「成果報酬 営業」に関する裁判例(11)平成29年 9月21日 東京高裁 平29(ネ)1373号 損害賠償請求本訴、報酬請求反訴控訴事件
「成果報酬 営業」に関する裁判例(11)平成29年 9月21日 東京高裁 平29(ネ)1373号 損害賠償請求本訴、報酬請求反訴控訴事件
裁判年月日 平成29年 9月21日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(ネ)1373号
事件名 損害賠償請求本訴、報酬請求反訴控訴事件
裁判結果 控訴棄却 文献番号 2017WLJPCA09216004
事案の概要
◇被控訴人会社が、控訴人会社に対し、主位的に、そのオーナーである訴外Cに関するインターネット上の誹謗中傷表現の削除を依頼し、初期費用324万円を支払ったにもかかわらず、控訴人会社は38サイトの削除をする契約(本件契約)を履行する意思がないことを明らかにし、控訴人の責めに帰すべき事由により履行不能になったと主張して、債務不履行に基づき、予備的には、仮にそのように言うことができないとしても、そもそも削除対象とするサイト数の認識が当事者間において異なるのであるから、本件契約は成立していないとして、不当利得返還請求権に基づき、324万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた(本訴)のに対して、控訴人会社が、被控訴人会社に対し、本件契約に基づき、報酬324万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた(反訴)ところ、原審が本訴請求を認容し、反訴請求を棄却したことから、控訴人会社が控訴した事案
裁判経過
第一審 平成29年 2月23日 東京地裁 判決 平27(ワ)36900号・平28(ワ)27036号 損害賠償本訴請求事件、報酬反訴請求事件
裁判年月日 平成29年 9月21日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(ネ)1373号
事件名 損害賠償請求本訴、報酬請求反訴控訴事件
裁判結果 控訴棄却 文献番号 2017WLJPCA09216004
東京都港区〈以下省略〉
控訴人 株式会社Y
代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 戸門大祐
東京都渋谷区〈以下省略〉
被控訴人 株式会社X
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 松澤建司
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の本訴請求を棄却する。
3 被控訴人は,控訴人に対し,324万円及びこれに対する平成28年8月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件本訴は,被控訴人が控訴人に対し,①主位的請求として,控訴人に対してインターネット上の38サイトの誹謗中傷記事を削除する業務を委託して初期費用324万円を支払ったが,控訴人が委託されたのは1サイトの削除にすぎないなどと主張して38サイトの削除を履行しないのは控訴人の責めに帰すべき履行不能であるとして,債務不履行に基づく損害賠償請求権に基づき,②予備的請求として,削除すべきサイトの数に食違いがあるので上記業務委託契約は成立していないと主張して,不当利得返還請求権に基づき,324万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成28年1月14日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
本件反訴は,控訴人が被控訴人に対し,インターネット上の1サイトの誹謗中傷記事を削除する業務委託を受けてこれを履行したと主張して,業務委託契約に基づく報酬324万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成28年8月19日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 原審は,控訴人と被控訴人との間の業務委託契約は,38サイトの記事の削除を業務内容とするものであり,控訴人がこれをする意思がないことを表明したことは控訴人の責めに帰すべき事由による履行不能に当たる旨判断して,被控訴人の本訴請求の主位的請求を認容し,控訴人の反訴請求を棄却した。
そこで,控訴人が上記判断を不服として控訴した。
3 前提事実,争点及びこれに対する当事者双方の主張は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の2ないし4(原判決2頁20行目から4頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決2頁20行目の「当事者間に争いのない事実」を「前提事実(以下の事実は当事者間に争いがない。)」と改める。
(2) 原判決3頁5行目の「意思がない。」を「意思がなく,社会通念上履行不能の状態である。」と改める。
(3) 原判決3頁17行目の「上記2(1)」を「前提事実(1)」と改める。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人と被控訴人との間で38サイトを削除対象とする合意が成立したと判断するものであり,その理由は,以下のとおり原判決を補正し,次項のとおり控訴人の当審における主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1及び2(原判決4頁14行目から8頁26行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決4頁15行目の「上記当事者間に争いのない事実(第2の2)」を「前提事実」と改める。
(2) 原判決5頁6行目の「上記第2の2」を「前提事実」と改め,同頁15行目の末尾の後に「(甲4,乙4の12・13枚目)」を加える。
(3) 原判決6頁14行目の「これらの事実」の後に「並びに証人E及び証人Dの各証言」を加え,同頁16行目から17行目にかけての「と推認するのが相当である」を「と認められ,これに反する控訴人代表者本人の供述及びGの陳述は採用することができず,他に上記認定を覆すに足りる証拠はない」と改める。
(4) 原判決7頁21行目から8頁3行目の「被告は」までを以下のとおり改める。
「 そして,控訴人は,その作業を知人のFを通じて,ウクライナの業者とつながりのあるGに依頼し,ウクライナの業者にサイトの削除をさせたと主張し」
(5) 原判決8頁5行目の「証拠はない。」の後に以下のとおり加える。
「また,控訴人は,当審になって,Fが所属する株式会社cが控訴人代表者の依頼を受けて作成したという平成26年8月29日付け見積書(乙19。同見積書には1URL当たり着手金20万円,成果報酬250万円との記載がある。),Gが株式会社dの担当者として株式会社a宛てに作成した平成28年2月10日付け及び同年3月17日付け請求書(乙20及び21。風評コンサルティング費用として84万円又は180万円及び消費税を請求するもの。)を提出する。しかしながら,これらの見積書ないし請求書は,控訴人がサイトの削除の業務を依頼していたGやFらがそのような見積りや請求をしたことがあるという事実を示すものにすぎず,これらに示された金額が一般的な相場であることを示すものとはいえない。控訴人は,ウクライナの業者から提示された報酬額は400万円であるとも主張するが,Gが作成した控訴人に対する請求書の額が250万円(乙9)であることとも整合しない。」
(6) 原判決8頁15行目の「乙14」の後に「,24」を加え,同頁16行目の「かかるメモの存在は」を「このようなメモが被控訴人側に示されたことを認めるに足りる証拠はない上,このようなメモの存在は」と,同頁17行目の「上記1(7)」を「認定事実(7)」とそれぞれ改める。
(7) 原判決8頁21行目の「そして」から同頁26行目末尾までを以下のとおり改める。
「 次に,控訴人には38サイトの削除を履行する意思がないというのであり,当事者双方は,本件訴訟において,控訴人と被控訴人との間の本件インターネット上の記事の削除に係る契約が38サイトの削除を内容とするものであった場合には社会通念上履行不能であることを前提にしている(前提事実(3))。
以上によれば,上記履行不能は,控訴人の責めに帰すべき事由によるものと認められ,これを覆すに足りる証拠はない。そして,被控訴人が38サイトの削除のための初期費用として控訴人に支払った324万円は,被控訴人の損害と認められる。
(4) 以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,被控訴人の本訴請求(主位的請求)は理由があり,控訴人の反訴請求は理由がない。」
2 控訴人の当審における主張について
(1) 控訴人は,当審において,削除対象のサイトは「○○」1件であった証拠として乙18を提出するが,同書証は,控訴人が自ら原審で提出した乙4(12・13枚目)の1枚目に手書きされた「△△@□□.co.jp」及び2枚目に手書きされた「エクセル原本 メールで送信」部分まで同一と思料される書面に,乙4(12・13枚目)には記載されていない「黄色以外を削除」,「○○を消す!!」と手書き部分を付け加え,また,種別欄の手書きの○印が2箇所付け加わっているものであり,当審になって提出されたという経過も不自然であり,控訴人の主張を証するものであるとはいえない。
(2) 控訴人は,当審になって,控訴人と被控訴人との契約当時被控訴人の主張する38サイトのうち実在していたのは僅か18サイトであるなどと主張して,乙22及び23を提出する。しかしながら,乙22及び23によっても,当該書類に削除済みであるとかアクセス不可とか記載されたサイトが上記契約当時既に削除され又はアクセスできなくなっていたことを認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はないから,控訴人の主張は採用することができない。
(3) 控訴人が,当審になって提出する乙25(平成26年9月18日付け議事録)については,被控訴人は同議事録を受け取ったことを否認するところ,同議事録を被控訴人が受領したことを認めるに足りる的確な証拠はなく,控訴人が,原審において,乙25とは内容を異にする同日付けの議事録(乙10)を提出した上これを引用して,同日,本件のサイト削除についてはウクライナ業者の進捗状況を伝えた程度でそれ以上の話は何もなかったなどと陳述していたこと(乙15の6頁)に照らしても,その信用性は極めて疑わしいといわざるを得ず,その記載内容を採用することはできない。
(4) 以上のほか,控訴人が当審で主張するところは,前記1で原判決を補正して説示した部分のほかは,原審における主張の繰り返しか,又は独自の見解に基づき原判決を論難するものであって,前記1の認定判断を左右するものではない。
3 以上によれば,被控訴人の本訴請求(主位的請求)は理由があるからこれを認容し,控訴人の反訴請求は理由がないからこれを棄却すべきである。これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第16民事部
(裁判長裁判官 尾島明 裁判官 前田英子 裁判官 藤澤孝彦)
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