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「営業支援」に関する裁判例(34)平成28年 4月27日 東京地裁 平25(ワ)26555号 業務委託報酬請求事件

「営業支援」に関する裁判例(34)平成28年 4月27日 東京地裁 平25(ワ)26555号 業務委託報酬請求事件

裁判年月日  平成28年 4月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)26555号
事件名  業務委託報酬請求事件
裁判結果  主位的請求棄却、予備的請求一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2016WLJPCA04278014

要旨
◆原告会社が、被告会社からコンピュータープログラム言語変換ソフトの開発等の依頼を受け、被告会社との間の業務委託契約に基づき、委託業務を行ったと主張して、被告会社に対し、主位的に、本件業務委託契約に基づき、予備的に、商法512条に基づき、未払報酬合計額及びその遅延損害金の支払を求めた事案において、原告会社と被告会社との間で本件業務委託契約が成立したものとは認められないとする一方、原告会社が行ったと主張する業務のうち一部については、商法512条の「他人のために」した行為と認めることができるとして、同業務に係る相当報酬額を1700万円と認定し、予備的請求を一部認容した事例

裁判経過
控訴審 平成29年 9月27日 東京高裁 判決 平28(ネ)2882号・平28(ネ)3877号 業務委託報酬請求控訴事件、附帯控訴事件

参照条文
商法512条
民法648条

裁判年月日  平成28年 4月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)26555号
事件名  業務委託報酬請求事件
裁判結果  主位的請求棄却、予備的請求一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2016WLJPCA04278014

東京都千代田区〈以下省略〉
原告 X株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 北原弘也
同 鈴木潤子
同 浦山慎介
横浜市〈以下省略〉
被告 株式会社Y
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 今村誠
同 江端重信

 

 

主文

1  原告の主位的請求を棄却する。
2  被告は、原告に対し、1700万円及びこれに対する平成25年10月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  原告のその余の予備的請求を棄却する。
4  訴訟費用はこれを4分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
5  この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は、原告に対し、6785万2050円及びこれに対する平成24年3月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は、原告が、被告からコンピュータープログラム言語変換ソフトの開発等の依頼を受け、被告との間の業務委託契約に基づき、委託業務を行ったと主張して、被告に対し、主位的に、上記業務委託契約に基づく未払報酬合計6785万2050円及びこれに対する平成24年3月1日(被告による最終支払日の翌日)から支払済みまでの商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を、予備的に、商法512条に基づく相当報酬として上記報酬額と同額及びこれに対する同割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  基礎的事実(証拠等を記載したほかの事実は、当事者間に争いがない。)
(1)  当事者等
原告は、ソフトウェアの受託開発、販売、保守等を目的とする株式会社であり、資本金は4800万円である(弁論の全趣旨)。
被告は、情報処理サービス、情報通信サービス及び情報提供サービス等を目的とする株式会社であり、資本金は2億5000万円である(弁論の全趣旨)。
(2)  原告と被告の間の基本契約等
原告と被告(平成17年当時における商号は「株式会社a」である。)は、遅くとも平成17年頃から、被告の発注に基づき原告がソフトウェアを設計・開発して納入する取引及び被告が顧客に対しプログラム言語変換等の情報処理サービスを提供するに当たって被告の委託を受けて情報処理サービスを行う取引を行っていた。
原告と被告は、平成17年7月1日、被告の本社及び各事業所の資材部門から原告に対し発注された全ての目的物(無体物、役務等を含む。)の取引の個別契約に適用される基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結したところ、同契約においては、原告・被告間の個別契約は、原則として、被告が注文書を発行することにより申込みを行い、原告がこれを承諾することで成立する、本件基本契約は、書面による原告・被告間の合意により変更又は補充されることがある旨の約定があった(甲3、弁論の全趣旨)。
(3)  平成19年頃の被告におけるQ言語変換事業
被告のb本部c部(後に同部の名称は「b1本部c1部」に変更された。)は、平成19年頃から「Q言語」と呼ばれるプログラム言語を用いて記述されたコンピューターのプログラムを「COBOL言語」と呼ばれるプログラム言語に変換することで、大型汎用機でしか動作できなかったプログラムを、小型サーバシステムでも活用できるようにする「Q言語変換サービス事業」(以下「本件サービス事業」といい、同事業に係る業務を「Q言語変換業務」という。)を行うようになった。
Q言語とは、もともと被告の親会社である株式会社d1(後の株式会社dであり、以下、商号変更の前後を問わず「d社」という。)が開発したものであり、これによるとプログラムの基本である命令の記述が簡単にできる点で利便性に優れているが、Q言語は基本的に日立製の大型コンピューターにしか使用できないという制約がある。COBOL言語は、上記の利便性はないものの汎用的な言語であるため、どのコンピューターのどの型でも使用できるという特性がある。
Q言語をCOBOL言語に変換するためには、プログラム言語変換のためのソフトウェアである言語変換ツールが必要であるところ、言語変換ツールによりQ言語プログラムのすべての命令を自動的にCOBOL言語プログラムの命令に変換することは不可能であり、言語変換ツールにより変換できなかった命令については、手作業による言語変換を行う必要がある(弁論の全趣旨)。
(4)  秋田県庁のQ言語変換業務等
被告は、平成19年6月頃、d社が秋田県から受注した秋田県庁の給与システムについてのQ言語変換業務(以下「秋田県庁業務」という。)をd社から受注し、被告b本部c部部長のC(以下「C」という。)と同部副技師長のD(以下「D」という。)は、秋田県庁業務のd社からの受託や顧客である秋田県へのサービス提供を主に担当していた(乙28)。
原告は、平成19年6月頃から、被告からQ言語変換業務の一部を受託するようになり、他社製の言語変換ツールを用いて同業務を行った(甲48)。
(5)  原告が被告から受注した個別案件等
原告の社員数名は、被告のeオフィスに常駐していたが、平成22年3月頃、被告のeオフィスが閉鎖されたことに伴い、横浜オフィスに移動した。Q言語変換業務は、案件に応じて、被告のオフィス内及び顧客先に出張して行われた(甲46、48、乙28)。
被告が顧客からQ言語変換業務を受注し、被告がその個別案件につき発行した注文書(平成20年9月分以降)に基づき原告が受注した個別契約(以下「本件個別契約」という。)の案件(以下「本件個別案件」という。)は、別紙「本件個別契約一覧表」記載のとおりである。被告は、原告に対し、本件個別案件に係る報酬合計1億4346万9824円を、平成24年2月29日までに支払った。
(6)  岡山県庁におけるQ言語変換業務等
原告の社員は、平成22年8月から岡山県庁における税務についてのQ言語変換業務に従事していたところ、平成23年3月頃、同年4月以降分の上記業務について、被告から個別に発注を受け(別紙「本件個別契約一覧表」No.36。以下「岡山県庁税務案件」という。)、その作業に従事した(甲48、49、乙3の36の4)。そして、原告の社員は、同年5月から同年7月にかけて、さらに岡山県庁における給与についてのQ言語変換業務(別紙「本件個別契約一覧表」No.37、39及び40。以下「岡山県庁給与案件」といい、岡山県庁税務案件と併せて「岡山県庁案件」という。)を900万円(消費税抜き)で受注し(甲20、乙3の37の4、乙3の39の4、乙3の40の4)、また、同年9月に岡山県庁税務案件の追加分業務(別紙「本件個別契約一覧表」No.41)を126万7900円(消費税抜き)で受注した(甲20、乙3の41の4)。
岡山県庁案件を最後に、新規の案件が途絶え、同案件は平成24年1月末に終了し、原告の社員は被告のオフィスから撤退した。
2  争点及び当事者の主張
(1)  業務委託契約の成否及び未払報酬残高の存否(争点1)
(原告の主張)
ア 業務委託契約の成立と原告による各業務の実施
(ア) 被告は、本件サービス事業を行うに当たり、他社製の言語変換ツールを用いていたが、この他社製ツールには、言語変換効率が悪く、手作業での言語変換作業に手間と時間がかかるなどの問題があった。被告は、より高性能な自社製の言語変換ツールを開発して本件サービス事業を行うことを計画し、従前から被告において本件サービス事業を所管し、同事業の立ち上げ準備を担当していたDは、秋田県庁業務が終了する平成20年3月末か4月初め頃、原告の開発部課長であったE(以下「E」という。)に対し、次の各業務を原告に委託することを申し入れ、Eは原告を代表してこれを了承したことから、原告と被告の間で、口頭で業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)が成立した。その後、被告は、本件業務委託契約に係る書面として、作業名を「Q言語コンバージョン作業」とし、発行年月日を平成20年5月12日とする「注文書[当初書面]」(乙3の2の1)を原告に交付した(以下、次のaないしdの業務を総称して「本件業務」という。)。
a 新たなQ言語変換ツールの開発業務(以下「本件開発業務」という。)被告の依頼による仕様に基づくQ言語変換ツール(以下「本件ツール」という。)の企画、設計、構築を行い、システムテスト、運用テストを実施した上で、これを被告に引き渡す業務
b 個別の言語変換業務(以下「本件言語変換業務」という。)
将来被告が顧客から個別案件を受注したときに、開発した本件ツールを用いて言語変換の作業をする業務
c カスタマイズ業務(以下「本件カスタマイズ業務」という。)
個別案件の効率的な作業を目的として、又は本件ツール全体の性能を高めるためのベースアップを目的として、随時、本件ツールの性能を高めるため新たな機能を付加したり、従前からの機能を向上させたりする業務
d 営業支援業務(以下「本件営業支援業務」という。)
被告が本件サービス事業の展開に当たり、受注前の顧客からサンプルとして預かったQ言語プログラムについて言語変換作業を行い、顧客に対するプレゼンテーションの概算見積もりを作成するなどの営業活動を支援する業務
(イ) 本件業務のうち、本件カスタマイズ業務は本件ツール開発の延長上にある業務であることから開発業務の一部であり、本件営業支援業務は、被告が顧客から個別案件を受注するために不可欠のものであるから、本件言語変換業務に必然的に付随する業務といえる。したがって、DのEに対する、平成20年3月末か4月初め頃の本件サービス事業のための本件開発業務及び本件言語変換業務の委託申入れには、将来発生する本件カスタマイズ業務及び本件営業支援業務をも委託する意思が当然に含まれており、Eもこれを承知していたから、上記4つの全ての業務を含む本件業務委託契約が締結された。
(ウ) そして、原告は、本件業務委託契約に基づき、平成20年4月から同年9月までの間、本件開発業務を実施し、同月末に本件ツールの開発を完了して被告に引き渡し、それ以降は、個別案件における本件言語変換業務を被告から受託して実施するとともに、随時併行して、本件カスタマイズ業務及び本件営業支援業務を実施した。
(エ) 本件業務に従事した原告の社員の作業時間は、いずれの業務に従事したかを問わず、全て本件業務における報酬の基礎となる工数とすることを被告は認めており、その工数を基礎として算出された報酬は、被告により既に支払われ、もしくはその未払額が承認されている。すなわち、平成21(2009)年上期までの1年半の間だけでも、個別案件の報酬に上乗せして原告に支払われた額は合計1200万円になり、また、未払額は、未発注残高として毎月確認されている。本件業務に従事した原告の社員の作業時間が報酬の基礎となる工数として認められているということは、本件業務に関する業務委託の合意があったからである。
イ 本件業務委託契約における報酬の算定方法等
(ア) 本件業務委託契約においては、作業内容が確定しておらず、事前に工数や作業期間(納期)を予測することができなかった。そこで、Dは、本件業務委託契約を締結する際、その報酬について、秋田県庁業務と同一の方法、すなわち委託業務に従事した作業員ごとの単価に実績工数(作業時間)を乗じて、事後的に報酬を算定する方式、具体的には、システムエンジニアは1月当たり75万円、プログラマーは1月当たり65万円(ただし、新人は43万円ないし45万円)を単価とし、作業に携わった当月の作業員数及び当月の作業時間により、月単位で金額を算出する工数清算方式によることを提案し、Eはこれを了承した。
しかし、原告が本件開発業務に着手しても、被告から報酬の支払はなく、本件ツールの引渡し後である平成20年9月時点で、被告の原告に対する未払報酬額は合計3228万5000円に上っていたところ、被告(C)から原告に対し、当面は、本件サービス事業において、被告が顧客から受注を得た都度、当該個別案件における原告の本件言語変換業務に対する報酬額に、未払報酬の一部の金額を上乗せした金額を「個別案件に対する報酬」という形で支払うことにより、原告に対する未払報酬を分割して支払う旨提案した。原告としては未払報酬を支払ってもらうため、やむなくこの案を受け入れた。そこで、原告は、平成21年3月期から半年ごとに、未払報酬の残高の確認を実行し、被告は確認の都度「Q案件作業残高確認の件」と題する残高確認書を原告に発行していた。同書面の「未発注の残高」とは、個別案件の報酬の支払により未払報酬を支払っていくという支払方法を前提に、個別案件がまだ未発注である当該時点における残高という意味である。
(イ) Cは、作業開始時期の遅延や、被告の個別案件失注により、被告の未払報酬金額が嵩んでいたことから、平成22年11月30日、E及び原告の常務取締役であるF(以下「F」という。)に対し、工数清算方式による報酬額算定を平成23年3月までとし、同年4月からは個別案件ごとに事前に報酬額を決める方式に変更する旨要請し、原告はこれを受け入れた。
(ウ) 平成23年3月頃、原告と被告は、CとEの合意により、岡山県庁税務案件の同年4月以降の作業について工数清算方式をとらずに、報酬額を915万円(消費税抜き)とした。そして、これに出張日当及び交通費として61万9140円(消費税抜き)を加算した976万9140円(消費税抜き)を被告が支払う旨合意されたが、その合意と同時に、Cから、被告社内の予算が尽きて150万円しか支払えないため差額を未払残高に加算し将来清算することにしてほしいとの申入れがあり、原告はやむなく了承した。その結果、被告から原告に対し、157万5000円(消費税込み)が支払われ、残額826万9140円は未払報酬残高に計上された。
ウ 被告の未払報酬残高
本件業務委託契約の未払報酬のうち、工数清算方式による報酬算定期間中に発生した未払報酬額(平成23年3月末残高)は6034万2000円(消費税抜き)である。また、それ以降も、被告は岡山県庁案件について、合意した報酬額の一部しか支払わず、本件業務委託契約が終了した平成24年1月末の時点の未払報酬残高は、6462万1000円(消費税抜き)であった。したがって、同額に消費税を加えた6785万2050円が未払報酬残高となる。
(被告の主張)
原告と被告は、本件ツールの共同開発を通じて、双方の売上げを伸ばしていく方針を決定したが、その際、原告による本件ツールの開発は無償とし、原告は今後の個別案件に係る業務委託において、被告から原告に代金が支払われることにより収益を上げることが合意された。そして、被告は、個別のQ言語変換業務について原告と締結した合計43件の本件個別契約に基づき、原告に対し、報酬合計1億4346万9824円を全額支払ったから、未払報酬は存在しない。
本件業務委託契約が成立していないことは、次のとおり明らかである。
ア 契約書及び注文書等の書面の不存在
原告と被告の間の取引は、本件基本契約によって規律されており、全ての個別契約に関し、注文書等の書面の発行を要するが、本件業務委託契約については、契約書も注文書等の書面も一切存在しない。また、原告の主張する工数清算方式では、発注者の知らないうちに報酬が無尽蔵に膨れ上がる可能性があり、そのような契約が何らの契約書もなく締結されることは考え難い。原告が主張する本件業務委託契約成立の時期である平成20年4月の時点では将来の個々の業務を特定した上で注文書を発行することが困難であったとしても、「工数清算方式」の対象となる業務の特定方法、作業単価等の事項を文書化することは可能である。なお、原告は、乙3の2の1の「注文書[当初書面]」が本件業務委託契約の注文書であると主張するが、これは個別案件(f社案件)の「Q言語コンバージョン作業」すなわちQ言語変換作業についての注文書(当初書面)である。
原告は、本件カスタマイズ業務及び本件営業支援業務については、その具体的な内容の特定すらできておらず、そのような業務を委託する合意は存在しない。
イ 本件ツールの開発費用を個別案件の代金に上乗せして回収する合意の存在
DとEは、平成20年4月の時点で、本件ツールの開発費用は個別案件の代金への上乗せによってのみ回収を図る旨合意しており、このことはDと原告の取締役であるG(以下「G」という。)との間でも、「X社とのQ移行覚書」と題する書面(乙7)により確認されていた。したがって、個別案件と無関係に工数清算方式による報酬が発生する旨の本件業務委託契約が口頭で合意されることはない。
ウ 岡山県庁税務案件に関する合意の不存在
原告は、岡山県庁税務案件での平成23年4月以降の作業分の報酬額を915万円(消費税抜き)とすることがCとEの間で合意された旨主張するが、岡山県庁税務案件は、もともと平成23年3月までで終了する予定だったものが、終了せず同年4月以降も継続することになったため、被告から原告に150万円の追加支払がされることになり、実際に157万5000円(消費税込み)の支払がされたものであるから、原告の主張するような合意は存在しない。
(2)  Dに本件業務委託契約を締結する代理権があるか否か(争点2)
(原告の主張)
被告の外注に関する業務を分掌する部署である調達課は、外注先の決定、外注業務の交渉及び決定、外注業務遂行の管理、外注の対価の決定等の外注に関する本質的業務には全く関与せず、担当部署がこれを全て行い、注文書を発行するときだけ、担当部署から発行依頼を受けてこれを行うのみである。したがって、注文書の金額も担当部署が決めた金額がそのまま記載されている。このような調達課の実態を考えれば、調達課の有する発注権限は形式的なものにすぎず、本件業務委託契約を締結する権限はC又はb本部(後のb1本部)本部長であるH(以下「H」という。)にあったというべきである。そして、Dは、C又はHの承認の下、その役務調達権限の一部の委譲を受けていたものであるから、本件業務委託契約を締結する代理権を有していた。
(被告の主張)
被告において、原告を含む物品・役務の調達先との間の契約締結権限を有するのは、調達部門(技術本部技術部調達課等)のみである。調達部門とは別部署である被告b本部c部に所属していたC及びDに、原告から役務を調達する契約締結に関する代理権が付与されたことはない。
(3)  本件業務委託契約について民法109条、会社法14条又は追認により被告に効果が帰属するか否か(争点3)
(原告の主張)
ア 代理権授与表示による表見代理(民法109条)
(ア) 肩書の付与による授権表示
被告は、Cに対し、b本部c部長という地位と肩書を与え、また、Hに対し、b本部の本部長という地位と肩書を与え、C及びHがその地位にあることを対外的に表示していた。一般に部長又は本部長という地位は、当該部又は当該本部が行う業務に関する対外的・対内的決定権を有する者であり、会社と取引を行う者は、これらの肩書を信頼して取引を行うものである。本件業務は、b本部の中の一つの部であるc部の所管業務に属するものであるから、被告は、C又はHに本件業務委託契約を締結する代理権があることを表示していた。そして、DはC及びHの承認を得て本件業務委託契約を締結したのであるから、その効力は被告に及ぶ。
(イ) 事実行為の準委任による授権表示
本件業務委託契約に先行する秋田県庁案件において、外注先の選定、外注の対価である報酬の決定をしたのはDであり、被告調達課はDの決定に従って注文書を発行したにすぎないこと等からすれば、被告は、Dに対し、契約条件について交渉し、契約条件を事実上決定する行為について準委任していたというべきであり、仮にDに対する準委任が認められないとしても、秋田案件の発注部署であったc部の部長であるC又は秋田案件の最終決裁権者であったb本部本部長であるHに対しては、上記行為の準委任がされていたといえる。このような事実行為の準委任は民法109条の授権表示になる。そして、DはC及びHの承認を得て本件業務委託契約を締結したのであるから、その効力は被告に及ぶ。
イ 使用人による行為(会社法14条)
Dは上記ア(イ)のとおり、被告c部の受注業務の外注に関する契約条件の交渉業務という「ある種類又は特定の事項」の委任を受けた者であり、本件業務はc部が顧客から受注した業務の外注に関するものであるから、本件業務委託契約の締結につき原告と交渉することは、客観的にみて、Dが委任を受けている契約条件の交渉業務の範囲内に属する。よって、Dは会社法14条の使用人に当たり、本件業務委託契約の締結権限を有する。
仮にDが会社法14条の使用人に当たらなくても、c部の部長であるC又はb本部の本部長であるHは会社法14条の使用人に当たり、DはC及びHの承認を得て本件業務委託契約を締結したのであるから、その効力は被告に及ぶ。
ウ 民法109条ただし書及び会社法14条の善意
本件業務委託契約の手続は、先行する秋田県庁案件と同様の流れで行われており、原告は、本件業務についてもDが同様の権限を有しており、本部長であるHが最終決裁権限をもってこれを承認していると考えていた。
エ 追認
被告は、平成20年4月以降、個別案件の受注がない期間も、原告の社員が被告オフィスで本件開発業務や本件カスタマイズ業務に係る作業をしていることを認識しながら、何ら異議を述べていない。また、被告調達課は、本件ツールの開発費用を個別案件の報酬支払時に上乗せして原告に支払っていた。さらに、被告調達課は、原告に対し、本件業務の注文書(当初書面)(乙3の2の1)を発行している。これらの事情から、被告は本件業務委託契約締結に係るDの権限を追認したものである。
(被告の主張)
ア 代理権授与表示による表見代理(民法109条)
原告と被告の間において、被告の発注権限が調達担当部署(技術本部技術部調達課)にしかないことは、基本契約や調達担当部署名義による個別契約での受発注手続により明らかになっていた。b本部c部の名称は、調達担当部署を示すものではなく、b本部c部部長及び同部副技師長という地位及び肩書は、物品及び役務の調達先との間の契約締結権限を表示するものではない。
イ 使用人による行為(会社法14条1項)
会社法14条1項の「委任」とは、営業に関するある種類又は特定の事項に係る法律行為の代理権授与行為を含む委任を指す。C及びDには、物品及び役務の調達先との間の契約締結に関する代理権が与えられたことはなく、C及びDが所属していたb本部c部の所管業務にも、物品及び役務の調達に関する業務は一切含まれていない。さらに、C及びDには、被告から物品及び役務の調達先と下交渉する権限も与えられてはおらず、被告の調達部門の指示や依頼を受けて調達業務を手伝ったこともない。
ウ 民法109条ただし書及び会社法14条の善意
原告は、秋田県庁案件当時から原告と被告の間の個別契約の被告の注文書が全て被告の調達部門から発行されていたことを知っており、同部門にのみ物品及び役務の調達先との間の契約締結権限があることを知っていた。
エ 追認
本件業務委託契約は存在せず、被告がその存在を了知していたとの事実もないから被告がこれを追認することはできない。なお、被告b本部の本部長であるHにも物品及び役務の調達権限はないから、Hが本件業務委託契約を追認することはできない。
(4)  商法512条に基づく相当報酬請求(予備的請求)の可否(争点4)
(原告の主張)
本件業務は、次のとおり、商人である原告が、その営業の範囲内において、被告のために行ったものであるから、原告は、被告に対し、商法512条に基づき、相当な報酬を請求し得る。
ア 本件業務が「他人のためにした」行為といえること
本件開発業務については、そもそも本件ツールの開発がなければ被告の本件サービス事業は成り立たないこと、本件言語変換業務については、被告の行う本件サービス事業自体の目的であることから、いずれも被告の利益となるものである。
本件カスタマイズ業務は、本件ツールの精度を高めるものであり、被告が顧客に提示する見積額の減額化、納期の短縮から被告の受注競争力を高めるものであり被告の利益となるものである。
本件営業支援業務は、個別案件の受注に不可欠なものであるから、被告の利益となるのは当然である。
また、本件業務はDから委託を受けて行われたものであるから、その点でも被告のためにした行為であるといえる。なお、たとえ本件業務が原告の利益にも寄与するものであったとしても、それと併せて被告の利益のためにも本件業務が行われていたことは事実であるから、本件業務が被告のためにした行為に当たることは明らかである。
イ 対価の相当性
(ア) 工数(作業時間)の正確性
原告の社員は、基本的に被告のオフィスに常駐し、被告の指示により被告の顧客先に出張して作業を行っていたが、いずれも月曜日から金曜日までの各日始業から終業まで作業していたのであり、単価にかける作業工数は、1.0(か月)となるのが原則である。
原告の社員が平成20年4月から平成23年3月まで被告オフィスにおいて本件業務に係る作業に従事した時間は別紙「Q移行案件 稼動実績」(以下「稼働実績表」という。)のとおりである。被告は、稼働実績表の工数につき、正確な作業時間を示すものではない旨主張するが、稼働実績表の工数は、EとDが各々把握していた原告の社員の作業時間(なお、原告の社員は被告オフィスの在席時間中、常に本件業務に従事していたものであるから、在席時間は正味作業時間を示すものである。)を相互に確認し、その結果を正確に反映したものである。
なお、被告が工数清算方式を改め、被告が個別案件を受注するごとに当該案件のための作業の報酬を定める方式に変更したいと提案があった後の平成23年4月以降は、個別案件に直結しないカスタマイズ業務に関する業務はなくなった。そして同月以降は、合意額に未払報酬の一部が上乗せして支払われることになった。
(イ) 単価の相当性
D(平成22年7月以降は後任のI(以下「I」という。))とEは、協議の上で、原告作業員の経験及び技術を評価し、業界の相場を考慮して稼働実績表の原価欄に記載されているとおり(例えば、番号1のJの「750.0」とは、工数1.0当たり75万円であることを意味する。)、各技術者の単価を決定した。D及びEは、作業員である原告の社員のことを良く知っており、長年この業界に従事している者で、両者が各作業者の経験及び技術並びに業界の相場等に応じて各技術者の単価を決めたものであること、また、被告の本部長の地位にあるH及び部長の地位にあるCがこれを了承していたことからしても、上記単価は相当である。
さらに、本件業務委託契約に先行する秋田県庁案件では、EとDの合意により、単価についてシステムエンジニアは月額80万円、プログラマーは月額65万円としたところ、本件業務は、個別案件の受注が具体的になっていないため、秋田県庁案件に比べシステムエンジニアの単価を低く設定していることや、ソフトウェア開発技術者料金調査の結果及び被告の親会社の発注単価と比較しても、上記単価は相当である。
(ウ) 以上から、平成20年4月から平成23年3月までの稼働実績表の工数に、同表の単価を乗じて算出される金額は、平成20年4月から平成23年3月までの間の本件業務に対する報酬として相当な報酬である。
ウ 平成23年4月以降に発生した未払報酬
平成23年4月以降は、工数清算方式から事前確定方式に報酬算定方法が切り替わり、原告と被告は岡山県庁税務案件について、予定工数及び従前の単価に基づき報酬額を915万円とすることで合意したが、仮にこの合意が認められないとしても、この案件の実績工数は予定工数を下回ることはなく、従前の単価は相当なものであるから、915万円は岡山県庁税務案件の作業に係る原告の報酬として相当な報酬である。そして、被告は岡山県庁税務案件につき原告に対し150万円を支払っているから、残額765万円が岡山県庁税務案件の未払報酬となる。
エ まとめ
以上から、平成23年4月以降に発生した報酬も含めた本件業務の相当報酬額は合計2億0873万6745円(消費税込み)であり、被告からの既払金は合計1億4089万7324円であるから、原告は被告に対し、相当報酬額の残額である6783万9421円の支払を求める。
なお、被告が作成した本件個別契約一覧表の合計額は、1億4346万9824円(消費税込み)であるが、No27、28「Q言語移行(h社殿)」とNo31、33「Q言語(請求データ)」は、原告社員のKが、被告の顧客であるh株式会社に出張し、作業を行った分についてのものであるところ、これらについては、原告とCとの間で、工数清算方式の対象から外すことに合意している。そのため、本件では、上記4件の作業(合計257万2500円)については、本件業務に関する作業であるものの、工数清算の対象としておらず、稼働実績表にも上記Kの作業は記載されていない。
(被告の主張)
ア 本件業務は「他人のためにした」行為ではない
(ア) 本件ツールは、専ら原告が使用することが想定され、原告に利益をもたらすものであり、その権利も原告に帰属するから、本件開発業務は被告のためにした行為ではない。また、受注案件に係らない本件カスタマイズ業務及び本件営業支援業務は、本件ツールを使用して行うQ言語変換業務の効率化により、原告の人件費等の負担の削減及びそれに伴う原告の利益率の向上並びにQ言語変換業務の受注拡大による原告自身の売上げ拡大を図ることにあり、いずれも原告自身の利益を図るものであるから「他人のためにした」行為ではない。
(イ) 本件言語変換業務及び受注した個別案件に係る本件カスタマイズ業務は、原告が合計43件の本件個別契約を履行するに当たり、その前提として行った本件個別契約の対象業務の一部であり、その対価は、本件個別契約に定める対価に含まれている。
(ウ) Eによる管理業務は、原告内部の業務効率の適正化による人件費等の負担の適正化や労働法令遵守等のために行われるものであり、原告自身の利益のために行われたものにほかならない。
イ 対価の相当性
(ア) 工数(作業時間)の正確性
稼働実績表のうち、平成23年3月までの工数については、C及びDが把握していた各作業者の1か月ごとの被告オフィス又は出張先でのおおよその在席状況を数値化したものにすぎず、平成23年4月以降の工数についても、Cが岡山県庁税務案件の同月以降の作業分及び岡山県庁給与案件で必要な人員を大まかに事前に推測した内容を記載したものをEが転記したにすぎず、いずれもその正確性に疑問がある。また、稼働実績に基づかない合意による工数や、本件業務と無関係の工数も計上されているから、稼働実績表によって本件業務の工数を算定することはできない。
(イ) 単価の相当性
原告が主張する各作業員の単価は、D及びCが作成したQ移行原価発生内訳(「山積表」と呼ばれていた。以下「山積表」という。甲31ないし33、乙25)記載の単価を根拠とするものであるが、そもそもこの単価は、Dが原告から本件ツールの開発費用回収のために個別案件に上乗せされてもやむを得ない上限金額の目安を把握するために作成したものであり、正式な査定も経ない便宜的な数字にすぎない。また、その金額は、当時の被告程度の規模の企業が同様の業務を外注した場合の単価や、秋田県庁業務の単価よりも高額であり、相当とはいえない。
ウ 無報酬の特約
本件開発業務については、本件ツールの開発が始まった当初の平成20年4月時点において、原告と被告の間で、本件ツールの開発の対価を無報酬とすることが確認され、その後も、原告は本件ツールのコストが個別案件の代金によってしか回収されないことを了解していた。したがって、原告と被告の間には、本件ツール開発の対価を無報酬とする特約があったものであり、商法512条に基づく本件ツール開発の報酬請求権は発生しない。また、本件ツールの汎用的な改良行為に係るカスタマイズは、本件ツールの汎用的性能を向上させる点で本件ツールの開発の延長線上の補充開発行為にほかならず、上記無報酬の特約の適用がある。
さらに、取引慣行上、最終的には原告自身の利益につながる営業支援活動についてその協力先である被告に対価を請求することは考えられず、しかも、被告は顧客から営業活動自体の対価を得ることができるものではないから、本件営業支援業務が無報酬とされていたことは当然である。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
上記基礎的事実に加え、証拠(甲3ないし12、13の1・2、14、15の1・2、16、17の1ないし128、18ないし23、31ないし33、46ないし51、52の1ないし11、53、56の1ないし4、57、乙1、2、3(乙3の1の1ないし乙3の43の2。すべての枝番を含む。)、4の1ないし5、5(乙5の1の1ないし乙5の4の5。すべての枝番を含む。)、6、7、8の1ないし3、9の1ないし3、10の1ないし7、12の1・2、17、25、27ないし32、証人D、同G、同E及び同C)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる(主な証拠等を各項に掲記する。)。
(1)  本件ツール開発以前の業務委託(秋田県庁業務)
ア 被告は、平成19年6月頃、d社が元請けとして秋田県から受注した秋田県庁業務を下請けとして受注し、CとDは、秋田県庁業務のd社からの受託や顧客である秋田県へのサービス提供を主に担当していた(基礎的事実(4))。
イ 被告は、秋田県庁業務をi株式会社(以下「i社」という。)に委託する予定であったが、同社が保有する言語変換ツールでは、全てのプログラムステップを変換できず、また、秋田県庁業務に係るQ言語プログラムには同社のツールでは変換できない標準的でないものが多いこと等の問題があった。そこで、被告は、Dがd社に在籍していた当時に同社と取引のあった原告に対し、標準的でないQ言語をi社のツールによる変換率が高まるように修正すること、同ツールによる変換後のCOBOL言語を今後の保守の便宜のために修正すること、及び同ツールでは変換できないステップを手作業でCOBOL言語へ変換することを委託した。原告の取締役であるG、常務取締役であるF、社員であるL(以下「L」という。)は、上記委託に基づき、秋田市内の被告オフィスに出張して上記業務の作業に従事した(甲46、乙5の1の1ないし乙5の3の4(すべての枝番を含む。)、12、27、28、証人D、弁論の全趣旨)。
(2)  本件ツールの開発の依頼と開発作業の実施
ア Dは、平成20年2月頃、秋田県庁業務に従事していたGらに対し、「3月に秋田の仕事が終了したら、eオフィスに来て、新しい言語変換ツールを作ってくれないか。」などと述べた。その後、D、G及びLは、秋田県庁業務を終えて被告のeオフィスに戻り、秋田県庁業務のバックアップ作業に従事するため同オフィスに常駐していたEほか3名の原告の社員と合流し、本件ツール開発に向けた話合いを行った。
そして、Dは、同年4月頃、E及びGに対し、改めて、本件ツールの開発を申し入れた。その後、Dとeオフィスに常駐していた原告の社員の進捗会議を経て、本件ツールの内容について、被告が従前使用していたi社のツールよりも言語変換効率を上げ、併せて保守性も強化することなどが決定された(甲46、48、乙28、証人D、同E、弁論の全趣旨)。
イ Dは、本件ツールの開発について、早ければ2か月程度で完成するものと考え、開発費用は1000万円程度であろうから、被告社内の研究開発費を用いて開発することができると考えていた。しかし、原告による本件ツール開発着手後、Dが、H及びCに、原告への開発報酬を研究開発費から支弁することが可能かを確認したところ、Hから研究開発費から出すことはできないとの回答があった。Dは、既に本件サービス事業に関し顧客からの引き合いがあり、早い時期に個別案件を受注できる見込みがあると考え、H及びCと相談し、被告の受注したQ言語変換の作業報酬を原告に支払う際、それに上乗せして原告に開発コストを回収してもらうこととした(甲46、乙28、証人D)。Dが、このような支払方法をEに伝えたところ、Eは異議を述べなかった(証人E)。
ウ Dは、秋田県庁業務の際、Cから被告の社員も使うように言われ、実際に被告の社員2名を参加させたことがあったが、ミスが多いなど問題があったため、本件ツールの開発について、ノウハウのない要員を参加させることにより原価が増加することを防ぐため、要員を追加する場合は原告の社員を第一優先とすることを明確化することを主な目的として、H及びCに見せることを想定し、被告側の責任者をD、原告側の責任者をGとする平成20年4月1日付け覚書の案(以下「本件覚書」という。乙7)を作成した。本件覚書には、本件ツール開発は原被告の共同にて実施すること(第1項)、ツール開発費用はQ言語移行の受注確定により支払い(第2項)、Q言語移行サービスの受注が発生しないときは、その開発費用を請求しないこと(第3項)、第3項の対価として、ツール開発の要員追加やQ言語移行サービスの受注増加に対する要員増加は、原告を第一優先とすること(第4項)等が記載されていた。Dが上記第3項を記載したのは、H及びCに覚書を見せるつもりであったことから、被告に利益になる記載が必要と考えたためであった。
Dは、平成20年4月頃、Gに対し、パソコンの画面上で、本件覚書を見せたが、Gは、Dから被告内部の手続で用いるものと聞かされたため、特に意に介することはなく、結局、同覚書はそのまま押印されることはなかった(甲46、47、乙7、証人D、同G)。
エ 原告は、平成20年4月以降、被告のeオフィスにおいて本件ツールの開発業務を行い、同年9月頃、本件ツールの開発を完了した(甲48、証人E)。被告は、平成25年10月の時点において、「Q言語コンバージョンサービスを利用すれば、低コスト・短期間でGソースをCOBOLソースに変換致します」などと、本件ツールを用いたQ言語変換サービスを自社のウェブページに掲載している(甲4)。
(3)  本件言語変換業務(個別案件)等の実施及び報酬の支払
ア 原告が主張する本件カスタマイズ業務及び本件営業支援業務に係る作業内容等
(ア) 被告が顧客から言語変換業務を受注するに当たっては、被告と顧客との商談において、顧客から引合いがあるとき(顧客から関心が示されたとき)は、顧客のプログラムを事前に調査し、言語変換業務の概算見積もりをしたり、実際に当該プログラムを変換してサンプルを試作し、それをもって顧客にプレゼンテーションをするなどのために、顧客からそのプログラムの全部又は一部を預かる。そして、原告は、その調査・分析・検討する作業をし、その結果に基づき、概算見積もりを作成し、サンプルを試作し、被告は、それを顧客に提供し、顧客は、実際に発注するかどうかを決める(これが原告が主張する本件営業支援業務である。甲48、弁論の全趣旨)。
(イ) また、原告は、上記試作の段階で、当該プログラムの特性や本件ツールの適用性も把握し、被告が受注した場合に備えて、本ツールの改良等も行う。さらに、個別の受注がない場合にも、原告は、本ツールの精度をより高め、汎用的に適用できる性能の向上を目的として改良する作業をしていた(これらが、原告が主張する本件カスタマイズ業務であり、前者を以下「個別案件に係る本件カスタマイズ業務」、後者を「性能向上に係る本件カスタマイズ業務」という。甲48、弁論の全趣旨)。
イ 被告の原告に対する個別案件に係る本件言語変換業務の発注
被告は、平成20年9月以降、被告が顧客から受注した本件個別案件に係るQ言語変換業務を原告に発注し、原告は本件ツールを用いて、別紙「本件個別契約一覧表」記載の43件についてQ言語変換作業を行い、被告は本件個別案件に係る報酬合計1億4346万9824円を、平成24年2月29日までに支払った(基礎的事実(5))。この報酬には、本件ツールの開発費用分が上乗せされており、これにより被告の取得分(被告が受注した額から原告への報酬額を引いた額)は、本来の取得分より20パーセント程度少なくなっていた。このようにして、原告は、被告から、平成21(2009)年上期までの間に実質的な上記開発費用分の上乗せとして約1200万円の支払を受けた(乙25、証人D、弁論の全趣旨)。
上記43件の本件個別案件のうち、d社秋田県庁案件(別紙「本件個別契約一覧表」No.3)及びCB案件(別紙「本件個別契約一覧表」No.6ないし8)においては、同案件のQ言語プログラムの命令は、本件ツールに登録されているものの、その解釈(処理の流れ)が登録されているものと異なることが判明したため、当該案件のQ言語プログラムの命令解釈を本件ツールに追加するカスタマイズが行われ、また、q銀案件(別紙「本件個別契約一覧表」No.16ないし20)においては、同案件のプログラムに用いられている帳票に非常に特殊な構造を持つものがあり、それに対応するため大がかりなカスタマイズが行われ、岡山県庁税務案件では、同案件のQ言語プログラムが非常に複雑であったため、それに対応するためのカスタマイズが行われた。なお、平成22年4月から同年7月までの本件カスタマイズ業務の内容は、主にこの岡山県庁税務案件の個別案件に係る本件カスタマイズ業務と性能向上に係る本件カスタマイズ業務であった(甲48)。
ウ 本件個別案件については、原則として被告が原告に発注することになった段階において、被告(調達課)が原告に対し「注文書(当初書面)」(単価、金額は未定とされている。)、を発行した上で「見積依頼書」を発行するなどして代金額の見積もりを依頼し、原告はこれに対し「御見積書」を発行して見積金額を提示し、被告は、この見積金額に異議がなければ原告に対し「注文書(補充書面)」を発行して正式に契約を申し込み、原告がこれを承諾することにより個別契約が成立するという受発注手続が行われた(乙3の1の1ないし乙3の43の2(すべての枝番を含む。))。なお、原告・被告間においては、Q言語変換業務に関する取引開始前から、同様の受発注手続が行われていた(乙4の1ないし5、5の1の1ないし5等)。
原告は、被告調達課に提出する見積書の金額に、Cから指示された金額(本件業務の上乗せ分)を入れて提出していたが、被告調達課がそれをチェックして異議を述べたことはなかった(証人D)。
エ 被告オフィスにおける進捗会議
G及びEを含む原告の社員とC、D及び被告の社員(被告のc1部部長M、同部課長のI等)は、被告のeオフィスにおいて、原告の行っているQ言語変換作業等について、当初は週2回程度、後には週1回程度の頻度で進捗会議を行い、この会議では、原告の社員が実施している作業の進捗や、今後の実施作業に関する報告が行われた(甲46、48、証人D、同E、弁論の全趣旨)。
オ D及びCとEの間における原告作業員の作業時間の確認
D(Dの退職後は、CないしI)及びEは、平成20年4月から平成23年3月までの間、本件ツールの開発作業等に従事した原告の作業員の氏名、1月当たりの単価、在席時間を各自で把握し、毎月ないしは3か月に1回程度の頻度で、定期的に相互に確認を行っていた(甲46、48、証人D、同E、弁論の全趣旨)。D(CないしI)は、自己の把握していた上記の数値を「山積表」(甲31ないし33、乙25)に記入して管理していたが、単価については、被告が原告に外注する際の単価の情報がなかったこと、原告から上乗せを要求されてもやむを得ない金額を把握することが山積表作成の目的であると考えていたことから、自身が平成16年まで在籍していた被告の親会社であるd社がソフトウェア開発を外注する際の発注単価をベースに、それより若干低い金額を単価として山積表に記載した。
稼働実績表は、Eが、本件業務が平成24年1月に終了した後の同年9月頃、被告に対し、未払報酬残高の説明をするために、被告側から提示された山積表を、原告が把握・管理していた工数の内訳や金額と照らし合わせて確認して転記し、作成したものである(甲31ないし33、46、乙25、28、証人D)。
カ 個別案件のQ言語変換業務以外の業務の実施
原告は、本件ツールの完成後も、随時本件カスタマイズ業務を行って本件ツールの改良作業を行うとともに、本件営業支援業務を行った(甲17の1ないし甲17の128、弁論の全趣旨)。
(4)  原告(又はE)と被告(又はC)の間のやりとり等
ア Cは、平成20年9月頃、原告開発本部宛ての「Q移行作業お支払い時期のお願い」と題する書面で、「現在Q言語移行作業でご尽力いただいておりますが、各社からの引合はあるものの、なかなか受注に至らず、苦戦している状況です。つきましては、これまで作業していただいた分のお支払い時期について下記のとおりとさせて頂きたく」として、次のとおり伝えた(甲6、弁論の全趣旨)。
(ア) f社Q言語コンバージョン作業 230万円 平成20年9月末
(イ) j社向けQ言語移行パイロット作業 20万円 平成20年9月末
(ウ) k社パイロットテスト 250万円 平成20年10月末予定
(エ) l社 950万円 平成20年11月中旬予定
(オ) m社 900万円 平成20年11月中旬予定
(カ) n社案件又はo社 878万5000円 平成20年11月中旬を予定
イ Cは、平成21年5月以降、原告開発本部宛てに、約半年ごとに「Q移行作業残高確認の件」と題する書面を発行し、原告に対し、次のとおりの「未発注の残高」が存在することを認識している旨確認した(甲7ないし12)。
(ア) 平成21年3月末日時点 4498万4100円(消費税込み)
(イ) 平成21年9月末日時点 4472万1600円(消費税込み)
(ウ) 平成22年3月末日時点 4275万2850円(消費税込み)
(エ) 平成22年9月末日時点 6362万5800円(消費税込み)
(オ) 平成23年3月末日時点 6335万9100円(消費税込み)
(カ) 平成23年9月末日時点 6890万2050円(消費税込み)
また、Cは、平成23年4月25日、F及びEに対し、今後の個別案件をどのように受注し、どのように未払報酬を支払っていくかについての検討資料をメールで送付したが、その資料において「10下期」(2010年下期)の残高を6034万2000円(消費税込みの金額は上記(オ)と同じ。)と記載した(甲13の1・2)。
ウ 原告と被告の間では、平成20年9月以降、半期決算のために各年度の9月末及び3月末時点における、原告の被告に対する売掛金の残高を確認することを目的として、半期毎に「残高確認書」と題する書面が取り交わされていたところ、残高確認書には、個別案件に基づく報酬の未払金額のみが計上され、上記イの「未発注の残高」の記載はされていなかった(乙10の1ないし7)。
エ Eは、平成22年11月頃、Cに対し、Q言語変換業務の個別案件が当初の想定ほど受注に至らず、「未発注の残高」の解消が進んでいないため、今後の対応を協議したいと相談した。そこで、Cは、同月30日に、被告の横浜本社を訪れた原告のF及びEに対し、「Q移行作業お支払い計画のご説明」と題する書面(甲18)を交付した(乙27、証人C)。
同書面には、「これまでは、案件の受注有無によらず、引合い案件の事前調査作業などに常駐してご協力いただいておりました。御社へのご発注も、常駐している期間に応じた金額で清算しておりました。この方式ですと、作業開始時期が遅れや、失注した場合の精算がすべて弊社負担となり、残高は増加する一方です。今後につきましては、常駐期間に応じた金額ではなく、案件単位に御見積りして頂き、そのお見積額に残高返済額を上乗せした額で発注させて頂きたく、よろしくお願い致します。」との記載がある(甲18)。
(5)  平成23年4月以降の個別案件の実施とその終了等
ア 原告は、平成23年3月頃、被告からの個別発注による岡山県庁税務案件の作業に従事していたところ、この作業は同年3月末日までに終了することが予定されていたが、岡山県庁のホストコンピューターを思うように使うことができないなどの顧客都合により開発効率が低下したため、作業が同年4月以降にずれこむこととなった。Cは、この作業期間の延長について、元請けであるd社からの代金が上乗せされたことから、原告に対し、既に発注済みであった岡山県庁税務案件の作業期間延長分について、150万円の追加発注という形式により、追加の支払を行った(別紙「本件個別契約一覧表」No.36。甲49、乙3の34の4、乙3の36の4、乙27、証人C、弁論の全趣旨)。
イ 上記アのとおり、岡山県庁税務案件は、作業期間の延長がなければ平成23年3月で作業が終了する予定であったことから、Cは、同年4月分以降の案件について、原告従業員が被告オフィスに在席した時間(工数)と原告の主張する単価により算出した報酬(915万円)に日当・交通費(61万9000円)を加えた合計976万9000円から、上記アの追加支払額150万円を差し引いた826万9000円を上記(4)イにおけるような「未発注の残高」として取り扱うこととした(甲19、21、証人E、同C)。
ウ 原告は、平成23年5月から同年7月にかけて、岡山県庁給与案件を900万円(消費税抜き)で受注し(別紙「本件個別契約一覧表」No.37、39及び40。甲20、乙3の37の4、乙3の39の4、乙3の40の4)、また、同年9月に岡山県庁税務案件の追加分業務を126万7900円(消費税抜き)で受注した(別紙「本件個別契約一覧表」No.41。甲20、乙3の41の4)。これらの金額は、平成23年上半期の報酬額を工数清算方式で計算した場合の額(岡山県庁給与案件については870万円であり、Gの日当16万8000円を加えても886万8000円。岡山県庁税務案件の追加分については90万円)をいずれも上回っていた(甲21、48)。
エ 被告が、岡山県庁案件を受注したのを最後に、新規の個別案件の受注が途絶え、岡山県庁案件は平成24年1月末に終了したことから、原告の従業員は被告のオフィスから撤退した(基礎的事実(6))。
(6)  その後のEの被告又はCに対する書面等
ア Eは、被告のb1本部c1部宛に、平成23年8月31日頃、同日付け「Q移行作業におけるお願い事項」と題する書面(乙29)を送付した。同書面には、「2008年度よりの継続課題となっております開発費用の未清算残高の解消につきまして、御社には都度善処を賜っておりますが、絶対的な受注量が少ない状況下、弊社が期待する清算速度には到底及ばす、業績にも多大な影響を及ぼしております。」、「事態の早期解決に向けて、今後は両社合意のもとで改めて「清算計画」を策定賜り、計画に沿って着実に推進していくことを切に希望致します。」等の記載があった。
イ また、Eは、平成24年1月31日、Cに対し、メール(乙30)を送信したところ、同メールには、「当面の受注の見通しが立たない状況下ですので、今後の清算につきまして、御社様と仕切り直しの協議を進めさせて頂きたいと存じます。」との記載があった。
ウ さらに、Eは、平成24年3月5日頃、Cに対し、メール(甲15の1)を送信したところ、これには、「何より来月の合併を皮切りに今後御社内の組織変更等が予想される中で「やがてうやむやにされてしまうのではないか?」ということを強く懸念しております。」、「まずは御社内で御調整していただくのが最善策かと思います。困難なようでしたら、①弊社より直接T本部長様、N部長様に申入れをしますそれも不調なら、②正面切って御社に申し入れることをせざるを得なくなります。」との記載があった。
(7)  被告における物品及び役務の調達権限等
被告の組織分掌においては、作業外注、要員外注及び購買の発注業務、価格管理、取引先管理(信用審査、口座管理等)を所管業務とするのは技術本部技術部調達課(以下「被告調達課」という。)と定められており、他方、b本部c部の所管業務は、業種系企業に対するトータルソリューションサービスのうち直受顧客に対するトータルソリューションサービスとされている(乙17、27、証人C)。
2  争点1(本件業務委託契約の成否及び未払報酬残高の存否)について
(1)  原告は、平成20年3月末か4月初め頃、DがEに対し本件業務を原告に委託することを申し入れ、Eが原告を代表してこれを了承したことから、原告と被告の間で、本件業務委託契約が成立した旨主張する。
(2)  そこで検討するに、確かに、被告においては本件サービス事業のため自社製の言語変換ツールを開発する需要があり(基礎的事実(3)、上記1(1)イ)、そのためにDが、平成20年2月頃及び同年4月頃、Gらに対し言語変換ツールの開発を依頼し、Dと被告オフィスに常駐していた原告の社員の進捗会議を経て、本件ツールの内容が決定されたこと(上記1(2)ア)、Dが、当初は開発費用は1000万円程度であろうから、被告社内の研究開発費用を用いて開発することができると考えていたこと(上記1(2)イ)が認められる。これらに加え、被告から原告に支払われた本件個別案件に係る報酬には、本件ツールの開発費用分が上乗せされていたこと(上記1(3)イ)も考慮すれば、本件業務委託契約が成立し、それに基づく報酬が支払われていたようにも思われる。
また、Cが作成した上記「Q移行作業お支払い時期のお願い」と題する書面(甲6)には、「これまで作業していただいた分のお支払い時期」として、今後の受注予定が記載されていること(上記1(4)ア)、被告の作成した上記「Q移行作業残高確認の件」と題する書面(甲7ないし12)には、「未発注の残高」として、本件言語変換業務の報酬とは別に、工数清算方式により算出された報酬額が記載されていること(上記1(4)イ)、「Q移行作業お支払い計画のご説明」と題する書面(甲18)には、「これまでは、案件の受注有無によらず、引合い案件の事前調査作業などに常駐してご協力いただいておりました。御社へのご発注も、常駐している期間に応じた金額で清算しておりました。この方式ですと、作業開始時期が遅れや、失注した場合の精算がすべて弊社負担となり、残高は増加する一方です。」との記載があること(上記1(4)エ)は、被告が、原告に対し、未発注残高とされている工数清算方式による報酬の支払を約していたことをうかがわせるようにも考えられる。
(3)ア  しかしながら、本件業務委託契約に関する契約書や注文書等の書面は作成されていないところ、原告と被告の間の本件基本契約においては、原告・被告間の個別契約は、原則として、被告が注文書を発行することにより申込みを行い、原告がこれを承諾することで成立するとされていること(基礎的事実(2))、被告の原告に対する本件個別案件に係る本件言語変換業務の発注等が、いずれも書面により行われていること(上記1(3)イ)や、原告及び被告の各会社の規模等(基礎的事実(1))に加え、原告の主張する本件業務委託契約に係る報酬額は工数清算方式により算定されるというもので、被告にとって大きな負担になる可能性があることを考慮すると、本件業務委託契約が口頭により成立したということには疑問があるといわざるを得ない。仮に、本件業務委託契約の作業内容が確定しておらず、事前に工数や作業期間(納期)を予測することができなかったとしても、とりあえずの書面として注文書(当初書面)を発出し、作業が進んだ段階で見積依頼書、見積書、注文書(補充書面)等の書面を整えることは可能であり、実際に、本件個別契約において被告が原告に発行した「注文書(当初書面)」では、単価や金額が未定とされていたことが認められる(上記1(3)ウ)。
なお、原告は、乙3の2の1(注文書(当初書面))が本件開発業務委託契約の注文書である旨主張する。しかし、同書面の作業名は「Q言語コンバージョン作業」となっており、本件開発業務ではなく本件言語変換業務に係るものであることがうかがわれること、作業期間の記載が平成20年5月14日から同年9月30日、金額が230万円と記載されているところ、Dは、当初、本件ツールの開発期間を平成20年4月から同年6月頃まで、開発費用を1000万円から1500万円程度と考えていた(証人D)のであるから、あえてこれと齟齬する記載をするとは考え難いこと、Eは、平成24年11月15日の原告と被告との会議において、「元々契約はなかった」、「契約自体は存在していない」などと発言していること(甲23)に照らせば、上記乙3の2の1が本件業務委託契約の注文書であると認めることはできない。したがって、原告の上記主張は採用できない。
イ  また、Dは、原告への本件開発業務の報酬については、研究開発費を充てられなかったため、被告の受注したQ言語変換作業の報酬を原告に支払う際、それに上乗せして原告に開発コストを回収してもらうこととし、Eもこれに異議を述べなかったが(上記1(2)イ)、他方で、Dは、個別案件の受注がなかった場合にどうなるかについては曖昧な証言しかしていないところ(証人D)、本件業務委託契約のようなシステム開発等の業務について工数清算方式を採用する場合、注文者の知らないうちに報酬が予想外に増大する危険性があるが、そのような合意を何の留保もなくすることは考えにくい。そして、被告において、原告が主張するような本件業務委託契約の締結権限を有するのは、被告調達課であり、Dが所属するb本部c部は、対外的に同契約の締結権限を有しないところ(上記1(7))、通常の手続により反復されているような契約について、D等が調整した金額に被告調達課が異議を述べたことはなかったとしても(上記1(3)ウ)、同契約が上記のような危険性を有するものであることも考慮すると、契約の締結権限がないことを承知しているDが、原告が主張する内容の本件業務委託契約について、法的拘束力を生じさせるような明確な合意をしたというのは、不自然である。
そして、原告と被告の間において、半期決算のために各年度の半期毎に取り交わされていた売掛金の「残高確認書」にも個別案件に係る報酬の未払金額しか計上されておらず、原告が本件業務委託契約に基づいて発生したと主張する報酬額は一切記載されていないところ(上記1(4)ウ)、上記「残高確認書」は原告の被告に対する売掛金が確認書に記載された額であること(したがってそれを超えて存在しないこと)を確認するものであるから、上記記載がないことは、本件ツールの開発費用等を個別案件の報酬に上乗せすることができない場合に、別途、被告が原告に対しその支払債務を負うものとして明確に合意されたものではないことに沿うものである。
ウ  さらに、上記「Q移行作業残高確認の件」と題する書面(甲7ないし12)については、その作成者であるCは、同書面における「未発注の残高」とは、本件ツール開発費用等の未回収分を指し、被告調達課から発注する以後の個別案件があって初めて支払うことができる金額で、原告が将来の個別案件の代金において回収を図る金額と認識しており、上記1(4)エの「Q移行作業お支払い計画のご説明」と題する書面(甲18)における「残高返済額」も「未発注の残高」と同様の意味で用いている旨証言し(乙27の陳述書の記載を含む。以下、同様。)、また、上記「Q移行作業お支払い時期のお願い」と題する書面(甲6)については、近いうちに顧客から案件を受注して被告から原告に発注できそうな案件の想定金額を記載したものである旨証言している(乙27、証人C)。
そして、本件ツールについて、Dが本件サービス事業のためEに対して開発を持ちかけ、本件ツールの内容の決定もDと原告の社員の進捗会議においてされていること(上記1(2)ア)、Dも、当初は開発費用は1000万円程度であろうから、被告社内の研究開発費用を用いて開発することができると考えていたこと(上記1(2)イ)、被告は、平成25年10月で、本件ツールを用いたQ言語変換サービスを自社のウェブページに掲載していること(上記1(2)エ)を考慮すれば、本件ツールの開発は、被告が個別発注を受け、その言語変換業務を原告に委託することにより、原告と被告の双方が利益を上げることが念頭に置かれていたものと考えられる。そして、原告が本件ツールの開発に多額のコストを投入したことや、実際にはDの予想に反し、個別案件の受注は芳しいものではなかったものの、平成20年4月当時は本件サービス事業についての引合いもあり、D及びCが原告のコストも個別案件で原告が回収することが可能と安易な見通しを持っていたことも考慮すれば、D及びCが、個別案件の発注により、本件開発業務等にかけたコストを原告に回収してもらおうという意図の下、原告が個別案件に係る報酬では必ずしも十分に補填されなかったと主張する金額を「未発注の残高」として把握しつつ、今後発生する個別案件を通じて回収が図られるよう協力することを目標としていたとしても不合理とはいえない。そうすると、上記「Q移行作業残高確認の件」と題する書面(甲7ないし12)及び上記「Q移行作業お支払い計画のご説明」と題する書面(甲18)における「未発注残高」又は「残高返済額」も上記のような趣旨で記載されたもので、上記「Q移行作業お支払い時期のお願い」と題する書面(甲6)についても、個別案件の報酬により原告が収益を上げることが予定されていたことを受け、近い将来に被告の受注が見込まれる個別案件を原告に開示するために作成された可能性が十分に考えられるから、これらの書面をもってしても、本件業務委託契約が成立したものとみることはできない。
エ  また、原告の主張を前提にすると、個別案件におけるQ言語変換業務についても本件業務委託契約に基づき、工数清算方式により算出される報酬を支払うべき義務があることになるところ、Q言語変換業務については、合計43件の本件個別契約が成立し、これらに基づきその報酬が支払われているのに、同じ個別案件について、さらに支払うべき報酬が算定され、それに基づき支払義務を負うというのは(上記のように既に支払われた報酬が差し引かれるとしても)、不自然であるといわざるを得ない。
さらに、原告の主張によれば、本件業務委託契約の成立時期である平成20年4月頃に、被告が将来顧客から受注する個別案件に係る本件言語変換業務、本件カスタマイズ業務及び本件営業支援業務について委託したことになるが、将来の個別案件においてこれらの業務が具体的にどの程度発生するのか明らかではなく、ましてその報酬が工数清算方式で算定されるとすればその報酬の予測も不可能であるにもかかわらず、このような業務をあらかじめ委託するということ自体も不合理であるといわざるを得ない。
オ  また、Eが、Cに提示した平成23(2011)年8月31日付け「Q移行作業におけるお願い事項」と題する書面(上記1(6)ア)には、「事態の早期解決に向けて、今後は両社合意のもとで改めて「清算計画を策定賜り」とあるところ、同書面には、さらに「受注不調時の代替清算案」、「弊社が懸念するリスク」である「受注量の確保」等の記載があり(乙29)、また、EがCに送信した平成24年1月31日付けメール(上記1(6)イ)にも、「当面の受注の見通しが立たない状況下ですので」、「御社様と仕切り直しの協議を進めさせて頂きたい」との記載がある。原告側から被告に対する書面又はメールのこれらの記載は、確たる請求権を有する側からのものとしては疑問があり、受注不調により受注量の確保ができない場合には、代替清算案を合意しない限り、あるいは、受注の見通しが立たなければ、報酬が支払われないという程度の認識であったとも読める。
さらに、Eが平成24年3月5日以降の時点でCに対し送信したメールにも、「何より来月の合併を皮切りに今後御社内の組織変更等が予想される中で「やがてうやむやにされてしまうのではないか?」ということを強く懸念しております」、「不調なら」「正面切って御社に申し入れる」「ことをせざるを得なくなります」との記載がある(上記1(6)ウ)。これらの記載は、Eが、原告が主張する未払報酬がうやむやにされてしまう懸念がある程度のものであり、あるいは、会社間の正式な合意に基づくものではなく、Cとの間で確認した未発注残高も、正当な売掛金債権であるとまでは認識していなかったことをうかがわせ、あるいは、少なくともそのような疑いを抱かせるものである。
カ  以上のとおり、原告と被告の間の本件基本契約や他の契約締結の手続等に照らすと、原告が主張する本件業務委託契約につき契約書等が作成されていないことには疑問があること、本件業務委託契約の内容自体や原告の主張する被告側の契約締結の主体が契約締結権限を有しない部署に所属する者であることからも、法的拘束力を生じるような明確な合意がされたとは考えにくく、売掛金の「残高確認書」にも原告が主張する未発注残高は記載されていないこと、未発注残高については、D及びCが、本件業務に関し原告に生じたコストを個別案件の報酬を通じて回収することができるよう便宜を図る趣旨であった可能性が十分考えられること、Eが被告に送付した書面やメールからも、E等が、原告が主張する本件業務委託契約のような明確な合意があるとの認識を有していたか疑問であること等が指摘できる。これらを総合すると、上記(2)の事情を考慮しても、個別案件の発注がなく個別案件の報酬に上乗せすることができなかった場合に、別途、被告が原告に対し工数清算方式による報酬を支払う旨の合意がされた、すなわち、原告が主張する本件業務委託契約が成立したものとは認められない。
(4)  以上の検討によれば、原告と被告の間で本件業務委託契約が成立したとは認められず、他に原告と被告の間で本件業務委託契約が成立したことを認めるに足りる的確な証拠はない。
したがって、この点に関する原告の主張は採用できない。そうすると、原告の本件業務委託契約に基づく主位的請求は、その余の点(争点2、3)を検討するまでもなく、理由がない。
3  争点4(商法512条に基づく相当報酬請求(予備的請求)の可否)について
(1)  原告は、本件業務は、商人である原告が、その営業の範囲内において、被告のために行ったものであるから、原告は、被告に対し、商法512条に基づき、相当な報酬を請求し得る旨主張する。
(2)  そこで検討するに、まず、商法512条所定の要件のうち、原告が商人であることは基礎的事実(1)により明らかである。また、同条にいう「営業の範囲内において」とは、営業の目的たる行為のみならず、広く営業の利益又は便宜を図るための一切の行為を包含するところ、本件業務はいずれも原告の利益を図るための行為に当たることは明らかであるから、原告の営業の範囲内において行われたものと認められる。
(3)  そこで、本件業務が商法512条の「他人のため」にした行為といえるかについて検討するに、「他人のため」とは、行為者の主観においてそうであるだけでは足りず、客観的にみて他人(報酬の被請求者)のためにする意思でしたことを要するが、自己の利益と併存しても当該要件の充足を妨げるものではないと解される。
ア まず、原告が主張する本件開発業務は、本件ツールの企画、設計、構築を行い、システムテスト、運用テストを実施した上で、これを被告に引渡す業務であるところ、これは、原告が将来被告から受注する個別案件に使用する本件ツールの開発であるから、個々の個別案件に係る業務に含まれるものとはいえない。そして、本件ツールの開発については、原告と被告の双方が利益を上げることが念頭に置かれていたことは上記2(3)ウのとおりであって、実際に、被告も本件ツールを使用した本件サービス事業で利益を得ており(上記1(3)イ)、Dも当初は被告社内の研究開発費により開発費用を支弁しようと考え、それが不可能となった後も、個別案件に上乗せする形で出来るだけ原告に開発コストを回収してもらおうと考えていたものである(上記1(2)イ)。これらの事情を総合すると、本件開発業務は、被告の利益に資するものであり、客観的に被告のためにもする意思でされた行為と認められるから、原告が「他人のため」にした行為といえる。そして、原告は、本件ツールの開発すなわち本件開発業務を完了したことが認められる(上記1(2)エ)。
被告は、開発された本件ツールの納品、検収等はなく、被告の資産にも計上されたことがないので、本件ツールは原告自身のために開発されたものであり、被告のために開発されたものではないと主張する。しかし、ツールの開発は被告のサーバーでしたものであるから、Dが完成を認めたときに引き渡したものと評価することができ、現在も被告のサーバーに存在し、原告は被告の同意なくそれに触れることはできないものである(証人E)。また、原告は、本件ツールの開発は、本件サービス事業のために行われたもので、開発された本件ツールは被告の本件サービス事業のためにのみ使用し、それ以外に使用することは考えていなかったのであるから(証人E)、被告のためにも開発されたものであることは否定できない。したがって、上記認定判断は左右されず、被告の上記主張は採用できない。
イ 次に、本件言語変換業務については、原告の行った本件個別案件の全てについて、被告調達課による注文書が発行され、本件個別契約に基づき、同業務の対価である報酬が支払われている(上記1(3)イ・ウ)。なるほど、本件個別案件の処理に原告が要した実際の工数等を、本件個別契約に基づき被告から支払われた報酬額が必ずしもカバーしておらず、それ以上に原告が工数等を要した可能性は否定できない。しかしながら、本件個別案件については、上記のようにその報酬額が明示的に合意されているのであるから、本件個別案件に係る通常の業務の範囲については、その報酬額を超えて商法512条に基づき相当報酬を請求することはできないというべきである。
ウ また、原告が主張する本件カスタマイズ業務のうち、個別案件に係る本件カスタマイズ業務についてみるに、原告が実際に本件個別案件に関して行った本件カスタマイズ業務は、上記1(3)イのとおりであるところ、被告が顧客から個別案件の引合いを受けた場合に、被告が顧客から当該個別案件を受注した場合に備えて、顧客のプログラムに本件ツールを効率的に適用できるよう本件ツールを改修する作業であるという点(上記1(3)ア(イ))では、同業務は、本件開発業務の延長上の作業であるという性質があることは否定できない。
しかしながら、本件開発業務自体は、平成20年9月頃に完了しているところ(上記1(2)エ)、すべての顧客のプログラムに対応できる本件ツールを当初から開発することは不可能であることからすれば、程度の差はあるとしても個別案件における作業でカスタマイズが必要であることは想定できる上、個別案件に係るカスタマイズは、同案件の準備ないし遂行の際に判明した問題点に対応するために必要な作業であることからすれば、個別案件の処理作業に付随する業務と考えるのが自然である。そうすると、上記のカスタマイズ業務は、個別案件に付随する業務として、個別案件の報酬の対象となるべきものというべきであり、あるいは、少なくとも個別案件の作業から明確に区分けして原告が別の業務を行ったと評価することは困難であるから、それをもって、商法512条の他人のためにした行為ということはできない。
エ さらに、原告が主張する本件カスタマイズ業務のうち、本件ツールの精度をより高め、汎用的に適用できる性能の向上を目的として改良する、性能向上に係る本件カスタマイズ業務(上記1(3)ア(イ))についても、本件開発業務の延長上の作業であるという性質があることは否定できない。
しかしながら、別紙「受託業務の進行表」によれば、本件開発業務自体は、平成20年4月から平成20年9月頃に完了するまでに行われており、時期的にも、また、本件ツールの開発が完了するまでの作業であるから、内容的にも、本件個別案件に係る業務との区分けは容易であるものの、本件カスタマイズ業務については、原告自身、同表において上記ウの個別案件に係る本件カスタマイズ業務と性能向上に係るそれとを区別せず「本件カスタマイズ業務」としているところ、具体的に性能向上に係る本件カスタマイズ業務と上記ウの個別案件に係る業務に付随する個別案件に係る本件カスタマイズ業務を区分けして認定することは困難である(Eも、陳述書(甲48)において、ある時期、被告の受注がない時期があり、その間も、当社社員が何もしなかったわけではなく、本件ツールの基本性能をよくするためのカスタマイズを行っていた旨述べており、どの時期にどのような性能向上に係る本件カスタマイズ業務が行われたかを具体的に特定することはできない。)。また、別紙「受託業務の進行表」によれば、岡山県庁案件の前の時期に本件カスタマイズ業務の作業が集中している時期があるところ(平成22年3月から同年7月)、この時期についても岡山県庁案件に向けての個別案件に係る本件カスタマイズと、性能向上に係る本件カスタマイズが行われており(上記1(3)イ)、その区別は判然としない。したがって、原告が主張する性能向上に係る本件カスタマイズ業務についても、上記ウと区分けして、商法512条の他人のためにした行為と認めることはできない。
オ 次に、原告が主張する本件営業支援業務(上記1(3)ア)については、確かに被告にとっても有用なものではあるが、被告が個別案件を受注でき、それを被告から原告が受注することに向けての、原告の営業活動ないしサービスとしての側面が大きいというべきであって、終局的には将来の個別案件においてそのコストを回収すべき性質の業務であるというべきである。そうすると、これらの業務を、客観的に見て、他人(被告)のためにした行為と認めることはできない。
なお、原告が本件営業支援業務をしたにもかかわらず、結果的に被告が受注できなかったものがあることはうかがわれるが、そうであるとしても本件営業支援業務について上記のような性質が否定されるわけではないから、上記の認定判断は左右されない。
カ 以上によれば、本件業務のうち本件開発業務については、商法512条の「他人のために」した行為であると認められるが、その余の業務については、「他人のために」した行為とは認められない。
(4)  そこで、本件開発業務に係る「相当な報酬」についてさらに検討する。
ア 工数について
(ア) 原告は、原告の作業員が平成20年4月から平成23年3月まで被告オフィスにおいて本件業務に係る作業に従事した時間は稼働実績表のとおりである旨主張する。他方、被告は、稼働実績表の工数は、正確な作業時間を示すものではない旨主張する。
(イ) そこで検討するに、稼働実績表は、EがDから交付された山積表を基に、本件ツールの開発作業等に従事した原告の作業員の氏名、1月当たりの単価、在席時間を記載したものであるところ、その工数は山積表と若干異なる記載があるものの、それは同じ工数を期間で調整した結果であって合計金額に齟齬はなく(甲48)、山積表の記載を正確に反映したものであることが認められる。
(ウ) 被告は、稼働実績表の工数は、正確な作業時間を示すものではない旨主張し、D及びCも、山積表の数値は大雑把な数値であるとか、大体の在席状況のみを考慮した数値である旨証言する(乙27及び28の各陳述書の記載を含む。)。しかし、原告の作業員は、始業時間(午前9時)から終業時間(午後5時45分)までの間、被告オフィスに常駐して作業を行っていたところ、E及びDは、原告の作業員と机を並べて作業をしていたのであるから(甲46、48、証人D、同E)、原告の作業員の在席時間をほぼ正確に把握することができたと考えられる。また、D及びCは、早い時期に個別案件を受注できる見込みがあり、被告の受注したQ言語変換の作業報酬を原告に支払う際、それに上乗せして原告に開発コストを回収してもらおうと考えていたが(上記1(2)イ)、他方で、原告に対する支払が過大なものとなることは避ける必要があったであろうから、D及びCとしても、原告の作業員の作業時間については、ある程度正確に把握しておく必要があったと考えられる。その上で、EとD(CないしI)は、定期的に互いの把握していた工数を相互に確認していた(上記(3)エ)のであるから、山積表及び稼働実績表の数値は、原告の作業員の在席時間を可能な限り正確に数値化したものと認められる。そして、原告の作業員は、被告オフィスに在席している間は本件業務に従事していたものと認められる(証人D、同E)。
(エ) なお、被告のサーバー内にあった原告の作業員(O)のフォルダには、本件業務とは無関係な介護関係のファイルが保存されているようにも見えるが(乙32)、Dは、これらのファイルは、同人の退職後、Oに対し、別件の介護案件に係るツール改修作業を依頼した際に用いられたものであり、作業の所要時間は数十分程度であって、Oが被告オフィスでこの作業を行うことについてはCも了解していたと述べていること(甲56の4、甲57)、いずれのファイルも更新日時は被告オフィスの作業時間外であってOがいつこの作業を行っていたのかは明らかではないことからすれば、これをもって、原告の作業員の被告オフィス在席時間が、原告の作業員の作業正味時間と大きく齟齬することになるとは解されない。
(オ) したがって、原告の作業員が被告において本件業務に従事した工数は、稼働実績表のとおりであると認めるのが相当である。
本件開発業務は、平成20年4月から同年9月まで行われていたところ(上記1(2)エ)、同年8月は個別案件のうちf社案件及びj社案件、同年9月はf社案件と同時並行で作業が行われており、その内訳は別紙「受託業務の進行表」のとおりである(乙3の1の1ないし乙3の2の5(すべての枝番を含む。)、弁論の全趣旨)。このように、本件開発業務と個別案件業務が重複する人月については、本件開発業務に充てられた工数を全体工数の半分と考えるのが相当である。なお、同年4月から9月までの期間におけるEの管理業務(原告の作業員の勤務時間等を把握し、人数等の調整をDとの間で行ったり、工数清算表を作成する業務。甲48)については、本件開発業務を行うのに付随する業務であると解されるため、本件開発業務の工数に含めるのが相当である。
イ 単価について
(ア) 原告は、D及びEの協議に基づく、稼働実績表記載の単価は相当である旨主張し、他方、被告は、稼働実績表の単価について、相当性が明らかにされていないと主張する。
(イ) そこで検討するに、まず、稼働実績表の単価は、DとEが協議の上、原告作業員の経験、技術を評価し、業界の相場を考慮して決めたものであるところ、D及びEは、原告作業員のことをよく知っており、また、Dは、単価について、被告の本部長の職にあるC及びHの了解も得ていたことが認められる(甲46、48、証人D、同E)。これらの事実は、稼働実績表の単価は相応の根拠を有することを示すというべきである。
また、秋田県庁案件では、単価について、システムエンジニアが80万円/月、プログラマーが65万円/月とされているところ(甲56の1・2)、この単価と比較すると、稼働実績表のシステムエンジニアの単価は低くなっており、これは、まだ個別案件の受注が具体的になっていないことが考慮されたことが認められる(証人D)。
さらに、甲50は、一般財団法人経済調査会の研究者が実施したソフトウェア開発技術者の報酬についての調査結果であるところ、時期により推移はあるものの、東京地区における「プログラマ」の料金は、人月当たりおよそ60万円ないし70万円で推移していることが認められる。そして、甲50では、「プログラマ」の主な役割として、「プログラミングの中心的役割」、「プログラムのモジュールやプロセスのテストを実施」することが挙げられており、本件で単価65万円/月とされているP、Q、O及びRは、各人に割り振られたシステム開発・改修のためのプログラミングを行っていたことからすれば(甲48、弁論の全趣旨)、甲50の「プログラマ」に該当するといえる。そうすると、プログラマの単価を65万円/月とする上記単価(経験が乏しかったS(甲48)については、45万円)は、この調査結果からしても相当である。また、東京地区におけるシステムエンジニアの料金は、「システムエンジニア1」が80万円ないし100万円/人月で推移し、平成20年(2008年)度の料金の分布では、「システムエンジニア1」について60万円超90万円以下、90万円超120万円以下、120万円超150万円以下がほぼ同数であるところ、稼働実績表において単価が75万円とされているJ、L、E、U及びG(Gについては、平成21年3月までの単価)は、いずれも長年この業界に従事し、豊富な経験を有する者であり、「システムエンジニア1」の役割である「業務のモデル化、情報システム化の計画を策定」したり、「システムの機能設計及びシステムの具体化の中心的役割」等を担える者であるから(甲48、弁論の全趣旨)、システムエンジニアとしての単価75万円は不自然ではない。
さらに、Dは、陳述書(乙28)において、乙25の単価(稼働実績表の単価と同じ)について、被告の親会社であるd社のソフトウェアの開発を外注する際の発注単価をベースにし、それより若干低い金額とした旨述べているところ、d社の単価より低いことからも上記単価は相当であるといえる。
以上によれば、稼働実績表における単価は、相当なものとして、相当な報酬額を算定する基礎とするのが相当である。
(ウ) 他方、被告は、被告訴訟代理人弁護士作成の報告書(乙31)において、原告作成の「秋田県給与システムC/S化(仮)御見積書」(乙12)に記載された工数を基に、秋田県庁案件での1人当たりの単価を算出し、稼働実績表に基づく単価が高額である旨主張する。しかし、乙12は、Cに言われた工数をそのままEが記載したもので、実際の工数とは異なるものであると認められるから(甲56の1、証人E)、上記報告書を根拠に上記認定判断の報酬が不相当であるということはできない。
ウ 以上の工数と単価を前提に稼働実績表に基づき本件開発業務に係る報酬額を算定すると、別紙「本件開発業務の相当報酬」のとおり2900万円となるところ、原告は、本件個別案件について本来の報酬額に上乗せして約1200万円の実質的な本件開発業務の報酬を受領していることが認められること(上記1(3)イ。上記(5)ウの岡山県庁給与案件等の報酬額は、工数清算方式で計算した報酬額を上回っていることが認められるが、その時期等からすれば、本件開発業務に係る実質的な報酬が上乗せされているとはまではいえず、他に本件開発業務の報酬額が実質的に支払われたと認めるに足りる証拠はない。)に加え、本件開発業務の内容や原告と被告の取引の経緯や取引内容等を総合考慮すると、原告が被告に請求できる相当報酬額としては、1700万円を認めるのが相当である。
エ まとめ
以上から、原告が、商法512条に基づき、被告に対し請求できる本件開発業務にかかる相当報酬額は1700万円と認められる。
なお、商法512条に基づく相当報酬債権は、催告により遅滞に陥るところ、商法512条に基づく相当報酬債権について、本件訴状により請求する以前に明確に請求していたことを認めるに足りる証拠はないから、遅延損害金については、訴状送達の日の翌日である平成25年10月17日から発生すると認めることとする。
(5)  無報酬の合意について
被告は、本件開発業務について、無報酬とする特約がある旨主張する。
そこで検討するに、確かに、本件覚書(乙7)には、ツール開発費用はQ言語移行の受注確定により支払い(第2項)、Q言語移行サービスの受注が発生しないときは、その開発費用を請求しない旨の記載がある(上記1(2)ウ)。しかし、本件覚書は、ノウハウのない要員を参加させることにより原価が増加することを防ぐために、要員を追加する場合は原告の社員を第一優先とすることを明確化することを主な目的として、H及びCに見せることを想定し作成されたものであり、同書面の作成名義者であるD及びGの押印もないものである(上記1(2)ウ、証人D)から、本件覚書が、本件開発業務について無報酬とする旨を合意した書面であるとは認められない。そして、その他に被告の主張する無報酬の特約を認定するに足りる的確な証拠はない。
したがって、被告の上記主張は採用できない。
4  結論
以上の次第で、原告の主位的請求は理由がないから棄却し、予備的請求は、1700万円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成25年10月17日から支払済みまでの商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の予備的請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松本利幸 裁判官 今井和桂子 裁判官 水谷遥香)

 

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