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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(263)平成22年 1月15日 東京地裁 平20(ワ)10278号 報酬金請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(263)平成22年 1月15日 東京地裁 平20(ワ)10278号 報酬金請求事件

裁判年月日  平成22年 1月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)10278号
事件名  報酬金請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2010WLJPCA01158016

要旨
◆被告らから土地売却の仲介を委託された宅建業者である原告が、被告らに対し、同土地の売買契約又は売買の双方の予約が成立したが、被告らにより報酬請求の条件成就が妨害された(民法130条による条件成就)、あるいは、被告らが売買契約成立の蓋然性が相当程度高い段階で自己都合により契約の締結を拒むことは信義則に反し、民法648条3項が類推適用されると主張して、約定報酬金の支払を求めるとともに、予備的に民法651条2項に基づく損害賠償を求めた事案において、同土地の売買契約等の成立も被告らの信義則違反も認められず、また、被告らによる委託契約の解除には「やむを得ない事由」があるなどとして、原告の請求を棄却した事例

参照条文
民法130条
民法648条3項
民法651条2項

裁判年月日  平成22年 1月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)10278号
事件名  報酬金請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2010WLJPCA01158016

東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 株式会社エース航空
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 杉本一志
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 ヱビス瓦工業株式会社
同代表者代表取締役 Y1
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Y1
被告ら訴訟代理人弁護士 渡邉正昭
被告ら訴訟復代理人弁護士 大久保龍太

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告ヱビス瓦工業株式会社は,原告に対し,1318万4709円及びこれに対する平成20年5月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告Y1は,原告に対し,379万7602円及びこれに対する平成20年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,宅地建物取引業者である原告が,専属専任媒介による土地の売却の仲介を委託した被告らに対し,①売買契約の成立又は②売買の双方の予約の成立を前提に,被告らによる予約完結義務等の懈怠により報酬請求の条件成就が妨害されたとして(民法130条による条件成就),あるいは③被告らが売買契約成立のがい然性が相当程度高い段階で自己都合で契約の締結,報酬金の支払を拒むことは信義則に反し,民法648条3項等が類推適用等されるとして,上記専属専任媒介契約に基づく約定報酬金を請求するとともに,これらに予備的に,④被告らが準委任契約である専属専任媒介契約を無理由解除したとして民法651条2項に基づいて上記報酬金額と同額の損害賠償請求をした事案である(ただし,原告は上記請求額について訴状送達の日の翌日から支払済みまでの商事法定利率による遅延損害金の支払も求めている。)。
1  前提事実(当事者間に争いのない事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)
(1)  当事者
原告は,不動産業等を主な営業目的とする株式会社であり,東京都知事の免許を受けた宅地建物取引業者である。
被告ヱビス瓦工業株式会社(以下「被告会社」という。)は,瓦及びスレートの製造販売等を主な営業目的とする株式会社であり,被告Y1(以下「被告Y1」という。)はその代表者である。
(2)  専属専任媒介契約の締結
ア 被告会社は別紙物件目録記載1の,被告Y1は同目録記載2の各所有土地につき,原告との間で,平成19年4月18日,売却の媒介を依頼する専属専任媒介契約を締結した(以下,これら契約を総称して「本件契約」という。)。
これら土地(以下,併せて「本件土地」という。)は,被告会社の営業所・事業用地として用いられていたところ,10トントラックが進入できないという業務上の不都合や被告会社の借入金債務を解消するため,その売却とそれに伴う事業用地の移転を行うこととされたものであった。
被告らは,原告に対し,本件契約の際,本件土地の売却は事業用地の買換えを条件とすること,事業用地の移転は被告会社の事業の閑散期に当たる2月に行うことを希望していた(甲24,乙7)。
イ 本件契約には,次の(ア)ないし(ウ)の内容が定められていた(甲2の1,2)。
(ア) 有効期間
本件契約締結後3か月(平成19年7月26日まで)
(イ) 約定報酬額(消費税別途)
売買代金の3%と6万円
(ウ) 約定報酬の受領の時期
売買契約締結時に2分の1,代金決済時に2分の1
ウ 本件契約の契約書(甲2の1,2)の別表においては,「媒介価額」が本件土地の合計で総額5億2000万円とされ,また,「ただし,買い依頼に係る媒介契約については,次の別表を使用することとして差し支えない。」との不動文字による記載下に,被告会社において,川崎,横浜所在の200坪程度の土地を2億円程度で希望する旨の記載がされていた。
そして,その下の「その他の条件」欄に,「当該物件の売却は事業用資産の買換を条件とする 200坪程度 更地渡し」などと記載されていた(以下「本件特約条項」という。)。
(3)  原告による代替地の紹介等
原告は,被告らに対し,本件契約後,本件土地の代替地(以下,本件土地の代替地を,単に「代替地」という。)として,多摩川沿い所在の土地,川崎市所在の土地及び横浜市磯子区所在の土地を紹介した。しかし,これら土地は被告らの希望に適合せず,代替地とはならなかった。
一方,被告らにおいて,別途川崎市所在の土地を代替地として検討していたが,これも被告らの希望に適合せず,代替地とはならなかった。
(4)  買付証明書・売渡承諾書
ア 株式会社山協商事(「以下「山協商事」という。)は,被告ら(書類上は被告会社)に対して,平成19年6月7日付の「買付証明書」(甲3)を交付した。
同買付証明書は,「買付金額」を1坪当たり130万円,「売買条件」として「売主様との都合を計って売買契約を希望」としていた。
イ 被告らは,山協商事に対し,平成19年6月19日付の「売渡承諾書」(甲4。以下「本件承諾書」という。)を交付した。
本件承諾書は,本件土地について,「下記条件で貴殿宛売渡すことを約します。」との記載の下,売買代金を5億3712万1000円(「坪単価130万円也」と付記)とし,その支払方法を,契約金5371万2100円が「平成19年7月 日」,中間金2億1484万8400円が代替地の決済時,残金2億6856万0500円が平成20年2月28日に支払われるものとしていた。
(5)  契約書の条項の相違等
ア 被告らは,原告から,平成19年7月初旬,山協商事側の仲介業者である有限会社光栄ホーム(以下「光栄ホーム」という。)が作成した,本件土地の売買契約書案(乙1)(以下「契約書1」という。)を渡された。
その後,被告らは,光栄ホームから,同年8月2日,原告の面前で,再度本件土地の売買契約書案(乙2)(以下「契約書2」という。)を渡された。
イ 契約書1,2は,文言,体裁が基本的に同一であるが,特約条項中の,本件土地の土壌汚染調査及び処理費用(以下「土壌汚染関係費用」という。)について,契約書1では山協商事の負担とされていたところが,契約書2では被告らの負担とされていた。
被告らは,その内容の相違を後日発見して原告に指摘した。すると,原告は,契約書2は読んでおらず,その相違は認識していない旨述べた(乙7及び弁論の全趣旨)ところ,その後,被告らに対し,光栄ホームのワープロの打ち間違えであったと説明した。
ウ 契約書1,2においては,売買代金額が5億3696万5000円,手付金が5369万6500円とされ(本契約締結時支払),残代金4億8326万8500円の支払日は平成20年2月28日(本件土地の引渡期日と同じ)とされていた。
ただし,被告らが同期日前に代替地を決定した場合には,本件土地の売買の決済日(ただし代金総額の85%まで)を,被告らの要請により,代替地の決済日の1週間前に変更することができる(ただし,当該決済日の1か月前までに通知必要あり)こと,代替地が本件土地の売買代金の決済日までに決定しなかった場合には,(本件土地の引渡期日,決済日を)3か月延長することができることが特約されていた。
(6)  被告らの契約書作成拒否等
被告らは,原告に対し,平成19年8月,土壌汚染関係費用の負担について,契約書2で契約書1より被告らに不利に変更されていることなどを理由として,山協商事との本件土地の売買に係る契約書の作成を拒否するに至り,現在に至っても,被告らと山協商事との間で,本件土地の売買に係る契約書の作成,登記手続等は行われておらず,売買代金の決済も行われていない(弁論の全趣旨)。
また,本件土地の所有者は被告らのまま変わっていない(証人B)。
2  争点
①  売買契約が実質的に成立したことによる報酬請求の可否
②  売買の双方の予約が成立したことによる報酬請求の可否
③  信義則違反,民法648条3項等類推適用等による報酬請求の可否
④  民法651条2項による損害賠償請求の可否
(1) 売買契約が実質的に成立したことによる報酬請求の可否(争点1)
(原告の主張)
ア 原告の媒介により,山協商事は,平成19年6月7日に本件土地についての買付証明書を交付し,被告らは,同月19日,本件承諾書を交付した。
イ 本件承諾書は,山協商事への売却の意思が明確であり,正式契約ではないことを示すような文言や後日正式契約をもって契約内容を協議することを必要とするような文言はなく,物件の記載や代金総額,代金の支払方法等も明確で具体的であり,これによって,被告らと山協商事との間で,本件土地の売買契約が実質的に成立した(以下「本件売買契約」という。)。
本件契約においては,約定報酬の2分の1の受領時期が代金決済時とされているところ,被告らは,本件売買契約の契約書の作成,同契約に基づく義務の履行等を拒否し,本件土地の山協商事への売却手続を了していない。これは故意に代金の決済という条件の成就を妨害するものといえるから,民法130条により当該条件が成就したものとみなされる。
ウ よって,原告は,本件契約に基づき,本件売買契約締結時及び代金決済時の約定報酬金合計1698万2311円について,各被告の本件土地の所有面積であん分し,被告会社に対して1318万4709円,被告Y1に対して379万7602円の報酬請求権を有する。
エ なお,被告らは,本件契約の際,原告と被告らとの間で,本件土地の売買契約は,被告らが200坪程度の代替地を取得した後に締結される旨の合意(以下「本件代替地合意」という。)がされ,被告らが原告から代替地の取得の仲介を受託したと主張するが,否認する。
本件特約条項は,必ずしも代替地の取得を先行させるものではない。被告らにおいて,本件土地の売買契約の締結を代替地取得後とする場合に要する代替地(2億円程度)の手付金2000万円程度を用意することは経済的に無理であった。
(被告らの主張)
ア 本件売買契約は否認する。
イ 不動産取引の実態においては,買付証明書・売渡承諾書の交付は,確定的な売買の意思表示を留保するものであって,売買契約の申込み・承諾には当たらない。
また,原告と被告らとの間には本件代替地合意が存在していたにもかかわらず,代替地は取得されていない(被告らは,本件土地売却と代替地取得の同時決済が困難なときには,別途代替地取得の費用をねん出する準備があった。)し,本件土地の売買の契約書も作成されていない。
更に,本件承諾書は,被告らが山協商事側と面会することなく,原告代表者に求められて交付したものにすぎず,その交付当時,売買代金の支払時期,登記の移転時期,土地の引渡時期,違約金の定め等,細目の取決めも,手付金や内金の支払もなかった。
以上からすれば,本件売買契約が成立したとはいえない。
ウ 条件成就妨害の主張について
取引当事者は,契約相手を選ぶ権利があり,これは仲介業者が取引相手を紹介した場合も同様である。
そして,山協商事は,代替地が確保されなければ本件土地を売却できない被告らの事情を無視し,本件土地を売却するよう強く迫っただけでなく,被告らに断りなく本件土地の売買の契約書案の文言を改ざんした疑いが濃厚であるから,被告らが山協商事との契約を拒んだことには十分な理由がある。
これらからすれば,本件においては,原告主張の条件成就妨害を観念する余地はない。
(2) 売買の双方の予約が成立したことによる報酬請求の可否(争点2)
(原告の主張)
被告らと山協商事の間での買付証明書及び本件承諾書の交付により,被告らと山協商事との間で,本件土地についての売買の双方の予約が成立した(以下「本件予約契約」という。)。ところが,被告らは,同売買の契約書の作成,本件予約契約に基づく義務の履行等を拒否し,本件土地の山協商事への売却手続を了しておらず,これは上記予約契約上の予約完結義務を故意に怠るものである。
本件契約における約定報酬は,売買契約の成立を条件とするところ,被告らの上記行動は故意に条件の成就を妨害するものであるから,民法130条により,上記予約の完結によって被告らと山協商事との本件土地の売買契約が成立したものとみなされる。
よって,上記(1)(原告の主張)ウと同様の請求をする。
なお,本件代替地合意は存在しない。
(被告らの主張)
ア 売買の双方の予約とは,当事者双方が予約完結権を有し,いずれか一方がこれを行使することにより,他方の承諾なくして本契約が成立するというものである。
しかし,上記(1)(被告らの主張)イのとおり,被告らが本件承諾書を交付した時点で,本件土地の売買の細目は決まっておらず,その時点においても,なお交渉の継続が予定されていた。また,本件代替地合意にもかかわらず代替地が取得されておらず,被告らや山協商事に予約契約締結の意思があったとは考えられないし,どちらかの一方的な意思表示により本契約が成立すると考えるのは不当であって,予約契約は成立していない。
イ なお,条件成就妨害を観念する余地がないことは,上記(1)(被告らの主張)ウのとおりである。
(3) 信義則違反,民法648条3項等類推適用等による報酬請求の可否(争点3)
(原告の主張)
ア 原告は,本件契約に基づき,囲にょう地通行権の負担,進入路の問題,地下埋設物等のために売却が極めて困難な本件土地について,自らの主導の下で測量や埋設物の聞き取り調査その他の手配を行い,これらについて未解決のままで一坪130万円という被告らの要望に合致した購入価格での買付証明書の交付を得るに至った。被告らもこれに対して本件承諾書を交付し,残るは契約の具体的細部を詰めて売買契約書の形にする作業が残されたのみであった。
このように原告の尽力により,被告らと山協商事との本件土地に係る売買契約が成立するがい然性が相当程度高いと客観的に判断できる段階に至っていた。
このような段階に至っていた平成19年8月に,被告らが自らの都合で翻意して売買契約の締結を拒否して報酬金の支払を免れることは信義則に反し許されないというべきであり,民法648条3項等の類推適用等により原告は本件契約に基づく報酬請求権を取得できるというべきである。
そして,本件土地の売買契約成立のがい然性が相当程度高い段階に至っていたことからすると,原告は上記(1)(原告の主張)ウと同様の請求が可能というべきであり,仮にそうでないとしても少なくともその2分の1(売買契約締結の段階で取得可能であった金額)の請求が可能というべきである。
イ 本件契約の更新について
なお,被告らが翻意した平成19年8月には本件契約の当初の有効期間が経過しているが,同月2日に原告代表者,被告会社専務取締役C(以下「C」という。)及び山協商事代表者らが一堂に会して本件土地の売買契約についての打合せを行っているから,これによって本件契約は更新されたというべきである。
ウ 信義則違反の点について
なお,被告らは,代替地が確保されておらず,契約書が改ざんされたことからして,信義則違反はないと主張する。
しかし,本件代替地合意が存在しないこと,被告らにおいて代替地について漠然とした条件を提示するのみで具体的な移転計画を提示しなかったことからして,原告が被告らに代替地を提供できなかった責任の過半は被告らにある。更に原告は代替地が確保できなかった場合には,本件土地の売買代金の決済日を変更・延長する条項を契約書案に盛り込み,あるいは,正式契約書ではなくその前段階の協定書という方法をとる案を被告らに示すなどして,代替地が確保されないというおそれはほとんど解消されるはずであった。
また,契約書の文言が当初案と異なっている点は,ワープロの打ち間違いであって,当初案に戻すことは光栄ホームも了解済みで,原告代表者がその旨説明するとCもこれを了解していた。
したがって,これらは信義則違反を否定する根拠にはならない。
(被告らの主張)
ア 原告は,本件土地の売却のために十分な努力を尽くしてきたとはいえない。本件土地の売却は代替地取得が不可欠の前提であったから,本件土地の売却のための努力として,代替地の確保を行う必要があったところ,原告は被告らの意向に沿わない代替地候補を3件紹介したのみで,代替地を提供するあてもないのに無責任に本件土地の売却のみを実現しようとしたものである。
また,本件土地の売買は,ほとんど具体的事項が煮詰められないまま,交渉の初期段階で決裂しており,本件土地の売買契約が成立するがい然性が相当程度高いと客観的に判断できる段階に至ったともいえない。
イ 信義則違反の評価障害事実(抗弁)
仮に原告の努力や本件土地の売買契約成立の相当高度のがい然性が認められても,これについて,信義則,民法648条3項等類推適用等により,努力の成果に相応する額の報酬請求権が認められるとの法解釈は争う。
更に,被告らは代替地が確保されていないこと,契約書案の文言が改ざんされたことを理由に本件土地の売却を拒絶したものであり,そこに信義則違反の事情は存在しない。
(4) 民法651条2項による損害賠償請求の可否(争点4)
(原告の主張)
ア 本件契約は,上記(3)(原告の主張)イのとおり更新されていたところ,被告らは,平成19年8月ころ以降の原告に不利な時期に,準委任契約である本件契約を任意解除(民法651条1項)した。
イ 同任意解除により,原告は本件契約の約定報酬金債権(上記(1)(原告の主張)ウの報酬額と同額のもの)を失い,同報酬額相当の損害を受けた。
仮に同額の損害が認められないとしても,原告はほぼ4か月間,本件土地の売却交渉にかかりきりになり,その結果約200万円の売上げを失ったから,同額の損害を受けた。
ウ 原告は,被告らに対し,民法651条2項に基づき上記損害額の損害賠償請求権を有する。
エ 被告らの債務不履行解除,「やむを得ない事由」(民法651条2項ただし書)に係る主張について
後記(被告らの主張)ア(イ)及びウの主張については,原告代表者が本件土地の売却を強く迫ったことはないし,仮にこれがあったとしても信義誠実義務違反に当たるとは思われない。また,契約書案の改ざんに係る主張も,上記(3)(原告の主張)ウ第2段落のとおりであり,言いがかりにすぎない。
したがって,債務不履行解除の事由も,「やむを得ない事由」も存在しない。
(被告らの主張)
ア(ア) 被告らが,本件契約を任意解除をしたことは否認ないし争う。
(イ) 被告らは,①原告代表者が,本件代替地合意の存在にもかかわらず,これを無視して本件土地の売買交渉を進め,平成19年8月2日,山協商事側がCに「代替地取得の手付金も払えないのだから,先に土地を売れ。」「この場で契約書にサインしろ。」などという言葉を投げつける横暴な態度に抗議することなく,山協商事と一緒になって被告らに本件土地の売却を強く迫ったこと(本件契約上の信義誠実義務(契約書16条1号(甲2の1,2)違反),②契約書2において,土壌汚染関係費用の負担という極めて重要な事項が改ざんされていたところ,原告がその内容確認という仲介者としての基本的な注意を怠っていたこと(本件契約上の重要事項報告義務(契約書16条2号(甲2の1,2)違反)を原因として,原告代表者に対し,平成19年8月4日,「この件について手を引いてください。」と申し入れて本件契約を債務不履行解除し,また,同月下旬に再度解除を申し入れて,本件契約を債務不履行解除したもので,任意解除をしたものではない。
(ウ) また,被告らは,損害賠償責任を負担してまで本件契約を解消しようとは考えていなかったから,上記解除は無理由解除権の行使の意味を含むものでもない。
イ 仮に無理由解除の存在が認められたとしても,民法651条2項所定の「損害」は,解除が相手方にとって不利益な時期にされたことにより相手方が特に被った損害のみを意味する。
そして,仮に本件契約の解除がなくとも,平成19年10月26日には本件契約が期間満了により終了していたところ,原告は,同日までに,山協商事以外の売却先を選定することも,また,代替地を提供することもできたとはいえないから,原告が約定報酬債権を取得できなかったのは,無理由解除が原告に不利益な時期にされたことによるものではない。
ウ 「やむを得ない事由」(民法651条2項ただし書)の存在(抗弁)
ア(イ)の事情は,仮に債務不履行解除の理由とはならなくとも,本件土地の売買が,売却価額5億円超という被告らにとって極めて重大な取引であったことを考慮すれば,無催告解除における「やむを得ない事由」に当たる。
第3  争点に対する判断
1  争点1(売買契約が実質的に成立したことによる報酬請求の可否)について
(1)  売買契約が成立したといえるためには,契約の中心部分の給付内容を確定できるだけの内容的確定性と,即時に効果を発生させ,その法的拘束力を引き受けるという意思を伴う合意の終局性を要するというべきである。
(2)  これを本件についてみると,前提事実によれば,被告らと山協商事は,買付証明書・本件承諾書の交付の後,本件土地の売買について契約書を作成することを予定していたものである。
そして,本件承諾書交付の時点では売買目的物と代金額がおおむね確定されていたものの,本件土地の引渡方法,移転登記の時期などの不動産売買の一般的に主たる要素といえる点について確定していたことは認められないし,本件承諾書とその後の土地売買契約書案とでは,売買代金額の支払方法も異なっている(厳密にいえば代金額も異なっている)。更に原告がその主張において,本件土地の売却先の選定を極めて困難にした事由として挙げ,契約書案に記載されるに至っている埋設物処理の費用及び土壌汚染関係費用の負担に係る条項も本件承諾書には記載されていない。また,代替地の取得は,原告代表者においても,一定期間内に取得できなければ当然売買契約が白紙になる旨供述する(原告代表者(20ページ))ほどの重要性を有するものであるにもかかわらず,取得不能時の売買契約関係の処理も本件承諾書交付の時点において確定していなかったことが認められる(原告代表者)。
更に,原告主張のように本件承諾書の内容で売買契約が成立していたとすれば,契約書案(乙1,2)において,その後の手付金の交付,手付解除が予定されていたことは,成立済みで,完全な法的拘束力を有するに至っていた契約について,あえて約定解除権を設定するものであって,特段の事情がない限り不合理であるところ,特段の事情の存在は特に認められない。
これらからすれば,本件承諾書に「下記条件で…売渡すことを約します。」との文言の下,代金額とその支払方法が記載されていたことを考慮しても,売買契約の成立を認めるに足りる,給付内容の確定性,合意の終局性は認められない。
(3)  すると,被告らと山協商事との間で本件土地の売買契約が成立したとは認められない。
この点,原告代表者は,売渡承諾書の交付によって売買契約もしくはその予約が成立する旨をCに説明したと思う旨供述しているが,売買契約成立時には法定の書面の交付を要する宅地建物取引業者(宅地建物取引業法37条1項)である原告において,契約を成立させる際,いかなる契約が成立するかの認識もないままに,更に,上記法定書面の記載事項である引渡しや移転登記申請の時期等も確定しないままに,契約の成立を媒介したとの認識であったとは容易に信じ難い。また,あえてそのような説明をCにする理由も全く判然とせず,この原告代表者の供述は信用できない。その他,本件売買契約の成立を認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件売買契約に基づく報酬請求は認められない。
2  争点2(売買の双方の予約が成立したことによる報酬請求の可否)について
原告が,その請求の根拠として主張する売買の双方の予約は,契約当事者が予約完結権を行使することによって,被告らと山協商事との間で本件土地の売買契約が成立することになる予約契約をいうものと解されるところ,そのようなものであれば,成立する売買契約の給付内容が確定していること,契約の一方当事者による予約完結権の行使により売買契約の拘束力を発生させることを是認するだけの意思を契約当事者が有することを要するというべきである。
しかし,上記1(2)のところからして,このような給付内容の確定性,当事者意思を有していたとは認められず,本件予約契約の成立も認められない。
また,被告ら,山協商事のいずれも予約完結権を行使した様子がない。
すると,本件予約契約が成立したことによる報酬請求も認められない。
3  争点3(信義則違反,民法648条3項等類推適用等による報酬請求の可否)について
(1)  本件契約の内容
本件契約においては,原告の報酬請求は,原告の媒介によって本件土地の売買契約が成立したときに可能になり(甲2の1,2(8条1項)),原告が契約の媒介に当たって支出した費用の償還請求は原則的にできず,報酬から回収することが予定されていると解される(同(13条参照))。これらからすると,本件契約における原告の報酬は,成功報酬の性質を有するものといえる。
また,本件契約は,被告らに対し,原告の関与の下で本件土地を売買することこそ義務付けるが,被告らの契約相手の選択権を特に拘束していないから,本来的に,原告が媒介契約上の義務を尽くしても,被告らの選択によって契約が成立しないことがあり,その場合には報酬及び費用すら請求できない可能性があることを予定している。
(2)  上記の本件契約の内容からすれば,原告の活動によって本件土地に係る売買契約が成立するがい然性が相当程度に高まったとしても,売買契約が締結されず,報酬を取得できない場合があるという,報酬支払の不確実性に係る原告のリスクは本件契約において本来的に予定されているものといえる。そして,原告としては,このような場合には,当該契約以外の契約の成立に努めることによって報酬を取得すべきものである。
すると,被告らが,契約成立のがい然性が高まった上記売買の契約締結を拒否したことのみをもって,本件契約当事者間の信義則に反するとはいえない。また,成功報酬を前提としない委任,準委任について,これが終了した場合の割合報酬を定める民法648条3項を類推適用する基礎があるともいい難いし,更に後記(3)のとおり,被告らについては信義則違反との評価を妨げるべき事情がさらに存在するところである。これらを踏まえて,その他信義則違反の根拠事実,民法648条3項を類推適用すべき基礎事情は認められない。
そして,原告は,「民法648条3項等の類推適用等」とするが,信義則違反,民法648条3項類推適用のほか,具体的な法律構成を明らかにしていない。
以上によれば,本争点に関する原告の主張を採用することはできない。
(3)  信義則違反の評価障害事実
ア 被告らが原告に対して,本件土地を売却できない理由として,代替地がないと売れないと述べていたこと(原告代表者)からすれば,代替地が確保できていなかったことが,被告らが山協商事との売買契約を締結しなかった理由の一つであったことが推認される。
そして,被告らが,本件契約の際から,代替地が確保されることを事業用地である本件土地の売却の前提とする意向を有し,本件特約条項を定めるなどしてこれを原告に示していたこと,契約書1,2(乙1,2)では,本件土地の売買契約違反による解除の際には被告らに対する1億円を超える損害賠償額の予定が定められる一方,被告らが代替地を取得できない場合に上記賠償義務を負担するリスクへの対処が引渡日期日が3か月延長可能であるという限りであったことからすれば,被告らにおいて,代替地のある程度具体的な目途が立つ(これは必ずしも代替地の確定的な取得を本件土地の売却に先行させることを意味しない。)まで,本件土地の売買契約を締結しようとしないことが,原告との間で不当とはいえない。
そして,平成19年8月当時,代替地取得の具体的な見込みがあったことが認められないことからすれば,上記理由での売買契約締結拒否が,原告と被告らとの間で信義則に反するものとは言い難い。
イ また,契約書2において,土壌汚染関連費用の負担者が被告らに変わっていた点も本件土地を売却しない理由になっていたところ,契約書1,2はいずれも山協商事側が作成した文書で,その体裁,内容に上記の点を除いてほぼ変更がない。そして,契約内容の変更もない(原告代表者(10ページ))のであれば,山協商事側で,特約条項の一部として定められた土壌汚染関連費用に関する条項のみワープロを打ち直す合理的理由は見出し難いから,契約書1,2の差違が,原告が被告らに説明したような「ワープロの打ち間違え」によって生じるとは容易に信用できない。
一方,原告は,本件土地につき,水がたまりやすく,周囲に工場が多いために土壌汚染が懸念される状況にあったと主張しており(平成20年8月21日付準備書面(5ページ)),そうであれば,1400平方メートルを超える本件土地の土壌汚染関連費用は相当高額になる可能性がある。すると,その負担の所在は,売買契約締結の可否を決する重要な要素になり得る事項であって,この点について被告らに不利に変更された契約書2を提示し,これについて容易に信用できない理由を示すのみの山協商事に対し,被告らが不審の念を抱き,売買契約の締結を拒むことも,し意的な選択とはにわかに言い難く,これが原告と被告らとの間で信義則に反するとも言い難い。
4  争点4(民法651条2項による損害賠償請求の可否)について
(1)  前提事実,甲24,乙7,原告代表者及び証人Bによれば,次の事実が認められる。
ア 被告らは,本件契約締結の際,代替地が確保されることを事業用地である本件土地の売却の前提とする意向のもと,本件特約条項を定めるに至った。
原告は,被告らにおいて本件土地の事業を他の土地に移転する意向を有しており,代替地の取得可能性が被告らにとって本件土地の売買の前提ともいうべき事項であることを認識したものの,被告会社の資金繰りの状況では代替地の手付金をも準備できないであろうから,本件土地の売却によってこれを調達する必要がある,本件土地の売却後に代替地を手配することも可能であるから,必ずしも本件土地の売却前に代替地の目途をつけておく必要はないと考えていた。
イ 原告は,被告会社に対して,代替地を二,三件紹介したが,被告会社の希望に適合せず,代替地の具体的目途は立たない状況であった。
なお,原告から,被告会社に対し,代替地の条件について,詳細な条件を明らかにするように求めたことはない。
ウ 原告は,山協商事からの本件土地の購入申入れが,本件土地の状況,被告らの希望売却額等に照らして好条件であったため,山協商事からの買付証明書に応え,被告らから平成19年6月19日付本件承諾書の交付を受けた。
山協商事は,被告らに対し,原告を通じて,同年7月初旬,契約書1を提示した。なお,原告は,被告らにとって,代替地が見つかることが本件土地の売却の条件ともいうべきものであるとの認識から,山協商事と交渉し,代替地が本件土地の引渡期日(平成20年2月28日)までに決定しない場合には,これを3か月延長することができる旨の条項を契約書1に盛り込ませた。
原告は,山協商事代表者との間で,同月下旬には売買契約が締結されることを前提とする協議をしており,いつ契約を締結するか被告らに複数回確認したものの,代替地の目途が立っていないこともあって,被告らからは明確な回答を得られずにいた。
エ すると原告は,直ちに契約を締結しないまでも被告らと面接をしたいとの山協商事の意向を受け,平成19年8月2日,山協商事と被告らの関係者(C及びB)(以下「被告ら関係者」という。)を引き合わせた。
その際,山協商事は本件土地の売買契約が成立にほぼ熟した状態にあるとの見解の下に用意していた手付金相当額の小切手を被告ら関係者に提示し,また,山協商事の仲介業者である光栄ホームは,被告ら関係者に対し,本件土地を売却しなければ被告会社には手付金を払う金はなく,代替地は手に入らないであろう,地元業者として代替地取得に協力する,本件土地の引渡しを受けるためにもその必要があるなどと述べた。
被告ら側は,代替地候補も見つかっていないので売却はできないと述べたが,原告代表者は,本件土地は売却困難な物件であり,代替地発見後に本件土地を売却しようとしても困難であろうとの見通しから,光栄ホームの上記見解と同様の見解の下に,代替地の購入と本件土地の売却の同時決済などは現実的には不可能である,代替地を地上げしてでも見つけてくるなどと述べたが,その時点で代替地取得の具体的な目途が立っていたわけではなかったため,具体的な代替地候補地を挙げることはなかった。また,代替地を取得できない場合の対処についても特に述べなかった。
光栄ホームは,Cに対し,上記面談が終了しての帰り際に,契約書2を渡した。契約書2では契約書1に比べて,土壌汚染関連費用の負担が山協商事から被告らに変更されていたが,その時点で山協商事側はこの点について特段の指摘をしなかった。原告代表者は,最終的な契約書案ではないし,契約書1と同内容であろうと考え,契約書2の内容確認をしなかったため,上記の変更を認識していなかった。
オ 被告らは,平成19年8月4日ころ,上記契約書の内容変更に気付いて山協商事側に不信を感じ,原告に内容変更について連絡するとともに,山協商事や原告について,信じることができないなどといった不信感を示した。
これに対して,原告は,契約条件を変更したことはなく,ワープロの打ち間違いである旨被告らに連絡し,その後の対応等についての意向確認をしようとしたが,以後被告らは原告に対してほとんど対応しなくなった。
原告は,本件土地の売買契約を締結して資金を確保しなければ,いずれにしろ代替地の取得にも協力できないとの考えから,原告に対し,同月2日以降,代替地候補地の提示などを一切行っていない。
被告らは,原告に対し,同月下旬ころ,Cの子であるDを通じて,本件契約の解消の確認を求めた。
(2)  (1)の認定事実によれば,被告らは,原告に対し,代替地を確保することを本件土地売却の前提条件として,本件土地の売却の媒介を委託したもので,代替地の目途が立たない状態で本件土地の売買契約を締結する意向はなかったところ,原告は,本件土地の状況や被告会社の資金繰りなどに照らして,代替地の目途をつけた上で本件土地を売却することはほぼ不可能との認識の下,被告らの納得を十分に得ることなく,代替地の具体的目途がつかなくとも本件土地の売買契約を締結する方針で山協商事との交渉を進行させ,被告ら側がこれに難色を示していても,なお,その方針を維持し,山協商事と被告ら側の面談の際にも,被告ら側が代替地の確保の目途が立っていないことを理由として本件土地の売買契約の締結に難色を示しているのに対して,その意向に沿った交渉態度をとらなかったものといえ,委託者である被告らの基本的な意図に十分に沿わない任務遂行態度をとっていたものと評価できる。
また,契約書1,2の相違は,契約の可否を左右しうる程度の重要事項に関するもので,ワープロの打ち間違えによるものとも直ちに認め難いものであるから,仲介業者である原告が,山協商事側に特に確認することなく契約書1と同内容と考えて,内容確認をしないまま契約書2を山協商事側から直接委託者である被告らに交付させ,被告らから指摘されるまで上記の内容の相違に気付いていなかったことは,被告らの原告に対する信頼を多分に傷つけ得るものといえる。
(3)  (2)からすれば,被告らの本件契約の解除については,仮に無催告での債務不履行解除が認められず,これを任意解除と評価し得るとしても,原告において,委任契約(準委任契約)の基礎となる契約当事者の信頼関係を損なう事由があり,委任関係を解消することについて「やむを得ない事由」(民法651条2項ただし書)があったといえる。
すると,本争点に関する原告の主張には理由がない。
(4)  なお,原告は,本件代替地合意が存在しないこと,被告らが代替地の条件の詳細を示さなかったこと,代替地が確保されないおそれはほとんど解消されるはずであったと主張している。
しかし,被告らにおいて,代替地を取得するまでには至らなくとも,その確保が相当程度約束された状況でなければ,本件土地の売買契約を締結しない基本的意向を有していたことは,原告にも明らかであったというべきであり,それにもかかわらず,原告の任務遂行態度がこれに十分に沿うものであったとはいえないことは,本件代替地合意の有無にかかわらない。
また,被告らが代替地の条件の詳細を示さなかったとしても,専門家である原告において,上記の被告らの基本的意向を知りながら,詳細な条件を明らかにするように求めていないことからすれば,これを理由に被告らに帰責することはできない。
また代替地が確保されないおそれはほとんどなかったとするが,決済日の延長条項によって代替地の確保やこれが確保されない場合の被告らのリスクの除去が完全に行われるとはいえない。また,正式契約に至る前段階としての協定書を作成するという方法(原告代表者によれば,代替地が見つかった段階で本契約をするという協定だという。)も,これについて山協商事が同意するがい然性があったことや,そのような協定書の作成可能性が被告らに示されたことを認める的確な証拠はなく,いずれも「やむを得ない事由」の存否に影響するものではない。
その他,「やむを得ない事由」が存在するとの上記判断を覆すに足りる事情は認められない。
4  結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。
(裁判官 齋藤大)

 

〈以下省略〉

 

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