【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(145)平成17年11月29日 大阪高裁 平17(ネ)1409号 損害賠償請求控訴事件

「営業支援」に関する裁判例(145)平成17年11月29日 大阪高裁 平17(ネ)1409号 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日  平成17年11月29日  裁判所名  大阪高裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ネ)1409号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2005WLJPCA11290010

要旨
◆破綻したゴルフ場経営会社のゴルフクラブ会員権を購入した者が預託金の返還を受けられずに損害を被った場合、会員権の購入を勧誘した金融機関の職員に同会社の財務状況等について説明すべき義務の違反があったとして、金融機関の不法行為責任が認められた事例

裁判経過
第一審 大阪地裁 判決 平15(ワ)6011号

出典
新日本法規提供

参照条文
民法709条
民法715条

裁判年月日  平成17年11月29日  裁判所名  大阪高裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ネ)1409号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2005WLJPCA11290010

控訴人(1審原告) X1
控訴人(1審原告) X2
上記両名訴訟代理人弁護士 藤田裕一
同 裴薫
同 西川真美子
同 中村怜子
被控訴人(1審被告) 信用組合Y興銀
同代表者代表清算人 A
同訴訟代理人弁護士 高島志郎

主  文

1  本件控訴をいずれも棄却する。
2  当審における予備的新請求に基づき、被控訴人は、控訴人らに対し、それぞれ1200万円及びこれに対する控訴人らがそれぞれKOMAカントリークラブから退会した日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  控訴人らのその余の予備的新請求をいずれも棄却する。
4  控訴費用は、これを2分し、その1を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人の負担とする。
5  この判決の第2項は、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  原判決を取り消す。
2(1)(主位的請求)
被控訴人は、控訴人らに対し、それぞれ2400万円及びこれに対する平成15年7月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)(当審における予備的新請求)
上記(1)と同旨
3  訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
4  仮執行宣言
第2  事案の概要
1  事案の要旨
本件は、被控訴人の勧誘によってゴルフクラブの会員権を購入した控訴人らが、勧誘行為が違法であったとして、被控訴人に対し、不法行為に基づき、上記ゴルフクラブを運営する会社が破綻し控訴人らが預託した金銭のうち返還されなくなった分の損害金2400万円(3000万円×80%=2400万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成15年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(訴状送達の日が平成15年7月8日であることは、記録上明らかである。)。
原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが、本件控訴を提起し、当審において、予備的新請求として、説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償請求を追加した。
2  争いのない事実、証拠(甲9~25、甲27の1・2、甲28、36、乙2)及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実は、原判決の事実及び理由中、第2、1(2頁6行目から5頁10行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
ただし、2頁11行目の「金融再生法」を「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(以下「金融再生法」という。)」と、4頁3行目の「部長、支店長、外交担当職員が主力となり」を「募集活動は部長、支店長、外交担当職員が主力となって行うこと」と、同11行目の「112億円」を「118億円」とそれぞれ改める。
3  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  違法な勧誘行為による不法行為
【控訴人らの主張(主位的請求の責任原因)】
ア 違法性
被控訴人の理事らは、コマ開発が経済的損失を与える危険性を十分認識していたにもかかわらず、業務命令により支店長のB(被控訴人平野支店長B)にゴルフ会員権の勧誘をさせたことは違法である。淀化成が被控訴人から融資を受けており、断ることができないものと考え、購入を強要したことは、独占禁止法19条(不公正な取引方法の禁止)違反であり、被控訴人の違法性を推認させる。
イ 故意
被控訴人の理事らは、平成5年11月ないし平成6年1月の本件会員権募集当時、コマ開発が既に実質的に破綻し、控訴人らに損害を与えることを認容していた。
ウ 過失
仮に、被控訴人の理事らが故意ではなかったとしても、被控訴人の理事らは、コマ開発の財務状況を認識していたのだから、控訴人らから預託金を集めても、コマ開発の破綻等により預託金が返還不能となることを予見すべきだったのに、予見しなかったという予見義務違反がある。そして、被控訴人の理事らは、予見義務を前提として、コマ開発は破綻の危機に瀕しており、破綻した場合には預託金が返還不能になる事実を説明するか、会員権取得勧誘を控えるなどして、控訴人らの預託金返還不能という損害発生の危険を回避すべきであったのに、これを怠った過失がある。
【被控訴人の主張】
ア 違法性
Bは、被控訴人理事長の業務命令を受けていない。Bが行ったのは会員募集の紹介であり、控訴人らが主張するような、購入の強要や、購入に際し詐言を用いたことなどはない。
イ 故意、過失
コマ開発の財政状況を被控訴人の理事らは認識していない。
故意、過失の主張は否認する。
(2)  説明義務違反の不法行為
【控訴人らの主張(予備的請求の責任原因)】
ア コマ開発は、平成3年3月、盛宏の旧長銀に対する約106億円の債務を引き受け、更に9ホール増設を強行したことにより、コマ開発の借入金及び支払利息割引料が巨額に膨れあがり、赤字が累積して実質的な破綻状態に陥ったものである。
コマ開発では、〈1〉昭和57~58年度(第11期)から平成12~13年度(第29期)まで債務超過の状態を続け、被控訴人が控訴人らに対し本件会員権購入の勧誘をした平成4~5年度(第21期)においては、平成5年7月末の時点で33億円超もの債務超過に陥っていること、〈2〉平成2~3年度(第19期)から平成4~5年度(第21期)にかけては、毎年度資本金の額(3億円)を上回る5億円以上の赤字を計上し、その後も3億円から4億円の赤字を計上し続けていること、〈3〉支払利息割引料が、平成2~3年度(第19期)から平成6~7年度(第23期)に至るまで、約3億4000万円から約8億8000万円の間を推移し、資本金の額(3億円)を上回り続けていること、〈4〉昭和57~58年度(第11期)から平成元~2年度(第18期)までは、預託金返還債務(施設利用預り金約53億ないし54億円)だけで資産の部の合計額(約42億円から約52億円の間を推移)を上回り、平成2~3年度(第19期)以降平成4~5年度(第21期)までは、資産の部の合計額(約142億円から約157億円の間を推移)の7割を超える多額の長期借入金(約110億円から約123億円の間を推移)が計上されていることが認められる。
以上の事実から、コマ開発は、長年継続的に多額の債務超過状態にあった上、本件会員権募集当時(平成5年11月ないし平成6年1月ころ)には、いつでも債権者による破産申立てが可能な債務状況で、既にその経営は破綻に瀕していたというべきである。
したがって、控訴人らが被控訴人の勧誘と本件融資により本件会員権を購入した当時(平成6年1月ころ)、コマ開発が実質的な経営破綻状態にあったことは明らかである。
イ 被控訴人がコマ開発を実質的に支配し、本件会員権の販売活動がコマ開発の有利子負債の軽減を目的としたものであったことから、被控訴人理事らが前記コマ開発の財務状況を熟知し又は少なくとも容易に知り得る状況にあったことは疑いを差し挟む余地すらない。
他方、信用組合は、金融決済機能を有するため、近時大量の公的資金(税金)が投入されるなど、公的性格を有した機関であり、その組織は、巨大かつ専門化されており、知識、経験、能力の差により、一般消費者及び融資債務者に対して圧倒的に優位な立場を保っている事業体である。特に、融資債務者は信用組合に負債を負っているという大きな負い目があるため、信用組合に信頼を寄せ、その指示に従い、依存して取引を行っていかざるを得ない状況にある。そうすると、信用組合は、その業務遂行に際し自らの利益のみを追求するのではなく、一般消費者及び融資債務者が自らの自由な意思に基づいて信用組合と対等な取引が行えるよう、取引についてその意味を説明し、消費者らに理解させる信義則上の義務がある。
被控訴人も、地域金融機関として公共的な使命を担っており、自ら関与する取引については公正な取引がされるよう行為することが取引関係者から期待される立場にある。しかも、本件は、金融事業者(信用組合)たる被控訴人が、従来金融取引関係にあった淀化成(融資債務者)の代表者であるCを通じて、その実弟で、同社の役員でもある控訴人らに対し、被控訴人が実質的に支配・経営するコマ開発のゴルフ会員権を購入するよう勧誘し、被控訴人を通じて購入させ、購入資金も被控訴人が控訴人らに融資したという事案である。
したがって、被控訴人は、Cに対し本件会員権の購入を勧誘し、控訴人らに本件会員権購入をさせる際、コマ開発が陥っている前記財務状況及び3年後の退会時に預託金が返還されない可能性があるというリスクについて、控訴人らに説明すべき条理上又は信義則上の義務があった。
それにもかかわらず、被控訴人は、上記勧誘の際、C及び控訴人らにコマ開発の財務状況について何らの説明も行わず(それどころか、本件会員権の購入時及び本件融資時において、被控訴人の担当職員である平野支店長Bは、控訴人らに面談した事実すらない。)、何も知らない控訴人らに本件会員権を購入させたことにより、上記説明義務に違反したものである。
【被控訴人の主張】
ア ゴルフ場経営会社の多くは、債務超過の状況にありながらも日々の営業収益によりキャッシュフローを維持し、営業を継続しているものであり、債務超過であることが破綻を意味するものではない。したがって、ゴルフ場経営会社が多額の債務超過に陥っているとしても、そのことをもってゴルフ場経営会社の破綻を具体的に予見することは不可能であり、ゴルフ場経営会社の破綻によるゴルフ会員権取得者の損害の発生を予見することもできない。
実際、コマ開発は、平成3~4年度(第20期)及び平成4~5年度(第21期)に営業利益を上げており、平成5年ころは、KOMAカントリークラブ9ホール増設及びこれに伴う新規会員の加入により営業利益の増大も見込まれる状況にあり、具体的な破綻を予見できるような状況にはなかった。コマ開発が実際に破綻して民事再生手続開始の申立てをしたのは、その後7年以上も経過した平成13年4月であり、しかも、それは、支援を継続してきた被控訴人の破綻の結果である。平成5年当時に金融機関が破綻することなど誰にも想像できない状況であり(平成9年に北海道拓殖銀行が破綻したのが、我が国における初めての大規模金融機関の破綻である。)、被控訴人の破綻により支援を受けることができずにコマ開発が破綻することなど、到底予見できるような状況にはなかった。
イ KOMAカントリークラブ9ホール増設記念会員募集が行われた平成5年当時、ゴルフ会員権募集、販売においては、ゴルフ場施設のグレード、会員の構成、会員としての優先的施設利用権の価値や会員としてのステイタス等が重視されていたのであり、ゴルフ場経営会社の財務状況について特段の注意が払われることはなかった。したがって、本件会員権募集当時、コマ開発の財務状況は、本件会員権を購入しようとする者にとって、情報としての重要性を欠くものであった。
ウ 株式会社の貸借対照表は、公告が義務づけられており(平成13年法律第128号による改正前の商法283条4項)、ゴルフ場経営会社と特段の関係のない会員権業者であっても、その貸借対照表の内容、ひいては大幅な債務超過にあるか否か、多額の当期末処理損失を計上しているか否かを知っているか、あるいは、容易に知り得る状況にある。この点において、被控訴人の理事らが、コマ開発の財務状況について知っていたか、あるいは、知り得た内容と大差はないから、被控訴人理事らのみが、コマ開発の財務状況についての説明義務を負う理由はない。
エ 金融機関の説明義務については、近時、変額保険やワラント取引について議論され、金融機関の説明義務違反を理由に顧客に対する損害賠償義務を肯定する裁判例もあらわれている。これらは、変額保険やワラント取引における取引内容(契約条件)自体に内在する特殊性、複雑さのために、勧誘者であり取引内容を熟知する金融機関側において、十分な説明を行わなければ、勧誘を受ける一般顧客がその取引内容(契約条件)を容易に理解できず、取引の危険性を判断できずに損害を被る事態となることが予想されるから、金融機関側に取引内容(契約条件)についての説明義務を、民法709条の解釈としての注意義務の一態様として認めるものと解される。これに対し、ゴルフ会員権取引におけるゴルフ場経営会社の財務状況(破綻する抽象的な可能性の有無)は、一般顧客側において、特段の専門知識を要することなく認識し、ゴルフ会員権購入の是非を判断することが可能であって、そのような事項について、勧誘する側においてその財務状況を説明して勧誘される側の損害の発生を回避すべき義務を認めるべきではない。
(3)  法人である被控訴人の不法行為責任
【控訴人らの主張】
信用組合である被控訴人が取引先に対し、被控訴人が実質的に経営支配する会社のゴルフ会員権の購入を勧誘すること自体は、「中小企業等協同組合法」や「協同組合による金融事業に関する法律」が予定する信用組合の事業ではない。しかし、被控訴人による本件会員権募集は、コマ開発と被控訴人の関係自体から外形的に被控訴人の不法行為と見るに十分であり、本件会員権募集と本件融資は不可分一体であることからも、法人である被控訴人が不法行為責任を負う。
【被控訴人の主張】
法人の目的の範囲外の行為であれば、法人は不法行為責任を負わない。控訴人らが不法行為と主張する被控訴人の理事らの行為は、被控訴人の職務上の行為ではないから、何らかの行為があったとしても、それを原因として被控訴人が責任を負う余地はない。
(4)  控訴人らの損害
【控訴人らの主張】
平成14年2月6日に認可決定が確定したコマ開発の民事再生計画によると、KOMAカントリークラブを退会せずプレー権を保持しつつ10年後に預託金返還請求する会員は20%の弁済を受け得るにすぎない。
これにより控訴人らは、それぞれ2400万円の損害を受けた。
【被控訴人の主張】
控訴人らは、現在もKOMAカントリークラブの会員権を有しており、その施設利用権を有しているのであって、返還されないこととなった預託金の金額全額が損害となるものではない。
(5)  因果関係
【控訴人らの主張】
ア (主位的請求原因)
被控訴人の理事らの職務行為である本件会員権の募集行為と控訴人らの被った損害との間に因果関係がある。
イ (予備的請求原因)
被控訴人(被控訴人理事ら)が、控訴人らに本件会員権購入を勧誘する際、コマ開発の財務状況の説明を行わなかったことと控訴人らの被った損害との間に因果関係がある。
【被控訴人の主張】
ア 控訴人らは、平成9年9月の預託金返還期限に退会しなかったため、預託金の返還を受けられなかったものであり、被控訴人の理事らの行為と控訴人ら主張の損害との間には相当因果関係がない。
イ 前記のとおり、平成5年当時、ゴルフ会員権募集、販売においては、ゴルフ場経営会社の財務状況について特段の注意が払われることはなかった。実際、控訴人らは、被控訴人理事あるいは職員らに対し、本件会員権購入(KOMAカントリークラブ入会)の窓口となったCを通してすら、コマ開発の財務状況を説明するよう求めたことはない。このように、控訴人らは、本件会員権を購入するか否かを検討するにあたり、コマ開発の財務状況がどのようなものであるかには関心はなく、コマ開発の貸借対照表等の開示を受けて財務状況を知ったとしても、本件会員権を購入したであろうと考えられる。そうすると、被控訴人(被控訴人理事ら)が、控訴人らに対して、コマ開発の財務状況の説明を行わなかったことと控訴人ら主張の損害との間に因果関係はない。
(6)  過失相殺
【被控訴人の主張】
被控訴人がコマ開発の大口債権者であることは周知のとおりであり、被控訴人がコマ開発の貸借対照表を保有していることは、控訴人らあるいはCにおいても容易に分かるところであり、これが開示されることを本件会員権購入の前提条件にしていれば、控訴人ら主張の損害の発生を容易に回避できたはずである。
また、控訴人らが平成9年9月の預託金返還期限到来時に退会の申入れをし、預託金の返還請求をしていれば、その後のコマ開発の民事再生手続開始申立てによる損害の発生を回避することができたものである。
したがって、仮に、被控訴人に違法な勧誘行為ないし説明義務違反による不法行為責任が認められるとしても、控訴人らにも重大な過失があり、相当程度高率の過失相殺が認められるべきである。
【控訴人らの主張】
被控訴人(被控訴人理事ら)は、控訴人らに比して、コマ開発の財務状況を知るに圧倒的優越的地位にあり、両者の間には看過しがたいほどの大きな情報の格差が存する。このような場合に安易に過失相殺を行うことは、衡平の原則に反し、また、社会的正義を没却するに等しいから、断じて許されるべきではない。
第3  当裁判所の判断
1  事実関係
前記第2、2の認定事実(引用にかかる原判決認定事実)、証拠(甲9~25、甲27の1・2、甲28、29、31、34、36、乙2、証人C、証人B〈人証はいずれも原審におけるもの。以下、同じ。〉)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1)  コマ開発は、昭和47年12月に設立されたゴルフ場経営等を目的とする株式会社であり、資本的には、被控訴人の関連会社(aサービス株式会社、b株式会社)を株主にしてはいたものの、被控訴人が直接株主にはならず、被控訴人の役員の持株もごく少数であったが、人事については、被控訴人会長を務めていたD(D1)が、昭和53年7月から平成9年5月まで代表取締役、平成9年10月以降平成13年2月まで取締役を務め、被控訴人理事長、副会長を歴任したE(E1。Dの子)が、平成3年10月以降平成12年3月まで取締役を務め、被控訴人専務理事、副理事長を歴任したF(F1)及びG(G1)が、いずれも平成5年10月以降平成12年3月まで取締役を務めるなど、被控訴人が実質的に関連会社として支配していた。
(2)  KOMAカントリークラブは、被控訴人の会長であったDが、在日韓国人が国籍差別されずに気兼ねなくプレイできるゴルフ場として計画し開設したものであり、昭和55年に18ホールでオープンしたが、昭和60年ころから平成6年ころにかけて9ホール増設事業を行った。
コマ開発は、この業務を約85億円の予算で盛宏に委託した。盛宏は、土地取得のためコマ開発の土地を担保に旧長銀から総額で106億円もの用地取得資金の融資を受けながら、土地取得に難航したため、上記融資は不良債権化した。旧長銀は、コマ開発が被控訴人の実質関連会社であることから、被控訴人にも上記融資を肩代わりするよう要求したが、結局、平成3年3月、物上保証していたコマ開発が、上記融資を肩代わりすることになった。
また、9ホール増設事業は、土地買収に106億円を要し、造成工事、クラブハウス建設費、金利なども含めると約200億円を要した。コマ開発の旧長銀に対する債務は、平成5年6月ころには、被控訴人ないしその関連会社がコマ開発に融資して返済されたが、結局、コマ開発は、これらの多額の有利子負債をかかえることになった。
ちなみに、コマ開発の借入金の額(長期借入金、短期借入金及び施設利用預り金〈預託金に係る債務〉の合計額)は、平成2年7月末(第18期)には約57億円であったが、平成3年7月末(第19期)には約176億円、平成4年7月末(第20期)には約165億円、平成5年7月末(第21期)には約178億円、同年12月末には約211億円、平成6年7月末(第22期)には約255億円、平成7年7月末(第23期)には約261億円、平成8年7月末(第24期)には約270億円、平成9年7月末(第25期)には約272億円となった。上記借入金の増大に伴って支払利息割引料も増え、平成2年7月末には約462万円であったが、平成3年7月末には約4億4000万円となり、以後も多額の利息等を支払っていた。また、預託金を除いた借入金の返済資金を被控訴人が融資したことから、平成4年10月ころから、被控訴人の融資の占める割合が増加し、平成5年12月末当時の被控訴人からの借入金は約83億円に達していた。
(3)  コマ開発は、これらの負債を軽減するため、平成5年8月ころまでに9ホール増設記念会員募集を計画した。
平成5年8月か9月における被控訴人の役員会で、F、G、Eをはじめとする被控訴人の理事らと、コマ開発の専務取締役H及び総務部長Iが出席して、F、Eから、KOMAカントリークラブの9ホール増設記念として1口3000万円で400名の新規会員を募集することになり、募集について、被控訴人の各支店が取引先などに依頼して会員になってもらうよう働きかけるなどして支援するという方針が説明された。
その後、平成5年10月の被控訴人の部店長会議において、各支店の支店長に対し、9ホール増設記念会員募集が告げられた。この会議において、被控訴人会長Dは、支店長らに会員募集に協力するよう要請し、被控訴人の当時専務理事のFが、募集活動は部長、支店長、外交担当職員が主力となって行うこと、預託金は3年すれば返ってくること、金利の安い会員権用ローンもあることを説明するなどして、3か月間で400名を目標に会員の募集をするよう指示をした。さらに、Iから会員募集への協力要請があり、被控訴人の業務部長のJが約1週間の期限を定め、新規会員として勧誘する人物のリストを送付するよう指示した。
平成5年11月ころから、預託金3000万円、預託金据置期間3年、入会登録料150万円、被控訴人が低金利で会員権ローンを行うこととして、会員権募集が開始され、同年12月までに約258名の応募があり、その後平成6年10月になって、ようやく目標の400名を超えた。
さらに、平成6年9月ころ、被控訴人は、200名の追加募集を行うこととし、募集活動が行われたが、最終的に100名程度が応募するにとどまった。
被控訴人は、コマ開発の9ホール増設記念会員募集に際し、応募者(約500名)が納付する入会金及び入会手数料の合計約158億円のうち約75%に当たる約118億円を融資し、上記融資においては、被控訴人の戦略商品である興銀長プラとよばれる低金利の融資よりもさらに低利である最優遇の特別ローンが組まれていた。
(4)  コマ開発は、9ホール増設記念会員募集に応じて本件会員権を購入した会員からの預託金で前記借入金の返済を行い、その結果、上記借入金は、平成5年12月末には、被控訴人に対する約83億円だけとなり、平成6年7月末(第22期)には約83億円、同年9月の増設9ホールオープン後の平成7年7月末(第23期)には約64億円、平成8年1月末には約67億円となった。
平成7年8月、木津信用組合が破綻したことから、金融に対する不安が広まった。そこで、コマ開発は、平成8年2月、被控訴人の預貸率(貸付金総合計の預金総量に対する割合)を抑制するために、当時、被控訴人の理事長であったEが非常勤理事を務める株式会社新韓銀行(コマ開発同様、Eの父Dが中心となって、昭和57年7月に韓国で設立した。以下「新韓銀行」という。)から70億円を借り入れて、コマ開発の被控訴人からの借入金を返済した。その際、コマ開発の新韓銀行に対する借入金債務の担保として、コマ開発が所有するKOMAカントリークラブのクラブハウス及びゴルフ場敷地に、順位1番の極度額84億円の根抵当権が設定された。その後平成9年7月末(第25期)まで、コマ開発の借入金は、新韓銀行からの70億円のままであった。
(5)  KOMAカントリークラブ増設9ホールオープンより3年後の平成9年9月に、9ホール増設記念会員の預託金返還期限が到来した。その前(同年6月ころ)から、被控訴人の各支店等を窓口として、退会希望(コマ開発に対する預託金返還請求)が寄せられるようになった。被控訴人は、退会希望者を慰留するため、会員権用ローンの金利を0.5%下げるなどしたものの、50名が退会することになり、コマ開発に対し、預託金返還のための資金15億円を融資し、その後も、平成12年9月までに、50回以上にわたり総額約60億円の融資をした。この融資は、担保余剰のない前記クラブハウス及びゴルフ場敷地に後順位の根抵当権を設定する等、事実上無担保に近い形で行われた。平成12年12月に被控訴人の経営が破綻した後、上記融資により、被控訴人の元理事ら(D、F及びG)が背任罪に問われ、有罪となった(大阪地方裁判所平成14年(わ)第625号、第1058号、第2389号)。
(6)  コマ開発の財務状況は、次のとおりである(財務状況を示す各数字は有形固定資産について必要な減価償却をした修正後のものである。)。
ア 営業利益は、第11期(昭和57年8月~58年7月)以降マイナスで、第17期(昭和63年8月~平成元年7月)約144万円、第18期(平成元年8月~平成2年7月)マイナス約2330万円、第19期(平成2年8月~平成3年7月)マイナス約9946万円、第20期(平成3年8月~平成4年7月)約1億0269万円、第21期(平成4年8月~平成5年7月)約1億4298万円、第22期(平成5年8月~平成6年7月)マイナス約1億2728万円、第23期(平成6年8月~平成7年7月)マイナス約1億0814万円である。
イ 支払利息割引料は、第11期の約5650万円以降、第17期に約1998万円にまで減少し、第18期には約462万円になったが、平成3年3月にコマ開発が盛宏の融資を肩代わりして以後大きく増加し、第19期約4億4315万円、第20期約8億8525万円、第21期約8億2776万円、第22期約5億7288万円、第23期約3億4474万円である。
ウ 経常利益は、第11期以降マイナスで、第17期約1817万円、第18期約3504万円、第19期マイナス約4億3488万円、第20期マイナス約6億4688万円、第21期マイナス約5億3272万円、第22期マイナス約1億5575万円、第23期マイナス約3億7147万円である。
エ その結果、次期繰越損失は、第11期の約13億5361万円以降、第17期約18億1399万円、第18期約18億0392万円、第19期約23億8970万円、第20期約30億7001万円、第21期約36億0273万円、第22期約39億2418万円、第23期約43億9009万円となり、昭和57~58年度(第11期)から平成6~7年度(第23期)まで債務超過の状態が続いた。
オ 被控訴人が控訴人らに対し本件会員権購入の勧誘をした平成4~5年度(第21期)の平成5年7月末の時点で、33億円超もの債務超過に陥り、平成2~3年度(第19期)から平成4~5年度(第21期)にかけて毎年度資本金の額(3億円)を上回る5億円以上の赤字を計上し、その後も、3億円から4億円の赤字を計上し続け、支払利息割引料が、平成2~3年度(第19期)から平成6~7年度(第23期)に至るまで約3億4000万円から約8億8000万円の間を推移して資本金の額(3億円)を上回り続けた。
カ 昭和57~58年度(第11期)から平成元~2年度(第18期)まで預託金返還債務(施設利用預り金約53億ないし54億円)だけで資産の部の合計額(約42億円から約52億円の間を推移)を上回り、平成2~3年度(第19期)以降平成4~5年度(第21期)まで資産の部の合計額(約142億円から約157億円の間を推移)の7割を超える多額の長期借入金(約110億円から約123億円の間を推移)がある。
(7)  KOMAカントリークラブのゴルフ場利用者は、昭和60年度が4万7210人、昭和61年度が4万4735人、昭和62年度が4万8019人、昭和63年度が5万0405人、平成元年度が4万8367人、平成2年度が5万1971人、平成3年度が5万4302人、平成4年度が5万4260人、平成5年度が4万6140人、平成6年度が4万5816人、平成7年度が4万1795人、平成8年度が4万1557人、平成9年度が4万2617人、平成10年度が4万8107人であり、平成3年度をピークに平成8年度まで減少し続けており、9ホール増設による利用者の増加はなかった(上記各年度の集計対象期間は、全国集計と同じ期間を対象としており、コマ開発の決算対象期間とは異なっている。)。
KOMAカントリークラブのゴルフ会員権の相場は、昭和62年当時1200万円、昭和63年当時2600万円、平成元年当時8000万円、平成2年当時5700万円、平成3年当時2480万円と推移し、平成4年以降は名義書換が停止された。
(8)  淀化成は、昭和58年ころ、被控訴人の平野支店と取引を開始し、平成5年には、被控訴人から約12億円の融資を受けていた。
被控訴人の平野支店長であるBは、平成5年11月ころ、KOMAカントリークラブの会員権(本件会員権)募集につき、淀化成の代表者で、控訴人らの実兄であるCを勧誘し、控訴人らは、Cから依頼されて購入に応じることにした。
被控訴人は、平成6年1月10日、控訴人らに対し、本件会員権購入資金3000万円をそれぞれ貸し付け(本件融資)、同日、控訴人らは、KOMAカントリークラブに入会し、コマ開発に対し、本件会員権の預託金として3000万円を差し入れ、被控訴人に対し、本件融資の貸金担保として本件会員権を差し入れた。
その後、本件紛争が発生するまで、淀化成は、被控訴人に対し、上記貸金の利息を支払っていた。
(9)  平成14年2月6日に認可決定が確定したコマ開発の民事再生計画によると、同年8月6日までの申出により、KOMAカントリークラブを即時退会して預託金返還請求をする会員は預託金額の5%の弁済を受け、プレー権を保持しつつ10年後に預託金返還請求する会員は20%の弁済を受けることになる。
控訴人らは、KOMAカントリークラブを退会していない。
2  争点(1)(違法な勧誘行為〈主位的請求の責任原因〉)について
(1)  前記1の認定事実によれば、平成3年3月の106億円の債務負担がコマ開発にとって大きな負担になり、本件会員権募集当時、コマ開発の財務状況は芳しくはなかったといえ、コマ開発が被控訴人の実質関連会社といえる存在であり、また、本件会員権購入の勧誘が行われた平成5年11月ころには4名が被控訴人の理事とコマ開発の役員を兼任していたのであるから、被控訴人の理事らは、上記のようなコマ開発の財務状況について認識し、又は認識し得たものといえる。
(2)  しかし、ゴルフクラブの会員から集める預託金は無利息であるから、有利子負債を無利子負債に切り替えることにより、多大な利息負担を減らし経営再建を図るという経営判断が不合理であるとはいえない。実際、前記1(6)イのとおり支払利息割引料は、9ホール増設記念会員募集による預託金により、第21期(平成5年7月末)には約8億2776万円だったのが、第22期(平成6年7月末)には約5億7288万円、第23期(平成7年7月末)には約3億4474万円となり、利息負担が減少していることが認められる。
また、証拠(甲10、17、18)によれば、KOMAカントリークラブ9ホール増設計画は、好況でゴルフブームであった時期に持ち上がり、従来からの高いサービス、「在日韓国人のためのゴルフ場」というKOMAカントリークラブの地位もあり、土曜日、日曜日にはキャンセル待ちの利用者が出るなどのにぎわいであった実績を受けて行われたことが認められる。そうすると、本件会員権の購入勧誘当時、既にバブルが崩壊し、好況時と同じ程度の利用者数とまではいえないとしても、ある程度の利用者数の増加、それに伴う収益の改善を見込むことが不合理な判断であったとまではいえない。実際、前記1(6)アのとおり、本件会員権の購入勧誘が行われた平成5年11月の直前である第21期(平成5年7月末)には営業利益が約1億4298万円であり、営業利益のマイナス状況を脱却していた。
したがって、本件会員権の購入勧誘当時、9ホール増設による利用者、収益の増加を見込み、会員権による預託金という無利子負債も利用しつつ、経営再建を図ろうとした経営判断が不合理であったとまではいえない。
(3)  前記のとおり、コマ開発は、被控訴人の実質関連会社であることから、本件会員権募集以前より被控訴人からの融資を受けていた上、本件会員権募集が被控訴人の全面的支援の下で行われたことを考慮すると、本件会員権募集以後も被控訴人による資金援助が見込まれ、本件会員権募集にかかる預託金が直ちに返還不能となるものであったとはいえない。実際、前記1(5)のとおり、平成9年に預託金返還期限が到来した際、被控訴人は、退会希望者に対する慰留に努めるとともに、退会者に返還するための預託金の原資をコマ開発に融資した。そして、預託金返還期限が到来した場合、ある程度の退会者(預託金返還請求者)があることは当然であるものの、全員が退会するという事態は通常考えられないから、9ホール増設記念会員募集で集めた預託金全額について返還請求がされることがないとの前提で事業を遂行することが、直ちに不合理であるとはいえない。
また、被控訴人の元理事ら(D、F及びG)に対する背任等被告事件(大阪地方裁判所平成14年(わ)第625号、第1058号、第2389号)においては、預託金返還期限到来時(平成9年)のコマ開発の財務状況に照らして、平成9年9月以降のコマ開発に対する貸付が不良貸付であることを理由に、被控訴人の元理事らが背任罪に問われたものであって、それ以前である平成5年11月からの9ホール増設記念会員(本件会員権)募集時に行われたコマ開発に対する支援について刑事責任を問われたものではない。そして、コマ開発への貸付けが主たる原因で被控訴人が倒産に至ったと認めるに足りる証拠はなく、被控訴人が倒産しなければ、コマ開発への融資等の支援も続行し、預託金返還が可能であったとする余地もある。
さらに、一般に、ゴルフ場経営会社は、日々の営業利益によりキャッシュフローを維持し、その営業を継続しているものと考えられるところ、前記1(6)アのとおり、コマ開発は、第20期(平成3年8月~平成4年7月)には約1億0269万円、第21期(平成4年8月~平成5年7月)には約1億4298万円の営業利益を上げていたこと、前記のとおり、コマ開発が民事再生法の適用を申請して経営破綻したのは平成13年4月であり、本件会員権募集から7年以上たっていることも考慮すれば、本件会員権募集時において、コマ開発が直ちに破綻するような状況にはなく、また、被控訴人の理事らにもコマ開発が具体的に破綻するであろうという認識まではなかったといえ、コマ開発の経営再建を図るべく本件会員権の募集を行い、KOMAカントリークラブの営業支援を続けたことが不合理とまではいえない。
(4)  以上によれば、平成5年11月からの9ホール増設記念における本件会員権募集の時点で、コマ開発が既に実質的に破綻していたとまでは認められず、ましてや、同時点で、被控訴人の理事らが、控訴人ら応募者に損害を与えることを認容していたとはいえない。また、同時点で、被控訴人の理事らが、将来、預託金返還期限が到来しても預託金を返還しないとか、返還できなくなる(返還不能となる)とかと認識していたとは認めるに足りず、むしろ、在日韓国人のために創設されたゴルフ場・ゴルフ倶楽部としてのKOMAカントリークラブの性質からして、被控訴人が無理な融資をしてでも、その預託金返還をしようと考えていたとみるのが自然である。したがって、控訴人らの主位的請求の責任原因のうち、故意による不法行為は成り立たない。
また、控訴人らは、過失による不法行為も主張しているが、以上の事情にかんがみると、本件会員権募集当時、コマ開発の財務状況が悪化していることを認識していたというだけで、被控訴人の理事らが、コマ開発の破綻等により預託金が返還不能となることまでを予見していたとはいい難い。したがって、控訴人らの主位的請求の責任原因のうち、過失による不法行為も成り立たない。
3  争点(2)(説明義務違反〈予備的請求の責任原因〉)について
前記第2、2の認定事実(引用にかかる原判決認定事実)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、金融事業者(信用組合)として、公共的な使命を担っており、自ら関与する取引については公正な取引がされるよう行為することが、取引関係者から期待される立場にあるということができる。しかも、被控訴人は、取引関係者と比べて、その組織、知識、経験及び能力において、格段に優位な立場に立っているのに対し、取引関係者、特に融資債務者は、被控訴人に債務を負っていることから、被控訴人を信頼し、その指示に従い、依存して取引を行っていかざるを得ない立場にあるものと考えられる。そうすると、被控訴人は、取引の内容や取引を巡る事情いかんによっては、条理上又は信義則上、その業務遂行に際し、自らの利益のみを追求するのではなく、融資債務者等の取引関係者が自らの自由な意思に基づいて、被控訴人と対等な取引が行えるよう、取引の内容等について説明し、取引関係者らに理解させる義務を負う場合もあり得る。
そして、前記1の認定事実によれば、〈1〉本件会員権の募集、販売は、被控訴人が、控訴人において実質的に支配経営しているコマ開発の経営再建を図るべく、主として被控訴人の融資債務者を対象にされたものであり、本件は、被控訴人が、従来、被控訴人と金融取引関係にあった淀化成(融資債務者)の代表者であるCを通じて、その実弟で、同社の役員でもある控訴人らに対し、コマ開発のゴルフ会員権(本件会員権)を購入するよう勧誘し、被控訴人を通じて購入させ、購入資金も被控訴人が控訴人らに融資した事案であることが認められ、〈2〉コマ開発は、慢性的な債務超過の状態にあり、控訴人らに対する本件会員権購入の勧誘が行われた平成5年11月ないし平成6年1月ころには、コマ開発の債権者等において、債務超過を破産原因とする破産申立てが可能な財務状況であったこと、〈3〉コマ開発が、本件会員権の募集、販売により、控訴人らを含む本件会員権の購入者から多額の預託金の預託を受けることによって、前記有利子負債の減少を図ることができた反面、3年間という短期の預託金返還期限(据置期間)が経過すれば、多額の預託金返還請求がされることが予測される状況であったことは否定できない。
以上のことを併せ考慮すると、本件において、被控訴人の理事らは、担当職員をして、Cを通じて控訴人らに対し、本件会員権の購入を勧誘し、本件融資をして本件会員権を購入をさせる際、コマ開発が陥っている上記財務状況及び3年後に退会する場合に預託金が返還されない可能性があることについて、控訴人らに説明すべき条理上又は信義則上の義務があったというべきである。
ところが、証拠(甲28、31、証人C、証人B)によれば、被控訴人の理事らは、担当職員(被控訴人の平野支店長)であるBに、上記勧誘の際、C及び控訴人らにコマ開発の財務状況について何らの説明もさせておらず、結局、控訴人らは、コマ開発の財務状況について何も知らないまま、被控訴人から本件融資を受け、コマ開発から本件会員権を購入したことが認められる。
したがって、被控訴人の理事らに、上記説明義務違反があったといわざるを得ない。
4  争点(3)(被控訴人の不法行為責任)について
信用組合である被控訴人が融資債務者等の取引先に対し、被控訴人が実質的に経営支配するゴルフ場経営会社のゴルフ会員権の購入を勧誘すること自体は、関係法令(中小企業等協同組合法、協同組合による金融事業に関する法律)が予定する信用組合の事業ではない。しかしながら、前記認定、説示と弁論の全趣旨によれば、〈1〉被控訴人は、組合員に対する資金の貸付け及び組合員以外の者に対する法令の定めるところによる資金の貸付け等を事業目的とする金融事業者であること、〈2〉被控訴人とコマ開発との間に上記のような関係があること、〈3〉控訴人らが被控訴人の融資債務者である淀化成の役員であること、〈4〉控訴人らに対する本件会員権購入の勧誘と本件融資は、不可分一体のものであることが認められる。これらのことからすると、控訴人らに対する本件会員権購入の勧誘は、外形的に見て、被控訴人の事業の範囲であり、被控訴人の理事らの職務行為に属するものと認めるのが相当である。
したがって、被控訴人は、控訴人らに対し、前記説明義務違反による不法行為(民法709条、44条1項)に基づく損害賠償責任を負う。
5  争点(4)(控訴人らの損害)について
前記1の認定事実によれば、コマ開発の経営が破綻し、平成14年2月6日に認可決定が確定したコマ開発の民事再生計画によって、本件会員権の預託金3000万円の80%相当額2400万円については返還を受けることができなくなったことが認められる。これによって、控訴人らは、それぞれ2400万円の損害を受けたものと認められる。
なお、前記のとおり、控訴人らが未だKOMAカントリークラブを退会しておらず、その時期を確定できないことにかんがみると、損害額の算定に必要となる退会時から不法行為時又は訴状送達時までの中間利息控除ができないので、便宜、遅延損害金の起算点を控訴人らがそれぞれ退会した日の翌日とすることによって調整することとする。
被控訴人は、控訴人らが現在も本件会員権を有しており、その施設利用権を有しているから、返還されないこととなった預託金の金額全額が損害となるものではないと主張する。しかし、控訴人らは、本来、それぞれKOMAカントリークラブの施設利用権のほかに、3000万円の預託金返還請求権を有していたところ、それが上記民事再生計画によって、その20%相当額600万円に減額されたのであるから、その差額をもって損害とするのが相当である。
したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。
6  争点(5)(因果関係)について
以上の認定判断によれば、被控訴人理事らが担当職員であるBに、Cないし控訴人らに対し、本件会員権の購入勧誘時に、コマ開発の前記財務状況及び3年後に退会する場合に預託金が返還されない可能性があることについて説明させていれば、控訴人らは本件会員権を購入しておらず、前記損害を被らなかったものと認められる。
ところで、前記のとおり、控訴人らは、預託金返還期限到来時に退会していないが、本件会員権には施設利用権(プレイ権)も含まれており、預託金返還期限が到来しても、退会するかしないかは控訴人らの自由になし得るところであるから、預託金返還期限到来時に退会していないことをもって、被控訴人の理事らの説明義務違反と控訴人らの前記損害との間に相当因果関係がないとはいえない。
したがって、被控訴人の上記の点を理由に被控訴人の理事らの説明義務違反と控訴人ら主張の損害との因果関係を否定する主張は採用することができない。
また、被控訴人は、平成5年当時、一般に、ゴルフ会員権募集、販売においては、ゴルフ場経営会社の財務状況について特段の注意が払われることはなかったことや、実際にも、控訴人らには、コマ開発の財務状況について関心がなく、控訴人ら側から被控訴人側に対し、これを説明するよう求めたことがないことをもって、上記因果関係が否定される旨主張している。
しかし、控訴人らが、当時、コマ開発の前記財務状況及び3年後に退会する場合に預託金が返還されない可能性があることを説明されていたら、本件会員権を購入しなかった蓋然性があることは否定できないから、被控訴人の上記主張は採用することができない。
7  争点(6)(過失相殺)について
前記のとおり、コマ開発は株式会社であるところ、株式会社の貸借対照表は公告が義務づけられている(平成13年法律第128号による改正前の商法283条4項)上、前記1の認定事実及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人がコマ開発を実質的に支配経営していることは、被控訴人の融資債務者等の取引関係者に広く知られていたといえるから、被控訴人がコマ開発の貸借対照表を保有していることは、控訴人らあるいはCにおいても関知し得るところであり、貸借対照表が開示されることを本件会員権購入の前提条件にしていれば、それに基づいて、被控訴人の担当職員Bに質問する等して、コマ開発の前記財務状況を把握した上で、本件会員権購入の是非について判断することもできたと考えられる。しかし、本件全証拠によっても、Cないし控訴人らが、本件会員権の購入に際し、コマ開発の財務状況を把握しようとした形跡は全くない。
また、前記のとおり、平成9年9月の預託金返還期限到来時には、コマ開発の財務状況は本件会員権購入時よりも更に悪化していたところ、Cないし控訴人らは、本件会員権購入後も相変わらずコマ開発の財務状況に関心を持たないままであり、結局、同期限到来時には退会しなかった。控訴人らが、本件会員権購入後上記預託金返還期限到来までの間に、コマ開発の貸借対照表を入手する等、その財務状況の把握に努め、上記返還期限到来時に、退会、預託金の返還請求をしていれば、その後のコマ開発の民事再生手続開始申立てによる損害の発生を回避することができたことも否定できない。
以上のことを併せ考慮すると、前記損害の発生について、控訴人らにも過失があるから、過失相殺の法理に照らすと、前記各損害のうち、控訴人らが被控訴人に対し賠償請求することができるのは、それぞれの5割相当額1200万円とするのが相当である。
なお、前記のとおり、遅延損害金の起算点は控訴人らがそれぞれ退会した日の翌日とするのが相当である。
8  結論
以上の次第で、控訴人らの主位的請求はいずれも理由がなく、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がなく、控訴人らの当審における予備的新請求は、被控訴人に対し、控訴人らそれぞれに1200万円及びこれに対する控訴人らがそれぞれKOMAカントリークラブを退会した日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の部分はいずれも理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 若林諒 裁判官 長井浩一 裁判官 中村心)

 

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