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「成果報酬 営業」に関する裁判例(15)平成29年 4月13日 東京地裁 平28(行ウ)8号 不当労働行為救済命令取消請求事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(15)平成29年 4月13日 東京地裁 平28(行ウ)8号 不当労働行為救済命令取消請求事件

裁判年月日  平成29年 4月13日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(行ウ)8号
事件名  不当労働行為救済命令取消請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴(棄却)、上告・上告受理申立(棄却・不受理)  文献番号  2017WLJPCA04136015

要旨
◆放送法に基づいて設立された特殊法人である原告が、原告と委託契約を締結して放送受信料の集金や放送受信契約締結の取次ぎ等の業務に従事する者(地域スタッフ)である訴外Eの加入する労働組合(補助参加人組合)からの団体交渉の申入れ(本件団交申入れ)に応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、救済命令を受けたため、再審査請求の申立てをしたところ、同申立て棄却する旨の本件命令を受けたことから、同命令の取消しを求めた事案において、地域スタッフは、原告との交渉上の対等性を確保するために労働組合法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められ、同法上の労働者に該当すると解するのが相当であるとした上で、原告と補助参加人組合の本部である本件組合との間で交渉ルールなどの基本的な事項についての原告主張に係る合意が成立していたとは認められず、また、原告と補助参加人組合との間で原告主張に係る交渉慣行が存在していたとも認められないことなどから、本件団交申入れに対する原告の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たり、不当労働行為に該当すると判断して、請求を棄却した事例

裁判経過
上告審 平成30年10月10日 最高裁第二小法廷 決定 平30(行ツ)177号・平30(行ヒ)192号
控訴審 平成30年 1月25日 東京高裁 判決 平29(行コ)178号 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件

評釈
野矢伴岳・民主法律時報 534号1頁
新谷眞人・労働法学研究会報 2669号24頁

参照条文
労働組合法3条
労働組合法7条2号
行政事件訴訟法3条3項

裁判年月日  平成29年 4月13日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(行ウ)8号
事件名  不当労働行為救済命令取消請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴(棄却)、上告・上告受理申立(棄却・不受理)  文献番号  2017WLJPCA04136015

主文

原告の請求を棄却する。
訴訟費用は,補助参加によって生じた費用も含め,原告の負担とする。

事実及び理由

第1  請求
中央労働委員会が中労委平成25年(不再)第53号日本放送協会不当労働行為事件について,平成27年11月4日付けでした命令を取り消す。
第2  事案の概要
原告(X協会)と委託契約を締結して放送受信料の集金や放送受信契約締結の取次ぎ等の業務に従事していたEが,原告から業務に使用する端末機器の貸与を取り消され,返還を命じられたことなどについて,Eが加入していた補助参加人(Z労働組合。以下「参加人」という。)から団体交渉が申し入れられたところ,原告がこれに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして,参加人が不当労働行為救済命令の申立てをした。
本件は,参加人の申立てに対して,d労働委員会(以下「d労」という。)が救済命令を発し,中央労働委員会(以下「中労委」という。)も原告の再審査請求の申立てを棄却する旨の命令(以下「本件命令」という。)を発したことを受けて,原告が,原告と委託契約を締結して上記業務に従事する者(以下「地域スタッフ」という。)は労働組合法(昭和24年法律第174号。以下「労組法」という。)上の「労働者」に該当せず,仮にこれに該当したとしても,原告が団体交渉に応じなかったことには正当な理由があり不当労働行為に該当しないと主張して,本件命令の取消しを求める事案である。
1  前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠〔証拠の標記は,特に断らない限り枝番号も含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)
(1)  当事者等
ア 原告は,放送法(昭和25年法律第132号)に基づいて設立された放送事業を行う特殊法人である。
原告は,全国の管轄区域ごとに放送局,放送支局及び営業センター(以下,これらを併せて「センター等」という。)を設置しており,平成25年3月5日時点の職員数は約1万人である。平成23年11月時点で約4300人,平成27年度で2015人の地域スタッフがおり,原告の放送受信料の集金業務や放送受信契約締結の取次業務等に従事していた。(甲2,16)
イ 地域スタッフが構成員となっている団体として,a労働組合(以下「a労」という。)及びb労働組合(以下「本件組合」という。)等があり,本件組合はa労を脱退した地域スタッフが中心となって,昭和57年8月25日に結成された団体である(これらの団体が,労組法上の労働組合に当たるかという点については,当事者間に争いがある。)。
参加人は,平成16年4月1日に,e市以南の地域を管轄する原告のc営業センター(以下「cセンター」という。)に所属する地域スタッフが本件組合の支部として結成した団体(なお,平成26年6月1日にそれまでの「f支部」という名称を現在のものに改めている。)である(甲2,乙44,乙195)。
参加人は,e市近辺の労働組合が加盟する連合団体であるg労働組合総連合(以下「g労連」という。)にも加盟している(甲2,乙57,65)。
ウ Eは,cセンターに所属する地域スタッフであり,平成16年4月の参加人の結成時及び平成22年10月から平成26年6月頃までの間,参加人の執行委員長を務めていた(甲2,乙66)。
エ Fはg労連の専従事務局長であり,平成23年6月10日に参加人の特別執行委員に就任している(甲2,乙65)。
(2)  原告と参加人との間の交渉の経緯等
ア Eは,平成21年12月頃,原告から,集金などの業務を行う際に使用する電子通信決済端末機器「キュービット」(以下「キュービット」という。)の貸与を受けていたところ,原告は,平成22年9月10日,キュービットの利用率が低いとして,Eにキュービットの返還を求め,Eはこれに応じた(甲2,乙66,92,126)。
イ Eは,平成23年1月4日,原告から,改めてキュービットの貸与を受けたが,原告は,同年4月1日,同年3月のEのキュービットの利用件数がcセンターで最下位であったとして,Eに再度キュービットの返還を求め,Eはこれに応じた(甲1,2,乙66,126,129)。
ウ 参加人は,Eへのキュービットの貸与に不平等な取扱いがあるとして,原告に対し交渉を申し入れ,平成23年4月1日以降,原告と参加人との間で交渉の機会が持たれた。この間,参加人側は,Fの出席を求めていたのに対し,原告側は,従前の慣行に反するとして,参加人のメンバーとであれば交渉に応じるなどと回答していた。(甲2,乙29,62,90)
エ 参加人は,平成23年11月2日,原告に対し,Eへのキュービットの貸与,担当業務に関する目標数の開示,目標数が達成できない場合に行われている特別指導などを交渉事項とする団体交渉の開催を書面で申し入れ,その際,参加人側からFの出席を求めたところ,原告側は,上記ウと同様,Fの出席が従前の慣行に反するとして,部外者を除いた参加人のメンバーによる交渉を求めた(以下,このとき参加人がした団体交渉の申入れを「本件団交申入れ」という。)(乙1,125,206)。
(3)  不当労働行為救済命令の申立て
参加人は,本件団交申入れに対する原告の対応は団体交渉拒否であり,不当労働行為に該当するとして,d労に対し平成23年12月16日付けで,原告を被申立人とする救済の申立てをしたところ(d労平成23年(不)第68号),d労は,平成25年7月30日付けで,地域スタッフが労組法上の「労働者」に当たること,本件団交申入れに対する原告の対応が正当な理由のない団交拒否に当たることを理由に救済命令を発した。原告は,これを不服として中労委に対し,再審査申立てをしたが(平成25年(不再)第53号),中労委は,d労と同様の理由により,平成27年11月4日付けで,同申立てを棄却する命令(本件命令)を発した。(甲1,2)
(4)  原告と地域スタッフとの間の委託契約の概要等
ア 原告と地域スタッフとの間の委託契約について
(ア) 原告は,原告とテレビ放送の受信者との間の新規の地上契約及び衛星契約締結の取次ぎ(以下「新規契約取次」という。),転居した受信者の住所変更の届出の取次ぎ(以下「転入取次」という。),受信者の地上契約から衛星契約への変更等の取次ぎ(以下「契約変更取次」といい,これらの取次ぎに係る業務を併せて「本件取次業務」という。)などの業務を地域スタッフに行わせている。
原告が地域スタッフに委託する業務は,①本件取次業務の他,②受信料の未納者からの受信料の収納,③受信契約者の転出・氏名等の変更手続,受信料の口座振替・継続振込利用の手続及び受信契約の解約手続の取次ぎ,④長期未収者に支払を再開してもらうための支払再開手続の取次ぎ(以下「支払再開取次」という。),⑤受信契約未契約者に関する情報の提供等である(以下,原告が地域スタッフに委託するこれらの業務を併せて「契約取次等業務」といい,原告が契約取次等業務を地域スタッフに委託する契約を「本件委託契約」という。)。(乙2,3,23,104,195)
(イ) 本件委託契約の契約期間は3年とされ,毎年4月1日から翌年3月31日まで1年度を受信料支払の単位である2か月ごとに第1期から第6期までに区分し,これらの各期の偶数月を「初月」又は「第1月」,奇数月を「後月」又は「第2月」と称している(乙2,195)。
(ウ) 地域スタッフは,本件委託契約によって委託される業務内容の違いによって,新規契約取次・転入取次を中心に行う契約開発スタッフ,支払再開取次を中心に行う支払再開スタッフ,新規契約取次・転入取次・支払再開取次を中心に行う地域管理スタッフ,新規契約取次・転入取次・支払再開取次及び収納業務を中心に行う総合スタッフの四つに区分されており,原告では,これらの四つの区分を「委託種別」と称している(乙2,4,127,144,弁論の全趣旨)。
イ 地域スタッフへ交付されるマニュアル類について
原告は,地域スタッフに対し,下記の資料を交付している。
(ア) 「『実施要領』のあらまし 平成22年10月 X協会」と題する書面(以下「実施要領のあらまし」という。),これに付属資料として編綴された「実施要領」(以下,単に「実施要領」という。)及び「平成22年度下半期以降の地域スタッフ体制について」(乙4)
実施要領は,本件委託契約で定めている地域スタッフの仕事の進め方の例を具体的に示したものである。実施要領のあらましの冒頭には,業務が円滑に進められるよう有効に活用されたい旨が記載されている。
(イ) 「新たな地域スタッフ業務マニュアル」と題する書面(乙5。以下「本件業務マニュアル」という。)
本件業務マニュアルには,受信料の支払率を向上させ公平負担の徹底を図るためのものとして,地域スタッフの委託種別ごとの具体的な仕事の進め方が示されている。ただし,平成22年10月以降は,交付されていない。(弁論の全趣旨)
(ウ) 契約・収納業務従事者用マニュアルである「事務処理の基本」及びその別刷と称する「帳票記入のポイント」と題する書面(乙23,28。以下,これらを併せて「事務処理マニュアル」という。)
事務処理マニュアルには,諸取次ぎの進め方,諸取次ぎに使用する手続帳票の記載方法,諸報告書の記入・提出方法,つり銭の準備・金種の例示・管理方法等についての解説が記載されている。
ウ 地域スタッフへ貸与される主な物品について
(ア) ナビタン
原告は,受信契約者の契約内容・受信料の支払状況,受信契約者等との面接等の対応結果,転居・空き家確認等のデータを日々更新し,送受信させるために「ナビタン」と称する携帯端末機器を利用しており,ナビタン及びその送受信装置を地域スタッフ各人に1組無償で貸与している(乙2,弁論の全趣旨)。
(イ) 集金受託証
地域スタッフが訪問・面接した受信契約者等に提示する顔写真付きのカードであり,「X協会 証明書」との表示,当該スタッフの氏名,原告の委託業務を取り扱う者であることを証明する旨及び有効期間の記載に続き,末尾に「X協会○○営業センター」と表示されている(乙45,64)。
(ウ) スタンプ式領収印
諸取次ぎの際に必要な領収書控え等の原告取扱者の欄に押印するためのスタンプ印であって,「X協会」と印字される。(乙27,28,64)
エ 一斉デー等について
cセンターは,月に数日,地域スタッフが特定の取次業務へ重点的に従事する日を設定し,「○○デー」と称して業務計画表に記載し,事前に地域スタッフ全員に周知していた。「○○デー」には,例えば,地上契約から衛星契約への契約変更取次に係る業務を優先して行うよう定められた「BS契変デー」や,月に1回程度,基本的に午前9時から活動を行うよう定められた「センター一斉9時からデー」などがある(以下,これらの「〇〇デー」を併せて「一斉デー等」という。)。
2  争点及び当事者等の主張の概要
本件の争点は,①地域スタッフが労組法上の「労働者」に当たるか(争点1),②本件団交申入れに対する原告の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか(争点2)であって,これらの争点に関する当事者及び参加人の主張の要旨は次のとおりである。
(1)  地域スタッフが労組法上の「労働者」に当たるか(争点1)
(被告の主張)
原告と地域スタッフは,契約形式上は委託契約を締結しているが,以下のアからカまでの事実関係に照らすと,地域スタッフは,契約取次等業務を効率的に行うための労働力の確保を目的として採用されたものであり,団体交渉の保護を及ぼす必要性と適切性が認められるから,労組法上の「労働者」に該当する。
ア 事業組織に組み込まれていること
(ア) 地域スタッフの組織内での位置付けについて
原告は,①全国の各地域に営業部署を配置して平成23年11月時点で約4300人の地域スタッフを置き,各地域スタッフの担当する区域を設定していること,②地域スタッフ個人別の目標数を設定していること,地域スタッフは,③上記②の目標設定を踏まえて業務計画表を提出するものとされていることを踏まえると,原告の組織内において地域スタッフは事業活動に恒常的かつ不可欠な労働力と位置付けられている。
(イ) 地域スタッフに対する管理について
原告は,各地域のセンター等に地域スタッフの運用を行うための職員を配置し,業務遂行過程に係る監督・指導を行ったり,地域スタッフをチームに配置してチームごとの目標数を設定した上で目標数達成のために強い働き掛けを行ったり,講習会やロールプレイングの練習といった研修等の機会を設けたりするなど,地域スタッフに対して相当程度の拘束を働かせ,集団的な管理をしている。
(ウ) 契約期間等について
原告と地域スタッフとの間の契約期間は原則として3年であり,地域スタッフは契約期間が長いほど高額の餞別金を受け取ることができるなど,原告においては,地域スタッフから長期間継続して労務の提供を受けられる仕組みを構築している。
(エ) 地域スタッフによる業務比率について
原告の中核的な業務である契約の取次業務等の約50%は地域スタッフが担っており,原告の業務の重要部分を地域スタッフが担当している。
(オ) 地域スタッフが常時携帯する物品について
原告は,地域スタッフに対して,業務遂行の際に常時携帯する物品を貸与している。
このうちの集金委託証は,地域スタッフが原告の委託業務を取り扱っていることを訪問先に提示するために利用するものであり,領収印は原告の名称及びその連絡先を表示するためのものであり,これらの貸与物品には,地域スタッフが原告の事業組織に組み込まれていることが表れている。
(カ) 業務を行う時間や業務量に関する裁量について
地域スタッフが行う契約取次等業務については,業務従事時間,場所,態様が地域スタッフの裁量に委ねられているが,これは,受信契約者等からの個別の依頼を契機とせず,原告の集団的管理の下,地域スタッフ自身が受信契約者等に働き掛けを行うという業務の性格に由来するものであって,外勤業務に従事する労働者と同様,上記裁量があることをもって地域スタッフの原告の事業組織への組み込みが否定されるものではない。
(キ) 再委託及び兼業について
地域スタッフは,届出をした上でその業務を他に再委託することができるが,その実態をみると,利用割合は低く,再委託の相手も家族や補助者などであって,再委託自体は相当限定的に行われている。
また,地域スタッフは兼業も認められているが,地域スタッフの業務時間は長時間であり,仮に兼業をするとしても相当限定した範囲でしか行うことができない。
イ 契約内容が一方的・定型的に決定されていること
(ア) 本件委託契約においては,共通の契約書の書式が利用されているところ,同契約書の大部分は定型的に定められており,地域スタッフが個別に協議して内容を定める余地がない。
原告は,地域スタッフとの個別協議により「委託種別」及び「受持区域の変更」を決めていると主張するが,「委託種別」の具体的内容は幾つかの選択肢によって定型化されており,「受持区域の変更」も原告が配置した営業センター管内間での異動に限定されていて,いずれも原告が定型的に用意した項目の中から選択するだけであるし,これらの項目も,一部の例外を除けば,個別交渉が行われ地域スタッフの希望どおりに決定されるわけではない。
(イ) 重要な労働条件である報酬については,参加人など地域スタッフによって構成される団体との協議を経て全国で統一された基準が決められており,地域スタッフ個人が交渉して決定する余地はない。
(ウ) 業務の日時,場所等について地域スタッフに裁量があるとしても,それは具体的な業務の遂行方法について一定の裁量が認められているというだけであって,契約内容が原告によって一方的・定型的に決定されているとの評価を左右するものではない。
ウ 報酬に労務対価性があること
(ア) 地域スタッフに支払われる報酬のうち月額事務費の運営基本額については,業務の従事があれば月額15万円が支払われるが,業務従事実績が低い場合又は訪問件数が少ない場合には7万5000円又は10万円が支払われるものとされている。
業務従事実績及び訪問件数がいずれも1件以上あれば7万5000円が支払われるという運営基本額の算定方法は,出来高制を基調としつつも,時間と労力の投入によって比較的容易に数を稼げる訪問件数と報酬とを結び付けているのであって,運営基本額については,生活保障に資する額を確保しようとする基本給的な性格を有するものとみることができる。
(イ) 原告の報酬体系上,地域スタッフの業務遂行過程上の業績・成果を踏まえて金額が調整される報奨金が支払われることになっており,さらに,慶弔金,医療費の負担,見舞金,餞別金など継続的な労務の提供に着目した報酬が存在していることからしても,地域スタッフの報酬には労務対価性がある。
エ 業務の依頼に応ずべき関係にあること
(ア) 原告は,地域スタッフに対し,本件取次業務等に従事する期間,担当区域及びその期間の目標数を指定しているところ,これは地域スタッフの業務内容からみて十分に具体的な指示が与えられているといえる。また,地域スタッフは,目標数を達成できないと原告から3段階の特別指導を受け,解約の可能性も示唆されるなど強い働き掛けを受けることになる。
(イ) 原告の設定した一斉デー等において,地域スタッフの業務の開始時刻や優先すべき業務が原告によって指定されており,原告内部では,その日の契約件数が明示されて,地域スタッフの名前が公開されるなど,労働契約下での営業職員に対する営業成績の管理方法と遜色ない扱いがされている。
オ 労務の提供について拘束や指揮監督を受けていること
(ア) 原告が地域スタッフに交付している本件業務マニュアルには,地域スタッフの業務遂行過程が詳細に踏み込んで記載されており,地域スタッフはそれに従って役務を提供している。本件業務マニュアルによれば,地域スタッフは相当長時間にわたって拘束され,就労している。
(イ) 地域スタッフは,定期的な講習会やチーム単位の定期的な会議によって集団的に管理され,目標達成のための特別指導を受けるとともに,ナビタンによって原告に毎日の稼働時間を把握され,それを踏まえて電話での指示を受けるなど原告による強い指揮監督を受けている。
カ 顕著な事業者性がないこと
原告は,地域スタッフの担当する区域及び目標数を一方的に設定し,地域スタッフは,上記目標の達成に向けてナビタンにより再訪問が必要な受信契約者等の情報提供を受け,これに基づいて勤務しており,原告が配分した区域外で営業しても業績としてカウントされないなどの事情を踏まえると,地域スタッフの業務内容は定型性が強く,また,達成される業績の良し悪しも原告による担当区域の指定に依存するのであって,地域スタッフには事業者性が顕著といえる程度に,自ら収益を管理する権限は与えられていない。
(参加人の主張)
ア 事業組織に組み込まれていること
原告と地域スタッフとの間の契約形式は委託契約という名目を採っているが,下記のような事実関係からすれば,その実体は原告の業務を効率的に行うための労働力の確保を目的とするものである。
(ア) 地域スタッフが行う業務は,放送受信契約の取次ぎ,放送受信料の収納などであるが,放送受信料が原告の収入の大部分を占めていることからすれば,これらの業務は,原告にとって主要かつ不可欠なものである。
(イ) 原告は,地域スタッフが提出した後に業務計画表を変更することが可能であるとするが,提出後の変更には変更手続が必要であるところ,原告の職員から圧力が掛けられるので,変更は事実上困難である。
(ウ) 原告は,地域スタッフに対して,採用後に組織構成や受信料制度,業務内容などについての講習を行い,業務従事中も講習会等や各種会議の開催,呼出し等によって頻繁に指導を行っている。
(エ) 原告と地域スタッフとの契約期間は3年とされているが,問題がなければ自動的に更新されるため,地域スタッフは長期にわたって継続的に業務に従事している。
(オ) 地域スタッフは,原告によって担当区域を指定され,その区域内で週に5,6日,1日平均8時間から10時間程度という長時間にわたって勤務しており,ナビタンを通じて原告に行動を把握され,そのデータを基にした指導を受けている。
(カ) 原告は,地域スタッフに対し,一斉デー等に,特定の日時に業務を行うよう指示を出している。
(キ) 原告は,原告開催の講習会等に参加しないことや職員の指導・監督に従わないことがあっても地域スタッフにペナルティが課されることはないと主張するが,地域スタッフが原告の意に反するこれらの行動を取ると,その後にノルマの達成が困難な区域に配置されるという事実上のペナルティを受ける。
また,その担当区域で業績が上がらないと,特別指導を受け,最終的には事実上解約に追い込まれるという契約上のペナルティも存在する。
イ 契約内容が一方的・定型的に決定されていること
原告は,受持区域の変更や区域外業務の委託は原告と地域スタッフとの個別の協議によって行われると主張するが,前者については実際には,期の初めに原告から受持区域を示されるのであって,地域スタッフの側に諾否の自由はないし,後者については成績上位者のみに委託の打診があるのであって,地域スタッフとの合意によって行われているとはいえず,原告によって恣意的に運用されている。
また,委託種別の変更は,原告が新しい種別を作ったり,現状の種別を廃止したりした際に,地域スタッフへの意思確認はあるものの,その確認方法は「その仕事はなくなりますよ」などと一方的に通告するだけであって,地域スタッフの納得の上で合意がされているとはいえない。
ウ 報酬に労務対価性があること
地域スタッフには,月の訪問件数が1500件又は取次件数が20件以上あれば運営基本事務費として15万円が支払われるところ,これらの件数は普通に就労していれば下回ることはない数字であるから,地域スタッフには実質上固定給として,月15万円が支払われているといえる。
地域スタッフに毎年6月及び12月に支払われる報奨金は,一般の労使関係において使用者の人事考課によって支払われる賞与に相当するものであり,各種給付金は,それぞれ一般の企業における慶弔金,見舞金,退職金,雇用保険に相当するものであるなど,原告においては,一般の労働契約と同様の賃金体系を採用している。
エ 業務の依頼に応ずべき関係にあること
地域スタッフは,原告から与えられた目標を達成できなければ,特別指導の対象となり,最終的には契約を解約されることになるのであるから,目標を設定された業務に応じなければならなかった。
また,原告には一斉デー等があり,地域スタッフは特定の日時に特定の業務を行うことを事実上強制されていた。
オ 労務の提供について拘束や指揮監督があること
地域スタッフは,午前7時から午後11時までの間に1日10時間程度労務に服する必要があり,契約の取りやすい土日・祭日と原告が「好適時間帯」と称する時間帯(午前中と午後6時から9時過ぎまで。以下,「好適時間帯」という。)には業務に服することを事実上強制的に求められる。原告は,ナビタンによって地域スタッフの行動を把握しており,土日・祭日には就労の催促があって,断ることは困難である。
また,地域スタッフの就労場所や業務遂行方法も原告によって指定されており,地域スタッフは場所的拘束も受けていた。
カ 顕著な事業者性がないこと
地域スタッフは,原告の指揮監督の下,週に5日から7日間,1日8時間から10時間の就労を行うのであるから,他の業務を行うことは極めて困難である。
(原告の主張)
原告と地域スタッフとの間の契約は業務委託であり,以下の事実関係によれば,地域スタッフは,労組法上の「労働者」に該当しない。
ア 事業組織に組み込まれていないこと
(ア) 地域スタッフの組織内での位置付けについて
原告は,全国の各地域に営業部署を配置し,地域スタッフの担当する区域及び目標数を設定しているが,これらは国会の審議を経た年間予算に基づき,一定の業績確保が求められる原告が委託契約において地域スタッフに求める業務内容そのものであって,原告は単に委託契約上の契約内容である業務につき履行を求めているにすぎない。
また,地域スタッフに上記目標設定を踏まえて業務計画表を提出させることも契約内容そのものであるし,この計画表は,提出後も変更可能であり,達成不能の場合のペナルティもない。
このように,地域スタッフについて,区域や目標が設定され,業務計画表の提出が求められていることは契約の内容そのものであって,地域スタッフが原告の事業活動に恒常的かつ不可欠な労働力として組織内に位置付けられていることを示唆するものではない。
(イ) 地域スタッフに対する管理について
原告は,各地域のセンター等に地域スタッフの運用を行うための職員を配置し,地域スタッフをチームに配置してチームごとの目標数を設定しているが,これらは,地域スタッフへ連絡したり地域スタッフから報告を受けたりする便宜のために行っているものであって,地域スタッフを管理しているものではない。
また,各地域のセンター等の職員の助言・指導を受け入れるかどうかは地域スタッフの任意であって,これに従わないことや講習会やロールプレイングの練習といった研修等に参加しないことによるペナルティも存在しないから,原告は地域スタッフを管理しているとはいえない。
(ウ) 契約期間等について
地域スタッフの委託契約期間が原則として3年とされており,契約期間が限定されているのであるから,この点は地域スタッフの原告の事業組織への組み込みを否定する要素である。
また,餞別金は優秀な人材確保を目的として制度化されたものであって,地域スタッフから長期間継続して労務の提供を受けられる仕組みを構築したものではない。
(エ) 地域スタッフによる業務比率について
原告は,地域スタッフが行う契約取次等業務を法人にも一定割合で発注しており,その割合は年々増加していることからしても,地域スタッフが原告の事業組織に組み込まれているとはいえない。
(オ) 地域スタッフが常時携帯する物品について
原告が地域スタッフに貸与している物品は,地域スタッフの業務遂行上不可欠であるナビタン,その関連物品,業務遂行上統一書式が不可欠である受信契約書や領収証等であって,これらを貸与していることをもって地域スタッフを原告の組織の一部として扱っていると考えるのは相当でない。
(カ) 業務を行う時間や業務量に関する裁量について
地域スタッフが業務を行う日時,業務量は,各人の広範な裁量に委ねられており,このことからも地域スタッフが原告の事業組織に組み込まれているとはいえない。
(キ) 再委託及び兼業について
地域スタッフには業務の再委託が認められており,実際に家族や知人のみならず,公募した者,従業員などに再委託した例もあって,再委託が相当数活用されている。
また,地域スタッフは届出を行わずに兼業を行うことも認められており,平成23年12月時点で少なくとも25人が兼業している。
イ 契約内容が一方的・定型的に決定されていないこと
(ア) 契約内容そのものに関わる根幹的な事項である「委託種別」や「受持区域の変更」については,委託契約上,個々の地域スタッフと原告との間で個別の協議をすることとされており,実際にも地域スタッフの希望で契約内容が変更されることもある。
(イ) 契約内容の中核というべき報酬等について,原告は,30年以上にわたり参加人などの団体と丁寧な交渉を重ねた上,全国で統一された基準を定めている。
(ウ) 地域スタッフが個別に行う業務の日時,業務量,担当する地域内での訪問先や順番等については,地域スタッフの広範な裁量に委ねられている。
(エ) このように,地域スタッフの労働条件が原告によって一方的・定型的に決定されているとはいえない。
ウ 報酬に労務対価性がないこと
(ア) 地域スタッフの報酬のうちの月額事務費は,個人の熟練度,年功等が加味されない成果報酬であり,そのうちの運営基本額は各月の実績がないと一切支払われないものであって出来高払いであるから,一定額の支払が保障されたものではなく,基本給的な性格は認められない。
また,月例事務費の中で運営基本額の占める比率は比較的低く,むしろ業績基本額等の占める比率が高いことに照らすと,労務対価性の判断において運営基本額の性質を重視するのは相当でない。
(イ) 地域スタッフの報奨金は,勤務態度を査定するなど提供された労務に着目して金額が算定されているわけではなく,その業績・成果に応じて支払われるものであり,慶弔金,医療費の負担,見舞金,餞別金などは,平均月収等の業績に連動する要素があり,これも業績・成果と無関係に支給されるものではないため,提供される労務に着目した制度とみることはできない。
(ウ) 地域スタッフには時間外手当が支給されておらず,これらの者の稼働時間や稼働日数と報酬額とは連動していない。
(エ) 以上のような点を勘案すれば,地域スタッフの報酬には労務対価性が認められない。
エ 業務の依頼に応ずるべき関係にないこと
(ア) 上記イのとおり,地域スタッフには個別の業務を行う日時,業務量等について裁量が広く与えられており,個別の業務依頼に関する拘束は存在しない。
また,原告は,目標数に達しない地域スタッフに対して特別指導等の指導を行うことがあるが,このような指導を受けることは,委託契約における地域スタッフの業務内容そのものである一方,こうした指導に従わなかったからといってペナルティを受けることもない。
(イ) 原告においては,一斉デー等が設定されているが,地域スタッフは,一斉デー等に勤務しなくても何らの不利益はなく,実際これらの日に勤務しない地域スタッフも多数存在する。
(ウ) これらの点からすると,地域スタッフが原告の業務依頼に応ずるべき関係にあるとはいえない。
オ 労務の提供に対する拘束や指揮監督がないこと
(ア) 地域スタッフに配布される本件業務マニュアルは,飽くまでも業務に関するノウハウの蓄積をまとめたものであって,地域スタッフの業務のやり方の参考例を示したものにすぎず,これに従わないことにより地域スタッフが何らかの不利益を受けることはない。
(イ) 地域スタッフが,原告の開催する講習会やロールプレイングに参加するかどうか,報告日や中間報告日に目標を達成していなかった場合に受ける指導や助言に従うかどうか,ナビタンを通じた個別訪問に関する情報提供を基にその訪問先を訪問するかどうかは,いずれも地域スタッフの自由であって,これらに参加しなかったり,従わなかったりすることで何らかのペナルティが課されることはない。
(ウ) これらの点からすると,地域スタッフの労務の提供について原告による拘束や指揮監督は認められない。
カ 顕著な事業者性があること
(ア) 上記イのとおり,地域スタッフには,個別の業務遂行に関する広範な裁量が与えられており,再委託などの補助者の使用や兼業も地域スタッフの裁量に委ねられている。
(イ) 地域スタッフは,原告から,各戸を訪問する移動手段につきバイク等の貸与やガソリン代等の支給を受けていないこと,原告は地域スタッフの報酬について給与所得としての源泉徴収を行っておらず,地域スタッフが事業所得として確定申告をしており,原告において地域スタッフに係る社会保険にも加入していないことからしても,地域スタッフの事業者性は顕著である。
(2)  本件団交申入れに対する原告の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか(争点2)
(原告の主張)
原告は,本件団交申入れにおいて,地域スタッフ以外の者であるFが出席するとの連絡があったために,出席者の再考を促したものであるが,このような原告の対応は,下記アからウまでのとおり,正当な理由があり不当労働行為に当たらない。
ア 事前了解について
(ア) 原告と本件組合は,昭和57年10月18日,交渉に先立って,交渉ルールなどの基本的な事項について合意しており(乙136。以下,この取り決めを「本件事前了解」という。),そこには,原告とa労との間で合意された事項は,原告と本件組合との間にも継承されるという定めが置かれている。参加人は,本件組合の下部組織であり,その統制権に服するから,本件事前了解は参加人をも拘束する。
そして,原告とa労は,昭和50年5月17日に,「各級レベルの交渉について」(乙99)と題する交渉ルール(以下「本件交渉ルール」という。)について合意しており,そこでは,支部(下部)又は中央(上部)の各級レベルの交渉は,各々の組織単位を代表する原告側営業関係管理職とa労執行委員の中から双方若干名が参加して行うことを原則とし,例外的に下部交渉に上部役員が出席することもできるが,その場合には事前に当該組織を代表する原告側管理職とa労役員との間で話し合い,双方が了解しなければならないというルール(以下「本件出席ルール」という。)が置かれている。
本件出席ルールを合理的に解釈すれば,上部役員でもない第三者が交渉に出席する際には,事前に原告の了解を取らなければならないところ,原告は,それに従って,参加人に出席者の再考を促したのであるから,このような対応には正当な理由がある。
(イ) 中労委は,本件事前了解は成立していないと認定したが,原告が本件組合以外の団体とも本件事前了解と同内容の交渉ルールを合意していること,本件事前了解に関する原告と本件組合との折衝の経緯,原告及び本件組合が本件事前了解の成立を前提とした行動を取っていること,本件組合自身本件事前了解の成立を前提とした書面を複数作成していることなどに鑑みれば,本件事前了解は成立しているとみるべきであって,中労委の認定は誤っている。
イ 交渉慣行の存在について
仮に本件事前了解が成立していないとしても,原告と参加人は,参加人の設立以降,本件出席ルールに従って交渉を実施しているのであるから,原告と参加人との間には,本件出席ルールに基づいた交渉をするという交渉慣行(以下「本件交渉慣行」という。)が存在していたといえ,本件交渉慣行に基づく原告の上記対応には,正当な理由がある。
ウ 具体的な交渉経緯等について
本件団交申入れで示された団交事項については,その時点までに,原告と参加人のメンバーとの間で3回協議を行っており,いきなり別系列のg労連の事務局長であるFの出席を許せば,紛争の蒸し返しや混乱を招きかねず,本件団交申入れ自体信義に反するものである。原告は,こうした理由により本件団交申入れに対応したものであるから,原告の対応には正当な理由がある。
(被告の主張)
下記アからウまでによれば,本件団交申入れに対する原告の対応に正当な理由は認められず,不当労働行為に当たる。
ア 事前了解について
原告と本件組合との間で本件交渉ルールを含む本件事前了解のとおりの内容の合意をしたことについて直接証拠である書証は存在しない。
また,本件事前了解に関する交渉記録の記載,体裁,本件団交申入れに対する原告の対応,参加人が本件事前了解について協議がされた直後から本件事前了解は成立していないと主張して原告と争っていることなどからしても,本件事前了解の成立を認めることはできない。
本件組合が,原告とa労との間で合意されていた扱いのうち,事務所の貸与に関する扱いなどを一部踏襲している事実があっても,そのことから本件事前了解全体について合意の成立を認めることはできない。
イ 交渉慣行の不存在について
原告と参加人との間の過去の交渉状況からしても,上部団体の役員が地域スタッフでなかった場合に,部外者と位置付けて具体的な交渉への支障等を問うことなく一律に交渉から排除するような規範があるという認識が参加人において形成されていたとみることはできず,本件交渉慣行は存在しない。
ウ 具体的な交渉経緯等について
原告は,過去の交渉経緯に照らし,別系列のg労連の事務局長であるFの出席を許せば,紛争の蒸し返しや混乱を招くと主張するが,本件団交申入れは飽くまでも交渉主体は参加人であるという前提でされたものであって,Fが交渉に加わったからといって原告が主張するような弊害が生じるとはいえない。
(参加人の主張)
ア 事前了解について
本件事前了解に係る交渉に参加していた本件組合の当時の中央書記長であるGは,東京都地方労働委員会昭和59年(不)第49号事件の第1回審問期日において,本件組合は,本件交渉ルールを包括的に承継することについて反対したと供述していること,本件事前了解に係る原告作成の交渉記録(乙136)には,本件組合の発言が恣意的にねじ曲げて記録されていること,原告が本件事前了解の存在を証明するために提出した乙130号証の2,136号証別紙,140号証別紙2の記載内容や原本の状態からして,これらは後日作成・改ざんされた可能性が高いことなどからすると,本件事前了解は成立していない。
イ 交渉慣行の不存在について
地域スタッフではない上部団体役員が原告と本件組合との間の団体交渉に参加することは全国的に広く行われており,参加人においても平成18年8月1日にg労連の事務局長が原告との団体交渉に出席しているのであって,原告の主張する本件交渉慣行など存在しない。
ウ 具体的な交渉経緯等について
本件団交申入れは,原告が,Eの希望があればキュービットを貸し出すことを考えると約束したにもかかわらず,その貸与を拒否したことをテーマとした交渉の申入れであって,それまで行われていた交渉とは異なるものであるから,交渉の蒸し返しにはならない。
また,参加人が求めたのは,参加人という一つの組合による交渉について交渉担当者として上部団体(g労連)の役員が出席することであって,Fが出席することで原告が主張するような交渉の2系列化や混乱という弊害は生じない。
第3  当裁判所の判断
1  地域スタッフが労組法上の「労働者」に当たるか(争点1)について
(1)  認定事実
前記前提事実(第2の1)のほか,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
ア 原告の組織について
(ア) 原告は,受信者から受信料の支払を受けて収入を得ているところ,平成22年度決算額における事業収入6839億円のうち受信料による収入は6598億円,平成23年度決算額における事業収入6997億円のうち受信料による収入は6725億円であって,両年度の事業収入の約96%を受信料が占めている(乙117,127)。
(イ) 原告は,契約取次等業務を地域スタッフに行わせており,平成23年11月時点で約4300人,平成27年度には2015人の地域スタッフがこれに就いていた(前記前提事実(1)ア)が,訪問型営業について公開競争入札に応札した法人や,特約店型営業について不動産会社・ケーブルテレビ事業者などの法人との間でも委託契約を結んでおり,地域スタッフ以外のこれらの法人にも契約取次等業務を行わせていた(乙150,180)。
(ウ) 原告の契約取次等業務に伴う取次件数は,平成23年度が415万9000件,平成24年度が382万2000件であるところ,これらのうち,地域スタッフによる取次件数は平成23年度が194万4000件,平成24年度が161万4000件であって,地域スタッフによる取次件数は平成23年度が全体の約46.7%,平成24年度が全体の約42.1%であった。
そして,原告の平成23年度の受信料収納額は,平成24年1月末までの合計5756億円のうち,地域スタッフによる直接集金額が45億円(約0.8%),外部法人による集金額が15億円,口座振替等が5696億円であった。(甲16,乙94)
(エ) 原告においては,業務の経費削減等を図るための構造改革を目標とする「21~23年度NHK経営計画」と称する計画を定め,同計画に基づいて平成22年10月から契約取次等業務の見直しを始め,業務委託先について地域スタッフから外部法人への転換を進めることとした。その結果,地域スタッフの数は,平成23年度の4162人から,平成24年度には3480人,平成25年度には2924人,平成26年度には2434人,平成27年度には2015人と年々減少しており,平成28年度予算・事業計画では約1700人と更なる減少が予定されている。
平成27年度の原告の契約取次等業務に伴う取次件数は331万2000件であるところ,このうち地域スタッフによる取次件数は64万4000件となっており全体の19.5%まで減少している。(甲16,21,乙127)
イ 地域スタッフの業務や契約内容等
(ア) 地域スタッフが,契約取次等業務に従事する場合,当初は各地域のセンター等の長との間で期間を6か月から8か月と定めた委託契約(以下「新規委託契約」という。)を締結し,上記期間が満了した後,契約を継続する際には,原告との間で期間を3年と定めた本件委託契約を締結する(乙2,195)。
(イ) 本件委託契約は,原告があらかじめ用意した委託契約書という表題の統一書式(以下「本件委託契約書」という。)に,地域スタッフ及び原告が必要事項を記入の上,署名(記名)・押印する方法で締結される。
本件委託契約書では,地域スタッフの氏名,当該地域スタッフの委託種別,受持区域,放送受信契約に関わる視聴者データ等の交付日及び返還日,報酬支払期限,契約期間の年月日等の各項目が空欄になっており,これらの項目については,原告及び地域スタッフが所定の事項を記入することで契約書を完成させていた。
本件委託契約書の上記各項目以外の部分については不動文字で記載されており,原告と地域スタッフが個別に交渉するなどして記載内容に変更を加えて合意することはなかった。(甲2,乙2,弁論の全趣旨)
(ウ) 本件委託契約書の13条1項において,原告は地域スタッフと協議の上,委託種別を変更することができるものとされており,同4条において,地域スタッフは,業務の全部又は一部を第三者に再委託することができるものとされ,その場合,地域スタッフは原告に通知するものとされている(乙2,127)。
平成23年3月31日時点において,地域スタッフ約4300人の約2.0%に当たる86人が再委託を行っているところ,平成2年4月から平成26年2月までの間の約24年間に再委託した旨を原告に対して通知した地域スタッフについてみると,再委託先を家族,親族,知人としている者が大半を占めている(甲7,乙127)。
なお,原告から契約取次等業務の委託を受けた法人は,受託した事業全てを一括して第三者に再委託することは禁止されているが,事前に原告の承諾を得た場合には,業務の一部を再委託することができるものとされている(乙180)。
ウ 地域スタッフの勤務時間及び勤務場所について
(ア) 勤務時間について
a 勤務時間とナビタンとの関係等
原告は,地域スタッフに対し,業務従事時間,日数について具体的に指示することはなかった。
地域スタッフは,日々ナビタンを携帯して業務を行い,取り扱った諸取次ぎの実績,受信契約者等との面接等の対応結果,受信契約者等の不在履歴等のデータをその都度ナビタンに登録し,一日の業務終了後,ナビタンをその送受信装置に接続させた上で,在宅業務用のメニューを利用して原告にナビタンの登録データを送信するとともに,原告から振込送金分等のデータを受信することになっていた。ナビタンを送受信装置にセットしておくと,ナビタンの登録データが更新される仕組みになっていた。
ナビタンにはデータを入力した時刻が記録されるが,地域スタッフ本人の業務開始・終了時刻,休憩時間,訪問経路は記録されない。もっとも,地域スタッフが1時間に1件以上受信契約者等を訪問し,その結果をナビタンに登録した場合,原告がそのデータから当該地域スタッフの稼働時間をおおむね把握することが可能であった。
原告は,地域スタッフの業績が不良な場合であって,当該地域スタッフが好適時間帯にナビタンを使用する活動を行わなかったときには,後日,電話等で連絡して好適時間帯に活動するように指導することがあった。
(乙36,48から52まで,64,88,113,114,弁論の全趣旨)
b 休日勤務について
cセンターにおいては,原告担当者が地域スタッフに対して土曜日,日曜日等に稼働できるかどうか質問することはあったが,原告が休日を指定することや土曜日,日曜日等に必ず稼働するように指示することはなかった。また,後記エ(イ)のとおり,地域スタッフは業務計画表に休日の予定日を記載して原告に提出していたが,休日の予定日以外の日に業務を行わなかった場合でも,ペナルティを受けることはなかった。(乙4,15,42,43)
(イ) 地域スタッフの勤務場所について
地域スタッフには,前記前提事実(4)ア(ウ)のとおり,委託種別が設けられているが,原告は,地域管理スタッフには受持区域を設定し,1区を数人の地域管理スタッフで担当する場合にはこれを分割して受持区域を設定することとしており,地域管理スタッフ以外の地域スタッフについては,各期の最初に受持区域を指定し,1期から3期ごとにこれを変更していた。もっとも,受持区域の変更の際には,原告と地域スタッフが協議をし,地域スタッフが変更を希望しない場合には,その意向を尊重して,受持区域が変更されない例もあった。
原告は,地域スタッフが契約取次等業務を行うに当たり,受持区域を設定するほかは,訪問場所,巡回順序・方法等の業務遂行方法について具体的に指示することはなかった。
また,地域スタッフは,担当する区域以外においては,取次業務によって契約を獲得しても業績として考慮されないことになっていた。(甲8,乙4,5,39)
(ウ) 本件業務マニュアルの記載について
本件業務マニュアルには,地域スタッフの委託種別ごとの具体的な「仕事の進め方」(基本業務,基本姿勢,業務量と想定業績,事前準備,活動のポイント,活動イメージ)が示されている。Eのような契約開発スタッフの場合,①「事前準備」として,担当する区域を全戸点検できるように地上・衛星契約,長期未収の色分け地図の作成,最新の登録者情報の地図へのマーク,再訪問が必要な受信契約者等の地図へのマーク,ナビタン画面への受信契約者リストの表示を行う旨,②「活動のポイント」として,全戸点検と諸取次ぎの並行実施,必要に応じて衛星契約変更の対策デーの設定,安定収納を図るため契約と同時に受信料振替口座を設定することを徹底する旨,③「活動イメージ」として,初月・後月の各20日分の「通常対策」の活動として,午前10時頃から午後6時頃までに120者の全戸点検を,午後6時頃から午後9時頃までに不在者・見込客対策を,それぞれ行うほか,初月・後月の各3日分の活動として,「衛星対策デー」の活動を行う旨,④諸取次ぎのポイントとして,計画的な全戸点検を実施し,面接努力を行うことと,それまでに一定の接触ができた者への対応が重要である旨,⑤面接率がそれほど高くない昼間の活動として,マンションやケーブルテレビ加入者への対応を行う旨,⑥口座取次のポイントとして,「口座ですか?クレジットカードですか?」の二者択一トークを活用し,「忙しい」・「印鑑が無い」という契約受信者等にはキュービットを活用し,手続が未完の受信契約者等には再訪問活動を行う旨が例示されている。(乙5,弁論の全趣旨)
エ 地域スタッフの目標設定
(ア) 原告における契約取次等業務の数値目標及び実績の報告
a 原告は,地域スタッフごとに,契約取次等業務の数値目標を定めている。具体的には,まず年度ごとに全国の目標数を定め,その目標数を達成するために各センター等の目標数を定め,その後各センター等の目標数を達成するために世帯や契約者の移動状況,過去の業績推移等各地域別の実態を考慮して,各地域スタッフの数値目標を設定する。年度単位で設定された目標数は,2か月を1期として配分され,その期の各地域スタッフの目標数となる。
地域スタッフは,上記の目標数を達成するために,業務計画表を作成し,毎期の業務を開始する前に原告へ提出する。(乙4,19,127)
b 原告の各センター等は,地域スタッフの委託業務について3週又は4週の活動サイクルを定めており,地域スタッフには原則として週に1回各センター等に来所することを求めている(以下,来所することを求められる日を「来局日」という。)。
原告は,地域スタッフに対し,来局日や郵送等の方法を利用するなどして委託業務実績の進捗状況を報告することを求めている外,各週の初日から次週初日までの間のおおむね中間の日(以下「中間報告日」という。)に業務実績の進捗状況を電話連絡することを求めている。
実施要領のあらましによれば,中間報告日の連絡日時,連絡方法等については,あらかじめ決めておくか,ファクシミリの利用が求められている。また,地域スタッフは,上記の報告に加え,上半期末等の節目や年間目標等の達成目前等,原告が日々の業績の把握が必要と判断する場合には,随時報告を求められることがある。
(乙4,13から15まで,20,31の1・2,乙58の3,乙87の1・2,乙104)
(イ) cセンターによる目標数の管理について
cセンターの地域スタッフは,毎月cセンターからその月の自分の取次目標件数,実績の報告日,活動のポイント,一斉デー等が既に記載された業務計画表を交付され,その内容に合わせて1週間単位の計画や休日の予定を記入して原告へ提出する。そして,地域スタッフは,cセンターから事前に指定された来局日及び中間報告日に業務報告を行っている。(乙4,15,42,43,119,121,128,129,149)
オ 地域スタッフへの業務目標の達成に関する指導について
(ア) 原告では,地域スタッフの目標の達成が懸念される場合,地域スタッフと十分話し合い,適切な指導・助言を行うとの方針を採用しており,特別の事情がないにもかかわらず当期の目標数の80%(以下「中間業績水準」という。)に達しない期が連続して3期以上続くとき,又は当期の目標数の60%に達しないときは,特別指導を実施することとされている。
特別指導は,ステップ1として業務計画表による計画の着実な推進,来局回数の増加,帯同指導が,ステップ2として業務の分割実施,応援収納・応援取次,立入調査の強化,帯同指導が,ステップ3として受持数(交付)削減,帯同指導がそれぞれ行われることとされている。ここでいう受持数(交付)削減とは,当該地域スタッフの目標数が減らされること,帯同指導とは,原告の職員が当該地域スタッフに同行し,現場で実際に手本を示したり指導したりすることを内容としている。(乙4,弁論の全趣旨)
(イ) 特別指導は当期の目標数を達成したとき,又は中間業績水準を3期連続して確保したときまで行われ,目標を達成した場合であっても後に再び特別指導の対象となったときは,改めてステップ1から特別指導が開始されるわけではなく,目標達成時に行われていた従前のステップから特別指導を再開することとされている。
地域スタッフは,特別指導を受けないことも可能であり,これを受けなかったからといって直ちにペナルティが課されるようなことはなく,実際Eは,都合が合わないなどの理由で特別指導に応じないこともあった。(甲14,乙4,弁論の全趣旨)
(ウ) 実施要領のあらましによれば,特別指導を実施している地域スタッフの委託契約を更新する際には,原告は当該地域スタッフに対し,具体的な委託業務改善要望事項を示し,これを誠実に履行することを約束させた上で,期間を3年と定めた委託契約を改めて締結すること(以下「条件付契約更新」という。)とされており,その後上記約束が果たされず,業績改善の見通しが立たない場合には委託契約は解約するものとされているが,実際には,上記の特別指導のステップ3の段階にある地域スタッフの委託契約を更新する場合に限って,条件付契約更新を行っていた(乙4,195,198,弁論の全趣旨)。
(エ) 原告は,Eに対し,平成23年4月1日付けの書面で,平成22年度第4期の業績が最低業績水準に達したものの中間業績水準に達していないため委託する業務を当初の3分の1削減すること,今後も改善がみられないときは削減量を拡大し,最低業績水準を達成できないときは本件委託契約を解約することなどを通知し,Eから誓約書を徴求した。さらに,原告は,Eに対し,同年10月から同年12月まで,数次にわたり交付した書面で,中間業績水準を達成するよう指導し,平成23年度第4期の業績が中間業績水準に達しなかったことを受けて委託する業務を当初の2分の1削減すること,今期の業績が中間業績水準に達しなかった場合には,本件委託契約を解約することなどを通知した。原告の担当者は,平成24年3月4日にEに対して行われた帯同指導において,同月にEに交付される文書には,業績が回復しない場合には本件委託契約を解約することを示唆する文言が入っているため,ここで頑張らないと契約が解約されるという趣旨の発言をした。(乙6から12まで,147)
カ 地域スタッフへの指揮監督等について
(ア) 原告の職員やチームによる指導・助言について
原告は,管轄地域内の契約取次等業務を委託する地域スタッフの運用に関する業務を行うために各センター等に原告の職員を配置しており,各センター等は,地域スタッフに委託業務を遂行させるために複数の地域スタッフによるチームを編成している。原告の職員は,チームによる地域スタッフの指導や個別に地域スタッフに対する特別指導などを行うとともに,業務計画表の目標や業績,次年度契約更新対象であるかどうかを踏まえながら,来局日や中間報告日に来局した際や電話をかけた際等に,地域スタッフに対して指導や助言を行っている。指導や助言の内容は,稼働時間の確保,全戸への再訪問,中間報告指導日の来局等の要請であるが,地域スタッフが指導や助言に従わないことを理由としてペナルティが課されることはない。(乙4,119,121,128,195,弁論の全趣旨)
(イ) 一斉デ―等について
cセンターは,地域スタッフに対し,一斉デー等の実施日の前後及び当日には,取次業務の開始及び終了時刻,半日又は1日当たりの目標件数,平日不在者等受信者の再訪問,全戸点検等の具体的な対応要請などを記載したファクシミリを送信している。
「BS契変デー」の際に地域スタッフに送信される上記のファクシミリには目標達成者の氏名及び獲得件数や「最後に何が何でも3件以上確保してください」,「昨日取れなかった人は昨日の分までお願いします」などと目標達成を促す記述がある。ただし,一斉デー等により一定の業務内容が強制されるわけではなく,例えば,「センター一斉9時からデー」に午前9時から出勤しなくても何らかのペナルティが課せられることはない。(乙5,21,弁論の全趣旨)
(ウ) 地域スタッフへの情報提供
cセンターは,地域スタッフに対し,受信契約者の転居先や衛星放送受信確認の情報を提供するとともに,速やかに取次手続を行うよう求めるファクシミリを送信することがあった。
ただし,これらの情報を受け取りながら対応しなかった場合でも,そのことを理由として地域スタッフに何らかのペナルティが課されることはなかった。
さらに,cセンターは,受信契約者等から諸取次ぎに係る個別の訪問依頼等がある場合にも,地域スタッフに対し,所定の様式を用い訪問の日や時間帯などを指定してファクシミリにより対応依頼をしていた。(乙35の1・2,乙47の1から7まで)
(エ) 講習・会議等
cセンターにおいては,毎月最初の来局日には午前10時から1時間程度番組のビデオ視聴,センター長からの業績に関する講義,事務連絡,諸取次業務の講習会等を行う全体集会が行われ,開催日前には各地域スタッフに対し,当日の地域スタッフの出局時刻等を記載した書面がファクシミリで送信されていた。もっとも,地域スタッフが全体集会に参加しなかったとしても何らかのペナルティを課されることはなかった。
また,cセンターにおいては,契約取次等業務の実施に当たって,あらかじめ複数の地域スタッフ及び原告の職員によるチームを編成し,チームによって頻度は異なるものの,おおむね月に1回又は2回のチーム会議を開催していた。cセンターは,チーム会議の前日までに当月の各地域スタッフ別の出局時刻,同会議の開始時刻を記載した書面をファクシミリで各地域スタッフに送信していたが,地域スタッフがチーム会議に参加しないことで何らかのペナルティを課されることはなかった。
さらに,cセンターにおいては,地域スタッフが来局した際に,ロールプレイング形式で業務の練習を行うことがあったが,これについても,地域スタッフが参加しないことに伴う不利益はなかった。
(乙3,21の10,乙30の1・2,乙31の1,乙33,64,106)
キ 地域スタッフへの貸与物品等について
原告は,地域スタッフに対し,ナビタン,集金受託証,スタンプ式領収印等を貸与している。他方,地域スタッフに対して,移動に必要な自動車,バイク等の貸与,ガソリン代の支給が行われることはないが,原告は,毎年8月と2月に地域スタッフの運転免許証の有効性,自賠責・任意保険加入の有無等を確認している。(前記前提事実(4)ウ,乙82,88,127)
ク 地域スタッフの報酬等
(ア) 地域スタッフの報酬の決定方法について
原告は,実施要領,実施要領のあらまし,その他地域スタッフに係る事項の改定等を行う場合には,a労の結成以降,a労や参加人を含む地域スタッフによって組織された団体との間で協議を行い,その内容を決定していた。
地域スタッフの報酬に当たる事務費の単価については,地域スタッフとの個別の協議は行われず,原告と上記各団体とが協議した上で,全国で統一された基準を設定し,これを記載した「事務費・給付のあらまし」と題する書面(以下「事務費等あらまし」という。)を作成して地域スタッフに交付している。
地域スタッフを募集する原告のホームページでは,その報酬について,契約取次又は収納の実績がある場合月額15万円+歩合であること,年2回の報奨金があること,月収25万円から40万円程度(努力次第でもっと上積みが可能)であること,頑張ったら頑張った分だけ着実に収入アップが可能であること,医療,休業,餞別金などの各種給付制度が充実していることなどがうたわれている。
(乙2から4まで,104,109,110,112,127,195)
(イ) 地域スタッフの報酬の概要について
地域スタッフに支払われる報酬には,大きく分けて,①要件を満たした場合に毎月又は1年の特定の月に支給される「事務費」という名目のものと,②慶弔,疾病,事故等一定の事由が発生した場合に支給される「給付」という名目のものとがあり,その詳細は別表記載のとおりであるが,主なものは下記のとおりである。
a 事務費
(a) 運営基本額
運営基本額は,別表のとおり,事務費のうちの月例事務費の中の月額事務費の一つであって,地域スタッフの当月の訪問件数及び業務従事実績に応じて支払われるものである。運営基本額は,下記の表のとおりの算定方法によって,毎月地域スタッフに支払われる。

上記の表のうちの当月業務従事実績とは,下記(c)の単価事務費である契約取次基本単価事務費の対象となる新規契約取次,契約変更取次等,転入取次事務費の対象となる転入取次,支払再開取次事務費の対象となる支払再開取次,口座関係事務費の対象となる口座関係の取次ぎ,受信料収納等に係る実績をいう。
また,上記の表のうちの当月訪問件数とは,既にナビタンに登録されている放送受信者等を訪問し,その諸情報の更新登録(具体的には,新規,転入,支払変更,契約変更,廃止,転出・不明,途上集金,一般収納,収納対策,名義変更,未契約登録・変更・削除,それらへの対策結果[不在,対応継続,約束,未了,支払変更拒否,機器なし・故障,空家・転居,未入居等]等のナビタンへの登録)をした件数の合計をいう。
上記の表のとおり,当月業務従事実績が1件以上ない場合には,その月の運営基本額の支払はなく,平成23年度のh放送局管内の地域スタッフのうち,実際に運営基本額が支払われなかった地域スタッフの割合は,業務に従事しなかった者も含めると月平均5.8%であった。
なお,新規委託契約を締結した地域スタッフは,当月業務に従事した実績があった場合,又は地域スタッフのみを対象とする内部講習の受講があった場合に15万円が支払われる。(乙3,89,120)
(b) 業績基本額
業績基本額は,上記(a)の運営基本額の支払対象となる地域スタッフに対し,委託種別ごとに,当月の新規契約取次,契約変更取次,転入取次,支払再開取次等の基本業績に応じて,詳細に定められた基準に従って支払われる(乙3)。
(c) 単価事務費
単価事務費は,契約取次基本単価事務費,転入取次事務費,支払再開取次事務費,訪問対策票収納,口座取次事務費等があり,地域スタッフが諸取次ぎや収納を行った場合に,委託種別に応じて1件当たり100円から数千円程度支払われる(乙3)。
(d) 報奨金
報奨金は6月及び12月に支払われる一時金で,月例事務費の1か月平均額である平均事務費に定率(6月支払分133%,12月支払分189%)を乗じた平均事務費支払額に,あらかじめ段階別に設定されている業績加算等を加えて算出される。
平均事務費の算定対象期間は,6月支払分については前年12月から5月まで,12月支払分については6月から11月までとされ,業績加算の算定対象期間は,6月支払分については前年10月から3月まで,12月支払分については4月から9月までとされている。
業績加算は,全地域スタッフを算定対象期間ごとに目標達成率により上位から順番に「a」(上位10%)から「e」(下位10%未満)までの5段階に区分した上で,当該区分に応じて支払うものとされている加算金額であり,最多で10万円,最少で1万5000円とされている。
事務費等あらましによれば,報奨金については,平均事務費の算定対象期間に,受信契約者からの苦情等により原告が警告書を発した場合や地域スタッフからてん末書の提出があった場合には,該当する加算金額の区分を下げることがある旨が記載されている。(乙3)
b 給付
(a) 給付には,地域スタッフ本人が結婚した場合に支払われる結婚祝金,本人又は配偶者が出産した場合に支払われる出産祝金などの慶弔金等,業務外のけがや病気により地域スタッフ本人又はその扶養家族が治療を受けて医療費を負担した場合などに支払われる医療見舞金,入院見舞金,休業見舞金等の業務外給付,業務上の事由により,けがや病気の治療を受けて医療費を負担した場合などに支払われる医療見舞金,傷害一時金等の業務上給付などがある(乙3)。
(b) 新規委託契約を除く委託契約が終了した場合,委託期間(1年以上から30年以上まで1年ごとに区分)に応じ一定額の一般餞別金(4万1000円から876万1000円)及び平均月収額に応じた特別餞別金(4万円から64万1000円)が支払われる。これらは,契約期間が長いほど高額になる。
なお,酒気帯び運転をして警察に逮捕された場合や事務処理に不正行為があった場合等,本人の都合により,委託契約を解約された場合には,餞別金は支払われない。(乙3)
(ウ) 報酬の源泉徴収等について
原告は,地域スタッフの報酬について,集金人の報酬として源泉徴収をしており,給与所得としての源泉徴収はしておらず,地域スタッフは原告から受け取った報酬を事業所得として申告している。また,原告は,地域スタッフが事業主であるという前提の下,地域スタッフを被保険者として社会保険に加入していない。(乙127)
ケ 原告とEとの間の委託契約について
原告とEは,平成9年1月末頃,本件委託契約を締結し,その後,3年ごとに本件委託契約の更新を繰り返しており,平成23年4月1日には,期間を同日から平成26年3月31日までとして本件委託契約を更新した。
Eは,平成23年4月2日から同年8月3日まで及び平成24年7月25日以降病気を理由として就労しておらず,原告は,同年8月2日,Eに対し,同年9月1日付けで本件委託契約を解約する旨を通知した。(乙2,66,204)
(2)  労組法3条に定める「労働者」性の判断基準について
労組法3条が,同法における労働者につき,労働基準法9条とは異なり「職業の種類を問わず,賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義していることや団体交渉を助成するという労組法の趣旨を踏まえると,労組法上の労働者は労働基準法上の労働者よりも広く解し,労働契約によって労務を提供する者のみならず,これに準じて使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者をも含むと解するのが相当である。
そして,上記の点を踏まえると,労組法上の労働者に当たるか否かについては,契約の実際の運用等の実態に即して,企業組織への組込みの有無,契約内容の一方的決定の有無,報酬の労務対価性,業務の依頼に対する諾否の自由の有無,指揮監督下の労務の提供の有無,事業者性等の事情を総合考慮して,これを判断すべきである。
(3)  地域スタッフの労組法3条の「労働者」該当性について
ア 事業組織への組込みの有無について
(ア) 地域スタッフの原告組織内での位置付け
原告においては,平成22年度及び平成23年度の事業収入の約96%を受信料が占めており(前記認定事実ア(ア)),その収入の大部分を受信料に依存しているといえる。そして,受信者は,原告との間で契約を締結することなく,また,特段の手続を要することなくテレビ放送を受信できることからすると,原告においては一般的な営業活動なるものが観念できず,受信者の転居等の移動状況や受信料の支払状況等を把握することこそがその収入を確保するための中心的業務であって,地域スタッフが行う契約取次等業務はそれを担うものといえる。そうすると,地域スタッフが行う業務は,原告の事業活動において根幹を成す業務の一つということができる。
また,原告は,契約取次等業務を外部法人等にも委託しているが,原告の契約取次等業務に伴う取次件数のうち,地域スタッフによる取次件数の割合は平成23年度が全体の約46.7%,平成24年度が全体の約42.1%であって(同(イ)及び(ウ)),上記各年度において依然として半分弱を地域スタッフの担当によって実現しており,その貢献度は高いものがあるといえる。
そして,原告の平成23年度の受信料収納額全体に占める地域スタッフの直接集金額は45億円(約0.8%)にとどまるものの,外部法人による集金額の15億円よりも多額である上,残りの大部分を占める口座振替等についても,地域スタッフの働きによって受信者の口座情報を把握している場合もあることが認められること(同(イ)及び同(ウ))からすると,実際の受信料の収納についての地域スタッフの貢献度もまた高いものがあるといえる。
このように,地域スタッフが原告において担う業務は,原告の業務全体の中で枢要な部分を占めており,地域スタッフは原告の事業の継続にとって不可欠な存在として,組織内で位置付けられているといえる。
平成27年度の時点でも地域スタッフによる取次件数の割合は全体の約20%と依然として相当な割合を占めている上(同ア(エ)),原告内での地域スタッフの人数や取次件数及びその割合が年々減少しているとはいえ,本件命令後の地域スタッフの人数等の推移については,いずれにしても本件命令時点における地域スタッフの原告組織内の位置付けを左右するような事情に当たるとはいえないところである。
(イ) 地域スタッフの契約形態について
原告と地域スタッフが締結する委託契約は,当初の新規委託契約にあっては6か月から8か月,その後の本件委託契約にあっては3年という期間の定めはあるものの,地域スタッフが本件委託契約を解消する際に支給される一般餞別金は,委託期間を通算して1年以上から30年以上まで1年ごとに区分されたあらかじめ定まった金額が支払われることになっており,勤続年数が長い程高額になる(同ク(イ)b(b))など,本件委託契約が更新されることを前提とし,更新を続けて原告に長期間勤務することを奨励する制度になっており,実際にも地域スタッフは複数回の更新を重ねて長期間勤務する例が一般的となっている(甲66,弁論の全趣旨)。
このように,原告と地域スタッフとの間の委託契約の内容や実態からしても,地域スタッフは,原告内部において継続的に勤務することが想定されており,原告の事業組織へ組み込まれていたものとみるのが相当である。
原告は,餞別金は,優秀な人材確保を目的として制度化されたものであって,地域スタッフが長期間継続して労務を提供する仕組みとは無関係である旨主張するが,実体として上記のように長期間勤務することを奨励する仕組みになっている以上,制度化した目的に原告主張のような趣旨を含んでいるとしても,上記判断を左右するものではない。
(ウ) 地域スタッフの管理について
a 原告は,地域スタッフの契約取次等業務の目標数を一方的に定め,地域スタッフは,上記の目標数を達成するために,業務計画表を作成して原告に提出することとなっており,地域スタッフには,それを踏まえて中間報告日及び来局日等に目標数の達成に向けた進捗状況を報告することが求められている(前記認定事実エ(ア)及び(イ))。
さらに,原告は,上記報告において業績が芳しくない地域スタッフに対し,3段階の特別指導を行うこととされており,特別指導の3段階目の者に対しては,ナビタンを通じた業務従事方法の指示が行われたり,本件委託契約の解約を示唆されたりすることがある(同オ(ア)から(エ)まで)。
このような報告及び指導の体制からすると,原告は,地域スタッフを自ら設定した目標数を通じて管理していると評価すべきである。そして,上記報告の頻度や特別指導の内容及び最終的には解約の可能性が示唆されることもあることからすると,目標数を通じた地域スタッフの管理の態様は相当程度強度なものとみるべきである。
b 原告においては,目標数を通じた管理以外にも,実施要領のあらまし,本件業務マニュアル及び事務処理マニュアルを作成の上,地域スタッフに配布すること(前記前提事実(4)イ)で(ただし,本件業務マニュアルの配布は平成22年10月までに限って行われている。),地域スタッフに対し,仕事の進め方や契約取次の方法の一例を示して,その業務遂行の方法を指導しているほか,地域スタッフを一定の区域に配置した上で,各センター等に原告の職員を配置し,cセンターにおいては各地域スタッフをチームに加入させ,全体集会,チーム会議や講習会等を開催して助言・指導をしている(前記認定事実カ(ア),(エ))。
また,cセンターでは,一斉デー等の機会を設け,その日の目標を定め,目標達成者の氏名及び獲得件数を公表するほか,地域スタッフに対し,目標達成に向けて努力することを求めるファクシミリを送信するなどしている(同カ(イ))ところ,このような管理方法は労働契約においてノルマや目標を設定した場合の営業職員に対する管理と類似するものといえる。
c 上記a及びbのように,原告は,自ら目標数を設定することやその他の方法によって地域スタッフを管理しているといえるところ,このような管理の態様は,委託者から独立して業務を行う一般的な委任契約や請負契約の形態とは一線を画す相当強度なものというべきであって,地域スタッフが原告の事業組織に組み込まれていることを基礎付ける事情に当たるというべきである。
d この点について,原告は,地域スタッフの担当する区域を指定することや個人別の目標数を定めることは,本件委託契約において地域スタッフに求められる業務内容そのもので,単に業務の履行を求める行為であること,地域スタッフをチームに配属することは,地域スタッフに連絡したり,報告を受けたりする際の便宜のためであることを主張するが,そうであったとしても,上記のとおり,原告が目標数の実現に向けて地域スタッフを相当程度強度に管理しているという実体が認められることからすれば,地域スタッフが原告の事業組織に組み込まれているという評価を左右するものではない。
(エ) 業務遂行についての裁量や再委託について
地域スタッフは,業務遂行の日時や訪問の順番などの具体的な日々の業務内容について原告から指示されることはなく,また,自らの業務を届出によって他者に再委託することもできるものとされている。
しかしながら,原告は,受持区域を指定し,目標数を定めることによって地域スタッフを管理している上,業務の進め方が裁量に委ねられている部分が多いとはいえ,目標数実現に向けた指導・助言等を通じ,地域スタッフに相当程度強い管理が及んでいたとみるべきことは上記(ウ)でみたとおりである。また,地域スタッフは,受持区域外の業務によって契約を獲得しても業績としては算定されないこととなっており(前記認定事実ウ(イ)),再委託が可能であるとはいえ,その実績は極めて限定されていたことがうかがえる(同イ(ウ))。
以上からすると,原告主張のとおり,地域スタッフには日々の具体的な業務遂行方法について一定の裁量があり,再委託が可能であるとはいえ,そのことから地域スタッフが原告の事業組織に組み込まれていることを否定することはできない。
(オ) その他の原告の主張について
原告は地域スタッフの管理態様に関して,特別指導を含む原告の指導・助言に従わないこと,全体集会やチーム会議などに参加しないこと,一斉デー等に就業しないことによっても,ペナルティなどの不利益を受けないことを指摘する。
しかしながら,指導に従わないことに対する直接的なペナルティ等が設けられていないとしても,既に述べたとおり,原告は,目標数などを設定し,達成しない場合の委託業務の削減や解約の予告を通じ,目標数の達成に向けた指導を行って,地域スタッフを相当程度強く管理していると評価せざるを得ないのであって,ペナルティ等の不利益がないことをもって,地域スタッフが原告の事業組織に組み込まれていることを否定するような事情には当たらないというべきである。
イ 契約内容についての決定権の所在について
(ア) 地域スタッフが原告と契約する際に用いる本件委託契約書は,地域スタッフの委託種別や受持区域などの一部の項目を除いて記載が統一されており,統一されている項目について,原告と地域スタッフが個別に交渉するなどして内容を変更したことはないというのであるから(前記認定事実イ(イ)),個別の交渉による内容の変更は想定されていないものとみるのが相当である。また,地域スタッフに求められる契約取次等業務の目標数は原告によって一方的に定められ,支払われる報酬の額も,原告が各団体と交渉した上で基準が決められて事務費等あらましが作成され,その基準に沿って支払われることとなっており(同ク(ア)),地域スタッフ個人が原告と個別に交渉する余地も残されていない。
このように,地域スタッフの契約内容の大半について,地域スタッフに交渉の余地は残されておらず,原告によって一方的に決定されているというべきである。
(イ) この点について,原告は,報酬については毎年,各団体との間で協議し,その結果を踏まえて決定しており,原告が一方的にこれを決定しているという実態はないと主張する。しかしながら,原告と新たに地域スタッフの委託契約を締結しようとする者は,事務費等あらましに従わざるを得ないのであり,少なくとも,原告と個々の地域スタッフとの関係においては,原告が地域スタッフの契約条件の重要な部分である事務費・給付の内容を一方的に決定しているものとみざるを得ない。さらに,原告が主張する上記実態は,使用者が労働組合と団体交渉を行った上で集団的に労働条件を改定することと何ら異ならないのであって,原告が各団体と交渉している実態があるとしても,地域スタッフに団体交渉の保護を与えるべき必要性と適切性を否定すべき事情には当たらないというべきである。
また,原告は,委託種別や受持区域の変更については,地域スタッフと個別に協議しており,地域スタッフの希望どおりに決まる場合もあることを指摘し,契約内容を原告が一方的に決定していないことの根拠に挙げるが,地域スタッフと原告が協議をした上で地域スタッフの希望どおりに受持区域が決まる場合があったとしても,上記のとおり契約内容の大部分とその中核を占める報酬については原告によって一方的に決定される実態があり,また受持区域内での目標数は原告に一方的に設定されていることに鑑みれば,契約内容の重要な部分を原告が一方的に決定していることに疑いはない。
ウ 報酬の労務対価性について
(ア) 地域スタッフの報酬のうちの月額事務費の運営基本額は,前記認定事実ク(イ)a(a)記載の表のとおりであり,要するに,当月において業務従事があった場合には15万円が支払われるが,業務従事実績が20件未満の場合又は訪問件数が1500件未満の場合には7万5000円又は10万円となり,業務従事実績及び訪問件数がいずれも1件以上あれば,7万5000円が支払われ,他方で当月業務従事実績が1件もない場合には,その月の支払はないものとされている。このような運営基本額の定め方は,業務従事の実績が全くない場合に支払がない点を捉えれば,出来高への対価という性格を有していることは否定できない。
しかしながら,最低の月7万5000円の運営基本額が支払われないのは,業務従事実績が月1件も確保できない場合,すなわち,1か月で原告の収入につながる成果を1件も挙げることができなかった場合に限られており,その基準は相当に緩やかなものであって,1か月の間に相当程度の労務を提供しながら,1件の契約取次等の実績にもつながらないという事態は極めてまれなことと考えられる。換言すれば,労務を提供していない場合と同視できるような例外的な場合でない限り運営基本額は当月業務従事実績の件数にかかわりなくその上限である15万円の半額が支払われることが保障されており,当月業務従事実績の件数との相関は希薄であって,出来高への対価としての性質は乏しいものといえる。実際,平成23年度のh放送局管内の地域スタッフのうち,運営基本額が支払われなかった地域スタッフの割合は月平均5.8%にとどまっており,これは実際に業務に全く従事しなかった者も含めた割合であるというのである(前記認定事実ク(イ)a(a))。他方で,運営基本額の算定基準は,業務従事実績が月1件以上あれば,これに時間と労力を投入することで比較的容易に数を稼ぐことができる訪問件数と組み合わせて15万円を確保することが可能なものになっている。
このような運営基本額の支払条件を全体としてみると,地域スタッフのための生活保障として最低限7万5000円を支給することをベースとしつつも,労務を供給することそのものによって伸ばすことができる訪問件数の増加によって月15万円まで支給されることになっており,業務従事実績1件に加えて訪問件数が一定数に達しさえすれば上限である15万円が支払われることとなっていることに照らしても,運営基本額は基本給的な性格をも併せ持っているものと評価するのが相当である。
実際に,原告は,ホームページにおいて,地域スタッフの募集をするに当たり,その報酬につき,1か月の中で契約取次又は収納の実績がある場合月額15万円+歩合である,月収25万円から40万円程度(努力次第でもっと上積みが可能)であるなどと説明をしており(前記認定事実ク(ア)),地域スタッフとして勤務している者が運営基本額について固定給という感覚であると述べていること(乙203)からすれば,地域スタッフに対して通常であれば運営基本額が15万円支給されることを前提としており,基本給的な位置付けのものとして運用されていたことは明らかである。
(イ) さらに,原告の事務費・給付をみると,委託契約の解消の際に委託期間を通算した年数に応じた額が支給される一方,不正行為があった場合等には支給されなくなるという点で一般的な退職金との類似性が認められる餞別金,毎年6月と12月に一時金として支払われ,受信契約者からの苦情等により原告が警告書を発した場合や地域スタッフからてん末書の提出があった場合には,該当する加算金額の区分を下げることがあるという点で一般的な賞与との類似性が認められる報奨金や慶弔金,業務上・業務外の事由に伴う医療費等を原告が負担する制度がある(上記認定事実ク)など,全体としてみると,通常の労働契約における労働者の賃金制度と類似した制度設計がされており,特に餞別金,慶弔金,業務上・業務外の事由に伴う医療給付等は,ある程度継続的に労務を提供する人材を確保するために必要となるものであって,これらは労務の提供に着目した制度とみるのが相当である。
(ウ) 以上からすると,地域スタッフには時間外手当が支給されておらず,労務に従事した時間当たりの対価が支払われるという報酬体系が採用されていないとはいえ,地域スタッフの報酬には労務の提供に対する対価としての性質を有することは否定できず,その限りで労務対価性が認められる。
原告は,地域スタッフの報酬全体に占める運営基本額の割合は高くないから,これを重視して労務対価性の判断をするのは相当でないと主張するが,地域スタッフの報酬全体に占める運営基本額の割合が高いとまではいえないとしても,既にみたとおり,原告においては,最低限15万円が支給されることが前提となり,そこから歩合給的に報酬の額が上積みされるという報酬の体系が採用されているとみることができ,このような報酬の体系を全体としてみると,労務提供の対価としての基本給的な部分があることに着目して労務対価性を認めることは不当とはいえない。
また,原告は,地域スタッフの稼働時間や稼働日数に応じて報酬が定められていないことを指摘し,労務対価性は認められないとも主張する。しかし,稼働時間や稼働日数とそのまま連動していない報酬体系を採用することは,通常の労働契約においてもあり得るところであり,その場合には,所定の労働時間を超えて稼働したときに労働基準法に従って別途割増賃金等を支払わなければならないとはいえ,そのことによって,契約の性質が労働契約であることが否定されたり,その前提として,支払われる報酬に労務対価性があることが否定されたりするわけではない。原告においては,上記(ア)のとおり,運営基本額が「訪問件数」の多寡に従って定められており,地域スタッフの労務の提供という側面にも着目して報酬が決定されていることからすると,原告の指摘する点から地域スタッフに対する報酬について労務対価性を否定することはできない。
エ 顕著な事業者性について
上記ア(エ)で説示したとおり,地域スタッフは,受持区域外の業務によって契約を獲得しても業績としては考慮されないものとされており,再委託が可能であるとはいえ,実際に再委託が行われていたのは限定的な範囲にとどまっている。
また,地域スタッフは,兼業が可能であって,実際にも兼業している者が存在するとはいえ,本件業務マニュアルに記載された活動イメージによれば,地域スタッフは月23日,1日10時間程度業務に当たることを念頭に置いており(前記認定事実ウ(ウ)),実際のcセンターの地域スタッフの就労状況をみても,月20日程度,1日平均7から8時間業務に当たっている者が多くを占めているとの実態が認められること(乙88,143)からすると,兼業を行う場合でも,それに当てられる時間やそこから得られる収入は相当限定されたものになると考えられる。
これらの点に照らすと,地域スタッフが再委託や兼業が可能であるといっても,その実態に鑑みれば,そのことから地域スタッフが原告から独立しており,事業者性が顕著であるということはできない。
そして,原告が地域スタッフについて給与所得としての源泉徴収を行っていないこと,地域スタッフが事業所得として確定申告をし,社会保険に加入していないことについては,原告が地域スタッフとの法律関係を労働契約に該当しないものとして取り扱っているという以上の意味は認め難いところであり,地域スタッフが各戸を訪問する移動手段につきバイク等の貸与やガソリン代等の支給を受けていない点を含めて考えても,地域スタッフの事業者性が顕著であることを基礎付けるような事情であると認めることはできない。
オ 結論
以上によれば,地域スタッフは,事業継続に不可欠な労働力として原告の事業組織に組み込まれ,契約内容の重要部分は原告により一方的に決定され,その報酬には労務対価性が認められる。一方で,個別的な業務の依頼に応じるべき関係や,個別的な労務の提供について具体的な拘束を与え,あるいは,指揮監督を行うという関係は見いだし難いものの,他方で,目標達成に向けて業務に関する事細かな指導を受け,目標達成に至らなかったときは委託業務の削減や本件委託契約の解約等の段階的な措置を講じられることが予定されているなど,その業務遂行が原告の相当程度強い管理下に置かれていることに鑑みれば,本件委託契約で委託された業務全体について,原告の業務依頼に応ずべき関係が存在し,その労務の提供について一定の拘束や指揮監督を受けている関係が認められる反面,顕著な事業者性を認めることはできない。
これらの事情からすれば,地域スタッフは,原告との交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるのであって,労組法上の労働者に該当すると解するのが相当である。
2  本件団交申入れに対する原告の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか(争点2)について
(1)  認定事実
前記前提事実のほか,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
ア Eが平成23年4月1日に,原告の求めに応じてキュービットを返還したことを受けて,参加人と原告は,同日,参加人側から,E,副委員長であるDの外組合員1名が,原告側から,cセンターのセンター長外2名が出席し,Eへのキュービットの貸与に関する取扱いについて初めて交渉が行われた(前記前提事実(2)ウ,甲2,乙29,90)。
イ 参加人は,平成23年4月10日,cセンターに対し,「特別執行委員 i協議会執行部 支援団体交渉になります。」等の記載のある申入書を差し入れて,Eのキュービットの返還・不貸与等を議題とする交渉を申し入れ,同月11日,参加人側からD外組合員1名に加え,本件組合の下部組織であり参加人の上部団体であるi協議会の構成員3人が,原告側からcセンターのセンター長,当時の原告のcセンターの副部長であったJ外1名がそれぞれ出席して交渉が行われた(乙29,90,91の2,乙206,212)。
ウ 参加人は,平成23年6月1日,cセンターに対し,「g労連のF事務局長を入れての支援団交になります」等の記載のある書面を差し入れて,交渉の申入れを行ったところ,Jは,参加人に対し,「これまでの交渉慣行どおり,地域スタッフではない部外者を除く支部のメンバーと交渉をお願いしたい」と回答した。同日,D,Fらは,cセンターを訪問し,Jに対し,労組法の団交拒否に当たるなどと述べて抗議したが,Jは,上記回答と同じ対応をした。(乙62,65,131,206,212)
エ Fは,平成23年6月10日,参加人の特別執行委員に就任し,参加人は,cセンターに対し,同年7月26日付けの内容証明郵便による通知をもって,Eへのキュービットの貸与等を議題とし,出席者を特別執行委員F等として,同年8月1日に交渉を開催することを申し入れたが,Jは,同年7月28日にDに電話をかけ,上記交渉申入れについて,参加人との交渉には応じるが,地域スタッフではない部外者が入る交渉には応じられない旨述べた(甲2,乙62,65,206)。
オ 参加人とcセンターは,平成23年8月11日,参加人側からE,D外3名に加えて関西協議会の執行委員1名及び本件組合の副委員長が,cセンター側からセンター長外1名がそれぞれ出席して,Eへのキュービットの貸与等について交渉を行った(乙29,90,91の3,乙206)。
カ 参加人は,平成23年11月2日,cセンターに対し,本件団交申入れを行ったところ,同日,Jは,Dに電話をかけ,それまでの交渉慣行どおり,地域スタッフではない部外者を除いた,地域スタッフである参加人のメンバーとの交渉をお願いしたいなどと述べた。Dはこれに対し,団交拒否に当たる旨述べて抗議した。(前記前提事実(2)エ,乙64,125,206)
キ 参加人とcセンターが平成23年11月10日に事務折衝を行った際,Dが,cセンターの対応は団交拒否である旨を述べたのに対し,Jは,上記カの電話の際と同様の回答をした(乙125,206)。
ク 参加人は,平成23年12月4日にcセンターに対し,Eへのキュービットの貸与等を議題事項として同月13日に団体交渉を行うよう申し入れたところ,そこにFが出席予定である旨が明示されていなかったこともあってJはその受け入れを表明したが,参加人から開催日時の変更が申し入れられ,交渉の機会が設けられないまま終わった(乙100,125)。
ケ 参加人は,平成23年12月16日,原告を相手方として,d労に対し,不当労働行為救済命令の申立てをした(前記前提事実(3))。
(2)  原告の対応について
上記1のとおり,地域スタッフは労組法上の労働者に該当する者であるから,本件組合及び参加人は労組法上の労働組合である。
そして,本件団交申入れは,Eへのキュービットの貸与という組合員の労働条件に関わる事項が含まれており,義務的団交事項を含むが,Jは,上記認定事実カのとおり,地域スタッフではない部外者を除いた,地域スタッフである参加人のメンバーとの交渉をお願いしたいなどと述べ,参加人側が団交拒否に当たると述べてもその対応を変更しなかったのであるから,この対応自体は団体交渉拒否に当たる。
原告は,このような対応には正当な理由があると主張するところ,正当な理由がある団体交渉拒否には不当労働行為(労組法7条2号)は成立しないと解されるため,このような原告の主張の当否を以下で検討する。
(3)  原告の対応に正当理由が認められるかについて
ア 本件事前了解の成否について
原告は,a労との間で,本件出席ルールを含む本件交渉ルールについて合意を得ており,本件組合が原告との間で本件事前了解を成立させたことで原告と参加人との交渉にも本件出席ルールが適用されることになったから,原告の対応は本件出席ルールに従ったもので正当な理由があると主張する。これに対して,被告は,本件事前了解の成立を否認するため,以下では本件事前了解の成否を検討する。
(ア) まず,本件事前了解が成立したことを直接証する原告と本件組合との間の書面その他の客観的証拠は存在しない。
(イ) また,原告が本件事前了解が成立したと主張する前後の交渉経緯を記した原告作成の交渉記録(乙133から136まで)をみると,原告と本件組合とは,4回にわたって交渉しているところ,4回目の交渉の際の交渉記録(乙136)には,「協会は・・現在の交渉原則案の内容について合意するかどうかを質したところ組合側は文書確認の段階では表現上の注文があり得るが,基本精神は了解する」と述べた旨が記載されている。この記載に従えば,本件組合は後に「文書確認の段階」で表現上の意見を述べることを留保した上で基本精神を了解した旨を表明していたように受け取れる。もっとも,上記の交渉記録には,続けて,「重ねてこの表現で口頭確認とする旨の意向を述べたので,事前了解事項については両者の合意は成立したという立場を双方とることとした」との記載があるものの,「両者の合意は成立したという立場を双方とることとした」という表現振りは,実際に合意が成立したか否かを明確にしていないともいい得る。この点については,上記の交渉記録自体,原告側で作成したもので,その文面につき本件組合にその適否を諮り,その了解を得たという経過も見当たらない上,逐語的に記録されたことの裏付けもなく,本件組合が「不可解な議論を再三展開した」などと原告側の立場からした記載も見受けられる(乙134)ことからすると,かかる記録の内容に実際の発言や事実がそのまま反映されているかについては慎重な検討が必要というべきである。また,交渉のルールを明確化し,それに従うことを約束し,合意が成立したというのであれば,それを書面化してしかるべきところ,実際に合意に至りながら書面化を困難にするような事情も見当たらないことからすると,上記のような交渉記録上の記載から合意の成立を直ちに認定することはできないというべきである。
(ウ) 原告は,本件事前了解が成立したことを推認させる事情として,原告及び本件組合が本件事前了解に従った行動を取っていること,具体的には,本件事前了解には,本件交渉ルールを承継するだけではなく,事務所の貸与などを含めてa労と原告との間で確認された事項を包括的に承継するという内容が含まれているところ,本件組合は実際に事務所の貸与などについて原告とa労との間で行われていた扱いを一部そのまま踏襲していることを指摘する。
しかしながら,本件組合が,a労に対する扱いを一部そのまま受け入れたり,踏襲したりした事実があったからといって,他の事項・項目を含めた本件事前了解の全体を本件組合が受け入れており,原告との間で合意が成立しているものと推認するのは困難というほかなく,原告の主張する点は本件事前了解の成立を認める根拠としては不十分である。
(エ) なお,原告は,原告主張に係る本件事前了解成立時よりも後である昭和59年に,条件付契約更新制度に関して本件組合が作成した文書(乙184),及び,平成4年に組合役員の組合業務従事に関わる応援扱いの依頼に関して本件組合が作成した文書(乙190)には,本件事前了解の成立を前提とした記載があるとして,当該記載を本件事前了解成立の根拠として主張する。
しかし,前者については,「b労結成時にすでにあるルールとして否定も肯定もできないままに『交渉にあたっての事前了解』により継承させられた」旨の記載があるものの,直後に「b労は・・合意した経緯はない」と記載していることからすると,当該文書自体,本件組合が合意の成立を主張する原告の立場に抗議する趣旨のものであることがうかがえ,「継承させられた」という文言から直ちに本件事前了解の成立を認めていることにはならない。
また,後者については,「『X協会とb労働組合との交渉開始にあたっての事前了解』に基づき」との記載はあるものの,これは,本件事前了解に記載されている内容のうち,本件交渉ルールとは無関係な事項に係るものであるところ,上記(ウ)のとおり,一部本件事前了解に含まれる内容を受け入れ,その運用に従っていたとしても,そのことから直ちに,本件交渉ルールの承継を含めた本件事前了解全体を受け入れているとはいい難いのであって,そうした合意をしたことを認めたことにもならないというべきである。
(オ) その他の原告の主張を踏まえても,本件事前了解の成立を推認させるだけの事情は見当たらないのであって,結局,本件事前了解が成立したとは認められないというべきである。
イ 本件交渉慣行について
(ア) 原告は,仮に本件事前了解が成立していないとしても,原告と参加人との間には,本件出席ルールと同内容の交渉慣行が存在しており,原告の対応は,かかる交渉慣行に基づくものであるから,正当な理由が認められると主張する。
(イ) まず,参加人は,cセンターとの間の団体交渉に,地域スタッフではないg労連の者が参加したこともあったと主張し,その裏付けとしてその際の団交議事録と称する証拠(丙6)を提出するが,原本が存在しないという保存状態やその体裁からしても,上記証拠の記載内容自体直ちに信用することはできない上,原告との交渉に地域スタッフでないg労連の者が出席したことがあったとしても,正式な団体交渉といえるものであったと直ちには認められず,参加人の主張はそのまま採用できない。
他方,少なくとも本件組合の他の支部では,地域スタッフではない者が出席した団交を申し入れる場合があり,実際にその者が出席しての団交が行われた例があることが認められる(乙75,丙7)ことからすると,原告と本件組合との間で原告が主張するような慣行が成立していたということはできない。
そして,原告と参加人との過去の交渉の中で,出席者を地域スタッフに限定するとの議論がされたこと,本件交渉ルールや本件出席ルールの存在について議論がされたこと,原告又は参加人のいずれかが求めた出席者についてその相手側が異議を唱え,事前の折衝を行わなければならなくなったことなどを認めるに足りる証拠はない。原告と参加人との間のこれまでの団体交渉において,たとえ地域スタッフ以外の者が出席したことがなかったとしても,参加人からたまたまそのような申出がなかった可能性もあることも考慮すれば,当事者双方に本件出席ルールと同内容の慣行が存在し,これに従うことについて規範意識が形成されていたと認めることはできない。
以上からすると,原告及び参加人に対して法的拘束力を有するような本件交渉慣行が成立していたと認めることはできない。
ウ その他の正当な理由について
原告は,それまでに参加人との間で,Eへのキュービットの貸与に関係して3回交渉を行っており,参加人とは別系列のg労連のFの出席を求める本件団交申入れは,紛争の蒸し返しや混乱を招きかねない信義に反するものであることから上記対応を取ったのであって,原告の対応には正当な理由があると主張する。
しかしながら,本件団交申入れにおいて議題事項とされていたのは,Eへのキュービットの貸与の問題であり,本件団交申入れがあった時点までに,この問題について原告と本件組合やEとの間で何らかの合意や了解に至っていたなどの経過も,Fが他の交渉の場で混乱を生じさせたなどの事情も見当たらないことからすると,Fが出席することで紛争の蒸し返しや混乱が生ずるとするだけの根拠に乏しい。
また,仮に混乱の懸念があるのであれば,事前の折衝等によって当該懸念を表明し,混乱が生じないように団体交渉を進めることも考えられるのであって,そのようなことを行わずに直ちに出席を拒否することに正当な理由は見いだせない。
以上からすると,原告が主張するその他の理由はいずれも団体交渉拒否の正当な理由であるとは認められない。
エ 以上によれば,原告が上記(2)の対応を取ったことに正当な理由があるとは認められない。
(4)  したがって,本件団交申入れに対する原告の対応は,正当な理由のない団体交渉拒否に当たり,不当労働行為に該当する。
3  以上によれば,地域スタッフは労組法3条に定める「労働者」に当たり,本件団交申入れに対する原告の対応が不当労働行為に当たるとして再審査申立てを棄却した本件命令は適法というべきである。
第4  結論
そうすると,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第36部
(裁判長裁判官 吉田徹)
裁判官佐藤彩香及び裁判官山田裕章は異動のため署名押印することができない。裁判所裁判官 吉田徹

(別紙)
当事者目録
東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 日本放送協会
同代表者会長 A
同訴訟代理人弁護士 永野剛志
同 清水豊
同 鈴木伸治
同 髙木志伸
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 B
処分行政庁 中央労働委員会
同代表者会長 C
被告指定代理人 W1
同 W2
同 W3
同 W4
同 W5
堺市〈以下省略〉
被告補助参加人 Z労働組合
同代表者執行委員長 D
同訴訟代理人弁護士 井上耕史
同 河村学
同 野矢伴岳
同 西澤真介

 

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