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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(224)平成23年 8月25日 東京地裁 平22(ワ)14245号 損害賠償本訴請求事件、請負代金等反訴請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(224)平成23年 8月25日 東京地裁 平22(ワ)14245号 損害賠償本訴請求事件、請負代金等反訴請求事件

裁判年月日  平成23年 8月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)14245号・平22(ワ)18101号
事件名  損害賠償本訴請求事件、請負代金等反訴請求事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴請求一部認容  文献番号  2011WLJPCA08258004

要旨
◆元請業者である原告が、下請業者である被告に対し、診療所の新装工事につき、被告の責に帰すべき事由により完成が大幅に遅延したとして債務不履行による損害賠償を求めた(本訴)のに対して、被告が、原告に対し、上記新装工事及び駐車場ビル改修工事並びに各追加変更工事をいずれも完成して原告に引き渡したとして、未払請負代金等の支払を求めた(反訴)事案において、工事完成の遅延につき被告に帰責事由は認められないとして本訴請求を棄却する一方、本件クリニック工事の各追加変更工事については、その旨の原告被告間の合意及び各追加変更工事の完成引渡しを認めるのが相当であり、原告は被告に対して本件クリニック工事の追加変更工事代金の支払義務を負っているものと解するのが相当であるなどとして、反訴請求を一部認容した事例

出典
ウエストロー・ジャパン

参照条文
民法632条

裁判年月日  平成23年 8月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)14245号・平22(ワ)18101号
事件名  損害賠償本訴請求事件、請負代金等反訴請求事件
裁判結果  本訴請求棄却、反訴請求一部認容  文献番号  2011WLJPCA08258004

平成22年(ワ)第14245号 損害賠償本訴請求事件
平成22年(ワ)第18101号 請負代金等反訴請求事件

東京都多摩市〈以下省略〉
本訴原告・反訴被告 株式会社ティー・エル・オー
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 遠藤常二郎
同 原田伸
同 春日井太郎
同 川端克俊
同 松尾耕太郎
同 遠藤純
同 辻山尚志
東京都渋谷区〈以下省略〉
本訴被告・反訴原告 株式会社アーバンプランニング
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 栃木義宏
同 柳澤憲

 

 

主文

1  本訴原告・反訴被告は,本訴被告・反訴原告に対し,8027万5000円及びこれに対する平成22年5月21日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
2  本訴被告・反訴原告のその余の請求を棄却する。
3  本訴原告・反訴被告の請求を棄却する。
4  訴訟費用は,本訴・反訴を通じ,これを25分し,その24を本訴原告・反訴被告の負担とし,その余を本訴被告・反訴原告の負担とする。
5  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

(以下,本訴原告・反訴被告を「原告」,本訴被告・反訴原告を「被告」という。)
第1  請求
1  本訴請求
被告は,原告に対し,8000万円を支払え。
2  反訴請求
原告は,被告に対し,8621万8499円及びこれに対する平成22年5月21日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本訴事件は,被告(下請業者)に診療所の新装工事を発注した原告(元請業者)が,被告の責に帰すべき事由により同工事の完成が大幅に遅延したために損害を被ったと主張し,被告に対し,債務不履行に基づく損害賠償請求として,営業補償費950万円及び逸失利益9200万円の合計1億150万円の一部である8000万円の支払を求めた事案である。
反訴事件は,被告が,原告から請け負った上記新装工事及び駐車場ビル改修工事並びに各追加変更工事をいずれも完成して原告に引き渡したと主張し,原告に対し,未払の各請負代金(3207万5000円,3550万円)及び各追加変更工事代金(1434万3499円,430万円)の合計8621万8499円並びにこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成22年5月21日から支払済みまで商事法定利率である年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実(争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。)
(1)  当事者
ア 原告は,建築工事の設計,施工,請負,監理等を目的とする株式会社である。
イ 被告は,建築及び内装工事の設計施工及び管理監督等を目的とする株式会社である。
(2)  aクリニック新装工事
ア 原告は,平成21年11月18日,訴外ツーク・バイオ研究所株式会社(以下「ツーク・バイオ」という。)との間で,以下の内容の請負契約を締結した(甲2)。
(ア) 注文者 ツーク・バイオ
(イ) 請負人 原告
(ウ) 工事名 aクリニック(以下「本件クリニック」ともいう。)新装工事
(エ) 工事場所 東京都渋谷区〈以下省略〉
(オ) 工事内容 本件クリニック4階,5階内装工事
(カ) 工期 着手 同年11月24日
完成 同年12月22日
(キ) 請負代金 4042万5000円(消費税込み)
イ 原告は,同年11月20日,訴外株式会社ユーネット(以下「ユーネット」という。)との間で,以下の内容を含む業務提携契約を締結した(甲1)。
(ア) ユーネットの義務
ユーネットは原告へ付記の既存及び新規取引先を仲介斡旋し,建築関連工事の受注に向けた支援協力を行う。
(イ) 成功報酬
原告はユーネットへの支援協力における成果報酬として,物件毎に原告とユーネットにて取り決めた内容の金額・時期・方法で報酬を支払う。
(ウ) 工事期間遅延等に伴う補償内容
ユーネットは斡旋内容について,新規開業の場合において事業開業までを支援している背景により,建設業法規定損害賠償額に加えて,開業に伴う広告他,営業補償等も加えた金額を求める。
(エ) 付記(紹介概要)
ⅰ 施主名 ツーク・バイオ
ⅱ 工事名称 aクリニック4,5階新装工事
ⅲ 報酬額 682万5000円(消費税込み)
ⅳ 支払日 平成21年12月22日
ⅴ 特記事項 工事遅延の損害額として,1日50万円を最低補償額とする。
ウ 原告は,同年11月20日,被告との間で,以下の内容の請負契約を締結した(以下「本件クリニック工事契約」という。)(甲3)。
(ア) 工事名 aクリニック新装工事(以下「本件クリニック工事」ともいう。)
(イ) 施主 ツーク・バイオ
(ウ) 工事場所 東京都渋谷区〈以下省略〉
(エ) 工事内容 本件クリニックの4階及び5階の内装工事
(オ) 工期 着手 平成21年11月25日
完成引渡予定 同年12月21日
(カ) 請負代金 3307万5000円(消費税込み)
エ 原告は,同年12月15日,被告に対し,本件クリニック工事契約の着手金として100万円を支払った。
オ 被告は,平成22年1月9日,本件クリニック工事を完成させ,原告に引き渡した。
カ 原告は,被告に対し,本件クリニック工事契約に基づく残請負代金3207万5000円の支払義務を負っている。
(3)  パチンコb店駐車場ビル改修工事
ア 原告は,平成21年10月25日,被告との間で,以下の内容の請負契約を締結した(以下「本件駐車場工事契約」という。)。
(ア) 工事名 パチンコb店駐車場ビル改修工事(以下「本件駐車場工事」ともいう。)
(イ) 施主 訴外株式会社パンドラ(以下「パンドラ」という。)
(ウ) 工事場所 神奈川県相模原市〈以下省略〉
(エ) 工事内容 8階建の駐車場の屋上の防水,外壁の階段・手摺り・スプリンクラー等の塗装,車止めの設置等
(オ) 工事期間 着手 平成21年10月25日
完成引渡予定 平成22年1月15日
(カ) 請負代金 6000万円
イ 原告は,被告に対し,本件駐車場工事契約の請負代金として,平成21年10月30日に150万円,同年12月7日に300万円,同月29日に2000万円の合計2450万円を支払った。
ウ 被告は,平成22年2月15日までに本件駐車場工事を完成させ,原告に引き渡した。
エ 原告は,被告に対し,本件駐車場工事契約に基づく残請負代金3550万円の支払義務を負っている。
2  争点
(1)  本件クリニック工事の完成引渡しが遅れたことについての被告の債務不履行責任の有無及び原告の損害額(争点①)。
(2)  本件クリニック工事についての追加変更工事の有無及びその工事金額(争点②)。
(3)  本件駐車場工事についての追加変更工事の有無及びその工事金額(争点③)。
3  争点に対する当事者の主張
(1)  争点①のうち,被告の債務不履行責任の有無について
(原告の主張)
ア 本件クリニック工事契約の履行期限は平成21年12月21日であり,被告は,同日までに原告に対して本件クリニック工事を完成させて引き渡す債務があった。にもかかわらず,被告は,平成22年1月9日になってようやく本件クリニック工事を完成させて引き渡したものであり,債務不履行責任を負う。
イ 原告は,被告に対し,以下のとおり,繰り返し工期厳守を最優先事項とする旨を伝えていた。
(ア) 平成21年11月20日,原告従業員であった訴外C(以下「C」という。)及びユーネットの会長であったD(以下「D」という。)は,被告従業員であったE(以下「E」という。)に対し,本件クリニックの開設が1日遅れるごとに多額の損失が発生する旨を説明した。その際,Eは,被告代表者であるB(以下「被告代表者」という。)に対し,工期厳守が最優先事項である旨を電話で伝えた。
(イ) 同年12月12日,本件クリニック工事の前払金100万円の話がされた際,Cは,被告代表者に対し,工期を遵守するよう念を押した。その際,被告代表者からの反論はなかった。
(ウ) Cは,同月21日,被告代表者に対し,工事完成遅延1日ごとに原告が50万円の営業補償費を支払う必要が生じるため,大至急本件クリニック工事を完成させるよう強く求めた。
ウ 被告が工期までに本件クリニック工事を完成させることができなかったのは,被告による施工ミスの多発,作業の怠慢などがあったからであるが,そもそもの完成遅延の大きな原因は,多数の丸投げの下請業者が入ることによる情報伝達の遅れ,それによる被告の下請業者による施工ミス,被告の下請業者による工期厳守の不徹底にある。
エ 被告の下記ウの主張について
以下のとおり,被告が指摘する事情はどれも完成遅延の原因になっていないものや,被告自身の責任により生じたものであり,被告の債務不履行責任を免れさせるものではない。
(ア) 施工図面及び天井伏図について
本件クリニック工事においては,被告が施工図面の作成義務を負い,施主であるツーク・バイオが同施工図面に承認を与えることになっていた。被告が施工図面の作成を遅滞したため,工事完成遅延に繋がった。そして,被告は,工期までに本件クリニック工事を完成させることが難しくなり始めると,突然,責任逃れの方便として原告に施工図面の作成義務があるなどと主張し始めた。
確かに,天井伏図の作成義務を負っているのは原告であったが,天井伏図の作成が遅滞した原因は被告にある。すなわち,天井伏図の作成に当たっては照明器具等の決定が必要であるところ,その選択は最終的にはユーネットのF(以下「F」という。)が行うことになってはいたが,その前提として施工業者である被告が,天井に配置すべき空調・換気設備の経路,照明器具の寸法及び候補となる照明器具を提示することとなっていたのである。しかし,被告がこれを遅滞したため,原告の天井伏図の作成が遅れた。また,被告から提示された照明等のサイズ及び設置方法に間違いがあったために,天井伏図の位置状況が現実と異なるという事態も生じた。
なお,被告は,ツーク・バイオとの打合せに参加したことがないという旨の主張をするが,事実に反する。Eは,ツーク・バイオ及び原告と幾度となく打合せを行っていた。原告は,被告から,ツーク・バイオや他の業者と現場の責任者として自由に打合せができるようにしたいとの要望を受け,被告の指定したGなる人物に原告の社名の入った名刺まで交付していたのである。
(イ) やり直しの指示について
エントランスの間仕切りの撤去については,壁の一部の軽量鉄骨を取り除くという簡単な作業であり,完成遅延を生じさせるようなものではない。なお,その分の作業超過について,原告は,追加工事の代金請求を認めている。
4階及び5階の壁と天井については,被告がツーク・バイオの指示とは異なる内容の工事をしたが,工期の厳守と,コスト面からやり直しを断念することとし,代わりに各階50万円ずつ工事代金を減額することとし,Eはこれに応じた。被告が主張するようなやり直し工事が行われた事実はない。
床フローリングの仕上げについて被告が巾木で施工した事実は認めるが,そもそも底目地仕上げとするように指示していたにもかかわらず,通常仕上げで行ったため,緊急避難的に巾木に変更したものである。また,5階の廊下壁面クロス貼仕上げをダイノックシート貼りに変更するという話は出ていたが,結局,変更することはなかった。
なお,被告が指示とは異なる内容の工事をしたのは,被告が下請業者に丸投げし,さらに当該下請業者もさらなる下請業者に丸投げするという丸投げを繰り返していたからであると思われる。
(被告の主張)
ア 原告の主張をいずれも争う。
イ 被告は,原告に対し,本件クリニック工事の注文書を受領した平成21年12月4日の段階で工期(同月21日工事完成)を守れないことを原告に伝えていたのであって,原告が主張するような,被告に対して繰り返し工期厳守を伝えていたという事実は否認する。
被告代表者は,平成22年1月25日に注文書及び注文請書を原告から送付されて初めて,工事の遅延1日ごとに原告に50万円の営業補償費の支払義務が生じることを知った。
いずれにせよ,元請側である原告が,下請側である被告に対して工期遵守を主張するためには,図面(天井伏図,施工図面)及び仕上表等が完成して,それに基づいて即時に施工できるようになっていることが前提である。
工事着工予定日である平成21年11月25日から平成22年1月7日までの間,34回にわたり,下請施工業者らとの定例会議がもたれているが,ツーク・バイオがそれに参加したのは,平成22年1月7日だけであった。なお,原告は,現場での下請業者との打合せに4回しか参加していない。
ウ(ア) 施工図面及び天井伏図について
被告は,平成21年11月25日に本件クリニック工事に着工しようとしたが,原告から交付されるべき施工図面が交付されず,その後も交付されなかったことから,同年12月5日にやむなく現地において実測した上で墨芯出しに着手して施工するに至ったが,このことだけでも10日間程,被告の責に帰さない原告側が責を負うべき事情で遅滞してしまっている。また,原告から天井伏図(空調設備,換気設備,吸気設備,照明器具の位置図を記載したもの)が交付されたのが同月14日で10日以上遅れた上に,交付された天井伏図は図面上の梁,柱型の位置の状況が現実のそれと異なり不完全なものであった。
そもそも施工図面と天井伏図の関係であるが,天井伏図ができていないと施工図面を作成することができないという関係にある。すなわち,工程的にいうと,天井に照明器具と空調機及びそれらの配管等を取り付けてから天井を仕上げ,それから壁に取り掛かることになるから,天井伏図が出来上がるまではこれらの工事に取り掛かれないことは自明だからである。照明器具の選択等は,設計者,本件の場合にはFにおいて行うことになっており,被告に選択権はない。なお,被告は,ツーク・バイオとの打合せに参加したこと自体なかった。
仮に被告に施工図面作成義務があったとしても,平成21年12月14日に作成・交付された天井伏図すらまともに出来上がっていなかったのであり,それ以前に被告において施工図面を作成できなかったことは明らかである。
いずれにせよ,被告は,ユーネットから交付を受けた天井伏図に基づき,同月15日中には施工図面を作成しており,施工図面の点で非難されることは全くない。
ユーネットは実測図を作成することができず,その結果,被告は,墨芯出しを実測図なしに行わなければならなかったのと同様,ユーネットは天井伏図を設計するに足るだけの能力もなかったため,その作成が遅れ,同月14日に,例えば5階の天井伏図に関し,①R状のエントランス入口左右部分の間仕切り未撤去で,その部分の照明器具が未設置,かつ②空調の室内機の吐き出し口の位置が未定のものしか作成できなかったというのが事の真相である。間接照明器具の設置場所とそれに伴う配線とが最終的に確定したのは平成21年12月22日のことであり,その翌日から3日間かけて間接照明器具やそのルーバー等を取り付けている。
施工図面を作成するためにはその元になる原図が作成されていることが前提になる。仮に被告において作成するのであれば,それは設計者が特別に作成するものである以上,別途の費用がかかり,その分の図面作成料が見積りに含まれることになるが,本件ではそのような見積りはない。また,事前に被告がツーク・バイオと会って,打合せが必要となり,しかもその打合せまでに原告側が天井伏図・仕上表を作成し終わっていることが前提となるが,被告はツーク・バイオと天井伏図等に基づいて空調機等の設備の設置について打合せを行ったことはない。被告側で工事遅延を回避するために施工図面を作成したに過ぎない。
根本になる設計図面等ができていなかった以上,かかる図面作成の遅滞が大幅な工期の遅延に結びついたことは明らかである。
(イ) やり直し工事について
被告は,原告側の指示に基づき,平成21年12月15日に4階と5階の天井・壁等の工事に着工して施工したが,ツーク・バイオからやり直しの指示が出たため,連日やり直し工事を行わざるを得なかった。5階のエントランスの間仕切りに至っては,一旦設置したものの,その大部分を撤去させられた。
エントランスの間仕切りの撤去については,ツーク・バイオの方針が決まらなかったので,3日間工事が中止となり,その後も2日間要しており,合計で5日間を空費している。
床フローリングの仕上げは,フローリングの上に約20mmの底目地が付く形になっていたが,施工完了後,おさまりが悪いことから,巾木に変更するように指示され,巾木で再施工している。また,5階の廊下壁面クロス貼仕上げをダイノックシート貼りに変更し,再度グロス貼りに変更する等を初めとして各種の変更等がなされたりしたことも工期の遅れの原因になっている。
なお,原告は丸投げを繰り返したことが指示と異なる工事をした背景にある旨の主張をするが,被告は,原告に対し,工事を受注するに際し,丸受けしてもらえる業者に受けさせるということで了解してもらえるならば工事を受注する旨を伝えていた。
(ウ) 以上のとおり,本来であれば優に25日以上工事完成が遅延したとしても,被告には何ら法的責任がないものであった。それを被告が突貫工事により工事の遅れを大幅に取り戻して奇跡的に平成22年1月9日に完成引渡しすることができたのである。
(2)  争点①のうち,原告の損害額について
(原告の主張)
ア 原告は,被告が工事完成を遅延したことにより,ユーネットに対して営業補償費として950万円を支払わなければならなくなった。
イ 本件クリニック工事が工期内に完成し,何のトラブルも生じなければ,原告はユーネットとの間の業務提携契約に基づき,以下のような建築案件につき,ユーネットから斡旋を受ける予定であった。そして,原告においては,通常,利益率は請負代金の20パーセントに設定しているため,以下の工事だけで9200万円の利益が見込めるはずであった。その後も多くの利益を得ることができるはずであった。しかし,被告の債務不履行を原因とする,工事完成の遅延及び下請業者による本件クリニックの占拠などにより,信用は失墜し,全ての工事計画は白紙に戻った。
よって,原告は,少なくとも9200万円の得べかりし利益を失った。
(ア) クリニック改装工事(請負代金予定額) 2億5000万円
(イ) 美術館新装工事(同上) 1000万円
(ウ) マンション新装工事(同上) 1億5000万円
(エ) ネットカフェ新装工事(同上) 1200万円
(オ) カフェ新装工事(同上) 2500万円
(カ) 某ラーメン店高田馬場店新装工事(同上) 1300万円
ウ 以上より,原告は,被告の債務不履行により,少なくとも1億150万円の損害を被った。本件では,原告は,被告に対し,そのうち8000万円の支払を求める。
エ 被告の下記イの主張について
本件クリニックは,保険の適用のない特殊治療行為を行うクリニックであり,診療所として役所への届出が必要な施設ではない。
Cは,本件クリニック開設に必要な保健所等への届出を適宜行っていた。自動火災報知器の設置が遅れて開設が遅れたという事実は一切ない。そもそも原告は,被告の履行遅滞による損害としてユーネットに遅延金を支払わなければならなくなったこと及び信用毀損により逸失利益が生じたことを主張しているのであって,本件クリニックが診療所として使用できなかったことによる損害を主張しているわけではない。
(被告の主張)
ア 原告の主張をいずれも争う。
イ そもそも本件建物自体が新築中で未だ保存登記がなされていないことから,仮に予定どおり竣工していたとしても,ツーク・バイオは本件建物の4階及び5階部分を診療所として使用することはできなかった。また,本件クリニック4階及び5階には自動火災報知器を設置することになっており,そのためには消防署に図面を添付してその旨の届出をする必要があったが,原告がそれを懈怠していたこともあって,この点からも,被告が工期までに完成し,原告に引き渡したとしても,ツーク・バイオは本件クリニックを診療所として使用することはできない状態であった。
したがって,仮に原告がツーク・バイオに対する平成21年12月22日までの完成引渡の約束に違反したとしても,原告はツーク・バイオに対する診療所としての使用不可による損害を負う法的な義務はない。
(3)  争点②について
(被告の主張)
ア 被告は,本件クリニック工事について,原告から,別紙1「追加変更工事一覧表(aクリニック新装工事関連)」の「施工者側」欄記載のとおりの追加変更工事を請け負い,これを完成して原告に引渡した。追加変更工事代金は1434万3499円(消費税込み)である。
イ 原告は,平成22年1月25日に注文書と注文請書(乙10の1,10の2)を被告に一方的に郵送してきたが,被告はこれを無視した。
空調機の室内機だけで新たに405万円がかかっており(乙2),多額の追加変更工事代金が必要となっていることは明らかである。
ウ 仮に,Eが見積書(甲7)をメールし,それに基づいて追加工事費について減額に合意していたとしても,被告はEに追加工事代金に関して交渉する権限を与えていたわけではなく,被告はそれに拘束されるわけではない。
(原告の主張)
ア 原告の主張は,別紙1「追加変更工事一覧表(aクリニック新装工事関連)」の「施主側」欄記載のとおりである。
イ 最終的に原告・被告間で合意がされた本件クリニック工事の追加変更工事代金は,437万5000円である。他は被告の一方的主張であり,具体的な経緯は以下のとおりである。
平成21年12月半ばころ,EからC及びDに対し,追加変更工事代金が800万円(税抜き)である旨のメールが送信された。これに対し,原告は,ツーク・バイオから追加変更工事は認められても500万円程度である旨の指示がされていたことから,Eに対し,追加変更工事代金は437万5000円としたい旨を伝え,同人もこれに同意したものである。そもそも被告は,甲7の見積書において追加変更工事代金を800万円(税抜き)としていたのであって,それより高い金額を請求することは不当である。
ウ Eは,本件クリニック工事の現場担当者であり,工事内容の確認,価格交渉も全て行っているのであって,追加変更工事代金の交渉についてのみ代理権を有していないことはあり得ない。
仮にそうでなくても,本件の事情から,原告が,Eに追加変更工事の代金交渉についても代理権を有していると信ずる正当な理由があるというべきであり,民法110条の表見代理が成立する。
(4)  争点③について
(被告の主張)
ア 被告は,本件駐車場工事について,原告から,別紙2「追加変更工事一覧表(パチンコb店内装工事)」の「施工者側」欄記載のとおりの追加変更工事を請け負い,これを完成して原告に引渡した。追加変更工事代金は430万円(消費税込み)である。
イ 平成21年12月初めころ,本件駐車場工事現場において,Cから被告の現場総監督H(以下「H」という。)に対し,追加変更工事を進めるようにとの依頼があり,被告は,平成22年1月7日に御見積書(乙3)を原告にメールした。これに対し,原告からは金額を含め特に異議はなかった。
ウ 原告の下記ウの主張について
被告は,本件駐車場工事の当初見積額である7350万円よりも2割近くも安い6000万円での契約締結を余儀なくされたのであり,この時点で,7350万円を前提とする金額不増減の合意は前提を失って白紙に戻ったというべきである。当初見積金額を大きく値切って赤字同然の工事を請け負わせた原告とこれを敢えて請け負った被告との間には,追加変更工事に伴う費用増加の際には,被告が一方的に損失を被ることがないよう,合理的な範囲内で被告が原告に増加費用の負担を求めうる旨の黙示の合意があったと見る方が自然であり,当初の見積書の記載がたまたま訂正されずに残存しただけとみられる文言に拘泥すべきではない。
(原告の主張)
ア 原告の主張は,別紙「追加変更工事一覧表(パチンコb店内装工事)」の「施主側」欄記載のとおりである。
イ Cは,被告に対し,追加変更工事を進めるよう指示を出したことはない。御見積書(乙3)について,Cは,不当な請求であると考えたため無視したものである。
ウ 本件駐車場工事の当初の見積りにおいては,工事完成後に作業の増減がないことを前提に見積りがなされている(乙9の1,9の2)。作業量の増加による追加変更工事代金の請求が認められないことは明白である。なお,本件のように業者間の工事代金の見積り及び価格決定にあたっては,見積書で提示された金額から2割程度の減額がなされて,合意がなされることは決して珍しいことではない。
第3  当裁判所の判断
1  争点①のうち,被告の債務不履行責任について
(1)  まず,前記前提事実のとおり,本件クリニック工事の完成引渡し予定日は平成21年12月21日であり,一方,被告が本件クリニック工事を完成させて原告に対して引き渡したのは平成22年1月9日であった以上,被告が契約上の完成引渡し予定日までに本件クリニック工事を完成することができなかったことは明らかである。
そこで,被告の責に帰すべき事由により,本件クリニック工事の完成が遅延したと認められるか否かを,以下検討する。
(2)  本件においては,本件クリニック工事の現場担当者であるC及びEの陳述書等の証拠がないため不明な点が多いが,前記前提事実,証拠(甲7,8,乙2,11の1,11の2,12の1,12の2,13の1,13の2,14の1,14の2,16,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,少なくとも以下の事実が認められる。
ア 本件クリニック工事の設計・現場管理は,ユーネットが担当し,同社のFがその担当者であった。
イ 被告は,本件クリニック工事を訴外有限会社カムラドコーポレーション(以下「カムラド」という。)に一括下請けさせた。
ウ 本件クリニック工事の施工図面は,設計図面及び天井伏図(空調設備,換気設備,呼気設備及び照明器具の位置図を記載した図面)の存在を前提として作成されるものであるところ,施工図面の作成義務は施工業者である被告にあり,設計図面及び天井伏図の作成義務は設計業者であるユーネットにあった〔なお,被告は,施工図面の作成義務はなかったという旨の主張をするが,被告代表者自身,施工図面の作成義務が被告にあることを自認する供述をしているのであって(被告代表者),被告の主張には理由がない。〕。
エ ユーネットから被告に対して設計図面が交付されなかったため,被告は着工日までに施工図面を作成することができず,平成21年12月3日ころ,やむなく現地において実測した上で墨芯出しに着手した上,施工を始めることを余儀なくされた〔なお,同年11月25日までにユーネットから被告に対してイメージ図及び平面図(乙11の1,11の2,12の1,12の2,13の1,13の2)が交付されているが,実測がされていない不完全なものであった。〕。
オ 同年12月12日又は同月13日ころ,ユーネットから被告に対して設計図面が交付され,さらに同月14日ころ,ユーネットから被告に対して天井伏図が交付されたが,同天井伏図は図面上の梁や柱型の位置の状況が現状と異なり不完全なものであったことから,被告側(具体的には訴外有限会社ハッピーライティング)において実測図面を作成した。
カ 本件クリニックのエントランスの間仕切りに関し,ツーク・バイオ側の方針が決まらなかったことから,同月12日から同月14日までの3日間本件クリニック工事は中断した。その後,エントランスの間仕切りの撤去という方針が決まったので,被告は,同月15日から2日間かけて,同間仕切りの解体撤去,撤去後の床の補修,下り壁の製作・施工に着手することとなった(なお,被告が主張するその余のやり直し工事については,その詳細は本件証拠上不明というほかない。)。
(3)  そうすると,本件クリニック工事の完成引渡し予定日は同年12月21日であるが,原告側(ユーネット)から同月12日又は同月13日ころに至るまで設計図面が被告に対して交付されなかったこと,加えて,前記着手日(同年11月25日)から20日間も経過した同年12月14日になってようやくユーネットから天井伏図が被告に交付されたこと(ただし,これとて不完全なものであった。)からすれば,被告は,施工図面を作成することができない状態で本件クリニック工事に着手せざるを得ず,かつ,被告において施工図面を作成することができたのが同月14日以降であり,しかも施主であるツーク・バイオの都合で同月12日から同月14日まで工事を中断させられたというのであるから,被告において契約上の完成引渡し予定日である同月21日から19日間を経過した平成22年1月9日に本件クリニック工事を完成させて引き渡すことになった点について,直ちに被告にその責に帰すべき事由があったとは認め難い。
なお,原告は,天井伏図の作成が遅延した原因について,被告が天井に配置すべき空調・換気設備の経路,照明器具の寸法及び候補となる照明器具の提示を遅滞し,さらに被告から提示された照明等のサイズ及び設置方法に間違いがあったために天井伏図の位置状況が現実と異なっていたからであるという旨の主張をする。しかしながら,原告も認めるとおり,ユーネットのFが天井伏図の作成に必要な照明器具の選択権を持っており,施主のツーク・バイオとユーネットが最終的にこれらを決めるのであり,そもそも施工業者である被告が関与すべきものではなかったことからすれば,原告の主張は理由がない。
(4)  以上に加え,後述するとおり,被告は,原告側の指示により別紙「追加変更工事一覧表(aクリニック新装工事関連)」の「施工者側」欄記載のとおりの追加変更工事を施工しているのであって(ただし,同一覧表番号1の①を除く。),かかる点も考慮すると,やはり本件クリニック工事の完成遅延について被告に帰責事由があるとは認められない。
(5)  なお,原告は,被告に対して再三にわたり工期の厳守を伝えていた旨の主張をする。
この点,証拠(甲7,8,乙16,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,主としてCとEが本件クリニック工事について交渉していたことが認められるところ,ユーネットと原告との間の業務提携契約書(甲1)によれば,工事遅延の損害金として原告がユーネットに対して1日につき50万円の補償額を支払う旨の合意がされていることからすれば,本件クリニック工事の完成が遅延すると原告に大きな損害が生じる以上,少なくとも本件クリニック工事の現場において,CからEに対し,工期の厳守が伝えられていたものと推測するのが自然である(ただし,Eから被告代表者にその旨伝えられたこと,Cが直接被告代表者にその旨伝えたことについてはこれを認めるに足りる証拠はない。)。
しかしながら,仮に被告側に工期の厳守が伝えられていたとしても,上記のとおり,完成遅延について被告に帰責事由が認められない以上,厳守すべき工期を守ることができなかったとしても,被告が債務不履行責任を負うことはなく,やはり原告の主張は理由がない。
(6)  また,原告は,被告が本件クリニック工事を下請業者に一括丸投げしたことが情報伝達の遅れなどを引き起こし,工事完成の遅延に繋がったなどとも主張するが,下請業者(カムラド)に一括丸投げしたことと工事完成の遅延との間の因果関係を認めるに足りる証拠はなく,理由がない。
(7)  以上より,本件クリニック工事の完成遅延につき,被告に債務不履行責任は認められない。
2  争点①のうち,原告の損害について
上記1のとおり,被告に本件クリニック工事契約についての債務不履行責任は認められないので,原告が主張する各損害について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。
3  争点②について
(1)  争いのない事実,証拠(甲7,8,乙2,10の1,10の2,16,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成21年12月28日,原告に対し,本件クリニック工事の追加変更工事の見積りとして,代金額1434万3499円の見積書を送付したこと,その後,Eは,Cに対し,本件クリニック工事の追加変更工事の見積りとして,代金額800万円(消費税抜き)の見積書をメールで送信したこと,原告は,平成22年1月25日,被告に対し,本件クリニック工事の追加変更工事代金として437万5000円及び仕様変更承認に伴う100万円の減額が記載された注文書及び注文請書を送付したことが認められる。
(2)  前述したとおり,本件クリニック工事の現場担当者であるE及びCの陳述書等の証拠がないために上記事実の背景事情は不明というほかないが,上記認定事実,証拠(甲7,乙2,16,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,別紙1「追加変更工事一覧表(aクリニック新装工事関連)」の工事のうち,番号1の「①4階エントランス床を既存大理石からタイルに変更」を除く,その他の各追加変更工事については,その旨の原告被告間の合意及び各追加変更工事の完成引渡しを認めるのが相当である(なお,番号1「①4階エントランス床を既存大理石からタイルに変更」についてはこれを認めるに足りる証拠はない。)。
そこで,次に追加変更工事の代金額について検討するに,上記認定事実のとおり,被告の現場担当者であったEの方から原告の現場担当者であったCに対して追加変更工事の代金額を800万円(消費税抜き)とするメールを送信していることからすれば,EとCとの間で追加変更工事の代金額を減額する交渉が行われ,EからCに対して1434万3499円の代金額を800万円(消費税抜き)にまで減額する旨の提示があったというべきである。そうすると,原告と被告との間で,少なくとも800万円(消費税抜き)までは減額の合意があったと認めるのが相当である。
この点,原告は,最終的には代金額を437万5000円とし,さらに仕様変更の点について追加変更工事代金から100万円を減額する旨の合意がされたという旨の主張をし,上記認定事実のとおり,原告はその旨の注文書及び注文請書を被告宛に送付しているが,かかる事実から直ちにEとCの間で上記合意がされたと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。よって,原告の主張は理由がない。
したがって,結局,本件において,原告は,被告に対し,本件クリニック工事の追加変更工事代金として800万円(消費税抜き)の支払義務を負っているものと解するのが相当である。
(3)  なお,被告は,Eに対して追加変更工事の代金額を決める権限を付与していないので,EとCの減額合意に被告が拘束されることはないという旨の主張をする。
しかしながら,被告がEに対して追加変更工事に関して交渉する権限を与えていたことに争いはない以上,仮に被告が主張するとおり,Eに追加変更工事の代金額についての権限までは付与されていなかった事実が認められたとしても,原告の現場担当者であったCにおいて代金額についてもEに権限があると信ずべき正当な理由があると認めるのが相当である。よって,原告が主張するとおり,民法110条の表見代理が成立し,代金減額合意の効果は被告に及ぶと解すべきである(なお,反論の機会を与えるも,被告はこの点に関して特段の反論をしない。)。
4  争点③について
(1)  被告の担当者であるHが御見積書(乙3)を原告の担当者であるCにメールで送信し,これに対して特段の異議等がなされなかったこと(争いのない事実)に加え,証拠(甲8,乙16,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,Cは,Hに対し,別紙2「追加変更工事一覧表(パチンコb店内装工事)」の「施工者側」欄記載のとおりの追加変更工事を指示し,Hがこれを承諾したことが認められる。
そして,別紙2「追加変更工事一覧表(パチンコb店内装工事)」番号2以外の工事については,同一覧表「施主側」の「追加変更工事の認否」欄記載のとおり,いずれの工事も完成していることに当事者間に争いはなく,同一覧表番号2についても,証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば,完成したと認めるのが相当であるので,被告主張の追加変更工事はいずれも完成したものと認められる。
以上より,原告は,被告に対し,本件駐車場工事の追加変更工事代金として,別紙2「追加変更工事一覧表(パチンコb店内装工事)」の「合計」欄記載のとおり,417万円及び消費税20万8500円の合計437万8500円のうち被告が本件で請求する430万円の支払義務を負っているものと解するのが相当である。
(2)  なお,原告は,別紙2「追加変更工事一覧表(パチンコb店内装工事)」の「施主側」欄記載のとおりの主張をするが,いずれもこれらを認めるに足りる証拠はない。
また,原告は,本件駐車場工事の当初の見積りにおいて,工事完成後に作業の増減はないことを前提に見積りがなされている(乙9の1,9の2)ことからすれば,作業量の増加による追加変更工事代金の請求は一切認められないという旨の主張をするが,前記判断のとおり,原告(C)の指示を受け,被告(H)がこれを承諾して追加変更工事が施工されている以上,乙9の1,乙9の2に「施工完了後の実施数量計算による増減額は,無いものと致します。」と記載されていることが追加変更工事に要した費用を原告が免れることができる理由とは直ちに認められないので,原告の主張は理由がない。
5  まとめ
被告は,原告に対し,本件クリニック工事につき本工事残代金3207万5000円及び追加変更工事代金840万円,本件駐車場工事につき本工事残代金3550万円及び追加変更工事代金430万円の合計8027万5000円並びに反訴状送達の日の翌日である平成22年5月21日から支払済みまで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めることができ,一方,原告の被告に対する請求は理由がないと解するのが相当である。
第4  結論
以上より,原告の本訴請求は理由がないので棄却し,被告の反訴請求は主文の限度で理由があるので認容し,その余を棄却し,本訴・反訴を通じて訴訟費用につき民訴法61条,64条本文を適用し,仮執行宣言につき同法259条1項を適用し,主文のとおり判決する。
(裁判官 谷田好史)

 

〈以下省略〉

 

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