【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「成果報酬 営業」に関する裁判例(4)平成30年 3月28日 東京地裁 平28(ワ)40092号 損害賠償請求事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(4)平成30年 3月28日 東京地裁 平28(ワ)40092号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成30年 3月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)40092号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2018WLJPCA03288022

裁判年月日  平成30年 3月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)40092号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2018WLJPCA03288022

東京都新宿区〈以下省略〉
旧商号株式会社a
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 竹谷裕
埼玉県入間郡〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 三枝知央

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,5471万3160円及びこれに対する平成28年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文第1項と同旨
第2  事案の概要
本件は,プロバイダー事業等を目的とする株式会社である原告が,原告の元取締役兼営業本部長である被告において,原告の営業秘密に当たる顧客情報を不正に入手して競合他社に売却し,不正の利益を得る目的で,2回にわたり原告の札幌支社に侵入し,原告の顧客情報のデータを取得した上で,これらのデータを競合他社に開示し,原告に損害を生じさせた旨主張し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,原告が顧客対応のために要した費用相当額合計5471万3160円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年9月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実(以下の事実は,当事者間に争いがない。)
(1)  当事者
別紙請求の原因1記載のとおり(ただし,「被告を解雇した」とあるのを「被告を解任した」と改める。)。
(2)  不法行為
別紙請求の原因2記載のとおり(以下,同項記載の不法行為を「本件不法行為」という。)。
2  争点及び当事者の主張
本件の争点は,本件不法行為による損害の有無及び額であり,この争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。
(1)  原告の主張
原告は,本件不法行為により,以下のとおり,顧客対応のため,業務委託費及び賃金として合計5471万3160円の支出を余儀なくされ,少なくともこれと同額の損害を被った。
ア 顧客対応の必要性
(ア) 被告は,原告が使用している顧客情報管理システム(以下「本件システム」という。)から,プロバイダー事業に係る顧客の全情報を取得した。本件システムを用いて集計したところ,平成27年10月30日までの同事業に係る顧客は,解約済みの顧客も含めた総数で15万5032人であり,被告の不法行為によって,少なくともこれと同数の原告の顧客情報が社外に流出したものと認められた。
(イ) 被告は,原告の顧客情報を2社の競合他社に売却しており,これらの競合他社が原告の顧客に営業活動をした結果,原告は,顧客から多数の解約申出を受ける状態にあった。この当時,被告は未だ逮捕されていなかったため,被告が他の競合他社に重ねて原告の顧客情報を売却する可能性も高かった。このように,被告による情報漏えいを放置すれば,原告の信用は失墜し,顧客から契約を解約されるだけでなく,新規顧客の獲得が著しく困難となるおそれがあり,このような事態はプロバイダー事業という定額課金ビジネスを営む原告にとって致命的であった。加えて,原告が被告による顧客情報の漏えいを総務省に報告したところ,総務省は,原告に対し,漏えいした可能性がある顧客全員に対応するよう指示した。この指示を実行しなければ,業務停止の行政処分になるおそれがあったため,原告は,この指示を実行せざるを得なかった。
そこで,原告は,平成27年12月から平成28年1月までの間,顧客全員に対し,謝罪,説明等の顧客対応(以下「本件顧客対応」という。)を優先して実施した。
(ウ) 本件顧客対応の内容は,各顧客に架電し,個人情報漏えいの事実説明,お詫び,クレジットカードや預金口座情報は漏えいしていない旨の説明,及び,顧客の希望に合わせた接続用IDやパスワードの変更等を行うというものであった。このような架電による対応を実施することにした理由は,受電による対応(各顧客からの電話に応答するという方法による対応)だけでは受付電話回線数が不足しており,原告の通常業務に支障を来すおそれがあったこと,架電による方法は,顧客に真摯に説明することができる上,クオカード等の送付によるお詫び金の交付,郵便の発送等他の方法と比較して,時間的にもコスト的にも優れていると判断されたことにあった。
イ 業務委託による顧客対応の実施
(ア) 原告単独では多数の顧客に架電することが不可能であったため,原告は,原告の子会社であり,原告から新規顧客獲得業務を委託されている株式会社b(以下「b社」という。)に対し,その間の新規顧客獲得業務の実施は断念した上で,本件顧客対応の一部を委託することにした。
現在契約中の顧客については,被告による情報漏えいを原因とする解約や重大なクレームに発展するおそれが高く,コミュニケーションスキルが高く,原告のサービスに精通しているスタッフを多数有するb社に委託する必要があった。他方,契約前の顧客や原告が代理店として販売した他社の顧客契約後直ちにキャンセルした顧客への対応は,それほど作業量を要せず,スタッフのスキルも必要がないので,b社に対する業務委託の対象とはされなかった。
原告は,本件システムを用いて業務委託費の支払の対象としない顧客の総数を3万3222人と集計し,本件顧客対応が必要とされる顧客の総数15万5032人から上記3万3222人を控除した12万1810人の顧客について,業務委託費を顧客1人当たり400円として,本件顧客対応をb社に委託した。
原告は,他社に本件顧客対応を委託することも検討したが,1時間当たり3000円の費用のみならず成果報酬も発生する上,業務開始までに最低3週間を要するとのことであった。b社であれば,アウトバウンドコールセンター設備(積極的に情報を発信するためのコールセンター設備)を有している上,原告の子会社でもあり,直ちに本件顧客対応に着手できたことから,原告は,他社ではなくb社に本件顧客対応を委託することにした。
(イ) b社は,平成27年12月から平成28年1月までの間,新規顧客獲得業務を実施せず,本件顧客対応を実施した。このことは,原告の新規顧客の獲得実績が,平成27年12月が0件,平成28年1月が1件であったことからも明らかである。b社のコールセンターにおける対応時間は,平成27年12月が1万0354時間,平成28年1月が1万2219時間であった。なお,被告は,原告の関連会社である株式会社c(以下「c社」という。)が,上記期間に,b社の従業員を使用して新規顧客獲得業務を実施していた旨主張するが,そもそもc社は原告の関連会社ではなく,上記主張は否認する。
そして,原告は,b社に対し,上記業務委託費(税込み)として合計5262万1920円を支払った。その内訳は,平成27年12月分の業務委託費(税抜き)が1942万2000円(顧客4万8555人)であり,平成28年1月分の業務委託費(税抜き)が2930万2000円(顧客7万3255人)であった。
ウ 原告自身による顧客対応の実施
(ア) 原告は,平成27年12月から平成28年1月までの間,原告の従業員であるB(以下「B」という。)及びC(以下「C」という。)を本件顧客対応に専従させるとともに,本件顧客対応を実施するためのスタッフとして,D(以下「D」という。),E(以下「E」という。)及びF(以下「F」という。)をアルバイトとして雇用した。原告のサポートセンターにおける対応時間は,1056時間であった。
(イ) 原告は,上記期間における賃金として,B及びCに対して合計178万円を,D,E及びFに対して合計31万1240円をそれぞれ支払った。
(2)  被告の主張
原告の主張はいずれも否認し,あるいは知らない。
ア 被告が15万5032人の顧客情報を取得したとの点については,主張立証が不十分である。
イ 原告自身が対応した顧客は,自らキャンセルしてきた顧客などであり,いずれも現在契約がされておらず,厳密にいえば原告の顧客ですらないから,ホームページ等適宜の方法による情報開示やコールセンター等による受電対応で十分であり,全員に対して原告から積極的に架電する必要性,合理性はなかった。
b社に対応を委託した顧客についても,契約が締結されている顧客は合計7万5066人にすぎず,その他の者は厳密には顧客ではなかったから,原告自身が対応した顧客におけるのと同様,架電する必要性,合理性はなかった。
ウ 原告は,b社が新規顧客獲得業務を実施していない旨主張するが,当該期間においても,原告の関連会社であるc社がb社の従業員を用いて同業務を実施していたと思われ,b社が顧客に対する架電対応のみを実施していたとは考えられない。
第3  当裁判所の判断
1  顧客対応の必要性について
(1)  証拠(甲9,12から16まで,20,21,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① 本件不法行為において,被告が平成27年10月14日から15日までの間に取得した39個のエクセルファイルには,12万4235人分の原告のプロバイダー事業に係る顧客情報(以下,単に「顧客情報」という。)が記録されていたこと,② 被告が同月15日に2回に分けて競合他社に開示した17個のエクセルファイルには,合計8万4971人分(4万9694件と3万5277件の合計)の顧客情報が記録されていたこと,③ 被告が同月30日に取得した1個のエクセルファイルには,3万3063件の顧客情報が記録されていたこと,④ 被告が同年11月3日から4日までの間に競合他社に開示した8個のエクセルファイルには,15万7212件の顧客情報が記録されていたこと,⑤ 原告代表者は,本件不法行為の捜査を担当した警察官から,原告が本件システムにより管理している全ての顧客情報を取得した旨被告が供述しているとの説明を受けたため,そのような事実があるものと判断したこと,⑥ 本件システムを用いて集計したところ,同年10月30日までの原告のプロバイダー事業に係る顧客は,解約済みの顧客も含めた総数で15万5032人であったことが認められる。これらの事実に照らせば,少なくとも,原告代表者において,原告が本件システムにより管理している15万5032人の全ての顧客情報を被告が取得したと判断したことには合理的な根拠があり,そのような前提で原告が講じた対策のための費用は,当該対策が必要かつ相当なものである限り,本件不法行為と相当因果関係を有する損害に当たるというべきである。
この点について,被告は,15万5032人の顧客情報が流出したとの点についての主張立証が不十分である旨主張する。しかし,上記のとおり,被告は,平成27年11月3日から4日までの間に,15万7212件の顧客情報を競合他社に開示しており,原告が把握している以上の顧客情報を取得していたことが明らかであるし,被告が取得した顧客情報の正確な件数が不明であったとしても,原告代表者において,原告の全ての顧客情報を被告が取得したと判断したことに合理的な根拠があったことは上記のとおりであり,そのような前提で対策を講じることは当然に認められるべきものであるから,被告の上記主張は採用できない。
(2)  証拠(甲20,21,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① 被告は,顧客情報を2社の競合他社に売却しており,これらの競合他社が原告の顧客に営業活動をした結果,顧客から多数の解約申出を受ける状態にあったこと,② この当時,被告は未だ逮捕されておらず,他の競合他社に重ねて顧客情報を売却することが可能な状態にあったこと,③ プロバイダー事業においては,契約をした顧客から毎月徴収する定額の使用料が収益の大部分を構成するものであるため,顧客からの契約の解約が相次いだり,新規顧客の獲得が困難になったりすれば,原告のプロバイダー事業に致命的な悪影響を与えるおそれがあったこと,④ 原告が被告による顧客情報の漏えいを総務省に報告したところ,総務省から漏えいした可能性がある顧客全員に対応するよう口頭で指示されたことが認められる。これらの事実に照らせば,原告は,被告が顧客情報を取得したと考えられる15万5032人の顧客全員に対し,速やかに対策を講じる必要があったものと認められる。
(3)  証拠(甲20,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① 原告は,各顧客に架電し,個人情報漏えいの事実説明,お詫び,クレジットカードや預金口座情報は漏えいしていない旨の説明,及び,顧客の希望に合わせた接続用IDやパスワードの変更等を行うという方法で本件顧客対応を実施することにしたこと,② 原告において,受電により顧客への対応をしただけでは,受付電話回線数が不足しており,原告の通常業務に支障を来すおそれがあったこと,③ 架電により顧客に対応するという方法は,顧客に対して真摯に説明ができる上,クオカード等の送付によるお詫び金の交付や郵便の発送等他の方法と比較して,速やかに対応ができる上,費用も低額に抑えられるものと見込まれたことが認められる。これらの事実に照らせば,原告が上記のような架電による方法で本件顧客対応を行うことにしたことには合理的な根拠があったものと認められる。
この点について,被告は,現在契約が締結されていない顧客については,ホームページ等適宜の方法による情報開示やコールセンター等による受電対応で十分であり,全員に対して原告から積極的に架電する必要性,合理性はなかった旨主張する。しかし,原告の全ての顧客情報が漏えいしているものと合理的に判断され,総務省からも漏えいした可能性がある顧客全員に対応するよう口頭で指示されているなど判示の事情の下では,被告が主張するような受働的な対応をしたのみでは,本件不法行為により毀損された原告の信用を維持,回復するための措置として不十分であったと考えられるし,架電を行わず受電のみで対応した場合には,受付電話回線数の不足により原告の通常業務に支障を来すおそれがあったことは上記のとおりである。これらに照らせば,架電により本件顧客対応を行うべき必要性,相当性があったというべきであり,被告の上記主張は採用できない。
2  業務委託による顧客対応の実施について
(1)  証拠(甲9,10,20,21,原告代表者)によれば,① 原告の人員態勢の下では,原告単独では多数の顧客に架電し,本件顧客対応を行うことは不可能であったこと,② 現在契約中の顧客については,顧客情報の漏えいを原因とする解約や重大なクレームに発展するおそれが高いことから,コミュニケーションスキルが高く,原告のサービスに精通しているスタッフが対応する必要があったこと,③ b社は,原告の子会社として,原告から新規顧客獲得業務を委託されており,上記のような能力を有するスタッフを有していた上,保有しているアウトバウンドコールセンター設備を使用し,直ちに本件顧客対応に着手できる状態にあったこと,④ 原告が本件システムを用いて集計したところ,契約前の顧客,原告が代理店として販売した他社の顧客,契約後直ちにキャンセルした顧客は合計3万3222人であり,b社による対応が必要とされる現在契約中の顧客は,顧客の総数15万5032人から上記3万3222人を控除した12万1810人であると判明したこと,⑤ 原告は,b社以外の業者に本件顧客対応を委託することも検討したが,1時間当たり4000円の費用を要するのみならず,業務開始までに最低3週間を要するとの回答を得たこと,⑥ そこで,原告は,b社に対し,上記12万1810人の顧客を対象として,業務委託費を顧客1人当たり400円として,本件顧客対応を委託したことが認められる。これらの事実に照らせば,原告が,現在契約中の12万1810人の顧客について,1人当たり400円という業務委託費で,b社に本件顧客対応を委託したことには合理的な根拠があったものと認められる。
(2)  証拠(甲4,5,6の1,6の2,甲11,20,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① b社は,平成27年12月から平成28年1月までの間,新規顧客獲得業務を実施せず本件顧客対応に専従したこと,② 原告の新規顧客の獲得実績は,平成27年12月が0件,平成28年1月が1件であったこと,③ b社のコールセンターにおける対応時間は,平成27年12月が1万0354時間,平成28年1月が1万2219時間であったこと,④ 原告は,b社に対し,上記業務委託費(税込み)として合計5262万1920円を支払ったものであり,その内訳は,平成27年12月分の業務委託費(税込み)が2097万5760円(顧客4万8555人)であり,平成28年1月分の業務委託費(税込み)が3164万6160円(顧客7万3255人)であったことが認められる。これらの事実に照らせば,b社は,平成27年12月から平成28年1月までの間,新規顧客獲得業務を実施せず,専ら本件顧客対応を実施したものであり,原告がb社に対して支払った業務委託費合計5262万1920円は,本件不法行為と相当因果関係を有する損害に当たるものと認められる。
この点について,被告は,原告の関連会社であるc社がb社の従業員を用いて同業務を実施していたと思われ,b社が顧客に対する架電対応のみを実施していたとは考えられない旨主張する。しかし,そもそもc社が原告の関連会社であると認めるに足りる証拠はないし,本件顧客対応がされていた期間における原告の新規顧客の獲得実績がほとんど皆無であったことは上記のとおりであるから,b社が新規顧客獲得業務を実施していたものとは認められず,被告の上記主張は採用できない。
3  原告自身による顧客対応の実施について
証拠(甲6の3,6の4,甲20,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① 原告は,平成27年12月から平成28年1月までの間,原告の従業員であるB(平成28年1月のみ)及びCを,b社に委託しなかった3万3222人の顧客への本件顧客対応の実施,顧客情報の漏えいに伴う顧客からの解約申出やクレームに専従させるとともに,同業務に従事するためのスタッフとして,D,E(平成27年12月のみ)及びF(平成28年1月のみ)をアルバイトとして雇用したこと,② 上記期間における原告のサポートセンターにおける対応時間は,1056時間であったこと,③ 原告は,上記期間における賃金として,B及びCに対して合計178万円(ただし,Bについては平成28年1月のみ)を,D,E及びFに対して合計31万1240円をそれぞれ支払ったことが認められる。これらの事実に照らせば,原告は,平成27年12月から平成28年1月までの間,従業員2名を上記3万3222人の顧客についての本件顧客対応の実施,顧客からの解約申出やクレームに専従させたほか,新たに3名のアルバイトを雇用して同業務に従事させたものであり,原告が支払った賃金合計209万1240円は,本件不法行為と相当因果関係を有する損害に当たるものと認められる。
4  まとめ
以上のとおり,被告が原告の顧客情報等の営業秘密を開示したことにより,原告は,顧客対応のため,業務委託費及び賃金の合計5471万3160円の支出を余儀なくされたものであり,これらの費用を本件不法行為と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である。
第4  結論
以上によれば,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部
(裁判官 榮岳夫)

 

別紙
請求の原因
1 当事者
原告は,インターネットプロバイダー業等を目的とする株式会社である(甲1,甲2)。
被告は,平成27年7月からインターネットプロバイダー業等を目的とする原告の取締役兼営業本部長として原告が運営するインターネットプロバイダーに係る契約の勧誘・締結等を行う株式会社bの業務全般を管理していた。原告は,平成27年10月6日に被告を解雇した(甲7)。
2 不法行為
被告は,原告の顧客情報を不正に入手して競合他社にこれを売却しようと考え,不正の利益を得る目的で,以下の不法行為をした。
第1に,被告は,平成27年10月14日午後10時46分頃,札幌市〈以下省略〉所在の株式会社b代表取締役Aが看守する同社札幌支店に,未だ返却していなかったセキュリティカードを使用し,その機械警備を解除して同支店出入口ドアから侵入し,その頃から同月15日午前1時41分頃までの間,同支店において,同所に設置されたパーソナルコンピュータを操作し,原告がその顧客情報等を管理する顧客情報管理システム「○○」のサーバコンピュータにアクセスして,原告の営業秘密である顧客等の氏名,生年月日,住所,電話番号等を内容とする顧客情報等のデータを記録した39個のエクセルファイルを作成し,これらを前記パーソナルコンピュータと接続したファイルサーバ内に保存するとともに一つの圧縮ファイルに集約した上,同支店内の電気通信回線に接続させた被告所有のパーソナルコンピュータを使用し,同ファイルサーバから同圧縮ファイルを同パーソナルコンピュータのハードディスクに複製して前記39個のエクセルファイルを記録し,もって管理侵害行為により,原告の営業秘密を取得した。
第2に,被告は,平成27年10月15日午前11時11分頃から同月30日午後零時6分頃までの間,15回にわたり,札幌市〈以下省略〉所在のd株式会社において,被告所有のパーソナルコンピュータを使用して,同社代表取締役Gに対し,前記方法により取得した原告の営業秘密である顧客情報等を記録した17個のエクセルファイルを前記G宛ての電子メールに添付して送信し,もって前記管理侵害行為により取得した原告の営業秘密を開示した。
第3に,被告は,平成27年10月30日午前8時32分頃,前記株式会社b札幌支店に,機械警備が解除されていた同支店出入口ドアから侵入し,その頃から同日午前9時7分頃までの間,同支店において,同所に設置されたパーソナルコンピュータを操作し,前記「○○」のサーバコンピュータにアクセスして,原告の営業秘密である顧客等の氏名,生年月日,住所,電話番号等を内容とする顧客情報等のデータを記録した1個のエクセルファイルを作成し,これを前記パーソナルコンピュータと接続したファイルサーバ内に保存した上,同支店内の電気通信回線に接続させた被告所有のパーソナルコンピュータを使用し,同ファイルサーバから前記エクセルファイルを同パーソナルコンピュータのハードディスクに複製して記録し,もって管理侵害行為により,原告の営業秘密を取得した。
第4に,被告は,平成27年11月3日午後4時24分頃,埼玉県入間郡〈以下省略〉被告方において,被告所有のパーソナルコンピュータを使用して,株式会社データ復旧センターが運営するインターネットサイト上のファイル送信サービス「データ便」を利用し,同社が管理するサーバコンピュータに,前記方法により取得した原告の営業秘密である顧客情報等を,同様の方法により既に取得していた原告の営業秘密である顧客情報等とともに記録した8個のエクセルファイルを1つの圧縮ファイルに集約してアップロードした上,同日午後4時28分頃,株式会社e取締役Hに対し,同圧縮ファイルを前記サーバコンピュータからダウンロードするためのURL情報を前記H宛ての電子メールで送信し,同月4日午後2時18分頃,前記URL情報を利用して前記サーバコンピュータにアクセスした前記Hをして,札幌市〈以下省略〉所在の前記e社に設置されたパーソナルコンピュータに前記圧縮ファイルをダウンロードさせ,もって前記管理侵害行為により取得した原告の営業秘密を開示した。
なお,上記不法行為(以下,「本件不法行為」という)についての事実は,平成28年5月31日,被告に対する建造物侵入・不正競争防止法違反被告事件について,札幌地方裁判所が,判決の(罪となるべき事実)において,認定しており,上記判決は,平成28年6月15日,確定した(甲7)。
以上

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Notice: Undefined index: show_google_top in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296

Notice: Undefined index: show_google_btm in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296