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「成果報酬 営業」に関する裁判例(36)平成27年 1月28日 大阪高裁 平26(ネ)593号 損害賠償本訴・業務委託料等反訴請求控訴事件、同附帯控訴事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(36)平成27年 1月28日 大阪高裁 平26(ネ)593号 損害賠償本訴・業務委託料等反訴請求控訴事件、同附帯控訴事件

裁判年月日  平成27年 1月28日  裁判所名  大阪高裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ネ)593号・平26(ネ)924号
事件名  損害賠償本訴・業務委託料等反訴請求控訴事件、同附帯控訴事件
裁判結果  棄却  上訴等  確定  文献番号  2015WLJPCA01286004

裁判経過
第一審 平成26年 1月23日 大阪地裁 判決 平22(ワ)3135号・平22(ワ)12343号 損害賠償請求本訴事件、業務委託料等請求反訴事件

裁判年月日  平成27年 1月28日  裁判所名  大阪高裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ネ)593号・平26(ネ)924号
事件名  損害賠償本訴・業務委託料等反訴請求控訴事件、同附帯控訴事件
裁判結果  棄却  上訴等  確定  文献番号  2015WLJPCA01286004

平成26年(ネ)第593号損害賠償本訴・業務委託料等反訴請求控訴事件
平成26年(ネ)第924号同附帯控訴事件
(原審 大阪地方裁判所平成22年(ワ)第3135号〔本訴〕,同第12343号〔反訴〕)

大阪市〈以下省略〉
控訴人・附帯被控訴人(本訴原告・反訴被告) X株式会社(以下「控訴人」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 佐々木茂夫
同 植村公彦
同 見宮大介
同 福岡宏海
大阪市〈以下省略〉
被控訴人・附帯控訴人(本訴被告・反訴原告) 株式会社Y(以下「被控訴人」という。)
同代表者代表取締役 D
同訴訟代理人弁護士 岡村久道
同 白木健介

 

 

主文

1  本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。
2  控訴費用は控訴人の,附帯控訴費用は被控訴人の各負担とする。

 

事実及び理由

第1  当事者の求めた裁判
1  控訴人(控訴の趣旨)
(1)  原判決中,本訴請求に関する部分及び反訴請求に関する控訴人敗訴部分をいずれも取り消す。
(2)  本訴請求
被控訴人は,控訴人に対し,6835万5000円及びこれに対する平成22年3月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(3)  反訴請求
前記(1)の取消し部分に係る被控訴人の反訴請求を棄却する。
(4)  被控訴人の附帯控訴を棄却する。
(5)  前記(2)につき仮執行宣言
2  被控訴人(附帯控訴の趣旨)
(1)  控訴人の控訴を棄却する。
(2)  原判決主文2項,同3項を次のとおり変更する。
(3)  反訴請求
控訴人は,被控訴人に対し,7030万3570円及びこれに対する平成22年8月31日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  事案の要旨
(1)  控訴人の本訴請求の概要
控訴人は,化学薬品の研究・開発,製造,加工及び売買等を業とする株式会社であり,被控訴人は,電子計算機(コンピュータ)及び周辺機器に関するソフトウェア並びにハードウェアの企画,設計,製造,調査,販売,開発,設置工事,保守及び輸出入等を業とする株式会社であるところ,控訴人は,被控訴人との間で,控訴人の新経営情報システム「○○ver7」(以下「本件システム」という。)の開発についての請負契約(以下「本件請負契約」と総称する。)を締結し,請負代金のうち6835万5000円を支払ったが,被控訴人が本件システムを完成させなかったとして,被控訴人に対し,主位的に,債務不履行に基づく損害賠償として,既払額6835万5000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成22年3月16日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,予備的に,本件請負契約の解除に基づく原状回復として,上記既払額及び遅延損害金の支払を求めた。
(2)  被控訴人の反訴請求の概要
被控訴人は,本件請負契約において被控訴人がなすべき仕事(以下「本件仕事」という。)を完成させているから,本件請負契約に基づく債務を履行しているとして,また,除斥期間の経過により本件請負契約の解除は認められないとして,控訴人に対し,以下のとおりの金額の支払を求めた。
ア 「ソフトウェア開発委託契約書」(甲1)及び注文請書(甲2,乙3の1)に基づく請負代金7560万円,本件ハンディ契約(甲10)に基づく請負代金1312万5000円,本件A区分契約(乙9)に基づく請負代金189万円の合計額から,平成20年8月頃の減額合意に基づく357万円,既払額6835万5000円をそれぞれ控除した請負代金残金1869万円
イ 本件請負契約とは別に,本件システムの第2次開発に係るRFP(Request for Proposal)(乙30の1の提案依頼書。以下,乙30の2の参考資料も含め,「本件RFP②」という。)の作成を請け負ったことに基づく請負代金1000万円
ウ 平成19年10月頃に締結された本件システムの保守メンテナンス業務契約(以下「本件保守契約」という。)上の債務不履行又は本件保守契約を締結しなかったことによる不法行為に基づく損害賠償として,保守代金3年分相当額3761万3570円
エ 前記ウの債務不履行又は不法行為による損害賠償請求の損害として弁護士費用400万円
オ 前記アないしエに対する反訴状送達の日の翌日である平成22年8月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金
(3)  原判決の概要
ア 本訴請求
原審は,本件請負契約に基づく本件仕事は完成しているものと認められるから,被控訴人に債務不履行があるとは認められず,除斥期間経過により本件請負契約の解除を認めることもできないとして,控訴人の本訴請求を棄却した。
イ 反訴請求
原審は,前記アのとおり,本件請負契約に基づく本件仕事は完成しているものと認められるから,反訴請求のうち,本件請負契約に基づく請負代金残金1869万円及び本件RFP②作成に係る請負代金1000万円並びにこれらに対する遅延損害金請求については,理由があるとしていずれも認容したが,本件保守契約上の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求並びに弁護士費用の請求については,理由がないとしていずれも棄却した。
(4)  控訴人は,原判決中の控訴人の本訴請求部分及び被控訴人の反訴請求の控訴人敗訴部分の各取消し,本訴請求の認容,上記取消し部分に係る反訴請求の棄却を求めて,本件控訴を提起し,被控訴人は,原判決中の被控訴人の反訴請求一部認容部分を,被控訴人の反訴請求を全部認容する内容に変更することを求めて,附帯控訴を提起した。
2  本判決における用語,前提事実及び争点(当事者の主張を含む。)
次のとおり補正し,後記3のとおり補充するほかは,原判決「事実及び理由」第2の1ないし3を引用する。
(1)  10頁24行目の「以降」を「移行」と改める。
(2)  15頁15行目の「基本設計のやり直し」を「本件外部設計書の作成」と改める。
(3)  15頁21行目の「平成22年6月15日」の後に「の本件弁論準備手続期日において」を加える。
3  当事者の当審における補充主張
(1)  本訴請求についての控訴人の補充主張
ア 被控訴人は,本件請負契約に基づき,最終納期である平成20年8月29日までに本件システムを完成させる義務を負っていたが,被控訴人が納入しようとしたシステムは,システムダウンを生じさせるものも含めてアプリケーションエラーが多発するなど,著しく安定性を欠き,基幹業務システムとして全く使い物にならないものであり,被控訴人には本件請負契約上の債務不履行があるところ,このように本件システムが完成していないことは,以下の点からも明確に指し示すことができる。
(ア) 被控訴人は,控訴人に対する損害賠償責任を認めており,その負担方法について控訴人と協議して,控訴人作成の弁済契約書案及び労働者派遣基本契約書案(甲16の1・2)に対する修正や逆提案を行っていた(以下「主張①」という。)。
(イ) 被控訴人は,本件システムが完成していれば必要がないところの,新しいベンダーを選定するための提案依頼書(本件RFP②)の作成について,何ら異議を述べることなく無償で協力をしている(以下「主張②」という。)。
(ウ) 被控訴人は,本件システムが完成していれば必要がないところの,基本設計である本件外部設計書(乙47)の作成作業について,何ら異議を述べることなく行っている(以下「主張③」という。)。
(エ) 被控訴人は,本件システムの最終納期である平成20年8月29日を大幅に徒過した同年10月20日あるいはそれ以降の段階においても,不具合等の振分け作業を行っているほか,マスタスケジュールからの再度作成を表明している(以下「主張④」という。)。
(オ) 本件システム開発につき辞退することを申し入れてこれを打ち切ったのは被控訴人であり,被控訴人は,本件訴訟に至るまで控訴人に対し未払請負代金請求をしてきたことはなく,かえって,調停手続において,本件システムの開発が完了していないことを認め,控訴人に対し1700万円を支払う旨を提案していた(以下「主張⑤」という。)。
(カ) 被控訴人は,本件システムの最終納期経過後の平成20年9月8日,本件請負契約についての同年7月23日付け覚書(甲5)に定めた納入遅延時の措置に基づき,本件システムが完成していれば全く必要がないにもかかわらず,G(以下「G」という。)を被控訴人の後任のプロジェクトマネージャーに選任している(以下「主張⑥」という。)。
(キ) 控訴人は,被控訴人が平成21年1月に最終的に撤収した後の同年3月,株式会社富士通ビジネスシステムに対し,本件システムに代わる基幹システムの開発を発注し,平成22年4月,同社が開発したシステムを導入しているが,被控訴人は,本件RFP②の作成作業を行うなど,上記新規発注に協力している(以下「主張⑦」という。)。
(ク) 被控訴人代表者は,一貫して,本件システム開発の失敗の責任が被控訴人にあることを認めており,このことは,同人の発言の録音(甲27ないし30)からも明確に裏付けられる(以下「主張⑧」という。)。
(ケ) Gは,原審尋問において,被控訴人が開発していたシステムが,バグを潰したらまた新たなバグが発生するというモグラたたきの状態であって,使い物にならず,本件システムは完成していないことを明確に証言している(以下「主張⑨」という。)。
(コ) 被控訴人は,アプリケーションエラーを多数放置する等したまま,最終納期である平成20年8月29日,控訴人に対し,本件第1次成果物(乙20)を納品しているが,そのテスト成績書(甲71)を検証した報告書(甲74,75)によれば,これらのエラーは,いずれも単体プログラムにおける致命的な問題であるから,仮にそれ自体の修正は容易でも,いわゆる「影響度調査」や「横展開作業」を行い,改めて必要な範囲で単体テスト,結合テスト,システムテストを行う必要がある。したがって,本件システムは完成していない(以下「主張⑩」という。)。
(サ) 平成20年8月29日のわずか1か月半前である同年7月14日に作成された「導入スケジュール」(甲68)によれば,被控訴人において,作業内容に全く手をつけていないものがあり,着手していても進捗率50%以下のものが多数存在していた(以下「主張⑪」という。)。
(シ) 甲5の覚書によれば,被控訴人は,成果物の納入後に,リカバリ・バックアップテスト,リカバリ・バックアップ運用マニュアル等の納品を行うことになっていたが,平成20年9月1日ないし同月3日に実施された動作確認(本件受入テスト)において,本件第1次成果物については,アプリケーションエラーが多発し全く使い物にならなかったことから,上記作業も実施されていない(以下「主張⑫」という。)。
イ 個別の瑕疵について
(ア) 原判決別紙瑕疵一覧表(以下「瑕疵一覧表」という。)番号6,23,30,33について
容器処理についても排他制御が仕様となっていたところ,排他制御が実装されていなかったことは重大な瑕疵にあたる。
(イ) 瑕疵一覧表番号16について
甲39の打合せ議事録によれば,後にアクセスした者の操作を禁止することまで求められているから,番号16の指摘事項は,上記仕様に反している。
(ウ) 瑕疵一覧表番号3,14について
請求確定処理がなされた後であっても,出荷品返品ができることは,当然の前提とされていたが,この処理ができないことが問題である。
(エ) 瑕疵一覧表番号37について
番号37の指摘事項については,改修済みではなく,仕様に反した動作確認を行った結果生じたものでもない。
(オ) 瑕疵一覧表5,7,8,10ないし13,15,17,20,24,27,28,31,32,34について
いずれも改修済みではない。
(カ) 瑕疵一覧表26,29,32について
いずれも修正すれば足りる瑕疵ではない。
(2)  本訴請求についての被控訴人の補充主張
ア 債務を履行していることについて
控訴人は,本件請負契約における被控訴人の業務内容(債務)である「本件仕事」の内容について具体的な反論をすることなく,「本件仕事」を「本件システム」に入れ替えて,本件システムが完成していないから,被控訴人には債務不履行があると主張している。
しかし,控訴人主張の「本件システム」は,本件請負契約には含まれない第2次開発に係る作業についてまで被控訴人の業務範囲に含まれるかのような前提となっており,被控訴人の業務範囲について具体的な言及もなく,「本件仕事」に含まれない「本件システム」の作業部分の未履行を縷々述べているにすぎない。
本件仕事の内容は,本件仕様書(乙8)に定められた仕様に従って詳細設計より下流工程にある作業を行うことであるところ,被控訴人は,本件仕様書の内容に従って開発行為(プログラミング)を行っており,平成20年10月23日に納入した本件最終成果物(乙32)には,軽微で容易に修補可能な障害が残るのみであったから,被控訴人は本件仕事を完成しており,本件請負契約に基づく債務を履行している。
イ 本件仕事の未完成の主張に対する反論
(ア) 控訴人の主張①②⑧について
本件仕事の完成の有無は,客観的事象から判断されるべきであるところ,紛争の発生や悪評等を防ぐための顧客への対応として,企業として謝罪等の対応を行ったり,妥協案を出したりすることはあるのであって,被控訴人において何らかの法的責任を自認するものではないから,本件仕事の完成の有無とは無関係である。
(イ) 控訴人の主張③について
本件外部設計書は,基本設計がなく,控訴人からの障害要望一覧表が提出されている状況において,控訴人と被控訴人との共通認識を醸成することを目的として作成されたものであるから,本件仕事の完成の有無とは無関係である。
(ウ) 控訴人の主張④について
「要望」事項に関する工程は第2次開発に関するものであるから,マスタスケジュールに関する議論は,本件仕事の完成の有無とは無関係である。
(エ) 控訴人の主張⑤について
平成20年11月20日に被控訴人が本件システム開発から離脱したのは,第2次開発の費用負担について合意に至らなかったにすぎないから,本件仕事の完成の有無とは無関係であるし,調停手続において交渉の軟着陸を目指していたのは,前記(ア)と同様の理由によるものである。
(オ) 控訴人の主張⑥について
平成20年10月23日納入の本件最終成果物をもとに,本件仕事の完成の有無を判断すべきであるから,同年9月にGがプロジェクトマネージャーに選任されたことと,本件仕事の完成の有無とは無関係である。
(カ) 控訴人の主張⑦について
控訴人自身の判断により,別のベンダーを選定して本件システム開発の続行を試みたのであるから,本件仕事の完成の有無とは無関係である。
(キ) 控訴人の主張⑨について
Gは,設計やプログラミングの実作業には加わっていない上に,当初は,ベンダーとしての「あるべき論」を前提として考えていたにすぎないところ,その後,資料関係を確認した上で,被控訴人の業務範囲の作業は概ね完了していたと考える旨を証言している。
(ク) 控訴人の主張⑩について
控訴人は,甲71が,平成20年8月29日に納入された本件第1次成果物のテスト成績書であるとして,その記載内容を検討した報告書(甲74,75)を根拠として,本件システムには基礎的な部分に問題があり本件システムが完成していないと主張するが,甲71は,各種のテストが実際に行われたことの証拠となる「エビデンス」の一部にすぎず,そのログイン年月日も同年5月から7月までとなっており,中途過程の「仕掛かり品」にすぎないし,甲71に現れたバグは,その余のテスト成績書等で現れたバグも含め,本件最終成果物の納入までの間に修正済みである(乙93)。
(ケ) 控訴人の主張⑪について
作業が遅れたのは,被控訴人において,控訴人からの「異常」,「ペナルティもん」と評されるほど多くの仕様追加・変更の要望に対応していたからであるし,本件A区分契約が締結されたのが平成20年7月23日であって,覚書で定められた最終納期である同年8月29日のわずか1か月前に,仕様の変更に対応していたのであるから,控訴人の主張は,このような開発経緯を無視している。
(コ) 控訴人の主張⑫について
控訴人の主張は,本件仕事の完成の有無とは無関係である。
ウ 個別の瑕疵の主張に対する反論
(ア) 瑕疵一覧表番号6,23,30,33について
そもそも,容器管理については,排他制御が仕様とされていなかった。
仮に,仕様とされていたとしても,排他制御を導入すること自体には何らの困難はなく,システム全体の見直しを行わなければならないほどの欠陥とはいえない。
(イ) 瑕疵一覧表番号16について
本件仕様書どおりの動作である。
(ウ) 瑕疵一覧表番号3,14について
本件仕様書どおりの動作である。
(エ) 瑕疵一覧表番号37について
乙54ないし乙66において確認が漏れた指摘事項であり,甲45によれば改修済みである。
(オ) その余の指摘事項について
いずれも改修済み又は改修可能である。
(3)  反訴請求についての被控訴人の補充主張
ア 本件RFP②の請負代金請求について
平成20年9月18日,控訴人と被控訴人との間で,本件外部設計書を作成することと,その作成対価として控訴人が被控訴人に対し1000万円を支払うことが合意されており,本件外部設計書がそのまま本件RFP②の作成に活用されているから,本件RFP②が作成された当時には,本件RFP②について1000万円を支払う旨の合意が成立している。したがって,控訴人には,被控訴人に対し,本件RFP②の作成に係る請負代金1000万円を支払う義務があり,商法512条,民法130条,民法536条2項の観点からも支払義務がある。
イ 本件保守契約に関する請求について
(ア) 被控訴人は,平成19年10月頃,控訴人との間で本件保守契約を締結しているところ,控訴人が,被控訴人に対し,本件システム開発の打切りを通告したことは,控訴人の本件保守契約上の債務不履行である。
(イ) 大型のシステム開発にあたっては,ベンダーにおける開発費用(請負代金)の設定に際し,その金額は保守費用との兼ね合いで決せられるのが一般的であるところ,本件保守契約の代金は,本件システム開発における被控訴人の持ち出し分を補填する意味合いを持っており,控訴人と被控訴人との共通認識となっていたから,仮に,本件保守契約が成立していないとしても,控訴人には契約締結上の過失が存在するのであって,被控訴人に対する不法行為が成立する。
(4)  反訴請求についての控訴人の補充主張
ア 本件RFP②の請負代金請求について
控訴人は,被控訴人に対し本件外部設計書の作成を指示したことはなく,被控訴人からの依頼に対し,被控訴人が本件システムの開発を完了させることを停止条件として,本件請負契約に基づく請負代金を1000万円上積みすることを了承したにすぎないところ,本件システムは完成していないから,支払義務はない。
また,控訴人が了承したのは本件外部設計書の作成対価であって,本件RFP②の作成対価ではないから,控訴人に1000万円の支払義務はなく,本件RFP②は被控訴人が無償で作成したものである。
イ 本件保守契約に関する請求について
控訴人と被控訴人との間で本件保守契約を締結したことはなく,そのような合意もしていないから,控訴人に債務不履行はなく,また,控訴人に契約締結上の過失もないから,不法行為も成立しない。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所も,控訴人の本訴請求については,理由がないから棄却すべきであり,被控訴人の反訴請求については,後記4の(2)に記載した限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。
その理由は,後記2のとおり補正し,後記3のとおり当審における補充主張について判断するほかは,原判決「事実及び理由」第3の1ないし7を引用する。
2  原判決の補正
(1)  30頁3行目の「多くの」を削除し,同7行目の「多数の」を「4箇所の」に改める。
(2)  32頁9行目の「以下「本件一覧表」という。」を削除する。
(3)  34頁21行目の「I」を「I(以下「I」という。)」に改める。
(4)  69頁7行目から15行目までを,次のとおり改める。
「 被控訴人の反訴請求における弁護士費用400万円の請求は,本件保守契約上の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求のみにおいて請求されているから,前記のとおり,本件保守契約上の債務不履行も不法行為も認められないことからすれば,理由がない。」
3  当審における補充主張について
(1)  本訴請求における補充主張について
ア 本件請負契約上の被控訴人の債務不履行の有無の判断基準について
控訴人は,「本件システムが完成していない」から,被控訴人には,本件請負契約上の債務の不履行があると主張し,この主張を前提として,本件システムが完成していない根拠につき,主張①ないし⑫(前記第2の3(1)ア(ア)ないし(シ)記載)のとおり主張する。
請負契約は,当事者の一方が「ある仕事を完成すること」を約し,相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって,その効力を生ずる(民法632条)から,請負契約に基づく債務の不履行を主張する場合には,どのような内容の仕事が完成していないことを債務不履行と主張しているのかその特定が必要である。
そこで,以下,控訴人の補充主張を判断する前提として,本件請負契約に基づき被控訴人が履行すべき「本件仕事」の内容及びその完成の有無につき,前記引用の原判決に補足して検討する。
イ 認定事実
前記引用の原判決の認定事実(前提事実を含む。)及び下記各証拠によれば,本件の経緯として以下の事実が認められ,下記認定に反する原審証人B〔以下「B」という。〕及び同C〔以下「C」という。〕の各証言はいずれも採用できない。
(ア) 控訴人は,同社が既にコンサルタント契約を締結していたa社(代表者H。以下「H」という。)が提唱する△△理論(乙5,42)による経営情報システムの構築を計画し,開発業者の募集に応じてきた被控訴人に対し,提案依頼書(乙2。以下「本件RFP①」という。)を送付し,これを受けて開発費用6910万円,保守費用年額600万円の見積り(乙21)を提出してきた被控訴人への発注を決め,平成18年6月8日に仮発注をした(乙1)。
(イ) 控訴人は,被控訴人に対し,平成18年7月1日から平成19年3月2日までの間に合計111項目の資料(乙11)を提供した。上記のうち,平成18年8月28日までの間に提供された31項目のデータ(甲19。以下「本件控訴人提供資料」という。)が,控訴人が「基本設計書」と主張する資料であって,甲19の証拠説明書によれば,そのほとんどがa社ないしHが代表者を務めるCMSにより作成されており,残りの80項目が,控訴人が「基本設計書の補足資料」と主張する資料である(甲60)。
控訴人から被控訴人に提供されたのは,本件RFP①(添付資料である甲60別紙資料を含む。)並びに本件控訴人提供資料(甲19)及びその補足資料に限られるところ,前記引用の原判決の認定及び判断のとおり,本件控訴人提供資料は,基本設計書として本来備えるべき内容を備えていたとはいえない。
平成20年9月8日にE(以下「E」という。)の後任の被控訴人のプロジェクトマネージャーとして就任し,控訴人に常駐して開発業務に携わっていたG(以下「G」という。)は,NEC及び関連会社においてシステム技術職として稼働し,定年退職後の同年2月から被控訴人で勤務していた者であるところ(甲50),Gは,原審尋問において,本件訴訟の後になって見せられた,本件RFP①を含むa社作成の資料は,基本設計書というより一般的な教科書にすぎないと証言している。
(ウ) 被控訴人は,平成18年8月28日の時点において,請負代金の見積額を9302万円として控訴人担当者のBにこれを提示したが(乙12),控訴人からの価格見直依頼により,同年9月7日,最終的な請負代金を税込7560万円とする注文請書(甲2,乙3の1)を提出した。上記注文請書の前提となる同月4日付け御見積書(乙3の2)には,「新経営システム構築に必要な機能数(画面・帳票・その他)の基準を200機能とする。」と記載されていた。
同年9月7日,本件請負契約について,同年6月1日付け「ソフトウェア開発委託契約書」(甲1)が取り交わされ,委託料(請負代金)の額は上記見積書のとおりとされたが,同契約書では,本件業務における「仕様書」は,控訴人より提示された「要件定義」(要求分析。これを記載した書面が存在しないことに争いはない。)及び「基本設計書」をいうと定められた。
(エ) 控訴人と被控訴人の合意により作成された平成18年12月27日付けの品質目標についての別添資料(乙4)には,両者の役割分担として,要件定義のとりまとめ等を含む基本設計資料の作成,基本設計書のレビュー及び承認はいずれも控訴人が,詳細設計書の作成は被控訴人が,詳細設計書のレビューは共同で,詳細設計書の承認は控訴人が担当するものと定められていた。
(オ) 控訴人が被控訴人に対して交付した平成19年2月1日付け「システム修正計画の進め方(案)」(乙5)には,冒頭に「a社には,2月中に基本設計書を提出させ,契約を終了する。」と記載され,△△理論に対する控訴人の疑問やa社に対する控訴人の不満が記載されているほか,今後は控訴人と被控訴人との間で開発を進めることが記載され,末尾に被控訴人に対してシステム移行修正計画書の提出を依頼する旨が記載されている。
なお,上記冒頭の記載は,上記時点において,基本設計書が提出されておらず,本件控訴人提供資料が基本設計書に該当しないことが前提となっている。
また,被控訴人は,控訴人の依頼により,a社に対し,平成18年9月1日以降,講習会名目で合計720万円を支払っていた(甲29,乙80,82)。また,控訴人は,a社とのコンサルタント契約に基づき,少なくとも合計1900万円を支払っていた(原審証人B)。
(カ) 被控訴人が控訴人に対して提出した平成19年2月21日付け「今後の開発方針について」(甲11の3)には,「現在,提示されている資料・手法では業務に耐えうるシステムを構築するのは難しいと考える。」と記載され,提示された基本設計をベースに詳細設計作業を行っているが,開発作業の進捗が芳しくない原因として,「基本設計として作成されている「データベース」が完全でなく当社SEもその対応に困っている。」,「H氏とX社様との意見の合意もなされていない。」,「EEM2ではデータベース設計とは言えず,単なるデータ集合体で設計に大きな支障をきたしている。」,「当社SEは業務分析段階に参加していない為,業務処理を把握出来ていない。」,「業務処理の決定権の責任の所在が不明確である。」と記載されている。
そして,新たな提案として,「今後の開発では,当社(被控訴人)主導により基本設計作業を再度行っていくものとする。」と記載され,末尾には,「今後は,a社(H先生)のご指導も頂きながらではありますが,あくまでも当社(被控訴人)主導による当社開発手法で今後の開発を進めていく方針です。」と記載され,上記方針につき控訴人の同意及び記名押印を求める旨が記載されていたが,控訴人は記名押印をしなかった。
なお,被控訴人代表者は,原審尋問において,仮に,被控訴人において基本設計をやり直す場合には,本件請負契約で定められた被控訴人の業務内容が詳細設計のみであったことから,当然に追加の費用が発生するものと考えていたと供述しており,Gも一般論として同様の証言をしている。
(キ) a社は,遅くとも平成19年3月以降,本件システム開発に関与していない。
なお,a社脱退に至る経緯が専ら控訴人の判断によるものであること(控訴人はこれを争うが,控訴人担当者でBの上司であるCの甲29における発言中には,「結局,H先生,ああいう性格の方でして,しっくりこないということもありましたので,それで途中で降りていただきました」というくだりがある。)や,基本設計書の作成責任者が控訴人のままであって変更がなされていないことは,前記引用の原判決の認定のとおりである。
(ク) 平成19年8月6日,控訴人のK常務,C,Bと,被控訴人代表者,J,Eによる話合いが行われ(乙24の3の記載によれば「トップ会談」),控訴人による検証作業により仕様の確定を図る方針で開発を進めていくこと,仕様確定期限を同月31日とすること,未確定機能については第2次開発の対象とすること,控訴人側の仕様確定の責任者をBとすることが合意された(乙24の3,80,原審被控訴人代表者)。
同年10月19日頃,双方での仕様確定期限を同月31日に延長すること,それ以降に発生する仕様追加・変更分については全て第2次開発対応とすること,確定した仕様書をベースに被控訴人が開発作業を行うことが合意された(乙24の2)。
(ケ) 前記(ク)記載の経過に基づき,平成19年10月12日頃から平成20年1月29日頃にかけて,本件請負契約により被控訴人が作成すべき詳細設計書の中に,控訴人側が順次確定した基本設計事項を,被控訴人担当者が控訴人担当者から聴取して盛り込み,盛り込まれた内容に間違いがないか控訴人に確認を取る方法により,具体的には,製本された仕様書の各プログラムごとに,控訴人の「担当者」欄と「承認」欄に押印を受ける方法により(被控訴人の「担当者」欄と「承認」欄にも押印がなされている。),控訴人と被控訴人との相互承認文書として本件仕様書(乙8の第1分冊ないし第3分冊)が作成されたが,仕様確定の責任者としてのBの押印がなされたプログラムは合計99箇所にのぼった(乙8,原審証人E,同F)。
上記作業の過程において,控訴人からの修正指示は詳細設計書部分にも及ぶことがあり,詳細な赤入れがなされ,修正を繰り返した後に(例えば乙76の4の改訂版としての乙77の3,原審証人B),確定した内容を製本した仕様書にBの承認印が押されていたが(乙8),この点につき,Gは,原審尋問において,「基本的にこういう問題は画面設計書ができた時点で指摘すべきもんであって,プログラムの仕様書段階でこういうことをやられると大変困るんですよね。」と証言している。
(コ) 控訴人は,被控訴人に対し,平成18年8月31日から平成20年2月29日までの間に,請負代金のうち合計6835万5000円を支払った。
なお,ハードウェア関係は平成18年9月頃に,本件ハンディ契約関係は平成19年7月頃に,いずれも納入済みであった(前記引用の原判決の前提事実)。
(サ) 控訴人は,平成20年3月初めころまでの間に,「システムテスト障害・要望一覧表」と題する書面により,本件システムに延べ982項目の瑕疵(欠陥)があると主張し,そのうちアプリケーションエラーとの主張が146項目,仕様の追加・変更要望事項が159項目であったところ(甲14の1,46),この時期に上記のとおりの仕様の追加・要望事項が出されている点に関連して,Gは,原審尋問において,「基本的には異常だと思います。」,「基本的に言ったら何でもやってくれるだろうという話でどうもやってるところもあるんじゃないか,費用のことを考えればそんなむやみにですね,出す問題じゃないと私は思いますけど。」,「詳細設計の段階で新たな要求をぼんぼん出すということはあり得ない話です。」,「ペナルティもんですね。」などと証言している。
(シ) 前記(サ)で指摘された項目(甲14の1,46)については,障害と要望(仕様追加・変更)が混在していたところ,上記認定のとおり,平成19年10月31日が最終の仕様確定期限であって,それ以降に発生する仕様追加・変更分については全て第2次開発対応とすること(したがって別契約かつ別代金となること)が合意されていたことから,控訴人と被控訴人とは,本件請負契約内で修正すべき「障害」と,第2次開発で対応すべき「要望」とに振り分ける作業に着手していくことになり,これに多大な時間を要することとなった(原審証人E,同F)。
控訴人と被控訴人とは,本来であれば「要望」として第2次開発で対応すべき19項目について,優先して開発する必要があるとして,これをA区分として区別することとし,平成20年7月23日,本件請負契約とは別に,本件A区分契約を締結するとともに(甲20,乙9,59),本件請負契約について,成果物の納入期限を同年8月29日とすること等を定めた覚書(甲5)を取り交わした。
(ス) 平成20年8月29日,本件第1次成果物(乙20)が提出され,同年9月1日から同月3日にかけて本件受入テストが実施されたが,被控訴人がバージョン違いのものを提出したほか,控訴人が,予定されていたシナリオとは異なり,通常の業務フローであれば終盤に利用される原価管理機能からテストを行ったことや,その際に原価管理機能を作動させる前提を欠いたデータ(単位に空欄があるデータ)が使用されていたこと等もあって,アプリケーションエラーが出現するなどした(乙81,原審証人F,同E)。
本件受入テストの結果を受けて,控訴人は,「納品確認問題点」と題する書面(甲14の2)を作成し,20箇所の問題点を指摘したが,アプリケーションエラーと記載されたのは4箇所にとどまっていた。これに対する被控訴人の分析結果(乙26)によれば,「障害」として同年10月23日までの間に被控訴人において対応済みのものは6箇所にとどまり,その余は,本件仕様書どおりのものが12箇所,指摘事項の再現がなかったものが2箇所となっていた。
(セ) 平成20年9月5日,C及びBらと被控訴人代表者及びEとは,本件受入テストの結果をふまえ協議した。その際,Cは,本件第1次成果物が不合格であると伝えるとともに,プロジェクトマネージャーのEの交替を要求し,被控訴人代表者は,「申し訳ございません。もう,おっしゃるとおりで,あの,不備しかない。」等と発言したが,他方で,Cは,「うちは最低に動くシステムでいいんですよ。」,「大体のことはいけていますよね。」,「新たなものを追加してくださいというのはないんです」と発言し,Bも,「追加があればそれは当然,また別にお金の話とかいうふうにもなっていくとは思いますけども。でまあ,あの,ステップを踏んで,こう,完成に近づけたらなと。」と発言しており(甲27),Bは,原審尋問においても,このときは直して使っていくという認識であったと証言している。
(ソ) 前記(セ)の要望を受けて,平成20年9月8日から被控訴人のプロジェクトマネージャーになったGは,第2次開発を含めた本件システムの開発が頓挫したまま終わることや,今後も下流工程から見て控訴人からいろいろな要望や変更が出てくることを避けるため,本件仕様書をもとにして,下流から上流に遡るような方法で上流工程から整理し直すことを考え(但し,本件仕様書における仕様の変更はしていない。),もともと本件請負契約の請負代金に基本設計分が含まれていないことも考慮し,平成20年9月18日,Cに対し,本来2000万円くらいかかるが1000万円だけでも負担してもらえないかと持ちかけた上,被控訴人代表者に対し,本件外部設計書の作成を進言し,Gが中心となって,被控訴人において,同年10月から12月にかけて本件外部設計書(乙47の2分冊)を作成した(原審証人G,同F,原審被控訴人代表者)。
外部設計書の冒頭の「はじめに」には,「外部設計書の位置づけ」として,「外部設計工程の成果物として,発注者視点の外部設計書の必要性を認識し,発注者の理解容易性を促進する重要な伝達手段として作成する。」と記載され,「発注者視点の目的」として,「発注者と開発者が「目標とする情報システム像」を共有できること。発注者と開発者が外部設計内容を理解し,業務要件との不整合を発見し,是正結果の確認ができること。」と記載されている(乙47の第1分冊の9頁)。
(タ) 控訴人と被控訴人とは,前記(シ)記載のとおり,前記(サ)で指摘された項目(甲14の1,46)につき,本件請負契約内で修正すべき「障害」と,第2次開発で対応すべき「要望」とへの振分け作業を行っていたところ,控訴人は,平成20年10月17日から同年11月14日にかけて,被控訴人に対し,第2次開発の内容の検証と障害報告も兼ねて,上記振分け作業の一環として,障害要望一覧表を送信し,被控訴人はこれを検討して修正して送信するという作業を繰り返していた(乙48の1ないし11)。
この間の同年10月20日,C及びBらとGらとの打合せにおいて,上記障害要望一覧表について,双方の意見のすり合わせが完了し,打合せが行われた後に,マスタスケジュールを再度作成することが合意された(甲53の2)。
Gは,原審尋問において,このマスタスケジュールにつき,「基本的にそのときの作業の継続のマスタスケジュールじゃない,私が入って外部設計を着手しようという以降のマスタスケジュール」であると証言している。
(チ) 平成20年10月23日,被控訴人は,控訴人に対し,本件最終成果物(乙32)を,同日付けメール送信により提出した(乙46の2)。
(ツ) 平成20年11月17日午後6時03分にGから被控訴人代表者らに送信されたメール(乙10)には,同日,Gにおいて,C及びBとの間で,前記認定事実によれば第2次開発で対応すべきところの,機能追加,仕様変更に関わる控訴人の要望事項について,その費用負担などを話し合い,控訴人に対し,プログラム開発費用4000万円のうち2000万円の負担を求めた(合計3000万円)が,1000万円の負担,すなわち合計2000万円しか負担できないと言われたことが記載されており,本件外部設計書作成費用とみられる1000万円を控訴人が負担することについては,双方の意見のくい違いはみられない。
また,上記メールには,Gの試算として第2次開発に約1億円の費用が必要であるから,仮に,控訴人が上記3000万円を負担しても,被控訴人において7000万円の費用が必要となること,Cから,上記話合いの終了後,被控訴人要求費用を支出して開発をする考えはないと伝えられるとともに,控訴人の常務及び社長の指示により,開発を打ち切ることについての被控訴人としての回答を本日中に求められたことが記載されている。
(テ) 前記(ツ)と同日である同月17日の午後6時09分,被控訴人担当者F(以下「F」という。)は,控訴人プロジェクトメンバーに対し,前記(タ)記載のやり取りにおける控訴人からの同月14日送信の障害要望一覧表(乙48の11)についての打合せ結果を反映した1054項目に及ぶ障害要望一覧表(甲45)を送信している(甲36)。
(ト) 平成20年11月20日,被控訴人代表者ら(但し,Gを除く。)が控訴人を訪れ,C及びBらと話し合った。
前記(ツ)記載の被控訴人からの正式な回答の有無及びその内容につき双方に認識のくい違いのあることが議論された後,Cは,今,被控訴人に「投げられると」困ると言い,これから他のベンダーに頼むよりも,Gなどこれまでのメンバーの知恵を借りたいので協力してほしいと発言しつつ,他方で,被控訴人に対する損害賠償請求も視野に置きながら,被控訴人からの人的支援その他につき話合いをしたい旨を申し向けた。これに対し,被控訴人代表者は,受領した請負代金の倍以上の金額を投入して開発に携わってきたことを強調しながら,「2年間やってきまして,ほんとに最後までいきたいんです。ただ自分達の能力のなさというか,残念ながらその決断をしなければならないと思っています。」と述べており,本件システム開発への強い意欲を示しつつも,最終的には,本件システム開発からの撤退を表明した(甲28)。
被控訴人代表者は,いったん帰社し,再度,控訴人を訪れ,Gらの出向ないし転籍その他についての話合いを続けることを約束した(甲30)。
(ナ) 被控訴人は,控訴人の依頼に基づき,本件外部設計書をもとにして,被控訴人の後継のベンダーのRFPとして利用されることを念頭に置いて,平成20年11月25日から本件RFP②(乙30)の作成作業を開始し,同年12月12日,これを完成させて,控訴人に提出した(原審証人F,同G,弁論の全趣旨)。
(ニ) 控訴人は,平成20年12月8日,被控訴人に対し,弁済契約書案及び出向契約書案(甲15の1・2)を送付し,被控訴人は,同月12日,その修正案(甲16の1・2)を送付した。
(ヌ) 平成21年1月6日,C及びBらと被控訴人代表者との間で,人的支援を含めた清算協議が行われたが,折り合いがつかず,協議続行となった。なお,このとき,Cから,全権委任しているGにおいて,新しい業者を選定するところまでこぎつけたとの発言がなされており(甲29),既に本件RFP②が活用されていることが窺われる。
(ネ) その後,控訴人と被控訴人との間の交渉は決裂し,被控訴人が完全に撤退した後,控訴人は,平成21年3月頃,株式会社富士通ビジネスシステムに対し,本件RFP②に基づく経営情報システムを発注し,平成22年4月頃から,同社開発のシステムを導入している(弁論の全趣旨)。
(ノ) 本件提訴後の平成23年9月21日の進行協議期日において,本件最終成果物の動作確認が行われたが,アプリケーションエラーは現れなかった(乙53の1ないし3)。
ウ 本件仕事の内容及びその完成の有無について
(ア) 以上の事実によれば,本件システムの開発作業については,当初は控訴人がコンサルタント契約を締結していたa社提唱の理論に基づくシステム開発が予定されており,本件請負契約は,主としてa社作成に係る本件控訴人提供資料を基本設計として,被控訴人において下流工程である詳細設計のみを担当する内容のものであって,その作業内容(基準となる必要機能数200機能)等をふまえて請負代金額が定められていたにもかかわらず,専ら控訴人の判断に基づく経緯によりa社が脱退してしまい,しかも,本件控訴人提供資料が基本設計書としての性能を備えておらず,被控訴人がこのことを控訴人に対して指摘した上で,改めて被控訴人において基本設計作業から行うと提案するも,控訴人がこれを受け入れなかっただけでなく,その後も,基本設計書の作成責任者が控訴人のままであって変更がなされない状態において,控訴人と被控訴人との話合いにより,詳細設計書の中に基本設計をビルトインしていくというイレギュラーな方法によることとなり,平成19年10月12日頃から平成20年1月29日頃までの間に,被控訴人において,控訴人からの詳細な修正指示に対応しつつ,合計99箇所の各プログラムごとに,控訴人の仕様確定の責任者と指定されたBの承認印を得ながら,相互承認文書としての本件仕様書(乙8の3分冊)を作成するに至ったことが認められるとともに,最終的な仕様確定期限は平成19年10月31日とされ,それ以降の仕様の追加・変更(要望)事項については,本件A区分契約の対象である19項目を除き,全てが第2次開発の対象とされること,すなわち別契約とされることが合意されたことが認められる。
(イ) 以上によれば,前記引用の原判決の認定及び判断のとおり,本件仕事の内容は,本件仕様書に定められた仕様に従って詳細設計より下流工程にある作業を行うことであり,被控訴人が本件仕事を完成したといえるか否かは,本件仕様書の内容に従って開発行為(プログラミング)を行ったといえるか否かで判断すべきである。
そして,前記引用の原判決の認定及び判断のとおり,①平成20年9月1日から同月3日にかけて実施された本件第1次成果物(乙20)についての本件受入テストの際にアプリケーションエラーが出現したのは,控訴人が,予定されていたシナリオとは異なり,通常の業務フローであれば終盤に利用される原価管理機能からテストを行ったことや,その際に原価管理機能を作動させる前提を欠いたデータ(単位に空欄があるデータ)が使用されていたこと(乙81,証人F,証人E)等に起因するものにすぎず,このことは,本件提訴後の平成23年9月21日の進行協議期日における本件最終成果物の動作確認において,アプリケーションエラーが起こらなかったこと(乙53の1ないし3)からも裏付けられること,②本件受入テストはシステムテストの段階にあるから,仕様の一部に適合しないプログラミングを行った結果生じたプログラムミスであっても,軽微な修正で済むのであれば,原則として,保守契約上のメンテナンスや瑕疵修補の問題として処理されるべきであるところ,本件システムが既成のシステムを利用しないオーダーメードのものであって,前記のとおりの特殊な経緯(詳細設計のみが契約内容である被控訴人において,別料金により基本設計を行う提案も控訴人に受け入れられず,基本設計がないに等しい状態で本件仕様書を作成せざるを得なかったこと等)により作成されたものであることや,検収後にシステムを本稼働させる中で発見せざるを得ないプログラムミスもあること等からすれば,本件仕事が完成しているとはいえないと評価するためには,「本件仕様書の記載に明らかに反し,軽微で容易に改修できるものではないような,システム全体の見直しを行わなければならないほどの欠陥であると認められるようなプログラムミス」が存在しなければならないと解されること,③被控訴人が控訴人に対し平成20年10月23日に提出した本件最終成果物(乙32)について,控訴人が瑕疵であると主張する瑕疵一覧表記載の指摘事項は,いずれも前記②の要件に照らし,本件仕事の完成を妨げるような瑕疵(欠陥)ではないことの,以上の①ないし③に,前記引用の原判決における認定事実及び前記イ記載の認定事実を併せ考慮すると,本件請負契約において被控訴人は本件仕様書の内容に従って開発行為(プログラミング)を行ったものと認められ,平成20年10月23日の被控訴人の控訴人に対する本件最終成果物(乙32)の提出(乙46の2)により,本件仕事は完成しており,本件請負契約上の被控訴人の債務は履行されているものと認められる。
エ 控訴人の補充主張の検討
(ア) 控訴人は,「本件システムが完成していない」根拠として,主張①ないし⑫(前記第2の3(1)ア(ア)ないし(シ)記載)のとおり主張するが,そもそも,本件請負契約上の被控訴人の債務不履行の有無を判断するにあたっては,本件請負契約に基づき被控訴人が履行すべき「本件仕事」の内容及びその完成の有無により判断すべきであることは,前記アにおいて説示したとおりであるから,控訴人の上記主張はその前提を欠くものである。
(イ) そこで,控訴人の上記主張が,「本件仕事」の未完成を主張しているものと善解して,以下検討する。
a 控訴人の主張①②⑧について
控訴人は,被控訴人において,控訴人作成の弁済契約書等案に対する修正や逆提案を行っていたことや,本件RFP②の作成について無償で協力していることからすれば,被控訴人は,本件システム開発の失敗の責任が被控訴人にあり控訴人に対し損害賠償責任を負うことを認めていたのであって,このことは,録音された被控訴人代表者の発言からも明確に裏付けられると主張する。
まず,被控訴人代表者の発言内容について検討すると,前記引用の原判決の認定及び判断のとおり,本件仕事の完成の有無は,その客観的な作業内容により判断されるべきであって,被控訴人代表者の発言内容によって左右されるものではない。そして,前記イ記載の認定事実及び被控訴人代表者の原審供述によれば,被控訴人が,既に控訴人から受領した請負代金の倍以上の金額を投入しており,控訴人の依頼によりa社に支払った720万円も回収しなければならない状況にあったこと,平成20年9月5日の段階では,その協議内容からすれば控訴人も被控訴人との契約関係を続ける前提であったとみられること,被控訴人代表者は,同年11月20日の段階においても,第2次開発を念頭に置いて,本件システム開発に関与していくことにこだわっていたこと,撤退を表明した後の清算協議である平成21年1月6日の段階でも,人的支援等により少しでも被控訴人の損失を抑えようとしていたことが認められ,以上によれば,被控訴人代表者は,別契約で別料金となる第2次開発を請け負うことにより,撤退表明後は人的支援等により,被控訴人の上記損失を少しでも回収することを主な目的として,控訴人の抗議内容に同調したり謝罪を伴う発言をしていたにすぎないとも考えられるから,被控訴人代表者の発言内容のみをもって,直ちに,本件仕事が未完成であることの法的責任を認めたことになるものではない。
また,弁済契約書案等のやり取りについては,被控訴人が本件システム開発からの撤退を表明した後のことであって,人的支援等がその内容に含まれているところ,Gが,原審尋問において,被控訴人代表者からの具体的な指示がない段階において,控訴人との間の問題が損害賠償問題に発展する前に丸く収めるために,自らの考えで動き,控訴人が次期のベンダーを決めた際には,被控訴人が控訴人の立場で人的支援をすることを,返金とのバーターとして控訴人に提案したと証言していること,平成20年11月20日の会話の内容も,Gのこのような動きがあったことにより,Cから被控訴人代表者に対し,Gを中心とする人的支援が提案されているとみられること,被控訴人代表者も前記のとおりの思惑があったと考えられることからすれば,上記と同様に,法的責任を認めたことを示すものではない。
また,本件RFP②については,後記(2)のア記載のとおり,無償で作成されたものではないから,同様に理由とならない。
よって,控訴人の上記主張はいずれも採用できない。
b 控訴人の主張③について
控訴人は,被控訴人において,基本設計である本件外部設計書の作成作業について,何ら異議を述べることなく行っているから,本件仕事は未完成であると主張する。
しかし,本件外部設計書の作成に至る経緯は,前記イの(ソ)において認定したとおりであり,第2次開発を念頭に置き,今後の控訴人からの要望や変更に対応するためのものであるから,本件仕事の完成の有無を左右せず,控訴人の上記主張は採用できない。
c 控訴人の主張④について
控訴人は,被控訴人において,本件システムの最終納期である平成20年8月29日を大幅に徒過した同年10月20日あるいはそれ以降の段階においても,不具合等の振分け作業を行っているほか,マスタスケジュールからの再度作成を表明していたから,本件仕事は未完成であると主張する。
しかし,前記イの(タ)で認定したとおり,マスタスケジュール作成の合意は,控訴人と被控訴人との間で行っていた,本件請負契約内で修正すべき「障害」と,第2次開発で対応すべき「要望」とへの振分け作業の一環としての,障害要望一覧表の送信と検討の繰り返し作業中になされていること,上記合意の3日後に本件最終成果物が納品されていることからすれば,上記マスタスケジュール作成の合意は,第2次開発で対応すべき「要望」分についてのものであると認められ,同認定は,前記イの(タ)で記載したGの原審における証言内容にも沿うものである。
したがって,控訴人の上記主張は,「本件仕事」の完成の有無を左右せず,採用できない。
d 控訴人の主張⑤について
控訴人は,本件システム開発につき辞退することを申し入れてこれを打ち切ったのは被控訴人であり,被控訴人は,本件訴訟に至る控訴人に対し未払請負代金請求をしてきたことはなく,かえって,調停手続において,本件システムの開発が完了していないことを認め,控訴人に対し1700万円を支払う旨を提案していたと主張する。
しかし,前記イの(ツ)及び(ト)で認定した事実によれば,平成20年11月17日,CがGに対し,第2次開発にこれ以上の費用を出す考えのないことを通告するとともに,控訴人の常務及び社長の指示により,開発を打ち切ることについての被控訴人としての回答を当日中にするよう求めていたこと,これに対し,被控訴人代表者は,同月20日の話合いにおいて,G証言からすれば撤退を覚悟しつつも,控訴人に対しては,第2次開発を念頭に置いて,あくまで本件システム開発に関与していくことを強く要望し,損失を最小限に抑えようとしていたとみられること,しかし,最終的には,費用面で折り合わないことから,正式に撤退を表明したことが認められるところ,以上によれば,上記決裂は,第2次開発における費用負担についての見解の相違による決裂であると認められるから,本件仕事の完成の有無を左右しない。
また,調停手続は,当事者双方の法的主張の当否を判断することなく,当事者双方が譲り合って円満な解決を目指す手続であるから,一定額の提示をしたことや,未払請負代金請求をしなかったことが,本件仕事の完成の有無と無関係であることは明らかである。
よって,控訴人の上記主張は採用できない。
e 控訴人の主張⑥について
控訴人は,被控訴人において,本件請負契約についての覚書(甲5)に定めた納入遅延時の措置に基づき,Gを被控訴人の後任のプロジェクトマネージャーに選任したのであるから,本件仕事は未完成であると主張する。
しかし,前記イの(セ)で認定した事実によれば,被控訴人において,プロジェクトマネージャーをEからGに交替させたのは,本件第1次成果物が不合格であると伝えられた際の控訴人からの要求に基づくものであって,前記aにおけるのと同様の被控訴人代表者の経営判断も働いていると考えられるから,本件仕事の完成を左右せず,控訴人の上記主張は採用できない。
f 控訴人の主張⑦について
控訴人は,被控訴人が平成21年1月に最終的に撤収した後の同年3月,別のベンダーに本件システムに代わる基幹システムの開発を発注しているが,被控訴人は,本件RFP②の作成作業を行うなど,上記新規発注に協力しているから,本件仕事は未完成であると主張する。
しかし,前記イの(セ)で認定したとおり,本件受入テストの後である平成20年9月5日の時点において,Cは,最低に動くシステムでいい,大体のことはいけていると発言し,Bも,新たなものを追加してほしいというのはないと発言しており,被控訴人代表者が本件システム開発からの撤退を表明した平成20年11月20日の時点に至っても,Cは,被控訴人代表者に対し,今「投げられると」困ると言い,これから他のベンダーに頼むよりもGなどこれまでのメンバーの知恵を借りたいので協力してほしいと発言していたのであるから,その後,控訴人が別のベンダーに発注したことは控訴人自身の判断によるものであって,本件仕事の完成の有無とは全く無関係であることが明らかである。
また,本件RFP②は,後記(2)のア記載のとおり,無償で作成されたものではないから,いずれにしても,控訴人の上記主張は採用できない。
g 控訴人の主張⑨について
控訴人は,Gにおいて,被控訴人が開発していたシステムが,バグを潰したらまた新たなバグが発生するというモグラたたきの状態であって,使い物にならず,本件システムは完成していないと証言していると主張する。
しかし,上記は,被控訴人によるGの陳述書(乙83)が提出される前の,控訴人によるGの陳述書(甲50)に記載されている内容であって,Gが上記のような表現で証言をしているわけではないところ,Gは,原審尋問において,甲50の陳述書の記載は,システム開発の「あるべき論」に終始したものであって,契約書に基づくソフトウェアの製造請負の範囲と請負の完了という観点を考慮していないから,裁判所が判断するべき問題ではないかとの証言をしているにとどまる。
したがって,甲50の陳述書の記載やG証言は,本件仕事の完成の有無を左右しないから,控訴人の上記主張は採用できない。
h 控訴人の主張⑩について
(a) 控訴人は,被控訴人が平成20年8月29日に納品した本件第1次成果物(乙20)につき,その中から抽出したテスト成績書抜粋(甲71の1ないし11)によれば,テストの過程においてアプリケーションエラーが多数発見されているにもかかわらず,被控訴人において,これらを放置し何らの改修も行わずに納品しているところ,これらのエラーはいずれも単体プログラムにおける致命的な問題であるから,仮にそれ自体の修正は容易でも,いわゆる「影響度調査」や「横展開作業」を行い,改めて必要な範囲で単体テスト,結合テスト,システムテストを行う必要があると主張し,その根拠として,大和システム株式会社(甲74の2)作成の「検証結果報告書」(甲74の1)並びに株式会社アクセス及び株式会社ファインバス(甲75の2)作成の「甲71号証分析結果報告書」(甲75の1)を提出する。
(b) しかし,甲74の1の報告書作成にあたり控訴人から提供された資料は,本件第1次成果物(乙20),その中から抽出したテスト成績書抜粋(甲71の1ないし11),結合テスト仕様書(甲70の1ないし10),機能情報関連図1枚(甲22),導入スケジュール一覧表1枚(甲68),進捗状況メモ1枚(甲69)だけであって,「本件仕事」の検討の基礎となるべき本件仕様書(乙8)や,瑕疵一覧表における瑕疵の存否の判断基準時である平成20年10月23日に提出された本件最終成果物(乙32)については,資料として提供されておらず,甲75の1の報告書に至っては,甲71のみが提供されているにすぎないから,これらの報告書は,「本件仕事」が本件最終成果物提出時において完成していたかどうかの判断にあたっては,参考にならない書証であるというべきである。
しかも,甲71については,テスト成績書そのものではなく,各種テストが実際に行われたことの証拠となる資料にすぎないところ,本件第1次成果物の提出年月日は同年8月29日であるのに対し,甲71の「ログイン時刻」上の年月日によれば,71の1が同年7月2日付け,71の2が同年5月17日付け,71の3及び5が同年7月16日付け(71の4は書証上不明),71の6が同年5月20日付け,71の7が同月7日付け(71の8は書証上不明),71の9が同年6月7日付け,71の10が同月9日付け,71の11が同月10日付けとなっており,いずれも本件第1次成果物の提出時の約1か月半前から3か月以上前の時点における書証にすぎず,これらをもとに第1次成果物の品質を検討すること自体,意味がないというべきである。
この点につき,控訴人は,甲71で確認されたアプリケーションエラーは,単体プログラムにおける致命的な問題であって,システム開発の初期の段階で重大な問題が生じているといえるから,単に,単体プログラムに生じた個別エラーの修正の問題ではないと主張する。しかし,証拠(乙93の1・2)によれば,甲71で確認されたアプリケーションエラーについては,本件最終成果物において全て改修済みであることが認められるから,控訴人の上記主張は採用できない。
なお,本件受入テストまでに行うべき単体テスト及び結合テストが行われていないとの控訴人の主張について,本件仕事の完成の有無を左右しないことは,前記引用の原判決の認定及び判断のとおりである。
(c) 控訴人は,本件最終成果物が提出された平成20年10月23日までの2か月弱の間に,甲71で確認された問題全てを解決したことはあり得ず,このことは,同年11月17日に被控訴人が控訴人に提出した障害要望一覧表(前記イの(テ)の甲45)において,検討項目1054項目のうち508項目が「PA(被控訴人)対応区分」による「PG(プログラム)修正」と分類されていることからも示されると主張する。
しかし,前記イの(シ)及び(タ)で認定したとおり,控訴人と被控訴人とは,控訴人からの指摘項目につき,本件請負契約内で修正すべき「障害」と,第2次開発で対応すべき「要望」とへの振分け作業を行っており,被控訴人においてプログラム修正により対応することが,直ちに「障害」であることに結びつくものではない。
むしろ,証拠(乙52)によれば,上記の振分けを前提として,「要望」を除外し,残りのさらに未解決の問題のうち,被控訴人において「障害」としての対応を検討していたのは,38項目(原因解析中,改修方針協議待ち,対応作業予定分)のみであることが認められることに加え,控訴人の上記主張は,控訴人が主張する瑕疵を,瑕疵一覧表の40項目としていることとも整合しないというべきであるから,控訴人の上記主張は採用できない。
(d) 控訴人は,異常系テストによる検証が不十分であること,排他処理についてテストが実施されていないに等しい状態にあること,甲5の覚書で約していたITテストやデータベースチューニングによる検証が未完成の状態にあることを主張する。
しかし,証拠(乙86ないし92)によれば,データベースチューニングは実施されており,そのレスポンステストの実施結果も控訴人に報告されていることが認められ,その余の主張は,これまでの認定及び判断に照らし,本件仕事の完成の有無を左右しないから,控訴人の上記主張は採用できない。
i 控訴人の主張⑪について
控訴人は,平成20年7月14日に作成された「導入スケジュール」(甲68)によれば,被控訴人において,作業内容に全く手をつけていないものがあったほか,着手していても進捗率50%以下のものが多数あったと主張する。
しかし,前記hにおける認定及び判断に照らし,本件最終成果物提出の3か月以上前の段階における作業の進捗状況が,本件仕事の完成の有無を左右しないことは明らかであるし,そもそも,前記イの(シ)で認定したとおり,この頃,被控訴人は,控訴人からの大量の指摘項目への対応に追われ,本来の作業以外に,第2次開発対応の要望事項との振分け作業に多くの時間を取られていたほか,A区分を抽出して本件A区分契約を締結することに向けた作業にも従事していたのであるから,以上のような経緯からすれば,上記の進捗状況は専ら控訴人に起因するものといえるのであって,控訴人の上記主張は採用できない。
j 控訴人の主張⑫について
控訴人は,甲5の覚書によれば,成果物の納入後に,リカバリ・バックアップテスト,運用マニュアル等の納品を行うことになっていたところ,本件受入テストにおいて,本件第1次成果物にアプリケーションエラーが多発し全く使い物にならなかったことから,上記作業も実施されていないと主張する。
控訴人は,本件受入テストにおいてアプリケーションエラーが「多発した」と主張するが,前記イの(ス)で認定したとおり,本件受入テストの結果を受けて控訴人から指摘された問題点は20箇所で,アプリケーションエラーは4箇所にとどまっており(甲14の2),しかも,本件仕様書どおり又は再現なしが14箇所,残りの障害6箇所は本件最終成果物までの間に対応済みであったから,「多発した」とは言い難い。また,アプリケーションエラーが出現した原因についても,前記イの(ス)で述べたとおりである。さらに,本件最終成果物の2か月前の時点の本件第1次成果物を基準として,本件仕事の完成の有無を議論するのも相当でない。
したがって,本件受入テストにおけるアプリケーションエラーの出現は,本件仕事の完成の有無を左右しないし,控訴人の主張するマニュアル等の納品等も,本件仕事の完成の有無を左右しないから,控訴人の上記主張は採用できない。
k その余の控訴人の主張は,いずれも,これまでの認定及び判断に照らし,採用できない。
(ウ) 個別の瑕疵について
a 瑕疵一覧表番号6,23,30,33について
(a) 被控訴人は,容器管理については,排他制御が仕様とされていなかったと主張し,本件受入テストの後である平成20年9月4日に,容器管理の担当でない控訴人担当者Oにより作成された「納品確認問題点」(甲14の2)において,「空容器状況登録は排他制御がなく,上書きとなってしまう。」との記載があることが,その根拠であると主張する。
しかし,平成19年9月10日頃の被控訴人から控訴人への同一データの編集頻度についてのヒアリング(甲37の1・2)に対し,控訴人は,容器管理業務について,編集頻度を◎,○,×のうち○と回答していること(甲38),同月20日のBとFらとの打合せにおいて,悲観的排他制御ではなく楽観的排他制御(乙64)を採用することが決定されているが,容器管理を除外する等の記載はみられないこと(甲39),上記甲14の2作成に先立つ平成20年8月29日に提出された本件第1次成果物(乙20)中のテスト成績書のフォルダ内には,「結合テスト仕様書(排他処理・容器)」(甲51)が存在することからすれば,容器処理についても排他制御が仕様となっていたものと認められるから,被控訴人の上記主張は採用できない。
(b) この点につき,控訴人は,排他制御が実装されていないことは重大な瑕疵であると主張し,平成20年11月17日現在の障害要望一覧表(甲45)記載のNo.203,893,973の指摘事項について,同年3月12日時点で確認されていたにもかかわらず,最終納期である同年8月29日納入の本件第1次成果物において,排他制御が導入されていないことは,導入がそれほど難しくないとの被控訴人主張と矛盾すると主張する。
しかし,甲45の「リリース日付」欄によれば,No.203については同月21日の時点において,No.893については同年7月8日の時点において,No.973については同年8月21日の時点において,いずれも改修済みであること,これらについて,控訴人確認欄にはいずれも同年10月28日にOが確認した旨の記載があるが,最終的な控訴人の承認欄が「未確認」となっているにすぎないことが認められるから,控訴人の上記主張はその前提を欠くというべきであるし,前記ウの(イ)で述べたところの「本件仕様書の記載に明らかに反し,軽微で容易に改修できるものではないような,システム全体の見直しを行わなければならないほどの欠陥であると認められるようなプログラムミス」(以下「本件判断基準」という。)とはいえない。
以上によれば,控訴人の上記主張はこれを採用できず,本件仕事が完成しているとの前記認定及び判断を左右しない。
b 瑕疵一覧表番号16について
(a) 控訴人は,甲39の打合せ議事録によれば,後にアクセスした者の操作を禁止することまで求められているから,番号16の指摘事項について,上記仕様に違反していると主張する。
(b) しかし,甲39によれば,1の方法(変更ボタンクリック時にプログラムでロックし,同一データを編集する場合,先にロックした人がデータをつかみ,他の人は編集不可となる。乙64によれば悲観的排他制御)は採用せずに,2の方法(データ登録時,変更ボタンをクリックした時に取得したデータにつき,他の人が先に修正している場合は,メッセージを表示して更新を不可にする。乙64によれば楽観的排他制御)を採用していることが認められるから,控訴人の上記主張は,甲39の記載内容の解釈を誤るものにすぎず,これを採用できない。
c 瑕疵一覧表番号3,14について
控訴人は,番号3,14の指摘事項について縷々主張するが,本件判断基準に照らし,本件仕様書の記載に明らかに反することや,システム全体の見直しが必要となるほどの瑕疵であることについての具体的な主張がないから,前記引用の原判決の認定及び判断を左右しない。
d 瑕疵一覧表番号37について
(a) 控訴人は,番号37の指摘事項について,仕様に反した動作確認を行った結果生じたものではないし,障害要望一覧表(甲45)のNo.1002の「確認日」欄に「10/17」と記載されていることからすれば,乙54により改修されていることもないと主張する。
(b) しかし,上記指摘事項について,仮に,仕様に反した動作確認を行った結果生じたものではなく,本件最終成果物の提出時点において改修済みか否かが不明であったとしても,障害要望一覧表(甲45)のNo.1002の「難易度」欄に「済」と記載されていることや,本件判断基準に照らし,控訴人主張の上記指摘事項が,「本件仕様書の記載に明らかに反し,軽微で容易に改修できるようなものではないような,システム全体の見直しを行わなければならないほどの欠陥であると認められるようなプログラムミス」であると認められるだけの具体的証拠がないから,控訴人の上記主張は採用できない。
e 控訴人が主張するその余の指摘事項については,いずれも改修済み又は改修可能なものであるから,この点についての控訴人の主張は,本件判断基準に照らし採用できず,前記引用の原判決の認定及び判断を左右しない。
(エ) よって,控訴人の補充主張は,いずれも,本件請負契約上の債務が履行されているとの前記認定及び判断を左右するものではないから,採用できない。
オ 以上によれば,被控訴人は本件請負契約に基づく債務を履行しているものと認められ,民法637条の除斥期間経過により本件請負契約の解除を認めることもできないから,控訴人の本訴請求は理由がない。
そして,被控訴人が本件請負契約に基づく債務を履行しているものと認められることからすれば,被控訴人の反訴請求のうち,本件請負契約に基づく請負代金残金1869万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成22年8月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由がある。
(2)  反訴請求における補充主張について
ア 本件RFP②の請負代金請求について
(ア) 被控訴人は,平成20年9月18日,控訴人と被控訴人との間で,本件外部設計書の作成対価として1000万円を支払うことが合意されており,本件外部設計書がそのまま本件RFP②の作成に活用されているから,本件RFP②が作成された当時には,本件RFP②について1000万円を支払う旨の合意が成立しているとして,控訴人には,本件RFP②の作成に係る請負代金1000万円を支払う義務があり,商法512条,民法130条,民法536条2項の観点からも支払義務があると主張する。
これに対し,控訴人は,被控訴人が本件システムの開発を完了させることを停止条件として,本件請負契約に基づく請負代金を1000万円上積みすることを了承したにすぎず,また,控訴人が了承したのは本件外部設計書の作成対価であって,本件RFP②の作成対価ではないから,控訴人に1000万円の支払義務はなく,本件RFP②は被控訴人が無償で作成したものであると主張する。
(イ) 前記(1)のイで認定した事実によれば,以下の事実が認められる。
a 本件RFP②は,控訴人の依頼に基づき,本件外部設計書をもとにして,被控訴人により作成され,平成20年12月12日に控訴人に提出されているが,平成21年1月6日の時点において,控訴人は,本件RFP②を用いて,被控訴人の後継のベンダーを選定しており,後継のベンダーは,本件RFP②をもとにシステムを開発し,控訴人がこれを導入している。
b 本件RFP②のもとになっている本件外部設計書の作成経緯は,以下のとおりである。
すなわち,控訴人の判断によりa社が脱退し,被控訴人による新たな基本設計作成申出も容れられず,控訴人の役割分担である基本設計がないに等しい状態で,双方の合意により,やむを得ず詳細設計書に基本設計をビルトインする方法により本件仕様書が作成され,本件仕様書完成後も,控訴人からの大量の指摘事項が出され,被控訴人において,障害と要望への振分け作業に多くの時間が費やされていたところ,Gにおいて,今後も,控訴人から,下流工程から見た上でのさまざまな仕様の追加・変更の要望が出てくることを避けるため,また,第2次開発を含めた本件システム開発が頓挫したまま終わることを避けるため,本件仕様書をもとにして,仕様の変更をすることなく,下流から上流に遡るような方法で上流工程から整理し直すこととし,発注者と開発者が「目標とする情報システム像」を共有し,外部設計内容を理解し,業務要件との不整合を発見し,是正結果の確認ができることを目的として,作成されたものである。
そして,Gは,その作成対価を2000万円程度と考えていたが,平成20年9月18日,Cに対し,1000万円だけでも負担してもらいたいと依頼した。
c 控訴人が,本件外部設計書の作成対価として1000万円を支払う前提でいたことは,平成20年11月17日午後6時03分にGから被控訴人代表者に送信されたメール(乙10)の記載内容からも認められ,GとCとの間で,第2次開発で負担すべき費用については争いがあったものの,本件外部設計書作成費用とみられる1000万円(この時期において,本件外部設計書作成以外の仕事の費用であることを示す具体的な証拠はない。)については,双方の意見のくい違いがみられない。
d 前記cと同日の午後6時09分にFから控訴人プロジェクトメンバーに送信されたメール(甲36)の内容によれば,被控訴人は,この時点において,障害と要望の振分け作業を含め,第2次開発を行う前提で作業をしている。
平成20年11月20日の話合いにおいて,被控訴人代表者は,第2次開発を念頭に置いて,本件システム開発について何とか最後まで関与していきたいとの強い意欲を示しており,Cも,今,被控訴人に「投げられると」困ると発言し,被控訴人に対する損害賠償請求も視野に置いていることを示しながら,Gなどによる人的支援等を強く求めている。
この5日後である同月25日から,本件外部設計書をもとにして,本件RFP②の作成が開始されている。
(ウ) 以上の事実に加え,前記(1)のイで認定した本件全体の経緯を総合考慮すると,控訴人と被控訴人との間で,本件外部設計書の作成対価として1000万円を支払うことが合意され,その後の経緯により,最終的には,本件RFP②の作成に係る請負代金として,控訴人が被控訴人に対し1000万円を支払う旨の黙示の合意が成立していたものと認められる。
この点につき,本件外部設計書については,本件システムが完成した場合にその作成対価として請負代金を1000万円上乗せすることを約したにすぎないとのCの証言,システムをやり終えた後の成果報酬として1000万円を支払うことを合意したとのGの証言は,これまでの認定及び判断に照らし,上記認定を左右するものではない。
(エ) 以上によれば,被控訴人の反訴請求のうち,本件RFP②作成に係る請負代金1000万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成22年8月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由がある。
イ 本件保守契約に関する請求について
(ア) 債務不履行に基づく損害賠償請求について
a 被控訴人は,平成19年10月頃に控訴人との間で本件保守契約を締結したことを前提として,控訴人による本件システム開発の打切り通告が,控訴人の本件保守契約上の債務不履行であると主張する。
b しかし,本件請負契約の契約書(甲1)の19条では,保守等に関する契約は,別途協議の上締結できるものと定められており,契約書を取り交わすことが前提とされている。
被控訴人は,平成19年10月16日付け「○○プロジェクト リスケについて」と題する被控訴人作成のメモ(乙24の3)中の記載を,契約締結の根拠として主張するが,上記メモは,本件請負契約の仕様確定期限や第2次開発との区切りやその内容等の記載が中心となっており,末尾に,保守契約についての簡単な金額提示と,「一次開発機能納品後,12月より保守契約の締結をお願い致します。」と記載されている,単なる依頼文書にすぎない。
さらに,被控訴人は,仮発注を受ける前の,被控訴人がプレゼンをした際の平成18年5月18日付け資料(乙21)中の,保守契約についての見積記載も,契約締結の根拠になると主張するが,仮発注前の単なる見積りが,契約締結の根拠とならないのは明らかである。
c 他に,控訴人と被控訴人との間で本件保守契約が締結されたことを裏付ける証拠はないから,その余の点を検討するまでもなく,被控訴人の上記主張は採用できない。
(イ) 不法行為に基づく損害賠償請求について
a 被控訴人は,大型のシステム開発にあたっては,ベンダーにおける開発費用(請負代金)の設定に際し,その金額は保守費用との兼ね合いで決せられるのが一般的であるところ,本件保守契約の代金は,本件システム開発における被控訴人の持ち出し分を補填する意味合いを持っており,このことは控訴人と被控訴人との共通認識となっていたから,仮に,本件保守契約が成立していないとしても,控訴人には契約締結上の過失が存在するといえ,被控訴人に対する不法行為が成立すると主張する。
b 前記認定事実によれば,被控訴人において,本件保守契約の締結や,第2次開発による利益を期待して,控訴人からの大量の仕様追加・変更等の要求に対応し,受領した請負代金の倍以上の金額を投入してきたことは窺われるものの,これは被控訴人代表者が経営者としての自らの判断に基づき行ったものであって,上記のとおり,本件請負契約の契約書(甲1)の19条では,保守等に関する契約は,別途協議の上締結できるものと定められており,契約書を取り交わすことが前提とされていたことや,前記で認定した本件の経緯を考慮すると,被控訴人の期待は法的保護に値するとはいえないから,控訴人において,本件保守契約が成立しなかったことにつき,契約締結上の過失があったと認めることはできない。
c 他に,控訴人の行為が不法行為に該当することを認めるに足りる証拠はない。
(ウ) よって,被控訴人の反訴請求のうち,本件保守契約上の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求は,理由がない。
4  結論
(1)  以上によれば,本件仕事は完成しているものと認められるから,被控訴人は本件請負契約に基づく債務を履行しているものと認められ,除斥期間経過により本件請負契約の解除を認めることもできないから,主位的に債務不履行に基づく損害賠償として,予備的に解除に基づく原状回復として,被控訴人に対し,既払額6835万5000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成22年3月16日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人の本訴請求は,理由がないから棄却すべきである。
(2)  被控訴人の反訴請求のうち,以下のア及びイはいずれも理由があるから認容し,ウ及びエはいずれも理由がないから棄却すべきである。
ア 本件請負契約に基づく本件仕事は完成しているものと認められるから,本件請負契約に基づく請負代金残金1869万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成22年8月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める被控訴人の請求については,理由がある。
イ 本件RFP②作成に係る請負代金1000万円及びこれに対する前記アと同じ遅延損害金の支払を求める被控訴人の請求については,控訴人と被控訴人との間の黙示の支払合意が認められ,かつ,本件RFP②は完成しているから,理由がある。
ウ 本件保守契約上の債務不履行又は本件保守契約を締結しなかったことの不法行為に基づく損害賠償としての保守代金3年分相当額3761万3570円及びこれに対する前記アと同じ遅延損害金の支払を求める被控訴人の請求については,本件保守契約上の債務不履行も不法行為も認めることができないから,理由がない。
エ 前記ウの請求に係る弁護士費用400万円及びこれに対する前記アと同じ遅延損害金の支払を求める被控訴人の請求については,前記ウの請求を認めることができないから,理由がない。
(3)  以上によれば,前記(1)及び(2)と同旨の原判決は相当であって,本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 林圭介 裁判官 杉江佳治 裁判官 久末裕子)

 

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