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「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(7)平成30年 9月10日 東京地裁 平29(ワ)10235号 損害賠償請求事件

「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(7)平成30年 9月10日 東京地裁 平29(ワ)10235号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成30年 9月10日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)10235号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2018WLJPCA09108004

裁判年月日  平成30年 9月10日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)10235号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2018WLJPCA09108004

東京都八王子市〈以下省略〉
原告 特定非営利活動法人X1(以下「原告X1法人」という。)
同代表者理事 A
東京都八王子市〈以下省略〉
原告 株式会社X2(以下「原告X2社」という。)
同代表者代表取締役 B
上記両名訴訟代理人弁護士 小村享
横浜市〈以下省略〉
被告 一般社団法人Y1会(以下「被告Y1会」という。)
同代表者代表理事 Y2
熊本県上益城郡〈以下省略〉
被告 Y2(以下「被告Y2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 佐藤文昭

 

 

主文

1  原告らの被告Y1会に対する主位的請求をいずれも棄却する。
2  被告Y1会は,原告X1法人に対し,300万円及びうち50万円に対する平成28年4月27日から,うち150万円に対する同年5月20日から,うち100万円に対する同年6月8日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告Y1会は,原告X2社に対し,1241万2365円及びうち300万円に対する平成28年8月8日から,うち300万円に対する同年9月5日から,うち300万円に対する同月26日から,うち341万2365円に対する平成29年1月26日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  被告Y2は,原告X1法人に対し,330万円及びこれに対する平成29年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5  被告Y2は,原告X2社に対し,1877万6947円及びこれに対する平成29年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6  原告らの被告Y2に対するその余の請求をいずれも棄却する。
7  訴訟費用は,原告X1法人に生じた費用の20分の2と被告Y1会に生じた費用の60分の1と被告Y2に生じた費用の60分の1を原告X1法人の負担とし,原告X2社に生じた費用の20分の5と被告Y1会に生じた費用の60分の20と被告Y2に生じた費用の60分の5を原告X2社の負担とし,原告X1法人に生じた費用の20分の9と原告X2社に生じた費用の20分の6と被告Y1会に生じた費用の60分の39を被告Y1会の負担とし,原告X1法人に生じた費用の20分の9と原告X2社に生じた費用の20分の9と被告Y2に生じた費用の60分の54を被告Y2の負担とする。
8  この判決は,第2項から第5項までに限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告Y1会に対する主位的請求及び被告Y2に対する請求
(1)  被告らは,原告X1法人に対し,連帯して360万円及びこれに対する平成28年4月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  被告らは,原告X2社に対し,連帯して2047万6947円及びこれに対する平成29年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告Y1会に対する予備的請求
(1)  主文第2項と同旨
(2)  主文第3項と同旨
第2  事案の概要等
1  事案の概要
本件は,原告らが,被告Y1会の理事であるC(以下「C」という。)がD(以下「D」という。)と共謀して行った詐欺により損害を被ったとして,
(1)  被告Y1会に対しては一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」という。)78条に基づき,被告Y1会の代表理事である被告Y2に対しては一般法人法117条1項に基づき,①原告X1法人においては,360万円及びこれに対する平成28年4月21日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,②原告X2社においては,2047万6947円及びこれに対する平成29年3月31日(最後の損害発生日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,
(2)  被告Y1会に対しては,予備的に,被告Y1会の原告らからの金員の取得は法律上の原因を欠き,被告Y1会は悪意の受益者であるとして,不法利得返還請求権に基づき,①原告X1法人においては,300万円及びうち50万円に対する平成28年4月27日(利得発生日)から,うち150万円に対する同年5月20日(利得発生日)から,うち100万円に対する同年6月8日(利得発生日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による民法704条前段の利息(以下「法定利息」という。)の支払を求め,②原告X2社においては,1241万2365円及びうち300万円に対する同年8月8日(利得発生日)から,うち300万円に対する同年9月5日(利得発生日)から,うち300万円に対する同月26日(利得発生日)から,うち341万2365円に対する平成29年1月26日(最後の利得発生日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める事案である。
2  前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。
(1)  当事者等
ア 原告X1法人は,障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業等を目的とする特定非営利活動法人である。
A(以下「A」という。)は,原告X1法人の理事であり,代表者である。
(弁論の全趣旨)
イ 原告X2社は,生命保険代理店業務等を目的とする株式会社である。原告X2社は,平成28年8月,「特定医療機関等に於ける,玄米加工商品の販売促進」を目的に追加した。
B(以下「B」という。)は,原告X2社の代表取締役である。
(弁論の全趣旨)
ウ 被告Y1会は,医療・再生医療に関する研究,医療サプリに関する普及活動等を目的とする一般社団法人である。
被告Y1会は,その代表者として「代表理事」を定めており,「理事長」という代表者は置かれていない。
被告Y2は,平成27年2月10日に被告Y1会の代表理事に就任した者である。
(弁論の全趣旨)
エ Cは,被告Y1会の理事であり,被告Y2の父である。
(争いがない。)
オ Dは,Aの知人である。Bは,Aから,Dが,元a大学教授であり,社会福祉等の分野で活躍していた人物であるなどと紹介された。
(甲35)
(2)  管理業務委託契約書等の作成
ア 別紙契約書目録記載のとおり,各原告と被告Y1会を当事者とし,①被告Y1会が販売する玄米焙煎茶の試飲用サーバー(給茶機)を提携する医療機関(以下「提携医療機関」という。)の施設に設置するにあたり,被告Y1会は,各原告に対し,上記給茶機の維持管理等の業務(以下,単に「管理業務」という。)を委託する,②被告Y1会は,各原告に対し,管理業務委託金として,提携医療機関の患者らが購入した玄米焙煎茶等の売上金の一定割合(原告X1法人との契約では3%から10%,原告X2社との契約では5%から15%)を支払う,③各原告は,提携医療機関に損害を与えた場合の担保として一定の保証金を被告Y1会に差し入れ,被告Y1会はこれを提携医療機関に預託する,④保証金は,管理業務委託契約が終了したときには,各原告に対して全額返還されるとの内容の管理業務委託契約書及び「保証金に関する覚書」と題する文書が作成された(以下,上記①~④を主たる内容とする契約を,単に「管理業務委託契約」という。)。
(甲2の1,2の3,3の1,3の2,4の1,4の2,5の1,5の2)
イ 別紙契約書目録記載1及び2(1),(2)の各管理業務委託契約書が作成された際,各原告と被告Y1会を当事者とし,各原告において,被告Y1会に対し,管理業務に基づき提携医療機関で得た情報等を第三者に漏洩しないことや被告Y1会が保有する個人情報等を被告Y1会の指示がある場合を除き利用しないことなどを誓約する内容の「機密保持及び個人情報に関する誓約書」と題する文書が作成された。
(甲2の2,3の3,4の3)
ウ 原告X1法人は,別紙保証金目録記載1のとおり,別紙契約書目録記載1の管理業務委託契約書等に基づき,保証金300万円を,横浜信用金庫センター南支店の被告Y1会名義の普通預金口座(以下「本件被告Y1会口座」という。)に送金した。
また,原告X2社は,別紙保証金目録記載2のとおり,別紙契約書目録記載2の各管理業務委託契約書等に基づき,保証金各300万円を本件被告Y1会口座に送金した。
(甲2の3,3の2,4の2,5の2,28~30,33の3,33の4)
エ Cは,被告Y1会の理事長と名乗って,Dと共に,原告らに対し,被告Y1会との管理業務委託契約の締結を勧誘し,上記アの管理業務委託契約書等を作成した。Cは,上記行為を被告Y1会の業務として行ったものであるが,被告Y1会の代表者である被告Y2は,C及びDによる上記勧誘行為や管理業務委託契約書等作成の事実を知らなかった。
(甲35,被告Y2本人8~10頁)
(3)  原告X2社による追加保証金の支払
ア 原告X2社は,平成28年8月23日頃,被告Y1会との間の管理業務委託契約を破棄して,新たに設立されるDを代表者とする法人との間で契約を締結し直す必要がある旨の被告Y1会名での通知を受けるとともに,同年12月3日には,Cから,新法人(一般社団法人b会)に対する追加の保証金(一般社団法人b会が求める保証金と被告Y1会に対して預け入れた保証金の差額)の預け入れが必要である旨の電子メールを受信した。
(甲8の1~8の3,34)
イ また,原告X2社は,被告Y1会名での平成28年12月5日付け「御報告書」により,被告Y1会が新法人に業務を移行することに伴い,原告X2社が預託すべき保証金が各提携医療機関につき200万円ずつ不足しており,うち2件の提携医療機関については同月7日までに,残りの1件の提携医療機関については平成29年2月10日までに,それぞれ不足額の入金をしなければ,新法人との間の管理業務委託契約の締結を辞退したものとみなされる旨の通知を受けた。
(甲11)
ウ 原告X2社は,平成28年12月7日,上記イの通知に従い,提携医療機関2件分の追加保証金合計400万円を「b会D」名義の金融機関口座に送金した。
(甲26)
(4)  原告X2社の本件被告Y1会口座への送金
原告X2社は,前記(3)のほかに,別紙損害目録記載1のとおり,合計341万2365円を本件被告Y1会口座に送金した。
(甲31の1~31の7,33の4,33の5)
(5)  管理業務委託金の支払状況
原告らは,平成28年12月までの管理業務について,各提携医療機関に係る商品の売上額や管理業務委託金額を被告Y1会名で通知する内容の払込確認書等を受領したが,実際に被告Y1会から原告らに対して管理業務委託金が支払われることはなかった。
これらの払込確認書には,提携医療機関の評価が上がれば,管理業務委託金の割合が上がる旨の記載がある。
(甲6の1~7の6の4,12の1~13の2,35)
(6)  管理業務委託契約の解除
原告らは,それぞれ,被告Y1会に対し,平成29年2月6日,管理業務委託金の支払を催告し,5日以内に支払がない場合には,管理業務委託契約を解除する旨の意思表示をした。
(甲12の1~13の2)
(7)  本件訴状の送達
原告らは,平成29年3月28日,本件訴訟を提起した。本件訴状は,同年4月14日に被告Y2に,同年5月17日に被告Y1会に,それぞれ送達された。
(当裁判所に顕著な事実)
3  主たる争点
(被告Y1会に対する主位的請求及び被告Y2に対する請求に関する争点)
(1) C及びDの詐欺による不法行為の成否
(2) 被告Y2は一般法人法117条1項に基づく責任を負うか。
(3) 被告Y1会は一般法人法78条に基づく責任を負うか。
(4) 原告らの損害
(被告Y1会に対する予備的請求に関する争点)
(5) 原告らの被告Y1会に対する不当利得返還請求権の成否
4  主たる争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(C及びDの詐欺による不法行為の成否)について
(原告らの主張)
C及びDは,各原告に対し,管理業務委託金の支払や保証金の返還をする意思がないにもかかわらず,被告Y1会との間で管理業務委託契約を締結すれば管理業務委託金を受け取ることができるなどと述べて勧誘等を行い,その結果,原告らは,その旨誤信して,被告Y1会との間で管理業務委託契約を締結し,被告Y1会に対して保証金を預託し,管理業務を遂行するために必要な費用を支出した。
C及びDの上記行為は,詐欺であり,原告らに対する不法行為が成立する。
(被告Y1会の主張)
否認する。
被告Y1会は,平成28年当時,休眠法人であり,法律行為は一切行っていない。
(被告Y2の主張)
知らない。
(2)  争点(2)(被告Y2は一般法人法117条1項に基づく責任を負うか。)について
(原告らの主張)
ア 被告Y2は,平成27年4月2日に本件被告Y1会口座を自ら開設し,同口座による取引を自ら行ったこともあるのであるから,同口座を利用してどのような取引が行われ,同口座がどのような目的で使われているかについて気を配り,不正に利用されることがないよう注意するべきであった。なお,同月以降,被告Y1会名義の預金口座からの入出金が繰り返されていたことからすると,被告Y1会は休眠法人ではなかったし,被告Y2はこれを知っていた。
また,被告Y2は,本件被告Y1会口座の開設者として,同口座の閉鎖,改印等の手続を容易に取ることができ,そのような手続をすべきであったにもかかわらず,何らの措置も講じなかった。
イ 以上のとおり,被告Y2は,他の理事(C)の行為を放置,放任したという意味で,被告Y1会の代表理事としての職務を放棄し,職務上の善管注意義務を果たさなかったというべきである。したがって,被告Y2には,職務を行うについて,少なくとも重大な過失があった。
被告Y2は,重大な過失によって,Cに詐欺の手段を提供し,犯行を見逃し,原告らに損害を与えたことになるから,一般法人法117条1項に基づき,原告らに対して損害賠償責任を負う。
(被告Y2の主張)
被告Y2が被告Y1会の代表理事に就任した平成27年2月10日には,被告Y1会は,既に休眠状態にあり,営業活動を行っていなかった。そのため,被告Y2の代表理事就任後に,被告Y1会が何らかの事業を行ったことはない。
被告Y2は,Cからの依頼を受けて本件被告Y1会口座を開設し,同口座の通帳,届出印,キャッシュカードをCに交付したが,①これは,Cから,有限会社c(以下「c社」という。)をCと共同経営するE(以下「E」という。)との関係を改善し,被告Y1会の業務を行うために必要であると言われたためであること,②CはY2の父親であり,被告Y2がCの上記①の説明を信用したこともやむを得ないこと,③その後,被告Y2は,Cに対し,再三にわたり本件被告Y1会口座の通帳等の返還を求め,同口座の取引状況の開示を要求したが,Cはこれに応じなかったこと,④被告Y2には,Cが詐欺という犯罪行為に手を染めることまで想定すべき注意義務はないこと,⑤被告Y2には,自ら口座の解約に出向く資力等もなかったこと,⑥被告Y1会の理事会の招集,被告Y1会の理事であるCの解任といった手段をとれるだけの法的知識が被告Y2にはなく,それを期待することもできなかったことからすれば,被告Y2に悪意又はそれに準ずる重過失があるとはいえない。
(3)  争点(3)(被告Y1会は一般法人法78条に基づく責任を負うか。)について
(原告らの主張)
被告Y2には,被告Y1会の代表理事に就任中,前記(2)のとおり,他の理事の行為の放置・放任という不作為があった。
一般法人法78条の定める「その職務を行うについて」とは,何らの職務も行わないという不作為も含まれると解されるべきであるから,被告Y1会は,一般法人法78条に基づき,原告らに対して損害賠償責任を負う。
(被告Y1会の主張)
否認し,争う。
(4)  争点(4)(原告らの損害)について
(原告らの主張)
原告らは,C及びDの詐欺行為によって,以下のとおり,損害を受けた。したがって,被告らについて一般法人法に基づく責任が認められる場合,被告らは,各原告に対し,連帯して,以下の損害を賠償すべき責任を負う。
ア 原告X1法人の損害
(ア) 保証金(前記前提事実(2)ウ,別紙保証金目録記載1) 300万円
(イ) 弁護士費用 60万円
イ 原告X2社の損害
(ア) 保証金(前記前提事実(2)ウ,別紙保証金目録記載2) 合計900万円
(イ) 追加保証金(前記前提事実(3)ウ) 合計400万円
(ウ) F(以下「F」という。)に対する給与等の名目で本件被告Y1会口座に送金した金員(前記前提事実(4),別紙損害目録記載1) 合計341万2365円
原告X2社は,C及びDから,dクリニック(以下「dクリニック」という。)及びeクリニック(以下「eクリニック」という。)での管理業務を行うためにFを雇用するように指示され,Fへの給与等の名目で本件被告Y1会口座に送金した。
(エ) 名古屋営業所開設費用等(別紙損害目録記載2) 合計16万7910円
原告X2社は,C及びDの指示により,dクリニックにおける管理業務を行うために名古屋営業所を開設し,これに伴い,賃料,通信費等及び往復交通費を支出した。
(オ) 原告X2社代表者Bによる管理業務遂行のための費用(別紙損害目録記載3) 合計16万6672円
原告X2社の代表者であるBは,fクリニック(以下「fクリニック」という。)において管理業務を行うために出張をし,その往復交通費及び宿泊費を支出した。
(カ) Gに対する管理業務委託による給与(別紙損害目録記載4) 合計33万円
原告X2社は,fクリニックの管理業務をGに依頼し,その給与を支出した。
(キ) 弁護士費用 340万円
(被告Y1会の主張)
否認する。
(被告Y2の主張)
知らない。
(5)  争点(5)(原告らの被告Y1会に対する不当利得返還請求権の成否)について
(原告らの主張)
被告Y1会について一般法人法78条に基づく責任(争点(3))が認められないとしても,被告Y1会は,原告らが本件被告Y1会口座に送金をした下記金員について,法律上の原因なく利益を得た。したがって,被告Y1会は,これらの金員につき,悪意の受益者として不当利得返還義務を負う。
ア 原告X1法人
保証金(前記前提事実(2)ウ,別紙保証金目録記載1) 300万円
イ 原告X2社
(ア) 保証金(前記前提事実(2)ウ,別紙保証金目録記載2) 合計900万円
(イ) Fに対する給与等の名目で本件被告Y1会口座に送金した金員(前記前提事実(4),別紙損害目録記載1) 合計341万2365円
なお,上記(イ)については,複数回にわたる送金のうち最終送金日(最後の利得発生日)である平成29年1月26日からの法定利息を請求する。
(被告Y1会の主張)
被告Y1会は,予備的請求の趣旨に対して答弁をせず,予備的請求の原因に対して認否をしないと陳述し,争うことを明らかにしない。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(C及びDの詐欺による不法行為の成否)について
(1)  認定事実
前記前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実がそれぞれ認められる。
ア 原告X1法人による管理業務委託契約書の作成等
(ア) Aは,平成28年4月頃,被告Y1会の理事長と称するC及びDから被告Y1会との管理業務委託契約締結の勧誘を受け,原告X1法人は,別紙契約書目録記載1のとおり,提携医療機関をgクリニック(以下「gクリニック」という。)とする管理業務委託契約書等を作成し,別紙保証金目録記載1のとおり,本件被告Y1会口座に保証金を送金した。
(前記前提事実(2),甲35)
(イ) 原告X1法人は,平成28年5月から同年12月頃までの間,管理業務をBに行わせていたが,被告Y1会から原告X1法人に対して管理業務委託金が支払われることはなかった。
(前記前提事実(5),甲35,原告X2社代表者1~2頁)
イ 原告X2社による管理業務委託契約書の作成等
Bは,Dから,平成28年8月から同年9月頃にかけて,管理業務を行っていた者が相次いでこれを行うことができなくなったため,原告X2社と管理業務委託契約を締結したいなどと勧誘を受け,別紙契約書目録記載2のとおり,3つの提携医療機関に係る管理業務委託契約書等をそれぞれ作成し,別紙保証金目録記載2のとおり,本件被告Y1会口座に保証金を送金した。
(前記前提事実(2),甲35)
ウ 原告X2社による管理業務の遂行状況等
(ア) Fに対する給与等の支出
a Dは,Bに対し,dクリニックでの管理業務を,かつてdクリニックに准看護師として勤務していたFに行わせ,原告X2社がFを雇用する形にし,原告X2社が受領すべき管理業務委託金と被告Y1会が立て替えて支払うFの給料とを相殺処理することとしたいと述べた。平成28年8月7日に別紙契約書目録記載2(1)の管理業務委託契約書を作成する際には,Cも,Dと共に,Bに対し,上記と同様の説明を行い,原告X2社は,Fを雇用することに同意した。
また,原告X2社は,eクリニックでの管理業務もFに行わせることとした。
(甲35,原告X2社代表者7~9,13~14頁)
b Cは,平成28年9月30日,原告X2社に対し,被告Y1会がFの給与を立て替えたが,管理業務委託金とは相殺することができないなどとして,立替分の支払を求めた。さらに,Dは,Bに対し,同年11月上旬,Fの給与を巡ってFとCとの間に紛争が生じているなどと連絡した上,Cは,Bに対し,同年9月分と同年10月分の代理店手数料(管理業務委託金の趣旨と解される。)の3分の1をFに支払うよう求めた。Bは,管理業務委託金との相殺を求めたが,Cは,Fの給与は第三者が既に立て替えて支払ったなどと述べて,これを拒否した。これを受けて,原告X2社は,Fの給与等の立替分の支払として,別紙損害目録記載1のとおり,合計341万2365円を本件被告Y1会口座に送金した。
(前記前提事実(4),甲35,原告X2社代表者14~15頁)
c Bは,平成29年1月頃,dクリニックで准看護師をしているというFからの手紙を受領した。これには,原告X2社からの給与等の領収書や雇用に関する覚書等が添付されていた。
(甲20の1~20の8,35)
(イ) 名古屋営業所の開設等
a Dは,平成28年8月27日頃,Bに対し,Cからの連絡事項として,名古屋に原告X2社の営業所を置くことがdクリニックとの間の提携条件であったなどと述べて,原告X2社の営業所を名古屋に開設するように求めた。
(甲35)
b 原告X2社は,これを受けて,原告X2社の名古屋営業所を開設するために名古屋市中区所在のいわゆるバーチャルオフィス「h」の賃貸借契約を締結し,そのために,別紙損害目録記載2のとおり,往復交通費,賃料,通信費等合計16万7910円を支出した。
(甲21,36の2,36の4,36の6,36の8~36の10,37の2,37の4,39の1,39の2,40の1~40の6,42の1~42の4,43)
(ウ) fクリニックにおける管理業務
a 原告X2社は,Bがfクリニックでの管理業務を行うため,別紙損害目録記載3のとおり,往復交通費及び宿泊費合計16万6672円を支出した。
(甲38,39の2,39の3,43)
b 原告X2社は,平成28年9月からは,fクリニックでの管理業務をBの知人であるGに依頼し,別紙損害目録記載4のとおり,その給与合計33万円を支払った。
(甲36の4,36の7,36の8,36の10,37の3,37の4,41の1~41の5,43)
(エ) 原告X2社は,以上のとおり管理業務を行っていたが,被告Y1会から原告X2社に対して管理業務委託金が支払われることはなかった。
(前記前提事実(5),甲35)
エ 被告Y1会と各提携医療機関との関係等
(ア) 原告らは,被告Y1会から管理業務委託金が支払われないことから不信感を抱き,各提携医療機関に対し,平成29年2月4日付けの書面により,被告Y1会との取引状況等を問い合わせた結果,①被告Y1会又はc社が各提携医療機関に給茶機を無料で設置したことはあったものの,遅くとも平成28年3月以降は被告Y1会と各提携医療機関との間に取引関係はないこと,②提携医療機関のうち,eクリニック(ただし,個人経営のクリニックである。)は,被告Y1会との間で給茶機の設置について契約を締結していたが,原告X2社がeクリニックを提携医療機関とする管理業務委託契約書を作成する前の平成28年3月頃,被告Y1会に対して給茶機の撤去を求め,給茶機が撤去されたこと,③原告らが管理業務委託契約書を作成した際に作成された「保証金に関する覚書」には提携医療機関の押印がされているが,各提携医療機関は上記覚書の作成に何ら関与しておらず,上記覚書の各提携医療機関の印影(ただし,gクリニックに関する上記覚書には押印がない。)は偽造されたものであること,④各提携医療機関は,原告らと被告Y1会との間の管理業務委託契約の存在を認識しておらず,被告Y1会から保証金の預託を受けていないこと,⑤dクリニックにおいてFという准看護師が雇用されていた事実はなかったことなどが判明した。
(甲14の1,14の2,15,16の1~16の4,17の1~17の3,18,19の1~19の3,原告X2社代表者23頁)
(イ) また,C及びDは,原告X2社に対し,原告X2社との間の管理業務委託契約を新法人(一般社団法人b会)に移行させるなどと説明していたが,当該法人が設立された事実も見当たらない。
(弁論の全趣旨)
(2)  C及びDの不法行為責任の成否
前記前提事実及び前記(1)の認定事実によれば,①各提携医療機関は,原告らと被告Y1会との間の管理業務委託契約や預託保証金の存在を認識していなかったこと,②原告X2社が提携医療機関をeクリニックとする管理業務委託契約書を作成した時点では,既にeクリニックから給茶機が撤去されていたこと,③C及びDは,Bに対し,原告X2社において雇用してdクリニックでの管理業務を行わせる者として,dクリニックにかつて勤務していたというFを紹介したが,dクリニックがFを雇用していた事実はなく,Fという人物の存在自体が疑わしいこと,④提携医療機関の押印が偽造された書面が作成されていること,⑤被告Y1会から原告らに対して管理業務委託金が一度も支払われていないこと等が認められる。これらの事実によれば,C及びDは,原告らに対して管理業務委託金を支払う意思も能力もないのに,また,保証金を返還する意思も能力もないのに,原告らとの間で被告Y1会名義で管理業務委託契約を締結したとして,原告らから保証金名目で金銭を預託させ,原告X2社に対しては,その後も虚偽の事実を述べて,追加保証金としてD名義の口座に金員を送金させたり,Fに対する給与として本件被告Y1会口座に金員を送金させたりしたものと認めることができる。
したがって,C及びDは,原告らに対し詐欺を行ったものとして,共同不法行為責任を負うものと認められる。
2  争点(2)(被告Y2は一般法人法117条1項に基づく責任を負うか。)について
(1)  認定事実
前記前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実がそれぞれ認められる。
ア 被告Y2は,熊本県に居住している。
(弁論の全趣旨)
イ Cは,被告Y2の実父であり,被告Y2が被告Y1会の代表理事に就任する10年以上前に,詐欺で服役したことがあった。被告Y2は,被告Y1会の代表理事に就任した平成27年2月10日の時点において,そのことを知っていた。
(被告Y2本人1,10頁)
ウ 被告Y2は,Cから,従来はc社が行っていた仕事を,Eが代表者として経営する新法人と被告Y1会とで分業するから,被告Y1会の代表理事にならないかと勧誘を受けた。被告Y2は,Cから,被告Y1会については,それまで休眠していた法人であると説明を受けた。
被告Y2は,当時,定職に就いていなかったことから,上記勧誘を受け入れることとし,平成27年2月10日,被告Y1会の代表理事に就任した。
(前記前提事実(1)ウ,被告Y2本人1~2,11,13~14頁)
エ 被告Y2は,今後の事業をどのように行っていくかについて,E及びCと話し合うために,Cに呼ばれて,東京に3度赴いた。しかし,被告Y2は,その都度,Cから,資金面でEと揉めているので,まだEに会わせることはできないと言われた。
被告Y2は,平成27年4月2日,口座開設等をするようCから指示され,横浜信用金庫において被告Y1会名義の口座(本件被告Y1会口座)の開設申込みをした。
(甲33の1,被告Y2本人2~4頁)
オ 被告Y2は,本件被告Y1会口座を開設した後,その通帳及び届出印を管理していたが,Cから,Eがc社の売上金が本件被告Y1会口座に振り込まれているのはおかしいなどとして,同口座の使用を止めている,Eと会って同口座を使えるようにするためには印鑑を送ってもらう必要があるなどと言われて,これが本当かどうかわからないまま,Cに対して本件被告Y1会口座の通帳及び届出印を郵送した。
(被告Y2本人4~7頁)
カ 被告Y2は,Cに対し,本件Y1会口座の通帳及び届出印を返してほしいと電話等で伝えたが,取り合ってもらえなかった。
(被告Y2本人6頁)
キ 被告Y2は,Cから「理事として出資金を入れないとおかしい」と言われて,本件被告Y1会口座以外の被告Y1会名義の銀行口座に,平成27年2月2日に145万円,同月17日に40万円,同年3月6日に50万円の合計235万円を振り込んだ。
(甲32の2,被告Y2本人7,31~32頁)
ク 被告Y2は,平成27年10月7日,Cから,「顧問の弁護士や税理士との間で,Eの件でちょっと解決したお祝いをしたい」と言われ,祖母から8万円をもらい,これを本件被告Y1会口座に送金した。
(甲33の2,被告Y2本人33頁)
ケ 被告Y2は,平成28年10月3日,生活費に困ったために,Cに対し,役員報酬を一度ももらっていないがどうなっているのかと問い合わせたところ,Cから,まだ支払えないからとりあえず振り込んでおくと言われ,1万円の振込みを受けた。
(甲33の4,被告Y2本人34頁)
(2)  被告Y2の一般法人法117条1項に基づく責任
前記前提事実並びに前記1(1)及び前記2(1)の認定事実によれば,被告Y1会の代表者である被告Y2は,Cに指示されるままに本件被告Y1会口座を開設するなどしながら,理事であるCが,Dと共謀の上,被告Y1会の業務として,被告Y1会の名で,原告らに対して詐欺行為を行うことを看過していたことが認められる。
そして,被告Y2は,被告Y1会の代表者として,対外的に法人を代表し,対内的には業務全般の執行を担当し,広く法人業務の全般に意を用いるべき義務を負っているにもかかわらず,被告Y1会の代表理事に就任した後,被告Y1会の理事であるCの行為を監視し,監督するための具体的な行動を行ったことをうかがわせる証拠はないから,被告Y2は,Cの詐欺行為を看過したことについて,重過失により代表者としての任務を懈怠したものと認められる。
(3)  被告Y2の主張について
この点,被告Y2は,被告Y1会の代表者としての任務懈怠につき,悪意又は重大な過失はなかったと主張し,その根拠として,①被告Y2は,Cから,被告Y1会の事業を行うために必要であると欺かれて本件被告Y1会口座を開設し,関係書類一式をCに交付したこと,②被告Y2が父であるCを信用したことはやむをえないこと,③被告Y2には,Cが詐欺という犯罪行為に手を染めることまで想定すべき注意義務はないこと,④被告Y2は,Cに対し,本件被告Y1会口座の通帳等の返還を求めるなどしたが,応じてもらえなかったこと,⑤被告Y2には,自ら被告Y1会名義の口座の解約に出向く資力等もなかったこと,⑥被告Y2には,理事会の招集,理事であるCの解任といった手段をとれるだけの法的知識はなく,それを期待することもできなかったことなどを挙げる。
しかし,被告Y2は,被告Y1会の代表者に就任した以上,実父であるCに利用された側面があるにしても,本件被告Y1会口座を開設したり,出資金名目で別の被告Y1会名義の銀行口座に送金をしたりしていたことからすれば,Cが本件被告Y1会口座を含む被告Y1会名義の口座を用いて何らかの活動を行っていることを十分に認識しながら,これを放置したというというほかなく,このような任務懈怠について,被告Y2には重過失があるというほかない。また,被告Y2に本件被告Y1会口座の解約に出向く資力等がなかったとか,被告Y2がCを理事から解任するといった法的知識を持ち合わせていなかったといった事実があったとしても,これらは,被告Y1会の代表者としての重過失の認定を左右するものではない。
(4)  以上によれば,被告Y2は,CがDと共に行った詐欺行為により原告らに生じた損害について,一般法人法117条1項に基づき,損害賠償責任を負うものと認められる。
3  争点(3)(被告Y1会は一般法人法78条に基づく責任を負うか。)について
(1)  一般法人法78条の責任は,一般社団法人の代表者が不法行為を行った場合を前提として,その被害者が一般社団法人に対して損害賠償請求をすることができるようにした規定と解するのが相当である。
(2)  前記前提事実並びに前記1(1)及び前記2(1)の認定事実によれば,原告らに対して被告Y1会との管理業務委託契約の締結を勧誘したり,保証金等の支払を求めたりするなどの詐欺行為を行ったのは,C及びDであって,被告Y2が原告らと接触した事実は見当たらず,被告Y1会の代表者である被告Y2がC及びDによる不法行為を共同して行ったとの事実は,本件全証拠によっても認めることができない(原告らも,訴え提起時には被告Y2による共同不法行為を主張していたが,その後,これを撤回している。)。
この点,被告Y2には,前記2(争点(2))において説示したとおり,被告Y1会の理事であるCの詐欺行為を看過したという任務懈怠があったことは認められるが,これは,被告Y1会との関係で代表理事としての任務を怠ったことを意味するにすぎず,このことから直ちに被告Y1会が一般法人法78条の責任を負うとはいえない。
(3)  以上によれば,被告Y1会が原告らに対して一般法人法78条に基づく責任を負うとは認められないから,原告らの被告Y1会に対する主位的請求は,いずれも理由がない。
4  争点(4)(原告らの損害)について
(1)  前記2のとおり,被告Y2は,CがDと共に行った詐欺行為により原告らに生じた損害について,一般法人法117条1項に基づき損害賠償責任を負うものと認められる。そして,前記前提事実及び前記1(1)の認定事実によれば,CがDと共に行った詐欺行為により原告らに生じた損害は,次のとおりであると認められる。
ア 原告X1法人の損害 合計330万円
(ア) 保証金名目で被告Y1会に送金した金員(前記前提事実(2)ウ,別紙保証金目録記載1) 300万円
(イ) 弁護士費用 30万円
本件事案の内容,審理の経過,認定した損害額を考慮すると,C及びDによる詐欺行為と相当因果関係のある弁護士費用として30万円を認めるのが相当である。
イ 原告X2社の損害 合計1877万6947円
(ア) 保証金名目で被告Y1会に送金した金員(前記前提事実(2)ウ,別紙保証金目録記載2) 合計900万円
(イ) 追加保証金名目で「b会D」名義の口座に振り込んだ金員(前記前提事実(3)ウ) 400万円
(ウ) Fに対する給与等の名目で被告Y1会に送金した金員(前記1(1)ウ(ア),別紙損害目録記載1) 合計341万2365円
(エ) 名古屋営業所開設費用等(前記1(1)ウ(イ),別紙損害目録記載2) 合計16万7910円
前記1(1)ウ(イ)の認定事実によれば,原告X2社の名古屋営業所は,Cの要請により,もっぱらdクリニックにおける管理業務遂行のために開設されたものと認められるから,その開設,維持,閉鎖に要した費用の全額について相当因果関係があるものと認める。
(オ) 原告X2社代表者による管理業務遂行のための費用(前記1(1)ウ(ウ)a,別紙損害目録記載3) 合計16万6672円
(カ) Gに対する管理業務委託による給与(前記1(1)ウ(ウ)b,別紙損害目録記載4) 合計33万円
(キ) 弁護士費用 170万円
本件事案の内容,審理の経過,認定した損害額を考慮すると,C及びDによる詐欺行為と相当因果関係のある弁護士費用として170万円を認めるのが相当である。
(2)  一般法人法117条1項の責任は,一般社団法人の役員について,その任務懈怠によって損害を受けた第三者を保護する観点から,直接第三者に対する責任を負担させることとし,不法行為責任とは異なる法定責任を認めたものと解するべきである。そうすると,同項に基づく損害賠償債務が遅滞に陥るのは,当該役員が被害者から履行の請求を受けた時と解するべきであり,本件においては,被告Y2が本件訴状の送達を受けた日の翌日(平成29年4月15日)をもって遅延損害金の起算日と解すべきである。
そうすると,被告Y2は,原告X1法人に対しては330万円,原告X2社に対しては1877万6947円及びこれらに対する平成29年4月15日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うことになる。
(3)  なお,原告X2社は,尋問期日の後,弁論終結が予定されていた平成30年6月15日の弁論期日の直前になって,被告Y1会に対する主位的請求及び被告Y2に対する請求を拡張したところ,被告らは,時機に後れた攻撃防御方法であるとして,請求拡張部分に係る訴えの却下を申し立てた。しかしながら,本件訴訟は上記期日に予定どおり弁論を終結しており,上記請求の拡張は訴訟の完結を遅延させるものとは認められないから,被告らの上記申立ては採用することができない。
5  争点(5)(原告らの被告Y1会に対する不当利得返還請求権の成否)について
(1)  前記前提事実(2)ウ及び(4)によれば,原告らは,別紙保証金目録記載及び別紙損害目録記載1のとおり,本件被告Y1会口座に対し,以下のとおり,送金をした事実が認められる。
ア 原告X1法人による送金 合計300万円
(ア) 平成28年4月27日 50万円
(イ) 同年5月20日 150万円
(ウ) 同年6月8日 100万円
イ 原告X2社による送金 合計1241万2365円
(ア) 平成28年8月8日 300万円
(イ) 同年9月5日 300万円
(ウ) 同月26日 300万円
(エ) 同月30日 18万1000円
(オ) 同年10月31日 15万2000円
(カ) 同年11月10日 109万5765円
(キ) 同月30日 30万円
(ク) 同年12月21日 108万3600円
(ケ) 同月29日 30万円
(コ) 平成29年1月26日 30万円
(2)  前記1(争点(1))において認定したとおり,これらの金員は,C及びDの詐欺行為によって本件被告Y1会口座に送金されたものであり,被告Y1会がこれらの金員を取得するについては法律上の原因を欠くものと認められる。
被告Y1会は,本件当時休眠状態にあった旨の主張をしているから,自己の管理する被告Y1会口座への入金が,法律上の原因を欠くことを認識していたものとして,悪意の受益者であると認められる(もとより,被告Y1会は,不当利得返還請求の請求原因に対して認否をしない旨陳述している。)。
(3)  以上によれば,被告Y1会は,原告らの予備的請求のとおり,①原告X1法人に対し,300万円及びうち50万円に対する平成28年4月27日から,うち150万円に対する同年5月20日から,うち100万円に対する同年6月8日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息を,②原告X2社に対し,1241万2365円及びうち300万円に対する同年8月8日から,うち300万円に対する同年9月5日から,うち300万円に対する同月26日から,うち341万2365円に対する平成29年1月26日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息を支払う義務を負う。
第4  結論
よって,①原告らの被告Y1会に対する主位的請求はいずれも理由がないから棄却し,原告らの被告Y1会に対する予備的請求はいずれも理由があるから認容することとし,②原告X1法人の被告Y2に対する請求は,330万円及びこれに対する平成29年4月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却し,③原告X2社の被告Y2に対する請求は,1877万6947円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部
(裁判長裁判官 三木素子 裁判官 遠田真嗣 裁判官 山田裕貴)

 

〈以下省略〉

 

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