【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(144)平成17年12月20日 東京地裁 平16(ワ)14246号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(144)平成17年12月20日 東京地裁 平16(ワ)14246号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成17年12月20日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平16(ワ)14246号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2005WLJPCA12208001

要旨
◆焼肉レストランの店舗業務委託契約につき、原告が被告の債務不履行(情報提供義務違反、指導援助義務違反、営業店舗変更義務違反、契約更新義務違反)により生じた損害の賠償を求めた事案において、売上予測、収入予測、自社競合店の出店予定等の情報に関し、信義則上負う、客観的かつ的確な情報を提供すべき義務及びそれらにつき説明する義務に違反するとして、被告の損害賠償責任を肯定した事例

参照条文
民法1条2項
民法415条

裁判年月日  平成17年12月20日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平16(ワ)14246号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2005WLJPCA12208001

東京都小平市〈以下省略〉
原告 X
訴訟代理人弁護士 山田勝
同 茂木議智
さいたま市〈以下省略〉
被告 株式会社安楽亭
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 本多三郎

 

 

主文

1  被告は、原告に対し、209万6771円及びこれに対する平成16年7月14日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は、これを10分し、その6を原告の負担とし、その4を被告の負担とする。
4  この判決は、第1項及び第3項に限り、仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
被告は、原告に対し、609万3288円及びこれに対する平成16年7月14日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  訴訟の対象
フランチャイズ契約または店舗業務委託契約の債務不履行に基づく損害賠償請求
2  前提となる事実(争いがない。)
(1)  被告は、焼肉を中心に各種飲食店のチェーン経営及び飲食店に関するコンサルティング事業の展開等を目的としている会社である。
原告は、被告のもと社員であり、被告と店舗業務委託契約を締結して焼肉店を経営するため、被告を退職した。
(2)  原告は、平成10年4月、被告に入社し、被告が経営する焼肉レストランに勤務していたが、平成11年4月から、直営店の店長を務めた。
被告は、社員の独立開業を援助する店舗業務委託制度を設けており、原告は、平成13年1月、この制度を利用して独立開業を目指したいと考え、被告のこの制度を担当するFC暖簾部所属のB(以下、Bという。)と協議を始めた。
原告は、Bと協議した結果、この制度に応募することを決め、平成13年3月20日付けで被告を退職した。
原告は、前記制度を利用し、平成13年4月から、安楽亭東村山店の経営を始めた。
(3)  原告と被告は、平成13年3月30日付けで、店舗業務委託契約を締結し(以下、本件契約という。)、店舗業務委託契約書(新規)安楽亭東村山店(以下、本件契約書という。)を作成した。本件契約書には、契約期間は平成13年4月1日から平成16年3月31日までの3年間と記載されている。
ただし、この契約書の作成経過、法的内容については争いがあり、詳細は後記のとおりである。
(4)  平成13年9月中旬ころ、いわゆる狂牛病の発症が社会問題化し、牛肉を扱う各種外食産業が大打撃を受けた。
(5)  被告は、平成14年9月、原告が経営する安楽亭東村山店から直線距離で約1.2km(徒歩約15分)の距離の場所に安楽亭野口橋店を開店した。
(6)  原告と被告は、本件契約を更新しなかった。
3  中心的な争点
被告に原告が主張する債務不履行があるか。
4  原告の主張
(1)  被告には次のとおり債務不履行がある。
ア 契約締結時の情報提供義務違反
原告は被告との間で店舗業務委託契約(本件契約)を締結したが、これは実質的にはフランチャイズ契約であり、フランチャイザーは、加盟者になろうとする者に対し、適正にフランチャイズ契約を締結するかどうかの判断をさせるため、信義則上、情報提供義務を負い、その情報とは、具体的には売上げ予測、収入予測、自社競合店の出店予定等である。
ところが、被告は、原告に対し、売上げ予測については、売上実績に基づくロイヤリティシミュレーションしか情報を提供しなかった。また、収入予測については、人件費算出表しか情報を提供しなかった。さらに、自社競合店の出店予定については、被告担当者のBは、原告との間で本件契約を締結する前から、競合する野口橋店の出店予定があることを知りながら、原告から本件契約締結時に自社競合店の出店予定の有無を尋ねられた際、出店予定がないと答えた。
したがって、被告は、原告に対し、契約締結時に情報を提供する義務を怠った債務不履行がある。
イ 指導援助義務違反
フランチャイズ契約においては、加盟金及びロイヤリティの支払いと加盟店に対する各種の権利付与、指導援助が対価関係にあるから、被告は、原告に対し、東村山店の経営について指導援助をする義務を負う。
ところが、被告は、原告を援助をするどころか、意向を確認したり、救済措置も考慮しないで、東村山店からわずか約1kmの場所に直営店である野口橋店を開店させた。原告が経営していた東村山店はもともと設備が古いということもあり、野口橋店の出店により、さらに経営が窮地に陥った。
したがって、被告は、指導援助義務に違反した債務不履行がある。
ウ 営業店舗変更義務違反
原告は、被告との間で、当初東村山店で開業するものの、1年後には別店舗へ移動すること、つまり、東村山店での営業は1年間に限定することを特約として合意した。
しかし、被告は、1年が経過しても、具体的な移動の提案をせず、ようやく、原告の催促を受け、平成14年5月に至り、若葉店への移動を提案し、同年9月には、ロイヤリティ等の契約条件も提示した。原告は、必ずしも納得できる内容でなかったが、東村山店よりはよいと考え、これに同意した。ところが、被告は、突然若葉店のロイヤリティを70万円の定額にする旨契約条件の変更を持ち出したため、原告は、これに応じることができなかった。
したがって、被告は、営業店舗を変更する義務に違反した債務不履行がある。
エ 契約更新義務違反
フランチャイズ契約はそもそも継続的な契約であり、加盟店は、投下資本を回収し、利益を上げることができる期間等を考慮して契約を締結するから、契約期間が3年だとしても、通常契約を更新することが前提となる。原告も、3年後に資金に余裕ができれば正式にフランチャイズ契約に移行し、それだけの余裕がなければ契約更新をすればよいと考えていたから、当然本件契約が更新されると思っていた。本件契約書24条も、被告が更新義務を負っていることを定めている。
ところが、被告は、原告に対し、平成16年1月、正当な理由もなく、書面による通知等もないまま、更新を拒絶した。
したがって、被告は、契約を更新する義務に違反している。
オ ロイヤリティ改定義務違反
原告は、被告との間で、本件契約締結にあたり、売上げの減少が外的な要因である場合には、ロイヤリティ基準表に従い、ロイヤリティを改定する旨の合意をした。本件契約書6条2項もその旨規定している。したがって、被告は、外的な要因により売上げが減少した場合には、ロイヤリティ基準表に従い、ロイヤリティを改定すべき義務を負っていた。
ところが、被告は、平成13年10月以降、狂牛病問題、野口橋店出店等の外的な要因により東村山店の売上げが減少し、原告から、再三にわたってロイヤリティの見直しを求められたにもかかわらず、協議すら実施せず、平成14年1月まで契約当初の65万円、同年12月まで基準値の約2倍にあたる12%のロイヤリティの支払を求めた。
したがって、被告は、ロイヤリティを改定する義務に違反している。
カ なお、仮に本件契約がフランチャイズ契約でなく、業務委託契約であったとしても、被告は前記の各義務を負っていることに変わりない。
(2)  原告が受けた損害
ア 情報提供義務違反、指導援助義務違反、営業店舗変更義務違反、契約更新義務違反により生じた損害
原告は、被告の説明を信じ、十分な情報提供がないまま本件契約を締結し、加盟金を支払ったが、投下資本の回収ができないまま閉店に至った。被告が十分な情報を提供していれば、その損失を避けることができたはずであるから、少なくとも加盟金相当額209万6771円は損害にあたるというべきである。
また、指導援助義務、営業店舗変更義務、契約更新義務は、いずれも本件契約の重要不可欠な要素であり、加盟金の支払は、これらの義務履行の対価であって、これらの義務が履行されないのであれば、本件契約を締結することはないし、加盟金を支払うことはありえない。したがって、被告がこれらの義務を履行しないことにより、原告は加盟金相当額の損害を被ったというべきである。
イ ロイヤリティ改定義務違反により生じた損害
狂牛病問題が生じて東村山店の売上げが激減した平成13年9月から平成14年12月までの間、改定がないまま当初のロイヤリティ額を支払い続けたのであるから、原告が支払ったロイヤリティ額とロイヤリティ基準表に従って算出されるロイヤリティ額との差額が損害である。その額は399万6517円である。
5  被告の主張
(1)  情報提供義務違反
ア 本件契約は、フランチャイズ契約ではなく、本件契約書に記載があるとおり、店舗業務委託契約である。
イ フランチャイズ契約の場合、通常新規に出店するため、売上げは予想、予測の域を出ないし、予測値と実際の売上高は符合しないことが多い。これに対し、業務委託契約の場合、直営店を業務委託するにしても、業務委託店を引き継ぐにしても、既存店を運営することになるから、その店の過去の売上げを正確に把握でき、過去の売上実績を売上予測とすることは当然である。
さらに、原告は、安楽亭直営店で店長を務めた経験があり、直営店舗の売上予測を重要な業務として担当していたのだから、売上予測については精通していた。
収入予測も売上予測と同じである。
また、被告は、原告に対し、売上げを保証したこともない。
したがって、被告が原告に対し、売上げや収入の予測について情報の提供を怠ったことはない。
ウ 被告は、野口橋店について、店舗貸主との間で平成13年9月から賃貸借契約締結の交渉を始めているから、本件契約時(同年3月30日付け)には出店計画はなかった。したがって、原告に対し、出店予定はないと答えている。
また、本件契約上、被告が原告の売上げに影響を与えるような出店をしない旨の合意をしていない。
被告は、既存店舗の近隣に自社競合店を出店する場合には、既存店に影響がないかどうかを十分に検討したうえ出店の可否を検討しているし、仮に、競合をしたとしても、これを機会に両店舗の実績が向上することも多い。
したがって、この点についても、被告に債務不履行はない。
(2)  指導援助義務違反
フランチャイズ契約の場合、初めて店舗経営をする者が多いから、基本的なところから、店舗運営の指導や援助をする。しかし、業務委託店の場合、特に本件では、原告は直営店の店長職を経験しているから、初心者に対する指導と異なり、原告の能力、素養、業務態度等を勘案し、適宜指導援助を行ってきた。自社競合店の出店は前記主張のとおりであり、これが指導援助義務違反にあたることはない。
したがって、被告に債務不履行はない。
(3)  営業店舗変更義務違反
本件契約の期間は3年であり、本件契約書にも明記されている。被告は、原告に対し、東村山店の経営が1年限りであり、1年後にほかの店舗に移動させることを約束したことはない。
(4)  契約更新義務違反
本件契約が当初から当然に更新を前提としていたことはない。営業店舗の業務を委託するのであるから、受託者の業務に対する態度等、契約期間中の事情を十分に考慮して検討し、更新するか否かを決定することになる。
しかも、本件の場合、原告と被告は、平成14年10月2日付け覚書をもって、本件契約を更新しないことを合意した。したがって、被告に債務不履行はない。
(5)  ロイヤリティ改定義務違反
ロイヤリティ基準表は、契約締結時にロイヤリティ額を決定する際の参考であり、この表に従って、売上げに応じてロイヤリティが変動することはない。
本件契約書上も、ロイヤリティ額の変更に関し、協議して改定することができると規定されているから、被告にロイヤリティ額を変更する義務があるとか、ロイヤリティ額が自動的に変動するということもない。
しかも、被告は、原告との間で、協議を重ね、当初資金援助による営業支援を実施したほか、さらに2回、ロイヤリティ額の引き下げも実施した。したがって、被告は、原告に対し、恩情ある対応をしたことがあっても、債務不履行はない。
(6)  損害
争う。
第3  判断
1  証拠(甲1から20の35まで、乙1から9まで、証人B、原告)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(1)  原告は、平成10年4月、被告に入社し、被告直営店における調理、経営管理等を担当したが、平成11年4月、直営店の店長を務めることになり、平成12年10月からは、大型直営店である練馬小竹町店の店長を務めた。
被告には、社員を独立させ、暖簾店にして経営させる暖簾分けの制度があり、原告は、将来的に、店長を務めるだけではなく、独立して経営をしたいと考えるようになり、被告の暖簾分け制度の担当者から話を聞くことにした。
原告は、平成13年1月中旬ころ、被告のFC暖簾部の担当者(当時)であるBから、暖簾分け制度の説明を受けた。原告は、Bから説明を受けて、独立することを決め、家族や知人に相談し、数日後には、4月から開業したい旨を伝えたうえ、暖簾分け制度の申込みをし、被告に退職願を提出した。
(2)ア  原告は、平成13年1月下旬ころ、Bから営業候補店の紹介を受け、川越下赤坂店を経営したい旨を伝えたが、その後、Bから浦和神明店にしてほしいと要請があり、川越下赤坂店と同じような経営状況であったことから、要請に応じ、浦和神明店で開業することを了承した。そこで、引越の準備や開業資金の調達等を始めた。
ところが、同年3月上旬ころ、Bは、原告に対し、東村山店で開業してほしい旨を要請してきた。Bは、原告に対し、東村山店が店舗の賃貸借の関係で閉店する予定であったが、契約を継続できることになったものの、前店長の移動が決まっているため、次の店長を必要としている旨を伝えた。原告は、突然の店舗変更の申し出であったため困惑したが、とにかく東村山店の状況を確認する必要があると考え、東村山店を見ることにした。原告は、実際に東村山店を見たところ、施設も設備も老朽化しており、被告には改装の予定もないということであったため、開業に不安を感じたが、退職日が間近に迫っていたし、被告も後継者の選定に困っていたことから、同年3月中旬ころ、開業する店舗を東村山店とすることに決めた。
原告は、Bとの間で、同年3月中旬ころ、契約内容の確認をしたが、Bが当初ロイヤリティを月額75万円にしたいと申し出たことがあり、この額では経営が困難であると考え、同人に対し、ロイヤリティ額が月額75万円であれば契約しない旨をFAXで伝えた。これに対し、Bは、後記のロイヤリティ基準表、ロイヤリティシミュレーション、人件費算出表を持参し、原告に対し、これらの資料を説明したうえ、ロイヤリティは月額65万円でよいと申し出たため、原告は、これを承諾した。
また、原告は、Bに対し、東村山店の近くに自社競合店が出店する予定があるかどうかを尋ねたところ、予定はないとの回答を受けた。
なお、東村山店は、被告が家主から建物を借りて店舗としているが、家主と被告が店舗の明渡しについて交渉を続けている状況があり、場合によっては、1年後には家主に店舗を明け渡さなければならない可能性もあった。
他方、平成13年4月には、競合する牛角が東村山店をオープンさせる予定があった。
イ  原告が被告から交付されたロイヤリティ基準表は、「東村山店業務委託契約案例」と題され、平成13年3月12日付けで、FC暖簾事業部が作成したことになっている。
その内容は、要するに、東村山店は、売上規模が400万円台であり、家賃比率が8.9%であるから、ロイヤリティ基準表によれば、基準ロイヤリティ売上比は14%で58万円、確定ロイヤリティは65万円、修繕改装積立金は月額5万円となるというものである。なお、これにはパートとバイトの人件費率は18.4%とされており、これは後記のロイヤリティシミュレーションの内容と一致している。
ウ  原告が被告から交付された「ロイヤリティシミュレーション」と題された書面は、次の内容となっている。
まず、平成12年3月から平成13年2月までの売上損益実績が記載されている。これによれば、月平均の売上げは約413万円、食材費の全体に占める割合は月平均39.7%、ロイヤリティ額は月額65万円、改装積立金は月額2万円、経常利益月平均45万円とされている。次に、平成13年3月から平成14年2月までの経費支出の予測をしたと思われる表が記載されている。この表によれば、食材費は35%、ロイヤリティ額は月額65万円、改装積立金は月額5万円、人件費は18.5%とされている。
エ  原告が被告から交付された被告FC暖簾事業部作成の「人件費算出表③」には、店長及び社員人件費として60万円と記載されている。
(3)  平成13年3月20日、原告は、被告を退職した。しかし、この時点で契約書を見せられたことはなかった。
原告は、平成13年3月28日、東村山店の前店長から引き継ぎを終え、また、契約書(本件契約書)を交付された。
原告は、本件契約書を確認したところ、契約期間は1年と考えていたにもかかわらず3年とされていたこと、営業内容についてマニュアルに従わなくてもよいと考えていたのに被告が定めるマニュアルのとおりにしなければならないと規定されていたこと、被告から一括で仕入れをしなければならず、直営店の原価率約32%に15%を上乗せさせられることになるが、これではロイヤリティシミュレーション記載の原価率35%にはならないことに気付き、事前の協議の内容と異なり、今後の営業にも不安を感じたため、Bにクレームを伝え、本件契約書の作成にはしばらく応じなかった。
原告は、平成13年4月、被告東村山店の営業を始めた。
原告は、被告から本件契約書を交付するように求められたため、同年6月上旬ころ、印鑑登録証明書の日付にあわせ、作成日欄に同年3月30日と記入し、押印をして、Bに対し本件契約書を交付した。
(4)  本件契約書は、「店舗業務委託契約書(新規)安楽亭東村山店」と題され、作成日が平成13年3月30日とされ、次の内容となっている。なお、被告は、フランチャイズ契約を締結する場合には、フランチャイズ契約締結用の契約書を使用している。
ア 被告と原告は、店舗業務委託契約(本件契約)を締結する(前文)。
イ 被告は、原告に対し、被告が現に賃借している東京都東村山市〈以下省略〉所在の安楽亭東村山店における焼肉レストランの営業のうち、本件契約書に定める制約を逸脱しない範囲内の業務を、原告が全般的に自己の裁量と責任により行うことを委託し、原告はこれを承諾した(1条1項)。
被告は、店舗の売上金から被告が受け取るロイヤリティと諸経費相当額を控除した残額を業務の報酬として原告に支払う(1条2項)。
ウ 原告は店長と称し、被告は営業名義をもって業務を遂行する(2条1項)。
被告は原告に店舗を転貸するのではなく、店舗の営業権、使用権、占有権、賃貸権等の権利は本件契約の締結前と同様に被告に帰属し、これらの権利が被告から原告に譲渡されないことを確認する(2条2項)。
エ 本件契約の期間は、平成13年4月1日から平成16年3月31日までの3年間とする(3条)。
オ 原告は、本件契約の締結と同時に契約金として200万円を支払う(4条1項)。
契約金は理由の如何に関わらず返還されない(4条2項)。
原告は、本件契約の締結と同時に保証金として100万円を預託し、原告のすべての債務の担保とする(4条3項)。
原告は、被告に対し、本件契約締結時に100万円を支払い、残金200万円について、平成13年4月30日から36回宛毎月5万9941円を支払う(4条5項)。
カ 8条(負担区分)に定める諸経費相当額に加えて、原告は、被告に対し、ロイヤリティとして毎月65万円(消費税別)を支払う(6条1項)。
前項のロイヤリティ額の算出は、実績を基に別途規定により被告が算出し、経済情勢その他経営環境の変化に応じ、原告被告協議のうえ改定することができる(6条2項)。
キ 原告は、契約店舗メンテナンス修繕費及び改装費として平成13年4月1日から売上金より毎月5万円を支払い、契約店舗メンテナンス修繕費及び店舗改装費に充当させる(7条1項)。
ク 原告は店舗運営の一切の責任者として、下記(省略)の基本業務を遂行しなければならない(12条1項)。
原告は焼肉レストラン安楽亭チェーン全体の発展に寄与すべく、業務遂行にあたり下記(省略)の規定を遵守しなければならない(12条2項)。
原告は、業務遂行にあたり、外食チェーン本部としての被告の信用保持に留意し、本件契約書の諸規定を誠実に実行し遵守しなければならない。また、規定外事項についても被告の指示に従わなければならない(12条3項)。
ケ 原告は、店舗における営業に必要な材料、商品、資材、什器備品に関し、顧客に対する安全とチェーンの統一性を守るため、被告の指定する規格品質・仕様のものを、被告または被告の指定業者から調達し、使用しなければならない(13条1項)。
コ 被告は、スーパーバイザーを不定期に原告の契約店舗に派遣し、下記事項(省略)につき、点検、質問、助言、指導することができる(14条1項)。
サ 本件契約の期間満了時において、原告被告の新たな合意が成立した場合には本件契約を更新することができる(24条1項)。
契約更新の契約期間は、満2年間とする(24条2項)。
前項の定めにより契約の更新が行われた場合には、原告は被告に対し、契約更新料として5万円(消費税別)を支払う(24条3項)。
原告被告は期間満了の3か月前から契約更新に関しての協議ができる(24条6項)。
原告被告は、相手方に対し、期間満了の6か月前から、または前項の協議期間中においても、書面による通知により更新を拒絶することができる(24条7項)。
(5)  平成13年9月、狂牛病発症が社会問題となり、東村山店の売上げが激減した。東村山店の売上高の推移は、別紙のとおりである。
そこで、原告は、被告に対し、同月下旬ころから、ロイヤリティ額を基準表に従って引き下げるように求めた。しかし、被告は、ロイヤリティ額の引き下げに応じなかったし、協議に応じた形跡も窺えない。
被告は、原告に対し、平成13年12月1日、店舗運営資金として合計96万円を、利息を年5%とし、連帯保証人を付けたうえ、貸し付けた。また、被告は、平成14年3月26日、店舗運営資金として33万円を、利息を年5%とし、連帯保証人を付けたうえ、貸し付けた。
被告は、平成14年2月から、ロイヤリティ額の引き下げに応じた。東村山店のロイヤリティ額の推移は、別紙のとおりである。しかし、これでもロイヤリティ基準表に従った額よりも高額であった。
(6)  原告は、平成14年1月か2月ころ、被告担当者から、東村山店から直線距離で約1.2kmの場所(徒歩約15分)に被告が野口橋店(直営店)を出店する予定があることを初めて聞いた。
その後、野口橋店は、平成14年9月30日、開店した。
(7)ア  平成14年5月ころ、原告は、被告担当者から、被告若葉店に移動が可能かもしれないとの連絡を受け、送付されてきた損益計算書を確認したところ、赤字店舗であったが、収益が改善できる可能性もあった。そこで、原告は、ロイヤリティ額が月額30万円であれば若葉店に移動する旨を回答した。
その後、同年9月に入って協議が進み、被告担当者は、同月3日ころ、FC暖簾部作成の若葉店(直営店)同年1月から9月までの収支実績表、若葉店シミュレーション収支表を持参し、原告に示した。原告は、ロイヤリティ額が売上の8%(売上が420万円の場合には33万6000円)となっており、かつ、売上が増加するとロイヤリティ比率も増加するという内容となっていたことから、原告の要望と異なり、営業意欲に欠けるものであったが、野口橋店が開業することから、東村山店を継続するよりはよいと考え、提示された条件に同意した。そして、原告は、東村山店を同年9月16日に閉店させることとし、若葉店の近くに転居先を決め、マンションを申し込んだ。
ところが、その直後、被告担当者は、原告に対し、若葉店について、ロイヤリティ額が70万円でなければ移動できないと連絡してきた。そこで、原告と被告担当者及び被告社長室次長は、協議をしたが、被告があくまでロイヤリティ額につき70万円から減額ができないということから、原告は、若葉店への移動を断念し、東村山店の営業を継続することにした。この際、原告は、被告に対し、野口橋店が同年9月30日に開店することから、ロイヤリティ額を引き下げるように求めたが、被告はこれに応じなかった。
イ  被告FC暖簾部が作成した平成14年9月3日付け「若葉店(直営)平成14年1月~7月度実績」と題された表によれば、営業利益は、7か月中5か月が赤字であり、合計も月平均も赤字である。売上高は月平均約424万円となっている。
同作成の同日付けの「若葉店シミュレーション」と題された表によれば、売上高が420万円の場合、営業利益は約62万円とされ、ロイヤリティ額は当初が8ないし9%とされ、その後売上高が増加すればロイヤリティ比率も増加するという内容になっている。
(8)  原告と被告は、平成14年10月2日、「覚書」と題された次の内容の書面を作成した。
その内容は、原告と被告は平成16年3月31日の満了をもって店舗業務委託契約を終了し、以後の更新はしないこと、原告は同日をもって店舗を明け渡し、明渡しを遅滞したときは、損害金として1日5万円の割合の金員を支払うこと等である。
ほかに、この覚書が作成された事情、覚書の使途については一切触れられていない。
(9)  平成14年9月30日、野口橋店が開店し、同年10月の東村山店の売上げは3割近く減少した。
原告は、その後も経営努力を続けたものの収益の改善が困難であると考え、平成15年1月ころ、被告に対し、ロイヤリティ額の引き下げに応じてもらえなければ、業務委託契約を解消する旨の連絡をした。さらに、被告代表者宛に、同年2月5日、平成14年10月分からロイヤリティ額をロイヤリティ基準表に従い12万円に改定してほしいこと、過払い分のロイヤリティ額を返還してほしいことを内容とする内容証明郵便を送付した。
被告は、平成15年1月分から、ロイヤリティ額を月額12万円に引き下げた。
(10)  原告は、平成16年1月、本件契約期間満了が迫り、家主に店舗を明け渡すため東村山店が同年3月で閉店されることから、移動先の店舗を協議したいと考え、被告に連絡を取ったところ、被告担当者が原告を訪れ、本件契約を更新しない旨を伝えた。
原告は、移動先の店舗を紹介してもらえると思っていた自分が情けなかったし、これ以上被告の仕事をする気持ちにもなれなかったので、本件契約の更新を求めなかった。
原告と被告担当者は、平成16年3月30日、話し合い、原告は、契約金200万円とロイヤリティ過払い分の返還を求めたが、被告は、これに一切応じなかった。
(11)  原告が被告に対し支払った金額は、加盟金約200万円、ロイヤリティ総額が3年間で約1200万円、ほかに食材費割増分約400万円の合計約1800万円である。
食材費の割増分とは、原告は、被告の関連会社から原材料を仕入れることを義務づけられており、かつ、その価格は直営店が同じ原材料を仕入れるより15%上乗せされていたことにより生じたものである。
2  これらの事実に基づいて、以下、原告の主張を検討する。
(1)ア  原告は、要するに、被告が売上予測、収入予測、自社競合店の出店予定等の情報提供を怠った旨の主張をする。
イ  確かに、被告は原告に対し、東村山店業務委託契約案例、ロイヤリティシミュレーション、人件費算出表③と題された各書面を交付し、既存店の過去1年間の売上実績、ロイヤリティの算出基準を示しているから、相応の情報を提供しているとはいえる。
しかし、東村山店業務委託契約案例を検討すると、ロイヤリティ基準表に従えば、東村山店のロイヤリティは月額58万円であるはずなのに、確定ロイヤリティは65万円とされているが、その理由は定かでない。さらに、ロイヤリティシミュレーションを検討すると、売上予測は既存店実績と同額とされているが、この書面が作成された時期には競合店である牛角東村山店の出店が明らかになっているはずであり、その事情が考慮されたかどうかは定かでない。食材費については、実績によれば月平均39.7%であり、予測は月35%とされているが、暖簾店の場合には仕入れ価格に上乗せ分があるはずであるのに、食材費の割合が低下する理由が明らかでない。さらに、改装積立金も、実績が月額2万円であり、予測が月額5万円であるが、増額する理由が明らかでない。そして、被告の担当者であるBが原告に対しこれらの売上実績及び収支の予測を説明したはずであるのに、Bはこれらの理由を明確に証言しない。
したがって、被告は原告に対し、信義則上、客観的かつ的確な情報を提供すべき義務を負っていながら、業務委託契約締結前に客観的かつ的確な情報を提供しなかったというべきである。
ウ  次に、被告は、原告と本件契約を締結した平成13年3月時点では野口橋店の出店計画がなく、同年9月から賃借店舗の家主と交渉を始めたから、原告に対し野口橋店の出店計画を知らせずに本件契約を締結したわけではないと主張する。
しかし、被告の主張を裏付ける社内資料は提出されていないし、この点に関する被告担当者の証言による裏付けもないから、被告の主張を直ちに認めるわけにはいかない。仮に、被告の主張を前提としても、同年9月から家主と交渉を始めたのであれば、それ以前から出店計画の検討を始めていたのではないかと考えられ、同年3月の時点で野口橋店近辺への出店計画があったのではないかという疑いは拭いきれない。
少なくとも、東村山店と野口橋店が商圏として競合するかどうかはともかく、被告も内部で商圏が競合しないかどうかを検討したというのであるし(被告の平成17年9月22日付け準備書面参照)、東村山店は設備が古く暖簾店であるというハンデがあったのだから、被告は、野口橋店開店が東村山店に与える影響を検討し、原告に対し野口橋店の出店計画等の客観的かつ的確な情報を提供すべきである。本件契約書には自社競合店の出店を禁止する旨の条項はないが、これを無制限に許す旨の条項もないのだから、被告は信義誠実の原則に基づいて原告に対応すべきであり(本件契約書26条参照)、客観的かつ的確な情報を提供すべきであった。
ところが、被告は、原告に対し、いつ、どのような形態及び規模で野口橋店を出店するか、その出店が東村山店にどのような影響を与えるか等の情報をまったく提供しなかった。
したがって、被告は、原告に対し、競合する可能性がある自社出店情報を提供すべき義務を負いながら、これを怠ったというべきである。
エ  次に、被告は、原告に対し、だれが、いつ、どのような方法で本件契約書を交付し、その内容をどのように説明したかを明確に主張しないし、Bは、担当者でありながら、同様にこれらの点について明確に証言しない。
したがって、前記認定のとおり、原告は、平成13年3月28日に東村山店の前店長から本件契約書を受け取り、各条項に納得できなかったが、やむを得ず、同年6月、署名押印して被告に対し交付をしたと認めることが相当である。
そうであるとすれば、本件契約書に記載された各条項は被告が提供すべき情報の中でもっとも基本的なものでありながら、被告は、原告が前店長から引き継ぎを終え、数日後に開店を控えた時期に、被告担当者ではなく前店長を通して本件契約書を示したことになるが、原告が本件契約書の各条項を検討し、これを受け入れるかどうかを検討する時間的な余裕がなく、原告が被告担当者に対し各条項の内容を質問する機会もないのであるから、情報提供の方法として不適切であったというべきである。
したがって、被告は原告に対し、本件契約書というもっとも基本的な情報を適切な時期に提供すべき義務を負いながら、不適切な時期及び方法で提供したというべきである。
(2)  原告は、要するに、被告が自社競合店である野口橋店を出店させたことが指導援助義務違反である旨の主張をする。
この点については、前記認定のとおり、本件契約書によれば、被告が自社競合店を出店させることは必ずしも禁止されているとはいえないし、本件契約時点において、被告が野口橋店出店の計画を持っていたとまでは証拠上認められないが、被告は、原告に対し、野口橋店が競合店にあたる可能性があれば、競合しないというならそれでもよいから(つまり影響を与えないというなら、そのような情報でもよいから)、東村山店に与える影響の有無、程度等の情報を提供すべきであり、そのような情報を提供しなかったという意味において、情報提供義務違反があるというべきである。
(3)ア  原告は、被告との間で、本件契約締結にあたり、東村山店の経営は1年限りとし、1年が経過したら、他の店舗に移動することを特約したが、被告がこれに違反した旨の主張をし、原告は同旨の供述をする。
イ  ところで、本件契約書には原告主張の特約が明記されておらず、仮に被告担当者が口約束をしたとしても、被告が特約を承諾したとまでいえるかどうかは証拠上疑問が残るため、被告が原告主張の特約を合意したとまでは認めがたい。
ウ  しかしながら、前記認定のとおり、原告は、ほかの店舗を希望していたが、被告の意向で東村山店に決まったこと、被告が東村山店を指定した理由は必ずしも明らかでないこと(Bも明確に証言しない。)、東村山店は設備が老朽化し、家主との交渉如何によっては、早期に明渡しをする必要があったこと(これから多額の投資をして飲食店を経営しようとする者が早期に明渡しの可能性がある店舗を選択するとは到底考えられない。)、これらの状況に比べ、原告にとってロイヤリティ額などの契約内容が必ずしも好条件とはなっていなかったこと、それどころか、原告は契約金として200万円を支払う必要があり、分割の方法で支払ったこと、これに対し、被告は特に考慮すべきリスクがなかったこと(原告が経営を続けるだけ利益を得られたこと)、被告は東村山店と競合する可能性がある野口橋店を出店し、同時期ころに原告に対し、若葉店への移動を問い合わせ、若葉店の収支実績、ロイヤリティ額を含めた収支予測表を示したこと、原告はこれを承諾し、東村山店の閉店時期を決め、引っ越し先まで準備したこと等が認められる。
これらの事実によれば、原告が東村山店を3年間経営するつもりで本件契約を締結したとは考えがたく、被告担当者は、原告に対し、東村山店の経営を1年とし、1年が経過したら、他の店舗に移動させることを約束した可能性も十分にあるが、そうでないとしても、少なくとも、原告と被告担当者との間で、本件契約締結前から、東村山店からほかの店舗への移動が協議されていたと認めることが相当である。
ところが、被告は、原告との間で他店舗への移動も協議していた事情があり、東村山店と競合する可能性がある野口橋店の出店と同時期ころ、候補店として赤字店である若葉店を提示し、収支実績とロイヤリティ額を含めた収支予測表を示して、原告がいったんこれに応じていながら、被告がロイヤリティ額を翻意したため若葉店への移動が困難になったというのであるから、被告が移動店舗を提供する義務を負わないにしても、客観的かつ的確な情報を提供しなかったというべきである。
そうすると、被告は、客観的かつ的確な情報を提供する義務を怠ったというべきである。
(4)ア  原告は、被告が本件契約を更新する義務に違反した旨の主張をする。
イ  ところで、本件契約書の契約更新に関する条項を検討すると、期間満了時に新たな合意が成立した場合には契約を更新することができる(24条1項)と定めながら、他方、期間満了の3か月前から契約更新に関しての協議をすることができ(24条6項)、期間満了の6か月前から書面による通知により更新を拒絶することができる(24条7項)と定められており、条項の文言的な解釈からは、更新義務の有無を判断することは難しい。
しかし、本件契約がフランチャイズ契約ではなく業務委託契約であったとしても、受託者は自己の責任で飲食店を経営し、契約締結時に委託者に対し、契約金200万円(返還不可)、保証金100万円(債務担保分)を支払い、さらに、別途ロイヤリティを支払うこと、これに対し契約更新料はわずか5万円であること、通常受託者は投下資本を回収し、さらに利益を上げるため当初の契約期間を超えて経営を続けることも検討するであろうし、委託者も特別な事情がない限り受託者に経営を続けさせても不利益がないと思われることから、一般的には、正当な理由がない限り、委託者は契約を更新する義務を負うと解することが相当である。このように考えれば、被告が一方的に、十分な説明をしないで契約更新を拒絶したことは不適切であったというべきである(ただし、被告に更新義務があるとすれば、原告は契約が更新されて継続していることを主張すればよいだけだから、被告が更新拒絶を伝えても、それが直ちに債務不履行にあたるということにはならないであろう)。
仮に、被告が契約更新義務を負わないとしても、そうであるなら、被告は、契約金200万円は契約期間3年分の対価であって、原則として期間満了によって契約は終了し、被告が了承した場合に限って契約更新ができる旨を契約書に明記するか、書面などで説明すべきである。そうしないと、受託者の誤解を招くことは明らかであるからである。しかし、被告が原告に対し、本件契約締結にあたり、被告が了承した場合に限って契約更新ができる旨を伝えたとは認められない。
ウ  したがって、被告に契約更新義務があったとしてもなかったとしても、被告は原告に対し客観的かつ的確な情報を提供しなかったというべきである。
エ  なお、被告は、原告との間で、平成14年10月2日、3年の期間満了をもって本件契約を終了し、更新はしない旨の覚書を作成した旨の主張をする。
この覚書に関する被告の主張内容は、必ずしも明確ではない。
仮に、被告の主張が、この覚書によって、原告との間で契約更新をしない旨を合意したという内容であれば、覚書を作成した時期は、まだ契約期間が半分も残っていたこと、原告も若葉店への移動を検討するなど、経営が困難な状況にあっても焼肉店の経営継続を模索していたこと、したがって、200万円もの資本投下をしているにもかかわらず、この時点で契約更新しないことを決定していたとは考えがたいこと、覚書が契約更新をしない合意だとすると、本件契約書の更新条項を変更することになるが、覚書には本件契約書中の更新条項を適用しない旨が記載されていないし、原告にもそのような意思があったとは窺えないこと等が認められ、覚書によって原告が期間満了時に契約更新しないことを承諾したと認めることは到底困難である。
また、仮に、被告の主張が、覚書が東村山店の家主との交渉に必要であったにすぎず、この覚書によっても、本件契約書の条項を変更していないという内容であれば、前記認定イのとおりである。
なお、乙9(陳述書)によれば、被告は、家主から早期に店舗を明け渡すように求められており、原告が平成16年3月の期間満了まで営業を継続できるように、同月をもって確実に明け渡すことを家主に納得してもらうために覚書を作成したかのような陳述がある。しかし、被告は業務委託契約に基づき原告に対し期間満了まで営業を委託する義務を負っている(東村山店の営業が困難なら別店舗を提供する義務がある。)というべきであるから、家主と交渉して原告が期間満了まで営業を継続できるようにしたところで、本来の債務を履行したにすぎず、原告との契約更新を拒絶できる正当な理由があるということにはならない。
したがって、いずれにしても、この覚書によって、前記認定が左右されることはない。
(5)ア  原告は、外的な要因によって東村山店の売上げが減少した場合には被告がロイヤリティを改定する義務を負いながら、狂牛病問題が発生したときも、野口橋店を出店させたときもロイヤリティを改定しなかった旨の主張をする。
イ  しかし、本件契約書によっても、経営環境の変化に応じ、協議のうえ改定することができる(6条2項)と定められているにすぎないから、被告がロイヤリティを改定する義務を負っていたとはいえない。
また、被告担当者がロイヤリティを改定する旨の口約束をしたとしても、本件契約書に明記されていないから、やはり被告がロイヤリティを改定する義務を負っていたとは認められない。
ウ  ただし、本件契約書によれば、経済情勢その他経営環境の変化が生じた場合には、被告が原告との協議に応じる義務があるというべきである。
そして、本件では、狂牛病発症が社会問題化したときも、被告が野口橋店を出店させたときも、どちらも原告の経営責任とは別に、外的な要因によって東村山店の売上げが減少し、また減少する可能性が生じた場合であるから、経営環境の変化が生じた場合にあたるというべきである。
ところが、原告が被告に対し、狂牛病問題が発生したときも、野口橋店が開店したときも、ロイヤリティの引き下げを求めたにもかかわらず、被告は、これに応じなかった。また、被告が原告に対し、いつ、だれが対応して、ロイヤリティを引き下げられない理由をどのように説明したのかもまったく明らかではない。特に、前記の諸事情により原告の売上げが相当減少したにもかかわらず、被告は従前のロイヤリティの引き下げを拒否したが、経営環境の変化が生じ売上げが減少したにもかかわらず、従前のロイヤリティを取得できる合理的な理由を説明していない。ロイヤリティ基準表が合理的なものであるなら、それによってロイヤリティ額が自動的に変動することがないにしても、基準表からかけ離れたロイヤリティが不合理であることもあり得るのだから、被告はロイヤリティ額が合理的であることを十分に説明すべきある。また、被告自身の経営が厳しいことが理由にならないことも明らかである。
これらの検討によれば、被告は本件契約書によって定められた協議に十分応じていなかったと認めることが相当である。
オ  なお、被告は、原告に対し、運転資金を貸し付けて援助をした旨の主張をする。しかし、法的には、貸し付けたとしても、その返済を求めることができるのであるから(しかも、利息を定め、連帯保証人もつけている。)、被告が取得するロイヤリティの引き下げと同一に論じることはできない。
(6)  これらの検討によれば、被告には、客観的かつ的確な情報を提供しなかったこと、説明を尽くさなかったこと、協議に応じなかったこと等が認められ、これらの行為は、業務委託契約という継続的な契約関係における信義則上の情報提供義務、説明義務に違反し、また、本件契約書6条2項に違反するから、被告には債務不履行があると認めることが相当である。
3(1)  被告の債務不履行によって原告に生じた損害を検討すると、被告の各行為を捉えて、つまり、客観的かつ的確な情報を提供しなかったこと、説明を尽くさなかったこと、協議に応じなかったこと等をそれぞれ捉えて、そこから生じた損害を検討することもできなくはないが、本件の場合、より全体的に被告の義務違反を捉えることが相当である。
(2)  つまり、これらを全体として捉えれば、次のように考えることができる。
原告は、老朽化し、いつ明け渡しを求められるかもしれない東村山店について、わざわざ契約金200万円を支払って3年間経営する意思などなかったにもかかわらず、被告は、他店舗への移動を示唆しながら、十分なシミュレーションを示さず、本件契約書も十分に検討させないで、原告に東村山店の経営を見切り発車させたこと、さらに、狂牛病問題、野口橋店出店など、東村山店にとって売上げを相当減少させる外的要因が生じたにもかかわらず、被告は、適切なアドバイスをしたり、ロイヤリティ引き下げの協議に応じなかったばかりでなく、被告から提案し、いったん合意しかけた若葉店への移動案も撤回するなど、誠実に交渉したとはいえないこと、そして契約満了時にも、一方的に正当な理由もなく更新の拒絶を通知し、協議を尽くさなかったこと等が認められる。
そうすると、被告は、契約締結時、契約継続中、契約終了時の各段階において、客観的かつ的確な情報を提供しなかったり、説明を尽くさなかったり、協議に応じていないが、本件契約にこのような事情があるとすれば、原告は本件契約を締結しなかったであろうと容易に考えられるのであって、いわば本件契約における原告の損失分を損害と認めるべきであるから、原告が本件契約に基づき契約金として支払った209万6771円を損害と認めることが相当である。
なお、被告はロイヤリティを引き下げる義務を負っていなかったから、原告が主張する損害のうち、ロイヤリティの差額は損害にあたらない。また、ロイヤリティ額は原告と被告の協議によって定まるから、ロイヤリティ基準表に従って算出されたロイヤリティ額と実際に支払ったロイヤリティ額の差額が損害であると考えることも困難である。
さらに、念のため付け加えると、前記のとおり原告の損害を認めるとすれば、本件において過失相殺をすべき事情があるとは認められない。
4  よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 斎藤清文)

 

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