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「営業 スタッフ」に関する裁判例(5)平成28年12月21日 東京地裁 平27(ワ)36958号 地位確認請求事件

「営業 スタッフ」に関する裁判例(5)平成28年12月21日 東京地裁 平27(ワ)36958号 地位確認請求事件

裁判年月日  平成28年12月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)36958号
事件名  地位確認請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2016WLJPCA12218005

要旨
◆本件外国車製品の輸入権者である被告との間で、同製品にかかわる本件取引基本契約を締結して、本件外国車製品の販売店を経営していた原告が、被告による本件取引基本契約の更新拒絶は無効であるとして、被告に対し、本件取引基本契約上の権利の存続の確認等を求めた事案において、本件取引基本契約の更新拒絶に実体的要件は付されていないから、その有効性は更新拒絶が信義則に則って効力が否定されるべきかが判断されるべきであり、その判断に際しては契約維持についての原告の要保護性と被告にとっての契約終了の必要性との比較衡量によって決すべきであるとした上で、本件取引基本契約自体に継続的であることを前提としている規定があり、多額の資本投下や契約実績がある一方、原告が被告に無断で本件各商標使用を行ったことや、正式な承認を得た店舗と誤認混同される店舗を展開し、是正措置を積極的にとらなかったこと等を総合すると、信義則に反すべき根拠となる方向に働く事情を最大限斟酌してもなお、被告の更新拒絶が信義則に反するとはいえないとして、原告の請求を棄却した事例

参照条文
民法1条2項

裁判年月日  平成28年12月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)36958号
事件名  地位確認請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2016WLJPCA12218005

茨城県古河市〈以下省略〉
原告 ネッツトヨタつくば株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 難波孝一
同上 安部健介
同上 関戸麦
同上 佐々木奏
同上 河島勇太
愛知県豊橋市〈以下省略〉
被告 フォルクスワーゲングループジャパン株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 相良朋紀
同上 長坂省
同上 波田野晴朗
同上 原雅宣
同上 相澤恵美
同上 中田俊明
同上 石川惠子

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は,原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
(主位的請求)
原告が,被告との間で,平成22年8月20日付けフォルクスワーゲン製品にかかわる取引基本契約上の権利を有することを確認する。
(予備的請求)
原告は,被告との間で,フォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲンつくば認定中古車センターに関して,平成22年8月20日付けフォルクスワーゲン製品にかかわる取引基本契約上の権利を有することを確認する。
第2  事案の概要
本件は,フォルクスワーゲンAGの100%子会社であって,日本におけるフォルクスワーゲン製品の輸入権者である被告との間で,フォルクスワーゲン車,部品及び付属品等(以下「フォルクスワーゲン製品」という。)にかかわる,1年毎(当初)に自動更新される取引基本契約(以下「本件契約」ともいう。)を締結し,フォルクスワーゲン製品の販売店を3店舗経営していた原告が,本件契約の更新拒絶をした被告に対し,更新拒絶には,信頼関係を破壊した事由が必要であるのにそれがない,仮に,被告が主張するとおり更新拒絶の効力を判断するに際し信義則等が適用されるとしても当該更新拒絶は信義則違反であって,いずれにしても無効であるなどと主張して,主位的に,その取引契約上の権利の存続を,予備的に,その取引契約上の権利が2店舗においては存続しているとしてその存続の確認を求めた事案である。
被告は,その更新拒絶は,信義則違反がない,仮に,有効というためには原告が主張するとおり信頼関係の破壊が必要であるとしても,それがあるとして,原告の主位的請求及び予備的請求のいずれに対しても棄却を(予備的請求には却下も)求めている。
第3  前提事実(証拠等に基づく事実については,後掲括弧内に証拠摘示をする。)
1  原告は,肩書地に本店が所在する,昭和46年2月1日設立された,自動車の販売(賃貸)及び修理等を目的とする株式会社である(目的について甲2)。
被告は,昭和58年7月7日に設立された株式会社であり,ドイツに本拠を有するフォルクスワーゲンAGの100%子会社である。被告は,フォルクスワーゲン製品の輸入に携わっていたが,平成4年頃から,日本で唯一の輸入権者となった。
原告は,フォルクスワーゲンAG及び被告とフォルクスワーゲン製品の販売に関し提携していたトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)との提携契約に基づき,平成6年にフォルクスワーゲン製品を扱うフォルクスワーゲンつくば(当時の店名はDUOつくば)を,平成20年にフォルクスワーゲン製品を扱うフォルクスワーゲン葛飾(当時の店名はDUO葛飾)を出店し,フォルクスワーゲン製品の販売に携わった。
平成22年12月,フォルクスワーゲンAG及び被告とトヨタとのディストリビューター契約が解消され,日本国内においては,被告とフォルクスワーゲン製品販売店が直接契約を締結する仕組みとなった。
2  原告と被告は,平成22年8月20日,同年12月1日発効する「フォルクスワーゲン製品にかかわる取引基本契約書」(以下「本件契約書」という。)に基づく取引基本契約(本件契約)を締結し,次のとおり,被告が原告に対し,フォルクスワーゲン製品の適正かつ円滑な供給に努めることを,原告が被告に対し,フォルクスワーゲン製品の信用維持及び販売拡大のために最善の努力を払うとともに,被告の営業方針を尊重し,被告及びフォルクスワーゲンAGの諸規定を遵守し,かつその指示に従うことなどをそれぞれ約した(甲1)。
契約期間 本契約の発効日より満3か年を越えて最初に到来する12月末日まで。ただし,契約満了の6か月前までに甲乙双方から内容証明郵便による変更または更新拒絶の通知がないときは,さらに1か年間,自動的に更新されるものとし,以降も同様とする(第21条の2.)。
営業施設 フォルクスワーゲンつくば(ショールーム,サービス工場)
フォルクスワーゲン葛飾(ショールーム,サービス工場)
3  原告と被告は,平成24年9月10日,本件契約書の営業施設のフォルクスワーゲンつくばに認定中古車センターを加える旨の合意をした(甲121)。
4  被告は,平成23年頃,フォルクスワーゲン製品販売店に対し,店舗のコーポレートデザイン(CD)化を勧めているが,平成23年頃以降の現行CDは,モジュラーコンセプトと名付けられている(甲47,甲118の1・2)。
5  原告は,平成26年4月に,江東区東陽において,被告から正規販売店としての承認を受けることなく,モジュラーコンセプトにある程度近づけた(建物等の具体的な構造等及び評価については,争いがある。),フォルクスワーゲン製の中古車を取り扱う店舗であるプレミアムセンター江東(以下「本件東陽店舗」という。)を出店した。
6  被告は,原告に対し,平成27年2月10日付けで,原告に対し,平成27年12月31日をもって本件契約を更新せずに,期間満了により終了させる旨の通知を送付した(以下,これによる更新拒絶の意思表示を「本件更新拒絶」という。)。
第4  争点―本件更新拒絶の効力
1  原告の主張
(1)本件更新拒絶の効力を有効とするためには,原告に被告との信頼関係を破壊したなどのやむを得ない事由が必要である。
本件契約は継続的契約であって,更新拒絶については,契約の継続に向けた配慮が必要である。そして,本件更新拒絶は,主として本件東陽店舗における原告の営業態様を理由とするところ,原告に是正の機会がなくいきなり本件契約の更新拒絶を行う,いわば「無催告」の更新拒絶であった。このような無催告の更新拒絶が許容されるのは,継続的契約における継続性の要請に照らせば,催告(是正の機会を与えること)が無意味といえるような場合,即ち,信頼関係破壊がある場合に限られると解される。
そして,信頼関係破壊は規範的要件であるから,当該要件の存否を判断するに当たっては,その基礎となっている評価根拠事実と評価障害事実の有無を認定した上で,これらの諸事実を総合して判断する必要がある。具体的には,本件東陽店舗の設置経緯,設置目的,原告における悪質な意図の有無,被告における損害の有無,被告が更新拒絶に至った経緯,本件契約を継続することの支障の有無等の信頼関係破壊の判断の基礎となる諸事実を総合的に考慮し,公正・中立な立場に立ってその判断を出さなければならない。
具体的な判断基準は,契約維持についての当事者の要保護性と,他方当事者にとっての契約終了の必要性との比較衡量(バランス)である。
(2)被告の,本件更新拒絶の理由は,①原告が本件東陽店舗においてフォルクスワーゲンの正規販売店の店舗デザインコンセプト(DC)に類似した形で運営等していること,②原告が運営するフォルクスワーゲン葛飾の販売状況が低迷していること,③原告の経営フォルクスワーゲンつくばの顧客満足度が低迷していることである。
(3)本件東陽店舗の出店及び運営は更新拒絶事由とはならない。
ア 被告は,本件東陽店舗の出店を承知ないし後押し(原告に期待を与える言動ないし対応)した。
(ア)具体的経緯
a 被告担当者C(以下「被告担当者C」という。)は,本件東陽店舗の出店へ前向きな回答をした。
原告代表者代表取締役A(以下「原告代表者A」という。)は,平成24年9月に,被告担当者Cに,江東区東陽における販売店の新規出店を申し入れたところ,前向きな回答があった。なお,被告担当者Cは,店舗開発の被告の窓口である。その理由は,この用地が立地として好条件であったことが考えられる。ただし,この用地の数百メートルの位置に,DUO東京株式会社(以下「DUO東京」という。)が運営するフォルクスワーゲン東京深川があったため,被告の2/4kmルール(各販売店は,既存の店舗から同一同線上にない場合は直線距離で2km以内,同一同線上の場合は直線距離で4km以内には出店しないというルール)により,直ちにそこで新車販売店を出店することができなった。もっとも,被告担当者Cは,原告代表者Aに対し,フォルクスワーゲン東京深川が,平成26年末までに予定されている被告の方針に沿った店舗改装などの投資ができないため,近々閉店になる見込みであると伝えた。そこで,原告代表者Aは,被告担当者Cに対し,フォルクスワーゲン東京深川が閉店した際に新車販売店に転換するため,それまでのつなぎとして,その用地上に店舗を建てて,中古車販売をすることを提案した。この提案に対し,被告担当者Cは前向きな回答をした。
そこで,原告代表者Aは,被告担当者Cに,同年10月下旬,本件東陽店舗の敷地の図面を交付し,原告は,同月29日,本件東陽店舗の敷地所有者であるアーバン東港株式会社(以下「アーバン東港」という。),仲介業者である大和ハウス工業株式会社(以下「大和ハウス」という。)との間で,事業用借地権設定契約締結に向けた事業用賃貸借の合意書を締結し,それに基づき,保証金としてアーバン東港に2580万円を支払った。
b 被告担当者Cは,平成24年11月12日,店舗レイアウト図面を原告に提供した。
原告代表者Aは,被告担当者Cに対し,本件東陽店舗の建物図面について検討を依頼し,同日,被告担当者Cが,原告に対し,店舗レイアウト図面をメール送信して提供した。このレイアウト図面の作成は,被告が新車販売店を出店する際に依頼する設計事務所であって,被告からコーポレート・アイデンティティ(CI)の管理を全面的に委ねられており,フォルクスワーゲンの新車販売店を出店する際に,CIに沿う店舗レイアウト図面の作成や,設計図面がCIに合致しているか否かの確認を行う設計事務所である株式会社LLT(ラグアルダ・ロウ・棚町)(以下「LLT」という。)が行った。なお,その送付に際して,被告担当者Cの上司である営業本部ネットワーク・マネジメント部長D(以下「D部長」という。)及び営業本部地区営業部門首都圏地区担当部E(以下「Eエリアマネージャー」という。)もCCとされていた。なお,D部長は,営業本部地区営業部門首都圏地区担当部長で,首都圏地区における店舗管理の責任者であった。この店舗レイアウト図面は,正規の新車販売店のための図面であり,その作成には相応の時間と労力を要する。このように,被告担当者Cは,将来正規の新車販売店に転換するとの原告の計画を認識の上,その前提である本件東陽店舗の出店を後押ししたものであって,被告担当者Cの上司であるD部長及びEエリアマネージャーもそのことを理解していたことからすると,被告には会社ぐるみの本件東陽店舗出店の承知ないし後押し(原告に期待を与える言動ないし対応)があったというべきである。少なくとも,この時点で,被告担当者C,D部長及びEエリアマネージャーは,原告がモジュラーコンセプトに沿った本件東陽店舗を建築する可能性があることを知った。その結果,原告は,その出店及び多額の投資を決断したものである。
c 平成24年11月,大和ハウス担当者,被告担当者C及びLLTのF(以下「LLT担当者F」という。)が打合せをした。
大和ハウス担当者は,平成24年11月,被告担当者C,LLT担当者Fと打合せをしたが,これは,原告及び大和ハウスが,被告及びLLTとすりあわせをしながら,これらの協力を得つつ,本件東陽店舗の出店を進めたものである。
d 平成25年3月21日,LLT担当者Fは,被告担当者Cに対し,大和ハウス担当者が本件東陽店舗をモジュラーコンセプトに沿って建築しようとしている旨を伝えるメールを送付したが,遅くともこの時点で,被告担当者Cは,原告が,本件東陽店舗をモジュラーコンセプトに沿って建築しようとしていることを認識した。
e 原告代表者Aは,平成24年12月下旬,本件東陽店舗の事業用借地権設定契約を締結することを被告担当者Cに連絡した。
原告代表者Aは,平成24年12月下旬,被告担当者Cに電話をかけ,本件東陽店舗敷地の事業用借地権設定契約を締結することを連絡した。このときの,被告担当者Cの対応は,出店に前向きであったから,原告は,同月29日,アーバン東港との間で,本件東陽店舗の敷地を借り受ける事業用借地権設定契約を締結した。
原告は,平成25年5月25日,大和ハウスに対し,本件東陽店舗の建築を注文した。
その建築請負契約に関する原告と大和ハウスとの打合せにおいて,同年7月30日,原告代表者Aが被告担当者Cに協力を依頼することとなり,同年8月1日の打合せでも同趣旨が確認された。
原告代表者Aは,同月7日,被告担当者Cを訪ね上記の協力を依頼したところ,被告担当者Cは,快諾した。そこで,大和ハウスが,本件東陽店舗の建物のCADデータを被告担当者Cに直接送信し,それをもとに被告担当者Cがサイン図や割付図(タイル・フォルクスワーゲンリングの取付位置を寸法に応じて正確に決めるために,それを図面に記載したもの)を作成してもらうという話しがまとまった。
もっとも,本件東陽店舗が最初から新車販売店としてスタートする訳ではないためと思われるが,サイン図や割付図は提供されず,その代わりに,被告担当者Cは,平成25年9月3日,原告代表者Aに,別の新車販売店であるフォルクスワーゲン富士の設計図面を送付した。
f 被告担当者Cは,原告に対し,CI品である床材であるタイルとフォルクスワーゲンリングのサンプルを提供した。
本件東陽店舗が最初から新車販売店としてスタートする訳ではないので,CI品である床材であるタイルとフォルクスワーゲンリングの現物支給はなかったが,被告からは,できる限りの協力ということで,被告担当者Cから,床であるタイルとフォルクスワーゲンリングのCI品のサンプルの提供があった。
(イ)被告担当者Cの承認ないし後押し(原告に期待を与える言動ないし対応)がなければ,原告が本件東陽店舗の出店を進めることはない。本件東陽店舗のための原告の投資として,土地を賃借した契約の内容は,賃料月額430万円,賃借期間平成25年10月1日(予定)から平成45年9月30日(予定)までの20年間,中途解約権無し,保証金2580万円であり,建設した建物の請負代金は3億8200万円であって,これ以外にも,設備,工具,人員等への投資が必要であり,それを回収するだけの利益を上げるためには,正規の新車販売店に転換することが必要不可欠な前提である。本件東陽店舗については,被告の正式な承認はなかったが,上記転換は将来の転換に関するもので,近隣にフォルクスワーゲン東京深川が営業している以上,正式な承認が得られる筈もなかったから正式な承認がなかったのであって,そのような中,被告担当者Cの上記(ア)の協力,後押し等が,その時点で考え得る最も肯定的な反応であった。そこで,原告は,リスクをとって,本件東陽店舗を出店することを決断した。
(ウ)被告には,本件東陽店舗の出店を承認ないし後押しする合理的な理由があった。
フォルクスワーゲン東京深川が閉店となる可能性が極めて高く,そうなれば,そこがフォルクスワーゲンの新車販売店の空白地域となる。東京23区内という重要な市場で空白地域が生じることは,被告にとってマイナスであり,東京23区内において出店用地を確保することは困難である。したがって,原告が好条件の立地に本件東陽店舗の出店を進めることは,被告にとっても,空白地域の発生を避けられるというメリットがあった。
(エ)被告が,本件東陽店舗の出店に異を唱えた形跡が一切ない。
被告側,特に被告担当者Cは,原告が本件東陽店舗の出店又は建設を進めていること,本件東陽店舗が当初は中古車店であるが後に正規の新車販売店に転換される予定であること,本件東陽店舗の建物が正規の新車販売店が満たすべき外観等の要素を備えた建物となることを認識していたのに,上記(ア)のとおり,原告側に対し,本件東陽店舗の出店に対し,異議を唱えた形跡が一切無い。
イ 本件東陽店舗の営業態様は,正規の新車販売店に転換できるまでのつなぎとして,新車や認定中古車の販売はせず,中古車を僅かながら販売するものであった。
(ア)本件東陽店舗は,正規販売店と異なり,新車や認定中古車の販売はせず,わずかながら中古車を販売するだけの店舗であった。
本件東陽店舗では,宣伝広告活動(オープニングセレモニー,ウエブサイトの開設,中古車店情報サイトへの登録,雑誌広告,折り込みチラシ,ダイレクトメール,販促キャンペーン)を一切行っておらず,来客数も,平均すると1日1組くらいで,成約率も低く,原告の既存店舗において,相当期間の使用(走行距離で5000km程度)をしている試乗車や新車を購入する顧客から下取りをした自動車を展示にするに留め,新車や認定中古車の販売はせず,サービス工場も稼働していなかった。
(イ)正規販売店でないことを十分に踏まえた営業態様であった。
本件東陽店舗の接客において,スタッフは,フォルクスワーゲンの正規販売店の従業員であることを口外しないように指導されていて,名刺,見積書類,アンケート用紙及び販売車両の価格表等の取引書類には,店名である「プレミアムセンター江東(Premium Center江東)」の名称が記載されており,正規販売店と区別され,客に新車販売について尋ねられた場合についても,中古車のみを販売していること及び近隣の新車販売店としてフォルクスワーゲン東京深川,フォルクスワーゲン江戸川及びフォルクスワーゲン葛飾の3店舗を伝えることが指導されていた。
(ウ)外観も正規販売店と誤認させるものではなかった。
本件東陽店舗の外観は正規の新車販売店や認定中古車店とは異なり,店名にフォルクスワーゲンと付けていないこと,店舗入り口の前に平成26年7月下旬頃から「Premium Center」という店舗名称及び営業時間を記載した黒板型の起き看板をおいていたものであって,これは,正規販売店と異なるので,本件東陽店舗の外観は,正規販売店と誤認させる態様ではない。なお,それ以外自己の商号や店名を掲げていないこと,フォルクスワーゲン製品しか扱っていないことは,前者については,つなぎの店舗なのでコストを考えてのもので,後者については,フォルクスワーゲン葛飾で使用した試乗車や同店で顧客から下取りした中古車を僅かながら販売するものであったからに過ぎず,フォルクスワーゲンの正規販売店と誤認させる態様であることの事情にはならない。
また,本件東陽店舗の内装には,本判決添付別紙1「商標」の上から3つ目記載のロゴ(以下「VWロゴ」という。)等のフォルクスワーゲンにおいて登録された商標(以下「フォルクスワーゲン商標」という。)が用いられておらず,内装においても正規販売店であると誤認させる態様ではなかった。
(エ)被告等に特段の損失が生じたとは考えられない。
被告は特段の損失が生じたことを主張,立証をしていないこと,原告は,フォルクスワーゲン東京深川,顧客等から何らのクレームを受けておらず,被告が平成26年8月5日の通知に至るまで異を唱えなかったことからすると,原告の本件東陽店舗の営業は,被告等に特段の損失を与えていない。
ウ フォルクスワーゲン商標(陣旗及びステッカー)の使用態様は悪質なものではない。
(ア)実態を見れば,フォルクスワーゲン商標(陣旗及びステッカー)の使用態様は決して悪質なものではない。
原告は,フォルクスワーゲンの中古車の販売をしていることを示すためにVWロゴが付された陣旗及びVWロゴと本判決添付別紙1「商標」の上から2つめ記載の「Volkswagen」(以下,VWロゴと併せて「本件各商標」という。)と記載されたステッカーを本件東陽店舗に設置した(以下「本件各商標使用」という。)が,いずれも正規販売店における使用方法とは全く異なること,このような陣旗及びステッカーは,中古車販売店向けに一般に販売されていること,原告は中小企業であり,法務スタッフなど存在しないこと,陣旗及びステッカーは簡易に着脱出来るものであること,被告からステッカーについて指摘を受けた平成26年8月19日付け書面を受けて直ちにステッカーを外していることからすると,本件各商標使用態様は,悪質ではない。
(イ)本件各商標使用により被告等に具体的な損失ないし不利益は生じていない。
(ウ)被告の問題意識は,簡易に着脱可能な陣旗及びステッカーによる本件各商標使用より,むしろ建物の構造的な外観(モジュラーコンセプト)に向けられていると解される。
被告が,本件東陽店舗の問題を初めて指摘した平成26年8月5日付け書面においては,本件契約終了の考えとともに,問題点として建物の構造的な外観が指摘されたのみであって,ステッカーについて言及があったのは,次に送付がされた同月19日付け書面が初めてであって,これを受け,原告がステッカーを撤去したのに対し,同年9月30日付け書面では本件東陽店舗の設置自体を問題としていてステッカーの撤去によっても問題が解消されないとの立場であると示していること,被告の仮処分手続審における抗告審答弁書において,1番目の主張として本件東陽店舗の構造的な外観を指摘し,本件各商標使用に関する主張は4番目であること,甲116の記載からすると,被告の問題意識は,本件各商標使用よりも建物の外観にある。このことは,VWロゴ等のフォルクスワーゲン商標が付された中古車販売店は多々あるのに,被告がこれらを問題視し,特段の対応をとったことがないことから明らかである。
(エ)原告は,上記(ア)及び(ウ)のとおり,被告の平成26年8月19日付け書面を受け,ステッカーを撤去し,被告の指摘を受け,是正行為を行った。
エ フォルクスワーゲン東京深川の後継店であると吹聴した事実はない。
原告は,本件東陽店舗を,フォルクスワーゲン東京深川の後継店と吹聴したことはない。
(4)販売実績や顧客満足度も更新拒絶事由とならない。
被告が仮処分手続審で主張するところによると,販売実績や顧客満足度のみでは,更新拒絶事由にならず,また,現実に,フォルクスワーゲン葛飾の販売実績やフォルクスワーゲンつくばの顧客満足度も,更新拒絶事由となるほどの問題はない。
(5)本件更新拒絶に至る手続が著しく不当である。
ア 本件更新拒絶が唐突なものであること,被告は,本件東陽店舗の実態を踏まえた慎重な検討を行っていないことからすると,本件更新拒絶の手続は不当である。
イ なお,本件更新拒絶は,期間満了の約1年4か月前になされたものであるが,下記(6)で述べる本件契約の継続性に対する原告の期待からすると,そのことによって,本件更新拒絶が正当化されるものではない。
(6)本件契約は継続性が重視されるべきものである。
ア 本件契約が終了すれば,原告に致命的な損害が生じる。
被告は,フォルクスワーゲン製品の日本国内における唯一の輸入業者で,日本国内においてフォルクスワーゲン製品の販売事業を行うためには,被告との契約締結が不可欠であって,本件契約の更新拒絶は,原告にとってはそのフォルクスワーゲン事業の喪失であり,それによって,3店舗の店舗設備が無駄となり,29名(平成27年6月1日現在)もの従業員を解雇せざるを得ず,また,4000名以上もの顧客関係等の事業基盤を完全に失うことになる。さらに,事業を喪失することによって,原告の企業としての信用が著しく損なわれる。
イ 原告は20年以上にわたり,フォルクスワーゲン事業のために多大な人的及び物的な投資を行っている。
まず,従業員の採用及び育成は,フォルクスワーゲン製品に関する専門知識や,専門技術が必要となるため,時間,労力と費用が必要となる。そして,本件契約では,フォルクスワーゲン製品の販売及びアフターサービスのために,他の事業活動に関与していない人員を確保し,フォルクスワーゲンブランドに特化した人員として,販売,アフターサービス及び広告活動に従事させる義務を原告は負っている。したがって,従業員は,フォルクスワーゲン事業に特化していることから,本件契約が終了すれば,行き場を失い,解雇せざるを得ない。
次に,原告が管理する顧客は現在約4000名いるが,これは原告が20年以上にわたり販売店を経営する中で堅実に増加させてきた成果である。
店舗及びその設備についても多額の投資が必要となっていて,原告は,土地を賃借して店舗用建物を建設してきたが,現在も建物の減価償却は完了していない。具体的には,フォルクスワーゲンつくばについては,土地を平成19年10月19日に期間20年で事業用借地権として賃借し(保証金2000万円,賃料月額110万3055円),平成21年1月に建物を2億1301万1188円を投じて新築していて,建物本体の減価償却期間は39年であるところ,32年も残っており,現在も減価償却は完了していない(平成27年3月末現在の簿価は約1億7000万円である。)。フォルクスワーゲンつくば認定中古車センターについては,土地を平成24年11月1日に期間10年で事業用定期借地権として賃借し(敷金200万円,賃料月額42万7680円),平成25年5月に7122万1076円を投じて,建物を新築していて,建物本体の減価償却期間は22年であるところ,19年も残っており,現在も減価償却は完了していない(平成27年3月末現在の簿価は約6600万円である。)。フォルクスワーゲン葛飾については,平成19年7月1日,期間20年で土地を事業用借地権として賃借し(敷金1200万円,賃料月額200万円),建物を平成20年5月に2億2883万8967円を投じて新築していて,建物本体の減価償却期間は39年であるところ,31年も残っており,現在も減価償却は完了していない(平成27年3月末現在の簿価は約1億7000万円である。)。また,販売代理店を出店するためには,サービス工場において,フォルクスワーゲン製品に対応する設備や工具を購入する必要がある。加えて,3店舗の敷地はいずれも,期間が20年又は10年間の定期借地契約となっており,本件更新拒絶が有効となり借地契約が終了すれば,多額の違約金が発生するし,上記各定期借地契約が終了する際には,原告は原状回復義務として,建物その他の土地上の設備をすべて撤去する義務を負うが,この撤去費用は,特に3店舗合計となると,かなり高額になる。また,20年以上にわたる上記の人的及び物的な投資の結果,原告の3店舗が地域に根ざしたものとなっていることからすると,本件契約が終了し,これら3店舗が失われることは社会的に見ても損失である。
ウ 店舗の転用は著しく困難である。
エ 本件契約は,その性質上,当然に長期間継続することが予定されており,実際に更新が繰り返されていた。
一般的に,自動車販売店は,幹線道路沿いに用地を確保し,メーカーが要求する水準を満たす専用の店舗を構え,営業及びアフターサービスのための従業員を育成するなど,多大な労力と資本を投下することが必要な事業であることから,自動車販売に係る基本契約は,(仮に契約書上において契約期間を定めたとしても)更新を繰り返す等の方法で当然に長期間継続することが予定されている。本件契約においても,冒頭にそのことが謳われている。
オ 自動車販売店業界において,メーカー側からの一方的な更新拒絶は異例である。
自動車販売店業界の慣行としても,また,平成24年8月に伊藤忠商事株式会社出身のG社長が代表取締役に就任するまでの被告における慣行としても,メーカー側からの一方的な更新拒絶はほぼ皆無である。
カ 原告と被告との間に大きな力関係の差が存在する。
被告は,ドイツに本社を置き,フォルクスワーゲン製品及びアウディ製品を中心に全世界で自動車等を製造・販売し,世界でも一,二を争うトップクラスの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンAGの100%子会社であり,巨大な企業グループに属している。なお,フォルクスワーゲングループの2014年の全世界における車両販売台数は約1022万台,売上げ高は約2024億ユーロである。これに対し,原告は,茨城県の中小企業である。しかも,被告は,日本における唯一のフォルクスワーゲン製品輸入社であり,販売代理店としては,日本国内でフォルクスワーゲンの新車を販売するには,被告と販売代理店契約を締結することが必須である。そして,正規販売店の出店は,被告の営業政策等の裁量的判断に強く依拠するため,販売代理店契約を締結することについては,被告は,圧倒的に強い立場にある。また,販売代理店契約が終了することの意味は,被告にとっては多数の販売代理店契約のうちの一つの終了にすぎず,既存代理店網の活用や新規の販売代理店の募集等により事業の継続に特段の支障は無い一方,販売代理店にとってはフォルクスワーゲン事業の廃業を意味し,致命的な損失となる。このように,原告と被告間の力の差は歴然である。
(7)上記(2)ないし(6)で述べた点からすると,本件更新拒絶は信義則に反し,無効である。
即ち,原告の意図及び対応(①原告に悪質な意図,目的はないこと,②正規販売店ではないことを踏まえた,細々とした本件東陽店舗の営業態様,③原告が被告担当者に連絡をとりつつ,江東区東陽における建物建設を進めた経緯,④被告から催告があれば,原告は当然是正したこと)は,信頼関係破壊に該当するものではなく(評価障害事実ⅰ),被告の対応は,極めて不誠実で(①被告担当者C及びD部長は,モジュラーコンセプトに沿った建物建設等を認識の上,これを止めなかったこと,②むしろ,被告担当者Cは,モジュラーコンセプトに沿った建物建設に協力したこと,③被告は,手のひらを返したように突然態度を変え,本件更新拒絶に及んだこと,④被告は容易に催告を行うことができたにもかかわらず,これを行わなかったこと,⑤被告は,原告に対する助言義務を負っているにもかかわらず,これを怠ったこと,⑥被告は,不十分な調査しか行わずに,事実誤認をして本件更新拒絶に及んだこと)(評価障害事実ⅱ),契約維持についての原告の要保護性が強い一方,被告に本件契約を終了させる必要性は見当たらず(①本件更新拒絶は,原告の3店舗における事業を消滅させ,原告及びその従業員に甚大な損失をもたらすこと,②本件東陽店舗の営業によって,被告等に特段の損害は生じていないこと,③被告従業員Hが,店内の様子が正規販売店と異なることを認めていること,④本件訴訟で問題となっているのは,フォルクスワーゲンつくば,フォルクスワーゲンつくば認定中古車店及びフォルクスワーゲン葛飾の3店舗における取引の継続であるところ,その継続に特段の問題は生じていないこと)(評価障害事実ⅲ),本件各商標使用は,信頼関係破壊に該当せず(①商標の使用方法が,正規販売店とは異なるものであったこと,②ステッカーは,被告の指摘を受け,直ちに撤去していること(是正行為の存在),③陣旗の方は被告から問題として指摘されなかったこと,④被告は,本件各商標使用を本質的な問題と考えていなかったこと,⑤中古車販売店におけるVWロゴ等のフォルクスワーゲン商標の使用は,広く行われていること,⑥VWロゴ等のフォルクスワーゲン商標の非正規使用は,被告の100%子会社が運営する中古車店でも行われていたこと)(評価根拠事実の不存在ⅰ),その他の被告が主張する点も,信頼関係破壊に該当しない(①店名プレートの部分に自己の商号や店名を掲げていないことは,信頼関係破壊に該当しないこと,②モジュラーコンセプトに沿った店舗であることは信頼関係破壊に該当しないこと,③販促用バルーンの使用も信頼関係破壊に該当しないこと,④フォルクスワーゲン以外の中古車を販売していない点も,信頼関係破壊の評価根拠事実に該当しないこと,⑤販売台数及び顧客満足度の点をもって信頼関係破壊があると評価できないこと)(評価根拠事実の不存在ⅱ)ことからすると,無催告の本件更新拒絶は許されず,無効である。
(8)本件契約は店舗毎に可分であるから,本件更新拒絶が有効であるとしても,フォルクスワーゲン葛飾店舗に限られる。
ア 本件契約は店舗毎の契約の集合体であり,契約としては,店舗毎に可分である。
可分な権利関係の存在に関する確認訴訟の場合,その可分である一部について,一部認容することが認められる。したがって,1通の契約書によって締結された契約の有効性を対象とする確認訴訟であっても,可分な権利関係の存在に関するものであれば,その権利関係の一つ一つが確認の対象となる。
本件契約も,本件契約書は書面として1通であるが,店舗の出店は1店舗ごとに被告の承認を受ける必要がある(12条1項2号)こと,店舗を新規出店する場合には契約書を改めて作成し直すことなく,確認書により本件契約書の別紙1記載事項(店舗リスト)を追加する形で新規店舗の出店が承認されていること,各販売店舗毎に主たる責任地域が個別に定められており(本件契約書別紙1),販売目標台数の設定や登録台数,顧客満足度の調査などの管理も,法人毎ではなく,店舗毎に行われていて,ディーラーマーケティングサポートのような販促支援も,店舗毎に集計する形式の被告所定の請求書を用いて請求されていることからすると,店舗毎の契約の集合体であって,契約としては店舗毎に可分であると考えるべきである。
更新拒絶も店舗毎に可分と考えるべきであって,これは,本件契約30条には,主たる責任地域内の特定の地域毎に無効や執行不能を想定していることからも明らかであって,現に,被告は,他の販売店に対し一部更新拒絶をしている。
イ 本件更新拒絶が認められないことは,フォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲンつくば認定中古車店について,より一層明らかである。
継続的契約における更新拒絶の有効性の実質的な判断基準は,契約維持についての要保護性と,他方当事者にとっての解約の必要性との比較衡量である。
そして,被告が本件取引の更新拒絶事由として主張しているのは,主として本件東陽店舗を正規販売店と誤認混同する店舗として運営したことであるところ,仮に正規販売店との誤認混同が生じていたとしても,その影響が生じるのは,その近隣の正規販売店であって,それは,フォルクスワーゲン葛飾の主たる責任販売地域内ではあるが,フォルクスワーゲンつくばの責任販売地域とは遠く離れているから,フォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲンつくば認定中古車センターについては,被告において本件契約を終了させる必要性はない。
また,フォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲンつくば認定中古車センターは原告の地元である茨城県にあり,その閉店は,原告の地元での信用を著しく毀損し,原告の他の事業にも影響を及ぼし,原告の企業としての存続を脅かすものであるから,契約維持についての原告の要保護性は,フォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲンつくば認定中古車センターにおいて,より一層強く妥当する。
したがって,フォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲンつくば認定中古車センターについて,本件契約の更新拒絶が認められない。
2  被告の主張
(1)上記1(1)は,争う。
本件契約の文言上,更新拒絶の要件は,期間満了の6か月前までに行うことのみが規定されており,更新拒絶に理由は要求されていない。そして,信義則等の一般条項によって,この理が修正されることがあるとしても,当該更新拒絶をすることが信義則に反する等の特段の事情の主張・立証責任は,当該更新拒絶の効力を争う原告側が負うべきである。
(2)被告の,本件更新拒絶の理由は,①原告が本件東陽店舗においてフォルクスワーゲンの正規販売店の店舗デザインコンセプト(DC)に類似した形で運営等していること,②原告が運営するフォルクスワーゲン葛飾の販売状況が低迷していること,③原告が運営するフォルクスワーゲンつくばの顧客満足度が低迷していることである。
(3)上記1(3)柱書きは,争う。
ア 上記1(3)ア柱書きは,争う。
(ア)a 上記1(3)ア(ア)a柱書きは,争う。
原告が,被告に平成24年9月に,江東区東陽における販売店の新規出店を申し入れたこと,被告担当者Cは店舗開発の被告の窓口であること,この用地の地理的な立地,この用地の近くには,DUO東京が運営するフォルクスワーゲン東京深川があったため,被告の2/4kmルール(各販売店は,既存の店舗から同一同線上にない場合は直線距離で2km以内,同一同線上の場合は直線距離で4km以内には出店しないというルール)により,直ちにそこで新車販売店を出店することができなったことは認める。但し,「2/4kmルール」は,契約上明文化された商圏保護規定等ではなく,トヨタ系列の販売店と被告と直接契約している販売店との出店エリア調整のために考慮された一要素に過ぎない。したがって,被告は,販売店に対して,「2/4kmルール」に抵触する範囲内には他の店舗を出店させないことを保証しているものではない。
原告が事業用借地権設定契約を締結したこと及び原告が金員を支払ったことは知らない。
被告が原告からの申し入れに対し,前向きな回答をしたこと,被告担当者Cが,原告代表者Aに対し,フォルクスワーゲン東京深川が,近々閉店になる見込みであると伝えたこと,原告代表者Aが,被告担当者Cに対し,フォルクスワーゲン東京深川が閉店した際に新車販売店に転換するため,それまでのつなぎとして,その用地上に店舗を建てて,中古車販売をすることを提案したこと,この提案に対し,被告担当者Cは前向きな回答をしたこと,原告が被告に,平成24年10月下旬,本件東陽店舗の敷地の図面を交付したことは,否認する。原告が被告に交付したのは,原告自身が作成した店舗レイアウト図面(PH1F平面図,2階平面図及び屋上立体図面)である。
b 上記1(3)ア(ア)bのうち,事実関係は認め,評価は争う。
被告を通じた,LLTによる店舗レイアウト図面のレビューは,出店の可能性が将来ゼロでない限り実施する初期検討段階の作業に過ぎず,被告がその店舗レイアウトの図面を採用する意味を持つものでもなければ,出店を承認したり,積極的に後押したりする意味を持つものでもない。このことは,正規販売店や認定中古車店の出店には本判決添付別紙2「出店に向けた各種手続きの比較」の手続欄及び新規出店までの標準的なプロセス欄記載の手続が必要であることから明らかであって,フォルクスワーゲンつくば認定中古車センターの出店経験や取手地区での出店公募に応募したことがある原告も十分認識していた。
c 上記1(3)ア(ア)cのうち,平成24年11月,大和ハウスの担当者I(以下「大和ハウス担当者I」という。)が,被告担当者Cを尋ねてきたことは認めるが,その余は,不知ないし否認する。なお,大和ハウスの担当者は,LLTの担当者に挨拶をしに来ただけであって,本件東陽店舗に関する具体的な打合せは一切行われていない。
d 上記1(3)ア(ア)dのうち,平成25年3月21日,LLT担当者Fが,被告担当者Cに対し,大和ハウス担当者が本件東陽店舗の件でLLT担当者Fに連絡してきたとのメールを送信したことは認めるが,その余は否認する。
このとき,被告担当者Cが原告代表者Aに確認の連絡をしなかったのは,原告代表者Aから直接連絡を受けたわけではなく,設計事務所間のやりとりにすぎず,そのメールは,内容からして,原告が正規販売店酷似の店舗を建設しようとしていることを被告担当者Cに認識させるものではなかったからである。
e 上記1(3)ア(ア)eのうち,原告代表者Aが,平成25年12月下旬,本件東陽店舗の事業用借地権設定契約を締結することを被告担当者Cに連絡したこと,原告代表者Aが,平成25年8月7日,被告担当者Cを訪ね,協力を求めたこと,大和ハウス担当者Iが被告担当者CにCADデータを直接送信したこと,被告担当者Cがサイン図や割付図を提供しなかったこと,被告担当者Cが,平成25年9月3日,原告代表者Aにフォルクスワーゲン富士の設計図面を提供したことは認める。
被告が事業用借地権設定契約を締結したこと,本件東陽店舗の建築を注文したこと,原告と大和ハウスの打合せは知らない。
被告担当者Cが原告代表者Aから事業用借地権設定契約を締結する旨の電話を受けたときの対応が出店に前向きであったことは否認する。被告担当者Cは,その電話に対し,「勝手に契約を締結されても当社(被告)は一切責任を終えません。」と告げたが,原告代表者Aは,「VGJ(被告)には一切迷惑はかけないから」と述べて電話を切ったものである。
また,原告代表者Aが,平成25年8月7日,被告担当者Cを訪ねた際に,被告担当者Cが,原告代表者Aの本件東陽店舗への協力を快諾し,サイン図や割付図を作成するとの話がまとまったことは否認する。原告代表者Aが,同日,被告担当者Cを訪ねた目的は,同月末日が出店計画の締切りになっていた取手地区の出店公募について打合せをするためであり,被告担当者Cは,本件東陽店舗に関するサイン図や割付図の交付等の協力の依頼を明確に断っている。
さらに,被告担当者Cが,大和ハウス担当者IからCADデータを送られた際,原告側に異議を唱えなかったのは,前日に,原告代表者Aに明確に協力依頼を断っており,CADデータの送付は何らかの手違いだと思ったからである。
加えて,被告担当者Cが,平成25年9月3日,原告代表者Aにフォルクスワーゲン富士の設計図面を送付したのは,原告代表者Aから取手地区での新規店舗の建築契約のために参考にしたいと要請があったためであり,本件東陽店舗のために使用されることを想定して提供したものではない。
f 上記1(3)ア(ア)f記載の事実は否認する。
(イ)上記1(3)ア(イ)は,事実関係は知らず,評価は争う。
(ウ)上記1(3)ア(ウ)は,争う。
(エ)上記1(3)ア(エ)のうち,被告担当者Cが,本件東陽店舗が正規の新車販売店が満たすべき外観等の要素を備えた建物となることを認識していたという事実は否認し,その余は,争う。
事実経過は,上記(ア)のとおりである。即ち,被告担当者Cは,原告代表者Aからの,平成24年9月の出店の申込み及び平成25年8月7日のCI関係資料の提供依頼は明確に断っており,平成24年12月下旬の事業用借地権設定契約の締結についての電話連絡に対し,責任は取れないと釘を刺し,契約を締結しないように伝えている。また,平成24年11月は,大和ハウス担当者は被告担当者Cらに挨拶をしに訪れただけである。
仮に,被告担当者Cにおいて,原告がモジュラーコンセプトに似た建物を建設しようとしているとの認識があったとしても,非正規の中古車店について関与すべき立場にはなく,当該店舗の外観が具体的にどのようなものになるのか,また当該店舗で原告がどのような営業を行うのか等の詳細について原告から知らされていない以上,被告担当者Cが把握することは現実的に不可能であり,被告担当者Cがモジュラーコンセプトに関する協力やサポートを断ることが原告を止めることになると考えたのは至極当然である。しかも,正規販売事業者が被告による出店承認のない段階で,単なる白い建物を超えて,本件東陽店舗のように正規販売店に酷似した建物を建てることなど前例がなく,被告担当者Cは予想できず,そのため,被告担当者Cも,上司に対して,そのような危機感をもって報告していたわけでなく,被告としてはすぐに止めなければ正規販売店に酷似した建物が建ってしまうという認識には至らなかった。
イ 上記1(3)イ柱書きは,争う。
(ア)上記1(3)イ(ア)のうち,本件東陽店舗での,宣伝広告活動,来客数,成約率,販売車両及びサービス工場の稼働の有無は知らない。もっとも,本件東陽店舗内で展示されていた車両は,被告が社用車として使用していた車両を原告が仕入れたものであり,その後,フォルクスワーゲン葛飾において販売された車両として認定中古車登録されていることからすると,原告は,フォルクスワーゲンの認定中古車としての販売は認定中古車店でしか行ってはならないとされているところ(フォルクスワーゲン認定中古車運用・遵守事項ガイドラインⅡ,1,3),これ及び本件契約3条1項1号に反して,非認定中古車店である本件東陽店舗において展示・販売された中古車を,フォルクスワーゲン葛飾において販売された車両として認定中古車登録を申請していた可能性がある。
(イ)上記1(3)イ(イ)については,事実関係は知らず,評価は争う。
(ウ)上記1(3)イ(ウ)については,事実関係は知らず,評価は争う。
(エ)上記1(3)イ(エ)については,否認ないし争う。
ウ 上記1(3)ウ柱書きは,争う。
(ア)上記1(3)ウ(ア)のうち,原告が本件各商標使用をしたことは認め,その余の事実は知らず,評価は争う。
本件各商標は,本件契約10条,本件契約書別紙6のとおり,本件契約期間中,原告の活動に関連して,使用する権利及び義務を有するものであって,自己の敷地内及び業務用紙に承認された形式で表示するとされているものであるから,本件各商標使用は,明らかに本件契約10条に反する。また,これらは,登録商標に係る商標権を侵害する行為でもあり,かつ,不正競争防止法2条1項1号,2号の不正競争行為にも該当する。
さらに,本件各商標使用は,被告の販売戦略及びブランド戦略の根幹,ひいては,販売組織の維持を揺るがしかねない点において極めて悪質な行為である。
本件東陽店舗の外観上,中古車店であることを明示する表示は全くなく,本件東陽店舗のスタッフらは,本件東陽店舗にやってきた顧客から新車は買えるのか尋ねられたこともあったのであり,実際のところは,本件各商標は,本件東陽店舗が正規販売店であることを示す表示として機能していた。
原告は,「他の中古車販売店と同様に設置」しただけと主張するが,原告は,本件契約に違反して,本件各商標を不正に使用し,しかも,自己の商号や店舗名の表示すらしていない点において,他の中古車販売店とは明らかに異なる態様で本件各商標使用をしているものであって,原告の主張は明らかに失当である。原告は,正規販売事業者としてフォルクスワーゲンビジネスを展開すべき立場にあるのに,正規販売店でない中古車販売店の行為と同視しようとすること自体,正規販売事業者としての無自覚と無責任を物語る。また,一般販売等されているVWロゴ等のフォルクスワーゲン商標が付された陣旗やステッカーを使用したからといって,契約違反や商標権侵害の成立が否定されるものでもない。
(イ)上記1(3)ウ(イ)は,否認ないし争う。
被告は,具体的損害の発生の有無を問題しているのでなく,具体的損失の有無を云々すること自体,原告が本件の本質を正しく理解していないことを示す。
(ウ)上記1(3)ウ(ウ)は,否認ないし争う。
被告の問題意識は,原告が,本件契約に違反して,フォルクスワーゲン商標を不正に使用して,正規販売店又は認定中古車店であるかのような誤認を惹起せしめる態様で,本件東陽店舗を運営していたことにあるのであり,原告の問題意識はずれている。
(エ)上記1(3)ウ(エ)は,知らない。
エ 上記1(3)エは,否認する。
本件東陽店舗の実態を調査するため,被告従業員2名が,同年5月30日,同店舗を訪問したところ,同店舗の従業員から,
(ア)同店舗では現在中古車を扱っているが系列のフォルクスワーゲン葛飾から調達して新車販売をすることも可能であること,
(イ)近隣のフォルクスワーゲン東京深川が閉店する予定で,その後は本件東陽店舗が対応すること,
(ウ)サービス工場は6月末から稼働予定であること
の説明を受けた。
(4)上記1(4)は,争う。
原告の運営するフォルクスワーゲン葛飾の販売実績やフォルクスワーゲンつくばの顧客満足度は著しく劣っており,しかも真摯に改善に取り組む姿勢も見られなかった。
また,現に,被告は,本件東陽店舗の問題と原告の販売実績や顧客満足度等を総合考慮して,本件更新拒絶を決定した。
(5)上記1(5)は,争う。
被告は,本件契約の期間満了の1年4か月以上も前である平成26年8月5日付け通知書でフォルクスワーゲン事業からの撤退検討を要請する通知書を発し,同月19日付け通知書で平成27年12月31日の契約満了日をもって終了させる旨の通知を行っており,実に1年半もの猶予期間を設けていること,平成26年8月5日付け通知書の発信時点で本件契約期間は約3年半しかなかったこと,それ以前のトヨタとの販売代理店契約による20年以上の期間中に既に店舗施設等の大型の初期投資は回収済みであること,同日付け通知書の発信後も,被告は,原告の事業上の影響を最小限にするために,店舗施設の売却の仲介や従業員の他店舗への移籍斡旋のサポート等も申し出ており,特段の配慮を行っていることからすると,十分すぎる猶予期間であることは明白である。
また,本件各商標の不正使用は,ブランドビジネスの根幹を揺るがす重大な契約違反であって,本件各商標の不正使用を正当化する理由は何ら存在しないところ,原告は,故意に契約違反を犯したので,保護されるべき合理的期待はない。
(6)上記1(6)柱書きは,争う。
ア 上記1(6)アは,争う。
従業員については,配置転換が可能である。
また,原告のメインの取引先はトヨタであり,フォルクスワーゲン事業における売上げは全体の15%程度で,取引依存度は低い。
イ 上記1(6)イは,事実については不知ないし否認し,主張は争う。
ウ 上記1(6)ウは,否認ないし争う。
フォルクスワーゲン店舗は,他に転用可能である。このことは,フォルクスワーゲンの他店舗が撤退後,円滑に転用されていること,本件東陽店舗もマセラッティ店舗に転用されていることから明らかである。
エ 上記1(6)エのうち,自動車販売店がその事業を営むために一定の労力と資本を投下する必要があることについては認め,その余は否認ないし争う。
オ 上記(6)オは,否認ないし争う。
カ 上記(6)カについては,第2,3及び5文記載の事実は認め,第4文は不知,その余は否認ないし争う。
(7)上記1(7)は,争う。
ア 本件東陽店舗の営業態様は,顧客等の一般消費者をして本件東陽店舗が正規販売店又は認定中古車店であるとの誤認を惹起させるものであって,商標の保護(本件契約10条1項),スタッフの専任(同3条2項3号),不正競争防止法2条1項1号,2号,本件契約で定める効率的な販売網の構築(本件契約前文1条),正規販売店の主たる責任地域を定めた配置(同3条3項,12条1項3号)にも違反するもので,悪質なものである。
原告の行為をみても,原告は,フォルクスワーゲン東京深川の状況が変わるのを待ちながら本件東陽店舗の営業を開始したものの,ノンブランドのままでは当然集客力は乏しく,借地料に見合う売上げは見込めなかった。そこで,本件各商標が有する顧客誘因力を利用して集客を上げ,利益を得ようと,正規販売事業者であるにもかかわらず,非正規販売店を正規販売店であるかのように誤認させる態様で,本件各商標を不正に使用したものであるから,この意味でも悪質である。
イ 日本において自動車の新車流通は,メーカーから自動車の供給を受けた正規販売事業者を経由して行われるのが一般的であって,正規販売事業者は,メーカーのマーケティング政策の一翼を担い,メーカーと正規販売事業者との関係は特約販売店契約によって規律される。そして,販売権を与えられた正規販売事業者が製品(自動車)を販売して,アフターサービスも提供する。正規販売事業者にはそれぞれに責任地域(テリトリー)が定められ,基本的に,正規販売事業者は,それぞれの責任地域内における販売店活動及びアフターサービスに注力することが求められる。この責任地域性は,そのメリットとして,メーカーが特定地域における同系列の正規販売事業者間の競合を回避し,又は適当にコントロールする制度であり,需要を深く開拓して,販売努力を傾注できることや,適正な配置により地域との密着が高まり,販売促進効果が円滑に行われるとなどが指摘されている。
フォルクスワーゲングループの日本における自動車流通も,上記の流通慣行に従い,正規販売事業者によって担われている。即ち,フォルクスワーゲン製品は,フォルクスワーゲングループに属する被告によって独占的に輸入され,本件契約に従って,正規販売事業者が運営する正規販売店を通じて独占的に販売されている。フォルクスワーゲンの正規販売事業者は,全国に所在し,日本における輸入車ブランド最大の店舗数を有しており,被告は,正規販売店は,顧客に高い満足度を実感してもらうための重要な舞台であると考え,顧客の新車購入からアフターサービスに至るすべての過程において顧客にフォルクスワーゲンのブランド価値を体感してもらえるよう,全国の正規販売店の均一でレベルの高いサービスを提供するためのネットワークを構築している。即ち,自動車販売については,正規販売店に配置されたフォルクスワーゲンに関する専門のトレーニングを受けて最新の製品情報と技術を身につけたセールススタッフやサービススタッフが,アフターサービスに関しては,高度な専門知識と豊富な経験を持つサービススタッフが,全世界の統一基準で定められた高水準のアフターサービスを提供している。正規販売事業者は,本件契約において,このような高水準の販売サービスとアフターサービスの提供が義務付けられている。即ち,正規販売事業者は,主たる責任地域において効率的な販売活動及びアフターサービスを行うことが求められており(本件契約3条3項),正規販売事業者による卸売販売は禁止されており(同3条4項),また,フォルクスワーゲン製品の販売について,他の事業活動とは切り離した上で,製品の販売及びアフターサービスのための専門人員の配置が義務付けられており(同3条2項),展示車両を主とする在庫車両及びデモカーの確保(同5条),純正部品の在庫の確保(同8条),被告の定める基準に従った販売促進などが義務付けられている(同9条)。また,アフターサービスについても高い顧客満足度が得られるような質の高いサービス提供が義務付けられている(同6条)。さらに,中古車販売についても,フォルクスワーゲングループでは,一定の安全性基準を満たす中古車を認定中古車として,正規販売業者が運営する正規の認定中古車店でのみ販売を行っている。認定中古車へのサポートは正規販売事業者によって行われ,一般の中古車よりも高いレベルでの品質保証やアフターサービス等が提供されている。これらによって,フォルクスワーゲン製品とブランドと品質への顧客の信頼が担保されている。
上記のような正規販売事業者を介した販売モデルは,自動車業界で広く一般的にみられる取引慣行であって,フォルクスワーゲンの自動車販売戦力及びブランド管理の根幹をなしている。したがって,その一翼を担う正規販売事業者には,このような販売モデルを理解し,尊重することが求められる。
原告は,正規販売事業者としての立場にありながら,本来であれば正規販売店でのみ勤務が認められるはずの原告従業員の専門的知識を利用し,非正規の販売店において,本件各商標を不正に使用して正規販売店であるかのように誤認させる態様で,少なくとも非認定中古車を販売したものであり,このような行為はフォルクスワーゲングループの販売戦略及びブランド戦略の根幹を蔑ろにする。
(8)上記1(8)は,争う。
ア 被告の予備的主張は,主位的請求に包含されるものを別個の訴訟物として追加しようとするものであって,明らかに不適法であり,却下されるべきである。
イ 本件契約に店舗毎に異なる扱いとする規定はないこと,被告が一部店舗のみを対象に更新拒絶した例はないことからすると,本件契約は店舗毎に可分とはいえない。
ウ 本件契約は可分であるとの原告の主張は,更なる審理を要するというのであれば,まさしく時機に後れた攻撃防御方法であり,直ちに却下されるべきである(民事訴訟法157条1項)。原告・被告は,地位保全仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件(平成27年(ラ)第1951号)において,「抗告人及び相手方は,・・・訴え提起から1年以内に,第一審の訴訟手続が判決言渡し等の終局に至るよう,真摯かつ誠実に訴訟手続を遂行するものとする」との合意がなされており,既に弁論準備手続きも終了し,証人尋問も終了し,口頭弁論が終結後,証人尋問中に検出された事実の裏付け証拠を取り調べるためだけに再開されたに過ぎないのに,終結予定日の直前となって,上記主張を追加したものであって,時機に後れて提出されたものであり,少なくとも,そのことについて,原告に重大な過失がある。
第5  当裁判所の判断
1  認定事実
(1)当事者
原告は,肩書地に本店が所在する,昭和46年2月1日設立された,資本金5000万円の自動車の販売(賃貸)及び修理等を目的とする株式会社である。事業内容は,トヨタ新車販売,フォルクスワーゲン新車販売,中古車販売,車検整備,一般整備,各種自動車部品・用品の販売,損害保険代理業務,生命保険代理業務,au携帯電話代理業務,KDDI代理業務である。原告は,後出のフォルクスワーゲン葛飾,フォルクスワーゲンつくば,フォルクスワーゲンつくば認定中古車センターのほか,トヨタ新車販売店を11店,中古車販売店を1店経営している。原告の事業のうちフォルクスワーゲン事業の占める割合は,平成27年3月期で総売上のうち15.6%,売上総利益のうち13.8%であった。
被告は,肩書地に本店が所在する,昭和58年7月7日に設立された,資本金231億7410万円の株式会社であり,ドイツ連邦共和国に本拠を有するフォルクスワーゲンAGの100%子会社である。被告は,フォルクスワーゲン製品の輸入に携わっていたが,平成4年頃から,日本で唯一の輸入権者となった。フォルクスワーゲンの平成26年の全世界における車両販売台数は約1022万台であって,全国のフォルクスワーゲンの販売代理店は251店ある。
(甲2,3,甲4,38の各1・2,甲41,50,72,163,乙1の1・2,原告代表者)
(2)原告と被告との契約関係
フォルクスワーゲンAG及び被告とトヨタは,フォルクスワーゲン製品の販売等について提携契約を締結していた。原告は,トヨタとの提携契約に基づき,平成6年にフォルクスワーゲン製品を扱うフォルクスワーゲンつくば(当時の店名はDUOつくば)を,平成20年にフォルクスワーゲン製品を扱うフォルクスワーゲン葛飾(当時の店名はDUO葛飾)を出店し,フォルクスワーゲン製品の販売に携わった。
平成22年12月,フォルクスワーゲンAG及び被告とトヨタとの提携契約が解消され,日本国内において,被告とフォルクスワーゲン製品販売店が直接契約を締結する仕組みとなった。
原告と被告は,平成22年8月20日,同年12月1日発効する「フォルクスワーゲン製品にかかわる取引基本契約書」(本件契約書)に基づく取引基本契約(本件契約)を締結し,フォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲン葛飾を営業施設として,被告が原告に対し,フォルクスワーゲン製品の適正かつ円滑な供給に努めることを,原告が被告に対し,フォルクスワーゲン製品の信用維持及び販売拡大のために最善の努力を払うとともに,被告の営業方針を尊重し,被告及びフォルクスワーゲンAGの諸規定を遵守し,かつその指示に従うことなどをそれぞれ約した。なお,本件契約書の前文に,本件契約が「継続的な取引を行う」ことを前提とする記載がある。
原告と被告は,平成24年9月10日,本件契約書の営業施設のフォルクスワーゲンつくばに認定中古車センターを加える旨の合意をした。同年11月21日,つくば認定中古車センターの建築工事請負契約を締結し,平成25年,フォルクスワーゲンつくば認定中古車センターを出店した。
(甲1,5の1・2,甲72,73の1・2,甲76,121,163,原告代表者)
(3)被告の事業戦略及び本件契約等の具体的内容
ア 日本において自動車の新車流通は,メーカーから自動車の供給を受けた正規販売事業者を経由して行われるのが一般的であって,正規販売事業者は,メーカーのマーケティング政策の一翼を担い,メーカーと正規販売事業者との関係は特約販売店契約によって規律される。そして,販売権を与えられた正規販売事業者が製品(自動車)を販売して,アフターサービスも提供する。正規販売事業者にはそれぞれに責任地域(テリトリー)が定められ,基本的に,正規販売事業者は,それぞれの責任地域内における販売店活動及びアフターサービスに注力することが求められる。この責任地域性は,そのメリットとして,メーカーが特定地域における同系列の正規販売事業者間の競合を回避し,又は適当にコントロールする制度であり,需要を深く開拓して,販売努力を傾注できることや,適正な配置により地域との密着が高まり,販売促進効果が得られ,アフターサービスが円滑に行われるとなどが指摘されている。
フォルクスワーゲングループの日本における自動車流通も,上記の流通慣行に従い,正規販売事業者によって担われている。即ち,フォルクスワーゲン製品は,フォルクスワーゲングループに属する被告によって独占的に輸入され,本件契約に従って,正規販売事業者が運営する正規販売店を通じて独占的に販売されている。フォルクスワーゲンの正規販売事業者は,全国に所在し,日本における輸入車ブランド最大の店舗数を有しており,被告は,正規販売店は,顧客に高い満足度を実感してもらうための重要な舞台であると考え,顧客の新車購入からアフターサービスに至るすべての過程において顧客にフォルクスワーゲンのブランド価値を体感してもらえるよう,全国の正規販売店の均一でレベルの高いサービスを提供するためのネットワークを構築している。正規販売事業者は,本件契約において,高水準の販売サービスとアフターサービスの提供が義務付けられている。即ち,正規販売事業者は,主たる責任地域において効率的な販売活動及びアフターサービスを行うことが求められており(本件契約3条3項),正規販売事業者による卸売販売は禁止されていて(同3条4項),また,フォルクスワーゲン製品の販売について,他の事業活動とは切り離した上で,製品の販売及びアフターサービスのための専門人員の配置が義務付けられており(同3条2項),展示車両を主とする在庫車両及びデモカーの確保(同5条),純正部品の在庫の確保(同8条),被告の定める基準に従った販売促進などが義務付けられている(同9条)。また,アフターサービスについても高い顧客満足度が得られるような質の高いサービス提供が義務付けられている(同6条)。また,統一的かつ一般性のあるアイデンティフィケーションを確保するため,定まった方法での商標の使用が求められている(同10条)。さらに,中古車販売についても,フォルクスワーゲングループでは,一定の安全性基準を満たす中古車を認定中古車として,正規販売事業者が運営する正規の認定中古車店でのみ販売を行っている。認定中古車へのサポートは正規販売事業者によって行われ,一般の中古車よりも高いレベルでの品質保証やアフターサービス等が提供されている。これらによって,フォルクスワーゲン製品とブランドと品質への顧客の信頼が担保されている。
上記のような正規販売事業者を介した販売モデルは,自動車業界で広く一般的にみられる取引慣行であって,フォルクスワーゲンにおいても,自動車販売戦略及びブランド管理の根幹をなしている。したがって,被告は,その一翼を担う,原告を含む正規販売事業者に,本件契約によって,このような販売モデルを理解し,尊重することを求めている。
(甲1,128の1~3,乙14,乙15の1~8)
イ フォルクスワーゲンAGによって,平成20年7月4日,本判決添付別紙1「商標」上からの1番目である「VOLKSWAGEN」及びVWロゴが,我が国特許庁において,商標登録された。
(甲134,135の各1・2)
ウ 本件契約において,原告と被告は,次のとおり約束した(甲1)。
第1条(定義)
(3) 本契約でいう「主たる責任地域」とは,集中的かつ非独占的に販売活動を行う権利と義務を乙(原告)が甲(被告)から付与された地域をいう。
第2条(本契約の目的)
2.乙は,主たる責任地域におけるフォルクスワーゲンブランドの優れた競争力を最大限に発揮するため,あらゆる面でフォルクスワーゲンブランド,甲,販売組織,契約製品のイメージ向上に努めるものとする。
第3条(履行の原則)
1.基本的な義務
(1)  乙は,契約製品の信用維持および販売拡大のために最善の努力を払うとともに,甲の営業方針を尊重し,甲およびメーカーの諸規定を遵守し,かつその指示に従うものとする。
(2)  乙は,甲の指針に沿って,販売促進,契約製品の潜在的な市場の開拓,競合他社に勝るアフターサービスの提供,および主たる責任地域の需要を満たすフォルクスワーゲン純正部品の在庫維持について,責任を負うものとする。・・・
2.乙の事業体
(1)  乙は,本契約に基づくすべての義務を,独立の事業体として,自己のために自己の費用において履行するものとする。・・・
・・・
(3)  乙は,本契約に関連する事業活動を他の事業活動と切り離して行うものとし,これに必要な手段についてはすべて事前に甲と合意するものとする。・・・
(4)  乙は,甲の事前の書面による承認の無い限り,例え乙とは持分比率が異なる別組織であっても,主たる責任地域内および地域外に,契約製品の販売およびアフターサービスの提供のための,法人,支店,ショールームおよび展示場を設置しないものとする。
3.主たる責任地域
(1)  乙は,周到に計画された効率的な販売活動およびアフターサービスを実施するために,本契約に基づく業務活動を主たる責任地域に集中して行うものとする。・・・
第10条(アイデンティフィケーションおよび商標)
統一的かつ一貫性のあるアイデンティフィケーションを確保するため,乙は,本契約に基づき,本契約期間中,自己の活動に関連して,別紙6(本判決添付別紙1)に掲載される保護商標(以下「本商標」という)を,使用する権利および義務を有するものとし,自己の敷地内および業務用紙に本商標を承認された形式で表示するものとする。甲の書面による事前の承認がある場合に限り,乙は,その他の製品,包装,宣伝素材に本商標を使用する権利を有するものとする。・・・
第12条(営業施設および事業活動)
1.営業施設
(2)  乙は,ショールーム,サービス工場その他営業設備を新設,改装,移転,増改築,廃止しようとするときは,計画書,図面等を甲に事前に提出し調整を図った上で,甲の事前の書面による承諾を得なければならない。・・・
第21条(契約期間)
2.本契約の有効期間は,本契約の発効日より満3か年を越えて最初に到来する12月末日とする。ただし,契約満了の6か月前までに甲乙双方から内容証明郵便による変更または更新拒絶の通知がないときは,さらに1か年間,自動的に更新されるものとし,以降も同様とする。
第24条(警告(催告)を伴う解除)
当事者の一方が本契約の条項につき違反をしたとき,他方の当事者は,書面による警告を行い,警告後1か月以内に違反状況の改善がはかられなかった場合には,直ちに内容証明郵便による通知により本契約を解除できる。
第25条(即時効果を有する契約解除(無催告解除))
本契約は,正当事由がある場合,事前の通知なく即時に解除することができる。特に,乙が以下の各号いずれかに該当する場合,甲は,即時に契約を解除する権利を有するものとする。・・・
(5) 本契約に基づく債務につき乙に重大な違反があった場合,本契約に基づく債務を履行せず,または本契約に違反し,甲が相当の期間を定めて催告したにもかかわらず,なお当該不履行あるいは違反が是正されない場合。
(4)原告のフォルクスワーゲン事業の展開
ア 原告は,平成19年5月11日,月額金110万3055円で,同年10月19日から20年間土地を賃借し,フォルクスワーゲンつくばの敷地に供している(甲30)。原告は,平成24年10月26日,同年11月1日から月額42万7680円で,10年間土地を賃借し,フォルクスワーゲンつくば認定中古車センターの敷地に供している(甲31)。原告は,平成19年5月30日,同年7月1日から月額金200万円(同年7月から同年12月までは月額金100万円)で,20年間土地を賃借し,フォルクスワーゲン葛飾の敷地に供している(甲32)。
イ 原告は,平成21年1月,フォルクスワーゲンつくばの建物を,2億1301万1188円を投じて新築したが,その平成27年3月時点の簿価は1億7048万0200円である(甲33)。原告は,平成25年5月,フォルクスワーゲンつくば認定中古車センターの建物を,7122万1076円を投じて新築したが,その平成27年3月時点の簿価は6599万3645円である(甲34)。原告は,平成20年5月,フォルクスワーゲン葛飾の建物を,1億8540万3670円を投じて新築したが,その平成27年3月時点の簿価は1億5200万8544円である(甲35)。
ウ 原告は,平成21年,フォルクスワーゲン葛飾を出店した際,店舗出店の数か月で,宣伝広告費用として約1675万円を投入した(甲98の1~8)。
エ 被告は,平成25年5月9日付けで,原告に対し,茨城県フォルクスワーゲン新規出店の検討を促し,原告は,その手続きを進めた。原告は,同年8月29日,被告に対し,取手及び牛久での候補地に関する資料を添付した出店申込書を送付し,被告の指示に従い,同年9月5日,追加資料を送付したが,最終的に出店は不承認とされた。
(甲81,82の1・2,甲83ないし85,89,90,130,146ないし148,149の1・2,甲150)
オ 被告は,平成26年8月6日付けの書面で,原告を含むフォルクスワーゲン販売店について,フォルクスワーゲン車両の一部が電化されたことに対応し,同年11月末までに店舗充電インフラ整備の完了を求めたため,原告は,それに応え,被告からフォルクスワーゲン仕様普通充電器等を代金合計73万円にて購入し,フォルクスワーゲンつくば,フォルクスワーゲン葛飾及びフォルクスワーゲンつくば認定中古車センターに備え付けた(甲24の1~4)。
原告は,平成27年2月18日,被告の求めに応じて,新型テスターを,月額約5万円で,60か月にわたりリースする契約をした(甲25の1・2)。
カ フォルクスワーゲンの正規販売店を出店するためには,サービス工場において,フォルクスワーゲン製品に対応する設備や工具を購入する必要があり,その額は一式揃えるのに1店舗あたり2000万円程度かかり,設備や工具も必要な都度,バージョンアップしている。従業員についても,フォルクスワーゲンのサービスに対応するため,営業担当であれば,フォルクスワーゲン製品の詳細な商品知識を身につける必要があり,技術者であれば,フォルクスワーゲン製品の技術の詳細に通じる必要があり,それぞれ研修が必要である。平成28年現在,原告のフォルクスワーゲン従業員は29名で,フォルクスワーゲン顧客は,約4000名である。
(甲6,164)
(5)フォルクスワーゲンにおける正規販売店及び認定中古車店の出店手続
フォルクスワーゲンにおける正規販売店及び認定中古車店の出店に至るための手続の流れは,本判決添付別紙2「手続」欄及び「新規出店までの標準的なプロセス」欄記載のとおりであって,原告における本件東陽店舗,つくば認定中古車センター及び取手地区新規出店の経緯は,その該当欄記載のとおりである。
正規販売店の出店にあたっては,原則として,既存販売会社に対する公募の手続を採る。まず,被告が,該当するエリアへの出店に関心がある販売会社は出店意思表明書を提出するよう案内する。次に,出店意思表明書を提出した会社は,具体的な候補地の提案と事業計画書を概ね3か月以内に提出する。それらを前提に,被告において,提出された候補地の立地条件,事業計画のほか,販売会社の経営状況や既存店の販売成績,顧客満足度,貢献度等も考慮して,出店計画の審査を行い,最適と考える販売会社を選定する。そして,役員の決裁を経て,初めて出店承認を出すものである。
被告がLLTに委託して実施する設計コンサル業務は大きく分けて3フェーズあり,第1フェーズは候補地等の図面のレビュー,第2フェーズは出店承認を経た後の建物を作る段階の実施設計図面のレビュー,第3フェーズは現場管理である。このうち,第1フェーズは,正規販売店候補者が事業計画を立てる前の段階であり,被告による出店検討を始める前段階の手続である。
(甲130,144の1~3,甲145,乙13,16,証人C,原告代表者,本判決添付別紙2記載の証拠及び弁論の全趣旨)
(6)原告の本件東陽店舗の出店の経緯とそれに対する被告の対応
ア 被告は,平成23年夏頃から,フォルクスワーゲンのCI確立のためのCD(コーポレートデザイン)の一貫として,被告における先代のCDであるマーケットプレイスコンセプトに合致していない店舗については,新たに導入されたCDであるモジュラーコンセプトに沿った改修を勧めていた。その具体的な内容は,エントランスポータル,店名プレート(又はディーラーフレーム),建物の正面ファサード全体を白く縁取るビルディングフレームに加え,ショールーム前面に施すガラスファサードでショールームの外観を計画するものである。被告は,既存店の改装・移転の完了期限を平成26年末としていて,それに伴う被告からの投資サポートもその時期までとされていた。なお,原告のフォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲン葛飾にはモジュラーコンセプトは導入されていなかったが,マーケットプレイスコンセプトが導入されていた。
(甲47,67,118の1・2)
イ 原告代表者Aは,かねてから東京都内にフォルクスワーゲン葛飾以外にもフォルクスワーゲンの正規販売店を出店したいと考えており,被告に板橋と豊洲におけるフォルクスワーゲンの正規販売店の新規出店を申し入れたが,承認されなかった。原告代表者Aは,多数の人口を有する江戸川区及び千葉県浦安市と繋がっている葛西通りに面していて,江東区という今後人口の増加が予想される好立地である土地(本件東陽店舗の敷地)への出店を被告担当者Cに打診したところ,被告担当者Cは,少なくとも,その土地は好立地であり,地形がよいことを認めた。もっとも,フォルクスワーゲン東京深川と本件東陽店舗との敷地の距離が約200メートルであったため,被告の2/4kmルール(各販売店は,既存の店舗から同一同線上にない場合は直線距離で2km以内,同一同線上の場合は直線距離で4km以内には出店しないというルール。効率的な販売組織を構築するためのものである。)により,被告から正規販売店の出店の承認を得ることができない場所であっため,被告担当者Cは,原告代表者Aに対し,少なくともその時点で原告において正規販売店を出店することができない,もっとも,今後状況が変わる可能性はありうるが,まだ何も決まっていないと述べた(乙16(2頁)において被告担当者Cが認めている。)。原告代表者Aは,フォルクスワーゲン東京深川は,隣接する東京トヨペットとの複合店舗であり店舗を建て直さない限り,被告が求めるCDを導入する行うことは不可能であったことから,上記アの点を考え合わせると,フォルクスワーゲン東京深川は近々閉店すると考え,閉店すれば,本件東陽店舗の敷地が好立地で,地形が良く,被告担当者Cも好立地で地形が良いことを認めていたことからすると,そこへのフォルクスワーゲン正規販売店の出店が認められる可能性が十分あると考え,その敷地を賃借し,確保することを考えた。
また,原告代表者Aは,DUO東京J社長に,本件東陽店舗敷地において,共同で認定中古車店の運営をすることを持ちかけたが,断られた。
(甲40,48,50,66,68,127,164,乙16,証人C,原告代表者。なお,甲50,164,原告代表者には,被告担当者Cが,フォルクスワーゲン東京深川が閉めてもらうことになりますと,フォルクスワーゲン東京深川の閉店が確定的である旨を述べたとする部分(原告代表者2頁)があるが,その裏付けはなく,下記(9)のとおり,現在においてもフォルクスワーゲン東京深川が営業を続けていることに加え,甲127,乙16,証人Cに照らし,採用できない。)
ウ 原告代表者Aは,平成24年10月下旬,被告担当者Cに対し,本件東陽店舗に関するPH1F平面図,2階平面図及び屋上立体図を送付し,レビューを依頼した。被告担当者Cは,この依頼に応じ,店舗CI,即ちモジュラーコンセプトに関係する部分のレビューをLLTに依頼し,その結果として,同年11月12日,原告代表者Aに対し,LLTに依頼して作成したそれらのレビュー図を提供したが,各図面には,「Volkswagen東京深川」との記載があった。なお,その作成の費用30万円を被告が負担した。原告代表者Aは,被告担当者C及びLLTの対応に鑑み,最終的に,本件東陽店舗敷地に,フォルクスワーゲン正規販売店を出店できる可能性は十分あると考えた。もっとも,このLLTによるレビューは,第1フェーズのもので,出店を前提としておらず,原告が被告から,本件契約に基づき,正式に本件東陽店舗の出店を承認されたことやその前提である原告から被告への事業契約書の提出など正規販売店の出店に向けた手続がされたことは,この時点もこれ以降もなく,原告代表者Aもそのことを知っていて,かつ,原告代表者Aは,被告担当者Cから,本件東陽店舗の出店を被告が認めることは確実であるとの説明を受けたことさえない(原告代表者が認めている(51頁)。)。
なお,LLTは,被告からフォルクスワーゲンのCIの管理を全面的に委ねられており,フォルクスワーゲンの新車販売店を出店する際に,CIに沿う店舗レイアウト図面のこの店舗レイアウト図面の作成や,設計図面がCIに合致しているか否かの確認を行う設計事務所である。
(甲13の1・2,甲49の1~3,甲50,68,127,129,144の1・2,甲145,164,乙16,証人C,原告代表者,弁論の全趣旨)
エ 原告は,平成24年10月29日,本件東陽店舗の敷地所有者であるアーバン東港との間で,大和ハウスを仲介人として,その敷地の事業用借地権設定契約の締結に向けた合意書を締結し,同年12月31日までにフォルクスワーゲン東京深川の営業権についてのDUO東京と原告との契約締結ができなかった場合,アーバン東港は,上記合意書に基づく合意を解除することができ,保証金全額を違約金年没収できるものと約した上,同年10月31日,アーバン東港に対し保証金として2580万円を支払った。
もっとも,原告は,DUO東京とフォルクスワーゲン東京深川の営業権の承継について契約を締結する見込みを持っていなかったものの,大和ハウスからその条項を入れなければ,契約を締結できないとの説明を受け,どうしても,好立地である本件東陽店舗敷地を借り入れたいと考え,その条項を入れることを容認したものである。
(甲50,74,75,164,原告代表者)
オ 大和ハウス担当者Iは,平成24年11月,少なくとも被告担当者C立会の下,LLT担当者Fから,モジュラーコンセプトの一般的な説明を受け,モジュラーコンセプトに関するマニュアルを受け取った。
大和ハウス担当者Iは,同年12月27日,原告代表者Aに対し,本件東陽店舗についての修正した図面を添付した上で,「お伺いしたご要望と,LLTさんに確認しましたCIの考え方を踏まえプランを修正しております。」と記載したメールを送付した。
(甲77,78の1~3,甲86の1,164,乙13,16,証人C,原告代表者)
カ 原告代表者Aは,平成24年12月下旬,被告担当者Cに,本件東京店舗の敷地を所有者から借り受ける賃貸借契約を締結する旨の連絡をした。これに対し,被告担当者Cは,少なくとも前向きな回答をしていない(この点,被告は,明確に承認も協力もできない意向を伝えたと主張し,甲127,乙16,証人Cはそれに沿うが,裏付けがなく,原告代表者に照らし,その事実を積極的に認定することまではできない。他方,原告は,前向きな返答をしたと主張するものの,原告代表者(9頁)でさえ,被告Cの回答は事務的であったと供述するに過ぎず,この供述は,原告に不利益な限度では信用性があるから,上記の限度で認定できる。)。原告は,同月29日,本件東陽店舗の敷地を所有者との間で,平成25年10月1日(予定)から平成45年9月30日までとする事業用借地権設定契約を締結し,平成25年12月18日,公正証書によって存続期間を同月25日から20年間と変更し,事業用定期借地権設定契約を締結した。もっとも,原告代表者Aは,被告担当者Cに対し,その契約を締結した旨の連絡はしてない。
(甲51,164,乙16,証人C,原告代表者)
キ 大和ハウス担当者Iは,平成25年3月21日午前,LLT担当者Fに,本件東陽店舗の件について,「サイン計画および取付などの打合せをしたい。」,「照明計画を御願いしたい。」と電話したのに対し,LLT担当者Fは,大和ハウス担当者Iに「まずは,ディーラーとVGJ(被告)との話はどうなっているのか?最終的なプランおよび出店計画の合意が双方で整わないとVGJ抜きで進めることはできない。」と告げた。それに対し,大和ハウス担当者Iは,「出店については複雑で,まずは建物を先行して作りディーラー権を取得したのちに,先行して作った建物を改造して出店するようになっている。」と説明した。そこで,LLT担当者Fは,大和ハウス担当者Iに対し,「VGJ側が知らないのはマズいしLLTもサインメーカー(AGS)もVGJ側からの依頼でない限り施工業者の指示で進めるのはスジが違うでしょ?どういうつもり(何様のつもり)でアンタ電話してんの?」と憤慨して述べた。LLT担当者Fは,その経緯を,同日,午後2時34分に,被告担当者Cにメールした。もっとも,被告担当者Cは,その件について,原告代表者Aに問い質したり,止めたりはしなかった。
原告代表者Aは,同日午後3時26分,LLT担当者Fに対し,DWA(認定中古車店)の床の素材と色を検討するにあたり,新車店舗で使われているタイルのメーカーや色番を教えて欲しい旨メールをし,LLT担当者Fから情報を得た。
大和ハウス担当者Iは,同日午後6時27分,原告代表者Aに,本件東陽店舗のCIサイン図についてLLTに問い合わせたところ,LLTからは,まずディーラーである原告において被告に計画図を提出し,プラン合意に至る必要があるとの回答を受けたので,原告代表者Aから被告へ計画図の配信をお願いしたいとメールした。大和ハウス担当者Iは,同年4月2日,原告代表者Aに対し,被告の図面の承認はどうなっているかをメールで問い合わせた。
なお,原告代表者A及び大和ハウスは,上記で記載した以降,LLT担当者Fに,協力依頼をしていない。
(甲79,127,132,133,164,乙13,16,証人C,原告代表者)
ク 原告は,平成25年5月25日,大和ハウスに対し,代金3億8200万円として,本件東陽店舗建築を注文し,その間でその旨の請負契約を締結した。
原告,大和ハウス及び他の建築業者は,同年7月30日,本件東陽店舗建設のための打合せをしたが,CI関係資料のうち,CI床壁内装仕上図(材料及び範囲),CI外装仕上図(材料及び範囲)はないと思われるが,CIサイン図,CI照明図他は,原告代表者Aにおいて,被告に聞いてみることとなった。同年8月1日の同様な打合せにおいて,CI関係資料については,原告代表者Aが,再度,被告に資料の依頼・確認をすることとなったところ,後日,原告代表者Aは,被告担当者Cが対応することとなったと報告した。原告代表者Aは,同月7日,被告担当者Cを訪ね,本件東陽店舗のためにCIサイン図,CI照明図を提供することを依頼した。大和ハウス担当者Iは,同月8日,原告代表者Aの指示に従い,被告担当者Cに対し,本件東陽店舗の件としてCADデータを送信した。被告担当者Cは,それについて,原告代表者A及び大和ハウス担当者Iに,問い質したり,異議を述べたりしていない。
同年8月22日の本件東陽店舗建設のための打合せにおいて,CI照明図他はなく,CIサイン図については,CADデータを大和ハウスが被告担当者Cに送付し,被告において作成してもらうことが再度確認された。しかし,被告担当者Cは,CIサイン図を大和ハウスにも原告にも送付していない。
被告担当者Cは,同年9月3日,原告代表者Aに,「VWモジュラーコンセプト参考図面」と題するメールを送付し,原告代表者Aが,フォルクスワーゲン富士の図面を参考図として,アクセスできるように設定した。
大和ハウス担当者Iは,同年12月8日,原告代表者Aに対し,床材であるタイル及びフローリングについてCI類似品をCI品であるサンプルと対比した写真を送付した。
(甲14,50,52,53の1~3,甲54の1・2,甲68,86の1~3,甲127,145,164,乙16,証人C,原告代表者。なお,平成25年8月7日,原告代表者Aが,被告担当者Cを訪ね,CIサイン図及びCI照明図の提供を依頼した際の被告担当者Cの対応について,原告は了承したと主張し,被告は断ったと主張し,甲50,68,164,原告代表者は原告主張に,甲127,乙16,証人Cは被告主張に沿うものの,いずれも,決定的な裏付けを書くので,いずれとも認定しないこととする。また,被告担当者Cのフォルクスワーゲン富士の図面の件について,原告は,本件東陽店舗に関するものであると主張し,被告は取手地区の出店に関するものであると主張し,甲50,68,164,原告代表者は原告主張に,甲127,145,乙16,証人Cは被告主張にそれぞれに沿うが,いずれも裏付けがなく,相互矛盾するので,そのいずれかを特定して認定することはできない。なお,原告は,同年12月8日にIが持っていたCI品である床材であるタイル及びフローリングのサンプルは,被告担当者Cから送付を受けたものと主張し,被告はそれを否認し,甲68,164,原告代表者は原告主張に沿い,甲127,145,乙16,証人Cは,被告主張に沿うが,いずれも裏付けがなく,相互矛盾するので,そのいずれかを特定して認定することができない。)
ケ 原告は,平成26年4月頃,本件東陽店舗を,フォルクスワーゲンの中古車を展示,販売する店舗として開店した。原告代表者Aは,本件東陽店舗については,「目立たない,ひっそりと営業しよう」と考えていた(原告代表者48頁)。
本件東陽店舗においては,フォルクスワーゲンの中古車が展示,販売されていたが,外観上中古車店であることを明示する表示は全くなく,経営主体も掲げられていなかった。なお,本件東陽店舗は,建物前面ファサード全体がビルディングフレームによって白く縁取られ,ショールーム前面ファサードがガラスで構成され,エントランスポータルが白く縁取られていて,建物の基本的な構成はモジュラーコンセプトと一致しているが,他方,エントランスのプロポーションが違う,高さのあるフォルクスワーゲンロゴの立て看板がない,店舗エントランスポータルの立体的なロゴやフォルクスワーゲンを付した店名プレートがないなど,モジュラーコンセプトと異なる点もあった。また,床材のタイル及びフローリングについてもCI品と似ていた。なお,展示・販売されていたフォルクスワーゲンの中古車のうちに,被告が社用車として使っていたものを原告が仕入れ,後に原告の経営するフォルクスワーゲン葛飾における認定中古車として登録されたもの(車台番号WVWZZZ3CZDP0006433)があった。
本件東陽店舗においては,フォルクスワーゲン葛飾の営業スタッフが交代で1名ずつ勤務していて,そのサポートとして,フォルクスワーゲン葛飾のパートの事務スタッフであるKが勤務する場合も週に半分くらいあった。そこで用いられる名刺,展示車両の価格表,見積書及びアンケートには,フォルクスワーゲン商標等は記載されておらず,プレミアムセンター江東という店名が記載されていた。
本件東陽店舗の店名に関しては,平成26年7月下旬から12月にかけて,黒板型置き看板に「Premium Center」という店名と営業時間を記載したものが店舗入り口前に置かれていたが,他には店名は表示されていなかった。
本件東陽店舗においては,正規の販売代理店であれば稼働しているサービス工場の施設はあったが,稼働はしていなかった。
原告は,本件東陽店舗では来客が少なく,外から何をしている店舗かわかりにくいと考え,VWロゴの入った陣旗を店舗の周囲に設置することとし(甲96で原告従業員であるLが認めている。),平成26年5月30日時点では,本件東陽店舗の正面に数本建てられており,同年6月上旬から8月19日過ぎまで正面ガラスファサードに本件各商標が記載されたステッカーが設置され,特に,同年7月9日時点では,それらのステッカーが数枚ずつ交互に貼られた状態であった(本件各商標使用)。なお,この陣旗は,中古車販売店向けに一般的に販売されているものであった。また,原告が被告から仕入れたもので,本来,正規販売店のみで使うことができる販売促進ツールであって,フォルクスワーゲン自動車の商品名である「UP!」が記載されているヘリウムガス入りのバルーンが飾られた。
フォルクスワーゲン深川東京を経営しているDUO東京のM常務は,平成26年5月頃,当時被告のエリアマネージャーであった谷津田に対し,フォルクスワーゲン東京深川の近くに本件東陽店舗が出店されたが,これを被告が承認したのかと抗議した。平成26年の春又は夏,フォルクスワーゲン江戸川のセールススタッフ白石は,客から被告は本件東陽店舗を出店したのかと聞かれ,そのことを被告の関連会社の社員(当時)Nに伝えた。他にも,被告の従業員に,本件東陽店舗が,被告に関連する店であることを前提とする問い合わせがあった。
平成27年3月24日,インターネット上に,本件東陽店舗をフォルクスワーゲンのショールームであると判断していることを前提とした投稿があった。
本件東陽店舗の来客に,その従業員に,そこでフォルクスワーゲンの新車を購入できないかを尋ねる者があった(甲163,証人Kが認めている。)。
(甲6,15,50,55,96,97,99ないし102,103の1~3,甲104の1・2,甲114,甲115,118,134,135,153の各1・2,甲154,155,156の1・2,甲163,乙12,16,証人K,証人H,証人C,原告代表者)
(7)本件更新拒絶通知前後の経緯
ア 被告担当者2名は,平成26年5月30日,本件東陽店舗を訪れ,当時の上記(6)ケの状態を確認した。また,被告は,同年7月9日,正面ガラスファサード全面に本件各商標のステッカーが貼られていることを覚知し,同月31日までに,本件東陽店舗の経営主体が被告であることを確認した。
(甲114,142,143,163,乙12,証人H,証人K,証人C。なお,被告は,フォルクスワーゲン従業員Hが,平成26年5月30日,本件東陽店舗に調査に訪問したとき,同店の従業員から,①同店舗では現在は中古車を扱っているが系列のフォルクスワーゲン葛飾から調達して新車販売をすることも可能であること,②近隣のフォルクスワーゲン東京深川が閉店する予定で,その後は本件東陽店舗が対応すること,③サービス工場は6月末から稼働予定であることを説明を受けたと主張し,甲114,乙12,証人Hも,これに沿う。しかし,甲163,証人Kは,これに反するので,この点の認定まではしないこととする。)。
イ 被告は,正規販売店の運営法人である原告が,フォルクスワーゲン商標を無断使用するなどして,顧客が正規販売店又は認定中古車センターと誤認するような店舗を開設することはおよそビジネスパートナーとしてはあり得ない,原告からの弁明や態度等で特に情状酌量の余地が無い限り,本件契約を終了すべきであると判断した。
そこで,被告は,原告に対し,平成26年8月5日付けで,フォルクスワーゲン葛飾の販売状況が平成20年のオープン以来長年に亘り低迷を続けていること,フォルクスワーゲンつくばの顧客満足度は全国のフォルクスワーゲン販売店の中で最低のレベルにあること,原告がフォルクスワーゲン東京深川の至近距離にフォルクスワーゲンの店舗DC(デザインコンセプト)に酷似した中古車店を展開しており,フォルクスワーゲン東京深川の後継店であると吹聴していることから,今後のフォルクスワーゲン事業からの撤退について検討するよう記載した通知書を送付した。
原告代表者Aは,平成26年8月19日,被告東京事務所を訪問し,D部長,地区担当部長O,P及び被告担当者Cと面談した。そこで,原告代表者Aは,被告又は被告担当者Cの承認を得ていたとの話しは一切せず,フォルクスワーゲンブランドを傷つけなければよいとの判断で本件東陽店舗を単独出店した,本件東陽店舗は正規販売店に似ていない,本件東陽店舗の出店はフォルクスワーゲンにおけるルールには反していないとして謝罪や反省の弁は述べず,本件契約を継続して欲しいと答えた。被告側は,原告代表者Aから受けた説明に,本件東陽店舗出店を正当化する事情や宥恕すべき事情はないと判断した。そこで,D部長は,原告代表者Aに対し,正規販売店の運営法人である原告が,VWロゴを含むフォルクスワーゲン商標を無断使用し,顧客が正規販売店と誤認するような店舗を開設することはおよそビジネスパートナーとしてあり得ないと述べ,「店舗正面に当社に無断でフォルクスワーゲン商標を提示し,顧客をして当社の承認に基づき設置されたフォルクスワーゲン正規販売店と誤認混同を生じさせる店舗(以下「当該店舗」)を運営している」とした上で,本件契約25条による無催告解除も検討したが,円満な形で解決するために,本件契約を平成27年12月31日の契約期間満了日を以て終了させることを申し入れることを伝えると共に,平成26年8月19日付けの同趣旨の通知書を交付し,フォルクスワーゲン事業終了に際し,本件東陽店舗を含む店舗施設の第三者への転売若しくは転貸並びに引き続きフォルクスワーゲンブランドに関わることを希望する従業員の移籍斡旋等のサポートをする用意があることを記載した通知書を交付した。
原告は,平成26年8月5日付け通知書及び同月19日付け通知書を受領した後も,本件東陽店舗の経営を継続したが,上記通知書を受けて,ステッカーは剥がした。
原告は,同年9月19日付け回答書で,被告に対し,正規販売店と誤認混同を生じさせようとの意図は全くないステッカーの貼付に過ぎないが,被告の指摘を受け剥がした,ステッカーの貼付自体被告との信頼関係を破壊する行為とは考えられないが,撤去している以上被告との継続的契約関係を毀損するものとも考えられず,通知のような契約終了予告は到底承服できない,契約の継続をお願いしたいとの回答書を送付した。なお,原告側は,本件仮処分の申立てまで,被告担当者Cが本件東陽店舗の出店を承認し,後押しをした旨の主張はしていない。
被告は,同月30日,上記回答書に対し,フォルクスワーゲン正規販売店と誤認される本件東陽店舗を設置すること自体が問題であり,事の重大性を理解いただけなかったこと誠に遺憾であるなどとして,遅くとも平成27年12月31日までに本件契約を終了させ契約上の権利を行使する所存であると連絡した。
被告は,原告に対し,同年2月10日付けで,原告に対し,同年12月31日をもって本件契約を更新せずに,期間満了により終了させる旨の通知を送付した(本件更新拒絶)。
被告は,原告から本件契約期間の延長ができないかと打診されたため,同年3月13日,フォルクスワーゲン葛飾の店舗施設を適正価格で被告の指定する販売会社に対し譲渡又は転貸することを条件に1年間延長することを内容に含む解釈合意書の締結を提案したが,原告は,回答せず,平成27年6月,東京地方裁判所に,主位的請求にかかる権利を有することを仮に定める旨の命令を求める仮処分の申立て(平成27年(ヨ)第1936号)をした。
(甲6,16,17,19ないし21,26,50,127,158の1,甲164,乙16,証人C,原告代表者)
ウ 原告は,平成26年12月,本件東陽店舗を閉店し,子会社を設立し,その子会社は,平成27年4月18日,本件東陽店舗所在地で,イタリア製の高級車であるマセラティを販売するマセラティ江東を出店した。
週間Car&レジャーを発行している株式会社カーアンドレジャーニュースの取締役は,マセラティ江東が出店するに際し,同紙に記事を書いたが,その記事に関連するレポートを書く際,その前身である本件東陽店舗について取材をし,そこではフォルクスワーゲン車を取り扱っていたと聞いたため,推測の上,レポート中では本件東陽店舗をフォルクスワーゲン江東と表現し,マセラティ江東には,建物外観やショールームはフォルクスワーゲン店舗の名残があると記載した。
(甲105,106,107の1・2,甲108,116,164,原告代表者)
(8)他店でのVWロゴ等のフォルクスワーゲン商標の使われ方
被告等の権利者の承認がないのに,中古車販売店においては,VWロゴ,フォルクスワーゲン商標を含めた輸入車両の商標が多く用いられており,中古車販売店向けに,それらの記載された陣旗等が販売されている。
もっとも,VWロゴ等のフォルクスワーゲン商標が用いられる中古車店舗においては,フォルクスワーゲン自動車のほか他の輸入自動車など複数のブランドの自動車が扱われていて,フォルクスワーゲンのみならず,他の輸入自動車の商標が並立的に用いられていることが多かった。
被告の100%子会社であるフォルクスワーゲンジャパン販売会社が運営する中古車店で,後に認定中古車店となったものにおいて,VWロゴ等のフォルクスワーゲン商標が用いられていた。
(甲69の1~16,甲70,93,103の1)
(9)フォルクスワーゲン販売店のその後
平成18年9月から平成27年6月までに閉店したフォルクスワーゲン販売店48店舗のうち35店舗はそれまでの経営主体の他ブランドの販売店やサービス施設として,残りの13施設のうち12施設も第三者に利用されている(甲117)。
(10)フォルクスワーゲン東京深川の帰趨
フォルクスワーゲン東京深川は閉店していないものの,平成29年1月から運営主体がヤナセヴィーグルワールド株式会社に変更することとなった(甲167の1)。
(11)フォルクスワーゲン葛飾の販売実績及びフォルクスワーゲンつくばの顧客満足度
フォルクスワーゲン葛飾の平成24年から平成26年の年間販売実績は,販売台数順位が,それぞれ全248店舗中228位,全251店舗中219位,全251店舗中217位,目標達成率は全国平均94.2%のところ65.5%,98.8%のところ74%,95.4%のところ70.4%であった。
フォルクスワーゲンつくばは,平成25年6月に顧客の満足度が低い40店舗に選ばれ,そのころ顧客満足度が全国243店舗中241位とされたため,後者に関し,同年8月26日までに改善のためのシート提出を求められたが,提出しなかった。
(甲122,138,139の1・2)
2  当裁判所の判断
(1)主位的請求に予備的請求が包含されているので,当裁判所は形式的には主位的請求について判断することとし,その中で,予備的請求における原告の主張を判断することとする。
(2)本件契約の更新拒絶に実体的要件が付されていないことからすると,その有効性を判断するには,被告が主張するとおり,それが信義則に則って効力が否定されるべきかが判断されるべきと解される。そして,その判断に際しては,原告が主張するとおり,信義則に反することを根拠付けるべき事情である契約維持についての原告の要保護性と,信義則に反することを否定すべき事情である被告にとっての契約終了の必要性との比較衡量によって決すべきである。
そこで,信義則に反することを根拠付けるべき事情が認められるかであるが,前記前提事実及び認定事実によれば,①本件契約は当初3年間の期間が定められ,1年毎に更新するという形式を採っているものの,自動車メーカーと正規販売店間の契約であって,事の性質上,正規販売店において多額の資本投下が予定されるもので,現に原告においても多額の資本投下をしていること,②本件契約自体(本件契約書前文)に継続的であることを前提とする規定があること,③本件契約が締結されてから本件更新拒絶までは約3年半であるが,原告においては約16年の被告の100%親会社であるフォルクスワーゲンAGの我が国での販売網における正規販売店として契約実績があること,④本件契約の更新が拒絶された際,原告はその総売上げの約15%を占めるフォルクスワーゲン事業からの撤退を余儀なくされ,フォルクスワーゲンつくば,フォルクスワーゲンつくば認定中古車センター及びフォルクスワーゲン葛飾の施設の転用及び従業員の配転に多額の経済的負担をするばかりか,特に原告の本店所在地近くにあるフォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲンつくば認定中古車センターが閉店したときは,原告の主たる事業であるトヨタ自動車の販売にも悪影響があることは容易に推測できること,⑤企業規模は原告より被告が著しく大きく,被告は世界的な自動車ブランドを冠するフォルクスワーゲン製品の我が国の独占輸入事業者であって,原告がフォルクスワーゲン事業を継続するには,本件契約の更新が必須であって,他方,被告は,二百数十の正規販売店を有し,本件契約における地位は原告より被告が強いこと,⑥被告が主たる本件更新拒絶事由として主張する本件東陽店舗の出店に対して,少なくとも,被告担当者Cは,原告においてモジュラーコンセプトにある程度似せた店舗の出店を画策していることを知っていた又は知り得たものであるのに,積極的に止め続けたとまでは認定し難いこと,⑦原告は,本件東陽店舗を被告の正規販売店に転換するために,それまで本件東陽店舗において,フォルクスワーゲンの非認定中古車をつなぎとして販売しようとの意図を有していて,本件東陽店舗は,正規販売店や認定中古車店と同規模のものであったとまでは認め難いこと,⑧被告において,原告の本件東陽店舗の営業を止めるよう催告した上で更新拒絶をしたものではないことが認められ,これらは,本件更新拒絶が信義則に反すべき根拠となる方向に働く事情である。
しかし,信義則に反するとの判断を減殺すべき事情として,前記前提事実及び認定事実によれば,次の事情が認められる。即ち,①原告は,本件各商標使用を行ったが,それについては,被告の正式な合意も被告担当者Cの事実上を含めた承認は一切なかった。そして,被告,その100%親会社であるフォルクスワーゲンAG並びにそのグループ企業は,全世界において,商標を大切に守り,我が国でも商標登録をしていて,本件契約においても10条でアイデンティフィケーションを確保するため,商標を用いるべき場所と方法などを定めているのに,原告は,その定められた場所も方法も守らず,本件東陽店舗においてそれらを用いていたものであって,この本件各商標使用だけを取り上げても,同条に違反し,本件契約25条5号,8号に該当し,無催告解除が許されることも十分ありうる行為である。②ましてや,本件東陽店舗においては,フォルクスワーゲンの中古車しか販売しておらず,経営主体の表示がほとんどないに等しく,本件東陽店舗がモジュラーコンセプトに似せたものであることも相まって,細かな仕様や営業形態が被告のモジュラーコンセプトや正規販売店又は認定中古車店に合致していなかったものではあるが,モジュラーコンセプトや正規販売店及び認定中古車店の詳細を知らない一般人にとっては,被告の正式な承認を得た店舗と誤認混同すべきものとなっていたことは明らかであり,現に,誤認混同が起きていたものであるから,本件東陽店舗の出店及び営業継続は,本件契約の趣旨に著しく反するものといわざるを得ない。これらのことは,既に指摘した,原告自身が,最終的に正式な正規販売店となるためのつなぎとして営業しようとの意図を有していたことによっては,払拭されない。なぜならば,その意図が,客観的な経営主体の誤認混同を招来する危険性を左右するものではないからである。次に,本件東陽店舗の営業の実態や建物等の詳細が正規販売店とは異なったことによっても左右されない。なぜならば,正規販売店と異なる点があるのに,全体として誤認混同される店舗は,かえって,フォルクスワーゲンのブランドコンセプトを害する面もあるからである。そして,積極的に本件東陽店舗を被告の正式な承認を得た店舗と誤認混同させようとの意図を有していなかったとしても,それは,原告の行為を正当化すべき事情とはならない。なぜならば,上記の客観的な態様からすると,誤認混同が起こり得ることは明らかであるのに,それに気付かないとすれば,故意に比肩すべき重過失があるというべきであって,原告において,今後の,本件契約の遵守の期待ができるかに危惧さえ生じるからである。なお,原告は,他でもフォルクスワーゲン商標が違法に用いられている例があり,それに対して,被告が対応をしていないことからすると,原告の本件各商標使用はそれほど悪質ではないと主張する。しかし,被告においてフォルクスワーゲン商標の違法な使用者にすべて平等に対応する義務があるかをさておくとしても,原告が指摘する使用例と本件東陽店舗の外観とを比べると,前者においては,フォルクスワーゲン商標を用いているものの,他業者の自動車の販売をした上で,他業者の商標も用いていたり,店名を表示したりして,フォルクスワーゲン正規販売店又は認定中古車店との誤認混同を招来する危険性は乏しいものであるのに,本件東陽店舗は,上記で指摘するように誤認混同を招来する要素が多々あり,現に誤認混同が起きていたものであるから,質が異なる。また,原告は,被告の100%子会社においてもフォルクスワーゲン商標の無断使用が行われていたと主張するが,それが無断であったとの立証はなく,また,被告の100%子会社と一販売店である原告と立場が異なるので,フォルクスワーゲン商標の使用方法の定めについて被告の対応が異なることも十分あり得るから,被告と100%子会社に対する対応と原告に対する対応に違いがあったとしても,被告の原告に対する対応の効力を否定すべき事情にはならない。
また,③原告は,平成26年8月5日付け通知書等で被告側から本件東陽店舗の出店と営業の問題を指摘された後も,ステッカーについて直ちに外した以外に積極的に是正措置はとらず,同年12月まで,本件東陽店舗の営業を続けるばかりか,原告代表者Aにおいては,同年8月19日のD部長らとの面談の際や同年9月19日の回答書において,被告に対し本件東陽店舗の出店及び継続には問題はないと反論をしていたものであって,本件東陽店舗の出店及び営業継続の問題性への自覚が乏しい。
さらに,④被告において当時は指摘をしていなかったが,原告は本件東陽店舗においてフォルクスワーゲン葛飾の従業員を就業させており,本件契約3条2項3号で定めるコーポレートセパレーションにも違反しており,このことも,本件契約の趣旨に著しく反する点である。
これらの点を総合すると,上記の信義則に反すべき根拠となる方向に働く事情を最大限斟酌してもなお,被告のした本件更新拒絶は信義則に反して無効であるとは認められず,原告の請求は理由がない。
(3)また,原告は,本件契約は,フォルクスワーゲン葛飾に関する部分とフォルクスワーゲンつくば及び認定中古車センターに関する部分とが可分であることを前提に,仮に,本件更新拒絶が有効であるとしても,本件東陽店舗の責任区域内である前者についてのみである旨を主張する。
そこで判断するに,甲1,121によると,本件契約は一通の契約書で結ばれているものであって,新たに正規販売店や認定中古車センターを出店するにあたっては,本件契約書の別紙1に追加する形で行われること,その際,その期間については,従前の契約の期間が維持されること,本件契約中に一部店舗についての更新拒絶の規定がないことに鑑みると,少なくとも,更新拒絶の場面においては,本件契約は不可分であると解することが相当である。
なお,仮に,本件契約の更新拒絶について,正規販売店(それに付されている認定中古車センターも含む)ごとに可分であるとの見解を採用したとしても,本件で問題となっている更新拒絶事由は,各正規販売店又は認定中古車センター固有の各店舗の問題にとどまる事情を根拠とするものではなく,各店舗の問題にとどまらない原告の行為を問題とするものであって,かつ,本件東陽店舗の出店及びその営業継続の意味は上記(2)記載のとおり,本件契約全体の趣旨に著しく反し,また原告の属人的問題を示すものであるから,フォルクスワーゲンつくば及びフォルクスワーゲンつくば認定中古車センターに限って,本件更新拒絶について信義則に反し無効ということもできない。
したがって,この点の原告の請求も理由がない。
3  よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第50部
(裁判長裁判官 水野有子 裁判官 岡本利彦 裁判官 仲吉統)

 

〈以下省略〉

 

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