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「営業支援」に関する裁判例(152)平成14年 1月24日 東京地裁 平11(ワ)14860号 営業差止等請求、損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(152)平成14年 1月24日 東京地裁 平11(ワ)14860号 営業差止等請求、損害賠償請求事件

裁判年月日  平成14年 1月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平11(ワ)14860号・平10(ワ)9721号・平11(ワ)18389号・平10(ワ)16713号
事件名  営業差止等請求、損害賠償請求事件
裁判結果  乙事件(予備的請求)認容、甲・乙(主位的請求)・丙・丁請求棄却  文献番号  2002WLJPCA01240007

要旨
◆ベビーシッター事業に関するフランチャイズ契約を締結したフランチャイザーがフランチャイジーらに対し、契約締結前に売上試算やその基礎となるマーケットリサーチ基礎データ等の正確な情報を提供すべき義務に違反し、具体的な裏付けを伴った資料や根拠を示すことなく契約の勧誘をした上、契約締結後も経営技術指導援助義務に違反したとして債務不履行に基づく損害賠償請求が認められた事例

出典
新日本法規提供

参照条文
民法415条

裁判年月日  平成14年 1月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平11(ワ)14860号・平10(ワ)9721号・平11(ワ)18389号・平10(ワ)16713号
事件名  営業差止等請求、損害賠償請求事件
裁判結果  乙事件(予備的請求)認容、甲・乙(主位的請求)・丙・丁請求棄却  文献番号  2002WLJPCA01240007

平成10年(ワ)第9721号 営業差止等請求事件(甲事件)
平成10年(ワ)第16713号 損害賠償請求事件(乙事件)
平成11年(ワ)第14860号 営業差止等請求事件(丙事件)
平成11年(ワ)第18389号 営業差止等請求事件(丁事件)

甲・丙・丁事件原告・乙事件被告
株式会社ティ・エル・シー(以下「原告」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 竹岡八重子
同 廣瀬健一郎
甲事件被告・乙事件原告
株式会社グロース(以下「被告グロース」という。)
同代表者代表取締役 B
乙事件原告・丁事件被告
株式会社サザン・エージェンシー(以下「被告サザン」という。)
同代表者代表取締役 C
乙事件原告・丁事件被告
D(以下「被告D」という。)
乙事件原告・丁事件被告
E(以下「被告E」という。)
乙事件原告・丁事件被告
F(以下「被告F」という。)
乙事件原告・丙事件被告
G(以下「被告G」という。)
乙事件原告・丙事件被告
有限会社ピー・エル・エス(以下「被告ピーエルエス」という。)
同代表者代表取締役 H
乙事件原告 I(以下「被告I」という。)
乙事件原告・丙事件被告
J(以下「被告J」という。)
乙事件原告 有限会社Xインターナショナル(以下「被告X」という。)
同代表者代表取締役 K(上記被告10名を併せて以下「被告ら」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士
森田政明

 

主  文

1  甲、丙及び丁事件
原告の請求をいずれも棄却する。
2  乙事件
(1)  被告らの主位的請求を棄却する。
(2)  原告は、
ア  被告サザンに対し、530万2549円
イ  被告Dに対し、538万1603円
ウ  被告Eに対し、408万3500円
エ  被告Fに対し、375万1392円
オ  被告グロースに対し、536万4330円
カ  被告Gに対し、290万1117円
キ  被告ピーエルエスに対し、506万4953円
ク  被告Iに対し、342万6929円
ケ  被告Jに対し、399万8960円
コ  被告Xに対し、395万8695円
及びこれらに対する平成13年3月2日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  訴訟費用は、全事件を通じ、原告の負担とする。
4  この判決は、第2項(2) に限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
(甲事件)
被告グロースは、原告に対し、303万3360円及びこれに対する平成11年5月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(乙事件)
1  主位的請求
原告は、
(1)  被告サザンに対し、530万2549円
(2)  被告Dに対し、538万1603円
(3)  被告Eに対し、408万3500円
(4)  被告Fに対し、375万1392円
(5)  被告グロースに対し、536万4330円
(6)  被告Gに対し、290万1117円
(7)  被告ピーエルエスに対し、506万4953円
(8)  被告Iに対し、342万6929円
(9)  被告Jに対し、399万8960円
(10) 被告Xに対し、395万8695円
及び上記各金員に対する平成10年8月27日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  予備的請求
主文同旨。
(丙事件)
1  被告Gは、原告に対し、32万6112円及びこれに対する平成11年7月23日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告ピーエルエスは、原告に対し、268万9500円及びこれに対する平成11年7月23日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  被告Jは、原告に対し、111万1884円及びこれに対する平成11年7月24日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(丁事件)
1  被告サザンは、原告に対し、129万5652円及びこれに対する平成11年9月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告Dは、原告に対し、171万3660円及びこれに対する平成11年9月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  被告Eは、原告に対し、156万7392円及びこれに対する平成11年9月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4  被告Fは、原告に対し、136万6908円及びこれに対する平成11年9月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
甲、丙及び丁事件は、同事件被告らとベビーシッター事業に関するフランチャイズ契約を締結したフランチャイザーたる原告が、同被告らに対し、同被告らが、上記契約違反の行為を行ったとしてこれを解除した上で、上記契約違反を理由として損害の賠償を求め、乙事件は、被告らが、原告に対し、上記契約締結前に事実に反した説明やデータ、売上予測に基づき、何らのノウハウもないのに、これをあるかのように装い、被告らをして、原告のフランチャイズシステムに加盟すれば、原告の売上予測に従った売上と粗利を得られるものと誤信させて、被告ら各自に別紙2記載の金員を支払わせたと主張し、主位的に、詐欺に基づく上記金員の返還を、予備的に、前記事実が上記契約の債務不履行にあたると主張して、契約解除に基づく原状回復請求ないし損害賠償請求として、既払金相当額の支払を請求している事案である。
第3  当事者の主張
【甲、丙及び丁事件】
1  請求原因
(1)  甲事件
ア 原告は、昭和61年に旧商号「株式会社ポプリ企画」名で設立され、ベビーシッター派遣業、ベビールーム運営、様々な企業が開催するイベント事業での託児請負、ホテル事業での託児請負などを行ってきたが、平成4年7月、社名を株式会社ティ・エル・シーに変更し、それまでに培ってきたベビーシッター事業のノウハウ、顧客網を生かしてベビーシッター事業のフランチャイズチェーンの全国展開を開始した。
イ 原告と被告グロースは、概略下記の約定で、別紙2のとおりの日付で、ポプリシステム・フランチャイズ契約書をもって、ベビーシッター事業に関するフランチャイズ契約(以下「本件契約」といい、原告と被告らとのフランチャイズ契約を併せて「本件各契約」ともいう。)を締結し、被告グロースは、平成7年6月16日、「ポプリたかさき」の名で、ベビーシッター事業を開業した。

(ア) 本件契約の要旨
被告グロースは、本件契約書に定める条件に従い、原告の有する商標を使用して、ベビーシッター業を中核とする営業を行うことを約し、原告は、被告グロースに同営業を行うフランチャイズ権を付与する。
(イ) 本件契約書2条及び6条
原告は、被告グロースに対して、群馬県及び埼玉県において営業を行うフランチャイズ権を与え、被告グロースが群馬県高崎市芝塚町1842-13芝塚マンション102及び所沢市において、加盟店を設置し、経営する権利を与える。
(ウ) 同7条1項
原告は、被告グロースが本契約期間中、本フランチャイズ・ビジネスの遂行に関して、原告が有する商標を使用することを許諾する。
(エ) 同15条2項
被告グロースは、本フランチャイズ・ビジネスを行うに際し、原告の名誉・信用を毀損したり、毀損するおそれのある行為をしてはならない。
(オ) 同19条1項
被告グロースは、本件契約書9条に定められた規定及び被告グロースが営業に必要な経営指導技術援助並びに提供されるサービスの対価としてロイヤルティーという一括した名称の支払金を支払う。
(カ) 同21条3項
被告グロースは、毎月、ロイヤルティーの支払と同時に、原告が指定する方法により、そのロイヤルティーの計算の基礎となる前月の計算書を本部に提出しなければならない。
(キ) 同28条1号
原告は、被告グロースが、本件契約書の条項の1に違反し、原告の勧告に従わないときは、本契約を解除することができる。
(ク) 同36条1項
被告グロースは、本契約期間中、自己又は自己の支配・関与する第三者をして、同一分野における営業に従事してはならない。
(ケ) 同36条2項
被告グロースは、本契約終了後といえども、原告の書面による明示の承諾なくして、本契約終了の日から2年間は、自己又は自己の支配・関与する第三者をして、同一分野における営業に従事してはならない。
(コ) 同36条3項
被告グロースが、前項の規定に違反して、同一分野の営業に従事した場合には、被告グロースは当該競業による直近3か月間の平均売上月額の20パーセントか本契約に基づく営業による直近1年間の平均売上月額の20パーセントかいずれか多いほうの金額を、原告に対し、損害賠償金として当該営業月数に応じて支払わなければならない。
(サ) 同37条
本契約当事者双方は、本フランチャイズ・ビジネスの運営に関し、紛争その他の問題が生じたときは、誠意をもってこれを協議する。
万一、協議が不調に終わった場合には、東京地方裁判所を第1審の管轄裁判所とすることに合意する。
ウ 原告による本件契約の解除
(ア)a 被告グロースは、社団法人ベビーシッター協会正会員ではないにもかかわらず、平成11年1月発行のタウンページに「ポプリたかさき」名で広告を掲載するに際し、原告からの指導を無視し、かつ、原告から交付した掲載用原稿(「ポプリたかさき」の連絡先の下に東京本部の連絡先を記入したものの下に小さく「(社)全国ベビーシッター協会正会員」と表示したもので、一見して東京本部が(社)全国ベビーシッター協会正会員である趣旨がわかるもの)を無断で改ざんし、ポプリたかさきの連絡先の下に大きく「(社)全国ベビーシッター協会正会員」と表示し、あたかも「ポプリたかさき」が社団法人全国ベビーシッター協会正会員であるかのような誤認を招く広告を原告に無断で掲載するなど、本部の指導に従わない行為を行っており問題行為のあるフランチャイジーの一つであった。
b 被告グロースは、平成9年秋ころから、原告の運営するフランチャイズシステムから脱退すると共にベビーシッター事業を継続し、かつ、原告から加盟金等の返還を受けたいと考え、他の加盟店舗にも働きかけるとともに、同年11月16日の営業会議において、ポプリフランチャイズシステムから脱退したいとの意思を鮮明に表示するようになった。これに対し、原告は、〈1〉独立を希望するフランチャイジーは解約申入れがあったものとして扱い、平成10年6月30日付けで円満独立を認め、この場合本件契約における2年間の競業避止義務は適用しないものとする、〈2〉加盟を継続する場合は、ロイヤルティーの見直しなどを含めて善後策を講じる、との提案を行った。
c 原告がこのような提案を行っているにもかかわらず、被告グロースは、原告とフランチャイズ契約を結んでいる複数のフランチャイジーに対し「ポプリ本部はもうすぐつぶれる。」等原告の信用を毀損する言動を繰り返し行い、原告の運営するフランチャイズシステムからの脱退を執拗に勧誘し、原告の業務を妨害した。
(イ) 被告グロースの営業報告義務の懈怠及びロイヤルティーの不払
被告グロースは、本件契約は無効であると主張し、その一方で原告の商標を使用して営業を続け、かつ平成10年1月分ないし3月分のロイヤルティー計算の基礎となる計算書を原告に提出せず、上記期間分のロイヤルティーの支払もしなかった。
(ウ) 原告による本件契約書28条に基づく解除
以上の被告グロースの行為は、本件契約書15条2項、19条、21条3項に定められた被告グロースの義務に背くものであり、28条1号、4号の〈1〉、〈2〉及び〈5〉に該当する。さらに、本件契約は継続的契約であるところ、上記の経過に照らせば、原告と被告グロースとの間の信頼関係は被告グロースの行為により完全に破壊されるに至っている。そこで、原告は、被告グロースに対し、本件契約書28条に基づき、平成10年3月3日付け通知書をもって、同月31日限り、本件契約を解約する旨の意思表示をした。
エ 本件契約書36条3項に基づく損害賠償額の算定
本件契約書36条3項により、原告は、被告グロースに対し、本件契約に基づく被告グロースの営業による直近1年間の平均売上月額の20パーセントを損害賠償金として請求することができる。前記のとおり、被告グロースは平成10年1月分ないし3月分の売上を原告に報告していないので、この間の被告グロースの売上を原告は把握していない。
被告グロースから原告に売上の報告があった直近の1年間である平成9年1月から12月の被告の売上は、1516万6817円であり、平均売上月額は126万3901円である。
よって、原告は、被告グロースに対し、同金額の20パーセントである1か月あたり25万2780円に被告グロースが平成10年4月1日から平成12年3月31日までの間にベビーシッター派遣業及びベビールーム営業を行った月数を乗じた額のうち、平成10年4月1日から平成11年3月31日までの12か月分合計303万3360円及びこれに対する平成11年5月27日付「請求の趣旨変更申立書」送達の日の翌日である平成11年5月28日から支払済みまで商事法定利率年6分の遅延損害金の支払を求める。
(2)  丙事件
ア 上記(1) アと同旨。
イ 原告と被告G、H(以下「H」という。なお、Hは、平成8年5月20日、被告ピーエルエスを設立し、被告ピーエルエスは原告の同意を得て、Hの下記ベビーシッター事業及び下記原告・H間の契約の契約上の地位を承継した。)及び被告J(以下、上記3名を併せて「丙事件被告ら」ともいう。)は、下記の約定で、別紙2のとおりの日付で、ポプリシステム・フランチャイズ契約書をもって、ベビーシッター事業に関するフランチャイズ契約を締結し、被告Gは、平成7年7月20日、「ポプリ川越」の名で、Hは、同年9月1日、「ポプリ葛西」の名で、被告Jは、同年12月15日、「ポプリ大垣」の名で、ベビーシッター事業を開業した。

(ア) 前記(1) イ(ア)と同旨。
(イ) 本件契約書2条及び6条
a 原告は、被告Gに対して、埼玉県において営業を行うフランチャイズ権を与え、被告Gが埼玉県川越市南大塚○○○-○-○○○において、加盟店を設置し、経営する権利を与える。
b 原告は、Hに対して、東京都及びその周辺地域において営業を行うフランチャイズ権を与え、Hが東京都江戸川区中葛西○丁目○○番○号ファーストアベニュービルにおいて、加盟店を設置し、経営する権利を与える。
c 原告は、被告Jに対して、岐阜県において営業を行うフランチャイズ権を与え、被告Jが岐阜県大垣市伝馬町○番地△第3ビル2階において、加盟店を設置し、経営する権利を与える。
(ウ) 前記(1) イ(ウ)ないし(サ)と同旨。

ウ 丙事件被告らによる本件契約違反行為
(ア) 平成9年秋頃から、「ポプリたかさき」を運営する被告グロースらを中心とする一部加盟店において、原告の運営するフランチャイズシステムから脱退するとともにベビーシッター営業を継続し、かつ、原告から加盟金等の返還を受けたいと考え、他の加盟店舗にも働きかけるとともに、同年11月16日の営業会議において被告グロースの代表取締役B(以下「B」という。)が「本部と関係を切りたい」等と発言し、ポプリフランチャイズシステムから脱退したいとの意思を表示するようになった。この平成9年11月16日のオーナー会議では、被告グロースの同発言の他、複数のフランチャイジーから、ロイヤルティーの引き下げなどの要望が出されたので、事態を重視した原告は、同年12月9日付けで被告グロースら、平成9年11月16日のオーナー会議で発言した各オーナーに対し、前記(1) ウ(ア)bの〈1〉及び〈2〉のとおりの提案を行った。
(イ) 上記提案に対し、丙事件被告らは、平成10年1月30日付けファクシミリで被告グロース他と連名で、原告に対し、上記提案には納得できない旨回答してきた。
(ウ) 丙事件被告らの営業報告義務の懈怠及びロイヤルティーの不払
丙事件被告らは、上記回答後も、それぞれ従前のとおり「ポプリかわごえ」「ポプリ葛西」「ポプリおおがき」名でポプリの商標を使用し、かつ原告の指導援助を受けながら営業を続けた。
しかし、
a 被告G及び同Jは、平成10年1月分(同年2月10日提出期限)のロイヤルティー計算の基礎となる計算書を原告に提出せず、上記期間分のロイヤルティーの支払もしなかった。
b 被告ピーエルエスは、平成9年12月分及び平成10年1月分については、計算書のみ提出し、ロイヤルティーの支払をしなかった。
(エ) そして丙事件被告らは、平成10年2月19日付け内容証明郵便により、本件各契約は無効であると主張してきた。これにより、同被告らにおいて本件各契約を履行する意思のないことが明白となった。
(オ) 丙事件被告らは、この後も「ポプリ」名で従前のとおり営業を続けながら、平成10年2月分(同年3月10日提出期限)のロイヤルティー計算の基礎となる計算書を原告に提出せず、上記期間分のロイヤルティーの支払もしなかった。
そこで、原告は、平成10年3月3日付け「督促状」をファクシミリで同被告らに送信し、平成10年1月分及び2月分の計算書の提出とロイヤルティーの支払を求めたが、同被告らはこれに応じなかった。
(カ) 原告の督促にもかかわらず、丙事件被告らは、さらに平成10年3月分(同年4月10日提出期限)のロイヤルティー計算の基礎となる計算書を原告に提出せず、上記期間分のロイヤルティーの支払もしなかった。
そこで、原告代理人は、平成10年4月16日付け内容証明郵便にて丙事件被告らに対し、未提出分の計算書の提出と未払分のロイヤルティーの支払を求めるとともに、これに同被告らが応じない場合には原告において本件各契約を解除することがあること、この場合には「ポプリ」名の商標、標章を使用することはできなくなること、契約終了後は競業避止義務を負うことを告知した。
しかし、同被告らは、これに応じず、さらに平成10年4月分(同年5月10日提出期限)及び同年5月分(同年6月10日提出期限)の計算書を提出せず、上記期間分のロイヤルティーの支払もしなかった。
エ 原告による本件契約書28条に基づく解除
上記記載の丙事件被告らの行為は、原告と同被告らとの間の本件契約19条、21条3項に定められた同被告らの義務に背くものであり、28条1号に該当する。本件各契約は継続的契約であるフランチャイズ契約であるところ、上記の経過に照らし、原告と同被告らとの間の信頼関係は同被告らの行為により、完全に破壊されるに至った。
そこで、原告は、同被告らに対し、本件契約書28条に基づき、平成10年6月26日付け内容証明郵便をもって同月30日限り、本件各契約を解約する旨の意思表示をし、同解約の意思表示は、被告Gに対し、同月28日、被告ピーエルエス及び同Jに対し同月29日それぞれ到達した。
よって、原告と同被告らとの間の本件各契約は平成10年6月30日の経過をもって終了した。
オ 本件契約書36条3項に基づく損害賠償額の算定
(ア) 本件契約書36条3項により、原告は、丙事件被告らに対し、本件契約に基づく同被告らの営業による直近1年間の平均売上月額の20パーセントを損害賠償金として請求することができる。前記のとおり、被告G及び同Jは平成10年1月分ないし5月分の売上を原告に報告しておらず、被告ピーエルエスは、平成10年2月分ないし5月分の売上を原告に報告していないので、この間の同被告らの売上を原告は把握していない。
同被告らから原告に売上の報告があった直近の1年間(被告G及び同Jにつき、平成9年1月から12月、被告ピーエルエスにつき、平成9年2月から平成10年1月)の同被告らの売上(被告Gにつき163万0614円、被告ピーエルエスにつき1344万7505円、被告Jにつき555万9440円)、平均売上月額(被告Gにつき13万5884円、被告ピーエルエスにつき112万0625円、被告Jにつき46万3288円)から、原告は、それぞれ平均売上月額の20パーセントである1か月あたり、被告Gに対し2万7126円、被告ピーエルエスに対し22万4125円、被告Jに対し9万2657円の損害賠償金を請求できる。
(イ) よって、原告は、
a 被告Gに対し、1か月あたり2万7126円に同被告が平成10年7月1日から平成12年6月30日までの間にベビーシッター派遣業及びベビールーム営業を行った月数を乗じた額のうち、平成10年7月1日から平成11年6月30日までの12か月合計32万6112円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成11年7月23日から支払済みまで商事法定利率年6分の遅延損害金
b 被告ピーエルエスに対し、1か月あたり22万4125円に同被告が平成10年7月1日から平成12年6月30日までの間にベビーシッター派遣業及びベビールーム営業を行った月数を乗じた額のうち、平成10年7月1日から平成11年6月30日までの12か月分合計268万9500円及びこれに対する上記同様の日である平成11年7月23日から支払ずみまで商事法定利率年6分の遅延損害金
c 被告Jに対し、1か月あたり9万2657円に被告が平成10年7月1日から平成12年6月30日までの間にベビーシッター派遣業及びベビールーム営業を行った月数を乗じた額のうち、平成10年7月1日から平成11年6月30日までの12か月合計111万1884円及びこれに対する上記同様の日である平成11年7月24日から支払済みまで商事法定利率年6分の遅延損害金
の支払を求める。
(3)  丁事件
ア 上記(1) アと同旨。
イ 原告と被告サザン、被告D、被告E及び被告F(以下、上記4名を併せて「丁事件被告ら」ともいう。)は、下記の約定で、別紙2のとおりの日付で、ポプリシステム・フランチャイズ契約書をもって、ベビーシッター事業に関するフランチャイズ契約を締結し、被告サザンは、平成5年11月1日、「ポプリよこはま」の名で、また、平成8年11月25日、「ポプリ金沢」の名で、被告Dは、平成6年7月3日、「ポプリ一医会」の名で、被告Eは、平成6年11月1日、「ポプリ広島」の名で、被告Fは、同年12月5日、「ポプリ福島」の名で、それぞれベビーシッター事業を開業した。

(ア) 前記(1) イ(ア)と同旨。
(イ) 本件契約書2条及び6条
a 原告は、被告サザンに対して、全国において営業を行うフランチャイズ権を与え、被告サザンが横浜市内及び金沢市内において、加盟店を設置し、経営する権利を与える。
b 原告は、被告Dに対して、全国において営業を行うフランチャイズ権を与え、被告Dが千葉県内において、加盟店を設置し、経営する権利を与える。
c 原告は、被告Eに対して、広島県において営業を行うフランチャイズ権を与え、被告Eが広島県呉市内において、加盟店を設置し、経営する権利を与える。
d 原告は、被告Fに対して、福島県において営業を行うフランチャイズ権を与え、被告Fが福島県福島市新浜町2-6パレブラン2階において、加盟店を設置し、経営する権利を与える。
(ウ) 前記(1) ア(ウ)ないし(サ)と同旨。

ウ 丁事件被告らによる本件契約違反行為
(ア) 上記(2) ウ(ア)(イ)と同旨。
(イ) 丁事件被告らの営業報告義務の懈怠及びロイヤルティーの不払
丁事件被告らは、平成9年11月16日のオーナー会議での原告の提案に対し、納得できない旨の回答をした後も、それぞれ従前のとおり、「ポプリ横浜」「ポプリ金沢」「ポプリ一医会」「ポプリ広島」「ポプリふくしま」名でポプリの商標を使用し、かつ、原告のフランチャイズに対する指導援助を受けながら営業を続けた。
しかし、
a 被告サザンは、横浜店については平成10年1月分(同年2月10日提出期限)について、ロイヤルティーの支払の基礎となる計算書のみ原告に提出し、ロイヤルティーの支払をしなかった。また、金沢店については、平成9年11月分から平成10年1月分までについては、計算書のみ原告に提出し、ロイヤルティーの支払をしなかった。
b 被告Dは、平成9年12月分、平成10年1月分までについては、計算書のみ原告に提出し、ロイヤルティーの支払をしなかった。
c 被告Eは、平成9年11月分については、計算書のみ原告に提出し、ロイヤルティーの支払をしなかった。そして、同年12月分以降については、計算書も提出せず、ロイヤルティーの支払もしなかった。
d 被告Fは、平成9年11月分以降については、計算書も提出せず、ロイヤルティーの支払もしなくなった。
(ウ) そこで原告は、被告E及び同Fに対し、平成10年2月18日、同日付け「営業報告書提出並びにロイヤルティー支払請求」と題する書面をファクシミリで送信し、未提出分の計算書の提出と、未払ロイヤルティーの支払を求めたが、被告E及び同Fは、これに応じなかった。
(エ) そして、丁事件被告らは、平成10年2月19日付け内容証明郵便により、本件各契約は無効であると主張してきた。これにより、同被告らにおいて本件各契約を履行する意思のないことが明白となった。
(オ) 丁事件被告らは、この後も「ポプリ」名で従前のとおり営業を続けながら、
a 被告サザン、被告E、被告Fは、平成10年2月分(同年3月10日提出期限)のロイヤルティーの計算の基礎となる計算書を原告に提出せず、同期間分のロイヤルティーの支払もしなかった。
b また被告Dは、平成10年2月分については、ロイヤルティー計算の基礎となる計算書のみ原告に提出し、ロイヤルティーの支払をしなかった。
そこで、原告は、平成10年3月3日付け「督促状」をファクシミリで丁事件被告らに送信し、未提出分の計算書の提出と未払分ロイヤルティーの支払を求めたが、同被告らは、これに応じなかった。
(カ) 原告の督促にもかかわらず、丁事件被告らはさらに平成10年3月分(同年4月10日提出期限)のロイヤルティー計算の基礎となる計算書を原告に提出せず、同期間分のロイヤルティーの支払もしなかった。
そこで、原告は、被告サザン及び同Dに対しては、平成10年4月16日付け内容証明郵便で、被告E及び同Fに対しては、同年5月6日付け内容証明郵便で、未提出分の計算書の提出と未払分のロイヤルティーの支払を求めるとともに、これに同被告らが応じない場合には、原告において本件各契約を解除することがあること、この場合には、「ポプリ」名の商標、標章を使用することはできなくなること、契約終了後は競業避止義務を負うことを告知した。
しかし、丁事件被告らはこれに応じず、さらに平成10年4月分(同年5月10日提出期限)以降の計算書を提出せず、同期間分のロイヤルティーの支払もしなかった。
エ 原告による本件契約書28条に基づく解除
(ア)a 上記ウの丁事件被告らの行為は、本件各契約書19条、21条3項に定められた同被告らの義務に背くものであり、28条1号に該当する。本件各契約は継続的契約であるフランチャイズ契約であるところ、上記ウの経過に照らし、原告と同被告らとの間の信頼関係は同被告らの行為により完全に破壊されるに至った。
b また、被告サザンについては、平成10年10月に営業を閉鎖した旨主張するが、実際には、有限会社グッドスタッフがその事業を継続しているところ、同社の人的構成などからすれば、このことは本件契約書36条2項にいう「自己又は自己の支配の関与する第三者をして同一分野における営業に従事してはならない。」との条項に違反して営業を継続させていたといえる。
(イ) そこで、原告は、丁事件被告らに対し、本件契約書28条に基づき、平成10年7月21日付け内容証明郵便をもって、同月25日限り、同被告らとの間の本件各契約を解約する旨の意思表示をし、同解約の意思表示は同被告らに対し、同月23日、それぞれ到達した。
よって、原告と同被告らとの間の本件各契約は、平成10年7月25日の経過をもって終了した。
オ 本件契約書36条3項に基づく損害賠償額の算定
本件契約書36条3項により、原告は丁事件被告らに対し、本件契約に基づく同被告らの営業による直近1年間の平均売上月額20パーセントを損害賠償金として請求することができる。
(ア) 上記ウのとおり
a 被告サザンは、平成10年2月分以降について
b 被告Dは、平成10年3月分以降について
c 被告Eは、平成9年12月分以降について
d 被告Fは、平成9年11月分以降について
売上を報告していないので、この間の同被告らの売上を原告は把握していない。
(イ) 丁事件被告らから原告に売上の報告があった直近の1年間、すなわち
a 被告サザンは、平成9年2月から平成10年1月
b 被告Dは、平成9年3月から平成10年2月
c 被告Eは、平成8年12月から平成9年11月
d 被告Fは、平成8年11月から平成9年10月
の同被告らの年間売上額は、被告サザンが647万8310円、被告Dが856万8310円、被告Eが783万6960円、被告Fが683万4560円であり、平均売上月額は、被告サザンが53万9859円、被告Dが71万4025円、被告Eが65万3080円、被告Fが56万9546円であり、その20パーセント相当額は、被告サザンは10万7971円、被告Dは14万2805円、被告Eは13万0616円、被告Fは11万3909円である。
(ウ) よって、原告は、
a 被告サザンに対し、1か月あたり10万7971円に同被告が平成10年7月26日から平成12年7月25日までの間にベビーシッター派遣業及びベビールーム営業を行った月数を乗じた額のうち、平成10年7月26日から平成11年7月25日までの12か月合計129万5652円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成11年9月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の遅延損害金
b 被告Dに対し、1か月あたり14万2805円に同被告が平成10年7月26日から平成12年7月25日までの間にベビーシッター派遣業及びベビールーム営業を行った月数を乗じた額のうち、平成10年7月26日から平成11年7月25日までの12か月分合計171万3660円及びこれに対する上記同様の日である平成11年9月2日から支払ずみまで商事法定利率年6分の遅延損害金
c 被告Eに対し、1か月あたり13万0616円に同被告が平成10年7月26日から平成12年7月25日までの間にベビーシッター派遣業及びベビールーム営業を行った月数を乗じた額のうち、平成10年7月26日から平成11年7月25日までの12か月分合計156万7392円及びこれに対する上記同様の日である平成11年9月2日から支払済みまで商事法定利率年6分の遅延損害金
d 被告Fに対し、1か月あたり11万3909円に同被告が平成10年7月26日から平成12年7月25日までの間にベビーシッター派遣業及びベビールーム営業を行った月数を乗じた額のうち、平成10年7月26日から平成11年7月25日までの12か月分合計136万6908円及びこれに対する上記同様の日である平成11年9月2日から支払済みまで商事法定利率年6分の遅延損害金
の支払を求める。
2  請求原因に対する認否
(1)  甲事件
ア 請求原因アのうち、原告の社名のみ認め、その余は争う。
原告が培ったベビーシッター事業のノウハウ、顧客網を生かしたとする点は否認する。
イ 同イの事実のうち、本件契約の成立は認める。
ウ(ア) 同ウ(ア)のうち、原告がbの〈1〉、〈2〉の提案をしてきたことは認めるが、その余は争う。
(イ) 同(イ)は認める。ただし、「ポプリたかさき」の名前を早々に「グロース」に変更して営業している。
エ 同エは争う。
(2)  丙事件
ア 上記(1) アと同旨。
イ 同イと同旨。
ウ(ア) 同ウ(ア)と同旨。
(イ) 同(イ)は認める。
(ウ) 同(ウ)の事実のうち、a、bは認め、その余は否認する。
(エ) 同(エ)は認める。
(オ) 同(オ)は認める。ただし、被告らは、ポプリの名前を早々に変更して営業している。
(カ) 同(カ)の事実は認める。
エ 同エのうち、原告から被告らに対し本件各契約を解約する旨の書面が到達したことは認め、その余は否認ないし争う。
オ 同オは争う。
(3)  丁事件
上記(2) と同旨。
3  抗弁
(1)  甲事件
ア 詐欺取消
後記【乙事件】請求原因〔主位的請求〕記載のとおり。
イ 債務不履行解除
後記【乙事件】請求原因〔予備的請求〕記載のとおり。
(2)  丙、丁事件
上記(1) と同旨。
4  抗弁に対する認否
後記【乙事件】請求原因に対する認否と同じ。
【乙事件】
1  請求原因
〔主位的請求〕
(1)  本件各契約の成立
被告らは、原告と、別紙2記載のとおりの日付で、フランチャイズ契約である本件各契約を締結し、別紙2記載の各加盟金、開業準備指導料、調査・教育費、保証金名下の金員を支払い、各契約日から平成10年3月まで毎月の売上の10パーセント相当額のロイヤルティーを支払った。
(2)  原告の詐欺
原告の代表取締役会長L(以下「L」という。)及び代表取締役社長A(以下「A」といい、Lと併せて「Lら」という。)は、共謀の上、被告らに対し、下記の勧誘文言や説明が事実に反することを知りながら、あえてそのような勧誘や説明をして、被告らを勧誘してその旨誤信せしめて、本件各契約を締結させたものである。
なお、被告ら個々に対する欺罔行為の骨子は別紙1記載のとおりである。
ア そして、これら被告らに対する詐欺を構成する主要事実は次のとおりである。
(ア) 被告らが本件各契約前にLらから交付された売上試算表あるいは事業収支計画書及びマーケットリサーチ基礎データに記載された需要予測とそれに基づく売上予測が、事実に反した予測とそれに基づく根拠のない売上予測であった。
(イ) そして、それをあたかも真実であるかのように売上試算表あるいは事業収支計画書及びマーケットリサーチ基礎データに記載された内容を強調し、契約締結を誘引した。
イ そして、これを基礎づける事情として下記の事実がある。
(ア) マーケットリサーチ基礎データ、売上試算表や事業収支計画書の提示は、Lらが、その説明の具体的な根拠付けにした資料であり、被告らが本件各契約締結に至った重要な要素である。
(イ) 営業範囲の説明は、マーケットリサーチ基礎データ、売上試算表等に現された潜在需要の支配性に関する動機付けであり、Lらが説明した売上予測が真実確保されると、被告らをして確信せしめる根拠となった。
(ウ) また、原告の主要取引先リストの提示とその説明は、業界における原告の信用力が高いことや、原告からの顧客紹介による売上確保や助成が、システムとして確立していることを、被告らをして確信せしめる根拠となった。
(エ) 全国ベビーシッター協会の割引券制度の利用は、ベビーシッター事業の今後の需要の高さを根拠付け、売上試算の確実性を具体化した行為であり、原告のバックアップ体制や、全国ベビーシッター協会の顔役であることや業界の老舗であることの説明は、原告の標榜するポプリシステムが、売上試算を確実に実現できると被告らをして確信せしめる根拠となった。
ウ(ア) ところが、売上試算表あるいは事業収支計画書及びマーケットリサーチ基礎データに記載された内容は、原告のベビーシッター事業の経験的ノウハウに基づくものでなく、Lの独自の経験に基づく、極めていい加減な数字であった。
また、原告が全国展開すべきデータを集積した形跡も経験もなく、かつ、全国展開の事業ノウハウもなかったこと、売上予測を確保すべき経営的ノウハウがなかったこと、ベビーシッター派遣事業でありながら、需要層の顧客吸収のノウハウやデータ集積の経験がなく、売上予測を全国的に提示できる素地がなかったことは、L及びAの各尋問の結果からも明らかに看取できる。
要するに、原告の言わんとするベビーシッター事業の経験的ノウハウとは、派遣ベビーシッターの人材育成事業(これとて全く根拠がないもので、高々数日程度の開業指導などと謳ったミーティング)という程度に過ぎず、これが事前に予測し、あるいは事業計画された売上を達成するノウハウでもなく、経営的、収支的に見合うかどうかのノウハウでなかったことは極めて明白である。
(イ) ところで、原告は、売上試算表や事業収支計画書は、契約後にしたオーナー会議において交付したものである旨主張する。
しかし、地域も加盟時期も異にする被告らに同一の売上試算表や事業収支計画書があるはずもないこと、被告らがこぞって、事前の売上試算(予測)や事業収支計画も聞かないで、漫然と契約書にサインすることなど全くあり得ないこと、原告の契約誘因の説明が極めて断片的で、契約締結に至る動機付けに乏しく、一貫性がなく不自然であること、この売上試算表や事業収支計画書の基礎となるマーケットリサーチ基礎データが被告らの店舗展開する地域毎に作成され、それを各々別途交付されていること、そして、それに基づいて、Lが売上予測や事業収支計画の説明に及び、それをサポートする本部の体制やシステム、規模や能力をAが補い、信用性を強調したという、被告らの契約に至った経緯や内容に関する供述や陳述書は、極めて契約締結の経過として自然であり、一貫しており、各被告らともほぼ一致した経過を辿っていること、被告らの契約の前後に関わりなく、売上試算表や事業収支計画書とほぼ同程度の売上予測が開示された加盟勧誘のための宣伝が、雑誌広告に掲載され、被告らの加盟契約前にそうした内容を雑誌広告により掲載した事実を、Lらも認めていること、フランチャイズ白書には、対象年度における被告らの営業内容とは掛け離れた加盟店の売上実績が、標準店舗の利益として、公然と謳われていることなどの各事実関係から、売上試算表や事業収支計画書、マーケットリサーチ基礎データは契約前に交付され、Lらが契約加盟の誘因の説明資料として交付したものと認められる。
(ウ) また、Lらが、被告らに対し、説明や交付した売上試算表や事業収支計画書、マーケットリサーチ基礎データが事実に反した内容であったことを知りながら、真実であるかのように装ったことは、下記aないしf記載の事実を総合すれば合理的かつ自然に認めることができる。すなわち、原告は、ベビーシッター派遣事業に名を借りて、実際には何ら全国的に事業計画や売上試算(予測)を開示できる経験的、科学的な根拠もなく、また、全国展開によるベビーシッター派遣事業のノウハウも、能力もないのに、これがあるかのように新聞、雑誌記事などを使用して大々的に宣伝して装い、形式上フランチャイズシステムを構築して、加盟店を募集し、加盟店から各種名目の金員の支払を受けてこれを詐取したことは明らかである。
a マーケットリサーチ基礎データに記載された需要予測の数字の決定や算定方法が一定でなく、何らベビーシッター派遣事業はおろかベビーシッターに関する事業の経験的データに基づく数字でない、いわばLの独自、勝手な数字であったこと。
b 需要予測の数字自体極めて大きな需要予測であり、事業展開への誘因性が濃厚であったこと。
c 被告ら毎に示された重複した地域の需要予測の数字が、近接した時期であるのに大きく隔たりあること。
d Aの供述も、需要に対する顧客吸引のノウハウを説明できず、これをはぐらかす供述に終始したこと。
e 本部自身に全国展開するノウハウの蓄積がなく、全国的な人材の確保のシステムも手段も構築されていなかったこと。
f 被告らの加盟契約以前やその加盟経過の中でも、加盟直後からトラブルや経営不振により、脱退や廃業を余儀なくされた他の加盟店が多く存在していること。
(エ) 原告は、前記のとおり、新聞記事や雑誌の対談形式を用いた方法で、大々的に地域展開がなされているかのような加盟募集に加え、地域限定方法により、独占的な営業エリアを確保し、本部の独特なノウハウや営業支援により収益が確保されるかのような営業収益の重要な要素につき、事実と異なる巧みな詐術を用い、加盟要項等などを周到に用意した上、顧問弁護士と図り、契約書類等や法的な問題の対処に備え、各加盟店から苦情が提起されると法的な訴訟に臨むなどの方法や周辺事業者に圧力をかけるなど、極めて悪質、陰湿な方法で、本部の延命を図ってきた。
しかし、そのフランチャイズの内容は、単に幼児教育を長年経験してきたというAの理想論が展開されているだけに過ぎず、自ら子供を育み母親としての体験もないまま、幼児を抱えた共稼ぎ夫婦の実態や、地方の交通事情や家族事情などを、全く顧慮することなく、また経験的なデータ集積に基づくこともないまま、もっともらしいフランチャイズシステムの形だけを仮装し、架空の旨味のある売上予測、需要予測で、加盟店を吸引して、あたかも需要予測が経験的なデータに基づき、売上予測を達成できるかの説明を重ね、加盟店の募集を図り、加盟金を詐取していたものである。
エ 被告らは、こうした原告の根拠のない、事実に反した売上予測や需要予測を真実と信頼したことにより、フランチャイズ加盟店舗を開業しようと決意して、別紙2のとおりの名目の金員を原告に対し、各契約直後に支払い、もって加盟金等と共に契約に基づくロイヤルティーを原告に詐取されたものである。なお、被告らの実際の売上は、原告の示した売上試算表の20分の1から精々4分の1に止まり、これらの売上の低さは原告も争わない。
原告は、被告らのうち、存続する数店舗につき、開業後2、3年間の売上を挙げて詐欺性を争うが、開業後2、3年間の売上は、被告らが広告宣伝費や人件費を大幅に増強して必死の事業存続を図ってきた結果に過ぎず、原告の支援やノウハウによるものではなく、原告の詐欺性は疑う余地もない。さらに原告は、売上試算表は、ある料金表の体系に基づいたとか、被告らオーナーが自ら営業に携わらなかったからである旨反論するが、原告は、元々被告らオーナーについては、この種事業の素人であってもできること、サブビジネスとして高収益が得られることを謳い文句としていたものであるところ、被告らのほぼ全員が主事業主であり、この種事業の素人であって、原告の定めた高額な料金表をもって初年度の営業を開始しているが、その後、原告から、売上向上の指導や援助は全くなかった。
こうした実情からしても、原告は、契約当初から被告らの売上に対する指導や援助などができるノウハウや能力を有しておらず、また売上向上に対する関心もなかったことが理解できる。
(3)  詐欺取消の意思表示
被告らは、原告に対し、平成10年8月26日到達の本件訴状をもって本件各契約を取り消すとの意思表示をした。
(4)  よって、被告らは、詐欺取消による返還請求権に基づき、別紙2記載の既払額及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成10年8月27日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
〔予備的請求〕
(1)  仮に、本件各契約の締結が、原告の詐欺に基づくものとはいえないとしても、被告らは、前記(主位的請求)記載の事実、経過に基づき、本件各契約を締結した。
しかし、本件各契約締結にあたり、原告には、誤った市場の需要規模や将来性や、それに基づく可能性の全くない売上予測や事業収支計画を提示したこと、営業範囲を厳守しなかったこと、バックアップシステムや支援体制を怠り、営業不振店の援助、指導を行なわず、漫然営業不振を看過してきたという数々の契約上の義務の不履行があることは明らかである。
(2)  そこで、被告らは、原告に対し、平成13年3月1日の本件口頭弁論期日において本件各契約を解除するとの意思表示をした。
(3)  よって、被告らは、原告に対し、債務不履行解除に基づく原状回復請求権ないし損害賠償請求権に基づいて別紙2記載の金員及びこれに対する平成13年3月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
2  請求原因に対する認否
(1)  〔主位的請求〕請求原因(2) の事実は否認ないし争う。
原告に欺罔行為はなく、詐欺は成立しない。
被告らの主張する主要な事実についての反論は以下のとおりである。
ア シッター派遣の場合の粗利の説明や、損益分岐点の説明などは行っているが、売上予測は行っていない。
イ 各店舗について、全体として健闘している、がんばっている旨の説明はしたが、虚偽の告知はしていない。
ウ 営業やこの種業界に経験がなくても、本部がきちんと指導する旨説明したものであり、現実に開業に向けての指導(オーナー研修、リーダーシッター研修など)及び開業後の指導を行っており、またマスコミを通じて「ポプリチェーン」の知名度を高め、さらに様々な企業との提携を通じて広く顧客を獲得する活動を行ってきたのであり、虚偽の告知は行っていない。
エ クーポン券は、現実に平成9年までは利用可能であったから、虚偽の告知はしていない。
(2)  〔予備的請求〕請求原因(1) の事実は否認ないし争う。
原告に債務不履行はない。
仮に、債務不履行に基づく解除が認められたとしても、フランチャイズ契約は継続的契約であって、その解除は将来に向かってのみ効力を有すると解すべきであるから、被告らの主張する原状回復請求権は発生しない。
3  抗弁
相殺(主位的請求・予備的請求に対して)
(1)  仮に本件各契約が取り消され、もしくは解除された場合でも、原告は、被告らに対し、本件各契約に基づいてフランチャイズに関するサービス、ノウハウ及び権利を付与しており、これらは、原告と被告らが本件各契約を締結した結果被告らが得たものであるから、本件各契約が取り消され、もしくは解除された場合には、被告らが原告に対し利得としてその価格を返還すべきものである。
そして、同利得の価格は、被告らが返還を求めている金員に見合うものであるから、被告らが原告に対して請求している金額と同額であるから、原告は、被告らに対し、被告ら請求金額と同額の不当利得返還請求権を有する。
(2)  原告は、被告らに対し、主位的請求については、平成13年1月12日の本件弁論準備手続期日において、予備的請求については、平成13年6月28日の本件口頭弁論期日において、上記不当利得返還請求権と被告ら請求債権とを対当額で相殺するとの意思表示をした。
4  抗弁に対する認否
争う。
第4  争点
1  本件各契約は、原告の詐欺によるものかどうか。
2  原告に、本件各契約について債務不履行があるとして、被告らの解除及びこれに基づく損害賠償が認められるかどうか。
3  被告ら(被告I、被告Xを除く。)に、本件各契約の違反があるとして、原告の解除及びこれに基づく損害賠償が認められるかどうか。
第5  争点に対する判断
1  前提となる事実
原告と被告らとの間に本件各契約が締結されたこと、甲、丙及び丁事件被告らが、原告主張の時期からロイヤルティーの支払をしなくなったこと、原告は、甲、丙及び丁事件被告らに対して契約違反を理由として、本件各契約の解除の意思表示をしたことは当事者間に争いがなく、他方、被告らは、原告に対して、本件各契約が詐欺に基づくものとして取消の意思表示をし、また、債務不履行を理由として解除の意思表示をしたことは、当裁判所に顕著であり、証拠(乙9ないし18)及び弁論の全趣旨によれば、本件各契約に基づいて被告らが原告のフランチャイズとしてベビーシッター事業を開業したこと、被告らが別紙2記載のとおりの金額を原告に支払ったことが認められる。
2  事実関係
争いのない事実に証拠(甲全85、86、89、97、107、123ないし126、乙9ないし18、21ないし30、31の1及び2、32の1の2、32の2の1ないし5、50、68ないし70、原告代表者L及び同A(いずれも下記認定に反する部分を除く。)、被告グロース代表者B、被告E、同J、同D、同F)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)  Aは、大学の助手、保育園の園長、児童教育専門学校の講師を経た後、昭和61年4月、ポプリ企画を設立し、個人でベビーシッター派遣及びベビールームにおける保育事業を開業し、同年9月、株式会社ポプリ企画を設立した。平成4年5月、フランチャイズ展開を始め、同年6月、株式会社ポプリ企画から原告に商号を変更した。
(2)  Lは、29年間、AIU保険会社(以下「AIU」という。)に勤務し、退社した後、平成4年8月、原告の企業マーケットの開拓及びフランチャイズ展開を始めるために、原告の経営に参加し、代表取締役に就任した。
(3)  原告内では、Lが、フランチャイズのシステム及び加盟店のオーナーに対する経営面の指導を担当し、Aが、保育者に対する教育、指導を担当した。
Lは、原告の経営に参加するまでは、何らベビーシッター事業に関与したことはなかったが、AIUで、マーケティングに携わっていた経験を基礎として、原告のフランチャイズシステムを作った。
Lは、ベビーシッター事業の営利性のノウハウについては、人材に尽きると考え、また、都市と地方でそのノウハウは変わらないと考えていた。一方、Aは、営業のノウハウについては、顧客にベビーシッター業を知ってもらうことだと考えていた。
また、Aは、原告フランチャイズシステムの加盟者は、保育事業については、素人であっても、経験者であっても、仕事に熱意と理解があれば、かまわないと考えていた。
(4)ア  被告らは、ベビーシッターのフランチャイズ契約に興味を示し、原告に連絡してきた。被告らは、別紙1の各被告の事実のうち、各1の「本件契約締結の経緯」記載のとおり、原告から勧誘を受け、本件各契約を締結した。
イ  被告らは、過去にベビーシッター事業に関与したことはなく、また、保育関係の仕事をしたこともなく、ベビーシッター事業については、素人であった。
ウ  原告が被告らに示したマーケットリサーチ基礎データには、都市ごとに、総人口、世帯数、共働比率、出生率、対象マーケット、市場規模、ターゲットマーケット、少子化指(係)数、潜在需要の各数字が記載されている。
これによると、全国の潜在需要は、被告E、ポプリ三重、被告Fに交付したものには450億円(乙34、35)、被告Iに交付したものには800億円(乙36)、被告グロースに交付したものには557億円(乙38の1)とされ、これら自体大きな食い違いがある。そして、これらの数字の違いは、市場規模の計算の基礎となる金額を、7000円にするか8000円にするか1万円にするかによるものであるが、このように数字を変えることについての客観的な資料や根拠はなく、また、都市と地方との区別も何ら考慮されていない。
また、潜在需要の数字は、市場規模に記載した金額の30から50パーセントとして出したものであるが、この点についても客観的な資料や根拠はない。
エ  他方、被告らに対する案内文中には、「ベビーシッター事業において、フランチャイズ展開の成否は、本部のしっかりとした商圏調査にもとづいて、売上予測を立て、事業収支計画を策定、質の良いサービスを提供するために、優秀な派遣スタッフを確保すること、スタッフの研修システムが確立されていること、顧客開拓の支援体制が十分整っていることなどにかかっていると申しても過言ではありません。」ともしていた。
(5)  原告がフランチャイズ加盟店に対して行う指導
ア 原告は、被告らに対し、以下のような指導を行った。
(ア) 原告本部が、加盟店に対して行う開業準備指導
a 開業準備タイムスケジュール
開業準備段階において、「ポプリFC加盟店開業準備タイムスケジュール」と題する書面を交付した。
b オーナー研修
オーナー研修を2日間かけて行い、ベビーシッター事業の概要、原告のフランチャイズシステムの説明をし、さらに収支予測と目標管理、ターゲットマーケット、派遣料金とシッター時給などについて説明をした。
c マネージャーないしリーダーシッター(ベビールームまたは事務所に常駐して、顧客との対応、ベビーシッターの管理・指導・営業などを行う)、ベビーシッターの面接、研修
各加盟店が募集したマネージャー、ベビーシッターに対して、面接、研修を行った。
(イ) 原告本部が、各加盟店に対し、開業後に行う指導及び支援は次のとおりであった。
a 保育者に対する指導
年2回、マネージャーに対して、原告本部で研修を行った。
毎月1回「ポプリペーパー」と称する通信紙を発行していた。
b オーナー及び営業担当者に対する指導及び営業面の支援
イ また、営業支援の一環として、年数回、原告本部から、Aや数名の社員が、被告らの店舗の取引先確保のために、各地域のホテルを被告らと一緒に回って、取引の勧誘を行った。しかし、このような勧誘は、10回以上訪問しないと、契約を獲得はできない類のものであって、実際、Aが、被告らの関係で獲得した顧客は広島で1件のみであった。
(6)  被告らの契約締結後の状況
被告らの開業初年度の売上は、別紙3(被告Xを除き、各月の右側のグラフ)のとおりであり、また、被告らの本件各契約締結後の状況は、別紙1各被告の事実のうち各2の「本件契約締結後の状況」のとおりであった。
被告らは、このように、売上が伸びないのは、各人の努力が足りないからだと考え、他の者に迷惑をかけているのではないかと悩んでいた。
(7)  平成9年夏、被告らは、話合いをする機会を持ち、被告ら全員が売上が上がらないことで悩んでいること、原告本部からの適切な指導がなかったこと、Lの契約前の話と大分違うこと、売上予測もおかしいことなどについて共通の認識を持つに至り、同年11月16日、被告らは、オーナー会議において、原告に対し不満を述べたところ、原告から、同年12月9日付け回答書において、前記第3【甲、丙及び丁事件】1(1) ウ(ア)b記載のとおりの提案がなされた。
これに対し、被告ら及びポプリ大森のMは、原告に対し、平成10年1月30日付け「回答書の返答に関する件」との書面で「貴社のフランチャイズ契約の締結に至る事前説明や市場調査、売上げ予測並びに経営指導やノウハウ提供につき、極めて杜撰であり、事実に反することや義務違反の点があることが各オーナー間で共通した意見であり、これまで支払った加盟金、市場調査料、各月のロイヤルティー支払いの法的妥当性に強い疑義と不満が噴出し、当方共の蒙った損失は計り知れないものがあり、貴回答のお申し出の範囲で納得することは到底できません。」との意思を表明した。
(8)  原告は、平成10年10月31日、全国ベビーシッター協会を脱退した。
(9)  原告の事業形態としては、直営店、フランチャイズ店、ネットワーク店があるが、ネットワーク店とは、開業指導を行い、開業後は、希望者に限り、コンサルティングサービスも行うものである。平成9年秋ころ、23店あった原告のフランチャイズ店は、現在は5店程度になり、3店あったネットワーク店は、17店となっている。
3  乙事件(争点1及び2)
甲、丙及び丁事件では、原告が、甲、丙及び丁事件被告らに対し、本件各契約の違反によりこれを解除した等として損害賠償請求をしているところ、乙事件において、被告らは、本件各契約は原告の詐欺により締結したものであるので取り消した、あるいは原告の債務不履行により解除した旨主張していることから、まず、乙事件について検討する。
(1)  主位的請求について
被告らの主張は要するに、原告は、根拠のない虚偽の売上予測を示し、営業を支援するノウハウもないのにもかかわらず、あるように装って、被告らを勧誘し、被告らをして、これらがあるものと誤信させ、本件各契約を締結させたとするものである。以下、検討する。
ア 売上予測について
(ア) 前記認定の事実によれば、原告は、売上試算表、マーケットリサーチ基礎データなどをもとに売上予測をした上で、被告らを勧誘したものと認められる。
(イ)a これに対し、原告は、契約締結前に、売上予測ないし保証はしたことがない旨主張し、A及びLは、売上試算表は、契約締結後に加盟店経営者に売上目標を立ててもらう際の参考資料として渡しているものである、契約前に、売上試算表やマーケットリサーチ基礎データを渡したことはなく、これらは、契約締結後のオーナー研修中に渡したものである、契約前に、売上について尋ねたのは、被告グロースのみであり、他の被告らは誰も売上について尋ねなかった、契約前に、売上予測、保証はしていないなどと供述する。
b さらに、Aは、保育事業の性質が、子供を育て、母親を支援するという社会性の高い仕事なので、この事業は儲けが第一の仕事ではない旨を全ての加盟希望者に述べている、また、この事業は信用を得るのに時間がかかるので、開業直後から多額の収入が得られるものではなく、黒字に転換するのは、3年目からである旨被告らに説明している旨供述し、この説明を裏付けるような証拠(甲全11)も存在する。
(ウ)a しかしながら、他方で、被告らは全員、本件各契約締結前に、売上予測、売上試算表などに基づいて売上予測を聞いている旨陳述している。
そして、一般的に、フランチャイジーになろうとする者にとって、フランチャイズ加盟後にどの程度の売上が上がるかは、最大の関心事というべきである。ことに本件では、被告らは全員、ベビーシッター事業ないし保育事業について全くの素人であったことからすれば、ベビーシッター事業の売上がどの程度上がるかについて、被告らが独自に予測することは到底困難であって、売上げがいくら上がるかは、被告らにとって加盟するか否かを判断する際の最重要事項というべきものである。
それにもかかわらず、L及びAが供述するように、本件各契約を締結する前には、被告グロース以外の被告らは誰も売上に興味を示さなかったとは到底考え難い。さらに、上記のとおり、Aからは、ベビーシッター事業は儲かる仕事ではない、開業当初は売上は上がらないなどと、被告らの原告フランチャイズシステムに加盟したいとの意思に水を差すようなことを言われたにもかかわらず、被告らにおいては、漫然と本件各契約を締結したことになり、上記の各供述は甚だ不合理である。また、乙68、70(原告が被告グロース及び同Eからの問い合わせに対し送付した書面)には、「売上予想」を立てることが、ベビーシッター事業成功のポイントである旨記載されており、この点からしても、Lらから、売上について、契約締結前に話が全くなかったとは認め難い。
b さらに、原告が被告らに示した売上予測は、開業してからの1年間で、いずれも、被告サザン(乙31の1、2)、同E(乙32の1の2)、同F(乙32の2の1)、同グロース(乙32の2の2)、同G(乙32の2の3)、同I(乙32の2の4)、同ピーエルエス(乙32の2の5)において、約1900万円ないし2000万円の売上が見込める内容となっているところ、仮に、Aが、被告らに対し、契約締結前に、開業1年間では利益が上がらない旨説明をしているとすれば、このような開業初年度から売上が上がるような楽観的な資料を渡すとは考え難い。
c 加えて、L及びAのいずれもが、年商2000万円、利益が500万円あるとの記事の記載された「金儲け大作戦」等と称するビジネス雑誌にポプリ事業を紹介したことがあることを認める供述をしており、また、本件各契約締結後の発行のものではあるが、乙65の1、2(フランチャイズ白書)において、標準店舗概要欄には、月平均売上高200万円、営利高21万円、69万円、粗利益率75パーセントなどと記載されていることが認められる。
d 上記の客観的な資料や事実関係からすれば、原告は、被告らが本件各契約を締結する以前に、売上予測を示した上で被告らを勧誘したと認められ、これに反するL及びAの供述は信用できず、他に、これを覆すに足りる証拠はない。
(エ) そして、以上によれば、原告が被告らに示した売上予測ないし売上試算表、さらに、その算出の基礎とされたマーケットリサーチ基礎データに記載されている市場規模、潜在需要の金額は、いずれも、客観的な資料や根拠を欠き、しかも地域の特殊性をも全く考慮せずに、Lの恣意的ともいうべき独自の考え方によって記載されているものに過ぎず、これらの資料が、原告が蓄積した固有のノウハウに基づいて作成されたものとは到底認め難い。
イ 営業指導について
次に、被告らは、原告のノウハウに基づく営業指導がなかった旨主張するので検討する。
(ア) 一般に、ノウハウとは、事業上利用可能な技術上、商業上その他の知識・経験に基づく情報を意味し、また、フランチャイジーが支払うロイヤルティーその他の金員に見合うだけの価値を有している必要があるといえる。
(イ) これを本件についてみるに、前記のとおり、確かに、被告らが開業後、原告が、一定の営業指導を行っていたことは認められる。そして、日経流通新聞、日経産業新聞などに原告が取りあげられ(甲全29ないし75)、ポプリペーパーの発行(甲全123ないし126)、ファクシミリでの指導(甲全111)などを行ってきたことも認められる。
(ウ)a これに対し、被告らは、原告の行った営業支援は、原告のノウハウに基づくものではなかった旨主張し、被告ら全員これに沿う陳述をする。
b この点について、Lは、ベビーシッター事業の営利性のノウハウとは、人材に尽きるとし、また、都市と地方とは違いがない旨供述し、Aは、顧客にベビーシッター業を知ってもらうことである旨供述している。
しかし、このような抽象的なノウハウを実行するために優秀な人材を育てるノウハウやそもそも顧客を誘引するためのいかなるノウハウをもっているかについては、明確ではない。
そして、原告が営業支援をしたと主張する根拠とするファクシミリ(甲全111)をみても、「いよいよ秋本番!もう1度営業戦略をねりなおして活動してください。」として、「〈1〉保育所へのポスター依頼、〈2〉再度ホテル、百貨店回りをする、〈3〉今まで御利用のお客様へのサービス強化、〈4〉チラシや広告宣伝活動を定期的におこなう。一人一人のお客様を大切にし、相手様が何を求め、どうしてさし上げれば、御利用下さるかを地元に根ざしてしっかり受け止め、それぞれのオーナーさんの持ち味をいかしていろいろチャレンジして下さい。」などとして一般的な注意や指示事項を記載した程度のファクシミリを送付したことは認められるが、各地域で、どのような宣伝活動をするのが効果的であるか等についての記載はなく、結局その具体的な戦略の構築は、各加盟店に委ねられており、このような注意や指示が、原告固有のノウハウに基づくものとは認め難い。そして、この理は、別紙1第1の2(1) 、第2の2(3) 、第4の2(3) 、第5の2(2) 、第9の2(2) で認定の原告が行ったとする被告らに対する営業指導などについても同様である。
また、ベビーシッター事業を知ってもらうためのノウハウについて、Aは、被告らが顧客を獲得するために、年4回程度、各加盟店に行って、ホテルなどを回ってベビーシッター業を知ってもらい、顧客を獲得していた旨供述するが、Aは、これによって、現実に顧客を得たのは、広島の1件のみである旨述べていることからしても、原告のいわゆるブランド力があったとも、Aらに顧客獲得の特別のノウハウがあったとも認め難い。
c 次に、原告が被告らに行ったオーナー研修についても、原告は、オーナーには何らベビーシッター事業ないし保育事業の経験を要しないとしており、現に被告らは、このような経験を有さないものであったことを考慮すると、開業前の2日間のみの研修が十分なものであったのかどうか疑問が残る。
d さらに、マネージャー研修についても、原告が、各加盟店に行うマネージャーの指導は、開業前には、2日間のみの研修であって、オーナーたる被告らがベビーシッターないし保育事業について、全くの素人であり、開業後はオーナーからの指導は受けられないことからすると、この研修のみで、マネージャーに対する十分な指導が可能かどうか疑問である上、開業後にも、研修を定期的に行っていたことは認められるが、その際には、受講料を徴収しており(甲全108)、また、各加盟店において研修を行う際には、交通費や宿泊費は別途支給させるなどしていて(甲全113)、研修がロイヤルティーなどの支払に見合ったものであるかどうかは疑問である。
e なお、原告は、被告D、同グロースについて、開業2年目以降は、売上が上がっている旨主張し、甲B12、甲E9によれば、被告グロースについては、平成8年7月から平成9年6月までの年間売上は、1452万3825円、平成9年1月ないし12月の売上は、1516万4817円となっていること、被告Dについては、平成7年10月以降は、100万円の売上を超える月があることが認められる。
しかし、原告が、被告らのうちで売上が上がっていると主張するものは、上記2名の被告に過ぎないし、被告Dは、売上以上の経費をかけている旨供述していること、被告グロース代表者Bは、売上の中には、ベビーシッターの売上とベビールームの売上が混在している旨供述していることに照らしても、これをもって、原告の営業指導が効果的であったとまで認めることはできない。
(ウ) 以上からすれば、原告が、一定の営業指導を行っていた事実が認められるとしても、これが、ロイヤルティー等被告らが原告に対し支払った金銭に見合う価値のある、ベビーシッター事業のフランチャイズの営業のノウハウに基づくものとまでは認められず、他に、これを覆すに足りる証拠はない。
ウ 以上のように、原告が被告らに提供した売上予測もマーケットリサーチ基礎データの数字も、その根拠を欠くこと、Lのいうベビーシッター事業のノウハウである人材についても、結局は、各加盟店においてマネージャーを育成しなければならないシステムであったところ、マネージャーも加盟店側で探してこなければならず、また、これらの人材を効率的に育成するノウハウがあったとは認め難いこと、実際に被告らの売上が伸びなかったこと、原告のフランチャイズ店は減少していることなどの事情からすれば、たとえ、原告のAにベビーシッター事業を行っていた経験と理念があったとしても、これを全国展開してベビーシッター事業のフランチャイズ店を維持していくに足りるノウハウは全く有していなかったというべきである。
エ このように、原告においては、被告らがベビーシッター事業を開始するにあたって、提供した売上予測等のデータは不完全なものであり、かつ、その後の事業展開にあたっての原告の指導も不十分であったといえるものの、他方で、原告が、現にフランチャイズ事業を展開しており、存続している店舗も存在し、一応の営業支援を行ってきていることからすれば、原告に当初から、被告らから、金員を詐取する目的で本件各契約を締結せしめたとまでは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
よって、被告らの主位的請求には理由がない。
(2)  予備的請求について
ア 他方、前記認定の事実からすれば、原告は、被告らと本件各契約を締結するにあたり、殊に、ベビーシッター事業については、全くの素人である被告らが本件各契約を締結する者であることを考慮すれば、被告らが、その意思を決定する上において、最も重要な要素となるべき売上試算やその基礎となるマーケットリサーチ基礎データ等について、具体的な裏付けのある正確な情報を提供すべき信義則上の義務があったというべきである。ところが、本件においては、原告は、このような具体的な裏付けを伴った資料や根拠を示すことなく、被告らに対し、本件各契約の締結を勧誘し、これを締結せしめたものであって、この点において、原告において基本的な義務違反があったというべきである。
そして、本件各契約締結後においても、前記のとおり、原告が本件各契約に基づいて行ったとする開業準備指導、営業指導も不十分であったことからすれば、原告は、「フランチャイジーに対して、営業を開始する前に、フランチャイジーが必要とする教育、訓練、指導を与え」(本件契約書12条1項)るべき義務及び「フランチャイジーに対して、フランチャイジーが必要とする経営技術指導援助を、本契約期間中継続して与え」(同2項)る義務を怠ったものというべきであり、原告は、被告らに対し、本件各契約の全般にわたり、債務不履行の責任を負うというべきである。
イ 上記のとおり、本件においては、契約締結過程の当初から、終始、原告の履行すべき債務が不完全であったものであり、むしろ詐欺に比すべきものともいえるものであることからすれば、解除の遡及効をうんぬんするまでもなく、被告らが、本件各契約に基づいて、原告に支払った別紙2記載の金員は、原告の債務不履行に基づいて、被告らが被った損害というべきであるから、原告は、被告らに対し、これを賠償すべき義務を負う。
(3)  抗弁(相殺)について
ア 次に、相殺の主張について判断すると、確かに、原告は、被告らに対し、不十分とはいえ、一定の営業指導などをしていることは認められる。
しかし、前記のとおり、原告の指導はノウハウに基づくものということはできず、これによる成果も明らかではないから、上記指導によって、被告らが利益を得たと認めるに足りる証拠はない。
イ よって、原告の相殺の主張は理由がない。
4  甲、丙及び丁事件
以上のように、原告には契約の当初から債務不履行が認められるところ、被告らが、売上の計算書を提出せず、ロイヤルティーの支払をしないようになったのは、平成10年1月30日付け「回答書の返答に関する件」において、このような原告の債務不履行の事実を指摘して、「貴社のフランチャイズ契約の締結に至る事前説明や市場調査、売上げ予測、並びに経営指導やノウハウ提供につき、極めて杜撰であり、事実に反することや義務違反の点があることが各オーナー間で共通した意見であり、これまで支払った加盟金、市場調査料、各月のロイヤルティー支払の法的妥当性に強い疑義と不満が噴出し、当方共の蒙った損失は計り知れないものがあり、貴回答のお申し出の範囲で納得することは到底できません。」との意見を表明した後であって、やむを得ないものと認められ、これらをもって、被告らの責に帰すべき事由があるとは認め難い。さらに、原告が、被告グロースについて主張するその余の契約違反についても、上記被告らの意見の表明後、これに対抗するために原告において主張するに至っているものと認められ、このような事由のみをもって、直ちに本件契約の解除原因に相当するとは認め難い。
よって、甲、丙及び丁事件の原告の請求は理由がない。
第6  結論
以上によれば、甲、丙及び丁事件については、原告の請求は理由がないから、これをいずれも棄却し、乙事件については、被告らの主位的請求は理由がないからこれを棄却し、予備的請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 梅津和宏 裁判官 中垣内健治 裁判官 三浦隆昭)

 

別紙1
第1  被告グロース
1 本件契約締結の経緯
平成7年3月ころ、被告グロース代表者Bは、ビジネス紹介誌「金儲け大作戦」に原告の紹介があり、そこには年間2000万円の売上、人件費50パーセント、最終的な利益25パーセントで年間500万円くらいの数字が出ていたのをみて、原告に連絡を取った。
原告から、被告グロースに送付された、同月29日付けのL名義の書面には、「ベビーシッターサービス事業において、FC加盟店として成功するポイントは、本部の指導により達成可能な売上目標(事業収支を含む。)を立て、優秀なスタッフを確保し、顧客満足度高いサービスを提供することです。」「昨年来、厚生省は、財団法人こども未来財団を設立し、大規模な子育て支援事業を進めております。」「行政の諸政策は私共ベビーシッター事業者にとって追い風となっていることは申すまでもありません。」「はなはだ勝手ではございますが、貴地区における他のご希望者との関係調整上、4月5日までにご返事いただきたく、よろしくお願いします。」との記載がある。
Bは、LないしAから、営業エリアとして、群馬県全域及び埼玉県全域とされたこと、売上試算表(乙32の2の2)を見せられたところ、開業1年目の売上予測は、年間売上1900万円であったこと、平成6年度よりスタートした「こども未来財団」による在宅保育割引券1枚で、1500円の割引になり、会社一社あたり年間1200枚利用でき、金額にして180万円になると説明されたこと、売上予測と損益予測について確認すると、シッター代45パーセント、人件費15パーセント、物件費15パーセント、オーナー利益25パーセントとの説明で、毎年年間売上は倍増するとの説明を受けたことから、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 本件契約締結後の状況
(1)  平成7年6月のオープンに際し、新聞折込広告を勧められたが、何枚を、どの地区に、何曜日にまいたら、どのくらいの効果があるかのデータが全く原告本部にはなかった。
(2)  開業後、赤字が続いたが、原告本部スタッフが指導をすることはなかった。
(3)  群馬県は、車社会であり、ベビーシッター事業にとって、自動車の利用抜きには考えられないが、原告本部は自動車を使わせず、すべて電車を使うという回答をするのみであった。
第2  被告サザン
1 本件契約締結の経緯
平成5年9月ころ、被告サザン代表者Cは、雑誌広告で原告を知った。
Cは、Lから、加盟店舗及び直営店舗は3店、新規加盟予定店が3店舗ある、各加盟店及び直営店とも営業内容はよく、最低でも年間3000万円の売上が見込まれる、1年後には、売上が2000万円を超える売上予測(乙31の1及び2)をもらった、現在本部で行っているホテルの仕事を全て被告サザンに譲渡する、横浜にいる本部のベビーシッターも全て譲渡する、などと言われたため、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 契約締結後の状況
(1)  ホテルの仕事を譲渡されなかった。
(2)  横浜にいるベビーシッターの一部も譲渡されなかった。
(3)  顧客獲得の掲載指導も一般的なタウン誌、新聞など何種類か書いたものをもらい、地域性など全く考慮なく、タウン誌が反響なければ新聞広告で、新聞広告が反響なければポスティングということしか言わず、指導の名に値しなかった。
(4)  営業範囲とされた横浜市全域の中に、他の加盟店が開業した。
第3  被告D
1 本件契約締結の経緯
被告Dは、平成6年4月ころ、雑誌広告を見て、原告を知り、原告に問い合わせをした。
その後、被告Dは、L及びAから、マーケットリサーチ基礎データなどを見せられ、加盟店舗は6店、廃業したり、脱退した加盟店はない、各加盟店とも営業内容はよく、最低でも1年間の売上は1970万円が上げられ、50パーセントの粗利益があるなどと言われ、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 契約締結後の状況
(1)  料金の設定、広告の仕方、シッターの雇い方、ベビールームの運営について、原告本部にノウハウはなく、被告Dが独自で模索し、開拓した。
(2)  営業範囲について、被告Dの営業範囲内に本八幡店を開業させたり、加盟店の競合について、全く関知していないという態度だった。
(3)  売上は、全く上がらず、開業後3000万円の赤字を出した。
第4  被告E
1 本件契約締結の経緯
被告Eは、「起業塾」というフランチャイズの募集が載った雑誌を見て、原告を知り、平成6年6月ころ、原告に電話で連絡をとったところ、同月28日付けで、原告から、「ベビーシッター事業においてフランチャイズチェーン展開の成否は、本部のしっかりとした商圏調査にもとづいて、売上予想を立て、事業収支計画を策定、質の良いサービスを提供するために優秀な派遣スタッフを確保すること、スタッフの研修システムが確立されていること、顧客開拓の支援体制が十分整っていることなどにかかっていると申しても過言ではありません。」「当本部の調査によりますと、ベビーシッターの本当のニーズが全国的に本格化するのはこれからであり、事業化の時期としては今がベストチャンスと考えております。」旨の記載があり、さらに、手書きで「ベビーシッター派遣事業の商圏は広く、呉市を中心に東広島、広島、三原まで派遣可能です。市場規模は7億~10億円位です。例年、ベビーシッターのニーズは9月頃から高まりますので、今から準備に入れば、2か月間の準備を経て、十分間に合うと思います。早い時期に一度ご面談したいと存じます。」と記載された書面を受取った。
その後、被告Eは、妻が採算がとれるかどうか心配していたこともあり、契約締結を迷っていたところ、Lから、年間1900万円の売上が記載されている売上試算表(乙32の1の2)や全国の潜在需要が450億円、広島市の潜在需要が3億5000万円、呉市の潜在需要が6300万円との記載があるマーケットリサーチ基礎データ(乙34)を見せられ、採算がとれる旨言われ、さらに、ベビーシッターの需要はますますある、広島地区に応募者がでないうちに、契約の意思があるかどうか返事が欲しい旨勧誘されるなどしたため、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 契約締結後の状況
(1)  呉市の物価指数も調査されている様子がなく、ベビーシッターの時給は、被告Eが、職業安定所に出向き資料を入手後に類似業種を参考に決定した。
(2)  原告は、タウンページが有効な広告媒体であることを知っていたにもかかわらず、地域の原稿締切日及び新刊発行日も調査せず、開業から約1年間タウンページ広告が活用できなかった。すなわち、タウンページの新刊発行の時期に合わせて、開業準備期間及び開業日を決定させる指導がなかった。
(3)  広告宣伝に関して、新聞折込広告・チラシ配布・ダイレクトメール・タウン誌広告・捨て看板・駅構内看板の必要性を電話で説明するだけであり、営業促進指導に関しても、既加盟店が企業訪問を行った際の成功例を紹介するのみであった。
(4)  営業範囲が、広島県全域となっているにもかかわらず、広島県内のものから、加盟希望者が現れたのに対して、原告本部は、何ら被告Eの営業範囲のことを考慮せず、勧誘した。
第5  被告F
1 本件契約締結の経緯
平成6年9月ころ、被告Fは、原告の広告を見て、原告に連絡をとった。
Lは、被告Fに対し、在宅保育事業は今伸び盛りであり、各店舗とも営業内容はよい、マーケットリサーチ基礎データ(乙37)や売上試算表(乙32の2の1)をみせながら、福島市の潜在需要は、8300万円である、売上予測は、最低年間2000万円が見込める、50パーセントの粗利益が見込めるなどと勧誘され、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 契約締結後の状況
(1)  原告は、被告Fが、営業範囲を福島県とされているのにもかかわらず、同じ福島県内で他の加盟希望者が現れると加盟させようとした。
(2)  顧客開拓の指導について、最初の指導では、新聞の折込チラシが有効であると言われたので、言われたとおりにしたところ、反応は全くなく、それを本部に報告すると、案内書の手配りを地道にやることだと言われ、そのとおりにしたが、期待はずれに終わった。
第6  被告G
1 本件契約締結の経緯
平成7年4月ころ、独立開業支援というような雑誌に原告が紹介されていたのを見て、被告Gは、原告に連絡を取った。
Lは、被告Gに対し、「川越地区市場調査表」や「マーケットリサーチ基礎データ」などを示しながら、川越は共稼ぎ比率が意外と高く、ベビーシッターのニーズは非常に高い、市場規模2億5000万円、滞在需要7400万円はある、所沢も含めれば、滞在需要は1億6000万円の見込がある旨説明した後、1年目の売上試算表(乙32の2の3)を示しながら、年間売上は1960万円に対し、粗利はその50パーセントを確実に見込めるなどと説明した。その後、さらに、「主要取引先リスト」、「ポプリグループのあゆみ」や新聞の切り抜き記事を示し、本部は新聞にも取上げられるこの業界最大手の老舗で、多くの大手企業やホテルと取引きしており、託児請負を行っている、本部が多数のイベントやパーティーを企画・運営し、それらの託児請負やイベントでのベビーシッターの派遣や顧客の紹介、ギフト券販売など、この売上試算表以外の収入も見込める、ここであれば半年で100万円の利益が出せるなどと勧誘し、被告Gは、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 契約締結後の状況
(1)  開業1年の売上は、56万4373円であった。
(2)  営業範囲が埼玉県とされていたが、「ポプリたかさき」と営業範囲が重なり、「ポプリたかさき」と調整をしたことがある。
第7  被告ピーエルエス
1 本件契約締結の経緯
被告ピーエルエス代表者Hは、Lから、加盟前に加盟店舗は17店、各加盟店とも営業内容はよく、業績はどんどん上がっている、売上試算表(乙32の2の5)によると、初年度で2000万円の売上があがるなどと言われ、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 契約締結後の状況
(1)  開業時指導では、原告本部の会社案内を記した文書を渡された程度で特別専門的な話や営業の秘訣や指導がなされることはなかった。
(2)  営業範囲が、原告本部と重複する地域があり、原告本部の顧客が何件もあった。顧客が移管されることもなかった。
(3)  市場分析などがなかった。
(4)  売上が上がらないため、H自身で試行錯誤を重ね、日曜祝日や深夜などに営業して売上増を試みた。
第8  被告I
1 本件契約締結の経緯
平成7年7月ころ、被告Iは、原告の「フランチャイズ起業家募集」の雑誌広告をみて、原告から資料を取り寄せた。
加盟前、Lから、数多くの加盟希望者がある状況であり、本部で人選をしているので、少しでも早く契約を締結するようにと言われた上、「マーケットリサーチ基礎データ」(乙35)を示され、「三重県全域で、5億1000万円のベビーシッターの潜在需要がある、松阪市だけでも潜在需要は3300万円ある。」と説明され、売上試算表(乙32の2の4)を示して、1年間2000万円程度の売上が見込める、月100万円の売上は確実に見込める、2年目からは飛躍的に売上が伸びるなどと勧誘され、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 契約締結後の状況
(1)  売上試算表の基礎となる利用料金が東京都内のものであり、開業予定地の現状が全く反映されていなかった。そして、開業後に開設地の実情に基づいた市場分析や営業指導は一切されなかった。
(2)  三重県津市で開業していたポプリ三重が平成8年8月ころに脱退した後を原告本部の一存で引き継がされ、その結果広告や営業活動の経費負担が増加し、結局、廃業するに至った。
第9  被告J
1 本件契約締結の経緯
平成7年8月ころ、被告Jは、独立開業雑誌でフランチャイズ事業を探し、原告を知り、原告に対し、資料を請求した。
被告Jは、Lから、加盟店舗は、約30店舗で、廃業したり、脱退した加盟店はない、各加盟店とも、営業内容は大変よく、最低でも50万円から100万円の収益が上げられる、粗利益は50パーセントになるなどと勧誘され、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 契約締結後の事情
(1)  営業範囲が岐阜県全域となっていたが、その後、岐阜県内には原告フランチャイズ加盟店が3店舗でき、市場が競合した。
(2)  開業時指導としては、ベビーシッターの雇い方、広告はどういうところに何枚程度配布するというような指導はなかった。
一度、広告宣伝費について、新聞広告は高いので、ポスティングをするとよいと指導されたことがあり、これを行ったが、暴力団関係者や右翼関係者とトラブルが起きた。しかし、原告本部は何ら処理をしてくれなかった。
(3)  被告Jは、当初は、ベビーシッター派遣のみを考えて、ベビーシッター派遣のみを行っていたが、1年目の売上が伸びなかったため、ベビールームを独自の判断で開始した。
第10  被告X
1 本件契約締結の経緯
平成8年2月ころ、被告X代表者K(以下「嶋田」という。)は、「月刊フランチャイズ」という雑誌を読み、原告を知り、連絡を取った。
Kは、Lから、加盟店舗は12店、廃業したり、脱退した加盟店はない。各加盟店とも営業内容はよく、最低でも毎月60万円の収益が上げられるなどと口頭で勧誘され、加盟を決意し、本件契約を締結した。
2 契約締結後の状況
(1)  営業範囲が、千葉県全域とあるのに、同じ市の隣の区に同じフランチャイズに加盟する加盟店が開業した。
(2)  開業時指導については、ベビーシッターの雇い方、広告はどういうところに何枚程度配布するというような指導やアドバイスはなかった。

別紙2・別紙3〈省略〉

 

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