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判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(357)平成17年 5月16日 福岡地裁小倉支部 平14(わ)215号 住居侵入、強盗殺人、現住建造物等放火、死体損壊、殺人、詐欺被告事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(357)平成17年 5月16日 福岡地裁小倉支部 平14(わ)215号 住居侵入、強盗殺人、現住建造物等放火、死体損壊、殺人、詐欺被告事件

裁判年月日  平成17年 5月16日  裁判所名  福岡地裁小倉支部  裁判区分  判決
事件番号  平14(わ)215号・平14(わ)252号・平14(わ)356号・平15(わ)223号
事件名  住居侵入、強盗殺人、現住建造物等放火、死体損壊、殺人、詐欺被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2005WLJPCA05169001

要旨
◆被告人両名が、被告人A1による詐欺事件の発覚を免れるために、共謀の上、被告人A2が、被害者S方に侵入し、同人を殺害して詐欺事件の証拠となる預り証及び貯金通帳等を強取し、さらに、同人方に放火し、同人の死体を焼損して損壊したという住居侵入、強盗殺人、現住建造物等放火、死体損壊の他、殺人、詐欺を行ったという事案において、公判段階で被告人A1が、Sに対する殺人、現住建造物等放火、死体損壊について共謀を否認したが、被告人A1の捜査段階の供述及びA2の公判供述の信用性を認め、被告人A1は、Sに対する殺人、現住建造物等放火及び死体損壊の点についても被告人A2と共謀の上敢行したと認めて、被告人両名に死刑を言い渡した事例

裁判経過
上告審 平成22年11月 8日 最高裁第二小法廷 判決 平19(あ)337号 被告人Aに対する住居侵入、強盗殺人、現住建造物等放火、死体損壊、殺人、詐欺、被告人Bに対する住居侵入、強盗殺人、現住建造物等放火、死体損壊、殺人被告事件
控訴審 平成19年 1月16日 福岡高裁 判決 平17(う)394号 住居侵入,強盗殺人,現住建造物等放火,死体損壊,殺人,詐欺被告事件

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
刑法9条
刑法60条
刑法108条
刑法130条前段
刑法190条
刑法199条(平16法156改正前)
刑法240条後段
刑法246条1項

裁判年月日  平成17年 5月16日  裁判所名  福岡地裁小倉支部  裁判区分  判決
事件番号  平14(わ)215号・平14(わ)252号・平14(わ)356号・平15(わ)223号
事件名  住居侵入、強盗殺人、現住建造物等放火、死体損壊、殺人、詐欺被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2005WLJPCA05169001

主文
被告人A1及び被告人A2をいずれも死刑に処する。
被告人両名から押収してある果物ナイフ1本(平成14年押第134号符号1)を没収する。

理由
(被告人両名の身上・経歴)
1  被告人A1は,昭和49年5月16日,大分市において,父Bと母Cの長男として出生したが,昭和50年に父母が離婚したことなどから母親の実家に引き取られ,曾祖母,祖父母及び叔父らと共に生活するようになった。母Cはめったに実家に帰ってくることがなく,被告人A1は,主に祖母によって育てられ,また,父Bは暴力団組員であり,同被告人の養育に関与することもなかったことなどから,同被告人は十二,三歳ころまで,父親は既に亡くなったと聞かされて育ち,父親の生存を知らされた後も,父親と会ったのは同被告人が高等学校を卒業する前後に1回あった程度であり,ほとんど父子の交流はなかった。
被告人A1は,大分県立D高校を卒業後,平成6年4月,E市役所に就職したが,そのころから遊興費に充てるなどのために金融機関等から金員を借り入れるようになり,平成8年ころに交通事故を起こし示談金等の支払のために更に金員を借り入れるなどしたこともあって,次第に借入金が膨らみ,返済が困難になったことから,自己破産の申立てをし,平成11年5月12日,破産宣告を受けた。また,被告人A1は,上記のように多額の負債を抱えたことなどから,平成11年4月,E市役所を退職して,北九州市a区b町所在の「有限会社F」(以下「F社」という。)に入社し,床下工事等の営業に従事するようになり,平成12年8月ころからは,福岡市c区de丁目f番gGh号室(以下「被告人A1方」という。)において,内妻のHと暮らすようになった。
被告人A1は,平成14年1月4日に,I,J(以下IとJの両名を指して「Jら」という。)夫妻と養子縁組をしてJらの養子となった。
2  被告人A2は,昭和32年8月12日,福岡県行橋市において,父K,母Lの長男として出生したが,昭和34年,M及びNの養子となり,養父母によって育てられた。被告人A2は,高等学校卒業後,O大学に入学し,昭和55年3月に同大学を卒業した後は,書店店員,印刷工,トラック運転手等の職を転々とした後,北九州市i区所在の「株式会社P」(以下「P社」という。)に入社し,Q営業所において床下工事等の営業の仕事に従事したが,顧客とトラブルを起こしたことなどから,平成12年7月4日,同社を退職した。
被告人A2は,平成13年11月8日,Jらと養子縁組をして同人らの養子となり,さらに,平成14年1月4日,Rと養子縁組をし,同人を養子とした。
(犯罪事実関係)
第1  平成14年3月26日起訴(同年(わ)第215号)の公訴事実(住居侵入,強盗殺人,現住建造物等放火,死体損壊)について
1  被害者Sの身上・経歴
被害者Sは,昭和3年9月21日,当時の福岡県八幡市(現在の北九州市の一部)で出生し,昭和26年,Tと婚姻し,2人の子どもをもうけた。
被害者Sは,昭和16年3月にU国民学校を卒業し,その後,現在のV株式会社に入社し,同社を定年退職後は,北九州市j区kl丁目m番n号所在の同人方(以下「被害者S方」という。)において妻及びその妹のWと3人で暮らしていたが,平成12年に妻を亡くした後は,同所でWと2人で暮らすようになった。
2  犯行に至る経緯
(1) 被告人両名が知り合った経緯とそのころの両名の関係
被告人A2は,平成12年7月中旬ころ,F社に入社し,当時,同社の課長であった被告人A1と知り合ったが,同被告人は,被告人A2が仕事で失敗をすると,同被告人を怒鳴りつけたり,顔面等を殴りつけたりすることもあった一方で,同被告人に対し,仕事のやり方を丁寧に教えたり,食事をご馳走するなど,何かとその面倒を見てもいた。また,被告人A2が,同月ころにP社の名前を使って営業をしたことが発覚し,F社とP社の間にトラブルが生じたことがあったが,その際,被告人A1は,当時F社の支店長であったXと共にP社に謝罪に行き,また,被告人A2が上記のようなトラブルを起こしたことを理由に解雇されそうになった際には,Xに同被告人の面倒を見ることを約束するなどして,同被告人がF社を解雇されることを免れさせた。
(2) J及び被害者Sとの契約締結並びにWに対する詐欺
被告人A1は,F社では営業成績と昇進及び給与とが直接連動するシステムがとられていたことから,高齢者等を狙って不当なセールストークを用いたり,工事代金のローンの一部又は全部を同被告人が肩代わりすることを約束するなどして,多数の床下工事の施工契約をとりつけて営業成績を上げており,平成11年11月ころから平成12年9月ころまでの間に,Jらとの間で多額の床下工事の施工契約を締結し,平成12年6月ころから同年7月ころまでの間に,被害者Sとの間でも多額の床下工事の施工契約を締結していた。
その後,被告人A1は,同年7月17日ころ及び同年8月下旬ころの2回にわたり,後記第3の犯罪事実のとおり,被害者Sの妹のWに対し,同人名義で床下工事の施工契約を締結すれば,不良工事ということで後ほど工事代金が返戻されるなどと虚偽の事実を申し向けて床下工事の施工契約を締結させ,工事代金名下に合計440万円を詐取したが,同被告人は,Wに対し,上記金員を預かったことを証明する旨記載した預り証を交付していた。
(3) 被告人A2が窃盗事件を起こすに至る経緯等
被告人A2は,平成12年8月ころ,顧客とトラブルを起こしたことなどから,F社を解雇されたが,その後も,被告人A1は,営業成績を伸ばすために,被告人A2を自己の営業の下請けとして使い,同被告人がF社の名前で床下工事の施工契約をとりつけた場合には,それを自己の営業成績に含ませる一方で,同被告人には,その売上分に相当する報酬を支払っていた。
しかし,そのうち,被告人A2が上記のようにF社の名前で床下工事の営業活動をしていることが同社に発覚し,同被告人は同社の支店長のXから呼び出しを受け,Xらから顔面等をひどく殴りつけられた上,Xから弁償金等の名目で合計110万円を支払うよう請求された。被告人A2は,110万円をすぐに用意することはできなかったことなどから,被告人A1に,250万円の債務を負うことを条件に110万円を立て替えてもらい,これをXに支払い,この250万円については後に叔父から借り受けて同被告人に支払った。また,このころ,被告人A2は,被告人A1から,被告人A2がF社に勤めていた際にP社の名前で営業活動をした件でP社の本部長が同被告人に対し損害賠償とその身柄引渡しを求めているなどと虚偽の事実を告げられ,被告人A1が間に入って収めるからなどと言われて,消費者金融会社から借り受けた40万円を同被告人に渡したこともあった。
被告人A2は,その後,上記のようにXや被告人A1に支払った金は本来支払う必要のなかったものと考え,弁護士に相談するなどしたが,同被告人が探すよう依頼した者らに捕まって殴られたりした上,同被告人の父親は神戸に組を構えるやくざだから逆らわない方がいいなどと言われて脅されたため,被告人A2は,被告人A1の背後には暴力団関係者がいると信じるようになり,その恐怖感もあって,同被告人らから金を取り戻すことを断念し,同被告人から,被告人A2を捜し出すのにやくざを使って400万円ほどの費用がかかったなどと言われたのに対しても,平成12年12月6日実家の土地建物を担保に消費者金融会社から450万円を借り入れ,そのうち400万円を被告人A1に渡した。
被告人A2は,同年12月19日ころ,福岡県京都郡o町所在の「株式会社Y」(以下「Y社」という。)に入社し,15万円前後の月給を受け取るようになったが,P社に勤務していたころの借金に加え,上記のように被告人A1に渡す金を捻出するなどのために多額の借入れをしたことから,借金の返済が毎月十二,三万円に上り,上記給料だけでは生活をするのが困難な状況であったため,同被告人に借金の返済について相談をし,同被告人に消費者金融会社に対する8万5000円の返済を肩代わりしてもらうなどした。しかし,被告人A2は,平成13年3月ころになると,いよいよ借金の返済が困難になり,被告人A1に相談したところ,同被告人から,窃盗や強盗でもしてまとまった金を持ってくれば,それをやくざに渡して逃がしてやるなどと言われた。そこで,被告人A2は,Y社の事務所に侵入して金庫を盗むことにしたが,その際,被告人A1に命じられ,某組の若頭宛に,上記の件で逮捕された場合に同被告人の名前を出したときには,自分の家族や親戚がどのような目に遭わされても文句を言わない旨の誓約書を書かされ,それに血判を押させられた。
被告人A2は,平成13年3月28日,Y社の事務所内に侵入して金庫を窃取し,翌29日,被告人A1に同金庫の中に入っていた現金約76万円を渡し,さらに,上記金庫の中に入っていた預金通帳等を用いて現金を引き出そうとして逮捕され,起訴されたが,同被告人の名前はいっさい明かさなかった。被告人A2は,同年7月4日,上記の件で福岡地方裁判所で懲役10か月の有罪判決を受けたが,これを不服として控訴をし,控訴審では被告人A1がY社に対し被害全額を弁償するとともに情状証人として出廷して被告人A2の雇用を約束するなど同被告人の更生に協力する旨証言したことから,平成13年11月5日,福岡高等裁判所で原判決が破棄されて懲役1年4か月,4年間の刑の執行猶予の判決がされ,同日,同被告人は釈放された。
(4) 被告人A1のスナック等の経営状況,Jに対する詐欺の状況等
一方,被告人A1は,F社に同社の金を使い込んだことが発覚したことから,平成12年12月ころ,同社を退職し,それまでに蓄えた預貯金のほとんどをつぎ込んでスナック等の経営に乗り出すことにしたが,上記のようにF社に勤務していた際に顧客から肩代わりした工事代金のローンを抱えており,同社を退職して収入がなくなったことなどから,その支払に窮するようになった。
そこで,被告人A1は,同社に勤務していたころに多額の床下工事の施工契約を締結させることができたJらを騙して,相続税対策金等の名目で,ローンの支払資金やスナック等の開店準備資金,運転資金に充てる金を騙し取ろうと企て,Jに対して,税金対策にお金を預ければ儲かる旨虚偽の事実を申し向け,平成13年1月ころから毎月数百万円の金員の交付を受けるようになり(後記第4の犯罪事実はこれらの一部である。),これらを上記のようなローンの支払,スナック等の運転資金等のほか自己の遊興費に充てて費消し続けた。
被告人A1は,上記のように自己の預貯金やJらから騙し取った金をつぎ込んで,北九州市p区内に平成13年2月15日から同年10月25日までの間に4件のスナック等を順次開店し,さらに,同年10月29日,上記4店舗の運営,管理等を行うことを目的とした「Z有限会社」(以下「Z社」という。)を設立したが,上記4店舗の収支はほとんど毎月赤字であった。
(5) 被告人A2が釈放された後の被告人両名の関係等
平成13年11月ころになっても,上記4店舗の経営状況はいっこうに好転しなかったのに加え,被告人A1は,週に3回くらいは各地の競輪場に通って数十万円単位の金を費消する生活を続けたことなどから,次第に従業員に対する給料の支払や,従業員寮として利用していたアパートの賃料等の支払が遅れるようになった。
被告人A1は,前記のとおり被告人A2が同年11月5日に福岡拘置所から釈放された際,同被告人を迎えに行き,同被告人に金を渡してホテルに泊まらせるなどしたが,このころには,Jらからこれまでのように多額の金員を詐取することも困難になっていたことなどから,今度は同被告人をJらと養子縁組させ姓を変更させて同被告人に消費者金融会社等から金を借り入れさせようと考え,同被告人にその旨持ち掛けたところ,当時金に困っていた同被告人はこれに応じた。
そして,被告人A2は,同月8日,Jらと養子縁組をしてJらの養子となり,同月12日から翌月11日ころまでの間に,消費者金融会社等から800万円以上を借り入れ,そのほとんどを被告人A1に渡し,また,信販会社とローンを組んで同被告人が使用するベンツを購入するなどしたが,同年12月ころになると,Jらの姓でも金員を借り入れることが困難となっていた。
一方,被告人A1は,被告人A2に自動車を貸し与えてそこで寝泊まりさせたり,同被告人をZ社の「営業課長」として雇い入れ,スナック等で働くホステスへの名刺の配達をさせたり,被告人A1の小間使いのようなことをさせ,時々一,二万円程度の小遣いを渡していたほか,競輪やソープランド等に連れて行くなどもしており,被告人A2は,被告人A1に依存して生活するようになっていった。
(6) 犯行計画状況等
被告人A1は,同年11月末ころになっても,経営するスナック等の収支がいっこうに好転しなかったことなどから,遅くともこのころには,被告人A2を生命保険や自動車保険に加入させ,同被告人の死亡や自動車事故を偽装して保険金を詐取することを考えるようになり,同被告人に上記のような計画を持ち掛けたが,同被告人も,上記計画がうまくいけば,多額の保険金を騙し取ることができる上,自分は死亡したことになるから,事実上,多額の借金の返済から逃れることもできるなどと考え,上記計画に乗ることにし,同年12月7日,死亡保険金3200万円,保険金の受取人をJとする生命保険及び搭乗者傷害の場合に1000万円の保険金が下りるなどの内容の自動車の任意保険の各契約の申込みをし,同月18日には保険料を支払った。当初,被告人A1は,医師に被告人A2が死亡した旨の死亡診断書を偽造してもらい,これを用いて同被告人を被保険者とする生命保険金を詐取しようと考えていたが,遅くとも同年12月中旬ころには,同被告人の身代わりを実際に殺害して,生命保険金を詐取する方法も考えるようになり,同年12月18日には,同被告人に対し,生命保険金を詐取するために同被告人の身代わりを探して殺害するよう指示し,同被告人も,従前と同様の動機からこれを了承した。もっとも,被告人A1は,医師に死亡診断書を偽造してもらっての生命保険金の詐取もまだ念頭に置いており,被告人A2に同被告人の死亡診断書を偽造してくれる医師を探すことも命じた。
被告人A1は,同年12月20日ころ,Wから,電話で,前記のように同被告人が後記第3の犯行によってWから騙し取った合計440万円の返還を強く求められ,翌14年1月上旬までにはこれを返還することを約束したが,同被告人には,約束通り440万円を返すあても,また,そのつもりもなかった。しかし,被告人A1は,Wに440万円を返さなければ,Wが同被告人に騙されたとして警察に訴え出,前記のようにWに渡していた預り証等が証拠となって,前記3の詐欺(後記第3)の犯行で警察に逮捕されるかもしれず,生命保険金等を詐取する計画も水の泡となってしまうと考えた。そこで,被告人A1は,前記3の詐欺の犯行の発覚を防ぐために,被害者S方からその証拠となる預り証等を奪い取ることにしたが,預り証等をただ奪うだけでは,犯行に自分が関わっていることを疑われるおそれがあったことから,前記3の詐欺の犯行も預り証等の強奪も発覚することがないように,被害者S方に居住している同人及びWを殺害することにした。さらに,被告人A1は,F社に勤務していたころ被害者S方に100万円の札束が一,二束あるのを見たことがあったことから,ついでに同人方から現金を奪うことも考えた。
(7) 共謀状況
被告人A1は,平成13年12月24日ころ,A’競輪場からの帰りの車の中で,被告人A2に対し,暴力団の「総裁」から持ち掛けられた話として,ある人を殺して書類を奪ってくれば1000万円くらいの報酬が出るからやらないかなどと言って,被害者S及びWを殺害する話を持ち掛けたが,この時は,同被告人がためらいを見せたことから,それ以上詳しい話はしなかった。
被告人A1は,平成14年1月3日,被告人A2に対し,再び,被害者S及びWを殺害する話を持ち掛けたところ,同被告人は今度はこれを了承した。
すなわち,被告人A2は,生命保険契約の申込みをした平成13年12月7日以降は,被告人A1の指示・意向に逆らえば,場合によっては殺害されるかもしれないとの恐怖感を抱くようになり,ますます同被告人の意向に逆らい難い心理に陥っていた一方で,同被告人に依存して生活し,同被告人と共に競輪等に興じていたところ,被告人A2としては,被告人A1が被害者Sら殺害の犯行と並行して身代わりを殺害して保険金を詐取する犯行計画を進めており,これが計画通りいけば,自分が戸籍上死亡したことになり,多額の借金の取り立てから逃れることができる上,別人として人生をやり直すことができると考え,これを実現させるためには,前者の犯行もうまくやり遂げなければならず,また,仮に,前者の犯行に関し被告人A2が捜査機関に疑われるようなことがあっても,後者の犯行を敢行し,自分が戸籍上死亡することになれば,前者の犯行に関する追及も事実上なくなると考えたことから,被告人A1が持ち掛けた被害者Sらの殺害計画を了承した。
この時,被告人A1は,自分がWを外に連れ出している間に,被告人A2が被害者Sの首を絞めた上,刃物で刺して殺害し,次いで,Wが家に帰って来たところで,同様の方法で殺害するように指示したほか,両名の死体の処分方法として,死体を車で運び出し,被告人A2の実家の床下か山に捨てるよう指示した。また,犯跡を隠ぺいするためには,血痕をきれいに拭き取るか,被害者S方に火を点け,同人方ごと証拠となるものを燃やすしかないなどと指示した。
被告人A1は,同月5日,被害者S及びWの殺害を同月8日に実行することに決め,両名の死体を運び出すためのレンタカーを予約するとともに,被害者S方に電話を掛け,Wに対し,同月8日に訪れる旨を伝えた。
被告人A1は,同月6日,佐賀県武雄市所在のB’競輪場の特別観覧席に被告人A2を呼び出し,同被告人に対し,被害者S及びWの殺害を同月8日に実行することなどを伝えた上,同被告人に被害者S及びWの殺害を実行する意思があるかどうか確かめたところ,同被告人は「やります。」と答えた。
被告人A1は,翌7日朝,被告人A2と共に運転免許試験場等に行った帰りの車中において,同被告人との間で,従前謀議してきた犯行計画を確認した上,同被告人に対し,被害者S方には100万円から200万円の札束があるのでそれも奪ってくるよう指示し,また,同人方には宅配便業者を装って侵入することにした。そして,被告人A1は,被告人A2に対し,被害者SやWを刺殺するためのナイフや,宅配便の業者を装うための作業服上下,被害者S等に顔を見られにくくするための帽子,指紋を残さないようにするなどのための手袋などを購入して準備しておくよう指示し,その購入代金として現金2万円を渡した。被告人A2は,被告人A1と別れた後,この2万円を使って作業帽子,革手袋や作業服上下を購入した。また,被告人A1は,取引先の酒店に電話を掛け,死体を外に運び出す際に使う台車の調達をした。
被告人A1は,同日午後5時ころ,新年の挨拶回りのために北九州市内に向かったが,その際,被告人A2に死体を運搬するために予約していたレンタカーを借りて来させるとともに同被告人の緊張をほぐすために同被告人に酒を飲ませるなどしようと思い,同被告人を同行させた。しかし,被告人A1は,Wが自分の祖母と年齢が近く,その雰囲気もよく似ていたことなどから,Wを殺害することに躊躇を感じ始め,同人の殺害は中止することにし,結局,被告人A2に予約していたレンタカーを借りに行かせることもなかった。
被告人A1は,同日深夜まで北九州市内を被告人A2と飲み歩いた後,翌8日午前零時30分過ぎころに,同被告人と共に被告人A1方に向かった。被告人A1は,その車中において,被告人A2に対し,従前の謀議内容を確認した上,Wの殺害を中止することを伝えた。被告人両名は,同日午前1時50分ころ,被告人A1方の駐車場に着き,そこで別れたが,その際,同被告人は,被告人A2に対し,被害者S方に侵入する際,宅配便業者を装うに当たり,不審に思われないように,届け物に見せるための菓子箱を購入しておくよう指示し,同被告人から伝票も必要ではないかなどと指摘されて,菓子箱を購入する際に宅配便の伝票ももらうよう指示し,同被告人は,同日午前2時40分ころ,コンビニエンスストアでそれらを調達した。
被告人両名は,同日午前8時30分過ぎころ,被告人A1方を出発しての事務所に向かったが,その車中において,同被告人は,被害者S方に電話を掛け,同人が在宅していることや,同人の息子が被害者S方に来ていないことを確認した上,Wに対し,同日午前10時前後に被害者S方に迎えに行く旨伝えた。そして,被告人A1は,被告人A2に対し,同被告人が怖じ気づいて逃げ出さないように,暴力団関係者が仕事をやり遂げるのを見張っているなどと言って釘を刺し,同被告人が指示されたナイフをまだ購入していなかったことから,被告人両名は,Z社の事務所の近くのコンビニエンスストアに立ち寄り,被告人A2が果物ナイフ1本を購入した。
被告人両名は,同日午前10時ころ,Zの事務所に到着し,被告人A1が被告人A2に被害者S方の間取りや預り証等の書類及び現金の在りかを教えるなどし,被告人両名は,犯行遂行中の連絡方法を決めた上,同日午前10時20分過ぎころ,被害者S方へと向かった。その車中で,被告人A1は,被害者S方に電話を掛け,Wに対し,被害者S方にWを迎えに行く時間を午前11時に変更することを伝えた。
被告人両名は,同日午前10時40分ころ,被害者S方近くにある北九州市q区rs丁目t番u号所在のC’店東側駐車場に到着し,被告人A1は,被告人A2を被害者S方の下見に向かわせ,下見を終えて戻ってきた同被告人に対し,上記C’店の近くで待機しておき,被告人A1がWを乗せてZ社の事務所に向かうのを確認してから,その20分後に,被害者S方に侵入し,犯行計画を実行に移すよう指示した。そして,被告人A2は,予定通り被告人A1が同日午前11時ころWと合流し車でZ社の事務所に向かって被告人A2とすれ違ったのを見届け,その場で20分間ほど時間を潰した後,計画を実行に移すべく,被害者S方に向かった。
3  犯罪事実
被告人両名は,共謀の上,S(当時73歳)を殺害して金品を強取しようと企て,平成14年1月8日午前11時20分ころ,被告人A2が,北九州市v区wx丁目y番z号所在の被害者S方玄関から宅配便業者を装って同人方に侵入した上,同所において,同人に対し,殺意をもって,その頸部を両手で絞め付けた上,所携の果物ナイフ(刃体の長さ約10.1センチメートル)でその頸部を突き刺すなどし,よって,そのころ,同所において,同人を頸部刺創に基づく血液吸引性窒息及び出血性ショックの競合により死亡させて殺害した上,同所において,同人所有に係る郵便貯金通帳1通及び印鑑2本(時価合計約1500円相当)を強取し,さらに,被告人両名は,被害者S方に放火して犯跡を隠ぺいしようと企て,同日午後1時15分ころ,被告人A2が,Wが現に住居に使用している上記被害者S方において,石油ファンヒーター及び石油ストーブの各カートリッジ内の灯油を同人の死体等に撒いた上,マッチで点火した広告紙をその死体の上に置いて放火し,燃え上がった炎をふすま戸等に燃え移らせ,よって,Wが現に住居に使用している木造瓦葺2階建居宅1棟(建築延べ床面積約219.20平方メートル)を全焼させて焼損するとともに,被害者Sの死体を焼損して損壊した。
第2  平成14年4月11日受理(同年(わ)第252号)の公訴事実(殺人)について
1  被害者D’の身上等
D’は,昭和14年10月30日,当時の福岡県小倉市(現在の北九州市の一部)において出生し,日雇い人夫などをした後,ここ数年ほどはいわゆるホームレスとなって北九州市a区において路上生活をしていた。
2  犯行に至る経緯
(1) 被告人A1は,第1の2の犯行に至る経緯(5)のとおり,平成13年11月ころ,経営するスナック等の運転資金や遊興費に不足するようになったことから,遅くとも同年11月下旬ころには,被告人A2を生命保険に加入させ,同被告人が死亡したという内容の死亡診断書を偽造し,同被告人を被保険者とする生命保険金を詐取することや,同被告人を自動車の任意保険に加入させて自動車事故を偽装し,保険金を詐取することなどを考えるようになり,同被告人に命じ,同年12月7日,同被告人を死亡保険金3200万円の生命保険及び搭乗者傷害の場合に1000万円の保険金が下りる自動車の任意保険の各契約の申込みをさせ,同被告人は同月18日この保険料を支払ったが,遅くとも同月中旬ころには,実際に同被告人の身代わりとなる者を殺害して,同被告人を被保険者とする生命保険金を詐取することも考えるようになり,同月18日,乗車した新幹線の中で,同被告人に対し,同被告人の身代わりを殺害して生命保険金を詐取することを持ち掛けた。被告人A2は,被告人A1の話を断れば,自分が殺されるかもしれないとの恐怖感を抱いた一方で,この計画を成功させ,自分が戸籍上死亡したことになれば,生命保険金を騙し取ることができる上,多額の借金の追及から事実上逃れることができるし,同被告人から逃走資金を得て遠方に逃げて,別人として人生をやり直すこともできると思い,同被告人に対し,自分の身代わりとなる者を探して殺害することを了承した。被告人A1は,上記身代わりとなる者の殺害を持ち掛けた後も,しばらくの間は,被告人A2の死亡診断書を偽造して生命保険金を詐取する計画も進めており,知人のE’やJ,内妻のHに対し,死亡診断書を偽造してくれる医者を紹介してくれるよう依頼したり,同被告人に対し,そのような医者を探すよう命じたりしていたが,平成14年1月初旬ころには,そのような医者を見つけることが困難であることを知った。そのため,被告人A1は,このころには,被告人A2の死亡診断書を偽造して生命保険金を詐取する計画はあきらめ,同被告人の身代わりとなる者を実際に殺害して,同被告人を被保険者とする生命保険金を詐取する決意を固めた。
また,これと前後して,被告人A1は,さらに多額の生命保険金を詐取しようと考え,被告人A2に命じて,平成13年12月26日,別の保険会社にも行かせ,翌年1月15日,同被告人に死亡保険金1700万円の生命保険契約の申込みをさせた。
(2) 被告人A1は,平成14年1月上旬ころ,被告人A2に対し,同被告人の身代わりにするホームレスの者を探し,その者を同被告人が当時住んでいた山口県小野田市所在のI名義の家屋内に誘い込み,酒を飲ませて酔わせた上,風呂場で溺れさせ,事故を装って殺害するよう指示した。また,被告人A1は,このころ,Z社の従業員であったRに対し,300万円の成功報酬を約束して,上記保険金詐取のための殺人を手伝うよう持ち掛けた。Rは,当初,この申し出に対し確答をしなかったが,被告人A1の背後には暴力団関係者がいると信じており,同被告人の誘いを断れば自分が口封じのために殺されるかもしれず,また,生命保険金を騙し取らないと,Z社が倒産し,自分が職を失ってしまうかもしれないなどと思ったことなどから,成功報酬欲しさもあり,同月24日ころには,同被告人の申し出をはっきりと了承し,犯行を手伝うことにした。
(3) 一方,被告人A2は,被告人A1に命じられ,自分の身代わりにするホームレスの者を探していたが,同月16日ころ,北九州市b区内において路上生活をしていたF’を見つけ,同人を自分の身代わりにしようと思い,F’に対し,土木仕事の人夫を探しているのだが,働きに来ないかなどと言って誘った。そして,F’がこれに応じたことから,同人に酒を飲ませた上,酔った同人を風呂で溺れさせて殺害することにし,その数日後,を前記I名義の家屋に誘い込んだが,同人が酒を飲まなかったことから,この日はF’の殺害を実行に移さなかった。
そこで,被告人A1は,F’を川で溺死したように装って殺害することにし,同月26日,被告人A2に睡眠導入剤であるハルシオン10錠を手渡し,F’に睡眠導入剤を飲ませて眠らせ,ホテルの浴室で溺れさせて殺害した上,その死体を福岡市内のG’川に運び,釣りの最中に川に落ちて溺死したように装うよう指示した。そこで,被告人A2は,F’を連れて,被告人A1に指示されたG’川の辺りに行ったが,思いの外水深が浅く,人が溺死するような場所ではなかったことから,同被告人にその旨を伝えて,この日もの殺害を中止した。なお,被告人A1は,被告人A2が殺害を失敗したことの制裁として同被告人を坊主頭にさせた。
被告人A1は,同月29日,被告人A2に対し,F’の殺害を翌30日に実行するよう命じ,また,Rに対しても,翌30日に実行するかもしれないので準備をしておくように言ったが,同月30日,これまでの同被告人の言動に対し不審感を抱いたF’が,同被告人の隙を見て逃走したことから,結局,F’を殺害することは断念した。そこで,被告人両名は,F’の隣で路上生活をしており,被告人A2と顔見知りとなっていた被害者D’を,同被告人の身代わりとして殺害することにし,同被告人は,被害者D’に対し,F’が仕事を断ったので,代わりに土木関係の仕事をしないかなどと言って誘ったところ,被害者D’はこれを信じ,同被告人と共に仕事に行くことを了承した。
(4) 被告人A1は,翌31日,Rに対し,被告人A2の身代わりとして殺害する者が見つかったことを伝え,大分県宇佐郡b町所在のH’宿泊所に2人分の宿泊予約をとらせた。被告人A2は,同日,被害者D’をレンタカーに乗せ,被告人A1に指示された場所でRと合流し,Rの運転する車の先導で,同日午後5時30分ころ,上記H’宿泊所に到着した。当初の計画では,被害者D’に睡眠導入剤のハルシオンを服用させて熟睡させた上,同人を風呂場で溺死を装って殺害する予定であったが,宿泊所には風呂場が付いていなかったことから,Rは被告人A1に電話でその旨を伝えて指示を仰いだ。被告人A1は,上記H’宿泊所の近くにI’川があったことから,被告人A2に対し,電話で,ハルシオンを服用させて熟睡させた被害者D’をI’川に連れて行き,そこで同人を溺死させて殺害し,事故死を装うよう指示した。また,その後,被告人A1は,Rに電話を掛け,被告人A2が被害者D’を殺害する際,逃げ出さないように監視するよう指示した。
被告人A2は,同日午後7時ころ,被害者D’に対し,「作業で石を磨くため,肺に粉が入るので,薬を飲んでください。この薬は肺に粘膜を作り,職人さんも飲んでいますから,飲んでください。」「前の日に飲んでおかないと効果がないんです。」などと言い,これを信じた被害者D’に睡眠導入剤のハルシオン10錠を飲ませた。そして,被告人A2は,同日午後8時ころ,ハルシオンを飲んで熟睡していた被害者D’を抱えるなどしてレンタカーの荷台に乗せ,Rが運転する車と共に,I’川に向かった。そして,被告人A2及びRは,I’川の堤防にそれぞれ車を停め,同被告人は,レンタカーの荷台から被害者D’を降ろし,同人を抱えたり,引きずるなどしながら,I’川の川端の水門まで同人を運んで行った。一方,Rは,I’川の堤防上において,見張りと被告人A2の監視にあたった。
3  犯罪事実
被告人両名は,Rと共謀の上,被告人A2を被保険者とする生命保険金を詐取する目的で,同被告人の身代わりとしてD’(当時62歳)を殺害しようと企て,平成14年1月31日午後8時20分ころ,大分県宇佐郡c町de番地のf所在の作業場の北西約58メートル付近のI’川岸開渠において,同被告人が,殺意をもって,あらかじめ睡眠導入剤を服用させておいた被害者D’の両足首を両手で持って宙づりに,その上半身を水没させ,そのころ,同所において,同人を溺死させて殺害した。
第3  平成14年5月14日起訴(同年(わ)第356号)の公訴事実(詐欺)について
被告人A1は,家屋環境用品の販売,施工を業とする「有限会社F社北九州」の営業課長として,被害者Sとの間で,北九州市h区ij丁目k番l号所在の同人方のいわゆる床下工事の施工契約を締結し,同工事を施工したものであるが,同人と同居していたW(当時62歳)から床下工事代金名下に金員を詐取しようと企て,
1  平成12年7月中旬ころ,被害者S方において,Wに対し,同社においては,不良工事による補償として工事代金を返戻する制度はなかったにもかかわらず,これあるように装い,「Wさんの名前で床下工事をすれば,工事代金が戻ってくるようになりますよ。工事が終わった後,不良工事という書類を作って会社に提出すれば,この工事代金220万円は,近いうちに必ず戻ってきますよ。僕を信用してください。」などと虚構の事実を申し向け,同人をして,工事終了後,工事代金220万円全額が返戻されるものと誤信させて床下工事の施工契約を締結させ,よって,同年8月10日ころ,同所において,同人から,被害者Sを介し,床下工事代金名下に現金220万円の交付を受け,
2  同年8月下旬ころ,被害者S方において,Wに対し,上記1と同様に装い,「実は,お宅のほかにも,お年寄りのところで不良工事ということにして工事代金が戻る手続をしているんですよ。お宅の方も早く工事代金が戻ってくるように手続をしなければいけないんですが,もう少し工事額を上乗せしなければ不良工事として会社に書類を出すことはできませんから,Wさん名義であと220万円上乗せして床下工事をしてくれませんか。もちろん,このお金は,前の220万円と併せて近いうちに必ず戻ってきますから。僕を信用してください。」などと虚構の事実を申し向け,同人をして,工事終了後,工事代金220万円全額が返戻されるものと誤信させて床下工事の施工契約を締結させ,よって,同年9月8日ころ,同所において,同人から,被害者Sを介し,床下工事代金名下に現金220万円の交付を受け,
もって,それぞれ人を欺いて財物を交付させた。
第4  平成15年3月26日起訴(同年(わ)第223号)の公訴事実(詐欺)について
被告人A1は,株式会社J’なる架空会社のK’支社長を装った上,同社が共済組合の代理業務として,訪問販売等による被害者の被害回復手続あるいは節税対策手続を行っているように仮装して,J(当時73歳)から,これら手続金名下に金員を詐取しようと企て,別表記載のとおり,平成13年1月中旬ころから同年4月下旬ころまでの間,前後4回にわたり,山口県小野田市mn番地のoの同人方において,あるいは福岡県内又はその周辺を移動中の自動車内から同人方に電話を掛け,同人に対し,真実は上記手続を行う意思はなく,自己の遊興費等に充てる意図であるのにこれを秘し,同表記載のとおり,虚構の事実を巧みに申し向け,同人をして,その旨誤信させ,よって,同表記載のとおり,同年1月29日ころから同年5月16日ころまでの間,前後5回にわたり,同人方あるいは同市p町q番r号所在のL’農業協同組合M’支所ほか1か所において,同人から,上記手続金名下に現金合計1054万5525円の交付を受け,あるいは,自己名義の口座に振込入金させた。
(証拠)

(事実認定の補足説明)
被告人A1は,第1の犯行につき,その捜査段階においては,被害者Sの殺害及び同人方への放火のいずれについても,被告人A2と共謀したことを最終的には認める供述をしていたものの,公判段階に至り,被害者Sの殺害についてはその指示を事前に撤回し,同人方への放火の指示についてはこれをしていない旨供述するに至り,被告人A1の弁護人らも,同被告人の公判供述に基づき,同被告人の上記捜査段階の供述はいずれも任意性,信用性がなく,被害者Sの殺害及び同人方への放火について同被告人から明確に指示されていた旨の被告人A2の公判供述も信用性がないものであり,被告人A1は,第1の犯行のうち殺人,現住建造物等放火及び死体損壊の点については被告人A2と共謀した事実がなく,結局,被告人A1に対しては,第1の犯行のうち被害者S方への住居侵入と強盗の点でしかその罪責を問うことはできない旨主張している。
当裁判所は,被告人A1の上記捜査段階の供述の任意性を認めた上,同被告人の上記捜査段階の供述及び被告人A2の上記公判供述についてその信用性を基本的に認め,被告人A1は,第1の犯行のうち殺人,現住建造物等放火及び死体損壊の点についても被告人A2と共謀の上敢行したと認めたので,その判断の理由を補足して説明する。
裁判所が関係各証拠によって認定した第1の犯行に至る経緯は前示第1の2のとおりであるから,補足説明にあたっては,後記1において,犯行状況の詳細を事実認定した上,後記2において,被告人A1の上記捜査段階の供述の任意性を認めた理由を明らかにし,同被告人の上記捜査段階の供述と公判供述及び被告人A2の公判供述をそれぞれ全体的に観察して,その基本的な信用性を吟味した上,さらに,被告人両名について争いのある事実に関する被告人A1の捜査段階の供述,公判供述及び被告人A2の公判供述について,個別の証拠関係等に照らしその信用性をさらに吟味し,上記争いのある事実について,犯行に至る経緯及び後記1のとおり認定した理由を説明することにする。
1  当裁判所が認定した第1の犯行の状況等(いずれも平成14年1月8日のことであり,時刻のみを示す。)
関係各証拠によると次の各事実が認められる。
(1)  被告人A2は,午前11時過ぎころ,前記認定のC’店近くの路上で,被告人A1がWを乗せたベンツとすれ違うと,同被告人から指示されたとおり,その場で20分間ほど時間を潰した上,犯行計画を実行に移すべく,顔を見られないように帽子を目深に被り,被害者S方に向かった。
被告人A2は,被害者S方の玄関前に行き,表札でそこが同人方であることを確認した上,午前11時20分ころ,呼び鈴を押したが,なかなか同人が出てこなかったことから,逃走経路の確認も兼ね,同人方を1周した。被告人A2が再び被害者S方の玄関前に行くと,玄関の引き戸が開いており,玄関内に同人が立っているのが見えた。そこで,被告人A2は,すぐに玄関内に入って用意していた菓子箱を取り出し,「こんにちは,宅配便です。Sさんのお宅ですか,広島のN’さんから荷物が届いています。」などと言って,被害者Sに声を掛け,同人が印鑑を取りに奥の部屋に行った間に後ろ手で玄関の引き戸を閉め,用意していた手袋を出して両手にはめるなどして同人が戻ってきたときにすぐにでも襲いかかれる体勢を整えた。そして,被害者Sが玄関前に戻ってきて,宅配便の伝票に印鑑を押そうと前屈みとなったとき,突然,同人にそのほぼ正面から襲いかかり,両手をその首にまわして絞めつけ,そのまま同人を奥の仏間に押し込んで行き,「何をするか。」「近くに息子がおるぞ。」などと言いながら必死に抵抗する同人の首を両手で強く絞め続け,更に同人を仏間の隅にあった応接台上に仰向けに倒し馬乗りになってその動きを封じ,その首を絞め続けたまま両手を上下させてその後頭部を応接台上に四,五回叩きつけ,その眉間の辺りを右手拳で二,三回殴りつけた。
被告人A2は,被害者Sがぐったりとしてほとんど動かなくなったことから,同人の首から両手を離したが,同人は手や足をゆっくりと動かしたりうめき声を上げたりしたことから,当初の計画と順番が異なっていたが,同人方を物色する前に本件ナイフで同人をひと思いに殺してしまおうと考えた。
そこで,被告人A2は,本件ナイフを取り出して右手に持ち,これを被害者Sの頸部に向け2回にわたり振り下ろし,同人に頸部刺創の傷害を負わせ,そのころ,同人を上記頸部刺創による血液吸引性窒息及び出血性ショックの競合により死亡させて殺害した。また,被害者Sの右首筋から大量に流れ出た血液は,応接台上に溜まり,さらに,下に流れ落ちて隣の部屋の間の敷居に溜まった。
(2)  被告人A2は,上記のように被害者Sを殺害した後,被告人A1に指示されたとおり仏間の奥の押入れの中を探って現金を探したが,現金は見つからず,また,被害者S方の2階に通じる階段の下にあった棚を探って預り証等の書類を探したが,やはり見つからなかった。
そのころ,被告人A2は,被害者Sを殺害した時点で被告人A1に連絡をとらなければならなかったことを思い出し,午前11時27分ころ,同被告人から指示されたとおり,被害者S方の電話から同被告人に渡していた携帯電話に電話を掛け,スリーコールを3回した後,電話を切った。
被告人A2は,その後も若干の間,被害者S方において預り証等を探したが,やはり見つからず,このまま同人方にいると誰かに見つかるのではないかという恐怖感と,同人の血の臭いで気分が悪くなったことから,同人方から逃走することにし,同人方の勝手口から外に出た。そして,C’店横に設置されている公衆電話の電話ボックスに行き,午前11時40分ころ,公衆電話から被告人A1に渡していた携帯電話に電話を掛けたが,留守番電話になっていたことから,その留守番電話に,被害者Sを本件ナイフで刺殺したことや,預り証等の書類や現金,通帳,印鑑を探したがどれも見つからなかったことなどのメッセージを残して電話を切り,C’店前の公衆便所で顔や手についた同人の血液を洗い流すなどして,その場から小倉方面に向けて早足で逃げた。
(3)  一方,被告人A1は,午前11時30分ころ,Wと共にZ社の事務所に到着した後,被告人A2が犯行をやり終えるまでの間,Wを足止めしておくために,同人に対し,「Sさん方の工事代金返還の申請を出すのに,私の言葉だけでは信用できないと銀行が言ってるんですよ。」「Wさんの委任状を出してほしいと銀行が言ってきているんですよ。」などと言い,Wに委任状を書かせたり,上記委任状や同人が用意してきた同人名義の預金通帳をコピーしたものを銀行にファックスで送る振りなどをして,時間を稼いでいた。そして,午前11時50分過ぎころ,上記のように携帯電話に被告人A2から連絡の電話が掛けられていたことに気付き,上記のように同被告人が携帯電話の留守番電話に入れたメッセージを聞いて,すぐに同被告人に連絡を入れる必要があると思い,Wに「ちょっと待っててくださいね。」などと言って,の事務所から外に出て,午前11時57分ころ,同被告人が持っている携帯電話に電話を掛けたが,携帯電話の受信状況が悪く,電話がいったん切れたこともあり,午後零時ころ,上記携帯電話に電話を掛け直した。そして,被告人A1は,上記各電話の際,被告人A2に「お前今どこにおるんか。」などと言ってその所在を確かめた上,状況を確かめたところ,同被告人は,「首を絞めても抵抗が強かったから,ナイフで刺して殺しました。」「家の中は,血でビチョビチョです。」などと言い,また,預り証等や現金が見つからなかったことを伝えると,それを聞いた被告人A1は,被告人A2に対し,「そんな馬鹿なことがあるか。」「やくざが見張っているぞ。中途半端なことはするな。」などと言って,すぐに被害者S方に戻り預り証等や現金をもう一度探すよう指示した。
(4)  被告人A2は,午後零時過ぎころ,上記のような被告人A1の指示を受けて被害者S方に戻り,同人方勝手口から屋内に侵入し,再び預り証等や現金等を探したが,やはり見つけることができなかった。
そのため,被告人A2は,午後零時24分ころ,被害者S方の電話機を使って被告人A1に渡していた携帯電話に電話を掛け,預り証等も現金等も見つからない旨伝えたが,同被告人は,被告人A2に,引き続き探すよう指示するとともに,被害者S方の電話機の子機を見つけて,それを使って連絡をとり被告人A1の指示する場所を探すように指示した。
被告人A1は,Z社の事務所に戻り,Wに対し,それとなく被害者S方の現金等の在りかを聞き出そうとしたが,Wはよく知らない様子であり,結局,現金等の在りかを聞き出すことはできなかった。被告人A1は,午後零時31分ころ,被害者S方に電話を掛け,被告人A2に対し,現金は被害者S方にあるはずだから,よく探すように言った。
被告人A2は,午後零時43分ころ,S方の電話機の子機を使って携帯電話に電話を掛け,被告人A1の指示を受けながら,押入れの中をもう一度探してみたり,部屋の中に敷かれたままの布団をひっくり返したりしたが,やはり預り証等や現金等は見つからなかったため,午後1時2分ころ,被害者S方から同被告人の持っていた携帯電話に電話を掛け,同被告人に対し,指示された場所を探しても預り証等や現金等はやはり見つからないと伝えたが,同被告人は引き続き探すように指示した。また,被告人A2は,この時,被告人A1に対し,本件ナイフで刺殺した被害者Sの血液が大量に出ていて,畳や襖の敷居にまで血が溜まっていることを報告すると,同被告人は,被告人A2に対し,血をきれいに拭き取って,被害者Sの死体を屋根裏部屋か床下に隠すことはできないかなどと言ったが,同被告人は,血がおびただしく出ているので無理である旨を伝えた。
(5)  被告人A2は,その後,被害者S方から預金通帳1通と印鑑2本を見つけ,午後1時12分ころ,同人方から被告人A1に渡していた携帯電話に電話を掛け,被告人A1に対し,通帳と印鑑2本を見つけたが,現金や預り証等は見つからないことを報告した。被告人A1は,これ以上,Wを引き留めておくことはできないと思い,被告人A2が一応金目の物を奪ったこともあり,この上は,被害者S方に火を点けて,同人方ごと上記犯行及び第3の犯行の証拠を燃やしてしまおうと考え,同被告人に対し,「だったら燃やして逃げろ。」「死体に火を点けて,証拠になる手袋とかをそこで燃やしたらいいやないか。」などと言って,被害者S方に放火をして逃走するように指示した。
そこで,被告人A2は,灯油を探しに外に出て家の周りを探したが見つからず,灯油は物置の中にあるかもしれないと思ったが,物置が道路の近くにあり,また,シャッターを開ける音で近所の人に気付かれると思い,物置の中を探すことは断念して,屋内にあった石油ストーブや石油ファンヒーターのカートリッジ内の灯油を使うことにした。被告人A2は,石油ストーブのカートリッジを抜き取って中の灯油を被害者Sの死体の上にかけた後,台所にあった石油ファンヒーターのカートリッジを抜き取って中の灯油を上記死体が乗った応接台の上にかけ,さらに,残った灯油を,応接台から畳の上に,導火線のように,点々と撒いた。そして,被害者S方にあった広告紙を丸め,それに仏壇で見つけたマッチを擦って点火し,上記死体の上に落として火を点けると,だんだんと火が上記死体に広がっていき,炎が応接台一杯に広がった。被告人A2は,犯行に用いた手袋や帽子を炎の中に入れ,炎が約1メートルくらいまで上がるのを確認した上,被害者S方を後にした。
(6)  被告人A2は,午後1時23分ころ,C’店の公衆電話から被告人A1に渡していた携帯電話に電話を掛け,同被告人に対し,すべてを終え,被害者S方から逃げてきたことを報告した。
(7)  被告人A1は,午後1時10分ころ,Wと共にZ社の事務所を出て,ベンツに同人を乗せ被害者S方に向かったが,その途中で同人方の方向から煙が出ているのに気付き,Wに対し,「あの煙は火事やないですか。」「Sさんの家やないですか。」などと,あたかも被告人A2が放火したのを知らないかのように装った。そして,午後1時30分過ぎころ,被害者S方近くの小学校の横でWを降ろして来た道を引き返し,途中,道路脇にいた被告人A2を見つけ,同被告人をベンツに乗せて被告人A1方に戻った。被告人A1は,その車中で,被告人A2から被害者S方での事の顛末を聞き,同被告人に対し,奪ってきた通帳と印鑑を見せるように言って,同被告人からこれを受け取ったところ,通帳は使用できないものであり,また,奪ってきた印鑑はその通帳の届出印ではなかったことから,頭に血が上り,同被告人に対し,「お前,なめとんのか。持って来いと言うたのは持って来ないし,持って来た物は使えない通帳や印鑑だったりして,だいたい何しよっとか。」「このボケが。」などと言って怒鳴りつけ,同被告人の顔面を二,三回思い切り殴りつけた。
一方,Wは,上記のように被告人A1と別れた後,被害者S方に向かったが,同人方の屋根から煙が上がっているのを見て,同人方が本当に火事になっているのが分かり,同人がまだ同人方の中にいるのではないかと思って慌てて同人方の玄関を開け,中に入ろうとしたが,既に煙が廊下にまで充満していた。そこで,Wは,まだ火が回っていなかった母屋に増築した8畳間に向かい,そこにあった電話機の子機で119番通報をしようとしたが,その電話は通じておらず,使えなくなっていたため,被害者S方から外に出て,隣家のO’方に行き,同人方が留守のようであったことから,さらに,近所のP’方に行き,同人に119番通報をするよう頼み,同人は,午後1時45分ころ,119番通報をした。
2  第1の2の犯行に至る経緯及び上記1の事実を認定した理由
第1の2の犯行に至る経緯及び上記1の認定事実のうち,第1の犯行につき,① 被告人A1が被告人A2に対し最初に犯行を持ち掛けた時期及びその際の謀議の内容,② 平成14年1月3日における謀議の有無及び内容,③ 同月6日における謀議の有無及び内容,④ 同月7日ないし翌8日の謀議の有無及び内容,⑤ 被告人A1による被害者S殺害計画の中止指示の有無,⑥ 第1の犯行当日における被告人A1による電話での被害者S方への放火の指示の有無及びその内容については,後記(2)のとおり,被告人両名の各供述が対立し,あるいは被告人A1の捜査段階と公判段階の各供述においても食い違いないし変遷が見られる。また,被告人A1の捜査段階の供述については,同被告人の弁護人らがその任意性と信用性を争っているのは前述のとおりである。
上記⑤及び⑥の各点は,被告人A1の罪責を決する重要なものであり,その余の点も量刑判断の前提としても重要であるので,これらの点につき,ここでまとめて事実認定の理由を説明していくこととするが,まず,後記(1)において,同被告人の捜査段階の供述の任意性を肯定した理由を示した上で,同被告人の捜査段階の供述,同被告人の公判供述及び被告人A2の公判供述それぞれについて,当裁判所がその全体的な観察から判断した基本的な信用性の有無及び信用性評価の視点を明らかにし,その中で,とりわけ被告人A1の本件罪責を決する上記⑤及び⑥につき,同⑥の指示内容の点を除いてその判断を示す。次に,後記(2)において,その余の上記個別の争点について,被告人両名の供述以外の証拠関係も踏まえた上で,それらの判断を個別に示すこととする。
(1)  総論
ア 被告人A1の捜査段階の供述の任意性について
a 被告人A1の弁護人らの主張の内容
被告人A1の弁護人らは,被告人A2に被害者Sの殺害や同人方への放火を指示したことを認める旨の被告人A1の捜査段階の供述の任意性を争って,「被告人A1は,取調官から,被告人A2への被害者Sの殺害指示及び同人方への放火の指示を否認すると,当時被告人A1と内縁関係にあったHに不利益が及ぶおそれがある旨脅されたほか,自白をすれば,死刑にならないような調書を作成してやる旨言われ,死刑にさえならなければとの思いから自白をしたものであり,また,その後,検察官から,供述を何回も変えると不利になる旨言われたことから,否認に転ずることもできなかったものである。」旨主張し,被告人A1も,公判廷において,これに沿う供述をしている。
b 本件自白に至る取調べ経緯等
そこで,被告人が実際にどのような経緯で第1の犯行を自白するに至ったのかを見てみると,関係各証拠によれば,その経緯は次のとおりであったと認められる。
ⅰ 被告人A1は,平成14年3月1日,判示第2の被害者D’に対する殺人の事実で起訴された後,同月4日,第1の犯行に関する被疑事実で通常逮捕され,同日から,福岡県Q’警察署において,同県警察本部のR’警部補が取調官として,上記Q’警察署のS’巡査が補助官として,同被告人に対する第1の犯行に関する取調べが開始された。
ⅱ 被告人A1は,当初から,第1の犯行のうち,住居侵入及び強盗の点は認めていたが,被告人A2に対して被害者Sの殺害や同人方への放火を指示したことはないなどと供述し,殺人,現住建造物等放火及び死体損壊の点については否認をしていたため,R’警部補らは,被告人A1に対し,主に上記殺人及び放火の指示の有無について追及を続けたが,同被告人は,同月13日まで,上記指示を否定し続けた。このように,同月13日まで,被告人A1の供述に実質的な進展がなかったことから,同月5日に,第1の犯行のうち,住居侵入及び強盗の点は認めるが,殺人及び現住建造物等放火の点は否認する旨の同被告人の警察官調書が作成されて以降,同月13日までの間,第1の犯行の罪体に関する同被告人の警察官調書が作成されることはなかった。
ⅲ 同月13日は,R’警部補が取調官として,福岡県警察本部のT’巡査部長がS’巡査に代わって補助官として,それぞれ被告人A1の取調べにあたっていたが,同被告人は,同日昼ころ,被害者Sに対し申し訳ないことをしたと言って,被告人A2に対し被害者Sの殺害を指示したことを認める内容の供述をし始めたため,同日,上記指示を内容とする被告人A1の警察官調書が作成された。しかし,被告人A1は,同日以降も,R’警部補ら警察官に対しては,被告人A2に対し被害者S方の放火を指示したことを一貫して否認していた。
なお,上記13日の取調べの中で,T’巡査部長が,被告人A1に対し,Hや同被告人の祖母のことを持ち出して脅したことはなく,R’警部補,S’巡査及びT’巡査部長が,同被告人に対し,第1の犯行を自白すれば,死刑にならないようにしてやるなどと言ったこともなかった。
ⅳ 被告人A1は,同月26日,取調官のU’副検事に対し,被告人A2から被害者Sを殺害した旨の連絡を受けた際,同被告人に対し,「証拠は残すなよ。」と言って,罪証隠滅工作をするよう指示したが,その指示には被害者S方に火を点けろという意味も含んでいたなどと供述し,同被告人に対し被害者S方への放火を指示したことを認めた。そして,同日,被告人A1の上記供述内容を録取した供述調書が作成され,同被告人は,第1の犯行で起訴された。
ⅴ 被告人A1は,第1の犯行に関して逮捕されてから起訴されるまでの間に,弁護人との間で四,五回は接見をしており,また,上記のように被告人A2に対し被害者Sの殺害を指示したことを認める内容の供述をした同月13日までの間にも,弁護人と一,二回は接見をした。
c 上記事実認定の理由及び本件自白の任意性の有無の判断
上記認定によると,被告人A1が,平成14年3月13日に,被告人A2に対し被害者Sの殺害を指示したことを自白したのは,同人を殺害したことに対する悔悟の気持ちによるものであり,弁護人らの主張するような取調官による脅しや,取調官が「自白をすれば死刑にならないようにしてやる。」などと言って利益誘導をしたこと等により自白が獲得されたことはなく,弁護人の前記主張は採用することができない。
すなわち,この認定は取調官の一人であった証人R’の公判供述に主によるものであるが,同証人の供述は,被告人A1の各供述調書から認められる同被告人の客観的な供述経過,とりわけ,同被告人が,平成14年3月13日に,被告人A2への被害者S殺害指示を認める内容の供述をした後も,最後まで警察官の前では被害者S方への放火指示を認めなかったことに沿った,自然なもので,格別怪しむべき点は見当たらない上,本件取調べにあたって,被告人A1に対し,被告人A2が第1の犯行をすべて認めて反省している旨を告げたとか,弁護人と接見した用件を聞いたことがあるなど,取調状況等につき一見不相当と思われる事柄に関しても素直に述べ,また,認識や記憶があいまいな事柄についてはそのとおり供述するなど,自己の記憶に忠実に事実をありのままに供述する姿勢が認められ,その供述態度は真摯であり,同証人の供述は十分に信用できる。
他方,被告人A1は,公判廷において,R’警部補から自白すれば死刑にならないような調書にしてやるなどと言われ,死刑にならないならいいかなという気持ちになり,平成14年3月13日以降は,取調官の言うとおりの供述調書の作成に応じていた旨供述するが,上記認定のとおり,同被告人は,平成14年3月13日以降も警察官に対しては被告人A2に被害者S方へ放火するよう指示したことを最後まで否認していたものであり,決して取調官の言うとおりの供述調書の作成に応じていたわけではない。この点,被告人A1は,R’警部補から,被害者S方への放火の点については公判廷で争うよう言われたことから,警察官による取調べの際には,被害者S方への放火の犯意を認める旨の供述調書が作成されなかった旨供述するが,警察官が,現住建造物等放火という重大犯罪について十分な追及をしないということは想定し難い上,平成14年3月19日付けの同被告人の警察官調書には,取調官が同被告人に対し「君が火を点けて燃やせと指示したのではないか。」「A2は君から指示されたので火を点けたと言っているが。」などと言って追及している問答形式の部分もあるのであって,同被告人の上記供述はおよそ信用できない。そして,被告人A1の捜査段階の供述調書には,上記のように問答形式による録取部分が存在するほか,同被告人が被告人A2に犯行を初めて持ち掛けた時期等,第1の犯行に関する重要な事実についても被告人A2の捜査段階の供述と食い違う記載が存在することにも照らすと,取調官が自己の思惑通りの供述を被告人A1に強いたことは何らうかがわれない。却って,平成14年3月13日付けの警察官調書には,当初被害者Sの殺害指示を否認していたのは,罪の重さから本当の話をすることができなかったからである,あるいは,同被害者の殺害指示を認めるに至った理由について,毎日刑事と話すうちに同被害者に対し本当に悪いことをしたと思うようになり,同被害者の冥福を祈るためにも本当のことを話すことにしたなどといった記載があり,また,放火指示の点も認めるようになった同月26日付けの検察官調書には,「自白をした日の前の晩に,夢の中にとても穏やかで何とも言えない良い表情をした被害者Sが出てきたことから,同人を殺害したことを否認し続ければ,同人に申し訳がないと思い,素直に認めることにした。」との記載もあって,これらの記載は,被告人A1が罪を悔いその限度で真摯に供述をすることにした心境が十分うかがわれる,ごく自然なものであるし,そもそも,同被告人は,前記認定のとおり自白調書が作成される前後にわたり複数回弁護人と面会し,自己の供述方針等につき弁護人と相談する機会も十分にあったのである。
そうすると,自白すれば死刑にならないような調書にしてやるなどと言われて取調官の言うとおりの調書作成に応じた旨の被告人A1の前記公判供述は,およそ信用することができず,前記のとおり信用できる証人R’の公判供述を始めとする関係各証拠によれば,前記A2の事実が優に認められ,同被告人の捜査段階の自白の任意性は十分に肯定できる。
なお,弁護人は,上記認定のとおり,平成14年3月5日に被告人A1の供述調書が作成されてから,同月13日に,被告人A2に対し被害者Sの殺害を指示したことを認める内容の供述調書が作成されるまでの間,全く被告人A1の供述調書が作成されていないことは,その間に,取調官から同被告人に対し様々な不当な働きかけがあったことをうかがわせるものである旨主張するが,被告人の供述内容が実質的に従前の供述内容と変わらない場合には,改めて同内容の供述調書を作成しなければならない格別の必要性はないのであるから,上記のように約1週間にわたって第1の犯行の罪体に関する被告人A1の供述調書が作成されていないことをもって,同被告人に対しその供述の任意性を疑わせるような不当な働きかけがなされたことが推測されることはないというべきである。
イ 被告人A1の捜査段階の供述と公判供述の信用性の比較
a 被告人A1の捜査段階の供述の信用性について
被告人A1の捜査段階の供述を見ると,特に第1の犯行を決意するに至った経緯や,第1の犯行に関する謀議の過程に関する供述は,詳細かつ具体的である上,同被告人が公判廷で否定する被告人A2に対する被害者S殺害と同人方放火の指示については,その殺害・放火の前後の経緯について被告人A1が公判廷においても認める事実とよく符合する自然なものである。すなわち,被告人A1は,事前に被告人A2に帽子やナイフ等の購入を指示して同被告人がそれらを購入しているところ,帽子については目出し帽などの被害者Sに顔を見られることを防ぐようなものを何ら調達しないまま同被告人が被害者Sの殺害に及んでいるのであって,このことは被害者Sに同被告人の顔を見られても差し支えがないような犯行を予定していたことをうかがわせるし,また,被告人A1が被告人A2から被害者Sを殺害して同人方を出た旨の電話連絡を受けた際には,格別驚いた様子を見せることなく,同被告人に命じて金銭を探させに被害者S方に戻らせるなどし,その後も同被告人が被害者Sを殺害し同人方に放火したことに関しては何ら同被告人を責めていないのであり,もし,被告人A2が被告人A1の指示に反してこれらの行為に出たというのであれば,被告人A2を指揮していた被告人A1から何らかの強い反応があってしかるべきであるのに,そのような反応を同被告人がしていないことは同被告人が被告人A2のこれらの行為を予定していたことをうかがわせるものであり,これらのことは,被告人A1が被告人A2に被害者Sの殺害と同人方の放火を指示したという供述とよく整合するものである。そして,前記1の認定事実のとおり,当初の計画に反し,被告人A2は被害者S方で同人の頸部にナイフを突き刺して殺害し,そのために多量の血液が同人方室内に流れ出したこと,平成14年1月8日午後1時12分ころの時点においても,同人方から目的の預り証等を発見することはできなかったこと,被告人A2は,このような状況を,被告人A1に対し逐一報告しており,同被告人も上記のような状況を認識していたことが認められるところ,同被告人は,このころにはWを被害者S方まで送り届けなければならなくなっており,Wが被害者S方に戻るまでの間に,同人の死体を隠し,流れ出した同人の血液を完全に拭き取るなどして殺人事件の犯跡を隠ぺいすることは極めて困難な状況にあって,そのことは,当然,同被告人も認識していたと推認される。そして,上記のような状況下では,被害者S方に火を点け,同人方ごと同所に残した第1の犯行に関する証拠を燃やす以外に,第1の犯行に関する証拠を隠ぺいする有効な方法はなかったと考えられるのであるし,実際,第1の2の犯行に至る経緯で認定したとおり,平成14年1月3日には,被告人両名は犯跡を隠ぺいするための方法として,被害者S方への放火も考えていたものである。そうすると,被告人A1が被告人A2に放火の指示をするということは,ごく自然な事の流れであり,被告人A1の捜査段階の供述と整合するのである。
さらに,被告人A1が被告人A2に対してSの殺害を指示したことを認めるに至った理由は,前記アcで説示したとおり,同人を殺害したことに対する悔悟の気持ちによるものであると認められるのであって,このことは,被告人A1が被告人A2に対し被害者Sの殺害を指示して同被告人との間で被害者Sの殺害について共謀したという供述部分の信用性を肯定し得る事情の一つとなるものである。
そうすると,上記の殺害及び放火の指示を認める被告人A1の捜査段階の供述には,基本的には高い信用性が認められるというべきである。
b 被告人A1の公判供述の信用性について
他方,被告人A1は,被害者Sの殺害指示を撤回したとか,被告人A2に対し被害者S方への放火の指示をいっさいしていないなどと公判廷で供述するが,まず,上記撤回の点については,上記A1のとおりの被害者S殺害の前後の経緯と整合し難いものであり,その経緯は同人の殺害を前提としていたと見る方が自然に理解できるものである。そして,被告人A1は,捜査段階から供述を変更したことについて,前記のとおり信用性がないとして排斥した,供述を強要されたという点以外に何ら合理的な説明をしていないのであるから,被害者Sの殺害を中止した旨の同被告人の公判供述が信用できないのは明らかというべきである(被告人A1は,被害者Sの殺害を中止した理由として,Jから被告人A2に掛けるV’生命の生命保険金の受取人となることを了承してもらったので,Wから求められていた合計440万円の返還の目処が立ったからであるなどと公判廷で供述するが,Wに同人から騙し取った金を返還するつもりがあったのであれば,そもそも預り証等を強奪する必要もなくなるはずであるし,そもそも,当時,被告人A2とV’生命との間の生命保険契約は締結に至っていなかったばかりか,保険会社から生命保険金等を詐取する計画もいまだ十分具体化されていなかったのであるから,上記供述はおよそ信用できない。)。
また,直前に放火の指示をしていないという点にしても,前記の検討に照らせば,やはりその供述は信用できず,その具体的な文言はさておき,被告人A1が,被告人A2の被害者S殺害の直後に同被告人に上記放火を指示したこともまた十分に認められるというべきである。
c 以上のとおりであり,被告人A1の公判供述に比較して,同被告人の捜査段階の供述は,基本的に高い信用性が認められる。そうすると,同被告人が殺人及び放火の共謀をした事実は十分に認めることができる。
ウ 被告人A2の公判供述の信用性評価の視点について
a 被告人A2の公判供述のうち,第1の犯行の実行行為に係る供述は,客観的事実とよく符合する上,宅配便業者を装って被害者S方に侵入した様子や,同人を殺害した方法,同人方で灯油を探し回り,灯油を同人の死体等に撒いて点火した様子など,第1の犯行の方法を詳細かつ具体的に述べるものであり,単なる想像によっては容易に述べられないような迫真性も有しており,基本的に高度の信用性が認められるといえる。
b しかし他方で,一般に,共犯者の供述は,他の共犯者が主導的で,自らは従属的であったなどと,自らの関与の度合いを薄めて自らの刑事責任を軽減しようとする傾向や危険性があることも否定できないのであるから,共犯者間の供述が対立している部分の信用性を判断するにあたっては,全体的な観察とは別に個別の証拠関係を踏まえた慎重な検討が必要である。とりわけ,被告人A2は,第1の犯行を自ら実行した者であるところ,その立場上,被告人A1との共謀の経過については自己の刑事責任の軽減を図る供述をすることも可能と認められるから,被告人A2の供述の評価はことさら慎重に行わなければならない。
そこで,以下では,被告人両名の利害が反し,被告人両名の供述に食い違いが見られる前記各点に関する被告人A2の公判供述については,被告人両名の供述以外の関係証拠に照らすなどして更にその信用性を吟味することにする。
(2)  個別の争点
ア 被告人A1が被告人A2に対し最初に犯行の実行を持ち掛けた時期及び平成13年12月中の謀議の内容について
a 被告人A1が被告人A2に対し最初に犯行の実行を持ち掛けた時期に関し,被告人A1は,捜査段階及び公判廷を通じ一貫して,平成13年12月20日ころ,Wから詐取した工事代金の返還を強く求められたことから,判示第3の同人に対する詐欺事件の発覚を防ぐために同人に渡していた預り証等の証拠書類を奪い取らなければならないと思い,同月24日にA’競輪からの帰りの車中において,被告人A2に対し,総裁から頼まれた仕事であるとして犯行を持ち掛けた旨供述している一方で,被告人A2は,公判廷において,被告人A1から最初に犯行を持ち掛けられたのは,平成13年11月5日に福岡拘置所から釈放された際,迎えに来た同被告人の車の中であり,八幡のやくざから頼まれた仕事であるとして持ち掛けられた,この時はその話を断ったが,その後も度々同様の話を持ち掛けられ,生命保険契約の申込みをさせられて保険料を支払った同年12月18日以降は頻繁に第1の犯行を持ち掛けられ,これを断ると「お前の身柄を総裁に渡す。総裁はやくざだから,お前のことを殺して腎臓でも肝臓でも売ってお金が入ってくる。その上に,生命保険が俺のところに入ってくる。」などと言われたことから,このころ,第1の犯行を敢行することを承諾した旨供述している。
b そこで検討すると,第1の2の犯行に至る経緯のとおり,被告人A1が,F社勤務時代に床下工事契約を締結したり,床下工事代金名下に金員を詐取するなど,自己と浅からぬ関係があり,第1の犯行を敢行した場合に自らがその犯人として疑われる危険性が高い被害者SやWをわざわざ狙って第1の犯行計画を立案したことに照らすと,同被告人が第1の犯行を敢行した主たる動機が,判示第3のWに対する詐欺事件の発覚を免れるために,その詐欺事件の証拠となり得る預り証等を奪い取ることにあったことは明らかである。一方,前記犯行に至る経緯のとおり,平成13年12月20日ころ被告人A1はWから強い口調で工事代金の返還を求められたのであるが,関係各証拠によると,同人は,同年5月ころから,同被告人に対し,工事代金の返還を断続的に求めていたものの,同被告人は,その都度,「会社に提出する書類がもうすぐできあがりますから。」などと言って,Wの工事代金の返還要求をかわしていたことが認められるのであり,これらの事実関係に照らすと,少なくとも被告人A2が釈放された同年11月5日ころは,Wから要求されている工事代金をすぐにでも返還しなければ,同人に対する詐欺事件が発覚するといった切迫した状況にあったとは認められない。
そうすると,平成13年11月5日の時点では,被告人A1には,Wから預り証等をすぐにでも奪い取らなければならないような切迫した事情はなく,同被告人は,預り証等を奪い取るために第1の犯行を敢行する必要に強く迫られていなかったというべきであるから,この時点で,同被告人が,被告人A2に対し,第1の犯行を持ち掛けるとも考え難く,同被告人の上記公判供述は,以上のような経緯に照らし,採用することができない。
また,前記犯行に至る経緯のとおり,被告人A1は,平成13年11月ころから経営していたスナック等の運転資金等に窮するようになり,同年11月8日,被告人A2にJらの養子となる旨の養子縁組届を提出させてその姓をJらの姓に変えさせ,Jらの姓で新たに消費者金融会社等から金員を借り入れさせるなどし,これをスナック等の運転資金や遊興費に充てて急場をしのいでいたが,同年12月ころになると,同被告人がJらの姓でも金員を借り入れることが困難となる一方で,スナック等の経営もなかなか軌道に乗らず,スナック等の従業員らにも金策を頼まなければならないほど,金銭的に追いつめられていたこと,被告人A2は,平成13年12月7日,保険金の受取人をJとする死亡保険金3200万円等の生命保険等の契約の申込みをしたことが明らかである上,関係各証拠によると,被告人A1は,平成13年12月上旬ころ,Jらに対し,「被告人A2に1億円の生命保険をかける。お母さん,受取人になってくれないか。」「被告人A2が死んだように見せかけ,別人を殺す。お母さん,別人の死体を見てもA2と言ってくれ。」などと言ったこと,被告人A1は,平成13年12月中旬ころ,内妻のHに対し,「やくざが被告人A2の身代わりを殺害し,同被告人が死んだことにして同被告人に掛けた生命保険金を騙し取るという話を持ち掛けてきた。保険金はやくざと被告人A1で山分けし,1000万円くらいの大金が手に入る。」などと言ったことが認められることに照らすと,被告人A1は,平成13年12月上旬ころには,スナック等の運転資金等を得るために,被告人A2の死亡を偽装して生命保険金を詐取することを企て,同年12月中旬ころにかけて,同被告人と共に,その準備をしていたものと認められ,平成13年12月中旬ころまでの被告人両名の謀議の中心は,被告人A2の死亡を偽装した生命保険金等の詐取にあったと考えられる。そうすると,被告人A1が,このころ既に,これと並行して,被告人A2に第1の犯行を具体化させて持ち掛けていたとも考え難く,この点でも,同被告人の上記公判供述はにわかに信用できない。
他方,上記のような経緯,すなわち,被告人A1が,平成13年12月上旬ころ,被告人A2の死亡を偽装した生命保険金等の詐取を企て,同月中旬ころまで,同被告人と共に,その準備をしていたこと,同年12月20日ころまで,Wから,被告人A1が詐取した工事代金の返還を強く求められることはなかったことに加え,犯行に至る経緯のとおり,平成13年12月20日ころ,同被告人がWから工事代金の返還を強く求められ,年明けには返還する旨約束してしまったことに照らすと,これら客観的事実に沿う,同被告人の上記捜査段階の供述及び公判供述は自然で,合理的であり,信用性が高いと認められる。
c 以上の次第であり,被告人A1が被告人A2に対し最初に犯行を持ち掛けたのは,平成13年12月24日ころであると認めるのが相当である。
イ 平成14年1月3日における謀議の有無及び内容について
a 平成14年1月3日における謀議の有無及び内容については,以下のとおり,被告人A1の捜査段階の供述,同被告人の公判供述及び被告人A2の供述がそれぞれ食い違っている。
ⅰ 被告人A1の捜査段階の供述
平成14年1月3日は,被告人A1方マンションの駐車場に停めた車の中で,被告人A2と第1の犯行に関する謀議をした,その際,同被告人に対し,相手は義理の兄妹2人である,被告人A1が妹を連れ出している間に,男を後ろから首を絞めて殺せ,やり損なったと思ったらナイフで頸動脈を切って止めを刺せ,そして,F社の契約書や現金を探して奪ったら,電話で同被告人に連絡しろ,そうしたら,妹を連れ帰るから,同じように殺せ,2人の死体は真空パックに入れて血が出ないようにした上,段ボール箱に入れて台車で車まで運び入れ,最終的には被告人A2の実家の床下か山に捨てるなどと言い,また,ナイフで相手を殺害した際にその血が飛び散った場合には,雑巾などできれいに拭き取るか,家に火を点けて家そのものを燃やすしかないなとも言い,同被告人に対し,ペットボトルに灯油を入れて持って行くように指示した,そして,死体を運ぶための台車やレンタカーは被告人A1が用意することにした。
ⅱ 被告人A1の公判供述
被告人A2に平成14年の正月休みの間に同被告人の死亡診断書を偽造してくれる医者を捜すよう指示していたので,平成14年1月3日は,主として,同被告人からその結果を聞くために同被告人を呼び出し,被告人A1方マンションの駐車場に停めた車の中で話を聞いたところ,偽造の死亡診断書をとることはできないとのことだった,そこで,被告人A2を責めたところ,同被告人が,前話していた総裁の仕事をしますから許してくださいと言ってきたことがきっかけで,第1の犯行に関する謀議が始まった,その際,相手は義理の兄妹2人であり,同被告人が2人を殺害して家の中にあるF社の契約書等を強奪することは話したが,具体的な殺害方法については話していない,この日は,2人を殺害することを前提に,捜査段階で述べたような死体処理の方法について話し合った。
ⅲ 被告人A2の公判供述
平成14年1月3日は,被告人A1から呼び出され,被告人A1方で第1の犯行に関する謀議をした,この日は,死体の処分方法等について話し合った。
b そこで検討するに,前記第1の2の犯行に至る経緯のとおり,被告人両名は平成14年1月3日の後は,平成14年1月6日まで第1の犯行に関する謀議をしていないところ,前記認定の事実のとおり,その前の同月5日に,被告人A1は,被害者S及びWの死体を運ぶためのレンタカーを借りる予約をしたり,同人に電話を掛け,同月8日に被害者S方に行く約束をとりつけ,第1の犯行時にWを被害者S方から外に連れ出す準備をしたのであるから,被告人両名は平成14年1月3日の時点で,被害者SやWの死体の処分方法のみならず,上記両名の殺害の段取りについても謀議をしたと考えるのがごく自然であるが,被告人A1の上記捜査段階の供述は,その旨を内容とし,自然で合理的である上,上記客観的事実とよく符合するものである。
これに対し,上記のような被告人A1及び被告人A2の各公判供述は,平成14年1月3日は,死体の処分方法のみを謀議したというものであるが,殺害の場所,方法,特に刺殺等,付近に被害者の血液等が飛ぶ可能性のある方法か否かによって,犯跡隠ぺいのための死体の処分方法は異なるってくると考えられるにもかかわらず,具体的な殺害方法が決まらないままに死体の処分方法について詳しい謀議をしたというのは,不自然,不合理である上,上記のように,被告人A1が,第1の犯行時にWを外に連れ出すために,平成14年1月5日に同人に電話を掛けたこととも符合せず,にわかに信用することはできない。
そうすると,以上の各供述については被告人A1の捜査段階のものが最も信用性が高いということができ,この供述によると,被告人両名は,平成14年1月3日,A1方マンションの駐車場に停めた車の中で,被害者S及びWの殺害方法やその死体の処分方法について具体的な謀議をし,また,この日に,上記両名の死体の処分方法の一つとして,被害者S方に放火をして,同人方ごと死体を焼損する方法も話し合ったことが認められる。
ウ 平成14年1月6日のB’競輪場における謀議の有無及び内容について
a 平成14年1月6日のB’競輪場における謀議の有無及び内容については,被告人A1は,捜査段階及び公判廷において,同日に被告人A2をB’競輪場の特別観覧席に呼び出したが,この日は,同被告人に第1の犯行の実行日と実行場所及び相手の名前を告げた上,第1の犯行を行う意思があるか確認しただけで,それ以上の謀議はなかった旨供述する。一方,被告人A2は,公判廷において,1月6日は,被告人A1からB’競輪場の特別観覧席に呼び出され,同被告人と2人きりとなったときに,第1の犯行の実行日及び実行場所を伝えられただけでなく,相手方には宅配便を装って侵入することや,男性だけでなく女性も殺害すること,具体的な殺害方法及び死体処理の方法等についても謀議をした旨供述している。
b そこで検討するに,W’の警察官調書によると,被告人両名やW’は,車券を買うためにしばしば特別観覧席からの出入りを繰り返していたことが認められ,被告人両名には,W’に聞かれては困る第1の犯行に関する打合せを,被告人A2が公判廷において供述するようにジェスチャーも交えながら詳しく行う余裕があったとは考え難いところであり,同被告人の公判供述はこの点で不自然である一方,上記被告人A1の捜査段階の供述及び公判供述は自然であるといえる。また,前記のように,被告人両名は,同月3日に,被害者SとWの殺害方法及び死体の処理方法について相当具体的な謀議をしたと認められるのであり,かつ,同月6日の時点では,その時に立てた犯行計画について大きな変更点はなかったのであるから,その日に,第三者がいつ来るかもしれないような場所で第1の犯行に関する詳しい謀議をするまでの必要性はなかったと考えられ,この点でも,上記被告人A1の捜査段階及び公判廷における供述に格別不自然な点はない。
c そうすると,上記被告人A1の供述は,被告人A2の公判供述に比べ,十分に信用することができるものであり,これによると,被告人両名は,平成14年1月6日には,犯行の実行日等を確認しただけで,被害者Sらの殺害方法等についての具体的な詳しい謀議をすることはなかったものと認められる。
エ 平成14年1月7日ないし8日における謀議の有無及び内容について
a 平成14年1月7日における謀議の有無及び内容については,次のとおり,被告人A1の捜査段階及び公判廷における供述と,被告人A2の公判供述の間に食い違いが見られる。
ⅰ 被告人A1の捜査段階及び公判廷における供述
平成14年1月7日の朝,被告人A2と合流し,X’区役所に行って用事を済ませた後,運転免許試験場に行き,その帰りの車の中で,第1の犯行に関する謀議をした,その際,被告人A1がWを連れ出している間に,被告人A2が被害者Sを殺害し,預り証や現金を奪うことを確認した上,同被告人が宅配便を装って被害者S方に侵入することにし,相手を刺し殺すための刃にギザギザが付いた重厚なナイフや,宅配便を装うための上下の作業服,顔を見られにくくするための帽子や,手袋などの道具を購入するように指示し,現金2万円を渡した。
翌8日午前2時ころ,被告人A1方に帰ったが,そこで被告人A2と第1の犯行に関する謀議をしたことはない。
ⅱ 被告人A2の公判供述
同月8日の午前1時前後ころだったと思うが,被告人A1方で第1の犯行に関する最終的な謀議をした,その際,同被告人から,第1の犯行を明日(1月8日)敢行すると言われ,宅配便を装うために,コンビニエンスストアで菓子箱を購入し宅配便の伝票をもらうよう指示されたほか,殺害方法についても指示があり,また,レンタカーを借りることができなかったと言われ,2人の死体のうち一つはS方の床下の防空壕のようになっているところに埋めて,もう一つの死体は屋根裏部屋に運んで隠すように言われた,また,この時,同人方に放火する計画を中止すると言われた。
b そこで検討するに,前記1の認定事実のとおり,被告人両名は平成14年1月7日の朝に運転免許試験場等に行った後別れたが,その後,被告人A2は,被告人A1から受け取った現金2万円で,革手袋,作業帽子,作業服上下を購入したことも明らかである。このように,被告人A2が購入した作業帽子及び作業服上下は,第1の犯行において被害者S方に侵入する際に宅配便業者を装うためのものであり,また,革手袋は被害者S方等に同被告人の指紋が残らないようにするためのものであって,同被告人が,上記のように被告人A1と別れた後に第1の犯行に用いる道具を購入したことは,その前に,同被告人との間で第1の犯行に関する謀議,とりわけ,第1の犯行を実行するための準備に関する謀議があったと考えるのがごく自然である。
上記のような被告人A1の捜査段階及び公判廷における供述は,上記客観的事実及びこれから推認される事実とよく符合する上,前述したこれまでの被告人両名の謀議の経過に照らしても,その内容は自然で合理的であり,高度の信用性が認められるというべきである。
他方,上記のような被告人A2の公判供述も,その内容は具体的かつ詳細である。しかし,当時,被告人A1方で同被告人と同居していたHの警察官調書によると,同人は,被告人A2が,平成14年1月8日午前1時過ぎに被告人A1方に来たことを全く認識していないことが認められる。また,被告人A1と内妻のHとの間の携帯電話の通話記録等によると,被告人両名は平成14年1月8日午前零時30分ころに北九州市内を出発して福岡市内の被告人A1方に向かい,その途中,午前1時17分ころに,同被告人が内妻のHに電話を掛け,カレー屋にカレーの注文をするよう頼んだ上,カレー屋に寄ってカレーを受け取ったことが認められることに照らすと,被告人両名が被告人A1方に到着したのは相当遅い時間であり,同被告人が公判廷において供述するように同日午前1時50分近くになっていた可能性も十分にある一方で,被告人A2の携帯電話の通話記録によると,同被告人は,同日午前2時6分ころ,スナックのママに対し電子メールを発信しており,このころには被告人A1と別れていたものと認められ,被告人両名が被告人A1方に到着した後,別れるまでの間に,被告人両名に,被告人A2が公判廷において供述するような詳しい謀議をする時間があったのか疑問が残るところである。
c 以上のとおり,上記のような被告人A1の捜査段階及び公判廷における供述は,その内容が上記のような客観的事実によく符合する上,自然で合理的である一方,上記のような被告人A2の公判供述には客観的事実に照らし,不自然との疑問を禁じ得ない部分がある上,前述してきたとおり,平成14年1月6日までの第1の犯行の謀議に関しては,被告人A1の捜査段階の供述に高度の信用性が認められる一方で,これに対比して被告人A2の公判供述には十分な信用性が認められないこと(もっとも,死体隠匿方法や放火の点はいったんは中止されたとする部分には一定の信用性が認められ,その供述内容自体を強ち排斥することもできない面もある。)を総合考慮すると,平成14年1月7日ないし8日の謀議の有無及び内容についても,被告人A1の捜査段階及び公判廷における供述を採用するのが相当である。
オ 犯行当日の電話での放火に関する指示内容について
a 第1の犯行当日の被告人A1の被告人A2に対する電話での指示内容について,次のとおり,被告人A1の捜査段階の供述,同被告人の公判供述及び被告人A2の公判供述は食い違っている。
ⅰ 被告人A1の捜査段階の供述
被告人A2から,被害者Sを同人方で刺し殺し,血液が同人方室内に拭き取れないほど多量に出たことを聞いた。そこで,迷いはあったが,被害者S方に火を点けろという意味も含んで,被告人A2に対し「証拠は残すなよ。」と言った。
ⅱ 被告人A1の公判供述
被告人A2から,午後1時12分ころに電話を受けた時,既にWと共にベンツに乗り込み,被害者S方に向かっていた途中であったので,同被告人に対し「証拠を残すなよ。」とか,ましてや,被害者S方に火を点けろなどとは言っていない。この時の電話で,同被告人から,被害者S方に灯油を撒いた旨聞いたので,それに対して「ああ,そうか。」と答えただけである。
ⅲ 被告人A2の公判供述
午後1時12分に,被害者S方から被告人A1に電話を掛け,現金や預り証等の証拠書類が見つからないと報告した際,同被告人から,「だったら燃やして逃げろ。」「死体に火を点けて,証拠になる手袋とかをそこで燃やしたらいいやないか。」などと指示された。
b そこで検討するに,既に見たとおり,被告人A1は被告人A2に対し被害者S方への放火を指示したものと認められるが,前記1の認定事実のとおり,第1の犯行について具体的な犯行計画はほとんど被告人A1が立案し,被告人A2に対しては,被害者S方への侵入方法や,その際に宅配便業者を装うための文句などまで,事細かに指示していたことに照らすと,被害者S方への放火の指示に限って「証拠は残すなよ。」などといった抽象的な言葉で指示するとは考え難く,この点で,上記のような被告人A1の捜査段階の供述はにわかに信用することができない。確かに,被告人A1の捜査段階の供述は,既に見てきたとおり信用性が高いと認められる部分が多いのであるが,同被告人の捜査段階における供述経過を見ると,放火の指示の点については,最終段階まで否認を続けていたのであり,最後の段階でようやく放火の指示の点を抽象的に認めたに止まるのであるから,捜査段階の供述の他の部分の信用性が高いからといって,放火の指示の点の信用性も同様に高いと断定することは相当でない。一方,被告人A2の公判供述は,上記のような客観的事実及びこれから推認される事実とよく符合し,自然である上,従前の被告人A1の被告人A2に対する指示,命令の在り方ともよく符合しており,高い信用性が認められるというべきであって,その公判供述によると,被告人A1は,平成14年1月8日午後1時12分に,被告人A2に対し,電話で,「だったら燃やして逃げろ。」「死体に火を点けて,証拠になる手袋とかをそこで燃やしたらいいやないか。」などと指示し,ここに被害者S方への放火に関する被告人両名の謀議が成立したことが認められる。
3  結論
以上の次第で,第1の2の犯行に至る経緯及び前記1の事実認定をしたものであり,これらによると,被告人A1が,被告人A2に対し,被害者Sの殺害及び同人方への放火を指示し,同被告人と共謀の上,第1の犯行を敢行したことが優に認められる。
(法令の適用)
1  被告人A1について
(1)  罰条
ア 第1の所為
住居侵入の点は刑法60条,130条前段(包括一罪),強盗殺人の点は同法60条,240条後段,現住建造物等放火の点は同法60条,108条(有期懲役刑の長期は同法6条,10条により軽い行為時法である平成16年法律第156号による改正前の刑法12条1項の刑のそれによる。),死体損壊の点は同法60条,190条にそれぞれ該当
イ 第2の所為
刑法60条,刑法6条,10条により軽い行為時法である平成16年法律第156号による改正前の刑法199条に該当
ウ 第3の1及び2並びに第4の各所為
それぞれ刑法246条1項に該当
(2)  科刑上一罪の処理
刑法54条1項前段(第1の現住建造物等放火及び死体損壊),同条項後段(第1の住居侵入と強盗殺人及び現住建造物等放火との各間),10条(最も重い強盗殺人罪の刑で処断)
(3)  刑種の選択
第1及び第2の各罪 いずれも死刑
(4)  併合罪の処理
刑法45条前段,46条1項本文(刑及び犯情の最も重い第2の殺人罪につき,死刑で処断し,他の刑を科さない。)
(5)  没収
刑法19条1項2号,2項本文
(6)  訴訟費用の不負担
刑事訴訟法181条1項ただし書
2  被告人A2について
(1)  罰条
ア 第1の所為
住居侵入の点は刑法60条,130条前段,強盗殺人の点は同法60条,240条後段,現住建造物等放火の点は同法60条,108条(有期懲役刑の長期は同法6条,10条により軽い行為時法である平成16年法律第156号による改正前の刑法12条1項の刑のそれによる。),死体損壊の点は同法60条,190条にそれぞれ該当
イ 第2の所為
刑法60条,刑法6条,10条により軽い行為時法である平成16年法律第156号による改正前の刑法199条に該当
(2)  科刑上一罪の処理
刑法54条1項前段(第1の現住建造物等放火及び死体損壊),同条項後段(第1の住居侵入と強盗殺人及び現住建造物等放火との各間),10条(最も重い強盗殺人罪の刑で処断)
(3)  刑種の選択
第1及び第2の各罪 いずれも死刑
(4)  併合罪の処理
刑法45条前段,46条1項本文(犯情の重い第2の殺人罪につき,死刑で処断し,他の刑を科さない。)
(5)  没収
刑法19条1項2号,2項本文
(6)  訴訟費用の不負担
刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1  本件各犯行の概要
本件は,被告人両名が,第3の被告人A1によるWに対する詐欺事件の発覚を免れるために,同人と同居していた同人の義兄である被害者Sを殺害して,同事件の証拠となる預り証等を強取するとともに,金品を強取することを企て,共謀の上,被告人A2が,被害者S方に侵入し,同人を殺害して貯金通帳等を強取し,さらに,犯跡を隠ぺいするために,同人方に放火し,同人方を焼損するとともに,同人の死体を焼損して損壊したという住居侵入,強盗殺人,現住建造物等放火,死体損壊(第1),被告人両名が,Rと共謀の上,被告人A2の身代わりとなる者を殺害して,同被告人を被保険者とする生命保険金を詐取する目的で,同被告人の身代わりとして被害者D’を殺害したという殺人(第2)の各事案のほか,これらの第1及び第2の各犯行の前に,家屋の床下工事の施工等を業とする会社の営業に従事していた被告人A1が,営業を通じて知り合ったWから,床下工事代金名下に,前後2回にわたり現金を騙し取ったという各詐欺(第3の1及び2)及び,同被告人が,上記会社に勤めていた際,自己の営業活動により床下工事の施工契約を締結したJから,訪問販売等による被害回復のための手続金あるいは節税対策手続金名下に,前後5回にわたり現金を騙し取ったという各詐欺(第4)の各事案である。
2  第1及び第2の各犯行の全体的情状
被告人両名が第1の犯行に至った経緯は,前示第1の2のとおりであり,その動機は,いずれも極めて身勝手で自己中心的であり,自己の欲望を満たすためや犯跡を隠ぺいするためには,人命さえも奪うことも何ら厭わない,誠に非道なものであって,酌量の余地は1点もない。
被告人両名は,犯行の2週間以上前から,被害者Sらを殺害して預り証等や金品を強取することを企て,具体的な殺害方法や死体処理の方法等について協議を重ね,犯行の準備を十分にした上,被告人A1が,被害者Sと同居していたWを外におびき出し,その間に,被告人A2が第1の犯行に及ぶなど,周到に準備して計画的に犯行を遂行したのであり,また,犯行の態様は,後に詳しく見るとおり,強固な犯意に基づく極めて残虐,残忍,危険なものである。
被害者Sは,何ら落ち度がないにもかかわらず,突然襲われ,必死に抵抗するも頸部を強く絞めつけられたり,眉間を手拳で殴られたりした上,頸部を2回にわたってナイフで突き刺され,死亡したものであり,その間に被った肉体的苦痛,恐怖感等の精神的苦痛は計り知れず,突然その生命を奪われた無念さは察するに余りある。また,被害者S方への放火の結果,同人方が全焼し,同所に居住していたWは住居や家財を失うなどの大きな財産的損害を被ったものであるほか,近隣住民が被ったであろう延焼等の不安感にも無視できないものがある。このように第1の犯行の結果は誠に重大である。
さらに,被告人両名は,第1の犯行を敢行したというのに,そのわずか3週間余り後に,当初の計画通り,保険金を取得するために完全犯罪を目論んで路上生活をしていた人物を被告人A2の身代わりとして殺害しようとし,その直前に,その人物に不審感を抱かれて逃げられるや,即座に同じく路上生活をしていた被害者D’を同被告人の身代わりとして殺害することにしたものであり,第2の犯行もまた,自己の欲望を満たすためには人命など一顧だにしない極めて身勝手かつ自己中心的で非道なものであることは,第1の犯行と変わりがなく,酌量の余地はやはり皆無である。
また,被告人両名は,犯行方法や各人の役割分担を具体的に決めた上,第2の犯行を敢行したものであって,これまた極めて計画的な犯行である。
第2の犯行の態様は,睡眠導入剤を服用させられて熟睡して無抵抗となった被害者D’の上半身を川の中に沈めて溺死させたもので,強固な殺意に基づく冷酷でものであることも,第1の犯行と同じである上,殺害後には被害者D’の顔の判別がつき難くするために,その顔の上に石を落とすなどしたものであって,死者に対する哀悼の気持ちなど全く持ち合わせない極めて残忍なものである。
被害者D’も,何ら落ち度がないにもかかわらず,被告人両名の欲望を満たすために理不尽にも突然その生命を奪われたもので,その無念さは察するに余りがあり,第2の犯行の結果も第1の犯行と同様に誠に重大である。
そして,第1及び第2の各犯行により殺害された被害者両名の遺族の衝撃や悲嘆には計り知れないものがあり,その処罰感情も峻烈であって,こぞって被告人両名を極刑に処することを求めている。
以上のような各犯行の動機,計画性,罪質,犯行の態様,犯行の結果,遺族の被害感情,被告人両名が強盗殺人等及び保険金目的殺人という重大犯罪をわずか3週間余りの間に連続して敢行したという全体像だけから見ても,第1及び第2の各犯行がまれに見る重大で極めて悪質な事案であることは明らかであり,そのことはとりもなおさず,第1及び第2の各犯行に主謀者ないし実行行為者として関与した被告人両名の刑責が極めて重大であることを示している。
3  被告人A1に不利な情状
(1)  被告人A1の個別の情状を見るにあたっては,第1及び第2の各犯行に先立つ第3及び第4の各犯行並びにその後の経過を踏まえることが不可欠である。
すなわち,被告人A1は,業務実績に基づいた昇進制度と歩合給制をとっていたF社において,成績を上げて早期昇進と高額の給料を手に入れるため,強引かつ不当な営業方法を用いて顧客に床下工事の施工契約を締結させていたところ,当時の営業課長の地位から上位の次長に昇任するために営業ノルマを達成しようとして,第3の犯行に及んだのであり,さらに,顧客から受け取った工事代金を遊興費や他の顧客との施工契約の代金として会社に入金するなど流用していたため,第3の犯行の際にWに頼んで締結してもらったローン契約の代金の入金に迫られたことや,スナックの開店資金を得る必要があったことから,それらの原資を得ようとして第4の犯行に及んだことが明らかである。また,このようにして,被告人A1は,自らの金銭欲等を満たすために第3及び第4の犯行に及んでいたところ,経営するスナック等の運転資金や遊興費に不足するようになったことから被告人A2を被保険者とする生命保険金を詐取すること等を考えるようになり,その後,同被告人の身代わりとなる者を殺害する方法で生命保険金を詐取する計画を練っていたところ,前示のとおり,第3の犯行によってWに約束していた工事代金の返戻を強く求められたことから,その犯行の発覚を免れるため,証拠となる床下工事に関する預り証等の関係書類を強取するとともに金品をも強取し,さらには,強盗事件の発覚を免れるためにも,Sを口封じのために殺害することを企図したことも明白である。
このような経過を踏まえて,被告人A1が第3及び第4の各犯行から第1の犯行に至るまでの詳細を更に通覧してみると,同被告人は,多額の負債を抱えたため勤務していたF市役所を退職し,かつ,破産宣告を受けるまでに至ったにもかかわらず,その失敗を教訓にして経済的に堅実な生活を心がけることができず,不当な営業方法で仕事をし,営業ノルマを達成して出世欲を満たすために第3の犯行に及んだのであり,さらに,自らの不当な営業方法の当然の帰結として会社のお金の使い込みが発覚して会社を退職したというのに,ここに至っても自らの行為の愚かさに思いを致すこともなく,身勝手にもスナックの開店資金等を得る必要があるなどといった理由で第4の犯行に及んだものであって,これらの経緯だけから見ても,被告人A1が,自らの出世欲・成功欲・金銭欲を満たすために,高齢の被害者の境遇など全く顧みず,なりふり構わずに犯行に及んでいったことが顕著にうかがわれる。そして,被告人A1は,自らの欲望を満たすために第3及び第4の各犯行に及びながら,それに止まらず,あろうことか第3の犯行の発覚を免れるために,何ら躊躇することなく強盗殺人等を計画して主導・敢行したのであって,極めて欲深く身勝手というほかなく,自己保身のためや自らの欲望の満足のために人命を奪うことにさえ何らのためらいも見せない同被告人の冷徹さや非情さが顕著に現れている。
また,第1の犯行のうち,現住建造物等放火及び死体損壊の犯行は,被害者S方が古い木造家屋であり,これに放火をすれば近隣建物にも延焼拡大するおそれもあったにもかかわらず,当初の計画通りに犯行が進まなかったことから,被告人A2に指示して敢行したものであって,これまた犯跡を隠ぺいするためには重大な被害結果が生じるおそれがあっても手段を選ばず,犯罪を重ねることを厭わない無慈悲な人格態度を示すものである。
さらに,第1の犯行前から被告人A2の身代わりとなる者を殺害する方法で生命保険金を詐取することを計画していた被告人A1は,強盗殺人等といった重大犯罪を敢行したというのに,後悔や反省の情にとらわれるといったこともなく,そのわずか3週間余り後に多額の生命保険金を詐取するために完全犯罪を目論んで計画通り第2の犯行を敢行したのであり,この経緯を含めた第2の犯行は,多額の金銭を得るためには人命の尊さなど一顧だにしない同被告人の冷酷な人格を露わにするものである。
以上指摘したところからすると,被告人A1が敢行した第1及び第2の各犯行は,自己保身のためや欲望を満たすために人命の重ささえも全く顧みない非人間的な動機に基づく所業というほかない。
(2)  被告人A1は第1及び第2の各犯行を主導・主謀したものであって,その責任は極めて重い。
前示のとおり,被告人A1は,第1の犯行について,工事代金の返戻を強く求められたことから,犯行の2週間以上前から,被害者Sらを殺害して預り証等や金品を強取することを企て,暴力団関係者の存在をちかつかせながら,あるいは,報酬や逃走資金の供与を約束するなどして被告人A2を巧みに犯行に誘い込み,殺害方法,犯行に使用する道具の調達,死体処理の方法等について同被告人に事細かに指示した上,被告人A1が,被害者Sと同居していたWを外におびき出し,その間に,被告人A2に第1の犯行を実行させるなど,主謀者として極めて周到に犯行を計画,準備しているのである。
また,被告人A1は,第2の犯行に当たっても,あらかじめJに生命保険金の受取人となることや,被告人A2の身代わりとして殺害した者の死体が同被告人本人のものであると証言することを承諾させ,第1の犯行と同様に被告人A2を誘い込んだほか,共犯者Rに成功報酬を約束して犯行に引き入れ,被害者D’の殺害方法,共犯者間の役割分担等を決定した上,終始主導して計画的に第2の犯行を敢行させたものである。
このようにして,被告人A1は,自らの金銭欲,成功欲を満たすため,あるいは自己保身のため,各犯行を主謀・主導したのであって,第1及び第2の各犯行において果たした主謀者としての役割は極めて大きい。
(3)  第1及び第2の各犯行の結果が重大であることは,前記のとおりであるが,第3及び第4の各犯行の結果も到底無視できない。すなわち,第3の犯行で詐取した金額は合計440万円,第4の犯行で詐取した金額は合計1000万円を超え,いずれも多額である上,これらは被害者らが老後の生活のために蓄えていたものであることを考えると,第3及び第4の各犯行の結果にも重いものがあることを忘れてはならない。また,被告人A1が第4の犯行の後も引き続き第2の犯行のころまで,言葉巧みに言ってJから多額の金銭を引き出し続け,これをスナックの運転資金,遊興費等に費消していたという点も犯行後の事情として軽視できないものがある。
にもかかわらず,被告人A1は,被害者S及び同D’の各遺族,W及びJに対し被害弁償はおろか,何ら具体的な慰謝の措置を講じていないばかりか,同被告人は公判廷において,被害者Sの殺害及び同人方への放火の指示に関し不合理な弁解に終始しており,反省の情に乏しいところがあると指摘せざるを得ない。
(4)  以上指摘した諸情状に照らすと,被告人A1の犯情は,殊の外悪質であり,その罪責は極めて重大である。
4  被告人A2に不利な情状
(1)  被告人A2が第1及び第2の各犯行に至った経緯,動機は,前示のとおりであるところ,同被告人は,被告人A1の指示・意向に逆らえば,場合によっては殺害されるかもしれないとの恐怖感を抱くようになり,ますます同被告人の意向に逆らい難い心理に陥っていたことが認められるのであるが,同被告人が進めていた第2の犯行が計画通りいけば,別人として人生をやり直すことができると考えて,第1の犯行に及んだものであって,その動機は,やはり,同被告人と同様に自己の利益のために他人の生命など顧みない極めて身勝手なものというべきである。
さらに,被告人A2は,極めて残虐な第1の犯行を自ら敢行したというのに,前記のとおり,第2の犯行が計画通りいけば,自分が戸籍上死亡したことになり,多額の借金の取り立てから逃れることができる上,別人として人生をやり直すことができると考えて,当初の計画通り第2の犯行に関与したものであって,その動機は,極めて安易で,自己の利益のために人命の尊さなど何ら顧みない誠に短絡的で無慈悲なものである。
(2)  被告人A2は,第1の犯行を主謀した被告人A1の指示に従い,宅配便業者を装って被害者S方に侵入し,これを信じて被告人A2が差し出した菓子箱に貼付された伝票に印鑑を押そうとした被害者Sに対し,突然襲いかかり,両手を同人の首にまわして力を込めて絞めつけながら同人を同人方の仏間に押し込んで行き,必死に抵抗する同人の手を振り払ったりしながら,応接台の上に同人を仰向けに倒して馬乗りになり,上から強く首を絞めつけたまま同人の後頭部を応接台に叩きつけ,さらに,同人の眉間の辺りを手拳で殴りつけるなどし,なおも同人が死亡していないと見るや,その時点において自分の判断で,被告人A1から受けていた止めを刺す時期とは異なるものの,被害者Sの頸部をナイフで2度にわたり突き刺して殺害したものであって,その態様は極めて残虐である。
また,被告人A2は,被害者S方へ放火すれば,同人方が全焼し,Wは住居や家財を失うなどの大きな財産的損害を受けるばかりか,被害者Sの死体が焼損することも明らかであるのに,被告人A1からの指示を受け,被害者S方にあった石油ストーブや石油ファンヒーターのカートリッジ内にあった灯油を,同人方の室内に放置した同人の死体やその周りに撒いた上,マッチで火を点けた広告紙を同人の死体の上に置いて放火し,炎が1メートルほど上がるのを確認してから,同人方を逃走したものであって,やはり極めて危険で残忍な態様の犯行である。
さらに,被告人A2は,第2の犯行についても,被告人A1の指示に何ら躊躇することなく従い,被害者D’に睡眠導入剤を服用させた上,熟睡して無抵抗となった同人を川岸まで運び,その両足首を両手で持って宙づりにし,同人が身動きしなくなるまで,10分間近くにわたってその上半身を川の中に沈めて溺死させた上,顔の判別がつき難くするために,その死体の顔の上に石を落とすなどしたのであって,これまた極めて冷酷で残忍なものである。
このように,被告人A2は,第1及び第2の各犯行において,いずれも自らの手で両被害者を惨殺し,第1の犯行においては,被害者Sの殺害後,同人の死体及び同人方に火を放ち,同人の死体ごと同人方を全焼させるなどの挙に出ており,いずれの犯行においても,実行犯として必要不可欠の役割を果たしたものである。
そして,被告人A2は,極めて残虐で冷酷な各犯行を,被告人A1の指示に従い平然と躊躇やためらいなど全くなく忠実に実行しているのであり,上記の各犯行の経過及び態様,特に残虐な第1の強盗殺人等を現に実行して凄惨で尋常でない犯行場面,犯行現場を体験したにもかかわらず,そのような特異な体験が再度の殺人に対する歯止めには全くならず,平然と冷酷かつ残忍な第2の殺人を再度自ら敢行したという経過からは,被告人A2は通常人であれば有しているであろう人間的感情や感覚を著しく鈍磨させ,生命の尊さに対する感性を欠如させていることが強くうかがわれるのであって,被告人A2の敢行した第1及び第2の各犯行もまた,その非人間性の発露による所業というほかない。
(3)  被告人A2が被告人A1と知り合って以降の両者の関係については第1の2の犯行に至る経緯で認定したとおりであるところ,被告人A2は,少なくともY社での窃盗事件以後は,被告人A1なかんずくその背後にいると信じていた暴力団関係者への恐怖感から,同被告人の指示に逆らい難い心理状態にあり,特に,生命保険契約の申込みをした平成13年12月7日以降は,同被告人の指示・意向に逆らえば,場合によっては自分が殺害されるかもしれないなどと感じ,ますます同被告人に逆らい難い心理状態に陥り,そのような中で同被告人から第1及び第2の各犯行を実行するよう持ち掛けられたものであり,このような同被告人等への恐怖感が,被告人A2が第1及び第2の各犯行を実行することを決意した要因の一つになったことは否定できないところであり,その限りにおいては,同被告人は,第1及び第2の各犯行において被告人A1に比べて従属的な立場にあったということが可能である。
しかし,他方で,被告人A2は,第2の犯行については,自分の身代わりを殺害し,戸籍上,自分が死亡したことになれば,多額の借金の追及から事実上逃れることができる上,被告人A1から逃走資金をもらって遠方に逃げ,そこで,別人として人生をやり直すことができるとも思っていたのであり,被告人A2は,むしろこのような自己に固有の利益を実現するために積極的に第2の犯行を実行した側面が強い。また,第1の犯行についても,当時並行して第2の犯行に関する計画を進めており,第2の犯行を成功させ,その利益を得るためには,第1の犯行を成功させる必要があるとの思いからこれを実行したという側面も否定できず,もっぱら被告人A1ないしその背後にいると信じていた暴力団関係者を恐れ,仕方なく各犯行を実行したとばかりはいえない。もし,被告人A2が仕方なく第1及び第2の各犯行に至ったというのであれば,各犯行の前後ないし犯行中にそれなりのためらい,躊躇,後悔,反省等が少なからず見られてしかるべきであるのに,わずかに第1の犯行を最初に持ち掛けられた際にためらいを見せたものの,犯行が自らの利益にもなると悟った後には,そのような形跡は全くうかがえず,同被告人は,第1の犯行を何ら躊躇なく平然と実行し,その後,後悔等をすることもなく再び第2の犯行をまたしても平然と実行しているのであって,このことから見ても,同被告人が仕方なく第1及び第2の各犯行を実行したと評価することはできない。
以上のように,被告人A2には,第1及び第2の各犯行を敢行することについて,同被告人に固有の動機,利益があったことや,当時,同被告人は,被告人A1から監禁されていたわけでも,始終監視されていたわけでもなく,同被告人の下から逃走しようとすればそれは十分に可能だったのであり,また,仮に,被告人A2が,被告人A1の下からいったんは逃走しても,いずれ同被告人ないしその手下に捕まってしまうと考えていたとしても,第1及び第2の各犯行を持ち掛けられた際,少なくとも警察に助けを求めることは十分可能であったにもかかわらず,このような行動にいっさい出ることなく,誠に安易に第1及び第2の各犯行を平然と実行したこと等にかんがみると,上記のように,被告人A2が被告人A1ないしその背後にいると信じていた暴力団関係者を恐れ,同被告人に逆らい難い心理状態にあったとしても,それは犯行を決意した要因の一つに過ぎず,被告人A2の犯情の悪性が被告人A1のそれよりは相対的に低いことを示す事情といえるに止り,被告人A2の刑事責任それ自体を大きく軽減する事情になるということはできない。
(4)  以上の事情に加えて,被告人A2も,各被害者の遺族に対し何ら慰謝の措置を講じていないことに照らすと,第1及び第2の各犯行の実行犯である同被告人の罪責もまた極めて重大であるといわざるを得ない。
5  被告人両名のために酌むことのできる情状
他方,第1の犯行のうち,現住建造物等放火及び死体損壊の点は,計画的な犯行ではないことなど,被告人両名のために酌むことのできる情状があるほか,被告人A1については,第1の犯行のうち住居侵入及び強盗の各犯行と,第2,第3及び第4の各犯行については,捜査段階から一貫して認めており,また,殺害した第1及び第2の各犯行の各被害者の冥福を毎日祈っており,公判廷においては極刑をも覚悟している旨述べるなど反省の態度を示していること,家庭環境が必ずしも恵まれたものではなく,成育歴にも同情することができる面があり,これらの家庭環境や成育歴が被告人A1の人格形成に相応の影響を与えたであろうことも否定し難いことなど,同被告人のために酌むことのできる事情もある。また,被告人A2については,第1及び第2の各犯行について捜査段階から一貫して認めており,公判廷においても共犯者と共に刑に服する旨述べるなど反省の態度を示していること,上記のように,被告人A2が被告人A1らのことを恐れ,その指示に逆らい難い心理状態にあったことも,第1及び第2の各犯行を実行した一つの要因となっていることなど,被告人A2のために酌むことのできる情状を指摘することができる。
6  結論
しかし,上記のように,被告人両名のために酌むことのできる情状をそれぞれ最大限に斟酌し,かつ,死刑が人の生命を奪い去る冷厳な極刑であり,真にやむを得ない場合における究極の刑罰であることにかんがみ,その適用は慎重に行わなければならないことを十分に考慮しても,本件各犯行の全体及び個別の犯情,とりわけ,第1及び第2の各犯行に至る経緯,動機が極めて利欲的であること,これらの犯行の計画性も極めて高いこと,第1の残虐な犯行を敢行しながら平然と連続的に第2の犯行に及んだこと,第1及び第2の各犯行の態様殊に殺害の手段方法は極めて残虐であり,動機及び態様を含めた各犯行の非人間性は顕著であること,短期間のうちに2名もの被害者を殺害した結果が格別に重大であること,各犯行において被告人両名がそれぞれに枢要ないし重要な役割を果たしたこと,各遺族の峻烈な処罰感情,社会的影響等を総合すると,本件はあまりにも重大かつ悪質な事案であって,罪刑の均衡の見地からも,一般予防の見地からも,被告人両名に対していずれも極刑をもって臨むほかないと判断した次第である。
(求刑 被告人両名についていずれも死刑)
(裁判長裁判官 野島秀夫 裁判官 佐藤卓)
裁判官西森英司は,転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 野島秀夫
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