「成果報酬 営業」に関する裁判例(70)平成21年 9月28日 東京地裁 平21(ワ)9685号 報酬金請求事件
「成果報酬 営業」に関する裁判例(70)平成21年 9月28日 東京地裁 平21(ワ)9685号 報酬金請求事件
裁判年月日 平成21年 9月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平21(ワ)9685号
事件名 報酬金請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2009WLJPCA09288002
要旨
◆原告が、被告に対し、業務委託契約に基づく報酬金及び遅延損害金の支払を求めた事案において、訴外a社と訴外b社の間で本件契約が締結された事実、訴外b社が本件契約上の地位を被告に譲渡した旨原告に通知し、原告が被告に対し、これを承諾した事実及び訴外a社が原告に吸収合併された事実が全て認められるとして、原告の請求を認容した事例
参照条文
民法643条
民法648条2項
民法656条
裁判年月日 平成21年 9月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平21(ワ)9685号
事件名 報酬金請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2009WLJPCA09288002
東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 株式会社サムライファクトリー
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 湊信明
同 市川太
同 廣木康隆
同 太田善太
同 野村奈津子
同 齋藤大
同 服部毅
同 野坂真理子
同 歌丸彩子
大阪市〈以下省略〉
被告 株式会社ケイビィ
代表者代表取締役 B
主文
1 被告は,原告に対し,174万1530円及びうち74万0670円に対する平成21年1月1日から,うち74万0670円に対する平成21年2月1日から,うち26万0190円に対する平成21年3月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求の趣旨
主文同旨
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,業務委託契約に基づく報酬金及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 請求原因
(1) 原告は,インターネットを利用した情報及び通信サービス等を目的とする株式会社である。
被告は,インターネットを利用した投資情報の提供,投資顧問業務等を目的とする株式会社である。
(2) 訴外株式会社コンソート(以下「コンソート社」という。)は,平成18年12月1日,訴外ターボ・サイバー投資顧問株式会社(以下「ターボ・サイバー社」という。)との間で,おおむね,次の内容の成果報酬型SEOサービス契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
ア 目的 コンソート社は,インターネットの検索エンジンGoogle又はYahoo!(以下,合わせて「検索エンジン」という。)において,ターボ・サイバー社が指定したキーワード(以下「SEO対策キーワード」という。)で検索した結果,ターボ・サイバー社の指定するサイトURL(以下「SEO契約ページ」という。)を上位10位以内に表示させることを目標とし,目標達成のために有効なSEO対策作業を行う。
イ SEO対策キーワードは「投資」,「投資顧問」,「資産運用」,「株式投資」,「投資信託」及び「株式情報」,SEO契約ページは「http://〈省略〉」である。
ウ SEO契約ページ対策作業(以下「本件作業」という。)の内容
(ア) SEO契約ページの現状を把握し,ターボ・サイバー社に対して必要に応じてHTMLタグを最適化するための提案をする。
(イ) コンソート社の有する技術・ノウハウを用い,SEO契約ページの検索エンジンでの検索結果の表示順位向上を目指し,適宜作業する。
(ウ) ターボ・サイバー社に対し,検索結果レポートを,コンソート社の指定する方法によって提出する。
エ 成果報酬
検索エンジンのいずれか1つにおいて,ターボ・サイバー社の指定したSEO対策キーワードで検索した結果,SEO契約ページが上位10位以内に合算で月間10日以上表示された月について別紙の内訳記載のとおり成果報酬が発生する。
オ 成果報酬の支払方法
ターボ・サイバー社はコンソート社に対し,当該月の成果報酬を,該当月の翌月末日までにコンソート社の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。
(3) ターボ・サイバー社は,平成19年2月12日,本件契約上の地位を同月をもって被告に譲渡した旨原告に通知し,原告は,被告に対し,これを承諾した。
(4) コンソート社は,平成20年8月1日,原告に吸収合併された。
(5) 原告は,本件契約上の本件作業を遂行し,平成20年11月及び同年12月については,全てのSEO対策キーワードにおいて目標達成がされた。また,平成21年1月については,2つのSEO対策キーワード(「投資」及び「投資顧問」)についてのみ目標達成がされた。
したがって,各月について,次のとおり報酬請求権が発生した。
平成20年11月分 74万0670円
平成20年12月分 74万0670円
平成21年1月分 26万0190円
合計 174万1530円
(6) 平成21年2月末日は経過した。
(7) よって,原告は被告に対し,本件契約に基づく報酬請求権として,報酬金合計174万1530円及びうち74万0670円に対する平成21年1月1日から,うち74万0670円に対する平成21年2月1日から,うち26万0190円に対する平成21年3月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否
(1) 請求原因(1)の前段は不知。後段は,被告の定款上の目的が後段記載のものであることは認める。実際は,インターネットを利用した投資情報提供業務は,平成19年12月ころに廃業しており,投資顧問業務は行ったことがない。
(2) 同(2)は否認する。
ターボ・サイバー社と被告は同じ代表者であるが,コンソート社との間で本件契約を締結したことはない。原告が提出する本件契約書(甲1)の印影はターボ・サイバー社のものとは異なるし,代表者の署名も同人のものによるものではない。
(3) 同(3)は否認する。
ターボ・サイバー社は,本件契約上の地位を被告に譲渡した旨を通知したことはないし,ターボ・サイバー社ないし被告は,原告から承諾の意思表示を受けたこともない。
(4) 同(5)は否認する。
第3 当裁判所の判断
1(1) 弁論の全趣旨によれば,請求原因(1)の事実を認めることができる。
これに対して,被告は,インターネットを利用した投資情報提供業務は,平成19年12月ころに廃業しており,投資顧問業務は行ったことがない旨主張するが,これを裏付ける何らの証拠も提出しないし,本件全証拠に照らしても,そのような事情は窺えないから,上記主張を採用することができない。
(2) 証拠(甲1,2の1ないし2,甲10,12ないし23)及び弁論の全趣旨によれば,請求原因(2)の事実を認めることができる。
これに対して,被告は,ターボ・サイバー社と被告は同じ代表者であるが,ターボ・サイバー社はコンソート社との間で本件契約を締結したことはない,原告が提出する本件契約書(甲1)の印影はターボ・サイバー社のものとは異なるし,代表者の署名も同人によるものではないなどと主張する。しかし,甲1に押捺されたターボ・サイバー社と表示のある印影は,一般的な会社の代表者印として特段不自然な点は認められないところ,被告はターボ・サイバー社の印鑑登録証明書等,上記主張を裏付ける何らの反証も提出しない(被告とターボ・サイバー社は代表者が同じであるのだから,証拠の提出は容易であるはずである。)。他方,甲18ないし22によれば,本件契約締結日とされる平成18年12月1日以前の時期から平成21年1月ころまでにかけて,コンソート社ないし原告と「ターボ・サイバーのB」との間で,本件契約の締結や請求等に関してメールでのやりとりがされていること,「ターボ・サイバーのB」のメールアドレスは「〈省略〉@jasumine.co.jp」というものであることが認められるところ,被告及びターボ・サイバー社の代表者名はBであること(甲10,弁論の全趣旨),被告は「○○○」の屋号でインターネット上でブランド品等の販売を行っており,そのメールアドレスやホームページURLには「@jasumine.co.jp」のドメインが使用されており,「@jasumine.co.jp」の担当者情報として「B」が登録されていること(甲15ないし17,23)に照らし,「ターボ・サイバーのB」のメールの作成者は,ターボ・サイバー社ないし被告の代表者であるBに他ならないものと認められる。さらに,甲12及び弁論の全趣旨によれば,コンソート社に対し,少なくとも本件契約に基づき平成19年1月分の成果報酬の支払がターボ・サイバー社名義でなされていることが認められる。以上の認定事実に照らせば,コンソート社とターボ・サイバー社との間の本件契約の締結については優に認められるから,被告の上記主張は採用することができない。
(3) 甲8,12ないし14及び弁論の全趣旨によれば,請求原因(3)の事実を認めることができる。
これに対して,被告は,ターボ・サイバー社は,本件契約上の地位を被告に譲渡した旨を通知したことはないし,ターボ・サイバー社ないし被告は,原告から承諾の意思表示を受けたこともないと主張する。この点,甲8は,運営会社の変更により,平成19年2月分の請求からは被告宛に請求書を送ってほしい旨の「ターボ・サイバーのB」からコンソート社宛のメールであり,被告はこれを第三者がねつ造した旨主張するけれども,上記メール作成者のメールアドレスもまた「〈省略〉@jasumine.co.jp」であるから,上記(2)説示のとおり,被告ないしターボ・サイバー社の代表者であるBによるものと認められ,また,甲12ないし14及び弁論の全趣旨によれば,本件契約の成果報酬の支払は,平成19年1月分まではターボ・サイバー社名義でなされていたが,同年2月分から平成20年10月分までは被告名義でなされていることからすれば,ターボ・サイバー社から被告に本件契約上の地位が譲渡された事実を認めることができるのであって,被告の上記主張は採用することができない。
(4) 甲11によれば,請求原因(4)の事実が認められる。
(5) 甲3ないし5,甲18,24の1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,請求原因(5)の事実が認められる。
(6) 請求原因(6)の事実は当裁判所に顕著である。
以上によれば,請求原因事実は全て認められるから,被告は,原告に対し,本件契約に基づく平成20年11月分から平成21年1月分までの成果報酬金合計174万1530円及びうち平成20年11月分の成果報酬74万0670円に対する平成21年1月1日から,うち平成20年12月分の成果報酬74万0670円に対する平成21年2月1日から,うち平成21年1月分の成果報酬26万0190円に対する平成21年3月1日から,それぞれ支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務を免れない。
2 よって,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担に付き民訴法61条を,仮執行の宣言に付き同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(裁判官 小池あゆみ)
〈以下省略〉
*******
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。