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「営業支援」に関する裁判例(40)平成27年 4月28日 東京地裁 平26(行ウ)113号 加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分取消請求事件

「営業支援」に関する裁判例(40)平成27年 4月28日 東京地裁 平26(行ウ)113号 加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分取消請求事件

裁判年月日  平成27年 4月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(行ウ)113号
事件名  加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分取消請求事件
裁判結果  棄却  文献番号  2015WLJPCA04288002

要旨
〔判示事項〕
◆厚生年金基金の設立事業所の事業主による事業の一部譲渡により当該厚生年金基金の加入員が減少したことを理由として行われた一括徴収金の納入告知処分が適法とされた事例
〔裁判要旨〕
◆厚生年金基金が、設立事務所の事業主が事業の一部を設立事業所以外の会社に譲渡したことによって当該厚生年金基金の加入員が減少したとして、厚生年金保険法(平成25年法律第63号による改正前のもの)138条5項、厚生年金基金規則(平成26年厚生労働省令第20号による廃止前のもの)32条の3の2に基づいて定めた規約の条項に基づいて当該事業主に対して行った一括徴収金の納入告知処分は、上記規約の条項及びその根拠となる法令の条項が憲法22条1項に違反するものではなく、また、上記規約の条項を適用するためには加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという事業主の主観的意図は要件とならず、さらに、事業譲渡に伴う加入員減少という事実が発生した時点で、厚生労働省「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別本部」が厚生年金基金の代行制度については他の企業年金制度への移行を促進しつつ一定の経過期間をおいて廃止する方向で対応することを決定していたという事情や、納入告知処分がされた時点で当該厚生年金基金が既に解散の方針を決議していたという事情を考慮したとしても、「継続基準方式」によって特別掛金を計算したことが設立事業所間の負担の公平を著しく害するものではなく、上記納入告知処分を違法ならしめる瑕疵があるとはいえないから、適法である。

裁判経過
控訴審 平成27年 9月17日 東京高裁 判決 平27(行コ)187号 加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分取消請求控訴事件

裁判年月日  平成27年 4月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(行ウ)113号
事件名  加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分取消請求事件
裁判結果  棄却  文献番号  2015WLJPCA04288002

東京都中央区〈以下省略〉
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 渡辺務
錦野匡一
山本眞弓
東京都港区〈以下省略〉
被告兼処分行政庁 全国光学工業厚生年金基金
同代表者代表清算人 B
同訴訟代理人弁護士 池田秀雄

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告が平成25年6月21日付けで原告に対してした加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分を取り消す。
第2  事案の概要
本件は,光学機械器具及びレンズの製造を主たる業とする事業所等を設立事業所(厚生年金基金が設立された適用事業所をいう。以下同じ。)とする厚生年金基金(以下「基金」という。)である被告の設立事業所の事業主である原告が,事業の一部を設立事業所以外の会社に譲渡したところ,被告から,上記の事業譲渡により被告の加入員が減少したことを理由として,規約に基づき,加入員減少に係る一括徴収金の納入告知処分(以下「本件納入告知処分」という。)を受けたことから,上記規約の条項及びその根拠となる法令が憲法22条1項に違反して無効であること,上記の加入員減少が上記規約の条項の適用要件を充足しないこと,本件納入告知処分について裁量権の範囲の逸脱又は濫用があることなどを主張して,本件納入告知処分の取消しを求める事案である。
1  関係法令等の定め
本件の関係法令等の定めは,別紙「関係法令等の定め」に記載のとおりである。
2  前提事実(証拠等の掲記のないものは当事者間に争いがない。)
(1)  当事者
ア 原告は,昭和22年に創業し,光学カメラの開発,製造販売業を中心に事業を行っていた株式会社であり,昭和59年5月に被告の設立事業所となった。(甲12,乙9)
イ 被告は,光学機械器具及びレンズの製造を主たる業とする事業所等を設立事業所として設立された基金である。
ウ 被告は,保有する年金資産総額が老齢厚生年金の代行部分(基金が国に代わって給付を行う老齢厚生年金の報酬比例部分。以下同じ。)の給付に必要な積立額(最低責任準備金)に満たない,いわゆる「代行割れ基金」であったところ,平成26年6月25日付けで厚生労働大臣に対して解散の認可を申請し,同年7月30日付けでその認可を受けて解散したが,厚生年金保険法(平成25年法律第63号による改正前のもの。以下「旧厚年法」という。)146条の2に基づき,清算の目的の範囲内において,その清算の結了に至るまでは存続するものとみなされている。(甲10)
(2)  平成23年の厚生年金保険法の改正等
ア 平成23年法律第93号による改正前の厚生年金保険法138条5項は,基金の設立事業所が減少する場合において,当該減少に伴い他の設立事業所に係る掛金が増加することになるときは,当該基金は,当該増加する額に相当する額として厚生労働省令で定める計算方法のうち規約で定めるものにより算定した額を,当該減少に係る設立事業所の事業主から掛金として一括して徴収すると規定していたところ,平成23年法律第93号による改正後の旧厚年法138条5項は,上記の「基金の設立事業所が減少する場合」について,「(設立事業所の事業主が,分割又は事業の譲渡により他の設立事業所の事業主以外の事業主にその事業の全部又は一部を承継させる場合その他の設立事業所の減少に相当するものとして厚生労働省令で定める事由が生じた場合を含む。)」という括弧書きを追加して規定した。
イ 上記アの厚生年金保険法の改正を受け,平成23年厚生労働省令104号による改正後の厚生年金基金規則(平成26年厚生労働省令第20号による廃止前のもの。以下「旧基金規則」という。)32条の3の2(従前の32条の3の2を32条の3の3に変更した上で追加したもの)は,旧厚年法138条5項の厚生労働省令で定める事由について,① 設立事業所の事業主が,分割又は事業の譲渡により他の設立事業所の事業主以外の事業主にその事業の全部又は一部を承継させる場合,② 上記①に規定する場合のほか,規約で定めるところにより,設立事業所に使用される当該基金の加入員の数が減少する場合とする旨規定した。
ウ 前記アの厚生年金保険法の改正及び上記イの厚生年金基金規則の改正を受け,平成24年2月10日開催の被告の第100回代議員会において改正(追加)された被告の全国光学工業厚生年金基金規約(以下「本件規約」という。)99条の2第1項(以下「本件条項」という。)は,下記のとおり規定している(以下,本件条項に係る本件規約の改正を「本件規約改正」という。)。(甲6,甲8,乙7,乙8)

「この基金は,設立事業所が次の第1号に該当して加入員が減少した場合又は第2号に該当する場合において,当該加入員の減少に伴い他の設立事業所に係る掛金が増加することとなるときは,当該加入員が減少した設立事業所(以下「加入員減少事業所」という。)の当該減少する加入員(以下「減少加入員」という。)に係る債務及び不足金を当該事業主から特別掛金として一括して徴収するものとし,加入員減少事業所の事業主に対し,速やかに特別掛金として納入の告知を行う。
(1) 設立事業所の事業主が,会社分割(会社分割後のすべての事業所がこの基金の設立事業所となる場合を除く。),事業の全部若しくは一部の譲渡(他の設立事業所に譲渡する場合を除く。),当該設立事業所の加入員の一部を他の設立事業所以外の事業所に転籍させることにより,この基金の加入員の資格を喪失させた場合
(2) 設立事業所に使用される当該加入員が減少する場合(前号に該当する場合を除く。)であって,代議員会において当該設立事業所と他の設立事業所の掛金負担の公平性を保つため特別掛金を一括徴収すべきと判断した場合。ただし,判断するに当たっては,必要に応じて当該事業主から説明を求めることがある。」
(3)  原告の事業譲渡と被告の加入員の減少
ア 原告は,平成24年12月20日付けで,株式会社aの関連会社である株式会社b(以下「b社」という。)に対し,写真機材及び放送機器の輸入販売関連の事業を譲渡した(以下,この事業の譲渡を「本件事業譲渡」という。)。(甲7,乙1,乙2,乙3の1及び2)
イ 原告の従業員であったC,D,E,F及びG(以下「本件退職者ら」という。)並びにH(以下「H」という。)ほか1名の合計7名が,平成24年12月20日付けで,原告を退職し,これにより,旧厚年法124条1項2号に基づき,原告を事業主とする設立事業所の加入員であった本件退職者ら及びHの合計6名が同月21日に被告の加入員の資格を喪失した(以下,本件退職者ら(5名)の加入員の資格喪失による被告の加入員の減少を「本件加入員減少」という。)。(甲12,甲13ないし17,乙2,乙9)
ウ 本件退職者らは,平成24年12月21日付けで,被告の設立事業所ではないb社に就職したが,年金受給年齢に達していたHは,b社に就職しなかった。(乙9,甲13ないし18,弁論の全趣旨)
エ 原告は,平成24年12月25日,被告に対し,原告で使用されていた本件退職者ら及びHが同月21日付けで被告の加入員の資格を喪失した旨の厚生年金基金加入員資格喪失届を提出した。(乙9)
(4)  本件納入告知処分
被告は,本件退職者ら(5名)の退職による被告の加入員減少(本件加入員減少)が本件条項1号の適用要件を充足するとして,平成25年6月21日,原告に対し,本件規約99条の2第5項に基づき,本件規約99条の3の規定によって加算部分(全額事業者負担によって基金独自で年金給付に加算する部分。以下同じ。)に係る数理債務及び代行部分に係る最低責任準備金に対して不足する額を対象として計算した特別掛金1149万9079円を一括徴収する旨の納入告知処分(本件納入告知処分)をした。(甲5,甲9,乙9)
(5)  審査請求及び本件訴えの提起
ア 原告は,平成25年8月15日付けで,社会保険審査会に対し,本件納入告知処分の取消しを求める旨の審査請求をしたが,平成26年1月31日付けで,同審査請求を棄却する旨の裁決がされ,原告は,同年2月3日,同裁決を知った。
イ 原告は,平成26年3月11日,本件訴えを提起した。(顕著な事実)
(6)  原告の支払約束
原告は,平成26年3月12日付け納付誓約書により,被告に対し,本件納入告知処分の取消しを求める権利を留保した上で,本件納入告知処分に係る一括徴収金を同月から平成27年2月までの間に12回の分割で支払う旨約束した。(乙5)
(7)  被告の解散
被告は,旧厚年法145条2項に基づき,平成26年6月25日付けで解散の認可を申請し,同年7月30日付けでその認可を受けたところ,これに伴って,被告の年金受給者に対する加算部分の支給は,解散の認可申請の翌月である同月分から停止され,解散の認可によって廃止された。(甲10,甲11,弁論の全趣旨)
3  争点及び争点に関する当事者の主張
本件における争点は,本件納入告知処分の適法性であり,具体的には,① 旧厚年法138条5項,旧基金規則32条の3の2及び本件条項(以下,併せて「一括徴収関係条項」という。)の規定する特別掛金の一括徴収が,憲法22条1項に違反するか(憲法違反の有無),② 本件加入員減少が,本件条項1号の適用要件を充足するか(本件条項1号の適用要件充足の有無),③ 被告の裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるか(裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無)が争われている。これらに関する当事者の主張の要旨は,次のとおりである。
(1)  憲法違反の有無
(原告)
憲法22条1項は職業選択の自由を保障しているところ,この職業選択の自由には経済活動の自由が含まれる。
しかるに,一括徴収関係条項の規定する特別掛金の一括徴収が,被告の設立事業所の事業主による事業の全部又は一部の譲渡等の自由を含む経済活動の自由を制約するものであることは明らかである。
また,一括徴収関係条項の規定する特別掛金の一括徴収の目的は,設立事業所間の負担の公平に名を借りた基金制度というもはや成り立ち難い制度の維持にあり,実質は,制度の欠陥,更に言えば制度設計自体の間違いの責任を基金の設立事業所の事業主に押し付けようとするものにすぎない。代行割れとなった基金の早期解散を含む基金制度の解体が進められていることは,基金制度の根本的な欠陥を国家行政が自認したものであり,資産状況の悪化した基金を設立事業所間の負担の公平の名の下に無理やり延命させることを企図した一括徴収の目的が誤りであったことを明確に示している。
さらに,一括徴収関係条項の規定する特別掛金の一括徴収の手段は,加入員が減少した場合に増加する掛金を特別掛金として該当設立事業所の事業主から一括して徴収するというものであるところ,この場合の特別掛金は往々にして設立事業所の事業規模に比して巨額となることや,基金が滞納処分の権限を有していることからすると,経済活動の自由に対する過度な制約といえる。
したがって,一括徴収関係条項の規定する特別掛金の一括徴収は,その目的,手段のいずれもが著しく不合理であり,憲法22条1項の保障する経済活動の自由を不当に制約する違憲無効なものであるから,一括徴収関係条項に基づいてされた本件納入告知処分は違法である。
(被告)
原告は,一括徴収関係条項について,憲法22条1項の保障する経済活動の自由を不当に制約する違憲無効なものであると主張しているが,原告が主張する経済活動の自由は,自らの経済的利益のためには他の設立事業所の事業主の財産権を不当に侵害してでも事業から撤退できる自由のことであって,到底,正当な事業活動に伴う自由とはいえない。
(2)  本件条項1号の適用要件充足の有無
(被告)
ア 旧厚年法138条5項及び旧基金規則第32条の3の2の改正を受けて設けられた本件条項は,その1号において,設立事業所の事業主による事業の全部又は一部の譲渡によって加入員が減少した場合において,当該加入員の減少に伴い他の設立事業所に係る掛金が増加することになるときは,当該加入員が減少した設立事業所の当該減少する加入員に係る債務及び不足金を当該事業主から特別掛金として一括して徴収するものとし,加入員減少事業所の事業主に対し,速やかに特別掛金として納入の告知を行う旨規定している。
イ そして,本件事業譲渡とほぼ同時に本件加入員減少が生じていることに加え,原告自身がホームページの文書で発表するなどした本件事業譲渡の経緯等からすると,原告のb社に対する本件事業譲渡は,原告の従業員であった本件退職者らの転籍を伴うものであったと推認されるし,仮にそうではなかったとしても,少なくとも本件事業譲渡がなければ本件加入員減少は生じなかったこと,すなわち本件加入員減少が本件事業譲渡に伴って生じたものであることは明らかであるから,本件加入員減少は本件条項1号の適用要件を充足し,被告は原告に対して特別掛金の一括徴収の納入告知(本件納入告知処分)をすべきことになる。
なお,原告は,本件退職者らは希望退職の募集に応じて「通常の退職」をしたにすぎないから,同号の適用要件を充足しないなどと主張するが,同号は単に事業譲渡に伴う加入員減少を適用要件としているにすぎないから,本件加入員減少の理由が希望(通常)退職であったかとか,整理解雇であったかということは,同号の適用要件の充足を左右するものではない。
ウ 原告は,本件条項1号の適用要件を充足するためには,加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという事業主の主観的意図が必要であると主張するが,原告の主張するような事業主の主観的意図は同号の適用要件ではない。原告が指摘する被告の第100回代議員会における常務理事の「ズル抜け」という発言は,本件条項2号に関してされたものであって,事業譲渡等に伴って加入員が減少した場合について規定した本件条項1号に関してされたものではない。
(原告)
ア 原告は,4期にわたって赤字決算が続き,将来の業績回復も見込めず,人員整理を含めその事業規模の縮小を図らなければ経営を維持することが困難な事態に立ち至ったことから,平成24年11月頃,断腸の思いで事業規模の縮小を決定し,その旨を従業員に伝え,希望退職者を募ったところ,本件退職者らは,いずれも上記希望退職の募集に応じることし,自らの意思に基づいて原告を退職することを決めて退職したものであって,本件退職者らの退職は解雇でも「転籍」でもない「通常の退職」であったから,本件退職者らの退職によって生じた本件加入員減少は,本件条項1号の適用要件を充足しない。
イ また,被告の常務理事は,本件条項を新設する旨の本件規約改正がされた被告の第100回代議員会において,本件条項が「いわゆるズル抜けを防止するもの」であると明確に説明しており,本件納入告知処分に先だって原告を訪れた被告の事務長も,本件条項が「いわゆるズル抜けを防止するもの」であると繰り返し説明しているところ,この「ズル抜け」とは,加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図が事業主にある場合を意味する。したがって,事業譲渡を行った設立事業所の事業主に上記のような意図がない場合には本件条項1号の適用要件を充足しない。
仮に事業譲渡を行った設立事業所の事業主の主観的意図に関わらず同号の適用要件が充足されるというのであれば,設立事業所の事業主の企業活動の重要な要素の一つである事業譲渡を行うことが事実上不可能となり,基金の財源の確保のために必要となる正当な事業活動の自由が制約されることになるし,基金の設立事業所の事業主が重度の経営不振に陥った場合でも適切な時期に事業譲渡等による人員整理を含めたリストラを行うことができず,設立事業所の事業主の経営の悪化や倒産をも招来する要因となり得るなど,かえって「加入員の生活の安定と福祉の向上を図る」という法に定められた基金本来の目的(旧厚年法106条)に反し,経済活動の自由を保障する憲法22条1項に反する違憲なものとなる。したがって,本件条項1号が合憲なものとして適用されるためには,設立事業所の事業主が加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図を持っているというような濫用的な場合に限って同号の適用要件を充足するという限定的な解釈をするほかない。
しかるに,原告は,基金の一員として経済活動を継続していくため,断腸の思いでいわゆるリストラを行ったのであり,本件事業譲渡をするに当たって上記のような意図は全く有していなかったから,本件加入員減少は同号の適用要件を充足しない。
(3)  裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無
(原告)
ア 基金は,自ら規約を定め,適宜改正しつつ,資金を運用する自律的で私的企業年金的性質を持つ経済主体であり,運営全般について一定の裁量権を有するものの,厚生年金制度の一部を代行する公的な側面も持つ法人であるから,その裁量権に基づく権限の行使には高度の合理性が求められる。
イ しかるに,次のような事情に鑑みると,本件納入告知処分については被告による裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるから,本件納入告知処分は違法である。
(ア) 厚生労働省が平成24年9月に厚生年金基金制度の廃止方針を決定して公表し,平成25年6月19日には旧厚年法の基金に関する条項を改正する法律が成立したなど,代行割れ基金の早期解散等を含む基金制度の解体が国策方針となっていたところ,被告は,上記法律の成立に先立つ同年2月に代議員会で解散の方針を決議し,平成26年4月1日の上記法律の施行後の同年6月25日付けで解散の認可を申請し,同年7月30日付けでその認可を受け,被告独自の年金受給者に対する加算部分の支給は解散認可に伴って廃止された。
このような経過からすると,平成25年6月21日に本件納入告知処分がされた時点では,極めて近い将来に被告の年金受給者に対する加算部分の支給がほぼ確実になくなることが明らかであったところ,被告は,このような状況を認識しながら,基金が存続し将来的に基金の年金受給者に加算部分が支給されることを前提とした本件規約99条の3の規定する「継続基準方式」によって特別掛金の計算をし,代行部分に係る最低責任準備金に加えて加算部分に係る数理債務に対して不足する額を含む金額に相当する特別掛金を一括徴収する旨の本件納入告知処分をしたというのであって,本件納入告知処分は,原告と他の設立事業所の事業主との間の負担の公平を著しく欠くものであって平等原則に反する。
(イ) また,被告は,被告の常務理事が本件規約改正をした代議員会において本件条項が「ズル抜け防止」のためのものであると説明していたことなどを全く無視して本件納入告知処分を行っており,これは信義則に反するものというべきである。
(ウ) その他,被告が,解散準備を急ぐ中で漫然と本件条項を適用したなど,本件納入告知処分の判断過程にも,看過し難い誤りがある。
(被告)
そもそも,原告のb社に対する本件事業譲渡に伴う本件加入員減少は平成24年12月21日に生じたものであるところ,その時点において,旧厚年法138条5項及び旧基金規則32条の3の3が有効に存在していたこと,そして,これらの規定に基づいて設けられた本件条項及び特別掛金の計算方法を定めた本件規約99条の3の各条項が有効であったことも明らかであるから,これらの規定に基づいてされた本件納入告知処分が有効であることもまた明らかである。
また,被告の代議員会で「解散方針」が決議されたのは平成25年2月21日,旧厚年法を改正する法律が成立したのは同年6月19日であり,原告のb社に対する本件事業譲渡に伴う本件加入員減少はこれらに先立つ平成24年12月21日に生じたものであったことからすると,旧基金規則32条の3の3が「継続基準方式」と「非継続基準方式」とを選択的に定めていたからといって,被告において,原告のためだけに,有効に存在していた同条の規定する「継続基準方式」を採用した本件規約99条の3の3の規定を適用しない義務を負っていたとか,「非継続基準方式」を遡及的に適用する規約変更の代議員会決議を成立させるべき義務を負っていたなどとは認められないから,本件納入告知処分が被告の裁量権の範囲を逸脱又はこれを濫用するものであるという原告の主張は暴論であり,採用される余地は全くない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前提事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実を認めることができる(各末尾括弧内記載の証拠等は,認定に主として用いたものである。)。
(1)  平成24年の本件規約改正
ア 被告は,平成24年2月10日開催の第100回代議員会において,本件規約改正を行って,本件条項を追加した。(前提事実(2)ウ)。
なお,旧厚年法130条5項に基づいて被告から業務の一部を受託していた三菱UFJ信託銀行株式会社(以下「三菱UFJ信託」という。)の年金カスタマーサービス部は,本件規約改正に先立つ平成23年11月,平成23年法律第93号による改正前の厚生年金保険法138条5項の改正に伴って必要となる加入員減少に係る掛金の一括徴収についての規約変更と運営方法についての説明資料(以下「本件改正説明資料」という。)を作成し,被告と協議を行っているところ,本件改正説明資料では,本件規約において新たに特別掛金の一括徴収をすべき場合として定める,設立事業所の事業主による事業譲渡等に伴う加入員の減少について,加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図等の事業主の主観的意図が適用要件となるとはされていなかった。(乙7,弁論の全趣旨)
イ 被告の常務理事は,上記アの被告の第100回代議員会において,旧厚年法135条5項及び旧基金規則32条の3の2の規定に基づいて本件条項を設ける旨の本件規約改正について,「これは平成23年8月4日に成立し8月10日に公布された,いわゆる年金確保支援法に係るもので,これによる厚生年金保険法や厚生年金基金規則の一部改正が実施され,基金規約についても加入員減少に係る掛金の一括徴収の部分の変更が必要となったものです。」と述べ,本件規約に係る新旧対照表により,変更点を「① 基本的には,現在の脱退事業所に係る特別掛金の一括徴収金と変わらない。設立事業所の負担の公平性を確保しようとするもの。② 加入員減少の場合についても特別掛金を徴収する。③ただ,定年退職や通常の退職による加入員減少においても徴収ということでなく,いわゆるズル抜けを防止するもの。④ 実際には,ズル抜けかどうか判断が難しい場合もあると思うが,その場合は,理事会,代議員会に諮る。最終的には代議員会で決定することになる。⑤ この場合,代議員会は必要に応じて当該事業主から説明を求めることができる。」と説明した。(甲8,乙8)
ウ 原告代表者又はその従業員は,前記アの代議員会には出席しておらず,傍聴もしていない。(乙8)
(2)  本件事業譲渡及び本件加入員減少に至る経過
ア 原告は,平成24年の時点で4期にわたって赤字決算が続き,このままでは将来の業績回復も見込めず,人員整理を含めその事業規模の縮小を図らなければ経営を維持することが困難な事態に立ち至ったため,事業の一部をb社に売却することとし,同年11月頃,希望退職者を募り,その一方で,本件事業譲渡の相手方であるb社に対し,退職する従業員の雇用を依頼した。(甲12,甲13ないし17)
イ 原告は,インターネット上のホームページに掲載された平成24年11月30日付けの文書により,「今般,当社にて取り扱いの写真機材,放送機器及び産業関連のビジネスを業務の拡大強化をはかり,一層の発展とさらなるご要望にお応えすべく,平成24年12月20日より株式会社b様に移管する運びとなりました。それに伴い営業及び営業支援スタッフは同12月21日より移籍いたします。」と発表した。(乙1)
ウ 原告は,平成24年12月19日,原告の得意先や原告を退職してb社に就職する予定の社員等の出席の下,「感謝の集い」を開催しているところ,その場において,原告代表者は「私が元気なうちに事業を発展してもらえる人にバトンタッチすることが急務だったが,b社のI社長に引き受けてもらうことになった。ビジネスを展開するためには人が必要なため,X社の営業と営業支援スタッフも移管することになった。」などと語り,b社のI社長も「X社からチームが塊りとしてb社に移ってくる。」などと語っていた。(乙3の1及び2)
エ 原告は,平成24年12月20日付けで,b社に対し,写真機材及び放送機器の輸入販売関連の事業を譲渡した(本件事業譲渡)。(前提事実(3)ア)
オ 本件退職者らは,平成24年12月20日付けで,原告を退職し,これに伴う本件加入員減少により,被告の他の設立事業所に係る掛金が増加することとなった。(前提事実(3)イ,甲9,乙9,弁論の全趣旨)
カ 本件退職者らは,平成24年12月21日付けで,被告の設立事業所ではないb社に就職した。(前提事実(3)ウ)
キ 原告は,平成24年12月25日,被告に対し,原告で使用されていた本件退職者ら及びHが同月21日付けで被告の加入員の資格を喪失した旨の厚生年金基金加入員資格喪失届を提出した。(前提事実(3)エ)
なお,原告代表者は,この時点で,本件条項の規定を認識していなかった。(乙2,乙8,乙9)
(3)  本件納入告知処分に至る経緯
ア 厚生労働省「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」は,原告による本件事業譲渡に先立つ平成24年9月28日付けで,① 基金の代行制度について,他の企業年金制度への移行を促進しつつ,一定の経過期間をおいて廃止する方針で対応すること,② 今後,持続可能で,中小企業等が加入しやすい企業年金を構築するための施策を積極的に推進すること,③ 「代行割れ問題」への対応として,「連帯債務問題」や「債務額の計算方法」など,特例解散制度の見直しを図ること,④ 同年10月中に社会保障審議会年金部会の下に専門委員会を設置し,同委員会に厚生労働省の「厚生年金基金制度改革試案」を提示し,同案の検討を行い,年内をめどに年金部会としての成案を得ること,⑤ 同成案に則した法制化作業を進め,次期通常国会における厚生年金基金制度改革のための法案提出を目指すことを決定した。(乙4)
イ 被告は,前記(1)カのとおり,原告から,厚生年金基金加入員資格喪失届の提出を受けたところ,同届によれば,原告を事業主とする設立事業所における被告の加入員9名のうちの6名が加入員の資格を喪失することになるため,本件規約99条の2第3項に基づいて原告代表者に対して説明を求めるなどの調査を開始した。(乙9)
ウ 被告は,平成25年2月14日開催の第105回代議員会において,解散の方針を議決した。
なお,基金が解散する場合,基金は代行部分の支給に充てられるべき最低責任準備金を国に返還する必要があり,解散後は基金の年金受給者に対して加算部分の支給は行われないこととなる。(甲2,甲9)
エ 被告の事務長は,平成25年3月14日付け文書により,原告に対し,原告の本件事業譲渡に伴う本件退職者ら及びHの加入員の資格喪失が本件条項1号に該当するとして,加入員減少に係る一括徴収金の納入告知書を後日郵送する旨通知した。(乙9)
オ 原告は,平成25年4月19日付けの被告宛ての書面により,「・・・1948年の創業時から60余年に渡って営んできました写真機材及び,24年来の放送機器の輸入販売の事業を2012年12月20日付で株式会社a様に売却することになりました。それに伴い9人の社員(2人の嘱託を含む)の内7人を会社都合による解雇とし,弊社のほぼ全事業を売却しました。解雇の7名の内6名はその後株式会社a様に採用され,弊社は現在私の他,社員2人で貿易商社として新たなビジネスを展開しています。」などと説明した。(甲12,乙2)
カ 原告代表者は,平成25年6月13日に被告代理人弁護士らと面談した際,「ズル抜け」の具体的事例の説明を聞いた。(甲12,乙8,乙9)
キ 代行割れの基金の早期自主解散を促して基金制度を原則として廃止することを目的として,① 代行割れ基金を5年以内に解散させること,② 5年後以降は厳しい基準を満たす基金のみの存続を認めること,③ 代行割れの場合において,解散時に各事業所の債務を確定して倒産事業所の債務を他の事業所が連帯で負担するという制度を廃止すること,④ 解散認可基準を緩和すること,⑤ 旧厚年法の第9章の第1節「厚生年金基金」の条項(106条ないし148条)を削ることなどを内容とする「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第63号)が,平成25年6月19日に成立した。(甲1,甲2)
ク 被告は,平成25年6月21日,原告に対し,本件加入員減少が本件条項1号の適用要件を充足するとして,加入員減少に係る特別掛金1149万9079円の納入告知処分(本件納入告知処分)をした。(前提事実(4))
なお,被告は,本件納入告知処分において,平成24年12月に原告を退職した被告の加入員6名のうち,b社に就職しなかったHについては,同人の資格喪失による加入員減少を本件事業譲渡に伴う加入員の減少から除外して特別掛金の計算をし,前記エの平成25年3月14日付け文書に記載した特別掛金の金額を減額しており,その後,原告に対し,当該特別掛金の計算等を説明した文書を送付した。(甲9,乙9)
また,被告は,本件納入告知処分において,本件規約99条の3の規定する「継続基準方式」により,被告の年金受給者に対して加算部分が支給されることを前提として,加算部分に係る数理債務及び代行部分に係る最低責任準備金に対して不足する額を対象として一括徴収する特別掛金を計算している。(前提事実(4),甲9,乙7,弁論の全趣旨)
(4)  本件納入告知処分後の事情
ア 被告は,平成25年8月,被告の年金受給者に対し,「基金の解散について」と題する書面を配布し,解散の方針の決議や,解散後の年金給付,解散に向けた今後のスケジュールについて説明した。(甲2)
イ 原告は,平成25年8月15日,社会保険審査会に対し,本件納入告知処分の取消しを求める旨の審査請求をしたが,平成26年1月31日,同審査請求は棄却された。(前提事実(5)ア)
ウ 被告は,平成25年9月19日開催の第106回代議員会において,解散準備等の状況などを説明し,同年10月7日付けの事務連絡によって,その内容を記載した報告書を被告の設立事業所の事業主に対して配布した。(甲3の1及び2)
また,被告は,平成26年2月21日開催の第107回代議員会において,解散に向けた手続を説明するとともに,解散に係る規約等の変更(解散時の特別掛金の一括徴収,遺児育英資金支給規程の廃止)についての決議をした。(甲4,弁論の全趣旨)
エ 原告は,平成26年3月11日,本件訴えを提起した。(前提事実(5)イ)
オ 旧厚年法の第9章の第1節「厚生年金基金」の条項(106条ないし148条)を削ることなどを内容とする「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第63号)及び旧基金規則を廃止する旨の「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等及び経過措置に関する省令」(平成26年厚生労働省令第20号)が,平成26年4月1日に施行された。(甲1)
(5)  被告の解散
ア 被告は,平成26年6月25日付けで,厚生労働大臣に対し,解散の認可を申請した。これに伴って,被告の年金受給者に対する加算部分の支給はその翌月から停止された。(前提事実(7))
イ 厚生労働大臣は,平成26年7月30日,旧厚年法145条2項に基づき,被告の解散を認可した。これに伴って,被告の年金受給者に対する加算部分の支給がされないこととなった。(前提事実(7))
2  憲法違反の有無について
原告は,一括徴収関係条項が憲法22条1項の保障する経済活動の自由を不当に制約する違憲無効なものであると主張する。
この点,一括徴収関係条項の規定する特別掛金の一括徴収は,設立事業所の事業主が事業の譲渡により他の設立事業所の事業主以外の事業主にその事業の全部又は一部を承継させる場合等において,これに伴って他の設立事業所に係る掛金が増加するときは,当該増加する額に相当する額を,当該減少に係る設立事業所の事業主から掛金として一括して徴収するというものであるところ,このような特別掛金の一括徴収が行われる結果,例えば,事業譲渡を行おうとする設立事業所の事業主は,当該事業譲渡によって加入員が減少して他の設立事業所に係る掛金が増加するような場合には,増加する額に相当する特別掛金を一括して徴収されるという経済的負担を余儀なくされることになり,特別掛金の一決徴収を免れようとすれば,当該事業譲渡を断念したり,当該事業譲渡にかかわらず加入員を維持したりするなどの負担を余儀なくされることになる。しかしながら,設立事業所の事業主が事業の譲渡により他の設立事業所の事業主以外の事業主にその事業の全部又は一部を承継させる場合等には,加入員の減少によって他の設立事業所に対して掛金の増加という経済的負担を強いることがあり,年金受給権の確保及び他の設立事業所との公平という観点からすると,上記のような場合に増加する掛金について当該事業譲渡を行った設立事業所の事業主に負担させることは,十分な合理性があるものと認めることができる。そもそも,特別掛金を一括して徴収される事業主の経済的負担自体が,当該事業主が自らの事業のために雇用していた従業員に対して将来基金から年金給付を行うために不足する掛金を負担するという性質を有するものであって,当該事業主は,任意に基金に参加し,自らの自由な判断に基づいて事業譲渡を行うものであることからすると,上記のような負担をさせることには十分な合理性があり,このような負担をもって,当該事業主の経済活動の自由を不当に制約するものと解することはできない。
また,原告は,一括徴収関係条項の規定する特別掛金の一括徴収の目的は,設立事業所間の負担の公平に名を借りた基金制度というもはや成り立ち難い制度の維持にあるなどと主張するが,特別掛金の一括徴収は,基金の維持や存続自体を直接の目的とするものではなく,上記のとおり,設立事業所の事業主が事業の譲渡により他の設立事業所の事業主以外の事業主にその事業の全部又は一部を承継させる場合等において,これに伴って他の設立事業所に係る掛金が増加するときに,年金受給権の確保及び他の設立事業所との公平という観点から,当該増加する額に相当する額を当該事業譲渡を行った事業主に負担させるというものであり,それ自体,十分な合理性を有するものであり,平成25年法律第63号により旧厚年法の規定していた基金制度が原則として廃止されることになったのは(認定事実(3)ア,キ,(4)オ),設立事業所間の公平という観点とは無関係な社会情勢の変化等を踏まえた全く別の政策的な判断に基づくものと解されるから,上記のような一括徴収関係条項の規定する特別掛金の一括徴収の合理性は否定されるものではないというべきである。
さらに,一括徴収関係条項の規定する一括徴収における特別掛金の金額が設立事業所の事業規模に比して高額になる可能性があることや,基金が滞納処分の権限を有することなども,年金受給権の確保及び他の設立事業所との公平という観点からすると,設立事業所の事業主の経済活動の自由を不当に制約するものと解することはできない。
以上によれば,本件納入告知処分の根拠となった一括徴収関係条項が憲法22条1項に違反する違憲無効なものであるという原告の主張を採用することはできない。
3  本件条項1号の適用要件充足の有無について
(1)  本件加入員減少の本件条項1号の適用要件充足の有無について
ア 旧厚年法135条5項及び旧基金規則32条の3の2を受けて設けられた本件条項1号は,被告の設立事業所の事業主が事業の全部又は一部の譲渡により被告の加入員の資格を喪失させて加入員を減少させた場合,当該加入員の減少に伴って他の設立事業所に係る掛金が増加することになるときには,当該加入員が減少した設立事業所の当該減少する加入員に係る債務及び不足額を当該事業主から特別掛金として一括して徴収する旨規定している。
イ しかるに,前提事実及び認定事実によれば,原告は,平成24年の時点で4期にわたって赤字決算が続く状況となり,このままでは将来の業績回復も見込めず,人員整理を含めその事業規模の縮小を図らなければ経営を維持することが困難な事態に立ち至ったため,平成24年12月20日にb社に対して事業の一部を譲渡する旨の本件事業譲渡をしているところ(前提事実(3)ア,認定事実(2)ア,エ),本件事業譲渡に伴う原告による希望退職者の勧奨に応じた本件退職者らが本件事業譲渡の翌日である同月21日付けで原告を退職したことにより,被告の加入員が減少し(本件加入員減少),これによって他の設立事業所に係る掛金が増加していること(前提事実(3)イ,ウ,認定事実(2)ア,オ,カ)からすると,本件加入員減少は,原告のb社に対する本件事業譲渡に伴って生じたものであることが明らかであり,特別掛金を一括して徴収すべきことを定めた本件条項1号の適用要件を充足するものと認めるのが相当である。
ウ これに対し,原告は,本件加入員減少は,b社に対する本件事業譲渡とは別に,解雇でも「転籍」でもない従業員の自由意思による「通常の退職」によって発生したものであるから,本件条項1号の加入員減少には該当しないなどと主張し,これに沿う内容の原告代表者の陳述書(甲12),b社代表者の確認書(甲18)及び本件退職者らの陳述書(甲13ないし17)を提出する。
しかしながら,前記イで説示したような原告のb社に対する本件事業譲渡の経緯と本件退職者らの退職の経緯に加え,認定事実のとおり,原告は,本件事業譲渡に先立ってインターネット上のホームページに掲載した平成24年11月30日付けの文書において,本件事業に伴って「営業及び営業支援スタッフは平成24年12月21日より移籍いたします。」と発表していること(認定事実(2)イ),同年12月19日にも,原告代表者において,本件事業譲渡に関し,「ビジネスを展開するためには人が必要なため,X社の営業と営業支援スタッフも移管することになった。」などと語り,b社のI社長において「X社からチームが塊としてb社に移ってくる。」などと語っていること(認定事実(2)ウ),原告が本件事業譲渡後に被告に提出した平成25年4月19日付け書面においても,本件事業譲渡に伴って「9人の社員(2人の嘱託を含む)の内7人を会社都合による解雇とし,弊社のほぼ全事業を売却しました。解雇の7名の内6名はその後株式会社a様に採用され,弊社は現在私の他,社員2人で貿易商社として新たなビジネスを展開しています。」などと説明していること(認定事実(3)オ),そして,原告は,b社に対し,原告を退職する本件退職者らの採用(雇用)を依頼していたこと(認定事実(2)ア)などからすると,当該事業に携わっていた本件退職者らは,本件事業譲渡に伴ってb社に移籍することになったものと認めるのが相当である。もとより,事業譲渡によって従業員の移籍が当然に発生するというわけではなく,法的にみれば,本件退職者らは,原告との間の雇用契約が終了した後に,b社との間で雇用契約を締結したということになり(前提事実(3)イ,エ,認定事実(2)オ,キ),本件退職者らと原告との間の雇用契約の終了と本件退職者らとb社との間の雇用契約の締結が別個の事実であることは確かである。しかしながら,本件条項1号の文理によれば,その適用要件を充足するためには,事業譲渡によって加入員減少という事実が発生すれば足りるのであり,前記イで説示した本件加入員減少に至る事実経過に加え,本件退職者が「会社のリストラとしての事業縮小に伴う希望退職者募集によって退職した」ことを原告が自認していることからすると(原告最終準備書面8頁),本件加入員減少が本件条項1号の適用要件を充足することは明らかというべきある。
したがって,本件加入員減少が本件退職者らの「通常の退職」によって発生したものなので同号の適用要件を充足しないという原告の主張を採用することはできない。
(2)  事業主の主観的意図の要否について
ア 原告は,被告の常務理事が,本件規約改正によって本件条項を設けることが決議された被告の第100回代議員会において,本件条項について「いわゆるズル抜けを防止するもの」と明確に説明をしているところ,この「ズル抜け」とは,加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図が事業主にある場合を意味するから,本件条項1号の適用要件として,当該事業譲渡をした設立事業所の事業主が上記のような意図を有していることが必要であると主張する。
イ しかしながら,法令や規約,契約等の解釈は,まず第1次的にはその文言に基づいて行われるべきであるところ,本件条項1号の文言上,設立事業所の事業主が事業の全部又は一部を譲渡して加入員が減少した場合の特別掛金の一括徴収について,当該事業譲渡を行った設立事業所の事業主が原告の主張するような主観的意図を有していたことをその適用要件として規定していると読み取ることはできない。また,本件条項を含む本件規約全体をみても,上記のような事業譲渡に伴う特別掛金の一括徴収について,適用事業所の事業主に原告の主張するような主観的意図があることが必要であることを示すような規定は存在せず,かえって,本件規約98条1項は,本件条項と同様に他の事業主に係る掛金の増加を理由として特別掛金の一括徴収をすべき場合(事業譲渡等によって設立事業所が被告の設立事業所でなくなった場合)について規定しているところ,同項においても,設立事業所の事業主が原告の主張するような主観的意図を有していることが適用要件になるなどとは規定していない(同項のように事業譲渡等によって事業所が基金を任意脱退して基金の設立事業所数が減少する場合と,本件条項1号のように事業譲渡等によって事業所としては基金に残存しつつその加入員数のみが減少した場合では,当該事業所が基金の設立事業所として残るか否かという違いがあるとしても,他の事業所との間で掛金の負担に不公平が生じる点は同じであって,その適用要件を異にする合理的理由は認められない。)。さらに,被告の事業の一部を受託していた三菱UFJ信託が本件規約改正に先立って作成した本件条項に係る本件改正説明資料でも,設立事業所の事業主の事業譲渡に伴う加入員減少によって特別掛金の一括徴収をする場合,当該設立事業所の事業主が加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図を有していることがその適用要件になるとは説明されていなかった(認定事実(1)ア)。加えて,証拠(甲9)及び弁論の全趣旨によれば,本件条項の前提となっている旧厚年法138条5項は,平成23年法律第93号による改正前には,基金が特別掛金を一括徴収できるのは設立事業所が基金を任意脱退するなどして基金の設立事業所数が減少する場合に限られていたところ,事業所としては基金に残存しつつその加入員数のみを減少させた場合にも,設立事業所減少の場合と同様に他の事業所との間で掛金負担に不公平が生じる点は同じであることが認識されたことから,これを防ぐために改正が行われたものと認めるのが相当であるところ,同項及びこれを受けて規定された旧基金規則第32条の3の2が,事業譲渡に伴う加入員減少を理由として特別掛金の一括徴収をする場合に,設立事業所の事業主が加入員を減少させることで掛金の負担を免れるという主観的意図を有していることを適用要件として規定していないことからすると(前提事実(2)ア,イ),本件条項1号に基づいて事業譲渡に伴う加入員減少による特別掛金の一括徴収をする場合,当該事業譲渡を行った設立事業所の事業主が加入員を減少させることで掛金の負担を免れるという主観的意図を有していることは,その適用要件とはならないものと解するのが相当である。
ウ 原告の指摘する被告の第100回代議員会における被告の常務理事の発言については,「③・・・いわゆるズル抜けを防止するもの。」という発言の直後に,「④・・・理事会,代議員会に諮る。最終的には代議員会で決定することになる。」「⑤ この場合,代議員会は必要に応じて当該事業主から説明を求めることができる。」という本件条項2号を念頭に置いたものと思われる説明がされていることや(認定事実(1)イ),前記イで説示したとおり,被告の事業の一部を受託していた三菱UFJ信託が本件規約改正に先立って作成した本件条項に係る本件改正説明資料において,設立事業所の事業主の事業譲渡に伴う加入員減少によって特別掛金の一括徴収をする場合,当該設立事業所の事業主が加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図を有していることが適用要件となるとは説明されていなかったことなどからすると,上記の「いわゆるズル抜けを防止するもの」という発言が本件条項1号の適用要件として設立事業所の事業主の上記のような意図を要することを説明したものであったとまでは認め難い。そもそも,前記イで説示したとおり,本件条項の文言上も,旧厚年法138条5項及び旧基金規則32条の3の2においても,設立事業所の事業主の事業譲渡に伴って特別掛金の一括徴収をする場合に,当該事業主が加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図を有していることが適用要件になるとは規定されていないことなどからすると,仮に被告の常務理事が,本件条項1号に基づいて設立事業所の事業主の事業譲渡に伴って加入員が減少したことを理由に特別掛金の一括徴収をする場合に,当該設立事業所の事業主が上記のような意図を有していることが適用要件となるかのような説明をしていたとしても,同号の適用要件として上記のような意図を必要としないという前記イで説示した客観的な解釈を直ちに左右するものではないというべきである。
また,原告代表者は,被告の事務長や被告代理人弁護士が,本件条項は「ズル抜け」を目的とした場合に適用されるという説明を行っていたなどと陳述するところ(甲12),被告代理人弁護士が,本件納入告知処分に先立って行われた原告代表者との面談において,原告代表者に対して「ズル抜け」の具体的事例を説明していることは確かであるが(認定事実(3)カ),一方で,被告の常務理事や事務長は,原告による本件事業譲渡に伴う本件加入員減少が「ズル抜け」を目的とするものであるから本件条項を適用するという説明はしていないと陳述しており(乙8,乙9),認定事実のとおり,被告は,本件納入告知処分の前の段階から,本件加入員減少が本件条項1号の規定する事業譲渡に伴う加入員減少に該当するという立場に立っていたことや(認定事実(3)エ),前記イで説示したとおり,本件条項の文言上も,被告の事業の一部を受託していた三菱UFJ信託が作成した本件改正説明資料においても,旧厚年法138条5項及び旧基金規則32条の3の2においても,設立事業所の事業主の事業譲渡に伴って加入員が減少したことを理由として特別掛金の一括徴収をする場合に,当該設立事業所の事業主が加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図を有していたことが適用要件であるとはされていなかったことからすると,被告の事務長や被告の代理人弁護士が原告代表者に対して本件条項1号の適用要件として適用事業所の事業主が上記のような意図を有していることが必要であるという解釈を示したとまでは認め難いし,仮に原告代表者との面談において,被告の事務長や代理人弁護士が,同号の適用要件として上記のような意図が必要であるかのように受け取られる言動をしたことがあったとしても,同号の適用要件として上記のような意図を必要としないという前記イで説示した客観的な解釈を直ちに左右するものではないというべきである。
エ その他,原告は,本件条項1号の適用要件として加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図を必要とするという解釈を採らなければ,同号は憲法に適合するものとはなりえないなどとも主張するが,本件条項の前提となる旧厚年法138条5項及び旧基金規則32条の3の2においても,事業譲渡に伴う加入員減少の場合に加入員を減少させることで掛金の負担を免れるという主観的意図を必要としていないところ,これらが違憲無効なものでないことは前記2で説示したとおりであり,本件条項1号についても,加入員を減少させることで掛金の負担を免れるという主観的意図を必要するという解釈を採らなければ本件条項1号に基づいてされた本件納入告知処分が違憲無効となるなどと解することはできない。
オ 以上のとおり,本件条項1号の適用要件として事業譲渡を行った適用事業所の事業主に加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図があったことが必要であると解することはできないから,原告には上記のような意図がなかったから同号の適用要件を充足しないという原告の主張は,その前提を欠くものというべきである。
4  裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無について
(1)  本件規約99条の3の規定する「継続基準方式」に基づく特別掛金の計算について
ア 原告は,被告が,極めて近い将来に被告の年金受給者に対する加算部分の支給がほぼ確実になくなることを認識していたにもかかわらず,加算部分が支給されることを前提とした本件規約99条の3の規定するいわゆる「継続基準方式」によって特別掛金の計算をし,これを一括徴収する旨の本件納入告知処分をしたことは,原告と他の設立事業所間の負担の公平を著しく欠くものであって平等原則に反するなどと主張する。
イ しかしながら,まず,そもそも,基金という自治組織に加入している設立事業所の事業主である原告は,その規約に拘束されるのが当然であり,規約の条項が不合理なものであるというのであれば,関係法令や規約に基づいて当該条項の削除や変更を求めるべきであって,これらがされていないにもかかわらず,自身に対する当該条項の適用を否定することは原則として許されないというべきである。一方で,被告としても,認可を受けて設立された基金として,国に代わって代行部分の支給を行っているという立場にあり,また,規約についても厚生労働大臣の認可を受けており,加えて,他の設立事業所との関係からしても,規約の条項の適用を特定の設立事業所について特別に排除することは原則として許されないというべきである。
そして,加入員減少の場合に一括徴収される特別掛金の計算については,旧厚年法138条5項に基づく旧基金規則32条の3の3が,基金の存続を前提としない「非継続基準方式」(同条2号)と共に基金が存続して将来的に基金の年金受給者に対して加算部分が支給されることを前提とした「継続基準方式」(同条1号)も規定していたことを受け,本件規約99条の3は「継続基準方式」を採用して規定していたところ,本件加入員減少が発生した平成24年12月21日の時点において,旧厚年法138条5項及び旧基金規則32条の3の3並びにこれらに基づく本件規約99条の3が有効に存在していた以上,被告は,本件事業譲渡に伴う本件加入員減少を原因として本件条項1号に基づいて特別掛金の一括徴収をする場合,本件規約99条の3の規定する「継続基準方式」によって特別掛金を計算すべき状況にあったことは明らかというべきである。
ウ この点,厚生労働省「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別本部」が平成24年9月28日付けで基金の代行制度については他の企業年金制度への移行を促進しつつ一定の経過期間をおいて廃止する方向で対応することを決定していたこと(認定事実(3)ア),被告が平成25年2月14日に解散の方針を決議していたこと(認定事実(3)ウ),代行割れの基金の早期自主解散を促して基金制度を原則として廃止することを目的として,旧厚年法の第9章の第1節「厚生年金基金」の条項(106条ないし148条)を削ることなどを内容とする法律が同年6月19日に成立し,同法律が平成26年4月1日に施行されたこと(認定事実(3)キ,(4)オ),被告が同年6月25日付けで厚生労働大臣に対して解散の認可を申請し,これに伴って,被告の年金受給者に対する加算部分の支給が停止され(前提事実(7),認定事実(5)ア),同年7月30日に上記の申請が認可されたことに伴って,被告の年金受給者に対する加算部分の支給がされなくなったこと(前提事実(7),認定事実(5)イ)は確かであるが,本件加入員減少及びその原因となった原告による本件事業譲渡は平成24年12月に生じたものであり,この時点では,上記の各事実のうち,厚生労働省「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別本部」が同年9月28日付けで基金の代行制度については他の企業年金制度への移行を促進しつつ一定の経過期間をおいて廃止する方向で対応することを決定していたというにすぎず,原告の解散の方針が決まっていたわけではないし,旧厚年法138条5項及び旧基金規則32条の3の3並びにこれらに基づく本件規約99条の3が有効に存在していた以上,前記イで説示したように本件規約に拘束される被告が,本件納入告知処分をするに際し,本件規約99条の3の規定する「継続基準方式」によって特別掛金を計算したことが不合理であったと認めることはできない。また,原告が主張するように,本件加入員減少から本件納入告知処分までの間に生じた法改正や事情の変更を理由として,本件加入員減少に伴う特別掛金の計算方法を変更して納入告知処分を行うということは,有効であった本件規約の効力を後の事情によって遡及的に否定することにほかならず,むしろ法令や本件規約の適用に関する法的安定性や設立事業所間の公平性を害するものというべきである。
そうすると,本件事業譲渡に伴う本件加入員減少という事実が発生した時点で,厚生労働省「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別本部」が基金の代行制度については他の企業年金制度への移行を促進しつつ一定の経過期間をおいて廃止する方向で対応することを決定していたという事情や,本件納入告知処分がされた時点で,被告が平成25年2月14日に解散の方針を決議していたという事情を考慮したとしても,被告が本件規約99条の3の規定する「継続基準方式」によって特別掛金を計算して本件納入告知処分を行ったことが,原告と他の設立事業所間の負担の公平を著しく害するものとまでは認められない。
(2)  本件規約変更の経過を理由とする信義則違反について
原告は,本件納入告知処分について,被告の常務理事が被告の第100回代議員会で行った本件規約が「ズル抜けを防止するもの」であるという説明等を全く無視してされたものであり,信義則に反するなどと主張する。
しかしながら,本件条項1号の適用要件として設立事業所の事業主の加入員を減少させることで掛金の負担を免れようという主観的意図が必要でないことは,前記3(2)で説示したとおりであり,また,そもそも,前記3(2)ウで説示したとおり,原告が指摘する被告の第100回代議員会における被告の常務理事の説明についても,「いわゆるズル抜けを防止するもの」という発言が同号の適用要件として上記のような意図を要することを説明したものであったとまでは認め難い。さらに,本件納入告知処分の原因となった原告による本件事業譲渡よりも前に,被告が原告に対して同号の適用要件として上記のような意図が必要であるという誤解を与える言動をしたと認めるに足りる証拠はなく,現に,原告は,本件事業譲渡よりも前の時点で同号の定める事業譲渡に伴う加入員減少の場合における特別掛金の一括徴収について,上記のような意図を必要とするという認識を有していたというわけでもなく(認定事実(1)ウ,(2)カ),その他,本件納入告知処分に関して被告の原告に対する不誠実な行動等を認めるに足りる証拠もないことからすると,本件納入告知処分が信義則に反するという原告の主張を採用することはできない。
(3)  その他の原告の主張について
原告は,本件納入告知処分の判断過程に看過し難い誤りがあるなどと主張するが,本件加入員減少が本件条項1号の適用要件を充足することは前記3(1)で説示したとおりであり,本件納入告知処分に至る経過において,本件納入告知処分を違法ならしめるような瑕疵等を認めることはできない。
5  本件納入告知処分の適法性について
以上によれば,原告による本件事業譲渡に伴う本件加入員減少について,被告が本件条項1号を適用して特別掛金の一括徴収をしたことは相当であり,証拠(甲9,乙9)及び弁論の全趣旨によれば,本件納入告知処分における一括徴収金の計算は,本件規約に基づいてされたものであり,その計算過程についても誤りはないものと認められるから,本件納入告知処分は適法である。
6  結論
よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 増田稔 裁判官 齊藤充洋 裁判官 佐野義孝)

 

別紙
関係法令等の定め
1 厚生年金保険法(平成25年法律第63号による改正前のもの。以下「旧厚年法」という。)
(1) 旧厚年法106条は,厚生年金基金(以下「基金」という。)は,加入員の老齢について給付を行い,もって加入員の生活の安定と福祉の向上を図ることを目的とする旨規定している。
(2) 旧厚年法111条は,適用事業所の事業主は,基金を設立しようとするときは,基金を設立しようとする適用事業所に使用される被保険者の2分の1以上の同意を得て,規約を作り,厚生労働大臣の認可を受けなければならない旨規定している。
(3) 旧厚年法117条は,その1項において,基金に代議員会を置く旨,その2項において,代議員会は代議員をもって組織する旨,その3項において,代議員の定数は偶数とし,その半数は,設立事業所(基金が設立された適用事業所をいう。以下同じ。)の事業主において設立事業所の事業主(その代理人を含む。)及び設立事業所に使用される者のうちから選定し,他の半数は,加入員において互選する旨,それぞれ規定している。
(4) 旧厚年法118条1項1号は,規約の変更は代議員会の議決を経なければならない旨規定している。
(5) 旧厚年法122条は,基金の設立事業所に使用される被保険者は,当該基金の加入員とする旨規定している。
(6) 旧厚年法124条1項2号は,加入員は,その設立事業所に使用されなくなったときは,その翌日に加入員の資格を喪失する旨規定している。
(7) 旧厚年法130条5項は,基金は,その業務の一部を,政令で定めるところにより,信託会社や信託業務を営む金融機関等に委託することができる旨規定している。
(8) 旧厚年法138条5項は,基金の設立事業所が減少する場合(設立事業所の事業主が,分割又は事業の譲渡により他の設立事業所の事業主以外の事業主にその事業の全部又は一部を承継させる場合その他の設立事業所の減少に相当するものとして厚生労働省令で定める事由が生じた場合を含む。)において,当該減少に伴い他の設立事業所に係る掛金が増加することになるときは,当該基金は,当該増加する額に相当する額として厚生労働省令で定める計算方法のうち規約で定めるものにより算定した額を,当該減少に係る設立事業所の事業主から掛金として一括して徴収するものとする旨規定している。
(9) 旧厚年法146条の2は,解散した基金は,清算の目的の範囲内において,その清算の結了に至るまでは存続するものとみなす旨規定している。
2 公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成25年法律第63号。以下「旧厚年法改正法」という。)
(1) 旧厚年法改正法1条は,旧厚年法第9章を削る旨規定している。
(2) 旧厚年法改正法附則4条は,旧厚年法の規定により設立された基金であって旧厚年法改正法の施行の際現に存するものは,施行日以後も,旧厚年法の規定により設立された基金としてなお存続するものとする旨規定している。
(3) 旧厚年法改正法附則5条は,旧厚年法106条,117条,118条,122条,124条,130条,138条,146条の2等の規定は,なおその効力を有する旨規定している。
3 厚生年金基金規則(平成26年厚生労働省令第20号による廃止前のもの。以下「旧基金規則」という。)
(1) 旧基金規則32条の3の2は,旧厚年法138条5項の厚生労働省令で定める事由について,① 設立事業所の事業主が,分割又は事業の譲渡により他の設立事業所の事業主以外の事業主にその事業の全部又は一部を承継させる場合,② 上記①に規定する場合のほか,規約で定めるところにより,設立事業所に使用される当該基金の加入員の数が減少する場合とする旨規定している。
(2) 旧基金規則32条の3の3第1項は,旧厚年法135条5項の規定する厚生労働省令で定める計算方法は,次のいずれかの方法とする旨規定している。
ア 当該減少に係る設立事業所(以下,この条において「減少設立事業所」という。)が減少しないとしたならば基金が減少設立事業所の事業主から徴収することとなる旧基金規則32条5項に規定する過去勤務債務に係る掛金の額の予想額の現価とする方法
イ 減少設立事業所が減少する日(以下,この条において「減少日」という。)における年金給付等積立金の額が,当該日を厚生年金基金令(平成26年政令第73号による廃止前のもの)39条の3第2項1号に規定する基準日とみなして同項の規定の例により計算した額を下ることが見込まれる場合において,当該下る額の見込額のうち減少設立事業所に係る分として規約で定めるところにより合理的に計算した額とする方法
ウ 前2号の額のうちいずれか大きい額とする方法
エ その他厚生労働大臣が定めるところにより計算した額とする方法(厚生労働大臣が定める場合に限る。)
(3) 旧基金規則32条の3の3第3項は,基金は,旧厚年法138条5項の厚生労働省令で定める計算方法を旧基金規則32条の3の3第1項1号の方法とする場合には,規約で定めるところにより,同号の方法により計算した額に次の各号に掲げる場合の区分に応じ,当該各号に定める額を加算することができる旨規定している。
ア 減少日において,年金給付等積立金の額が加入員及び加入員であった者に係る責任準備金の額を下ることが見込まれる場合 当該下る額の見込額を償却するために必要となる掛金の額のうち減少設立事業所が減少しないとしたならば基金が減少設立事業所の事業主から徴収することとなることが見込まれる掛金の額として合理的に計算した額
イ 減少設立事業所の減少に併せて掛金の額を計算するとした場合において,前号以外の要因により掛金の額が増加することになるとき 前号以外の要因により増加することになる掛金の額のうち基金が減少設立事業所の事業主から徴収すべき額として合理的に計算した額
(4) 旧基金規則32条の3の3第4項は,基金は,同条1項に規定する方法で計算した額に,減少設立事業所が減少しないとしたならば減少設立事業所の事業主が負担することとなる旧基金規則32条2項に規定するその他の掛金の額を加算することができる旨規定している。
4 公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等及び経過措置に関する省令(平成26年厚生労働省令第20号。以下「旧基金規則廃止等省令」という。)
(1) 旧基金規則廃止等省令1条は,旧基金規則は廃止する旨規定している。
(2) 旧基金規則廃止等省令17条は,旧厚年法の規定により設立された基金であって旧厚年法改正法の施行の際現に存するものについては,旧基金規則33条の3の2,33条の3の3等の規定については,なおその効力を有する旨規定している。
5 全国光学工業厚生年金基金規約
(1) 全国光学工業厚生年金基金規約98条1項は,被告は,設立事業所が次のアないしウの事由により被告の設立事業所でなくなった場合(設立事業所でなくなった事業主の事業及び権利義務を承継する事業主が,引き続きこの基金の設立事業所の事業主として存続する場合を除く。),これにより生じる当該事務所に係る債務及び不足額の合計額を特別掛金として,当該事業所から一括指定徴収するものとし,設立事業所でなくなる日までに,特別掛金として納入の告知を行う旨規定している。
ア 設立事業所の事業主が被告宛てに任意脱退を申し入れて代議員会がこれを認めた場合
イ 事業譲渡,合併(他の設立事業所との合併を除く。),任意清算及び自主廃業による場合
ウ その他上記の事由に準ずるものとして代議員会が認めた場合
(2) 全国光学工業厚生年金基金規約99条の2第1項は,被告は,設立事業所が次のアに該当して加入員が減少した場合(1号)又はイに該当する場合(2号)において,当該加入員の減少に伴い他の設立事業所に係る掛金が増加することになるときは,当該加入員が減少した設立事業所(以下「加入員減少事業所」という。)の当該減少する加入員(以下「減少加入員」という。)に係る債務及び不足金を当該事業主から特別掛金として一括して徴収するものとし,加入員減少事業所の事業主に対し,速やかに特別掛金として納入の告知を行う旨規定している。
ア 設立事業所の事業主が,会社分割(会社分割後の全ての事業所がこの基金の設立事業所となる場合を除く。),事業の全部若しくは一部の譲渡(他の設立事業所に譲渡する場合を除く。),当該設立事業所の加入員の一部を他の設立事業所以外の事業所に転籍させることにより,この基金の加入員の資格を喪失させた場合
イ 設立事業所に使用される当該加入員が減少する場合(上記アに該当する場合を除く。)であって,代議員会において当該設立事業所と他の設立事業所の掛金負担の公平性を保つため特別掛金を一括徴収すべきと判断した場合。ただし,判断するに当たっては,必要に応じて当該事業主から説明を求めることがある。
(3) 全国光学工業厚生年金基金規約99条の2第5項は,同条1項に定める加入員減少事業所の減少加入員に係る債務及び不足金とは,次に掲げる債務及び不足金をいう旨規定している。
ア 特別掛金収入現価
イ 繰越不足金
(4) 全国光学工業厚生年金基金規約99条の3第1項は,同規約99条の2第5項各号に掲げる債務及び不足金の額は,加入員減少日の直前の財政決算日における純資産額が代行債務の額に不足する場合には,次のア及びイを合算した額とする旨規定している。
ア 代行債務不足額に相当する額に,加入員減少日直前の財政決算日におけるこの基金の設立事業所の加入員及び加入員であった者に係る過去期間代行給付現価の額に対する加入員減少事務所の減少加入員に係る過去期間代行給付現価の額の割合を乗じて得た額
イ 加入員減少日直前の財政決算日における全国光学工業厚生年金基金規約99条の2第5項各号に掲げる債務及び不足金の合計額から代行債務不足額に相当する額を控除した額に,同日における基金の設立事業所の加入員及び加入員であった者に係る数理債務の額に対する加入員減少事業所の減少加入員に係る数理債務の額の割合を乗じて得た額
以上

 

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