判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(176)平成25年 3月27日 東京地裁 平24(ワ)5170号 連帯保証債務履行請求事件
判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(176)平成25年 3月27日 東京地裁 平24(ワ)5170号 連帯保証債務履行請求事件
裁判年月日 平成25年 3月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(ワ)5170号
事件名 連帯保証債務履行請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2013WLJPCA03278041
裁判年月日 平成25年 3月27日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(ワ)5170号
事件名 連帯保証債務履行請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2013WLJPCA03278041
東京都葛飾区〈以下省略〉
原告 X
上記訴訟代理人弁護士 杉本太郎
東京都品川区〈以下省略〉
被告 有限会社Y1
上記代表者取締役 Y2
同上
被告 Y2
上記両名訴訟代理人弁護士 野村政幸
主文
1 被告らは,原告に対し,1665万円及びこれに対する平成23年11月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は,被告らの負担とする。
3 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告らに対し,被告らが被告Y2の夫であるA及び同人が代表取締役を務める会社の原告に対する準消費貸借契約に基づく元金1665万円の返還債務を連帯保証したと主張して,連帯保証契約に基づく債務の履行として,1665万円及びこれに対する支払請求日から相当期間経過後である平成23年11月16日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 争いのない事実等(証拠上容易に認定できる事実を含む。)
(1) 当事者等
被告有限会社Y1(以下「被告会社」という。)は,不動産の売買,仲介及び賃貸等を業とする有限会社であり,被告Y2は,同社の代表者取締役である。
Aは,被告Y2の夫であり,不動産の売買及び賃貸等を業とするa株式会社(以下「a社」という。)の代表取締役である。
(2) 原告とAとの関係等
原告は,少なくとも形式上,平成19年1月ころからa社に従業員として雇用され,同社の開発営業部長の肩書きで,a社がb株式会社から委託された○○ビル及び△△ビルの再開発事業に関する業務に従事した(甲9)。
原告は,同年6月,c株式会社(以下「c社」という。)を設立し,自らも不動産の売買,賃貸等の業務を行った(甲12)。
2 争点
(1) 主たる債務の存否
(2) 原告と被告らとの間の連帯保証契約の成否
3 当事者の主張
(1) 争点(1)(主たる債務の存否)について
(原告の主張)
ア 給料債権
原告は,平成19年1月ころ,a社との間で,基本給を月額85万円とし,適宜成功報酬を加える旨の内容で雇用契約を締結し,同月から平成21年3月まで,同契約に基づき労働した。なお,原告は,a社から平成19年に1220万円,平成20年に1335万円を受領したことについては積極的に争わない。
イ 貸金債権
(ア) 原告は,平成21年7月ころ,Aに対し,弁済期の定めなく,400万円を貸し渡した。
(イ) 原告は,同年9月ころ,Aに対し,弁済期の定めなく,200万円を貸し渡した。
(ウ) 原告は,同年11月5日,Aに対し,同月20日を弁済期として,100万円を貸し渡した。
ウ 上記アの未払賃金及び上記イの未払元金を旧債務とする準消費貸借契約の締結
A及びa社は,平成21年11月5日,上記アのうち1065万円の未払賃金及び上記イのうち合計600万円の未払元金(イ(ア)の未払元金400万円,イ(イ)の未払元金100万円及びイ(ウ)の未払元金100万円)を旧債務として,原告との間で,A及びa社が同債務を連帯して支払う旨の準消費貸借契約(以下,かかる契約を「本件準消費貸借契約」といい,返還債務を「本件債務」という。)を締結し,「債務確認書」と題する書面(以下「本件債務確認書」という。甲2)を作成した。
(被告らの主張)
ア 原告が主張する主たる債務は存在しないことは,後記イ及びウのとおりである。仮に,原告が主張する主債務が存在したのであれば,当時,原告がa社に対して負っていた貸金債務2600万円と相殺せずに,2000万円をa社に送金して返済した理由が不明である。
なお,本件債務確認書は,原告からc社の社内文書として必要であると言われ,記名押印したものであり,内容は虚偽である。
イ 給料債権
a社は,平成19年1月から平成20年6月までの間,原告を雇用し,平成19年1月から同年11月までは月額85万円(手取額は56万0300円),同年12月は合計285万円(手取額は178万3400円)を支払った。a社は,原告から給料の前払いを要求され,平成20年1月から同年3月までは月額285万円(手取額は178万3400円),同年4月から同年6月までは月額160万円(手取額は100万8400円)を支払ったが,原告がc社を経営することは利益相反行為に該当することから原告との雇用契約を解約した。したがって,a社が原告に対し支払った給料はむしろ過払になっており,未払はない。
ウ 貸付債権
否認する。原告は,上記原告の主張イ(ア)及び(イ)の具体的な貸付年月日を明らかにしないし,借用書等も提出しない。
(2) 争点(2)(連帯保証の成否)について
(原告の主張)
原告は,本件債務の担保として,栃木県那須の土地の権利証等を預かっていたが,Aからこれらを任意売却して本件債務を返済したい旨の申出を受けたことから,その代替として,連帯保証人等を付けるよう求めた。
被告らは,原告との間で,平成22年12月6日,本件債務について連帯保証する旨の合意をし(以下「本件連帯保証契約」という。),同月3日付けの「誓約書及び念書」と題する書面(以下「本件念書」という。甲3)を作成した。
(被告らの主張)
被告Y2は,本件念書の裏面に自身の署名押印,及び被告会社の記名押印をしたが,同人がこれらの記載をした際,「連帯保証人」の文字はなく,本件債務を連帯保証する意思はなかった。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(主たる債務の存否)に対する判断
(1) 認定事実
証拠(甲1~3,8の1~10,12,18,乙1~5,証人Aの証言,原告本人の尋問の結果〔以下「原告本人の陳述」という。〕及び被告Y2・被告会社代表者の尋問の結果〔以下,単に「被告Y2の陳述」という。〕。ただし,乙3~5,証人Aの証言及び被告Y2の陳述のうち,下記認定に反する部分は除く。)及び弁論の全趣旨によれば,前記第2の1の各事実に加え,以下の事実を認めることができる。
ア 本件債務確認書の作成(甲2,原告本人の陳述)
a社及びAは,次の内容の記載のある平成21年11月5日付け本件債務確認書(甲2)に記名押印した。
① 未払給料 1065万円
② 担保貸付分 400万円(那須+千葉)利息含まず
③ 直接分残額 100万円(200万-(70+30))
④ 本日貸付分 100万円(11月20日返済を予定)
イ 担保提供(甲2,3,原告本人の陳述,証人Aの証言)
Aは,原告に対し,本件債務の担保として,後記ウ③及び④の各土地の権利証並びに後記ウ①及び同②の自動車を預けた。
ウ 本件念書の作成(甲2,3,原告本人の陳述)
a社は,次の内容の記載のある平成22年12月3日付け本件念書(甲3)に記名押印し,Aは署名押印した。
a社及びAは,本件債務確認書に基づいて原告に差し入れた下記の担保目録記載の担保について,①以外の②から④について任意売却をして本件債務を弁済するために,一時返還をお願いしたい。また,②の代替として,②の売却完了まで⑤を担保として差し入れ,被告Y2を連帯保証人とすることを確約する。
〔担保目録〕
① メルセデスベンツS550 ナンバー(品川○○○そ○○○○)
② ポルシェカレラS ナンバー(品川○○○ふ○○○○)
③ 栃木県那須郡〈以下省略〉の土地3筆
④ 千葉県山武郡〈以下省略〉の土地1筆
⑤ メルセデスベンツE63 ナンバー(品川)
エ a社から原告に対する給与の支払(乙1,2)
a社は,原告に対し,平成19年分の給与として1220万円(源泉徴収税額425万3300円)及び平成20年分の給与として1335万円(同497万4600円)を支払った。
(2) 主たる債務の存否についての判断
ア 本件債務確認書の信用性について
本件債務確認書の成立については,当事者間に争いがないところ,被告らは,原告からc社の社内文書として必要であると言われ,記名押印したものであり,内容は虚偽である旨主張し,証人Aもこれに沿う証言をする。
しかしながら,上記(1)で認定したとおり,Aは,原告に対し,栃木県那須郡及び千葉県の各土地の権利証や自動車を担保として渡していることは,本件債務確認書の内容と符合しているのに対し,証人Aの証言は,債務が存在しないにもかかわらず(被告らの主張によれば,a社は原告に給与の過払金返還請求権を有しているにもかかわらず),A及びa社の連帯債務を認める内容の書面に会社の記名押印及び自らの署名押印をした理由として,合理的ではなく,信用し難い。
したがって,本件債務確認書の内容は信用できると認められる。
イ 主たる債務の存否について
上記アのとおり,本件債務確認書の内容は信用できるものであることから,平成21年11月5日の時点で,原告は,a社に対し,1065万円の未払給料債権を有し,Aに対し,那須郡及び千葉県の各土地の権利証を担保として受領して貸し付けた元金400万円の貸金債権,200万円を貸し付けたうちの未払元金100万円の貸金債権,並びに同日貸し付けた100万円の貸金債権を有していたことが認められ,同日,これらの債権を旧債務として,原告とA及びa社との間で,A及びa社が同債務を連帯して支払う旨の本件準消費貸借契約を締結したことが認められる。
なお,被告らは,原告がAらに対し債権を有していたのであれば,原告がa社に対し2000万円を相殺せずに送金するはずがないと主張するが,その主張の前提となるa社が原告に対し2600万円の貸金債権を有していたことを裏付ける証拠はなく,上記認定を左右しない。
したがって,原告が本件連帯保証契約の主たる債務であると主張する本件準消費貸借契約に基づく本件債務は存在すると認められる。
2 争点(2)(本件連帯保証契約の成否)に対する判断
(1) 認定事実
証拠(甲2~6,13の1,13の2,18,乙3~5,証人Aの証言,原告本人及び被告Y2の各陳述。ただし,乙3~5,証人Aの証言及び被告Y2の陳述のうち,下記認定に反する部分は除く。)及び弁論の全趣旨によれば,前記第2の1,前記1(1)の各事実に加え,以下の事実を認めることができる。
ア 本件念書の裏面の作成(甲3~6,証人Aの証言,原告本人及び被告Y2の各陳述)
被告Y2は,平成22年12月6日,本件念書(甲3)の裏面に,登録された印鑑を用いて,自身の署名押印及び被告会社の記名押印をした。また,Aは,原告に対し,同年10月5日付け及び平成23年1月13日付けの被告Y2の各印鑑登録証明書(甲5,6)並びに平成22年12月6日付けの被告会社の印鑑証明書(甲4)を渡した。
原告は,同日,本件念書の裏面の右上に「平成22年12月6日」,被告会社の記名押印の下に「以上」と書き加え,公証人による確定日付けの証明を得た。
イ 本件念書の被告会社保管(甲13の1,13の2,被告Y2の陳述)
被告Y2は,原告から本件連帯保証契約の履行を求められた後である平成23年11月24日,原告代理人に対し,被告会社の事務所兼被告Y2の自宅で保管していた書面として,「連帯保証人」の文字の下に,被告Y2の署名押印及び被告会社の記名押印のある書面(本件念書の裏面のうち「平成22年12月6日」及び「以上」部分以外は本件念書と同じ。乙13の2)をファックス送信した。
(2) 本件連帯保証契約の成否に対する判断
ア 被告らの保証意思の存否について
前記1(1)ウ及び前記(1)アのとおり,A及びa社は,原告に本件債務の担保として供した不動産の権利証や自動車の返還を受ける代替として,被告Y2を連帯保証人とすることを確約する本件念書を作成し,被告両名は,登録された印鑑と同じ印鑑を用いて,本件念書の裏面に署名押印又は記名押印したこと,前記(1)イのとおり,被告会社は,「連帯保証人」との記載の下に被告両名の署名押印又は記名押印のある本件念書の写し(ただし,「平成22年12月6日」及び「以上」の記載がないもの)を保管していたことが認められ,これらの事実を併せかんがみると,被告Y2は,本件債務の支払を連帯保証するためであることを認識しながら,本件念書の裏面に署名押印又は被告会社の記名押印をしたと認めるのが相当である。
これに対し,被告Y2は,尋問において,Aから原告に守ってもらうために記名押印してほしいと頼まれ,本件念書の裏面に署名押印及び記名押印しただけであり,表面は見なかったなどと陳述し,証人Aも同趣旨の証言するが,そもそも被告らは,尋問前の主張においては,原告から同人がa社及び被告会社の債務整理をするための委任状と言われ,本文の記載のない白紙の用紙に署名押印したと述べていたのであり,陳述内容と主張とが整合しない。また,上記の被告Y2の陳述及び証人Aの証言は,登録された印鑑を用いて署名押印及び記名押印する合理的な理由とはいえず,被告Y2は,尋問において,本件念書への署名を「渋々書いた」,「判子を押すということは大きなことだと思っていた」とも陳述していることからすれば,表面を見ずに書いたという上記被告Y2の陳述は信用し難い。
イ したがって,原告及び被告両名は,平成22年12月6日,被告両名が本件債務を連帯保証する旨の合意し,書面によって本件連帯保証契約を締結したと認めることができる。
3 結論
(1) 上記1及び2によれば,原告と被告らとの間において,被告らが原告に対し本件債務を連帯保証する旨の本件連帯保証契約が成立していることが認められること,本件証拠(甲7の1,7の2)によれば,原告は,a社及びAから債務整理をする旨の連絡を受け,平成23年11月5日到達の内容証明郵便をもって,被告らに対し,本件債務の連帯保証人として,書面到達後10日以内にこれらを弁済するよう請求したことが認められることからすれば,原告の被告らに対する1665万円及びこれに対する支払請求日から相当期間が経過した平成23年11月16日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由がある。なお,本件債務は株式会社であるa社が連帯債務者となっていることから,商行為によって生じた債務と認められ,本件連帯保証契約に基づく債務の遅延損害金についても商事法定利率を適用するのが相当である。
(2) 以上によれば,原告の請求は理由があるからすべて認容し,訴訟費用は,民事訴訟法61条を適用し,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第42部
(裁判官 樋口真貴子)
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