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「成果報酬 営業」に関する裁判例(33)平成27年 2月19日 東京地裁 平24(ワ)6978号 損害賠償等請求事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(33)平成27年 2月19日 東京地裁 平24(ワ)6978号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成27年 2月19日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)6978号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2015WLJPCA02198007

要旨
◆原告会社及びその代表取締役である原告X1が、被告会社及びその代表取締役である被告Y1に対し、主位的に、被告Y1は、原告X1が株式購入のために送金した本件金員1の一部、原告会社がコンサルティング業務の前払費用として交付した本件金員2及び原告X1が預託した本件金員3を横領したなどと主張して、不法行為等に基づき、損害賠償を求め、予備的に、本件コンサルティング業務に係る契約関係は終了し、また、本件金員3に係る預託契約も返還時期を経過したなどと主張して、本件金員2及び本件金員3の返還を求めた事案において、我が国の裁判所が裁判管轄権を有するとした上で、本件金員1ないし本件金員3の支払を受けたのは訴外会社であり、同社及び被告会社の法人格を否認して被告Y1と同一視することはできないことなどから、横領に係る原告らの主張を否定して、主位的請求を棄却する一方、本件金員2について、実質的に見て被告会社に帰属していると認めるなどして、同金員に係る被告会社の原告会社に対する不当利得を認定し、予備的請求を一部認容した事例

参照条文
民法703条
民法704条
民法709条
民法710条
民法715条
会社法350条

裁判年月日  平成27年 2月19日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)6978号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2015WLJPCA02198007

熊本市〈以下省略〉
原告 重光産業株式会社
同代表者代表取締役 X1
熊本市〈以下省略〉
原告 X1
上記両名訴訟代理人弁護士 大鶴基成
同 押久保公人
同訴訟復代理人弁護士 室之園大介
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Eternal Pacific Partners Japan株式会社
同代表者代表取締役 Y1
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 Y1
上記両名訴訟代理人弁護士 高木彰臣

 

 

主文

1  原告X1の請求をいずれも棄却する。
2  原告重光産業株式会社の被告Eternal Pacific Partners Japan株式会社に対する主位的請求及び被告Y1に対する請求をいずれも棄却する。
3  被告Eternal Pacific Partners Japan株式会社は,原告重光産業株式会社に対し,9628万8000円及びこれに対する平成23年9月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4  訴訟費用は,原告X1に生じた費用,被告Eternal Pacific Partners Japan株式会社に生じた費用の4分の3及び被告Y1に生じた費用の4分の3は,同原告の負担とし,原告重光産業株式会社に生じた費用の2分の1と被告Eternal Pacific Partners Japan株式会社に生じた費用の4分の1は,これを7分し,その6を同被告の負担とし,その余を同原告の負担とし,同原告に生じたその余の費用と被告Y1に生じた費用の4分の1は,同原告の負担とする。
5  この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  主位的請求
(1)  被告らは,原告X1(以下「原告X1」という。)に対し,連帯して,2億9204万円及びうち1億1000万円に対する平成20年8月31日から,うち1億8204万円に対する平成23年9月6日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  被告らは,原告重光産業株式会社(以下「原告会社」という。)に対し,連帯して,1億1128万8000円及びこれに対する平成23年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  予備的請求
(1)  被告らは,原告X1に対し,連帯して,1億5604万円及びこれに対する平成23年9月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  被告らは,原告会社に対し,連帯して,9628万8000円及びこれに対する平成23年9月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,ラーメン店のフランチャイズ展開等を目的とする原告会社及びその代表取締役である原告X1が,主位的には,経営コンサルティング業務等を目的とする被告Eternal Pacific Partners Japan株式会社(以下「被告会社」という。)の代表取締役である被告Y1が①原告X1が株式購入のために送金した金員の一部(1億円),②原告会社がコンサルティング業務の前払費用として交付した金員(960万香港ドル)及び③原告X1が預託した金員(200万米ドル)を横領したなどと主張し,被告Y1に対しては不法行為(民法709条),被告会社に対しては会社法350条(代表者の行為についての株式会社の責任)又は民法715条(使用者責任)に基づき,損害賠償を求め,予備的には,上記コンサルティング業務に係る契約関係は終了し,上記預託金に係る預託契約も返還時期を経過したなどと主張して,被告らに対し,不当利得返還請求(民法704条前段)ないし預託金返還請求として,上記②及び③の返還を求める(上記①及び③に関しては原告X1が,上記②に関しては原告会社が,それぞれ被告らに対して連帯支払を求める)事案である。
1  前提事実(当事者間に争いがない事実のほか,掲記した証拠及び弁論の全趣旨によって認められる。)
(1)  当事者
ア 原告会社は「○○」という名称のラーメン店のフランチャイズ展開等を目的とする株式会社であり,原告X1は原告会社の代表取締役である。原告会社は,中国の合弁会社であるa社(以下「a社」という。)に出資している。
(甲1,94,原告X1本人)
イ 被告会社は,有価証券等の取得及び保有,経営コンサルティング業務等を目的とする株式会社であり,以前の商号は「株式会社北海道千日」であったが,平成23年9月1日,当時「Eternal Pacific Partners Japan株式会社」との商号を有していた株式会社(以下「旧EPPJ」という。)を吸収合併するとともに,現在の商号に変更した。
被告Y1は,平成21年3月1日,旧EPPJ(当時の商号は「EPPJAPAN株式会社」)の代表取締役に就任し,上記の吸収合併の後は,被告会社の代表取締役を務めている(以下,「被告会社」の略記には旧EPPJを含むものとする。)。
(甲2,65,66,被告Y1本人)
(2)  本件訴訟に至る経緯
ア 平成19年3月31日,a社が香港の株式市場に上場し,原告X1は,その創業者として約3億円の利益を得た。その頃,原告X1は被告Y1と知り合った。
(甲94,乙15,原告X1本人,被告Y1本人)
イ 平成19年から平成20年にかけて,被告Y1は,原告X1に対し,生鮮食品の輸出入等を目的とする株式会社トリプルエーグループ(以下「AAA」という。)がロンドンの株式市場に上場する予定であることを伝え,同社の株式(以下「AAA株」という。)に投資することを勧めた。これを受けて,原告X1はAAA株を保有することを決め,平成20年8月14日,AAA株4000株の購入資金として,同原告が個人資産の管理会社として香港に設立していたWealth Corner Limited(以下「Wealth社」という。)の名義で,被告Y1が業務執行権限を有する取締役(Managing Director)を務める香港法人であるEternal Pacific Partners Hong Kong Limited(以下「EPP香港」という。)の預金口座に2340万香港ドルを送金した(この送金に係る金員を,以下「本件金員1」という。)。本件金員1の額は,AAA株を1株8万円で4000株取得することを前提として算出されたものであり,被告Y1はその旨を原告X1に説明していた。
また,同年8月13日付けで,Wealth社とEPP香港を契約当事者として,EPP香港がWealth社の投資を管理する旨の投資管理契約書が交わされている。
シンガポールの法人であるEternal Pacific Partners Pte Ltd(以下「EPPPte」という。)は,EPP香港から委託を受け,新株予約権を行使してAAAから3125株の株式の割当てを受けるとともに,他の株主から400株を購入して,従来から保有していたAAA株と併せて4000株を原告X1のために保有する扱いとした。EPPPteは,AAAから上記割当てを受ける際,2500株分として1億円(1株4万円),625株分として5000万円(1株8万円)の合計1億5000万円を払い込んだ。
しかしながら,財務状況の悪化等の理由により,AAAはロンドンの株式市場に上場することができなかった。
(甲10の1・2,甲12,13,15,50,61,71,94,乙1の1・2,乙3の1・2,乙15,原告X1本人,被告Y1本人)
ウ その後,被告Y1は,原告X1に対し,原告会社を国内の株式市場に上場させることを提案したが,平成22年7月頃に行われたデュー・ディリジェンスの結果,原告会社の事業規模では単独での上場は難しいとの判断に至った。そこで,被告Y1は,原告X1に対し,原告会社の持株会社としてb株式会社を設立し,AAAの業績が好調である部門を組み入れた上で上場することを提案し,そのためには,原告X1がAAA株5000株を引き受けて,AAAの代表取締役であるAや被告会社が保有するAAA株と併せて持ち株比率を3分の2以上にした方が良いと述べた。これを受けて,原告X1は,AAA株を引き受けることを決め,同年12月29日,AAA株5000株を引き受ける資金として,Wealth社の名義で,AAAの預金口座に5000万円を送金した。
(甲11の1・2,甲12,94,乙15,原告X1本人,被告Y1本人)
エ 以下の経過を経て,平成23年3月30日,原告会社は,同原告の上場準備のためのコンサルティング業務(以下「本件業務」という。)の費用ないし報酬(その内容については,後記のとおり当事者間に争いがある。)の名目で,みずほ銀行(香港支店)を支払人,EPP香港を持参人とする額面960万香港ドルの小切手を振り出した。この小切手は,同月31日換金されている(この換金に係る960万香港ドルを,以下「本件金員2」という。)。
(ア) 同年2月22日,被告Y1は,原告X1に対して送信したメールの中で,同年3月から原告会社の上場に向けた業務を本格的に開始するに当たり,正式な契約を締結する必要がある旨を伝えた。
(イ) 同年2月23日,被告Y1は,原告X1に対し,「税務上の対策について」と題する資料(以下「本件税務対策資料」という。)を送付した。本件税務対策資料では,原告会社の上場までに2~3年を要し,この間の上場準備のためのコンサルティング業務に関する費用は概算で1億0200万円が見込まれるが,原告会社の今期の利益が相当額に上るため,上記費用を今期に前払することによって節税を実現すること,実際の業務に伴い発生した費用を計算して精算し,余剰分については返還することが提案されている。
(ウ) 同年2月28日,被告Y1は,原告X1に対し,「基本合意書」と題する書面(以下「本件基本合意書」という。)を送付した。本件基本合意書には,被告会社が原告会社の業務支援を請け負う意向を有しており,原告会社もそれを了承していること,同年3月末までに報酬や業務支援の内容を定める契約について双方協議した上,書面で契約を締結すること,報酬は成果報酬方式とするが,業務に関する諸経費は原告会社の負担とすることなどについて,原告会社と被告会社が合意した旨の記載がある。
(エ) 同年3月29日,被告Y1は,原告会社に対し,経営コンサルティング契約の英文契約書(以下「本件コンサルティング契約書」という。)を送付した。本件コンサルティング契約書は,原告会社とEPP香港を契約当事者とし,平成22年7月1日付けで両社間に経営コンサルティング契約が締結されるとされており,EPP香港が行うコンサルティング業務の内容,報酬(決済手数料360万香港ドルと1か月当たり50万香港ドルの報酬),現金支出費用(原告会社が負担する。),契約期間(平成22年7月1日から1年間。ただし,自動的に延長される。)などが定められている。
原告X1が本件コンサルティング契約書に署名したが,原告会社のB総務部長は,後記オのとおり原告会社の顧問の公認会計士から指摘を受けたことから,原告X1の署名のある本件コンサルティング契約書を被告Y1に返送しなかった。
(以上,甲4,5の1・2,甲6の1の1・2,甲6の2の1・2,甲88の1・2,甲89,94,98,99,乙15,原告X1本人,被告Y1本人)
オ 原告X1は,平成23年6月13日頃,原告会社の顧問の公認会計士から,1年間で1億0200万円というコンサルティング報酬は高額であり,税務調査で架空の契約と言われかねないとの指摘を受けた。これを受けて,原告X1は,被告Y1に対し,本件金員2を返還してほしい旨を伝えた。これに対し,被告Y1は,すぐに返還することはできない旨回答した上,200万米ドルを一時的に預けてくれれば,その配当金の名目で何回かに分けて返還するので,200万米ドルをEPP香港の預金口座に送金してほしいと述べた。これを受けて,原告X1は,EPP香港を契約当事者とし,EPP香港がWealth社の200万米ドルの投資を管理する旨が定められた同月21日付けの投資管理契約の英文契約書(以下「本件投資管理契約書」という。)に署名し,同月22日,Wealth社名義で,EPP香港の預金口座に200万米ドルを送金した(この送金に係る金員を,以下「本件金員3」という。)。本件金員3は,原告X1が,同原告が保有するa社の株式を担保にして,ゴールドマン・サックス証券株式会社から借り入れたものであった。
(甲7の1・2,甲94,乙2の1・2,乙15,原告X1本人,被告Y1本人)
カ 同年8月,a社の株価の下落により同株式の担保価値が下がり,原告X1は,ゴールドマン・サックス証券から200万米ドルの返還を求められたので,被告Y1に対し,本件金員3を返還するよう求めたところ,同被告は,同月末に返還する旨回答した。しかし,被告Y1は,その返還をしないまま,同年9月7日,原告X1に対し,一連の案件について弁護士に交渉を依頼したので,今後は同弁護士を通じて解決したいと考えているという内容のメールを送信した。
(甲8,90,94,乙15,原告X1本人,被告Y1本人)
(3)  その後の経緯
ア 原告らは,平成23年12月15日,本件訴訟を提起した(記録上明らかな事実)。
イ 被告Y1は,平成24年3月28日,本件訴訟の被告ら代理人を通じて,本件訴訟の原告ら代理人に対し,被告会社の代表取締役の名前で,今後の対応等が記載された説明資料(以下「本件説明資料」という。)を送付した。同資料には,本件金員1については,他の機関投資家と同じ条件でAAA株4000株の出資に充てたものであり,時価での解約には応じること,本件金員2については,原告会社のための各種コンサルティング業務に要した費用を精算した後で残金があれば返金する方向で考えていること,本件金員3についてはWealth社からの預り金と認識しているが,現在進行中の案件が全て解決したら精算,返金する方向で考えていることなどが記載されている。
(甲92)
2  主たる争点及び当事者の主張
(1)  裁判管轄権の有無(本案前の主張)
(被告らの主張)
本件訴訟で対象となっている契約は,本来,原告らと香港を本店所在地とするEPP香港との間で締結されたものであるが,被告会社とEPP香港は親子会社の関係になく,株の相互持合もしていないのであって,完全な別会社である。したがって,原告らは,EPP香港を被告として訴訟を提起すべきであるが,被告Y1による不法行為という体裁の主張を行うことで我が国の裁判所に裁判管轄権が存在するかのような状況を作出しているから,本件訴えは我が国の裁判所に裁判管轄権の存在しない不適法な訴えとして却下されるべきである。
(原告らの主張)
被告会社とEPP香港は,共に代表者が被告Y1であり,同じ目的の法人を日本と香港に設立したものにすぎず,日本国内では,被告会社が主体となって取引を行っているのであって,被告Y1も日本国内では被告会社の代表者として行動している。被告らは,原告らがEPP香港と契約したことにして,EPP香港の口座に送金させることにより,あらかじめ計画的に民事訴訟や刑事訴追を回避する方法をとっていたのであり,被告らこそ我が国の裁判所に裁判管轄権が存在しないような状況を作出していたのである。したがって,本件訴えにつき裁判管轄権が存在しないとの被告らの主張は失当である。
(2)  本件金員1によるAAA株の取得についての不法行為の成否(主位的請求)
(原告らの主張)
ア 原告X1は,被告Y1に対し,本件金員1を投資運用資金として預託したのであるが,同被告は,平成20年8月20日頃,このうち1億円を用いてEPPPteの名義でAAA株2500株を1株4万円で取得したにもかかわらず,同月下旬頃,この事実を同原告に対して明らかにせず,本件金員1の全額を用いてAAA株4000株を取得した旨説明した。すなわち,被告Y1は,原告X1のためにAAA株4000株を1株8万円で取得したことになる。
被告Y1は,EPP香港やEPPPteの名義を用いて投資運用業を行っていたのであるが,投資運用業者は,投資運用業者としての登録の有無にかかわらず,あるいは,預託,運用が国内外のいずれで行われるかにかかわらず,投資金の預託と運用を受任する契約を締結している以上,投資家から預かった資金につき当該投資家の利益を最大限に図るべく投資運用すべきことは当然の義務であり,上記のとおり,被告Y1が,原告X1のためにAAA株4000株を取得するに当たって,既に自分が1株4万円で取得していたAAA株2500株を1株8万円で取得したことにする行為が,同原告の信頼に背く「自己取引」に当たり,差額の1億円について自己の利益として取得したことが横領行為として不法行為に該当することは明らかである。
イ 被告らは,本件金員1の預託を受けて投資運用していたのは被告らではなくEPP香港である旨主張するが,以下の事情からすれば,被告会社,EPP香港及びEPPPteは,いずれも被告Y1のダミー会社であるといえるから,本件金員1は,被告Y1自身が原告X1から投資運用資金として預託を受けて保管していたものと認められる。
(ア) 被告らは,EPPPteが平成20年8月に1株4万円でAAA株2500株の第三者割当発行を受けられたのは,EPPPteが以前からAAAのロンドンの株式市場への上場に関するアドバイザー業務を行っていたことから,その対価として有利な価格で発行を受けることができたためであると説明するが,AAAの取締役会議事録によれば,上記アドバイザー業務に係るコンサルティング契約を締結した当事者はEPPPteではなく被告会社とされている。この事実は,被告会社とEPPPteとが同一のものであることを示している。
(イ) 原告らは,本件訴訟において,被告らに対し,EPP香港とEPPPteとの間で本件金員1についての運用委託契約が締結されているのであれば,その内容を証拠によって明らかにするよう求めたが,被告らは回答しなかった。このことから,上記運用委託契約に係る契約書が作成されなかったことが推認され,このような多額の資金について運用委託契約書が作成されなかったことは,EPP香港とEPPPteとが同一のものであることを示している。
(ウ) 原告らは,本件訴訟において,被告らに対し,EPP香港やEPPPteの実態を明らかにするよう求めたが,被告らはこれを正当な理由なく拒否しているから,いずれも独立した実態はなくペーパーカンパニーであると認められる。
(エ) 被告らは,EPP香港からEPPPteへの運用委託を決定したのはEPP香港であると説明するが,上記のとおりEPP香港には実態がないから,運用委託決定をしたのは,原告X1に対しAAA株への投資を勧めた被告Y1にほかならない。被告Y1は,前記第2,1(2)イの投資管理契約書においても,EPP香港の「Managing Director」として署名している。
(被告らの主張)
原告らの主張は否認ないし争う。
ア EPPPteが1株4万円でAAA株2500株の割当てを受けることができたのは,AAAとの間で,EPPPteによるアドバイザー業務の報酬の支払をAAA株により行うとの合意があったからである。なお,原告らが自己取引に該当すると主張する2500株は,被告Y1ではなくEPPPteが保有していたものであるから,これを原告X1の保有とすることは金融商品取引法上の「自己取引」には該当しない。
イ 被告会社,EPP香港及びEPPPteは,それぞれ役員や株主が異なるのであり,被告Y1がこれらの運営について無関係ではないにしても,そのことのみをもって,各法人が同被告のダミー会社であるとか,これらの法人が同被告と同一の存在であるとか評価することはできない。
(3)  本件金員2の未返還についての不法行為の成否(主位的請求)
(原告らの主張)
ア 被告Y1は,原告X1に対し,被告会社らが今後本件業務を行う過程で,公認会計士,監査法人,弁護士などの専門家に支払う費用に充てるための資金として,自分に対しコンサルティング報酬の名目で一括して送金してもらえれば,その全額を原告会社の当期の損金に計上することができるので節税にかなうこと,被告Y1らは成果報酬として原告会社の株式を取得することができればよいことを述べ,原告会社から本件金員2を預かった。上記(2)の(原告らの主張)イで挙げた事情からすれば,本件金員2は,被告Y1が原告会社から預託を受けて同原告のために保管していたものである。
しかしながら,被告Y1は,平成23年6月下旬頃,原告X1が預託を取り消して本件金員2の返還を求めたにもかかわらず,返還の先延ばしを求め続けた末,同年9月6日に同原告に送信したメールにおいて,本件金員2を正当な理由のないまま返還しない旨を明言し,現在に至るまでこれを全く返還していない。被告Y1は,原告会社のために預かっていた本件金員2について,原告会社の代表者である原告X1から返還を求められた以上,仮に未払実費があったとしても,これを直ちに精算して返還すべき義務を有していたにもかかわらず,上記のとおり正当な理由のないまま返還しない旨を明言したのであるから,本件金員2を横領したにほかならず,この行為は不法行為に該当する。
イ(ア) 被告らは,本件業務の報酬は8000万円である,事前に総額として実費を含めて1億円という報酬額を提示して原告会社から了承を得た,「成果報酬」というのは上場準備が進む段階に応じて報酬をもらうという意味である,などと主張する。
しかしながら,被告Y1は,平成23年2月22日に原告X1に送信したメールにおいて,「コストを取らない代わりに成果報酬を頂く」,「公開などにかかる専門家の費用(弁護士,会計士,監査法人,税理士,証券会社など)と実費(交通費など)を除く」,「成果報酬は株式でお願いする」などと述べており,原告らに対し,外部の専門家に支払う費用は別として,報酬を請求しない旨を明言していた。また,被告Y1は,本件税務対策資料に記載されている「コンサルティング費用」を「公開などにかかる専門家の費用(弁護士,会計士,監査法人,税理士,証券会社など)と実費(交通費など)」と理解していたのであり,しかも,飽くまでも今後2,3年分の費用の前払として支払われるものであると説明していた。
仮に,被告Y1が「成果報酬」につき上場準備が進む段階に応じて支払われる報酬と考えていたとしても,原告X1に対してその旨を説明したり同原告の了解を得たりしていたわけではなく,「成果報酬」をどの段階で支払うかについて要望をしていたわけでもない。
したがって,被告らが報酬として主張する8000万円を取得することができる根拠は全くない。
(イ) 被告らは,本件業務は実際に行われており,平成23年7月から同年8月にかけてあずさ監査法人によるショートレビューも行われたと主張するが,同監査法人に対しては原告会社が費用を支払っている。その他,被告らが本件業務に関する費用として主張するものには,本件業務とは無関係な出張費用等が相当数含まれている。
(被告らの主張)
原告らの主張は否認ないし争う。
ア 本件金員2は,将来のコンサルティング報酬の前払分だけではなく,過去に行われた本件業務の費用も含むものとして支払われたものである。
原告会社とEPP香港との間においては,本件コンサルティング契約書をもって本件業務についてのコンサルティング契約が締結されており,実際にも,原告会社に関するデュー・ディリジェンスが行われたり,あずさ監査法人によって原告会社のショートレビューが行われたりするなど,被告会社らは原告会社の上場に向けてコンサルティング業務を行っていた。
本件業務の報酬は8000万円である。被告会社が海外市場への上場に関するコンサルティング業務を行う場合,通常は月額300万円という報酬額でコンサルティング契約を締結しており,その業務期間が3年程度に及ぶことが多いため,原告会社に対し,事前に総額として実費を含めて1億円程度の報酬額を提示し,了承を得たものである。また,被告会社がEPP香港からの委託を受けて行った本件業務について負担した実費のうち,原告会社から支払われていない分は77万7764円である。
イ 原告らは,被告Y1が本件業務の報酬を「成果報酬」とする旨述べたと主張するが,ここでの「成果」は原告会社の上場のみをいうのではなく,被告Y1は,飽くまで上場準備の進捗に応じて費用を受領したいと述べたにすぎない。「成果」の内容が上場手続の完了であるとはいかなる書面にも記載されていないのであり,本件業務について「成果」が成就していないと評価することはできない。
(4)  本件金員3の未返還についての不法行為の成否(主位的請求)
(原告らの主張)
被告Y1は,平成23年8月中旬頃,原告X1から本件金員3の返還を求められたにもかかわらず,言を左右にして返還を先延ばしにした上,同年9月6日に同原告に送信したメールの中で,正当な理由のないまま本件金員3を返還しない旨を明言し,現在に至るまでこれを返還していない。本件金員3も,前記(2)の(原告らの主張)イで挙げた事情からすれば,本件金員2と同様,被告Y1が原告X1から預託を受けて同原告のために保管していたものであるから,上記行為が横領に該当し,同原告に対する不法行為を構成することは明らかである。
(被告らの主張)
原告らの主張は否認ないし争う。
本件金員3は本件投資管理契約書に係る投資管理契約に基づきEPP香港に送金されたものである。
本件金員3の預託は被告らではなくEPP香港に対して行われたものであり,これについて原告らが主張するような横領と評価するためには,EPP香港と被告Y1とを同一視するか,同被告がEPP香港に対して支配的な立場にあると評価する必要があるが,前記(2)の(被告らの主張)イでも主張したとおり,これらを同一視することは法理論上不可能であるし,同被告がEPP香港に対して支配的な立場にあることについても立証がされていない。
(5)  損害(主位的請求)
(原告らの主張)
ア 原告X1の損害
(ア) 被告Y1が横領した金員 2億5604万円
本件金員1についての前記(2)の横領に係る1億円と,本件金員3についての上記(4)の横領に係る200万米ドルを平成23年12月14日(本件訴訟が提起された日の前日)の為替相場(1米ドル当たり78.02円)で日本円に換算した1億5604万円の合計。
(イ) 慰謝料 1000万円
原告X1は,被告Y1から節税対策として必要であると言われて2億5000万円を超える大金を送金したが,予定どおりに返還されないため借入れを余儀なくされているのであり,本来必要のなかった資金調達や返済等に追われ,予想もしなかった精神的,情緒的危機に見舞われた。この精神的打撃は,単に財産的損害に遅延損害金を付して支払を受ければ回復することができるというものではない。この精神的打撃を慰謝する金額として1000万円が相当である。
(ウ) 弁護士費用 2600万円
イ 原告会社の損害
(ア) 被告Y1が横領した金員 9628万8000円
本件金員2についての前記(3)の横領に係る960万香港ドルを平成23年12月14日の為替相場(1香港ドル当たり10.03円)で日本円に換算した額。
(イ) 慰謝料 500万円
原告会社も,原告X1と同様の理由により,慰謝料500万円を請求する。
(ウ) 弁護士費用 1000万円
(被告らの主張)
原告らが主張する損害は,否認ないし争う。
(6)  本件金員2についての不当利得返還請求権の有無(予備的請求)
(原告らの主張)
ア 原告X1が平成23年6月に本件金員2の返還を求めるまでの間に本件業務は行われていないから,被告らは,原告会社が支払った960万香港ドル(同年12月14日の為替相場で換算すると9628万8000円)を法律上の原因なく利得している。
また,被告らは,悪意の受益者として,上記金員に利息を付して返還すべき義務を負っている。
イ 960万香港ドルの小切手の持参人はEPP香港であり,本件コンサルティング契約書においても,その名目はEPP香港へのコンサルティング報酬となっている。しかしながら,被告Y1は,原告会社の上場準備コンサルティングという名目の活動を被告会社の名前で行っているし,熊本市内に本社のある原告会社の国内上場準備のためのコンサルティング業務を香港の会社に依頼する必要性は全くないところ,EPP香港に法人の実態があるとの証拠は全くなく,被告Y1自身も,本件説明資料を被告会社の代表取締役名義で作成しており,EPP香港が被告会社と同一の法的存在であることを自認している。したがって,EPP香港の法人格は否認されるべきである。
また,被告会社は,被告Y1が公認会計士らを使って日本国内において詐欺あるいは詐欺まがいの不法行為を行う際に被害者を信用させるために用いていたグループの名称にすぎず,被告Y1は,これらを総称して単に「EPP」という呼称も使用していたのであって,被告会社も被告Y1のダミー会社にすぎないから,被告会社の法人格も否認されるべきである。
以上によれば,原告会社は,EPP香港のみならず,被告らに対して本件金員2の返還を求めることができるというべきである。
(被告らの主張)
原告らの主張は否認ないし争う。
ア 前記(3)において被告らが主張するとおり,本件金員2は,将来のコンサルティング報酬の前払分だけではなく,過去に行われた本件業務の費用も含まれているところ,被告会社らは本件業務を行っており,実際に費用が発生している以上,本件金員2を保有することにつき法律上の原因が存在する。
イ 法人格否認の法理には,判例上形骸化事例と濫用事例とがあるが,被告会社及びEPP香港はいずれも実態があるため,形骸化事例には当てはまらず,各法人の代表者が完全には一致せず,株主も同一ではない以上,支配的地位にある者が濫用の意図を持って設立したものでもないから,濫用事例にも当てはまらない。したがって,被告会社やEPP香港に法人格否認の法理は適用されない。
(7)  本件金員3についての預託金返還請求権の有無(予備的請求)
(原告らの主張)
ア 原告X1は,本件金員3を一時的な預け金として被告Y1に預託したのであるが,同被告は,平成23年8月8日に同原告に対して送信したメールにおいて本件金員3を同月末に返還する旨述べているから,同預託金の返還時期は同月31日であり,同被告は,同原告に対し,200万米ドル(同年12月14日の為替相場で換算すると1億5604万円)を返還すべき義務を負っている。
イ 本件金員3は,EPP香港の口座に送金され,本件投資管理契約書においても,その名目はEPP香港への投資となっているが,上記(6)の(原告らの主張)イで主張したとおり,被告会社及びEPP香港の法人格は否認されるべきであるから,原告X1は,被告らに対して200万米ドルの返還を求めることができる。
(被告らの主張)
原告らの主張は否認ないし争う。
上記(6)の(被告らの主張)イで主張したとおり,被告会社やEPP香港は法人格否認の法理の要件を満たさない。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(裁判管轄権の有無)について
被告らは,本件金員1,本件金員2及び本件金員3の送金先であるEPP香港と被告会社とが別の会社であることを理由として,被告らを相手方とする本件訴えは我が国の裁判所に裁判管轄権のない不適法な訴えである旨主張する。
しかしながら,本件訴えは,我が国に住所ないし本店を有する原告らが我が国に住所を有する被告Y1に対し同被告個人の行為が不法行為に該当するなどと主張して自らが被った損害の賠償を求めるとともに,我が国に本店を有する被告会社に対し会社法350条又は民法715条に基づく責任を追及するもの(主位的請求)あるいは,法人格否認の法理の適用によってEPP香港と被告らを同一視することができるなどと主張して,原告らがEPP香港宛てに送金した金員の返還を被告らに対して求めるもの(予備的請求)であるから,我が国の裁判所が裁判管轄権を有することは明らかである。したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
2  争点(2)(本件金員1によるAAA株の取得についての不法行為の成否)について
(1)  まず,本件金員1の送金先がEPP香港であり,前記のとおり,本件金員1の送金に当たり,Wealth社とEPP香港を契約当事者として,EPP香港がWealth社の投資を管理する旨の投資管理契約書が交わされていることからすれば,本件金員1の支払を受けたのはEPP香港であると認められる。
原告らは,被告会社及びEPP香港は,いずれも被告Y1のダミー会社であるとか,被告会社やEPP香港の法人格は否認されるべきであるなどと主張するが,上記各法人や被告Y1が相互に一定の人的あるいは物的な関連を有していることは認められるものの,上記各法人が被告Y1と同一視することができるなど,その法人としての実態を欠き,法人格が形骸化している,あるいは,被告Y1が上記各法人の法人格を濫用していると認めることのできる証拠はなく,原告らの主張は採用することができない。
証拠(甲14)によれば,前記第2,2(2)において原告らが主張するように,AAAの上場に関するアドバイザー業務に係るコンサルティング契約を被告会社と締結する旨がAAAの平成20年7月30日の取締役会議事録に記載されていることが認められる。また,本件金員1についてのEPP香港とEPPPteとの間の運用委託契約が締結されていることを証する証拠は提出されていない。さらに,前記第2,1(3)イのとおり,被告Y1は,被告会社の代表取締役の名前で,本件説明資料において,本件金員1,本件金員2及び本件金員3の処理についての今後の対応等に言及しており,この点,EPP香港の取締役を兼ねていた被告Y1において,EPP香港と被告会社とを混同していることがうかがわれる。しかしながら,これらの事情を考慮しても,原告らの上記主張が認められるものではない。
(2)  前記認定のとおり,原告X1は,AAA株を1株8万円で4000株取得するための資金として,EPP香港に対し2340万香港ドルを送金したが,EPP香港から委託を受けたEPPPteが原告X1のために保有する扱いとしたAAA株4000株のうち2500株は,EPPPteが1株4万円でAAAから割当てを受けたものであった。
この点について,被告らは,EPPPteが1株4万円という価格でAAA株の割当てを受けることができたのは,EPPPteがAAAの上場に関して行ったアドバイザー業務の報酬の支払をAAA株により行うとの合意があったからであると主張し,被告Y1も,本人尋問においてこれに沿う供述をしているところ,証拠(甲25,26,31~34,37,38,42,43)によれば,平成18年から平成19年にかけて複数回にわたり,いずれも被告会社やEPPPteとは異なる申込人に対し,AAAの募集株式が1株8万円という価格で発行されていることが認められ,この事実は被告Y1の上記供述を裏付けるものといえる。
そうすると,EPPPteとAAAとの間のアドバイザー業務に係る対価関係を考慮すれば,EPPPteは,時価相当額である1株8万円でAAA株を取得してこれを原告X1のために保有する扱いにしたと評価することができるのであり,EPP香港が原告X1から送金された本件金員1とAAA株の取得に充てた資金との差額を違法に取得したとは認めることはできないし,被告会社や被告Y1が上記差額を取得したことも認めるに足りないから,原告らの主張を採用することはできない。
3  争点(3)(本件金員2の未返還についての不法行為の成否)について
(1)  本件金員2は,EPP香港を持参人,みずほ銀行(香港支店)を支払人とする小切手により支払われており,被告Y1から原告会社に対してEPP香港を契約当事者とする本件コンサルティング契約書が送付されていたことからすれば,EPP香港が受領したものと認められ,後記5で説示するところからすれば,EPP香港は,本件金員2の授受の当事者として,原告会社に対してこれを返還すべき義務を負っているというべきである。
(2)  しかしながら,EPP香港が本件金員2の返還に応じていないことが債務不履行に当たるとしても,そのことから直ちにこれを横領したものとして不法行為を構成するものということはできない。
そして,前記第2,1(2)の経過によれば,原告X1は,平成23年6月,被告Y1に対し,本件金員2の返還を求めたが,同被告から,すぐに返還することはできない,200万米ドルを一時的に預けてくれれば,その配当金の名目で何回かに分けて返還するので,200万米ドルをEPP香港の預金口座に送金してほしいと言われ,これに応じて,本件投資管理契約書に署名するとともに本件金員3を送金したというのであり,本件金員2の趣旨からして,被告Y1ないしEPP香港としては,短期間にその返還を求められることを本来想定していたとも考え難く,原告X1から本件金員2の返還を求められた後も,本件金員2の返還時期について具体的な合意がされたとまでは認めるに足りないことに照らすと,EPP香港において原告X1からの本件金員2の返還要求に対して直ちに応じなかったからといって,直ちにEPP香港が本件金員2を横領したということはできず,他に同社が本件金員2を横領したと評価するに足る事情を認めることはできない。
また,被告会社については,後記5で判断するとおり,本件金員2に関して利得が生じていると認められるが,EPP香港と同様の理由で,本件金員2を横領したと評価するに足る事情は認められない。そして,EPP香港や被告会社とは別個の人格である被告Y1が個人として本件金員2を取得したことを認めることのできる証拠もない。
以上によれば,本件金員2を返還しないことについて被告らに横領の不法行為が成立するとの原告らの主張を採用することはできない。
4  争点(4)(本件金員3の未返還についての不法行為の成否)について
前記認定事実によれば,本件金員3については,原告X1からEPP香港に対し預託金として送金されたものであり,これをEPP香港等において運用することまで許容する趣旨であったかどうかはともかくとして,原告X1からの返金の要請を受けて,被告Y1は,これを平成23年8月末に返還する旨回答し,本件説明資料には,預り金として認識しており,現在進行中の案件が全て解決したら精算,返金する方向で考えている旨記載されているのであるが,上記3で説示したのと同様に,EPP香港が本件金員3の返還に応じていないことが債務不履行に当たるとしても,そのことから直ちにこれを横領したものとして不法行為を構成するものということはできない。そして,前記認定のとおり,原告X1が被告Y1に本件金員3の返還を求めたのは,a社の株価が下落し,ゴールドマン・サックス証券から200万米ドルの返還を求められたことが契機となっており,EPP香港としては,そのような時期に本件金員3の返還を求められることを想定していたとは認め難いこと,同被告は,当初は本件金員3を同年8月末に返還する旨回答し,同年9月7日には,原告X1に対して,原告らとの一連の案件について弁護士に交渉を依頼したので,今後は同弁護士を通じて解決したいと通知し,その後同年12月15日に本件訴訟が提起され,更に上記の内容の本件説明資料が被告ら訴訟代理人から原告ら訴訟代理人に送付されていることからすれば,EPP香港において原告X1に本件金員3を返還する意思を有していなかったとは認められず,原告らとの紛争が解決するまで本件金員3の返還を留保することをもって,直ちに同社が本件金員3を横領したということはできず,他に同社が本件金員3を横領したと評価するに足る事情を認めることはできない。また,被告会社については,前記のとおりEPP香港とは別個の法人格を有しており,被告会社に本件金員3が帰属したことを認めることのできる事情も証拠上見当たらない以上,被告会社が本件金員3を横領したとは認められない。そして,被告Y1が個人として本件金員3を取得したことを認めることのできる証拠もない。
したがって,本件金員3を返還しないことについて被告らに横領の不法行為が成立するとの原告らの主張を採用することはできない。
5  争点(6)(本件金員2についての不当利得返還請求権の有無)について
(1)  前記認定のとおり,原告X1は,平成23年6月,被告Y1に対して本件金員2の返還を求めており,その時点までに本件業務に係るコンサルティング契約が成立していたとしても,同契約は解約の申入れにより終了したものということができる。
(2)  既に判断したところによれば,本件金員2は原告会社とEPP香港との間で授受されたものであるから,これについて被告会社に利得が存在するといえるのかが問題になる。
ア 前記認定事実及び証拠(乙15,被告Y1本人)によれば,本件業務は,EPP香港が受託した後,EPP香港から被告会社に再委託され,おおむね,中国での業務はEPP香港,日本国内での業務は被告会社がそれぞれ担当していたと推認されるところ,本件業務は,日本国内の株式会社である原告会社による日本国内の株式市場への上場に関するものであるから,被告Y1が本人尋問において供述するとおり海外市場への上場を視野に入れていたとしても,その主要な部分は被告会社が担う日本国内の業務であったと推認される。本件金員2の支払に至る過程において,被告会社が原告会社の業務支援を請け負うことにつき双方が合意している旨が記載された本件基本合意書が作成されていることも,これに沿うものということができる。本件説明資料において,被告会社のAらが中心となって原告会社の財務・経理業務,国際戦略業務,公開戦略業務等に取り組んできたとされていること(甲92,101,被告Y1本人),960万香港ドルという前払金の金額は,被告会社が海外の株式市場への上場に関するコンサルティング業務を行う場合に通常設定している報酬額を基にして決められたものであること(乙13),被告Y1が平成23年9月6日に原告X1に送信したメールに「コンサルタント契約は『香港でも活躍しているので,ある程度のコストは計上していいが基本は日本での売り上げにしないといけない』と(注・税務署の見解として)はっきり言われましたので処理する必要があります。」と記載されていること(甲90)といった事情は,本件業務において被告会社が主要な活動を行っていたことを裏付けるものである。
この点について,被告Y1は,本人尋問において,最終的に予定されていた両社の業務の比率について,「日本の方が比重は高く,5以上,6とかになったと思う」と供述するが,上記事情に鑑みれば,被告会社が行う業務の比率は被告Y1が供述するよりも高かったものと認められる。
イ また,上記のとおり,EPP香港は本件業務を被告会社に委託していたのであるが,被告Y1の本人尋問における供述によれば,EPP香港と被告会社との間では,EPP香港に支払われた本件金員2をどのように配分するかにつき明確な取決めをしていたとはいい難く,金員の支払ではなく人件費等によって調整することも行われており,被告会社の代表者でありEPP香港の取締役である被告Y1ですら,本件金員2が両社の間でどのように配分されたのか把握していないというのである。
ウ 以上によれば,本件金員2がEPP香港に対して支払われ,本件コンサルティング契約書においてEPP香港が当事者とされていることから直ちに本件金員2に係る利得が被告会社に帰属していないと解すべきものではなく,むしろ実質的に見て被告会社に帰属していると認めるのが相当である。
(3)  次に,被告会社が本件金員2に関して法律上の原因なく得ている利得の額について検討する。
ア 被告らは,本件金員2には本件業務の報酬や過去の業務の分も含めた費用が含まれるから,被告会社らが行った業務に対応する報酬ないし費用を控除し,なおも残額が存する場合にのみ返還すれば足りる旨主張する。
イ まず,報酬について検討すると,平成23年2月22日に被告Y1が原告X1に送信したメール(前記第2,1(2)エ(ア))において,「3月からは費用もはさらに発生して重光産業に関わることになりますので,先日お話させて頂いたEPPとの契約を正式に結んでもらえるようお願いします。」(原文のまま),「我々の大きな方針としては,重光産業をさらに成長させるために,経営,財務,公開の分野で実際に経営参加をして貢献することです。」,「コストを取らない代わりに成果報酬を頂く」,「成果報酬は株式でお願いする。成果にそった株の支給と認識しております。その他増資するときなどに優遇条件で投資させて頂くことなどが考えられます。」と述べられていること(甲4),本件税務対策資料においても,「コンサルティング費用の前払い」として,「上場準備のために様々な作業を行う必要があり,自社内部でできない部分については外部からの支援を仰ぐ必要があります。」との説明の下,「ブレーン支援業務」及び「作業支援業務」として合計1億0200万円が計上され,「なお,実際の業務に伴う費用発生を計算して精算し,余剰分については返還します。」と記載されていて,実費以外に報酬を精算する旨の記載は存在しないこと(甲5の2),本件金員2の960万香港ドルは,上記の1億0200万円を当時の為替相場により換算した額であること(甲94),本件基本合意書において報酬は成果報酬方式とする旨が定められていること(甲99)からすれば,本件金員2は本件業務の実費分のみであって報酬は含まれておらず,報酬は本件業務が一定の成果を上げた場合に初めて発生するいわゆる成果報酬として定められたこと,その報酬の内容は原告会社の株式であったことがそれぞれ認められる。被告Y1も,本人尋問において,本件業務の報酬が成果報酬であり,その内容が原告会社の株式であること自体は認めている。
もっとも,被告らは,上場手続の完了以外にも一定の成果を上げることで報酬が発生する旨主張し,被告Y1も本人尋問において同旨の供述をしているが,上記の平成23年2月22日のメール(甲4)や本件基本合意書(甲99),本件コンサルティング契約書(甲88の1・2)等を見ても,上場に至る前に進捗状況に応じて報酬が発生する旨を合意したことをうかがわせる記載は見当たらず,被告Y1も,本人尋問において,報酬が発生する成果の内容について問われた際,この点について明確に回答していないことからすれば,そのような合意が成立していたとは認められず,被告らの上記主張は失当である。また,上記メールの内容に照らしても,原告会社の上場準備のために過去に行った業務についても,その報酬が発生するような合意が成立していたとは認められない。
したがって,本件業務に関してEPP香港ないし被告会社に報酬が発生していたと認めることはできない。
ウ 次に,本件業務に関してEPP香港ないし被告会社が支出した費用について検討する。
(ア) 被告らは,本件金員2には,その支払以前に被告会社らが支出した費用が含まれると主張し,被告Y1も本人尋問において同旨の供述をしている。
しかしながら,平成23年2月22日の前記メール(甲4)の内容からすれば,それまで被告会社らが本件業務を自己の費用負担で行ってきたが,同年3月からは新たな費用が発生することになるので,これ以上本件業務を進めるには正式な契約を締結して費用負担を明確にする必要があると被告Y1が考えていたことが推認され,また,本件税務対策資料においても,「現状までもブレーン支援業務及び作業支援業務の一部は既に発生していますが,導入のためのサービスとします。」との記載があり(甲5の2),本件基本合意書や本件コンサルティング契約書にも過去の業務に関して発生した費用の負担について定めた文言は見当たらないこと(甲88の1・2,甲99)からすれば,被告Y1の上記供述を信用することはできず,本件金員2の支払時点において過去の業務に関して発生した費用は原告会社が負担しないことを前提として本件金員2の支払がされたものと認められ,本件金員2に過去の業務に関して発生した費用が含まれるものと認めることはできない。
なお,本件コンサルティング契約書には,契約期間の始期が平成22年7月1日と記載されているが,既に認定した事実からすれば,原告X1が陳述書(甲94)及び本人尋問において供述するとおり,税務上の対策として始期を遡らせたものにすぎないと認められるのであって,本件コンサルティング契約書の上記記載を根拠に,過去の費用について原告会社が負担する旨の合意があったと認定することはできない。
(イ) 次に,本件金員2の支払後に発生した費用については,被告Y1は,本人尋問において,証券会社の決定,外部人材の招聘など株式公開のためのコンサルティング業務を行っていたと供述しているが,本件業務に関して支出した費用を立証するものとして被告らが提出した領収書等(乙14)は全て本件金員2の支払以前の活動についてのものであることからすれば,被告Y1の上記供述を信用することはできず,本件金員2の支払後に被告会社らが本件業務に係る費用を負担したと認めることはできない。
エ 以上によれば,本件金員2から控除すべき報酬及び費用があるとは認められないから,被告会社は,法律上の原因なく,原告会社の960万香港ドルの損失の下,同額の利得を得ていると認められる。これに対し,被告会社とは別の人格である被告Y1が本件金員2に関して利得を得ていることを認めることのできる証拠はない。
(4)  原告会社は,960万香港ドルを1香港ドル当たり10.03円の比率(平成23年12月14日の為替相場の仲値)で換算した金員である9628万8000円の支払を求めているところ,この額は,被告会社の不当利得返還債務の履行時に最も近接した本件訴訟の口頭弁論終結の日の直前の取引日である平成26年12月5日における為替相場の仲値(1香港ドル当たり15.46円。公知の事実。)によって換算した額を上回るものでない。
そして,被告会社の代表者である被告Y1は,平成23年6月に原告会社の代表者である原告X1から本件金員2を返還するよう求められたから,その時点で本件業務に係るコンサルティング契約が終了したことを認識したと認められ,その後間もなくして上記のとおり控除すべき報酬及び費用が存在しないことも認識し,その時点は,原告らが利息の起算日とする同年9月6日よりも前であったと認められる。
また,本件金員2は,株式会社である原告会社がコンサルティング費用として支払ったものであるから,これによる契約関係の解消によって発生した不当利得返還債務に附帯する民法704条前段所定の利息についても,その利率は商事法定利率である年6分と解するのが相当である。
そうすると,本件金員2に係る原告会社の被告会社に対する不当利得返還請求は全部理由があり,被告Y1に対する不当利得返還請求は理由がない。
6  争点(7)(本件金員3についての預託金返還請求権の有無)について
前記認定のとおり,平成23年6月21日付けで作成され原告X1が署名した本件投資管理契約書では,EPP香港が契約当事者とされ,同社がWealth社の200万米ドルの投資を管理するものとされており,翌22日には原告X1からEPP香港の預金口座に本件金員3が送金されているから,本件金員3に係る預託契約の当事者はEPP香港であると認められる。
そして,EPP香港と被告会社又は被告Y1とを同一視することができないことは既に説示したとおりであり,被告Y1が原告X1に対し同年8月末までに本件金員3を返還する旨回答していることをもって,同被告が個人としてその返還を約したと認めることはできないし,被告Y1が被告会社の代表取締役の名前で本件金員3の返金に言及した本件説明資料を原告らに送付していることをもって,被告会社が本件金員3の返還を約したものと認めることもできないから,被告らに対し本件金員3の返還を求める原告らの請求は理由がない。
第4  結論
よって,原告らの請求は,主位的請求についてはいずれも理由がなく,予備的請求については,原告会社が被告会社に対し不当利得金9628万8000円及び被告会社が悪意となった日の後である平成23年9月6日から支払済みまで年6分の割合による利息の支払を求める限度で理由があり,その余の請求は理由がないから,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 加藤正男 裁判官 渡邊英夫 裁判官 下道良太)

 

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