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「営業支援」に関する裁判例(90)平成23年 4月14日 東京地裁 平21(ワ)47730号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(90)平成23年 4月14日 東京地裁 平21(ワ)47730号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成23年 4月14日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)47730号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  認容  上訴等  控訴  文献番号  2011WLJPCA04148014

要旨
◆有価証券の運用等を目的としながらも証券業の登録を受けていない訴外会社から、株式を公開していない被告会社の株式を購入した原告が、被告会社並びにその取締役である被告Y1及び被告Y2に対し損害賠償の支払を求めた事案において、被告会社は訴外会社が株式を一般投資家に違法に販売することを容易に認識し得たし、取締役である被告Y1及び被告Y2も被告会社の業務を適正に執行する義務を故意又は重大な過失によって怠っていたと認められるとして、原告の請求を認容した事例

裁判経過
上告審 平成25年 3月21日 最高裁第一小法廷 決定 平23(オ)2161号・平23(受)2481号 損害賠償請求上告事件
控訴審 平成23年 9月14日 東京高裁 判決 平23(ネ)3459号 損害賠償請求控訴事件

参照条文
民法709条
民法719条
会社法350条
会社法429条1項

裁判年月日  平成23年 4月14日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)47730号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  認容  上訴等  控訴  文献番号  2011WLJPCA04148014

東京都府中市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 中村昌典
同 村田明彦
東京都台東区〈以下省略〉
被告 株式会社松村テクノロジー
同代表者代表取締役 Y1
東京都江戸川区〈以下省略〉
被告 Y1
山形県米沢市〈以下省略〉
被告 Y2
被告ら訴訟代理人弁護士 河合弘之
同 松井清隆
同 昼間由真
同訴訟復代理人弁護士 上田晃一朗

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,各自,896万5000円及びこれに対する被告株式会社松村テクノロジー及び被告Y1は平成22年1月10日から,被告Y2は同年3月12日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告らの負担とする。
3  この判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要等
本件は,有価証券の運用等を目的としながらも証券業の登録を受けていない会社から,株式を公開していない被告株式会社松村テクノロジー(以下「被告会社」という。)の株式を購入した原告が,被告会社に対し,被告会社においても自己の発行した株式が原告等の一般消費者に違法に販売されることを認識し得たなどと主張して,上記会社との共同不法行為に基づき,被告会社の株式を購入したことによって原告が被った損害の賠償を請求するとともに,その当時被告会社の取締役であった被告Y1(以下「被告Y1」という。)及び被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対し,取締役の第三者責任に基づき,同額の賠償を請求した事件である。
1  前提となる事実
当事者間に争いがないか,証拠(個別に掲記する。)により認定できる本件の前提となる事実は,次のとおりである。
(1)  当事者等
ア 被告会社は,マイクロコンピュータシステム機器並びにその部品の設計,開発,製造,販売,リース,輸出入等を目的とし,平成15年8月8日,資本金1000万円,発行済み株式総数200株で,被告Y1ないしその親族が株主となって設立された株式会社である(甲19,乙12)。
被告会社は,平成20年3月3日までは,被告会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を受けることを必要とし,同日以降は,被告会社の株式を譲渡するには株主総会の承認を受けることを必要としており,現在まで,いかなる株式市場にも株式を上場していない。
イ 被告Y1は,設立以来被告会社の代表取締役であり,被告Y2は,平成16年10月31日から平成20年3月3日まで,被告会社の取締役であった。
ウ 分離前の相被告株式会社アイディジャパン(以下「IDJ」という。)は,有価証券の保有並びに運用業務等を目的とする株式会社であるが,「証券取引法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第65号)による改正前の証券取引法(以下「旧証券取引法」という。)28条の定める証券業の登録を受けていなかった(弁論の全趣旨)。
株式会社サクセスジャパン(以下「サクセスジャパン」という。)は,IDJの系列会社である(被告Y1本人,弁論の全趣旨)。
(2)  被告会社とIDJとの関係等
ア 被告会社とIDJとは,被告会社が製造する多通貨紙幣鑑別機の独占的販売権をIDJが取得することに合意し,平成16年1月19日,独占的販売権に関する基本取引契約を締結した(乙1)。
イ 被告会社とIDJとは,同年4月27日,上記アの独占的販売権に関する基本取引契約を一部変更する合意をした(乙2)。
ウ 被告会社とIDJとは,被告会社が製造するセキュリティーシール等の独占的販売権をIDJが取得することに合意し,同年7月28日,独占的販売権に関する基本取引契約を締結した(乙4)。
エ IDJは,同年11月26日,被告会社に対し,5000万円を振り込み,サクセスジャパンは,同日,被告会社に対し,2000万円を振り込んだ(乙13の1)。
オ サクセスジャパンは,同月29日,被告会社に対し,3000万円を振り込んだ(乙13の1)。
カ IDJは,同年12月6日,被告会社に対し,5000万円を振り込んだ(乙13の2)。
キ IDJは,同月21日,被告会社に対し,1億円を振り込んだ(乙13の2)。
ク サクセスジャパンは,平成17年2月18日,被告会社に対し,7500万円を振り込んだ(乙13の3)。
ケ 被告会社は,同年3月23日,同年1月27日に100分の1の株式分割を行って発行済み株式総数を2万株とした旨の登記をした(甲19,乙12)。
コ IDJは,同年3月25日,被告会社に対し,1億2500万円を振り込み,サクセスジャパンは,同日,被告会社に対し,7500万円を振り込んだ(乙13の4)。
サ 被告会社とIDJとは,同日,アイディジャパン投資事業有限責任組合を引受人として被告会社が実施する第三者割当増資の実施手順に関する覚書を取り交わし,その中で,IDJが被告会社に対して①平成16年11月26日に5000万円,②同年12月6日に5000万円,③同月21日に1億円,④平成17年3月25日に1億2500万円,⑤同年4月20日に2億2500万円を振り込むこと,被告会社は①ないし④の振込みについては受領済みであること,被告会社は①及び②の振込みに対しては各500株,③及び④の振込みに対しては各1000株,⑤の振込みに対しては1500株を割り当てることを確認した(乙14)。
また,被告会社とサクセスジャパンとは,同年3月25日,サクセスジャパン投資事業有限責任組合を引受人として被告会社が実施する第三者割当増資の実施手順に関する覚書を取り交わし,その中で,サクセスジャパンが被告会社に対して①平成16年11月26日に2000万円,②同月29日に3000万円,③平成17年2月18日に7500万円,④同年3月25日に7500万円を振り込むこと,被告会社はすべて受領済みであること,被告会社は①の振込みに対しては200株,②の振込みに対しては300株,③及び④の振込みに対しては各500株を割り当てることを確認した(乙15)。
シ 被告会社は,同年4月11日,従前からの株主であった被告Y1ないしその親族に対し,発行価額を1株500円として6000株の新株を割り当てて発行し,資本金を1300万円に増資した(甲19,乙12)。
ス 被告会社は,同月19日,取締役会を開催し,①無議決権株3000株を,1株当たりの発行価額を10万円,資本に組み入れない額を5万円,払込期日を同年5月27日として,アイディジャパン投資事業有限責任組合に2500株,サクセスジャパン投資事業有限責任組合に500株各割り当てて発行すること,②無議決権株3000株を,1株当たりの発行価額を15万円,資本に組み入れない額を7万5000円,払込期日を同年6月17日として,アイディジャパン投資事業有限責任組合に2000株,サクセスジャパン投資事業有限責任組合に1000株各割り当てて発行すること,③定款を一部変更し,発行する株式の総数を8万株として,そのうちの7万株を普通株式,1万株を無議決権株式とし,普通株式が証券取引所に上場されることが決定した場合には,無議決権株式1株に対し普通株式1株の割合で転換することなどを決議した(乙16)。
セ IDJは,同年4月20日,被告会社に対し,2億2500万円を振り込んだ(乙13の5)。
ソ 被告会社は,同年5月9日,臨時株主総会を開催し,上記スの取締役会決議を承認した。
タ 被告会社は,同月27日,1株当たり10万円の発行価額で,アイディジャパン投資事業有限責任組合に対して2500株,サクセスジャパン投資事業有限責任組合に対して500株の合計3000株の無議決権株式を発行し,資本金を1億6300万円に増資した(甲19)。
チ 被告会社は,同年6月17日,1株当たり15万円の発行価額で,アイディジャパン投資事業有限責任組合に対して2000株,サクセスジャパン投資事業有限責任組合に対して1000株の合計3000株の無議決権株式を発行し,資本金を3億8800万円に増資した(甲19)。
2  当事者の主張(IDJの違法な被告会社株式の販売に対する被告会社の認識ないし認識可能性について)
【原告の主張】
(1) IDJの不法行為
ア IDJと原告との被告会社株式取引の経緯等
(ア) IDJの社員は,平成16年12月ころ,原告に対し,被告会社は紙幣鑑別機で有名な会社であり,現在は上場していないが,4年で上場する予定であって,上場すれば莫大な利益を得ることができるなどと告げた上,被告会社の代表者である被告Y1の挨拶文が掲載されたIDJ作成のパンフレットを交付し,IDJが被告会社に出資するに当たり,被告Y1は被告会社が4年で上場すると断言していると言って,被告会社の株式を購入するよう勧誘した。
(イ) 原告は,IDJの社員の説明を信じ,同月15日,被告会社の株式10株を300万円で購入する旨のIDJあての株券購入申込書を作成し,同月17日,IDJに対し,300万円を振り込んだところ,IDJから,「松村テクノロジーIDJ10号投資事業組合出資証券10口券」の交付を受けた。
(ウ) 原告は,IDJの社員から更に勧誘を受け,平成17年2月8日,被告会社の株式10株を300万円で購入する旨のIDJあての株券購入申込書を作成し,同日,IDJに対し,300万円を振り込み,IDJから,「松村テクノロジーIDJ10号投資事業組合出資証券10口券」の交付を受け,また,同年4月27日,IDJに対し,215万円を振り込み,IDJから,「松村テクノロジーIDJ15号投資事業組合出資証券5口券」の交付を受けた。
(エ) その後,IDJは,原告に対し,被告Y1の講演ビデオや投資事業報告書,組合員総会議事録等を送付した。
ところが,原告は,平成21年7月ころ,IDJが破綻したとの噂を聞き,IDJに対して連絡を取ろうとしたが,連絡がつかなかった。
そして,被告会社は,平成18年7月期において,1億9300万円余の損失を計上しており,1株当たりの純資産は1万7908円余にすぎない。加えて,原告が被告会社の株式を購入してから4年以上が経過しているが,被告会社は,株式の上場を果たしていない。
イ IDJの行為の違法性
(ア) 株式取引は,その態様が売買か仲介か,対象商品が上場されている株式か未上場の株式かを問わず,営業目的で行うには内閣総理大臣の登録を要するものとされ(旧証券取引法28条),それに反して無登録で営業を行った場合には,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科という刑罰が科せられる犯罪行為とされる(同法198条11号)。
その上,日本証券業協会は,未公開株式取引が法の目的に反するおそれがあることから,登録を受けた正規の証券会社であっても,いわゆるグリーンシート銘柄を除く未公開株式の取引を原則として禁止している。
(イ) しかるに,IDJは,原告に対し,あたかも正規の業者であるかのように装って振る舞った上,上場したあかつきには何倍もの利益が得られるとの断定的判断を提供して原告を欺罔し,登録を受けた証券会社であっても原則として取り扱えない未公開株式である被告会社の株式を,本来的価値に比して著しく高額で原告に売りつけたのであるから,その行為は詐欺に該当するものであり,原告に対する不法行為となる。
もっとも,本件において,原告は,被告会社の株式そのものではなく,「松村テクノロジーIDJ投資事業組合出資証券」の出資口数を購入したことになっているが,原告がIDJあての「株券購入申込書」を作成し,IDJがこれを受領していることからも明らかなとおり,実体は未公開株式の取引そのものであるが,IDJが旧証券取引法違反となることを形式的に免れようと企て,原告の支払をもって投資事業(有限)責任組合への出資という形態にしたためにこのような形式になっているのであって,さしたる価値のない未公開株式を多大な価値があるもののように装って売りつける行為が公序良俗に反するものとして不法行為を構成することは自明であるから,この形式によってIDJの行為の違法性が失われるものではない。
(2) 被告会社の認識又は認識可能性
IDJは,被告会社から被告会社の未公開株式を入手することができなければ,原告に対する上記(1)のとおりの不法行為を行えなかったのであるから,被告会社によるIDJへの株式の発行と原告の損害との間には因果関係があるところ,以下のとおり,被告会社は,IDJが被告会社の未公開株式を違法に販売していることを認識していたか,少なくともIDJが被告会社の未公開株式を違法に販売していることを認識し得たものであるから,被告会社がIDJに対して漫然と株式を発行したことについて,被告会社は,原告に対し,(共同)不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
ア 原告は,上記(1)ア(ア)のとおり,平成16年12月にIDJの社員から,被告会社は4年以内に上場予定であり,上場により莫大な利益を受けることができるなどとして,被告会社の株式購入の勧誘を受けたものであるが,少なくともこの時点までには勧誘資料や申込手続に必要な書類が多数用意されていたと想定されることから,IDJによる勧誘の準備は相当以前から始められていたものと考えられる。
イ ところで,被告会社は,平成16年1月に独占的販売権に関する基本取引契約を締結した数か月後から,IDJから再三にわたって資本参加したいとの申入れを受けていたがこれを断っていたところ,同年11月26日になって,突然,IDJから5000万円及びサクセスジャパンから2000万円が振り込まれたと主張する。
しかし,そもそも資本参加について何の話もない段階で突然7000万円もの振込みがされるなどということは考えられず,IDJの資本参加については,被告会社が内々に了承していたと想定されるところである。
また,被告会社は,資本金が1000万円にすぎない同族会社ではあるものの,将来株式の上場を考えているというのであるから,そのような被告会社に対して資本参加の申入れがされたとすれば,被告会社としては,当然に申入れをしてきた会社がどのような会社かについて重大な関心を持ち,将来にわたって友好,協調関係を築ける信用できる会社であるか,背後に反社会的勢力が関係していないかなどに関して調査することが普通であるし,仮に被告会社が資本参加の申入れについて何らの了承もしておらず,IDJからの振込みが予期しないものであったとしても,資本参加について何の条件も決まらないうちに多額の金員を振り込んでくる会社というのは,いかに継続的取引関係にある会社であっても異常であるから,通常の経営者であれば,その会社の背後関係を含めた信用調査や専門家への相談を行うものである。
そして,被告会社がIDJについて調査を行ってさえいれば,IDJが既に被告会社の未公開株式を販売する準備を整えていたことに照らしても,IDJやサクセスジャパンが上場すると称して一般投資家を無差別に勧誘しては被告会社の株式等の未公開株式を高額な値段で売りつける詐欺的商法をしていることが直ちに判明したはずである。
したがって,平成16年12月ころの時点において,少なくとも被告会社にはIDJの違法行為について認識可能性があったというべきであり,この時点で被告会社がIDJに被告会社の株式を発行することがないように適切に対処していれば,原告は損失を被ることはなかったものである。
ウ 原告がIDJの社員から被告会社の株式の購入について2回目の勧誘を受けた平成17年2月上旬ころまでに,被告会社は,IDJ及びサクセスジャパンから2億5000万円の振込みを受けている一方,同年1月27日に100分の1の株式分割を行って発行済み株式総数を200株から2万株に変更し,IDJから出資を受けても被告Y1が被告会社の支配権を維持し得るように対処しているから,被告会社がIDJと協議をしながら着々と資本参加の準備を整えていたことは明らかである。
そうすると,このような段階に達するまで被告会社がIDJの調査や専門家への相談をしていなかったとは考え難いし,仮に何らの調査等を行っていなかったとすれば,企業の経営の在り方として極めて杜撰であったといわざるを得ない。
したがって,IDJの違法行為について,平成17年2月ころの時点で被告会社に認識又は認識可能性があったことは明白である。
しかるに,被告会社は,IDJとの関係を断ち切り,既に被告会社の株式を購入させられていた原告を含む一般投資家に対して広告,告知をするなどの手段をとることなく,IDJに対して株式を発行する手続を進め,原告は,更に被害を被ることになったのである。
エ 原告がIDJの社員から被告会社の株式の購入について3回目の勧誘を受けた平成17年4月下旬ころまでに,被告会社は,IDJ及びサクセスジャパンから更なる振込みを受け,同年3月25日にはIDJ及びサクセスジャパンとの間で被告会社の株式の発行について覚書を締結し,同年4月11日には被告Y1及びその親族に被告会社の株式を追加発行し,同月19日に取締役会を開催して無議決権株式の発行に関する決議をしている。被告は,「安定株主作り」を目的にIDJ及びサクセスジャパンに対して無議決権株式を発行したと主張しているのであるから,この時点までに,「安定株主作り」であれば必須の手続であるはずのIDJの調査や専門家への相談を終えていたものと思われる。
ましてや,被告会社の株式の割り当てを受ける株式引受人がIDJやサクセスジャパン自体ではなく,不特定多数の者の資本参加が予定される「投資事業有限責任組合」であったのであるから,それがどのように運営されるのか,経営者としては重大な関心を持たざるを得ないはずであるし,そもそも,公開の目処すら立っていない同族会社である被告会社の株式を,実勢価格の何百倍もの価額で引き受けながら,経営に参加し得ない無議決権株で良いという常識では考えられないほど出資者側(IDJ及びサクセスジャパン)には不利で被告会社にとっては願ってもないほどの有利な条件が提示されたのであるから,通常の経営者であれば,IDJの真意や目的について疑念を抱くことが普通である。
そして,被告会社がIDJについて調査をすれば,直ちに,IDJの目的が,不特定多数の一般投資家に対して被告会社の未公開株式をより高額で売りつけて差額を取得すること以外にないことが判明したはずである。
したがって,どんなに遅くとも,被告会社が正式に取締役会で決議をする前に,専門家に相談し,又は,IDJに対する調査を行う必要があったのであるから,この取締役会の時点(平成17年4月19日)までに,被告会社には,IDJの違法行為について認識又は認識可能性があったというべきである。
しかるに,被告会社は,何らの手段も講じなかったため,原告は,更に被害を被ったばかりか,早期に被害回復を図る機会をも逸してしまった。
(3) 被告Y1及び被告Y2の責任
被告Y1及び被告Y2は,原告がIDJに対して被告会社の株式を購入するための金員を支払った当時,被告会社の代表取締役又は取締役として,被告会社の業務に関して監視監督義務を負っていたが,これを故意又は重大な過失によって怠り,被告会社の未公開株式を違法に販売したIDJへの被告会社の株式の発行を止めなかったのであるから,原告に対し,平成17年法律第87号による改正前の商法266条ノ3に基づき,原告が被った損害を賠償する責任を負う。
(4) 原告の損害
ア 原告が被告会社の株式購入名下にIDJに支払ったものの,その返還を受けられないために被った損害は,合計815万円である。
イ 原告は,被告らに対し,上記金員の支払を求めるため,弁護士に委任して本訴を提起したが,その弁護士費用である81万5000円は,被告らの不法行為と相当因果関係のある損害である。
ウ したがって,原告の損害は,合計896万5000円となる。
(5) まとめ
よって,原告は,被告会社に対しては,(共同)不法行為に基づく損害賠償として,被告Y1及び被告Y2に対しては,取締役の第三者責任に基づき,各自,896万5000円並びにこれに対する各訴状送達の日の翌日である被告株式会社松村テクノロジー及び被告Y1については平成22年1月10日から,被告Y2については同年3月12日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
【被告らの主張】
(1) IDJの不法行為について
原告がIDJから被告会社の株式ないし「松村テクノロジーIDJ投資事業組合出資証券」の出資口数を購入した経緯は不知であるが,積極的に争うものではなく,また,IDJの行為が原告に対する不法行為を構成するかどうかについては,認否の限りでなはい。
(2) IDJが被告会社の株式を原告に販売することについて被告会社には認識又は認識可能性がなかったこと
以下のとおり,被告会社には,IDJが被告会社の未公開株式を違法に販売していることを認識したり,IDJが被告会社の未公開株式を違法に販売していることを認識し得た可能性はなかったのであるから,原告の主張は,失当である。
ア 原告は,平成16年11月26日にIDJから5000万円及びサクセスジャパンから2000万円が被告会社に振り込まれたことについて,被告会社がIDJの資本参加を内々に了承していたと主張する。
しかし,被告会社が同日までにIDJに対して資本参加を了承した事実はなく,被告会社がIDJと第三者割当増資について協議をしたのは平成17年3月25日であり,この時点でも,発行する株式の種類を無議決権株とすることまでは決定されていなかったのであって,上記振込みは,突然されたものにほかならない。
イ 原告は,資本参加の申入れを受けたとすれば,被告会社としてはその会社がどのような会社であるか調査するのが普通であり,そうすればIDJが違法行為をしていることが直ちに判明したはずであると主張する。
しかし,資本参加の申入れを受けた会社が申入れをした会社について調査をしなければならないという法令上の義務は存在せず,原告の主張は,その前提において失当である。
その上,原告の主張は,独占的販売権に関する基本取引契約に基づいて反復継続して行われていた被告会社とIDJとの取引を看過したものである。すなわち,被告会社は,平成16年から平成18年にかけて,IDJに対し,多通貨紙幣鑑別機1000台を納入したほか,他の製品についても注文を受けてそれを各地に納入していた。そして,両社は,製造元と総販売代理店という関係の下で,製品の取扱説明書や保証書の内容等について日々協議をしていた。したがって,被告会社としては,IDJは総販売代理店で重要な得意先であるという認識のみを有しており,IDJから資本参加の申入れを受けても,総販売代理店としての申入れであると認識し,IDJが投資家に対して出資募集の勧誘をしていることなどは知る由もなく,また,それについては何らの関心がなかったものである。
ウ 原告は,また,仮にIDJからの振込みが突然のことであったとすれば,それは異常なことであるから,被告会社としてはIDJの背後関係の調査や専門家への相談等を行うのが通常であると主張するが,そもそも専門家とはどのような者を指すのか明らかではないし,背後関係の調査の意味するところも曖昧である上,上記イのとおり,被告会社にはIDJの調査をすべき法令上の義務はないし,IDJを調査する動機も存在しなかったのである。
エ 原告は,さらに,被告会社が平成17年1月27日に100分の1の株式分割を行い,同年2月8日までのIDJ及びサクセスジャパンからの送金は2億5000万円に達していたから,被告会社がIDJと協議をして出資受入れの準備を整えていたとして,この時点で専門家に相談したり,IDJの調査を行ったりしているはずであると主張する。
しかし,上記株式分割は,被告会社において導入することが概ね決定していた従業員に対するストック・オプション対策としてされたものである。すなわち,被告会社は,ストック・オプションを導入することを決めていたが,被告Y1が被告会社の支配権維持に固執していたため,自己の支配権に大きな影響が及ばないように登記の日である同年3月23日の直前に株式分割を行うことを決め,日付を遡らせて登記をしたにすぎないのである。したがって,同年2月上旬ころに被告会社がIDJと協議をして出資受入れの準備を整えていた事実はないし,IDJに対する調査を行う必要性も全くなかった。
オ 加えて,原告は,被告会社が平成17年3月25日にはIDJ及びサクセスジャパンとの間で被告会社の株式の発行について覚書を締結し,同年4月19日には取締役会を開催して無議決権株式の発行を正式に決議しているのであるから,この時点で専門家への相談及びIDJに対する調査を終えていたはずであると主張する。
しかし,被告会社は,IDJをもって被告会社の製品販売のための営業支援をしてくれる会社であるという認識を持っており,実際にIDJは被告会社の総販売代理店であった。したがって,被告会社にはIDJに対する調査等を行う必要性は全くなかった。
カ 原告は,株式引受人がIDJやサクセスジャパンではなく,不特定多数の資本参加が予定される「投資事業有限責任組合」であったから,被告会社としてはそれがどのように運営されるのか重大な関心を持たざるを得ないはずであると主張する。
しかし被告Y1は,当時のIDJの代表者であったA(以下「A」という。)から,「投資事業有限責任組合」とはIDJの内部の一部門の類であるとの説明を受けてそれを信じていたため,その運営について関心を持たなかった。
その上,「投資事業有限責任組合」は,必ずしも個人投資家で構成されることを前提としていないから,「IDJ投資事業有限責任組合」という名称から,直ちに不当定多数の個人投資家が組合員であるとか,個人投資家から調達した資金が原資となっているなどと推認することはできず,ましてや,この名称から直ちにIDJの違法行為を知ることなどはできない。
キ 原告は,発行価額は高額であるのに,株式の種類は無議決権株という破格の好条件を提示されたのであるから,被告会社としては,IDJの真意を訝って調査検討したはずであるとも主張する。
しかし,IDJは,被告会社の総販売代理店であり,被告会社の重要な得意先であった。その上,発行する株式を無議決権株とすることは,被告会社が資本参加に当たってIDJに示した株券不発行及び株式譲渡制限維持と並ぶ三条件の一つであって,IDJから示された条件ではなかった。
ク そもそも,被告会社の株式の購入に関する独立行政法人国民生活センターへの最初の相談は平成17年12月なのであって,この時点で初めて被告会社がIDJの未公開株式の販売行為を認知することが可能となったといえるのであり,これ以前の時点では被告会社がIDJの違法行為を知り得なかったことは明白であるから,被告会社がIDJの調査をしていればIDJの違法行為が判明して原告の損害を防止し得たとの原告の主張は,客観的根拠を欠いている。
第3  当裁判所の判断
本件においては,前記第2の2【被告らの主張】(1)のとおり,IDJが未公開株式である被告会社の株式を原告に販売したことが違法であることは事実上当事者間に争いがないので,この事実を前提に,被告会社がIDJの違法行為に関与していたか,少なくともIDJが違法な行為に及ぶことを認識することができたのにそれを阻止しなかった過失があったかという点及び被告会社に責任があるとされる場合に被告Y1及び被告Y2に原告に対する被告会社の取締役としての第三者責任が生じるかという点につき,以下,判断する。
1  被告会社の責任について
(1)  IDJの資本参加に関する被告会社とIDJとの交渉の始期
ア 被告会社とIDJとの関係は,前記第2の1(2)のとおりであるところ,被告らは,平成16年11月26日に被告会社に対してIDJ及びサクセスジャパンから合計7000万円が振り込まれた事情について,同年1月19日の独占的販売権に関する基本取引契約締結以降,IDJから度々被告会社に資本参加したいとの要望を受けていたものの,被告Y1において被告会社に対する自己の支配権が維持できなくなることを懸念して断っていたにもかかわらず,被告会社の了承を得ることなく突然IDJ側が振り込んできたものであると主張し,被告Y1は,同旨の供述等をし,さらに,要旨,同日の振込み後,直ちにAに電話をしたところ,Aから出資金ですと言われ,非常に戸惑ったが,IDJは被告会社の総販売代理店だから出資を断ると友好関係に支障が生じるのではないかと考えて明確に断ることをせず,かつ,被告会社の他の誰にもIDJの資本参加の是非について相談することをしないまま,IDJ側が更に振込みを続けるのに任せ,IDJ側からの振込総額が5億2500万円に達した同年4月に至り,IDJとの資本提携に応じざるを得ないと考えてIDJ及びサクセスジャパンとの間で第三者割当増資に関する覚書を締結したが,覚書の作成日は日付を遡らせて同年3月25日とすることにした,IDJは被告会社の総販売代理店であり,重要な取引先であると認識していたから,株式を割り当てるに際して改めて調査をすることはしなかったと供述等する(乙18,被告Y1本人)。
イ しかしながら,製造元と総販売代理店の関係にあることと出資を受け入れて資本関係を持つこととでは全く異質の関係に立つことになるのであるから,いかにIDJが被告会社の製造した多通貨紙幣鑑別器を1000台購入し,さらに,その他の製品についても注文をしてくれる重要な得意先である販売代理店であったとしても(乙3,5,6),事前に何の協議もなかったもののIDJが一方的に資金を振り込んできたため,断ると関係に支障が生じるかと思ってIDJからの資本参加を受け入れることとしたとか,資本参加を強要するに等しいように一方的に資金を振り込んできたIDJについて,その意図や目的を含めて何らの調査もしなかったとか,他社からの資本参加を受け入れるか否かという被告会社の経営上重大な問題について,被告会社の誰とも相談しなかったなどという被告会社ないし被告Y1の対応は,調査義務に関する法令の有無を問うまでもなく,一般常識に反し,極めて不自然というべきである。
かえって,原告が平成16年12月にIDJから交付を受けた被告Y1の挨拶文が掲載されている被告会社のパンフレット(甲9)には,前記第2の1(2)チのとおり,平成17年6月17日に被告会社が実際に増資した資本金の額と一致する「資本金3億8千800万円(平成17年6月予定)」と記載されていること及び被告会社が同年1月27日には100分の1の株式分割をして発行済み株式総数を2万株と増やし,新株が発行されても被告Y1が被告会社を支配し得るような対応策を講じていることに照らすと,IDJ及びサクセスジャパンが平成16年11月26日に被告会社に対して合計7000万円の振込みをする以前から,被告会社とIDJとの間では,IDJの被告会社に対する資本参加に関する実質的な交渉が進められていたものであって,同日時点では,被告会社がIDJに株式を割り当てるなどして平成17年6月までに合計3億7800万円増資して資本金を3億8800万円とすることまでは少なくとも合意されており,上記振込みは,その合意に基づくものであったと認めることが合理的である。
被告らは,この点について,原告が交付を受けた被告会社のパンフレットはIDJが作成したもので被告会社はその内容について不知であり,また,株式分割は被告会社従業員に対するいわゆるストック・オプション対策として平成17年3月23日の直前に実施したもので,単に日付を遡らせて登記したものにすぎないと主張し,被告Y1は,その旨の供述等をする(乙18,被告Y1本人)。
確かに,原告が交付を受けた被告会社のパンフレットはIDJが作成したことについては原告も認めている(訴状3頁)ものの,被告らの主張するとおり,その記載内容について被告会社は何ら関与しておらず,当該パンフレットが作成された平成16年12月以前の時点ではIDJから資本参加を受ける話自体が存在していなかったとすれば,被告会社にとっては全く予期していなかったことながら,被告会社は,平成17年3月25日又は4月になってから,IDJ及びサクセスジャパンとの間で,同年6月における被告会社の資本金が3億8800万円となるような第三者割当増資に関する合意をしたことになるのであって,偶然の一致としては余りにも不自然といわざるを得ない。また,被告Y1は,その本人尋問において,株式分割を実施した日付を遡らせて登記をした理由について合理的な説明ができなかった(被告Y1本人調書10頁及び11頁)上,株式分割の目的であるという被告会社の従業員に対するストック・オプションは,平成18年7月31日になっても実施された形跡が認められない(甲18)。
したがって,被告らの上記主張を採用することはできない。
ウ 以上に加えて,被告Y1は,平成17年5月27日の第三者割当増資においては1株の発行価額が10万円とされ,同年6月17日の第三者割当増資においては1株の発行価額が15万円とされたことについて,被告会社が発行する株式であるにもかかわらず,IDJが決めた金額を受け入れただけであってなぜそのように発行価額が異なることなったかは分からないし,おかしいとも思わない,被告会社の株式が実際に10万円又は15万円の価値があるかどうかはIDJが決めることで自分には分からない(被告Y1本人調書14頁,28頁ないし30頁)とか,「投資事業有限責任組合」とはIDJの一つの部署のようなものだというAの説明をそのまま信じ,その運営については一切関心がなかった(被告Y1本人調書14頁及び15頁,47頁)などと,企業経営者としての適格を疑わせる供述を平然と行い,また,被告会社が100分の1の株式分割をして発行済み株式総数を200株から2万株にした時期はその旨の登記をした平成17年3月23日の直前であったとか,IDJ及びサクセスジャパンと第三者割当増資に関する覚書を締結したのは覚書の作成日とされる同年3月25日ではなく同年4月に入ってからであるなどと,原告がIDJから被告会社の株式の購入について勧誘を受けた時期よりも被告会社がIDJとの間で資本参加に向けた交渉を始めた時期の方が遅かったとする事実については詳細に供述する反面,IDJ及びサクセスジャパンから多額の振込みを受け,その後も振込みが続けられている期間にAとどのような話をしたかは覚えていない(被告Y1本人調書44頁及び45頁)とか,IDJが1株当たり10万円又は15万円の価額で引き受けながら経営に関与できない無議決権株とすることを了承したことについて,IDJが被告会社に投資した7億5000万円もの資金をどのように回収しようとするのかは自分には関係のないことであって関心がなく,考えもしない(被告Y1本人調書30頁ないし32頁)とか,定款変更をして被告会社の株式の名義書換代理人を設けたことについて,よく分からない,IDJからそうしてくれと言われてやった(被告Y1本人調書40頁)などと,IDJが被告会社に資本参加をして株式の割当を受けるに至る具体的な交渉の経緯に関しては曖昧な回答に終始し,殊更に作為的に供述をしていることが認められるから,被告Y1の供述等を直ちに信用することには多大な疑問が残るというべきである。
これらの事情を併せ考えると,平成16年11月26日に被告会社の了承を得ることなく突然IDJ側が多額の資金を振り込み,その後も振込みを継続したことから,平成17年3月ないし4月に至ってIDJが被告会社に資本参加することについて被告会社とIDJとの間で交渉が始まったとの被告らの主張は,認め難いというほかない。
エ 以上のとおりであるから,IDJ及びサクセスジャパンが被告会社に対して合計7000万円の振込みをする平成16年11月26日の相当以前から,被告会社とIDJとの間では,IDJの被告会社に対する資本参加について交渉が始まっていたと認められる。
(2)  IDJによる被告会社株式の販売に対する被告会社の認識又は認識可能性
ア 被告Y1は,被告会社の支配権の維持に固執していたこと(乙18,被告Y1本人調書,弁論の全趣旨),上記(1)のとおり,IDJが被告会社に対して資本参加をするための実質的な交渉は,平成16年11月26日以前から開始されていたと認められることからすると,IDJが割当を受ける被告会社の株式が無議決権株となることは,同月以前の交渉の初期の段階から既定の事実であったと推認される。
IDJは,この既定の事実を受け入れ,議決権がない上に株券も発行されないことを了承した上,平成16年7月31日時点の被告会社の1株当たりの純資産額は5万7187円余でしかない(甲18)のに,1株当たりの発行価額を10万円又は15万円にするという極めて不利益な条件をも承諾して被告会社との間で資本参加に関する交渉を進め,被告会社と第三者割当増資に関する覚書を締結して被告会社の株式の発行を受け,被告会社に対し,合計7億5000万円もの資金を投資することになったものである。
そうすると,その資金提供を受ける被告会社としても,このような悪条件でもIDJが被告会社の株式の割当を受けることを承諾した理由や,IDJの資金の原資ないし調達先については当然に関心を抱いて然るべきであったというべきである。
被告らは,この点について,IDJからの資本参加の要請は,あくまでもIDJが被告会社の総販売代理店として被告会社を援助するためにされたものと理解していたと主張し,被告Y1は,前記(1)ウのとおり,IDJが被告会社に対して投資した資金の回収方法は自分には関係のないことであって関心がなかった旨供述する。
しかしながら,前記第2の1(2)ス及びソのとおり,被告会社は,株式を上場した場合には無議決権株1株に対し普通株式1株の割合で転換する旨定めていたから,IDJに発行した時点では無議決権株式であったとしても,将来的にもそのままである保障は失われており,無議決権株式が議決権を有するに至ったときに実質的にどのような者が株主権を行使することになるのかについて,被告会社の支配権の維持に固執していた被告Y1が無関心であったとはおよそ考えられないのであって,被告会社としてはIDJの資金調達方法やIDJの資金の原資について関心がなかったとの被告らの主張は,採用し難い。
イ そして,実際に被告会社の株式の割当てを受けた株式引受人がIDJやサクセスジャパン自体ではなく「投資事業有限責任組合」であったことに照らすと,被告会社は,あるいはAに質問するとか,あるいはAから積極的に説明を受けるなどして,資本参加に関する交渉の過程において,IDJが被告会社から発行を受けた株式を広く一般投資家に違法に販売して資金を調達するのみならず差益を利得することを認識していたのではないかとさえ想定されるところである。仮に被告らが主張するとおり,被告会社がその事実自体については不知であったとしても,株式引受人が「投資事業有限責任組合」であったことや,そもそも上記のとおりの極めて不利な条件にもかかわらず,IDJが被告会社の株式の発行を受けることに執着していたことを総合すれば,被告会社は,IDJが被告会社の株式を一般投資家に違法に販売することを容易に認識し得たというべきである。
したがって,被告会社がIDJの資金の原資等に関する調査を怠って漫然と株式を発行したことについて,被告会社には過失があったといわざるを得ない。
(3)  小括
よって,被告会社は,IDJに対して漫然と株式を発行したことについて,原告に対し,(共同)不法行為に基づく損害賠償責任を負うと認められる。
2  被告Y1及び被告Y2の責任について
前記1のとおり,被告会社は,IDJが被告会社から発行を受ける株式を広く一般投資家に違法に販売することを認識し,又は認識することができたにもかかわらず,漫然とIDJに株式を発行したものであるところ,被告Y1は,被告会社の代表取締役としてIDJに対する株式の発行を主導したものであり,被告Y2は,被告会社の取締役として被告Y1の上記業務執行を承認したものであるから,IDJに対する被告会社の株式の発行を止めなかったことについて,被告らは,被告らが負っていた被告会社の業務を適正に執行する義務ないし被告会社の業務に対する監視監督義務を故意又は重大な過失によって怠ったものであると認められる。
したがって,被告らは,原告に対し,取締役の第三者責任に基づき,原告が被った損害を賠償する責任を負うというべきである。
3  原告の損害について
原告は,被告らの違法な行為により,原告がIDJに交付した815万円の損害を被ったと認められるところ,その1割に当たる81万5000円は,本訴の弁護士費用として被告らの違法な行為と相当因果関係のある原告の損害であると認められる。
4  結論
以上によれば,原告の請求はすべて理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 小池晴彦)

 

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