は年商二、三億円はあったんです。百貨店が中心だったんです」、本件記事2の中で、「H夫さん夫婦は、その親族が経営する衣料品販売会社にかかわっていた。」、「親族の会社の仕事は、ミセス部門を親族、ヤング部門をH夫夫婦がやっていたんです。」、本件記事4の中で、「この親族が経営する会社の東京営業所には、上海出身のPという中国人がいるとの情報もある。」、本件記事6の中で、「親族の衣料品会社を手伝っていた戊野さん夫婦」などと記載されており、「親族」の経営する会社の業務内容等が明らかになっている。
b さらに本件記事1の中で、「親族は今の夫人とは再婚。前妻と平成六年六月に離婚している。」、「二人の間には子供がいた」、「(子供の年齢は)今、十七、八歳だと思います」、「俺はずっとサラリーマンをやっとって、独立して七年になるんやけど」などと記載されており、「親族」の離婚歴や家族構成等のプライバシーに関する事項が明らかになっている。
c また、連続する本件記事2ないし6においては、関連する前号までのいずれかの記事を引用ないし要約するなどして、「親族」の属性を明らかにしている。
そして、上記のような属性を有する本件事件の被害者の親族は、原告A夫を除いていないことからすると、原告らと面識があり、またはb社との取引関係等によって原告らの経歴等について一定の情報を有している者は、本件各記事における「親族」を原告A夫であると認識することが十分に可能である。
(ウ) 原告B子の特定性
本件記事1及び2においては、本件記載1の1及び2の1の表題並びに本件記載1の2及び2の2の見出しの記載の下で、本件事件の真犯人であるかのように断定された「戊野D子さんの親族の夫人」の属性について、次のとおり明らかにしている。
まず、上記のように、「戊野D子さんの親族」の属性を明らかにすることで、同「親族」が原告A夫であると認識することを可能とし、さらに、本件記事1において、「D子さんの親族が戊野家を訪問したとされる十九日午後十時半ごろといえば、まさに被害者宅前で不審な車が目撃された時間である。男性が運転する白っぽい車で、助手席に乗っていた背の高い女性が、足早に戊野さん宅に入っていったという情報には、捜査本部も関心を寄せている。」、「六月二十七日昼頃から、D子さんの親族と、その夫人に任意で同行を求め、約二時間にわたり事情聴取を行なっている。」などと記載して、「戊野D子さんの親族の夫人」の属性も明らかにしており、このような属性を有する「戊野D子さんの親族の夫人」は原告B子を除いていないことからすると、原告B子と面識があったり、原告B子の経歴等について一定の情報を有している者は、「戊野D子さんの親族の夫人」は、原告B子であると認識することが十分に可能である。
(被告らの主張)
本件各記事では、いずれも原告らの氏名はもとより、仮名もイニシャルも用いておらず、単に「親族」とのみ表記されているのであるから、一般読者が普通の注意と関心をもって本件各記事を読んだ場合、これが原告らに関する記事であるとは理解しない。
また、本件各記事においては、原告A夫が経営する会社が東京に営業所を持つことや、同会社の業務内容、原告A夫の離婚歴等が記載されているものの、東京に営業所がある会社は無数にあるし、一般読者は、原告A夫が経営する会社の業務内容や原告A夫の離婚歴など知らないから、これらの記載をもって、本件各記事の「親族」等が、原告らを指すとは理解されない。
イ 本件各記事により、原告らの社会的評価が低下するか否か(争点(1)の2)
(原告らの主張)
(ア) 原告A夫について
a 被告らは、本件各記事において、本件表題及び本件見出しの記載の下で、次の事実を摘示した。
(a) 本件事件の犯行当日夜直前に、原告A夫が被害者宅である戊野家を訪問したとの事実(本件記載1の4、1の5、1の6、2の3、3の4)
(b) 原告A夫の会社の経営が傾いていたこと、そして、H夫夫婦と原告A夫との間には、原告A夫が、D子に対して給料を支払わない、D子が働いて得た会社の売上につき、D子の取り分まで原告A夫が持っていった、H夫が原告A夫の借金の保証人になっているなど、金銭トラブルがあったとの事実(本件記載1の3、1の9、1の12、1の13、1の14、2の11、2の13、2の14、3の3、3の5、3の6、4の4、5の3、6の6、6の7、6の9)
(c) 原告A夫は、D子やH夫に対し、いわゆる自動車のカラローンを組ませようとしていたとの事実(本件記載1の7、2の12、3の4、3の5、6の8)
(d) 原告A夫が、D子に対して、殴る、蹴る、人前でライターを投げつける等の暴行を働いていたとの事実(本件記載1の8、1の9、1の11)
(e) 原告A夫が、文春の記事を見て絶句し、急に話題を変えたとの事実(本件記載2の4)
(f) 原告A夫が、本件事件以降、不可解な行動や発言を繰り返しているとの事実(本件記載2の5)
(g) 原告A夫が、H夫には愛人がおり、H夫とその愛人が別れ話でもめていたなどと虚偽の話を作り出したとの事実(本件記載1の15、2の7)
(h) 原告A夫が、D子らの通夜の晩に、涙もろくに流さずに、H夫の借金や、D子の保険金のことを気にしていたとの事実(本件記載1の17、2の6、3の7)
また、原告A夫が、初七日の日に、周囲の人から「本来だったら、骨はやっぱり戊野家にやらないとね」と言われたことに対して、血相を変えて、「あんた、昨日まで言ってたことと違うやない!」と怒鳴ったとの事実(本件記載3の7)
(i) 原告A夫が、I夫の葬儀の際に、妙に激しく号泣したり、火葬場ではI夫の骨が出るときだけ外に出ていたとの事実(本件記載2の9)
(j) 原告A夫が、葬式の時に、現場の刑事ですら見ていない司法解剖書持っていると言ったとの事実(本件記載2の10)
(k) 原告A夫が、前妻の両親に対して数千万円の借金を背負わせ、また、前妻に対しては暴力を振るっており、さらに、前妻と別れた後で、前妻との間で生まれた子供を学校帰りに連れていったとの事実(本件記載1の10)
(1)  原告A夫が、本件事件の黒幕として、暴力団に殺害を依頼し、この暴力団が中国人を雇ったとの事実(本件記載4の1、4の2、4の3、4の5、5の1、5の2、5の4、5の5、6の1、6の2、6の3、6の4、6の5)
b 本件事件の真犯人である旨の記述による名誉毀損
(a) 被告らは、本件表題及び本件見出し並びに上記a(a)ないし(1)の各事実を摘示したことにより、原告A夫が本件事件の真犯人であるかのごとき印象を読者に与えることで、原告A夫の社会的評価を低下させて、原告A夫の名誉を毀損した。
(b) すなわち、まず、一般読者は、週刊誌の表題や見出し等に重きを置いて読み過ごすものであるから、表題や見出し等によって強く印象づけられ、その印象に導かれて記事全体を読むのが通常であるところ、本件表題及び本件見出しの記載は、以下のように、原告A夫が本件事件の真犯人であることを強く印象づけている。
〈1〉 本件記事1の表題及び見出し部分(本件記載1の1、1の2)は、一般読者に対し、「激震スクープ」、「捜査陣の標的」や「驚愕の詳細証言」といった断定的な記載によって、被告らが入手した捜査当局の捜査情報、詳細証言があり、そこに真犯人である「この男女」として、原告らが摘示されている旨強く印象づけるものであり、一般読者はその印象に導かれて本件記事1全体を読むことになる。
〈2〉 本件記事2の表題及び見出し部分(本件記載2の1、2の2)は、一般読者に対し、「捜査員が持ち歩く「犯人グループ」七人の顔写真」や「明らかに、挙動不審な一組の夫婦」といった断定的な記載によって、被告らが入手した捜査当局の捜査情報によれば、真犯人のうちの一部として、原告らが「明らかに、挙動不審な一組の夫婦」と摘示されている旨強く印象づけるものであり、一般読者はその印象に導かれて本件記事2全体を読むことになる。
〈3〉 本件記事3の表題及び見出し部分(本件記載3の1、3の2)は、一般読者に対し、「福岡一家惨殺被害者が親友に打ちあけていた親族とのトラブル」や「犯人はなぜ逮捕されない?」といった断定的な記載や現状に疑問を投げかける記載によって、「親族」である原告A夫が被害者との間でトラブルを抱えていて、十分な動機をもつ「犯人」でありながら、逮捕されていない旨を強く印象づけるものであり、一般読者はその印象に導かれて本件記事3全体を読むことになる。
〈4〉 本件記事4の表題及び見出し部分(本件記載4の1、4の2)は、一般読者に対し、「福岡一家四人惨殺 実行犯中国人と黒幕の「接点」」や「暴力団と中国マフィア」といった断定的な記載によって、原告A夫が「黒幕」として、実行犯中国人や暴力団との接点を持っている旨を強く印象づけるものであり、一般読者はその印象に導かれて本件記事4全体を読むことになる。
〈5〉 本件記事5の表題(本件記載5の1)は、一般読者に対し、「福岡一家惨殺 捜査本部が行方を追う暴力団幹部」という断定的な記載によって、捜査本部が実行犯の背後の「黒幕」として、暴力団幹部の行方を追っていて、さらに、本件記事の内容によって、その暴力団幹部のさらなる「黒幕」として、原告A夫が存在する旨を強く印象づけるものであり、一般読者はその印象に導かれて本件記事5全体を読むことになる。
〈6〉 本件記事6の表題及び見出し部分(本件記載6の1、6の2)は、一般読者に対し、「衝撃スクープついに全容解明へ! 福岡一家惨殺 中国人グループに殺害を指示した日本人」、「中国人犯行グループに殺害を指示したのは誰か?事情聴取を受けた暴力団幹部、H夫さんと金銭トラブルを抱えていた親族との接点はあるのだろうか。」という断定的な記載によって、原告A夫が「中国人グループに殺害を指示した日本人」として、暴力団に殺害を依頼し、さらに、その暴力団が中国人グループに殺害を指示したという「相関」関係があり、原告A夫が本件事件の真犯人であると強く印象づけるものであって、一般読者はその印象に導かれて本件記事6全体を読むことになる。
〈7〉 以上の本件各記事における表題及び見出し部分は、原告A夫が本件事件の真犯人であるかのような印象を強く与えるものであり、原告A夫の名誉を毀損している。
(c) 次に、本件各記事の本文の内容も、一般読者に対し、あたかも原告A夫が本件事件の犯人であり、捜査の対象とされているとの印象、また、まもなく逮捕されるかのような印象を強く与えている。
すなわち、被告らが摘示した上記aの各事実は、原告A夫が本件犯行当日夜直前に被害者宅を訪問したこと(上記aの(a))、原告A夫には、D子、H夫夫妻との間で、殺害の動機となるような金銭トラブルがあったこと(上記aの(b)、(c))、原告A夫の粗暴性・凶暴性(上記aの(d))、原告A夫の性格・人格の異常性(上記aの(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k))、原告A夫が、本件事件の黒幕として、暴力団や中国人に殺害を依頼したこと(上記aの(1))を指摘しており、これらの虚偽の事実の記載は、原告A夫が本件事件の真犯人であるという強い印象を一般読者に与え、原告A夫の人格的価値についての社会評価を低下させている。
c いかがわしい人物である旨の記述による名誉毀損
被告らが摘示した上記aの各事実は、原告A夫が、いわゆる自動車のカラローンを組ませるようないかがわしい人物であること、実の妹に対して暴力を振るうような粗暴かつ凶暴な人物であること、D子に対して給料や売上の取り分を未払にするような悪徳経営者であり、D子やH夫と金銭トラブルを起こすようないかがわしい人物であること、H夫の愛人に関し、虚偽の話を作り出すようないい加減な人物であること、通夜や初七日でおかしな態度を取るいかがわしい人物であり、通夜の晩に、涙も流さずに保険金のことを気にしているような非人間的な人物であること、前妻の両親に対して数千万円の借金を負担させているようなひどい人物であること、前妻に暴力を振るっていたような粗暴な人間であること、子供を学校帰りに連れていったような自分勝手な人物であること、暴力団と知り合いの関係を持つようないかがわしい人物であることを指摘しており、これらの虚偽の事実の記載は、原告A夫がいかがわしい人物であるという印象を一般読者に与え、原告A夫の人格的価値についての社会評価を低下させた。
(イ) 原告B子について
a 被告らは、本件記事1及び本件記事2の各記載により、本件記載1の1、2の1の各表題及び本件記載1の2、2の2の各見出しの記載の下で、次の事実を摘示した。
(a) 本件事件の犯行当日夜直前に、原告B子が被害者宅である戊野家を訪問したとの事実(本件記載1の5、1の6)
(b) 原告B子が、警察による事情聴取を受けたとの事実(本件記載1の16)
(c) 原告B子が、葬儀の時におかしな歩き方をしていたとの事実(本件記載2の8)
b 本件事件の真犯人である旨の記述による名誉毀損
被告らは、上記aの表題及び見出し並びに(a)及び(c)の各事実を摘示したことにより、原告B子が本件事件の真犯人であるかのごとき印象を読者に与えることで、原告B子の社会的評価を低下させて、原告B子の名誉を毀損した。
すなわち、上記表題及び見出し部分が原告B子の名誉を毀損することは、上記(ア)b(b)〈1〉及び〈2〉のとおりであり、また、本件記事1及び2の本文の内容は、原告B子が本件犯行当日夜直前に被害者宅を訪問したこと(上記a(a))及びおかしな歩き方をしていたという原告B子の身体的異常性あるいは原告B子が本件犯行により負傷したこと(上記a(c))を指摘しており、これらの虚偽の事実の記載は、原告B子が本件事件の真犯人であるという強い印象を一般読者に与え、原告B子の人格的価値についての社会評価を低下させている。
c いかがわしい人物である旨の記述による名誉毀損
被告らは、上記a(b)及び(c)の記載により、原告B子が、警察による事情聴取を受けるようないかがわしい人物であり、また、おかしな歩き方をする一般人とは異なる人物であるとの事実を摘示することで、原告B子の社会的評価を低下させて、原告B子の名誉を毀損した。
(被告らの主張)
(ア) 本件各記事は、原告らを真犯人と指摘したものではないことについて
a 本件各記事は、本件事件の捜査の動きと捜査当局の見方を報じたものであり、「この男女」や「親族」が、本件事件の真犯人であると指摘する箇所は存在しない。この点、本件記事1の結びの文は、「捜査の行方は、まだまだ予断を許さない」というものであり、本件記事4においては、この「親族」について、「もちろん、事件との直接の関わりは不明だ」と記載し、最後は「捜査関係者が、こうつぶやく。「事件は必ず解決する。『秋の陣』ということだ」」と結んでおり、本件記事6でも、「稀に見る凶悪事件の真相は、間もなく解き明かされようとしている。」と記載されているのであり、いずれも、「親族」が真犯人であるとは述べていない。
b 本件各記事において、原告らが、平成15年6月19日午後10時半に戊野家を訪問したと報じられているが、これらの記事は、原告らが上記のとおり戊野家を訪問したことに対して、捜査本部が関心を寄せていたという当然の状況を述べたにすぎず、それを超えて、原告らが真犯人であることを述べたものではない。
c 本件各記事において、原告A夫とH夫夫婦が、お金の問題で揉めていたり、自動車のカラローンを組ませようとしたり、給料未払があるなど、トラブルがあったと述べているが、これが、原告A夫が一家四人を殺害しようとする動機になるようなトラブルと理解されることはあり得ない。
d 本件各記事において、原告A夫が、D子や前妻に暴力を振るっていたり、虚偽の話を作り出していたことなどが述べられているが、このことと、一家四人殺害という凶悪犯罪との間には大きな隔たりがあり、一般読者は、そのような「暴力」と、幼い子供を含む一家四人殺害事件とは、全く別種のものと理解するから、原告らが本件事件の真犯人であるとは解されない。
e 本件記事3の見出しには、「犯人はなぜ逮捕されない?」と記載されているが、この見出しは、本文中の「これだけ多くの物証、目撃証言がありながら、なぜ、捜査本部は犯人を逮捕することができないのか。」の記述に対応するものであり、その答えは、「捜査関係者」の「ただ、いまだに実行犯と直接結びつくものは出ていない」という説明によってなされているのであるから、上記見出しの記述から、原告A夫が犯人であることが印象づけられるなどということはない。また、本件事件において、既に犯人が判明しているのに、逮捕されないなどという事態は想定し得ない。
f 本件記事4ないし6を通観しても、原告A夫が暴力団ないし中国人に対し殺害の依頼をした旨を報じた記述は存在しない。
すなわち、本件記事4及び5には、中国人に殺害を依頼した黒幕がいる旨は記載されているが、この黒幕が、原告A夫であると理解されるような記述が存在しないことは、これらの記事を見れば明らかである。
また、本件記事6には、「親族から△△には矢印で、依頼?と書かれているという」との記載があるが、「依頼?」と疑問符を付けて書かれていることから明らかなように、推測の域を出ない情報として取り扱われているにすぎず、また、同記事では「(暴力団幹部)の○○と△△は何度か参考人として事情聴取を受けているんですが、事件に関しては『まったく知らない』と否認しています。ただ、親族のことについては、『Aから紹介されたが、親しくない』と話したと聞いています」とされているから、そもそも暴力団幹部と事件との関わりすらはっきりしておらず、まして、原告A夫と本件事件との関係は、純粋に疑問符でしかないのである。
g 原告らは、原告B子の歩き方に関する記述が、同原告の身体的異常を指摘することによって犯人性を強調している旨主張するが、主張の意味が不明であり、また、本件事件の犯人が負傷したということも明らかにされていないのであるから、原告B子が、犯行において負傷したことを示唆する旨の主張も、前提を欠くものである。
(イ) その他の名誉毀損について
a 本件各記事において、原告A夫のD子に対する給料未払を記載しているが、このような事実があったとしても、原告A夫の社会的評価を低下させるものではない。そもそも、給料を支払うのは会社であって原告A夫ではなく、また、現下の不況を考えれば、給料未払が生じたとしても、これによって経営者の人間としての評価が低下するとは考えられない。
b 本件各記事において、原告A夫が、H夫に愛人がいるなどの話を言い出した旨を記載しているが、これによって、原告A夫に対する社会的評価が低下することはなく、少なくとも金銭賠償を基礎づける程度の低下はない。
c 本件各記事において、原告A夫が通夜の晩にD子の保険金に関する話を言い出した旨を記載しているが、これによって、原告A夫に対する社会的評価が低下することはなく、少なくとも金銭賠償を基礎づける程度の低下はない。
d 本件各記事において、原告A夫とH夫との間での金銭トラブルについて記載しているが、トラブルの具体的な内容も明らかでなく、帰責事由も記載されていないから、これによって、原告A夫に対する社会的評価が低下することはない。
e 本件各記事において、原告A夫と暴力団との関係に関して記載しているが、単に「暴力団幹部と知り合いである」と記載されているにすぎず、この記述によって、原告A夫に対する社会的評価が低下することはない。
f 本件記事1において、原告B子が警察から事情聴取を受けたことを記載しているが、本件事件のような重大凶悪犯罪があった場合に、近親者などが警察から事情聴取されることはよくあることであり、このために原告B子に対する社会的評価が低下することはない。
g 本件記事2において、原告B子に関し、「歩き方がおかしくて、なんか妊婦が歩いているような感じ。」、「『怪我でもしたのかな?』と思ったくらいです。」と記載しているが、この記述によって、原告B子に対する社会的評価が低下することがないことは明らかである。
(2)  違法性阻却又は責任阻却事由の存否
(被告らの主張)
本件記事1ないし6は、以下のとおり、公共性、公益目的、真実性ないし相当性を具備するから、被告らは名誉毀損の責任を負わない。
ア 本件各記事が、公共性、公益目的を有すること
本件各記事は、本件事件に関し、捜査当局が原告A夫に重大な関心を寄せていたことを述べたものであるところ、犯罪は、それ自体が公共の関心事であり、その捜査がどのように進展しているかは、市民の正当な関心の対象である。
また、犯罪が発生したとき、事件の内容を正確に報道するとともに、その捜査がどのように進展しているかを報じることは、市民に必要な情報を提供するものであり、犯罪を正しく解決し、また誤った捜査を防止するために必須である。このように、犯罪捜査の内容や進展状況を伝える報道は、社会的に大きな意義を有しているのであり、特に、重要事件として社会的に注目されながら、未解決の事件については、報道の必要性は極めて高いのである。したがって、本件各記事は、公共性を有し、公益を図る目的で報道されたものである。
イ 本件各記事の内容が真実であること
(ア) 本件各記事は、本件事件を取り上げ、捜査当局の動きを報じる中で、この当時、捜査当局が原告A夫に重大な関心を寄せていたことを報道したものであり、原告A夫が真犯人であると報じたものではない。この場合の真実性の証明対象は、「当該人物が真犯人であること」ではなく、「捜査当局が、当該人物に関心を寄せていること」である。本件各記事のような報道をした場合であっても真実証明の対象が「当該人物が真犯人であること」とされるのであれば、刑事事件の捜査過程を報じることは不可能となってしまうのであり、妥当ではない。
(イ) そして、原告らは、わざわざ別々の場所で、警察から本件事件に関して事情聴取されており、しかも、この時の事情聴取で警察は、原告A夫に対し、原告A夫が経営するb社の金の流れを尋ねており、これは「被害者親族」に対する事情聴取事項としては異例であるから、捜査当局が、原告らに対し、単なる「被害者親族」ではなく、捜査対象者として関心を寄せていたことは明らかである。
また、捜査当局は、原告らの自宅近くに捜査車両を駐車させて原告らの動静を観察したり、原告らの自宅の斜め前に位置するマンションを借りて、ここから原告らの行動を24時間確認したり、原告らの写真を持ち歩いて、被害者宅周辺の人々に聞き込みをするなどしており、さらに、福岡地方検察庁の次席検事が、平成15年9月9日に「黒幕はいると思う」とレクチャーの場で公式に発言していることなどを併せ考えれば、原告らが捜査当局の捜査対象となっていたことは明らかである。
このように、捜査当局が原告らを捜査対象としていた事実は、地元の報道機関にとっては広く知られた事実であり、原告A夫も、多数のマスコミの人間から「犯人として疑われていること」を認めている。
(ウ) 以上のように、捜査当局が原告A夫らを捜査対象としていたことを報じた本件各記事の内容は、真実である。
(エ) その他の名誉毀損事実の真実性について
己原K夫(以下「己原」という。)及び庚崎L夫(以下「庚崎」という。)は、共にH夫夫婦とは親しく、その内情をよく知る立場にあり、かつ、この事件に関わりを持たない第三者であるから、その供述の信用性は高いものであるところ、両名の供述などによれば、以下の事実が認められるのである。
a 原告A夫とH夫夫婦との間に、自動車のカラローンについてのトラブルがあったこと
b 原告A夫が、D子に暴行を加えたこと
c 原告A夫が、D子に対して給料の未払をしたこと
d 原告A夫が、H夫に愛人がいるなどの話を言い出したこと
e 原告A夫が、通夜の晩に保険金の話などをしたこと
f 原告A夫と前妻との離婚に際し、本件記載1の10の事実があったこと
ウ 本件各記事の内容が真実であると信ずるにつき、相当な理由があること
「a誌」編集部では、本件事件を取材する過程で、福岡県警察本部の捜査の重要な動きを知る立場にいる捜査員や、被害者であるH夫の従兄弟である戊野M夫(以下「M夫」という。)、H夫の友人である己原、H夫の先輩である庚崎、また、原告らをよく知る人物や、地元報道機関、及び原告A夫本人など、多数の者に対する取材によって、本件各記事の内容を真実と確信したものである。このように、被告らは、本件において取材を尽くしたものであり、本件各記事の内容を真実と信ずるについて相当の理由を有していた。
(原告らの主張)
ア 本件各記事には、公共性、公益目的は認められない。
イ 本件各記事の内容が真実でないこと
(ア) 本件各記事は、一般人の普通の注意と読み方を基準とすれば、原告A夫らがあたかも本件事件の真犯人であるかのように断定され、あるいはそうした印象を強く与える内容と解釈できるのであるから、本件における真実性の主張立証の対象は、「原告らが本件事件の真犯人であること」である。
(イ) そして、原告らが、本件事件の真犯人であったと認めることはできないし、また、本件事件の被疑者として捜査の対象となっていたことすら認めることはできないため、本件各記事の重要部分である「原告らが本件事件の真犯人であること」という点は虚偽であり、本件各記事の内容はいずれも真実ではない。
また、〈1〉原告らが本件事件当日に被害者宅を訪問することになっていたという事実、〈2〉原告A夫とD子夫妻との間に、自動車のカラローンに関する問題を含め、金銭トラブルがあったという事実、〈3〉原告A夫がD子に対して暴力を振るっていた事実、〈4〉原告A夫が通夜・葬式の席で保険金等の話をした事実、〈5〉原告A夫が前妻に暴力を振るったり、子供を連れ去った事実、〈6〉原告A夫が暴力団幹部とつながりがあり、暴力団及び中国人に対して殺害を依頼した事実についても、いずれも真実ではない。
ウ 本件各記事の内容が真実であると信ずるにつき、相当な理由がないこと
被告らが行った本件各記事に関する取材は、以下のとおり杜撰なものであり、被告らが、相当性を具備するに足りる取材を行ったとは評価できない。
(ア) まず、被告らは、本件各記事を掲載するについてアクセスした取材源のうち、己原、庚崎及びM夫の3名の氏名しか明らかにせず、その他の取材源に対して原告らが反対尋問を行う機会すら与えられていない。また、上記3名についても、証人尋問が実施されておらず、その供述に信用性は乏しい。
(イ) また、被告らは、本件各記事の根拠とする者らに対し、十分な取材も行っておらず、裏付けとなる書類の確認等も怠っているのであるから、相当な取材がなされたとはいえない。
(ウ) さらに、被告らが原告A夫に対して反対取材を行う際には、被告らは原告A夫が犯人ではないかという先入観ないしは偏見を抱いていたことが窺われ、また、本件各記事に書かれているテーマについて適切に質問を行っておらず、事前に質問書を交付するなどの工夫もしないままに漫然と取材を行ったにすぎないから、相当性を具備するに足りる反対取材を行ったとは到底評価できない。
また、原告B子に対する反対取材は、一切なされていない。
(3)  原告らの損害
(原告らの主張)
ア 慰謝料について
「a誌」は、発行部数が約55万部で、本件各記事の読者は非常に多く、特に原告らの居住する福岡市近辺においては、本件事件が与えた衝撃が極めて大きく、本件各記事の内容が極めて強い関心を呼んでいた。そして、6回にもわたって掲載された本件各記事の内容は、センセーショナルな表題等を用いながら、原告らが本件事件の真犯人であり、かつ、いかがわしい人物であるかのような印象をことさらに与えるものであるから、その影響力は極めて大きく、原告らの社会的評価を著しく低下させた。
また、原告らは、本件事件により最愛の家族を亡くした犯罪被害者の遺族であるにもかかわらず、本件事件の真犯人であるかのような本件各記事を掲載されることで、二重の痛みと苦しみを受け、また、このため、原告A夫が代表取締役を務めるb社の社会的評価及び業績も低下した。
しかも、本件各記事の主要な部分はいずれも全くの虚偽である上、被告らは裏付け調査を十分に行っておらず、原告らに対する十分な反対取材も行われていない。また、原告らは、政治家、芸能人又はスポーツ選手等と異なり、自ら弁明の機会を持つことはできず、自ら名誉を回復することができない。このように、原告らが、本件各記事によって被った精神的苦痛は甚大であった。
以上のような事情を考慮すれば、原告らの精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の額は、原告A夫に関して7000万円、原告B子に関して3000万円を下らない。
イ 弁護士費用について
原告らは、本件訴訟の提起及び追行を原告ら代理人弁護士らに委任し、報酬を支払う旨約した。被告らは、原告らに対し、この弁護士費用のうち、上記損害額の1割相当額(原告A夫に関して700万円、原告B子に関して300万円)を負担すべきである。
ウ 判決の結論の広告について
本件各記事の記載により、原告らが受けた有形無形の不利益の程度は極めて多大なものであり、しかも、被告らは、真犯人の逮捕や起訴、さらには有罪判決が出た後も、本件各記事の訂正や原告らに対する謝罪を一切行っていないことからすれば、民法723条の原告らの名誉を回復するのに適当な処分として、「a誌」誌上に別紙1記載の「判決の結論の広告」を別紙1記載の条件で掲載させる必要がある。
(被告らの主張)
原告らの損害に関する主張は、いずれも争う。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)の1(本件各記事の対象とされた人物が、読者において原告らと特定されるか否か)について
(1)  本件各記事は、平成15年7月10日から同年10月2日までの間に発行されたa誌1ないし6に、それぞれ掲載された記事である。本件各記事は、本件事件の内容や捜査状況等について報道したものであるが、この記事の中で、本件事件との関係が疑われる特定の人物を、「(被害者の)親族」、「親族の夫人」、「この男女」、「一組の夫婦」と記載し、この者らの素性、この者らと本件事件の被害者らとの関わり、さらには捜査機関においてこの者らの本件事件への関与が疑われていることなどが記載されている(甲1ないし6)。そして、原告らは、上記特定された人物である「親族」、「親族の夫人」等の記載は、原告らを対象としたものである旨主張し、被告らも、本件各記事が原告らを対象としたこと自体は争わない。したがって、上記特定された人物は原告らであるというべきである。
ところで、雑誌記事による名誉毀損の不法行為が成立するためには、当該記事の記載事実が特定人に関するものであるという関係が認められることが必要であり、当該記事が匿名記事であるときには、その記載に係る人物の属性等を総合することにより、不特定多数の者が、匿名であってもなお当該特定人について記載されたものと認識することが可能であることを要すると解される。そして、匿名記事の場合には、実名を挙げるなどして客観的に当該記事の対象者を特定した場合と比較すると、対象者を特定できる読者の範囲は限定されるが、実名が記載されていなくとも、記事の記載内容から、当該対象者の属性等について一定の知識、情報を有している者らによって、対象者の特定がなされる可能性があり、さらに、これらの者から、特定された対象者が不特定多数の第三者に伝播する可能性があれば、名誉毀損における対象者の特定については十分であるというべきである。
(2)  そこで、本件各記事について、不特定多数の者が、原告らについて記載されたものと認識することが可能であるか否か判断するに、上記争いのない事実等に加え、証拠(甲1ないし6、11ないし16、18、21ないし23、32、原告丙谷A夫、原告丙谷B子)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 本件各記事において記載されたD子の「親族」及び「親族の夫人」の属性につき、以下の事実が記載されている。
(ア) 本件記事1の記載
a 「D子さんの親族が戊野家を訪問したとされる十九日午後十時半ごろといえば、まさに被害者宅前で不審な車が目撃された時間である。男性が運転する白っぽい車で、助手席に乗っていた背の高い女性が、足早に戊野さん宅に入っていったという情報には、捜査本部も関心を寄せている。」(本件記載1の6)
b 「登記簿によると、親族は平成九年六月に衣料品の販売などを目的とする会社を設立している。」(a誌1の23ページ)
c 「取引関係のあったデパートなどの評判は、「催事のときにお願いしていますが、特に問題はありませんよ」と、決して悪くない。」(a誌1の23ページ及び24ページ)
d 「親族は今の夫人とは再婚。前妻と平成六年六月に離婚している。」(a誌1の24ページ)
e 「(「親族」と前妻の)二人の間には子供がいた」(a誌1の24ページ)
f 「(子供の年齢は)今、十七、八歳だと思います」(a誌1の24ページ)
g 「戊野さん夫婦は、その親族が経営する衣料品販売会社にかかわるようになっていた。」(a誌1の24ページ)
h 「(親族の会社は)ブランドを持たず、五十歳代以降のミセスを対象にした洋服を製造する会社で、そもそもこの会社は年商二、三億円はあったんです。百貨店が中心だったんです」(a誌1の24ページ)
i 「捜査本部では、戊野家に入っていった背の高い女性については「いまだ特定するには到っていない」という。だが、六月二十七日昼頃から、D子さんの親族と、その夫人に任意で同行を求め、約二時間にわたり事情聴取を行なっている。」(本件記載1の16)
j 「俺はずっとサラリーマンをやっとって、独立して七年になるんやけど」(「親族」の話)(a誌1の25ページ)
(イ) 本件記事2の記載
a 「H夫さん夫婦は、その親族が経営する衣料品販売会社にかかわっていた。」(a誌2の160ページ)
b 「親族の会社の仕事は、ミセス部門を親族、ヤング部門をH夫夫婦がやっていたんです。」(a誌2の160ページ)
(ウ) 本件記事4の記載
「この親族が経営する会社の東京営業所には、上海出身のPという中国人がいるとの情報もある。」(a誌4の144ページ、本件記載4の5)
(エ) 本件記事6の記載
「親族の衣料品会社を手伝っていた戊野さん夫婦」(a誌6の42ページ)
イ 原告らの属性について
(ア) 原告A夫は、父丙谷N夫(以下「N夫」という。)、母O子の長男であり、2歳下の妹と、7歳下のD子の三人兄弟である。
(イ) 原告A夫は、平成6年6月8日、前妻と離婚し、前妻との間に長男(昭和61年○月○日生)がある。
(ウ) 原告A夫は、大学を中途退学した後、衣料品を扱う株式会社岩久に就職し、約16年間勤務した後、長崎で前妻と衣料品を扱う店を経営したが、平成6年に前妻と離婚した後は福岡に戻り、平成9年6月11日、衣料品の販売等を主な業とするb社を設立した。b社は、福岡に本社がある他、東京にも営業所があり、本件事件当時、東京営業所に1人、福岡本社に3人の従業員がいた。また、東京営業所では中国人の従業員を雇っていたことがあった。
b社は、地元福岡の岩田屋、三越及び伊勢丹などのデパートの展示会で、衣料品を展示して販売したり、福岡の専門店に衣料品を卸したりしており、b社の取引先としては、デパートが全体の約8割から9割を占めている。また、b社は、「ミセス」を対象とした衣料品を扱っていた。
(エ) H夫とD子は、焼肉屋を経営していたが、平成12年3月ころのいわゆるBSE騒動により売上が減少し、平成13年には閉店した。このため、D子は、平成14年10月から2か月間、原告A夫の経営するb社のパートとして勤務し、同年11月下旬ころから、b社の「ヤング部門」として独立して仕事を始めた。なお、H夫は、b社のパートあるいは従業員として勤務したことはなかった。
(オ) 原告B子は、原告A夫の妻であり、原告B子の身長は、約165センチメートルである。
(カ) 原告らは、平成15年6月27日、福岡県警察から、原告A夫は自宅事務所において、原告B子は自宅マンションにおいて、それぞれ、本件事件に関する事情聴取をされた。
ウ 原告A夫は、本件各記事がa誌に掲載された後、b社の取引先の担当者、原告A夫の学生時代の友人や長崎時代の知人等から、本件各記事に関して、100件近い電話等による連絡を受けた。また、b社は、東京の京王デパートから商品の返品を受け、他の取引先からも取引を中止されたり、商品の返品を受けたりした。
一方、原告B子は、同様に、知人や友人等から、本件各記事に関して、多数の電話による連絡を受けるなどした。
(3)  上記(2)の認定事実によれば、本件各記事においては、原告らの氏名やイニシャル等は記載されておらず、原告らと関わりのない一般読者が本件各記事を読んだとしても、「親族」や「親族の夫人」等の記載が、原告らを対象としたものであると理解するのは容易ではないと認められる。
しかしながら、本件各記事においては、「親族」や「親族の夫人」等の属性等に関して、〈1〉「親族」が経営していた衣料品店につき、その設立の時期、業務内容や取引先、東京に営業所を有すること及び同営業所において中国人の従業員を雇用していたこと、その衣料品店でD子が働いており、D子が担当していた業務内容等が記載されていること(上記(2)ア(ア)b、c、g、h、(イ)a、b、(ウ)、(エ))、〈2〉「親族」の職歴、離婚歴及び離婚の時期、前妻との間に子があること及びその子供の年齢、「今の夫人」とは再婚であることなど「親族」及び「今の夫人」のプライバシーに関する事柄が記載されていること(上記(2)ア(ア)d、e、f、j)、〈3〉「親族とその夫人」が、事件直後の6月27日に警察から事情聴取をされたことが記載されていること(上記(2)ア(ア)i)、〈4〉背の高い女性であることが記載されていること(上記(2)ア(ア)a)が認められる。そして、上記(2)イの認定事実によれば、本件各記事に記載された「親族」の上記属性のうち〈1〉ないし〈3〉は、その重要な部分において原告A夫の属性と、〈2〉ないし〈4〉は、その重要な部分において原告B子の属性と一致していることが認められるのであり、上記属性を持つ「親族」や「親族の夫人」等は、原告ら以外にはない。
そうすると、本件各記事中に記載された「親族」や「親族の夫人」等の記載をもって、原告らの親族や、原告らの近隣に居住する者、原告らの友人、知人及びb社の関係者やb社の取引先の者など、原告らと何らかの関わりを有する者並びにD子の勤務先が同人の兄である原告A夫の会社であること等を知っているD子の親族、友人及び知人等が、本件各記事を読めば、本件各記事中の「親族」は原告A夫を、「親族の夫人」は原告B子を対象としたものであると理解することが十分に可能であると認めることができ、また、本件各記事が掲載された後に、現に原告らの知人や友人から原告らに対する連絡があり、b社の取引先からも、商品の返品や取引の中止がされたことからすれば、原告らの上記友人、知人等にとどまらず、更に不特定多数の第三者に、原告らが本件各記事の対象者であることが伝播した可能性もあるものと認められる。
なお、本件各記事のうち、本件記事3及び5には、原告らの属性について具体的に記載されていないが、本件各記事は、平成15年7月10日から同年10月2日までの短期間に発行されたa誌1ないし6の一連の記事であることからすれば、本件記事3及び5を含め、本件各記事において、不特定多数の者が、原告らについて記載されたものと認識することが可能であったものと認めることができる。
したがって、本件各記事の対象とされた人物が、読者において原告らであると特定されるものというべきである。
2  争点(1)の2(本件各記事により、原告らの社会的評価が低下するか否か)について
(1)  名誉毀損の不法行為は、対象とされる表現が、ある者の人格的価値についての社会的評価を低下させるものであれば成立し得るものである。
そして、ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断されるものと解される(最高裁判所昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁)。
(2)  そこで、本件各記事が、原告らの社会的評価を低下させるものであるか否かについて検討する。
ア 原告A夫の名誉毀損について
(ア) 本件記事1の各記載について
a 本件記載1の1は、本件記事1の表題であるところ、「この男女」とは、本件記事1の本文からすれば、「親族」及び「親族の夫人」を指していることは明らかであり、また、「親族」及び「親族の夫人」が原告らを指していると理解されることは上記1のとおりであるから、本件記載1の1は、原告A夫が、本件事件の犯人であり、捜査陣が原告A夫を標的にしているとの事実を摘示したものと認められる。
また、本件記載1の2は、本件記事1の見出しであるところ、本件記事1の本文からすれば、原告A夫が、本件事件当日の夜にH夫の自宅を訪れており、かつ、H夫夫婦と原告A夫との間にトラブルがあったとの事実を摘示したものと認められる。
そして、一般読者が週刊誌を読む場合には、表題や見出しの記載内容によって強く印象づけられ、その印象に導かれて記事全体を読むのが通常であると解されることからすると、この記載は、本文の記載とあいまって、一般読者に、原告A夫が本件事件の真犯人であるという強い印象で受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
b 本件記載1の4、1の5、1の6は、原告らが、本件事件が起きた当日の夜10時半ころ、本件事件の直前に、被害者宅を訪問する予定であった事実及びその時間に、被害者宅前で不審な車が目撃され、男性が運転する白っぽい車で、助手席に乗っていた背の高い女性が足早に被害者宅に入っていったという情報に捜査本部が関心を有しているとの事実を摘示したものと認められる。これらの記載は、一般読者に、原告A夫が、本件事件の直前に被害者宅を訪問した不審な人物であるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
c 本件記載1の3、1の9、1の12、1の13、1の14は、b社の経営が不振となっていたこと(本件記載1の12)、原告A夫が、D子との間でb社の出資金のことでもめていたこと(本件記載1の3)、D子が知人から借りた多額の金を原告A夫が使用したこと(本件記載1の9)、D子がb社で働くようになってからb社の売上が伸びたにもかかわらず、原告A夫がD子に対して給料を支払わなかったこと(本件記載1の13)、D子が働いて得たb社の売上につき、原告A夫が全て得ていたこと(本件記載1の14)など、原告A夫とD子との間に金銭等のトラブルがあったとの事実を摘示したものと認められる。これらの記載は、一般読者に、原告A夫が、給料の未払等のトラブルを起こすようないかがわしい人物であり、また、b社の経営が悪化する中で、本件事件の被害者であるD子との間で金銭等のトラブルを抱えており、原告A夫には、D子を殺害する動機があるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
d 本件記載1の7は、原告A夫が、D子に対し、いわゆる自動車のカラローンを組ませようとして、D子にこれを断られたとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、D子に対してカラローンを組ませようとするようないかがわしい人物であり、また、原告A夫とD子との間には金銭トラブルがあり、原告A夫にはD子を殺害する動機があるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
e 本件記載1の8は、本件記事1の見出しであるところ、本件記事1の本文からすれば、これは、原告A夫が、D子に対して、ライターを投げつけたとの事実を摘示したものと認められる。
また、本件記事1の9、1の11は、原告A夫が、D子に対して、ライターを投げつけたり、殴る、蹴る等の暴力を振るっていたとの事実を摘示したものと認められる。これらの記載は、一般読者に、原告A夫が、D子に対して暴力を振るう粗暴な人物であり、また、D子に対する暴力が高じて死に至らしめることもあり得るとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
f 本件記載1の10は、原告A夫が、前妻の両親に対して数千万円の借金を背負わせ、また、前妻に対して暴力を振るっており、さらに、前妻と別れた後で、前妻との間で生まれた子供を学校帰りに連れていったとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、粗暴かついかがわしい人物であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
g 本件記載1の15は、原告A夫が、H夫には愛人がおり、H夫との別れ話でもめたその愛人が、「一家全員殺してやる」と言っていたなどと虚偽の事実を述べていたとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、本件事件の後でこのような作り話をするようないかがわしい人物であり、また、本件事件の真犯人がH夫の愛人であるかのような作り話をすることで、自己の犯行の発覚を免れようとしているとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
h 本件記載1の17は、原告A夫が、D子らの通夜の晩に、涙も流さずに、保険金のことを気にしていたとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、本件事件により妹一家が亡くなったにもかかわらず、その通夜の晩に、涙も流さずに保険金のことを気にするようないかがわしい人物であり、また、D子らの死を悲しむこともなく保険金を気にするのは、原告A夫が本件事件の犯人だからであるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
(イ) 本件記事2の各記載について
a 本件記載2の1は、本件記事2の表題であるところ、本件記事2の本文からすれば、捜査員が持ち歩く本件事件の「犯人グループ」七人の顔写真の中に、「挙動不審な一組の夫婦」である原告らが含まれていることを、一般読者に推測させるものである。
また、本件記載2の2は、本件記事2の見出しであるところ、本件記事2の本文からすれば、H夫一家の葬儀の場において、原告らの挙動が不審であったとの事実を摘示したものと認められる。
そして、上記(ア)aのとおり、一般読者が週刊誌を読む場合には、表題や見出しの記載内容によって強く印象づけられることからすると、これらの記載は、本文の記載とあいまって、一般読者に、原告A夫が本件事件の真犯人であるとの強い印象で受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
b 本件記載2の3は、原告らが、本件事件の犯行当夜、被害者宅を訪問した事実及びこの事実に捜査本部が大きな関心を寄せている事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、本件事件の直前に被害者宅を訪問した不審な人物であり、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
c 本件記載2の4は、原告A夫が、本件記事1を見て絶句し、急に話題を変えたとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、上記(ア)のとおり原告A夫が本件事件の真犯人である旨摘示する事実が多数記載された本件記事1を見て、原告A夫が、自己の犯行の発覚をおそれるあまり、絶句し、話題を変えたとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
d 本件記載2の5は、原告A夫が、本件事件以降、不可解な行動や発言を繰り返しているとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、前後の文脈も考慮すると、一般読者に、原告A夫が不可解な行動や発言を繰り返すいかがわしい人物であり、また、本件事件の犯人であるがゆえに、本件事件後に不可解な行動や発言を繰り返しているとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
e 本件記載2の6は、原告A夫が、D子らの通夜の晩に、D子の保険金のことを気にしていたとの事実を摘示したものと認められる。この記載が、一般読者に、原告A夫がいかがわしい人物であり、また、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであることは、上記(ア)hと同様であり、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
f 本件記載2の7は、原告A夫が、通夜の晩に、H夫には愛人がおり、H夫との別れ話でもめたその愛人が、「一家全員殺してやる」と言っていたなどと虚偽の事実を述べていたとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫がいかがわしい人物であり、また、本件事件の真犯人がH夫の愛人であるかのような作り話をすることで、自己の犯行の発覚を免れようとしているとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
g 本件記載2の9は、原告A夫が、葬儀の際に、I夫を前にして妙に激しく号泣したり、火葬場ではI夫の骨が出るときだけ外に出ていたりと、おかしな態度を取っていたとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、葬式の際におかしな態度を取るようないかがわしい人物であり、また、I夫を前にしての態度がおかしいのは、原告A夫が本件事件の犯人であるがゆえの後悔等によるものであるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
h 本件記載2の10は、原告A夫が、葬儀の際に、現場の刑事ですら見ていない司法解剖書を持っている旨の虚偽の話をしたとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、葬儀の際に不可解な嘘を述べるようないかがわしい人物であり、また、葬儀の際にこのような不可解な言動をすることは、原告A夫が本件事件の犯人であるがゆえであるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
i 本件記載2の11、2の13、2の14は、原告A夫とH夫夫婦間には、数か月前からいざこざがあり(本件記載2の11)、原告A夫が、D子に対して給料を支払わず、D子が働いて得た会社の売上につき、D子の取り分まで原告A夫が得ており(本件記載2の13)、また、原告A夫が、本件事件の翌日に、H夫夫婦にこれまで支払われなかった売上げの一部を支払う約束になっていた(本件記載2の14)との事実を摘示したものと認められる。これらの記載は、一般読者に、原告A夫が、給料の未払等、複数の金銭トラブルを起こすようないかがわしい人物であり、また、本件事件の被害者であるH夫夫婦との間で金銭トラブルを抱えており、しかも、本件事件の翌日に、未払の売上金を支払わなければならない約束があったことから、原告A夫には、H夫夫婦を殺害する動機があるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
j 本件記載2の12は、原告A夫が、H夫に対し、いわゆる自動車のカラローンを組ませようとしたが、H夫にこれを断られたため、原告A夫が怒ったとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、H夫に対してカラローンを組ませようとするようないかがわしい人物であり、また、原告A夫とH夫との間には金銭トラブルがあり、原告A夫にはH夫を殺害する動機があるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
(ウ) 本件記事3の各記載について
a 本件記載3の1は、本件記事3の表題であるところ、本件事件の被害者と原告A夫との間にトラブルがあったとの事実を摘示したものと認められる。そして、上記(ア)aのとおり、一般読者が週刊誌を読む場合には、表題の記載内容によって強く印象づけられることからすると、この記載は、本文の記載とあいまって、一般読者に、被害者らとトラブルがある原告A夫が、本件事件の真犯人であると強い印象で受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
b 本件記載3の2は、本件事件の犯人がなぜ逮捕されないのかという疑問文の形式を採った見出しであるが、後記のとおり、本文中に原告A夫が真犯人である旨の印象を与える記載があることからすれば、一般読者に対し、原告A夫が犯人であるのに逮捕されていないことを暗に示唆するものということができるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
c 本件記載3の3は、H夫が生前、H夫夫婦が独立を目指していた会社を手伝う予定だったA氏に対し、悩みや愚痴をこぼしていたとの事実を摘示するものである。この記載は、本文中の本件記載3の6などの記載とあいまって、一般読者に対し、原告A夫がH夫を殺害する動機となるような金銭等のトラブルがあったことを示唆するものであると認められ、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
d 本件記載3の4は、被告らが、a誌1に記載された本件記事1の中で、本件事件の犯行当夜、原告A夫が被害者宅を訪問したこと及び原告A夫が、H夫夫婦にカラローンを組ませようとしていたことを指摘したとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、上記(ア)b及びdのとおり、一般読者に、原告A夫がいかがわしい人物であり、また、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
e 本件記載3の5は、原告A夫が、H夫に対して、カラローンを組むよう要求し、H夫がこれを断ったとの事実及びH夫が原告A夫の2000万円の借金の保証人になっていたとの事実を摘示するものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、H夫に対してカラローンを組ませようとするようないかがわしい人物であり、また、そのような原告A夫の多額の借金につき、H夫がこれを保証するなど、原告A夫とH夫との間に金銭トラブルがあることが窺われるのであり、原告A夫にはH夫を殺害する動機があるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
f 本件記載3の6は、原告A夫が、本件事件の1か月くらい前に、H夫に支払った売上金が、H夫らの取り分に足りないとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、H夫に対して相当な取り分の支払をしないようないかがわしい人物であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
g 本件記載3の7は、原告A夫が、通夜の席で、H夫の借金やD子の保険金について気にしていたなどの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、本件事件により妹一家が亡くなったにもかかわらず、その通夜の晩に保険金のことを気にするなどいかがわしい人物であり、また、上記(ア)hのように、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
(エ) 本件記事4の各記載について
a 本件記載4の1は、本件記事4の表題であるところ、本件事件の「実行犯中国人と黒幕の「接点」」との記載は、一般読者をして、本件事件には、実行犯の他に「黒幕」がいたと強く印象づけるものである。そして、本件記事4の本文の記載(本件記載4の4等)の内容にかんがみれば、一般読者は、本件記載4の1により、「黒幕」が、「親族」すなわち原告A夫のことであり、原告A夫が中国人グループにH夫の殺害を依頼したのではないかということを推測することが明らかである。そうすると、上記(ア)aのとおり、一般読者が週刊誌を読む場合には、表題の記載内容によって強く印象づけられることも考慮すれば、この記載は、一般読者に、原告A夫が本件事件の真犯人であると強い印象で受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであることが認められるのであり、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
b 本件記載4の2は、「暴力団と中国マフィア」との見出しであるが、かかる記載によっては、一般読者が、本件事件の真犯人は原告A夫であると受け止めることになるとも考えられず、原告A夫の社会的評価を低下させるものとは解されないから、本件記載4の2は、原告A夫の名誉を毀損するとは認められない。
c 本件記載4の3は、本件事件の「黒幕」が、暴力団関係者でないならば、暴力団に殺害を依頼して、暴力団が中国人を雇うというケースがあるという事実を摘示するものと認められる。この記載は、前後の文脈に照らすと、一般読者に、「黒幕」である原告A夫が、暴力団に被害者一家の殺害を依頼し、原告A夫から依頼を受けた暴力団が、中国人を雇って本件事件を実行させたとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
d 本件記載4の4は、原告A夫が、H夫との間で数々の金銭トラブルを抱えており、捜査当局も重大な関心を示しているとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、H夫と金銭トラブルを起こすようないかがわしい人物であり、また、本件事件の被害者であるH夫との間で金銭トラブルを抱えている原告A夫には、H夫を殺害する動機があり、しかも捜査当局にも注目されている人物であるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
e 本件記載4の5は、原告A夫の経営する会社の東京営業所には、中国人の従業員がいるとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、「事件との直接の関わりは不明だが」との前置きを付してはいるものの、中国人により本件事件が実行されたという本件記事4の内容からすれば、一般読者に、原告A夫が経営する会社に中国人の従業員がいることから、原告A夫は、実行犯の中国人とも何らかの接点があるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
(オ) 本件記事5の各記載について
a 本件記載5の1は、本件記事5の表題であるところ、一般読者をして、「捜査本部が行方を追う暴力団幹部」が、原告A夫のことを指していると理解させるものとまでは解されないから、かかる記載によっては、一般読者が、本件事件の真犯人は原告A夫であると受け止めることになるとも考えられず、原告A夫の社会的評価を低下させるものとは解されないから、本件記載5の1は、原告A夫の名誉を毀損するとは認められない。
b 本件記載5の2は、本件事件の実行犯である中国人グループと、捜査本部が追う暴力団幹部の背後に、「黒幕」がいるとの事実を摘示したものと認められる。そして、本件記事5の内容にかんがみれば、一般読者は、「黒幕」が「親族」すなわち原告A夫を指していると理解することは明らかである。そうすると、この記載は、一般読者に、原告A夫が本件事件の真犯人であると強い印象で受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
c 本件記載5の3は、原告A夫が、H夫との間で数々の金銭トラブルを抱えており、捜査当局も重大な関心を示しているとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、H夫と金銭トラブルを起こすようないかがわしい人物であり、しかも捜査当局にも注目されている人物であるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
d 本件記載5の4は、原告A夫と暴力団幹部の○○が、数年前からの知り合いであるとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、暴力団幹部と知り合いであるようないかがわしい人物であり、また、本件事件の犯人として捜査本部に追われているという暴力団幹部と知り合いであるということは、その前後の文脈に照らして考えれば、原告A夫が本件事件の「黒幕」すなわち本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
e 本件記載5の5は、捜査関係者の話として、本件事件の犯行の構図ができあがったとの事実を摘示するものである。この記載は、前後の文脈に照らすと、一般読者に、捜査当局においても、原告A夫が「黒幕」であるという犯行の構図ができあがったものと認識して捜査しているとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
(カ) 本件記事6の各記載について
a 本件記載6の1は、本件記事6の表題であるところ、本件事件の犯人である中国人グループに、殺害を指示した日本人がいたとの事実を摘示したものと認められる。そして、本件記事6の本文の記載の内容にかんがみれば、一般読者は、「殺害を指示した日本人」が、「親族」すなわち原告A夫のことを指していると理解することは明らかである。
また、本件記載6の2は、本件記事6の見出しであるところ、本件記事6の本文からすれば、本件事件を実行した中国人犯行グループに殺害を指示した人物がおり、H夫と金銭トラブルを抱えていた原告A夫が、中国人グループに殺害を依頼したのではないかとの印象を与えるものであると認められる。
そして、上記(ア)aのとおり、一般読者が週刊誌を読む場合には、表題や見出しの記載内容によって強く印象づけられることからすると、これらの記載は、本文の記載とあいまって、一般読者に、原告A夫が本件事件の真犯人であるとの強い印象で受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
b 本件記載6の3、6の4、6の5は、本件事件を実行した中国人犯行グループに殺害を指示した人物がいる事実、中国人犯行グループと被害者一家との間には直接の接点はない事実、原告A夫がH夫と金銭トラブルを抱えていたとの事実、捜査本部が作成した相関図には原告A夫から暴力団幹部△△に対し矢印で「依頼?」と書かれているという事実を摘示したものと認められる。これらの記載は、本件記載6の6、6の7、6の8、6の9とあいまって、一般読者に、H夫と金銭トラブルを抱えていた原告A夫が、暴力団幹部を通じて実行犯である中国人グループに殺害を依頼したのではないかとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
c 本件記載6の6、6の7、6の9は、原告A夫とH夫夫婦との間には、金銭トラブルが絶えず(本件記載6の6)、原告A夫が、H夫夫婦に対して給料を支払わず(本件記載6の7)、また、原告A夫が、6月20日に、H夫夫婦に入金をする約束になっており、この日は原告A夫にとって、仕入れ代金の支払日でもあった(本件記載6の9)との事実を摘示したものと認められる。これらの記載は、一般読者に、原告A夫が、給料の未払等、複数の金銭トラブルを起こすようないかがわしい人物であり、また、本件事件の被害者であるH夫夫婦との間で金銭トラブルを抱えており、しかも、本件事件の翌日が仕入れ代金の支払日でもあったことから、原告A夫には、H夫夫婦への支払を避けるために、H夫夫婦を殺害する動機があるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
d 本件記載6の8は、原告A夫が、H夫に対し、いわゆる自動車のカラローンを組ませようとしたが、H夫にこれを断られたため、原告A夫が怒り、原告A夫とH夫との関係がおかしくなったとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告A夫が、H夫に対してカラローンを組ませようとするようないかがわしい人物であり、また、原告A夫とH夫との間には金銭トラブルがあり、原告A夫にはH夫を殺害する動機があるとの印象を与え、原告A夫が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告A夫の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告A夫の名誉を毀損するものということができる。
イ 原告B子の名誉毀損について
(ア) 本件記事1について
a 本件記載1の1は、本件記事1の表題であるところ、「この男女」が原告らを指していると理解されることは上記ア(ア)aのとおりであるから、本件記載1の1は、原告B子が、本件事件の犯人であり、それゆえに、捜査陣が原告B子を標的にしているとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告B子が本件事件の真犯人であると強い印象で受け止めさせるものであるから、原告B子の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告B子の名誉を毀損するものということができる。
b 本件記載1の5、1の6は、原告らが、本件事件が起きた当日の夜10時半ころ、本件事件の直前に、被害者宅を訪問した事実及びその時間に、被害者宅前で不審な車が目撃されたとの事実を摘示したものと認められる。これらの記載は、一般読者に、原告B子が、本件事件の直前に被害者宅を訪問した不審な人物であり、原告B子が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告B子の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告B子の名誉を毀損するものということができる。
c 本件記載1の16は、H夫の自宅に入っていった女性を特定できていない捜査本部が、平成15年6月27日、原告B子に任意で同行を求め、約2時間にわたって事情聴取を行ったとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、本件記載1の5及び1の6とあいまって、一般読者に、捜査本部が、本件犯行前にH夫の自宅に入っていった人物が原告B子ではないかとの疑いを持って事情聴取したとの印象を与え、原告B子が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告B子の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告B子の名誉を毀損するものということができる。
(イ) 本件記事2について
a 本件記載2の1、2の2は、本文の記載とあいまって、一般読者に、原告B子が本件事件の真犯人であるとの強い印象を与えるものであることは、上記ア(イ)aのとおりであるから、原告B子の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、これらの記載は、原告B子の名誉を毀損するものということができる。
b 本件記載2の8は、原告B子が、葬儀の時に、妊婦が歩いているようなおかしな歩き方をしており、参列者に「怪我でもしたのかな?」と思われていたとの事実を摘示したものと認められる。この記載は、一般読者に、原告B子は本件事件の際に怪我をしたために、歩き方がおかしくなったとの印象を与え、原告B子が本件事件の真犯人であると受け止めさせるものであるから、原告B子の社会的評価を低下させるものであると認められる。したがって、この記載は、原告B子の名誉を毀損するものということができる。
(3)  以上によれば、本件各記事は、一般読者の普通の注意と読み方を基準にした場合、以下のとおり、原告らが本件事件の真犯人であり、また、原告A夫がいかがわしい人物であるとの事実を摘示するものであって、原告らの社会的評価を低下させ、原告らの名誉を毀損するものと認められる。
すなわち、本件各記事は、原告らが本件事件の真犯人であるとの事実を摘示したものであることは上記(2)ア、イ認定のとおりであり、また、原告A夫がいかがわしい人物であるとの事実を摘示したものであることも上記(2)ア認定のとおりである。もっとも、本件各記事が原告B子がいかがわしい人物であることを摘示したものであるとの原告らの主張(上記第2の2(1)イ原告らの主張(イ)c)については、原告B子が警察による事情聴取を受けたとの事実(本件記載1の16)及び原告B子が葬儀の時におかしな歩き方をしていたとの事実(本件記載2の8)は、いずれも原告B子が本件事件の真犯人であるとの事実の摘示としてはともかく、それとは別の観点から、原告B子がいかがわしい人物であると受け止められるとは考えられないので、本件各記事が原告B子がいかがわしい人物であることを摘示したものであるとは認めるに足りない。
これに対し、被告らは、本件各記事は本件事件の捜査の動きと捜査当局の見方を報じたものであり、原告らを本件事件の真犯人であると指摘する箇所は存在しないから、原告らの名誉を毀損しない旨主張する。確かに、本件各記事の中で、原告らが本件事件の真犯人であると断定して記載された箇所は存在しないが、本件各記事の一連の内容やその表現方法等にかんがみると、一般読者の普通の注意と読み方からすれば、本件各記事の内容は、上記のとおり、原告らが本件事件の真犯人であるとか、原告A夫がいかがわしい人物であるとの印象を与えるものであって、原告らの社会的評価を低下させるものであると認められる。また、被告らが本件各記事をいかなる意図で作成したかは、本件各記事が原告らの社会的評価を低下させるか否かを判断する上で、考慮されるべき事項ではない。したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
また、被告らは、本件各記事に記載された個々の内容について、原告A夫の社会的評価を低下させるものではない旨縷々主張するが、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断する限り、上記認定に反する被告らの主張は採用することができない。
3  争点(2)(違法性阻却又は責任阻却事由の存否)について
(1)  事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、当該行為には違法性がなく、仮に、当該事実が真実であることの証明がないときにも、行為者において当該事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定されるものと解すべきである(最高裁判所昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁、最高裁判所平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁)。
(2)  そこで、本件について検討するに、証拠(乙4ないし7、証人丑木P夫、証人寅葉Q夫、証人卯波R子、原告丙谷A夫、原告丙谷B子)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア a誌の編集部は、平成15年6月20日にH夫ら一家四人の遺体が発見されると、すぐに、丑木P夫(以下「丑木」という)を統括として、寅葉Q夫(以下「寅葉」という。)、卯波R子(以下「卯波」という。)他2名の合計5名の記者で取材班を構成し、同月21日福岡に行き、取材を開始した。
イ 丑木は、被害者宅の近隣住民に取材を行い、犯行前夜に、被害者宅付近に自動車が止まり、この自動車には、運転席に男性一人と、背の高い女性が乗っていたこと、犯行日の午前4時ころ、被害者宅の前に泊まっていた黒い車の運転席と助手席から人が出てきたが、助手席から出てきた人物は女性であったこと、また、平成15年7月2日、捜査員が原告らの顔写真を含む6枚の写真を持ち歩いて聞き込みを行っていたとの情報を得た。
また、丑木は、警察関係者に対する取材等を行い、その取材の過程で、平成15年6月28日ころ及び同年7月5日ころ、捜査官が原告らの自宅付近に止めた車両から、原告らの動静を探っていたことを確認した。また、福岡地方検察庁の次席検事は、同年9月9日、各社に対するレクチャーの場で、本件事件には黒幕がいると思う旨発言した。もっとも、同月13日に本件事件の被疑者として壬E男が逮捕された際に、福岡県警察本部は、黒幕はいないとの公式発表をしたが、丑木が捜査員に個別に取材をしたところ、黒幕はいると思う旨述べる者もいた。
さらに、丑木は、H夫の友人である己原及びD子から相談を受けていた庚崎に取材をし、同人らから、原告A夫とH夫夫婦との間の金銭トラブルやカラローンについての情報を得、また、M夫に取材をし、H夫らの葬儀の場での原告A夫の言動についての情報を得た。
ウ 卯波は、福岡の現地に入った後、H夫の友人であった人物(以下「友人A」という。)に取材をし、同人から、金に困っていた原告A夫が、車を担保に300万円を借り入れた旨の話を聞いた。もっとも、卯波は、上記借入れの事実につき、書類等による確認はしなかった。
また、卯波は、友人Aから、平成15年6月29日、原告A夫が、同月19日夜に被害者宅に行くことになっていたこと、原告A夫がD子に対して自動車のカラローンを組ませようとするなど、原告A夫とD子の間に金銭トラブルがあったこと、原告A夫が、D子に対して暴力を振るっていたことなどの話を聞いた。卯波が友人Aから聞いた話は、D子が、D子の友人(以下「友人B」という。)にしたという話を、友人Bが夫に話し、その夫が別の友人に話し、その友人から、友人Aが聞いたというものであった。そして、卯波自身は、友人Bに対する取材をしなかった(なお、証人卯波R子は、寅葉が友人Bに対する取材をした旨証言するが、証人寅葉Q夫は、友人Bに対する取材を行っていない旨供述をしており、他に、a誌の編集部において、友人Bに対する取材をしたと認めるに足りる証拠はない。)。
また、卯波は、本件事件の捜査本部に属しているという捜査官から、本件事件の犯人については、被害者の親族を含む被害者の周辺人物との金銭トラブルに注目している旨の話を聞いた。もっとも、卯波は、この話を聞いた際、これが具体的に誰についてのどのようなトラブルであるのかについては分からなかった。
さらに、卯波は、当時の取材において、H夫と同人を取り巻く親戚との間では、原告A夫との間以外にも複数の金銭トラブルがあったと聞いていた。
エ 寅葉は、平成15年6月29日、原告A夫に取材をし、原告A夫から、原告A夫とH夫の関係や、D子とb社の関係等について話を聞いた。
また、寅葉は、卯波が上記ウの取材により得た情報に基づき、同月30日、再び原告A夫に取材をし、同月18日にD子と会ったのではないか、同月19日の夜に被害者宅へ行くことになっていたのではないか、自動車のカラローンを組んだことがあるのではないかなどと質問したが、原告A夫は上記質問に対していずれもこれを否定した。
その後、寅葉は、原告A夫に対し、取材を申し入れたが、原告A夫はこれに応じなかった。
オ 原告らは、平成15年6月27日に、別々の場所で、警察から事情聴取をされたが、その際、原告A夫は、b社の金銭の流れ等について、警察官から説明を求められた。もっとも、この事情聴取の際、原告らは、警察官から、黙秘権の告知をされなかった。また、原告A夫は、警察官から、犯人の被害者宅への侵入経路や遺体を結んだ紐が掃除機のコードであったこと等、本件事件の捜査内容について説明された。
(3)  本件各記事が真実であるか否かについて
ア 本件各記事の真実性の証明対象について
上記2(3)で説示したとおり、本件各記事は、一般読者の普通の注意と読み方を基準にした場合、原告らが本件事件の真犯人である旨を摘示し、また、原告A夫がいかがわしい人物である旨を摘示する内容の記事であり、読者にこのような印象を与えることによって、原告らの名誉を毀損するものである。したがって、真実性の証明の対象となる事実は、原告らが本件事件の真犯人であること及び原告A夫がいかがわしい人物であることという事実である。
これに対し、被告らは、本件各記事は、捜査当局が原告A夫に重大な関心を寄せていたことを述べたものであり、原告A夫が真犯人であると報じたものではないため、真実性の証明対象は、「当該人物が真犯人であること」ではなく、「捜査当局が、当該人物に関心を寄せていること」である旨主張する。しかし、上記2(3)で説示したとおり、本件各記事を一般読者が普通の注意と読み方で読んだ場合、本件各記事は、捜査当局が原告らに関心を寄せているとの事実に止まらず、原告らが本件事件の真犯人であるとの事実までを摘示したものということができるのであるから、被告らの報道意図がどうであれ、真実性の証明対象は「原告らが真犯人であること」と解すべきである。したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
イ 本件各記事のうち、原告らの名誉を毀損する部分が、真実であるか否かについて
(ア) 本件全証拠によっても、原告らが本件事件の真犯人であったとは認めるに足りない。よって、本件各記事のうち、原告らが本件事件の真犯人である旨を摘示した部分は、真実であるとは認められない。
(イ) 次に、原告A夫がいかがわしい人物であるとの印象を与える部分の記事の真実性につき検討する。
a まず、本件各記事のうち、原告A夫が、D子やH夫との間で、金銭トラブルを起こしていたとの事実(本件記載1の3、1の9、1の13、1の14、2の11、2の13、2の14、3の5、3の6、4の4、5の3、6の6、6の7、6の9)及びH夫及びD子に対して、いわゆる自動車のカラローンを組ませようとしていたとの事実(本件記載1の7、2の12、3の4、3の5、6の8)については、これに沿う証拠としては、庚崎の陳述(乙5)、庚崎及び己原の供述を聞いた丑木の陳述(乙4)及び証言並びに友人Bの話を伝え聞いた友人Aから話を聞いた卯波の陳述(乙7)及び証言等がある。しかしながら、これらの証拠はいずれも、H夫夫婦あるいは第三者からの伝聞供述であり、誤りが混在する可能性が否定できないところ、その真偽を確かめるための原供述者らに対する反対尋問による吟味も経ておらず、上記の者らの供述内容を裏付ける物証等もない。他方、原告らは、原告A夫とH夫夫婦との間に金銭トラブルがあった事実や、原告A夫がH夫夫婦に対しカラローンを組ませようとした事実につき、これを明確に否定しており(甲12、13、18、原告丙谷A夫、原告丙谷B子)、原告らの主張に沿う証拠として、原告A夫及びD子の父親であるN夫の陳述(甲20)並びにb社の税務を担当している辰口S夫や、b社の従業員らの陳述(甲21ないし23)及び証言(証人辰口S夫、証人巳上T夫)がある他、D子への給料等の支払を証する書類等(甲28の1及び2、33、34)の物証を提出している。以上の証拠関係を総合考慮すると、原告A夫とH夫夫婦との間に金銭トラブルがあったとの事実及び原告A夫がH夫夫婦に対しカラローンを組ませようとした事実が真実であったとは認めるに足りないものというべきである。
b 次に、原告A夫が、H夫の愛人に関し、虚偽の話をしたとの事実(本件記載1の15、2の7)については、これに沿う証拠としては庚崎の陳述(乙5)があるが、同人の陳述では、原告A夫の具体的な発言内容等は明らかではなく、しかも、原告A夫はこれを明確に否定している(甲18、原告本人丙谷A夫)ことなどを考慮すると、上記の庚崎の陳述のみでは、上記事実が真実であるとは認めるに足りないものというべきである。
c 次に、原告A夫が、通夜などの場で、涙も流さずにD子の保険金のことを気にしていたり、妙に号泣したり、司法解剖書を持っていると言うなど態度がおかしいとの事実(本件記載1の17、2の5、2の6、2の9、2の10、3の7)については、まず、原告A夫が司法解剖書を持っていると発言したとの事実については、原告A夫の陳述(甲18)及びN夫の陳述(甲20)によると、原告A夫が火葬場で警察官から検視結果の文書を受け取った事実が認められるものの、葬儀の場において原告A夫が司法解剖書を持っている旨の発言をしたことについては、これを認めるに足りる証拠はない。その他の葬儀の際の原告A夫の言動については、M夫がこれを目撃していたとする丑木の陳述(乙4)及び庚崎の陳述(乙5)があるものの、M夫や庚崎に対する反対尋問も経ておらず、しかも、原告A夫はこれを明確に否定しており(甲18、原告本人丙谷A夫)、原告らの主張に沿う証拠として、H夫らの葬儀に参列していたN夫の陳述(甲20)や、b社従業員巳上T夫の陳述(甲22)及び証言などがあることを総合考慮すれば、上記丑木の陳述及び庚崎の陳述によっても、上記事実が真実であるとは認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、上記事実が真実であるとは認めるに足りないものというべきである。
d 次に、原告A夫が、D子に対して暴力を振るっていたとの事実(本件記載1の8、1の9、1の11)については、これに沿う証拠としては、庚崎の陳述(乙5)及び友人Bの話を伝え聞いた友人Aから話を聞いた卯波の陳述(乙7)並びに証言等がある。もっとも、上記の証拠はいずれも、伝聞供述であり、反対尋問による吟味も経ていないし、上記の者らの供述内容を裏付ける物証もなく、他方、上記事実につき、原告A夫はこれを明確に否定しており(甲12、18、原告本人丙谷A夫)、原告らの主張に沿う証拠として、N夫の陳述(甲20)並びにb社の従業員ら関係者の陳述(甲21ないし23)及び証言(証人辰口S夫、証人巳上T夫)がある。以上の証拠関係を総合考慮すると、上記庚崎の陳述及び卯波の陳述等によっても、上記の事実が真実であるとは認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、上記各事実が真実であるとは認めるに足りない。
e さらに、原告A夫が、前妻の両親に対して数千万円の借金を負担させ、前妻に暴力を振るい、前妻との間の子供を連れ去ったとの事実(本件記載1の10)及び原告A夫が暴力団幹部と知り合いであるとの事実(本件記載5の4)については、これらの事実が真実であると認めるに足りる証拠はない。したがって、上記各事実が真実であるとは認めるに足りない。
f 以上によれば、本件各記事における原告A夫がいかがわしい人物であるとの事実が真実であるということはできない。
(4)  本件各記事の内容が真実であると被告らが信じたことにつき、相当の理由があるか否かについて
ア 被告らは、本件事件につき、多数の者に対して取材を行うことによって、本件各記事の内容を真実と確信したものであるから、本件各記事の内容が真実であると信ずるについて相当の理由がある旨主張する。
イ そこで検討するに、原告らが本件事件の真犯人であるとの事実に関しては、確かにa誌の編集部の記者ら(以下、単に「記者ら」という。)は、上記(2)のとおり、近隣住民、被害者の知人及び友人、警察関係者らに取材等を行ったことが認められる。
しかしながら、記者らが、近隣住民への取材により、犯行直前に、男性一人と背の高い女性が乗った車が被害者宅の前に停まった旨の供述を得、また、友人Aへの取材により、犯行前日である平成15年6月19日夜に、原告A夫が被害者宅を訪問することになっていた旨の供述を得ていたとしても、他方、原告A夫は、寅葉の取材に対し、これを否定していたのである。また、卯波に対し、原告A夫が被害者宅を訪問することになっていたとの情報を提供した友人Aは、卯波自身の陳述によっても、原告A夫に対し強い反感を抱いていることが窺え(乙7)、かつ、その情報はD子から友人B、その夫、夫の友人を経由して友人Aの知るところとなったという複数の伝聞過程を経たものであって、このような伝聞過程を経た供述の信用性は、一般的に乏しいものであるにもかかわらず、友人Bに対する裏付けのための取材はされていない(上記(2)ウ)。したがって、これらの事実に照らすならば、被告らにおいて、原告A夫が犯行前日の夜に被害者宅を訪問したことが真実であると信じたことについて相当な理由があったとはいえない。
また、記者らは、本件事件の捜査本部に属しているという捜査官から、本件事件の犯人については、被害者の親族を含む被害者の周辺人物との金銭トラブルに注目している旨の話を聞いたが、当該捜査官の供述自体は、一般的な供述であって、原告A夫を容疑者として特定するものではなく、また、当時の取材で被告らは、H夫を取り巻く親戚との間では、原告A夫以外にも複数の金銭トラブルがあった旨の情報を得ていながら、証拠上、他の親族との金銭トラブルに関しては何らかの裏付け取材を行った形跡が見られない。また、下記のとおり、記者らが、原告A夫とH夫及びD子との間の金銭トラブルについて、原告A夫に対する裏付け取材を十分に行ったとも認められないから、被告らにおいて、原告A夫が金銭トラブルを理由にH夫らを殺害したと信ずることについて相当な理由があったとは認められない。
さらに、記者らは、本件事件の捜査官らに対して取材等を行ったことが認められるが、捜査官らから、原告A夫が本件事件の真犯人であるとして捜査をしている旨の明確な供述を得たわけではない。また、福岡地方検察庁の次席検事や捜査官らが本件事件の「黒幕」につき言及しているものの、記者らは、この「黒幕」が原告らのことを意味する旨を聞き出したわけでもない。さらに、捜査官らが原告らの事情聴取を行ったことや、原告らの自宅付近に駐車した捜査車両から原告らの動静を確認していたことがあったことは認められるが、原告らの事情聴取は、黙秘権の告知もなく、回数も1回程度であって、これほどの重大事件について、捜査機関が真実、原告A夫が真犯人であると考えていたのであれば、複数回の取調べ等念入りな捜査が行われているはずであることを考えると、原告らに対する事情聴取が行われていたことをもって、被告らにおいて原告らが真犯人であると信ずる相当な理由があったとはいえず、また、原告らの動静を捜査官らが確認していた事実があったとしても、これが直ちに原告らが真犯人であると信ずる相当な理由になるともいえない。
以上のとおり、本件に現れた全証拠によっても、被告らが、本件事件の真犯人は原告らであると信ずることにつき、相当の理由があったとは認めるに足りない。
ウ 次に、原告A夫がいかがわしい人物であるとの事実に関しても、確かに、記者らは、上記(2)のとおり、複数の人物に取材等を行ったことが認められる。しかしながら、本件事件の重大性及び本件各記事が持つ影響力の大きさ等にかんがみれば、被告らは、本件各記事を報道する際には、綿密な取材を経た上で、誤りがないことを十分に確認すべきであったところ、実際に取材に当たった丑木、寅葉及び卯波らの記者は、取材対象者からの話に一方的に依拠し、その裏付け調査を十分に行っておらず、たとえば、原告A夫とH夫夫妻又は前妻の両親との間の金銭貸付けの有無に関する預金通帳の写しや伝票類の写し等の書類、カラローンについての契約書等の書類、D子や前妻への暴力に対する診断書等の書類など、本件各記事に掲載した事実を裏付けるような資料の収集が全く行われていない上、さらに、丑木の証言等本件に現れた証拠によれば、被告らが裏付けを取る努力をした形跡すら認められない。
また、被告らの重要な取材源としては、卯波が取材した友人Aが挙げられるところ、同人の氏名等は明らかになっていない上、原告A夫とD子との間に金銭トラブルがあったという事実についての友人Aの情報の入手経路は、上記と同様、D子が、友人Bにした話を、友人Bが夫に話し、その夫の友人を通じて友人Aに伝わったというものであって、このような伝聞過程を経た供述内容の信用性は一般的に乏しいのであるから、被告らは、友人Aの供述内容に基づき記事を書くのであれば、上記の各伝聞過程につき、慎重に真偽のほどを確かめる必要があったものと解される。しかしながら、友人Aに対して直接取材に当たった卯波は、D子から直接話を聞いたと思われる友人Bに取材を行っていないなど、本件各記事の掲載に当たり、被告らが誠実な取材を行っていたかどうかは、甚だ疑わしいといわざるを得ない。
また、被告らは多数の者に取材を行ったというものの、被告らが明らかにした取材源は、M夫、己原、庚崎の3人にすぎず、しかも、M夫、己原については、同人らの陳述又は証言が証拠として提出されておらず、M夫に至っては、証人として採用され、尋問期日が予定されながら、尋問期日当日に出廷しなかったのであり、その取材源による証拠価値については疑問が残るものといわざるを得ない。
さらに、被告らは、本件各記事の掲載に当たって、原告A夫に十分な取材を行っておらず、原告B子に対しては、取材そのものを行っていない。この点、寅葉は、原告らに対しても取材の申し入れを行ったが断られた旨を証言しているが、たとえそうであっても、被告らが、取材した内容の真偽を原告らに十分確認することもなしに、本件各記事を掲載した事実には変わりがないから、原告らが被告らの取材を拒否したとの事実は、被告らが本件各記事の内容を真実であると信じたことについての相当性を基礎づける理由にはならない。
以上によれば、本件各記事を掲載するに当たって被告らが行った取材等は、十分な裏付け調査も行われていない杜撰なものであったというほかなく、したがって、被告らが、本件各記事に掲載した原告A夫が粗暴で非人間的ないかがわしい人物であるとの事実が、真実であると信ずることにつき、相当の理由があるとは認められない。
(5)  以上によれば、本件各記事については、その内容が真実であると認めることができず、また、被告らにおいて、本件各記事の内容が真実であると信ずるについて相当の理由があるものと認めることもできない。
したがって、本件各記事が、公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあるか否かについて判断するまでもなく、被告らの違法性阻却事由又は責任阻却事由の存在は認めることができない。
よって、被告Y2は民法709条の不法行為責任に基づき、被告会社は民法715条の使用者責任に基づき、原告らに対し、名誉毀損の責任を負うものというべきである。
4  争点(3)(原告らの損害)について
(1)  慰謝料について
証拠(甲11ないし13、原告丙谷A夫、原告丙谷B子)によれば、原告らは、a誌に本件各記事が掲載されたことにより、名誉を毀損され、多大な精神的苦痛を被ったことが認められる。
そして、名誉毀損の慰謝料の額は、これが報道による場合には、その報道がされた場所的範囲の広狭、当該報道の影響力の程度、その報道の内容や表現の態様、被害者が被った現実的な不利益あるいは損害、被害者の年齢、職業、社会的地位等、報道の真実性の程度やこれを真実と信じたことの相当性の程度、取材対象や方法の相当性、事後的事情による名誉回復の度合等、諸般の事情を考慮して個別具体的に判断されるべきものである。
これを本件についてみるに、上記争いのない事実等によれば、a誌は、発行部数(実売部数)約55万部の全国誌であり、本件事件が起きたすぐ後から、6回にわたり、本件各記事の掲載が続けられたこと、また、本件事件は、他に類を見ないような悲惨な事件であって、本件事件に対する社会の関心が高かったことは容易に推測されることからすると、本件事件の真犯人に関して報じられた本件各記事を多くの読者が目にしており、本件各記事が社会に与えた影響は非常に大きいものであったことが認められる。
そして、本件各記事の内容は、原告らが本件事件の真犯人であるかのように記載し、また原告A夫がいかがわしい人物であるかのように記載することで、原告らの名誉を毀損するものであるが、本件事件の残虐な行為態様にかんがみれば、本件事件の真犯人である旨を報道されたことにより原告らが被った精神的苦痛は多大なものであったことは容易に認められるのである。
しかも、本件事件の重大性及び本件各記事が社会に与えるであろう影響力の大きさ等にかんがみれば、被告らは、本件各記事を出版する際には、綿密な取材を経た上で、その記載内容に誤りがないことを十分に確認すべきであったところ、原告らの名誉を毀損する本件各記事の内容の主要な部分はいずれも真実であるとは認められず、また、被告らは、これを真実であると信ずるのが相当であると言い得るに足りる十分な裏付け調査等を行っておらず、特に、原告らに対する十分な反対取材も行われていないなど、不十分な取材しかなされていないことは、上記3(4)のとおりである。
もっとも、本件各記事においては、原告らを表すのに実名は使用されておらず、「親族」、「親族の夫人」といった抽象的な表現が使用されるに止まっていることからすれば、本件各記事において真犯人扱いされている人物が、原告らのことを指していると認識し得る者は、原告らのことを知っている者及びその周辺にいる者並びにこれらの者から伝え聞く人々といった比較的限られた者に限定されていると解されるため、原告らの社会的評価の低下の程度は、実名報道に比較すれば、なお小さいものといえる。
以上の諸事情その他本件に現れた一切の事情を総合勘案すれば、原告らが名誉を毀損されたことにより被った精神的苦痛を慰謝するには、原告A夫につき800万円、原告B子につき200万円をもって相当であるというべきである。
(2)  弁護士費用について
弁論の全趣旨によれば、原告らは、平成15年12月15日、本件訴訟の提起及び追行を原告ら代理人弁護士らに委任し、報酬を支払う旨約したことが認められる。そして、本件の不法行為時から上記委任時までの期間、本件訴訟の経緯、認容額等本件に現れた諸般の事情を総合勘案すれば、被告に負担させるべき原告らの弁護士費用としては、原告A夫につき80万円、原告B子につき20万円をもって相当であるというべきである。
(3)  したがって、原告らの損害額は、原告A夫につき合計880万円、原告B子につき合計220万円となる。
(4)  判決の結論の広告について
原告らは、原告らの名誉を回復するのに適当な処分として、被告らに対し、判決の結論の広告を掲載させる必要がある旨主張する。
この点、民法は、不法行為によって生ずる損害は、財産的損害であっても、精神的損害であっても、これを金銭によって賠償することを原則とし(民法417条、722条1項)、名誉毀損の不法行為に限って、例外的に、原状回復処分を命ずることができるとしている(同法723条)にすぎず、原状回復処分としての判決の結論の広告を命じ得るのは、金銭による損害賠償のみでは填補され得ない損害が生じたために、被害者の名誉回復のため特に判決の結論の広告を命ずる必要がある場合に限られると解するのが相当である。
これを本件についてみるに、本件各記事においては、原告らを表すのに実名は使用されておらず、「親族」、「親族の夫人」といった抽象的な表現が使用されるに止まっていることからすれば、本件各記事において真犯人扱いされている人物が、原告らのことを指していると認識し得る者は、比較的限られた者であること、また、本件事件の真犯人がすでに逮捕され、第1審において有罪判決を受け、このことが広く報道されており(弁論の全趣旨)、原告らの嫌疑は払拭されていること、さらに、上記のとおり、比較的高額な慰謝料の支払いを命ずることで、原告らの被った損害は相当程度回復されると解されることなど、本件に現れた諸般の事情にかんがみれば、本件において、原告らに、金銭による損害賠償のみでは填補され得ない損害が生じたとまでは解されず、判決の結論の広告を命ずる必要性があるとまでは認められない。よって、原告らの上記主張は採用することができない。
第4  結語
以上によれば、原告らの本件請求は、被告らに対し、被告Y2は民法709条の不法行為責任に基づき、被告会社は民法715条の使用者責任に基づき、損害賠償として、連帯して、原告A夫につき880万円(慰謝料800万円及び弁護士費用80万円)及びこれに対する不法行為後である平成16年1月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、原告B子につき220万円(慰謝料200万円及び弁護士費用20万円)及びこれに対する不法行為後である平成16年1月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める限度で理由があるから、これらを認容し、その余の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金子順一 裁判官 清水響 裁判官 山崎隆介)

 

別紙1
判決の結論の広告
被告株式会社Y1が発行し、被告Y2が編集長をつとめる「a誌」の下記の各号において、原告丙谷A夫及び原告丙谷B子について、いわゆる「福岡一家惨殺事件」の犯人であるかのような記事を掲載した行為は、原告丙谷A夫及び原告丙谷B子の名誉権を著しく侵害する不法行為に該当する。

1 2003年(平成15年) 7月10日号
2 2003年(平成15年) 7月17日号
3 2003年(平成15年) 7月24日号
4 2003年(平成15年) 8月28日号
5 2003年(平成15年) 9月 4日号
6 2003年(平成15年)10月 2日号
前記結論は、東京地方裁判所民事第 部が、 年 月 日言渡の平成15年(ワ)第 号名誉毀損損害賠償等請求事件の判決において示した判断である。
株式会社Y1
前記代表取締役 V
a誌・編集長
Y2
(掲載の条件)
〈1〉 掲載面 全国版本文活版
〈2〉 スペース 1頁(縦217ミリ、横145ミリ)
〈3〉 活字の大きさ 見出し「判決の結論の広告」の8字は初号活字
その他の部分は20ポイント

別紙2
記事目録
(本件記事1につき)
1 本件記載1の1
箇所 a誌1の22ページ及び23ページの上部表題部分
内容 「激震スクープ 福岡一家四人惨殺 捜査陣の標的はこの男女」
2 本件記載1の2
箇所 a誌1の22ページ中央見出し部分
内容 「犯行当夜、被害者宅を訪問したのは親族。前日、被害者と親族の諍いがあり、妻は殴打されていた……驚愕の詳細証言。」
3 本件記載1の3
箇所 a誌1の22ページ1段1行目から5行目まで
内容 「(戊野)D子ちゃんの親族とお金の問題で、ずっと揉めてたの。とにかく会社の出資金のことでかなり前から揉めてたんよ。」(A氏の供述、以下、記載内容の供述者のことを「(A氏)」のように記載する。)
4 本件記載1の4
箇所 a誌1の22ページ1段5行目から16行目まで
内容 「(事件当日夜、自宅玄関の)鍵は、身内だから開けたんよ。H夫は『今からD子の親族がくるけん、俺、席外すから。巻き込まれたくない』って、周りの人間に言ってる。だから、D子ちゃんが親族に金食われてる、巻き込まれてる、あの日(六月十九日)夜十時半に家に来るっていうのは、一定の人間は知ってるもん」(A氏)
5 本件記載1の5
箇所 a誌1の22ページ2段8行目から11行目まで
内容 「この親族が事件に関係してるとしか考えられん。事件のあった日の夜十時半に行く約束してたんやから。」(A氏)
6 本件記載1の6
箇所 a誌1の23ページ1段6行目から14行目及び2段1行目まで
内容 「D子さんの親族が戊野家を訪問したとされる十九日午後十時半ごろといえば、まさに被害者宅前で不審な車が目撃された時間である。男性が運転する白っぽい車で、助手席に乗っていた背の高い女性が、足早に戊野さん宅に入っていったという情報には、捜査本部も関心を寄せている。」
7 本件記載1の7
箇所 a誌1の23ページ2段6行目から14行目まで
内容 「その親族はD子ちゃんに金を工面しろと言ってるんだ。いわゆる自動車のカラローンというのがあって、車を買ったように見せかけてローンを組んで金にする。それを『お前(D子)とH夫でやれ』と。ところが、D子ちゃんはそれを断った。」(B氏)
8 本件記載1の8
箇所 a誌1の23ページ見出し
内容 「ライターを投げつけ血が噴出」
9 本件記載1の9
箇所 a誌1の23ページ1段15行目から24行目まで
内容 「そもそも、知人から借りた約七百万円も親族が食ってるわけ。逆にD子ちゃんは『ダンナに申し訳ない。返して』って責めた。親族は逆上して、D子ちゃんを蹴ったり、殴ったりしてるんだね。D子ちゃんは一部の人に『もういや、死にたい』って泣いて訴えてる。」(B氏)
10 本件記載1の10
箇所 a誌1の24ページ1段13行目から2段16行目まで
内容 「前妻の両親が数千万円の借金を背負わされてるんです。結婚していたころ、夫が商売をするからというので頼まれて、お金を出したそうです。でも、結局、商売は失敗して会社は潰れたそうです。しかも、あの男は、前妻に暴力を振るってたんです。離婚の時は大変だったみたいで、前妻は何もいわず我慢していたそうですが、ついに怖くなったんでしょう。『お父さん、お金払って、もうなかったことにしたい』と両親に訴えたそうです。彼女は、とにかく、命があっただけでも良かったと話していたと聞きました。そういえば、二人の間には子供がいたんですが、一時期前妻の両親のほうにいたんです。でも、いつのまにかいなくなった。ウワサでは別れた夫に学校帰りに連れていかれたというようなことを聞きました。」(離婚の事情を知る前妻の知人)
11 本件記載1の11
箇所 a誌1の24ページ3段4行目から16行目まで
内容 「昔からそうやけど、D子ちゃんへの扱いがひどかった。人のおる前でジッポのライターを投げつけて血が噴き出したとか、人がおる前で顔を踏んづけたりとか。ちぃちゃいときからずっと。一回や二回やない。それを親族やから遠慮してるんよ。ただ、D子ちゃんも、お金はなかなか貸さんから。あの人は、自分の気に入らないことがあると、突然、暴れる兆候はあったの」(古くから親族を知る人物)
12 本件記載1の12
箇所 a誌1の24ページ3段27行目から31行目まで
内容 「二年ほど前から経営が傾き、年商一千万円近くまで落ち込んだ。一年前からリストラをはじめ、一人を残して全員解雇したんです。」(戊野さん夫婦に近い人物)
13 本件記載1の13
箇所 a誌1の24ページ4段7行目から11行目まで
内容 「でもD子が入ったことで売り上げは伸びたんです。それなのに、D子にはその会社から給料が支払われていなかった。」(戊野さん夫婦に近い人物)
14 本件記載1の14
箇所 a誌1の24ページ4段27行目から31行目まで
内容 「D子は親族の会社とは別のデパートの口座を欲しがっていたんです。親族の会社では、売り上げもすべて親族に持っていかれてましたから。」(戊野さん夫婦に近い人物)
15 本件記載1の15
箇所 a誌1の25ページ1段11行目から21行目まで
内容 「今回の事件の後、実は、H夫には韓国人の愛人がいて、別れ話でもめ、その女性が『一家全員殺してやる』と口走っていたという話が地元で広まった。で、警察も含めて、話の出所をよく調べてみると、その親族のようなんだ。最初、三角関係かって信じたよ。でも、実際、そんな女いてないもん」(知人たち)
16 本件記載1の16
箇所 a誌1の25ページ2段16行目から17行目まで及び3段1行目から7行目まで
内容 「捜査本部では戊野家に入っていった背の高い女性については「いまだに特定するには到っていない」という。だが、六月二十七日昼頃から、D子さんの親族と、その夫人に任意で同行を求め、約二時間にわたり事情聴取を行なっている。」
17 本件記載1の17
箇所 a誌1の25ページ3段8行目から13行目まで
内容 「戊野家の事情通は、通夜の晩のD子さんの親族の様子が印象に残っているという。「涙もろくに流さんと、『保険金もらえるんかな』と繰り返し言っていた」」(戊野家の事情通)
(本件記事2につき)
1 本件記載2の1
箇所 a誌2の158ページ及び159ページの上部表題部分
内容 「激震スクープ 捜査員が持ち歩く福岡一家四人惨殺「犯人グループ」七人の顔写真」
2 本件記載2の2
箇所 a誌2の158ページ左端見出し部分
内容 「D子さんの母は四人の遺体の一人一人に泣きながら、抱きついたという。ところが、その席に明らかに、挙動不審な一組の夫婦がいたのである。」
3 本件記載2の3
箇所 a誌2の159ページ2段11行目から15行目まで
内容 「小誌は先週号で、「犯行当夜、D子さんの親族が被害者宅を訪問」と報じた。捜査本部も、この情報には大きな関心を寄せている。」
4 本件記載2の4
箇所 a誌2の159ページ2段16行目から21行目まで
内容 「文春の記事(注・本件記事1を指す)を見て、この親族は絶句したそうです。一緒にいた人に否定も肯定もせずに無言になった。それから急に話題を変えたと聞きました。」(H夫夫婦の知人)
5 本件記載2の5
箇所 a誌2の159ページ2段22行目から24行目まで
内容 「実はこの親族は、事件以降、いくつか不可解な行動や発言を繰り返している。」
6 本件記載2の6
箇所 a誌2の159ページ2段26行目から34行目まで
内容 「通夜の晩のことですが、親族はヒソヒソと『保険で何とかなるだろう』と言ってたんです。でも、葬儀のあとには、『D子は保険に入っていたけど滞納していた』というようなことを言ってたそうです。これはどういう意味なんでしょうか?」(A氏)
7 本件記載2の7
箇所 a誌2の159ページ3段1行目から10行目まで
内容 「それと、H夫が韓国人の女性と付き合っており、別れ話のもつれから、『一家全員殺してやる』と脅されていたというウワサが、その親族周辺から流れはじめたのは、通夜の晩からでした。H夫は、仮に女性との交際があったとしても、恨まれるような付き合い方はしないと思います」(A氏)
8 本件記載2の8
箇所 a誌2の159ページ3段11行目から22行目まで
内容 「葬儀の参列者も口を揃える。(中略)その親族の奥さんも歩き方がおかしくて、なんか妊婦が歩いているような感じ。『怪我でもしたのかな?』と思ったくらいです。」
9 本件記載2の9
箇所 a誌2の159ページ3段12行目から17行目まで
内容 「葬式のとき、なんかおかしかったんです。特にI夫君を前にしての態度が変でした。妙に激しく号泣したり、火葬場ではI夫君の骨が出るときだけ、外に出ていたり。」(葬儀の参列者)
10 本件記載2の10
箇所 a誌2の159ページ3段23行目から同160ページ1段1行目まで
内容 「それに、『司法解剖書を持ってる』と言うんです。現場の刑事に聞いたら、『そんなもの、我々でも見ていないのに、いくら親族とはいえ外に出すわけがない』と言ってました。なぜ、そんなことを言う必要があるのか、さっぱりわかりませんでした」(葬儀の参列者)
11 本件記載2の11
箇所 a誌2の160ページ3段6行目から9行目まで
内容 「この親族とH夫さん夫婦を巡るいざこざは、既報の通り、すでに数カ月前から生じていた。」
12 本件記載2の12
箇所 a誌2の160ページ2段11行目から19行目まで及び3段10行目まで
内容 「事件の少し前に、H夫はカラローンの話をしてました。そのとき、親族にハーレーでカラローンを組めと言われたけど、断ったら、『うちの従業員でもカラローンを組んでくれたのに、親戚が組んでくれないとは。貴様ら勝手にせい!』とキレられたと話してました。」(A氏)
13 本件記載2の13
箇所 a誌2の160ページ5段2行目から同161ページ1段15行目まで
内容 「親族の会社の仕事は、ミセス部門を親族、ヤング部門をH夫夫婦がやっていたんです。自分で仕入れもして、棚卸しもやって、ヤング部門がH夫夫婦の取り分という仕組みだったんです。ところが親族は、その取り分をちゃんと支払わなかった。D子は親族に『早く払ってくれ』とずっと迫っていたんです。実際、去年ある百貨店の閉店セールがあったんですが、そのときの売り上げがヤング部門だけで五百五十万円くらいあったんです。でも、彼らに支払われたお金は年末に五十万円だけ。D子から『年を越しても仕入れはおろか生活もできない』と相談を受けたくらいです。H夫夫婦がこれまで親族から払ってもらったお金は、合計二百万円くらいだとD子から聞きました。そもそも、去年の九月にD子が、その衣料品販売会社で、時給七百八十円で働いたパート代も、もらってないと本人がこぼしてたんです。」(C氏)
14 本件記載2の14
箇所 a誌2の161ページ3段28行目から34行目まで
内容 「実は、事件の翌日の六月二十日、D子さんの親族が、これまで支払われなかった売上げのうちのいくらかを、H夫夫婦に支払う約束になってたようですよ。事件の前日、電話でD子から聞きました」(C氏)
(本件記事3につき)
1 本件記載3の1
箇所 a誌3の147ページ右上部表題部分
内容 「福岡一家惨殺被害者が親友に打ちあけていた親族とのトラブル」
2 本件記載3の2
箇所 a誌3の147ページ4段見出し部分
内容 「犯人はなぜ逮捕されない?」
3 本件記載3の3
箇所 a誌3の147ページ1段15行目から20行目まで
内容 「A氏は、H夫さん夫婦が独立を目指していた衣料品販売会社「ワンダー」を手伝う予定だった人物。H夫さんは生前、A氏には様々な悩みや愚痴をこぼしていた。」
4 本件記載3の4
箇所 a誌3の147ページ2段1行目から7行目まで
内容 「小誌は七月十日号で、「犯行当夜、D子さんの親族が被害者宅を訪問」と報じた。その中で、親族がD子さん夫婦にカラローンを組ませ、金銭を工面するよう要求していたことを指摘した。」
5 本件記載3の5
箇所 a誌3の147ページ2段9行目から20行目まで
内容 「今年の三月ごろ、H夫さんがA氏に連絡してきて、こう言ったそうです。『親族の周辺からD子に電話があって、借金の頼みがあっても、断らないかんよと言われた。だから、カラローンの要求を断ったら、結局、親族の嫁さんが組んだらしい。でも、俺、親族の借金の保証人になっとうとよ。二千万円くらいだったと思うけど』」(H夫の友人)
6 本件記載3の6
箇所 a誌3の147ページ3段3行目から12行目まで
内容 「A氏は事件の一カ月くらい前、H夫さんから『きょうD子が親族のところに行って、お金をもらったんだ。お前らのために一生懸命用意ししてやった百八十万円だって。でも、このお金はこれまでたまってる分(売上げのうちの自分たちの取り分)じゃないとよ』と聞いたそうです」(別の友人)
7 本件記載3の7
箇所 a誌3の147ページ3段13行目から4段7行目まで
内容 「通夜の席での出来事を、前出の友人が、こう振り返る。「『H夫が死んだら(彼が借りていた)借金はどうなるんだ?』と親族は気にしていたんです。その後、『D子はうちに出入りしている保険会社に入ってた。保険料はD子が払ってた』と続けた。それだけじゃないんです。初七日の日、親族の周辺が『本来だったら、骨はやっぱり戊野家にやらないとね』というようなことを言ったそうです。すると、その親族が血相を変えて、『あんた、昨日まで言ってたことと違うやない!』と怒鳴ったみたいです」」(前出の友人)
(本件記事4につき)
1 本件記載4の1
箇所 a誌4の144ページ右上部表題部分
内容 「福岡一家四人惨殺 実行犯中国人と黒幕の「接点」」
2 本件記載4の2
箇所 a誌4の144ページ4段見出し部分
内容 「暴力団と中国マフィア」
3 本件記載4の3
箇所 a誌4の144ページ4段24行目から27行目まで
内容 「黒幕が暴力団関係者ではないなら、暴力団に殺害を依頼して、暴力団が中国人を雇うというケースも考えられる。」(福岡の裏社会に精通した人物)
4 本件記載4の4
箇所 a誌4の144ページ5段17行目から21行目まで
内容 「小誌はこれまで、ある親族が、H夫さんとの間で数々の金銭トラブルを抱えており、捜査当局も重大な関心を示していることを報じてきた。」
5 本件記載4の5
箇所 a誌4の144ページ5段22行目から26行目まで
内容 「もちろん、事件との直接の関わりは不明だが、この親族が経営する会社の東京営業所には、上海出身のPという中国人がいるとの情報もある。」
(本件記事5につき)
1 本件記載5の1
箇所 a誌5の149ページ上部中央表題部分
内容 「福岡一家惨殺 捜査本部が行方を追う暴力団幹部」
2 本件記載5の2
箇所 a誌5の149ページ5段6行目から10行目まで
内容 「この中国人グループと捜査本部が追う暴力団幹部に接点はあるのか。そして、その背後に見え隠れする“黒幕”の存在」
3 本件記載5の3
箇所 a誌5の149ページ5段11行目から同150ページ1段3行目まで
内容 「小誌はこれまで、H夫さんとの間で数々の金銭トラブルを抱えている、ある親族に、捜査当局も重大な関心を示していることを報じてきた。」
4 本件記載5の4
箇所 a誌5の150ページ1段4行目から6行目まで
内容 「この親族と暴力団幹部○○は、少なくとも数年前からの知り合い」(冒頭の人物)
5 本件記載5の5
箇所 a誌5の150ページ2段4行目から6行目まで
内容 「ようやく筋が通り、絵が描けた。つまり(犯行の)構図は出来あがったということだ」(捜査関係者)
(本件記事6につき)
1 本件記載6の1
箇所 a誌6の40ページ及び41ページの上部表題部分
内容 「衝撃スクープついに全容解明へ! 福岡一家惨殺 中国人グループに殺害を指示した日本人」
2 本件記載6の2
箇所 a誌6の40ページ左上部見出し部分
内容 「福岡の一家四人惨殺事件から早三カ月。別件で逮捕された中国人が犯行を自供したことで捜査は急展開している。中国人犯行グループに殺害を指示したのは誰か?事情聴取を受けた暴力団幹部、H夫さんと金銭トラブルを抱えていた親族との接点はあるのだろうか。」
3 本件記載6の3
箇所 a誌6の40ページ4段5行目から13行目まで
内容 「犯行に及んだ中国人三人は、いずれも金に困っていた。壬に計画を持ちかけた辛が成功報酬を支払えるはずもない。成功報酬は、誰からの約束だったのか。中国人犯行グループと戊野さん一家には直接的な接点はまったく出ていない。」
4 本件記載6の4
箇所 a誌6の40ページ4段14行目から21行目まで
内容 「彼らにとっては金目当ての犯行だった可能性が高い。壬容疑者は戊野さん一家を狙った理由について『知らない』と。ただし、成功報酬も『もらってない』と答えています。殺害を依頼した人物がいるのは、間違いありません」(社会部記者)
5 本件記載6の5
箇所 a誌6の40ページ4段23行目から同41ページ2段7行目まで
内容 「実は、小誌は捜査本部が作成したと思われる、ある相関図の存在を確認している。そこに登場するのは、申、辛、壬容疑者のほかに、小誌がこれまで報じてきた暴力団幹部の○○と△△、それにH夫さんとの間で数々の金銭トラブルを抱えていた親族。さらに、中国人MSや親族の知人Aらの名前も入っている。親族から△△には矢印で、依頼?と書かれているという。中国人犯行グループに犯行を依頼したのは誰なのか。その謎を解くカギはこの相関図にある。中国人犯行グループ、暴力団幹部、そして親族。その三者が織りなすトライアングルを一つ一つ解きほぐしていけば、おのずと事件の背後に潜む“黒幕”をあぶり出すことができるのではないか。」
6 本件記載6の6
箇所 a誌6の42ページ4段13行目から17行目まで
内容 「小誌がこれまで報じてきたように、実際は、この親族と戊野さん一家との間には金銭を巡るトラブルが絶えなかった。」
7 本件記載6の7
箇所 a誌6の42ページ4段18行目から21行目まで
内容 「親族の衣料品会社を手伝っていた戊野さん夫婦への給料が滞り出したのは、今年に入ってからだった。」
8 本件記載6の8
箇所 a誌6の42ページ4段25行目から5段13行目まで
内容 「H夫さんは実母から『四百万円ほど借りた』と話していました。それでもH夫さん夫婦が頑張っていたのは、親族が自分たちの口座を作らせてくれると思っていたからなんです。自分たちの口座を持てれば、催事の売り上げなどが直接、自分たちの口座に入ってくるわけですから。ちょうどそのころです。親族がH夫さんにカラローンを組んで、引き出した金を親族に提供するという話を持ちかけたのは。ところが、断わられた。それで完全に関係がおかしくなったんです。親族は怒って、『もう俺は知らん。お前ら勝手にしろ。口座も勝手に作れ!』と言われたと話してました。」(知人)
9 本件記載6の9
箇所 a誌6の42ページ5段14行目から21行目まで
内容 「ただ、親族は五月二十日に百八十万円ほどをH夫さん夫婦に渡したはずです。そして次のH夫さん夫婦への入金日が六月二十日だった。その日は親族にとって、支払わなければならない仕入れ代金なども重なっていました」(知人)

 

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