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「営業支援」に関する裁判例(76)平成24年 3月12日 東京地裁 平22(ワ)9113号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(76)平成24年 3月12日 東京地裁 平22(ワ)9113号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成24年 3月12日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)9113号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2012WLJPCA03128003

要旨
◆原告が、被告Y1については、同人が原告の代表取締役に就任して以降締結された本件業務委託契約、本件派遣契約及び本件金銭消費貸借契約は利益相反取引であるが、同人は本件各契約に関して取締役会の承認を受けておらず、被告Y1に係る役員報酬の増額も、取締役会の決議を経ていないなどとし、被告Y2については、本件各契約が取締役会の承認を受けておらず、本件増額が被告Y1の任務懈怠行為であることも知りながら、これらに関する支払を行ったなどとして、被告らに対し、同人らの善管注意義務違反及び忠実義務違反を理由に、損害賠償を求めた事案において、本件各契約には利益相反取引の制限の違反があり、被告Y1には原告の取締役としての任務懈怠が認められるものの、原告主張の損害の発生は認定できず、被告Y2の任務懈怠も認められないとし、また、本件増額については、取締役会の決議が存在するなどとして、請求を棄却した事例

参照条文
会社法356条1項2号
会社法365条1項
会社法370条
会社法423条1項
会社法430条

裁判年月日  平成24年 3月12日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)9113号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2012WLJPCA03128003

福岡市〈以下省略〉
原告 株式会社ロジック・リサーチ
同代表者監査役 A
同訴訟代理人弁護士 佐藤未央
三重県桑名市〈以下省略〉
(居所)
東京都中央区〈以下省略〉
被告 Y1(以下「被告Y1」という。)
東京都大田区〈以下省略〉
被告 Y2(以下「被告Y2」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士 古川和典

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告Y1は,原告に対し,840万5034円及びこれに対する平成22年3月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告らは,原告に対し,連帯して,1987万8079円及びこれに対する平成22年3月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  前提事実
(1)  当事者等
ア 原告は,半導体集積回路の企画及び設計等を目的とする株式会社(昭和63年7月設立)であり,取締役会設置会社である。なお,原告の筆頭株主は,クリティカル・テクノロジー一号投資事業有限責任組合であり,同組合は,イノベーション・エンジン株式会社(以下「イノベーション・エンジン」という。)が運営している(甲1,乙24,弁論の全趣旨)。
イ 株式会社TMリンク(以下「TMリンク」という。)は,電子機器類の設計,製造及び販売等を目的とする株式会社(平成17年9月設立)である(甲2)。
ウ(ア) 被告Y1は,TMリンクを設立した者であり,設立時から,同社の代表取締役の地位にある。被告Y1は,平成20年3月28日,原告の取締役及び代表取締役に就任し,平成22年3月30日,退任した(甲1,2,弁論の全趣旨)。
(イ) B(以下「B」という。)は,原告を設立した者であり,設立時から,原告の代表取締役の地位にある(甲1,弁論の全趣旨)。
(ウ) C(以下「C」という。)は,平成17年9月から平成22年2月までの間,原告の取締役(社外取締役)の地位にあった者である。なお,Cは,イノベーション・エンジンの取締役を兼務していた(甲1,乙35~37,39)。
(エ) 被告Y2は,平成21年3月27日,原告の取締役に就任し,平成22年3月30日,退任した者である(甲1,弁論の全趣旨)。
(オ) A(以下「A」という。)は,平成21年5月20日,原告の監査役に就任した者である(甲1)。
(2)  本件業務委託契約1
原告は,平成18年5月1日,TMリンクとの間で,要旨,次の内容の業務委託契約を締結した(甲3。以下「本件業務委託契約1」という。)。
ア 原告は,TMリンクに対し,原告の半導体事業の業務の一部(①原告の事業を支援し,ビジネスの活性化と経営健全化を図ること,②市場の分析と顧客の情報から原告に適切な商談を推進すること,③TMリンクの技術,経験,人脈等を活用し,原告の新規事業を推進すること)を委託する。
イ TMリンクは,業務委託の結果(成果物)として,①新規事業の計画と進捗表,②活動内容が明示できる報告書を,毎月,原告に提出する。
ウ(ア) 委託手数料は,月額110万円とする。
(イ) TMリンクの功績により商品の売上げが発生した場合,原告はTMリンクにロイヤリティを支払う。ロイヤリティについては,売上の2%を最低とし,案件ごとに双方協議する。
(ウ) 原告が承認した経費は,上記とは別に実費にて請求する。
(エ) 委託手数料率は,料率の変更を必要とする事由が生じた場合に,双方協議の上,改訂することができる。
エ 期間は,平成18年5月1日より2年間とし,双方協議により延長する。
(3)  本件業務委託契約2
ア(ア) 原告とTMリンクは,平成20年5月1日,期間を同日から2年間とする本件業務委託契約2を締結した(乙1。以下「本件業務委託契約2」という。)。
(イ) 本件業務委託契約2の締結は,被告Y1が両社の各代表取締役として行った。
(ウ) 本件業務委託契約2の内容は,ロイヤリティの率を売上の最低1%とするほかは,本件業務委託契約1の契約内容と同一であった。
イ 原告は,平成20年5月から平成21年6月までの間,本件業務委託契約2に基づき,TMリンクに対し,月額110万円の業務委託料及び経費を支払った(弁論の全趣旨)。
(4)  労働者派遣契約
ア(ア) 原告は,平成20年4月10日,TMリンクとの間で,労働者派遣契約(乙4)を締結し,原告とTMリンクは,同月20日,上記契約に関して労働者派遣覚書(乙5)を取り交わした(以下,両者を併せて「本件派遣契約」という。)。
(イ) 被告Y1は,TMリンクの代表取締役として,本件派遣契約を締結した。
(ウ) 本件派遣契約の内容は,要旨,①TMリンクの雇用する労働者を,その雇用関係をもとに,原告の取り扱う業務に原告の指揮命令を受けて労働に従事させるために派遣する,②契約期間は,平成20年4月10日から平成22年4月9日までの2年間とする,③上記①の原告の取り扱う業務内容は,主に原告の半導体開発業務及びそのサポート業務(業務名は技術支援業務全般)であり,作業場所は原告の本社,開発センター等とする,④原告のTMリンクに対する月額の業務委託料(以下「派遣料」という。)は,1か月間における時間単価による実績ベースとし,基本時間単価は,研修期間中は1700円,その後は原告とTMリンクの協議で決定した金額とするというものであった。
イ TMリンクは,平成20年4月から平成21年6月までの間,本件派遣契約に基づき,原告に対して労働者を派遣し,原告は,同契約に基づき,TMリンクに対し,派遣料合計1842万4790円を支払った(甲39,弁論の全趣旨)。
(5)  TMリンクと原告との間の金銭消費貸借契約
TMリンクは,原告に対し,次のとおり,金員を貸し付けたが,各金銭消費貸借契約の締結は,被告Y1が両社の各代表取締役として行った。
ア(ア) TMリンクは,平成20年5月8日,原告に対し,返済期日を同月13日とし,原告が手数料0.5%及び年利7%を支払うとの約定で,400万円を貸し付けた(甲7。以下「本件金銭消費貸借契約1」という。)。
(イ) 原告は,平成20年5月13日,本件金銭消費貸借契約1に基づき,TMリンクに対し,元本400万円を弁済するとともに,手数料及び利息として合計2万4603円を支払った(争いがない)。
イ(ア) TMリンクは,平成20年5月30日,原告に対し,返済期日を同年6月10日とし,原告が手数料1%及び年利7%を支払うとの約定で,450万円を貸し付けた(甲8。以下「本件金銭消費貸借契約2」という。)。
(イ) 原告は,平成20年6月6日,本件金銭消費貸借契約2に基づき,TMリンクに対し,元本450万円を弁済するとともに,手数料及び利息として合計5万1904円を支払った(争いがない)。
(6)  被告Y1と原告との間の金銭消費貸借契約
ア 原告について,要旨,次の内容が記載された平成20年6月20日付けの取締役会議事録(乙15)が作成されている。
(ア) 出席取締役
被告Y1,B,D(以下「D」という。),E,C
(イ) 第2号議案 借入れ承認の件
本議案の議長となったBは,事業資金確保のため,次のとおり借入を実行したい旨述べたところ,出席取締役(特別利害関係人である被告Y1を除く。)は,全員異議なく承認可決した。
① 借入先 被告Y1
② 借入金額 2000万円
③ 借入日 平成20年6月10日
④ 返済期限 平成20年8月30日
⑤ 返済方法 一括返済
⑥ 借入利率 3.0%
イ(ア) 被告Y1は,平成20年6月10日,原告に対し,返済期日を同年8月30日とし,原告が手数料2%及び年利7%を支払うとの約定で,2000万円を貸し付けた(甲24。以下「本件金銭消費貸借契約3」という。)。
(イ) 原告は,平成22年1月29日,本件金銭消費貸借契約3に基づき,被告Y1に対し,利息として合計199万6408円を支払った(弁論の全趣旨)。
(7)  被告Y1の役員報酬の増額
ア 平成11年6月2日開催の原告の株主総会において,取締役及び監査役の報酬額改定の件(第4号議案)として,取締役の報酬額を年額4000万円以内とする旨の決議がされた(甲27)。
イ 原告について,要旨,次の内容が記載された平成21年7月17日付けの取締役会議事録(乙16。以下「本件議事録」という。)が作成されている。
本件議事録については,その内容の信用性については争いがあるが,成立に争いはない。なお,出席役員中,出席取締役全員及びF(監査役。以下「F」という。)は本件議事録に押印したが,A(監査役)は本件議事録に押印していない。
(ア) 出席取締役 被告ら及びC(通常の方法による出席),B(電話会議システムの方法による出席)
(イ) 出席監査役 A(通常の方法による出席),F(電話会議システムの方法による出席)
(ウ) 議案 取締役の報酬額改定の件
議長である被告Y1は,経済情勢の変化及び諸般の事情に鑑み,取締役の報酬額改定の件として承認可決した年額報酬の範囲内で,平成21年7月以降,一部の取締役の報酬を増額したいこと,具体的金額の決定については被告Y1に一任願いたいことを諮ったところ,出席取締役は,全員異議なく承認可決した。
ウ(ア) 被告Y1は,平成21年7月以降,自らの役員報酬の月額を100万円から160万円に増額した(以下「本件増額」という。)(争いがない)。
(イ) 原告は,平成21年7月から平成22年2月までの間,被告Y1に対し,役員報酬として月額160万円を支払った(争いがない)。
2  事案の要旨
本件は,原告が,被告Y1については,①同人が原告の代表取締役に就任した以降の本件業務委託契約2,本件派遣契約及び本件金銭消費貸借契約1ないし3は利益相反取引であるが,同人は各契約に関して取締役会の承認を受けていない,②本件増額は,取締役会の決議を経ていないなど,同人の善管注意義務及び忠実義務違反行為である旨を主張し,被告Y2については,同人は,原告の取締役に就任して以降,本件業務委託契約2,本件派遣契約及び本件金銭消費貸借契約3が取締役会の承認を受けていないこと,本件増額が被告Y1の任務懈怠行為であることを知りながら,これらに関する支払を行い,善管注意義務及び忠実義務に違反した旨を主張し,会社法423条1項,430条に基づき,被告らの任務懈怠行為により原告が被ったとする損害1987万8079円については被告らが連帯して賠償することを,被告Y1の任務懈怠行為のみによって原告が被ったとする損害840万5034円については被告Y1が単独で賠償することを求めるとともに,これらに対する訴状送達の日の翌日である平成22年3月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
3  争点
(1)  本件業務委託契約2について
ア 被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の要否及び有無)
イ 原告の損害の有無及び範囲
ウ 被告Y2の責任の有無
(2)  本件派遣契約について
ア 被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の有無)
イ 原告の損害の有無及び範囲
ウ 被告Y2の責任の有無
(3)  本件金銭消費貸借契約1及び2について
ア 被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の有無)
イ 原告の損害の有無及び範囲
(4)  本件金銭消費貸借契約3について
ア 被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の有無)
イ 原告の損害の有無及び範囲
ウ 被告Y2の責任の有無
(5)  本件増額について
ア 被告らの任務懈怠の有無
イ 原告の損害の有無及び範囲
第3  争点に対する当事者の主張
1  争点(1)(本件業務委託契約2)
(1)  争点(1)ア(被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の要否及び有無))
(原告の主張)
本件業務委託契約2は利益相反取引であるが,被告Y1は,同契約について,会社法356条1項2号,365条1項所定の取締役会の承認を受けず,その任務を懈怠した。
(被告らの主張)
本件業務委託契約2は,取締役会の承認がある本件業務委託契約1の更新契約であり,同契約のロイヤリティの率を原告にとって有利に変更したものであるから,被告Y1は,本件業務委託契約2について,改めて取締役会の承認を受ける必要はなかった。
仮に,本件業務委託契約2について取締役会の承認が必要であるとしても,被告Y1は,本件業務委託契約1を締結していたTMリンクの代表取締役であることを前提に,原告の代表取締役として迎え入れられ,原告の全取締役は本件業務委託契約2を了解していたから,被告Y1が原告の代表取締役に選任された平成20年3月28日開催の原告の取締役会において,本件業務委託契約2についての承認決議がされたというべきである。
(2)  争点(1)イ(原告の損害の有無及び範囲)
(原告の主張)
原告は,TMリンクに対し,無効である本件業務委託契約2に基づき,平成20年5月から平成21年6月までの間,業務委託料及び経費の合計1735万8770円を支払っており,被告Y1の任務懈怠行為により,原告に同額の損害が生じた。TMリンクは,原告に対し,本件業務委託契約2に基づく役務の提供を行っていない。
(被告らの主張)
TMリンクは,本件業務委託契約2を締結した平成20年5月以降も,それまで同様,原告に対し,原告の海外生産ラインの構築のサポート,原告が株式会社オプトエレクトロニクス(以下「オプト」という。)から受注するためのオプトの海岸生産移管サポートなどの役務の提供を行い,原告は,TMリンクに支払った業務委託料及び経費に相当する役務の提供をTMリンクから受けていたから,原告に損害は発生していない。
(3)  争点(1)ウ(被告Y2の責任の有無)
(原告の主張)
被告Y2は,原告の取締役に就任した平成21年3月27日以降,本件業務委託契約2が取締役会の承認を受けていないことを知りながら,その任務を懈怠して,TMリンクに対し,平成20年11月分以降の業務委託料合計924万円を支払い,原告に同額の損害を被らせた。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
2  争点(2)(本件派遣契約)
(1)  争点(2)ア(被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の有無))
(原告の主張)
本件派遣契約は利益相反取引であるが,被告Y1は,同契約について,会社法356条1項2号,365条1項所定の取締役会の承認を受けず,その任務を懈怠した。
(被告らの主張)
本件派遣契約について,被告Y1が取締役会で承認を受ける手続を行っていないことは認めるが,遅くとも,原告が東陽監査法人による監査を受け,同監査法人から原告とTMリンクとの間の利益相反の問題を解決するように指摘された平成20年11月の時点では,取締役会の承認に相当する原告の全取締役による承認が得られており,実質的には取締役会の承認があった。
(2)  争点(2)イ(原告の損害の有無及び範囲)
(原告の主張)
原告は,TMリンクに対し,本件派遣契約に基づき,平成20年4月から平成21年6月までの間,派遣料合計1842万4790円を支払った。
原告が労働者を直接雇用していた場合,上記期間内に原告に生じたと想定される費用は1437万3362円であり,被告Y1の任務懈怠行為により,原告には,上記派遣料と上記想定費用の差額である405万1428円の損害が生じた。
(被告らの主張)
TMリンクが本件派遣契約に基づく派遣料を受領したことは認めるが,原告は,本件派遣契約によって,原告が直接雇用していた場合に発生した紹介料の支払いを免れるという利益を得ていること,TMリンクは,本件派遣契約に関連して,専門スタッフを雇用したり,研修資料の翻訳費用を負担したり,現地法人に教育を依頼する費用を負担したりするなど,人材派遣のための費用を負担していたが,原告が直接雇用していた場合には,これらの費用は原告が負担する必要があったことなどから,原告に損害は発生していない。
(3)  争点(2)ウ(被告Y2の責任の有無)
(原告の主張)
被告Y2は,原告の取締役に就任した平成21年3月27日以降,本件派遣契約が取締役会の承認を受けていないことを知りながら,その任務を懈怠して,TMリンクに対し,平成20年11月分以降の派遣料合計1433万5407円を支払った。
被告Y2の任務懈怠行為によって,原告には,上記派遣料と原告が労働者を直接雇用していた場合に上記期間内に原告に生じたと想定される費用1049万3736円との差額である384万1641円の損害が生じた。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
3  争点(3)(本件金銭消費貸借契約1及び2)
(1)  争点(3)ア(被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の有無))
(原告の主張)
本件金銭消費貸借契約1及び2は利益相反取引であるが,被告Y1は,各契約について,会社法356条1項2号,365条1項所定の取締役会の承認を受けず,その任務を懈怠した。
(被告らの主張)
本件金銭消費貸借契約1及び2について,被告Y1が取締役会で承認を受ける手続を行っていないことは認めるが,原告の全取締役は,本件金銭消費貸借契約1及び2の締結を了解しており,取締役会の承認に相当する原告の全取締役による承認が得られていたから,実質的には取締役会の承認があった。
(2)  争点(3)イ(原告の損害の有無及び範囲)
(原告の主張)
原告は,TMリンクに対し,無効である本件金銭消費貸借契約1及び2に基づき,手数料及び利息合計7万6507円を支払っており,被告Y1の任務懈怠行為により,原告に同額の損害が生じた。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
4  争点(4)(本件金銭消費貸借契約3)
(1)  争点(4)ア(被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の有無))
(原告の主張)
本件金銭消費貸借契約3は利益相反取引であるが,被告Y1は,同契約について,会社法356条1項2号,365条1項所定の取締役会の承認を受けず,その任務を懈怠した。
(被告らの主張)
被告Y1は,平成20年6月20日開催の原告の取締役会において,本件金銭消費貸借契約3の承認を受けた(乙15)。
(2)  争点(4)イ(原告の損害の有無及び範囲)
(原告の主張)
原告は,被告Y1に対し,無効である本件金銭消費貸借契約3に基づき,平成22年1月29日に利息合計199万6408円を支払っており,被告Y1の任務懈怠行為により,原告に同額の損害が生じた。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
(3)  争点(4)ウ(被告Y2の責任の有無)
(原告の主張)
被告Y2は,本件金銭消費貸借契約3が取締役会の承認を受けていないことを知りながら,その任務を懈怠し,被告Y1に対し,利息合計199万6408円を支払い,原告に同額の損害を被らせた。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
5  争点(5)(本件増額)
(1)  争点(5)ア(被告らの任務懈怠の有無)
(原告の主張)
ア 本件増額は,原告の取締役会決議を経ていない。本件議事録(乙16)の記載は,虚偽である。また,当時の原告の業績等から判断して,被告Y1の役員報酬を増額する根拠はなかった。したがって,被告Y1には,本件増額に関し,取締役としての善管注意義務及び忠実義務違反が認められ,任務懈怠が認められる。
イ 被告Y2は,本件増額が被告Y1の任務懈怠行為であることを知りながら,被告Y1に対して本件増額に係る金員を支払い,その任務を懈怠した。
(被告らの主張)
本件増額は,本件議事録(乙16)のとおり,平成21年7月17日開催の原告の取締役会において決議されている。また,取締役の報酬に関する相当性については,原則として,当該会社の自主的な判断に委ねられるべき事項であって,著しく不当であると認められるような特段の事情がある場合を除き,裁判所は,その適否を判断すべきではない。
(2)  争点(5)イ(原告の損害の有無及び範囲)
(原告の主張)
被告Y1に支払われた平成21年7月分から平成22年2月分までの役員報酬の増額分は,合計480万円であり,被告らの任務懈怠行為により,原告に同額の損害が生じた。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
第4  争点に対する判断
1  争点(1)ないし(3)の各ア(本件業務委託契約2,本件派遣契約,本件金銭消費貸借契約1及び2に関する被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の要否又は有無))について
(1)  前提事実(3)ないし(5)及び弁論の全趣旨によれば,本件業務委託契約2,本件派遣契約,本件金銭消費貸借契約1及び2は,いずれも利益相反取引(会社法356条1項2号)に該当するが,被告Y1は,原告の取締役会において,上記各契約に関し,重要な事実を開示した上で,その承認を受けなかったことが認められる。
(2)ア  被告らは,本件業務委託契約2は,取締役会の承認がある本件業務委託契約1の更新契約であり,同契約のロイヤリティの率を原告にとって有利に変更したものであるから,被告Y1は,本件業務委託契約2について,改めて取締役会の承認を受ける必要はなかった旨主張する。
しかし,会社法356条1項2号及び365条1項は,取締役が会社の利益の犠牲において自己又は第三者の利益を図ることを防止する趣旨に基づき,取締役会設置会社においては,取締役が自己又は第三者のために会社と取引をしようとするときには取締役会の承認を受けなければならないとしたものである。
このような会社法の規制の趣旨にかんがみれば,本件業務委託契約1を更新するか否か,どのような内容で更新するか等については,取締役である被告Y1が原告の利益を犠牲にしてTMリンクの利益を図るおそれがあるから,本件業務委託契約2の締結に当たっては,取締役会の承認を受ける必要があり,このことは,本件業務委託契約2が本件業務委託契約1の内容を有利に変更した上で更新する内容であったことによって左右されるものではないと解される。
イ  また,被告らは,前記第3の1ないし3の各(1)のとおり,原告の全取締役は,本件業務委託契約2,本件派遣契約,本件金銭消費貸借契約1及び2を了解していたから,各契約については,実質的には取締役会の承認決議があった旨主張する。
そこで検討すると,会社法356条1項2号及び365条1項は,取締役会設置会社において取締役が自己又は第三者のために会社と取引をしようとする場合には,取締役会において,当該取引につき重要な事実を開示し,その承認を受けなければならないとしている。
そして,会社法は,取締役会設置会社においては,原則として,現実に取締役が集まった会議において会社の業務に関する意思決定をすることを予定し(最高裁昭和40年(オ)第1197号昭和44年11月27日第一小法廷判決・民集23巻11号2301頁参照),その例外として,同法370条において,取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案した場合において,当該提案につき取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは,当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる旨定めていると解される。
したがって,会社法356条1項2号及び365条1項所定の取締役会の承認があったというためには,当該取引につき重要な事実が開示されたことを前提として,当該取引に関し,現実の会議として開催された取締役会における承認決議又は同法370条所定のみなし決議が行われることが必要というべきである。
これを本件についてみると,本件全証拠によっても,本件業務委託契約2,本件派遣契約,本件金銭消費貸借契約1及び2について,現実の会議として開催された取締役会における承認決議又は会社法370条所定のみなし決議が行われたことは,これを認めるに足りない。
ウ  以上のとおり,被告らの主張は,いずれも採用できない。
(3)  以上によれば,本件業務委託契約2,本件派遣契約,本件金銭消費貸借契約1及び2には,利益相反取引の制限(会社法356条1項2号,365条)の違反が認められ,被告Y1には,各契約に関し,原告の取締役としての任務懈怠(同法423条1項)が認められる。
2  争点(1)イ(本件業務委託契約2に関する原告の損害の有無及び範囲)について
(1)  認定事実
前提事実に加え,関係証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 本件業務委託契約1の締結に至る経緯
(ア) 被告Y1とBは,いずれも富士通株式会社(以下「富士通」という。)に勤務し,被告Y1が半導体設計部門において設計エンジニアとして勤務した際に親しくなった(乙27)。
(イ) Bは,昭和61年,富士通の関連会社を退職し,昭和63年,福岡市博多区を本店所在地として,半導体集積回路の企画及び設計等を目的とする原告を設立した(甲38)。
原告は,平成17年に神奈川県横浜市を本店所在地とする株式会社1021テクノロジーズを子会社化したが,同社に膨大な損失が生じるなど,平成17年当時,財務状況が悪化し,厳しい経営状況にあった(甲38,乙39,証人C)。
(ウ) 被告Y1は,富士通において半導体部門統括部長の地位にあったが,平成17年8月,同社を退職し,同年9月,自宅所在地である三重県桑名市を本店所在地として,TMリンクを設立した(乙27,被告Y1本人)。
TMリンクは,実際には東京都中央区所在の事務所において活動し,その業務内容は,被告Y1が富士通時代に培った半導体設計技術,生産技術,マーケティング能力,エレクトロニクス系の商流と人脈をベースにしたアウトソーシングによる半導体・エレクトロニクス製品の設計・生産請負,営業支援,コンサルティングなどであった。また,TMリンクは,FiveArrows(香港・中国深〓),Tacoma/PrimeGoal(台湾,香港,上海)などの海外企業と提携し,TMリンクのブランチ(支店)としての業務を委託していた。TMリンクは,設立当初から,比較的順調に業績を上げていた(乙27,31,46の2,47)。
(エ) 原告の代表取締役であるBは,被告Y1の退職を知って同人に連絡を取り,平成17年11月1日,原告とTMリンクとの間で,原告の業務の一部(①原告の事業を支援し,ビジネスの活性化を図ること,②市場の分析と顧客の情報から原告に適切な商談を推進すること,③TMリンクの人脈とスキルを活用し,原告に有益なビジネスをもたらすこと)をTMリンクに委託し,業務委託料を月額35万円,期間を同日から2年間とする業務委託契約(甲18)を締結した(甲38,被告Y1本人)。
(オ) その後,原告は,平成18年5月1日,TMリンクとの間で,委託手数料を月額110万円,ロイヤリティの率を売上の最低2%,期間を同日から2年間とする本件業務委託契約1(甲3)を締結した。
イ オプトからの新規開発の受注(乙27,57,被告Y1本人)
オプトは,埼玉県蕨市を本店所在地とし,大阪証券取引所(ジャスダック)に株式を上場する企業であり,平成19年初旬から,安価なバーコードリーダーの開発を検討していたところ,同年4月ころ,他社から,海外ファブを活用して安価にカスタムLSIを開発できる会社として原告(副社長であるD)を紹介され,さらに,Dから,原告のコンサルタントをしていたTMリンク(被告Y1)を紹介された。
被告Y1及びDは,オプトに対し,TMリンクがオプトの中国への製造移管等をサポートするので,廉価版LSIチップの新規開発を大手企業に発注するのではなく,原告に発注して欲しい旨の提案し,被告Y1がオプトの経営トップの信頼を獲得したことから,オプトは,平成19年9月,TMリンクが上記サポートを行うことを条件として,原告に対し,上記廉価版LSIチップの新規開発を発注した。
TMリンクは,提携先であるFiveArrows(香港・中国深〓),Tacoma/PrimeGoal(台湾,香港,上海)とともに,オプトの中国への製造移管等をサポートした。
ウ 被告Y1が原告の代表取締役に就任した経緯
(ア) Bは,平成19年12月ころ,厳しい経営状況にある原告の再建のため,被告Y1に原告の次期代表取締役に就任してもらいたい旨の意向を示し,他の取締役も,その意向に同意した(乙39)。
Bは,被告Y1に対し,自分は開発に専念したいので,被告Y1に経営全般を任せたいとして,Cとともに,原告の代表取締役就任を打診したが,被告Y1は,自ら設立したTMリンクの経営があったため,これを固辞した(乙27,39,証人C,被告Y1本人)。
(イ) Bは,平成20年初旬ころ,再度,被告Y1に対し,月額報酬を自分の倍(200万円)とすること,経営には一切口を出さないこと,関東への本社移転を行い,本社機能を関東に移して被告Y1に任せ,福岡は開発センターにしたいことなどの条件を提示して,原告の代表取締役就任を打診し,被告Y1の説得を試みた(乙27,被告Y1本人)。
これに対し,被告Y1は,①TMリンクの経営を止めることはできないので,原告とTMリンクとの間の本件業務委託契約1(業務委託料月額110万円)は,当面,継続し,その代わりに,被告Y1の月額報酬はBと同額(100万円)とすること,②本社を関東地区に移転し,関東での新規ビジネス開拓を中心に行うことを条件として提示し,Bが,これに応じたことから,被告Y1は,原告の代表取締役就任を引き受けた(乙27,被告Y1本人)。
(ウ) 当時の原告の取締役は,被告Y1が,原告の代表取締役に就任した後も,TMリンクの代表取締役を兼務することを了解していた(乙39,証人C)。
(エ) 以上の経緯を経て,平成20年3月開催の原告の株主総会及び取締役会において,被告Y1が原告の代表取締役社長,Bが代表取締役会長兼CTOに選任され,被告Y1は,同月28日,原告の取締役及び代表取締役に就任した。それ以降,Bは,福岡開発センターで技術を統括し,被告Y1は,それ以外の経営全般を関東に移した本社でみることとなり,原告の新しい経営体制がスタートした。そして,原告は,平成20年4月,本店所在地を福岡市博多区内から,被告Y1がオプトの経営トップから本店所在地の移転先として打診を受けた埼玉県蕨市所在のオプトの旧本社所在地に移転した(乙27,39)。
エ 本件業務委託契約2の締結
(ア) 被告Y1は,前記ウ(イ)の経緯を踏まえ,平成20年5月1日,原告及びTMリンクの各代表取締役として,両社の間で,委託手数料率を売上の最低1%とするほかは本件業務委託契約1と同一の契約内容である本件業務委託契約2(乙1)を締結した。
(イ) 被告Y1は,原告の取締役会において,本件業務委託契約2に関し,重要な事実を開示し,その承認を受けることをしなかった。
オ その後の経緯
(ア) 原告は,被告Y1がオプトの経営トップと頻繁に面談するなどした結果,平成20年5月,オプトから,総額1億円以上となる大型案件として,オプトが次期開発製品に使う大規模なLSI開発を受注した(乙57)。
(イ) 原告は,平成20年秋,監査法人による簡易監査を受けたが,監査担当者から,原告とTMリンクとの取引が利益相反に該当する可能性があるため,上場準備期間に入る前に段階的に関係を解消すべきである旨の指摘を受けた(乙27,39)。
上記指摘については原告社内において検討され,被告Y1は,平成20年11月開催の取締役会において,約半年をかけて原告とTMリンクとの間の取引を整理,解消する旨述べた(乙27,39)。
(ウ) オプトは,上記(ア)の受注に係るLSIの開発に設計ミスや技術的問題が頻発し,大幅な開発遅延が生じるなどしたため,平成21年以降,原告に対するLSI開発委託を中止した(乙57)。
(エ) TMリンクは,平成21年中も,オプトの中国への製造移管等に対するサポートを継続し,上記製造移管等は順調に推移した(乙57,被告Y1本人)。
(オ) 本件業務委託契約2は,平成21年6月,合意解除された(乙27,39)。
(カ) 原告は,平成20年5月から平成21年6月までの間,本件業務委託契約2に基づき,TMリンクに対し,月額110万円の業務委託料及び経費を支払った(弁論の全趣旨)。
以上の事実が認定できる。
なお,Bは,被告Y1が原告の代表取締役に就任した経緯(前記ウ)に関し,被告Y1に原告の代表取締役就任を打診した際,TMリンクとの関係を絶つこと,少なくとも本件業務委託契約1を合意解除することを条件として提示し,被告Y1の了解を得た,被告Y1に月額200万円の報酬金額を提示したことはなく,被告Y1自らが月額100万円の役員報酬で良いと言ってくれた旨供述する(甲38,証人B)。
しかし,関係証拠及び弁論の全趣旨によれば,TMリンクの経営は,設立者である被告Y1の能力,経験,人脈等に依拠するものであったこと,被告Y1が原告の代表取締役就任を打診された当時,TMリンクは,その業績が比較的順調であったのに対し,原告は,厳しい経営状況にあったことが認められ,このような状況において,Bが供述するような条件のもと,被告Y1が原告の代表取締役就任を引き受けるということは,社会通念上も,経済合理性の観点からも,不自然,不合理であり,Bの供述は信用できない。
(2)  以上の認定事実を踏まえて検討する。
ア 原告は,被告Y1の任務懈怠行為により,無効である本件業務委託契約2に基づき,平成20年5月から平成21年6月までの間に原告がTMリンクに対して支払った業務委託料及び経費の合計1735万8770円と同額の損害が原告に生じたのであり,原告はTMリンクから上記業務委託料及び経費に相当する役務の提供も受けていない旨主張する。
イ そこで検討すると,前記(1)の認定事実及び弁論の全趣旨によれば,TMリンクは,平成18年5月以降,本件業務委託契約1に基づき,原告に対し,業務委託料110万円に相当する役務の提供を行っていたこと,被告Y1は,TMリンクの代表取締役として,平成19年9月,TMリンクがオプトの中国への製造移管等をサポートすることを条件とする,オプトからの原告に対する新規開発の発注を実現したが,これは,本件業務委託契約1に基づく役務の提供と評価できること,平成20年当時,上記製造移管等は完了しておらず,引き続き,TMリンクがオプトに対し,上記サポートを行う必要があったこと,被告Y1は,Bから原告の代表取締役就任を打診された際,Bに対し,上記打診を引き受ける条件として,TMリンクの経営を止めることはできないので,原告とTMリンクとの間の本件業務委託契約1(業務委託料月額110万円)は,当面,継続し,その代わりに,被告Y1の月額報酬は,Bが提示した200万円ではなく,100万円(Bと同額)とすることを提示し,Bが,これに応じたこと,当時の原告の取締役は,被告Y1が原告の代表取締役就任後もTMリンクの代表取締役を兼務することを了解していたこと,被告Y1は,TMリンクの代表取締役として,本件業務委託契約2を締結した平成20年5月前後を通じて,オプトの中国への製造移管等をサポートし,上記サポートの継続があったことにより,原告は,同月,オプトから,総額1億円以上となる大型案件を受注するに至ったこと,上記製造移管等は,平成21年中も継続して行われ,被告Y1は,TMリンクの代表取締役として,オプトからの原告に対する新規開発の発注の条件を果たすため,これをサポートする必要があり,現に上記サポートを行ったことなどが認められる。
これらの事情にかんがみれば,被告Y1は,平成20年3月に原告の代表取締役に就任した以降も,原告の代表取締役の地位に基づく職務とは別に,TMリンクの代表取締役の地位に基づく活動として,本件業務委託契約1及び2に基づき,オプトからの原告に対する新規開発の発注の条件であったTMリンクによるオプトの中国への製造移管等のサポートを行うことによって,原告の事業を支援し,ビジネスの活性化を図り,原告の新規事業を推進していたと認められ,TMリンクは,平成20年5月以降,本件業務委託契約2に基づき,原告に対して役務を提供し,原告は,TMリンクからの役務の提供により,TMリンクに対して支払った業務委託料及び経費に相当する利益を享受したと評価できるから,本件業務委託契約2に関する原告の損害賠償請求は認められないというべきである。
(3)  以上によれば,本件業務委託契約2に関する原告の被告Y1に対する請求は,理由がない。
そして,本件業務委託契約2に関する原告の被告Y2に対する請求(争点(1)ウ)も,原告の被告Y1に対する損害賠償請求が認められないこと,原告が主張する被告Y2の任務懈怠行為の存在も,本件全証拠によっても,これを認めるに足りないことから,理由がない。
3  争点(2)イ(本件派遣契約に関する原告の損害の有無及び範囲)について
(1)  認定事実
前提事実に加え,関係証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア TMリンクの人材派遣事業(甲2,乙27,31,被告Y1本人)
TMリンクは,設立直後から,中国EMEI易美人材有限公司(以下「EMEI」という。)と業務提携し,中国ハルピンにおいて,中国人に対する日本語教育及び専門教育を行い,日本企業に派遣する人材派遣事業を行っており,特定労働者派遣事業者として活動していた。
イ 本件派遣契約締結に至る経緯
(ア) 原告は,技術者の新卒者採用が困難であり,従業員の定着率が低く,技術力の向上及び蓄積が十分でないなどの問題を抱えていた(甲38,乙39)。
(イ) 原告の代表取締役であるBは,平成20年初旬ころ,原告との間で本件業務委託契約1を締結していたTMリンクに対し,原告において中国人労働者を採用することを相談した(乙27,被告Y1本人)。
Bと被告Y1は,中国人労働者の就労体系について協議し,原告が中国人労働者を直接雇用することも検討したが,最終的には,TMリンクとEMEIが人選した人材の中から,Bが選考して採用することを決めた人材をTMリンクが雇用し,これを原告に派遣するという方法によることとした。その理由は,原告が中国人労働者を直接雇用する場合には,原告自らがEMEIに対して紹介料約540万円を支払う必要があったが,当時の原告の経営状況から,原告自らが上記紹介料を拠出することが困難であったことなどであった(乙27,被告Y1本人)。
(ウ) 以上の経緯を経て,平成20年4月10日及び同月20日,原告及びTMリンクとの間で,派遣労働者が従事する業務内容を技術支援業務全般とする本件派遣契約が締結された(乙4,5)。
(エ) TMリンクは,中国人労働者を雇用し,原告に派遣するため,資料等の翻訳料,EMEIに対する教育費用を支出し,EMEI所在地に駐在する専門スタッフ(G)を雇用するなどした(乙8,40~42)。
ウ 本件派遣契約締結後の経緯
(ア) TMリンクは,本件派遣契約に基づき,Bが選考するなどした中国人労働者を雇用し,平成20年4月から平成21年6月までの間,原告に対して派遣し,原告は,同契約に基づき,TMリンクに対し,派遣料合計1842万4790円を支払った(甲39,乙6~10)。
(イ) この種の人材派遣における派遣料の相場は,当時,派遣労働者1人につき,1時間当たり2000円以上であったが,原告がTMリンクに対して支払った派遣料は,派遣労働者1人につき,1時間当たり約1600円から1850円であった(甲39,乙5,11,27)。
なお,平成20年度における特定労働者派遣事業における機械設計に関する派遣料金の平均額は,派遣労働者1人につき,1日(8時間)当たり2万7757円(1時間当たり3469円)であった(乙43の16ページ)。
(ウ) 本件派遣契約は,本件業務委託契約2と同様の経緯で,平成21年6月に合意解除され,本件派遣契約に基づいて派遣されていた中国人労働者については,新たに,株式会社ELG(外国人専門の人材派遣会社)と原告との間で労働者派遣契約が締結された。
平成22年6月時点において,本件派遣契約に基づいて原告に派遣されていた中国人労働者4名が株式会社ELGから引き続き原告に派遣されていたが,上記時点の派遣料は,1時間当たり,H・1700円,I・1800円,J・2050円,K・1200円(1人平均1687円)であった(甲36)。
なお,上記4名が本件派遣契約に基づいて派遣されていた当時の派遣料は,1時間当たり,1700円から1850円であった(甲39)。
以上の事実が認定できる。
なお,Bは,本件派遣契約締結に至る経緯に関し,原告が中国人労働者を直接雇用することを前提に選考等を行っていたが,契約を締結する段階になり,突如として,被告Y1がTMリンクが中国人労働者を雇用して原告に対して派遣する以外に方法はないと言い出し,その理由の説明を求めたものの,被告Y1は,理由を説明することなく,一方的に押し切る形で,本件派遣契約を締結した旨主張するが(甲38,証人B),その供述内容は,被告Y1が原告の代表取締役に就任した経緯,当時の原告の経営状況,Bの地位等に照らし,被告Y1の供述に比して不自然,不合理な内容であり,信用できない。
(2)  以上の認定事実を踏まえて検討する。
ア 原告は,原告が中国人労働者を直接雇用していた場合に平成20年4月から平成21年6月までの間に原告に生じたと想定される費用は1437万3362円である旨の主張を前提とした上で,被告Y1の任務懈怠行為により,原告には,上記期間内に原告がTMリンクに対して支払った派遣料合計1842万4790円と上記想定費用の差額である405万1428円の損害が生じた旨主張する。
イ しかし,前記(1)の認定事実によれば,原告が中国人労働者を直接雇用することは,当時の原告の経営状況から,困難であったことが認められ,原告の主張は,その前提を欠くものである。また,原告は,原告が中国人労働者を直接雇用した場合に原告に生じたと想定される費用を主張するが,その主張内容は,前記(1)の認定事実イ(エ)に照らし,必要とされる全ての費用を考慮していると評価できない。
そして,前記(1)の認定事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,当時,技術者の新卒者採用が困難であり,従業員の定着率が低く,技術力の向上及び蓄積が十分でないなどの問題を抱えており,人材採用の必要性に迫られており,そのような必要性を背景として,Bが,人材派遣業を行っていたTMリンクに対して中国人労働者の採用を相談したことを契機として,本件派遣契約の締結に至っていること,本件派遣契約に基づくTMリンクに対する派遣料は,当時の相場等と比較すると低額であり,本件派遣契約に基づいて派遣されていた中国人労働者に関する平成22年6月時点における派遣料をみても,経済情勢等に照らし,上記TMリンクに対する派遣料は,適正を欠くものではなかったと評価でき,仮に,TMリンクから中国人労働者の派遣を受けるという本件派遣契約ではなく,原告が他の人材派遣会社から中国人労働者の派遣を受けたとしても,上記TMリンクに対する派遣料に相当する支出が必要であったことなどが認められ,これらの事情にかんがみれば,原告が主張する損害の存在を認定することはできず,本件派遣契約に関する原告の損害賠償請求は認められないというべきである。
(3)  以上によれば,本件派遣契約に関する原告の被告Y1に対する請求は,理由がない。
そして,本件派遣契約に関する原告の被告Y2に対する請求(争点(2)ウ)も,原告の被告Y1に対する損害賠償請求が認められないこと,原告が主張する被告Y2の任務懈怠行為の存在も,本件全証拠によっても,これを認めるに足りないことから,理由がない。
4  争点(4)ア(本件金銭消費貸借契約3に関する被告Y1の任務懈怠の有無(取締役会の承認の有無))について
(1)  前提事実(6)によれば,本件金銭消費貸借契約3は,利益相反取引(会社法356条1項2号)に該当すること,原告の取締役会は,平成20年6月20日,同月10日に原告が被告Y1から借入利率年3.0%との約定で2000万円を借り入れることを承認する旨の決議をしたこと(乙15),被告Y1は,同月10日付けで,原告に対し,手数料2%及び年利7%を支払うとの約定で2000万円を貸し付ける旨の本件金銭消費貸借契約3を締結したことが認められる。
(2)  以上の認定事実によれば,平成20年6月20日開催の原告の取締役会においては,年利3%を支払うとの約定で,原告が被告Y1から2000万円の借入を受けることが承認されたものであり,これと異なる手数料及び年利を定めた本件金銭消費貸借契約3については,原告の取締役会の承認はないと認められる。
(3)  これに対し,被告らは,平成20年6月20日開催の原告の取締役会における承認決議(乙15)を根拠として,本件金銭消費貸借契約3は取締役会の承認を受けている旨主張するが,上記取締役会において承認を受けた契約内容と実際に行われた本件金銭消費貸借契約3の内容は,手数料及び利息という重要な事項に関して異なっており,上記承認決議をもって,本件金銭消費貸借契約3について取締役会の承認があったと評価することはできず,被告らの主張は採用できない。
(4)  以上によれば,本件金銭消費貸借契約3には,利益相反取引の制限(会社法356条1項2号,365条)の違反が認められ,被告Y1には,同契約に関し,原告の取締役としての任務懈怠(同法423条1項)が認められる。
5  争点(3)及び(4)の各イ(本件金銭消費貸借契約1ないし3に関する原告の損害の有無及び範囲)について
(1)  認定事実
前提事実,前記2(1)の認定事実に加え,関係証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 従前の状況
(ア) 原告は,平成17年以降,厳しい経営状況にあった。
(イ) 原告は,平成19年6月,株式会社シティズから,Bを連帯保証人とし,利息年率15%として,500万円を借り入れる旨の金銭消費貸借契約を締結した(乙58)。
(ウ) 原告は,平成19年7月,株式会社シティズから,Bほか1名を連帯保証人とし,利息年率15%として,1000万円を借り入れる旨の金銭消費貸借契約を締結した(乙59)。
(エ) 原告は,被告Y1が原告の代表取締役に就任した平成20年3月当時も,依然として,資金状況が厳しかった(乙12)。
イ 本件金銭消費貸借契約1及び2の締結に至る経緯等
(ア) 平成20年5月,原告は,他から資金調達をする必要があったが,他の金融機関等から融資を受けることが困難な状況であった。
そこで,被告Y1は,原告の資金調達の方法として,自らが代表取締役を務めるTMリンクの業績が順調であったことから,同社から原告に融資することとし,平成20年5月8日及び同月30日,TMリンク及び原告の各代表取締役として,本件金銭消費貸借契約1及び2を締結した(被告Y1本人)。
本件金銭消費貸借契約1の約定は,手数料0.5%及び年利7%,本件金銭消費貸借契約2の約定は,手数料1%及び年利7%であった(甲7,8)。
(イ) 原告は,平成20年5月13日,本件金銭消費貸借契約1に基づき,TMリンクに対し,元本に加え,手数料及び利息として合計2万4603円を支払い,同年6月6日,本件金銭消費貸借契約2に基づき,TMリンクに対し,元本に加え,手数料及び利息として合計5万1904円を支払った。
ウ 本件金銭消費貸借契約3の締結に至る経緯等
(ア) 平成20年6月,原告は,他から資金調達をする必要があったが,依然として,他の金融機関等から融資を受けることが困難な状況であり,被告Y1は,原告の資金調達の方法として,富士通を退職した際の退職金等をもとに,自らが原告に融資することとし,平成20年6月10日,TMリンク及び原告の各代表取締役として,本件金銭消費貸借契約3を締結した(被告Y1本人)。
本件金銭消費貸借契約3の約定は,手数料2%及び年利7%であった(甲24)。
(イ) 原告は,平成22年1月29日,本件金銭消費貸借契約3に基づき,被告Y1に対し,利息として合計199万6408円を支払った。
エ その後の経緯
原告は,被告Y1に対し,本件金銭消費貸借契約3等に基づく貸金元本2250万円の返済義務を負っているが,これを返済していない(争いがない)。
(2)ア  原告は,被告Y1の任務懈怠行為により,本件金銭消費貸借契約1及び2に関しては上記(1)イ(イ)のTMリンクに支払った手数料及び利息合計7万6507円と同額の損害が,本件金銭消費貸借契約3に関しては上記(1)ウ(イ)の被告Y1に支払った利息199万6408円と同額の損害が,それぞれ原告に生じた旨主張する。
イ  しかし,前記(1)の認定事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件金銭消費貸借契約1ないし3が締結された平成20年5月及び6月当時,資金調達の必要があったが,経営状況が厳しく,他の金融機関等から融資を受けることが困難な状況であったこと,仮に,他の金融機関等から融資を受けることができたとしても,平成19年6月及び7月に原告が金融機関から年15%の利率で融資を受けざるを得なかったことを踏まえると,本件金銭消費貸借契約1ないし3の各約定に比して有利な条件で融資を受けられたとは考えがたいことなどが認められ,これらの事情にかんがみれば,原告は,本件金銭消費貸借契約1ないし3によって,原告がTMリンク又は被告Y1に対して支払った手数料及び利息以上の利益を享受したと評価でき,本件金銭消費貸借契約1ないし3に関する原告の損害賠償請求は認められないというべきである。
(3)  以上によれば,本件金銭消費貸借契約1ないし3に関する原告の被告Y1に対する請求は,理由がない。
そして,本件金銭消費貸借契約3に関する原告の被告Y2に対する請求(争点(4)ウ)も,原告の被告Y1に対する損害賠償請求が認められないこと,原告が主張する被告Y2の任務懈怠行為の存在も,本件全証拠によっても,これを認めるに足りないことから,理由がない。
6  争点(5)ア(本件増額に関する被告らの任務懈怠の有無)について
(1)  前提事実,前記2(1)の認定事実に加え,関係証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告Y1が原告の代表取締役に就任した経緯
Bは,平成20年初旬ころ,かねてから原告の代表取締役就任を打診していた被告Y1に対し,月額報酬を自分の倍(200万円)とすることなどを提示し,被告Y1の説得を試みたところ,被告Y1が,Bに対し,原告とTMリンクとの間の本件業務委託契約1(業務委託料月額110万円)は,当面,継続し,その代わりに,被告Y1の月額報酬はBと同額(100万円)とすることなどを条件として提示し,Bが,これに応じたことから,被告Y1は,Bの打診を受け入れ,平成20年3月,原告の代表取締役に就任した(乙27,被告Y1本人)。
イ 本件業務委託契約2の締結及び合意解除
(ア) 被告Y1は,上記アの経緯を受け,平成20年5月1日,原告及びTMリンクの各代表取締役として,業務委託料月額110万円とする本件業務委託契約2(乙1)を締結した。
(イ) 原告は,平成20年秋,監査法人による簡易監査において,原告とTMリンクとの取引が利益相反に該当する可能性があるため,上場準備期間に入る前に段階的に関係を解消すべきである旨の指摘を受け,被告Y1は,平成20年11月開催の取締役会において,約半年をかけて原告とTMリンクとの間の取引を整理,解消する旨述べ,平成21年6月,本件業務委託契約2が合意解除された(乙27,39)。
ウ 本件増額に至る経緯
(ア) 被告Y1は,上記ア及びイの経緯を受け,自らの役員報酬を増額すること,具体的な金額としては,Bから提示された月額報酬は200万であったが,当時の原告の経営状況を勘案し,月額160万円とすることを考えた(乙27,被告Y1本人)。
(イ) 平成21年7月17日,原告の取締役会が開催され,被告Y1,被告Y2,C(以上の3名は取締役),A(監査役)が通常の方法により,B(取締役),F(監査役)が電話会議システムの方法により,それぞれ出席した。
被告Y1は,上記取締役会において議長を務め,平成11年6月2日付けの原告の株主総会決議(甲27)の年額報酬の範囲内で,平成21年7月以降,一部の取締役(被告Y1)の報酬を増額すること,具体的金額の決定については被告Y1(代表取締役)に一任願いたいことを提案したところ,出席取締役である被告Y2,C及びBは,いずれも上記提案を異議なく承認可決した(乙16)。
(ウ) 被告Y1は,上記(イ)の取締役会決議に基づき,平成21年7月以降,自らの役員報酬の月額を100万円から160万円に増額した(本件増額)(乙27)。
(2)ア  以上の認定事実によれば,本件増額は,平成21年7月17日開催の原告の取締役会において行われた決議に基づき,被告Y1が行ったものであると認められる。
イ  以上の認定に関し,原告は,平成21年7月17日開催の原告の取締役会において,議案として取締役の報酬額の改定の件が付議された事実はなく,したがって,出席取締役全員が異議なく承認可決したという事実もない,本件議事録(乙16)は,その成立の真正は争わないが,その内容は虚偽である旨主張し,B(甲38,証人B)及びA(甲44,45,原告代表者本人)は,これに沿う供述をする。
そこで検討すると,上記取締役会に出席した取締役のうち,C(乙39,証人C),被告Y1(乙27,被告Y1本人),被告Y2は,いずれも自らが押印した本件議事録(乙16)のとおり,本件増額についての決議は存在した旨供述又は主張している。
これに対し,その余の出席取締役であるBは,被告Y1が原告の代表取締役に就任して以降,被告Y1の報酬の増額が取締役会に上程されたことはないとした上で,本件議事録(乙16)については,上記取締役会に出席していた監査役の一人であるFに捺印しても良いかを確認したところ,内容に問題はない旨の答えであったため,内容を確認せずに押印した旨供述するが(甲38,証人B),その供述は,原告の設立者であり,当時も原告の代表取締役(会長)の地位にあったにもかかわらず,取締役会議事録の内容を自ら確認することなく,押印したなどという極めて不合理な内容である。
そして,Fは,本件議事録(乙16)に押印する際,報酬額の改定に関する議案があったという記憶がなかったため,議事録作成担当者に上記議案があったかを確認したところ,実直な担当者が上記議案があった旨回答したことに加え,Aの押印はなかったものの,既にC,被告Y1,被告Y2の押印があったことから,本件議事録に押印した旨供述するが(甲37),その供述内容は,それ自体,上記取締役会における本件増額に関する決議の存在を明確に否定する内容とは評価しがたいものである。
以上によれば,出席取締役全員が押印した本件議事録(乙16)は信用でき,出席監査役の一人であるAの供述を含めた原告の主張立証をみても,本件議事録の信用性を否定するに足りる事情はない。
(3)  以上のとおり,本件増額については,原告の取締役会の決議が存在すると認められ,その他の原告の主張主張をみても,本件増額に関し,被告らが善管注意義務又は忠実義務に違反したと認めるに足りるものはない。
したがって,本件増額に関する原告の請求は,その余の点を判断するまでもなく,理由がない。
7  結論
以上の次第で,原告の請求は理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 森田強司)

 

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