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判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(302)平成19年12月26日 東京地裁 平17(ワ)23477号 特許権侵害差止等請求事件 〔金属製ドラムアウタースキン事件〕

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(302)平成19年12月26日 東京地裁 平17(ワ)23477号 特許権侵害差止等請求事件 〔金属製ドラムアウタースキン事件〕

裁判年月日  平成19年12月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)23477号
事件名  特許権侵害差止等請求事件 〔金属製ドラムアウタースキン事件〕
裁判結果  請求一部認容  文献番号  2007WLJPCA12269014

要旨
◆電着箔製造用ドラムの外周表面部分の製造方法に関する特許権A及びBが侵害されたとして、同外周表面部分の製造販売の差止め、製品の廃棄及び損害賠償請求がされた事案につき、特許権Bは特許権Aの分割出願によるものであるが、特許権Bに係る発明には、原出願当初明細書に記載した事項の範囲内でないものを含んでおり、分割要件を欠くから、適法な分割出願とは認められないし、当該特許発明には新規性もないとして、特許権Bに対する特許権侵害を認めず、特許権Aに対する特許権侵害のみを認めたが、最終の侵害からは七年近くを経過しており、口頭弁論終結時に特許権Aの侵害のおそれはないから差止めや廃棄請求には理由がないとして、損害賠償請求のみを認容した事例

評釈
千葉大学IP研究会・特許ニュース 12204号1頁

参照条文
特許法29条1項3号
特許法44条
特許法100条
特許法102条1項
特許法104条の3

裁判年月日  平成19年12月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)23477号
事件名  特許権侵害差止等請求事件 〔金属製ドラムアウタースキン事件〕
裁判結果  請求一部認容  文献番号  2007WLJPCA12269014

新潟県上越市<以下略>
原告 日本ステンレス工材株式会社
同訴訟代理人弁護士 高橋賢一
同訴訟代理人弁理士 吉井剛
同 吉井雅栄
秋田県大館市<以下略>
被告 ニューロング秋田株式会社
(以下「被告秋田」という。)
東京都台東区<以下略>
被告 ニューロング株式会社
(以下「被告ニューロング」という。)
被告両名訴訟代理人弁護士 柏木薫
同 松浦康治
同 今井浩
同 柏木秀一
同 福井琢
同 斎藤三義
同 黒河内明子
同 粕谷宇史
同 小林利男
同 古屋正典
同 黒田貴和
同補佐人弁理士 竹本松司

 

主文
1  主位的請求
(1)  被告らは,原告に対し,連帯して530万円及びこれに対する平成13年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(2)  原告のその余の主位的請求をいずれも棄却する。
2  原告の予備的請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,これを100分し,その1を被告らの負担とし,その余を原告の各負担とする。
4  本判決は,第1項(1)に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1  請求
1  主位的請求
(1)  被告秋田は,別紙被告方法目録1,被告方法目録2及び被告方法目録3記載の電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造方法を用いてアウタースキン及び当該アウタースキンを有する電着箔製造用ドラムを製造してはならない。
(2)  被告秋田は,前項の各製造方法を使用して製造したアウタースキン及び当該アウタースキンを有する電着箔製造用ドラムを販売してはならない。
(3)  被告秋田は,本店及び営業所に存する前項のアウタースキン及び電着箔製造用ドラム並びにそれらの半製品を廃棄せよ。
(4)  被告ニューロングは,(1)項の各製造方法を使用して製造したアウタースキンを有する電着箔製造用ドラムを販売してはならない。
(5)  被告ニューロングは,本店及び営業所に存する前項の電着箔製造用ドラム及びそれらの半製品を廃棄せよ。
(6)  被告らは,原告に対し,連帯して,次の金員を支払え。
ア 3000万円及びこれに対する平成13年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
イ 1億1400万円及びこれに対する平成14年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
ウ 1800万円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
エ 1650万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
オ 3450万円及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
カ 1950万円及びこれに対する平成17年9月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
キ 2325万円及びこれに対する被告ニューロングにつき平成17年11月17日から,被告秋田につき同月18日から支払済みまで年5%の割合による金員。
2  予備的請求
(1)  被告秋田は,別紙被告方法目録1及び被告方法目録2記載の電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造方法を用いてアウタースキン及び当該アウタースキンを有する電着箔製造用ドラムを製造してはならない。
(2)  被告秋田は,前項の各製造方法を使用して製造したアウタースキン及び当該アウタースキンを有する電着箔製造用ドラムを販売してはならない。
(3)  被告秋田は,本店及び営業所に存する前項のアウタースキン及び電着箔製造用ドラム並びにそれらの半製品を廃棄せよ。
(4)  被告ニューロングは,(1)項の各製造方法を使用して製造したアウタースキンを有する電着箔製造用ドラムを販売してはならない。
(5)  被告ニューロングは,本店及び営業所に存する前項の電着箔製造用ドラム及びそれらの半製品を廃棄せよ。
(6)  被告らは,原告に対し,連帯して,次の金員を支払え。
ア 3000万円及びこれに対する平成13年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
イ 1億1400万円及びこれに対する平成14年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
ウ 1800万円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
エ 1650万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
オ 3450万円及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
カ 1950万円及びこれに対する平成17年9月1日から支払済みまで年5%の割合による金員。
キ 2325万円及びこれに対する被告ニューロングにつき平成17年11月17日から,被告秋田につき同月18日から支払済みまで年5%の割合による金員。
第2  事案の概要
1  訴訟の概要
本件は,電着箔製造装置を構成する金属製ドラム(電着箔製造用ドラム)の外周表面部分に当たるアウタースキン(「アウターリング」,「トップスキン」ともいう。)の製造方法について特許権を有する原告が,上記ドラムを販売している被告ニューロング及び同ドラムを製造して被告ニューロングに販売している被告秋田に対し,上記特許権(侵害)に基づいて,上記アウタースキン及び同ドラムの製造販売の差止め及びそれら製品等の廃棄並びに損害賠償金及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
主位的請求は,後記発明Aに基づく後記方法1ないし3に対するもの,予備的請求は,後記発明Bに基づく後記方法1に対するもの又は後記発明Cに基づく方法1及び方法2に対するものである。
2  技術的背景の要点
電着箔製造装置とは,電着法により銅箔,鉄箔,ステンレス箔等の金属箔を製造する装置であり,代表的なものは,鋼製ドラム(鋼製インナードラムに銅製リングを焼き嵌めしてある。)の外周面にチタン製のアウタースキンが嵌められている電着ドラムを回転駆動源に連結されている軸で支え,電着ドラムを陰極としてその下側一部を,陽極が設置された電解槽の電解液中に浸し,この電着ドラムを回転させるという構造を有している。電着ドラムと陽極との間で通電すると,回転する電着ドラムが電解液に浸されている間にアウタースキン外側に電着物たる金属箔が析出するので,その金属箔を電解槽外側で回転する電着ドラム外周面から剥離し巻き取っていくと,金属箔を連続的に生産することができることになる。
ところで,上記アウタースキンは,チタンの板材を円筒状に巻いてその端を溶接してつなげることによって製造されるが,このときの溶接による熱影響により,溶接部及びその付近の金属組織が変異してしまう。その結果,溶接部及びその付近に位置する部分に析出された電着金属箔には,その部位の組織の違いが転写され,肌荒れ状の凹凸ないしは不規則な模様が生じ,この金属箔をプリント配線回路として使用すると断線や短絡事故のおそれがあるため使用できず,あるいは溶接部に位置する部分で金属箔の断絶が生じてしまうなど,金属箔の連続的生産を困難にするとともに,その生産歩留りを低下させることになってしまう。
以上の不都合を解消するためには,溶接部及びその付近をなるべく母材部と均質にする必要があり,そのため,溶接時に溶接の際の熱影響範囲をなるべく狭め若しくは金属組織変態を抑制すること,又は溶接後に溶接により変異した金属組織の改善を図ることが要請される。
(甲2,14,20,23,30,乙40,42,弁論の全趣旨)
3  基本的事実関係
(1)  当事者
ア 原告
原告は,昭和22年6月28日設立されたステンレス鋼,耐熱鋼,チタニウム,その他各種金属及び合金を主材料とする製品の製造,加工並びに販売等を目的とする株式会社である。
(弁論の全趣旨)
イ 被告ら
被告秋田は,銅箔製造装置の製造,販売等を目的とする株式会社であり,被告ニューロングは,機械の販売等を目的とする株式会社である。
被告秋田は,電着箔製造用ドラムを製造し,これを全部被告ニューロングに販売し,被告ニューロングは,これを第三者に販売している。
(争いのない事実,弁論の全趣旨)
(2)  原告の特許権
ア 本件特許権1
原告は,次の特許権を有している((以下,「本件特許権1」又は「本件特許1」といい,その請求項3に係る特許発明を「本件発明A」という。その明細書及び図面を「本件明細書1」といい,別紙特許公報1として添付する。)。
(ア) 本件特許権1の概要(甲1,2)
a 登録番号  第2967239号
b 発明の名称  電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造法
c 出願日  平成3年2月14日
d 出願番号  特願平3-42671号
e 登録日  平成11年8月20日
f 請求項3の記載 別紙特許公報1の該当欄に記載のとおり
(イ) 本件発明Aの内容
a 構成要件の分説
【A】チタン,ニオブ,タンタルなどの純金属製又はこれらの合金製の板材を円筒状に巻き,
【B】板端を突き合わせて板継ぎ溶接したアウタースキンをインナードラムの外周面に被嵌して製造する電着箔製造用ドラムの製造法であって,
【C】前記アウタースキンの板端の継合部の溶接を,継合部内面に内側に向かって開口するV型の開先部を設けずにプラズマ溶接のような溶加棒を使用しない溶接手段で,継合部の内側から行い,
【D】続いてこの溶接部を押し出し加工により内側より外側に突出せしめて外側面が凸となり内側面が凹所となる突出部を形成し,
【E】続いてこの突出部の内側凹部に突出部外面を冷却し乍ら前記内側凹部の埋め溶接を行い,
【F】続いて突出部の外面を温間又は冷間で押潰し加工して母材と同厚に是正し,
【G】続いてこの押潰し加工部を焼鈍する
【H】ことを特徴とする電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造法。
b 明細書に記載された作用効果
「【0023】・・・プラズマ溶接のような溶加棒を使用しない溶接を採用すると,溶接部15と母材との成分差を可及的に小さくすることができ,従って溶接部15と母材との硬度差がなくなり且つ溶接巾も小さくなり,良好な状態で請求項1,請求項2に係る整粒化加工を行うことができるから一層溶接部15及び溶接部15近傍が母材とが(ママ)均質化したアウタースキンが得られる。」
「【0072】本発明は,溶接した継合部を押し出し加工により一旦外面側に突出させて突出部を形成し,この突出部に押潰し加工を施して母材と同厚に是正し,続いて焼鈍加工する為,溶接部や溶接部近傍の変態した組織が母材に近似した硬度,組織に改善され,アウタースキンの母材と溶接部及び溶接部近傍の均質化が可能となる。
【0073】即ち,アウタースキンの母材と溶接部とを均質化するには,母材と同様に溶接部に十分な圧力を与えて所定以上の加工率を与えなければ,母材と近似した組織とはならない。しかし,単に肉盛りした溶接部を押潰し加工しただけでは,内側の肉盛側の溶接部には押圧圧力が加えられ均質化されるとしても,溶接部の内部(奥部)となるアウタースキンの外面側の溶接部には十分な圧力が与えられず,外面側の溶接部の加工率を上げることができない。つまり,アウタースキンの内側から溶接するようにすれば熱影響部をアウタースキン外面側にできるだけ与えない利点が得られることになるが,単に内側を肉盛りした溶接部を押潰し加工しても,溶接部のアウタースキンの外面側には十分な加工率を与えられないから外面側の組織をアウタースキンの母材と近似化することができないという問題がある。
【0074】この点本発明は,内側から溶接する構成としつつも,この溶接部を一旦外側面に突出させ,この突出部を押潰し加工する構成としたから,押潰し加工の加工圧がアウタースキンの外面側の溶接部にも良好に加えられ,外面側にも十分な加工率を与えることができるため母材との均質化が良好に図られることとなる。従って,本発明は,アウタースキンの溶接を内面側から行い,アウタースキンの製箔面(外面)の溶着部巾,熱影響巾を狭く抑制できる上に,前述のように押し出し加工によって外側へ突出された溶接部を押潰し加工することで,溶接奥側となってしまう外面側をも母材と均質化できることとなる画期的な電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造法となる。
【0075】また,本発明は,この内側から溶接を行うに(ママ)手法に加えてこの溶接に際して外面を冷却しつつ行うため,熱影響範囲を一層狭めることができる。
【0076】また,請求項3,4記載の発明においては,継合部をV型の開先部を設けない突合せとし,溶加棒なしで内側から溶接する手法を採用するから,溶接範囲を狭くでき一層母材に近似化した継合部となる。
【0077】以上,本発明により製造したアウタースキンは母材部と継合部との組織が均質となる為良質な箔の製造が可能となる等秀れた特長を発揮する。」
(争いのない事実)
イ 本件特許権2
原告は,次の特許権を有している(以下,「本件特許権2」又は「本件特許2」といい,その請求項3に係る特許発明を「本件発明B」といい,その請求項4に係る発明を「本件発明C」という。その明細書及び図面を「本件明細書2」といい,別紙特許公報2として添付する。)。
(ア) 本件特許権2の概要(甲29,30)
a 登録番号    第3005755号
b 発明の名称   電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造法
c 出願日     平成3年2月14日
d 出願番号    特願平8-326149号
e 分割の表示   特願平3-42671号(本件特許1に係る出願)の分割
f 登録日      平成11年11月26日
g 請求項3及び請求項4の記載 別紙特許公報2の該当欄に記載のとおり
(イ) 本件発明Bの内容
a 構成要件の分説
【A’】チタン,ニオブ,タンタルなどの純金属製又はこれらの合金製の板材を円筒状に巻き,
【B’】板端を突き合わせて板継ぎ溶接したアウタースキンをインナードラムの外周面に被嵌して製造する電着箔製造用ドラムの製造法であって,
【C’】前記アウタースキンの板端の継合部の溶接を,継合部内面に内側に向かって開口するV型の開先部を設けずにプラズマ溶接のような溶加棒を使用しない溶接手段で行い,
【D’】続いてこの溶接部の内側凹部に外面を冷却し乍ら前記内側凹部の埋め溶接を行い,
【E’】続いて前記溶接部での突出外面を温間又は冷間で押潰し加工して母材と同厚に是正し,
【F’】続いてこの押潰し加工部を焼鈍する
【G’】ことを特徴とする電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造法。
b 明細書に記載された作用効果
「【0015】【作用】アウタースキン12の内面に内側に向かって開口するV型の開先部14を形成し,この開先部14において,まず溶接を行うから,アウタースキン12の外面に外側に向かって開口する逆V型の開先部において溶接する場合に比べ,アウタースキン12の外表面に表れる溶接部の巾が狭くなる。従って,箔が析出するアウタースキン12の外表面に生ずる溶接による熱影響を受ける巾がそれだけ狭くなる。
【0016】また,内側凹部17の埋め溶接は押潰し加工用の溶接層19となるが,内側溶接であり,且つ外面を冷却しながら行うため,箔が折出するアウタースキン12の外表面側の組織変態が抑制されることになる。
【0017】溶接部での突出外面を温間又は冷間で押潰し加工を施して該突出外面を母材厚と同厚に是正し,次いて焼鈍処理を行うため,溶接部15及び溶接部15近傍は再結晶し,細粒化,整粒化され,母材と同等の結晶粒度となる。また,加工硬化した該部の硬度も母材と同程度に軟化され,通電効果の不良化も阻止されてアウタースキン12はインナードラム1に確固に嵌着固定できることになる。
【0018】また,プラズマ溶接のような溶加棒を使用しない溶接を採用すると,溶接部15と母材との成分差を可及的に小さくすることができ,従って溶接部15と母材との硬度差がなくなり且つ溶接巾も小さくなり,良好な状態で整粒化加工を行うことができるから一層溶接部15及び溶接部15近傍が母材とが(ママ)均質化したアウタースキン12が得られる。」
「【0067】本発明は,溶接した継合部の突出外面に押潰し加工を施して母材と同厚に是正し,続いて焼鈍加工する為,溶接部や溶接部近傍の変態した組織が母材に近似した硬度,組織に改善され,アウタースキンの母材と溶接部及び溶接部近傍の均質化が可能となる。
【0068】即ち,アウタースキンの母材と溶接部とを均質化するには,母材と同様に溶接部に十分な圧力を与えて所定以上の加工率を与えなければ,母材と近似した組織とはならない。しかし,単に肉盛りした溶接部を押潰し加工しただけでは,内側の肉盛側の溶接部には押圧圧力が加えられ均質化されるとしても,溶接部の内部(奥部)となるアウタースキンの外面側の溶接部には十分な圧力が与えられず,外面側の溶接部の加工率を上げることができない。つまり,アウタースキンの内側から溶接するようにすれば熱影響部をアウタースキン外面側にできるだけ与えない利点が得られることになるが,単に内側を肉盛りした溶接部を押潰し加工しても,溶接部のアウタースキンの外面側には十分な加工率を与えられないから外面側の組織をアウタースキンの母材と近似化することができないという問題がある。
【0069】この点本発明は,内側から溶接する構成としつつも,この溶接部での突出外面を押潰し加工する構成としたから,押潰し加工の加工圧がアウタースキンの外面側の溶接部にも良好に加えられ,外面側にも十分な加工率を与えることができるため母材との均質化が良好に図られることとなる。従って,本発明は,アウタースキンの溶接を内面側から行い,アウタースキンの製箔面(外面)の溶着部巾,熱影響巾を狭く抑制できる上に,前述のように溶接部での突出外面を押潰し加工することで,溶接奥側となってしまう外面側をも母材と均質化できることとなる画期的な電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造法となる。
【0070】また,本発明は,この内側から溶接を行うに(ママ)手法に加えてこの溶接に際して外面を冷却しつつ行うため,熱影響範囲を一層狭めることができる。
【0071】また,請求項3,4記載の発明においては,継合部をV型の開先部を設けない突合せとし,溶加棒なしで内側から溶接する手法を採用するから,溶接範囲を狭くでき一層母材に近似化した継合部となる。
【0072】以上,本発明により製造したアウタースキンは母材部と継合部との組織が均質となる為良質な箔の製造が可能となる等秀れた特長を発揮する。」
(ウ) 本件発明Cの内容
a 構成要件の分説
【A”】チタン,ニオブ,タンタルなどの純金属製又はこれらの合金製の板材を円筒状に巻き,
【B”】板端を突き合わせて板継ぎ溶接したアウタースキンをインナードラムの外周面に被嵌して製造する電着箔製造用ドラムの製造法であって,
【C”】前記アウタースキンの板端の継合部の溶接を,継合部内面に内側に向かって開口するV型の開先部を設けずにプラズマ溶接のような溶加棒を使用しない溶接手段で行い,
【D”】続いてこの溶接部の外面を冷却しながら内側面に肉盛溶接をし,
【E”】続いて溶接部の突出外面を温間又は冷間で押潰し加工して母材と同厚に是正し,
【F”】続いてこの押潰し加工部を焼鈍する
【G”】ことを特徴とする電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造法。
b 明細書に記載された作用効果
上記(イ)bに記載のとおりである。
(争いのない事実)
(3)  被告らの行為
ア 被告秋田による電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造方法は,別紙被告方法目録1ないし3記載のとおりである(なお,以下,同目録の番号順に「方法1」,「方法2」,「方法3」のようにいう。)。
イ 被告秋田は,少なくともかつて,業として,方法3を使用してアウタースキンを製造した。
ウ 被告秋田は,現在は,業として,方法1を使用してアウタースキンを製造している。
(争いのない事実,弁論の全趣旨)
(4)  各方法の構成の分説
ア 方法1の構成は,別紙被告方法目録1の①ないし⑩のとおり分説される。
イ 方法2の構成は,別紙被告方法目録2の①ないし⑩のとおり分説される。
ウ 方法3の構成は,別紙被告方法目録3の①ないし⑤のとおり分説される。
(争いのない事実)
(5)  構成要件の充足
方法1ないし3と本件発明AないしCの充足について争いのない部分は,次のとおりである。
ア 本件発明Aと方法1との対比
方法1の構成は,本件発明Aの構成要件AEFGHを充足する。
イ 本件発明Aと方法2との対比
方法2の構成は,本件発明Aの構成要件AEFGHを充足する。
ウ 本件発明Aと方法3との対比
方法3の構成は,本件発明Aの構成要件をすべて充足する。
エ 本件発明Bと方法1との対比
方法1の構成は,本件発明Bの構成要件A’D’E’F’G’を充足する。
オ 本件発明Cと方法1との対比
方法1の構成は,本件発明Cの構成要件A”D”E”F”G”を充足する。
カ 本件発明Cと方法2との対比
方法2の構成は,本件発明Cの構成要件A”D”E”F”G”を充足する。
(6)  本訴提起に至るまでの経緯
本件訴訟前の原被告ら間の交渉等の経過は,次のとおりである(争いのない事実)。
ア 平成12年9月13日付け通告書
原告は,平成12年9月13日付け通告書(甲3の1・2)で,被告らに対し,被告らの電着箔製造用ドラムの製造方法について開示することを求めた。
この通告においては,原告が,同業者の株式会社ナイカイアーキット(以下「ナイカイ」という。)に同様の通知をしたこと及びナイカイと話し合いを進めている旨が付記されていた。
イ 平成12年10月2日付け回答書
被告らは,平成12年10月2日付け回答書(甲4の1・2)で,原告に対し,被告秋田の電着箔製造用ドラムは本件特許1及び本件特許2の技術的範囲に属さないと判断しており,いかなる方法で製造しているかはノウハウがあって開示できない旨の回答をした。
ウ 平成12年10月6日付け書面
原告は,平成12年10月6日付け「『電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造法』の特許の件」と題する書面(甲5の1・2)で,被告らに対し,被告らの電着箔製造用ドラムの製造方法を明らかにしない限り被告らの主張を認めることができない,たとえノウハウであってもいかなる方法で製造しているかを開示すべきである旨の主張をした。
エ 平成12年10月18日付け回答書
被告らは,平成12年10月18日付け回答書(甲6の1・2)において,アウタースキンの製造方法については試作段階であり製造方法が確定していないが,本件特許1及び本件特許2の技術的範囲に属しない方法を採用する旨を回答した。
オ 平成12年11月2日付け書面
原告は,平成12年11月2日付け「『電着箔製造用ドラムのアウタースキンの製造法』の件」と題する書面(甲7の1・2)で,被告らに対し,本件特許1及び本件特許2に係る製造方法を実施しないこと,被告らの製造方法が確定次第書面で原告に回答すること,仮に被告らが開示を拒みあるいは原告の権利に抵触していた場合には訴訟を提起する旨の通知をした。
カ 平成13年7月27日付け再通告書
原告は,平成13年7月27日付け再通告書(甲8の1・2)において,被告らに対し,電着箔製造用ドラムの製造方法について回答をするよう求めた。
キ 平成13年8月21日付け回答書
被告らは,平成13年8月21日付け回答書(甲9の1・2)で,原告に対し,被告らの電着箔製造用ドラムは,「内側面に肉盛溶接し」,「内側に埋め溶接を行い」とする本件特許1及び本件特許2の技術的範囲には属さない,本件特許1及び本件特許2の技術的範囲に属さない電着箔製造用ドラムのアウターリングの製造方法に係る特許出願をしているものである旨を回答した。
ク 平成13年8月29日付け再通告書
原告は,平成13年8月29日付け再通告書(甲10の1・2)で,被告らに対し,被告らの製造方法の具体的構成等を示すこと,被告らが出願中としている特許の内容を明らかにすることを求めた。
ケ 平成13年9月21日付け再回答書
被告らは,平成13年9月21日付け再回答書(甲11の1・2)で,原告に対し,被告らの製造方法は「板体の対向する両端に,径方向外側に屈曲する立上り部をそれぞれ設け,これら立上り部どうしを溶接して外側に突出する突出部を形成した後,該突出部の外面を圧延加工して母材と同厚にする」というものであるから,「内側面に肉盛溶接し」,「内側に埋め溶接を行い」とする本件特許1及び本件特許2の構成要件を具備していない旨の回答をした。
コ 平成13年12月26日付け再通告書
原告は,平成13年12月26日付け再通告書(甲12の1・2)で,被告らに対し,上記ケの被告の説明に基づいて作成した図(板材の各端縁を外側に直角に曲げた後に,この突出部の側面同士を突き合わせて溶接したもの)を提示した上で,被告らの製造方法がどのような態様なのか具体的な説明を求めた。
サ 平成14年2月12日付け回答書
被告らは,平成14年2月12日付け第3回回答書(甲13の1・2)で,原告に対し,被告らの製造方法は,原告が提示した図の方法と相違ないことを確認した。
シ 証拠保全
原告は,秋田地方裁判所大館支部に証拠保全の申立てをし,平成16年4月1日,同支部は証拠保全決定(甲15)をし,同月9日,被告秋田の工場で検証が行われた(甲16。以下「本件証拠保全」という。)。
ス 本件訴訟提起
原告は,平成17年11月10日,本件訴訟を提起した。
4  争点
(1)  方法1の構成要件BB’B”及びCC’C”の充足並びに方法2の構成要件BB”及びCC”の充足
(2)  方法1及び方法2の構成要件Dの充足
(3)  本件発明B及び本件発明Cの分割要件違反
(4)  各方法の実施時期
(5)  方法3の先使用権
(6)  共同不法行為
(7)  消滅時効及び権利濫用
(8)  損害
(9)  方法3の差止めの必要性
5  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(構成要件BB’B”及びCC’C”の充足)
ア 原告
(ア) 「板端」の充足
a クレーム解釈
(a) 構成要件BB’B”及び同CC’C”にいう「板端」とは,単にアウタースキンを環にすべく溶接して繋ぐ部分という程度の意味であり,板端を直角に曲げた後に溶接する継ぎ方では,板端を直角に曲げた後に板の外方を向く端面が「板端面」である。
(b) 被告らは,「V型の開先部」が観念されるのは,板端の継合部の溶接が「突合せ継手溶接」だからであると主張する。
しかしながら,板端をつなぐ際に「V型の開先部」を設ける発明はTIG溶接を採用している本件特許1の請求項1及び2であり,本件発明A(本件特許1の請求項3)は,プラズマ溶接等を採用し,板端に「V型の開先部」を設けない発明である。ただ,請求項1及び2との対比上,「V型の開先部を設けずに」と記載したにすぎず,これは,溶加棒を使用せず「V型の開先部」を設けないでされるプラズマ溶接等を採用することを示すために使用された文言であり,板端をどのように合わせるのかとは関係がない。
また,「V型の開先部」は,「突き合わせ継手」の場合のほかに「へり継手」の場合にも存在し,V型の開先部を設けることと「突き合わせ継手」を採用することとは,直接の関係はない。
b 充足
方法1及び方法2は,いずれも「板端」を充足する。
(イ) その余の点の充足
方法1は,構成要件BB’B”及びCC’C”のその余の点を充足し,方法2は,構成要件BB”及びCC”のその余の点を充足する。
イ 被告ら
(ア) 「板端」の充足
a クレーム解釈
(a) 原告の主張(ア)a(a)は否認する。
構成要件BB’B”にある「板端を突き合わせて板継ぎ溶接した」とは,溶接継手として「突き合わせ継手」を採用したことを意味する。この「突き合わせ継手」とは,「母材がほぼ同じ面内の溶接継手」であると定義されており(乙42),板端の端面同士を突き合わせた溶接のことである。
(b) また,構成要件CC’C”に「板端の継合部の溶接を,・・・V型の開先部を設けずに」とあるが,「V型の開先部」が観念されるのは,板端の継合部の溶接が「突合せ継手溶接」だからである。なぜならば,V型の開先部は,溶接継手の種類として「突き合わせ継手」を採用したときにのみ存在し得るからである。
b 充足
同(ア)a(b)は否認する。
方法1及び方法2は,板端付近を直角に曲げて立ち上げて突出部を形成し,この突出部の側面同士を継合させ,この継合部を溶接するのであり,板端の端面を継合させるものではない。
(イ) その余の点の充足
同(イ)は認める。
(2)  争点(2)(構成要件Dの充足)
ア 原告
方法1及び方法2は,構成要件Dを充足する。
イ 被告ら
原告の主張は否認する。
方法1及び方法2には,「押し出し加工」の工程がない。
(3)  争点(3)(本件発明B及び本件発明Cの分割要件違反)
ア 被告ら
(ア) 分割要件違反
本件特許2の請求項3(本件発明B)及び請求項4(本件発明C)は,その原出願である特願平3-42671号(本件特許1に係る出願)の適法な分割出願ではなく,その出願日は現実の出願日である平成8年11月20日となる。
その結果,本件発明B及び本件発明Cは,その出願前日本国内で頒布された刊行物である特開平4-262872号公報(本件特許1に係る公報)記載の発明と同一であり,特許法29条1項3号に該当する新規性を欠く発明となり,その特許は,無効である。
(イ) 原出願当初明細書の記載
a 記載内容
構成要件E’E”における「突出外面」等について,原出願の出願当初の明細書及び図面(甲31,乙37。以下「原出願当初明細書」という。)には,次の記載がある。
特許請求の範囲について,「【請求項1】・・・続いてこの溶接部及び溶接部近傍を押出し加工により内側より外側に突出せしめて突出部を形成し,」「【請求項2】・・・続いてこの肉盛溶接部を内面側より押出加工して,外面側に突出部を形成し,」
課題を解決するための手段について,「【0011】・・・続いてこの溶接部を中心とした溶接部及び溶接部近傍を押し出し加工により内側より外側に突出せしめて突出部を形成し,続いてこの突出部の内側凹部に突出部外面を冷却し乍ら凹部の埋め溶接を行い,続いて突出部の外面を温間又は冷間で押潰し加工して・・・」「【0012】・・・続いてこの肉盛溶接部を内面側より押出し加工して,外面側に突出部を形成し,続いて突出部の外面を温間又は冷間で押潰し加工して・・・」
請求項1の発明について,「【0016】また,該開先部14を溶接した後,内側から外側への押し出し加工を行うから内側に凹部の埋め熔接を行うことを容易にする内側凹部17が形成され,外側に溶接部15,溶接部15近傍の組織成改善をすることができる突出部16が形成される。」
請求項2の発明について,「【0020】請求項1に対して継合部13の押し出し加工と凹部の埋め溶接の順序が逆になっている。」「【0021】すなわち,継合部13の内側面に肉盛溶接を行い,それから押し出し加工により内側より外側へ突出部16を形成しているが,・・・」
第1実施例について,「【0029】・・・変態組織,粗大粒組織となった溶接部15及び溶接部15近傍を後記する加工率20%以上の押潰し加工を可能にする為押し出し加工により内側より外側に突出せしめて突出部16を形成する。」「【0031】この場合,アウタースキン12の板厚をTとし,押し出し加工の半径方向の変位量をHとすると【0032】【数1】・・・となるように突出せしめることが望ましい。」「【0043】・・・そして,該実施例に係るアウタースキン12は,従来例である特開平2-243790号と異なり,溶接部15をそのまま且つ直接にたたき処理等を施すものではなく,押し出し加工,肉盛加工,押潰し加工,焼鈍加工を施すものであるから,それだけ溶接部15及び熱影響部と母材部との近似化が達成されることになる。」
第2実施例について,「【0045】請求項1に対して溶接部15の押し出し加工と凹部の埋め溶接の工程順が逆になっている。」「【0046】即ち,溶接部15及び溶接部15近傍の内側面に肉盛溶接を行い,それから押し出し加工により内側より外側へ突出部16を形成しているが,・・・」「【0053】・・・押し出し加工により溶接部15及び溶接部15近傍に施した二次溶接層19の全部を内側より外部に突出せしめて突出部16を形成する。」「【0054】これは溶接部15及び溶接部15近傍を押し出し加工により外側に突出せしめて肉盛溶接部を略内側面と面一円弧状態に形成する為である。」「【0055】この場合前記C同様アウタースキン12の板厚をT,押し出し加工の半径方向の変位量をH”(≠内面側の肉盛溶接層の高さH’)とすると【0056】【数3】・・・となるように突出させる。」「【0057】この押し出し加工は,可及的にこの部分を母材と面一円弧状態にする為及び次の押潰し加工により突出部16部分の組織の結晶を細粒化,整粒化するための加工歪みを与えるために行う。」
発明の効果について,「【0069】・・・継合部を押し出し加工により,一度外面側に膨出させて突出部を形成し,この突出部に押潰し加工を施して再び母材と同厚に是正し,続いて焼鈍加工する為,溶接により変態した組織が再び母材に近似した硬度,組織に改善され,アウタースキンの母材と溶接部及び溶接部近傍の均質化が可能となる。」
b 原出願当初明細書の開示又は示唆
(a) これらの記載によれば,原出願当初明細書には,押し出し加工により突出部を形成する旨の記載はあるが,他の突出部の形成方法についての説明はなく,また,それを示唆する記載もない。
(b) 後記原告の主張(イ)b(b)ⅲは否認する。
本件のように,約8mmもの板厚のあるチタン板について,あらかじめ曲げ加工を施した板材同士を溶接して突出部を形成することは,常識的にはあり得ない継手溶接方法であり,技術常識や周知慣用の方法ではなかった。
(c)ⅰ 同(イ)b(b)ⅴ(ⅰ)は否認する。
溶接部に肉盛り等をして厚みを増し,圧延するのみでは十分な塑性ができないが,「押し出し加工」をすると,この部分の再結晶化のための塑性歪を与えることができるのである。
ⅱ それゆえ,押し出し加工を複数回行って溶接域の組織むらをより一層減少させ,結晶粒度,研磨性,耐食性を母材により一層近似させようとする技術が特許出願されている(特開平8-225905号公報(乙43))。
c 出願経過
(a) 原告は,原出願に係る平成11年3月29日起案の拒絶理由通知書(乙39)に対する意見書(乙41)において,「・・・本発明はクレームに明確に特定しておりますように,溶接をアウタースキンの内側から行う構成であって,しかもこの溶接部を外側へ押し出し加工して突出部を形成した後,この突出部を押潰し加工する点に画期的な特徴があるもので,この点は引用例には全く開示されておりません。本発明は,内側から行う溶接部をアウタースキンの外側に押し出し加工を施して突出させ,押潰す点に画期的な創作性があるもので,引用例にはこの点全く開示されておりません。」と主張した。
(b) このように,原告は,原出願の各発明につき,内側から行う溶接部をアウタースキンの外側に押し出し加工を施して突出させ,押しつぶす点に画期的な創作性があると主張し,それが認められて特許が付与されたものである。
(ウ) 分割出願
a 分割出願後の本件発明B及び本件発明Cは,突出外面や内側凹部の形成方法に限定はなく,「内側から外側への『押し出し加工』により形成される『突出外面』又は『内側凹部』」以外の方法により形成される「突出外面」又は「内側凹部」をも含む。
b その結果,分割出願後の本件発明B及び本件発明Cは,原出願当初明細書に記載した事項の範囲内でないところものを含むこととなった。
イ 原告
(ア) 分割要件違反
被告らの主張(ア)は否認する。
(イ) 原出願当初明細書の記載
a 記載内容
同(イ)aは認める。
b 原出願当初明細書の開示又は示唆
(a) 同b(a)は否認する。
(b) 発明の本質的技術事項
ⅰ 原出願当初明細書に開示された発明の本質的部分は,①板端同士を突き合わせて内側より溶接する,②後の塑性加工(押潰し加工)により歪を与える際,大きな歪を与えるため,すなわち,塑性加工量(押潰し量)を大きくするため,該部分を厚くすべくアウタースキンを外側へ突出させ,内側に埋め溶接し,厚さを大にする,③アウタースキンの端部同士の厚くなった溶接部を塑性加工(押潰し加工)する,④塑性加工(押潰し加工)を施した部分を焼鈍する,という4点にある。
ⅱ 原出願当初明細書には,突出部の形成方法を押し出し加工に限定する旨の記載はなく,突出部を押し出し加工以外の方法で作れば原出願当初明細書に記載された発明の本質に反するという記載もなく,さらに,突出部を押し出し加工以外の方法で作ることが実施の障害となる記載もない。
ⅲ あらかじめ曲げ加工を施した板端同士を溶接して突出部を形成することは技術常識であり,周知慣用のものである。原出願当初明細書は,実施例において,技術常識の一つである押し出し加工による板材の突出部の形成方法をもって説明をしているだけである。
ⅳ 突出部の形成方法は,原出願当初明細書に記載された発明にとって非本質的な技術事項であり,押し出し加工による方法,押し出し加工以外による方法,いずれの方法によって突出部を形成しても原出願当初明細書に記載された発明の本質に変更を来たさず,同様な発明が実現可能であるから,このような場合,「突出部の形成方法について何ら限定しない発明」ということが原出願当初明細書から読み取り可能である。
ⅴ(ⅰ) 押し出し加工によって突出部を形成しても,突出部における板厚の減少はごくわずかであり,ごくわずかな歪エネルギーが蓄積されたとしても,後の肉厚化するための埋め溶接(肉盛り溶接)の時の熱の影響で歪エネルギーは除かれてしまう。したがって,押し出し加工特有の効果は存在しない。
(ⅱ) 特開平8-225905号公報(乙43)に記載された発明では,それぞれの再結晶焼鈍の際に,曲げ加工及び復元によって導入された歪みはゼロとなるので,次の工程に加工歪みの影響は引き継がれない。その上,曲げ加工により導入される歪量は,プレス加工により導入される歪量に比して無視し得る程度のものにすぎない。
c 出願経過
(a) 同cのうち,(a)(意見書(乙41)の記載)は認め,(b)(その解釈)は否認する。意見書(乙41)は,そもそも,「押し出し加工」を構成要件とする本件発明Aに特許性があることを主張した書面であり,「押し出し加工」を構成要件としない本件発明B及び本件発明Cの解釈にこの意見書を引用することは,無意味である。
(b) むしろ,原告は,本件発明Bの特許性について,意見書(甲33)において,「・・・本発明はクレームに明確に特定しておりますように,溶接をアウタースキンの内側から行う構成であって,しかもこの溶接部での突出外を(ママ)面潰し加工する点に画期的な特徴があるもので,この点は引用例には全く開示されておりません。本発明は,内側から行う溶接とアウタースキンでの突出外面を押潰す点に画期的な創作性があるもので,引用例にはこの点全く開示されておりません。」と主張した。
この意見書によれば,本件発明Bの発明の本質は「内側から行う溶接」と「アウタースキンで形成した突出部を押潰すことで大きな加工率を得ること」であることが分かる。そして,特許庁は,原告の上記主張を認めて,本件発明Bが分割要件を満たすと判断したものである。
(c) 以上の点については,本件発明Cについても同様である。
(ウ) 分割出願
同(ウ)のうち,aは認め,bは否認する。
(4)  争点(4)(各方法の実施時期)
ア 原告
(ア) 実施時期
a 方法3
被告秋田は,平成12年8月から,少なくとも本件証拠保全時である平成16年4月9日まで,さらには本訴提起日後も,方法3により,電着箔製造用ドラムを製造した。
b 方法2又は方法1
仮に,一部の時期につき,方法3による製造が認められないとしても,被告秋田は,その時期において,方法2又は方法1により,電着箔製造用ドラムを製造した。
(イ) 方法3の実施時期の根拠
a まとめ
次の事実によれば,少なくとも本件証拠保全時である平成16年4月9日には,方法3が実施されていた。
b 板端面の切削加工
(a) 方法3は,板の端部を突き当ててプラズマ溶接するため,突き当てる端面は正確に加工されていなければならない。したがって,方法3では,最初に板の端面を切削加工して整えることが必須となる。
(b)ⅰ これに対し,方法1及び方法2の場合は,板をL字型に曲げてから突き合わせるため,プラズマ溶接を施す部分は端面ではないから,板の端面を切削加工することは,技術常識からみてあり得ない。
ⅱ 現に被告ら提出に係る方法1及び方法2によるデータシート(乙12~33の各2)には,切削加工工程が記載されていない。
(c) ところが,被告は,本件証拠保全時に,板の端面を切削加工(機械加工)していた(甲16)。
c 方法1の開示拒否
(a) 被告秋田は,本件証拠保全の際,曲げ工程につき,「この工程は外注している。」と虚偽の説明をしている。
(b) また,本件証拠保全時に原告に開示した方法は,本件訴訟において開示した方法3,方法2及び方法1のいずれでもない架空の方法であった。
(c) 被告秋田が本件証拠保全時に方法1を実施していたのであれば,その方法1の説明を拒否する理由はない。
d データシートの内容
(a) 被告らが方法1又は方法2に係るものとして提出したデータシート(乙12~33の各2)は,被告秋田が平成13年3月以降,方法1又は方法2を実施していた証拠にはならない。
(b) まず,これらのデータシートでは,下部の「ドラムNo.」の記載と出荷案内書(乙12~33の各1)に記載されている品名が一致しているが,作成年が記載されていない。
(c)ⅰ これらのデータシートには,平均板厚や焼キバメの色などが記載されていない。
ⅱ これらの点は,製品管理用に作成されているのであれば当然に記入されているべき項目である。
(d)ⅰ NSN-03のドラムに係るデータシート(乙17の2)と出荷伝票(乙18の1)によると,焼キバメ工程から2日で製品が出荷されている。
ⅱ 原告の工場においても,焼キバメ以降の外周溶接(側板を取り付け,アウタースキンに溶接),バランス取り(一定時間回転させて歪等によるバランスのくずれがないか確認し,あれば修正。),機械加工(アウタースキン表面の切削),研磨(アウタースキン表面研磨),立会い検査があり,それぞれ外周溶接20時間,バランス取り2ないし4時間,機械加工と研磨で44時間,立会い検査4時間を要し,合計約70時間かかる。
仮に24時間3交替しても約3日はかかることになる。
ⅲ 被告らが工場立入り検査を認め,原告代理人あてに平成18年6月に送付された工程表(甲49)によっても,焼キバメ終了後立会い検査終了まで最短でも7日(長いものは12日)かかることになっている。
上記工程表(甲49)を見てもわかるように,同時に複数のドラムを製造している場合,被告らが複数の機械を保有していない限り,並行して同時に作業することはできないのであるから,3交替で操業していなければ,ドラムが完成する日はそれぞれ2日以上ずれることになる。そして,被告らの製品出荷日を見ると,平成13年3月1日から3月16日の16日間に計7本が出荷されており(乙12ないし18の各1・2),被告提示工程表の7本は19日間で製造完了しているから(甲49。3日間の差は休日出勤による差と推測される),ドラムが出荷される日がそれぞれ2日以上ずれている。
ⅳ したがって,焼キバメ以降の工程を2日で完了させることは不可能である(甲50,乙46の5)。
(e) さらに,NSN-42のドラムについても,期間的に不可能な工程が記載されている(乙33の1・2)。
(f) また,出荷案内書には,タイムカードから見て当時出勤していなかったはずの者による署名がされていたり(乙36の9~30,46の15・16,47の1・17),同一人の署名の筆跡が異なっているデータシートがある(乙18,19,21,24,30及び31の各2)。
e 立証妨害
本件特許1及び2は製造方法の特許であり,特許権者たる原告は,被告らから開示される資料に基づいて侵害行為であることを主張するほかはない。そのような原告にとって,被告らの工場に直接立ち入り,その実施方法を確認することのできる証拠保全は,原告が被告秋田の実施方法に関する証拠を収集できる唯一無二の機会である。
それにもかかわらず,被告らの前記c(a)及び(b)のような虚偽の説明によって被告らに有利な認定がされるとすれば,証拠保全制度により証拠隠滅による証明妨害行為を防止しようとした趣旨が没却されることになる。
したがって,このような悪質な被告らの証明妨害行為によって立証することが不可能になった被告秋田のアウタースキンの製造方法については,少なくとも,本件証拠保全時までは方法3を実施していたと原告に有利に認定すべきである。
f 方法2の実施不能等
(a) 方法2によって商品たり得る程度の品質を有するアウタースキンを製造することはできなかった(甲19,20)。
(b) また,方法2とほぼ同一の方法についての特許出願が平成13年1月にされているにもかかわらず,製品として十分な品質を有する製品を製造できる方法1によるドラムの製造がそのわずか1ないし2か月後である平成13年3月11日に可能となったということは,極めて不自然である。さらに,この方法1について特許出願をしていないことも,極めて不自然である。
イ 被告ら
(ア) 実施時期
a 方法3
原告の主張(ア)aのうち,被告秋田が平成12年8月から平成13年1月23日まで,方法3により,電着箔製造用ドラムを製造したことは認め,その余は否認する。
b 方法2又は方法1
(a) 同(ア)bは認める。
(b) 方法2により製造したドラムの出荷時期は,次のとおりである。
ⅰ 平成13年3月 1日
ⅱ 平成13年3月 3日
ⅲ 平成13年3月 9日
ⅳ 平成13年3月12日
ⅴ 平成13年4月 5日
ⅵ 平成13年4月 7日
(c) 方法1を使用したドラムは,平成13年3月11日から出荷を始め,現在まで継続している。
(d) 被告秋田は,平成12年9月に原告から本件各特許権を侵害するとの通知を受けたことから,本件発明Aに抵触しない方法の開発に取りかかり,平成12年12月中には,方法2を実用化した。
(e) 被告ニューロングは,平成13年1月10日,方法2について特許出願をした(特願2001-2729(甲23)。以下「被告出願」という。)。この特許出願においては,方法2の③④の肉盛工程及び⑤⑥の切削加工工程を記載していないが,その理由は,これらの工程が主要な工程ではないからである。
(f) 方法2は,板端を直角に曲げた突出部をプラズマ溶接するものであるが,プラズマ溶接の能力上,突出部の厚さを12mm以上とすることができないため,12mmを超える突出部の母材部分を切削加工していた。この欠点を解消するために開発されたものが方法1である。
方法1は,溶接部分に切削加工で切欠きを作るものであり,母材部分をより多く利用することができ,より有効に加工率を上げることが可能となるものである。
(イ) 方法3の実施時期の根拠
a まとめ
同(イ)aは否認する。
b 板端面の切削加工
(a) 同b(a)は認める。
(b) 同b(b)のうち,ⅰは否認し,ⅱは認める。
方法1及び方法2の場合,プレス加工で板をL字型に曲げている。プレス加工で板を曲げる場合,通常,プレス金型に板を差込み,金型の後ろ側にあるストッパーに板の端面を当てて曲げる位置を決めてから加工するが,全長が8m以上になる板の場合,プレス曲げ位置は,差し込んだ板の端面から決めるしか方法はない。このため,板の端面を正確な平面にするために切削加工しておく必要がある。
また,方法1及び方法2のデータシートに切削加工工程が記載されていないのは,この工程がデータシートで管理される前の工程であるためである。
(c) 同b(c)は認める。
c 方法1の開示拒否
同c(a)は認め,(b)のうち,架空の方法であることは否認し,その余は認め,(c)は否認する。
本件証拠保全時に被告が開示した方法は,肉盛り工程の説明を省略した方法2に類似する方法であった。方法1は方法2と実質的には同じであるので,被告秋田は,虚偽の方法を開示したものではない。
d データシートの内容
(a) 同d(a)は否認する。
(b) 同d(b)は認める。
方法2又は方法1の採用以来,すべてのデータシートが順次保管されており,「ドラムNo.」を後に書き加えることなどあり得ない。方法3については,A(以下「A」という。)らナイカイから移籍したメンバーを中心にナイカイの方法をそのまま実施していたため,そのデータシートが存在しないだけである。
(c) 同d(c)のうち,ⅰは認め,ⅱは否認する。
データシートは,必要とする数値を管理し保管するためのものであり,社外に出すものではないので,被告秋田としてはこれで十分である。
(d)ⅰ 同(d)ⅰは認め,ⅱは不知,ⅲ及びⅳは否認する。

ⅱ 被告らにおいて,各工程に要する時間は,次のとおりである。

焼キバメ  3時間,
外周溶接  6時間,
バランス取り  3時間,
マンホール取付け溶接  4時間,
外周機械加工  10時間,
研磨  18時間,
梱包  4時間
合計  45時間

これら所要時間は,おおよそのものである。例えば,外周溶接は,両サイドを二人同時に溶接すれば半分に短縮できる。バランス取りも,早いものは1時間程度でできる。
したがって,焼キバメに要する時間を含めても,2日あれば十分に可能である。
ⅲ また,平成13年3月当時は,大量の受注量を製作するに当たり,増員及び変則交代制(通常勤務の者は残業により1日12ないし14時間,夜勤の者は夕方5時より翌朝まで)で製作に当っていた。
これに対し,工程表(甲49)は,平成18年当時の受注量に応じた人員体制を前提として,原告の立会いに応じるため,納期を考慮して可能なかぎり余裕を持たせた工程としたものである。
(e) 同(e)は否認する。
(f) 同(f)は否認する。
被告らが提出したタイムカードにある「B」「C」と,同じく被告が出荷した出荷伝票にある「B」「C」は別人である(乙48の1~3参照)。
また,記入漏れがあった場合には他の者が代筆をしていたことがある。
e 立証妨害
同eは争う。
f 方法2の実施不能等
(a) 同f(a)は否認する。
方法1と方法2の相違は,曲げ加工部分を突き合わせてプラズマ溶接する際に,その部分における母材の割合を異にしているのみで,他に相違するところはないのであるから,方法1が実施可能であれば,方法2も当然に実施可能である。
(b) 同f(b)は否認する。
方法1は,母材部分をより多く残すように方法2を改良したものであって,基本的に方法2と同一の技術であるから,方法2から方法1に至ることは,極めて容易であった。
被告らは,特許出願としては,被告ニューロングがした方法2に近似する特許出願(甲23)の請求項1の内容で十分であり,方法1については別途特許出願する必要はないと判断した。
(5)  争点(5)(方法3の先使用権)
ア 被告ら
(ア) 取得者及び移転
a Aは,ナイカイに在職していた平成元年までに,方法3を発明した。
b この発明は,職務発明に属するが,その特許を受ける権利は,Aからナイカイに譲渡されることはなく,また,特許出願もされなかった。
c Aは,ナイカイに,方法3を実施させた。
d Aは,平成12年1月,ナイカイを退職して被告秋田に移籍し,同年8月ころから,被告秋田において,電着箔製造用ドラムの製造を開始した。
その際,被告秋田は,Aのみならず,ナイカイにおいてアウタースキンの製造に携わっていた技術スタッフ5名を受け入れたが,Aが中心となったチームによる方法3の実施という形態は,ナイカイ時代と同様であった。
e このようにして,方法3の実施の主体が,ナイカイから被告秋田に変更された。
(イ) 範囲
a ナイカイ在籍中のAによる方法3の実施も,被告秋田移籍後におけるAによる方法3の実施も,Aが中心となったほぼ同一のスタッフによりされている。
b 被告らによる方法3を実施した電着箔製造用ドラムの販売先も,ナイカイ在籍中の販売先と同一である。
(ウ) まとめ
したがって,電着箔製造用ドラムの製造販売事業がAの移籍とともにナイカイから被告らへ移転した関係にあり,被告らによる方法3の実施も,先使用権により保護される。
イ 原告
(ア) 取得者及び移転
被告らの主張(ア)のうち,a~dは不知,eは否認する。
(イ) 範囲
同(イ)は不知。
(ウ) まとめ
同(ウ)は否認する。
先使用権の移転は,実施の事業とともにする場合でなければならないところ(特許法94条1項),ナイカイが現在も電着箔製造用ドラムを製造販売していることからみて,当該事業がナイカイから被告らへ移転した事実はないし,ナイカイからAにも移転していない。したがって,先使用権がナイカイから被告らに移転されたことはない。
(6)  共同不法行為
ア 原告
(ア) 被告秋田は,電着箔製造用ドラムの製造業者であり,被告ニューロングは,そのドラムの一手販売会社である。
(イ) 被告ニューロングは,被告秋田と資本的,人的関係を有する。
(ウ) よって,被告らの間には,強い客観的関連共同性が認められるから,被告らは,本件特許権1及び2の侵害に関して,共同不法行為の関係にある。
イ 被告ら
(ア) 原告の主張(ア)は認める。
(イ) 同(イ)は否認する。
(ウ) 同(ウ)は否認する。
(7)  消滅時効及び権利濫用
ア 被告ら
(ア) 援用の意思表示
被告らは,原告に対し,平成18年9月8日の本件第5回弁論準備手続期日において,方法3の実施による原告の損害賠償請求権につき,消滅時効を援用する旨の意思表示をした。
(イ) 起算点
a 次の事実からみて,原告は,遅くとも平成12年9月13日ころまでに損害及び加害者を知ったものである。
b すなわち,原告は,繰り返し訴訟提起の可能性を告げた上,特許法104条の2(具体的態様の明示義務)を前提として,平成13年12月26日付け再通告書において,被告の製造方法の具体的態様について,その開示を要求した(基本的事実関係(6))。
c(a) また,原告は,平成12年9月13日ころには,Aがナイカイから作業技能者5名と共に移籍したことを知っていた。
(b) その当時,ナイカイは,原告に対し,方法3を実施していたことを既に認めていた。
(ウ) 権利濫用
後記原告の主張(ウ)は否認する。
被告らが製造方法の開示に消極的であった理由は,競業会社である原告に対して開示を行うことによる不利益が甚大であったからである。
イ 原告
(ア) 援用の意思表示
被告らの主張(ア)は認める。
(イ) 起算点
a 同(イ)aは否認する。
原告の権利行使が可能となったのは,本件証拠保全時である平成16年4月9日である。
本件各特許は製造方法の特許であるため,その性質上,被告らの工場において実際のアウタースキンの製造方法,特にアウタースキンの継合部を確認する必要がある。また,ドラムの納入先の大部分は国外の企業であり,企業機密にも関わるから,協力を得ることはできない。
そこで,原告は,①本件証拠保全前に被告らが主張したドラム内側への肉盛り溶接を行わないで立ち上がり部を溶接するという方法が,実験の結果,不可能であると確認されたこと,②本件証拠保全時において被告らが主張したドラム内側への肉盛り溶接を行って立上り部を溶接するという方法も,実験の結果,不可能であると確認されたこと,③Aは,原告の本件特許1の技術的範囲に属する製造方法でドラムを製造していることを認めたナイカイの元電着箔製造用ドラムの技術責任者であったこと,④Aが本件証拠保全時に原告の製造方法でアウタースキンを製造したことがあるのを自認したこと,⑤被告らの主張がその都度転々したり,常識では考えられないものであって,信用性に欠けたものであること,⑥本件証拠保全後において被告らが主張した方法もまた,本件証拠保全時の製造方法と一致していないことなどから,ようやく被告秋田の製造方法を特定するに至ったのである。
b 同bは認める。
c 同cは否認する。
(ウ) 権利濫用
a 被告らは,基本的事実関係(6)のとおり,原告の通告書に対し,誠実に対応しなかった。
b しかも,被告らは,本件証拠保全時においても,実際には実施していない方法をあたかも実施しているかのように原告に開示した。
c 被告ら自身が当初から自己の非を素直に認めて被告らの実施方法を開示していれば,原告としても証拠保全や鑑定等の無駄な労力が軽減できた。
d このような経緯に照らせば,被告らが消滅時効を援用することは,権利の濫用として許されない。
(8)  損害
ア 原告
(ア) 販売数量及び販売価格
a 被告秋田は,平成12年10月から平成17年8月までの間,方法3を実施して,又は方法1又は方法2を実施して,次のとおり電着箔製造用ドラムを製造販売し,被告ニューロングも,同じ期間内に,同量のドラムを被告秋田から仕入れて第三者に販売した。
(a) 平成12年10月ないし平成13年3月まで 20本
(b) 平成13年4月ないし平成14年3月まで  76本
(c) 平成14年4月ないし平成15年3月まで  12本
(d) 平成15年4月ないし平成16年3月まで  11本
(e) 平成16年4月ないし平成17年3月まで  23本
(f) 平成17年4月ないし平成17年8月まで  13本
合計                      155本
b 上記ドラムの被告秋田の平均販売価格は,少なくとも,1本当り1500万円を下らない。
(イ) 実施料率
a 電着箔製造用ドラムでは,アウタースキンの表面の良し悪しで析出する金属箔の良し悪しは決まってしまうため,このアウタースキンの表面をいかによくするかに技術がすべて注ぎ込まれ,アウタースキンの良し悪しで電着箔製造用ドラムが売れるか否かが決まる。
そして,アウタースキンの良し悪しにおいて,端部同士の溶接部の良し悪しが極めて重要である。
b 電着箔製造用ドラムは特殊な装置であり,参考にされるべき実施料率は特殊産業用機械のそれであること,並びに電着箔製造用ドラムの製造メーカーは,国内において原告を含め数社しかなく,ライセンスを定常的に行う業界ではないことを考慮すると,相当実施料率は,電着箔製造用ドラムの価格の10%が相当である。
(ウ) 算定額
以上から,原告の損害は,次のとおり,2億3250万円を下らない(特許法102条3項)。
a 平成12年10月ないし平成13年3月まで
1500万円×20本×10%=3000万円
b 平成13年4月ないし平成14年3月まで
1500万円×76本×10%=1億1400万円
c 平成14年4月ないし平成15年3月まで
1500万円×12本×10%=1800万円
d 平成15年4月ないし平成16年3月まで
1500万円×11本×10%=1650万円
e 平成16年4月ないし平成17年3月まで
1500万円×23本×10%=3450万円
f 平成17年4月ないし平成17年8月まで
1500万円×13本×10%=1950万円
合計 2億3250万円
(エ) 弁護士費用
a 原告は,被告らの不法行為により,本件訴訟の提起及び追行を余儀なくされた。
b 原告は,本訴原告代理人に対し,相当額の着手金及び成功報酬の支払を約束した。
c そのうち,少なくとも上記損害額2億3250万円の1割相当額である2325万円は,被告らの侵害行為と相当因果関係のある損害である。
イ 被告ら
(ア) 販売数量及び販売価格
a 原告の主張(ア)のうち,次のbの事実は認め,その余は否認する。
b 被告秋田が,方法3により製造したドラムの本数及び販売額は,次のとおりである。出荷日は,被告秋田から船積みのために倉庫へ出荷された日であり,金額は,被告ニューロングから商社に対する販売額である。
(a) 平成12年11月28日出荷分  1450万円
(b) 平成12年12月4日出荷分  1450万円
(c) 平成12年12月18日出荷分  1450万円
(d) 平成12年12月19日出荷分  1450万円
(e) 平成12年12月24日出荷分  1500万円
(f) 平成13年 1月23日出荷分  1500万円
(イ) 実施料率
a 同(イ)aは否認する。
確かに,アウタースキンの溶接部の表面の良し悪しは,電着箔製造用ドラムにおいて重要な要素であるが,そのほかの要素が欠けても電着箔の製造に欠陥が生じるから,どの技術も等しく重要である。
b(a) 同bは否認する。
(b) 電着箔製造用ドラムのうちアウタースキンの占める割合は,平成13年当時の価格1400万~1500万円のうち400万円前後であり,価格的には数分の1にすぎない。電着箔製造用ドラムのうち,古くなったアウタースキンをはがして新しいアウタースキンを装着する「巻き替え」を受注する場合があるが,その場合には,平成13年当時の電着箔製造用ドラムの価格を前提とすれば,古くなったアウタースキンを剥がす費用やインナードラムを削る費用などを含め,その半額以下の500万円ないし700万円程度が受注価格であった。
(c) 本件発明AないしCは,押し出し加工の点以外は,金属の性質に関する公知技術をそのまま利用するものであり,また,従来技術の改良発明にすぎないなど,当業者であれば開発が容易な技術である。
(d) さらに,アウタースキンの溶接については,本件発明AないしC,方法1及び方法2以外にも,特開平2-243790号公報(乙40)に記載された技術のように,代替技術が存在する。
(ウ) 算定額
同(ウ)は否認する。
(エ) 弁護士費用
同(エ)のうち,bは不知,その余は否認する。
(9)  方法3の差止めの必要性
ア 原告
被告らが方法3を使用して電着箔製造用ドラムのアウタースキンを製造したことがある以上,現在においても,被告らにおいて方法2又は方法3を使用して本件特許権1又は本件特許権2を侵害し又は侵害するおそれがある。
イ 被告ら
被告らは,平成13年1月までで方法3の使用を止め,方法2の使用に切り替えた。さらに,被告らは,平成13年4月までで方法2の使用を止め,方法1の使用に切り替えた。
本件口頭弁論終結時現在,方法3の使用中止から6年以上経過したから,被告らにおいて方法3を使用して本件特許権1を侵害し又は侵害するおそれはない。
第3  当裁判所の判断
1  争点(2)(構成要件Dの充足)について
(1)  基本的事実関係(2)ア(イ)のとおり,本件発明Aの構成要件Dは,「押し出し加工」により突出部を形成することを要件としているところ,基本的事実関係(4)ア及びイのとおり,方法1及び方法2は,いずれも,板材の両端を一方向に直角に曲げ,この立上り部を突き合わせて継合させ,この継合部を溶接する方法である。したがって,方法1及び方法2は,構成要件Dを充足しない。
(2)  よって,本件発明Aに基づく方法1及び方法2に対する請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
2  争点(4)(各方法の実施時期)について
(1)  はじめに
ア 基本的事実関係(5)ウのとおり,方法3の構成は,本件発明Aの構成要件をすべて充足する。
イ また,被告秋田が平成12年8月から平成13年1月23日まで,方法3により,電着箔製造用ドラムを製造したことは,当事者間に争いがない。
ウ したがって,実施時期についての争点は,被告秋田がいつ,その製造方法を方法3から方法2又は方法1に変更させたか否かである。
(2)  被告の製造方法について
ア(ア) 証拠(甲23)によれば,被告ニューロングは,平成13年1月10日,「【請求項1】・・・円筒状に巻かれたチタンを主成分とする材料より成る板体の対向する両端に,径方向外側に屈曲する立上り部をそれぞれ設け,これら立上り部どうしを内側から溶接して外側に突出する突出部を形成した後,該突出部の外面を圧延加工して母材と同厚にし,次いで圧延加工部を熱処理する」という製造方法について特許出願(被告出願)をしていることが認められる。
(イ) 被告出願と方法2(基本的事実関係(4)イ)とを比べると,被告出願は,方法2から,その立上り部の湾曲外面の肉盛溶接工程(同(4)イ③及び④)と立上り部先端の切削加工工程(同(4)イ⑤及び⑥)を省いたものと同一であることが認められる。
イ(ア) 方法2(基本的事実関係(4)イ)と方法1(同(4)ア)との差異は,方法2が立上り部の先端を切削してから突き合わせるのに対し,方法1は立上り部湾曲外面の肉盛溶接部に切欠きを形成してから突き合わせるという点にある。
これによって生じる差異は,方法2の方が突出部に占める母材の割合がやや少なくなるという程度のものと認められる。
(イ) この程度の差異が製造されるアウタースキンの品質に大きな差をもたらすことを認めるに足りる証拠はない。
(ウ) したがって,方法1が実用に耐え得る製造方法である以上,方法2もまた実用に耐え得る製造方法であったと推認するのが相当である。
ウ 被告らが,平成12年9月には既に原告から方法3について侵害警告を受け(基本的事実関係(6)ア),上記アのとおり,平成13年1月10日には方法2に近似する製造方法を完成していたことからすると,その後も被告らが方法3によるドラムの製造販売を続けていたものとは考えにくい。
したがって,被告らが平成13年1月24日以降も方法3によりドラムの製造販売をしていたことの立証はないというべきである。
(3)  原告の主張に対する判断
ア 板端面の切削加工について
原告は,被告秋田が本件証拠保全時においても板の端面の切削加工(機械加工)をしていたところ,切削加工は,方法3でのみ必要であり,方法1及び方法2では必要がないから,被告秋田は本件証拠保全時に方法3を使用していた旨主張する。
しかしながら,弁論の全趣旨によれば,方法1や方法2の場合にあっても,立上り部を形成する前にプレス曲げの基準位置を定めるために,長い板の端面を切削加工しておく必要があることが認められる。また,方法1及び方法2において,切削加工工程がデータシートで管理される前の工程と考えれば,切削加工の工程がデータシートに記載されていないことをもって,不自然であると認めることはできない。
よって,原告の上記主張は採用することができない。
イ 方法1の開示拒否について
(ア) 被告秋田は,本件証拠保全の際,曲げ工程につき,「この工程は外注している。」と虚偽の説明をし,また,本件証拠保全時に原告に開示した方法が,本件訴訟において開示した方法3,方法2及び方法1のいずれでもない方法であったことは,当事者間に争いがない。
(イ) 本件証拠保全時にAが指示説明をした工程は,板を機械加工し屈曲させて立上り部を形成し,この立上り部の湾曲外面に肉盛り溶接をし,これを突き合わせて継合し,継合部を潰しやすいように整形し,これを押し潰して板材と同厚にし,次いで,この押し潰し加工部を焼鈍するというものであり(甲16),立上り部の湾曲外面の肉盛り溶接を加えたほかは,被告出願に係る工程と同旨であり,また,立上り部先端の切削又は肉盛り溶接部の切欠きがない点のほかは,方法2又は方法1の工程と同旨である。
(ウ) 原告は,被告秋田が本件証拠保全時に方法1を実施していたのであれば,その方法1の説明を拒否する理由はない旨主張する。
上記(ア)及び(イ)のAの説明は,被告出願により公開した部分はそのまま指示説明し,さらに,公開していなかったノウハウの一部について説明を加えたものであるから,その説明をもって,不自然なものであるとまで認めることはできない。
また,外注の点についての虚偽説明については,法律の専門家ではないAが,弁護士の助言を得られない状況下で,被告秋田のノウハウの開示を迫られることを避けるために虚偽の説明をすることは,あり得ることであると認められる。
したがって,被告秋田が本件証拠保全時に方法1の説明をきちんとしなかったり,虚偽の説明が混じっていたことから,被告秋田が本件証拠保全時に方法3を使用していたと推認することは,到底できず,原告の上記主張は採用することができない。
ウ データシートの内容について
(ア) 原告は,被告らが提出したデータシートに作成年の記載がない点や,平均板厚や焼キバメの色などが記載されていない点を指摘する。
確かに,被告秋田のデータシートが原告の指摘するとおりであることは,当事者間に争いがないが,それらの点は,データシートによる被告らの工程管理が,原告のそれ(甲51)に比し,緻密さに欠けることを意味するにとどまり,信用性がないとまで推認させるものではない。
(イ) また,原告は,平成13年3月14日に焼キバメがされたNSN-03のドラムが2日後の同月16日に出荷されていたりするなどの不自然な記載がある旨主張する。
しかしながら,被告らが主張する各工程の所要時間(第2,5(4)イ(イ)d(d)ⅱ及びⅲ)が,技術的にあり得ないものであると認めるに足りる証拠はない。
この点は,NSN-42のドラム(乙33の1・2)についても,同様である。
(ウ) さらに,原告は,出荷案内書には,タイムカードから見て当時出勤していなかったはずの者による署名がされていたり(乙36の9~30,46の15・16,47の1・17),同一人の署名の筆跡が異なっているデータシートがある旨(乙18,19,21,24,30及び31の各2)主張する。
しかしながら,証拠(乙48の1~3)及び弁論の全趣旨によれば,出荷案内書にある「B」「C」とタイムカードにある「B」「C」とは別人であることが認められ,この点についての原告の主張は前提を欠くものである。
また,原告が主張するように同一人の筆跡が異なっているデータシートがあることは認められるが,記入漏れがあった場合には他の者が代筆をすることは十分あり得ることであるから,その旨をいう被告らの主張は排斥し難く,筆跡が異なるからといって直ちにデータシートが虚偽のものということはいい得ない(意図的に虚偽の証拠を作出するならば,むしろ,筆跡くらい整えるはずである。)。
エ 立証妨害について
原告は,被告らが虚偽説明をするなどして被告秋田が方法3を使用しているとの原告の立証活動を妨害したから,被告秋田が方法3を使用していると原告に有利に認定すべきである旨を主張する。
確かに,Aが虚偽の説明をした点を被告らに不利に働くべき事実であるといわざるを得ないが,前記イのとおり,Aの説明は,被告出願により公開した部分はそのまま指示説明し,公開していなかったノウハウの一部について説明を加えたものと評し得るものであり,前記(2)アのとおり,被告出願をしていることを併せ考えれば,被告らの虚偽の説明等から,本件証拠保全時まで被告秋田が方法3を使用していたと推認することはできないといわなければならない。
よって,原告の上記主張は,採用することができない。
オ 方法2の実施不能等について
(ア) 原告は,方法2によっては商品たり得る程度の品質を有するアウタースキンを製造することはできないから,平成13年当時に方法1はいまだ発明されていなかった旨を主張する。
しかしながら,原告がこの主張の根幹とする平成17年11月4日付け実験報告書(甲19)は,板材の端を屈曲させて立上り部を形成するとドラムを円筒にすることにすら技術的障害があるとしているのであるが,前記2(2)イ(ウ)のとおり,方法1が実用に耐え得る製造方法であるとする以上,方法2もまたそう解するほかないといわざるを得ない。そうすると,上記実験報告書(甲19)も,鑑定書(甲20)も,被告らの製造条件とは異なる条件下でされたものではないかとの疑いが残り,採用することはできない。
(イ) 原告は,方法2とほぼ同一の方法についての特許出願が平成13年1月にされているにもかかわらず,製品として十分な品質を有する製品を製造できる方法1によるドラムの製造がそのわずか1ないし2か月後である平成13年3月11日に可能となったということは不自然であり,この方法1について特許出願をしていないことも不自然である旨主張する。
しかしながら,方法2の実施開始時期と方法1の実施開始時期との間が短期間であっても,前記2(2)イのとおり,方法2と方法1との間には技術的に大きな差はないから,不自然であるとまで認めることはできない。
また,方法2について主要な点に関して特許出願をしていると考えた以上,方法1について別途,特許出願をしないことをもって,不自然であるとまで認めることはできない。
よって,原告の上記主張は,採用することができない。
(4)  まとめ
以上によれば,平成13年1月24日以降も,被告らが方法3を使用していたと認めることはできない。
3  争点(5)(方法3の先使用権)について
先使用権は,「その発明の実施である事業をしている者又はその準備をしている者」,すなわち実施者に帰属するのであって,発明者に帰属するものではない。被告らの主張は,Aが発明者であると同時に方法3の実施をしていた者であることを前提とするものであるが,Aが,ナイカイに在職していた時も,被告秋田に就職した後も,それらの従業員であり,自己の計算により事業を行っていた者ではないことは被告らの主張からも明らかであるところ,そうであれば,方法3の実施をしていたのはナイカイとみるほかなく,結局,被告らの主張は前提を欠くものというほかない。
よって,先使用権に関する被告らの主張は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
4  争点(6)(共同不法行為)について
(1)  被告秋田は電着箔製造用ドラムの製造業者であり,被告ニューロングはそのドラムの一手販売会社であることは,当事者間に争いがない。
(2)  また,被告秋田が被告ニューロングと同じ「ニューロング」の名称を用いるグループ企業同士の関係であるとうかがわれることや,前記2(2)ア(ア)の方法2に類似する方法についての特許出願を被告秋田ではなく被告ニューロングがしていることなどから,被告ニューロングと被告秋田との間には,資本的,人的関係があることが推認される。
(3)  これらの事実によれば,被告らの間には,強い客観的関連共同性があると認められるから,被告らは,本件特許権1及び2の侵害に関して,共同不法行為の関係にあると認められる。
5  争点(7)(消滅時効及び権利濫用)について
(1)  被告らは,原告は遅くとも平成12年9月13日ころまでに,方法3の実施につき損害及び加害者を知った旨主張するが,被告らは一貫して侵害を否定していたものであり(基礎的事実関係(6)),他社工場内での製造方法を把握することは一般に困難であることを考慮すると,被告ら主張の事実から,遅くとも平成12年9月13日ころまでに原告が損害及び加害者を知ったものと推認することはできない。
(2)  よって,被告らの上記主張は,理由がない。
6  争点(8)(損害)について
(1)  販売数量及び販売価格
前記2のとおり,方法3が使用されていたのは平成13年1月23日出荷分までである。
この間に製造販売されたドラムの販売数量及び被告ニューロングから商社に対する販売額が次のとおりであることは,被告らの自認するところであるが,これを超える販売数量又は販売額があったことを認めるに足りる証拠はない。
ア 平成12年11月28日出荷分  1450万円
イ 平成12年12月4日出荷分  1450万円
ウ 平成12年12月18日出荷分  1450万円
エ 平成12年12月19日出荷分  1450万円
オ 平成12年12月24日出荷分  1500万円
カ 平成13年1月23日出荷分  1500万円
キ 合計                8800万円
(2)  実施料率
証拠(甲2,19,20,23,30,37,乙40,43,44)及び弁論の全趣旨によれば,アウタースキンの溶接部の表面をいかに良くするかが電着箔製造用ドラムにおいて重要な要素であり,これがアウタースキンの良し悪し決するものであること,他方,アウタースキン溶接部の仕上げ以外の要素が欠けても電着箔の製造には欠陥が生じるものであり,他の部分についてのノウハウ等もそれ相応に重要であること,被告は平成13年1月24日以後は方法3を使用していないことから認められるように,アウタースキン製造方法は本件特許1に限られるものではなく,代替技術が存すること,そして,本件では,相当実施料率の算定の基礎をアウタースキンの価格ではなく,その数倍程度の電着箔製造用ドラムの価格とするものであること等の諸般の事情を考慮すると,相当実施料率としては,ドラムの販売価格の5%が相当である。
(3)  算定額
以上から,原告の損害は,440万円となる。
8800万円×5%=440万円
(4)  弁護士費用
ア 弁論の全趣旨によれば,原告は本訴原告代理人に対し,相当額の着手金及び成功報酬の支払を約束したことが認められる。
イ 本件訴訟の内容,訴訟経過,認容額等本件に顕れた諸般の事情を考慮すると,弁護士費用としては,90万円が相当である。
7  争点(9)(方法3の差止めの必要性)について
(1)  前記2のとおり,被告秋田が平成13年1月24日以後も方法3を使用したことを認めるに足りる証拠はないから,既に7年近く経過した本件口頭弁論終結時現在,被告らにおいて方法3を使用して本件特許権1を侵害するおそれがあるとは認められない。
(2)  よって,原告の被告らに対する本件発明Aに基づく方法3の差止請求及び廃棄請求は理由がない。
8  争点(3)(本件発明B及び本件発明Cの分割要件違反)について
(1)  原出願当初明細書の記載
ア 記載内容
被告らの主張(イ)aは,当事者間に争いがない。
イ 原出願当初明細書の開示又は示唆
上記原出願当初明細書の記載によれば,原出願当初明細書は,押し出し加工による突出部形成をその特徴として記載しており,押し出し加工以外の手段による突出部形成については,開示も示唆もされていないと認められる。
ウ 原告の主張に対する判断
(ア) 原告の主張内容
原告は,突出部の形成方法は,原出願当初明細書に記載された発明にとって非本質的な技術事項であり,押し出し加工以外による方法によって突出部を形成しても,原出願当初明細書に記載された発明の本質に変更を来たさず,突出部の形成方法について何ら限定しない発明が原出願当初明細書から読み取り可能である旨主張する。
(イ) 押し出し加工の技術的意義について
a 証拠(甲41)によれば,大阪府立大学教授吉岡正三著「金属組織学」(昭和43年・13版)には,「・・・変形をうけた金属は如何なる形かわからないにせよ内部歪みを内包する。それは諸種の性質の変化で示される。所が之を加熱すると,そういう変化が或る温度を境として著しく正常に復する。・・・第1段は加熱と同時に起こり始める緩慢な復活過程で,之を回復という。第2段は或一定温度に達した時に起る急激な復活で・・・再結晶によるものである。」(80頁),「・・・内部歪みはさきに加えられる応力の量によって或る定値を示し,X線法やSmithの方法等で測られるが,それは統計的な結果であって,金属内部に存在する実際の多数の歪みはそれぞれ異ったポテンシャルエネルギーをもつであろう事は容易に理解されよう。加熱によって原子の熱振動振幅が増す,即ちその固有エネルギーが増して,それが歪みエネルギーよりも大きくなると,その部分の歪みは解放されて消滅する。」(同),「この様な新核の発生により,旧結晶粒界は消滅し,新らしい結晶粒界が形成されてゆくが,この現象を再結晶という。再結晶が起ると金属は全く無歪の新結晶粒構成に変換するのであるから,塑性変形による諸性質の変化は(回復現象で緩慢にもどりかけていたのが)急激に正常に戻る。」(81~82頁),「再結晶後の結晶粒の大さは変形量及び処理温度によって著しく異る。・・・再結晶核の発生は変形量の小さいほど少なく,その成長速度は高温になるほど大きい。」(83頁)との記載があることが認められる。
b 証拠(甲32)によれば,東京大学教授三島良績著「金属材料概論 増補改訂版」(昭和46年・第17版)にも,「辷りをおこすと金属は硬化する。これを加工硬化・・・という・・・」(61頁),「冷間加工によって加工硬化した金属を焼なましする場合には,焼なまし温度がある温度以上になると軟化がおこるようになる。」(62頁),「上述の軟化・・・の現象は二段の変化の重畳によっておこることが今日知られている。第一は加工をうけた結晶粒がそのままの形を保持しつつ,ただ粒内の歪が除かれてゆく段階で,これを回復・・・といっている。第二は加工をうけた結晶の中に新しい歪の除かれた結晶の核ができて,これが成長し,旧結晶粒を置き換えてしまう変化であって,これを再結晶・・・と称している。」(63頁),「再結晶後の粒度は加工率と焼なまし温度,時間によって決定されるが,・・・なるべく再結晶後も微粒であるようにするためには加工率を大にして低温度で焼なましすればよい。」(64頁)との記載があることが認められる。
c 上記各文献の記載によれば,金属の組織に再結晶を生じさせるためには,「塑性変形」を施してから所定の温度に加熱する必要があること,再結晶後の粒度を小さくするためには「塑性変形」による加工率を大きくする必要があること,その場合の「塑性変形」は圧縮変形に限るものではないことが理解される。
したがって,突出部の「押し潰し加工」だけではなく,突出部を形成する際の「押し出し加工」も,再結晶の結晶粒を微細化すること,すなわち溶接部を母材と近似化することに寄与しているというべきである。
(ウ) 原出願当初明細書の記載
証拠(甲31,乙37,40)によれば,原出願当初明細書には,溶接部の継手開先をドラムの外面に向かって広がる形状とし,当該開先部に肉盛溶接して板厚の10ないし50%の余盛をドラム外面に有する溶接部を形成し,該溶接部に板厚と同じになるよう温間又は冷間加工を施した後に焼鈍する先行技術(特開平2-243790号。乙40)と対比して,「【0009】本発明は特開平2-243790号と同様な目的であるが,内側からの溶接と,更に改善された工法により優れた電着箔製造用ドラムを提供することを技術的課題とするものである。」とし,押し出し加工後に肉盛溶接をする実施例1での押し出し加工について,「【0033】この押し出し加工は溶接部15及び溶接による熱影響部を細粒化させる為の加工板厚を得る為に行なうものである。」「【0034】チタン製のアウタースキン12の場合この加工率が20%以下では溶接部15及び溶接による熱影響部の組織の結晶を細粒化,整粒化する効果が得られないからである。」とし,肉盛溶接後に押し出し加工をする第2実施例での押し出し加工について,「【0057】この押し出し加工は,可及的にこの部分を母材と面一円弧状態にする為及び次の押潰し加工により突出部16部分の組織の結晶を細粒化,整粒化するための加工歪みを与えるために行う。」と記載されていることが認められる(一部は,当事者間に争いがない。)。
原出願当初明細書に記載された発明が先行技術(特開平2-243790号)と異なる点が,内側から溶接する点を除けば,突出部の形成方法しかないことにかんがみると,原出願当初明細書【0009】にいう「更に改善された工法」とは,「押し出し加工」により外側への突出部を形成する点をいうものと解される。
(エ) 意見書(乙41)の記載
また,原告は,原出願に係る平成11年3月29日起案の拒絶理由通知書(乙39)に対する意見書(乙41)において,「・・・本発明はクレームに明確に特定しておりますように,溶接をアウタースキンの内側から行う構成であって,しかもこの溶接部を外側へ押し出し加工して突出部を形成した後,この突出部を押潰し加工する点に画期的な特徴があるもので,この点は引用例には全く開示されておりません。本発明は,内側から行う溶接部をアウタースキンの外側に押し出し加工を施して突出させ,押潰す点に画期的な創作性があるもので,引用例にはこの点全く開示されておりません。」と主張したことは,当事者間に争いがない。
この事実によれば,原告自身,「押し出し加工」に固有の技術的意義があると理解していたことが認められる。
(オ) まとめ
以上によれば,原告の上記主張は理由がない。
(2)  分割出願後の本件発明B及び本件発明C
分割出願後の本件発明B及び本件発明Cは,突出外面や内側凹部の形成方法に限定はなく,「内側から外側への『押し出し加工』により形成される『突出外面』又は『内側凹部』」以外の方法により形成される「突出外面」又は「内側凹部」をも含むこと(被告らの主張(ウ))は,当事者間に争いがない。
(3)  まとめ
ア 以上によれば,分割出願後の本件発明B及び本件発明Cは,原出願当初明細書に記載した事項の範囲内でないものを含むこととなったものであり,本件特許2は,本件特許1の適法な分割出願でない。
イ したがって,本件特許2の出願日は現実の出願日である平成8年11月20日となり,本件発明B及び本件発明Cは,その出願前日本国内で頒布された刊行物である特開平4-262872号特許公報(本件特許1に係る公報)記載の発明と同一であり,特許法29条1項3号に該当する新規性を欠く発明となり,本件発明B及び本件発明Cについての特許は無効であるから,原告は,上記特許を行使することができない(特許法104条の3)。
ウ よって,平成13年1月24日以降に方法2又は方法1を使用したとする本件発明B及び本件発明Cに基づく原告の予備的請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
9  結論
(1)  主位的請求について
ア 前記7のとおり,本件発明Aに基づく原告の被告らに対する差止請求及び廃棄請求は理由がない。
イ 本件発明Aに基づく原告の損害賠償請求は,共同不法行為者である被告らに対し,損害賠償金530万円及びこれに対する不法行為後である平成13年4月1日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。
(2)  予備的請求について
前記8に説示のとおり,本件発明B及び本件発明Cについての特許は無効であるから,上記(1)イの認容部分を超える部分に係る本件発明B及び本件発明Cに基づく予備的請求は,いずれも理由がない。
(3)  まとめ
よって,訴訟費用の負担について,民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行の宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 市川正巳 裁判官 中村恭 裁判官 宮崎雅子)

別紙  被告方法目録1
構成の分説(別添図1参照)
① 矩形平板からなるチタン板材1の一端縁を一方向に直角に曲げる。
② 前記チタン板材の他端縁を①と同方向に直角に曲げる。
③ ①で曲げられた湾曲外面に肉盛り溶接部2を形成する。
④ ②で曲げられた湾曲外面に肉盛り溶接部3を形成する。
⑤ ③で形成した肉盛り溶接部2に切欠4を切削加工で形成し,端面5を切削加工で平坦に仕上げる。
⑥ ④で形成した肉盛り溶接部3に切欠6を切削加工で形成し,端面7を切削加工で平坦に仕上げる。
⑦ チタン板材1を切欠4,6が内側になるよう円筒状に湾曲し,端面5,7を突き合わせてプラズマ溶接手段で溶接8し,内側凹部9と外側突部10とを形成する。
⑧ ⑦の溶接8によるはみ出し部11と外側突出部10の両側に形成された角部12をグラインダー加工によって削除し,湾曲部13を形成する。
⑨ 前記外側突出部10の外面を冷却しながら前記内側凹部9を埋めると共にそれを覆って,TIG溶接手段により溶着部14を形成する。
⑩ 前記外側突出部10及び溶着部14を押潰し加工して母材と同厚にし,この押潰し加工部を焼鈍する。

別紙  被告方法目録2
構成の分説(別添図2参照)
① 矩形平板からなるチタン板材1の一端縁を一方向に直角に曲げ,突出部2を形成する。
② 前記チタン板材の他端縁を①と同方向に直角に曲げ,突出部3を形成する。
③ ①で曲げられた湾曲外面に肉盛り溶接部4を形成する。
④ ②で曲げられた湾曲外面に肉盛り溶接部5を形成する。
⑤ ③で形成されたものの端面及び突出部2の先端を切削加工して平坦面6及び7に仕上げる。
⑥ ④で形成されたものの端面及び突出部3の先端を切削加工して平坦面8及び9に仕上げる。
⑦ チタン板材1を肉盛り溶接部4,5が内面になるように円筒状に湾曲し,端面6,8を突き合わせてプラズマ溶接手段で溶接10する。
⑧ ⑦の溶接10によるはみ出し部11と突出部2,3の両側に形成された角部12をグラインダー加工によって削除し,湾曲部13を形成する。
⑨ 前記外側突出部の外面を冷却しながらプラズマ溶接部を覆ってTIG溶接手段により溶着部14を形成する。
⑩ 前記外側突出部及び溶着部14を押潰し加工して母材と同厚にし,この押潰し加工部を焼鈍する。

別紙  被告方法目録3
構成の分説(別添図3参照)
① 矩形平板からなるチタン板材を円筒状に湾曲し,板端を突き合わせてプラズマ溶接手段で,円筒状の内側から溶接する。
② 円筒状の外側にはみ出した部分(ビード部)を平坦に仕上げる。
③ 溶接部を開いたV字型に内側より外側に押し出し加工する。
④ 内側凹部にTIG溶接手段で肉盛りする。
⑤ 肉盛り部分を押潰し加工して母材と同厚にし,この押潰し加工部を焼鈍する。
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