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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(9)平成30年 3月26日 東京地裁 平28(ワ)23722号 謝罪広告・損害賠償等請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(9)平成30年 3月26日 東京地裁 平28(ワ)23722号 謝罪広告・損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成30年 3月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)23722号
事件名  謝罪広告・損害賠償等請求事件
文献番号  2018WLJPCA03268016

裁判年月日  平成30年 3月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)23722号
事件名  謝罪広告・損害賠償等請求事件
文献番号  2018WLJPCA03268016

東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 堀内稔久
東京都台東区〈以下省略〉
被告 株式会社Y1
同代表者代表取締役 Y2
さいたま市〈以下省略〉
被告 Y2
上記2名訴訟代理人弁護士 箕輪正美
同 伊藤慶太
同 宮田直紀
同 澤嶋葉

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して,55万円及びこれに対する平成25年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。
2  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,これを1000分し,その8を被告らの,その余を原告の負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
1  被告らは,原告に対し,連帯して,読売新聞東京都全域版社会面に,別紙謝罪広告記載のとおりの謝罪広告を,別紙謝罪広告掲載要領記載の方法で掲載せよ。
2  被告らは,原告に対し,連帯して,6600万円及びこれに対する平成25年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  事案の概要
本件は,ヘアメイク等の業務を行っていた原告が,被告Y2(以下「被告Y2」という。)からヘアメイク等に関する業務提携を持ち掛けられ,被告Y2が経営する被告株式会社Y1(以下「被告会社」という。)と業務提携を開始したが,被告らが事業の乗っ取りを図り,原告の業務に協力せず,原告の信用や売上げを低下させたばかりか,顧客に対し原告を解雇して告訴する予定である旨の内容虚偽の文書を送付して,原告の業務を妨害すると共に,原告の名誉を棄損したとして,不法行為に基づき,被告らに対し,謝罪広告の掲載,並びに経済的損害の一部4500万円,慰謝料2000万円,弁護士費用100万円及びこれらに対する文書送付以降の日である平成25年9月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提となる事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。証拠番号は特記なき限り枝番を含む。)
(1)  当事者(甲1,12,乙10,11,弁論の全趣旨)
ア 原告は,ヘアメイク,スタイリング業務等を行う者で,同業務を営む株式会社a(以下「a社」という。)の代表取締役である。
イ 被告会社は,美容師のアウトソーシング事業等を営む株式会社で,平成24年11月2日,株式会社bの商号で設立され,平成25年2月3日,現在の商号に変更されたものである。
ウ 被告Y2は,被告会社の代表取締役であり,またゴルフ会員権やゴルフ用品の販売事業を主たる業務とする○○グループの代表である。
(2)  原告の被告会社における業務開始(甲1,12,乙1,10,11,弁論の全趣旨)
ア 原告は,平成24年11月下旬頃から,被告会社において,ヘアメイクや,撮影現場への美容師やスタイリストの派遣等の業務(以下この主の業務を「本件業務」という。)を開始した。
なお,原告の被告会社における地位には争いがある。
イ 原告は,上記勤務に先立ち,被告会社を雇用主,原告を雇用者として,原告を取締役として雇用する内容であり,被告会社の記名押印もある「雇用契約書」(乙1。以下「本件契約書」という。)に署名している。
なお,本件契約書には,原告の押印はなされていない。
ウ また,原告と共に,a社の専属スタッフであった訴外A(以下「A」という。)及び訴外B(以下「B」という。)も,被告会社の専属スタッフとなる形で,本件業務に従事することとなった。
(3)  被告会社による通知の送付(甲2,12,乙10,13,弁論の全趣旨)
ア 被告会社の常務取締役であった訴外C(以下「C」という。)は,平成25年7月16日から同年9月3日にかけて,被告会社の顧客ら82名に対し,後述する文書(以下「本件文書」という。)の電子データを添付した電子メールを送付した。
イ 本件文書は,平成25年7月16日付けで,「社員解雇のご通知」とのタイトルの下,不都合により,旧a社代表で,第2事業部ヘアメイク・衣装の元責任者である原告を解雇したこと,今度原告の行為等は被告会社と一切関係なく責任を負いかねること,原告に対し顧問弁護士と協議し民事,刑事告発の手続段階であること,請求書は被告会社からのみとなることなどを内容とするもので,被告会社の代表者として被告Y2の名が記載され,被告会社の社印が押捺されているほか,担当責任者としてCの名前が,また連絡先としてA,Bの名前と電話番号が記載されていた。
3  争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は,①原告が本件事業に従事していた期間における被告らの不法行為の成否,②本件文書送付に関する違法性阻却事由(真実性・真実相当性)の有無,③原告の損害額及び因果関係,④謝罪広告の必要性である。
上記争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。
【原告の主張】
(1) 原告は,芸能人を対象にヘアメイク等の業務を行い,当該業務を営むa社を経営していたところ,被告Y2及び被告会社は,真実は原告及びa社と業務提携等をする意図はなく,原告の事業を乗っ取る意図であったのにこれを秘して,原告に対し有利な条件を提示して業務提携を持ち掛けた。
業務提携開始後,被告らは,原告の業務に協力しないばかりか,原告の売上げを独占して経費を支払わず,またa社のスタッフに虚言を弄するなどして原告の信用を低下させ,原告の売上げも低下させた。
(2) そうした中,被告らは,得意先にお中元を贈るとの名目で,原告に顧客リストを提出させた上,顧客に対し,内容虚偽の「社員解雇のご通知」(甲2。以下「本件文書」という。)を送付し,原告の業務を妨害した。
本件文書は,原告を被告会社の従業員とする点,原告を解雇したとする点,民事,刑事告発の手続段階であるとする点で虚偽のものである。
本件文書は,被告会社の従業員であった原告が,何らかの不正行為を行い解雇されたと解釈されるもので,原告の社会的評価を低下させた。
(3) 原告は,被告らの上記1,2の不法行為により,以下の損害を被った。
ア 経済的損害 4500万円(5年分の売上4億5000万円の一部)
イ 慰謝料 2000万円
ウ 弁護士費用 100万円
(4) また,被告らの(2)の行為は悪質で違法性が強く,これにより毀損された原告の社会的評価を回復させるには,謝罪広告が必要不可欠である。
【被告の主張】
(1) 原告は,被告会社に強く希望して従業員として入社したものである。しかし,原告は,入社後,仮払金の清算をせず,自動車のリース料や部屋の賃料の肩代わりを被告会社にさせるなど,被告会社に寄生するような勤務態度であった上,不法な手段で被告Y2にa社を乗っ取られたなどの虚言を吹聴したため,被告らと原告との関係は急速に悪化した。
(2) 被告らは,上記状況下において,原告が被告会社を辞めた事実及びこれにつき被告会社に非がない事実を伝えるために,原告が上記虚言を吹聴していたかその可能性がある顧客,原告が被告会社に無断で自分宛ての請求書を発行する恐れがある顧客等を,被告会社の従業員が選別し,連絡先を調査,確認した上で,当該顧客に本件文書を送付したもので,内容に虚偽はないし,被告の業務妨害を意図したものではない。
(3) ヘアメイク業界では,スタッフが個人案件を登録会社に持ち込み,会社から業務を請け負う形式を取っているため,会社の売上げと個人の売上げを同視することはできないから,a社の売上げをもって原告が得ていた利益とはできない。記録を見ても,原告が1か月間に得ていた利益は,原告が主張する400万円に遠く及ばないことは明らかである。
また,原告が被告会社を退社した後に顧客が引き続き被告会社に留まっているのは,被告会社と信頼関係を構築したことや,原告に愛想を尽かしたa社のスタッフが被告会社に留まったことによるものであるから,被告らの行為と原告の損害との間に因果関係は認められない。
(4) 上記(1)及び(2)のとおりであるから,謝罪広告の必要はない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
各項末尾に記載の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,本件に関し以下の事実が認められる(なお,証拠は特記ない限りいずれも枝番を含む。)。
(1)  a社における原告の業務状況(甲1,12,27,乙2,3,6,9,11,A,原告,弁論の全趣旨)
ア 原告は,D(以下「D」という。)が代表を務める映像制作会社の株式会社cにて本件業務を行っており,その際,AやBも,同社の専属スタッフとして原告と共に勤務していた。
しかし,原告の経理処理については,資料の内容が不明確であったり,仮払金の処理がルーズであったりしたことから,Dは,平成22年頃,設立時資本金や運転資金を貸し付ける形で,原告にa社を設立させて独立させ,経理事務を切り離した。
イ a社には,A及びBも専属スタッフとして移り,本件業務を行っていた。また,a社は,訴外E(以下「E」という。)が経営し,a社と同様に本件業務を営んでいた訴外有限会社d(以下「d社」という。)と協業し,d社のスタッフにも本件業務を発注するなどしていた。
しかし,原告は,私的な領収書を経費に計上したり,仮払金の処理を適切に行わなかったり,スタッフに対し,約束した歩合を支払わなかったりすることがあり,原告につくスタッフも減少していった。
ウ Aは,a社の社員ではなかったが,経理にも関与しており,一覧表(乙2)を作成していた。a社の売上げは,原告以外のスタッフによるものも含めて,平成24年1月から10月までで,多い月で約700万円,少ない月で約234万円であり,月平均は約457万円であった。
(2)  Eによる事業譲渡の持ち掛けと原告の参加(甲1,12,20,乙1,9ないし11,A,原告,被告Y2,弁論の全趣旨)
ア Eは,d社の経営がうまくいかず,スタッフへの給与の支払やa社に対する支払が滞っていたことから,平成24年8月頃,資金力のある被告Y2に対し,d社の本件事業を譲渡したいと申し出た。
被告Y2は,○○グループとして新規事業への進出を検討していたことから,Cも同席させた上で,Eと交渉を行い,新会社(被告会社)を設立して本件事業を譲り受けること,スタッフを繋ぎとめるため,未払となっている給与支払債務を被告会社が負担し,引換えに未入金の代金債権を被告会社が譲り受けること,Eが相談役として被告会社にかかわることで話がまとまった。
イ Eは,同年10月頃,芸能関係の仕事に明るい人物として,原告を被告Y2とCに紹介した。原告は,本件事業のほかに,英会話の短期速習法である「△△メソッド」の普及,展開を計画していたことから,被告Y2の資金力に目をつけ,被告Y2に対し,原告としても被告会社の本件事業に参画したい旨を申し出ると共に,自分には月1000万円の売上げがあるなどと述べていた。
被告Y2は,原告の希望が強かったことや,経験者を被告会社に迎えることにメリットがあると考えたことから,本件事業の責任者として相応の裁量権を与えた上で,原告を被告会社に迎えることを提案した。その際,原告は,月1000万円の売上げを上げるので,歩合給を支払ってほしいと申し出たが,被告Y2は,原告の話の根拠となる資料がなかったことから,実績を見て歩合給を検討するとした上で,固定給として月額50万円を支払うことを提案し,原告もこれを了承した。
ウ 原告は,同年11月25日から被告会社の社員として勤務することとなり,その頃,本件契約書(乙1)を取り交わした。なお,その際,原告は印鑑を忘れたことから,原告は署名のみを行い,押印は後で行うこととされたが,その後押印がなされることはなかった。
(3)  原告の被告会社における勤務状況(甲1,12,15,16,20,22,23,乙2,4ないし12,A,原告,被告Y2,弁論の全趣旨)
ア 原告は,被告会社において,本件事業の責任者としてこれを統括し,Cが常務取締役として本件事業を監督していた。被告Y2は,被告会社の代表取締役であったが,資金調達を除いては,本件事業に関与することは余りなかった。
原告は,平成25年1月31日,Cに対し,取引先への請求書の発行に必要であることから,平成23年8月16日現在における得意先住所録の電子データを,電子メール(乙7)によりCに送信した。
イ 被告会社における本件事業の売上げは,平成24年11月25日から同年12月31日までに1001万2922円(甲第15号証3枚目の合計額から同年11月24日以前の売上げ89万2500円を差し引いたもの),を計上したものの,その後は平成25年1月と2月の合計で1004万6744円,同年3月と4月の合計で874万6070円,同年5月と6月の合計で595万6399円に留まった。
ウ 原告は,平成24年12月29日,被告Y2に対し,本件事業のために必要であるとして仮払金の支払を求めた。被告Y2はこれに応じ,原告に対し,現金で188万円を交付し,後に,被告会社からその清算を受けた。
また,被告会社は,平成25年に入ってからも,原告の求めに応じ,同年1月31日から同年6月21日までの6回にわたり,合計489万8134円を,仮払金として原告に対し支払った。
エ Cは,原告に対し,仮払金の処理に必要であることから,領収書を提出するように求めていたが,原告は,なかなかこれに応じず,提出した領収書も仮払金のうちの一部に留まっていた。
オ 本件業務においては,売上げが計上されても,客先からの数か月先の入金を待って給与の支払を行うことが慣行となっており,被告会社からの最初の給与の支払は,平成25年3月に行われることとなっていた。
しかし,原告に対する仮払金の支払等により,被告会社の銀行口座には残金がなかったことから,給与の支払は予定どおりに行われなかった。
そこで,AとBは,被告Y2に直接面会して,給与が未払となっているについて説明をしたところ,被告Y2は,Aらスタッフの給与について,自らの資金によりこれを立替え支払った。
(4)  原告と被告らとの関係の悪化(甲1,12,20,22ないし27,乙2,5ないし12,A,原告,被告Y2,弁論の全趣旨)
ア 被告Y2やCは,上述した給与の未払を受けて,原告に対し,引き続き仮払金の根拠となる領収書等の提出を求めた。しかし,原告は,これに十分対応することはなかった。
また,原告は,平成25年4月1日,Cに対し,△△メソッドに必要な費用についても仮払金の支払を求めた(乙5)。
被告会社は,上記のような原告の対応を受け,平成25年4月頃から,本件事業にかかる原告以外のスタッフの経費清算等に関して,原告を介さずに直接被告会社とやり取りをするようになった。
イ 原告は,平成25年4月16日,Eに対し,電子メール(乙12)により,本件業務におけるEの対応を非難すると共に,被告会社が資金を用意せず,スタッフを自分と切り離すことは買収の鉄則である,技術を売るためには今の出費が大きくてもまず枠を作らないと会社に未来はない,統合についても裏切られ,仕事も取られるようなら,本気で撤退を考えるなどと述べた。
ウ 原告は,同年6月10日,Eに対し,電子メール(乙8)により,Eと連絡が取れないことに対する不満を述べると共に,被告会社とのビジネスの進め方に違和感を覚えていること,仮払金についてはすべて精算書にまとめていること,△△メソッドに関しては多少領収書の操作をしたが,被告会社のためだと信じていることなどを伝え,返信を求めた。
(5)  本件文書の発出(甲1,2,12,20,乙10,11,A,原告,被告Y2,弁論の全趣旨)
ア Cは,平成25年6月には,原告に対し,領収書の提出を強く求めるようになったが,原告からは,十分には提出がなされなかった。これにより,被告Y2は,領収書を提出しない原告に対する信頼を失ったことから,原告がリースしていた車両のリース料について,同月以降,被告会社からの支払を行わなくなったほか,原告が使用していた千駄ヶ谷の事務所についても,賃貸借契約を解除することとした。
イ 原告は,こうした動きに不満を強め,同月下旬頃から,知人や被告会社の取引先の一部に対し,(被告Y2に)だまされて,会社や仕事,スタッフを乗っ取られたなどと話すようになり,こうした噂が,取引先からの問合せ等により,CやAの耳にも入るようになっていた。
ウ 原告は,同年7月4日,被告Y2に対し,電子メール(乙4)により,迷惑をかけたことを詫びると共に,領収書はきっちり保管してあるが,不安定な事業体を盤石にするために次なる戦略の経費として使わせてもらっていたことを理解してもらえず,提出できなかった,△△メソッドに充てた経費もある,衣装とヘアメイクの連携で売り上げを獲得する方法を取っているが,客先から連携がうまくいっていないとの指摘がある,△△メソッドを推進する中,結果を出してからと独り歩きしてしまった点を反省している,被告会社のために努力しているのに領収書の紙切れで判断されることが嫌で提出できなかったなどと述べ,被告Y2に対し謝罪すると共に,リースしていた車両を引き上げられたことや,Cとうまくいっておらず,だまされたと言われたことなどを述べた。
エ 遅くとも,平成25年7月上旬までには,原告と被告Y2との間で,原告が被告会社を離れることが合意された。
そこで,Cは,原告が流した上記イの噂を収束させると共に,原告が被告会社ではなく原告自身の名前で取引先に請求書を発行して代金を受領すること防ぐため,取引先に対する通知文書を発出することとし,本件文書を作成した。本件文書の送付先については,AやBとCとが相談し,原告とのかかわりが深い取引先や,原告から請求書が発行される可能性がある取引先が選ばれた。
なお,被告Y2は,Cから本件文書の発出について事前に許可を求められたことから,これを承諾した。
オ 平成25年7月16日,Cは,電子メールに添付する形で本件文書の発出を開始し,同年9月3日までに,82名に本件文書を送付した。
なお,平成25年7月16日時点において,原告に対し仮払金の処理について責任を追及するという話は被告会社の中でなされていたが,弁護士への相談や警察への告訴などはなされておらず,同月23日に,Cが被告ら代理人に相談に訪れた程度であった。
(6)  本件文書発出後の状況等(甲1,12,20,乙6,10,11,A,原告,被告Y2,弁論の全趣旨)
ア 原告は,被告会社を離れたが,原告がa社から被告会社に連れてきたA及びB,d社のスタッフ等については,いずれも被告会社に残留しており,原告と共に離れる者はいなかった。A及びBは,被告会社に残留した理由として,原告が給与等を約束どおりに支払わなかったことなどから,原告に対する信頼を失った旨を述べている。
イ 原告は,被告会社を離れた後も,本件業務を継続しており,現場によっては,原告とBとが同時に本件業務を行っている例もある。
ウ 被告会社は,平成26年1月頃,原告に対し,仮払金の一部の返還を求める訴訟(当裁判所平成26年(ワ)第306号不当利得返還等請求事件。以下「先行訴訟」という。)を提起した。
先行訴訟は,原告が本件業務以外の事業等にかかる経費を本件業務の撮影実費として被告会社に請求していたことはうかがわれ,これは原告に与えられた裁量権を超える違法なものであるとしつつも,その流用額は明らかではないし,当該撮影現場とは異なる撮影現場の経費が請求されていることについても,こうした経費計上を調整する程度の裁量は原告に与えられていたと解する余地もあり,当該経費を原告が自己費消したと直ちには認められないとして,被告会社の請求が棄却され,確定した。
2  上記事実認定の補足説明
(1)  A及び被告Y2の供述について
A及び被告Y2は,本件の経過について,上記認定事実に沿う旨供述するところ,両名の供述は,反対尋問においても動揺が見られないことのほか,内容が相互に符合していること,具体的かつ合理的であること先行訴訟の段階から変遷が見られないこと,DやC,Bの陳述書の内容とも整合的であることなどが認められるから,信用性は高いものと認められる。
Aは,原告が被告会社から離れた後に,被告会社の専務取締役に選任されており,このことは,被告会社に有利となるよう虚偽の供述を行う動機となり得るものとは一応いえるが,Aの供述態度や内容から見ても,Aが上記のような虚偽の供述に及んでいる可能性は認め難い。
(2)  原告の供述について
ア 原告は,本件について,概要,以下のとおり供述している。
①原告は,被告会社から,本件業務に関し業務提携をするよう勧誘され,共同経営者として被告会社に迎えられた,②しかし,被告Y2は,本件事業にかかる経費の支払を拒み,スタッフへの給与の支払まで滞らせたばかりか,これは原告の責めによるものであるとスタッフに吹聴し,原告の本件業務を妨害した,③それでも原告は本件業務に邁進していたところ,突然,被告会社から取引先に本件文書を送付された上で関係を断たれ,取引先やスタッフを失ったほか,社会的信用が大きく毀損された,④本件通知の発出に先立ち,被告会社が,平成25年6月頃,お中元を贈るために必要であるとして,原告に住所録を提出させた。
イ しかし,原告の主張を支える客観的証拠はほとんど提出されておらず,わずかに認められるのは,原告が,被告会社においても本件事業のために使用していた車両のリース代等を支払ったこと(甲24ないし26),原告が,Eに対し,被告会社が資金を用意せず,スタッフを自分と切り離すことは買収の鉄則である,統合についても裏切られ,仕事も取られるようなら,本気で撤退を考えるなどと述べていたこと(乙12),原告が被告会社の本件事業にかかる経費等について一定程度立替払していたこと(甲1),被告Y2が原告から求められた仮払金の支払を拒んだこと(乙10)程度に留まっている。
ウ 上記ア①については,原告の主張を支える客観的証拠はほぼ提出されていないこと(乙12号証は,原告の認識を示すものにすぎず,その証明力は高いものではない),ことに加え,被告Y2やAが原告の主張を否定していること,原告が,被告会社の社員(取締役)となり,固定給50万円の支払を受ける旨の本件契約書に署名しており,業務提携や共同経営をする者の行動として矛盾していること,共同経営であれば,原告が被告会社の社員となる必要性がないこと,被告会社にはEが相談役として迎えられており,原告の参加を求める動機に乏しいことなどに照らせば,この点に関する原告の主張は採用できない。
エ 上記ア②についても,被告Y2が原告に対して仮払金の支払を拒んだのは,原告が被告会社に対し適切に領収書を提出しなかったためであることは明らかである(原告自身,乙4号証や乙8号証のメールにより,領収書を提出していないことや,△△メソッドへの出資について被告Y2から同意を得ていないにもかかわらず(原告調書19頁),一部△△メソッドのために領収証を操作したことを認めている。)。そして,原告に対する仮払金の支払がかさんだことにより,従業員への給与の支払が遅れたことも上記認定のとおりであり,これも原告の責めによるものが大きいことは明らかである。さらに,被告Y2が,原告のスタッフに対して原告に関する虚偽の風説を述べたことについても,これを支える証拠はなく,またAは原告の主張する事実はなかった旨供述している。
また,上記ア④についても,原告は,平成25年6月に住所録を提出した際のメールは残っているとしながら,これを提出しない。
これらの事実に照らせば,やはり上記ア②及びア④に関する原告の主張は採用できない。
オ 上記ア③については,原告が本件業務のために使用していた事務所の賃貸借契約が平成25年7月末までで解除されることを原告も知っていたこと,本件文書の発出後も,原告及び被告会社の本件業務に支障が生じていていないこと,Bは,原告が,被告会社を辞める際,スタッフに対し俺は間違っていないなど発言したと述べていることなどからすると,原告は,本件文書の発出前に,被告会社を離れることについて,被告会社と合意していたと認められるから,この認定に反する原告の主張は採用できない。
カ このほか,原告の供述は,主尋問においては一貫していたが,反対尋問においては変遷や,過去に原告が送信したメール内容との矛盾する回答(被告会社からの仮払金等を△△メソッドのための費用に流用したことを否認するなど)も見られ,自己の主張に固執する面も見受けられた。
加えて,原告の供述を支える客観的証拠がほとんど提出されてないこと,その主張の内容自体いささか突飛にすぎる感が否めないこと,原告の主張に反する供述や陳述書が多く存在することなどに照らすと,基本的に原告の供述の信用性は乏しいといわざるを得ない。
(3)  小括
以上のとおり,原告の主張は基本的に採用できず,他方,事実経過に関する被告らの主張は,客観的な証拠や信用性のある供述,陳述書に符合するものであるから,基本的にその主張に沿う事実が認定できる。
3  争点①(被告らの不法行為の成否)について
(1)  原告は,被告らは,原告の事業を乗っ取る目的で原告に業務提携を持ち掛けた,業務提携開始後,被告らは,原告の売上げを独占して事業を妨害し,またa社のスタッフに虚言を弄するなどして原告の信用を低下させた,得意先にお中元を贈るとの名目で,原告に顧客リストを提出させたなどと主張するが,これらの事実が認められないことは,上記2で摘示したとおりであるから,原告の主張はその前提を欠くものである。
(2)  なお,被告Y2が,原告から求められた仮払金の支払に応じなかった事実は認められるが,これは,原告が適正に領収書を被告会社に提出しなかったためであると認められるから,原告が一定程度被告会社のために本件事業にかかる経費を立替え払いしていたことを踏まえても,被告らの上記対応が,不法行為に当たるとは認められない。
(3)  以上のとおりであるから,原告が本件事業に従事していた期間における被告らの対応については,後に検討する本件文書の発出を除けば,不法行為に該当するとはいえない。
4  争点②(本件文書送付に関する違法性阻却事由の有無)について
(1)  まず,被告会社が本件文書を発出したことについては,原告が,取引先等に対し,被告Y2に会社を乗っ取られたなどと事実に反する旨を述べていたこと,原告が過去に不適切な会計処理を行ったことがあることなどに照らせば,さらなる風評被害や原告による不正請求などを防ぐためという,一定の正当な目的の下に行われたものと認められる。
(2)  次に,本件文書の内容について検討する。
ア 原告は,本件事業の責任者として被告会社内で相応の裁量を有しており,本件契約書では取締役とされていたことは認められるものの,原告が被告会社の社員となる旨の本件契約書を締結していたことや,被告会社において本件事業を共同経営していたとは認められないことからすると,原告を被告会社の社員と表現したことも相当であって,原告の社会的評価を低下させるものともいえない。
イ 他方,被告会社が,原告を解雇し,民事,刑事告発の手続段階であるとしている点については,一般の読者からして,原告が,被告会社において何らかの不正行為を行い,これにより解雇にまで至ったと解釈されるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものといえる。
(3)  これを前提に,上記(2)イにつき違法性阻却事由が認められるか検討する。
ア 原告が被告会社を離れることとなったのは,不適切な経理処理により,横領等が疑われたためであることや,上記のとおり原告が被告会社の社員であったことからすれば,被告会社としては,原告に解雇事由が存在するものと考えたとしても,この認識は相当なものであったといえる。
イ 他方,本件文書を最初に発出した当時,被告会社が原告告発に向けた具体的な行動に出ていなかったことは上記認定のとおりであり,被告会社が原告の行動に対して上記アのような疑いを持っており,告発等を検討していたとしても,これを手続段階であると表現することは事実に反するものというほかなく,被告会社において上記(1)のとおり本件文書を発出する必要性があったことを踏まえても,民事刑事で告発手続中であるという強い名誉棄損表現を取ることが正当化されるとまではいえない。
(4)  以上のとおりであるから,被告会社が,原告に対し民事刑事の告発手続中である旨を記載した本件文書を発出したことは,原告の名誉を棄損する不法行為であって,違法性阻却事由も認められないから,被告会社は,これにより原告に生じた損害を賠償する責めを負う。
また,被告Y2が,被告会社の代表取締役として,被告会社が原告に対し民事刑事の告発手続を取っていないことを知りながら,本件文書の発出を承諾したことには,少なくとも過失が認められるから,被告Y2も,不法行為責任を免れない。
5  争点③(原告の損害額及び因果関係)について
(1)  逸失利益について
ア 原告は,被告らが原告の本件事業を乗っ取ったことにより,年間9000万円に上る売上げを喪失し,5年間で4億5000万円の損害を被ったとして,その一部である4500万円を請求する。
しかし,そもそも,上記認定のとおり,原告が被告会社を離れることとなった理由やスタッフが被告会社に留まったことは,原告の不正経理が原因であったのであるから,原告の主張はその前提を欠くものである。
イ また,本件事業における売上げについては,原告がa社の代表を務めていた期間を含めた平成24年の1年間で総額5822万1460円に留まること,被告会社における本件事業の売上げは右肩下がりにあったこと(上記1(3)イ),上記売上げからは,スタッフの給与や各種経費を差し引く必要があり,本件事業の利益率は約20%であるとの指摘もあること(乙3),原告は,すべての顧客を失ったわけではないことなどに照らすと,原告が主張するような損害を認定できないことは明らかである。
ウ 仮に,本件文書の発出により,売上げの減少等が生じていることが立証されたとしても,当該売上げの減少等については,上記アで指摘したスタッフの離脱による部分が大半であると考えられることから,上記損害について,本件文書の発出との相当因果関係を認めることは困難である。
エ 以上のとおりであるから,逸失利益に関する原告の主張にはおよそ理由がない。
(2)  慰謝料について
ア 上記3のとおり,原告が本件事業に従事していた期間における被告らの対応については,不法行為を構成するものではないから,これを理由とする原告の慰謝料請求は失当である。
イ 他方,本件文書の発出は,上記4(2)イのとおり違法なものであり,これにより原告の社会的評価が低下したことが認められる。
その上で,本件文書の発出数,本件文書の発出に至る経緯など,本件に顕れた一切の事情を考慮すると,これにより原告に生じた精神的苦痛に対する慰謝料の額は,50万円と認めるのが相当である。
(3)  弁護士費用について
上記(2)で認められる慰謝料の額に照らすと,本件における弁護士費用相当額の損害としては,5万円を認めるのが相当である。
6  争点④(謝罪広告の必要性)について
原告は,本件文書により被った原告の損害を回復するためには,損害賠償だけでは十分ではなく,謝罪広告を掲載させることが必要であると主張する。
しかし,本件文書は,被告会社の取引先82名に発出されたにすぎないことや,原告の違法行為の内容を具体的に述べるものではなく,名誉棄損の程度が著しいものではないこと,損害賠償認容額など,本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると,原告の名誉を回復するために,さらに謝罪広告を掲載する必要があるとは認められない。
7  結論
上記のとおり,本件請求は,被告らに対し,55万円及びこれに対する本件文書の発出以降の日である平成25年9月1日から支払済みまで年5分の遅延損害金の支払を求める限りにおいて理由があるからこれを認容し,その余についてはいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第23部
(裁判官 児島章朋)

 

〈以下省略〉

 

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