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判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(337)平成18年11月28日 東京地裁 平17(ワ)2528号 不当利得返還請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(337)平成18年11月28日 東京地裁 平17(ワ)2528号 不当利得返還請求事件

裁判年月日  平成18年11月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)2528号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2006WLJPCA11280010

要旨
◆原告らがその資産を預けているスイスのプライベート銀行は危険な組織で投資を回収できないなどといった投資顧問会社(被告)の代表者(被告)の原告の一人に対する恐怖心をあおる行為は不法行為を構成するとして、同原告に対する欺罔行為による錯誤の下に原告らが支払った投資顧問料ほかの費用、慰謝料及び弁護士費用について原告らの請求を一部認容した事例

出典
新日本法規提供

参照条文
民法709条
民法710条
民法715条

裁判年月日  平成18年11月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)2528号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2006WLJPCA11280010

東京都墨田区〈以下省略〉
原告 X1
同所
原告 X2
同所
原告 X3
原告ら訴訟代理人弁護士 戸谷雅美
同 山本智晴
同 中原澄人
東京都杉並区〈以下省略〉
被告 株式会社ユーロ・ジャパン・コーポレーション
同代表者代表取締役 Y1
東京都文京区〈以下省略〉
被告 Y1
被告ら訴訟代理人弁護士 伊礼勇吉
同 山田勝一郎
同 伊礼竜之介
同 立津龍二

 

主文

1  被告らは,原告X1に対し,連帯して1253万3280円,及びうち1139万3280円に対する平成16年5月25日から,うち114万円に対する平成16年4月22日から,各々支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告らは,原告X2に対し,連帯して57万5000円,及びうち52万5000円に対する平成16年5月25日から,うち5万円に対する平成16年4月22日から,各々支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告らは,原告X3に対し,連帯して57万5000円,及びうち52万5000円に対する平成16年5月25日から,うち5万円に対する平成16年4月22日から,各々支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は,これを8分し,3を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。
6  本判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
被告らは,連帯して,原告X1に対し1589万3280円,原告X2に対し52万5000円,原告X3に対し52万5000円及びこれらに対する平成16年5月25日から支払済みまで年5分の割合による金員,並びに原告らに対し500万円及びこれに対する平成16年4月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告らが,被告らに対し,以下の請求をするものである。
(1)  原告X1関係
ア  原告X1(原告X1)と被告ら間の平成16年3月1日及び同年4月22日に締結された投資顧問(助言)契約が,被告会社代表者兼被告Y1(被告Y1)の詐欺・脅迫行為によるものであるからこれを取消し,それに基づく不当利得返還請求として支払済みの報酬額の返還を求め,予備的に前払い費用返還請求権に基づき支払済みの費用の返還を求めるものである。
イ  原告X1と被告ら間の平成16年3月8日付投資一任契約について,主位的に詐欺・強迫取消による不当利得返還請求権に基づき支払済み報酬額の返還を求め,予備的に解除による返還請求権に基づき支払済み報酬額の返還を求めるものである。
ウ  ア及びイの各請求と選択的に,不法行為による損害賠償請求権に基づき損害の支払いを求め,加えて不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料の各支払を求めるものである。
(2)  原告X2及び原告X3関係
ア  原告X2(原告X2)及び原告X3(原告X3)は,原告X1を代理人として,被告らと締結した平成16年3月8日付投資一任契約について,それぞれ主位的に詐欺・強迫取消による不当利得返還請求権に基づき支払済み報酬額の返還を求め,予備的に解除による返還請求権に基づき支払済み報酬額の返還を求めるものである。
イ  アの各請求と選択的に,不法行為による損害賠償請求権に基づき損害の支払いを求めるものである。
1 争いのない事実等(当事者間に争いがないか,証拠等によって明らかに認められる事実)
(1) 当事者
ア 原告X1は,昭和○年の生まれで,亡夫A(平成3年死亡)との間に原告X2(昭和○年生),原告X3(昭和○年)をもうけている。原告X1は,a女子大学を卒業したのち,すぐに亡夫と婚姻し,主婦専業となり,財産管理は亡夫が行っていた。亡夫が死亡後は,自宅敷地内にある倉庫と2,3台分の駐車スペースを駐車場として他に賃貸して収入を得ており,それらによる収入は多くて月額40万円程度である(甲1,81)。
イ 被告株式会社ユーロ・ジャパン・コーポレーション(被告会社)は,昭和53年11月1日に設立され,有価証券等にかかる投資顧問業等を目的とする株式会社であり,被告Y1は,被告会社の代表取締役である。
被告会社は,社団法人日本証券投資顧問業協会の投資顧問会社要覧(甲3)によれば,昭和62年に投資顧問業としての登録がされ,平成16年の役職員総数は4名で,株主構成は被告Y1が27パーセント,訴外Bが25パーセント,訴外Cが25パーセント,訴外Dが23パーセントを保有するとされている(甲2,3)。また,フランクフルトと香港に各々子会社を有するとされている。
ウ  被告Y1は,その作成にかかる履歴書(乙1)によれば,大学卒業後b證券に勤務し,その後,2年間c社に出向などした後,昭和53年に被告会社を設立し,昭和54年には香港の会社を設立,昭和55年にはフランス法上の株式会社を設立したり,昭和61年にはOPECファンドの公認アドバイザーやUNIDO(国際連合工業開発機構)公認アドバイザーに就任しとあり,また,東洋経済社の雑誌「ビリオン」の昭和61年5月1日号(乙9)や「週間東洋経済」の同月10日号(乙10)には,欧州の年金の対日投資に多大な影響力を持つ日本人と紹介されている。なお,被告Y1は,昭和63年に広範脊柱管狭窄症に罹患し,その後11回の手術を受け,東京都から平成9年に身体障害度2級の身体障害者手帳の交付を受けている(乙1,4)。
(2) 原告X1と被告会社名により下記ア及びイの内容の投資顧問(助言)契約書がそれぞれ作成された。
ア 平成16年3月1日,投資顧問(助言)契約書(本件助言契約①)
契約の目的は,被告会社が,原告X1に対し,原告X1とユニオン・バンケール・プリヴェ(UBP)及びクラリデン・バンク(クラリデン銀行)及びその関連会社間の契約及び取引内容に関する情報を提供するというものである。対価は年380万円(消費税を含むと399万円)。(甲6)
イ 平成16年4月22日,投資顧問(助言)契約書(本件助言契約②)
契約の目的は,被告会社が,原告X1に対し,原告X1の海外にある有価証券,現金など3億7000万円に関し助言を行うというものである。対価は年388万5000円である。(甲7)
ウ 原告X1は,下記のとおり,被告会社又は被告Y1の預金口座に次のとおり送金した。(甲17の1~4)
(ア) 平成16年3月4日 300万円(被告会社口座宛)
(イ) 同月5日 99万円(同)
(ウ) 同月22日 86万7880円(被告Y1口座宛)
(エ) 同年4月30日 388万5000円(被告会社口座宛)
(3)  原告らと被告会社名による下記ア記載の内容の投資一任勘定契約(総称して「本件投資一任契約①②③」という。)書が平成16年3月8日付でそれぞれ作成された。
ア①  原告X1名義のもの(甲9)
契約目的は,被告会社に現金及び有価証券合計1億5754万1900円の資産運用に冠し,投資判断のすべてを被告会社に一任するという内容
対価は,基本顧問料(年額204万8000円,消費税を含むと215万400円)と成功報酬の二本立てである。
② 原告X2名義のもの(甲10)
契約目的は,被告会社に有価証券2150万円の資産運用に冠し,投資判断のすべてを被告会社に一任するという内容
対価は,基本顧問料(年額50万円,消費税を含むと52万5000円)と成功報酬の二本立てである。
③ 原告X3名義のもの(甲11)
内容は,X2名義のものに同じ
イ  以上の基本顧問料は,平成16年3月11日に,原告ら名義により被告会社の預金口座に下記のとおり送金されて支払われた。(甲17の5~7)
① 原告X1名義による送金 215万400円
② 原告X2及びX3名義による送金 各々52万5000円
第3  争点
(原告らの主張)
1  詐欺取消し
(1) 本件助言契約①について
ア 欺罔行為(争点1)
被告らは,原告X1と知り合った日から本件助言契約①の締結に至るまでの間,ファックスや電話などにより,実際にはそのような事実は存しないにもかかわらず,スイスの銀行の悪質性を強調し,原告X1が両銀行に騙されており,本件が非合法的な危険な事案である旨,しかも原告X1も自分が知らないうちに犯罪を犯している旨述べ,両銀行に預けた本件資産を取り戻し,原告X1の身を守るためには,至急事態を調査する必要があり,当該調査にあたっては世界各国の面々と交渉をしなければならず,一刻も早く手を打たなければお金が取り戻せなくなってしまうなどと言い募って殊更に不安を増幅させ,原告X1を欺罔及び強迫した。
イ 誤信及び畏怖
右欺罔行為により,原告X1は,「自分がスイスの両銀行による詐欺にあい,本件は犯罪が絡んだ恐ろしい事態になっている。しかも自分も知らないうちに犯罪を犯してしまった。至急事態を調査しなければ,この年になって牢屋に投獄されることになってしまうかもしれないし,本件資産が取り戻せなくなってしまうが,本件資産は亡夫の遺産のほぼ全てであって今後の子供の養育費や自分の老後の生活費にと蓄えていたものであり戻ってこないとなると生活していけない。しかし,当該調査にあたっては世界各国の当局や金融機関の面々と交渉をしなければならないが,そのようなネットワークもなく,英語もあまり話せない自分にはとても無理であり,本件資産を取り戻すには被告らに頼むしかない。」などと誤信かつ畏怖し,平成16年3月1日,被告らと本件助言契約①の契約を締結するに至った。
(2) 本件助言契約①②について
ア 欺罔行為(争点1)
被告らは,上記のように,本件資産の一部の払い戻しは,即時解約可能な商品について,本人から銀行に対して解約と払戻しが指示されたことにより解約と払戻しがなされたという至極単純な話であるにもかかわらず,上記の資産は自分が関与したことで奇跡的に取り戻すことができ,もし自分が関与していなかったら取り戻せなかっただろう旨を強調し,また即時解約できない商品があることは金融商品の専門家であれば自明のことであるのにそれを言うことなしに,解約できない商品は存在しないため,両銀行は嘘をついており,このままでは資産が取り戻せなくなってしまうが,自分が何とかすればすぐに解約して取り戻せるかのように述べて,原告X1を欺罔した。
また,被告らは,本件助言契約①の締結後,本件助言契約①及び②の締結に至るまでの間も,ほぼ毎日,日によっては一日何度も,電話やファックスなどにより,実際にはそのような事実は存しないにもかかわらず,本件助言契約①の締結に際して述べられた虚偽又は強迫的な説明と同内容の説明を繰り返して原告X1を欺罔かつ強迫した。
イ 誤信及び畏怖
これにより,原告X1は,「何か大きな暴力団も関係する国際的な詐欺事件に巻き込まれ,自分も知らないうちに犯罪を犯してしまっている。本件を誰かに話せば,自分は刑務所に行くことになり,子供の将来にも傷がつくだけでなく,命まで狙われるかもしれないから,本件のことは絶対に誰にも話すことはできない。残りの本件資産を取り戻すためには,裁判は1億円もかかるし,世界各国の監督官庁や金融機関などとも交渉しなければならない。また,前回の約9400万円は,ほっといたら1円も回収できなかったものを,被告らに依頼したおかげで奇跡的に取り戻せたが,残りの資産について両銀行は,解約できないなどと嘘を言っており,残りもこのままでは全て騙し取られてしまう。残りのお金を取り戻すには,このまま被告らに頼むしかない。」などと,誤信かつ畏怖し,誰にも相談できないまま精神的に追い詰められ,平成16年4月22日,被告らと本件助言契約①及び②の契約を締結するに至った。
(3) 取消の意思表示(争点2)
原告X1は,平成16年12月10日に被告らに到達した意思表示により本件各投資顧問契約締結の意思表示を取り消した。
(4) よって,原告X1は被告らに対し,不当利得返還請求権に基づき,本件各投資顧問契約の報酬として支払った利得金874万2880円の支払いを求める。
(被告らの主張)
被告Y1は,原告らと本件助言契約①②を締結したことはない。また,詐欺強迫行為は否認する。
(原告(ら)の主張)
2 委任契約の前払い費用返還請求(予備的請求)(争点3)
(1)  本件各投資顧問契約の実態は,投資顧問ではなく,本件資産を取り戻すためのアドバイスや交渉等の単なる委任契約である。そして,本件各投資顧問契約の報酬として支払った金銭の実態は,報酬ではなく委任契約上の費用前払いである。
(2)  費用の前払い
原告X1は,平成16年3月上旬ころ,被告らから,同月31日から4月10日までのヨーロッパへの第1回出張(第1回出張)費用の前払いを請求され,平成16年3月4日に300万円,平成16年3月5日に99万円,及び平成16年3月22日に86万7880円の計485万7880円を前払いした。
また,原告X1は,同年4月ころ,被告らから本件資産を取り戻すためにはさらに調査が必要として,その出張費用の前払いを請求され,平成16年5月末から6月上旬に予定されていたヨーロッパへの第2回出張(第2回出張)調査費用として,平成16年4月30日に388万5000円を前払いした。
(3)  費用の客観的必要性(争点4)
しかし,民法第649条にいう前払い費用は,客観的に現実に必要な費用をいうが,上記でも述べたように,本件資産の払戻しは,そもそも銀行に対して解約して払い戻すよう本人が通知すればよいだけであって費用などかかるものではない。
また,被告らから伝えられた前払い費用は,通常では考えられない高額なものであり,医師,看護師や弁護士まで出張に同伴させて,その交通費及び宿泊費までほぼ原告X1に負担させたり,ボディガードをつけたりするなど,客観的に現実に必要とは到底いえない。
(4)  第2回出張の中止(争点5)
本件各投資顧問契約は,平成16年5月24日付けで解除され,第2回出張は結局行われていないため,支払った前払い費用は全額使用されていない。
よって,原告X1は被告らに対し,前払い費用返還請求権に基づき,第1回出張の前払い費用として支払った485万7880円及び第2回出張の前払い費用として支払った388万5000円の支払いを求める。
(被告らの主張)
原告の主張する被告会社に支払われた金額のものは,前払い費用であることを否認する。
(原告の主張)
3 本件投資一任契約
(1)  原告X1は,平成16年3月8日,被告らとの間で下記記載の投資一任契約を締結し,原告X2及び原告X3は,原告X1を代理人として,同日,被告らとの間でそれぞれ下記①ないし③記載の本件投資一任契約を締結し,報酬として,同月11日,原告X1が215万400円,原告X2が52万5000円,原告X3が52万5000円を支払った。

① 原告X1と被告らとの平成16年3月8日付投資一任契約①
② 原告X2と被告らとの平成16年3月8日付投資一任契約①
③ 原告X3と被告らとの平成16年3月8日付投資一任契約①
(2)  詐欺・強迫による取消(主位的請求)(争点6)
本件各投資一任契約の対象たる運用資産のうち,大部分の9433万2907円(払戻金)は,クラリデン銀行から原告X1に払い戻された金員であり,原告X1は,上記のとおり,この払戻金は全て騙し取られてしまうところだったのを被告らが奇跡的に取り戻してくれたものであり,また,原告X1がスイスの両銀行にお金を預けていた本件については命にかかわることであり誰にも話してはいけないなどと被告らから欺罔かつ強迫され,その旨誤信かつ畏怖していたので,払戻金について被告ら以外の誰にも相談できずに,払戻金の運用も被告らに頼むしかないと考え,被告らと本件各投資一任契約を締結したのである。もし被告らの説明が虚偽であることを知りかつ強迫されていなければ,決して被告らに資産の運用は委任しなかった。
よって,原告らは被告らに対し,訴状により本件各投資一任契約を詐欺及び強迫を理由として取り消すとともに,不当利得返還請求権に基づき,原告X1においては支払済み報酬215万400円,原告X2においては支払済み報酬52万5000円,原告X3においては支払済み報酬52万5000円の返還を求める。
(3)  解除(予備的請求)(争点7)
ア 上記各報酬は契約期間を1年間とする本件各投資一任契約に対する1年間分の報酬の全額であるが,本件各投資一任契約は締結後わずか2ヶ月16日後の平成16年5月24日付けで解除された。
イ 原告X1が被告らに支払った報酬については,契約締結期間に応じた日割りで計算されることが相当であり,上記報酬のうち,169万2118円(215万400円÷366日×(366日-78日))を返還請求する。
ウ また,原告X2及び原告X3の運用資産については,そもそも契約締結後解除に至るまで,一切運用がされておらず,何らの委任報酬の支払いの要をみない。よって,原告X2,原告X3は,被告らに対して,支払った各報酬を全額返還請求する。
エ よって,原告X1,原告X2及び原告X3は,被告らに対し,主位的に,詐欺及び強迫取消による不当利得返還請求権に基づき,それぞれ支払済み報酬215万400円,52万5000円及び52万5000円の返還を求めるとともに,予備的に,解除による返還請求権に基づき,それぞれ169万2118円,52万5000円及び52万5000円の返還を求める。
(被告らの主張)
被告Y1は,原告らと本件投資一任契約①②③を締結したことはない。また,詐欺強迫行為は否認する。本件投資一任契約が解除された場合であっても,既に支払い済みの投資顧問料は返還を要しないという約定がある。また,その約定は公序良俗に反しない。
(原告らの主張)
4 不法行為に基づく損害賠償請求(争点8)
(1)  被告らの上記詐欺・強迫行為により,原告X1が誤信かつ畏怖させられた結果,本件各投資顧問契約及び本件各投資一任契約が締結され,原告らが以下の損害を被ったので,右被告らの詐欺・強迫行為は,原告らに対する不法行為を構成する。
(2)  損害
被告らの詐欺・強迫行為により原告らが被った損害は以下のとおりである。
ア 支払済み報酬又は費用
原告X1につき,1089万3280円
原告X2につき,52万5000円
原告X3につき,52万5000円
イ 弁護士費用
原告らにつき,500万円
ウ 慰謝料
原告X1につき,500万円
原告X1は,上記被告らの詐欺・強迫行為によって,「何か大きな暴力団も関係する国際的な詐欺事件に巻き込まれ,命まで狙われている。そして,自分も知らないうちに犯罪を犯してしまっている。本件を誰かに話せば,この年になって投獄されることになり,子供の将来にも傷がついてしまう。」などと怯え,夜も眠れず,固形物がのどを通らず,2日で3キログラム痩せるほど,憔悴しきった。命を狙われているかもしれないと思うと家から出るのも怖くなり,カーテンを閉め切って電気もつけずに家の中に閉じこもっていたこともある。
本件の一連の被告らの言動が全て詐欺・強迫だったと分かった後も,子供達の教育費及び老後の生活費として貯めていた夫の遺産の一部を,騙されて失ってしまったことに対し,激しく自責の念にかられ,体の調子も悪くなり,一時は階段を一人で上ることすら出来なくなってしまった。また,誰を信じていいのか分からなくなり人間不信に陥ってしまい,未だに人を信じることができなくなってしまった。その精神的苦痛は500万円を下らない。
(3)  よって,原告X1,原告X2及び原告X3は,被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,連帯して500万円,及びそれぞれ1589万3280円,52万5000円,52万5000円の支払いを求める。
(被告らの主張)
被告らの不法行為は否認する。
第4  争点に対する判断
1  証拠(甲8,25~59,69~73,75~84,88,89,乙11~~38,51,52,70,73,79,80,84,85,87~89)によれば,次の事実が認められる。これに反する被告Y1の供述は採用できない。
(1)ア  原告X1は,平成16年2月当時,スイスのプライベート銀行であるUBP及びクラリデン銀行に,亡夫の生命保険金等を原資として,若干の当座預金の他に,資金を預け(預け入れ時の金額約3億円)以下のような金融商品にてその運用を図っていた。
① UBP(乙14)
ローヌ・インベスターズ・リミテッド・クラスB
投資家は,クラスB(無議決権株式)の株式を引き受け,会社の残余産の分配により投下資本の回収と利益の取得を図るものである。株式の償還は認められていなく,長期の保有を要する。(甲72の1,2)
② クラリデン銀行(乙14,79)
(ⅰ) ローヌ・オフショア・パートナーシップ・ファンドⅡ
投資家は,有限会社責任社員となって会社の残余財産から投下資本の回収を図るものである。有限責任社員の持分のための市場や流動性はなく,長期間の参加が求められる。(甲70)
(ⅱ) コアプラス・フィックスド・インカム・ファンド
銀行営業日であれば何時でも償還が可能である。(甲69)
(ⅲ) ロータスファンドⅡ
投資家は,投資拠出後12ヶ月経過後であれば何時でも投資分の償還を請求することができる。(甲71)
イ  右の金融商品(総称して「本件金融商品」という。)の詳細(内容や解約条件等)は,各銀行が作成している目論見書に記載があり,目論見書は投資家が請求すれば直ちに送付されるものであるし,概要程度であれば電話で問い合わせることが可能である。(甲84)
(2)ア  UBPは,スイスの新聞社の記事(甲53)によれば,資産運用・証券銀行中における,平成16年当時における貸借対照表の合計からすると第1位,純利益では第4位の銀行である。雑誌「ユーロマネー」の記事(甲55)によれば,ベスト・グローバル・プライベートバンクの順位中20位である。
イ  クラリデン銀行も,同年時における貸借対照表の合計からすると,または純利益からでも,資産運用・証券銀行の中では第9位の銀行である。(甲53,55)
ウ  UBPは東京に投資顧問業の登録のある日本法人を有しており,連絡を取ろうとすれば容易である(甲84,88,89,乙51)
(3)  d株式会社(d社)は,投資顧問業の登録があり,その代表取締役であるE(E)は,UBPにおける外部マネージャー(スイスの銀行では通常に見られる制度で,顧客の承認を得た上で,外部の法人又は個人に,その銀行に預託されている資産の運用を委託する制度)であり,Eは原告X1の外部マネージャーである。(甲59の1及び2,84)
(4)  原告X1は,平成16年2月16日,C国会議員の秘書であるF(F)から,原告X1がシティバンクに預けて運用していた米ドル投資信託など約1億円の外貨資産運用方法について相談できる人として,被告Y1を紹介された。Fは,被告Y1を元b證券の社員でオイルダラーを日本に持ち込むのに成功した人物で資産運用のプロであると紹介し,被告Y1は現在も2兆5千億円の資産の運用をしており,金融資産運用の専門家であると述べた。被告Y1は被告会社の代表取締役で,同社の株式の半分は同議員及びその親族によって保有されている旨を聞くに及び原告X1は被告Y1を信用し,シティバンクに預けている資産の他に,スイスの銀行にも資産を預けて運用しているが,10年間預けていたらどれくらい増えているものなのかと尋ねたところ,被告Y1からは,10年くらい預けていたら少なくとも2倍になっていなければおかしいと言われた。(甲81)
(5)  後刻,被告Y1に連絡を取った原告X1は,被告Y1から,スイスは犯罪絡みの不正なお金で成り立っている恐ろしい国で,以前,スイスの詐欺に引っかかり,50億円失った者が相談に来たが,数億の費用だけが掛かり,1円も取り戻せなかった者もいる。Gの件も詐欺ではないか。気の毒だが1円も戻ってこないかもしれない。UBPはUBSをまねたロゴであり,典型的な詐欺の表記だとか,原告X1が本件資産を両銀行に預けていることは非合法的な危険な事案であるとか,更には原告X1が知らないうちに犯罪を犯しており,牢屋に入ることになる。前科者の母親を持つと子供の将来に傷が付く。刑務所の冬は寒いなどと言われ,また,銀行に預けた本件資産を取り戻し,原告X1の身を守るためには,至急事態を調査する必要がある。当該調査にあたっては世界各国の面々と交渉をしなければならないが,被告Y1は元b證券で,一般庶民ではとても会うことができない政界・官僚上層部にも強いネットワークを持っている。一刻も早く手を打たなければお金が取り戻せなくなってしまうなどと言われた。(甲81)
(6)  右被告Y1の説明に驚愕し,かつ,資金の回収に不安を持った原告X1は,被告Y1に本件資産の調査を依頼した。(甲81)
(7)  同月29日には,被告Y1から,原告X1にファックスがあり,それによれば,UBP,クラリデン銀行などは,投資顧問業の資格のないもぐり業者だ。原告X1が,第三者に対しこれらの法人を紹介などして,その第三者が損失を被った場合,原告X1がその責任を問われる可能性がある。スイスの一流のプライベートバンクは,原告X1の預けてあるという程度の額は資金として預からないとか,無料で資金を集める行為自体,何らか他の目的が有ると考えるのが妥当であるとか,損失を取り戻すことは困難かもしれないがある程度でも取り戻すためには早急に実態把握をする必要がある。時効のことも絡んでくるため,一刻の猶予も無い,原告X1から委任状を預かり,実費の支払を受ければ,現地に赴き,調査・交渉をすると言われた。(甲27,28)
また,被告Y1は,原告X1に対し,スイスでは,当該銀行の他,国際決済銀行・プライベートバンクの監督官庁・親会社・当該銀行の関連会社(在モナコ)などと折衝する必要がある。経費については,3万ユーロ程度の費用は掛かるが,すべてを明白にし,原告が加害者になることから身を守る為には必要だ。また,原告X1の事案は非常に危険な感じがするとか日本の非合法の集団の手口と非常に似ている。明日,先方と連絡して,3億円程度の資金が回収できるのであれば直ちに手続をすべきだとも言われた。(甲28)
(8)  原告X1は,被告Y1の右助言に対し,恐慌を来して,同年3月1日には,d社を通じて,UBP及びクラリデン銀行に対し,本件金融商品の解約,現金化を申し出た。なお,その結果,前記(1)②(ⅰ)の商品については,同月5日に8611万8907円が,前記(1)②(ⅱ)の商品については,同年4月30日に821万4000円が原告X1の預金口座に各々返却された。なお,即時解約ができないものは,その旨がd社及び両銀行から通知された。(乙73,80,甲50の1及び2,乙14,17)
(9)  d社は,原告X1の解約手続きがなされた同年3月1日,原告X1の投資している金融商品の名称と解約や換金の可否を文書によって,原告X1に通知し,原告X1はこれを被告会社へファックスした。(乙14)
これによって,被告Y1は,原告X1の金融商品の詳細を知った。または容易に知りうる状態となったと認定できる。
なお,d社,UBP及びクラリデン銀行の原告X1に対する説明は,いずれも一貫しており,原告X1の各種の要求に誠実に対応していることは明白である。(甲18,50,乙14,17,30,84,85)
(10)  同年3月2日には,被告Y1から右調査のための契約書を郵送したとの連絡があり,数日後に送付された本件助言契約書①(契約目的は原告X1に対し,原告X1とクラリデン銀行及びその関連会社間の契約及び取引内容に関する情報を提供するというもの(本件助言契約①))が郵送されてきたので,原告X1は,これに署名押印して被告会社に送り返した。
(11)  原告X1は,前記(7)記載のとおり,現地での調査費用が3万ユーロかかると言われていたことと,また,約3億円の本件金融資産の全額が騙し取られてしまうところを取り戻せるのならと思い,原告X1は,同契約書記載の年間顧問料(調査料)の支払いとして同年3月4日に300万円,同月5日に99万円の計399万円を送金して支払った。
(12)  同年3月5日には,被告Y1は,原告X1に対し,右送金の礼と,既に調査に関しては監督官庁や銀行団体などと会う約束を取り付け現地の弁護士等とも連絡の上作業を開始しているとして,調査の実費として自分と付き添いの医師と日本の弁護士の合計3名分の航空券,謝礼,宿泊費,現地の弁護士へ支払う費用など合わせて650万円ほど掛かるが231万円は被告Y1が負担すると連絡してきた。(甲29)
(13)  被告Y1は,本件訴訟において,原告が求めているにもかかわらず,右極めて高額な費用の明細を示さず,領収書関係の資料も航空券1枚のコピーを除き提出をしない。また,同行の弁護士や現地で相談したとする弁護士や専門家の名前すらも明らかにしないし,明らかにしないことの理由付けも極めて曖昧または不合理なものである。
(14)  原告X1は,同年3月5日及び同年4月30日にクラリデン銀行から払い戻された合計9433万2907円は,被告Y1がいなければ取り戻せなかったと信じきっていたことと,被告Y1から自分がこれまで信頼して資産を預けてきたスイスの銀行に実は騙されていて,もう少しのところで全てのお金を騙し取られるところだったということを被告Y1から聞かされ,また,原告X1がスイスの銀行にお金を預けていたことが誰かに知られたら大変なことになるので他人に漏らしてはいけないと厳しく被告Y1から言われていたので,金融資産運用の専門家である被告Y1を信用して,被告Y1にシティバンクの資産も含めて運用を任せることとして(乙16,甲81),同年3月8日付の本件投資一任契約書にX1本人及び原告X2及び原告X3を代理して署名押印して作成し,被告会社に送った。また,その投資顧問料として,同月11日には,被告会社へ原告X1分として215万400円(消費税込み),原告X2及び原告X3の分として各々52万5000円を送金した。(甲9~11,17の5~7)
(15)  また,同年3月9日には,d社から原告X1に,①クラリデン銀行及びUBPに存する原告X1の資産について換金可能な資産は日本の原告X1の口座に送金の手続をしている。②クラリデン銀行で運用されている資産のうち解約可能な額は凡そ9900万円になり,同年3月5日に原告X1の口座に送金済だ。③原告X1は,クラリデン銀行とUBPと各々直接契約を締結してる。④クラリデン銀行との契約は原告X1に既に渡してある。⑤UBPとの契約は原告X1の署名入りの指示により取り寄せができる。⑥プライベート・エクイティの資料及び買付からの現在までの取引内容を明示する資料の取り寄せには少し時間がかかるという説明がファックスでなされたので,原告X1はこれを被告Y1にファックスで連絡した。
(16)  右dからのファックスを読んだとして被告Y1は,原告X1に対し,同年3月10日,ファックスにて,d社の現在の気持ちを推測すると,ばれてしまった。Gという客が何を始めるか分からない。しかし,d社は何ら契約を結んでいないので安全だろう。最後は,クラリデン銀行という銀行の責任にして,うやむやにしてしまえば良いだろうというものだとして,d社の回答に対し,確たる根拠もない判断を原告X1に伝えている。そして,更に,原告X1に対し,被告Y1は預金を含めて,クラリデン銀行へ投資はすべて回収しろと指示している。また,原告X1のスイスの銀行に対する投資は,けちな子悪党どもの詐欺まがいの行為から,かなり大きな暴力団も巻き込んだ国際的な犯罪に発展する可能性がある事件であると根拠もなく断定している。また,現地からの助言だとして武装ガードマンを雇えと言われ,また,闇の世界につながってるUBP対策として必要だとして二人のガードマンを被告Y1の調査期間中雇用する経費は約140万円かかるが,そのうち約88万円を原告X1が負担してくれと要求し,原告X1は,その費用として同年3月22日に消費税を含め86万7880円を被告Y1の指定した同人の預金口座に送金して支払った。(甲31,17の3)
また,同年3月10日,助言契約にかかわる報告書と題する書面(甲32)にて,被告Y1は,d社が登録された時に関与した男は,評判はよくない。d社は認可会社でなく業務実態が開示されていないが,スイスの複数の銀行のダミーとして活動しているようだ。UBPは,自社が金銭の受け手になれないので他の会社を使った。同社は,e会のH容疑者の(闇金の帝王)の裏金を隠し口座に預かっていた。そのようにマネーロンダリングを行ったためスイス当局から資産の移動禁止命令が出ている可能性があって,これが原告X1の資産を返済できない理由の一部であると考えられるなどと述べた。そして,更に,非常にキナくさくなっているとか,原告X1の安全を守るために,いかなる者にもこの報告書を見せるななどと原告X1に警告をしている。
(17)  同年3月13日には,被告Y1は,ファックス(甲35)にて,原告X1に対し,d社の説明には,おかしなところがあるという指摘をし,被告会社と原告X1間の助言契約は,d社らの胡散臭さそうに思える点を明確にするものであり,本件助言契約を締結した後に被告Y1が面会した人は既に15人を超え,欧州の弁護士事務所の東京法人とも8時間以上相談をしている。また,スイスなどで面会する人とのアポイントも3カ国17人既に決めているなどと述べている。
(18)  同年3月16日には,被告Y1は,ファックス(甲36)にて,原告X1に対し,X1が割引債を国外へ持ち出したことや,明らかに外為法の網をくぐる送金を繰り返したことに対して,司直・国税局は大きな興味を持つであろうと述べている。
(19)  同年3月21日には,被告Y1は,ファックス(甲37)にて,原告X1に対し,スイス,ドイツ現地の弁護士と合流して打ち合わせをする。また,スイスでも,スイスの弁護士,会計士と合流する。調査には,日本,ドイツ,スイスの法律専門家と公認会計士の知識が必要だと思われる。さらに,金融関連の税制優遇国であるモナコやリヒテルシュタインにも行くつもりだ。とぼけた理由をつけてUBPやクラリデン銀行とコンタクトを取って会う約束を取るようにしているが,現地に赴いたらさらにびっくりするようなことが分かるような予感がするなどと述べている。また,解約ができない金融商品がある旨のd社の説明はおかしい。投資信託は解約手数料を支払えばいつでも解約できるのが普通である。被告Y1の知る限り絶対に解約できない投信は存在しない。据置期間を定めたものもあるが,据置期間は長くて1年程度と承知しているなどと述べて,今回,偶然このような事実が次々と判明したが,原告X1がこの10年間に死亡等していた場合,この口座資金は無くなっていた可能性があるなどとも述べている。
(20)  同年4月10日ころ,被告Y1から原告X1に対し,被告Y1が,現地でスイスの銀行当局者らと面談したとする内容の報告書が送付されたが,その内容によれば,それらの面談には,本邦弁護士,ドイツ,スイスの弁護士,会計士などが同席をし,専門的分野に関してアドバイスを得たもので,原告X1の件は,スイス特有の金融システムを悪用した一部グループが善良な日本人を利用した,特殊,かつ悪質な事案にすぎないと考える意見を述べているが,その報告の具体的内容は各国の弁護士や専門家を臨席させるような意味のある内容のものではなく,また,現地まで出張を要するような調査内容でもない。また,被告Y1は,それら専門家の氏名すら明らかにしない。
(21)  右のころであるが,Y1は,書面(甲43)で原告X1に対し,やはりこの1件は,Eが黒幕になりスイスやその他の国の金融機関,日本のダーティーマネーも絡んだ事件と考えた方が良い。原告X1は騙された被害者であるが同時に,日本の国内法に限りなく抵触していた動機のもとに行動したという反省を持つことが肝要だ。クラリデン銀行の店舗は雑居ビルの一隅であったり,アラブ銀行やブテイックのあるビルの4階に事務所があり,看板もなく外から存在すら分からない。UBPは自社ビルを持っているが,とても遠い日本で営業活動するような銀行ではない。被告Y1がいちばん関心を持っているのは,原告X1が10年以上に渡ってその運用成績を知らされないことや運用委託にもかかわらず手数料が支払われていないのはおかしいなどと述べている。
(22)  同年4月11日には,被告Y1は,ファックス(甲40)にて,原告X1に対し,スイスというよからぬことを企む連中には極めて都合の良い銀行制度を利用した一連の行為に貴殿が乗せられ利用された。今後はUBPやクラリデン銀行に預けた資金を可能な限り回収すべく,最終的には各方面の力を使ってでも回収する努力をするが,法的手段などは莫大な経費・時間がかかるので,とりあえず穏便な方から手をつける方が良いなどと述べている。
(23)  同年4月14日には,被告Y1は,ファックス(甲42)にて,今回は,ある程度の金を取り戻せたわけだが,今後もできるだけ経費がかからない方法で取り戻していくのがベターだと思う。今回の回収でもすでにいろいろな人の手を煩わし,余分な負担をかけている以上,他人にあまり話をするな。また,Y1の費用負担もすでに限界であるなどと述べている。
(24)  同年4月18日には,被告Y1は,ファックス(甲44)にて,今まで類似の詐欺まがいの行為を解決してきた同人としては,原告X1の件はあまりに不可解なことが多く,非常な危険な感じがするなどと述べている。
(25)  同年4月20日ころには,被告Y1は,文書(甲45)にて,解決方法を提案するとして,クラリデン銀行の分の現金化とUBPの分の保全の約束をUBPから取り付け,Eやd社の行政処分を監督官庁に,秘密裏に要請する手段をとる道を選ぶべきだとしている。また,今回の出張でもUBPの社屋を出てからずっと尾行がついていたことやジュネーブからチューリヒまで1日かけて車で往復した際も,後をつけてる車の存在があった。また,ホテルのロビーに目の厳しい男が座っていたなどと述べている。
(26)  同年4月21日には,被告Y1は,ファックス(甲46)にて,UBP(E)に全く誠意は感じられない。原告X1がサインをした契約は未だ生きているから,もし,Eが勝手にUBPの名前を騙って運用しているならばとんでもないことをして「運用によって損をした結果,資金はほとんどなくなった。」という結果に最悪のケースなることも考えられるとか,前回の出張費用をすべて会社の負担とすると,大幅な赤字になり監督官庁・国税の検査を通ることができないので,不足分はすべて被告Y1が負担をした。今後は,交通費,宿泊費,弁護士,通訳などの諸費用はすべて実費として負担してほしい。さらに,今後UBPとの交渉が必要になった場合の費用(ドイツ法人顧問弁護士の謝礼などを含む)を見積もると約386万円となると述べている。
(27)  同年4月25日には,被告Y1は,ファックス(甲48)にて,UBP及びクラリデン銀行に預けた約3億円のうち0.9億円を回収できた。この回収にかかった実費は約820万円(原告X1負担部分は約480万円)。残りの資産を回収するためには,新たに費用として400万円が必要だが,今回も被告Y1はかなりの金額の負担をしなければならないと考えている。今後は,残りの金融資産をどれだけを取り戻せるかを重点に置くべきだ。最悪,更に経費が必要になり,かつ,回収の見込みが困難な場合となった場合でも,それは原告X1が脱税に近い節税を考えたことを悪党たちに利用されたことによる高い授業料と考えるべきだ。被告Y1は,ビジネスでやっているのだから,被告Y1が負担した金額は,今後の運用の顧問料で支払ってもらうと共に,今回原告X1が支払う投資顧問料のほかに,将来更に回収額が増えたときは相応の経費を負担して欲しい。同年5月15日までに支払われる予定の費用で,当社顧問弁護士などのほかに,現地の弁護士,会計士を雇い作戦を練っているなどと述べている。
(28)  原告X1は,右被告Y1からの費用負担の要請に対し,同年4月21日,ファックス(乙31)により,今回の回収ができたのは被告Y1のおかげであり,Y1を100%完全に信頼している。被告Y1の通告によって動くはずの監督官庁にも協力する。今回の調査で被告Y1や被告会社に多大な負担を掛けていることに対し深く謝意を述べると共に,今後の経費は原告X1が負担すると申し述べている。
(29)  被告Y1は,同年5月下旬から6月上旬に更なる調査のために欧州に行く必要がありその費用として386万が必要だと原告X1に支払いを求めたので,前項のとおり,費用負担を了解していた原告X1は,争いのない事実等で認定のとおり,同年4月22日付助言契約②に署名押印したうえ,同月30日,被告会社に388万5000円を送金して支払った。
(30)  UBPの東京オフィスの代表取締役I(I)は,原告X1から,同年4月上旬から,度々,「口座開設以来の全ての明細を送付せよ」とか,「貴行は契約条項を盾に返金に応じないが,換金が常に可能なのではないか」などといった内容の文書や内容証明郵便が届いていたので,これに回答していたが,これらから原告X1の様子がおかしいと感じ,同年5月20日,原告X1に電話をし,経緯を聞いたところ,被告Y1の原告X1に対する対応や説明ぶりが分かり,かつ,それらが明らかにおかしいものだと考えられたので,Iは翌日に原告X1との相談に応ずることと弁護士に相談することを助言して,本件が明るみに出た。(甲84)
2  争点8の判断
(1)  被告会社は,投資顧問業を営んでおり,投資顧問業とは言うまでもなく,株式,債券などの有価証券に対する投資判断(有価証券の種類,銘柄,数,価格,売買時期等の判断)について,報酬を得て専門的立場から,投資家に助言を行う業務であり,また,被告Y1の争いのない事実記載の経歴からして,スイスのプライベート銀行の詳細やその商品内容などは熟知していたものと推定される。そして,そのような知識と経験を有する者が,以上で認定の原告X1のように知識のない者にすれば恐ろしいイメージを抱かせるスイスのプライベート銀行に対する悪しき評価や依頼者に対する投資顧問業者としては常識外れというべき教示(意味のない高額な費用を要する調査が必要だとする)をするなどはあり得ないというべきである。被告Y1は,原告X1に対してなされた前記1で認定の被告Y1が同人や被告会社名義の報告書やファックスを他人の目に触れぬように破棄することを命じ,また,原告X1に対し他者へ相談することを妨げる方向で原告X1の行動を誘導していることが顕著に伺えるが,そのことは自らの原告X1に対する報告や助言が常識外れであることを十分に承知の上でのものと強く推定される。また,被告らが原告X1に請求した費用については,費用として現実に使用されたものか,また,何の費用として使用されたのかが明らかとなる証拠資料の提出も満足にない。
これらのことを総合すると,前記1で認定の被告Y1の行動は,原告X1をして,以下ア及びイ記載の錯誤に陥らせるような欺罔行為であり,それにより原告X1から調査費用の名目で874万2880円を騙取し,同被告の欺罔行為により原告X1が同被告に対し誤った信頼感を抱いていることに乗じて,原告X1並びに原告X1が代理した原告X3及び原告X2との間で本件投資一任契約①②③を締結させて,投資顧問料の名目で,原告X1からは215万400円,原告X2及び原告X3からは,それぞれ52万5000円を騙取したものであること,及び前記1で認定の被告Y1の行動は,被告会社の代表取締役の職務としてなされたものであることの各々を認定することができる。
ア 原告X1に,スイスのプライベート銀行は危険な組織で原告X1の投資などは回収できない恐れが高い。その危険な銀行から資金を回収するには,被告らの調査や行動が欠かせなく,その調査には被告らの請求する費用を負担する必要がある。
イ UBP及びクラリデン銀行から引き上げた資金を原告らが他に投資する場合には,原告X1は,日本の法律に違反していて,それを他に知られないようにするためには,投資顧問先は被告会社以外にはあり得ない。
(2)  前記1で認定の被告Y1の一連の行為によって,原告X1がUBPやクラリデン銀行に対する投資を回収できなくなる恐怖感を抱き,また,身の危険を感じたことは容易に推定できるから,それらを慰謝するには50万円が相当であると判断する。
また,原告X1,原告X3及び原告X2の請求認容額に相応する弁護士費用は,原告X1については114万円,原告X2及び原告X3についてはそれぞれ5万円を相当とする。
3  結論
よって,原告らの請求は,主文の限度で理由があるので認容する。
(裁判官 藤本博史)

 

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