「成果報酬 営業」に関する裁判例(4)平成30年 3月28日 東京地裁 平28(ワ)40092号 損害賠償請求事件
「成果報酬 営業」に関する裁判例(4)平成30年 3月28日 東京地裁 平28(ワ)40092号 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成30年 3月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平28(ワ)40092号
事件名 損害賠償請求事件
文献番号 2018WLJPCA03288022
裁判年月日 平成30年 3月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平28(ワ)40092号
事件名 損害賠償請求事件
文献番号 2018WLJPCA03288022
東京都新宿区〈以下省略〉
旧商号株式会社a
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 竹谷裕
埼玉県入間郡〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 三枝知央
主文
1 被告は,原告に対し,5471万3160円及びこれに対する平成28年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文第1項と同旨
第2 事案の概要
本件は,プロバイダー事業等を目的とする株式会社である原告が,原告の元取締役兼営業本部長である被告において,原告の営業秘密に当たる顧客情報を不正に入手して競合他社に売却し,不正の利益を得る目的で,2回にわたり原告の札幌支社に侵入し,原告の顧客情報のデータを取得した上で,これらのデータを競合他社に開示し,原告に損害を生じさせた旨主張し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,原告が顧客対応のために要した費用相当額合計5471万3160円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年9月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実(以下の事実は,当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
別紙請求の原因1記載のとおり(ただし,「被告を解雇した」とあるのを「被告を解任した」と改める。)。
(2) 不法行為
別紙請求の原因2記載のとおり(以下,同項記載の不法行為を「本件不法行為」という。)。
2 争点及び当事者の主張
本件の争点は,本件不法行為による損害の有無及び額であり,この争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。
(1) 原告の主張
原告は,本件不法行為により,以下のとおり,顧客対応のため,業務委託費及び賃金として合計5471万3160円の支出を余儀なくされ,少なくともこれと同額の損害を被った。
ア 顧客対応の必要性
(ア) 被告は,原告が使用している顧客情報管理システム(以下「本件システム」という。)から,プロバイダー事業に係る顧客の全情報を取得した。本件システムを用いて集計したところ,平成27年10月30日までの同事業に係る顧客は,解約済みの顧客も含めた総数で15万5032人であり,被告の不法行為によって,少なくともこれと同数の原告の顧客情報が社外に流出したものと認められた。
(イ) 被告は,原告の顧客情報を2社の競合他社に売却しており,これらの競合他社が原告の顧客に営業活動をした結果,原告は,顧客から多数の解約申出を受ける状態にあった。この当時,被告は未だ逮捕されていなかったため,被告が他の競合他社に重ねて原告の顧客情報を売却する可能性も高かった。このように,被告による情報漏えいを放置すれば,原告の信用は失墜し,顧客から契約を解約されるだけでなく,新規顧客の獲得が著しく困難となるおそれがあり,このような事態はプロバイダー事業という定額課金ビジネスを営む原告にとって致命的であった。加えて,原告が被告による顧客情報の漏えいを総務省に報告したところ,総務省は,原告に対し,漏えいした可能性がある顧客全員に対応するよう指示した。この指示を実行しなければ,業務停止の行政処分になるおそれがあったため,原告は,この指示を実行せざるを得なかった。
そこで,原告は,平成27年12月から平成28年1月までの間,顧客全員に対し,謝罪,説明等の顧客対応(以下「本件顧客対応」という。)を優先して実施した。
(ウ) 本件顧客対応の内容は,各顧客に架電し,個人情報漏えいの事実説明,お詫び,クレジットカードや預金口座情報は漏えいしていない旨の説明,及び,顧客の希望に合わせた接続用IDやパスワードの変更等を行うというものであった。このような架電による対応を実施することにした理由は,受電による対応(各顧客からの電話に応答するという方法による対応)だけでは受付電話回線数が不足しており,原告の通常業務に支障を来すおそれがあったこと,架電による方法は,顧客に真摯に説明することができる上,クオカード等の送付によるお詫び金の交付,郵便の発送等他の方法と比較して,時間的にもコスト的にも優れていると判断されたことにあった。
イ 業務委託による顧客対応の実施
(ア) 原告単独では多数の顧客に架電することが不可能であったため,原告は,原告の子会社であり,原告から新規顧客獲得業務を委託されている株式会社b(以下「b社」という。)に対し,その間の新規顧客獲得業務の実施は断念した上で,本件顧客対応の一部を委託することにした。
現在契約中の顧客については,被告による情報漏えいを原因とする解約や重大なクレームに発展するおそれが高く,コミュニケーションスキルが高く,原告のサービスに精通しているスタッフを多数有するb社に委託する必要があった。他方,契約前の顧客や原告が代理店として販売した他社の顧客契約後直ちにキャンセルした顧客への対応は,それほど作業量を要せず,スタッフのスキルも必要がないので,b社に対する業務委託の対象とはされなかった。
原告は,本件システムを用いて業務委託費の支払の対象としない顧客の総数を3万3222人と集計し,本件顧客対応が必要とされる顧客の総数15万5032人から上記3万3222人を控除した12万1810人の顧客について,業務委託費を顧客1人当たり400円として,本件顧客対応をb社に委託した。
原告は,他社に本件顧客対応を委託することも検討したが,1時間当たり3000円の費用のみならず成果報酬も発生する上,業務開始までに最低3週間を要するとのことであった。b社であれば,アウトバウンドコールセンター設備(積極的に情報を発信するためのコールセンター設備)を有している上,原告の子会社でもあり,直ちに本件顧客対応に着手できたことから,原告は,他社ではなくb社に本件顧客対応を委託することにした。
(イ) b社は,平成27年12月から平成28年1月までの間,新規顧客獲得業務を実施せず,本件顧客対応を実施した。このことは,原告の新規顧客の獲得実績が,平成27年12月が0件,平成28年1月が1件であったことからも明らかである。b社のコールセンターにおける対応時間は,平成27年12月が1万0354時間,平成28年1月が1万2219時間であった。なお,被告は,原告の関連会社である株式会社c(以下「c社」という。)が,上記期間に,b社の従業員を使用して新規顧客獲得業務を実施していた旨主張するが,そもそもc社は原告の関連会社ではなく,上記主張は否認する。
そして,原告は,b社に対し,上記業務委託費(税込み)として合計5262万1920円を支払った。その内訳は,平成27年12月分の業務委託費(税抜き)が1942万2000円(顧客4万8555人)であり,平成28年1月分の業務委託費(税抜き)が2930万2000円(顧客7万3255人)であった。
ウ 原告自身による顧客対応の実施
(ア) 原告は,平成27年12月から平成28年1月までの間,原告の従業員であるB(以下「B」という。)及びC(以下「C」という。)を本件顧客対応に専従させるとともに,本件顧客対応を実施するためのスタッフとして,D(以下「D」という。),E(以下「E」という。)及びF(以下「F」という。)をアルバイトとして雇用した。原告のサポートセンターにおける対応時間は,1056時間であった。
(イ) 原告は,上記期間における賃金として,B及びCに対して合計178万円を,D,E及びFに対して合計31万1240円をそれぞれ支払った。
(2) 被告の主張
原告の主張はいずれも否認し,あるいは知らない。
ア 被告が15万5032人の顧客情報を取得したとの点については,主張立証が不十分である。
イ 原告自身が対応した顧客は,自らキャンセルしてきた顧客などであり,いずれも現在契約がされておらず,厳密にいえば原告の顧客ですらないから,ホームページ等適宜の方法による情報開示やコールセンター等による受電対応で十分であり,全員に対して原告から積極的に架電する必要性,合理性はなかった。
b社に対応を委託した顧客についても,契約が締結されている顧客は合計7万5066人にすぎず,その他の者は厳密には顧客ではなかったから,原告自身が対応した顧客におけるのと同様,架電する必要性,合理性はなかった。
ウ 原告は,b社が新規顧客獲得業務を実施していない旨主張するが,当該期間においても,原告の関連会社であるc社がb社の従業員を用いて同業務を実施していたと思われ,b社が顧客に対する架電対応のみを実施していたとは考えられない。
第3 当裁判所の判断
1 顧客対応の必要性について
(1) 証拠(甲9,12から16まで,20,21,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① 本件不法行為において,被告が平成27年10月14日から15日までの間に取得した39個のエクセルファイルには,12万4235人分の原告のプロバイダー事業に係る顧客情報(以下,単に「顧客情報」という。)が記録されていたこと,② 被告が同月15日に2回に分けて競合他社に開示した17個のエクセルファイルには,合計8万4971人分(4万9694件と3万5277件の合計)の顧客情報が記録されていたこと,③ 被告が同月30日に取得した1個のエクセルファイルには,3万3063件の顧客情報が記録されていたこと,④ 被告が同年11月3日から4日までの間に競合他社に開示した8個のエクセルファイルには,15万7212件の顧客情報が記録されていたこと,⑤ 原告代表者は,本件不法行為の捜査を担当した警察官から,原告が本件システムにより管理している全ての顧客情報を取得した旨被告が供述しているとの説明を受けたため,そのような事実があるものと判断したこと,⑥ 本件システムを用いて集計したところ,同年10月30日までの原告のプロバイダー事業に係る顧客は,解約済みの顧客も含めた総数で15万5032人であったことが認められる。これらの事実に照らせば,少なくとも,原告代表者において,原告が本件システムにより管理している15万5032人の全ての顧客情報を被告が取得したと判断したことには合理的な根拠があり,そのような前提で原告が講じた対策のための費用は,当該対策が必要かつ相当なものである限り,本件不法行為と相当因果関係を有する損害に当たるというべきである。
この点について,被告は,15万5032人の顧客情報が流出したとの点についての主張立証が不十分である旨主張する。しかし,上記のとおり,被告は,平成27年11月3日から4日までの間に,15万7212件の顧客情報を競合他社に開示しており,原告が把握している以上の顧客情報を取得していたことが明らかであるし,被告が取得した顧客情報の正確な件数が不明であったとしても,原告代表者において,原告の全ての顧客情報を被告が取得したと判断したことに合理的な根拠があったことは上記のとおりであり,そのような前提で対策を講じることは当然に認められるべきものであるから,被告の上記主張は採用できない。
(2) 証拠(甲20,21,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① 被告は,顧客情報を2社の競合他社に売却しており,これらの競合他社が原告の顧客に営業活動をした結果,顧客から多数の解約申出を受ける状態にあったこと,② この当時,被告は未だ逮捕されておらず,他の競合他社に重ねて顧客情報を売却することが可能な状態にあったこと,③ プロバイダー事業においては,契約をした顧客から毎月徴収する定額の使用料が収益の大部分を構成するものであるため,顧客からの契約の解約が相次いだり,新規顧客の獲得が困難になったりすれば,原告のプロバイダー事業に致命的な悪影響を与えるおそれがあったこと,④ 原告が被告による顧客情報の漏えいを総務省に報告したところ,総務省から漏えいした可能性がある顧客全員に対応するよう口頭で指示されたことが認められる。これらの事実に照らせば,原告は,被告が顧客情報を取得したと考えられる15万5032人の顧客全員に対し,速やかに対策を講じる必要があったものと認められる。
(3) 証拠(甲20,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① 原告は,各顧客に架電し,個人情報漏えいの事実説明,お詫び,クレジットカードや預金口座情報は漏えいしていない旨の説明,及び,顧客の希望に合わせた接続用IDやパスワードの変更等を行うという方法で本件顧客対応を実施することにしたこと,② 原告において,受電により顧客への対応をしただけでは,受付電話回線数が不足しており,原告の通常業務に支障を来すおそれがあったこと,③ 架電により顧客に対応するという方法は,顧客に対して真摯に説明ができる上,クオカード等の送付によるお詫び金の交付や郵便の発送等他の方法と比較して,速やかに対応ができる上,費用も低額に抑えられるものと見込まれたことが認められる。これらの事実に照らせば,原告が上記のような架電による方法で本件顧客対応を行うことにしたことには合理的な根拠があったものと認められる。
この点について,被告は,現在契約が締結されていない顧客については,ホームページ等適宜の方法による情報開示やコールセンター等による受電対応で十分であり,全員に対して原告から積極的に架電する必要性,合理性はなかった旨主張する。しかし,原告の全ての顧客情報が漏えいしているものと合理的に判断され,総務省からも漏えいした可能性がある顧客全員に対応するよう口頭で指示されているなど判示の事情の下では,被告が主張するような受働的な対応をしたのみでは,本件不法行為により毀損された原告の信用を維持,回復するための措置として不十分であったと考えられるし,架電を行わず受電のみで対応した場合には,受付電話回線数の不足により原告の通常業務に支障を来すおそれがあったことは上記のとおりである。これらに照らせば,架電により本件顧客対応を行うべき必要性,相当性があったというべきであり,被告の上記主張は採用できない。
2 業務委託による顧客対応の実施について
(1) 証拠(甲9,10,20,21,原告代表者)によれば,① 原告の人員態勢の下では,原告単独では多数の顧客に架電し,本件顧客対応を行うことは不可能であったこと,② 現在契約中の顧客については,顧客情報の漏えいを原因とする解約や重大なクレームに発展するおそれが高いことから,コミュニケーションスキルが高く,原告のサービスに精通しているスタッフが対応する必要があったこと,③ b社は,原告の子会社として,原告から新規顧客獲得業務を委託されており,上記のような能力を有するスタッフを有していた上,保有しているアウトバウンドコールセンター設備を使用し,直ちに本件顧客対応に着手できる状態にあったこと,④ 原告が本件システムを用いて集計したところ,契約前の顧客,原告が代理店として販売した他社の顧客,契約後直ちにキャンセルした顧客は合計3万3222人であり,b社による対応が必要とされる現在契約中の顧客は,顧客の総数15万5032人から上記3万3222人を控除した12万1810人であると判明したこと,⑤ 原告は,b社以外の業者に本件顧客対応を委託することも検討したが,1時間当たり4000円の費用を要するのみならず,業務開始までに最低3週間を要するとの回答を得たこと,⑥ そこで,原告は,b社に対し,上記12万1810人の顧客を対象として,業務委託費を顧客1人当たり400円として,本件顧客対応を委託したことが認められる。これらの事実に照らせば,原告が,現在契約中の12万1810人の顧客について,1人当たり400円という業務委託費で,b社に本件顧客対応を委託したことには合理的な根拠があったものと認められる。
(2) 証拠(甲4,5,6の1,6の2,甲11,20,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① b社は,平成27年12月から平成28年1月までの間,新規顧客獲得業務を実施せず本件顧客対応に専従したこと,② 原告の新規顧客の獲得実績は,平成27年12月が0件,平成28年1月が1件であったこと,③ b社のコールセンターにおける対応時間は,平成27年12月が1万0354時間,平成28年1月が1万2219時間であったこと,④ 原告は,b社に対し,上記業務委託費(税込み)として合計5262万1920円を支払ったものであり,その内訳は,平成27年12月分の業務委託費(税込み)が2097万5760円(顧客4万8555人)であり,平成28年1月分の業務委託費(税込み)が3164万6160円(顧客7万3255人)であったことが認められる。これらの事実に照らせば,b社は,平成27年12月から平成28年1月までの間,新規顧客獲得業務を実施せず,専ら本件顧客対応を実施したものであり,原告がb社に対して支払った業務委託費合計5262万1920円は,本件不法行為と相当因果関係を有する損害に当たるものと認められる。
この点について,被告は,原告の関連会社であるc社がb社の従業員を用いて同業務を実施していたと思われ,b社が顧客に対する架電対応のみを実施していたとは考えられない旨主張する。しかし,そもそもc社が原告の関連会社であると認めるに足りる証拠はないし,本件顧客対応がされていた期間における原告の新規顧客の獲得実績がほとんど皆無であったことは上記のとおりであるから,b社が新規顧客獲得業務を実施していたものとは認められず,被告の上記主張は採用できない。
3 原告自身による顧客対応の実施について
証拠(甲6の3,6の4,甲20,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,① 原告は,平成27年12月から平成28年1月までの間,原告の従業員であるB(平成28年1月のみ)及びCを,b社に委託しなかった3万3222人の顧客への本件顧客対応の実施,顧客情報の漏えいに伴う顧客からの解約申出やクレームに専従させるとともに,同業務に従事するためのスタッフとして,D,E(平成27年12月のみ)及びF(平成28年1月のみ)をアルバイトとして雇用したこと,② 上記期間における原告のサポートセンターにおける対応時間は,1056時間であったこと,③ 原告は,上記期間における賃金として,B及びCに対して合計178万円(ただし,Bについては平成28年1月のみ)を,D,E及びFに対して合計31万1240円をそれぞれ支払ったことが認められる。これらの事実に照らせば,原告は,平成27年12月から平成28年1月までの間,従業員2名を上記3万3222人の顧客についての本件顧客対応の実施,顧客からの解約申出やクレームに専従させたほか,新たに3名のアルバイトを雇用して同業務に従事させたものであり,原告が支払った賃金合計209万1240円は,本件不法行為と相当因果関係を有する損害に当たるものと認められる。
4 まとめ
以上のとおり,被告が原告の顧客情報等の営業秘密を開示したことにより,原告は,顧客対応のため,業務委託費及び賃金の合計5471万3160円の支出を余儀なくされたものであり,これらの費用を本件不法行為と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である。
第4 結論
以上によれば,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部
(裁判官 榮岳夫)
別紙
請求の原因
1 当事者
原告は,インターネットプロバイダー業等を目的とする株式会社である(甲1,甲2)。
被告は,平成27年7月からインターネットプロバイダー業等を目的とする原告の取締役兼営業本部長として原告が運営するインターネットプロバイダーに係る契約の勧誘・締結等を行う株式会社bの業務全般を管理していた。原告は,平成27年10月6日に被告を解雇した(甲7)。
2 不法行為
被告は,原告の顧客情報を不正に入手して競合他社にこれを売却しようと考え,不正の利益を得る目的で,以下の不法行為をした。
第1に,被告は,平成27年10月14日午後10時46分頃,札幌市〈以下省略〉所在の株式会社b代表取締役Aが看守する同社札幌支店に,未だ返却していなかったセキュリティカードを使用し,その機械警備を解除して同支店出入口ドアから侵入し,その頃から同月15日午前1時41分頃までの間,同支店において,同所に設置されたパーソナルコンピュータを操作し,原告がその顧客情報等を管理する顧客情報管理システム「○○」のサーバコンピュータにアクセスして,原告の営業秘密である顧客等の氏名,生年月日,住所,電話番号等を内容とする顧客情報等のデータを記録した39個のエクセルファイルを作成し,これらを前記パーソナルコンピュータと接続したファイルサーバ内に保存するとともに一つの圧縮ファイルに集約した上,同支店内の電気通信回線に接続させた被告所有のパーソナルコンピュータを使用し,同ファイルサーバから同圧縮ファイルを同パーソナルコンピュータのハードディスクに複製して前記39個のエクセルファイルを記録し,もって管理侵害行為により,原告の営業秘密を取得した。
第2に,被告は,平成27年10月15日午前11時11分頃から同月30日午後零時6分頃までの間,15回にわたり,札幌市〈以下省略〉所在のd株式会社において,被告所有のパーソナルコンピュータを使用して,同社代表取締役Gに対し,前記方法により取得した原告の営業秘密である顧客情報等を記録した17個のエクセルファイルを前記G宛ての電子メールに添付して送信し,もって前記管理侵害行為により取得した原告の営業秘密を開示した。
第3に,被告は,平成27年10月30日午前8時32分頃,前記株式会社b札幌支店に,機械警備が解除されていた同支店出入口ドアから侵入し,その頃から同日午前9時7分頃までの間,同支店において,同所に設置されたパーソナルコンピュータを操作し,前記「○○」のサーバコンピュータにアクセスして,原告の営業秘密である顧客等の氏名,生年月日,住所,電話番号等を内容とする顧客情報等のデータを記録した1個のエクセルファイルを作成し,これを前記パーソナルコンピュータと接続したファイルサーバ内に保存した上,同支店内の電気通信回線に接続させた被告所有のパーソナルコンピュータを使用し,同ファイルサーバから前記エクセルファイルを同パーソナルコンピュータのハードディスクに複製して記録し,もって管理侵害行為により,原告の営業秘密を取得した。
第4に,被告は,平成27年11月3日午後4時24分頃,埼玉県入間郡〈以下省略〉被告方において,被告所有のパーソナルコンピュータを使用して,株式会社データ復旧センターが運営するインターネットサイト上のファイル送信サービス「データ便」を利用し,同社が管理するサーバコンピュータに,前記方法により取得した原告の営業秘密である顧客情報等を,同様の方法により既に取得していた原告の営業秘密である顧客情報等とともに記録した8個のエクセルファイルを1つの圧縮ファイルに集約してアップロードした上,同日午後4時28分頃,株式会社e取締役Hに対し,同圧縮ファイルを前記サーバコンピュータからダウンロードするためのURL情報を前記H宛ての電子メールで送信し,同月4日午後2時18分頃,前記URL情報を利用して前記サーバコンピュータにアクセスした前記Hをして,札幌市〈以下省略〉所在の前記e社に設置されたパーソナルコンピュータに前記圧縮ファイルをダウンロードさせ,もって前記管理侵害行為により取得した原告の営業秘密を開示した。
なお,上記不法行為(以下,「本件不法行為」という)についての事実は,平成28年5月31日,被告に対する建造物侵入・不正競争防止法違反被告事件について,札幌地方裁判所が,判決の(罪となるべき事実)において,認定しており,上記判決は,平成28年6月15日,確定した(甲7)。
以上
*******
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。