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「営業支援」に関する裁判例(83)平成23年10月28日 東京地裁 平23(ワ)7222号 地位確認等請求事件

「営業支援」に関する裁判例(83)平成23年10月28日 東京地裁 平23(ワ)7222号 地位確認等請求事件

裁判年月日  平成23年10月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)7222号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  一部認容、一部却下、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2011WLJPCA10288006

要旨
◆被告から複数回退職勧奨を受けたものの、これを拒否したために整理解雇された正規労働者である原告が、原告1名のみの本件整理解雇は無効であるとして、地位確認、未払賃金等の支払及び将来賃金等の支払を求めた事案において、認定事実によれば、人員削減の必要性の存在は認められるものの、その必要性の程度は差し迫った高度のものとはいえず、被告が解雇回避努力義務を尽くしたともいえず、また、被告の被解雇者選定に妥当性はなく、さらに、手続的な妥当性も欠けているといえるから、本件整理解雇は解雇権を濫用するものとして無効であるとして、地位確認請求を認容した上で、賃金請求につき、本判決確定日後に履行期が到来する賃金支払請求部分については、予めその請求をする必要はないから訴えの利益がないとして、同部分の訴えを却下し、残りの請求を一部認容した事例

評釈
清水弥生・労働法学研究会報 2531号22頁

参照条文
労働契約法6条
労働契約法16条

裁判年月日  平成23年10月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)7222号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  一部認容、一部却下、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2011WLJPCA10288006

東京都練馬区〈以下省略〉
原告 X
原告訴訟代理人弁護士 佐々木亮
同 蟹江鬼太郎
神奈川県小田原市〈以下省略〉
被告 Y株式会社
同代表者代表取締役 A
被告訴訟代理人弁護士 木下淳博

 

 

主文

1  原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2  被告は,原告に対し,平成22年6月から本判決確定の日まで,毎月10日限り39万0500円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  被告は,原告に対し,平成22年から本判決確定の日まで,毎年7月10日限り13万7687円,毎年12月10日限り13万7687円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4  被告は,原告に対し,平成22年5月10日限り8万2612円,平成23年5月10日限り11万0150円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
5  原告の請求中,本判決確定の日の翌日から毎月末日限り金30万0500円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める部分並びに本判決の日の翌日から毎年5月10日限り38万5525円,毎年7月10日限り22万0300円,毎年12月10日限り22万0300円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める部分を却下する。
6  原告のその余の請求を棄却する。
7  訴訟費用は被告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2(1)  被告は,原告に対し,351万4500円及び別紙「未払賃金請求目録」記載の各月の未払賃金に対する同請求目録記載の各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  被告は,原告に対し,82万6125円及び別紙「未払賞与請求目録」記載の各月の未払賞与に対する同請求目録記載の各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3(1)  被告は,原告に対し,平成23年3月以降,毎月10日限り39万0500円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  被告は,原告に対し,平成23年以降,毎年5月10日限り38万5525円,毎年7月10日限り22万0300円,毎年12月10日限り22万0300円,及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,被告に雇用されていた原告が,被告に対し,平成22年4月30日付でされた整理解雇(以下「本件解雇」という。)が無効であるとして,①地位確認とともに,②ⅰ平成22年5月分から平成23年1月分までの賃金合計351万4500円及びⅱ平成22年賞与合計82万6125円,③ⅰ平成23年3月分以降の賃金として平成23年3月以降毎月10日限り39万0500円及びⅱ平成23年以降の賞与として平成23年以降,毎年5月10日限り38万5525円,毎年7月10日限り22万0300円,毎年12月10日限り22万0300円の各支払を求めた事案である。
1  前提事実(争いのない事実及び証拠等により容易に認められる事実)
(1)  当事者等
被告は,システムコンサルティング事業,システムの開発・運用管理事業,営業支援・業務支援等の業務代行事業等を営む株式会社である。被告には,平成22年3月31日現在,子会社と連結で823名,被告単体で608名の従業員がおり,契約社員及びパート社員については連結で約1257名,単体でも約1191名を雇用し,国内に16箇所の事業所を有し,四つのグループ会社をも有している。
原告は,平成12年3月,株式会社aと期間の定めのない労働契約を締結して入社した者である。
被告は,平成20年3月31日付けで株式会社aを吸収合併し,これに伴い,被告は,原告の使用者としての地位を承継した。
(2)  労働契約の内容等
原被告間の労働契約(以下「本件労働契約」という。)の内容は,下記アないしウのとおりである。
ア 雇用期間の定め なし
イ 職務内容 c事業所(埼玉県川口市所在)内の業務代行センターにおける入金チームリーダー
ただし,勤務地及び職種の特定なし
ウ 給与等(甲3の1)
被告においては,年1回給与の改定がされることとなっており,第34期(平成21年4月1日から平成22年3月31日まで)の基本給等として合意された内容は次のとおりである。なお,下記のうち評価IFと業績IFは,年収保障対象外とされている。
(ア) 月例給与 39万0500円(毎月末日締め,翌月10日払)
(イ) 夏季賞与及び冬季賞与各基準額
基本IF13万7687円(原告の設定年収である550万7500円×2.5%。1円未満切捨て(以下同じ。))及び評価IF8万2612円(同550万7500円×1.5%。ただし,当該乗率は査定により変動)の合計額である22万0300円(毎年夏季7月10日支払,冬季12月10日支払)
(ウ) 業績連動賞与基準額 38万5525円(原告の設定年収である550万7500円×7%。ただし,当該乗率は被告通期業績に応じて変動する。毎年5月10日支払)
(3)  本件解雇に至る経緯
ア 被告は,c事業所取扱業務に係る主要取引先であるb株式会社(以下「b社」という。)との契約が平成22年3月末日付けで終了になることに伴い,c事業所を閉鎖することを決定し,平成21年12月29日,c事業所の全従業員に対し,同閉鎖の通告を行うとともに,個々の従業員の処遇については,個別に対応する旨を説明した。
イ 平成22年1月21日,原告は,上司である被告のBスーパーバイザーと業務引継について打合せを行った際,同人に対し,退職意思がないことを伝え,配転による雇用の継続の希望を伝えた。(原告本人)
ウ 同年2月4日,被告C常務取締役は,c事業所を訪れ,同事業所従業員全員に対し,同事業所単体で毎月600万円程度赤字が生じていること及びb社との契約が同年3月末日付けで終了になったことに言及し,c事業所の閉鎖の方針について伝えた。
エ 同月4日及び5日の両日,被告は,c事業所の閉鎖に関し,就業継続希望者に対する個人面談を実施した。その中で原告は,同月5日,c事業所長及び被告担当者Dと個人面談を行い,その際,自身が従事してきた業務内容等を説明するとともに,配置転換による雇用継続を要望し,同要望について被告が持ち帰って検討することとなった。原告は,同面談の際,通勤に関して1時間半以内であればいい旨,職務内容について,従前の職務内容と近い仕事があればベストだが,後は仕事があるのかないのか,個別の話合いで判断する旨を述べた。(乙5,6,弁論の全趣旨)
オ 同月16日,原告は,c事業所長らと面談した際,c事業所長から,未消化の有給休暇の買取りを条件として,平成22年3月末日付けでの退職勧奨を受けた。これに対し,同月23日,原告は,同退職勧奨を拒否するとともに,再度雇用の継続を要求した。
カ 同年3月12日,原告は,被告本社会議室において,被告ITサービス事業部のE氏と面談し,同人から提出を指示された原告の履歴書及び職務経歴書を持参して,被告に託した。
キ 同年3月23日,原告は,被告本社会議室において,被告のF(取締役常務執行役員。以下「F」という。),G(人事部長)及びH(事業所長)の三氏と面談し,同席上において,同人らから,原告の職場は見付からない旨を述べられるとともに,同年4月末での退職を勧奨された(なお,被告は,この際,同月は有給休暇を消化した上で,未消化の有給休暇を買い取る旨提案した。)。(甲15,原告本人,証人F,弁論の全趣旨)
ク 同月29日,原告が被告の退職勧奨を拒んで雇用継続を求めたところ,被告は,原告に対し,同月31日付「退職条件」と題する書面(甲8)を提示して,更なる退職勧奨を行った。なお,同書面の内容は,被告が,原告に対し,①同月31日付での退職(2か月分の基本給の支払と未消化分の有給休暇の買取りを行う。)又は②同年4月30日付での退職(1か月分の基本給の支払いと未消化分の有給休暇の買取りを行う。)のいずれかを選択するよう求めるものであった。(甲8)
ケ 同年3月31日,被告は,原告が退職勧奨を拒否したことを受け,被告就業規則41条5号に基づき,同年4月30日付で原告を解雇する旨の通知(解雇予告)を行った(本件解雇)。なお,被告就業規則41条5号は,「やむを得ない事業の縮小,または合理化による場合」において,社員を解雇することがある旨定めている。
なお,c事業所には,平成22年2月末日時点において,49名の従業員が在籍していたが,自己都合退職に応じた者が2名,退職勧奨に応じた者が31名,異動によって他の仕事に就いた者が15名であり,整理解雇の対象となったのは原告1名のみであった。(甲12の2,弁論の全趣旨)
2  争点及びこれに係る当事者の主張
(1)  本件解雇の有効性
(被告の主張)
本件解雇は,下記アないしエの事情を総合考慮すれば,被告就業規則41条5号に基づく解雇(整理解雇)として有効である。
ア 人員削減の必要性について
c事業所は,平成11年に株式会社aを吸収合併した際に被告の事業所となって以降,事業縮小の一途をたどっていたところ,被告は,c事業所の最大の取引先であるb社から平成22年3月をもって取引を停止することを通告されて赤字転落が確実なものとなり,c事業所の収支改善はほとんど期待できなかったため,その閉鎖を決定した。原告は,b社の取引業務に特化した入金処理業務のリーダーであり,当該業務に特化した能力を有していたところ,c事業所の閉鎖に伴い,当該業務そのものがなくなったため,企業採算上,人員削減が必要となったものである。
他方,被告全体としては,第33期(平成20年4月1日から平成21年3月31日まで)損益決算において売上高約130億円,当期純損失約1億6900万円であったものが,第34期(平成21年4月1日から平成22年3月31日まで)損益決算においては売上高約110億円と減少しているにもかかわらず当期純利益約3億1500万円を計上しているが,このように,売上高や営業利益の縮小にもかかわらず利益を上げているのは,通信費,交際費,交通費,人件費(役員報酬及び上級職従業員賃金)等の削減努力を重ねた結果であり,かかる利益計上の存在をもって,不採算部門であるc事業所の閉鎖に伴う人員削減の必要性は減殺されない。
以上によれば,c事業所の閉鎖に伴い,被告には人員削減の必要性があったというべきである。
イ 解雇回避措置の相当性について
被告は,c事業所の閉鎖に当たり,①役員報酬や時間外割増賃金等の人件費の削減や交通費,広告宣伝費,交際費等の経費削減を実施し,②c事業所従業員のうち就職継続希望の者について,個人面談を経た上でできる限り配置転換,出向等の措置をとり,③平成22年2月下旬から同年3月にかけて,配置転換等ができなかった者に対する契約終了に伴う説明会及び再就職支援プログラムを実施し,④原告に対し,解雇に先立ち2か月分の基本給支払い及び未消化有給休暇の買取り等の退職条件の上積み提案をする等して,解雇回避措置を尽くしていた。
ウ 人選の合理性について
被告は,原告を含むc事業所従業員の配置転換や他の会社への派遣を検討してきたが,原告については,①原告の担当業務は,b社の入金決済管理のリーダーであり,特に不明入金調査をその中心業務としていたところ,原告は当該業務に特化した能力を有していたが,c事業所閉鎖により被告内に当該業務と同一の業務はなくなったこと,②原告にはいわゆるIT能力や経理の専門能力はなく,原告を配置できる部署や転職先がなかったこと,③c事業所の全49名の従業員のうち,自己都合退職者2名,退職勧奨応諾者31名,異動によって他の仕事に就かせた者15名を除く残りの1名が原告であったことから,原告1名を整理解雇するに至った人選の合理性が認められるというべきである。
エ 手続の相当性について
前記イ,ウの就職継続希望者に対する個人面談を経た上での配置転換,出向等の措置の検討及びその実施,配置転換等ができなかった者に対する契約終了に伴う説明会及び再就職支援プログラムの実施のほか,原告についても配置転換,出向等の措置の可能性について十分に協議,検討していたことからすれば,本件解雇につき手続の相当性も認められるというべきである。
(原告の主張)
本件解雇は,下記アないしエの事情を総合考慮すれば,被告就業規則41条5号に基づく解雇(整理解雇)として無効である。
ア 人員削減の必要性について
まず,被告は,第32期(平成19年4月1日から平成20年3月31日まで)から第34期(平成21年4月1日から平成22年3月31日まで)までの間,一貫して億円単位の巨額の売上高及び経常利益を計上し続けている上,第34期には当期純利益3億1584万円を計上し,同期中間配当時に1株当たり7円を配当し,年間では1株当たり20円配当(総額約1億2382万円)を行っている。
次に,被告は,本件解雇に前後して営業職や事務職等の契約社員及び正社員の新規採用募集を実施している。
以上の被告の経営状況及び人員削減措置と明瞭に矛盾する経営行動によれば,被告に本件解雇に係る人員削減の必要性は存在しない。
イ 解雇回避措置の相当性について
まず,被告において,本件解雇前において,経費削減措置(役員報酬の削減,管理職の賃金カット等)や労働時間の短縮,従業員の賃金の見直し等の措置を全くとることがなかった。
次に,配置転換について,被告は,原告の配置転換について言及した事実はあるものの,当該配置転換は被告外部の客先企業に派遣(労働者派遣)するというもので,かつ,原告に対し当該客先企業の詳細や労働条件を明らかにすることも,原告を面接に赴かせることもないまま,客先企業が受け入れなかったとだけ述べて配置転換についての提案を打ち切ったものであり,原告に対し,具体的な配転先を提示することのないまま,原告の就業継続の申出を打ち切ったものであり,本件解雇に際して被告が検討した配置転換は,原告の雇用維持のためには極めて不十分かつ不適切なものであった。
また,被告は,本件解雇に際して,事前に,被告の全従業員を対象にして相当程度有利な条件を付した希望退職の募集をしていない。
以上によれば,被告は,本件解雇に際して解雇回避のための努力義務を全く尽くしていないことは明らかである。
ウ 人選の合理性について
被告は,本件解雇について対象者の選定基準をあらかじめ検討することなく,原告が,c事業所に所属していること,原告1名のみが任意退職に応じなかったことのみを理由として,本件解雇に及んでいるのであって,これは到底公平かつ公正な人選基準とは言い得ない。
また,企業内にいわゆる正規労働者と非正規労働者が存在する場合,特段の事情がない限り,まずは非正規労働者から人員削減を図るのが合理的な選別であるところ,被告は,派遣社員,パート社員及び契約社員を利用しているにもかかわらず,正規労働者である原告を解雇したものである。
以上によれば,本件解雇について,人選の合理性も認められない。
エ 手続の相当性について
被告は,本件解雇の前に,原告に対し,原告に対する整理解雇を行わなければならない程の経営状態にあることや,その内容について一切説明することはなかった。
そして,前記イのとおり,被告は,被告内部での配転が不可能な理由を説明することもなく,ただ客先企業が受け入れないと説明するのみで,任意退職に応じなかった原告に対し本件解雇を通告したものである。
このような被告の対応は,本件解雇につき原告の十分な理解と納得を得るための説明と評価することはできない。
(2)  (本件解雇が無効である場合における)原告の有する賃金債権の範囲
(原告の主張)
ア 月例給与
39万0500円(毎月末日締め,翌月10日払。平成22年5月分から)
イ 夏季賞与及び冬季賞与
22万0300円(基本IF年額27万5375円及び評価IF16万5225円の合計額の2分の1。毎年夏季7月10日支払,冬季12月10日支払。平成22年夏季から)
ウ 業績連動賞与
38万5525円(毎年5月10日支払。平成22年5月10日から)
(被告の主張)
原告の主張は争う。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前期前提事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)  被告の経営状況等
ア 被告の決算報告書による業績推移(乙14~16,22)

第32期
(H19.4.1-H20.3.31)
第33期
(H20.4.1-H21.3.31)
第34期
(H21.4.1-H22.3.31)

売上高 ¥11,006,164,000 ¥13,090,741,000 ¥11,059,593,000
営業利益 ¥701,377,000 ¥679,621,000 ¥693,547,000
経常利益 ¥685,694,000 ¥667,393,000 ¥679,941,000
当期純利益 ¥639,845,000 ▲¥169,179,000 ¥315,846,000

また,第35期(平成22年4月1日~平成23年3月31日)は,売上高は,約102億6000万円と,前期より更に下がったものの,当期純利益を計上している。
このうち,第33期において,営業利益及び経常利益が他の2期と大差ないにもかかわらず当期純損失を計上しているのは,主に,固定資産除却損,投資有価証券評価損及び関係会社株式評価損が他の2期に比して著しく多く計上されたためである。
イ 株式配当(甲1の2,証人F)
(ア) 第34期(平成21年4月1日~平成22年3月31日)
年間配当1株当たり20円(中間配当時7円,期末配当時13円。なお,年間総配当額は,約1億2382万円(発行済株式総数619万1100株))
(イ) 第35期(平成22年4月1日~平成23年3月31日)
年間配当1株当たり23円(うち記念配当3円)
ウ 被告c事業所の事業状況等(乙13,21,証人F,弁論の全趣旨)
c事業所は,株式会社aがその前身であるところ,被告が吸収合併した前後を通じて事業縮小を続けており,第34期(平成21年4月1日~平成22年3月31日)の上半期(平成22年9月まで)で3791万円2000円,通期で3410万2000円の営業損失となっていた。被告は,平成21年12月頃,平成22年3月末日をもって同事業所の主要取引先であったb社との契約が終了することになったことに伴い,閉鎖を決定した。
(2)  c事業所閉鎖に伴う従業員の処遇に関する被告の検討内容及び本件解雇に至る手続(乙5,6,9,10,11,20,22,証人F,原告本人)
ア 被告は,c事業所閉鎖を決定するに当たり,同事業所の従業員の処遇について,まず,個別に就業継続希望の有無,過去の業務内容,希望職種,希望勤務地等の聴取を行った上で,就業継続を希望する者については異動先を検討し,異動先が見付かった者については配転を行う一方で,見付からない者に対しては退職勧奨を行うこととした。
その際,被告において,c事業所閉鎖に伴う人員削減の必要性について,削減を要する人員数,人件費等の検討は行われなかった。
イ 被告は,c事業所の全従業員に対し,平成21年12月29日に同事業所の閉鎖を通告した後,平成22年1月に就業継続希望の有無を確認した後,同年2月4日及び同月5日に就業継続希望者に対する個人面談を実施して過去の業務内容,希望職種,希望勤務地等を聴取した。その上で,被告は,同月半ば以降,原告を含む異動先の見付からない者に対し,更に異動先を検索するとともに,有給休暇の買取り等を条件とする退職勧奨を実施した。
ウ 被告は,平成22年3月中旬から同月下旬にかけて,原告について被告社内及び社外の派遣先のいずれについても異動先が見付からず,同人が退職勧奨に応じないことを踏まえ,引き続き同人が退職勧奨に応じなければ解雇することを決定した。しかし,被告は,同解雇決定前において,c事業所の従業員に対し,同事業所閉鎖に伴う整理解雇の具体的方針についての情報開示や,整理解雇を控えていることを前提とした上での希望退職者の募集等の提案は,一切しなかった。
エ 平成22年3月23日,原告は,被告本社会議室におけるF,G及びHとの面談(前記第2の1(3)キ)において,Fらから,被告において原告の異動(派遣)先として検討した十数社の企業一覧を大型ディスプレイに映写して初めて示され,いずれの会社も原告の受入れに応じなかった旨告げられた。しかし,同面談の所要時間は約20~30分程度で,被告社内における異動先の検討結果並びに被告社内における異動及び同社外における異動(派遣)のそれぞれについて,原告の異動先として具体的にどのような検討を行ったかについての説明は一切されず,被告による原告の異動先についての説明の機会は,この日限りとなった。
(3)  本件解雇後における被告の新規募集(甲11の1,2,甲20,証人F)
ア 被告は,本件解雇後平成22年8月に至るまでの間に,正社員又は契約社員として「営業職」の新規募集を行い,また,契約社員として,「事務職」,「テレフォンオペレーター」,「データ入力業務」,「ラウンダー(店舗販売・売場のメンテナンス・商品展示交渉等)」の新規募集を行った。
イ 被告は,平成23年5月頃,業務拡大を理由として,被告東京本社及び同小田原支店において,コールセンター業務,事務代行業務等におけるスーパーバイザー(アウトソーシングのプロジェクト業務及びスタッフ管理業務であり,原告の被告における職務内容と共通性を有するもの)の新規募集(正社員登用制度があることを宣伝するもの)を行った。
(4)  原告の経歴,職歴等(甲15,乙18の1,2,原告本人)
原告は,昭和55年4月から就職し,以後平成12年3月に株式会社aに就職するまでの間,営業,企画,予算管理,売掛金管理,倉庫管理,人事労務等の業務を担っており,そのことは,原告が株式会社aに入社する際に提出した履歴書及び職務経歴書に記載されていた。
(5)  業績連動賞与に係る乗率(甲3の1,弁論の全趣旨)
被告における業績連動賞与は,第34期(平成21年4月1日~平成22年3月31日)は,前年業績に応じて設定年収の1.5%の乗率で平成22年5月在籍を条件に支払われ,第35期(平成22年4月1日~平成23年3月31日)は,前年業績に応じて設定年収の2%の乗率で平成23年5月在籍を条件に支払われた。
2  争点(1)(本件解雇の有効性)について
(1)  本件解雇は,いわゆる整理解雇について規定する被告就業規則41条5号に基づくものであるところ,同号に基づく整理解雇が解雇権の濫用したものとして無効(労働契約法16条)になるか否かを判断するに当たっては,①人員削減の必要性,②(①の人員削減の手段としての)解雇の必要性(解雇回避努力義務の履行の有無),③被解雇者選定の妥当性,④手続の妥当性等を総合考慮して判断するのが相当である。
(2)  人員削減の必要性について
被告のc事業所閉鎖の決定は,同事業所が第34期(平成21年4月1日~平成22年3月31日)に赤字計上をしていた上,平成22年3月末日をもってその主要取引先であるb社との取引が停止したことによるものであるところ,平成22年2月末日時点において,同事業所に49名の従業員が所属し,その内の相当数がb社との取引に係る業務に当たっていたと認められることからすれば,被告が,企業の合理的な運営上やむを得ない措置としてc事業所を閉鎖し,その人員削減を行う必要性の存在は,これを認めることができるというべきである。
もっとも,その必要性の程度については,①本件全証拠をもってしても,c事業所の閉鎖に伴い何名の人員削減の必要があったのかについては明らかではない上,被告が何名の人員削減を行う必要があったと考えていたのかということも明らかではなく,むしろ,前記認定事実によれば,被告において必要削減人数についての検討は行っておらず,退職勧奨を拒否したことにより残った原告1名を解雇したに過ぎないと認められること,②被告の業績状況は,本件解雇に至るまで3期連続で約6億8000万円から約7億円の営業利益,約6億7000万円から約6億8000万円の経常利益を計上しており,第33期においては特別損失が生じて一時的に当期純損失を計上したものの,その他の2期(第32期,第34期)においては当期純利益を計上していること,③遅くとも本件解雇の数か月後には正社員及び契約社員の新規募集を行い,また,第34期よりも売上高の減じた第35期中にも業務拡大を理由として新規に原告の職務内容と共通性を有する職種に係る新規募集を行っていること,以上の事柄に被告の事業規模や雇用規模(前記第2の1(1))を併せ考慮すれば,本件における人員削減の必要性は,差し迫った高度のものであったとは認められないというべきである。
そして,c事業所閉鎖に伴う整理解雇を被告が決定したのが平成22年3月中旬であり,かつ,その対象が原告1名のみであったことからすれば,本件における人員削減の必要性の有無の判断は,本件解雇時点において,従業員1名を指名解雇しなければならない程の必要性があるか否かという観点から判断すべきこととなるところ,本件において,かかる必要性があったとまでは解し難い。
(3)  (人員削減の手段としての)解雇の必要性(解雇回避努力義務の履行の有無)について
人員削減を実現する際に,使用者は,配転,出向,希望退職者募集等の他の手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務(解雇回避努力義務)を負うものと解され,同義務履行の有無を判断するに当たっては,当該使用者が採択した手段と手順が当該人員整理の具体的状況の中で全体として指名解雇回避のための真摯かつ合理的な努力と認められるか否かを判断すべきである。
とりわけ本件においては,前記(2)のとおり,本件解雇に係る人員削減の必要性が差し迫った高度のものであったとは認められないことに加え,被告が,多様な部門を有する相当規模の企業であること(前記第2の1(1)),c事業所閉鎖に伴う整理解雇の対象者が原告1名のみであったこと,原告がこれまでの間,営業,企画,予算管理,売掛金管理,倉庫管理,人事労務等の幅広い経歴及び職歴を有することからすれば,被告が解雇回避努力義務の履行として原告の配転を検討するに当たっては,被告内部の欠員等の有無を形式的に確認したり派遣検討先企業の意向を確認したりするだけでは足りず,少なくとも,被告の組織全体を視野に入れて,原告の従事できる合理的可能性のある業務の有無を真摯かつ十分な時間を掛けて検討する必要があるというべきである。
これを本件についてみると,前記認定事実のとおり,被告は,被告社内及び社外の派遣先の双方について原告の異動先を一応検討したことは認められるが,原告の経歴及び職歴を踏まえた幅広い職種・職務内容を対象として指名解雇回避のための真摯かつ合理的な努力がされたと認めるに足りる証拠はなく,かえって,証人Fの証言及び弁論の全趣旨によれば,被告は,原告の被告における職歴がb社を取引先とする特殊業務であると断じたことにより,原告の異動先として幅広い職種・職務内容を対象とはしていないことが認められる。
以上に加え,被告において本件解雇に先立ち,希望退職者の募集等の整理解雇回避のためのその余の具体的措置をも講じていないことも併せかんがみれば,被告において,解雇回避努力義務を尽くしたものとは認められない。
この点につき,被告は,①役員報酬や時間外割増賃金等の人件費の削減や交通費,広告宣伝費,交際費等の経費削減を実施したこと,②平成22年2月下旬から同年3月にかけて,配置転換等ができなかった者に対する契約終了に伴う説明会及び再就職支援プログラムを実施したこと,③原告に対し,解雇に先立ち2か月分の基本給支払い及び未消化有給休暇の買上げ等の退職条件の上積み提案をする等したことをもって,解雇回避努力義務を尽くした旨主張する。しかし,①については,乙17号証,乙22号証及び証人Fの証言によれば,被告主張に係る経費削減策は,第33期の当期純損失の計上を踏まえてc事業所の閉鎖が決まる前から実施していたもので,本件解雇を回避するための方策として実施されたものとは認められないこと,②については,乙8号証によれば,被告が雇用対策法24条に規定する再就職援助活動の認定を受けた上で相当数の離職者に係る再就職支援プログラムを実施したことが認められるが,同再就職支援プログラムや被告主張に係る説明会の実施が解雇回避努力義務の履行内容としての本件解雇を回避するための方策と位置付けられるものとは認められないこと,③についても,雇用継続を希望し続けていた原告との関係において,本件解雇を回避するための合理的な方策と位置付けられるものとは認められないこと,以上からすれば,被告の前記主張には理由がない。
(4)  被解雇者選定の妥当性について
被告は,c事業所閉鎖に当たり,同事業所従業員の全員を削減対象とした上で,自主退職又は退職勧奨に応じたことにより退職した者及び被告において異動先を見付けられた者について退職及び異動の措置をとった後,最終的に,退職勧奨に応じず,異動先を見付けられなかった原告1名を解雇したものであるから,少なくとも,被告において,被解雇者の選定について,客観的で合理的な基準を設定していたとは認められない。
加えて,被告が原告の異動先を検討するに当たっては,前記(3)のとおり,原告の経歴及び職歴を踏まえた幅広い職種・職務内容を対象にはしていないことからすれば,被告において異動先を見付けて異動の措置をとった者と異動先を見付けられなかった原告とを振り分けるに当たって,合理的な判断がされたとも解し難い。
この点につき,被告は,①原告の被告における業務が,b社の入金決済管理のリーダーであり,原告が,その中心業務である不明入金調査に特化した能力を有していたが,c事業所閉鎖により被告内に当該業務と同一の業務がなくなったこと,②原告にはいわゆるIT能力や経理の専門能力がなく,原告を配置できる部署や転職先がなかった旨主張するが,①については,原告の被告における業務がその他の業務に就くことと相容れない程に専門性を有するものと認めるに足りる証拠はない上,原告の経歴及び職歴が前記のとおり幅広い職種・職務内容を有するものである以上,被告における業務内容のみを基準として原告の異動可能性を判断すべきではないこと,②については,仮に原告にいわゆるIT能力や経理の専門能力がなかったとしても,被告の規模や事業内容にかんがみ,そのことのみを理由に被告において原告の異動先がないと合理的に判断することはできないことから,いずれについても理由がない。
以上からすれば,被解雇者選定の妥当性についても,これを認めることはできないというべきである。
(5)  手続の妥当性について
本件解雇に先立って,被告が,原告との間で,整理解雇の必要性とその時期,方法等について納得を得るための十分な説明ないし協議を行ったと認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記認定事実によれば,被告においては,平成22年3月中旬に本件解雇を決定するに至るまで,同事業所閉鎖に伴う整理解雇の具体的方針についての情報開示や,当該整理解雇について納得を得るための説明等を行っていない上,原告の異動の可否等についても,十分な説明ないし協議を行っていないことが認められる。
以上によれば,本件解雇は,手続的な妥当性にも欠けるものであったといわざるを得ない。
(6)  以上によれば,本件解雇は,①人員削減の必要性,②(①の人員削減の手段としての)解雇の必要性(解雇回避努力義務の履行の有無),③被解雇者選定の妥当性,④手続の妥当性のいずれの観点からも,客観的合理性及び社会的相当性を有するとはいえず,解雇権を濫用するものとして無効であると解するのが相当である。
3  争点(2)(原告の有する賃金債権の範囲)について
まず,前提事実及び甲第3号証の1によれば,原告は,賃金債権として,月例給与39万0500円(毎月末日締め,翌月10日払)の支払請求権を有するほか,夏季賞与及び冬季賞与のうち,基本IF13万7687円を毎年夏季7月10日,冬季12月10日にそれぞれ支払を受ける権利を有すると認められる。ただし,原告の請求のうち,本判決確定の日の後に履行期が到来する賃金の支払を請求する部分は,あらかじめその請求をする必要があるとはいえないから,訴えの利益を欠くものとして却下すべきである。
また,甲第3号証の1によれば,業績連動賞与については,年収保障対象外とされているが,翌年5月に会社の通期業績により支給されるものとされ,前記認定事実(第3の1(5))のとおり,被告において,第34期(平成21年4月1日~平成22年3月31日)は,前年業績に応じて設定年収の1.5%の乗率で平成22年5月在籍を条件に支払われたこと,第35期(平成22年4月1日~平成23年3月31日)は,前年業績に応じて設定年収の2%の乗率で平成23年5月在籍を条件に支払われたことがそれぞれ認められるから,原告は,被告に対し,業績連動賞与に係る賃金請求権として,平成22年5月10日限り8万2612円(原告の設定年収である550万7500円×1.5%。1円未満切捨て),平成23年5月10日限り11万0150円(同550万7500円×2%)を求める権利を有するものと認められる。しかし,平成24年5月10日支払分以後の業績連動賞与については,その前年業績に応じた乗率が確定して初めて具体的権利として生ずるものと認められるから,現時点における賃金請求権としては認められないというべきである。
他方,甲第3号証の1によれば,賞与のうち,評価IFについては,年収保障対象外とされている上,被告による人事評価によって初めて具体的権利として生ずるものと認められるから,賃金請求権としては認められないというべきである。
第4  結論
以上のとおりであるから,原告の請求は,①地位確認並びに②平成22年6月から本判決確定の日までに履行期の到来する月例給与39万0500円及びこれらに対する商事法定利率年6分の割合による遅延損害金,③平成22年から本判決確定の日までに履行期の到来する夏季賞与及び冬季賞与のうち基本IF分である各13万7687円及びこれらに対する同遅延損害金及び④平成22年支払分及び平成23年支払分の各業績連動賞与の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,月例給与及び賞与に係る請求のうち本判決確定の日の翌日以後に履行期が到来する賃金の支払を請求する部分は不適法であるからこれを却下し,その余の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 光岡弘志)

 

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