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「営業コンサルタント」に関する裁判例(18)平成30年12月27日 東京地裁 平28(ワ)43400号 未払賃料等請求事件

「営業コンサルタント」に関する裁判例(18)平成30年12月27日 東京地裁 平28(ワ)43400号 未払賃料等請求事件

裁判年月日  平成30年12月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)43400号
事件名  未払賃料等請求事件
文献番号  2018WLJPCA12278013

裁判年月日  平成30年12月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)43400号
事件名  未払賃料等請求事件
文献番号  2018WLJPCA12278013

東京都千代田区〈以下省略〉
原告 株式会社AILANA
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 荒井里佳
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 株式会社クロスランゲージ(以下「被告クロス」という。)
同代表者代表取締役 B
那覇市〈以下省略〉
被告 株式会社クロスランゲージ沖縄(以下「被告クロス沖縄」という。)
同代表者代表取締役 B
上記2名訴訟代理人弁護士 今村誠
笠野さち子
河西一実

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告らは,原告に対し,連帯して400万4160円及びこれに対する平成29年1月5日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要等
1  事案の要旨
(1)  本件は,原告が,被告らに対し,①原告は,被告クロス沖縄との間において,賃料月額3万円,電気代,水道料金,通信費等は被告クロス沖縄が負担するとの約定のもと,後記2(2)ア掲記の建物部分(以下「本件事務所」という。)の賃貸借契約(以下「本件事務所賃貸借契約」という。)を締結した,②原告は,被告クロス沖縄との間において,原告が被告クロス沖縄からその設立及び事務所の立ち上げに必要な一切の業務の委託を受ける旨の包括的な委任契約(以下「本件包括的委任契約」という。)を締結し,これに基づき,本件事務所及び被告クロスが賃借した後記2(3)掲記の居室(以下「本件社宅」という。)の内装等の工事を発注するなどした,③被告クロスは,原告との間において,上記①及び②の各契約に基づく被告クロス沖縄の原告に対する債務につき,連帯保証契約(以下「本件連帯保証契約」という。)を締結し,又は,併存的債務引受の合意(以下「本件債務引受合意」という。)をしたなどと主張して,被告クロス沖縄については本件事務所賃貸借契約及び本件包括的委任契約に基づき,被告クロスについては本件連帯保証契約又は本件債務引受合意に基づき,連帯して400万4160円及びこれに対する被告クロス沖縄に対する訴状送達の日の翌日である平成29年1月5日(第3回口頭弁論期日調書参照)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
(2)  なお,原告の被告クロス沖縄に対する主たる請求の内訳は,①本件事務所賃貸借契約に基づく請求が97万8120円(未払賃料72万円,電気料金9万8546円,水道料金3万5550円,電話料金12万4024円)であり,②本件包括的委任契約に基づく費用償還請求が302万6040円である。
2  前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者において争うことを明らかにしない事実である。)
(1)  当事者等
ア(ア) 原告は,健康機器,美容健康器具,食品・酒類,化粧品,皮革製品,服飾品,衣料品,日用雑貨品等の商品,製品の企画,開発及び販売促進に関するコンサルタント業務等を目的とする株式会社であり,平成25年4月23日に設立された(甲1)。
(イ) Cは,原告の設立当初からその代表取締役の地位にあった者である(甲1。なお,記録によれば,同人は,本件口頭弁論終結後の平成30年10月11日に原告の代表取締役及び取締役を辞任し,同日,A〔以下「A」という。〕が原告の代表取締役に就任したことが認められるが,本判決においては,以下,上記のとおり原告の設立当初からその代表者の地位にあり,原告代表者として尋問がされ,本件口頭弁論終結時においても原告代表者の地位にあったCのことを「原告代表者」という。)。原告代表者は,母方の姓である「C1」を日常的に使用していた(原告代表者)。
イ(ア) 被告クロスは,商品,サービスの販売,営業及びそれらの代理店業務,経営コンサルタント業務及び各種イベントの企画・運営・管理,外国語の翻訳並びに通訳業等を目的とする株式会社である(甲2)。
(イ) 被告クロス沖縄は,商品,サービスの販売及びそれらの代理店業務,経営コンサルタント業務及び各種イベントの企画・運営・管理等を目的とする株式会社であり,平成27年1月15日に設立され,同年4月から沖縄県内における業務を開始した(甲3,30,31,乙19,20,証人A,原告代表者)。
(ウ) Aは,①平成24年8月13日,被告クロスの取締役に就任し,②平成26年8月19日,被告クロスの代表取締役に就任し,③平成27年1月15日,被告クロス沖縄の取締役に就任したが,④同年12月26日,上記の各地位をいずれも辞任した(甲2,3,乙19,弁論の全趣旨)。
(エ) D(以下「D」という。)は,①平成26年8月19日,被告クロスの取締役に就任し,②平成27年1月15日,被告クロス沖縄の代表取締役に就任し,③同年6月15日,被告クロスの代表取締役に就任したが,④同年12月4日,上記の各地位をいずれも辞任した(甲2,3,乙19,弁論の全趣旨)。
(2)  本件事務所に関する事情
ア 原告代表者は,祖母の親戚であるEから,平成21年12月17日以降,沖縄県宜野湾市〈以下省略〉所在の鉄筋コンクリート造建物の102号室(本件事務所)を賃借していた(甲4,31,乙30の1・2,原告代表者)。
イ 本件事務所については,原告を賃貸人,被告クロス沖縄を賃借人とし,次のような定めが記載されている平成27年1月15日付けの「事務所使用賃貸借契約書」(甲5。以下「本件契約書」という。)が存在しているところ,本件契約書の被告クロス沖縄の記名部分の印影(以下「本件印影」という。)は,被告クロスのいわゆる登録印(以下単に「登録印」という。)とは異なる印章によって顕出されたものである(乙1の1・2,20,証人A,弁論の全趣旨。なお,原告と被告クロス沖縄の間において本件契約書の内容に見合った賃貸借契約〔本件事務所賃貸借契約〕が成立したか否かについては,争いがある。)
(ア) 「使用貸借期間」は,平成27年2月1日から平成29年1月31日までの2年間とする(2条第1文)。
(イ) 「使用貸借料は賃料3万円」とするが,そのほか被告クロス沖縄は,「事務所貸し出しに際して発生した…電気代・ガス代,水道料金,通信費等の本件事務所に請求される金額」を負担する(3条)。
(ウ) 原告又は被告クロス沖縄が「使用貸借期間」中に契約を解約しようとするときは,3か月前までに,相手方に対して書面による解約の申出書を提出することとする(5条)。
(3)  本件社宅の賃貸借契約
F(賃貸人)と被告クロス(賃借人)は,平成27年4月1日付けで,沖縄県宜野湾市〈以下省略〉所在の木造2階建建物の1階101号室(本件社宅)につき,賃貸借期間を同日から平成29年3月31日までの2年間,賃料を月額6万円とするなどの約定のもと,賃貸借契約(以下「本件社宅賃貸借契約」という。)を締結した。なお,被告クロスは,本件社宅を被告クロス沖縄の従業員として同県内に常駐するG(以下「G」という。)が居住する「社宅」として本件社宅賃貸借契約を締結した。(甲22,乙16,19,20,弁論の全趣旨)
3  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  原告と被告クロス沖縄の間における本件事務所賃貸借契約の成否等(争点1)
ア 原告の主張
(ア) Aは,原告との間において,平成27年1月15日,被告クロス沖縄の代表取締役であるDを代理して,本件事務所につき,前提事実(2)イのとおりの約定のもと,本件事務所賃貸借契約を締結した。
(イ) Aは,株式会社ビックカメラ(以下「ビックカメラ」という。)創業者のHのもとで働き,ビックカメラ勤務を経て,本件事務所賃貸借契約が締結された平成27年1月当時は,同人が多大な影響力を有している株式会社アイケアホールディングスをはじめとする「アイケアグループ」各社(被告らを含む16社。甲33)の代表取締役や取締役を兼任し,代表取締役の地位にない会社も含めて,事実上グループ各社の経営権を掌握しており,全社の営業や意思決定につき絶対的な力を保持し,グループ各社のA以外の代表取締役は,名目的な代表者にすぎなかった。上記当時,被告クロス沖縄の名目的な代表取締役はDであったが,上記のようなAの地位等を背景として,Dは,クロス沖縄のあらゆる契約関係につきAに一任ないし黙認していたものであって(なお,Dは,一度も現地である沖縄県を訪れていない。),Aは,Dを代理して本件事務所賃貸借契約を締結する代理権を有していたものというべきである。
(ウ)a 本件契約書の被告クロス沖縄記名部分には登録印でない印章による印影が顕出されているが,被告クロス沖縄では,登録印以外にAが作成依頼した代表者印がGに預けられており,これが本件契約書への押印に用いられたものと考えるのが自然である。また,本件社宅賃貸借契約が締結されている一方で,本件事務所については何らの契約書もなく漫然と被告クロス沖縄が使用しているというのは不自然である。被告クロス沖縄による事業が平成27年4月に現実に開始し,Gらが本件事務所を使用していたのに,原告代表者との間で,原告代表者が賃借している本件事務所の使用に関する書面が作成されず,あるいは,電子メール(以下「メール」という。)で契約内容の確認がされていないのは不自然であって,本件事務所賃貸借契約につき本件契約が作成されたと考えるのが素直である。
b また,原告代表者は,Aから本件事務所の使用に関して協力を仰がれた時から一貫してこれを拒否していたが(甲31),被告クロス沖縄の設立登記当日に沖縄に乗り込んでいたAから,本件事務所の賃料及び改修工事も被告クロスが負担するとして半ば強引に説得され(甲25),被告クロス沖縄の設立と同時にやむなく有償前提での協力に応じたものである。また,原告においては,本件事務所を資材置場等として利用していたにすぎず,現在も利用していない状態が続いているように,本件事務所につき費用をかけて内装工事を行う必要性はなく,これらの工事は,被告クロス沖縄の事務所として利用するためのものである。原告代表者がAからの協力要請に応じた時点において,被告クロス沖縄は設立段階であって,それまでに原告とのビジネスは何もない以上,原告において,被告クロス沖縄に本件事務所を無償で使用させ,工事費までも負担する理由はなく,本件事務所賃貸借契約が締結されたものと考えるのが素直である。
c さらに,Gは,原告代表者とのやりとり(甲27)において,本件事務所と本件社宅の両方につき未払があることを前提とした上で,原告からの請求に協力的な態度を見せていることも,本件事務所賃貸借契約が締結されたことを裏付けるものである。
d 被告らは,本件社宅賃貸借契約が稟議にかけられている一方,本件事務所賃貸借契約が稟議にかけられていないことを,同契約を否定する根拠とする。しかし,被告らにおいては,前記(イ)のような地位にあったAが経費等の支払時期を事実上決め,稟議等の事務的な書類を事後的に整えていたところ,本件社宅賃貸借契約についての稟議(乙16)も,その前日に,原告代表者から,賃料を賃貸人に支払わないと本件社宅から退去してもらうことになるとの警告がされたため(甲28),滞納賃料を直ちに支払うべき事後的に稟議書を作成し,正当な稟議手続をしたかのような体裁を整えたものである。したがって,上記の点は,本件事務所賃貸借契約が締結されたことを否定するものではない。
イ 被告らの主張
(ア) Aが被告クロス沖縄の代表取締役であるDを代理して本件事務所賃貸借契約を締結したこと,AがDを代理して本件事務所賃貸借契約を締結する代理権を有していたことは,いずれも否認する。
(イ) 被告クロス沖縄の代表取締役であったDは,Aに対し,本件事務所賃貸借契約の締結についての代理権を授与していない。
(ウ) 以下の各点からすれば,原告と被告との間において本件事務所賃貸借契約が成立したものとはいえないものというべきである。
a ①被告クロス沖縄に本件契約書が保管されておらず,また,本件事務所賃貸借契約につき稟議や代表印押印申請の社内手続が執られていないこと(なお,被告クロスが締結した本件社宅賃貸借契約については,契約書が作成され,稟議や代表印押印申請もされている。),②被告クロス沖縄が保有する印章は登録印のみであり,また,登録印ともう1つの代表者印(本件印影を顕出した印章)の2つを同時に購入した旨のAの証言が客観的事実に反すること(登録印と同時に購入されたのは代表者印ではなく住所印である〔乙26〕。),③本件契約書については,賃料の支払日及び支払方法の定めがないなど内容が不自然である上,事前にドラフトのやりとりがされたような経緯もみられないこと,④原告は,訴状では平成27年1月15日に本件事務所賃貸借契約を締結したとして本件契約書を引用していたのに,平成29年8月10日付け訴え変更申立書では平成27年4月上旬に本件契約書が作成された旨主張を変遷させたことにつき合理的な説明がないことなどからすれば,本件契約書は,Aがクロス沖縄の取締役を退任した後に作成された内容虚偽の文書であるというべきである。
b ①企業間において契約を締結する際に書面を作成しないことは通常あり得ないこと,②Aの証言等及び原告代表者の供述等によっても,平成27年1月15日に賃料額,賃貸借期間,電話代等の負担といった本件契約書記載の事項につき合意がされたとはいえないこと,③同日当時,Aは,本件事務所の住所を被告クロス沖縄の本店所在地として登記することのみを求めており,上記住所使用については無償が予定されていたこと,④争点1に関する原告の主張に沿うAの陳述書(甲30)及び証言(これらを総称して以下「Aの証言等」という。)並びに原告代表者の陳述書(甲20,31)及び供述(これらを総称して以下「原告代表者の供述等」という。)は,客観的事実に反するなど信用し難いこと,⑤甲17及び25の転送対象メールは,2014年12月5日付けのAから原告代表者宛てのメールを除き,本件訴えの提起後に加筆・訂正された可能性が高く,信用できないものというべきことなどからすれば,平成27年1月15日に口頭で本件事務所賃貸借契約が締結されたともいえない。
c 被告らは原告から本件訴えが提起されるまで本件事務所につき賃料を請求されていない。
この点,原告は,本件事務所の内装工事が終了した段階で,Aに対し甲15中のA宛てメールに添付して請求書(甲14)を送付し,Aから「クロス沖縄が好転してきた時点」で賃料を含めて支払う旨の申し出を受けた(甲15)と主張する。しかし,①甲14の請求書(平成27年4月15日付け)は,〈ア〉同日時点では被告クロスの代表取締役でないB(以下「B」という。)をその代表取締役としていること,〈イ〉原告代表者が平成28年3月30日のGとの会話において,同日まで請求書を送付していないことを自認していること(甲27),〈ウ〉甲14に「クロスランゲージ沖縄内装費用(エアコン取り付け・床張替え等)」として計上されている金額は,本件社宅に関する費用であるところ,本件社宅に関する工事の請求書の発行日(平成27年4月14日。甲10)の翌日にそのような工事費用の取違いがされたとは考え難いことなどからすれば,甲14は事後的に作成された可能性が高い。②また,甲15についても,上記①のとおり信用し難い甲14を添付して送付したとされるものであることや,内容を書き換えることが可能な転送メールであることなどに照らし,信用し難い。
d 原告は,被告クロスの事務所の所在地に本店登記をし,被告クロスの従業員らに原告宛ての郵便物の受取りなどをさせ,被告クロス沖縄の従業員であるGらに原告の業務を行わせるなど,被告らから便宜を受けていたこと,原告の決算書にも未収入金などとして本件事務所の賃料が計上されてはいないことなどからすれば,原告は本件事務所を被告クロス沖縄に無償で使用させる意思であったというべきである。
(2)  被告クロス沖縄が原告に対して本件事務所を明け渡した時期(争点2)
ア 原告の主張
本件事務所賃貸借契約においては,中途解約をしようとするときは3か月前までに解約の申出書を提出すべきものとされているのに,被告クロス沖縄は,平成28年4月2日に「夜逃げ」し,原告に何らの断りもなく本件事務所から退去したが,その後も,解約の申出書の提出をしないまま,テーブル等を残置して本件事務所を占有していた(したがって,被告クロス沖縄は,本件事務所賃貸借契約の使用期間満了までの賃料の支払義務を負う。)。
イ 被告らの主張
被告クロス沖縄のGは,原告代表者に対し,少なくとも平成28年3月30日には本件事務所から退去することを伝えており,また,その際に,原告代表者は「会社の家具とか電話とか全部,うちのだから」として本件事務所内の備品が原告所有である旨を告げており(甲27),被告クロス沖縄が同年4月以降も本件事務所を占有していた事実はない。
(3)  原告と被告クロス沖縄の間における本件包括的委任契約の成否等(争点3)
ア 原告の主張
(ア) 原告と被告クロス沖縄は,本件事務所賃貸借契約に際して,原告が被告クロス沖縄からその設立及び事務所の立ち上げに必要な一切の業務の委託を受ける旨の本件包括的委任契約を締結し,これに基づき,本件事務所及び本件社宅の内装等の工事を発注し,本件事務所の工事費として148万6500円を支出し(甲23の1・2,24の1~5,29),本件社宅の工事費として153万9540円を支出した(甲10)。
(イ) ①本件契約書に被告クロス沖縄が内装費用を負担する旨の定めがされていること,②被告クロス沖縄を中心とする沖縄での事業展開については,事務所と社宅はワンセットとして業務遂行に必要なものとして位置付けられるべきものであり,原告においてクロス沖縄の事業開始及び運営に協力することは,事務所や社宅の準備を含む一体としての協力を意味するものであり,Aから原告代表者へのメール(甲28)でも,本件事務所と本件社宅とが一体のものとして扱われていたこと,③原告において本件事務所及び本件社宅の工事費用を負担すべき理由はない上,そのような工事費用を原告が負担するというのであれば,被告クロス沖縄との間でその旨の書面が作成されていてしかるべきであるというべきことなどからすれば,本件包括的委任契約が締結されていたものと考えるのが合理的である。
イ 被告らの主張
(ア) 原告と被告クロス沖縄の間で本件包括的委任契約が締結されたとの事実は,否認する。
(イ) 以下の各点に照らせば,本件包括的委任契約が締結されたものとは認められないものというべきである。
a 本件包括的委任契約につき契約書は作成されていないところ,原告主張のような高額な委任事務処理費用が発生し得る契約につき契約書が作成されないのは不自然である。また,既に述べたとおり,本件契約書は事後的に作成された内容虚偽のものであり,原告提出のメール(甲17,25)も本件訴えの提起後に加筆・訂正された可能性が高いものであって,本件包括的委任契約が締結されたことを裏付けるものではない。
b ①原告が本件事務所の内装等の工事が行われたことを示すものとして提出する請求書(甲23の2,29)は,本件事務所を工事場所とする工事に関するものであるかが明らかでないものである上,その内容を見ても,「玄関タイルはつり新規タイル張り」との項目が掲げられているのは,本件事務所に玄関はなく,入口付近にタイルも貼られていない(甲21,乙31,原告代表者)ことから不自然であり,「壁 間仕切壁制作 クローゼット」との項目が掲げられているのも,原告代表者作成の本件事務所の見取図(甲21)と整合せず,不自然である。②また,平成28年2月及び3月に本件事務所を訪問したI(被告クロス従業員。以下「I」という。)が古びた感じでリフォームがされたような感じではなかったと述べていることからも,本件事務所で「天井塗装」や「壁クロス」張り替えを含む上記請求書記載の工事はされていないものというべきである。
c ①本件訴訟の途中まで社宅に関する工事費用は請求されていなかったこと,②本件社宅を含む物件は原告代表者の実家(原告代表者の母所有)であるところ,本件社宅の工事の内容,同工事に係る請求書の宛名が原告でなく「C1様」となっていること(甲10),本件社宅には現在「C1」との表札がかかっており,原告代表者の親族が居住していること(乙33)などからすれば,本件社宅の工事は,原告代表者又はその母が,自らの家を二世帯住宅化して居住するために行ったものというべきことからすれば,本件社宅の工事も本件包括的委任契約に基づくものとはいえない。
(4)  原告と被告クロスの間における本件連帯保証契約又は本件債務引受合意の成否(争点4)
ア 原告の主張
被告クロスは,原告との間で,平成27年2月15日頃,本件事務所賃貸借契約及び本件包括的委任契約に基づく被告クロス沖縄の原告に対する債務につき,本件連帯保証契約を締結し,又は,本件債務引受合意をした。
なお,本件連帯保証契約につき,被告クロスの連帯保証の意思は,電磁的記録(甲6のパワーポイント資料,甲25のメール)に明確に現れており,いわゆる書面性の要件は満たされている(民法446条3項)。
イ 被告らの主張
被告クロスと原告との間で本件連帯保証契約又は本件債務引受合意がされたことは否認する。
本件連帯保証契約又は本件債務引受合意に関する契約書が作成されていないこと,被告クロスにおいてこれらに関する取締役会決議がされていないことは,本件連帯保証契約又は本件債務引受合意がされていないことの証左である。
第3  当裁判所の判断
1  原告と被告クロス沖縄の間における本件事務所賃貸借契約の成否等(争点1)について
(1)  原告は,Aが,原告との間において,被告クロス沖縄の代表取締役であるDを代理して本件事務所賃貸借契約を締結した旨を主張し,本件契約書(甲5)が同契約についての契約書であるとする。そして,証拠(甲6,14,15,17,25,28,Aの証言等,原告代表者の供述等)には,原告の上記主張に沿うような部分がある。
(2)ア  まず,本件契約書(甲5)の本件印影は,被告クロス沖縄の登録印により顕出されたものではないところ(前提事実(2)イ),この点につき,原告は,被告クロス沖縄では,登録印以外にAが作成依頼した代表者印がGに預けられていたなどと主張し,Aはそのような代表者印を登録印と同時に注文してGに渡していたなどと証言する。
しかし,①登録印と同時に注文されたのは被告クロス沖縄の代表者印ではなく住所印であって(乙26),Aの上記証言はその重要な部分において事実に反するものといわざるを得ない。②また,被告クロス沖縄ないしGが,そのような登録印以外の代表者印を用いて業務を行っていたことを認めるに足りる的確な証拠もない。③さらに,原告が主張するように,被告クロス沖縄の事業に関して本件事務所賃貸借契約と本件社宅賃貸借契約が一体のものとして扱われており,また,Aが被告らの意思決定につき絶対的な力を有していたというのであれば,本件社宅賃貸借契約についてのみ稟議等の手続が執られ(乙16,17),本件事務所賃貸借契約については稟議等の手続が執られた形跡がない(加えて,被告クロス沖縄の登録印を用いた書面も作成されていない。)というのもいささか不自然であるというほかない(なお,証人Aは,被告ら内部で稟議等の手続はされていなかったという趣旨の証言をする〔証人A録音反訳書7頁。ただし,乙16~18に照らし,この証言を額面通りに受け取ることはできない。〕一方,本件事務所賃貸借契約と本件社宅賃貸借契約のいずれについても同様に稟議等の手続が執られていると思っていた旨,被告らにおいて稟議等の手続があったことを前提とする証言もしている〔証人A録音反訳書34頁〕ところである。)。④加えて,Aが原告代表者に宛てて作成した平成28年3月25日付け書面(甲16)では,本件事務所について「家賃は…3万円/月で,…修繕費等含めてお支払するという約束」という本件契約書の約定事項についても「口頭ベースのお約束事項」としているところである(この点に関する証人Aの証言〔証人A録音反訳書20頁〕も要領を得たものとはいい難い。)。
結局のところ,本件契約書をもって,本件事務所賃貸借契約の契約書であると評価するには,合理的な疑いが残るものといわざるを得ない。
イ  次に,甲17及び25のメールについて検討すると,甲17は,乙2の1のメールのやりとりがされた後に引き続いてAと原告代表者の間でやりとりされたメールとして提出されたものであり,甲25は,被告らから甲17のメールの時系列の矛盾(2014年12月5日8時11分のメールの後に2014年1月15日9時10分及び同日9時47分のメールが送信されたことになっている。)を指摘された後に,甲17のメールのスクリーンショットであるとして提出されたものであるが,①本件事務所につき「登記の為の貸主承諾を拒否します。」との原告代表者からのメールを受けて,J(法務担当の被告らの取締役。甲2,3,30,弁論の全趣旨)に対し,「すでに準備してしまったのでとりあえず,この住所で設立登記します。」「…C1社長特有の急激な反応だと思います。家賃が発生するわけでもないので,契約なしで進めておきます。」とのメールを平成27年1月15日9時3分に送ったAが,そのわずか40分ほど後に,原告代表者に対し,本件事務所につき賃貸借契約の締結及び改修工事の負担を申し出るメールを送信するとは考えにくい上,②甲17には上記のとおり時系列に矛盾があること(原告は,この点について表示上のバグであると主張するが,そのような主張につき具体的な裏付け資料は提出されていない。),③甲17及び25は,いずれも,いわゆる転送メールであり,転送対象である過去のメールの本文や送信日時等を修正することができるものであること(そして,甲17の証拠価値に対する被告らの証拠価値を払拭するためには,原告において,原告代表者とAとの間でやりとりされたメールそのものを端的に示せば足りるのに,甲25として転送メールのスクリーンショットを提出したことにも違和感がないではない。)に照らすと,甲17及び25は,争点1に関する原告の主張を基礎付けるのに十分な証拠であるとはいえない。
ウ  甲14,15につき,原告は,本件事務所の内装工事が終了した段階で,Aに対し甲15のA宛てメールに添付して請求書(甲14)を送付し,Aから「クロス沖縄が好転してきた時点」で賃料を含めて支払う旨の申し出を受けた(甲15)と主張する。
しかし,甲14の請求書(平成27年4月15日付け)は,①同日時点では被告クロスの代表取締役でないBをその代表取締役としていること,②原告の主張では,本件事務所賃貸借契約の賃貸借期間は平成27年2月1日からであるのに,同年1月分からの賃料が請求されていること,③甲14に「クロスランゲージ沖縄内装費用(エアコン取り付け・床張替え等)」として計上されている金額(153万9540円)は,本件社宅に関する工事費とされるものである(前記第2の3(3)ア(ア))ところ,本件社宅に関する工事の請求書の発行日(同年4月14日。甲10)の翌日にそのような工事費の取違いがされたとは考え難いことに照らすと,甲14については事後的に作成されたものである疑いを払拭することができない。
また,甲15についても,上記のような甲14に対する証拠評価や,事後的に内容に手を加えることも可能な転送メールであることなどに照らし,十分な証拠価値を有するものとはいえない。
そして,本件では,他に,原告が被告らに対し本件事務所の賃料を請求していた事実を認めるに足りる的確な証拠はない(Aの証言等及び原告代表者の供述等には,原告から被告らに対して繰り返し本件事務所の賃料の請求があったなどとする部分があるが,甲28は事後的に内容に手を加えることも可能な転送メールであることに照らし,上記のようなAの証言等及び原告代表者の供述等を裏付けるのに十分なものとまではいえない。)。
エ  なお,甲32は,水道光熱費に関するやりとりが記載されているにとどまるものであって,その記載を文字通りのものと理解したとしても,本件事務所賃貸借契約が締結されたことを基礎付けるのに十分な証拠とはいえない。また,甲6は,平成27年3月頃に作成された甲18のデータ(このデータはAが保有しているものと認められる。証人A)をもとに作成された文書であると考えられるが,その作成時期は不明であって,本件事務所賃貸借契約が締結されたことを基礎付けるのに十分な証拠とはいえない。
(3)  以上において述べたところや,①原告は,被告クロスの事務所の所在地に本店登記をし(乙29,原告代表者),被告クロスの従業員らに原告宛ての郵便物の受取りなどをさせ(証人I),被告クロス沖縄の従業員であるGらに原告の業務を行わせる(乙10の1)など,被告らから便宜を受けていたこと,②原告の決算書にも未収入金などとして本件事務所の賃料が計上されてはいないこと(乙6),③争点1における原告の主張と異なる証拠(乙19,20,証人I)も併せ考慮すると,前記(1)掲記の証拠によっては,本件事務所賃貸借契約締結の事実を認めるに足りず,本件において他にこの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
2  原告と被告クロス沖縄の間における本件包括的委任契約の成否等(争点3)について
(1)  原告は,原告と被告クロス沖縄は,本件事務所賃貸借契約に際して,原告が被告クロス沖縄からその設立及び事務所の立ち上げに必要な一切の業務の委託を受ける旨の本件包括的委任契約を締結し,これに基づき,本件事務所及び本件社宅の内装工事を発注し,本件事務所の工事費を支出したと主張し,これを裏付けるとする証拠(甲5,14,15,17,23の1・2,24の1~5,25,28,29,証人Aの証言等,原告代表者の供述等)の提出等をする。
(2)ア  しかし,本件包括的委任契約につき契約書は作成されていないところ(このことは原告も自認するところである。),原告においてその主張のような広範な事務を行うべき義務を負う一方,被告クロス沖縄においても少ない額とはいえない費用償還義務を負う可能性のある契約(現に,原告主張の本件事務所及び本件社宅の工事費用も相当な額にのぼっている。)につき契約書が作成されていないのは不自然であるといわざるを得ない。
イ  また,本件契約書(甲5),請求書(甲14)及びメール(甲15,17,25,28)の証拠価値がかならずしも十分なものでないことは,争点1についての判断において述べたとおりである。
ウ  さらに,原告が本件事務所につき工事が行われたことを示すものとして提出する請求書(甲23の2,29)は,本件事務所を工事場所とする工事に関するものであるかが必ずしも明らかでなく,また,その内容を見ても,本件事務所に玄関はなく,入口付近にタイルも貼られていない(甲21,乙31,原告代表者)のに「玄関タイルはつり新規タイル張り」との項目があり,また,「壁 間仕切壁制作 クローゼット」との項目も原告代表者作成の本件事務所の見取図(甲21)と整合しないなど,不自然な部分が見受けられ,上記各請求書が本件事務所の工事費用に関するものであるかについては,疑いを差し挟む余地があるというべきである。
エ  加えて,①原告は,本件訴訟の当初は本件事務所に関する工事費用のみを請求し,本件社宅に関する工事費用は請求していなかったが,当初本件事務所の工事に関する請求書であるとして甲10を提出したのに対し,被告らから甲10が本件社宅の工事に関するものであるとの反証がされるや(乙9の1参照),本件事務所の工事に関するものとして他の証拠(甲23の1~24の5)を提出した上で,本件社宅に関する工事費用の請求を追加したこと(当裁判所に顕著な事実。本件包括的委任契約が締結されており,上記各工事費用が同契約に基づく費用償還請求の対象となるものであったのであれば,上記のような証拠の取違えが生ずるとは考え難く,また,本件訴訟の当初に原告が本件事務所に係る工事費用のみを請求していたことも不可解な感が否めないところである。),②本件社宅を含む物件は原告代表者の実家(原告代表者の母所有)であるところ,本件社宅の工事の内容(一戸建ての一部を分割して居住スペースを設けるというもの。),同工事に係る請求書の宛名が原告でなく「C1様」となっていること(甲10,原告代表者の供述等,弁論の全趣旨),③本件社宅賃貸借契約の賃料の額(月額6万円。前提事実(3))との対比からすると,原告主張の本件社宅の工事費用の額に経済的合理性があるとはいい難いこと(本件事務所の周辺にそのような工事費用を要せずに同等の賃料で賃借し得る物件を確保することも十分に可能であったと考えられる。乙32)に鑑みれば,本件社宅の工事については,もともと原告代表者又はその母が自らの都合により行ったものであるとも見得るものというべきである。
(3)  以上述べたところや,争点3における原告の主張と異なる証拠(乙18,19,証人I)を併せ考慮すると,前記(1)掲記の証拠によっては,争点3における原告主張事実を認めるに足りず,他にこの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
3  結論
以上の次第であって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第28部
(裁判官 田中一彦)

 

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