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「テレアポ 営業」に関する裁判例(14)平成25年 4月12日 東京地裁 平23(ワ)14755号 損害賠償請求事件

「テレアポ 営業」に関する裁判例(14)平成25年 4月12日 東京地裁 平23(ワ)14755号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成25年 4月12日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)14755号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2013WLJPCA04128005

要旨
◆訴外a社の従業員として情報セキュリティ推進室に勤務していた原告が、同推進室の室長で原告の上司であった被告から嫌がらせを受け、その結果、神経症の診断を受けて休職せざるを得なくなったとして、不法行為による損害賠償請求として慰謝料の支払を求めた事案において、被告が原告に対してパワーハラスメント行為を行っていたとはいえないとし、原告の請求を棄却した事例

参照条文
民法709条

裁判年月日  平成25年 4月12日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)14755号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2013WLJPCA04128005

千葉県我孫子市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 相川裕
横浜市〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 西村泰夫
同 廣江信行

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は,原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成23年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  本件は,原告が,上司であった被告から嫌がらせを受け,その結果神経症との診断を受けて休職せざるを得なくなったとして,不法行為による損害賠償請求として慰謝料の支払を求めた事案である。
2  前提となる事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実である。
(1)  原告及び被告は,a株式会社(以下「a社」という。)の従業員として,情報セキュリティ推進室(以下「推進室」という。)に勤務しており,原告は平成23年2月14日以降休職している。
被告は推進室の室長の地位にあったが,同年4月1日推進室担当部長となり,同年7月20日a社を定年退職した。(乙17)
(2)  昭和55年10月,OECDは,プライバシーの保護及び個人データの越境流通に関する勧告を公表し,個人情報保護に関する8原則を示した。
通産省(当時)は,「民間部門における電子計算処理に係わる個人情報の保護について(指針)」を公表し,平成9年,これを改訂して「民間部門における電子計算処理に係わる個人情報保護に関するガイドライン」を策定し,平成11年,このガイドラインを基に個人情報保護に関するマネジメントシステム(以下「PMS」という。)規格として「個人情報保護に関するコンプライアンスプログラムの要求事項JISQ15001:1999」(以下「JIS1999版」という。)を策定した。
平成10年,第三者認証制度であるプライバシーマーク(以下「Pマーク」という。)制度が創設され,当初の認証基準は上記ガイドラインであったが,JISQ15001に変更されている。
JIS1999版は,平成17年4月1日の個人情報保護法の全面施行を受けて,平成18年5月,「JISQ15001:2006」(以下「JIS2006版」という。)に改訂され,実施のためのガイドライン(乙1。以下「ガイドライン」という。)が定められており,ガイドラインの中には,JIS1999版をベースに作成した内部規程にJIS2006版を取込む際の注意点の記載もされている。
(3)  被告は,平成17年ころから,a社におけるPMS構築メンバーであり,JIS1999版規格でPマークの取得を目指した作業チームの中心メンバーであった。
平成18年8月,a社は,被告を責任者としてPマークの申請書類一式を作成して審査機関に提出したが,その後取り下げた。
(4)  平成18年9月,被告を室長として推進室が発足し,推進室の分掌事項には,社内情報セキュリティ及び個人情報保護に関することが含まれている。
原告は,情報セキュリティ及び個人情報保護の経験がなかったが,発足時から推進室に配属され,配属後,情報セキュリティを中心に担当してきた。
(5)  原告は,平成23年3月24日に被告に到達した書面により,被告に対し,同書面到達後2週間以内に損害賠償の支払を求め,催告期間の満了日は同年4月7日である。
3  原告の主張
(1)  被告による不法行為
被告は,平成20年8月以降,上司の地位を奇貨として,原告に対し,以下のとおりパワーハラスメント行為を行った。
ア 平成20年8月以降
(ア) 被告は,平成20年3月,何の説明もなく,担当していたPMS構築に関する仕事を原告に担当させ,仕事上必要な情報やサポートを与えなかった。
原告が取得した認定プライバシーコンサルタントの資格は,3日程度のセミナーを受講し,最終日のテストに合格した結果として得たものにすぎず,同じ部署内でこの資格を取得したのは原告のみではない。
原告が担当させられたのは,社内における個人情報保護に関する仕組みをJIS1999版規格からJIS2006版規格に切り替える作業であり,被告が6か月程度で構築したとするJIS1999版は,事業者独自の取組として個人情報保護のためのコンプライアンスプログラムを構築するものであるのに対し,JIS2006版は,個人情報保護法に基づく個人情報保護マネジメントシステムを構築するためのものであるから内容が異なっている。また,被告がPMSを構築する際には,社内的なプロジェクトチームを立ち上げ,社内各部署の複数メンバーが構築に参加し,社外コンサルタントから有償で指導・支援を受けたのに対し,JIS2006版は,ガイドライン(財団法人日本情報処理開発協会(現・一般財団法人日本情報経済社会推進協会。以下「JIPDEC」という。)が構築実施のために作成したもの)によりスケジュール策定すると,全社的な体制で取り組んでも1年数か月かかるほどの作業規模であったのに,社外コンサルタントの支援も受けられず,前回の経験も全くない原告が一人で担当させられた。
原告は,平成20年8月,あまりの丸投げ状態に抗議文を被告宛のメールに添付して送付し,是正を求めたが,状態に変化はなかった。
(イ) 被告は,原告に対し,過重な仕事を命じ,日常的に多数人の前で一方的に非難し,不当な叱責をした。原告は,平成21年6月9日,打ち合わせ時に被告から受けた侮辱に対し,抗議のメールを送信した。
イ 平成21年10月から平成22年3月まで
(ア) 平成21年3月,被告は,同年4月以降のスケジュールを原告に交付し,体制的にもスケジュール的にも到底無理であると指摘して見直しを求めたのに対して,被告も構築作業に参加し,部署全体で取り組むなどとしてこれを強要したが,実際には,被告が協力することはほとんどなく,同年10月ころには大幅な遅れが出ていた。
これに対し,被告は,原告に対し,平成21年10月,原告の作業状況やスケジュールを全く無視して,社内規程作成のスケジュールを押し付け,原告が作業の進捗状況や現場の混乱などの状況説明をし,代替案の提示をしたのに対し,業務命令であると恫喝し,現場が混乱しても作れと社内規程の作成を強要した。
原告が,平成20年6月12日付けで同年11月ころ社内規程作成が完了する旨のスケジュール表を作成したことはなく,被告が以前作成したスケジュール表を示され,これを基礎としてスケジュール案を作成させられたにすぎず,スケジュールの最終案が完成したのは6月下旬である。このスケジュール案も,実際の作業実施スケジュールとして採用が決定されたものではなく,全体スケジュールの検討は翌年まで放置されていた。
(イ) 原告は,平成21年11月初め,基本規程,取扱規程及び関連帳票を提出したが,被告はこれに修正内容を書き込み,そのとおりの修正をしないと承認しないとして,理由の説明もなく修正を強要した。
原告が,個人情報を取得する現場部門の担当者が,取得申請書を作成し,当該部門責任者の承認を必要とするとしていたのに,平成22年3月23日,被告は,すべての申請書に対する最終判断を推進室長とするなど,ガイドラインで求められている安全管理措置に反しかねない自分勝手な内容に規程を変更させた。
a社が業務で取得する個人情報で,被告が主張するような例外規定の内容も理解していなければ適切な判断ができないようなケースは稀であり,1年以上にわたる運用実績がこれを証明している。
(ウ) 原告が(イ)のとおり反対意見を述べたため,原告が通勤途中のけがにより平成21年12月上旬から平成22年1月上旬まで休んでいる間に,被告は,原告以外の推進室員を取り巻き化して原告を孤立化させ,以下のような嫌がらせをするようになり,同年2月,原告が担当役員を含む経営層に実態を訴えたことから,担当役員から被告に注意がされたが,被告はこれを根に持ち,より陰湿な嫌がらせをするようになった。
担当役員が替わったのをいいことに,新しい担当役員に,PMS構築の遅延の原因が原告にあるとの説明をし,原告が直接経緯を説明しようとしたときには手遅れであった。
被告は,原告が出社時退社時に挨拶しても無視し,すれ違っても目線を合わせないし,原告が述べた意見を無視し,あるいは反対して採用しなかった。被告は,原告をばかにし,人格を攻撃したり尊厳を踏みにじるような,例えば話し方や態度が嫌いであるというような暴言を吐いた。
さらに,被告は,原告に対し,他の室員の前で,あるいは,一人だけ呼び出して怒鳴り,仕事を否定し,責任をなすりつけ,必要な情報を与えず,ねちねちと嫌みをいい,雑役を担当させ,評価を低くし,自分のやり方を押し付けて,推進室内で原告を孤立させた。
ウ 平成22年4月から同年5月まで
(ア) 原告は,社内規程などの成果物の提出は,全体の整合性のチェックを予定していたため,スケジュールどおり全てが完成した同年5月末を予定していたが,被告が4月中旬にできあがった規程から順次見せるよう要求し,次第に,途中でも提出しろと要求するようになり,中途半端なものは出せないと拒絶すると,恫喝したり,机をたたいたりして威嚇し,無理な提出を要求した。さらに,被告は,中途半端な状態の成果物を2部要求し,その1部を担当役員に提出して,原告の評価を下げさせることまで行った。
(イ) 原告は,社内規定等の作成には多くの参考資料や旧規程類などを確認する必要があるため,会議室を使用して作業しており,従来から問題なくやってきたが,被告がいきなり数人で会議室に入ってきてむりやり場所を空けさせ,会議室使用禁止の議事録まで作成して,原告に会議室を使用させないようにした。
(ウ) 原告が,a社としてどこに出しても恥ずかしくないものを作り上げたいと事情を説明して他部署の協力者に協力を依頼し,快諾してもらっていたところ,被告は,平成22年4月下旬,上記協力者に対し,原告を作業担当から外したと話して協力しないようにと作業妨害した。
なお,原告は,a社が正式な担当職務の変更として原告をPMS構築の責任者から外したものとは認識していない。
エ 平成22年6月から平成23年2月まで
(ア) 被告は,PMS暫定運用中の申請承認手続において,承認者の立場を利用して恣意的な承認基準を主張し,あるいは承認基準を変更し,原告が担当した案件に対してのみ細かい指摘をしてすぐに承認せず,申請者から原告に対する苦情が集中するよう仕向けた。
① 平成22年5月13日,営業部門の担当者から,セミナー開催の申込書パンフレットの印刷を手配するため,所属長の押印のない申請書でパンフレット原稿に記載する承認番号を仮発行してほしいとの要請がされたので,原告はこれを了解し,被告に事情を説明して承認を求めたが,拒絶された。
被告が受付印の押印をすれば承認すると説明したことは否認する。
原告が担当者と対応を検討している間に被告が外出したため,当日の承認が無理であると担当者に伝えたところ,別の室員が代理承認するよう連絡を受けたとして承認番号を仮発行したが,担当者からは業務に支障をきたしかねないと憤慨された。
② 同年7月下旬,原告が受け付けた申請書について,被告は理由の説明をしないまま承認しなかったため,申請部門に対し,その旨の説明をしたところ,被告が申請部門に対し承認されない理由が原告の責任であるかのように言いふらし,また,承認されないことについて正直に事情を伝えたことを室員や申請担当者を巻き込んで糾弾した。
③ 営業部門が新規顧客開拓のため電話でアポイントを取る業務(以下「テレアポ業務」という。)において,相手の氏名,所属などの個人情報を取得する場合,それまで申請書のみで承認していたのに,突然,電話担当者が会話する内容をフロー化したコールスクリプトを添付しなければならないと恣意的に変更した。
④ 原告が受け付けた申請書の承認に当たり,被告は,その場の思い付きで追加項目を要求し,これがないと承認しない嫌がらせをした。
⑤ 原告が受け付けた申請書については,被告は,すぐに承認せず,別室に持ち込んで他の室員とあら探しをするなどしていたが,他方で,他の室員が受け付けた申請書は,原告に要求した追加項目がなくても承認した。
(イ) 社内規程提出後,被告は親しい部下を巻き込み,多数決によって自分に都合がよいように規定を変更し,業務運用において以下のような嫌がらせをした。
① 毎週の室内会議で密室を利用し,不当な個人攻撃をした。
② 注意をする際,他の室員は,別室に呼んで指摘するのに,原告に対しては,オープンなフロアで多くの人の前で叱責して恥をかかせた。
③ 被告は,業務上のことで原告に言い負かされそうになったり,被告の問題点や非のあるところを指摘されると,全く関係のないことを持ち出したり,「口の利き方が悪い」「聞く姿勢になっていない」などと原告の話し方や態度などを度々攻撃したりした。
④ 原告を除く全員が喫煙者であったため,業務に関する内容や決め事が喫煙室で決められることが日常的であり,原告には事後通知もされないことがほとんどで,仕事を取り上げて何もさせなかった。
⑤ 被告は,原告に,個人情報取得申請に係る承認の際に使用するチェックシートを,実際には作成不可能であったのに,作成するよう強制した。
⑥ 被告は,平成22年9月に派遣の女性職員が辞めた後,その職員が担当していた文房具の管理などの雑役を原告に強制した。
⑦ 冬季賞与の参考となる目標管理シートの自己評価について,被告は,職制上の立場を利用し,何度も書き直させ,ダウン申告になるまで再提出を強要し,自己評価に関連する内容から重要な部分を消し,これを評価部門に提出することに同意する署名を強要した。
上司の評価は上司評価欄に記載すればよいので,部下の自己評価を訂正させることはあり得ない。
(ウ) 平成22年12月10日,原告は,被告が電話中であったので,同僚に事情を話し,行き先を登録して通院のために外出したところ,叱責される行動ではなかったのに,被告は,会議室に全員を招集した際,不当な叱責を行った。
(エ) 同月16日,原告が通院のための私用外出届を申請したところ,被告は,診察が終わる時間を答えられなかったとして外出を承認しなかったため,原告は予約をキャンセルし,通院をあきらめなければならなかった。
そもそも,a社においては,被告を含む他の職員も,私用外出届を出さず,誰かに一言断っただけで私用か業務かに関係なく,病院や銀行に行くために外出していたのであり,被告がいきなり就業規則を持ち出し,私用外出届を云々したのは原告を不当に叱責するためであるとしか考えられない。
(オ) 同月20日,被告は,室会議において,原告個人を標的とし,離席時に行き先が登録されていないとして「職務命令違反だ」「懲戒処分対象だ」と誹謗中傷した。
a社の社員向けポータルサイトシステム「イントラメリット」のスケジュール管理機能を利用して,社員は業務行動の管理を行うことができ,各自のスケジュール情報は原則公開されているところ,社内ルールでは,何分であれ離席着席に関係なくスケジュールを登録することになっており,推進室で定めた1時間以上離席する場合に登録するというのは,社内ルールに反するものであり,スケジュール登録が一番できていなかったのは被告である。
(2)  損害
原告は,上記の被告による嫌がらせのため,平成20年夏以降しばしば不眠の状態となり,平成22年4月以降はこれが慢性化し,平成20年秋頃にはまぶたのけいれんが続き,眼科に通院したほか,あごの痛みで口が開かない状態となり,歯科で顎関節症と診断され,マウスピースを処方された。平成22年3月10日及び同年4月14日,原告は,上司のパワーハラスメント行為による身体的精神的不調について社内の産業医であるA医師に健康相談を行い,同医師から投薬による治療または休養が必要と判断され,心療内科の早期受診を勧められている。
承認者の立場を利用したいじめや嫌がらせは,業務に名を借り,平成22年5月以降翌年まで続き,原告は,一日中緊張を強いられ,長期間の極度なストレス状態が続き,平成22年夏ころから,ヘルメットで締め付けられるような頭痛を感じ,昼休みには椅子を並べて横になることがあり,同年12月ころからは,右後頭部から肩にかけて神経を鷲掴みにされるような痛みを感じ,疲労感でふらつくようになって,精神的にも不安定になり,休みがちになったが,被告は何の対応もせず,平成23年2月には休職せざるを得ない状況に追い込まれた。
原告は,平成23年1月6日,受診したクリニックで神経症と診断を受けたものであり,原告が被告から被った精神的損害を金銭的に評価すると500万円を下らない。
4  被告の主張
(1)  被告による不法行為の主張について
ア 平成20年8月以降
a社では,平成20年3月,社内的な情報の管理態勢が整ったので,JIS2006版に基づくPMS構築を開始することになったが,被告が平成23年7月a社を定年退職するため,被告に代わるPMS構築の担当者が必要となった。推進室には被告の4歳年下の原告と,さらにその4歳年下のBがおり,Bは情報セキュリティ監査の経験がないため監査の担当とし,監査の経験がある原告をPMS構築の担当とした。
被告は,原告にPMS構築の担当者になることについて説明し,原告が了解したため,原告に,平成19年12月,特定非営利活動法人日本プライバシーコンサルタント協会(以下「JPCA」という。)の認定プライバシーコンサルタントの資格(認定を受けた者はPMS構築の能力があることが一応保証され,PMS構築の指導もできる)を取得させ,資格登録させている。さらに,原告は,平成21年2月,自ら希望してJIPDECが実施する「個人情報保護管理者知識認定」試験を受けて合格している。
被告も全く経験のない状況にあったが,JIS1999版に基づく社内規程の作成に要した期間は6か月程度であり,原告は,認定プライバシーコンサルタントの資格も有している上,JIS1999版の成果も残っていたのであるから,JIS2006版への改訂作業に1年数か月も要することはあり得ない。
PMS構築を原告に丸投げしたこと,過重な仕事を命じたり,多数人の前で一方的に非難したり,不当な叱責をしたりしたことは否認する。
イ 平成21年10月から平成22年3月まで
(ア) PMS構築では,各種規程類・書式等の作成後,その運用検証を行うことが必要であるところ,原告が作成した平成20年6月12日付けのスケジュール案(乙8。以下「本件スケジュール案」という。)では同年11月末には基本規定及び帳票類の改訂が終了しているはずであり,同年12月15日付けで作成したロードマップ(乙9。以下「本件ロードマップ」という。)でも,平成21年9月末に完成することになっていたが,同年10月になって提出されたのは基本規程と取扱規程のみであったため,被告は早く作成するよう督促したのである。
(イ) 現場部門の担当者が申請書を作成し,部門長が最終承認するというルールは原告が案として作成したにすぎず,社内的に承認されたものではない。室長としての権限の行使には責任を伴い,平成23年3月には室長を退任する被告にとって,室長の権限の拡大が被告に都合がよいといえるものでもない。
個人情報保護運用規程には原則のほかに多数の例外規程があり,現場部門長がこれを全て理解し,個別事例ごとに適否の判断をすることが過大な負担となって,本来の業務に支障が生じかねないことから,室長の権限としたものである。原告の提案どおり,現場に判断を任せるためには,判断に際して参考となる具体的事例を想定し,その内容,判断基準を書面等で説明した上,現場に周知しなければならないが,原告は事例の想定や具体的な判断基準を示すことなく現場に任せようとしたため,原告案を採用しなかったのであり,合理的な理由がある。
(ウ) 原告を無視し,孤立させる行動を取ったことは否認する。
ウ 平成22年4月から同年5月まで
(ア) 社内規程の提出を求めたことは認め,原告を恫喝したり,机をたたいて威嚇したことは否認する。
作業状況の途中経過を確認するため社内規程の提出を求め,担当役員にも確認してもらうのは当然のことで,何ら問題になることはではない。
(イ) 原告に会議室を空けさせたことは認めるが,会議室は作業する場所ではなく,原告の机のそばには相当広い作業スペースが存在し,十分に作業を行うことができる状態であったし,何らの成果物の提出もなかったため,会議室での作業を止めるよう求めたものである。
(ウ) 原告が,他部署の協力者に協力を依頼していたことは認め,a社は,平成22年4月26日,原告をPMS構築の責任者から外しているから,原告の作業を妨害することはあり得ない。
原告は,推進室の了解もなく他部署の者を集めてPMSに係る各種規程の討論会議を開催し,原告の意見に対する賛同者を募ろうとしていたのであり,嫌がらせを受けて精神的,肉体的に変調をきたしたとする原告の主張が根拠のないものであることが明らかである。
エ 平成22年6月から平成23年2月まで
(ア) 第2の3(1)エ(ア)PMS暫定運用中の申請承認手続について,承認番号の仮発行という制度はなく,①の事例では,本来,申請者の押印及び受付者である原告の受付印を押印した上,被告の承認を求めるべきであるのに,申請者の押印も受付印もない状態で承認を求めたため,承認しなかったのであり,受付印を押印した申請書を持ってくれば承認するとも告げていた。
②について,被告が承認しなかったことは認めるが,原告が受け付けた申請書の不備について,再三,指摘して訂正,修正を求めていたにもかかわらず,同様の不備があるまま申請したため承認しなかったものである。原告が,申請者に対し,被告が理不尽に承認しないという趣旨の説明をしたため,申請者が立腹し,申請者の上司から推進室に苦情の申し入れがあったため,この間の事情を説明したものである。
③のとおり変更したことは認め,a社では,個人情報の取得態様が問題となったことがあったので,対応策として個人情報の取得方法を厳格化したものである。
⑤につき,原告が受け付けた申請書について他の室員と相談したことはあるが,申請書の適否について,他の室員の意見を聴くためであり,申請書に修正が必要な箇所がある場合には,指導をし,必要な箇所の訂正を求めていたことは認め,原告にも同様に指導をしていたが,原告がこれに応じなかっただけで原告を差別したことはない。
(イ) 第2の3(1)エ(イ)について
平成21年10月に原告から提出された個人情報保護運用規程が,部門責任者の承認で個人情報の取得が可能となる内容であったため,修正を求めたが,平成22年5月10日提出された規程においても修正されていなかったため,同年6月2日に室員を集めて運用規程のレビューを行い,多数決で決めたことは認める。多数決で決めた内容は,個人情報の取得について,部門責任者の承認で可とするのか,推進室の承認を必要とするかであり,原告の案は採用されなかった。
③について,話し方や態度を叱責したことについては否認する。原告がどのように理由を説明しても意見を変えることがなかったため,被告や他の室員が困り果てており,原告と議論することが苦痛になっていたことは事実である。PMS構築は,a社としてPマークを取得することを目的として行っているもので,原告一人の意見で全てを進めることができないのは当然であり,原告の意見に反対して軋轢が生じるのはむしろ原告に責任がある。
④について,a社では,喫煙時間が決められているため,喫煙者が一斉に喫煙室に向かったにすぎず,喫煙室で重要な事項が決められたことはない。
⑥の文房具の管理を原告に担当させたことは認めるが,誰かが管理する必要があり,原告に任せたにすぎない。
⑦の目標管理シートの自己評価は,目標どおり達成したにすぎない場合の評価はBであり,原告がこれをAとしていたため,指導したもので,原告を不利に扱ったことはない。
(ウ) 平成22年12月10日,原告を叱責したことは認めるが,上司である被告が在席しており,原告が外出しようとしているときには電話も既に終わっていて被告の許可を得ることは可能であったのに,被告の了解を得ることなく通院のため外出したので,被告の了解を得るよう注意したのであって,不当な点はない。
(エ) 同月16日に被告は原告の外出を承認している。
3時間以上の外出では休暇届が必要であるところ,原告が外出に要する時間を適確に答えられなかったため,帰社した際に外出に要した時間に応じ,外出届か休暇届を提出するよう指示したもので,外出を承認しなかったものではなく,他の社員についても同様の扱いをしている。
(オ) 1時間以上離席する場合に社内のイントラメリットに行き先を登録することは推進室として決めたことであり,他の室員も同様に扱われている。
(2)  損害について
原告が被告による嫌がらせ,パワーハラスメントであると主張している行為は,いずれも原告の間違い等を指摘して注意したり,叱責したりしたことをパワーハラスメントと称しているものであって,原告が休職したことは認めるが,その原因は被告とは関係がない。
第3  当裁判所の判断
1  当事者間に争いがない事実及び掲記の証拠並びに弁論の全趣旨によると以下の事実が認められる。
(1)  a社は,平成17年6月ころから,JIS1999版を認証基準とするPマークの取得を目指し,経営企画室担当部長であった被告が担当して,PMS構築を始め,コンサルタントから資料の提供を受けた。
a社は,平成13年11月,情報セキュリティを強化するため,a社インフォメーションセキュリティシステム委員会(TISS)を発足させ,平成16年4月から被告がその事務局員となり,平成17年4月からは専任事務局員となった。
a社は,平成18年8月4日,Pマークの申請を行ったが,その直後に個人情報紛失事故を起こしたため,同年12月,申請を取り下げた。
(乙2の1から3,3,17,被告)
(2)  a社は,平成18年9月1日,推進室を創設して被告が室長となり,情報紛失事故の調査と対策を講じることとし,平成20年3月,JIS2006版に基づくPMS構築を開始することとした。
被告は,平成23年7月に定年退職する予定であったため,新たに担当者を定めることにし,当時の推進室には,原告のほか原告より4歳下のBがいるだけであったことから,原告をPMS構築の担当者とすることとした。
なお,原告及びBのいずれも,その前年に認定プライバシーコンサルタントの資格を取得していたが,原告は,平成21年2月,個人情報保護管理者知識認定試験を受験して合格している。
(乙5,17,原告,被告)
(3)  平成20年6月12日,原告は,被告の指示に従い,ガイドラインに従ってPMS構築に関する作業項目とこれに要する期間を記載した本件スケジュール案(乙8)を作成した。
本件スケジュール案では,推進室において当初の調査・準備を約1か月半行った後,規程類(第1次文書)の改訂を1か月半程度で行い,その後,個人情報の特定,リスク分析を行い,さらに規程類帳票類(第2次,第3次文書)の全面改訂を2か月弱で行うこととされている。規程類の改訂に要する期間は被告がJIS1999版のPMS構築に際して作成したスケジュールに従って作成したものであるが,原告自身も規程作成の前段階の作業と並行して4,5か月を要する作業であると認識していた。
また,同年12月15日に原告が作成した本件ロードマップ(乙9)では,平成21年1月から3月にかけて,個人情報の再調査や委託先管理の現状把握と併せて教育を実施した上,同年4月以降PMS文書の作成を6か月かけて行い,併せてリスク分析を3か月で終え,個人データの安全管理策の再検討を3か月かけて行うこととされている。
(乙8,9,原告,被告)
(4)  平成21年6月9日,原告は,被告及び推進室の室員全員に対し,平成20年3月に被告からPマーク取得のための取組を担当するよう指示され,これに取り組む決心をし,精一杯取り組んできたが,同月5日夕刻の打ち合わせの際,被告が述べた一言は侮辱であり,原告及びその他のメンバーは恥ずかしくないものにしたいとの一念でそれぞれの持ち場で取り組んでいるとするメールを送信した。(甲3,原告)
(5)  原告は,平成21年11月,個人情報保護基本規程を作成して提出し,同月20日にa社はこれを承認して,個人情報保護委員会事務局作成として平成22年1月から運用を開始した。(乙12,原告,被告)
(6)  原告は,平成21年12月,通勤途中のけがのため,約1か月休職した。
(7)  平成22年2月19日,原告は,a社社長,3名の常務取締役及び監査役に宛てて,「天狗になってしまったY室長」と題するメールを送信した。
その内容は,情報セキュリティ及び個人情報のことで自分に意見できる者は社内にいないとうそぶき,室員に指示するだけで毎日ただパソコンに向かっており,最近は,出社すると何台かの携帯ゲーム機を机に並べ,朝から夢中になってやっている有様であるとし,平成20年2月以降も多くの工数と費用を費やして構築した個人情報保護の取組がほとんど放置されており,従業者の個人情報取扱同意書も未取得の状態で,取得に向けた取組の必要性を説いても最後には怒鳴り出す状態であるなどというもので,このままでは,a社の個人情報保護の取組がゆがめられてしまうと考えてメールをしたとの記載がある。
(甲7,8の1及び2,原告)
(8)  平成22年3月25日,原告は,コンプライアンス推進室C及び総務部法務課のDとPMS内部規程検討会を行い,原告が,JIS2006版の説明及びa社の個人情報保護基本規程,ガイドラインなどを説明した上,検討を行った。(乙10)
(9)  本件ロードマップにかかわらず,平成22年4月においても規程類は作成されておらず,同月5日の室会議において,JIS2006版のフォローアップ監査等をB課長が担当し,原告は,運用規程のうち主に計画部分を作成することとされ,被告からスケジュールどおりにできるのか尋ねられたのに対し,これに先立つ3月の打ち合わせどおり,残りの規程は6月初旬には完成させると答えた。
同月12日の室会議において,BがPマーク関連規程のうちできあがった部分の整合性チェックをすることとされ,原告が運用規程のうち一部を作成し,作成した部分の整合性を確認したとし,今後その余の部分の作成に取り掛かると報告したのに対し,被告が既にできあがった部分を見せること及び今後はできあがった規程から順次見せるよう求め,現場負担をなるべく軽くするよう求めたところ,原告はいずれもこれを了解した。
同月19日の室会議において,3月23日の室会議の決定が反映されていないことについて被告が質したところ,原告は,考えが変わったので,これに従わない内容としたと説明し,その後,当初決定した内容とすることを了承した。また,被告は運用規程の一部について常務に一部提出すので,2部提出するよう求め,原告が途中であると述べたのに対し,途中であってもチェックをしなければ作業が遅延するので,今後順次提出するよう求めた。
同月26日の室会議で,被告は,運用規程の見直しばかりで,できあがらないことを指摘し,原告が運用規程において,例外事項の申請を現場にやらせている理由について,現場に浸透させたいと答えたのに対し,3月23日に現場にやらせないよう説明したことが守られていないと述べた。そして,被告は,平成22年がどのような年であるのかと尋ね,他の室員らが,室長が翌年引退し,新体制で行う年になる,Pマークの更新は2年であるなどと答えたが,原告がこの設問はただのいじめではないのかと答えた。被告は,原告を運用規程及び推進責任者から外す旨を通告した。
(甲9の1から5,乙11,原告)
(10)  同年5月19日の室会議で,4月19日に直すとした名称が直されておらず,現場に負担をかけないような規程の作成を指示しているのに,5月10日提出分はさらに現場負担が厳しくなっている理由を聞かれ,原告は,この程度は現場が最低知らなければならないと考えており,現場負担と思うのは見解の相違であると答えたため,被告から,時間が十分あるにもかかわらず,決定した事項を行わないのは正当な理由がなく上司の指示に従っていないことになると指摘した。そして,同年6月2日,運用規程について室員全員でレビューを行い,室員の多数決により,個人情報の取得について,推進室長の承認を得ることへの変更を決定した。(甲6,9の8)
(11)  同年6月以降,原告を含む推進室の室員らは,規程の修正やチェックシートの作成,個々の個人情報取得申請に対する対応を協議し,添付資料や承認基準などの検討も行った。また,被告は,原告に対し,個人情報取得申請に対するチェックシートの作成を指示し,その内容についても,室員を含めて協議を行った。(甲9の10から23,乙13)
(12)  原告は,a社の総務課の紹介で,平成22年12月9日,南池袋クリニックを受診し,平成20年8月ころからパワーハラスメントを受けており,平成22年から,部門長が取り巻きを作り嫌がらせをするようになり,些細なことで大勢の前で叱責されることが続いたとし,同年12月から熟睡できず,眼から側頭に圧迫感があること,産業医にも相談し,仕事に支障が生じていると説明し,担当医は,眼については眼科受診を勧め,パワハラについては専門家に相談することなどを指示して投薬したが,原告はその後通院していない。
また,原告は,平成23年1月6日から心療内科に通院し,同年2月3日,神経症と診断されており,診断書には,その原因として,会社でのパワーハラスメント,退職強要によるストレスとの記載がある。また,労働基準監督署長宛に提出された意見書では,原告が,平成20年ころから,直属の上司を中心とした集団パワーハラスメント,大勢の前で人格否定,恫喝,ネグレクト,退職強要等があり,平成22年12月ころからエスカレートし,年明け退職させるから覚悟しておけといわれたと申告したとの記載があり,傷病名として適応障害と診断し,発症時期は平成22年12月とされており,原告は,平成23年2月14日以降休職している。
(甲1,6,11,12,原告)
2  原告は,被告が,平成20年8月以降,パワーハラスメント行為を行ったと主張しているので,これについて検討する。
(1)  平成20年8月以降平成21年9月までに被告が行ったパワーハラスメント行為として,原告をPMS構築の担当者とし,仕事上必要な情報やサポートを与えなかったこと及び過重な仕事を命じ,不当な叱責をしたことを主張している。
ア 原告作成の陳述書(甲6,7,42)の記載及び原告本人尋問における供述によっても,原告は,被告からPMS構築の担当者となるよう指示された際,必要な知識経験がないので担当したくないと思ったというにとどまり,a社においてPMS構築をするのであれば,担当部署は推進室であることは認識しており,被告以外の室員が原告及び原告より4歳下のBのみであったというのであるから,原告をPMS構築の担当者としたことが原告に対する嫌がらせに当たるということはできず,他にこれを窺わせる事情は見当たらない。
イ 原告は,被告が必要な情報やサポートを与えなかったと主張するが,上記認定のとおり,平成21年11月に個人情報保護基本規程を作成したにとどまり,同年9月までの間,本件スケジュール案及び本件ロードマップに従った作業が行われていたことを認めるに足りる証拠はなく,原告がPMS構築の担当者として具体的にどのような作業を行っており,そのために必要であったどのような情報及びサポートを被告が提供しなかったのかも主張されていないから,原告の上記主張は前提を欠くものである。
また,原告は,JIS1999版に従って作成された規程類はJIS2006版では使用できないことが判明したと陳述書(甲7)及び本人尋問において供述しており,そもそも,被告からどのような情報及びサポートが提供されることを期待していたのかも明らかではない。
ウ 原告は,被告が,過重な仕事を命じ,日常的に多数人の前で一方的に非難し,不当な叱責をしたと主張するにとどまり,陳述書等(甲6,10,13)の記載によっても,その具体的内容は不明であるから,原告の上記主張も理由がない。
なお,原告が,平成21年6月9日,同月5日に被告が述べた一言が侮辱であるとするメールを被告に送信したことは上記認定のとおりであるが,上記メールでは被告が述べた内容は明らかではなく,原告は陳述書(甲7)の記載及び本人尋問における供述において,部下の昇進は上司の腹一つなのだから昇進させないと述べたとしており,被告はこれを否定している。同月5日の打ち合わせの具体的内容は不明であり,上記陳述書の記載及び本人尋問における原告の供述のみでは,被告が原告を侮辱したと認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
エ 以上のとおりであるから,平成20年8月から平成21年9月までの間に被告からパワーハラスメントを受けたとする原告の主張は理由がない。
オ なお,原告は,弁論準備手続を終結し,原告及び被告各本人尋問を終了した後に書証を提出し,その中には,上記期間中に作成したPMS構築に関するスケジュールを表示した書面や推進室の室員らに対する作業依頼のメールなど(甲15から20)が含まれているが,これらはいずれも原告がa社を休職する以前に自宅に持ち帰っていた文書であって,弁論準備手続において提出するのに何らの支障もなかったものである。また,原告は,本件訴訟において,当初から,被告が業務を強要し,必要なサポートを与えなかったことなどを主張していたから,上記書証を提出する必要性は証拠調べ後に生じたものではなく,弁論準備手続を終結し,証拠調べを終了した後に提出したことがやむを得ないといえる事情があったことは窺われず,証拠調べ後に手持ち資料を精査したことが上記のやむを得ない事情に当たらないことは明らかである。
他方,原告は,被告の指示が二転三転し,スケジュール案を何度も作り直させられたと主張しながら,その具体的な指示内容については何ら主張しておらず,平成21年9月までに行っていたPMS構築の担当者として行った作業の具体的内容についても主張立証をしていなかったから,上記書証が提出されれば,これに関する主張を要し,被告においてその反論と共に反証を要することとなり,さらに審理を継続する必要があることは明らかであるから,上記書証の提出は訴訟の完結を遅延させることになるものというべきである。
原告は,上記書証のほか,甲第21号証から第42号証も併せて提出したが,これらの書証の一部は,証拠調べ後,原被告双方において,個人情報取得申請に対する承認手続についての補充立証を行うこととし,そのために提出されたものであり,その余の書証もこれに対する新たな主張立証を要するものではなく,訴訟の完結を遅延させるものとはいえないから,却下を求める被告の主張は採用しない。
したがって,甲第15号証から第20号証までの書証について,時機に後れたものとして却下する。
(2)  平成21年10月から平成22年3月までについて
ア 原告は,被告が,平成21年10月,社内規程の作成を強要したと主張しており,原告がこれに従って基本規程を作成し,同年11月これが正式に策定されたことは上記認定のとおりである。
本件スケジュール案では,当初の調査準備を終えた後,第1次文書(社長が承認者となる文書)である規程類の改訂を行うこととなっており,その後に原告が作成した本件ロードマップでも,PMS文書の作成を平成21年9月までに終えることになっていたことは上記認定のとおりであるから,被告が,平成21年10月になって,原告に対し,基本規程を含む社内規程を作成するよう指示するのは当然のことであるといえるところ,原告が平成20年3月にPMS構築の担当者となってから平成21年10月までの間に行った具体的な作業内容を認めるに足りる証拠はなく,原告の作業が遅れた具体的な経過も明らかにはされていない。
これについて,陳述書(甲6,7)の記載によっても,原告が被告に説明したと主張する作業の進捗状況及び現場の混乱などの状況説明の具体的内容は不明であり,提示したとする代替案の内容も明らかではなく,被告が基本規程を含む社内規程を作成するよう原告に指示したことが,原告の作業状況やスケジュールを無視した理不尽なものであったということはできない。
イ 次に,原告は,作成した基本規程,取扱規程及び関連帳票に対し,被告が修正内容を書き込み,理由の説明なく修正を強要したと主張している。
もともと社内規程は,その内容により決裁すべき部署が異なるとしても,少なくとも,担当者が起案した後,しかるべき部署において様々な修正を行い,最終的に決裁権限を有する部署ないし担当者において決裁して確定するのが通常であるから,PMS構築に係る社内規程についても,原告が起案した後,PMS構築の担当部署である推進室において検討の上,修正を行うのは通常のことであり,推進室長である被告が修正を求めたからといって,そのことのみでは嫌がらせに当たるといえないことは明らかである。
また,原告が,被告が強要した修正の内容として指摘しているのは,個人情報取得申請に対して部門責任者が承認するものとされていた部分を,推進室長が承認することに変更したことであるところ,これについて,原告は,この変更が,被告が承認についての裁量権を持つこと及び部門責任者に対する教育を放棄することの2点で被告の都合のよいように変更したものであると陳述書(甲7)に記載し,本人尋問においても供述している。
しかし,承認者を,部門責任者から推進室長に変更することにより,被告に何らかの利益があることは窺われないし,上記変更の理由について,被告は,個人情報の取扱について全ての部門責任者の教育を行うことが時間的にも工数的にも費用的にもできなかったと陳述書(乙17)及び本人尋問において供述しており,基本規程の策定直後である平成22年1月から運用が開始されたことは上記認定のとおりであるから,運用開始当初の段階で部門責任者に対する教育が間に合わないことは充分にあり得ることであり,上記の変更には合理的な理由があるものといえる。そして,規程を変更したことにより,推進室あるいは被告が,個人情報に関する規程の内容や取扱について,部門責任者に対する教育を放棄したといえるものではない。
上記のとおり,原告指摘の点について,被告が変更するよう求めたことには合理的な理由があるといえ,そもそも上記のとおり変更されたことが原告に対する嫌がらせに当たるとはいえない。
なお,原告主張のとおり,部門責任者が判断できない場合が稀であるとしても,そのような場合が存在する限り,承認者を推進室長とする必要があるというべきであるから,原告の主張は理由がない。
ウ 原告が,平成21年12月に通勤途中のけがのため約1か月休職したこと及び平成22年2月,社長や取締役らに対し,被告が天狗になっているとする内容のメールを送信したことは上記認定のとおりである。
原告のけがによる休職後,あるいは,原告が取締役らにメールを送信した後,被告が推進室の室員を取り巻き化し,原告に対する陰湿な嫌がらせをするようになったと原告は主張するが,その主張の内容は,時期や状況をいずれも特定しない抽象的なものであり,原告作成の陳述書等(甲6,10,13)によってもその具体的内容が明らかではないから,上記陳述書等の記載のみでは被告が原告に対し嫌がらせをしたということはできない。
エ よって,平成21年10月から平成22年3月までの間に,被告からパワーハラスメントを受けたとする原告の主張は理由がない。
(3)  平成22年4月から同年5月まで
ア 原告は,規程類全体が完成してから被告に提出する予定であったのに,被告が,できた規程から順次見せるよう求め,さらに,途中であっても提出するよう求めたことが嫌がらせに当たると主張している。
平成21年11月に基本規程が策定されたが,その余の規程類は平成22年4月になっても作成されていなかったことは上記認定のとおりであり,同月12日の室会議において,原告が,運用規程のうち一部を作成し,作成した部分の整合性を確認したとして,その後の部分を作成する予定であることを報告したところ,被告が,整合性を確認した部分を見せるよう求め,今後は,できあがった規程から順次見せるよう求めたこと及び同月19日の室会議で,被告が運用規程の一部について2部提出するよう求めたところ,原告が途中であると回答したため,途中であってもチェックを始めないと作業が遅延するとして,提出を指示したことは上記認定のとおりである。
証拠(甲9の2及び3)によると,原告が途中であると回答した部分は,前の週の室会議において,今週確実に作成するように指示された部分であることが認められ,作成された運用規程について,原告自身のみならず他の室員も分担して整合性をチェックしていることを考慮すれば,全体ができあがってからではなく,できた部分から順次提出するよう求めることは合理的であるといえ,被告が上記のとおり指示したことは,そのことのみでは原告に対する嫌がらせに当たるとはいえない。
また,被告が,常務に提出するためであるとして,2部提出するよう原告に求めたことも上記認定のとおりであるが,本件スケジュール案(乙8)によると,規程類・帳票類の全面改訂を担当するのは,推進室と個人情報保護委員会であることが認められ,運用規程の策定が推進室限りでできることではないから,担当役員に作業の進捗状況を報告することは当然必要なことというべきである。
したがって,被告が,原告に対し,担当役員への報告のため2部提出するよう求めたことには合理的な理由があるというべきであり,原告が提出する運用規程が途中までしかできていないものであったとしても,その目的が原告の評価を下げさせることにあったことを窺わせる事情は見当たらない。
イ 原告が会議室を使用して作業していたところ,被告が使用しないよう指示したことは当事者間に争いがない。
原告は,問題なく会議室を使用していたと主張するが,会議室である以上本来の用途があり,一人の従業員が専属的に専用使用を継続することは予定されていないのが通常であるところ,原告がPMS構築のための作業室として会議室を専用使用することについて,社内的に何らかの了解を得ていたことについては何らの主張もされていない。また,原告が,PMS構築に関する作業を行うため,会議室を具体的にどのように使用していたのかも明らかではないから,被告が,原告が本来使用している机の周辺で作業するよう指示したことが,原告に対する嫌がらせであるということはできない。
ウ 原告が,平成22年3月25日,コンプライアンス推進室の室員及び総務部法務課所属の従業員とPMS内部規程の検討会を行ったことがあることは上記認定のとおりであり,他部署の従業員に協力を依頼していたことは当事者間に争いがないが,他方,同年4月26日の室会議において,被告が,原告に対し,運用規程及び推進責任者から外すと通告したこともまた上記認定のとおりである。
したがって,仮に被告が上記協力者に対し,原告を運用規程及び推進責任者から外したことを説明したとしても,そのことが,原告の作業妨害に当たるとはいえないのであり,被告が上記協力者に説明したことにより,原告の作業がどのように妨害され,どの程度の支障が生じたのかは明らかではないから,原告に対する嫌がらせに当たるとはいえない。
なお,原告は,正式な担当職務の変更がされたとは認識していないと主張するが,もともと,原告がPMS構築の担当者になった際,被告から指示された以外にa社においてどのような手続きがされたのかは明らかではなく,PMS構築の担当者であることが特別な肩書きを有する地位であったことを示す資料は見当たらない。そして,推進室内の担当職務であるにすぎないのであれば,室長である被告が室会議においてその担当者から外すと通告したことにより担当職務の変更がされるものというべきであるから,原告の上記主張は理由がない。
エ よって,平成22年4月から同年5月までの間に,被告からパワーハラスメントを受けたとする原告の主張は理由がない。
(4)  平成22年6月から平成23年2月まで
ア 原告は,PMS暫定運用中の申請承認手続きにおいて,被告が恣意的な承認基準を定め,あるいは,変更し,原告が担当した案件のみ承認を遅らせて,苦情が集中するよう仕向けたと主張している。
第2の3(1)エ(ア)のうち①について,個人情報取得申請書(乙18から21)は,申請部門の申請者,所属長及び情報セキュリティ責任者の押印がされた申請書に,推進室の第1次判定者及び第2次判定者がそれぞれ押印し,PMS許可番号及び許可年月日を記載する体裁となっていることが認められるところ,原告本人尋問の結果によっても,もともと承認番号の仮発行という制度はなく,申請者の側で,時間的余裕がないことから,所属長等の押印のない状態で承認を得られるよう特別の取り扱いを求めた場合であったというのであるから,被告がこれを承認しなかったことが,原告が取り扱う案件であることから特別に承認をしなかったといえるものではない。
この個人情報取得申請書(甲38の1及び2)では,被告が承認できないと付箋を貼って原告に戻した際には,原告の承認印も押されていない状態であったことが認められ,第1次判定者である原告が承認の可否を判断していない状態で,第2次判定者である被告が承認の可否を判断することは通常の決裁の過程ではあり得ないことというべきであり,被告が承認できないとしたことが,原告が取り扱う案件であることにより特別に承認しなかったとはいえない。
同②について,証拠(甲9の16,乙13,17)によると,被告が,原告が受け付けた個人情報取得申請書におかしいところがあるので,どこがおかしいのか自分で考えるよう原告に指示したところ,原告は,申請者に対し,被告から指示された内容のとおり伝えて,どこがおかしいのか自分で考えるようにと説明したため,申請者の上司から推進室に対し苦情の申し入れがあり,推進室が謝罪したこと,原告の上記対応について,他の室員から,推進室内での被告の指示をそのまま申請者に伝えることはあり得ないとの意見が述べられたこと,原告が受け付けた個人情報取得申請書に利用目的の記載がないと被告が指摘したところ,原告はこれで足りていると判断したと答えたのに対し,被告から,今後は,申請書を被告に提出する際には,そのまま置いて行かず,その場で説明するよう指示したことが認められる。
被告は,原告に対して,自分で考えるよう指示したのであり,そのまま申請者に伝えるような指示の内容でないことは明らかであるから,その後,申請者の部署からの苦情の申し入れがされたこともあり,被告の原告に対する指示を申請者に対する指示として申請者に伝えた原告の行動が,被告や推進室の他の室員から糾弾されたのはやむを得ないことというべきである。また,被告が,申請者の部署に対し,上記の経過を説明したとしても,承認されない責任があたかも原告にあるといいふらしたとはいえず,原告に責任をなすりつけたものともいえない。
同③について,テレアポ業務について,個人情報取得申請する際,電話担当者が会話する内容をフロー化したコールスクリプトを添付するように承認基準を変更したことは当事者間に争いがない。
PMS申請書管理簿(甲4の1及び2,24の1及び2)によっても,上記の変更後は,テレアポ業務についてすべてコールスクリプトの添付を要求しているのであり,恣意的にその要否を定めているものではなく,原告が受け付けた個人情報取得申請についてのみ要求していたことも窺われない。
また,当時PMSの暫定運用中であったことは当事者間に争いがなく,暫定運用開始の当初から承認基準が明確に定まっていたことを示す証拠はないから,承認基準を変更したこと自体を恣意的であるということもできない。
そして,コールスクリプトを要求した理由について,被告は,陳述書(乙17)及び本人尋問において,電話をかける担当者が,必要な項目を相手方に提示しているかどうかを判断することができると説明しており,証拠(甲9の13から15)によると,コールスクリプトを要求することについて,室会議において様々な可能性について議論をしていることが認められ,個人情報取得を承認するに際し,電話での手順を確認することが無意味であるとはいえないから,推進室内で協議をした上,コールスクリプトを要求するよう承認基準を変更したことが,被告が独断で理由なく承認基準を変更したとはいえない。
同④及び⑤について,PMS申請書管理簿(甲4の1及び2,24の1及び2)によると,個人情報取得申請書に記載すべき内容について,様々な変更が行われていることが認められるが,PMSの暫定運用中であり,その承認基準についても,具体的な個人情報取得申請に即して検討し,見直していくべきであり,PMSシステムについて,計画,実施,点検,見直しを繰り返すことにより,事業者の管理能力を高めていくことは,JIPDEC作成のガイドライン(乙1)にも記載されているとおりであるから,承認基準が変更されること自体を恣意的であるということはできない。
そして,原告は,原告が受け付けた場合と他の室員が受け付けた場合とで要求される事項が異なると主張し,上記PMS申請書管理簿及び被告作成の陳述書(乙32)によると,一律に同じ要求をしているのではないことが認められるが,原告が,要求事項が異なると主張する個人情報取得申請が,同じ条件下で個人情報を取得するものであるのか明らかではなく,被告は,担当部署及び個人情報取得の態様が異なると説明しており(乙32),全ての個人情報取得申請について,全く同様の要求をしていないことが,原告に対する嫌がらせの存在を推認させるものであるとまではいえない。
したがって,個人情報取得申請書の承認基準の運用について,被告が,原告に対して嫌がらせをしていたものということはできない。
イ 原告が業務運用について被告から嫌がらせをされたとして第2の3(1)エ(イ)で指摘する事項は,以下に判断するもの以外はいずれもその時期や状況を特定しない抽象的なものであって,原告作成の陳述書及び原告本人尋問における供述のみでは,その事実の存在を認めるに足りない。
③について,証拠(甲2の3,9の25)によると,平成22年12月20日の室会議が30分程度で中断し,10分程度の休憩後,再開されたことがあり,その理由について,被告が,原告の話し方が失礼であり,対応できる限界を超えたので休憩を取ったと述べ,その中断の理由や話し方が失礼である理由について原告が質問し,被告がこれに応えるやり取りが行われたことが認められるが,被告は,原告の質問に対して原告の話し方が失礼であると答えたものであり,被告から一方的に原告の話し方や態度を攻撃したものではなく,他に,これを認めるに足りる証拠はない。
⑤について,証拠(甲9の17から22)によると,個人情報取得申請に係るチェックシートを原告が作成し,室会議においてレビューを行い,現場でも承認申請ができるようにフロー化も検討するよう被告が指示していたことが認められ,原告が作成していたチェックシートがそもそも作成不可能なものであったことを認めるに足りる証拠はない。
⑥について,派遣社員が辞めた後,担当していた文房具の管理などを原告が担当するようになった(甲13)としても,上記業務は推進室の室員が担当すべき業務であり,原告が担当すべきでなかったことを認めるに足りる証拠はなく,他に担当するのが適当な室員がいたことの指摘もされていないから,原告に担当するよう指示したことが原告に対する嫌がらせであるとはいえない。
⑦について,証拠(甲5の1から5)によると,平成22年10月15日,原告は,目標設定シートについて,設定した内容に対する成果の評価をいずれもAとして提出したが,被告からの指導により,追加コメントを記載し,最終的に評価をいずれもBと変更したことが認められる。評価の記載について,証拠(乙14,17,被告)によると,a社において業務を自己評価するための基準が設定されており,目標どおりに達成した場合をBとし,目標を上回った場合にAとするものとされていたことが認められるところ,原告の目標設定シート(甲5の1から5)では,設定内容と成果の記載内容は同じであって,目標を上回る成果を達成した旨の記載にはなっていないから,被告が,上記基準に従い自己評価をBとするよう指示したことは上記基準にしたがったものといえ,ダウン申告を強要したということはできない。
ウ 証拠(甲2の1,9の24)によると,平成22年12月10日,原告が病院から戻った際,被告は,推進室の全員を会議室に集め,原告が上司である被告の許可を得ずに私用で外出したとし,就業規則上,あらかじめ上司の許可を得ることが必要であるとして,今後は上司である被告の許可を得るようにと指示すると共に,全員に対し,被告が不在であれば副部長のいずれかに報告して許可を得るようにと述べ,原告に対し,休暇を取る際には,イントラメリットに記載するだけではなく,電話連絡をするように指示したことが認められる。
原告は,就業時間中に,同僚に事情を話しただけで,上司の許可を得ることなく病院に行くため外出したというのであり,上記認定の経過によると,被告は,推進室の室員全員に対し,今後は,被告,被告がいない場合には副部長の許可を得るよう指示したものであって,その指示の内容は正当なものである。そして,就業時間中に私用で外出することが特段叱責されるような行為ではないということはできないから,被告が上記のような指示をしたことが不当であるとはいえない。
エ 証拠(甲2の2)によると,原告は,平成22年12月16日,同月21日に通院するため私用外出届を提出したところ,被告は,帰社するか否かを尋ね,原告が終了時間により帰社するかどうかが変わると述べたため,帰社しないのであれば休暇を取るしかなく,外出届としては受け付けられないので,とりあえず保留にしておきますと述べ,原告もこれを了解したことが認められる。
上記認定の経過によると,被告は,原告が帰社する場合には外出届として受理し,帰社しない場合には,別途休暇届を出すよう求めたものというべきであるから,外出を承認しなかったとはいえない。また,原告は,a社においては,就業時間中に,外出届を提出することなく,私用か業務かに係わりなく外出するのが通常であったと主張するが,a社において,上記のような就業状態であったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告が上記認定のとおり応答したことが,原告に対する嫌がらせであるとはいえない。
オ 証拠(甲2の3,9の9及び25,乙15)によると,平成22年6月7日の室会議で,1時間以上離席する場合は必ず行き先をイントラメリットに登録することを決定していたところ,同年12月20日,被告は,原告に対し,同月4日から17日までの間に1時間以上の離席が6回あり,いずれも行き先が記載されていなかったと指摘し,原告がこれを否定すると,被告はこれを記録していると述べ,原告が社内の打ち合わせで1時間以上も離席するような業務を担当しておらず,業務放棄に当たるから,懲戒処分の対象であると述べたが,原告は,行き先を登録しないで1時間以上の離席をしたことがないとしてこれを否定し,物別れに終わったことが認められる。
上記認定のとおり,被告は,原告がイントラメリットに行き先の登録もせずに離席していたと認識しており,それが業務放棄に当たると指摘したものであるところ,その根拠として原告の動静についてメモ(乙16)を作成していたが,記憶で作成していた部分もあると本人尋問において供述しているから,その正確性については疑問があるといわざるを得ず,この間,原告がイントラメリットにどのように登録していたのかも明らかではないから,原告に,被告の指摘した回数のイントラメリットに登録のない1時間以上の離席があったとまではいえない一方,全く何の根拠もなく被告が原告に対し,上記の指摘をしたものということもできない。
したがって,被告の指摘が原告に対する誹謗中傷にあたるとはいえない。
カ よって,平成22年6月から平成23年2月までの間に,被告からパワーハラスメントを受けたとする原告の主張は理由がない。
3  以上のとおり,被告が,原告に対し,パワーハラスメント行為を行っていたとはいえないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 石栗正子)

 

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