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「営業支援」に関する裁判例(35)平成28年 2月 9日 東京地裁 平26(ワ)1370号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(35)平成28年 2月 9日 東京地裁 平26(ワ)1370号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成28年 2月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)1370号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2016WLJPCA02098015

要旨
◆原告会社が、被告は、原告会社の取締役に在職中、代表者印を冒用して契約書を偽造し、同社に無価値の投資プロジェクトの組合権を第三者から買い取らせて、その代金相当額の損害を与えたと主張して、また、原告会社の関連会社の発行する雑誌の購読者である原告購読者らが、被告は、同雑誌の編集発行人に在職中、原告購読者らに対する同雑誌を利用した一連の投資勧誘行為において、過大な利益配当をうたう反面、リスクについては抽象的な説明しかせず、投資リスクに対する判断を著しく誤らせて出資させ、その出資金相当額の損害を及ぼしたと主張して、被告に対し、それぞれ損害賠償を求めた事案において、原告会社主張に係る代表者印の冒用、契約書の偽造その他の忠実義務違反となるべき事実は認められないとして、原告会社の請求を棄却する一方、被告が行った一連の投資勧誘行為を不法行為と認めた上で、同不法行為は破産法253条1項2号の「悪意で加えた不法行為」に該当すると判断し、その余の請求を認容した事例

参照条文
民法709条
会社法423条1項
破産法253条1項2号

裁判年月日  平成28年 2月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)1370号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2016WLJPCA02098015

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 

 

主文

1  原告株式会社X1の請求を棄却する。
2  被告は,原告X2に対し,625万6000円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告は,原告X3に対し,409万3724円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  被告は,原告X4に対し,304万9408円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5  被告は,原告X5に対し,103万0840円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6  被告は,原告X6に対し,363万5349円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7  被告は,原告X7に対し,161万1789円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8  被告は,原告X8に対し,225万1789円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9  被告は,原告X9に対し,322万5977円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
10  被告は,原告X10に対し,152万2308円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
11  被告は,原告X11に対し,278万0949円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
12  訴訟費用は,原告株式会社X1に生じた分は,同原告の負担とし,その余の原告らに生じた分は,被告の負担とし,被告に生じた分は,これを2分し,その1を原告株式会社X1の,その余を被告の負担とする。
13  この判決は,第2項から第11項までに限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告株式会社X1(以下「原告会社」という。)
被告は,原告会社に対し,500万円及びこれに対する平成26年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告X2(以下「原告X2」という。)
主文2項と同旨
3  原告X3(以下「原告X3」という。)
主文3項と同旨
4  原告X4(以下「原告X4」という。)
主文4項と同旨
5  原告X5(以下「原告X5」という。)
主文5項と同旨
6  原告X6(以下「原告X6」という。)
主文6項と同旨
7  原告X7(以下「原告X7」という。)
主文7項と同旨
8  原告X8(以下「原告X8」という。)
主文8項と同旨
9  原告X9(以下「原告X9」という。)
主文9項と同旨
10  原告X10(以下「原告X10」という。)
主文10項と同旨
11  原告X11(以下「原告X11」といい,原告X2,同X3,同X4,同X5,同X6,同X7,同X8,同X9及び同X10と併せて「原告購読者ら」という。)
主文11項と同旨
第2  事案の概要
本件は,原告会社と,その関連会社の発行する雑誌の購読者である原告購読者らとが,原告会社の取締役で,上記雑誌の編集発行人であった被告に対し,損害賠償金及びこれに対する訴状送達日の翌日以降の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案であり,このうち,原告会社の主請求は,被告が,原告会社の取締役に在職中,代表者印を冒用して契約書を偽造し,原告会社に無価値の投資プロジェクトの組合権を第三者から買い取らせて,その代金相当額の損害を与えたとして,会社法423条1項に基づく損害賠償を求めるものであり,原告購読者らの主請求は,いずれも,被告が,上記雑誌の編集発行人に在職中,原告購読者らに対し,上記雑誌を利用した一連の投資勧誘行為において,過大な利益配当をうたう反面,リスクについては抽象的な説明しかせず,投資リスクに対する判断を著しく誤らせて,出資をさせ,その出資金相当額の損害を及ぼしたとして,民法709条に基づく損害賠償を求めるものである。
第3  請求原因
1  原告会社の請求原因
(1)  被告は,原告会社の取締役に在職中,その忠実義務に違反し,当時の代表取締役であるB(以下「B」という。)の使用する原告会社の代表者印を冒用して,原告会社を買主とする契約書を偽造し,もって,平成17年2月21日にCからメディテックシステムの組合権5口を代金125万円で,同年5月23日にDから上記組合権1口を代金35万円で,同年7月8日にEからメトロプロジェクトの組合権1口を代金40万円で,同年10月21日にFから上記組合権1口を代金35万円で,それぞれ原告会社に買い取らせた。
(2)  原告会社が被告の上記各行為によって買い取らされた上記各組合権はいずれも無価値であり,原告会社は上記買取代金に相当する合計235万円の損害を被った。この損害に,原告会社が要した刑事調査費用を含めると,損害額の合計は500万円になる。
(3)  よって,原告会社は,被告に対し,会社法423条1項に基づき,損害賠償請求500万円及びこれに対する履行請求日後の平成26年3月7日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2  原告購読者らの請求原因
(1)  被告は,月刊誌「○○」(以下,その臨時増刊号を含めて「本件雑誌」という。)の購読者である原告購読者らに対し,被告の考案した投資プロジェクトへの投資を募ったり,株式会社a(以下「破産会社」という。)が出資して設立した会社に対する株主としての出資を募集したりして,原告購読者らに次のとおりの出資をさせた。
ア 原告X2(出資額合計680万円)
平成15年9月頃オメガバンク・プロジェクト5口250万円
平成15年12月頃メトロプロジェクト5口250万円
平成16年7月頃パセオメディカル・レボリューション1口50万円
平成17年7月頃フューチャーステージ1口30万円
平成17年12月頃シェフウェアジャパン1口50万円
平成18年4月頃アクアグローバルコミュニケーション1口50万円
イ 原告X3(出資額合計440万円)
平成16年12月頃デジタルドラッグ2口100万円
平成17年7月頃フューチャーステージ3口90万円
平成17年12月頃シェフウェアジャパン2口100万円
平成18年4月頃アクアグローバルコミュニケーション4口100万円
平成18年9月頃男の隠れ家オンライン2口50万円
ウ 原告X4(出資額合計350万円)
平成15年4月頃パセオメディテックシステム1口50万円
平成15年12月頃メトロプロジェクト1口50万円
平成16年7月頃パセオメディカル・レボリューション1口50万円
平成16年12月頃デジタルドラッグ1口50万円
平成17年12月頃シェフウェアジャパン1口50万円
平成18年4月頃アクアグローバルコミュニケーション1口50万円
平成18年9月頃男の隠れ家オンライン1口50万円
エ 原告X5(出資額合計120万円)
平成16年12月頃デジタルドラッグ1口50万円
平成18年4月頃アクアグローバルコミュニケーション2口50万円
平成19年6月頃トレードチェック・システム1口20万円
オ 原告X6(出資額合計400万円)
平成15年4月頃パセオメディテックシステム2口100万円
平成15年9月頃オメガバンク・プロジェクト2口100万円
平成15年12月頃メトロプロジェクト2口100万円
平成16年7月頃パセオメディカル・レボリューション1口50万円
平成16年12月頃デジタルドラッグ1口50万円
カ 原告X7(出資額合計200万円)
平成15年4月頃パセオメディカル・レボリューション1口50万円
平成15年12月頃メトロプロジェクト1口50万円
平成16年12月頃デジタルドラッグ1口50万円
平成18年4月頃アクアグローバルコミュニケーション1口50万円
キ 原告X8(出資額合計280万円)
平成16年1月頃メトロプロジェクト1口50万円
平成16年7月頃パセオメディカル・レボリューション2口100万円
平成17年1月頃デジタルドラッグ2口100万円
平成17年7月頃フューチャーステージ1口30万円
ク 原告X9(出資額合計350万円)
平成18年4月頃アクアグローバルコミュニケーション4口100万円
平成18年9月頃男の隠れ家オンライン第1号・第2号匿名組合8口200万円
平成18年10月頃男の隠れ家オンライン第1号・第2号匿名組合2口50万円
ケ 原告X10(出資額合計160万円)
平成18年4月頃アクアグローバルコミュニケーション1口50万円
平成18年9月頃男の隠れ家オンライン第1号・第2号匿名組合2口50万円
平成19年6月頃トレードチェック・システム(株)増資3口60万円
コ 原告X11(出資額合計300万円)
平成15年9月頃オメガバンク・プロジェクト1口50万円
平成17年7月頃フューチャーステージ1口30万円
平成17年12月頃シェフウェアジャパン2口100万円
平成18年4月頃アクアグローバルコミュニケーション1口50万円
平成18年9月頃男の隠れ家オンライン第1号・第2号匿名組合1口50万円
平成19年6月頃トレードチェック・システム(株)増資1口20万円
(2)  上記(1)の一連の投資勧誘行為は,過大な利益配当(例えば,原告X4の場合には,デジタルドラッグについては,売上げの3%を持分に応じて配当するというもので,パセオメディカル・レボリューションについては,パセオメディカルセンターのシステム利用代金の8%を匿名組合が取得して,これを組合員に配当するというもの,原告X9の場合には,アクアグローバルコミュニケーションについては,年3%の配当をするというもの)をうたう反面,リスクについては抽象的な記載しかしておらず,原告購読者らの投資リスクに対する判断を著しく誤らせるものであり,そのため,原告購読者らは,それぞれ,上記(1)のアないしコの出資額合計に相当する損害を被った。
(3)  なお,原告購読者らが上記(1)のプロジェクトについての収益の配当等又は破産会社の破産手続における配当として支払を受けた額は,次のとおりである。
ア 原告X2
破産会社の破産手続において,54万4000円
イ 原告X3
破産会社の破産手続において,30万6276円
ウ 原告X4
デジタルドラッグについて,20万円
パセオメディテックシステムについて,25万0592円
エ 原告X5
デジタルドラッグについて,16万9160円
オ 原告X6
デジタルドラッグについて,16万9160円
破産会社の破産手続において,19万5491円
カ 原告X7
デジタルドラッグについて,16万9160円
破産会社の破産手続において,21万9051円
キ 原告X8
デジタルドラッグについて,32万9160円
破産会社の破産手続において,21万9051円
ク 原告X9
破産会社の破産手続において,27万4023円
ケ 原告X10
破産会社の破産手続において,7万7692円
コ 原告X11
破産会社の破産手続において,21万9051円
(4)  よって,原告購読者らは,それぞれ,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,上記(1)のアないしコのとおりの各自の出資額の合計から,上記(2)のアないしコのとおりの各自の支払を受けた額の合計を控除した残額の損害賠償金及びこれに対する不法行為後の日(訴状送達日の翌日)である平成26年3月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
第4  被告の認否及び主張
1  原告会社の請求原因に対する認否及び反論
否認ないし争い,次のとおり主張する。
(1)  平成17年2月21日時点では,原告会社の代表者は被告であり,被告が原告会社の代表者印を冒用して契約書を偽造したとの主張は成り立たない。また,同月時点で,売出価格250万円のメディテックシステムの組合権を125万円で購入したことは,忠実義務違反ではない。
(2)  平成17年5月23日のメディテックシステム組合権の購入,同年7月8日のメトロプロジェクト組合権の購入,同年10月21日のメトロプロジェクト組合権の購入は,売出価格が50万円だったものを,それぞれ,35万円,40万円,35万円で購入しており,その行為自体は忠実義務違反ではない。
(3)  上記メディテックシステム及びメトロプロジェクトの各組合権が無価値になったのは,破産会社が破産した平成20年12月である。
被告による原告会社の代表者印の冒用や契約書の偽造をいう原告会社の主張については,これを裏付ける客観的な証拠がない。
また,刑事調査費用は内容が不明である。
2  原告購読者らの請求原因に対する認否及び反論
請求原因(1)及び(3)の各事実は認め,その余は争い,次のとおり主張する。
(1)  原告購読者らは,いずれも,本件雑誌を年間予約購読していた成人である。すなわち,同誌の広告が掲載された日刊紙を読み,ビジネス情報のみを内容とする月刊誌をあえて年間予約購読し得る知的レベルの持ち主であった。
(2)  原告購読者らは,いずれも,投資した各プロジェクトについて記載された小冊子(本件雑誌の臨時増刊号)をじっくりと読んだ上で投資の判断をしている。しかも,上記小冊子の内容は,これから実施される予定の事業内容であり(つまり,やってみなくては分からない),配当は全て予定どおりにいった場合に見込める数字だと明記され,予定どおりにいかないリスクもあると断られている。リスクに関する記載だけが抽象的だという根拠はどこにもない。
3  被告の抗弁(破産免責)
原告らの各請求権の発生後に被告について破産手続が開始され,平成23年2月16日に,上記手続において免責許可決定がなされ,その後,同許可決定は確定した。
第5  被告による破産免責の抗弁に対する原告らの認否等
争う。被告の不法行為は,悪意に基づくものであるから,免責の対象とならない。
第6  当裁判所の判断(原告会社の請求について)
1  認定事実
後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実を認めることができる。
(1)  原告会社は,各種投資情報・資料の収集,企画販売,コンサルタント等を業とする株式会社であり,平成10年1月5日,本件雑誌を通じて新規事業への出資として集められた資金と,破産会社の資金とをもって設立された。(甲A13,弁論の全趣旨)
(2)  被告は,原告会社の設立時にその代表取締役に就任し,平成17年3月に代表取締役を退任したが,その後も取締役の地位にあった。また,被告の後任の代表取締役には,Bが就任した。(乙5,被告本人,弁論の全趣旨)
(3)  原告会社は,平成17年2月21日にCからメディテックシステムの組合権5口を125万円で,同年5月23日にDからメディテックシステムの組合権1口を35万円で,同年7月8日にEからメトロプロジェクトの組合権1口を40万円で,同年10月21日にFからメトロプロジェクトの組合権1口を35万円で,それぞれ買い取った。(甲A1,3,5,7,被告本人)
(4)  原告会社において,上記(3)の組合権購入は,被告の担当業務であった。
(被告本人)
(5)  原告会社における平成17年当時の組合権の購入等の契約手続としては,契約条件が調うと,総務部において,契約書の雛形を利用して契約書を作成し,契約成立当時の代表取締役が,会社のロッカーの金庫に保管されていた代表者印を押印して契約書を作成していた。(被告本人)
(6)  なお,原告会社の現代表者であるAは,平成17年当時,原告会社の事業とは別の事業に従事しており,原告会社とは関わりがなく,原告会社の事業内容等の実態は知らなかった。(原告会社代表者)
2  判断
原告会社は,前記認定事実(3)のとおりの原告会社による平成17年の各組合権の買取りについて,被告が原告会社の代表者印を冒用して契約書を偽造し,これらの買取りをさせたもので,被告の原告会社に対する忠実義務に違反したと主張し,原告会社代表者(A)はこれに沿う供述をする。
しかしながら,上記供述は,被告が契約書を偽造する現場をA自身が目撃したことをいうものではなく,平成17年当時の原告代表者であったBからの伝聞に係る事実を述べるものか,あるいは,単に被告が契約書を偽造したという結論を論拠なく説くものに終始している。このうち,Bからの伝聞は,破産会社の倒産後,Aが,Bから,上記の買取りの契約書に押印した覚えがない旨を言われたというのであるが,そもそも,伝聞に係るBの話の内容そのものが曖昧であって,被告による契約書の偽造の事実を積極的に説くものではなく,しかも,Bが,被告と同様に上記買取りの当時の原告会社の役員であって,原告会社による上記買取りに関し,現在ではAが代表者を務める原告会社から責任追及を受けるおそれがあり,それゆえ,上記契約書の作成ないし上記買取りに関し,被告とは利害の対立し得る立場にあることも考え併せると,上記の伝聞に係るBの話をたやすく採用することはできない。Aのその余の供述も,被告が契約書を偽造したという結論を裏付ける具体的な事実を指摘するものではない。前記認定事実(6)のとおり,Aが平成17年当時の原告会社の社内における決裁,契約書作成等の手続を承知する立場になかったことや,前記認定事実(5)のとおりの当時の原告会社の代表者印の管理状況に照らしても,Aの上記供述をもっては,被告による契約書偽造を認定することはできない。
このほかにも,原告会社の主張に係る代表者印の冒用,契約書の偽造その他の忠実義務違反となるべき事実を認めるに足りる証拠はない。
第7  当裁判所の判断(原告購読者らの各請求について)
1  請求原因(1)及び(3)の各事実(被告が,本件雑誌の購読者である原告購読者らに対し,被告の考案した投資プロジェクトへの投資を募ったり,破産会社が出資して設立した会社に対する株主としての出資を募集したりして,原告購読者らに出資させたこと,原告購読者らが支払を受けた額)は,当事者間に争いがない。
したがって,原告購読者らと被告との間における争点は以下のとおりである。
(1)  被告については,本件雑誌において勧誘・募集した各プロジェクト(①パセオメディテックシステム,②オメガバンク・プロジェクト,③メトロプロジェクト,④パセオメディカル・レボリューション,⑤デジタルドラッグ,⑥フューチャーステージ,⑦シェフウェアジャパン,⑧アクアグローバルコミュニケーション,⑨男の隠れ家オンライン(第1号・第2号匿名組合を含む。),⑩トレードチェック・システム。以下,併せて「本件各プロジェクト」という。)において,過大な利益配当をうたう反面,リスクについては抽象的な記載しかせず,原告購読者らの投資リスクに対する判断を著しく誤らせた不法行為が成立するか。
(2)  上記(1)の不法行為が成立するとして,その不法行為は,破産法253条1項2号の「悪意で加えた不法行為」に該当するか。
2  上記1に挙げた争いのない事実に加えて,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実を認めることができる。
(1)  破産会社における投資募集運用事業等
ア 本件雑誌は,破産会社が発行していた雑誌であり,海外などで行われている新しいビジネスモデルや商品等の販売手法などを紹介し,資産運用に関する情報などを掲載していた。(甲A13から15まで,甲I19,甲I21から24まで,甲M22から27まで)
イ 本件雑誌は,その発刊当初から新聞紙上の広告を使って通信販売の方式で販売され,年間契約の定期購読方式により申込月から1年間分の購読料の前払いを受ける手法により販売されていた。そのため,後に書店等で同誌の取扱いが開始されても,中心となる読者は新聞広告等によって定期購読を申し込んできた年間定期購読契約者であった。(甲A13)
ウ 破産会社は,投資募集運用事業として,本件雑誌において,今後の成長が期待できる新規事業との触れ込みで特定の事業案件を紹介し,読者に対し当該事業案件への投資の勧誘と募集を行っていた。そして,投資対象となっている新規事業が第三者により実施・運営される事業である場合には,募集によって当該第三者が集めることのできた資金のうちの一定割合の金員をコンサルタント料等の名目で破産会社が受領し,他方,投資対象となっている新規事業を破産会社が自ら実施・運営する場合には,破産会社自らが投資資金を受領し,これを使って運営会社を設立するなどして新規事業を実施・運営する方式を取っていた。(甲A13から15まで,甲I19,甲I21から24まで,甲M22から27まで)
(2)  平成14年頃の状況
ア 破産会社は,平成9年10月頃から,雑誌「△△」を出版していたが,同誌は,発行当初から全く広告契約を獲得することができない状態が続いていたにもかかわらず,人件費,取材費及び印刷費で多額の費用を要したため,これによって月額で約1000万円を超える損失を出し続けた。もっとも,破産会社はそれに対応した経費節減や人員の削減などは全く行っておらず,金融機関からの借入れなどによっても不足する資金については,当時,本件雑誌を利用した公募の増資で資金を確保していた関連会社のトレードチェック・システム株式会社から,貸付金の名目で資金の提供を受けることによってまかなっていた。(甲A13,乙5)
イ そのため,破産会社は,上記事態を打開するために,雑誌「△△」の広告部長としてG(以下「G」という。)を採用した。Gは,破産会社の取締役を経て,平成14年には,トレードチェック・システム株式会社の代表取締役となった。
匿名組合方式による資金の募集における投資対象の新規事業は,被告又はGの発案によるものと同人らの事業上の知人の発案によるものとがあったが,いずれにしても,これらの投資募集運用事業については,その中心となる事業案件の調査や企画,投資の勧誘や募集に関する本件雑誌の企画編集等及び出資受入後の事業運営などの作業に当たる部署やその所属人員は特に置かれず,事実上被告とGの直轄となっていた。(甲A13)
ウ 平成14年頃から,破産会社が預かり保管中の資金は,同社及びトレードチェック・システム株式会社の運転資金として費消されていた。破産会社は,この頃から次々と新規事業を打ち出しては匿名組合方式による投資の勧誘と募集を開始していた。(甲A13)
(3)  破産会社の破産手続
破産会社は,平成20年12月15日に破産手続開始を申し立て,平成21年1月15日に同手続開始決定を受けた。(甲A13)
(4)  本件各プロジェクトの出資形態
原告購読者らは,本件各プロジェクトのうち,⑩トレードチェック・システムについては,破産会社が出資するなどして設立したトレードチェック・システム株式会社の株式を購入して出資したが,それ以外のプロジェクトにおいては,破産会社と匿名組合契約を締結して出資を行った。(甲A13,甲B3,6,9,12,15,16,19,20,甲C3から12まで,甲F1から3まで,5,6,甲I3の2,甲I4の2,甲I5の2,甲I6の2,甲I19,21,22,24,甲J4の1,2,9から12まで,甲L4,甲L7の1,2,甲L9の1,2,甲M2,5,9,10,12,13,16,17,21から27まで)
(5)  本件各プロジェクトのうち,①のパセオメディテックシステムについて
ア パセオメディテックシステムとは,インターネットテレビ電話機能を使ったセキュリティ及び医療相談システムであるメディテックシステムを構築する事業とされていた。具体的には,インターネットテレビ電話により,留守宅の病人等の様子を確認できる機能を実現し,千葉県松戸市のb駅前の約1400坪の敷地に内科,心療内科,アレルギー科及び小児科を設置した病院,デイケアセンターにカフェレストランを併設した「cメディカルセンター」を建設した上で,同センターに常駐する医師に相談することができる機能を実現するシステムを構築し,IT機器システムの販売及び医療相談料を収益源とする事業とされていた。(甲I19)
募集条件については,募集期間を平成15年4月14日から同年5月12日までとし,出資総額を1億5000万円,一口金額を50万円,出資口数を300口(うち,公募口数は240口)とされた。(甲I19)
イ 上記プロジェクトについては,「パセオ・プロジェクト第2弾 メディテック大作戦」との名称で,本件雑誌(臨時増刊号 vol.496,平成15年4月11日発行)において事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。(甲I19)
本件雑誌の上記臨時増刊号においては,cメディカルセンターの建設が着実に進行していること,IT機器システムの販売会社として,株式会社ズィークコミュニケーションズが代理店を動かす準備を進めており,システムを販売するための販売網は既に出来上がっていること,上記センターが平成15年10月から稼働すること,株式会社ズィークコミュニケーションズが同年9月からメディテックシステムの販売を開始することなど具体的な稼働スケジュール等が記載されていた。また,「メディテック大作戦(匿名組合員)に対する配当計算(1口当たり)予測」として,パッケージ卸(個数),卸利益(上代の5%とする),相談件数(販売個数の10%とする)〕,相談利益(1件につき2500円とする),利益合計,配当金,キャピタルゲイン〔1口当たり〕(株式額面の20倍で売却できたものとして),配当金合計について,1年目から5年目までの各期の数値及び全期の合計の数値が表形式で記載され,出資1口50万円当たり,5年間で612万7253円の配当が可能であるという内容となっていた。そして,「※さらに匿名組合解散時に出資金全額を返還(ただし損失がある場合にはあるだけの資金を分配して終了。上記配当計算はあくまでも予測でこの金額を保証するものではありません。また匿名組合解散時までに新会社が株式公開できなかった場合には,出資分の株券をお渡しいたします。)」と記載されていた。(甲I19)
被告は,自らが陣頭指揮をとるので自信はあるとした上で,「何度もいっていることですが,もし皆様が銀行等の金融機関に金利わずか0.15%などというふざけた数字で大事なお金を定期預金しているのであれば,せめてその一割程度の金額を,このわれわれの夢とロマンに賭けていただきたいということです。」「ぜひ有志の皆様,私と一緒に大儲けしてください。今回が最後の企画になりますので,くれぐれもバスに乗り遅れませんように!!」とのメッセージを記載していた。(甲I19)
また,出資協力者募集要項において,出資金の使途及び管理については,「出資金は,このプロジェクトの責任団体株式会社a(代表取締役H)が管理し,当プロジェクトの運営にのみ充当し他の目的にはいっさい使用しません。」と記載されていた。(甲I19)
ウ 前記募集により,出資金は1億0150万円となり,上記資金は,全て出資者から破産会社の銀行預金口座に対する送金により入金された。(甲I19,乙5,弁論の全趣旨)
実際の業務の状況については,運営会社として株式会社パセオメディテックが設立されているが,cメディカルセンターは,千葉県松戸市の□□には建設されず,インターネットテレビ電話システムも製造されなかった。(甲A13,乙5,被告本人)
そして,匿名組合により出資された金銭は,出資金が分別管理されていなかったため,上記設立会社の資本金部分を除き,破産会社の資産に混入していた。(乙5,被告本人,弁論の全趣旨)
エ その後,原告X4は,上記プロジェクトの分配金として,平成20年7月15日,破産会社から,25万0592円の支払を受けた。(争いのない事実,甲D23)
(6)  本件各プロジェクトのうち,②のオメガバンク・プロジェクトについて
ア オメガバンク・プロジェクトとは,役務の販売に関する購入者の購入資金をファイナンスする事業とされていた。具体的には,「役務」商品を販売する会社と提携して,同社がこれを販売する際に一括で購入代金を支払えない購入者に対しては,本事業案件による金融制度を紹介してこれを販売し,本事業の運営会社が購入代金を立替払するとともに,その代金額の3パーセントを手数料として販売会社より徴収し,他方で,消費者金融会社とも提携し,前記の立替払に係る購入者への立替金請求権を消費者金融会社による購入者への貸付金によって返済処理し,購入者からの金銭の回収は消費者金融会社が月額の分割で徴収するため,消費者金融会社が得る利息収入のうち4パーセントを手数料として徴収する形態の事業とされていた。(甲A13,甲M22)
募集条件については,募集期間を平成15年9月11日から同年10月10日までとし,出資総額を1億5000万円,一口金額を50万円,出資口数を300口(うち,公募口数は280口)とされた。(甲A13,甲M22)
イ 上記プロジェクトについては,「オメガバンク大作戦」との名称で,本件雑誌(臨時増刊号 vol.503,平成15年9月10日発行)において事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。(甲A13,甲M22)
本件雑誌の上記臨時増刊号においては,「オメガバンク事業計画表」として,前提条件及び5年目までの具体的な事業計画(営業計画,売上計画,要員計画,販売管理費)について具体的な数値が表形式で記載されていた。また,「オメガバンク大作戦(匿名組合員)に対する配当計算予測」として,運営会社として設立予定の株式会社オメガバンクの営業利益及び株主配当金,キャピタルゲイン(株式額面の20倍で売却できたものとして),金融利回り20パーセント(初年度は貸付50パーセント,2年度以降は80パーセントとして),配当金合計,1口当たりの配当金について,初年度から第5期までの各期の数値及び全期の合計の数値が表形式で記載され,出資1口50万円当たり,5年間で428万8564円の配当が可能であるという内容となっていた。そして,「※さらに匿名組合解散時に出資金全額を返還(ただし損失がある場合にはあるだけの資金を分配して終了。上記配当計算はあくまでも予測でこの金額を保証するものではありません。また匿名組合解散時までに新会社が株式公開できなかった場合には,出資分の株券をお渡しいたします。)」と記載されていた。(甲M22)
被告は,上記配当計算予測の表を指して,「5年間大儲けして,組合を解散し,総資産を口数毎に分配します。組合運営に関しては私,Hが全責任を負います」とした上で,「ではこれから,オメガバンクという前代未聞の金融システムづくりが始まります。私と一緒に大儲けしませんか?募集はこの1回のみですので,くれぐれもバスに乗り遅れませんように・・・・・・。」とのメッセージを記載していた。(甲M22)
また,出資協力者募集要項において,出資金の使途及び管理については,「出資金は,このプロジェクトの責任団体株式会社a(代表取締役H)が管理し,当プロジェクトの運営にのみ充当し他の目的にはいっさい使用しません。」と記載されていた。(甲M22)
ウ 前記募集により,223名から合計317口の申込みがなされ,出資金は1億5850万円となり,上記資金は,全て出資者から破産会社の銀行預金口座に対する送金により入金された。(甲A13)
実際の業務の状況については,設立された株式会社オメガバンクが,消費者金融会社の株式会社クレディアと提携し,事業を開始したが,平成19年7月に株式会社クレディアが民事再生手続の開始を申し立て,これに先立つ同年3月には新規融資を停止していたため,一度は黒字化した事業も平成19年8月期には再び赤字に転落し,平成20年12月には破産会社が破産手続開始の申立てをしたことなどから,事業は継続することができなかった。(甲A13,乙5)
そして,匿名組合により出資された金銭は,出資金が分別管理されていなかったため,上記設立会社の資本金部分を除き,破産会社の資産に混入していた。(甲A13,乙5,被告本人)
(7)  本件各プロジェクトのうち,③のメトロプロジェクトについて
ア メトロプロジェクトは,東京都交通局との間の契約に基づき,同局の運営する都営地下鉄の駅構内に大型ディスプレイを設置し,これを用いて動画広告を放映する事業とされていた。具体的には,破産会社は,東京都交通局に対し,都営地下鉄の駅構内に大型のプラズマディスプレイを設置し,その設置料を支払うことについては既に提案済みであり,かつ,本事業案件のために株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンと提携済みであるために,同社に商品を供給する会社などから,上記のディスプレイにおける広告放映契約を順次獲得し,その広告料により収益を上げようとしているとされていた。(甲A13,甲I21)
募集条件については,募集期間を平成15年12月20日から平成16年1月20日までとし,出資総額を1億円,一口金額を50万円,出資口数を200口(うち,公募口数は180口)とされた。(甲A13,甲I21)
イ 上記プロジェクトについては,「メトロプロジェクト」との名称で本件雑誌(臨時増刊号 vol.507,平成15年12月15日発行)において事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。(甲A13,甲I21)
本件雑誌の上記臨時増刊号においては,破産会社が,事業の運営会社として株式会社メトロディアシステムズを共同企画者である株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンと共同出資で設立するとし,「株式会社メトロディアシステムズ事業計画表」として,2004年から2008年までの具体的な事業計画(稼働駅数,売上げ〔1駅につき月間売上げ600万円×6か月分〕,設備投資,人件費,事務所経費,広告代理店マージン〔売上げの20パーセント〕,オペレーションマージン〔売上の10パーセント〕,損益の合計等)について具体的な数値が表形式で記載されていた。また,「メトロプロジェクト匿名組合員に対する配当計算予測」として,株式会社メトロディアシステムズの営業利益及び株主配当金,キャピタルゲイン(株式額面の20倍で売却できたものとして),オペレーションマージン(売上げの10パーセント-運営費30パーセント),配当金合計,1口当たりの配当金について,2004年度から2008年度までの各期の数値及び全期の合計の数値が表形式で記載され,出資1口50万円当たり,5年間で1370万6600円の配当が可能であるという内容となっていた。そして,「※さらに匿名組合解散時に出資金全額を返還(ただし損失がある場合にはあるだけの資金を分配して終了。上記配当計算はあくまでも予測でこの金額を保証するものではありません。また匿名組合解散時までに新会社が株式公開できなかった場合には,出資分の株券をお渡しいたします。)」と記載されていた。(甲I21)
上記配当計算予測の上部には,「すべてが予定通りに行けば,50万円の出資が5年間で27倍余,なんと1370万円に!!」との記載や,Iの著作からの引用として,「最後の船に乗り遅れたために金持ちになり損ねたと思っている人も,心配には及ばない。富とチャンスに満ちた国へ向かう別の船が,今,出港の準備をしている。問題はあなたがそれに乗るかどうかだ。」と記載されていた。(甲I21)
また,出資協力者募集要項において,出資金の使途及び管理については,「出資金は,このプロジェクトの責任団体株式会社a(代表取締役H)が管理し,当プロジェクトの運営にのみ充当し他の目的にはいっさい使用しません。」と記載されていた。(甲I21)
ウ 前記募集により,518名から合計730口の申込みがなされ,出資金は3億6500万円となり,上記資金は,全て出資者から破産会社の銀行預金口座に対する送金により入金された。(甲A13)
実際の業務の状況については,運営会社として株式会社デジメディアが設立されているが,そもそも,東京都交通局との間において交渉を行った形跡は一切なかった。また,株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンとの提携関係も一切なかった。そのため,事業期間の開始当初から,出資金の募集内容とは全く異なる方向で,街頭の大型ビジョン上の広告に関する広告代理業などを目指した活動がなされた。(甲A13,甲I9の3,甲I10の2,乙5)
そして,匿名組合により出資された金銭は,出資金が分別管理されていなかったため,上記設立会社の資本金部分及び追加で事業のために用いられた約4300万円を除き,破産会社の資産に混入していた。(甲A13,乙5,被告本人)
(8)  本件各プロジェクトのうち,④のパセオメディカル・レボリューションについて
ア パセオメディカル・レボリューションは,西洋医学と東洋医学とを統合した新分野の医療サービスを提供するとの内容の事業とされていた。具体的には,リスクコンサルタントであるJを事業の中心に据え,同人の人脈により,中国陸軍病院の主任教授である人物との提携関係を持って中医学のノウハウの提供を受けるとともに,その他,医師や鍼灸師らをアドバイザリースタッフとして「dサロン」と称するサロンを開設し,そこに「エンダモロジー」というエステ機器(体内面施術用1台600万円・体表面施術用1台320万円)を設置し,そのサロンで施術料収入やサプリメントの販売収入を収益源とするものとされていた。(甲A13,甲I24)
募集条件については,募集期間を平成16年7月10日から同月31日までとし,出資総額を1億円,一口金額を50万円,出資口数を200口(うち,公募口数は200口)とされた。(甲A13,甲I24)
イ 上記プロジェクトについては,「パセオメディカル・レボリューション」との名称で,本件雑誌(臨時増刊号 vol.516,平成16年7月10日発行)において事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。(甲A13,甲I24)
本件雑誌の上記臨時増刊号においては,dサロン1号店を平成17年1月に銀座に,同2号店を渋谷に,同3号店を池袋にそれぞれオープンし,この3店で年商12億円,経常利益5億円を実現し,平成18年には新宿に倍の規模を持つ4号店をオープンし,その後にマザーズ上場を実現する予定だと記載していた。そして,事業の運営会社として上記サロンを運営する株式会社統合医療研究所を設立するとし,「株式会社統合医療研究所事業計画表」として,2005年から2007年までの具体的な事業計画(各サロンの売上げ,支出,パセオシステム使用料及び利益,設備投資並びに損益の合計)について具体的な数値が表形式で記載されていた。また,「パセオメディカル・レボリューション匿名組合員に対する配当予定表」として,dサロン(株式会社統合医療研究所)の売上げ,粗利益,配当及びキャピタルゲイン,パセオメディカルセンターの使用料(マージン)配当合計,1口当たりの配当について,1年目から3年目までの各期の数値及び全期の合計の数値が表形式で記載され,出資1口50万円当たり,3年間で1326万7720円の配当が可能であるという内容となっていた。そして,「※さらに匿名組合解散時に出資金全額を返還(ただし損失がある場合にはあるだけの資金を分配して終了。上記配当計算はあくまでも予測でこの金額を保証するものではありません。キャピタルゲインは上場時に30倍の値段がついたものとして試算し,出資金の半分を含みます。また匿名組合解散時までに新会社が株式公開できなかった場合には,同一条件にて当組合契約をもう3年間延長し,株式公開時点において当組合を解散するものといたします。)」と記載されていた。(甲I24)
上記配当計算予測の上部には,「すべてが予定通りに行けば,50万円の出資が3年間で26倍余,なんと1326万円に!!」との記載や,Iの著作からの引用として,「最後の船に乗り遅れたために金持ちになり損ねたと思っている人も,心配には及ばない。富とチャンスに満ちた国へ向かう別の船が,今,出港の準備をしている。問題はあなたがそれに乗るかどうかだ。」と記載されていた。(甲I24)
また,出資協力者募集要項において,出資金の使途及び管理については,「出資金は,このプロジェクトの責任団体株式会社a(代表取締役H)が管理し,当プロジェクトの運営にのみ充当し他の目的にはいっさい使用しません。」と記載されていた。(甲I24)
ウ 前記募集により,445名から合計623口の申込みがなされ,出資金は3億1150万円となり,上記資金は,全て出資者から破産会社の銀行預金口座に対する送金により入金された。(甲A13)
実際の業務の状況については,運営会社として株式会社統合医療研究所が設立されているが,そもそも,中国陸軍病院の主任教授という人物との提携関係やその他の医師や鍼灸師らとの提携関係自体が存在していなかった。サロン1号店を開設したものの,運営事業の核であるサロンの集客の目玉とされていた「エンダモロジー」というエステ機器について輸入が不可能になったとの理由で設置されず,「薬効石」という石を用いたマッサージサロンとなった。そして,上記サロンも経営不振から早期に閉鎖し,最終的にはインターネット上での医療情報の提供サービスという形で事業を行うものと匿名組合の方針が一方的に変更されているが,その活動実態もインターネット上にウェブサイトを立ち上げただけの簡単なもので,本格的に稼働する前に破産会社が破産開始手続の申立てをするに至った。(甲A13,甲I11の3,甲I12の2,3,甲I13の2,乙5)
そして,匿名組合により出資された金銭は,出資金が分別管理されていなかったため,上記設立会社の資本金部分を除き,破産会社の資産に混入していた。(甲A13,乙5,被告本人)
(9)  本件各プロジェクトのうち,⑤のデジタルドラッグについて
ア デジタルドラッグは,インターネットのウェブサイト上に設置する仮想店舗において医薬品を小売り販売するとの内容の事業とされていた。具体的には,三共株式会社の元顧問であるというKを代表者として株式会社を設立し,同人の人脈を用いて,関西に拠点を置くe薬局(約500店),首都圏を拠点とするf薬局(約100店)とg薬局(約300店)が,この会社の作り出す仮装薬局チェーン(デジタルドラッグストア)に協力し,上記薬局店が医薬品を供給し,本事業体がこれをインターネット上で販売し,販売利益の20パーセントから50パーセントの販売手数料を得て収益を上げようとするものとされていた。(甲A13,甲I22)
募集条件については,募集期間を平成16年12月22日から平成17年1月21日までとし,出資総額を1億円,一口金額を50万円,出資口数を200口(うち,公募口数は180口)とされた。(甲A13,甲I22)
イ 上記プロジェクトについては,「デジタルドラッグ大作戦」との名称で,本件雑誌(臨時増刊号 vol.522,平成16年12月20日発行)において事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。(甲A13,甲I22)
本件雑誌の上記臨時増刊号においては,事業の運営会社として株式会社デジタルドラッグを設立するとし,「株式会社デジタルドラッグ事業計画表」として,2005年から2007年までの具体的な事業計画(月間アクセス数,商品購入者数〔アクセス数の1パーセント〕,商品購入金額〔購入単価を1万円とする〕,売上げの半分を医薬品とする〔マージン35パーセント〕,売上げの半分をオリジナル商品とする〔マージン50パーセント〕,設備投資,システム開発,人件費,事務所経費,販売管理費,検索システム使用料〔売上げの5パーセント〕,利益,累計)について具体的な数値が表形式で記載されていた。また,「デジタルドラッグ匿名組合員に対する配当予定表」として,株式会社デジタルドラッグの売上げ,粗利益,配当及びキャピタルゲイン,検索システムの使用料(マージン),配当合計,1口当たりの配当について,1年目から3年目までの各期の数値及び全期の合計の数値が表形式で記載され,出資1口50万円当たり,3年間で1567万8000円の配当が可能であるという内容となっていた。そして,「※さらに匿名組合解散時に出資金全額を返還(ただし損失がある場合にはあるだけの資金を分配して終了。上記配当計算はあくまでも予測でこの金額を保証するものではありません。キャピタルゲインは上場時に30倍の値段がついたものとして試算し,出資金の半分を含みます。また匿名組合解散時までに新会社が株式公開できなかった場合には,同一条件にて当組合契約をもう3年間延長し,株式公開時点において当組合を解散するものといたします。)」と記載されていた。(甲I22)
上記配当計算予測の上部には,Iの著作からの引用として,「最後の船に乗り遅れたために金持ちになり損ねたと思っている人も,心配には及ばない。富とチャンスに満ちた国へ向かう別の船が,今,出港の準備をしている。問題はあなたがそれに乗るかどうかだ。」と記載されていた上,「ぜひこのチャンスに乗り遅れませんように!!」と記載されていた。(甲I22)
また,出資協力者募集要項において,出資金の使途及び管理については,「出資金は,このプロジェクトの責任団体株式会社a(代表取締役L)が管理し,当プロジェクトの運営にのみ充当し他の目的にはいっさい使用しません。」と記載されていた。(甲I22)
ウ 前記募集により,240名から合計576口の申込みがなされ,出資金は2億8800万円となり,上記資金は,全て出資者から破産会社の銀行預金口座に対する送金により入金された。(甲A13)
実際の業務の状況については,運営会社として株式会社デジタルドラッグが設立されているが,Kの人脈を利用して医薬品の納入体制を築く前提としていたが,そのような事業活動が行われた形跡は全くなく,募集時に挙げられていた医薬品小売りのチェーン店等との提携関係なども交渉すらされていなかった。そして,運営会社を平成17年2月10日に設立した後,同年6月7日には,Kが健康上の問題を理由に取締役を辞任しており,その後はインターネット上でウェブサイトを立ち上げるなどのごく簡単な活動しか行われなかった。(甲A13,甲I14の2,甲I14の3,甲I15の2,乙5)
そして,匿名組合により出資された金銭は,出資金が分別管理されていなかったため,上記設立会社の資本金部分を除き,破産会社の資産に混入していた。(甲A13,乙5,被告本人)
エ その後,平成20年5月13日,原告X4,同X5,同X6,同X7,同X8は,破産会社との間で和解契約書を取り交わし,同社から,原告X4は20万円,同X5は16万9160円,同X6は16万9160円,同X7は16万9160円,同X8は32万9160円の支払を受けた。(乙2,5,争いのない事実)
(10)  本件各プロジェクトのうち,⑥のフューチャーステージについて
ア フューチャーステージは,団塊の世代を読者層と設定した新雑誌を創刊する内容の事業とされていた。具体的には,本件雑誌(「○○」),「△△」に続く第三の雑誌として,これから定年退職する団塊の世代を読者層とした新雑誌「◎◎」を創刊するというもので,上記世代の消費活動を狙っている企業(ハイグレードマンション,高級車,高級家電等を販売する企業等)の宣伝広告を雑誌に掲載することで,広告収益で利益をあげようとするものであり,ファンド(匿名組合)を結成する形態の事業とされていた。(甲M23)
募集条件については,募集期間を平成17年7月11日から同年8月10日までとし,出資総額を9900万円,一口金額を30万円,出資口数を330口(うち,公募口数は300口)とされた。(甲A13,甲M23)
イ 上記プロジェクトについては,「フューチャーステージ大作戦」との名称で,本件雑誌(臨時増刊号 vol.530,平成17年7月4日発行)において事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。(甲A13,甲M23)
本件雑誌の上記臨時増刊号においては,破産会社の出版部が新雑誌「◎◎」を製作することとし,「『◎◎』制作委員会(匿名組合員)に対する配当金計算(1口当たり)予測」として,購読売上げ,広告売上げ,製作費,利益,利益合計について,1年目から5年目までの各期の数値及び全期の合計の数値が表形式で記載され,出資1口30万円当たり,5年間で395万6760円の配当が可能であるという内容となっていた。そして,「※さらに匿名組合解散時に出資金全額を返還(ただし損失がある場合にはあるだけの資産を分配して終了。上記配当計算はあくまでも予測でこの金額を保証するものではありません。」と記載されていた。(甲M23)
被告は,「私と一緒に儲けましょう!!」と記載した上で,「『○○』も『△△』もずいぶん儲けさせていただきましたが,今度の『◎◎』こそ,最も儲かる雑誌になるはずです(実は業界では『Yの仕掛ける3番目の雑誌』としてすでにかなりの注目を集めております・・・・・・)。」とのメッセージを記載していた。(甲M23)
また,出資協力者募集要項において,出資金の使途及び管理については,「出資金は,このプロジェクトの責任団体株式会社aが管理し,新雑誌『◎◎』の創刊・運営にのみ充当し,他の目的にはいっさい使用しません。」と記載されていた。(甲M23)
ウ 前記募集により,合計388口の申込みがなされ,出資金は1億1640万円となり,上記資金は,出資者から破産会社の銀行預金口座に対する送金により入金された。(甲A13,甲B11,甲M4,甲I6の1)
実際の業務の状況については,◎◎制作委員会が,平成18年3月1日に「◎◎創刊号」を発刊した後,平成20年11月14日発行の「■■」まで合計11冊の雑誌を発刊したが,平成20年12月の破産会社の破産手続開始の申立てにより,事業は継続できなくなった。上記累計損益については,利益が出た雑誌もあったものの,8冊目の「▼▼」までの累計損失は3804万7108円となっていた。上記11冊の雑誌のうち,「◎◎」という名称で発刊された雑誌は3冊のみで,4冊目以降は,「◎◎」との名称は使用されず,「●●」や,「▲▲」など,◎◎で予定されていたコンセプトとは異なる雑誌を発刊していた。(甲A13,甲I16の2,甲I17の2,乙5)
そして,匿名組合により出資された金銭は,出資金が分別管理されていなかったため,破産会社の資産に混入していた。(甲A13,乙5,被告本人)
(11)  本件各プロジェクトのうち,⑦のシェフウェアジャパンについて
ア シェフウェアジャパンは,アメリカのブランド「▽▽」から,飲食店のユニフォームを輸入販売する内容の事業とされていた。具体的には,上記ブランド「▽▽」から,アジア地区独占販売権を取得し,日本において,「▽▽」ブランドのユニフォームを販売するウェブ販売システムを確立するというもので,テレビ番組「◇◇」(個人の事業等に資金を提供するという内容のテレビ番組)に出演したMがこのシェフウェアの日本上陸をコーディネイトするものとされていた。(甲M24,甲M30)
シェフウェアジャパン匿名組合の概要としては,出資総額1億6500万円,出資口数330口,一口金額50万円とされ,その第1組合及び第3組合の目的は,事業の運営会社とする株式会社シェフウェアジャパンの設立において,その資本金に出資し,同社が株式公開する時点において全株式を市場にて売却し,キャピタルゲインを得るというもので,その第2組合及び第4組合の目的は,株式会社シェフウェアジャパンがインターネットを使ってシェフウェアブランドの衣料品を通信販売するためのシステム構築,コンサルティングを受け持つというものであった。(甲A13)
イ 上記プロジェクトについては,まず,平成17年12月に,本件雑誌の読者にダイレクトメール「特別縁故募集のご案内」を送る方法で,事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。その際の出資金の単位は1口25万円であり,出資者は,株式会社シェフウェアジャパンの株式に出資する第1組合の結成及び同社の販売システムを構築し,事業支援を行うための第2組合の結成のため,2口一組(合計50万円)の単位で出資するものとされた。その後,平成19年3月に,本件雑誌(同月12日発行の臨時増刊号)において,第1組合及び第2組合と同様の出資形態で,第3組合及び第4組合結成のため,再度出資者が募集された。(甲A13,14,15,甲M24)
上記第1組合及び第2組合の事業案件等が紹介された「特別縁故募集のご案内」においては,「シェフウェアジャパンの損益・投資計画」として,1年目から5年目までの具体的な事業計画(Assumption,初期投資額,販売計画,損益計画等)について,具体的な数値が表形式で記載されていた。また,「シェフウェアジャパンの出資匿名組合員に対する配当計算予測」として,シェフウェアジャパンの売上高及び当期利益,第1組合に対する配当金及びキャピタルゲイン(出資額の15倍で売却できたものとして),第2組合に対するシステム利用マージン,配当金合計,1口当たり配当金(360分の1)について,初年度から第5期までの各期の数値及び全期の合計の数値が表形式で記載され,出資1口50万円当たり,5年間で449万9673円の配当が可能であるという内容となっており,これを年間利回りに直すと,160%という驚異の数字になると説明されていた。そして,「注:上記配当計算はあくまでも予測で,この金額を保証するものではありません。また匿名組合解散時までに新会社が株式公開できなかった場合には,出資分の株券をお渡しいたします。(匿名組合の期間は5年間となります。)」と記載されていた。(甲M24)
被告は,「長年『月刊 ○○』をご購読いただいた皆様だけに,特別にご案内いたします!!」と題して,「もちろん100パーセントの保証はできませんが,優れたベンチャー投資のチャンスというのはそうそう訪れるものではありません。今回の投資案件,すでに360口中,縁故関係者にて280口が予約済みになっております。つまり,残りはあと80口です。」「出資は商法の匿名組合の形式を取り,組合運営に関しては私(Y)が全責任を負います。もちろん私自身も出資しております。」「このチャンス,お見逃しになりませぬよう・・・・・・もちろんベンチャー投資ですから,ご無理もなさいませんように。」などのメッセージを記載していた。(甲M24)
ウ 前記平成17年12月及び平成19年3月の募集により,合計330口の申込みがなされ,出資金は1億6500万円となり,上記資金は,出資者から破産会社の銀行預金口座に対する送金により入金された。(甲A13,甲B14,甲M8)
実際の業務の状況については,運営会社として株式会社シェフウェアジャパンが設立されているが,新規取引先の開拓は計画どおりに進まず,第1期目は売上高を2億1715万1000円と予測していたが,実際には296万円,第2期目は売上高を6億8533万6000円と予測していたが,実際には1502万円となるなど,売上高は配当予測における売上高には及ばず,営業者である破産会社に対して合意どおりのマージンも支払われなかった結果,第1期,第2期ともに,匿名組合員に対して配当を行うに至らず,平成20年12月の破産会社の破産手続開始の申立てにより,事業は継続できなくなった。第2組合及び第4組合は,株式会社シェフウェアジャパンに対する営業支援等を行うことを目的としていたが,破産会社が破産手続開始の申立てに至るまでの間,何らの活動ないし出損も行わなかった。(甲A13,甲M24,乙5)
そして,匿名組合により出資された金銭は,出資金が分別管理されていなかったため,破産会社の資産に混入していた。(甲A13,乙5,被告本人)
(12)  本件各プロジェクトのうち,⑧のアクアグローバルコミュニケーションについて
ア アクアグローバルコミュニケーションは,インターネットの新しい形態のライブチャットを作り,同チャットを使った有料コミュニケーションシステムを構築する事業とされていた。具体的には,アダルトではない新しいライブチャットとして,医療・健康相談,法律・トラブル相談,外国語会話,様々なレッスン(ゴルフ,お花,釣り,株等),対局(碁,将棋,チェス,オセロ等)及び占い等のライブチャットを作り,それらを使った有料コミュニケーションシステムを構築し,その利用者から会員利用料収入を,同コミュニケーションシステムのソフトウェアを企業に対してレンタルしてレンタル料収入を,同サイトに広告を掲載する企業から広告料収入を得て,そのほか,パソコンを使えない高齢者を対象として,家庭用テレビに接続するだけで同コミュニケーションシステムに参加できるセットボックスを販売するものとされていた。(甲A13,甲M25)
アクアグローバルコミュニケーション匿名組合の概要としては,出資総額を2億2850万円,一口金額を50万円,出資口数を457口とされ,第1組合は,事業の運営会社とする株式会社アクアグローバルコミュニケーションの設立において,その資本金に出資し,同社が株式公開する時点において全株式を市場にて売却し,キャピタルゲインを得るというもので,第2組合は,株式会社アクアグローバルコミュニケーションがインターネット市場にライブチャットのポータルサイトを構築するに当たっての営業支援,コンサルティングを受け持つというものであった。(甲A13)
イ 上記プロジェクトについては,「ITビジネスへの挑戦 AGC大作戦」との名称で,本件雑誌(臨時増刊号 vol.541,平成18年4月3日発行)において事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。(甲A13,甲M25)
本件雑誌の上記臨時増刊号においては,事業の運営会社として株式会社アクアグローバルコミュニケーションを設立するとし,「株式会社アクアグローバルコミュニケーション〔AGC〕事業計画書」として,1年目から5年目までの具体的な事業計画(Assumption,初期投資額,販売計画,損益計画等)について,具体的な数値が表形式で記載されていた。また,「ライブチャットポータルサイト事業〔AGC〕匿名組合員に対する配当計算予測」として,株式会社アクアグローバルコミュニケーションの売上高及び当期利益,第1組合に対する配当金及びキャピタルゲイン(出資額の30倍で売却できたものとして),第2組合に対するコンサルタント料,配当金合計,1口当たり配当金(380分の1)について,初年度から第5期までの各期の数値及び全期の合計の数値が表形式で記載され,出資1口50万円当たり,5年間で850万6811円の配当が可能であるという内容となっていた。そして,「注:上記配当計算はあくまでも予測で,この金額を保証するものではありません。また匿名組合解散時までに新会社が株式公開できなかった場合には,出資分の株券をお渡しいたします。(匿名組合の期間は5年間となります。)」と記載されていた。(甲M25)
上記配当計算予測の下部には,Iの著作からの引用として,「最後の船に乗り遅れたために金持ちになり損ねたと思っている人も,心配には及ばない。富とチャンスに満ちた国へ向かう別の船が,今,出港の準備をしている。問題はあなたがそれに乗るかどうかだ。」と記載されていた上,「このまたとないITビジネスへの挑戦に,ぜひ乗り遅れませんように!!」と記載されていた。(甲M25)
また,出資協力者募集要項において,出資金の使途及び管理については,「出資金は,このプロジェクトの責任団体株式会社a(代表取締役H)が管理し,当プロジェクトの運営にのみ充当し他の目的にはいっさい使用しません。」と記載されていた。(甲M25)
ウ 前記募集により,合計457口の申込みがなされ,出資金は2億2850万円となり,上記資金は,出資者から破産会社の銀行預金口座に対する送金により入金された。(甲A13,甲B18,甲J3の1,甲M11)
実際の業務の状況については,運営会社として株式会社アクアグローバルコミュニケーションが設立されているが,システムの構築自体が1年間立ち後れた上に,システム構築後も他社の無料チャットシステムの発達により,会員数が伸び悩み,売上高は配当計算予測における売上高には到底及ばず,同社から営業者である破産会社に対してマージンも支払われなかった結果,第1期,第2期ともに,匿名組合員に対して配当を行うに至らず,平成20年12月の破産会社の破産手続開始の申立てにより,事業は継続できなくなった。株式会社アクアグローバルコミュニケーションは,株式公開を行っておらず,キャピタルゲインも存在しない。第2組合は,株式会社アクアグローバルコミュニケーションに対する営業支援等を目的としていたが,破産会社が破産手続開始申立てに至るまでの間,何らの活動ないし出損も行わなかった。(甲A13,乙5)
そして,匿名組合により出資された金銭は,出資金が分別管理されていなかったため,破産会社の資産に混入していた。(甲A13,乙5,被告本人)
(13)  本件各プロジェクトのうち,⑨の男の隠れ家オンラインについて
ア 男の隠れ家オンラインは,雑誌「△△」について,インターネットのウェブサイト(ウェブ版「△△」)を作るという内容の事業とされていた。具体的には,インターネットのウェブサイトでウェブ版「△△」を作成し,トップページのバナー広告収入,特集タイアップ広告収入,本文での広告収入,オリジナル商品の通信販売等により収益を出す構造とされていた。(甲A13,甲M26)
イ 男の隠れ家オンライン匿名組合の第1組合及び第2組合の概要は,いずれも,募集期間は平成18年9月4日から募集口数に達するまでとし,出資総額を9500万円,一口金額を25万円,出資口数を380口(うち,公募口数は380口)とされた。第1組合は,事業の運営会社とする株式会社hの設立において,その資本金に出資し,同社が株式公開する時点において全株式を市場にて売却し,キャピタルゲインを得るというもので,第2組合は,株式会社hがウェブ版「△△」を立ち上げるためのスタートアップ支援,営業支援,コンサルティング業務を行うというものであった。(甲A13,甲M26)
ウ 上記プロジェクトについては,「ITビジネスへの挑戦2 男の隠れ家オンライン」との名称で,本件雑誌(臨時増刊号 vol.547,平成18年9月4日発行)において事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。(甲M26)
本件雑誌の上記臨時増刊号においては,事業の運営会社として株式会社hを設立するとし,「△△オンライン事業計画書」として,1年目から5年目までの具体的な事業計画(売上げとして,Assumption,バナー広告,タイアップ広告,PPC広告,通信販売,支出として初期投資,広告代理店マージン,商品仕入代,コンサルタント料,サイト制作費,一般管理費等)について,具体的な数値が表形式で記載され,上場までの具体的なスケジュールも記載されていた。また,「男の隠れ家オンライン匿名組合員に対する配当計算予測」として,株式会社hの売上高及び当期利益,第1組合に対する配当金及びキャピタルゲイン(出資額の30倍で売却できたものとして),第2組合に対するコンサルタント料,配当金合計,1口当たり配当金(380分の1)について,初年度から第5期までの各期の数値及び全期の合計の数値が表形式で記載され,出資1口50万円(第1組合及び第2組合につき,それぞれ25万円)当たり,5年間で877万0827円の配当が可能であるという内容となっていた。そして,「注:上記配当計算はあくまでも予測で,この金額を保証するものではありません。また匿名組合解散時までに新会社が株式公開できなかった場合には,出資分の株券をお渡しいたします。(匿名組合の期間は5年間となります。)」と記載されていた。(甲M26)
上記配当計算予測の下部に,被告は,「私と一緒に,ITビジネスという明らかに宝の山が横たわる島へ向かって,出港してみませんか?なお,今度の船がITビジネスへの挑戦最後の船となりますので,くれぐれも乗り遅れませんように!!」とのメッセージを記載していた。(甲M26)
また,出資協力者募集要項において,出資金の使途及び管理については,「出資金は,このプロジェクトの責任団体株式会社a(代表取締役H)が管理し,当プロジェクトの運営にのみ充当し他の目的にはいっさい使用しません。」と記載されていた。(甲M26)
エ 前記募集により,出資金は1億8700万円となり,上記出資金は,出資者から破産会社の銀行預金口座に対する送金により入金された。(甲A13,甲M15,乙5,弁論の全趣旨)
実際の業務の状況については,運営会社として株式会社hが設立され,ウェブ版「△△」を制作したが,思うように広告の売上げが伸びず,匿名組合員に対して配当を行うに至らず,平成20年12月の破産会社の破産手続開始の申立てにより,事業は継続できなくなった。株式会社hは,株式公開を行っておらず,キャピタルゲインも存在しない。第2組合は,株式会社hに対する営業支援等を目的としていたが,雑誌「△△」において支援に関する募集広告等を行ったのみであった。(甲A13,乙5)
そして,匿名組合により出資された金銭は,出資金が分別管理されていなかったため,破産会社の資産に混入していた。(甲A13,乙5,被告本人)
(14)  本件各プロジェクトのうち,⑩のトレードチェック・システムについて
ア トレードチェック・システムは,インターネットを利用した物々交換システム(物々交換ネット)を運営する事業とされていた。具体的には,物々交換ネットに会員登録した会員が商品を登録し,会員同士が物々交換した場合の手数料を収益とする事業とされていた。(甲M27)
募集条件については,物々交換ネットを運営するトレードチェック・システム株式会社(当時の代表取締役は被告)の増資を行う形で行われ,募集期間を平成19年6月10日から同年7月10日までとし,一口金額を20万円,出資口数を450口とされた。(甲F5,甲L4,甲M21,27)
イ 上記プロジェクトについては,「物々交換が世界を変えるファイナル・プロジェクト=ITビジネス最後の挑戦=」との名称で,本件雑誌(平成19年6月10日発行の臨時増刊号)において事業案件の紹介とそれに対する投資の勧誘・募集が行われた。(甲M27)
本件雑誌の上記臨時増刊号においては,「トレードチェック・システム(株)3カ年計画」として,1年目(平成19年7月から平成20年6月まで)から3年目(平成21年7月から平成22年6月まで)までの具体的な事業計画(売上げ〔物々交換ネット会員数,総バーター金額,営業収益〕)及び支出(宣伝費,システム運営費,一般管理費)並びに利益について,具体的な数値が表形式で記載されていた。また,配当計算として,株主配当金,1口(1000株)当たり配当額,上場時のキャピタルゲイン(1口当たり,出資額の30倍として)について,数値が表形式で記載され,出資一口20万円当たり,3年間で,株主配当金が66万6666円,上場した場合のキャピタルゲインが600万円であるという内容となっていた。そして,「※:上記配当計算はあくまでも予測で,この金額を保証するものではありません。」と記載されていた。(甲M27)
被告は,「資本の論理は,だれかが得をすればだれかが損をするというものですが,物々交換(バーター)は,みんなが得をできる仕組みです。“物々交換ネット”はそれに関わる人々全員が得をします。そして最も得をするのは,今回ご出資いただく皆様かと思われます。」「私と一緒に世界を変えながら,同時に巨額の経済的利益も手に入れましょう。口数に限りがありますゆえ,お申込みはお早めに・・・!」とのメッセージを記載していた。(甲M27)
ウ 前記募集により,出資金は9000万円となった。(乙5)
実際の業務の状況については,物々交換ネットの会員が増えず,上記の事業計画によれば,1年目は,物々交換ネットの会員数は5万人と予測され,営業収益は6億円,支出が合計3億円で,利益は3億円と予測されていたが,実際には,月間収益が数万円のまま1年目が過ぎ,事業継続が困難となって,平成20年12月の破産会社の破産手続開始の申立てに合わせて,トレードチェック・システム株式会社も破産手続開始を申し立てた。(甲A13,甲M27,乙5)
(15)  被告による各事業の募集及びその後の出資金の管理等
ア 被告は,本件各プロジェクトその他の事業の収益予測について,本件雑誌等に記載したもののほかには,資料を作成していなかった。また,これらの事業の収益予測を第三者機関に依頼したこともなかった。(被告本人)
イ 前記のとおり,匿名組合方式による募集資金の受入れについては,常に破産会社が投資資金の受入先となり,出資者との関係で,破産会社が匿名組合契約の相手方となって契約を締結し,資金管理は破産会社が行っていたが,被告は,匿名組合方式により出資された金銭を破産会社の財産と分別して管理保管せず,破産会社の運転資金として費消していた。(甲A13,乙5)
ウ 前記のとおり,本件各プロジェクトにおいては,当初の募集予定口数を超えて出資を受け入れているプロジェクトが複数存在するが,被告は,当該プロジェクトの出資者に対し送付していた事業報告書等において,当初の募集口数を超えて出資を受け入れた事実について記載せず,あくまで当初の募集口数を前提にした各種の計算式などを記載して収支等を報告していた。(甲A13,甲I9の1から5まで,甲I10の1から4まで,甲I11の1,3,4,甲I12の1から4まで,甲I13の1から3まで,甲I14の1から4まで,甲I15の1から3まで,甲I16の1から3まで,甲I17の1から3まで,甲J14)
エ 被告は,本件各プロジェクトを含む三十数件のプロジェクトを企画したが,本件雑誌の募集要項等の内容どおりに事業を成功させたプロジェクトは1件もなかった。(被告本人)
オ 平成21年1月16日,被告の破産手続が開始され,平成23年2月16日,上記手続において,免責許可決定がされた。(乙7)
3  判断
(1)  本件各プロジェクトの募集及び勧誘における利益配当及びリスクに関する記載について
ア 前記争いのない事実及び認定事実によれば,本件各プロジェクトについて,原告購読者らを含む出資者らは,当該プロジェクトへの投資判断の基礎とすべき情報として,本件雑誌を購読してこれに記載された情報に接していたほかには,何らの情報の提供も受けておらず,本件雑誌のみによって出資判断をすることとなっていた。
イ そして,本件雑誌に記載された利益配当に関する情報をみると,本件各プロジェクトの募集及び勧誘に当たっての配当予測として,①パセオメディテックシステムについては,出資1口当たり,5年間で12倍以上の配当が,②オメガバンク・プロジェクトについては,出資1口当たり,5年間で8倍以上の配当が,③メトロプロジェクトについては,出資1口当たり,5年間で27倍以上の配当が,④パセオメディカル・レボリューションについては,出資1口当たり,3年間で26倍以上の配当が,⑤デジタルドラッグについては,出資1口当たり,3年間で31倍以上の配当が,⑥フューチャーステージについては,出資1口当たり,5年間で13倍以上の配当が,⑦シェフウェアジャパンについては,出資1口当たり,5年間で8倍以上の配当が,⑧アクアグローバルコミュニケーションについては,出資1口当たり,17倍以上の配当が,⑨男の隠れ家オンラインについては,出資1口当たり,17倍以上の配当が,⑩トレードチェック・システムについては,出資1口当たり,3倍以上の配当が,それぞれ可能である旨を記載されており,いずれも高額な配当予測となっていた。
これに対し,本件プロジェクトの配当実績をみると,多くのプロジェクトでは配当がなく,一部のプロジェクトでは一定の配当があったものの,配当予測とはおよそ一致しない状況であって,上記の配当予測が実現したプロジェクトは皆無であった(弁論の全趣旨)。配当の前提となる収益をみても,例えば,②オメガバンク・プロジェクトのように,一度は黒字化した事業もあったものの,これは少数であり,⑦シェフウェアジャパンにおいては,第1期の売上高は,予測値2億1715万1000円に対して実績値296万円であり,第2期の売上高は,予測値6億8533万6000円に対して実績値1502万円であって,売上高は予測に及んでいなかった。⑩トレードチェック・システムについても,1年目の利益は,予測値年額3億円に対し,実績値は月間収益にして数万円にとどまっていたというのであるから,予測の内容が現実の数値とあまりにもかけ離れている。
しかも,以上のような配当ないし収益の予測に関しては,本件各プロジェクトのいずれについても,被告が第三者機関に予測を依頼したことはなく,被告が自ら予測したとみられるところ,被告が精通していると自負する分野は出版のみであって,それ以外の分野については,被告は,発案者のキャリア等をどう評価するかの問題であるとして(被告本人),発案者等の予測を,何ら検証も経ずに記載していることが認められる。
以上のとおり,本件雑誌に記載された本件各プロジェクトの配当ないし収益の予測は,結果的に後日の実績と大きくかけ離れているのみならず,客観性を担保する手順や適任者による検討を経たものではない上,予測作業に供された具体的な資料の存在も裏付けられていないのであって,被告において,根拠のない予測であることを認識しながら,これを本件雑誌に記載していたものと推認するのが相当である。
ウ 本件雑誌に記載された具体的な項目をみると,収益予測や配当予測に関しては,本件各プロジェクトのいずれについても,各期及び全期の具体的な項目ごとの数値が記載されていたのに対し,リスクについては,上記のとおり記載された数値があくまでも予測であることや,記載された金額を保証するものではないことが記載されているのみで,各プロジェクトの事業遂行の障害となり得る事項,懸念事項等が具体的に記載されているものはなかった。例えば,被告は,①パセオメディテックシステムにおいて,インターネットテレビ電話システムの製造をしなかった理由について,携帯電話の普及により断念した旨陳述及び供述するが,実際のところは,具体的な稼働スケジュールによれば,出資の募集が締め切られた平成15年5月からわずか4か月後には,上記システムに必要なIT機器の販売が予定されていたのであって(甲I19),そうであれば,当初から,当時の携帯電話の普及状況等を客観的に分析した結果等を記載すべきと考えられるにもかかわらず,そのような記載は一切されていない。また,③メトロプロジェクトでは,プロジェクト遂行の前提となる東京都交通局との交渉は,何ら行われておらず,株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンとの提携関係も一切なかったにもかかわらず,本件雑誌には,東京都交通局に対しては既に設置について提案済みであるとか,株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンとの共同企画であるなどの虚偽の事実が記載されていた。さらに,⑥フューチャーステージにおいても,月刊誌「△△」は月額約1000万円の赤字を生じさせていたにもかかわらず,「ずいぶんと儲けさせていただきました」などと記載していた。
エ 本件各プロジェクトの募集及び勧誘における資金管理の方法,募集予定の出資口数等に関する記載にも,実態と一致しない部分がみられる。
すなわち,資金管理については,本件各プロジェクトの募集及び勧誘に際しては,ほとんどの場合において,出資金は当該プロジェクトの運営にのみ充当し他の目的には一切使用しない旨が記載されていた。ところが,実際には,破産会社は,平成14年頃から,預かり保管中の資金を同社及びトレードチェック・システム株式会社の運転資金として費消しており,更に,この頃から,次々と新規事業を打ち出しては匿名組合方式による投資の勧誘と募集を開始し,これに出資された金銭も破産会社の財産と分別して管理保管されず,運転資金として費消されていた。
また,出資口数についてみると,本来,各プロジェクトにおいて受け入れる出資口数は,当該プロジェクトにおける出資1口当たりの配当額を左右する事項であり,それゆえ,予定された募集口数を超える出資を受け入れることは,それ自体,予定された出資1口当たりの配当の達成を妨げかねない危険な行為というべきである。ところが,本件各プロジェクトの勧誘ないし募集に際しては,出資口数を限定する旨を明らかにし,出資1口当たりの配当可能額が高額になる情報を強調していたにもかかわらず,本件各プロジェクトのうち,②オメガバンク・プロジェクト,③メトロプロジェクト,④パセオメディカル・レボリューション,⑤デジタルドラッグ,⑥フューチャーステージについては,募集予定口数を超える出資が受け入れられていた。しかも,上記のような資金管理の実態に照らすと,プロジェクトごとの出資金ないし出資口数の上限を定める実益に乏しく,実際にも,上記のとおり,定められた募集予定口数を超えて出資を受け入れることは常態化していたと評価することができる。
オ 以上を総合考慮すると,被告は,本件各プロジェクトの募集及び勧誘において,収益予測及び配当予測については,各期及び全期の具体的な項目ごとに数値を記載した表により,過大な利益配当が可能であることが確実であるかのように記載しながら,出資のリスクについての重要な判断材料となる,出資口数やその後の資金管理等については予測される実態とは一致しない記載をし,また,リスクの具体的な判断材料となる事業遂行に当たっての障害となり得る事項や懸念事項は一切記載していなかったのであるから,本件各プロジェクトの募集及び勧誘における利益配当及びリスクに関する記載は,過大な利益配当をうたう反面,リスクについては抽象的な記載しかせず,原告購読者らの投資リスクに対する判断を著しく誤らせるものであったと認めるのが相当である。
このような募集及び勧誘によって,原告購読者らの投資判断を誤らせ,本件各プロジェクトへの出資をさせた被告の行為は,原告購読者らに対する不法行為に当たる。
(2)  被告が行った本件各プロジェクトへの一連の投資勧誘行為の「悪意で加えた不法行為」該当性
ア 前記(1)で述べたとおり,被告は,出資者に対して,本件各プロジェクトの投資判断の基礎となる情報について,本件雑誌に記載した以外に資料等を送付しておらず,各出資者は,本件雑誌以外に情報を与えられていなかったため,本件雑誌によってのみ,出資に関する判断を行わなければならなかったところ,本件雑誌には,前記のとおり,リスク要因となるような事項に関わる具体的な事項は一切記載されていなかった。また,事業内容の詳細な紹介においても,本件雑誌には,前記のとおり,③メトロプロジェクトのように,事業の中核となるべき事項について虚偽の事実を記載している例もあった。
その上で,被告は,本件各プロジェクトの各募集において,積極的な投資をあおる勧誘文言を記載していた。
イ 被告は,前記のとおり,本件各プロジェクトを含む三十数件のプロジェクトを企画しながら,募集要項等の内容どおりに事業を成功させたプロジェクトは1件もなかったにもかかわらず,本件各プロジェクトにおける収益予測について,収益予測の作成方法等を見直したり,検証したりすることなく,客観的な裏付けがないまま記載し,併せて過大な配当予測を記載していた。
ウ 前記のとおり,被告は,本件各プロジェクトのうち,多くのプロジェクトにおいて,募集予定口数を超えて出資を受け入れ,それが常態化していたが,募集予定口数を超えて出資を受け入れていたプロジェクトにおいて,当該プロジェクトの出資者に対し,当初の募集口数を超えて出資を受け入れた事実について報告せず,むしろ,当初の募集口数を前提にした各種の計算式などを記載して収支等を報告していた。本件各プロジェクトの募集の特徴は,全て,基本的に購読者が固定されている本件雑誌等によって行われていることから,上記事業内容の正確な収支報告等を行うと,当時,破産会社が次々に打ち出していた新規事業における出資者の募集に悪影響を与えることは容易に予測でき,被告は,あえて上記各事実を秘していたと推認することができる。
エ 本件各プロジェクトの事業実体についてみると,①パセオメディテックシステムは,その事業の中核とされたcメディカルセンターは建設されず,インターネットテレビ電話システムも製造されていない。被告は,パセオメディカルセンターを破産会社が入っている建物の一画にオープンさせた旨陳述及び供述するが,具体的にどのようなセンターであったかは不明である上,同センターが稼働した事実も認められず,仮に何らかの医療施設を開設していたとしても,約1400坪の敷地に,病院,デイケアセンターにカフェレストランを併設したセンターを予定していたcメディカルセンターとはおよそかけ離れた内容のものであったと容易に推認できる。③メトロプロジェクトについては,前記のとおり,東京都交通局との間において交渉を一切行わず,株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンとの提携関係もなく,そのため,事業期間の開始当初から,出資金の募集内容とは全く異なる方向で,街頭の大型ビジョン上の広告に関する広告代理業などを目指しての活動が行われていた。④パセオメディカル・レボリューションについては,中国陸軍病院の主任教授という人物との提携関係やその他の医師や鍼灸師らとの提携関係自体が存在せず,サロン1号店を開設したものの,運営事業の核であるサロンの集客の目玉とされていたエステ機器は設置されず,当初の予定とは異なる「薬効石」という石を用いたマッサージサロンとなったものの,上記サロンも経営不振から早期に閉鎖し,最終的にはインターネット上での医療情報の提供サービスという形で事業を行うものと匿名組合の方針が一方的に変更され,その活動実態もインターネット上にサイトを立ち上げただけの簡単なものであった。⑤デジタルドラッグについては,Kの人脈を利用して医薬品の納入体制を築く前提としていたが,そのような事業活動が行われた形跡は全くなく,募集時に挙げられていた医薬品小売りのチェーン店等との提携関係なども交渉すらされず,運営会社を平成17年2月10日に設立した後,同年6月7日には,Kが健康上の問題を理由に取締役を辞任しており,その後はインターネットサイトを立ち上げるなどのごく簡単な活動しか行われなかった。⑥フューチャーステージについては,発刊した11冊の雑誌のうち,「◎◎」という名称で発刊された雑誌は3冊のみで,4冊目以降は,「◎◎」との名称は使用されず,「●●」や,「▲▲」など,フューチャーステージで予定されていたコンセプトとは異なる雑誌を発刊していた。⑦シェフウェアジャパン,⑧アクアグローバルコミュニケーション及び⑨男の隠れ家オンラインについても,営業支援等を目的としていた第2組合等が,事業開始から破産会社が破産手続開始の申立てに至るまでの間,その目的に沿った活動ないし出損を行っていない。
このように,本件各プロジェクトのほとんどが,何らかの活動自体は認められても,その内容は,各募集に係る内容とは一致していなかった。その上,いずれも,事業の中核となる内容の事項について全く行っていないか,何らかの障害を理由に事業内容を変更しており,募集段階において,新規事業の遂行の実現可能性の検討が不十分であったというより,もはや実現可能性がほとんどなかったものと評価するのが相当である。
オ 被告は,事業を次々と打ち出して出資金を募集し,それらの出資金を事業ごとに分別管理することなく,いずれの事業の出資金の使途にも当たらない破産会社の運転資金として使用していたのであって,そのような実態からすると,本件各プロジェクトそれぞれについて,各プロジェクトの事業遂行のために,資金を適正に管理しようという意思を有していたとは認められない。
カ 以上の事実を総合考慮すると,被告は,本件各プロジェクトについて,結果的に,予測していた収益や配当を実現することができなかったり,募集予定口数を超えた出資を受け入れ,正確な収支報告を怠り,資金の適正な分別管理も実現されない状態に至らしめたりしたにとどまらず,そもそもの募集段階から,実現可能性に乏しい事業をそのように認識しながら次々と打ち出していたものであって,公表する募集予定口数の順守,正確な収支報告,資金の適正な分別管理等を励行する意思も抱いていなかったと認めるのが相当である。それにもかかわらず,募集の際の事業内容の説明について,虚偽の事実を織り交ぜながら,実現可能性の低い事実を記載したり,客観的な裏付けのない収益予測を立て,過大な配当予測を強調したりする一方で,リスクについて抽象的な記載しかせず,投資リスクに対する判断を著しく誤らせる情報を提供した上で,積極的に投資を勧誘していたと認められる。そして,この被告の一連の投資勧誘行為によって,原告購読者らは,各請求原因記載の各出資を行うに至り,各出資金相当の損害を被ったのであるから,被告が行った本件各プロジェクトへの一連の投資勧誘行為は,原告購読者らに対する「悪意で加えた不法行為」に該当すると認めるのが相当である。
第8  結論
以上によれば,原告会社の請求は理由がないから棄却することとし,原告購読者らの請求はいずれも理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金子直史 裁判官 今泉さやか 裁判官猪股直子は,差し支えのため,署名押印することができない。裁判長裁判官 金子直史)

 

別紙
当事者目録
東京都港区〈以下省略〉
原告 株式会社X1
同代表者代表取締役 A
大阪府高槻市〈以下省略〉
原告 X2
名古屋市〈以下省略〉
原告 X3
愛知県一宮市〈以下省略〉
原告 X4
埼玉県日高市〈以下省略〉
原告 X5
埼玉県日高市〈以下省略〉
原告 X6
茨城県日立市〈以下省略〉
原告 X7
栃木県大田原市〈以下省略〉
原告 X8
東京都板橋区〈以下省略〉
原告 X9
福島県那麻郡〈以下省略〉
原告 X10
東京都港区〈以下省略〉
原告 X11
東京都目黒区〈以下省略〉
被告 Y

 

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