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「成果報酬 営業」に関する裁判例(3)平成30年 4月 9日 東京地裁 平28(ワ)4420号 請求異議事件、請求異議反訴事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(3)平成30年 4月 9日 東京地裁 平28(ワ)4420号 請求異議事件、請求異議反訴事件

裁判年月日  平成30年 4月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)4420号・平29(ワ)16166号
事件名  請求異議事件、請求異議反訴事件
文献番号  2018WLJPCA04098005

裁判経過
控訴審 平成30年12月25日 東京高裁 判決 平30(ネ)2632号 請求異議、同反訴請求控訴事件

裁判年月日  平成30年 4月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)4420号・平29(ワ)16166号
事件名  請求異議事件、請求異議反訴事件
文献番号  2018WLJPCA04098005

平成28年(ワ)第4420号 請求異議事件
平成29年(ワ)第16166号 請求異議反訴事件

東京都港区〈以下省略〉
本訴原告(反訴被告) 株式会社アクアソリューションズ(以下「原告」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 中原健夫
同 倉橋博文
同 横瀬大輝
同 鈴木裕也
東京都渋谷区〈以下省略〉
本訴被告(反訴原告) ティック株式会社(以下「被告会社」という。)
同代表者代表取締役 B
東京都渋谷区〈以下省略〉
本訴被告 Y1(以下「被告Y1」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 池津学

 

 

主文

1(1)  被告Y1から原告に対する,東京法務局所属公証人C作成平成25年第113号債務承認及び弁済契約公正証書に基づく強制執行は,これを許さない。
(2)  被告会社から原告に対する,東京法務局所属公証人C作成平成25年第113号債務承認及び弁済契約公正証書に基づく強制執行は,これを許さない。
2  被告会社の反訴事件の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,本訴反訴を通じ,被告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴事件
(1)  被告Y1から原告に対する,東京法務局所属公証人C作成平成25年第113号債務承認及び弁済契約公正証書に基づく強制執行は,これを許さない。
(2)  被告会社から原告に対する,東京法務局所属公証人C作成平成25年第113号債務承認及び弁済契約公正証書に基づく強制執行は,これを許さない。
2  反訴事件
原告は,被告に対し,569万1788円及びこのうち564万5388円に対する平成29年6月13日から支払済みまで年15%の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本訴は,原告が,被告Y1を債権者,訴外株式会社アクアペイメント(以下「アクアペイメント社」という。)を主債務者,原告及び原告代表者を連帯保証人とする貸付けを内容とする東京法務局所属公証人C作成平成25年第113号債務承認及び弁済契約公正証書(以下「本件公正証書」という。)につき,①被告Y1に対しては,本件公正証書上の債権が既に被告Y1から被告会社に対し債権譲渡されていること,被告会社に対しては,②本件公正証書に表示された貸付けは債務名義としての効力を有しないこと,③本件公正証書に表示された貸付けは違法な高利のため公序良俗に違反し無効であること,④仮に上記②,③が認められないとしても本件公正証書に表示された貸付けについては別紙1の弁済一覧表のとおり弁済により債務が消滅していることをそれぞれ主張して,被告らに対し,異議権に基づき,上記公正証書の執行力の排除を求める事案である。
反訴は,被告会社が,原告に対し,本件公正証書に表示された貸付金には未払残元金があるとして,別紙2-1の貸付返済一覧における算定に基づき,同残元金である564万5388円(上記一覧の残元金から債権差押命令による取り立てがされた31万8472円を控除したもの),利息制限法1条3号所定の年15%の割合による確定遅延損害金(上記一覧の残額から上記のとおり取り立てがされた4万6400円を控除した額)及び上記564万5388円に対する反訴状が送達された日の翌日である平成29年6月13日以降の上記割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提となる事実(当事者間に争いがなく,又は各項括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められる事実)
(1)  当事者
アクアペイメント社は,ソフトウェア開発等を目的とする株式会社である。
原告会社はアクアペイメント社の関連会社であり,原告代表者であるA(以下「A」ともいう。)は,現在アクアペイメント社の代表取締役の地位にもある。
被告Y1は,平成27年4月30日まで,被告会社の代表取締役の地位にあった者である。
被告会社は,コンサルティング業務等を目的とする株式会社である。
(2)  被告Y1は,アクアペイメント社に対し,平成25年7月29日,16500万円〈原文ママ〉を無利息,同年8月7日を弁済期として貸し付けることを合意した内容の金銭消費貸借契約書を作成したが,アクアペイメント社に対し,現実に交付されたのは1500万円であった。(甲10,以下当該貸付けに係る金銭消費貸借契約書を「本件契約書1」という。)。
原告代表者であるAは,被告Y1との間で,同年7月29日,アクアペイメント社が被告に対し負う上記貸付金債務について連帯保証する旨合意した。(甲10)
(3)  被告Y1は,アクアペイメント社との間で,同年11月12日,上記(2)の貸付金につき,以下のとおり分割して弁済する内容に更改する旨合意した(ただし,当該契約書上は上記同日に1650万円が交付された旨の記載がされている(甲11。以下,上記(2)の金銭消費貸借契約と併せて「本件金銭消費貸借契約」と総称し,上記契約書を「本件契約書2」と言う。)。
11月29日 200万円
12月6日 350万円
12月16日 1100万円
特約 本契約の条項に反した時は,当然に期限の利益喪失(甲11)
同年11月12日,原告及び原告代表者であるAは,被告Y1との間で,アクアペイメント社が被告に対し負う上記貸付金債務について連帯保証する旨合意した。
(4)  被告Y1,アクアペイメント社,原告及び原告代表者は,平成25年11月13日,被告Y1を債権者,アクアペイメント社を主債務者,原告及び原告代表者を連帯保証人とする金銭消費貸借契約の債務弁済につき,執行認諾文言を含む公正証書を作成することを合意し,東京法務局所属公証人Cの公証役場に出頭して,公正証書を作成した(東京法務局所属公証人C作成平成25年第113号債務承認及び弁済契約公正証書(本件公正証書))。本件公正証書には,大要以下の内容の記載がある。(甲1)
ア 債務 平成25年10月28日付金銭消費貸借契約に基づく原告の借入金債務1650万円
イ 弁済日 上記(3)に同じ
ウ 利息 無利息
遅延損害金 年15%
エ 特約 本契約の条項に反した時は,当然に期限の利益喪失
オ 原告は,上記債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する。
(5)  アクアペイメント社,原告及び関連会社である訴外株式会社SMS(以下「SMS」という。)は,被告Y1に対し,平成25年7月29日から平成26年7月4日までの間,少なくとも,別紙1,2-2及び3の各弁済一覧表の2番,3番,7番,23番に対応する弁済を除いて,各日付けに対応する弁済額欄記載のとおり,弁済を繰り返した(なお,平成25年12月17日以降履行遅滞に陥った。)。
また,被告Y1が本件公正証書に基づき,東京地方裁判所に対し申し立て,平成26年1月28日,上記により発令された債権差押命令(平成25年(ル)第10783号)に基づく11万8953円の取立てがされた。
(6)  被告Y1は,本件公正証書に基づき,東京地方裁判所に対し,原告の数社に対するソフトウェア使用料金債権の差押えを申し立て(平成27年(ル)第7834号),平成27年10月26日,債権差押命令が発令された(甲8)。
(7)  被告Y1は,被告会社に対し,平成27年11月17日,本件公正証書に係る債権を譲渡し,原告は同日付けの債権譲渡通知書を受領した。
(8)  被告Y1は,平成28年1月5日,上記差押命令の申立てを取り下げた。
(9)  被告会社は,同年2月2日,本件公正証書における債権を承継したとして,承継執行文の付与を受けた。(甲7)
(10)  被告会社は,本件公正証書に基づき,東京地方裁判所に対し,原告の数社に対するソフトウェア使用料金債権の差押えを申し立て,平成28年2月25日(平成28年(ル)第1225号について),同年9月6日(平成28年(ル)第6777号について)及び平成29年3月9日(平成29年(ル)第1945号についてそれぞれ債権差押命令が発令された。(甲45,46,57)
(11)  上記(6),(7),(10)に係る各発令により,別紙1,2-2及び3の各弁済一覧表記載の25番ないし56番のとおり,各日付けに対応する金額の取り立てがされた。
2  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  本件金銭消費貸借契約上の貸付債権と本件公正証書上の貸付債権との同一性の有無
(原告の主張)
本件公正証書には,本件金銭消費貸借契約上の貸付日(平成25年7月29日(原契約締結日),同年11月12日(更改日))と異なる平成25年10月28日が貸付日として記載されていることに加え,本件金銭消費貸借上,実際には1500万円しか借りていないことなどに照らせば,本件金銭消費貸借契約上の貸付債権と,本件公正証書上の貸付債権は同一性がない。
(被告会社の主張)
否認ないし争う。
本件契約書2は,アクアペイメント社及び連帯保証人である原告から弁済期の猶予が求められたものの,被告からの執行認諾証書を作成したいとの要望になかなか協力が得られなかった経緯の中,弁済期を変更した契約書の作成をすることとなり,同年11月12日にようやく作成された。また,本件公正証書については,アクアペイメント社及び原告の協力が得にくい中で被告Y1において手続を進め,同年10月28日を更改合意が成立したと考えられる日付け(貸付日)として記載した公正証書の文案を公証役場に提出していたものであり,最終的には同年11月13日に作成された。
以上の経緯から,本件公正証書が本件金銭消費貸借契約について記載したものであることは当事者間において理解することが容易に可能であるし,被告Y1と原告との間には本件金銭消費貸借契約のほか金銭消費貸借契約はないこと,本件契約書1,同2及び本件公正証書上記載された債権額は同一であるから,同一性を認識することは可能である。
(2)  公序良俗違反の成否(暴利行為)
(原告の主張)
ア 本件金銭消費貸借契約上,現実の交付額は1500万円であるにもかかわらず,本件金銭消費貸借の各契約書(甲10,11)及び本件公正証書上,貸付金額は1650万円とされており,これらの記載との現実の交付額との差額150万円は利息とみなすべきものである(その利率は年365%を超える。)。
また,アクアペイメント社は,後述のとおり,本件金銭消費貸借契約を締結した平成25年7月29日に,被告Y1及び同人と一体として行動していた訴外株式会社OUTPUT.21(以下「OUTPUT」という。)所属の訴外D(以下「D」という。)に対して,①78万5000円及び②236万2500円を手数料として支払っており,上記の各手数料はみなし利息に該当する(利息制限法3条)。
上記150万円に上記①のみなし利息を加えると,その利率は年574%となり,さらに上記②のみなし利息も加えると,年1131%となる。
このように,本件金銭消費貸借契約に付された利息は,利息制限法1条のみならず,出資法5条3項の定める上限金利も大幅に超過する違法なものである。
イ また,上記のとおり,本件金銭消費貸借契約に係る各契約書や本件公正証書上,150万円の利息を貸付金元金に計上し,利息を無利息とする定めをおくなどして利息の定めが一見して分からないようにしていることなどからすれば,被告Y1において,法の規制を潜脱するため意図的に上記のような契約書を作成したことが明らかであり,被告Y1の行為態様の悪質性は高い。
ウ 上記ア,イの各事情に加え,被告Y1において,アクアペイメント社が窮状に陥っていることにつけ込んで違法な利息を承諾させ,また,本来の契約内容とは異なる本件契約書1,同2及び本件公正証書を無理やり作成させたことからすれば,本件金銭消費貸借契約が公序良俗に反し,民法90条に基づき無効となることは明らかである。
(被告会社の主張)
被告Y1は,Dを通じて紹介されたアクアペイメント社に対し貸金業者を紹介したが,アクアペイメント社が融資を断られたため,同社を支援するため,厚意で本件金銭消費貸借契約を締結し,1500万円を貸し付けたのであり,本件契約書1に1650万円と記載されたのは,謝礼として150万円を支払したいとの話があったためである(なお,当該金額がみなし利息に当たりうることは争わないが,被告Y1には法的知識がなかった。)。
その余については後記(4)(被告の主張)のとおり,そもそも被告Y1に対する弁済に当たらない。
(3)  貸金業法42条1項違反について
(原告の主張)
ア 貸金業法42条1項に言う「業として行う」とは,反復継続し,社会通念上,事業の遂行とみることができる程度のものをいうと解されており,反復継続の意思をもって貸付を行えば足り,必ずしも報酬利益を得る意思や,実際にそれを得たことは要せず,貸付の相手方が不特定多数であることも要しないと考えられる。
本件においては,①被告Y1は,個人として複数回貸付を行ったことを認めており,第三者に対しても数千万円という大金を貸し付けるなどしていたこと(甲33③のメールにおける記載によれば当該事実は明らかである。),②被告Y1や同人の関連会社の従業員は,Aに対して,自らお金を貸し付ける仕事をしていると説明していたこと,③被告Y1と一体として評価すべき被告会社が貸金業を営んでいることなどの事情によれば,上記「業として行う」に該当するというべきである。
イ そして,本件金銭消費貸借契約は,前述のとおり,年109.5%を優に超える利息が付されているから,貸金業法42条1項に違反することは明らかである。
(被告の主張)
否認ないし争う。被告Y1はAの懇願を受けて貸付けを行ったに過ぎず,業として貸付けを行ったわけではない。その余は上記(2)(被告の主張)欄のとおり。
(4)  弁済の有無及びその額
原告の弁済に係る主張を踏まえると別紙1の弁済一覧表,被告らの弁済に係る主張を踏まえると別紙2-2の弁済一覧表のとおり残元金等の存否及び額が算出されるところ,個々の弁済に係る争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。
(原告の主張)
ア 78万7500円の弁済について(別紙1の弁済一覧表2番)
平成25年7月29日,アクアペイメント社は,被告Y1に対し,本件金銭消費貸借契約上の債務の弁済として上記額を支払った。
当該弁済に関し,被告Y1と取引関係のあった訴外株式会社和光(以下「和光」という。)作成名義の受領書(甲21の1)が存在するが,①Aは,本件金銭消費貸借契約締結前日にDから,被告Y1に対する手数料が78万5000円である旨記載したメールを受領していたこと,②本件金銭消費貸借契約日当日,Aは,アクアペイメント社が被告Y1から受領した1500万円を一旦アクアペイメント社名義の口座に入金した上で,上記①と同額である78万5000円を引き出したこと,③本件金銭消費貸借契約締結に際し,被告Y1名義の受領書(甲21の2)が作成されていたこと,④他方でAとAが経営するアクアペイメント社など関連会社において,和光との間で取引をしたことは一切なかったから,アクアペイメント社が和光に対し「コンサルティング業務手数料の成果一時金報酬」名目で支払を行う理由はなかったこと,⑤和光名義の上記受領書も,被告Y1が作成したものであり,一旦同人の住所を記載していたがその後これを訂正して和光名義の会社名等を記載したという不自然な経緯があること,からすれば,被告Y1の供述は虚偽であることが明らかである。
イ 236万2500円の弁済について(別紙1の一覧表3番)
Aは,Dから,本件金銭消費貸借契約に係る手数料として,D(OUTPUT)に対し,236万2500円を支払うよう要求され,これに従い,アクアペイメント社は,平成25年7月29日,上記金額をOUTPUTに振込送金して支払った。
本件金銭消費貸借契約締結に至るまでの交渉等において,Aと被告Y1の連絡は全てDを介しており,Dが貸付金債権回収方法等の連絡を行い,支払の催促をしていたこと(甲17,34,35,36,37,38等)などからすれば,本件金銭消費貸借契約締結に当たってDと被告Y1は一体として行動し,本件金銭消費貸借契約から得られる利益の分配を行っていたものと評価すべきであり,Dに対して手数料名目で支払った上記金額が本件金銭消費貸借契約上の債務に係るみなし利息に当たること,当該支払が本件金銭消費貸借契約上の債務に係る弁済に当たることは明らかである。
ウ 5万5000円の弁済について(別紙1の一覧表7番)
Aは,平成25年9月13日,Dから本件金銭消費貸借契約上の債務の弁済として5万5000円の支払を求められ,現金で支払った。
上記のとおり,本件金銭消費貸借契約締結に当たってDと被告Y1は一体として行動し,本件金銭消費貸借契約から得られる利益の分配を行っていたものと評価できるから,Dに対する上記支払は本件金銭消費貸借契約上の債務の弁済に当たることは明らかである。仮にそのように認められないとしても,Dは被告Y1から本件金銭消費貸借契約上の債務について弁済受領の代理権を与えられているため,上記支払は,本件金銭消費貸借契約上の債務の弁済に当たる。さらに,上記の弁済受領の代理権が認められないとしても,民法478条に基づき,上記の支払は本件金銭消費貸借契約上の債務の弁済として認められる。
エ 350万円の弁済について(別紙1の一覧表23番)
アクアペイメント社は,平成26年5月20日,被告Y1からインターネット決済代行システムを構築するという訴外MIT株式会社(以下「MIT」という。)発注のシステム開発案件(以下「本件システム開発」という。)を紹介され,被告Y1を介して当該開発費用に係る折衝を行い,最終的にMITとの間で消費税込み1080万円で受注した。
アクアペイメント社は,被告Y1との間で,上記開発に係る売上を原資として,被告Y1に対する本件金銭消費貸借契約上の債務の弁済とする旨合意し,被告Y1の指示により,被告会社名義の口座に350万円を振込送金した。
この点,被告Y1は,上記350万円は紹介手数料である旨主張するが,仮にそうであるとすると,アクアペイメント社の手元に利益が残らず,むしろ本件システム開発に係る経費の分だけマイナスになる取引を原告が行うこととなり,考え難い。
(被告会社の主張)
ア 原告主張の78万5000円の弁済について
被告Y1は和光とは取引関係にあるが,別人格であり,和光の受領した金員を被告Y1が受領したものと評価すべき根拠はない。
イ 原告主張の236万2500円の弁済について
被告Y1とDが本件金銭消費貸借契約締結に当たって一体として行動していたなどという事実は存しない。Dはあくまで紹介者としての行動をしていたにすぎない。被告らは,Dが原告に対し甲17や甲18の電子メールを送信していたことを知らなかったし,これらの交渉をDに依頼したことはない。また,Dから236万2500円について何らかの分配を受けたこともなく,仮にOUTPUTに上記金額が支払われているのであれば,それはDのアクアペイメント社への支援業務の対価と推認される。
ウ 原告主張の5万5000円の弁済について
被告Y1はDに対し弁済受領権を与えておらず,また,Dは被告Y1への返済のためにDに支払うようになどとは述べていないから,Dに弁済受領権があるという外観も存しない(仮に外観があったものと考えられるとしても,Aは頻繁に被告Y1と連絡を取っていたにもかかわらず,上記権限の有無を確認しなかったのであるから,少なくともAには過失がある。)。
エ 原告主張の350万円の弁済について
アクアペイメント社が被告会社に対し,平成26年7月3日に350万円を支払ったことは認めるが,これはアクアペイメント社に対し,本件システム開発を案件として紹介したことに伴う手数料である。当該手数料については,MITからの受注金額とアクアペイメントの開発費との差額とする旨口頭で合意した。
被告Y1のメール(乙1)は,被告Y1が本件システム開発の報酬1080万円を代理受領し,被告会社の紹介手数料を控除した残額と本件金銭消費貸借契約上の貸付債権とを相殺することを意味したものである。
原告の主張に従えは,MITから1080万円で本件システム開発を受注し,これを三百数十万円で訴外IVP株式会社に委託し,自らは何らの作業も行わずに700万円余りの利益を得ることとなり,不自然,不合理である。
第3  当裁判所の判断
1  被告Y1に対する請求について(本訴)
前提となる事実(6),(7)及び弁論の全趣旨によれば,請求原因事実が認められ,原告の請求は理由がある。
2  争点(1)について
公正証書に記載された債権の発生原因事実が多少真実の事実と一致しないところがあっても,その記載により債権の同一請求が認識できる場合は,その公正証書は真実の債権と一致する部分に限り,債務名義としての効力を有するものといえる(最判昭和45年10月1日第一小法廷判決・裁判集民事101号7頁)。
これを本件についてみると,本件公正証書に記載された貸付金債権の発生原因事実は,本件金銭消費貸借上の貸付債権の発生原因事実と額面の債権額が一致していること(現実の交付額が1500万円であることは当事者間に争いがない。),貸付日の記載が本件契約書1,同2の記載と異なるものの,弁済期の記載は本件契約書2に記載されたものと一致していることに照らせば,本件公正証書に記載された債権と,本件金銭消費貸借契約上の貸付金債権と本件公正証書に記載された貸付金債権との間に客観的な同一性を認めることができるから,原告の主張は理由がない。
3  争点(2)について
本件公正証書上記載された債権額1650万円と現実に交付された1500万円との差額150万円が利息制限法3条本文に規定するみなし利息に当たることは当事者間に争いがない。
そうすると,本件契約書1に関しては10日間で1割相当額150万円の利息とみなされるから(いわゆるトイチの金利であり,年365%),利息制限法1条のみならず,出資法5条3項の定める上限金利109.5%を大幅に超過する高金利に当たることとなる。
しかし,前提となる事実のとおり,その後に作成された本件契約書2及び本件公正証書により上記差額は特段変更されておらず,実質的には平成25年12月16日までの金利(141日間,年約26%と算出される。)とも評価しうることからすれば,本件契約書1,同2や本件公正証書上,利息を無利息とする定めをおくなどしており,被告Y1において,法の規制を潜脱するため意図的に上記のような各契約書を作成したものとうかがわれることを考慮しても,公序良俗に反し,民法90条に基づき無効となるとまではいえず,原告の主張は理由がない(なお,後記6のとおり,別紙1の弁済一覧表記載の78万7500円の手数料に関してもみなし利息と評価しうるが,上記判断を左右するものではない。)。
4  争点(3)について
貸金業法42条1項に言う「業として行う」とは,反復継続し,社会通念上,事業の遂行とみることができる程度のものをいうと解されるところ,本件においては,被告Y1は,個人として3,4回貸付を行ったことを認めており(被告Y1),原告と関わらない第三者に対しても数千万円という大金を貸し付けるなどしていたこと(甲33(メール③の記載部分))における記載によれば当該事実は明らかである。)は認めることが出来るが,これらの事情から直ちに社会通念上事業の遂行とまで認めることは出来ない)。
この点,原告は,被告Y1や同人の関連会社の従業員は,Aに対して,自らお金を貸し付ける仕事をしていると説明していたことなどを主張し,これに沿う供述もするが,これを裏付ける的確な証拠は存しないし,本件全証拠を精査しても,被告Y1が被告会社の100%株主であることを超えて一体として評価すべきことを基礎付けるに足りる証拠は存しない。
その他原告の主張を認めるに足りる的確な証拠はないから(なお,被告Y1において,法の規制を潜脱するため意図的に上記のような各契約書を作成したものとうかがわれるとしても,反復継続性に関する上記判断を左右するものとまではいえない。),原告の主張は理由がない。
5  本件金銭消費貸借契約締結,その後の弁済に係る事実経過
前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
(1)  本件金銭消費貸借契約締結までの経過(甲18,20(枝番を含む),57,乙15,原告代表者(A),被告Y1)
ア 平成25年7月ころ,Aは,アクアペイメント社や関連会社に係るソフトウェア開発等の事業資金の調達に行き詰まり,資金繰りのため知人からDを紹介され,D及び被告Y1同席の上で融資額等について相談した。
イ アクアペイメント社は,平成25年7月25日当時,ソフトウェア開発事業に関し,取引先との関係で既に600万円以上の支払い遅滞に陥っており,また,同月31日には373万6950円,同年8月31日には157万5000円をそれぞれ取引先に対し弁済することとなっており,同年7月25日,被告Y1との間で連絡調整などしていたDに対し,上記の支払先等を記載した一覧表を添付したメールを送信した。
ウ OUTPUT所属のDは,被告Y1の指示により,本件金銭消費貸借契約締結に向けた準備の一環として,平成25年7月28日,A宛に,「アクア名刺」と題する被告Y1がDに対し送信したメールを転送した。転送元のメールには,本件金銭消費貸借契約に係る印紙代4000円,公正証書作成費2万3000円等の費用の記載があった。
Dは,当該メールをAに対し転送するに当たり,被告Y1から翌日の諸経費明細が来ているので用意しておいて欲しいという連絡に加えて,被告Y1に係る手数料が5%=75万円+消費税3万7500円=78万7500円,OUTPUTDに係る手数料が15%=225万円+消費税11万2500円=236万2500円となることを記載した。
(2)  本件金銭消費貸借契約締結日の状況(甲16,21(枝番を含む),22,57,62,乙15,原告代表者(A),被告Y1)
ア 同契約締結・実行の手続は,アクアペイメント社の事務所で行い,A,アクアペイメント社の代表取締役E,同社従業員1名,被告Y1,D,訴外F(原告が本件金銭消費貸借契約上の貸付金の資金源と主張する,訴外Gの経営する訴外T-Capital株式会社当時の商号)の従業員。以下「F」という。)が同席した。当日誰が同席するかについてはDが連絡調整していた。
イ アクアペイメント社は,同日,1500万円を交付され,直ちに同社名義の普通預金口座に現金で1500万円を入金し,その後にまずキャッシュカードで76万8000円を出金し,その後OUTPUTに対し236万2500円を送金した。
ウ 被告Y1は,同年7月29日,本件金銭消費貸借締結に際し,予めAの指示でアクアペイメント社従業員が準備し,不動文字としてアクアペイメント社宛て,金額78万7500円(業務委託料75万円,消費税等3万7500円含む),「東京都 株式会社 代表取締役Y1」などと記載され,作成されていた受領書(甲21の2)に,被告会社の住所地を手書きで記載したが,「渋谷区〈以下省略〉」まで記載した後,当該記載を手書きで削除し,和光名義の受領書を作成して欲しい旨述べた。
エ Aは,上記受領書に和光の住所地,会社名・代表取締役名の記載があれば受領書のひな形を再度作成する旨述べ,被告Y1はこれらを手書きで記載した。
その後,アクアペイメント社従業員は,上記手書きの記載を元に,作成名義を和光に変更した受領書ひな形を作成し,被告Y1はその記載内容を確認して和光名義の印で押印をした。
オ また,同席上では,上記イの送金に関連して,予めAの指示でアクアペイメント社従業員が準備したOUTPUTのアクアペイメント社宛て,金額236万2500円(業務委託料225万円,消費税等11万2500円含む)を受領した旨不動文字で記載された受領書に,Dが押印をして交付した。
(3)  本件金銭消費貸借契約締結後の交渉等(甲17,31,34~38,51,57,乙15,原告代表者(A),被告Y1)
ア 平成25年8月14日,Dは,A宛に,「Y1氏返済の件」と題するメールを送信した。当該メールには,15日予定の入金で返済する場合,返済金額は1650万円+延長金利(10日間分)150万円+Y1氏ジャンプ手数料15%=250万円の合計で2025万円になること,昨日現在の通帳のコピーをY1氏にメールして欲しいこと及び気持ちの問題として5万円から10万円でも本日内入れして欲しいことなどが記載されている。
イ Dは,平成25年9月10日,同年10月1日,同年11月6日,同年12月6日,同月9日,Y1への返済を求めたり,返済条件の交渉に関する内容のメールをAに対し送信していた。これらのメールの中には,アクアペイメント社が受けた融資に関連し,訴外Gから返済を求められている趣旨の記載もされていた。
ウ 被告Y1は,平成25年11月11日,公正証書作成に関し,作成費にかかる連絡等をAに対し直接したが,その際,当該メールを参考送付(CC)でDに送付していた。
エ Dは,平成26年3月2日,Aに対し融資に係る手数料額及び分割返済の方法の提案をするものとして送付したメールには,Dが代表取締役である和光(千代田区〈以下省略〉)は被告Y1がオーナーの会社であることなどの記載がある。その後のやりとりで,Dは,Aに対し,同月3日にはY1への支払についてはAが記載した金額で了承してもらったとして,アクアペイメント社が和光に対し,財務に関するコンサルティング業務の成果報酬に伴う一時金報酬として同年4月末日に250万円を支払うことを内容とした確認書に捺印してPDFファイルで送付するよう指示した。
6  争点(4)アないしウの弁済の有無について
(1)  78万7500円の弁済について
上記5の各認定事実によれば,①被告Y1は本件金銭消費貸借契約締結の準備やAへの指示をDに依頼していたこと,②本件金銭消費貸借契約締結前日にDから,被告Y1に対する手数料が78万5000円である旨記載したメールを受領していたこと,③Aは上記②にしたがって,アクアペイメント社従業員に予め被告Y1の姓は記載した受領書ひな形を作成したが,被告Y1において一旦同人の住所を記載し,その後和光名義の受領書ひな形を作り直させて,後者の受領書を作成したこと,④Dは,和光は被告Y1がオーナーである会社であることをAに対するメールに記載していたこと,⑤DがAと折衝していたY1への支払に関し,アクアペイメント社が和光に対し,財務に関するコンサルティング業務の成果報酬に伴う一時金報酬として同年4月末日に250万円を支払うことを内容とした確認書が作成されたこともあったことがそれぞれ認められる。
これらのとおり,被告Y1に対する手数料として連絡されていた金額と和光名義の受領書記載の金額が一致していることや被告Y1において当該受領書を作成したこと,被告Y1が和光の実質的経営者であることや上記手数料と同様の取扱を別個の借り入れに際し行っていたものとうかがわれることを併せ考えると,上記のとおり再度作成された受領書は作成名義を和光とするものであるが,実際には原告が被告Y1に対し,本件金銭消費貸借契約上の債務の弁済として上記額を支払ったものと推認される。
これに対し,被告Y1は,Dに上記のような指示はしていないし,DとAの間のやりとりは知らなかった旨述べるが,DやOUTPUTとの取引関係や本件金銭消費貸借契約締結日に至る関係者との調整を誰がどのように行っていたなどの重要な部分について曖昧な供述をしていること,上記78万5000円の受領書の作成経緯に関しても,被告Y1はFから和光名義の受領書を作成するよう頼まれたため代筆したなどと述べるが,Fにおいて別会社である和光の受領書を作成するよう求めた合理的理由は説明せずに頼まれたから自ら署名したなどという不自然な供述を繰り返していることからすれば,採用できない。
(2)  236万2500円の弁済について
原告は,本件金銭消費貸借契約締結に当たってDと被告Y1は一体として行動し,本件金銭消費貸借契約から得られる利益の分配を行っていたものと評価すべきであるから,Dに対して手数料名目で支払った上記金額が本件金銭消費貸借契約上の債務に係るみなし利息に当たること,当該支払が本件金銭消費貸借契約上の債務に係る弁済に当たることを主張する。
この点,確かに,上記5の各認定事実のとおり,本件金銭消費貸借契約締結に至るまでの交渉等において,Aと被告Y1の連絡はDを介して行われていたこと,本件金銭消費貸借契約上の債務の弁済の督促も継続的にDが行っていたことからすれば,被告Y1とD(OUTPUT)は本件金銭消費貸借契約上の折衝を一体として行っていたものとうかがわれるが,上記(1)のとおり認められる78万5000円と150万円のみなし利息を合算すると,OUTPUTが受領したとされる236万2500円と近似した金額となることからすれば,概ね同額の分配がされたものと考えられるのであり(原告もそのように主張している。),最終的にはOUTPUTが受領した上記236万2500円が被告Y1に交付されたことを裏付ける的確な証拠は存しないし,上記の分配状況から,上記236万2500円を被告Y1に還流させることを企図していたものと推認することは出来ない。
したがって,原告の主張は理由がない。
(3)  5万5000円の弁済について
原告は,平成25年9月13日,Dから本件金銭消費貸借契約上の債務の弁済として5万5000円の支払を求められ,現金で支払った旨主張し,Aもこれに沿う供述をするが,当該金員交付を裏付けるに足りる的確な証拠はないから,原告の主張は理由がない。
7  争点(4)エの弁済の有無について
(1)  証拠(甲17,42,43(枝番を含む),乙1,2,4,5,57,乙15,原告代表者(A),被告Y1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
ア 被告Y1は,平成26年5月19日,Aに対し,ネット決済代行会社のシステム構築は可能か,債務と相殺等も方法である旨記載したメールを送信した上で,翌20日,Aに対し,インターネット決済代行システムを構築するという訴外MIT発注のシステム開発案件(本件システム開発)を紹介した。
同月の時点で,アクアペイメント社,原告及びAとの間で,本件金銭消費貸借契約上の債務のほかには借入等はなかった。
イ Aは,原告名義で,被告Y1に対し,同月22日,クレジット決済ASPシステム(GMOペイメントゲートウェイというパッケージを用いたもの)の構築費用(ライセンス料を含む。)を合計1134万円(消費税込),同システム月額基本運用費用を合計27万円(消費税込み)とする原告作成名義の見積書をメールに添付して送信した。当該メールには,管理する技術系ベンダーは現在の原告のベンダーをつける旨の記載があった。
ウ Aは,被告Y1に対し,同年6月25日,上記パッケージを利用したECサイト向け決済システム構築費用を合計702万円(消費税込),同システム月額基本運用費用を合計37万8000円(消費税込み)とする原告作成名義の見積書をメールに添付して送信した。当該メールには,サーバ並びにシステム構築はベンダー1社に統一すること,ベンダーは原告関連企業(元NTT関連企業)であることなどの記載があった。
エ 被告Y1は,上記見積書を踏まえて,Aに対し,同年6月25日午後11時52分に,「税込650万Fixでお願いします。」と返信した。これに対し,Aは,翌26日午前零時47分に,了解した旨返信した。
Aは,上記の後,アクアペイメント社名義で,Y1を通じて,本件システム開発に係る発注者である訴外株式会社MIT宛の請求書(ECサイト構築&決済システム構築費1080万円(消費税込み)との記載があるもの)を同社に交付した。
オ アクアペイメント社は,MITから本件システム開発代金として1080万円を受領し,平成26年7月3日,同社名義の普通預金口座から被告会社に対し350万円を送金した。
カ 上記オ及び翌4日の20万円の支払(別紙1の弁済一覧表の番号24番,原告から被告Y1宛)の後,原告から被告Y1に対する任意の弁済はされておらず,被告Y1は,遅くとも同年10月26日までに,本件公正証書を債務名義とした債権差押命令の申立てをした。
キ 上記カと前後して,原告が本件システム開発に当たり下請けとして発注した訴外株式会社IVP(以下「IVP」という。)との間で紛争が生じ,同社に対する委託料(350万円前後)を支払わなかったという経緯があった。本件システム開発に紹介者として関与した被告会社は,同年11月12日,IVPに対し,原告の上記委託料の支払として少なくとも177万3360円を送金した。
ク 被告Y1は,被告会社において平成26年7月25日以降平成27年5月までの間に合計20回以上にわたり原告,A及び同人の家族に対し貸付けを行った旨述べており,その理由について,当時Aとの関係が良好であった旨述べている。
(2)  上記経緯に関し,被告らは,アクアペイメント社が被告会社に対し支払った350万円は,被告会社と同社との間で本件システム開発を案件として紹介したことに伴い合意した手数料430万円の一部である旨主張し,被告Y1はこれに沿う供述をする。
この点,被告Y1の供述内容は,本件金銭消費貸借契約上の貸付金債務と同一性を有する本件公正証書に関する債務の弁済に関しては,実質的な受注額である650万円(アクアペイメント社がMITから受領する1080万円(上記(1)エ,オ)から被告会社に交付する手数料430万円を控除した額)を被告Y1に対する債務の弁済とする予定であった旨述べるものであるところ,確かに,650万円という金額自体は上記(1)エのメールに記載された金額と合致するものである。しかし,被告Y1の上記供述内容によれば,原告は一方で下請業者である訴外IVPとの間では委託料350万円前後を支払い(上記(1)キ),MITから受領する1080万円については本件システム開発に係る紹介手数料及び弁済に全て充てられ,むしろ上記委託料については別途資金調達を要するとなるはずであり,その内容において不自然,不合理と言わざるを得ない。
また,被告Y1の上記供述内容によれば,アクアペイメント社は上記紹介手数料の一部のほか本件公正証書に関する弁済のため650万円を支払うべきであったが,これに関する支払は何らなかったにもかかわらず,被告Y1は被告会社において平成26年7月25日以降平成27年5月までの間に合計20回以上にわたり原告,A及び同人の家族に対し貸付けを行った理由について,当時Aとの関係が良好であった旨述べ(上記(1)ク),原告と訴外IVP間の紛争に関連して被告会社が訴外IVPに対する送金をした時期と近接する平成26年10月下旬ころまでは,特段原告に対する650万円の弁済を求めた形跡もない。
さらに,被告Y1は,本件システム開発手数料の内容について,アクアペイメント及びMITに対するサポートやコンサルティング業務を行う対価であり,サポートの内容はMITとの関係で守秘義務があるから言えないが,被告会社単独で金額等を決めており,発注者,アクアペイメント社との間で具体的な話もしていないなどと述べるにとどまっている。
上記のとおり,被告Y1の述べる供述内容には不自然,不合理な点があるものと言わざるを得ない。
(3)  他方,原告は,本件システム開発に関し,当初見積もりは1134万円であったが,交渉の末,アクアペイメント社において,最終的にMITとの間で消費税込み1080万円で受注したこと,アクアペイメント社は,被告Y1との間で,上記開発に係る売上を原資として,被告Y1に対する本件公正証書上の債務の弁済とする旨合意し,被告Y1の指示により,被告会社名義の口座に350万円を振込送金したことを主張し,原告代表者であるAもこれに沿う供述をしている。
Aの供述内容にも,1080万円と650万円の差額は430万円であるのにこれと一致した金額を送金しなかった経緯や,IVPへの発注額や同社及び原告が行った作業内容,経費等についてあいまいな部分があり,また,客観的な裏付けに係る証拠が提出されていないところであるが,その内容において上記(1)のとおり認められる経過と特段整合しない点はなく(上記(1)エには「税込650万Fixでお願いします。」との記載があるが,当該メールの記載上,被告ティックが取得する紹介手数料に直接言及した記載はなく,かえって,上記(1)アのとおり,被告Y1からAに対し,債務と相殺等も方法であるとの提案をしていることからすれば,MITから受領する報酬と上記650万円の差額を上記本件公正証書上の債務の弁済に充てる趣旨と解する余地はあるのであり,このことは,原告の送金額350万円と上記差額(と)が合致しないとしても左右されるものではない。),一定程度の合理性がある。
また,上記350万円の送金は,被告Y1ではなく被告会社名義の口座へ送金されているが,そもそも被告Y1から債務の相殺等を提案したメール(上記(1)ア)は被告会社名義で送信されているものであることからすれば,被告Y1と被告会社の一体性が認められないまでも,便宜により被告Y1の債権回収の際に被告会社名義の口座が用いられた可能性がうかがわれるから,当該事情により上記判断は左右されない。
このように,Aの供述に,その内容において上記(1)のとおり認められる経過と特段整合しない点はなく,一定程度の合理性があることに照らせば,少なくともアクアペイメント社が,被告Y1との間で,上記開発に係る売上を原資として,被告Y1に対する本件公正証書上の債務の弁済とする旨合意し,被告Y1の指示により,被告会社名義の口座に350万円を振込送金したことに関しては,Aの供述は上記(1)の各認定事実により裏付けられているというべきであり,当該弁済に係る原告の主張は理由がある。
8  上記6,7の各判断を踏まえると,本件公正証書上の債務に関する各弁済額は別紙3の各弁済額欄記載のとおりとなり,平成25年12月17日以降履行遅滞に陥ったものとして同月16日までの弁済額を元金に,その後の各弁済額,各取立額については利息制限法1条3号所定の年15%の割合による遅延損害金にまず充当し,その後元金にそれぞれ充当して算出すると(当該算出方法に関しては当事者間に争いがない。),平成30年1月18日(本件口頭弁論終結時)においては残元金が存しないこととなる(なお,上記各取立額については執行手続上元金に充当されているが(甲45,46,57),上記判断を左右しない。)。
第4  結論
以上によれば,原告の本訴請求はいずれも理由があり,被告会社の反訴請求は理由がない。
東京地方裁判所民事第15部
(裁判官 北村ゆり)

 

〈以下省略〉

 

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