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「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(11)平成30年 5月23日 東京地裁 平28(ワ)34928号 損害賠償等請求事件、承継参加事件

「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(11)平成30年 5月23日 東京地裁 平28(ワ)34928号 損害賠償等請求事件、承継参加事件

裁判年月日  平成30年 5月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)34928号・平29(ワ)40417号
事件名  損害賠償等請求事件、承継参加事件
文献番号  2018WLJPCA05238007

裁判年月日  平成30年 5月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)34928号・平29(ワ)40417号
事件名  損害賠償等請求事件、承継参加事件
文献番号  2018WLJPCA05238007

平成28年(ワ)第34928号 損害賠償等請求事件
平成29年(ワ)第40417号 承継参加事件

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して,1645万5500円及び被告Y1については別表1の「弁済充当後の金額」欄記載の各金額に対する「支払日」欄記載の各日から,被告会社については1645万5500円に対する平成28年10月25日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告Y1は,原告に対し,2902万8779円並びに別表5の「支出金額」・「合計」欄及び別表6の「横領金額」欄記載の各金額に対する「支出日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告らは,原告に対し,連帯して,1370万2000円及び被告Y1については別表2の「支払金額」欄記載の各金額に対する「支払日」欄記載の各日から,被告会社については1370万2000円に対する平成28年10月25日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  被告Y1は,原告に対し,184万円並びに別表3及び別表4の「支払金額」欄記載の各金額に対する「支払日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5  被告Y1は,原告に対し,398万9131円及び別表7の「支出金額」・「合計」欄記載の各金額に対する「支出日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6  訴訟費用は,被告らの負担とする。
7  この判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
本件は,原告が,原告及びその子会社である脱退原告の経理・出納業務を担当していた被告Y1が,架空取引,架空経費を計上するなどして,原告名義の預金口座(別表1,5,6)又は脱退原告名義の預金口座(別表2,3,4,7)から,被告会社名義の預金口座への送金(別表1,2)又は現金引き出し等(別表3ないし7)を行い,これを横領したと主張して,①被告Y1に対しては,不法行為に基づく損害賠償金合計6501万5410円及び損害賠償金に対する各不法行為の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,②被告会社に対しては,不当利得返還請求権に基づき,上記送金による利得金合計3015万7500円及び利得金に対する訴状送達の日の翌日である平成28年10月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(ただし,被告Y1との連帯支払)を求める事案である。
原告は,脱退原告が被告らに対して有していた上記各請求権を譲り受けたとして,承継参加を申し立て,脱退原告が本件訴訟から脱退した。
1  前提事実(当事者間に争いがない事実のほかは,後掲の証拠により容易に認められる。)
(1)  当事者等
ア 原告は,広告代理業,投資助言及び投資顧問業務等を目的として,平成17年9月1日に設立された株式会社であり,その設立時の取締役は,代表取締役であるA(以下「A」という。),被告Y1及びBの3名であった。
原告は,平成20年5月30日,東京都中央区△△a丁目のビルから,同b丁目のビルに本店を移転した。
イ 脱退原告は,投資顧問業,金融情報の提供,金融情報に関するコンサルティング及びセミナー業務等を目的として,平成17年5月17日に設立された株式会社である。
脱退原告は,原告が,平成22年12月27日,脱退原告の過半数の株式を取得したことにより,原告の子会社となった。当時の脱退原告の代表取締役は,C(以下「C」という。)であった。
ウ 被告Y1は,原告の取締役として,平成26年12月末まで,原告の経理・出納業務を担当し,脱退原告が原告の子会社となった後は,脱退原告の経理・出納業務も担当していた。
被告Y1は,平成27年6月24日,原告の取締役を解任された。また,被告Y1は,原告の株主であったが,同年7月10日,原告が被告Y1の保有する原告の全部取得条項付普通株式140株を全て取得したことにより,原告の株主としての地位を失った。
エ 被告会社は,被告Y1が,自身を唯一の株主として,平成23年5月16日に設立した株式会社である。なお,設立時から平成24年7月20日までの代表取締役は,Dであり,その後の平成27年5月22日,被告Y1が代表取締役となった(甲3の1ないし3)。
(2)  被告Y1による原告及び脱退原告の各預金口座からの送金等
被告Y1は,次のとおり,原告名義の預金口座(以下「原告口座」という。)又は脱退原告名義の預金口座(以下「脱退原告口座」という。)から,被告会社名義の預金口座(以下「被告会社口座」という。)に対する送金(別表1,2)又は現金引き出し等(別表3ないし7)を行った(ただし,別表6記載のものを除き,これらの送金等が横領に当たるか否かについては,後記のとおり争いがある。)。
ア 原告口座からの送金又は引き出し
(ア) 別表1記載の送金
被告Y1は,原告口座から被告会社口座に対し,平成23年6月30日から平成26年10月31日までの間,別表1の「支払日」欄記載の日に,「支払金額」欄記載の各金額(合計2645万5500円)を送金した。
(イ) 別表5記載の引き出し等
被告Y1は,原告口座から,平成19年9月28日から平成27年8月26日までの間,別表5の「支出日」欄記載の日に,「支出金額」・「合計」欄記載の各金額(合計2386万3779円)を引き出し又は送金した。
(ウ) 別表6記載の送金による横領
被告Y1は,原告の平成23年8月開催の取締役会において,同年10月以降,同社の役員報酬を一律月額20万円減額する旨の決定がされたにもかかわらず,自己の役員報酬を減額することなく,原告の会計帳簿上は別表6の「総勘定元帳における横領手口」欄記載の各方法によって処理した上で,従前の報酬額70万円を受領し続け,平成23年10月20日から平成25年11月20日までの間,別表6の「支出日」欄記載の日に,「横領金額」欄記載の各金額(合計520万円)を横領した。
イ 脱退原告口座からの送金又は引き出し
(ア) 別表2記載の送金
被告Y1は,脱退原告口座から被告会社口座に対し,平成25年2月28日から平成26年10月16日までの間,別表2の「支払日」欄記載の日に,「支払金額」欄記載の各金額(合計1370万2000円)を送金した。
(イ) 別表3記載の引き出し
被告Y1は,脱退原告口座から,平成26年10月20日から同年12月18日までの間,別表3の「支払日」欄記載の日に,「支払金額」欄記載の各金額(合計153万円)を引き出した。
(ウ) 別表4記載の引き出し
被告Y1は,脱退原告口座から,平成25年4月26日,別表4のとおり,31万円を引き出した。
(エ) 別表7記載の引き出し
被告Y1は,脱退原告口座から,平成24年12月28日から平成25年12月30日までの間,別表7の「支出日」欄記載の日に,「支出金額」・「合計」欄記載の各金額(合計398万9131円)を引き出した。
(3)  脱退原告から原告に対する債権譲渡
脱退原告は,本件訴訟において,被告Y1に対し,別表2ないし4及び7記載の送金又は引き出しに係る不法行為に基づく損害賠償請求権,被告会社に対し,別表2記載の送金に係る不当利得返還請求権,並びに,これらに係る各遅延損害金請求権を有するとして,その支払を求めていたが,平成29年7月31日,原告に対し,上記各請求権を譲渡し,同年9月6日,その旨被告らに通知した。(甲172の1ないし173の2)
(4)  被告Y1による弁済とその充当
被告Y1は,平成26年7月30日,原告に対し,1000万円を弁済し,原告は,別表1記載の送金に係る損害賠償請求権の元金について,「弁済充当後の金額」欄記載のとおり,これを充当した。
2  争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  原告口座からの送金又は引き出しによる横領の有無等
ア 別表1記載の送金による横領の有無,被告会社の不当利得の有無
(原告の主張)
原告は,被告会社から別表1の「取引名目」欄記載名目で請求を受け,被告会社口座に同表の「支払金額」欄記載の各送金を行い,その支払をさせられているが,原告が被告会社に何らかの業務を委託した事実も,被告会社から何らかの業務の提供を受けた事実も存在しない。これらの送金は,被告Y1が被告会社名義の請求書を作成し,架空取引であることを認識した上で行っていたものである。
被告Y1は,Aに対し,被告会社の存在を隠しており,Aは,その存在を知らなかったのであるから,Aが被告らの主張するような指示を出したり,支払を了承したりするはずがない。
(被告らの主張)
別表1記載の支払日が平成23年7月29日から平成25年4月30日までの送金のうち合計781万円は,被告Y1が,Aの指示により,被告会社を通じて,原告の従業員である被告Y1,B,E及びFの給与を支払うために送金したものである。
上記送金当時,原告の業績が悪化し,従業員の昇給を行うことが難しくなっており,また,原告の負担すべき社会保険料が重荷になっていたため,Aの発案で,被告Y1を含む各役員に与えられた裁量の下,上記各従業員を被告会社にも形式的に在籍していることとし,被告会社からも給与の支払を行うことで,原告の従業員の手取り給与を増やしながら,原告が負担することになる上記各従業員の社会保険料を抑制することとしたのである。
イ 別表5記載の引き出し等による横領の有無
(原告の主張)
被告Y1は,経費精算書,交通費精算書及び仮払金申請書兼精算書等を利用し,また,原告の会計帳簿上は,別表5「総勘定元帳における横領手口」欄記載の各方法で処理した上で,原告口座から同表の「支払金額」・「合計」欄記載の各金員の引き出し等を行った。これらは,被告Y1が,他者の名義を冒用するなどしたものであるほか,「横領と評価した根拠」欄記載の各理由により,いずれも支払根拠が存在せず,被告Y1が横領したものである。
被告Y1は,Gに対する支払については根拠があると主張するが,Aはこれを了承していない。被告Y1が根拠として提出する見積書は,請求書とその内容が一致していない上,同見積書に記載された「ネット回線設定費」に関する工事は,原告が他の業者に工事を依頼しており,他に,これらの支出に関する資料は存在していない。税金対策との被告らの主張は,言い逃れにすぎない。
(被告Y1の主張)
別表5のNo.61,62及び62-2のGへの支払は,Aの了承の下,原告の本店移転(前提事実(1)ア)に関する内装工事等の費用(乙3。ただし,ネット回線設定工事を除く。)として支出したものである。なお,Gの原告に対する請求書(甲139の1ないし3)に上記費用と異なる記載があるのは,税金対策として,原告の固定資産として計上されることを避けるためである。
(2)  脱退原告口座からの送金又は引き出しによる横領の有無等
ア 別表2記載の送金による横領の有無,被告会社の不当利得の有無
(原告の主張)
脱退原告は,被告会社から別表2の「取引名目」記載の名目で請求を受け,その支払をさせられているが,原告が被告会社に何らかの業務を委託した事実も,被告会社から何らかの業務の提供を受けた事実も存在しない。
被告らは,被告会社と脱退原告との間に,「○○」の委託販売,為替取引の自動売買システムの構築等で,現実の取引関係が存在したと主張するが,被告Y1は,脱退原告の代表者であるCに対しても被告会社の存在等を隠しており,Cも,当時,被告会社の存在を知らなかったのであるから,被告会社との取引について了承するはずがない。そもそも,被告Y1は,脱退原告の役員でも従業員でもなく,経理処理を行う以外に脱退原告の業務を行うことは認められていないのであるから,被告Y1がCら脱退原告の役員の知らないところで被告会社との取引を行うこともあり得ない。
(被告らの主張)
被告会社は,平成24年11月1日,c株式会社との間で,同社が提供するサービスである「○○」についてシステム販売委託契約を締結した上で(乙6,7),同年12月1日,脱退原告との間で,システム販売委託契約を締結した(乙8)。これは,当時脱退原告が名義貸しをしたことを理由に業務停止処分を受けていたため,直接の契約当事者を脱退原告とすることによるイメージダウンを回避し,脱退原告が,実質,販売代理店として営業を担えるようにしたものである。
以後,被告会社と脱退原告との間には,「○○」の委託販売や,為替取引の自動売買システムの構築等で,現実の取引関係が存在しており,被告Y1は,原告の子会社である脱退原告の経理・出納業務にも従事していたことから,当時の脱退原告の役員らの了承の下,上記取引関係に必要であった費用につき,被告会社への送金を行ったのである。
イ 別表3,4及び7記載の引き出しによる横領の有無
(原告の主張)
別表3及び4記載の引き出しについては,これらに合致するような脱退原告に対する請求書等は存在せず,被告Y1がこれを横領したことは明らかである。また,別表7記載の引き出しについては,被告Y1は,経費精算書,交通費精算書及び仮払金申請書兼精算書等を利用し,脱退原告の会計帳簿上は同表「総勘定元帳における横領手口」欄記載の各方法で処理した上で,脱退原告口座からその引き出しを行った。これらは,被告Y1が,上記精算書の申請名義を冒用して行ったものであるなど,同表「横領と評価した根拠」欄記載の各理由により,いずれも支払根拠が存在しない。
(被告Y1の主張)
上記ア(被告らの主張)のとおり,脱退原告と被告会社との間には取引関係が存在しており,被告Y1は,当時の脱退原告の役員らの了承の下,上記取引関係の業務に関する現金引き出しを行っていた。
第3  争点に対する判断
1  後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)  被告Y1は,原告の取締役として,原告及びその子会社である脱退原告の経理・出納業務を単独で担当しており,原告口座及び脱退原告口座からの送金,引き出し等を自在に行うことのできる立場にあった。(甲6,8,乙11)
(2)  被告Y1は,平成23年5月16日,自身を唯一の株主として被告会社を設立したが,そのことを,原告の代表取締役であるA及び脱退原告の代表取締役であるCに告げなかった。(乙11)
(3)  被告Y1は,被告会社を設立して間もない平成23年6月30日から平成26年10月まで毎月1回以上,原告から被告会社に対し,「HPデザイン費」,「営業協力費」,「業務委託費」,「広告費」等の名目で,数十万円ないし100万円強の送金を行った。
また,被告Y1は,平成25年2月から同年10月まで毎月1回以上,脱退原告から被告会社に対し,「制作費」又は「広告費」名目で,数十万円ないし100万円強の送金を行い,その後,平成26年8月,「顧客管理システム」名目で400万円の送金を行い,さらに,同年9月及び10月,「制作費」又は「広告費」名目で各月数十万円の送金を行った。また,被告Y1は,その頃,脱退原告口座から,「広告費」,「出張旅費」の名目などで現金を引き出した。
(4)  Aは,平成26年12月頃,原告及び脱退原告の顧問税理士を務めているH税理士に経理関係の調査を依頼したところ,原告及び脱退原告から被告会社に対し,多額の金銭が移動していることが判明した。
A及びCは,被告会社の存在を認識していなかったため,同月25日,東京都内の喫茶店において,原告及び脱退原告の経営会議を開催し,被告Y1に対し,上記の資金移動を指摘して,「Y2社」という会社を知っているかを尋ねたところ,被告Y1は,「知らない。」と答え,また,「顧客管理システム」とは何かを聞かれても,「これちがう。これはあれだよ。」,「たぶんお金をぐるっと最後回しているやつ。」,「請求書が来てるから。」などと曖昧な説明をした。(甲6,8,167の1・2)
2  争点(1)(原告口座からの送金又は引き出しによる横領の有無等)について
(1)  別表1記載の被告会社口座への送金について
ア 上記1の認定事実によれば,被告Y1は,被告会社の存在をAに知らせることなく,原告口座から被告会社口座への送金を行っていたことが認められる。そして,被告らは,別表1記載の原告口座から被告会社口座への送金について,原告と被告会社との間に,その支払名目どおりの取引実態があるとの主張をしておらず,次項の781万円以外については,被告Y1がこれを横領したことにつき争うことを明らかにしていない。
そうすると,少なくとも次項の781万円以外の送金については,被告Y1が,原告と被告会社との間に何らの取引実態がないにもかかわらず,架空の名目で,Aの了承を得ることもなく,自己が唯一の株主である被告会社に上記送金を行い,これを横領したものと認められる。
イ 被告らは,別表1記載の平成23年7月29日から平成25年4月30日までの送金のうち合計781万円は,Aの了承の下で被告会社を通じて原告の従業員らに対する給与を支払うためのものであった旨主張し,被告Y1本人の陳述書(乙11)にも,それに沿う記載がある。
しかしながら,上記1の認定事実によれば,被告Y1は,被告会社の存在をAに知らせていなかったばかりか,平成26年12月にAから被告会社への資金移動について尋ねられた際,その資金移動について曖昧な説明しか行わず,一部が原告の従業員らに対する給与を支払うためのものであった旨の説明もしなかったことが認められることからすると,Aの了承の下で原告の従業員らに対する給与を支払うためのものであったとの被告Y1本人の陳述書の記載は,これを信用することができないというべきである。
ウ したがって,被告Y1は,別表1記載の送金額全てにつき,これを横領したものと認められ,また,被告会社は,法律上の原因なく,上記送金額の利益を受けたものと認められる。
(2)  別表5記載の引き出し等について
ア 原告は,被告Y1が「交際費」,「タクシー代」,「備品類」等の名目で引き出した別表5記載の各金員について,同表「横領と評価した根拠」記載の理由によりいずれも支払根拠が存在せず,被告Y1により横領されたものであると主張しているところ,被告Y1は,これらの金員のうち,No.61,62及び62-2のGに対する各支払を除いては,その引き出し等に法的根拠がある旨の主張をしておらず,被告Y1がこれを横領したことにつき争うことを明らかにしていない。
そうすると,少なくとも,No.61,62及び62-2のGに対する各支払以外については,被告Y1がこれを横領したものと認められる。
イ 被告Y1は,No.61,62及び62-2のGに対する各支払については,Aの了承の下,原告の本店移転に関する内装工事等の費用として支出したものであると主張し,これを裏付ける証拠として,Gから原告に対する上記工事の見積書(乙3)を提出し,被告Y1本人の陳述書(乙11)にも,これに沿う記載がある。
しかしながら,Gに対する上記各支払は,それぞれ品名を「名刺・封筒一式」,「ホームページ修正・制作」,「キックオフイベント・デザイン費」とする同人作成の各請求書に基づいて行われていること(甲139の1ないし3)からすると,これらの名目と異なり内装工事等の費用として支出したとの被告Y1の陳述書の記載は,信用性に乏しいというべきである。この点につき,被告Y1は,上記各請求書の名目が異なるのは固定資産に計上されることを避けるための税金対策であると主張するが,同見積書記載の工事費用のうち「設備一式223万9768円」については,同一の名目で請求書が提出され(甲139の4),その支出を裏付ける資料も存在する(なお,原告は,この金額については被告Y1が横領したとは主張していない。)のに対し,同見積書記載のその余の工事費用についてはこれを裏付ける資料がないことからすると,その余の工事が行われたにもかかわらず税金対策として「名刺・封筒一式」等の名目が使用された被告Y1の陳述は,不自然であり,信用することができない。
ウ したがって,被告Y1は,別表5記載の引き出し等に係る金額全てにつき,これを横領したものと認められる。
3  争点(2)(脱退原告口座からの送金又は引き出しによる横領の有無等)について
(1)  別表2記載の被告会社口座への送金について
ア 前記1の認定事実によれば,被告Y1は,被告会社の存在をCに知らせることなく,脱退原告口座から被告会社口座への送金を行っていたこと,平成26年12月にA及びCから被告会社への資金移動について尋ねられた際,その資金移動について曖昧な説明しかできず,脱退原告から被告会社へ「顧客管理システム」名目で送金された400万円についても説明することができなかったことが認められる。そして,被告らは,別表2記載の脱退原告口座から被告会社口座への送金について,脱退原告と被告会社との間にその支払名目どおりの取引実態があるとの主張はしていない。
イ 上記送金に関し,被告らは,被告会社と脱退原告との間には,「○○」の委託販売や,為替取引の自動売買システムの構築等で,現実の取引関係が存在しており,被告Y1は,当時の脱退原告の役員らの了承の下,上記取引関係に必要であった費用につき,被告会社への送金を行った旨主張し,これを裏付ける証拠として,被告会社とc株式会社間の平成24年11月1日付けシステム販売委託契約書等(乙6,7)及び被告会社と脱退原告間の同年12月1日付けシステム販売委託契約書(乙8)を提出し,被告Y1本人の陳述書(乙11)にも,これに沿う記載がある。
しかしながら,そもそも被告らの主張によっても,被告らの主張する現実の取引関係と別表2記載の被告会社への各送金との関係が明らかではなく,被告らが上記取引関係に必要であったと主張する費用の内容についても,具体的な主張立証がない。また,被告らの提出する上記契約書等をみても,その作成日当時,被告会社の代表取締役はIであった(甲3の2)にもかかわらず,Dの氏名が記載されていること,被告会社とc株式会社間の契約書等によれば,被告会社は,「○○」の委託販売について,c株式会社に一定の利用料金を支払うものとされているところ,同利用料金の支払は一切行われていないこと(甲171。なお,被告らは,c株式会社との間で,利用料金の支払を行わない旨合意したと主張するも,これを裏付ける証拠はなく,採用することができない。)からすると,被告らが提出する上記契約書等及び被告Y1の陳述書の記載は,これを信用することができない。
ウ したがって,被告Y1は,別表2記載の送金額につき,脱退原告と被告会社との間に何らの取引実態がないにもかかわらず,架空の名目で,Cの了承を得ることもなく,自己が唯一の株主である被告会社に送金し,これを横領したものと認められ,また,被告会社は,法律上の原因なく,上記送金額に相当する利益を受けたものと認められる。
(2)  別表3,4及び7記載の引き出しについて
原告は,別表3及び4記載の引き出しについては,これらに合致するような脱退原告に対する請求書等は存在せず,また,別表7記載の引き出しについては,同表「横領と評価した根拠」欄記載の各理由により,いずれも支払根拠が存在せず,被告Y1により横領されたものであると主張するのに対し,被告Y1は,これらの引き出しは,脱退原告と被告会社との間に存在した取引関係の業務に関するものであると主張する。
しかしながら,脱退原告と被告会社との間に取引関係があったと認められないことは,上記(1)に説示したとおりであり,被告Y1の上記主張はこれを採用することができない。
そうすると,被告Y1は,原告の主張するとおり,いずれも根拠なくこれらの金員を引き出したものであり,上記引き出しに係る金員を横領したものと認められる。
第4  結論
以上によれば,原告の請求は全て理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第17部
(裁判長裁判官 中村さとみ 裁判官 早田久子 裁判官 吉原裕貴)

 

別紙
当事者目録
東京都中央区〈以下省略〉
原告兼承継参加人 株式会社X1(以下「原告」という。)
同代表者代表取締役 A
東京都中央区〈以下省略〉
脱退原告 株式会社X2(以下「脱退原告」という。)
同代表者代表取締役 A
上記両名訴訟代理人弁護士 平木憲明
埼玉県川口市〈以下省略〉
被告 Y1(以下「被告Y1」という。)
同所
被告 Y2株式会社(以下「被告会社」という。)
同代表者代表取締役 Y1
上記両名訴訟代理人弁護士 鈴木幸子
同 岡田宜智
以上

〈以下省略〉

 

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