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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(26)平成30年 2月 2日 水戸地裁 平24(ワ)302号 株券引渡等請求事件、株主権確認請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(26)平成30年 2月 2日 水戸地裁 平24(ワ)302号 株券引渡等請求事件、株主権確認請求事件

裁判年月日  平成30年 2月 2日  裁判所名  水戸地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)302号・平26(ワ)156号
事件名  株券引渡等請求事件、株主権確認請求事件
文献番号  2018WLJPCA02026009

裁判経過
控訴審 平成30年11月28日 東京高裁 判決 平30(ネ)1265号 株券引渡等請求、株主権確認請求、独立当事者参加控訴事件

裁判年月日  平成30年 2月 2日  裁判所名  水戸地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)302号・平26(ワ)156号
事件名  株券引渡等請求事件、株主権確認請求事件
文献番号  2018WLJPCA02026009

平成24年(ワ)第302号 株券引渡等請求事件(以下「甲事件」という。)
平成26年(ワ)第156号 株主権確認請求事件
(回付前の水戸地方裁判所土浦支部平成25年(ワ)第353号 株主権確認請求事件(以下「乙事件」という。),
同第429号 独立当事者参加事件(以下「丙事件」という。))

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 

 

主文

1  原告と被告Bとの間において,別紙株式目録記載の番号1から39までの株式の権利者が原告であることを確認する。
2  被告Bは,原告に対し,別紙株式目録記載の番号1から39までの株券を引き渡せ。
3  原告と乙事件被告らとの間において,別紙株式目録記載の番号1から40までの株式の権利者が原告であることを確認する。
4  被告Bの各請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は,これを5分し,その4を被告Bの,その余を乙事件被告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
1  甲事件
(1)  主位的請求
主文第1項及び第2項と同旨
(2)  予備的請求
ア 被告Bは,別紙株式目録記載の番号1から39までの株式について,譲渡,質権設定その他一切の処分をしてはならない。
イ 被告Bは,別紙株式目録記載の番号1から39までの株式について,a株式会社に対し,株主権を行使してはならない。
ウ 被告Bは、原告に対し,別紙株式目録記載の番号1から39までの株券を引き渡せ。
2  乙事件
主文第3項と同旨
3  丙事件
(1)  原告は,別紙株式目録記載の番号1から39までの2023株の株式につき,株主名簿書換請求をしてはならない。
(2)  被告Bと乙事件被告らとの間で,被告Bが同目録記載の番号1から39までの株式2023株を有する株主であることを確認する。
第2  事案の概要
1  前提事実(当事者間に争いがないか掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者(別紙被相続人M及びNの各相続関係参照)
ア 亡M(以下「亡M」という。)及び亡N(以下「亡N」という。)
亡Mは,亡G,亡I,原告,被告C,亡O及び亡Kの父であり,昭和40年10月27日に死亡した。亡Nは,亡Mの妻で,上記の6名の母であり,昭和62年10月11日に死亡した。
イ 亡G,亡I,原告,被告C,亡O及び亡K
(ア) 亡G(以下「亡G」という。)
亡Gは,亡Mと亡Nの二男であり(昭和6年○月○日生),平成27年2月15日に死亡し,その相続人全員が相続を放棄し,弁護士Hが被告亡G相続財産の相続財産管理人に選任された。
(イ) 亡I(以下「亡I」という。)
亡Iは,亡Mと亡Nの三男であり(昭和8年○月○日生),昭和38年10月19日,P及びQと養子縁組をした。平成21年3月28日に死亡し,その相続人全員が相続を放棄し,弁護士Jが被告亡I相続財産の相続財産管理人に選任された。
(ウ) 原告は,亡Mと亡Nの長女であり(昭和9年○月○日生),その夫であるRは,昭和47年5月24日から平成6年5月27日までの間,a株式会社(以下「a社」という。)の代表取締役を務めていた(乙6の5,乙6の16)。
(エ) 被告Cは,亡Mと亡Nの二女(昭和11年○月○日生)である。
(オ) 亡O(以下「亡O」という。)
亡Oは,亡Mと亡NのKであり(昭和14年○月○日生),平成23年7月30日に死亡した(甲32)。
(カ) 亡K(以下「亡K」という。)
亡Kは,亡Mと亡Nの六男であり(昭和16年○月○日生),平成22年9月23日に死亡し,その相続人全員が相続を放棄し,弁護士Lがその相続財産管理人に選任された。
ウ 被告D,被告E及び被告F
被告Dは,亡Oの妻であり,被告Eは,亡Oの長女であり(昭和47年○月○日生),被告Fは,亡Oの長男であり(昭和49年○月○日生),いずれも亡Oの死亡により,同人の地位を相続した。
エ S(以下「S」という。)
PとQの長女であり(昭和12年○月○日生),亡Iの妻である。
オ 被告B
PとQの二女であるTの夫で,別紙株式目録記載の番号1から39までの株式に係る株券をいずれも占有している。被告Bは,弁護士として長年活動した経歴がある(被告B本人)。
(2)  別紙株式目録記載の株式の内訳(甲53,乙30の1ないし乙32の12)
別紙株式目録記載の番号1から40までの株式は,いずれも亡M名義のa社の株式(合計3023株)である。そのうち,① 別紙株式目録記載の番号14から21まで及び27から33までの株式(合計667株。以下「本件株式①」という。)は,亡Mの生前に発行され,同人が有していたものであり,② 別紙株式目録記載の番号1から6まで及び34から39までの株式(合計606株。以下「本件株式②」という。)は,亡Mの死後の昭和41年4月21日に同人の名義で割り当てられたものであり,③ 別紙株式目録記載の番号7から13まで及び22から26までの株式(合計750株。以下「本件株式③」という。)は,亡Mの死後の昭和41年12月25日に同人の名義で割り当てられたものである。また,④ 別紙株式目録記載の番号40の株式(1000株。以下「本件株式④」という。)は,亡Mの生前に発行され,同人が有していたものである。
(3)  亡Mの遺産の相続及び共有財産の持分
ア 第1次相続
昭和40年10月27日の亡Mの死亡により,同人の遺産に係る法定相続分に応じた共有持分権の帰属は,下記のとおりとなった。
亡N 1/3
亡G 1/9
亡I 1/9
原告 1/9
被告C  1/9
亡O 1/9
亡K 1/9
イ 第2次相続
昭和62年10月11日の亡Nの死亡により,亡Mの遺産に係る法定相続分に応じた共有持分権の帰属は,下記のとおりとなった。
亡G 1/6
亡I 1/6
原告 1/6
被告C  1/6
亡O 1/6
亡K 1/6
ウ 第3次相続
平成21年3月28日の亡Iの死亡により,亡Mの遺産に係る法定相続分に応じた共有持分権の帰属は,下記のとおりとなった。
亡G 1/6
被告亡I相続財産1/6
原告 1/6
被告C  1/6
亡O 1/6
亡K 1/6
エ 第4次相続(上記(1)イ(カ))
平成22年9月23日の亡Kの死亡により,亡Mの遺産に係る法定相続分に応じた共有持分権の帰属は,下記のとおりとなった。
亡G 1/6
被告亡I相続財産1/6
原告 1/6
被告C  1/6
被告亡K相続財産1/6
亡O 1/6
オ 第5次相続(上記(1)イ(オ),ウ)
平成23年7月30日の亡Oの死亡により,亡Mの遺産に係る法定相続分に応じた共有持分権の帰属は,下記のとおりとなった。
亡G 1/6
被告亡I相続財産1/6
原告 1/6
被告C 1/6
被告亡K相続財産1/6
被告D 1/12
被告E 1/24
被告F 1/24
(4)  甲事件の提起等
原告は,平成24年5月25日,被告Bを被告として,水戸地方裁判所に,本件株式①から③までについての株主権の確認及びこれらの株式に係る株券の引渡しを求める旨の甲事件の訴えを提起し,当初は,請求原因として,これらの株式の生前贈与による取得,亡Mの相続人間での遺産分割協議による取得及び時効による取得を主張したが,その後,後記(6)の遺産分割の審判によりこれらの株式を単独で取得した旨の主張をし,その取得原因についての従前の主張を撤回した。
これに対し,被告Bは,原告の従前の主張の撤回と新たな主張の追加は請求原因事実の撤回と追加ではなく,訴えの交換的変更の申立てに当たるとした上で,従前の主張を請求原因とする訴えの取下げに同意せず,新たな主張を請求原因とする訴えは従前の主張を請求原因とする訴えと請求の基礎の同一性を欠き,この訴えの変更により訴訟手続が著しく遅滞するので,本訴で審理することが許されないと主張した(被告B準備書面(15),(17))。
(5)  乙事件の提起等
原告は,平成25年10月19日,水戸地方裁判所土浦支部に,亡G,被告亡I相続財産,被告C,被告亡K相続財産,被告D,被告E及び被告Fを被告として,乙事件の訴えを提起し,被告Bは,同訴訟がなれ合い訴訟であり,本件株式①から③までについて同人が株主権を有すると主張して独立当事者参加をした(丙事件)。
乙事件及び丙事件は,平成26年3月11日,水戸地方裁判所に回付され(平成26年(ワ)第156号),原告は,後記(6)のとおり本件株式①から④までについての遺産分割の審判が確定した後の平成27年1月26日,乙事件に係る訴えを取り下げ,亡G,被告C,被告亡K相続財産,被告D,被告E及び被告Fはこれに同意したが,被告Bは異議を述べた。
その後,亡Gの死亡により,被告亡G相続財産が訴訟を受継し,乙事件及び丙事件は,甲事件に併合された。
(6)  遺産分割の審判
平成26年11月21日,亡G,被告亡I相続財産,原告,被告C,被告亡K相続財産,被告D,被告E及び被告Fを当事者とする水戸家庭裁判所下妻支部の遺産分割事件(平成26年(家)第195号)において,原告が本件株式①から④までの合計3023株を単独取得する旨の遺産分割の審判(以下「本件審判」という。)がされ(甲60の1),同年12月10日,同審判は確定した(甲60の2)。
被告Bは,同審判に対して,平成27年9月30日付けで再審の申立てを行った(乙101)が,同申立ては却下された(被告B本人34,35頁)。
(7)  a社の株券を発行する旨の定款の定めの廃止(乙3,4)
a社は,平成24年5月30日の第72回定時株主総会において,同日付けで株券を発行する旨の定款の定めを廃止して株券不発行会社となり,同社の株券は無効となった。
2  当事者の請求の概要
(1)  甲事件
ア 主位的請求
(ア) 株主権確認請求
原告が,本件株式①から③までに係る株券を占有する被告Bに対し,これらの株式を本件審判により単独で取得したとして,同株式の株主であることの確認を求めた。
(イ) 株券引渡請求
原告が被告Bに対し,本件株式①から③までの所有権又は株券自体の所有権に基づき,これらの株式に係る株券の引渡しを求めた。
イ 予備的請求
(ア) 処分禁止請求
原告が,被告Bに対し,本件株式①から③までは亡Mの遺産であり,亡Mの相続人である原告は亡Mの死亡により少なくとも法定相続分の割合による準共有権を有するところ,被告Bがa社に対し譲渡承認の請求をするなどしてこれらの株式を処分しようとしていることから,上記の準共有権の保存行為として,これらの株式についての処分の禁止を求めた。
(イ) 株主権行使禁止請求
原告は,被告Bに対し,上記の準共有権に基づき,被告Bの本件株式①から③までに係る株主権の行使の禁止を求めた。
(ウ) 株券引渡請求
原告は,被告Bに対し,上記の準共有権に基づき,本件株式①から③までに係る株券の引渡しを求めた。
(2)  乙事件(株主権確認請求)
原告が,亡Mの相続人である乙事件被告らに対し,本件審判又は遺産分割協議により本件株式①から④までを単独で取得したとして,原告が本件株式を有する株主であることの確認を求めた。
被告D,被告C,被告E,被告F(以下「被告Dら4名」という。)は,原告の請求を認諾し,請求原因を認めると主張するが,参加人である被告Bに不利益が生じるから,その効力が及ばない(民事訴訟法47条4項,40条1項)。
(3)  丙事件
ア 名義書換禁止請求
被告Bが,原告に対し,被告Bは平成16年12月11日に本件株式①から③までを含む合計4441株のa社の株式に係る株券72枚につき亡Iから交付を受け,これらの株式を譲り受けた(以下,これらの株式を「本件4441株の株式」といい,この株式の譲渡を「本件株式譲渡」という。)として,本件株式①から③までの株主名簿の名義書換の禁止を求めた。本件4441株の株式は,亡M名義の本件株式①から③までの2023株及び亡I名義のa社の株式2418株である。
被告Bは,亡Iらを委任者とする別紙受任事件一覧記載の各事件のうち,平成16年12月頃までに解決した各事件の弁護士報酬に充てるものとして,上記の株式を,1株当たり2500円と評価の上(総額1110万2500円相当),譲り受けたと主張する。
イ 株主権確認請求
被告Bが,乙事件被告らに対し,本件株式譲渡により本件株式①から③までを取得したとして,株主権の確認を求めた。
ウ 被告Bの独立当事者参加について
原告は,被告Bの独立当事者参加の可否を争うが,被告Bは甲事件において本件株式①から③までの帰属を争っており,乙事件被告らに対し,亡Iとの間の本件株式譲渡を請求原因としてこれらの株式の株主権の確認を求めているのであるから,原告の乙事件被告らに対する株主権確認請求と,被告Bの乙事件被告らに対する株主権確認請求とは,本件株式①から③までの合計2023株の限度において法律上両立し得ないことは明らかであって,被告Bは,訴訟の目的の一部が自己の権利であることを主張する第三者(民事訴訟法47条1項後段)に該当するから,当事者として本件訴訟に参加することができる。
3  甲事件についての争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  主位的請求に係る訴えの適法性等(本案前の答弁)
(被告Bの主張)
ア 株式の特定
前記前提事実(7)記載のとおり,a社は株券不発行会社となり,同社の株券は無効となったところ,無効な株券上の記号番号,株主名によって株式を特定することはできないから,原告の株主権確認請求は,確認対象の株式の特定を欠き,却下されるべきである。
イ 無効となった株券の引渡請求の可否
無効となった株券の引渡しを求めることは法律的に無意味であり,その引渡請求権を原告が有することはあり得ない。また,株券が無効となった後は,善意取得も生じなくなるから,被告Bが本件株式を占有していることに抵抗を感じるとか,安心できないといった理由では株券引渡請求権を原告が有することの根拠とはなり得ない。
よって,株券引渡請求は却下されるべきである。
ウ 本件審判に基づく請求に係る訴えの適法性
(ア) 請求の基礎に変更があること
原告は,新たな請求原因として本件審判による本件株式①から③までの単独取得を追加したが,このような新たな請求原因の追加は請求を特定する要素の変更であり,別個の新請求であって,上記のような撤回と追加の主張は単なる請求原因事実の変更ではなく,従前の主位的請求の取下げと新訴の提起の複合的な申立てに当たる(なお,被告Bは,この訴えの取下げには同意しない。)。
原告の従前の主位的請求と新たな請求原因とは,実体法上の発生原因を異にする別個の請求であり,請求の基礎に変更があるから,新たな請求原因に基づく訴えの追加は,訴え変更の要件を欠き,これを本訴で審理することは許されない。
(イ) 著しく訴訟手続を遅滞させること
原告の新たな請求原因は,本訴提起後3年3か月の間に双方から提出され,取り調べられた書証の大部分と関連性がなく,新たな請求原因等の主張,立証のためさらに審理が必要となり,本訴の訴訟手続を著しく遅滞させることは明白である。
エ 訴権の濫用
原告の甲事件の訴えの提起及びその追行経過には,以下のような違法性が認められるから,甲事件の訴えは,訴権の濫用に当たり却下されるべきである。
すなわち,① 原告は,長年a社の代表取締役を務めたRの妻であり,同族株主による経営支配を堅固なものにするために株主を集約するという同社の方針の下,同社の専属的な顧問弁護士である原告訴訟代理人らに委任し,事実的,法律的な根拠を欠く甲事件の訴えを提起したものであり,甲事件の訴えの目的が不当なものであること,② 原告訴訟代理人山形学(以下「原告代理人山形」という。)は,弁護士として求められる十分な事実関係の調査をせず,上記の目的を達成するために,原告に働きかけて,原告が本件株式①から③までを単独で取得したとの虚偽の事実を作出し,主導的な立場で甲事件の訴えを提起しており,弁護士としての真実義務に反していること,③ 原告が甲事件において当初主張していた本件株式①から③までの生前贈与,時効又は遺産分割協議による取得は,事実的,法律的な根拠を欠くものであるにもかかわらず,原告が甲事件の訴えを提起したこと,④ 原告は,甲事件において,主張の変更を繰り返し,審理を故意に遅延させた上,原告代理人山形において,被告亡I相続財産の相続財産管理人となれ合いの上,被告Bの知らないうちに乙事件の確定判決を入手し,株主名簿の名義書換をしようと目論んで乙事件の訴えを提起したこと,⑤ 原告代理人山形は,本件株式①から③までの取得原因の主張を本件審判によるものに改めたが,本件審判は後記(2)(被告Bの主張)イのとおり被告Bの利害関係人としての参加の利益を侵害する無効等の瑕疵があるものであり,この新たな請求原因の主張自体が原告の意向というよりもa社の意向によるものと解されることなどの事情によれば,原告の甲事件の訴えの提起は,訴権の濫用に当たり,甲事件の訴えを却下すべきである。
(原告の主張)
ア 株式の特定
原告と被告Bとの間で本件株式①から③までがどの株式を指しているのかについて争いはなく,a社は原告代理人の照会に別紙株式目録記載の方法による特定に異議はないと回答していることによれば,株式の特定に不備はないというべきである。
イ 無効となった株券の引渡請求の可否
本件株式の権利者が原告であるとすれば,その権利を表象していた本件株券が原告の所有物であることは明らかであり,本件株券が法律上は無効な紙片だとしても,原告の所有する紙片であるから返還を求めることは可能である。
ウ 本件審判に基づく請求に係る訴えの適法性
争う。主位的請求の訴訟物は,請求原因の変更の前後にかかわらずいずれも本件株式①から③までの所有権(株主権)に基づく,株主権確認請求権と株券引渡請求権であり,これまでの原告の請求原因の変遷は,単に原告の本件株式①から③までの所有権の取得原因事実の変遷にすぎず,訴えの変更には当たらない。
エ 訴権の濫用
争う。原告は,本件株式①から③までを原告が単独で取得したことについて亡Mの相続人らに争いがないことを証明する手段を検討していたが,同相続人らの中には,亡Iや亡Kの相続財産が含まれており,その相続財産管理人らが,原告が本件株式①から③までを単独で相続したことについて,しかるべき法的手続によらずに承認することもできないという立場であったため,本件審判の申立てをしたものであり,亡Mの相続人らの全員が本件審判に不服を申し立てることもなく,確定している。
(2)  原告の本件審判による本件株式①から③までの取得
(原告の主張)
原告は,本件審判により,本件株式①から③までを単独で取得した。
(被告Bの主張)
ア 本件審判がされたこと及び確定したことは認める。
イ 本件審判の無効等
(ア) 本件審判は,原告代理人山形が,前記(1)(被告Bの主張)エのような目的と意図の下,被告Bを審判手続へ利害関係人として参加させないために,本件株式①から③までの帰属につき訴訟上の争いとなっていることを秘匿し,虚偽の事実を主張して裁判を欺罔する等の違法行為により騙取されたものであり,本件審判の申立ては,審判申立権の濫用に当たる。
その結果,本件審判には,判断の前提となる各事項についての認定記載がなく,亡Mの遺産分割審判の当事者適格を有するのは亡G,原告及び被告Cの3名のみであるにもかかわらず,当事者適格を有しない被告亡I相続財産,被告亡K相続財産,被告D,被告E及び被告Fも当事者として審判をしたものであり,その瑕疵は重大であるから,無効である。
(イ) 本件株式②,③は,いずれも亡Mの遺産ではないから,遺産分割の対象とはなり得ない。
また,本件審判は,亡Mの遺産の一部である本件株式①から④までの分割であるが,主要な遺産である土地・建物等や株式の評価をしないまま分割がされており,審判権の濫用,裁量権の濫用によるものである。
(被告Bの主張に対する原告の反論)
ア 本件審判の申立ては,亡Mの相続人間で本件株式①から④までを誰に相続させるべきかについて判断を求めたものである。被告Bは,甲事件や丙事件において,本件株式①から③までを取得したと主張しているが,同人は亡Mの相続人ではなく,これらの株式を原告以外の者が相続したと主張しているわけではないから,これらの株式の相続について利害関係がなく,原告が本件審判を申し立てる上で,被告Bとの間の甲事件や丙事件の係属を明らかにすべき法的根拠はなく,原告が申立てに際してそれらを明らかにしなかったからといって,本件審判が無効になる理由はない。
イ 本件株式②,③は,本件株式①,④と同様に亡Mの名義のまま残っていたものであり,これを亡Mの遺産の分割によって特定の法定相続人が単独で取得することに問題はない。
ウ 本件審判の当事者全員が本件審判に不服申立てをしていないにもかかわらず,本件審判を無効と解することは,著しく法的安定性を害し,法定相続人でない第三者に遺産分割の審判を覆させることを意味するものであり,到底採用することができない。本件審判は,遺産分割がされたことが客観的に確認できない遺産の一部についてされたものであり,既に分割がされている他の遺産が審判の対象に含まれなくても問題があるものではなく,また,亡Mの相続人間で本件株式①から④までの帰属に争いがなくても,被告亡I相続財産の相続財産管理人や被告亡K相続財産の相続財産管理人において原告がこれらの株式を単独で取得したことを承諾する旨の書面を提出することができない以上,遺産分割の協議が調わない場合に該当する。
(3)  被告Bの善意取得
(被告Bの主張)
ア 株券の交付等
被告Bは,亡Iから,平成16年12月11日,本件4441株の株式の一括譲渡を受け(本件株式譲渡),株券72枚を占有している。
被告Bは,平成4年3月16日に亡Iから,平成5年3月頃に株式会社bから,同社の負債合計402億6299万円及び個人の連帯保証債務の整理並びに同社の営業譲渡による営業の継続(再建),担保不動産の売却等の委任を受け(別紙受任事件一覧参照),平成15年末頃までの期間を費やして,株式会社cとして再建させ,担保不動産の売却処分による抵当権者への弁済等により委任された事項を処理したことから,平成16年12月11日,亡Iから,上記株式を,1株2500円と評価の上(合計1110万2500円),弁護士報酬の一部として譲渡を受けた。
亡Iは,亡Nから贈与を受けた本件株式①から③までの占有者であり,適法に各株式を有する者と推定される。
よって,下記のとおり,亡Iが相続した本件株式①から③までの6分の1の準共有持分及び共有持分を除いた6分の5の準共有持分又は共有持分について善意取得した。
被告Bは,平成16年分の確定申告において,前記の1110万2500円を計上しているが,同年分の確定申告書の控えを保存していない。また,被告Bは,本件株式譲渡により亡Iから本件株式等の譲渡を受けた後も名義変更をしておらず,配当を受領していないが,亡Iの死期が迫る中で名義変更手続きをすることを求めることは余りにも酷で,人道に反するためにできなかったものである。
イ 悪意重過失の不存在
被告Bが亡Iや亡K以外に法定相続人がいたことを知っていたことは認め,その余は否認ないし争う。被告Bが亡Iは本件4441株の株式の株主であると信じ,同人が無権限であるとは全く知らず,また,共同相続人の一人である亡Kからも一致した説明を受け,株券を確認のうえ一括してその株券の交付を受けているので,知らなかったことにつき重大な過失もない。
被告Bは,会社法131条2項の法意から,株式取引上一般的に要求される注意義務を負担していただけであって,弁護士としてあるいは法律専門家として広範囲の調査義務もないし,その内容が加重されるものでもない。
(原告の主張)
ア 本件株式譲渡が存在しないこと
被告Bが,本件4441株の株式に係る株券72枚を占有していること,亡Iが本件株式①から③までの6分の1の準共有持分権を有していたことは認め,その余は否認ないし争う。
亡Iは被告Bに対してこれらの株券を預けたにすぎず,権利移転させるような譲渡行為は一切存在しないこと,株券受領証(乙19)は被告Bが自ら作成したものであり,亡Iが上記株式を被告Bに譲渡する旨の意思表示をしたものとはいえず,ほかにその事実を証明する証拠がないこと,亡Iが上記株式やその準共有持分を被告Bに譲渡する理由や実質的根拠が存在しないこと,被告Bが上記株式を報酬として受領する理由となったとする事務は,平成4年ないし5年当時に委任されたもので(乙8~11,17),その中核をなす株式会社bの整理及び再建の基本計画は平成4年2月12日時点で完成しており(乙18),株式会社bから株式会社cに対する営業譲渡契約も平成5年8月5日に成立し(乙13),同年9月17日には公正取引委員会への届出も終了していて(乙15),弁護士報酬債権の消滅時効は事件終了から2年であることを考慮しても,平成16年12月11日にこれらの弁護士報酬の一部として本件株式譲渡がなされたというのは不自然不合理であること,仮に,弁護士報酬として1110万2500円を領収したとすれば平成16年分の確定申告で同額の売上げを計上しているはずであるが,そのような証拠はないこと,被告Bは,亡Iから株式の名義書換を受けていないが,亡Iの死期(平成21年3月28日)が迫っているのに本件株式①から③までの名義書換手続がされないのは不自然不合理であること,本件株式①から③までに対する配当金は原告が受領し続けており,平成16年12月11日以降も被告Bは配当金に対して一切権利主張してこなかったこと(甲2,乙49),Sは亡Iが亡くなって間もない頃に被告Bに株式を譲渡した旨供述しており(甲14),これは被告Bの主張と矛盾することなどによれば,本件株式譲渡の事実は認められないというべきである
イ 被告Bの悪意重過失
本件株式譲渡は,亡I名義のa社の株式2418株と亡M名義の本件株式①から③までの合計4441株を弁護士報酬として譲渡するというものであるが,被告Bはその申出を受けた際,① 亡Mが約40年前に死亡していたこと,② 亡Mには亡Iのほかに複数の法定相続人がいたこと,③ 本件株式が譲渡制限付き株式であることをいずれも認識していたのであるから,本件株式①から③までが真実亡Iに移転していたかについて疑問を抱き,これを調査確認すべき注意義務があったにもかかわらず,そのことについて遺産分割協議書その他の客観的な証拠資料を確認したり,亡Mの法定相続人らに確認したりすることをせず,上記注意義務を怠った。
そして,① 本件4441株の株式のうち,2418株は亡I名義であったのに対し,本件株式①から③までの名義人は亡Mであったこと,② 亡Mは昭和40年10月27日に死亡しており,かつ,同人には亡Iや亡K以外にも多数の法定相続人がいること及び被告Bは親族としてこれらの事実を知っていたこと,③ 本件株式①から③までに対する配当金は,亡M死亡後は原告が取得しており,亡Iが取得したことはないこと,④ 被告Bが適法に本件株式①から③までを取得したと認識していたことをうかがわせる言動がないこと,⑤ 被告Bは,本件株式①から③までを取得するに際して,その遺産分割協議書や亡Iの単独所有に帰属することを裏付ける書類について一切提示を求めず,かつ,亡Mの法定相続人らに対して本件株式①から③までが亡Iの単独所有なのか一切確認していないこと,⑥ 本件株式①から③までの取得状況や本件株式①から③までが亡Iの単独所有であると信じた根拠について積極的に説明しないこと,⑦ 被告Bは当時ベテランの現役の弁護士であったことによれば,被告Bは,前記注意義務を怠ったことについて悪意であり,又は重過失があった。
(4)  民法909条ただし書による保護
(被告Bの主張)
被告Bは,本件株式譲渡により,本件株式①から③までを有効に取得したから,発行会社を除く第三者との関係では「株式取得者」(会社法133条1項)であり,民法909条ただし書の「第三者」にも該当する。
すなわち,亡Iは,本件株式譲渡時には,相続により本件株式①から③までにつき6分の1の準共有持分権ないし共有持分権をそれぞれ有していたので,本件株式譲渡により,同人の準共有持分権を取得した。
本件審判による原告の本件株式①から④までの単独取得が相続開始の時点まで遡及するとすると,被告Bが取得した本件株式①から③までの株主権が害されるし,仮にその株主権を取得していないとしても,本件株式①から③までに係る6分の1の準共有持分権が害されることになる。
被告Bは,本件株券の交付を受けてa社以外の第三者に対する対抗要件を具備しているから,民法909条ただし書により,本件株式譲渡後になされた本件審判の効力の影響は受けない。
(原告の主張)
争う。平成16年12月11日当時,亡Iが本件株式①から③までを単独で取得していた事実が存在しないから,同人は無権利であり,被告Bが亡Iから本件株式①から③までを承継取得することはありえない。
また,上記当時,本件株式①から③までの遺産分割が未了で法定相続人らの準共有状態にあったと仮定しても,上記のとおりそもそも本件株式譲渡の事実が存在しないから,被告Bは,本件株式①から③までのうち亡Iの準共有持分についても権利取得していない。
(5)  被告Bとa社との間の和解との抵触
(被告Bの主張)
被告Bとa社との間の別件訴訟(水戸地方裁判所平成25年(ワ)第656号)において,平成26年8月7日,被告Bが本件株式譲渡に係る4441株の株主であることをa社が認めることなどを内容とする和解が成立した。原告はこの訴訟の当事者ではないが,本訴において上記4441株のうち2023株(本件株式①から③まで)の被告の所有を争っているから,いわば当事者に準ずる者であり,被告が本件株券譲渡により上記4441株を取得したことと矛盾する主張をすることは,この和解の既判力ないしこれに類似する効力により遮断される。
(原告の主張)
争う。原告はこの和解の当事者ではないし,本件株式①から③まで(2023株)は,被告がa社と和解した2418株とは別の株式であるから,本訴において原告が本件株式①から③までにつき本件株式譲渡が存在しないと主張できることは当然である。
(6)  会社法130条1項の対抗関係の抗弁
(被告Bの主張)
被告Bは,本件株式①から③までを含む4441株の株券を平成24年5月30日まで占有しており,適法に株主権を有する者と推定されるが(会社法131条1項),同年3月27日,a社に対し株式取得承認請求をしたところ,同社は,同日から2週間以内に本件株式について同法139条2項の通知をしなかったことから,被告Bの本件株式①から③までの取得につき,同社は承認したものとみなされた(同法145条1号)。よって,本件株式①から③までの取得が承認されている以上,原告が株主権を主張することは許されない。
被告Bは,同社に対し,同年5月15日,本件株式①から③までを含む4441株について株主名簿の書換請求をしており,同社がこれに応じないため,これらの株式は亡M名義のままであるが,原告は,同社に対しても,第三者である被告Bに対しても,株主権を対抗することはできない(同法130条1項)。
(原告の主張)
原告は,本件株式①から③までの実体法上の権利者であるから,実体法上の無権利者である被告Bに対して権利主張するのに対抗要件は必要ない。
被告Bは,そもそも,本件株式①から③までの株式取得者(会社法137条1項)に当たらないから,被告Bが譲渡制限株式の取得について承認の請求をしたとしても,それによって同法145条1号に基づく取締役会の承認があったとみなすことはできない。
仮に,取締役会の承認があったとみなされたとしても,a社との関係で,譲渡制限株式を取得したことに承認があったとみなされるに過ぎず,被告Bが本件株式を取得したことにはならない。
(7)  予備的請求に係る訴えの適法性等(本案前の答弁)
(被告Bの主張)
原告が,本件株式①から③までの準共有権に基づく保存行為を請求しているとしても,被告Bに対し,株式が債権的権利であることに反し,被告Bが本件株式①から③までを他に有効に譲渡できる権限の行使を禁止することはできない。株券の引渡しを求めることは保存行為ではなく管理行為であり,適法な所持人であるとの法律上の推定を受ける被告Bが本件株式①から③までを他に譲渡することは権限の正当な行使であって,原告の準共有権の行使の妨害ではなく,本件株式①から③までの準共有者全員が共同して原告とならなければならないところ,甲事件の予備的請求については,そのうち原告1名しか原告になっていないから原告適格を欠く。
(原告の主張)
争う。
(8)  予備的請求の当否(第三者に対する対抗要件の具備(会社法130条)及び全準共有者の同意の有無)
(原告の主張)
亡Mは,死亡当時(昭和40年10月27日)本件株式①を所有しており,その後,昭和41年4月21日及び同年12月25日に同人名義で割り当てられた本件株式②,③も同人の遺産に帰属したところ,同人の死亡により,原告は少なくとも本件株式①から③までについて本件準共有権を有する。
原告は,被告Bがa社に対し株式取得の取締役会の承認を求めるなどして本件株式①から③までを処分しようとしていることから,本件準共有権の保存行為として,被告Bに対し,本件株式①から③までの処分禁止及び株主権行使禁止並びに本件株券の引渡しを求めることができる。
(被告Bの主張)
ア 本件株式①が亡Mの遺産に属することは認め,本件株式②,③が同人の遺産に属することは否認するが,現時点において,本件株式①から③までについて,原告が6分の1の準共有持分を有することは認める。
イ 本件株式①から③までの名義が亡Mのままであり,現時点で株券が発行されておらず,譲渡制限株式であって,被告Bがこれを善意取得したことなどによれば,本件株式①から③までの名義を原告又は準共有者全員に変更しなければ,これを会社の承認なく有効に第三者に譲渡できる被告Bに対して,対抗要件を欠くというべきである。
また,本件株式①から③までの関係で,共有物の管理と同様の保存,利用,改良は考えられず,共有物の処分と同様の本件株式の処分には準共有者全員の同意が必要である(民法251条準用)。
以上のとおり,原告の甲事件の予備的請求については,本件株式①から③までの処分の禁止及び株主権の行使禁止の法的根拠が認められず,適法に本件株式①から③までを譲り受けた被告Bに対しては,全準共有者の同意があってもその引渡しを求めることはできない。
4  乙事件についての争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  原告の本件株式①から④までの取得
(原告の主張)
ア 遺産分割協議の有無
本件株式①から④まではいずれも亡Mの相続財産に帰属するところ,遅くとも亡Nが死亡した昭和62年10月11日までに,亡Mの相続人である亡N,亡G,亡I,原告,被告C,亡O,亡Kら7名の間で,原告が本件株式①から④までを単独相続する旨の黙示の遺産分割協議が成立した。
イ 本件審判による取得
原告は,本件審判により,本件株式①から④までを単独取得した。
(乙事件被告らの主張)
被告亡I相続財産,被告亡K相続財産及び被告亡G相続財産は,原告の主張アについては不知,同イについては争うことを明らかにせず,被告Dら4名は,原告の乙事件請求については認諾した上で,原告の主張アについては認め,同イについては争うことを明らかにしない。
(被告Bの主張)
被告Dら4名は,原告の請求を認諾し,請求原因を認めると主張しているが,参加人である被告Bに不利益が生じるから,その効力が及ばない(民事訴訟法47条4項,40条1項)。
(2)  その他の争点
その他の争点は,前記2(2)(本件審判による本件株式①から③までの取得),同(3)(被告Bの善意取得)と共通である。
5  丙事件についての争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  被告Bの本件株式①から③までの取得
(被告Bの主張)
被告Bは,平成16年12月11日,本件株式譲渡により,亡Iから本件株式①から③までを含むa社の株式合計4441株を取得した。
(原告の主張)
否認する。
(乙事件被告らの主張)
不知。
(2)  その他の主張
前記2(3)(被告Bの善意取得)と共通である。
第3  当裁判所の判断
1  甲事件の主位的請求に係る訴えの適法性等について(前記第2の3争点(1))
(1)  株式の特定について
原告は,甲事件の主位的請求において,被告Bとの間で,別紙株式目録記載番号1から39までの株式の権利者が原告であることを確認する旨の請求をするところ,原告は,別紙株式目録において,株券数(当該株券に係る株式の数),額面,記号番号及び株主名をもって株券を特定した上,a社が株券不発行会社になるまで同一覧表記載の株券によって表象されていた株式を,株主権確認請求の対象とする株式として特定しており,株式の特定に欠けるところはないというべきである。
この判断は,a社が株券を発行する旨の定款の定めを廃止したことにより株券が無効となったとしても,左右されることはない。
なお,証拠(甲51)によれば,a社は,本件株式①から③までの特定について,「M名義の2023株」または別紙株式目録のとおり特定するほかなく,このような特定方法に異論はない旨の回答をしていることから,今後本件株式①から③までの株主が明らかになった際に,a社がどの株式の株主かを特定できない事態が生じることはなく,原告及び被告Bとの間でも本件株式①から③までの特定につき認識に違いがあることもうかがわれないから,かかる観点からも,原告による株式の特定に問題はないというべきである。
よって,原告の被告Bに対する株主権確認の訴え(甲事件請求の趣旨第1項)は,確認対象となる株式の特定を欠いているから違法であり却下されるべきであるとの被告Bの主張を採用することはできない。
(2)  無効となった株券引渡請求の可否について
原告は,株式の所有権又は株券自体の所有権に基づき本件株式①から③までの合計2023株の株券の引渡しを求めるものと解されるところ,確かに,a社は株券を発行する旨の定款の定めを廃止したため(前記前提事実(7)),本件株式に係る株券が株式を表象することはなくなったものの,そうであるとしても,株式の所有権に基づく株券の引渡請求が認められるか否かは本案の問題であって,違法な訴えとして却下されるべきことにはならない(なお,株券自体の所有権に基づく株券の引渡請求については,株券を発行する旨の定款の定めを廃止したか否かは本案の問題にさえならない。)。
よって,株券が無効であることを理由として,原告の被告Bに対する株券引渡請求が却下されるべきであるとする被告Bの主張は採用できない。
(3)  本件審判に基づく請求に係る訴えの適法性について
訴えの変更(民事訴訟法143条)とは,訴状における請求の趣旨と原因の記載によって特定される請求(同法133条2項,同規則53条1項)である訴訟物を変更することをいうものと解されるから,請求の趣旨又は請求の原因の変更があっても,請求の同一性すなわち訴訟物の同一性に影響を与えない場合には,訴えの変更には当たらないというべきである。
これを本件についてみると,原告の被告Bに対する請求は,いずれも本件株式①から③までの所有権(株主権)に基づく株主権確認請求権と株券引渡請求権である。原告の従前の請求原因は所有権の取得原因事実として亡Mの法定相続人を当事者とした原告の単独所有を内容とする遺産分割協議等を主張するものであったのに対し,変更後の請求原因は所有権の取得原因事実として原告の単独所有を内容とする本件審判を主張するものである。これらは所有権の取得原因事実の変更にすぎず,訴訟物は同一であって(大審院大正7年(オ)第638号同年7月9日第三民事部判決・民録24輯1787頁参照),攻撃方法である請求を理由づける要件事実(民事訴訟規則53条1項参照)の主張を改めたにすぎないから,訴えの変更には当たらないというべきである。
よって,訴訟物が同一ではないとする被告Bの主張は独自の主張であって採用することはできず,訴えの変更には当たらないから,本件審判を新たな請求原因とすることは許される。
(4)  訴権の濫用について
ア 原告の意図と目的
被告Bは,原告が甲事件の訴えを提起したのはa社の同族経営支配を堅固にする目的であるなどと主張するが,仮にそのような目的があったとしても,甲事件の訴えの提起の目的が不当なものと直ちに評価できるものではない。原告は本件株式①から③までの所有権を主張しており,株主であることを主張する者が株主権の帰属を明らかにすることを求めることは正当な権利の行使というべきである。
イ 原告代理人山形の対応と真実義務
被告Bは,原告本人に働きかけて本件株式の単独での取得について虚偽の法的原因事実を作出し,甲事件の訴えを提起した旨主張するが,原告は本件株式①から③までを原告が単独取得したものと考えていたこと(甲1),a社は亡Mが死亡してから平成24年4月13日まで本件株式①から③までについての株主権の行使に関する諸連絡及び配当を原告にしており,そのことについて亡Mの他の法定相続人らから異議の申立てがなされたことがないこと(甲2),甲事件の訴えの提起の時に存命であった亡Mの他の法定相続人である亡G及び被告Cが本件株式①から③までを原告が単独で相続した旨の証明をしていること(甲5の1,2,甲6の1,2)等に照らすと,原告代理人山形が本件株式①から③までを原告が単独で取得したとすることについて虚偽の法的原因事実を作出したと認めるに足りる証拠もないから,被告Bの主張はその前提を欠く。
ウ 本訴の提起について
被告Bは,原告の甲事件における従前の主張(生前贈与,時効又は遺産分割協議による取得)は事実的,法律的な根拠を欠くと主張するが,民事訴訟において弁論主義が適用される以上,いかなる請求原因を主張するかは原告の自由であり,特段の事情のない限り,請求原因の選択を誤ったからといって直ちに訴権の濫用と評価されるものではないし,上記イのとおり,原告,a社及び亡Mの法定相続人らの説明に食い違いがないことからすれば,少なくとも,黙示の遺産分割協議を請求原因としたことについては相当な理由があったものというべきである。
エ 乙事件の提起について
原告が乙事件を提起し,その確定判決を入手して株主名簿書換手続をとろうと目論んだと主張するが,本件株式①から③までの共有持分権を有する亡Mの相続人らを当事者として株主権確認をしたところで,同人らとの間での株主権の帰属が確認されるにすぎず,被告Bやa社との関係においてその確定判決が何らかの意味を持つものではないから,乙事件を提起したことをもって,訴権の濫用ということもできない。
オ 本件審判の申立てについて
後述のとおり,本件審判の申立ては適法であり,本件審判は有効に成立しているから,被告Bの主張はその前提を欠く。
カ 結論
以上によれば,甲事件の訴えの提起を訴権の濫用と評価すべき事情は認められず,被告Bの主張を採用することはできない。
2  本件審判による本件株式①から③までの取得について(前記第2の3争点(2))
(1)  本件審判による取得
前記前提事実(6)のとおり,亡G,被告亡I相続財産,原告,被告C,被告亡K相続財産,被告D,被告E及び被告Fを当事者として,本件株式①から④までを原告が単独で取得するとした本件審判がされ,これは確定した。これによれば,原告は,本件株式①から④まで(その中には本件株式①から③までが含まれる。)を単独で取得したことになる。
(2)  本件審判の無効等
ア 本件審判の申立てが申立権の濫用に当たるとの主張について
被告Bは,原告代理人山形が被告Bを審判手続へと参加させないために,同人と訴訟上の争いになっていることを秘匿して,本件審判を騙取した旨の主張をする。
しかし,亡Mの遺産分割の審判の当事者は,亡Mの相続人であって,被告Bは当事者ではなく,遺産分割によって本件株式①から③までを取得した者との間でその帰属を争うことができるのであるから,申立てに際して,被告Bとの間で,これらの株式について訴訟上の争いが生じていることを明らかにすべき理由は見当たらない。被告Bは,審判申立書に「事件の実情」(家事事件手続規則37条1,2項)として被告Bとの間の訴訟が係属中であること等を記載しなければならないと主張するが,遺産分割の審判を申し立てるに当たっては,相続人間の紛争の実情を記載すれば足りるというべきである。
したがって,被告Bの主張を採用することはできない。
イ 遺産分割の対象について
本件株式①が亡Mの遺産であることについては当事者間に争いはない(本件株式④についても同様である。)が,本件株式②,③は,亡Mの死後に同人名義で割り当てられたものであるから,これらは同人の遺産に属するものではない。
しかしながら,原告は,本件審判の申立書に本件株式②,③はいずれも亡Mの死後に同人名義で割り当てられた新株である旨記載した上で(乙91の2~3頁),本件株式①から④までについて遺産分割を求めており,その相手方である被告C,亡G,被告D,被告E,被告F,被告亡K相続財産は,いずれも遺産の範囲に争いはないとしており(乙92~97),被告亡I相続財産は,遺産の範囲については不知とするものの(乙98),被告亡I相続財産の相続財産管理人は,遺産分割審判事件の第1回審問期日において,亡Iの生前に相続人間で遺産分割協議が行われていたかどうかは分からない旨の陳述をするのみで(乙99の1,3),本件株式②,③を含めて遺産分割をすることに反対していたことはうかがわれない。また,本件審判は,本件株式②,③も含めて遺産分割をしているが,当事者はいずれもこれに不服申立てをしておらず,本件審判は確定している。
以上によれば,本件審判の相手方はいずれも亡Mの死後に割当増資により発行された本件株式②,③を,亡Mの遺産である本件株式①,④と併せて遺産分割の対象とすることに合意していたと認めるのが相当であるから,本件審判がこれらを含めて遺産分割をしたことが違法であるとはいえない。
したがって,被告Bの主張を採用することはできない。
ウ 本件審判の当事者について
本件審判は,亡G,被告亡I相続財産,原告,被告C,被告亡K相続財産,被告D,被告E及び被告Fを当事者としてされたものであるが,前記前提事実(1)アないしウの亡M,亡N,亡I,亡O及び亡Kの死亡に伴う相続等の経過によれば,本件審判の当事者となるべき者は,前記の8名であると認められる。本件審判の当事者となるべき者は亡G,原告及び被告Cの3名であるとの被告Bの主張は,独自の主張であり,採用することはできない。
エ 遺産分割について協議が調わないことについて
亡Mの相続人のうち,被告亡K相続財産の相続財産管理人及び被告亡I相続財産の相続財産管理人は,本件審判に当たり,分割方法についてまだ決めていないと答弁しており(乙92,98(各3頁)),そのことによれば,それ以外の相続人は本件株式①から④までを原告が取得することに異論がない(乙93~97(各3頁))としても,遺産の協議が調わなかったものと認められる。
オ 一部の遺産のみの遺産分割審判について
本件審判の申立書には,「本件被相続人の相続財産については,別紙株式目録記載の株式(中略)も含め,全て遺産分割協議が終了しているが,遺産分割協議書が存在しないため,本件株式について未だに名義移転の手続ができないでいる。」と記載され(乙91),他の相続人の答弁(乙92~98)によっても,本件株式①から④までのほかに分割方法に争いがある遺産が残されていたとは認め難いことによれば,本件株式①から④までのみを分割したことが違法であるとはいえない。
カ 遺産分割の基準について
遺産分割は,遺産の種類,性質,各相続人の年齢,職業,心身の状況,生活状況その他一切の事情を考慮してなされるべきものであるところ(民法906条),前記のとおり,被告亡K相続財産及び被告亡I相続財産を除く亡Mの相続人はいずれも原告が本件株式①から④までを単独で取得することに異論はなく,被告亡K相続財産の相続財産管理人及び被告亡I相続財産の相続財産管理人の意向も,本件株式①から④までを原告が単独で取得することに積極的に反対しているものとは解されないこと,a社の株式は譲渡制限株式で,その評価額を算定することは困難であり,その処分方法も限られることに,本件審判は当事者からの不服申立てがなく確定していることなどの事情を踏まえれば,本件株式①から④までの評価を算定するなどせずにこれを原告の単独所有とすることが法定相続人間の公平を害するものとは認められない。ほかに本件審判における分割の方法に基準の逸脱や濫用があることをうかがわせる事実は認められず,被告Bの主張は採用することはできない。
キ 結論
以上によれば,本件審判の申立ては適法であり,本件審判は有効なものと認められる。
3  被告Bの本件株式①から③までの取得について(前記第2の3争点(3),同4争点(2),同5争点(1))
(1)  被告Bは,亡Iから本件株式①から③までを含むa社の株式4441株を譲り受け,又はこれを善意取得したと主張する。
(2)  本件株式譲渡について
ア 被告Bが作成した株券受領証(乙19。以下「本件株券受領証」という。)には,被告Bの手書きで,「(株)b(現d社)の事業継続のための再建,同社及び個人の連帯保証債務などの債務整理,担保不動産の任意売却処分,関連事件の解決による成功報酬の一部として,貴殿の申出の通り,一株を二,五〇〇円と評価し,総額一一,一〇二,五〇〇円を支払にかえて右株式を譲受けたことを確認し,本証を差入れます。平成一六年一二月一一日」との記載があるが,亡Iの署名押印はない。
しかし,本件株券受領証は,被告Bが作成したものであるから,これのみによって本件株式譲渡があったことを認めることは困難である。
イ 被告Bは,弁護士として,別紙受任事件一覧記載の各委任事件につき,亡Iを介して,亡I個人,株式会社b,S,Q,U,株式会社cから委任を受け,平成16年12月11日にそれらの弁護士報酬として,亡Iから本件株式①から③までを含む4441株を譲り受けた,本件株券受領証に亡Iの押印がないのは,これを作成したときに亡Iが印鑑を持っていなかったためである旨の供述等をする(乙126,143,被告B本人)
しかし,会社の事業継続のための再建等を内容とする事務を弁護士に委任した報酬として,1110万円余りと評価した株式を譲渡するのであれば,亡Iと被告Bが親族であることを考慮しても,その事実を明確にするために,本件株式譲渡の内容を明らかにする亡Iの署名や押印のある書面を作成するのが通常であり,弁護士としての業務の報酬として支払われたのであれば,税金の申告等対外的にもその事実関係を明らかにするという観点からも,そのような書面を作成するのが通常であると考えられるところ,弁護士として長年の経験を有する被告Bであれば,そのことは当然分かっていたはずである。亡Iが印鑑を持っていなかったとしても,同人の署名を求めることはできたはずであるし,仮に,その場で亡Iが書面を作成することが困難な事情があったとしても,日を改めて書面を作成することがさほど困難であったとは思われない。そうすると,本件株式譲渡の内容を明らかにする亡Iの署名や押印のある書面が作成されていないこと自体,本件株式譲渡があったことを疑わせる事実とみることができる。
また,被告Bが亡Iから株式会社bの任意整理の委任を受けたのは平成4,5年頃のことであり(乙8~11,17),同社の整理及び再建の基本計画は平成4年2月12日の時点で完成しており(乙18),基本計画案に基づく営業譲渡契約も平成5年8月5日に成立し,同年9月17日には公正取引委員会への届出も終了していて(乙15),被告B自身が一番難しかったと供述する同社の再建手続はその頃までには一段落していたものである(被告B本人4,5頁)。また,被告Bは,平成12年8月8日,株式会社bを引き継いだ株式会社dの不動産の任意売却について,193万2000円の代理人手数料を受領している(乙71,72,被告B本人13~17頁)。このように,個別の業務については代理人手数料が支払われることがありながら,平成5年頃には一段落していた株式会社bの再建手続等に関する業務についての報酬が平成16年になって初めて支払われたというのは不自然である。加えて,被告Bが本件株式譲渡に基づき弁護士報酬として1110万2500円と評価される本件株式①から③までを含む4441株を領収したとすれば,平成16年分の確定申告で同額の売上げを計上しているはずであるが,同人の供述(被告B本人25頁)の他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。
そして,被告Bは,本件株式譲渡がされたとする平成16年12月11日以降,平成24年3月に至るまで,株式の譲渡承認の請求や配当金の受領のための手続をしておらず(乙49,87,被告B本人26頁),亡Iも,死亡するまでの間,株式の譲渡承認の請求等のための手続をしていなかった(甲2,乙49)が,このように,株式の譲渡があった場合に,株式の譲渡人及び譲受人が通常取るべき手続が一切取られていないことを考慮すると,被告Bが主張する株式の譲渡行為の存在自体が極めて疑わしいといわざるを得ない。
さらに,亡Iの妻であるSは,a社の代表取締役専務V1及び同社の従業員のV2からの平成24年1月26日の聴取に際して,株券は被告Bに一任してある旨供述したにもかかわらず,同年4月4日の聴取の際には,亡Iが亡くなったときの相続やその他でもお世話になったから,亡Iが亡くなって間もない頃に被告Bに売買した旨供述しており(甲14,証人V2・10頁),a社の株券の所在を同社の従業員が確認しに来ているのであるから,Sが証人V2らに対して,虚偽の供述をする理由は見出し難く,また,同社の従業員があえて虚偽の供述をする合理的な理由も見当たらないから,Sは,亡Iが亡くなって間もない頃に,被告Bに売買した旨の供述をしたものと認められ,この供述は,被告Bの主張と整合しないし,むしろ,平成16年12月11日ではなく,亡Iの死亡後に本件株券等が被告Bの下に渡ったことをうかがわせるものである。
ウ 以上のとおり,亡Iが本件株式①から③に係る所有権やその準共有持分を被告Bに譲渡する理由に疑問があり,本件株式譲渡契約があったとすれば当然行われるべき譲渡承認手続や配当金の受領が長年行われておらず,Sが亡Iの死亡後に被告Bに株券を売買した旨の供述をしていることなどを踏まえると,本件株式譲渡があったとする被告Bの供述を信用することはできない。
ほかに本件株式譲渡があったことを認めるに足りる証拠はない。
エ 善意取得について
前記のとおり,本件株式①から③までを被告Bが譲り受けた事実が認められないのであるから,被告Bが本件株式①から③までを善意取得したとの主張は,その前提を欠く。
4  被告Bとa社との間の和解との抵触について(前記第2の3争点(5))
被告Bは,a社との間で亡Iとの間での本件株式譲渡によって被告Bが各株券に係る4441株の株主であることを確認したから,原告はこれに反する主張はできない旨の主張をする。
しかしながら,原告は,a社と亡Iとの和解の当事者ではなく,上記和解の効力が原告に及ぶことの根拠が明らかでないから,被告Bの主張を採用することはできない。
5  会社法130条1項の対抗関係について(前記第2の3争点(6))
被告Bは,a社に対して株式取得承認請求をしたところ,それから2週間の期間内に会社法139条2項の通知がされなかったため,同法145条1号により本件株式の取得につき承認したものとみなされたと主張しているが,仮にそうであるとしても,実体法上,本件株式が原告と被告Bのいずれに帰属するかは別の問題であるところ,上記3のとおり,本件株式譲渡の事実を認めることはできないから,原告と被告Bとはそもそも対抗関係にはない。したがって,原告と被告Bが対抗関係に立つことを前提とする同人の主張は,その前提を欠くものであって,主張自体失当である。
6  甲事件に係るその余の争点について
上記3によれば,本件株式譲渡の事実を認めることはできないから,これを前提とする第2の3争点(4)については判断を要しないし,被告Bの抗弁はいずれも理由がなく,原告の主位的請求は理由があるから,予備的請求についても判断を要しない。
7  甲事件の結論
よって,原告は本件株式①から③までの株式の権利者であると認められ,本件株式①から③までの株券の所有権を有すると認められるから,甲事件における原告の主位的請求はいずれも理由がある。
8  乙事件及び丙事件について
上記2及び3によれば,本件審判によって原告が本件株式①から④までを単独取得したことが認められ,本件株式譲渡の事実は認められず,被告Bが本件株式①から③までを取得したものとは認められないから,その余の争点について判断するまでもなく,乙事件における原告の請求は理由があり,丙事件における被告Bの請求はいずれも理由がない。
第4  結論
よって,原告の甲事件における主位的請求及び乙事件における請求は理由があるからいずれも認容することとし,被告Bの請求は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
水戸地方裁判所民事第1部
(裁判長裁判官 岡田伸太 裁判官 南宏幸 裁判官 長谷川稔洋)

 

別紙
当事者目録
水戸市〈以下省略〉
甲事件原告兼乙事件原告兼丙事件相手方 A(以下「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 山形学
同 関周行
水戸市〈以下省略〉
甲事件被告兼丙事件独立当事者参加人 B(以下「被告B」という。)
東京都杉並区〈以下省略〉
乙事件被告兼丙事件相手方 C(以下「被告C」という。)
茨城県常総市〈以下省略〉
乙事件被告兼丙事件相手方 D(以下「被告D」という。)
東京都新宿区〈以下省略〉
乙事件被告兼丙事件相手方 E(以下「被告E」という。)
千葉県柏市〈以下省略〉
乙事件被告兼丙事件相手方 F(以下「被告F」という。)
上記4名訴訟代理人弁護士 上畠佳子
亡Gの最後の住所 茨城県常総市〈以下省略〉
乙事件被告兼丙事件相手方 亡G相続財産(以下「被告亡G相続財産」という。)
同代表者相続財産管理人 H
亡Iの最後の住所 茨城県土浦市〈以下省略〉
乙事件被告兼丙事件相手方 亡I相続財産(以下「被告亡I相続財産」という。)
同代表者相続財産管理人 J
亡Kの最後の住所 茨城県常総市〈以下省略〉
乙事件被告兼丙事件相手方 亡K相続財産(以下「被告亡K相続財産」という。)
同代表者相続財産管理人 L

〈以下省略〉

 

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