【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(132)平成19年 2月15日 東京地裁 平17(ワ)7089号 損害賠償請求事件

「営業支援」に関する裁判例(132)平成19年 2月15日 東京地裁 平17(ワ)7089号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成19年 2月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)7089号・平17(ワ)22154号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2007WLJPCA02158017

要旨
◆原告らが、原告らの取引先でありゴルフ場から会員権購入者の紹介を依頼されていた被告銀行は、原告らがゴルフ会員権を購入するに際し、虚偽の説明あるいは値上がりについて断定的な説明を行った、ゴルフ会員権の危険性について説明しなかった、金融機関の優越的地位を利用して販売を行った、ゴルフ会員権の販売媒介行為が銀行法に違反するなどと主張して、不法行為に基づき損害賠償を求めた事案において、原告らの主張をいずれも排斥して、損害賠償請求を棄却した事例

参照条文
民法709条
銀行法10条
銀行法11条
銀行法12条

裁判年月日  平成19年 2月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)7089号・平17(ワ)22154号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2007WLJPCA02158017

千葉市〈以下省略〉
第1事件原告 有限会社千代不動産(以下「原告千代不動産」という。)
同代表者取締役 甲山A夫
千葉県市原市〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社鶴岡興産(以下「原告鶴岡興産」という。)
同代表者代表取締役 乙川B雄
千葉県船橋市〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社エルヴェ(以下「原告エルヴェ」という。)
同代表者代表取締役 丙谷C郎
千葉県山武郡〈以下省略〉
第1事件原告 石山商事運輸有限会社(以下「原告石山商事」という。)
同代表者代表取締役 丁沢D介
千葉県いすみ市〈以下省略〉
第1事件原告 有限会社井上農機商会(以下「原告井上農機」という。)
同代表者代表取締役 戌野E作
千葉県茂原市〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社横堀本店(以下「原告横堀本店」という。)
同代表者代表取締役 己原F平
千葉市〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社ミツワ(以下「原告ミツワ」という。)
同代表者代表取締役 庚崎G吉
千葉市〈以下省略〉
第1事件原告 花澤電装株式会社(以下「原告花澤電装」という。)
同代表者代表取締役 辛田H夫
千葉県鴨川市〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社十文字土木(以下「原告十文字土木」という。)
同代表者代表取締役 壬岡I雄
東京都渋谷区〈以下省略〉
第1事件原告 有限会社なべや(以下「原告なべや」という。)
同代表者代表取締役 癸井J郎
千葉県市原市〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社小原組(以下「原告小原組」という。)
同代表者代表取締役 丑木K子
千葉市〈以下省略〉
第1事件原告 有限会社安藤建材興業(以下「原告安藤建材」という。)
同代表者代表取締役 寅葉L介
千葉県船橋市〈以下省略〉
第1事件原告 有限会社知久商会(以下「原告知久商会」という。)
同代表者代表取締役 卯波M作
千葉県市原市〈以下省略〉
第1事件原告 株式会社安田総業(以下「原告安田総業」という。)
同代表者代表取締役 辰口N平
千葉県夷隅郡〈以下省略〉
第1事件原告 平林物産株式会社(以下「原告平林物産」という。)
同代表者代表取締役 巳上O吉
千葉県夷隅郡〈以下省略〉
第1事件原告 富士無線機材株式会社(以下「原告富士無線」という。)
同代表者代表取締役 午下P夫
千葉県市川市〈以下省略〉
第2事件原告 株式会社愛郷ホーム(以下「原告愛郷ホーム」という。)
同代表者代表取締役 未山Q雄
東京都渋谷区〈以下省略〉
第2事件原告 明治神宮(以下「原告明治神宮」という。)
同代表者代表役員 申川R郎
千葉市〈以下省略〉
第2事件原告 有限会社伊藤商店(以下「原告伊藤商店」という。)
同代表者代表取締役 酉谷S介
千葉市〈以下省略〉
第2事件原告 株式会社三協ハウジング(以下「原告三協ハウジング」という。)
同代表者代表取締役 戌沢T作
上記20名訴訟代理人弁護士 道本幸伸
同 永井均
同 渡瀬耕
同訴訟復代理人弁護士 坂井崇徳
千葉市〈以下省略〉
第1事件及び第2事件被告 株式会社千葉銀行(以下「被告」という。)
同代表者代表取締役 亥野U平
同訴訟代理人弁護士 竹下正己
同 山本博毅
同 多賀亮介
同訴訟復代理人弁護士 大山弘通

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告千代不動産
被告は,原告千代不動産に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告鶴岡興産
被告は,原告鶴岡興産に対し,金3385万円及びこれに対する平成2年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告エルヴェ
被告は,原告エルヴェに対し,金3500万円及びこれに対する平成2年4月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  原告石山商事
被告は,原告石山商事に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5  原告井上農機
被告は,原告井上農機に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6  原告横堀本店
被告は,原告横堀本店に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年6月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7  原告ミツワ
被告は,原告ミツワに対し,金3262万円及びこれに対する平成2年5月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8  原告花澤電装
被告は,原告花澤電装に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9  原告十文字土木
被告は,原告十文字土木に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年5月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
10  原告なべや
被告は,原告なべやに対し,金4000万円及びこれに対する平成3年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
11  原告小原組
被告は,原告小原組に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
12  原告安藤建材
被告は,原告安藤建材に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年7月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
13  原告知久商会
被告は,原告知久商会に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
14  原告安田総業
被告は,原告安田総業に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
15  原告平林物産
被告は,原告平林物産に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
16  原告富士無線
被告は,原告富士無線に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
17  原告愛郷ホーム
被告は,原告愛郷ホームに対し,金3500万円及びこれに対する平成2年8月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
18  原告明治神宮
被告は,原告明治神宮に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年5月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
19  原告伊藤商店
被告は,原告伊藤商店に対し,金3500万円及びこれに対する平成2年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
20  原告三協ハウジング
被告は,原告三協ハウジングに対し,金3500万円及びこれに対する平成2年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告らが,ゴルフ会員権の購入に関して,被告から違法な勧誘を受けたことにより損害を被ったと主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
1  前提事実(証拠等で認定した事実については,各項の末尾に証拠等を摘示した。)
(1)  ゴルフ場の経営主体等
ア 富士カントリー株式会社(以下「富士カントリー」という。)は,昭和46年12月,ゴルフ場の開発とゴルフ場運営会社への出資及び会員権販売請負を目的として設立された。富士カントリーは,自らゴルフ場事業を営むほか,有限会社大多喜城ゴルフ倶楽部(以下「大多喜城ゴルフ倶楽部」という。)を含むグループ企業の中核会社として,グループ企業に対して金融支援,営業支援及び業務支援をしていた。
(甲27の1,2)
イ フジパン株式会社(以下「フジパン」という。)は,富士カントリーの株式を有していた時期があるものの,昭和61年ころ資本関係は解消された。しかし,甲川V吉は,昭和26年からフジパンの取締役,昭和40年から代表取締役を務めるとともに,昭和46年から平成15年まで富士カントリーの取締役,昭和52年から昭和56年まで代表取締役を務め,また,甲川A夫は,昭和40年から平成15年までフジパンの取締役,昭和48年から平成15年まで代表取締役を務めるとともに,昭和46年から平成16年12月まで富士カントリーの代表取締役を務めており,資本関係解消後も,フジパンと富士カントリー間には,人的な関係が存在した。
(甲1の1,4,5,甲2の1から3まで,甲3の1から5まで,甲27の1,2,分離前相被告甲川A夫本人)
ウ 大多喜城ゴルフ倶楽部は,富士カントリー大多喜城倶楽部(以下「本件ゴルフ場」という。)の開発・運営を主たる目的として,昭和61年9月,株式会社富士カントリー大多喜城ゴルフ倶楽部の商号で設立され,平成13年8月,有限会社に組織変更し,平成17年8月1日,現商号に変更した。
甲川A夫は,平成元年1月から平成11年ころまで大多喜城ゴルフ倶楽部の取締役,平成元年1月から平成6年3月まで代表取締役であった。
(甲5の1から4まで,甲64,甲J65の3)
エ 大多喜城ゴルフ倶楽部は,平成元年7月以降,本件ゴルフ場のゴルフ会員を募集し,その際,富士カントリーが募集代行業者を務めた。
(甲64,70の2)
(2)  被告の勧誘行為
ア 被告は,平成元年12月,大多喜城ゴルフ倶楽部との間で,被告が,その取引先等に対して本件ゴルフ場を紹介し,本件ゴルフ場の会員権(以下「本件会員権」という。)の購入希望者に対して,その購入資金を融資するとともに,大多喜城ゴルフ倶楽部が購入希望者の借入債務について被告に対して連帯保証する旨の提携ローンの合意をした。
(甲41,乙J1,15,18,分離前相被告甲川A夫本人)
イ 原告千代不動産は,昭和48年1月に設立された不動産の売買等を主な業務とする会社であり,昭和55年ころから,被告松ヶ丘支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告松ヶ丘支店支店長代理丙沢B雄(以下「丙沢」という。)は,平成元年12月ころ,同支店及び原告千代不動産の事務所において,原告千代不動産代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,丙沢は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の1,甲70の1から4まで,乙J1,証人丙沢,原告千代不動産代表者)
ウ 原告鶴岡興産は,昭和57年5月に設立された保温・保冷・耐火工事の設計・施工等を主な業務とする会社であり,そのころから被告姉崎支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告姉崎支店営業担当の丁野C郎(以下「丁野」という。)は,平成元年12月初めころ,原告鶴岡興産の事務所において,原告鶴岡興産代表者に対し,本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,丁野は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書等作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の2,乙J2の1から4まで,乙J21の2,証人戌原,原告鶴岡興産代表者)
エ 原告エルヴェは,昭和45年12月に設立された,学習塾チェーン事業等を営む会社であり,昭和61年ころから被告上野支店等と継続的な銀行取引を行っていた。
被告上野支店営業係長己崎D介(以下「己崎」という。)は,平成2年2月ころ,原告エルヴェ(当時の原告エルヴェの商号は株式会社竜巧社)の事務所において,当時の原告エルヴェ代表者であった庚田E作(以下「庚田」という。)に対し,本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,己崎は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書等作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の3,甲J11,乙J3,22の2,原告エルヴェ代表者)
オ 原告石山商事は,昭和37年8月に設立された一般貨物自動車運送を主な業務とする会社であり,昭和50年ころから,被告誉田支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告誉田支店営業係長辛岡F平(以下「辛岡」という。)は,平成2年5月又は6月ころ,同支店及び原告石山商事代表者自宅において,原告石山商事代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを交付して本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,辛岡は,入会申込書及び保証申込書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の4,甲70の1から4まで,乙J4,23の2,証人辛岡,原告石山商事代表者)
カ 原告井上農機は,昭和初期に設立された農業機械の販売及び修理を主な業務とする会社であり,約40年間にわたって,被告長者支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告長者支店支店長壬井G吉(以下「壬井」という。)又は同支店営業担当者(以下「長者支店担当者」という。)は,平成2年2月ころ,同支店又は原告井上農機の事務所において,原告井上農機代表者に対し,本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,長者支店担当者は,入会申込書及び保証委託契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の5,乙J5,証人壬井,原告井上農機代表者)
キ 原告横堀本店は,昭和27年2月に設立された食料品及び荒物雑貨等の販売を主な業務とする会社であり,被告茂原支店開設時から,同支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告茂原支店営業担当者(以下「茂原支店担当者」という。)は,平成2年5月ころ,原告横堀本店代表者の知人の事務所において,その場に集った原告横堀本店代表者ら4名に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,茂原支店担当者は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書等作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の6,甲70の1から4まで,乙J24の2,原告横堀本店代表者)
ク 原告ミツワは,昭和61年5月に設立された化粧品等の卸売を主な業務とする会社であり,昭和63年6月から,被告中央支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告中央支店支店長代理癸木H夫(以下「癸木」という。)は,平成2年2月ころ,同支店において,原告ミツワ代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,癸木は,入会申込書及び保証申込書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の7,甲70の1から4まで,乙J7,25の2,証人癸木,原告ミツワ代表者)
ケ 原告花澤電装は,昭和46年12月に設立された自動車電装部品販売及び修理サービスを主な業務とする会社であり,平成2年当時,被告本店営業部と預金取引があったが,被告から融資を受けたことはなかった。
被告本店営業部課長代理丑葉I助(以下「丑葉」という。)は,平成2年1月ころ,原告花澤電装の事務所において,原告花澤電装代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,丑葉は,入会申込書及び保証委託契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の8,甲70の1から4まで,乙J8,証人丑葉,原告花澤電装代表者)
コ 原告十文字土木は,昭和36年10月に設立された建設業を主な業務とする会社であり,設立直後から,被告鴨川支店と継続的な銀行取引を行っていた。
原告十文字土木代表者は,平成2年3月ころ,知人を通じて本件会員権募集についての情報を得て本件会員権に興味を持ち,その旨が原告十文字土木の総務部長寅波J美(以下「寅波」という。)を介して被告鴨川支店に伝わった。そこで,被告鴨川支店支店次長卯口K郎(以下「卯口」という。)は,被告本部地域開発部と交渉し,原告十文字土木が本件会員権を購入できるように取り計らった。
その後,卯口は,入会申込書及び保証申込書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の9,甲J20の1,2,乙J9,証人卯口,原告十文字土木代表者)
サ 原告なべやは,昭和63年6月に設立された芸能人のマネジメントを主な業務とする会社であり,本件会員権購入に至るまで,被告とは取引はなかった。
原告なべや代表者は,平成3年ころ,原告平林物産代表者を通じて本件会員権の情報を得て,原告平林物産代表者を介して,被告大多喜支店に対し,本件会員権の購入を希望した。そこで,被告大多喜支店営業係長辰上L介(以下「辰上」という。)は,原告なべやに対し,パンフレットや入会申込書等を郵送するとともに,原告なべやが本件会員権を購入できるように取り計らった。
その後,辰上は,入会申込書及び保証委託契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。また,原告なべやは,被告との対応はすべて事務員が行っており,辰上を含め被告大多喜支店行員は,原告なべや代表者と面会したことはなかった。
(甲46の10,甲70の1から4まで,乙J10,証人辰上,原告なべや代表者)
シ 原告小原組は,昭和49年に有限会社として設立された足場仮設工事を主な業務とする会社であり,本件会員権購入以前から,被告五井支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告五井支店営業係長巳下M作(以下「巳下」という。)は,平成2年4月ころ,原告小原組の事務所において,当時原告小原組の代表者であった丑木N平(以下「丑木」という。)に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,巳下は,入会申込書及び保証申込書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の11,甲70の1から4まで,甲J21,乙J11,26の2,証人巳下,原告小原組代表者)
ス 原告安藤建材は,昭和62年6月に設立された建築資材の販売を主な業務とする会社であり,設立ころから,被告稲毛支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告稲毛支店営業係未川O吉(以下「未川」という。)は,平成2年5月ころ,原告安藤建材代表者自宅において,原告安藤建材代表者に対し,本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,未川は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の12,乙J12,証人未川,原告安藤建材代表者)
セ 原告知久商会は,昭和53年2月に設立された自転車・オートバイク販売を主な業務とする会社であり,設立直後から,被告津田沼駅前支店と預金取引があったが,被告から融資を受けたことはなかった。
被告津田沼駅前支店営業係長申谷P夫(以下「申谷」という。)は,平成2年2月又は3月ころ,原告知久商会の事務所において,原告知久商会代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,申谷は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の13,甲70の1から4まで,乙J13,証人申谷,原告知久商会代表者,弁論の全趣旨)
ソ 原告安田総業は,昭和47年に設立されたガソリンスタンド営業を主な業務とする会社であり,設立直後から,被告姉崎支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告姉崎支店営業担当の酉沢Q雄(以下「酉沢」という。)は,平成元年12月ころ,原告安田総業の事務所において,当時の原告安田総業代表者であった辰口R郎(以下「辰口」という。)に対し,本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,酉沢は,入会申込書及び保証委託契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の14,乙J14,証人酉沢,証人辰口,弁論の全趣旨)
タ 有限会社平林種苗農芸(以下「平林種苗」という。)は,農業資材の販売等を主な業務とする会社で,昭和40年ころから,被告大多喜支店と継続的な銀行取引を行っていた。
原告平林物産は,平成3年5月に平林種苗の営業部門を独立させる形で設立された農業用生産資材等の卸売販売を主な業務とする株式会社である。
被告大多喜支店支店長亥原S介(以下「亥原」という。)は,平成元年11月又は同年12月ころ,平林種苗の事務所において,平林種苗代表者に対し,本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。また,亥原は,平成2年1月ころ,平林種苗代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを交付した。
その後,被告大多喜支店担当者は,入会申込書及び保証申込書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の15,甲70の1から4まで,乙J15,証人亥原,原告平林物産代表者)
チ 原告富士無線は,昭和37年12月に設立された無線通信,音響機器部品製作及び組立配線を主な業務とする会社であり,昭和60年ころから,被告大多喜支店と継続的な銀行取引を行っていた。
亥原は,平成2年1月又は2月ころ,原告富士無線の事務所において,原告富士無線代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,被告大多喜支店担当者は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲46の16,甲70の1から4まで,乙J15,証人亥原)
ツ 原告愛郷ホームは,平成元年8月に設立された不動産の仲介業務等を主な業務とする会社であり,設立後から被告本八幡支店と預金取引があったが,被告から融資を受けたことはなかった。
被告本八幡支店営業担当の甲谷T作(以下「甲谷」という。)は,平成2年7月ころ,原告愛郷ホームの事務所において,原告愛郷ホーム代表者及び共同出資者の取締役乙沢U平(以下「乙沢」という。)に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,甲谷は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲70の1から4まで,甲72の1,乙J17,証人甲谷,証人乙沢)
テ 原告明治神宮は,昭和59年5月,千葉県天津小湊町において,宿泊施設である明幸苑を建設し,そのころから被告天津支店と預金取引があったが,被告から融資を受けたことはなかった。
被告天津支店支店長代理丙野V吉(以下「丙野」という。)は,平成元年12月ころ,明幸苑において,明幸苑の支配人丁原A夫(以下「丁原」という。)に対し,本件ゴルフ場の説明をし,その後も本件ゴルフ場のパンフレットを持参するなどして,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,丙野は,入会申込書の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲70の1から4まで,甲72の2,甲J31,乙J18,証人丙野,証人丁原)
ト 原告伊藤商店は,青果販売を主な業務とする会社であり,平成元年ころから,被告とけ支店と継続的な銀行取引を行うほか,被告とけ支店の社員食堂に野菜を納品していた。
被告とけ支店支店長代理戌崎B雄(以下「戌崎」という。)は,平成2年4月ころ,原告伊藤商店の事務所において,原告伊藤商店代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をし,本件会員権の購入を勧誘した。
その後,戌崎は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲70の1から4まで,甲72の3,乙J19証人戌崎,原告伊藤商店代表者)
ナ 原告三協ハウジングは,昭和48年に設立された住宅資材の販売等を主な業務とする会社であり,被告津田沼支店と継続的な銀行取引を行っていた。
被告津田沼支店営業担当の己田(以下「己田」という。)は,平成2年2月ころ,同支店において,原告三協ハウジング代表者に対し,本件ゴルフ場のパンフレットを示しながら本件ゴルフ場の説明をした。
その後,己田は,入会申込書及び保証委託並担保差入契約書等作成の事務手続を行ったが,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が勧誘に関与したことはなかった。
(甲70の1から4まで,甲72の4,乙J20,27の2,証人庚岡,原告三協ハウジング代表者,弁論の全趣旨)
(3)  会員権の購入
ア 原告千代不動産は,平成2年3月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して丙沢に交付し,丙沢は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告千代不動産の入会を承諾した。
原告千代不動産は,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の1,乙J1,証人丙沢,原告千代不動産代表者)
イ 原告鶴岡興産は,平成2年3月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書等を作成して丁野に交付し,丁野は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告鶴岡興産の入会を承諾した。
原告鶴岡興産は,同年4月2日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の2,乙J2の1から3まで,乙J21の1,2,証人戌原,原告鶴岡興産代表者)
ウ 原告エルヴェは,平成2年3月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書等を作成して己崎に交付し,己崎は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告エルヴェの入会を承諾した。
原告エルヴェは,同年4月9日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の3,甲J11,乙J3,22の1,2,原告エルヴェ代表者)
エ 原告石山商事は,平成2年6月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証申込書を作成して辛岡に交付し,辛岡は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告石山商事の入会を承諾した。
原告石山商事は,同月29日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の4,乙J4,23の1,2,証人辛岡,原告石山商事代表者)
オ 原告井上農機は,平成2年2月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託契約書を作成して被告長者支店担当者に交付し,同支店担当者は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,同年3月ころ,原告井上農機の入会を承諾した。
原告井上農機は,平成2年3月26日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため2000万円の融資を受け,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の5,乙J5,証人壬井,原告井上農機代表者)
カ 原告横堀本店は,平成2年6月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書等を作成して茂原支店担当者に交付し,茂原支店担当者は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告横堀本店の入会を承諾した。
原告横堀本店は,同月7日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の6,乙J24の1,2,原告横堀本店代表者)
キ 原告ミツワは,平成2年3月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託契約書を作成して癸木に交付し,癸木は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,同年5月ころ,原告ミツワの入会を承諾した。
原告ミツワは,同月21日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同月25日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の7,乙J7,25の1,2,証人癸木,原告ミツワ代表者)
ク 原告花澤電装は,平成2年3月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託契約書を作成して丑葉に交付し,丑葉は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告花澤電装の入会を承諾した。
原告花澤電装は,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため2000万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の8,乙J8,証人丑葉,原告花澤電装代表者)
ケ 原告十文字土木は,平成2年5月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証申込書を作成して卯口に交付し,卯口は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告十文字土木の入会を承諾した。
原告十文字土木は,同月11日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の9,乙J9,証人卯口,原告十文字土木代表者)
コ 原告なべやは,平成3年11月ころ,本件会員権を4000万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託契約書を作成して辰上に送付し,辰上は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告なべやの入会を承諾した。
原告なべやは,同月5日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため4000万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金500万円を含む4500万円を支払った。
(甲46の10,乙J10,証人辰上,原告なべや代表者)
サ 原告小原組は,平成2年5月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証申込書を作成して巳下に交付し,巳下は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告小原組の入会を承諾した。
原告小原組は,同月9日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同月10日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の11,乙J11,26の1,2,証人巳下)
シ 原告安藤建材は,平成2年5月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して未川に交付し,未川は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,同年7月ころ,原告安藤建材の入会を承諾した。
原告安藤建材は,同月10日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3000万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の12,乙J12,証人未川,原告安藤建材代表者)
ス 原告知久商会は,平成2年3月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して申谷に交付し,申谷は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告知久商会の入会を承諾した。
原告知久商会は,同月29日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため2000万円の融資を受け,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の13,乙J13,証人申谷,原告知久商会代表者)
セ 原告安田総業は,平成2年3月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託契約書を作成して酉沢に交付し,酉沢は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告安田総業の入会を承諾した。
原告安田総業は,同年4月2日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の14,乙J14,証人酉沢,証人辰口)
ソ 平林種苗は,平成2年3月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証申込書を作成して被告大多喜支店担当者に交付し,被告大多喜支店担当者は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,平林種苗の入会を承諾した。
平林種苗は,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
その後,平林種苗は,平成11年6月30日,原告平林物産に対し,本件会員権を3809万円で売却した。
(甲46の15,乙J15,証人亥原,原告平林物産代表者)
タ 原告富士無線は,平成2年3月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して被告大多喜支店担当者に交付し,被告大多喜支店担当者は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告富士無線の入会を承諾した。
原告富士無線は,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲46の16,乙J15,証人亥原)
チ 原告愛郷ホームは,平成2年7月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して甲谷に交付し,甲谷は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告愛郷ホームの入会を承諾した。
原告愛郷ホームは,同月31日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同年8月6日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲72の1,乙J17,証人甲谷,証人乙沢)
ツ 原告明治神宮は,平成2年4月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書を作成して丙野に交付し,丙野は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,同年5月ころ,原告明治神宮の入会を承諾した。
原告明治神宮は,同月25日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲72の2,乙J18,証人丙野,証人丁原)
テ 原告伊藤商店は,平成2年6月ころ,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書を作成して戌崎に交付し,戌崎は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,そのころ,原告伊藤商店の入会を承諾した。
原告伊藤商店は,同月29日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3500万円の融資を受け,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲72の3,乙J19,証人戌崎,原告伊藤商店代表者)
ト 原告三協ハウジングは,平成2年2月,本件会員権を3500万円で購入することとし,大多喜城ゴルフ倶楽部宛の入会申込書及び保証委託並担保差入契約書等を作成して己田に交付し,己田は,これを大多喜城ゴルフ倶楽部に送付した。これを受けて,大多喜城ゴルフ倶楽部は,同年6月ころ,原告三協ハウジングの入会を承諾した。
原告三協ハウジングは,同月29日,大多喜城ゴルフ倶楽部の連帯保証のもとで被告から本件会員権購入代金の支払のため3200万円の融資を受け,同月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円を含む3809万円を支払った。
(甲72の4,乙J20,27の1,2,証人庚岡,原告三協ハウジング代表者)
(4)  大多喜城ゴルフ倶楽部の推移
ア 大多喜城ゴルフ倶楽部は,被告以外の金融機関とも,本件会員権の購入に関して,前記(2)アと同様の提携ローンの合意を行い,これらの金融機関の紹介により,平成元年以降,特別縁故募集として800名の法人会員を集めた後,追加の第一次募集を行い,平成4年11月30日,本件ゴルフ場を開場した(平成12年ころの公表会員数は法人939名)。
(甲42,64,甲70の2)
イ 大多喜城ゴルフ倶楽部は,ゴルフ場開場後,海外でのプレーを希望する会員への利便性提供の意味を含め,豊富な預託金により富士カントリー関係の海外ゴルフ場等への投融資を行ったが,その後海外のゴルフ場の価額が大幅に下落し,出資会社が大幅な債務超過に陥ったことから,出資金の回収が不能となった。
また,バブル経済崩壊後における経済不況の深刻化・長期化によって,会員権購入のためのローンの支払が困難となる会員が続出した結果,金融機関から,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して保証債務の履行請求が相次ぎ,履行ができない状態に陥った。
さらに平成7年当時約1000万円であった会員権相場が,平成15年には250万円程度に下落し,預託金券面額を大幅に割り込むこととなり,大多喜城ゴルフ倶楽部は,平成16年12月30日以降に償還時期を順次迎える預託金について,会員権の分割を条件に据置期間の延長を求めたが,その約3割について同意を得ることができず,預託金返還請求に応じられない見込みとなった。
(甲28の1,甲64)
ウ こうしたことから,大多喜城ゴルフ倶楽部は,平成16年12月6日に,当庁に対して民事再生手続開始の申立てを行って倒産し,同月10日に民事再生手続開始決定を受けた。その後,平成17年4月27日,スポンサーとして東急不動産株式会社を選定し,預託金返還請求権について元本等の95%の免除を受けること等を内容とする再生計画について認可決定を受けた。
(甲28の1,甲64,甲J65の1,2,乙C6,8,9)
2  争点
(1)  本件会員権購入の勧誘を行った者(以下「被告担当者」という。)による被告の勧誘行為が,以下のとおり違法なものであって,被告の故意又は過失による不法行為に該当するか(争点1)。
ア 本件会員権に関する虚偽の説明
イ 本件会員権に関する断定的な説明
ウ 本件会員権の危険性に関する説明義務違反
エ 金融機関の優越的地位の濫用
オ 販売媒介行為の銀行法違反
(2)  被告担当者による勧誘行為について,被告は使用者責任を負うか(予備的主張,争点2)。
(3)  原告らは,被告の不法行為により損害を被ったといえるか(争点3)。
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1(被告の違法な勧誘行為)について
ア 本件会員権に関する虚偽の説明
(ア) 原告らについて
(原告らの主張)
本件会員権の募集当時,フジパンは富士カントリーの親会社ではなく,フジパンが,富士カントリー及びその子会社である大多喜城ゴルフ倶楽部のゴルフ場の経営や預託金の償還について責任を負担したり,保証をしたりする関係にはなかったのであるから,被告は,そのような誤解を与えることのないような説明を行うべきであった。それにもかかわらず,富士カントリーは,被告の各支店に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部を「フジパンの系列」「フジパン株式会社の関連優良企業」などとしてフジパンとの深い関係を想起させる用語を用いて本件会員権を紹介することを依頼し,これを受けて,被告担当者は,あたかもフジパンが事業の一環として行っているゴルフ場であり,経営的にも余裕があり,経営の安定性や永続性が保証され,このため値上がりも期待できるし,将来の預託金返還も安心できるゴルフ場であるかのような虚偽の説明を行った。
(被告の主張)
否認する。会社が他の会社を経営したり,運営したりすることはない。当該他の会社で選任された代表取締役等を通じて経営に影響を与えることができるにすぎない。この点,原告らが主張する被告担当者の説明は,フジパンと富士カントリーとの関係について具体性を欠いており,フジパンが本件ゴルフ場の開場や15年後の預託金返還請求権を保証しているという趣旨に理解できないことはもとより,「フジパンの経営」という実態が如何なるものか不明である。
原告らは,本件会員権購入に当って,それぞれの特有の情報に加え,「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」や本件ゴルフ場のパンフレットにより,本件ゴルフ場の施設や利用権の詳細とともに,その事業主体が大多喜城ゴルフ倶楽部と富士カントリーであることを理解していた。そうであれば,被告担当者の説明を聞いただけで,原告らにおいて,フジパンが15年後の預託金返還請求権を保証するなどと誤信する道理はないし,フジパンが,別の事業主体である富士カントリー等の経営の結果について法的責任をとる立場にあるという認識を持つこともありえない。
そして,ゴルフ会員権の購入は様々な要因から判断されるのであって,上記のような説明は,いわゆるセールストーク以上のものではなく,原告らの意思決定を左右したとはいえない。
また,富士カントリーの経営に当たる代表取締役等はフジパンの代表取締役等であり,かつ,富士カントリーはフジパンの大株主であったのであるから,両者の間に相応の関係があったことは紛れもない事実であり,フジパンが経営しています等の説明を直ちに虚偽説明ということはできない。
さらに,本件融資当時,ゴルフ会員権相場は値上がりしており,未だバブル経済が崩壊したとは考えられていなかったのであるから,開場の問題がなければ,ゴルフ場を経営する会社は,顧客の関心の対象ではんく,10ないし15年後の運営会社の経営見通しは,購入の決め手とはなっていなかった。
以上のとおり,原告らの主張するような説明が仮にあったとしても,そのこと自体では原告らが本件会員権を購入する動機にならなかったから,原告らの購入判断に影響を及ぼすような虚偽の説明であったとはいえず,違法評価されることはない。
(イ) 原告千代不動産について
(原告千代不動産の主張)
丙沢は,原告千代不動産に対する勧誘に際して,「フジパンが親会社で大多喜城カントリークラブを事業として行うので絶対につぶれない」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告千代不動産は,一般には購入できず,金融機関の推薦する会社しか購入できないという点に魅力を感じ,十分な熟慮期間をおいて本件会員権の購入を決意し,そのために融資を受けたのである。富士カントリーとフジパンの関係については調査もしていなかったのであり,全く重視していなかった。
(ウ) 原告鶴岡興産について
(原告鶴岡興産の主張)
丁野は,原告鶴岡興産に対する勧誘に際して,「経営母体はフジパンだ」「フジパンは中京地区では超優良企業として大変優秀な企業である」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。丁野は,原告鶴岡興産代表者に対して,フジパンと富士カントリーの関係を説明したことはない。
(エ) 原告エルヴェについて
(原告エルヴェの主張)
己崎は,原告エルヴェに対する勧誘に際して,「フジパンが母体であり,フジパン系列のゴルフ場は,どこも経営がしっかりしている。資産としての価値が高い。フジパングループは,株式公開はしていないが,堅実で内部留保の厚い会社である」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告エルヴェ代表者の供述は,伝聞であり,紹介の時期,場所等も不正確で信用性がない。
(オ) 原告石山商事について
(原告石山商事の主張)
被告誉田支店支店長又は辛岡は,原告石山商事に対する勧誘に際して,「フジパンのオーナーがついているゴルフ場です」「もしかのときはフジパンがついている」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告石山商事代表者は,被告誉田支店支店長による勧誘の有無等,記憶に自信がないことを自認しており,その供述は正確でない。
(カ) 原告井上農機について
(原告井上農機の主張)
壬井又は被告長者支店担当者は,原告井上農機に対する勧誘に際して,「フジパンという会社がやっているゴルフ場である」「フジパンは堅実な企業であり,その経営するゴルフ場だから心配ない」「フジパンというのはヤマザキパンのような非常に大きな会社で,かたくてしっかりした会社である」「フジパンの経営するゴルフ場なので全く心配ない」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告井上農機代表者の供述は,勧誘することがあり得ない壬井から勧誘を受けたというもので信用性がない。
(キ) 原告横堀本店について
(原告横堀本店の主張)
茂原支店担当者は,原告横堀本店に対する勧誘に際して,「バックにフジパンがいて,間違いないコース」「大手のフジパンがバックにあり信頼の出来る子会社でありゴルフ場の土地も全て取得しており担保にも入れてない」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告横堀本店代表者は,ゴルフ場経営会社のことはもちろん,ゴルフ会員権についても詳しい知識を有していた。被告の融資は,原告横堀本店が自らの経営判断で購入を決意した本件会員権の購入資金を融資するものであって,茂原支店担当者の説明とは無関係である。
(ク) 原告ミツワについて
(原告ミツワの主張)
癸木は,原告ミツワに対する勧誘に際して,「フジパンがやっているから大丈夫」「預託金は15年ローンで完済後フジパンがついているから安心できる」「経営は一部上場企業のフジパンであり,他のゴルフ場と違って何の問題もなく,将来に亘って大きな資産価値がある」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。癸木は富士カントリーとフジパンの関係については何らの説明もしておらず,原告ミツワが主張するような違法な説明はなかった。
(ケ) 原告花澤電装について
(原告花澤電装の主張)
丑葉は,原告花澤電装に対する勧誘に際して,「富士カントリーのバックはフジパン」「バックはフジパンという会社があって,それは名古屋のほうで大きな会社で,既に向こうのほうにゴルフ場も作っている会社だ」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告花澤電装代表者は、富士カントリーの経営やフジパンなどについても知っていたので,丑葉から特別の説明をする必要はなかった。
(コ) 原告十文字土木について
(原告十文字土木の主張)
卯口は,原告十文字土木に対する勧誘に際して,「フジパンの経営する会員権である」「フジパンはいくつもゴルフ場を経営している」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。被告鴨川支店は,本件会員権を元々取り扱っていなかったにもかかわらず,原告十文字土木の強い希望に基づいて紹介したのであって,被告鴨川支店には本件ゴルフ場のパンフレットすらなかった。したがって,原告十文字土木が違法な説明として主張するような説明を被告がしなければならない理由はなかった。
(サ) 原告なべやについて
(原告なべやの主張)
亥原は,原告平林物産代表者に対して「フジパンがバックのゴルフ場である」と虚偽の説明をしたが,それを信用した原告平林物産代表者がさらに原告なべや代表者に同旨の説明をしたため,原告なべや代表者もその虚偽の説明を信用した。
(被告の主張)
否認する。被告が原告なべやを勧誘したことはなく,原告なべやと被告間の融資契約は原告なべやの要望により締結されたものである。この点,原告なべやは亥原が虚偽の説明を行ったと主張するが,原告なべやは被告との取引もなく,被告担当者の話を聞いたこともない。原告なべやは,原告平林物産代表者から本件ゴルフ場の話を聞き,視察プレーをした上で,自らプレーする目的で本件会員権を購入する決断をしたのであり,融資の希望を受けて手続を行っただけの被告が不法行為責任を負うことはない。
(シ) 原告小原組について
(原告小原組の主張)
巳下は,原告小原組に対する勧誘に際して,「房総カントリーと同じでフジパンが土台」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。丑木は,房総カントリーのメンバーであることから,自らの経験したことに基づいて,富士カントリーはフジパンが土台でしっかりしているとの評価を持っていた。
(ス) 原告安藤建材について
(原告安藤建材の主張)
未川は,原告安藤建材に対する勧誘に際して,「経営母体がフジパンだから全く問題ない」「実質フジパンがバックです」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。
(セ) 原告知久商会について
(原告知久商会の主張)
申谷又は被告津田沼駅前支店行員辛井C郎(以下「辛井」という。)は,原告知久商会に対する勧誘に際して,「バックにフジパンがついている」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告知久商会代表者は房総カントリーの会員であって,以前から富士カントリーのことを知っていた。フジパンがバックについていると話をしていたのは原告知久商会代表者であり,何ら申谷の説明には違法はなかった。
(ソ) 原告安田総業について
(原告安田総業の主張)
酉沢は,原告安田総業に対する勧誘に際して,「経営母体はフジパンである」「フジパンは関西で大手なんですよ」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。そもそも酉沢は,フジパンの存在を知らなかったのであるから,酉沢が経営母体がフジパンという説明をすることはありえない。
(タ) 原告平林物産について
(原告平林物産の主張)
亥原は,平林種苗に対する勧誘に際して,「フジパンさんという大きな会社が母体にあるから,預託金の返還についてはまったく問題ないよ,心配ないよ」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。平林種苗代表者は,本件会員権購入以前から富士カントリーはフジパンと関係があるとの認識を有していたのに対し,亥原は,富士カントリーとフジパンとの関係は知らなかったので,説明したことはない。
(チ) 原告富士無線について
(原告富士無線の主張)
亥原は,原告富士無線に対する勧誘に際して,「フジパン経営です」「フジパンは無借金経営ですので安心です」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告富士無線代表者は,ゴルフ情報に明るく,地元の有力者として,亥原にゴルフ場開発等の情報を伝えていたのであり,ゴルフに関する情報量は圧倒的に原告富士無線が勝っていた。原告富士無線は,自らの判断に基づき,事務所からも至近のゴルフ場である本件会員権の購入を決めたのであり,亥原が富士カントリーとフジパンとの関係を説明したことはない。
(ツ) 原告愛郷ホームについて
(原告愛郷ホームの主張)
甲谷は,原告愛郷ホームに対する勧誘に際して,「フジパンが経営母体になっている」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。甲谷がフジパンが経営母体との説明をしたことはなく,原告愛郷ホームは,縁故会員権である本件会員権を,将来の接待,自らのプレー,利殖を狙って、購入したものである。
(テ) 原告明治神宮について
(原告明治神宮の主張)
丙野は,原告明治神宮に対する勧誘に際して,「フジパンが経営母体である」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。丙野は,自分自身が房総カントリーのメンバーであることから入手した情報を丁原に伝えたに止まる。丁原は,丙野から説明を受ける前から富士カントリーはフジパンのゴルフ場との認識を持っていた。従って,丙野が仮にフジパンが経営母体という説明をしたとしても,そのことが原告明治神宮による本件会員権購入の意思決定を左右したことはない。
(ト) 原告伊藤商店について
(原告伊藤商店の主張)
戌崎は,原告伊藤商店に対する勧誘に際し,「バック会社はフジパンである」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。戌崎がフジパンがバックという説明をしたことはなく,原告伊藤商店は,原告伊藤商店代表者の経営者としての判断に基づいて融資を受けるに至ったものである。
(ナ) 原告三協ハウジングについて
(原告三協ハウジングの主張)
己田は,本件会員権の購入を打診してきた原告三協ハウジングに対して,「房総カントリーと同じフジパンのゴルフ場である」という説明を行った。
(被告の主張)
否認する。原告三協ハウジング代表者は,自らの経験から大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンとの関係を推測して,その判断に基づいて,本件会員権の購入を決断したものである。
イ 本件会員権に関する断定的な説明
(原告らの主張)
ゴルフ会員権が異常な値上がりをしている反面で,ゴルフ場の事業については不確定要素が多い状況であり,15年後という長期に亘る預託金の償還については危険性があるにもかかわらず,被告担当者は,本件会員権購入の勧誘に際し,将来絶対につぶれない確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明した。
(原告千代不動産の主張)
丙沢は,原告千代不動産に対する勧誘に際し,「大多喜城ゴルフ倶楽部は,絶対につぶれない会社だ」「銀行が推薦するゴルフ場だから間違いないし,銀行が推薦する会社しか買えない」と説明した。
(原告原告鶴岡興産の主張)
丁野は,原告鶴岡興産に対する勧誘に際し,本件ゴルフ場は「経営上の不安はなく,銀行としてもお客に勧めるコースである」「入会保証金返却時にはこの会員権は金利を含んだ5000万くらいの相場になっている」と説明した。
(原告エルヴェの主張)
己崎は,原告エルヴェに対する勧誘に際し,「大多喜城も優良ゴルフ場になる」「資産としての保有価値が高い」「支店長特別推薦枠であり,将来の事業財産として価値が出る」と説明した。
(原告石山商事の主張)
被告誉田支店支店長又は辛岡は,原告石山商事に対する勧誘に際し,本件ゴルフ場は,「優良なゴルフ場で,絶対に損をすることはない」「預託金もフジパンがついているから大丈夫」「担保価値も高いので今後色々有利である」と説明した。
(原告井上農機の主張)
壬井又は被告長者支店担当者は,原告井上農機に対する勧誘に際し,本件ゴルフ場は「非常に固い企業がバックに付いているので全く心配要らない」「堅実な経営のゴルフ場だ」「金利分としてプレーが安く行える」と説明した。
(原告横堀本店の主張)
茂原支店担当者は,原告横堀本店に対する勧誘に際し,「預り金も戻ってきますから,間違いなく戻ってきますから」「オープンしたら間違いなく値上がりしますよ」と説明した。
(原告ミツワの主張)
癸木は,原告ミツワに対する勧誘に際し,「フジパンがやっているから大丈夫」「このゴルフ場はいいゴルフ場になる」と説明した。
(原告花澤電装の主張)
丑葉は,原告花澤電装に対する勧誘に際し,「千葉銀行が窓口になって縁故募集をする,そういうことであるから,間違いのないゴルフ場だから安心して買って欲しい」「開場すればすぐに7000万円から1億円くらいの値上がりが見込めるから預託金返還など問題にならない」と説明した。
(原告十文字土木の主張)
卯口は,原告十文字土木に対する勧誘に際し,「会員権のローンに対してカントリークラブが保証するというやり方もフジパングループという大きな資本がなせることであり,経営基盤のしっかりしたところなので償還期間を通常より長い15年と打ち出せる」「千葉銀行が扱うことになったのもそうした経営基盤のしっかりしたところだから」と説明した。
(原告なべやの主張)
原告なべや代表者は,亥原の原告平林物産代表者に対する「預託金の返金は全く問題ない」「心配ない」「倍とは言わないけど,二,三千万円上がる」との説明を信用した。
(原告小原組の主張)
巳下は,原告小原組に対する勧誘に際し,「法人だけが入れるゴルフ場で一般の人は入れない。フジパンだから絶対大丈夫」と説明した。
(原告安藤建材の主張)
未川は,原告安藤建材に対する勧誘に際し,預託金返還の可能性について,「預託金は間違いなく戻ってきます」「フジパンだから全く問題ない」「15年後の退職金と思って買って欲しい」と説明した。
(原告知久商会の主張)
申谷又は辛井は,原告知久商会に対する勧誘に際し,「この次の募集で500万か600万上がりますよ」と説明した。
(原告安田総業の主張)
酉沢は,原告安田総業に対する勧誘に際し,「資産形成になる」「値上がりする」「投機として良い」と説明した。
(原告平林物産の主張)
亥原は,平林種苗に対する勧誘に際し,「預託金の返金は全く問題ない」「心配ない」「倍とは言わないけど,二,三千万円上がる」と説明した。
(原告富士無線の主張)
亥原は,原告富士無線に対する勧誘に際し,「フジパンは無借金経営ですので安心です」「あと2枚しかない,あと1枚しかない。早くしたほうが得をする」「オープン1年後には6000万円くらいになるのでその時に売ればよい」と説明した。
(原告愛郷ホームの主張)
甲谷は,原告愛郷ホームに対する勧誘に際し,「フジパンが親会社なので,倒産することは考えづらく,万一の事があってもフジパンが母体なので大丈夫」「千葉銀行の関係の取引先に特別縁故で募集している」と説明した。
(原告明治神宮の主張)
丙野は,原告明治神宮に対する勧誘に際し,「一時募集で4800万,二次募集で5500から6000万ぐらいになるだろう」と説明した。
(原告伊藤商店の主張)
戌崎は,原告伊藤商店に対する勧誘に際し,「将来の退職金代わりになる」「値上がりする,倍ぐらいにはなる。1億も夢じゃないかも知れないよ」と説明した。
(原告三協ハウジングの主張)
己田は,原告三協ハウジングに対する勧誘に際し,「フジパンだから確実である」と説明した。
(被告の主張)
被告担当者が原告らの主張する断定的な内容の説明をしたことは,否認する。
仮に原告ら主張の言辞があったとしても,これは,共通の認識であった当時の経済情勢を背景にして,将来の見通しを述べたものにすぎず,確実な事実を告げたり,保証したりしたものではない。原告らが主張する被告担当者の説明には,被告担当者が一般には入手できない特別の情報に基づくものとして,又は特別の専門的見解に依拠するものとして,将来の見通しを述べたものはなく,企業経営者として日々経営判断をしている原告らの決断を左右するようなものではなかった。
そうであれば,被告担当者の説明には,何ら違法性はない。
ウ 本件会員権の危険性に関する説明義務違反
(原告らの主張)
被告は,昭和52年ころから富士カントリーの関連会社に被告の出身者を出向させており,平成元年ころには,被告出身の5名が,富士カントリーの推進するゴルフ事業の極めて重要な役割を占めていた。また,被告は,提携ローンのほかにも,富士カントリー本体に25億円程度の融資をしていた。こうしたことから,被告は,富士カントリーが大多喜城ゴルフ倶楽部の預託金を含めた資金を海外ゴルフ場開発や各種の投資,絵画の購入等の事業に支出しており,それらの事業が頓挫した場合にはゴルフ場経営や預託金の償還に支障が生じることを知っていたか又は当然に知ることができた。それにもかかわらず,被告担当者は,これらの危険性を原告ら(原告平林物産については,平林種苗をいう。以下,本項,エ及びオにおいて同じ。)に説明しなかった。
また,ゴルフ会員権は,著しい暴騰を続けている反面,ゴルフ場の供給過多による相場の崩壊のおそれが予測され,被告自身も自らのシンクタンクにおいてゴルフ市場の先行についての不安定さを公表していたのであるから,被告は,ゴルフ会員権の価格暴落の危険が指摘されていることを認識しており,ゴルフ事業の今後について不確定要素が多い状況にあり,長期に亘る預託金の償還については危険性がある状況であることを知っていた。それにもかかわらず,被告担当者は,その危険を原告らに説明しなかった。
(被告の主張)
被告担当者に本件会員権の危険性に関する説明義務違反があることは否認する。
富士カントリーも大多喜城ゴルフ倶楽部も,ともに会社定款で「経営上必要と認めた内外の他会社に対する投資」を会社の目的としているのであるから,内外への投資行為は,何ら違法ではなく,「流用」とはいえない。しかも,本件会員権を説明するパンフレットには,アメリカ国内のゴルフ場の利用ができることが記載されており,大多喜城ゴルフ倶楽部が海外進出していることは容易に分かる。国内のゴルフ場に積極的に投資していることも,同パンフレットの「FUJI COUNTRY GROUP」との案内文を見れば一目瞭然であった。
また,平成2年当時,海外投資が特に危険であるとは一般的に理解されていなかっただけでなく,被告において危険であると認識すべき特別な事情もなかった。したがって,被告担当者が原告らに対して投資の危険性を説明する義務はなかった。
預託金返還請求権のリスクは,大多喜城ゴルフ倶楽部の経営状態に係ることであり,企業経営者である原告らの代表者は当然に分かっていた。そして,銀行が紹介する企業であっても15年後の経営状態は,誰も保証できないし,予想すらできないから,本件会員権を紹介するに当たり,被告担当者が改めてそのリスクを説明する義務はなかった。
エ 金融機関の優越的地位の濫用
(原告なべや以外の原告らの主張)
被告担当者は,著名金融機関の行員としての社会的な信用に加えて,原告らとの継続的な銀行取引によって培ってきた信頼関係や,原告らの経営内容や資産状況などの内情を把握しているという点や,融資している若しくは今後も融資の可否を判断する立場という総合的な優越的地位を有していた。被告は,その立場を利用して本件会員権の販売を媒介した。
(原告なべやの主張)
被告は,国の免許を受けてその監督の下に業務を担当し,かつ業務を通じて金融に精通していると評価されている金融機関の社会的信用と,千葉県において別格とも言うべき信頼を獲得していた被告の支店長の説明を,原告なべやが絶対的に信用して本件会員権の購入を希望していることを知りながら,その信用に乗じて,原告なべやを直接勧誘して本件会員権の販売を媒介した。
(被告の主張)
否認する。原告らは,いずれも被告にとって優良な取引先であって,他の金融機関がメイン銀行であったり,何時でも他行から融資を受ける強みを持っていたり,被告とは融資取引がなかった取引先ばかりである。そもそも被告が優越的な地位にあるような力関係にはなかった。
オ 販売媒介行為の銀行法違反
(原告らの主張)
被告担当者は,単なるゴルフ場の紹介にとどまらず,ゴルフ場の会員契約を直接媒介して入会申込書までも原告らから受領した。ゴルフ場関係者による説明や勧誘などが一切介在しない銀行の直接媒介による入会手続は,銀行法や大蔵省の通達によって禁止されている銀行の目的外行為であり,当然に違法である(銀行法12条)。また,こうした銀行による媒介行為に対して,大多喜城ゴルフ倶楽部からは,協力預金という名のもとに対価が支払われていたから,特にその違法性は強い。
(被告の主張)
銀行法は,同法10条1項1号乃至3号において銀行の営む業務を列挙した上,同条2項柱書において,同項に列挙する業務その他銀行業に付随する業務を営むことができるとしている。
被告担当者が,本件会員権を紹介したのは,被告の業務そのものである融資契約を締結するために,情報提供として行ったものであって,本件会員権の販売自体を目的とするものでなかった。そうであれば,同法10条2項柱書の定める被告の本来の業務に付随する業務を行ったというべきであって,同法違反にはなりえない。もともと,同法が銀行の行う業務を同法12条で制限した趣旨は,銀行に全く自由な意思による無制限の業務を許した場合には,その業務内容如何によっては,大きな損失を被って,銀行経営が危うくなる事態も想定されることから,銀行の行うことができる業務を一定の範囲に制限し,もって銀行経営の健全性を期することにあると解されるところ,被告担当者が本件会員権の情報提供を行ったとしても,直接被告が何らかの債務を負担することにはならないから,被告担当者の行為は同法に反するものではない。
(2)  争点2(使用者責任,予備的主張)について
(原告らの主張)
被告担当者が行った勧誘行為は,被告の事業執行に際して行われたものである。
(被告の主張)
原告らの主張は争う。
(3)  争点3(損害)について
(原告千代不動産の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告千代不動産は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告千代不動産は,平成2年3月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告千代不動産は,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,平成7年までの支払利息の合計は641万円となる。
その結果,原告千代不動産は,購入代金と利息合計額の4450万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告千代不動産は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での原告千代不動産が得た配当利益は,175万円と評価される。また,原告千代不動産に対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告千代不動産は,購入代金と利息合計額の4450万円に,弁護士費用200万円を加算した合計4650万円から,受領した179万0628円を差し引いた4470万円(端数切り捨て)の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告鶴岡興産の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告鶴岡興産は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告鶴岡興産は,平成2年4月2日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告鶴岡興産は,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,その後10年間の支払利息の合計は1747万円となる。
その結果,原告鶴岡興産は,購入代金と利息合計額の5423万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告鶴岡興産は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での原告鶴岡興産が得た配当利益は,175万円と評価される。また,原告鶴岡興産に対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告鶴岡興産は,購入代金と利息合計額の5423万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5623万円から受領した179万0628円を差し引いた5444万円(端数切り上げ)の損害賠償請求権を有する。原告鶴岡興産は,平成17年5月26日の本件口頭弁論期日において,ローン残額2059万円と上記5444万円の損害賠償請求権を対当額で相殺する旨の意思表示を行った。そこで,相殺後の残額3385万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年4月2日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告エルヴェの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告エルヴェは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告エルヴェは,平成2年4月9日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告エルヴェは,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,その後の支払利息の合計は3104万円となる。
その結果,原告エルヴェは,購入代金と利息合計額の6913万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告エルヴェは,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での原告エルヴェが得た配当利益は,175万円と評価される。また,原告エルヴェに対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告エルヴェは,購入代金と利息合計額の6913万円に,弁護士費用200万円を加算した合計7113万円から受領した179万0628円を差し引いた6933万円(端数切り捨て)の損害賠償請求権を有する。原告エルヴェは,平成17年5月26日の本件口頭弁論期日において,ローン残額2059万円と上記6933万円の損害賠償請求権を対当額で相殺する旨の意思表示を行った。そこで,相殺後の残額4874万円のうち一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年4月9日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告石山商事の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告石山商事は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告石山商事は,平成2年6月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告石山商事は,同月29日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,平成17年2月27日までの支払利息の合計は1059万円となる。
その結果,原告石山商事は,購入代金と利息合計額の4868万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告石山商事は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での原告石山商事が得た配当利益は,175万円と評価される。また,原告石山商事に対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告石山商事は,購入代金と利息合計額の4868万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5068万円から受領した179万0628円を差し引いた4888万円(端数切り捨て)の損害賠償請求権を有する。原告石山商事は,平成17年5月26日の本件口頭弁論期日において,ローン残額986万円と上記4888万円の損害賠償請求権を対当額で相殺する旨の意思表示を行った。そこで,相殺後の残額3902万円のうち一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年6月29日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告井上農機の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告井上農機は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告井上農機は,平成2年3月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告井上農機は,同月26日,被告との間で,2000万円のローン契約を締結し,平成6年1月までの支払利息の合計は455万円となる。
その結果,原告井上農機は,購入代金と利息合計額の4264万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告井上農機は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での原告井上農機が得た配当利益は,175万円と評価される。また,原告井上農機に対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告井上農機は,購入代金と利息合計額の4264万円に,弁護士費用200万円を加算した合計4464万円から受領した179万0628円を差し引いた4284万円(端数切り捨て)の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告横堀本店の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告横堀本店は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告横堀本店は,平成2年6月7日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告横堀本店は,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,現在までの支払利息の合計は2617万円となる。
その結果,原告横堀本店は,購入代金と利息合計額の6426万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われた。また,原告横堀本店に対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告横堀本店は,購入代金と利息合計額の6426万円に,弁護士費用200万円を加算した合計6626万円から受領した179万0628円を差し引いた損害賠償請求権を有する。原告横堀本店は,平成17年5月26日の本件口頭弁論期日において,ローン残額1635万円と上記損害賠償請求権を対当額で相殺する旨の意思表示を行った。そこで,相殺後の残額4987万0172円のうち一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年6月7日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告ミツワの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告ミツワは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告ミツワは,平成2年5月25日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告ミツワは,同月21日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,現在までの支払利息の合計は1552万円となる。
その結果,原告ミツワは,購入代金と利息合計額の5361万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告ミツワは,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での原告ミツワが得た配当利益は,175万円と評価される。また,原告ミツワに対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告ミツワは,購入代金と利息合計額の5361万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5561万円から受領した179万0628円を差し引いた5381万9372円の損害賠償請求権を有する。原告ミツワは,平成17年5月26日の本件口頭弁論期日において,ローン残額2119万円と上記5381万9372円の損害賠償請求権を対当額で相殺する旨の意思表示を行った。そこで,相殺後の残額3262万円(端数切り捨て)を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年5月25日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告花澤電装の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告花澤電装は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告花澤電装は,平成2年3月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告花澤電装は,被告との間で,2000万円のローン契約を締結し,現在までの支払利息の合計は849万円となる。
その結果,原告花澤電装は,購入代金と利息合計額の4658万円の損害を被った。
イ 原告花澤電装に対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告花澤電装は,購入代金と利息合計額の4658万円に,弁護士費用200万円を加算した合計4858万円から,受領した4万0628円を差し引いた4853万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告十文字土木の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告十文字土木は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告十文字土木は,平成2年5月11日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告十文字土木は,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,現在までの支払利息の合計は188万円となる。
その結果,原告十文字土木は,購入代金と利息合計額の3997万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。また,原告十文字土木に対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告十文字土木は,購入代金と利息合計額の3997万円に,弁護士費用200万円を加算した合計4197万円から,受領した179万0628円を差し引いた4017万9372円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年5月15日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告なべやの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告なべやは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告なべやは,平成3年11月5日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金500万円と預託金4000万円の合計4500万円を支払った。同時に原告なべやは,被告との間で,4000万円のローン契約を締結し,現在までの支払利息の合計は1075万円となる。
その結果,原告なべやは,購入代金と利息合計額の6188万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続における配当及び甲川A夫の私財提供として合計160万8932円が原告なべやに対して支払われた。
ウ 原告なべやは,購入代金と利息合計額の6188万円に,弁護士費用200万円を加算した合計6388万円から,受領した160万8932円を差し引いた6227万1068円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として4000万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成3年11月5日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告小原組の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告小原組は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告小原組は,平成2年5月10日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告小原組は,同月9日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,平成17年9月1日までの支払利息の合計は1388万円となる。
その結果,原告小原組は,購入代金と利息合計額の5197万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続における配当及び甲川A夫の私財提供として合計135万3128円が原告小原組に対して支払われた。
ウ 原告小原組は,購入代金と利息合計額の5197万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5397万円から,受領した135万3128円を差し引いた5261万円(端数切り捨て)の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年5月10日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告安藤建材の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告安藤建材は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告安藤建材は,平成2年7月10日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告安藤建材は,被告との間で,3000万円のローン契約を締結し,平成9年12月11日までの支払利息の合計は954万円となる。
その結果,原告安藤建材は,購入代金と利息合計額の4763万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告安藤建材は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での原告安藤建材が得た配当利益は,175万円と評価される。また,原告安藤建材に対して,甲川A夫の私財提供という名目で3万9823円の支払がされた。
ウ 原告安藤建材は,購入代金と利息合計額の4763万円に,弁護士費用200万円を加算した合計4963万円から受領した179万円(端数切り上げ)を差し引いた4784万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年7月9日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告知久商会の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告知久商会は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告知久商会は,平成2年3月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告知久商会は,同月29日,被告との間で,2000万円のローン契約を締結し,平成7年3月27日までの支払利息の合計は547万円となる。
その結果,原告知久商会は,購入代金と利息合計額の4356万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告知久商会は,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での原告知久商会が得た配当利益は,175万円と評価される。また,原告知久商会に対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告知久商会は,購入代金と利息合計額の4356万円に,弁護士費用200万円を加算した合計4556万円から,受領した180万円(端数切り上げ)を差し引いた4376万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告安田総業の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告安田総業は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告安田総業は,平成2年3月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告安田総業は,同年4月2日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,平成17年3月27日までの支払利息の合計は1287万円となる。
その結果,原告安田総業は,購入代金と利息合計額の5096万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続における配当及び甲川A夫の私財提供として合計179万0628円が原告安田総業に対して支払われた。
ウ 原告安田総業は,購入代金と利息合計額の5096万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5296万円から,受領した180万円(端数切り上げ)を差し引いた5116万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告平林物産の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,平林種苗は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないし,また,原告平林物産も平林種苗から本件会員権を購入していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 平林種苗の損害
平林種苗は,平成2年3月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に平林種苗は,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,平成11年9月13日までの支払利息の合計は995万円となる。
その結果,平林種苗は,購入代金と利息合計額の4804万円から原告平林物産に対する本件会員権の譲渡代金3809万円を差し引いた995万円の損害を被った。
イ 平林種苗の損害賠償請求権の譲渡
平林種苗は,平成18年4月5日,原告平林物産に対し,前記アの損害賠償請求権を譲渡し,その旨被告に通知をした。
ウ 原告平林物産の損害
原告平林物産は,平成11年6月30日,平林種苗から本件会員権を3809万円で譲り受けた。
エ まとめ
原告平林物産は,平林種苗から譲り受けた損害賠償請求権と原告平林物産自らの損害賠償請求権に,弁護士費用200万円を加算した合計5593万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告富士無線の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告富士無線は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告富士無線は,平成2年3月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。同時に原告富士無線は,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,平成17年3月30日までの支払利息の合計は1620万円となる。
その結果,原告富士無線は,購入代金と利息合計額の5429万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続における配当及び甲川A夫の私財提供として合計4万6432円が原告富士無線に対して支払われた。
ウ 原告富士無線は,購入代金と利息合計額の5429万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5629万円から,受領した4万6432円を差し引いた5624万3568円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年3月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告愛郷ホームの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告愛郷ホームは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告愛郷ホームは,平成2年8月6日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告愛郷ホームは,同年7月31日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,平成17年7月5日までの支払利息の合計は1295万円となる。
その結果,原告愛郷ホームは,購入代金と利息合計額の5104万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続の中で,配当として退会者には5%の175万円が支払われることとなった。原告愛郷ホームは,退会をせずに引き続き本件会員権を保有しているが,再生計画認可確定日から10年経過後の退会の意思表示によって5.6%の返還を受けられる。
結局,現時点での原告愛郷ホームが得た配当利益は,175万円と評価される。また,原告愛郷ホームに対して,甲川A夫の私財提供という名目で4万0628円の支払がされた。
ウ 原告愛郷ホームは,購入代金と利息合計額の5104万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5304万円から,受領した180万円(端数切り上げ)を差し引いた5124万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年8月6日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告明治神宮の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告明治神宮は,本件会員権を購入していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告明治神宮は,平成2年5月25日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続における配当及び甲川A夫の私財提供として合計179万0628円が原告明治神宮に対して支払われた。
ウ 原告明治神宮は,購入代金3809万円に,弁護士費用200万円を加算した合計4009万円から,受領した180万円(端数切り上げ)を差し引いた3829万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年5月25日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告伊藤商店の主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告伊藤商店は,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告伊藤商店は,平成2年6月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告伊藤商店は,同月29日,被告との間で,3500万円のローン契約を締結し,これまでの支払利息の合計は1294万円となる。
その結果,原告伊藤商店は,購入代金と利息合計額の5103万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続における配当及び甲川A夫の私財提供として合計179万0628円が原告伊藤商店に対して支払われた。
ウ 原告伊藤商店は,購入代金と利息合計額の5103万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5303万円から,受領した180万円(端数切り上げ)を差し引いた5123万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年6月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(原告三協ハウジングの主張)
被告の違法な勧誘行為がなければ,原告三協ハウジングは,本件会員権を購入していないし,ローン契約も締結していないのであるから,当該勧誘行為と以下の損害は因果関係がある。
ア 原告三協ハウジングは,平成2年6月30日,大多喜城ゴルフ倶楽部に対して入会金309万円と預託金3500万円の合計3809万円を支払った。原告三協ハウジングは,同月29日,被告との間で,3200万円のローン契約を締結し,平成17年9月20日までの支払利息の合計は1355万円となる。
その結果,原告三協ハウジングは,購入代金と利息合計額の5164万円の損害を被った。
イ その後大多喜城ゴルフ倶楽部は倒産し,その民事再生手続における配当及び甲川A夫の私財提供として合計179万0628円が原告三協ハウジングに対して支払われた。
ウ 原告三協ハウジングは,購入代金と利息合計額の5164万円に,弁護士費用200万円を加算した合計5364万円から受領した180万円(端数切り上げ)を差し引いた5184万円の損害賠償請求権を有するので,一部請求として3500万円を請求する。また,遅延損害金起算日は違法勧誘により入会申込みをした平成2年6月30日であるから,同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する。
(被告の主張)
原告ら(原告明治神宮を除く。)が原告ら主張のとおりのローン契約を締結し,本件会員権を購入したことは認めるが,原告らが損害を被ったことは否認する。
ア 入会金について
原告らは,大多喜城ゴルフ倶楽部と会員契約を締結し,大多喜城ゴルフ倶楽部が破綻するまでその利益を享受していたものであって,入会金は,当初入会時に必要であったものであるから,損害ということはできない。
イ 元利金について
原告らは,被告との金銭消費貸借契約の成立自体を争ってはいないところ,有効に成立した金銭消費貸借契約の元利金の返済をすることは当然の債務の履行であって,損害とは構成できない。
ウ 各原告の損害について
各原告の基礎になる損害金の計算は不正確である。
また,平林種苗は,3809万円で本件会員権を購入し,それを3809万円で原告平林物産に売却しており,何らの損害も受けていない。したがって,原告平林物産が平林種苗から損害賠償請求権を譲り受けることはありえない。
エ 相当因果関係について
原告らの損失は,大多喜城ゴルフ倶楽部の倒産に起因するものであるが,同社の倒産原因は,海外投融資の失敗とバブル経済崩壊後における経済不況の深刻化・長期化によって,会員権ローンの支払が困難になる会員が続出したことによる保証債務の履行である。それは,バブル崩壊後の景気の後退が主たる要因であり,本件各融資当時に予見できたことではない。
また,被告担当者の説明と原告らの本件会員権の購入の間には,原告ら自身の自己責任による判断があったのである。
以上に鑑みれば,原告らの主張する損害と被告担当者の説明との間には,いくつもの特殊の事情が介在しているのであって,両者の間の因果関係は社会通念上相当な範囲にあるものとはいえない。また,本件で原告らが主張する損害は,大多喜城ゴルフ倶楽部の破綻を契機として生じたものであるから,通常生じる損害ではなく特別損害と考えられるところ,本件会員権の募集当時,被告は,大多喜城ゴルフ倶楽部が破綻することを全く予見することはできなかった。この点からも,被告担当者の説明と原告ら主張の損害との間には相当因果関係はない。
第3  当裁判所の判断
1  被告担当者らによる勧誘行為の位置づけについて
被告は,大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,被告が,その取引先等に対して本件ゴルフ場を紹介し,本件会員権の購入希望者に対して,その購入資金を融資するとともに,大多喜城ゴルフ倶楽部が購入希望者の借入債務について被告に対して連帯保証する旨の提携ローンの合意(以下「本件提携ローン合意」という。)をしたことは,前記第2の1(2)アに認定のとおりである。そして,証拠(甲41,乙J1,2の3,乙J3から15まで,17から20まで)によれば,本件会員権の募集代行業者であった富士カントリー及び東方興業株式会社は,平成元年12月7日,被告の部・室長・営業店長に宛てて,被告の取引先を対象に本件ゴルフ場の縁故会員180口を募集することになったので,入会希望者へのアプローチの前に,富士カントリー宛に入会の事前審査依頼書を送付することを依頼していたこと,原告明治神宮を除く原告ら(原告平林物産については被勧誘者及び購入者である平林種苗をいう。以下,本項において同じ。)は,本件会員権購入に当たり,本件提携ローン合意に基づく提携ローンを締結しており,原告明治神宮については,提携ローンの利用を前提として勧誘がされていることが認められ,被告大多喜支店支店長であった亥原は,その陳述書において,この種の連絡があれば,当然大多喜支店の顧客のうち,相応しい会社をピックアップして,東方興業株式会社に連絡したはずである旨述べ(乙J15),証人尋問において,募集の案内が来れば,支店とすれば動かざるを得ない旨証言するから,被告担当者らは,被告の各支店の方針に基づき,原告らに対して,被告の提携ローンを利用して本件会員権を購入することを勧誘したと推認される。
そうであれば,被告担当者らが,原告らに対して行った本件会員権購入の勧誘は,提携ローンの利用を勧誘する目的で行われたものであり,被告の営業行為そのものであるから,被告の不法行為の成否の検討においては,被告担当者らの行った本件会員権購入の勧誘行為は,被告による勧誘行為と解して妨げないというべきである。
2  争点1ア(本件会員権に関する虚偽の説明の有無)について
(1)  原告らは,本件会員権の募集当時,フジパンは富士カントリーの親会社ではなく,フジパンが富士カントリー及びその子会社である大多喜城ゴルフ倶楽部のゴルフ場の経営や将来の預託金の償還について責任を負担したり,保証をしたりする関係にはなかったのであるから,被告は,そのような誤解を与えることのないような説明を行うべきであったにもかかわらず,あたかもフジパンが事業の一環として行っているゴルフ場であり,経営的にも余裕があり,経営の安定性や永続性が保証され,このため値上がりも期待できるし,将来の預託金返還も安心できるゴルフ場であるかのような虚偽の説明を行ったと主張する。
そこで検討するに,被告は,本件提携ローン合意に基づき,原告ら(原告平林物産については被勧誘者及び購入者である平林種苗をいう。)に対して本件会員権の購入を勧誘したものであり,取引先等による本件会員権の購入と被告からの融資は極めて密接な関連性を有しているから,被告は,取引先等に対して自ら本件会員権の内容を説明するにあたっては,信義則上,できる限り正確な説明をすべきであり,購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明をしたときは,これを信用して本件会員権を購入した者に対し,上記虚偽の説明と相当因果関係のある損害を賠償すべき義務を負うというべきである。
(2)  富士カントリーの依頼内容について
原告らは,富士カントリーが,被告の各支店に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部を「フジパンの系列」「フジパン株式会社の関連優良企業」などとしてフジパンとの深い関係を想起させる用語を用いて本件会員権を紹介することを依頼し,これを受けて,被告担当者が,あたかもフジパンが事業の一環として行っているゴルフ場であり,経営的にも余裕があり,経営の安定性や永続性が保証され,このため値上がりも期待できるし,将来の預託金返還も安心できるゴルフ場であるかのような虚偽の説明を行ったと主張する。
なるほど,原告らが上記の事実を示す重要な証拠として指摘する「富士カントリー市原倶楽部会員募集について」と題する書面(甲J54の1)には,「当店親密取引先富士カントリー株式会社では総力を結集して千葉県市原市に富士カントリー市原倶楽部18ホールズをオープンいたしました。ご高承のとおり,当社はフジパン株式会社の関連優良会社で,関東・中部地区を中心に459ホールズを有するゴルフ場経営最大手の一つで,当行とは極めて親密な取引関係があります。」との記載があり,同書面に添付された「ゴルフ倶楽部会員券販売情報」と題する書面(甲J54の2)には,「経営会社:富士カントリー株式会社,系列:フジパン株式会社」との記載がある。しかしながら,これらの書面は,株式会社第一勧業銀行(以下「第一勧業銀行」という。)作成に係る書類であって(「ゴルフ倶楽部会員券販売情報」と題する書面も,第一勧業銀行作成に係る「富士カントリー市原倶楽部会員募集について」と題する書面に添付されたものであること及び照会窓口欄の「富士カントリー(株)壬木部長」との記載の後に(当行出向者)との記載があることから,第一勧業銀行作成と認められる。),被告作成に係る書面ではなく,いずれも平成6年当時に富士カントリー市原倶楽部の会員募集に関して,第一勧業銀行八重洲口支店長から同銀行の他の支店長に対して発せられた依頼文書であること,かえって,本件会員権の募集代行業者であった富士カントリー及び東方興業株式会社が,本件会員権の募集に関して,平成元年12月7日,被告の部・室長・営業店長に宛てて送付した「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」と題する書面(甲41)には,事業母体が富士カントリー,運営会社が大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないことに照らすと,原告らが指摘する各書面(甲J54の1,2)をもって,被告が富士カントリーが,被告の各支店に対し,「フジパンの系列」「フジパン株式会社の関連優良企業」などフジパンとの深い関係を想起させる用語を用いて本件会員権を紹介することを依頼し,これを受けて,被告担当者が,本件ゴルフ場についてフジパンが事業の一環として行っているゴルフ場である旨を説明したと推認することはできない。
(3)  原告千代不動産について
原告千代不動産は,丙沢が,勧誘に際して,フジパンが親会社で大多喜城カントリークラブを事業として行うので絶対につぶれないという説明を行ったと主張する。
そして,原告千代不動産代表者は,その調査回答書(甲46の1)において,「フジパン経営している会社なので大丈夫だ」「このゴルフ場はつぶれないから大丈夫だ」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,フジパンが親会社で,大多喜城ゴルフ倶楽部を事業として行うので絶対につぶれない大丈夫だと聞いた旨供述している。
他方,丙沢は,その陳述書(乙J1)において,「私は具体的なことは覚えておりません」「原告は,社長のご判断で入会をお決めになったのであり,私の方から押し付けるようなことは一切しておりません」と述べ,原告千代不動産代表者自身,フジパンと富士カントリーとの関係について資本,経営者及び人事交流といった話はなく,質問もしなかったというのであり,この供述等に照らすと,原告千代不動産代表者の供述等をもって,丙沢が,原告千代不動産代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部の親会社なので絶対つぶれない旨の説明をしたとは認めるには足りない。
念のため,仮に丙沢がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告千代不動産代表者は,その調査回答書(甲46の1)において,本件会員権を購入すると決断した理由は,「1.取引銀行からの勧誘であった。2.銀行が絶体大丈夫だといった。3.銀行が融資するから買ってくれといった。4.支店で一つしか紹介できない会員権だからといわれた。」と述べ,代表者尋問においても,フジパンについてパン屋である程度しか知らなかった,富士カントリーについては知らなかった,フジパンと富士カントリーとの関係について資本,経営者及び人事交流といった話はなく,質問もしなかったと供述しているから,原告千代不動産が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し丙沢が原告千代不動産代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に丙沢がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,丙沢が,本件会員権の内容に関し,原告千代不動産の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告千代不動産の主張は採用することができない。
(4)  原告鶴岡興産について
原告鶴岡興産は,丁野が,勧誘に際して,中京地区では超優良企業であるフジパンが経営母体だという説明を行ったと主張する。
そして,原告鶴岡興産代表者は,その調査回答書(甲46の2)において,「大手の食品会社フジパンの創業者一族の運営によるゴルフ場である富士カントリーグループであり,経営上不安は」ないと説明された旨を述べ,代表者尋問においても,原告鶴岡興産代表者が丁野に大多喜城ゴルフ倶楽部の経営母体はどこかと尋ねたところ,丁野はフジパンである旨述べ,中京地区では超優良企業として大変優秀な企業であることを色々な数字も挙げて説明した旨供述している。
他方,丁野は,本件会員権購入の勧誘当時フジパンという会社のことは知らなかったので,フジパンと富士カントリーの関係を説明したはずはない旨述べていることが認められる(乙J2の1,3,証人戌原)。また,本件会員権購入の勧誘に際し,丁野は「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」と題する書面(甲41)を示しながら説明を行ったところ(乙J2の3),同書面には,縁故会員の募集口数が800口の法人専用のゴルフ場であり,事業母体が富士カントリー,運営会社が大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しない。さらに,原告鶴岡興産代表者は,丁野は何度か訪問して,色々な数字も挙げてフジパンが優秀な企業であることを説明しており,本件会員権の購入を決断するまで数ヶ月を要した旨供述するところ,被告姉崎支店の資料(乙J2の4)によれば,丁野が本件会員権の購入を勧誘した平成元年12月11日に原告鶴岡興産は予約申込みを行っていることが窺われ,原告鶴岡興産代表者の上記供述とは齟齬している。これらの諸点に照らすと,原告鶴岡興産代表者の供述等をもって,丁野が,原告鶴岡代表者に対して,本件ゴルフ場の経営母体がフジパンであると説明したと認めることはできない。
念のため,仮に丁野がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討しても,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない
また,原告鶴岡興産代表者は,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンについては全く知らなかったのに対し,富士カントリーは有名なゴルフ場を運営する会社であると認識していたというのであり(原告鶴岡興産代表者),また,被告姉崎支店の資料(乙J2の4)によれば,原告鶴岡興産代表者は,提携ローンの契約書を作成した平成2年3月29日に法人会員権が購入できることに満足していたことが窺われることを考え合わせると,原告鶴岡興産が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部の関係が重要な事項であったと認めることも困難である。
したがって,丁野が,本件会員権の内容に関し,原告鶴岡興産の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告鶴岡興産の主張は採用することができない。
(5)  原告エルヴェについて
原告エルヴェは,己崎が,勧誘に際して,フジパンが母体であり,フジパン系列のゴルフ場はどこも経営がしっかりしているという説明を行ったと主張する。
そして,当時の原告エルヴェ代表者庚田は,その陳述書(甲J11)において,「富士カントリーという名の付くフジパン系列のゴルフ場は,どこも経営が安定しており,資産としての保有価値が高い。大多喜城も必ず資産価値の高いゴルフ場になる」旨説明されたと述べ,現在の原告エルヴェ代表者丙谷C郎(以下「丙谷」という。)も,代表者尋問において,当時の原告エルヴェ代表者庚田から,被告担当者が大多喜城ゴルフ倶楽部はフジパンがやっていると言って本件会員権購入を勧誘してきているが,どうしようかという相談を受けた旨供述している。
他方,己崎は,その陳述書(乙J3)において,フジパンと富士カントリーの関係を全く知らなかったから,フジパンが経営母体であるとか,富士カントリー系列のゴルフ場は経営がしっかりしているので本件ゴルフ場も優良ゴルフ場になる等の説明をしていないし,そもそも説明できなかった旨述べている。また,丙谷は本件会員権に関する己崎の説明に立ち会ったものではなく,その供述は庚田からの伝聞にすぎない上,庚田の陳述書も,本件会員権購入の勧誘を受けた日時や勧誘を行った被告の担当者についての記憶は正確ではなく,「千葉銀行さんから話のあった富士カントリー大多喜城ゴルフクラブ」としか認識していないというのであり,あいまいな点が少なくない。以上の諸点に照らすと,庚田及び丙谷の供述等をもって,己崎が,庚田に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部の経営母体である旨を説明したと認めるには足りない。
念のため,仮に己崎がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
したがって,己崎が,本件会員権の内容に関し,原告エルヴェの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告エルヴェの主張は採用することができない。
(6)  原告石山商事について
原告石山商事は,被告誉田支店支店長と辛岡が,勧誘に際して,フジパンのオーナーがついているゴルフ場ですという説明を行ったと主張する。
そして,原告石山商事代表者は,その調査回答書(甲46の4)において,「フジパンのオーナが付いているゴルフ場ですから担保価値も高いので今後色々と有利である」と説明された旨を述べ,代表者尋問において,「オーナーはフジパンのオーナーですから」と聞いた旨供述している。
他方,辛岡は,その陳述書(乙J4)において,かかる説明はしていないし,本件会員権購入のための提携ローンについて説明したのは辛岡であって被告誉田支店支店長ではない旨述べ,証人尋問においても,同旨の証言をしている。原告石山商事代表者の代表者尋問における供述も,本件会員権購入の勧誘を行った担当者が誰であったかは正確ではなく,名前の記憶はないというのであり,あいまいな点が少なくない。これらの点に照らすと,原告石山商事代表者の供述等をもって,被告誉田支店支店長又は辛岡が,原告石山商事代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部のオーナーである旨の説明したとは認めるには足りない。
念のため,仮に被告誉田支店支店長又は辛岡がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討しても,原告石山商事代表者は,調査回答書(甲46の4)及び代表者尋問において,大多喜城ゴルフ倶楽部のオーナーがフジパンのオーナーであるという説明を受けた旨述べているのであって,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部のオーナーが同一人物であると説明したとしても,それが必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告石山商事代表者は,代表者尋問において,大多喜城ゴルフ倶楽部の会員権を購入すると決断した一番の理由は,変な山林を買うよりは立派なゴルフ場だから担保になることである旨述べ,また,フジパンというブランドよりも千葉銀の看板のほうにむしろ納得した旨述べているから,原告石山商事が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し辛岡が原告石山商事代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に被告誉田支店支店長又は辛岡がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係について説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,被告誉田支店支店長又は辛岡が,本件会員権の内容に関し,原告石山商事の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告石山商事の主張は採用することができない。
(7)  原告井上農機について
原告井上農機は,壬井又は長者支店担当者が,勧誘に際して,フジパンという堅実な会社がやっているゴルフ場だから心配ないという説明を行ったと主張する。
そして,原告井上農機代表者は,その調査回答書(甲46の5)において,壬井から「フジパンが経営していると聞いた」「フジパンは上場された堅実な企業であり,その経営するゴルフ場なのだから心配ないと聞いた」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,フジパンがやっているゴルフ場で,フジパンは関東だと山崎パンに近いような大きなパン屋の会社で非常に堅くてしっかりした会社で,それがバックについているので全く心配ないと説明された旨供述している。
他方,壬井は,その陳述書(乙J5)において,壬井が平成2年2月1日に被告長者支店に支店長として赴任したときは,既に原告井上農機に対する提携ローンは決まっており,壬井が原告井上農機代表者に対して本件会員権購入の勧誘をしたことは全くない旨述べ,証人尋問においても,勧誘のみならず,本件会員権についての話をしたこともないと証言する。この点,原告井上農機代表者は,壬井から勧誘を受けたという記憶であるが,その前後の方々と話しをしたことはあると思うと述べ,勧誘を受けた場所についても事務所か壬井の自宅か被告長者支店のいずれかであるというにとどまり,3500万円である預託金額について,当初1500万円と聞いていた記憶であると述べるなど,その供述にはあいまいな点が少なくないから,原告井上農機代表者の供述をもって,たやすく壬井らによる具体的な説明内容を認定することはできない。
念のため,仮に壬井又は長者支店担当者がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
したがって,壬井又は長者支店担当者が,本件会員権の内容に関し,原告井上農機の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告井上農機の主張は採用することができない。
(8)  原告横堀本店について
原告横堀本店は,茂原支店担当者が,勧誘に際して,大手のフジパンがバックにあり信頼のできる子会社であるという説明を行ったと主張する。
そして,原告横堀本店代表者は,その調査回答書(甲46の6)において,「大手のフジパンがバックにあり信頼のできる子会社でありゴルフ場の土地も全部取得しており担保にも入れていない」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,バックにフジパンがいて間違いのないコースと聞いた旨供述している。
他方,甲J13及び原告横堀本店代表者尋問の結果によれば,原告横堀本店代表者は,平成2年3月ころ,ゴルフ仲間である癸葉D介から富士カントリー系列の本件会員権の募集が開始されるという話を聞き,ゴルフ仲間4人で入会することを話し合ったこと,同年5月ころ,そのうちの一人である丑波E作から連絡を受け,同人の事務所で茂原支店担当者から本件ゴルフ場のパンフレットに基づいて本件会員権の説明を受けたこと,原告横堀本店代表者は,以前から富士カントリーというゴルフ場経営会社は知っていたが,ゴルフ仲間からは富士カントリーのバックはフジパンだと聞いていたこと,業務上,フジパンが大きなパン屋であることは知っていたので富士カントリーが経営上危ないという認識はなかったことが認められる。そして,原告横堀本店代表者は,茂原支店担当者から本件会員権の説明を受ける前から本件ゴルフ場のバックにはフジパンがいるという認識を有していたこと,茂原支店担当者は,原告横堀本店代表者らに対し本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)を示しながら本件会員権の説明をしたところ,同パンフレットには,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,原告横堀本店代表者は,その調査回答書(甲46の6)においては被告茂原支店支店長であった寅口F代から説明を受けた旨述べていたのに対し,代表者尋問においては,寅口F代から入らないかと言われたことはないと供述を変遷させていることに照らすと,原告横堀本店代表者の供述等をもって,茂原支店担当者が,下のく横堀本店代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部のバックにいて信頼できる旨を説明したと認めることはできない。
念のため,仮に茂原支店担当者が大多喜城ゴルフ倶楽部のバックがフジパンであると説明したとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部のバックにあるという説明は,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
また,原告横堀本店代表者は,茂原支店担当者から本件会員権の説明を受ける以前から,富士カントリーというゴルフ場経営会社は知っており,富士カントリーのバックは製パン業大手のフジパンという認識を持っていたのであるから,仮に茂原支店担当者がフジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部のバックにあるという説明をしたとしても,それが原告横堀本店の判断を誤らせたということもできない。
したがって,茂原支店担当者が,本件会員権の内容に関し,虚偽の説明を行い,原告横堀本店の判断を誤らせたとはいえないから,原告横堀本店の主張は採用することができない。
(9)  原告ミツワについて
原告ミツワは,癸木が,勧誘に際して,フジパンがやっているから大丈夫という説明を行ったと主張する。
そして,原告ミツワ代表者は,その調査回答書(甲46の7)において,「富士カントリー大多喜城倶楽部は経営がフジパンで一部上場企業であり,よそのゴルフ場と違って何の問題もなく将来にわたり大きな資産価値である」「15年後も親会社フジパンがしっかりした内容の経営をしているから安心です」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,大多喜城ゴルフ倶楽部がフジパンの系列とかフジパンが親会社とか,フジパンがやっているので大丈夫と聞いた旨供述している。
他方,癸木は,その陳述書(乙J7)において,「私は富士カントリーとフジパンとの関係について全く知識がなかったので,そのようなことは言っていません」と述べ,証人尋問においても,大多喜城ゴルフ倶楽部の経営がフジパンであるとは言っていないと証言する。加えて,原告ミツワ代表者は,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部の親会社と聞いたというのであり,フジパンが本件ゴルフ場の運営会社でないことは理解していたのであるから,原告ミツワ代表者の供述等をもって,癸木が,原告ミツワ代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部を経営している旨を説明したとは認めるには足りない。
念のため,仮に癸木がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
これに加えて,本件会員権購入の勧誘に際し癸木が原告ミツワ代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に癸木がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,癸木が,本件会員権の内容に関し,原告ミツワの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告ミツワの主張は採用することができない。
(10)  原告花澤電装について
原告花澤電装は,丑葉が,勧誘に際して,富士カントリーのバックはフジパンという会社であるという説明を行ったと主張する。
そして,原告花澤電装代表者は,その調査回答書(甲46の8)において,「富士カントリーのバックはフジパン」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,富士カントリーのバックにはフジパンという会社があって名古屋の方で大きな会社で既に向こうの方にゴルフ場を作っていると聞いた旨供述している。
他方,丑葉は,その陳述書(乙J8)において,自分が話すまでもなく,原告花澤電装代表者は,富士カントリーのバックがフジパンという認識を持っていたと述べ,証人尋問においても,同様の証言をする。加えて,原告花澤電装代表者は,本件会員権購入の勧誘前から,富士カントリーはフジパンの系列だとか経営母体だという認識を有していたというのであり(原告花澤電装代表者),フジパンが本件ゴルフ場の運営会社でないことを理解していたのであるから,原告花澤電装代表者の供述等をもって,丑葉が,原告花澤電装代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部を経営している旨を説明したと認めることはできない。
なお,丑葉は,証人尋問において,原告花澤電装代表者に対して,大多喜城ゴルフ倶楽部のバックがフジパンという話をしたか否かという質問に対し,どちらが先に述べたかという記憶はないが,自分が否定した記憶もない,大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンが何らかの関係があるという認識は持っていたし,話の中でフジパンという言葉は出たと思うと証言するので,念のため,仮に丑葉がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部の関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
また,原告花澤電装代表者は,本件会員権を購入すると決断した理由として,被告本店営業部から原告花澤電装の所有するビルのテナントの紹介を受けたことから,どんな融資でもいいからお金を使ってほしいという要請があり,融資を受けなければいけないという責められたような気持ちがあった旨述べる一方で,本件会員権購入の勧誘当時は,フジパンがどのような会社かは知らなかったというのであるから(原告花澤電装代表者),原告花澤電装が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し丑葉が原告花澤電装代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に丑葉がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,丑葉が,本件会員権の内容に関し,原告花澤電装の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告花澤電装の主張は採用することができない。
(11)  原告十文字土木について
原告十文字土木は,卯口が,勧誘に際して,フジパンの経営する会員権であるという説明を行ったと主張する。
そして,現在の原告十文字土木代表者である壬岡I雄(以下「I雄」という。)は,その調査回答書(甲46の9)及び陳述書(甲J20の2)において,「親会社であり,フジパンの経営者が経営するゴルフ場である」「フジパンの経営する会員権である」「いくつもゴルフ場を経営している」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,フジパンがいくつもゴルフ場を経営していると聞いた旨供述している。
他方,卯口は,その陳述書(乙J9)において,「原告が入会することを希望したのですから,私は,融資の条件は説明しましたが,それ以外のゴルフ場や預託金について特に説明などしていません」「鴨川支店では,元々本件ローンを取扱っておらず,店には,パンフレットさえなかったのであり,説明できるはずがありません」と述べ,証人尋問においても,原告十文字土木から何とか本件会員権を購入したいとの要請があったので購入できるように取りはからったものであり,フジパンと富士カントリーとの関係や預託金の返還について説明はしていないし,本件会員権購入に関してI雄と会ったことはない旨を証言する。また,原告十文字土木代表者自身,代表者尋問において,卯口から説明を受けたと思うが,記憶ははっきりしないし,本件ゴルフ場の内容を聞いた覚えがない,映像としてはなかなか浮かんでこないとも述べ,その供述には具体性がない。
そこで,卯口が本件会員権を原告十文字土木に紹介するに至る経緯について検討すると,甲J20の1,2,乙J9,証人卯口の証言,原告十文字土木代表者尋問の結果を総合すれば,平成2年3月ころ,原告十文字土木の副社長であったI雄は,母親から,被告が母親の知人に対して本件会員権購入の勧誘をしており,本件ゴルフ場がいいゴルフ場であることを聞き,被告が原告十文字土木に対して本件会員権を紹介しなかったことに不快感を覚えたこと,そこで,I雄は,原告十文字土木の取締役総務部長であった寅波に対し,被告からゴルフ会員権購入の勧誘がなかったかと尋ねたこと,寅波は,被告鴨川支店の営業担当であった卯上G江を通じて,卯口に対し,I雄からゴルフ会員権購入の勧誘がなかったかとの質問を受けたことを伝えたこと,その後寅波が,卯口と話をした際に,本件会員権の紹介を明確に求めたか否かはともかく,卯口は,寅波の話を原告十文字土木から本件会員権の紹介を求められたと受け止めたこと,被告鴨川支店では,本件会員権の提携ローンを取り扱っていなかったため,卯口は,被告の本部地域開発部と交渉して本件会員権の取扱枠の割当てを受け,寅波に対して本件会員権の資料を届けたことが認められる。このような経緯に照らせば,卯口としては,原告十文字土木は本件会員権購入を希望しているものと認識しており,購入の勧誘のため積極的な説明をしなければならないような事情はなかったことが窺われる。また,卯口は,証人尋問において,原告十文字土木は被告鴨川支店において1,2位を争う優良取引先であって,その要望に応えることが目的であった旨証言するところ,原告十文字土木に対する本件会員権購入に伴う融資額が購入代金3500万円のうち2000万円に止まっていることも,被告鴨川支店にとって,本件会員権の紹介が,融資の獲得を主たる目的とした取引ではなかったことを裏付ける事実ということができる。
さらに,甲J20の1,2,原告十文字土木代表者尋問の結果によれば,I雄は,母親から本件会員権の話を聞いたときに,フジパンと本件ゴルフ場が関係を有することを聞いていたこと,また,当時の原告十文字土木社長であった壬岡H郎は,本件会員権購入の前からフジパンが優良な大会社であることを認識しており,購入を検討した原告十文字土木の取締役会においても,壬岡H郎がフジパンは結構大きな会社だからいいのではないかと述べたことが承認の大きな理由となったことが認められ,卯口がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有する旨言及したか否かにかかわらず,原告十文字土木においては,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部を経営しているとの認識を有していたと推認できる。
以上によれば,卯口が原告十文字土木に対して本件会員権購入を積極的に勧誘すべき事情は認められず,卯口がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部の関係を説明していないとしてもその余の客観的事実と齟齬する点もないのであるから,卯口の証言等に照らして,原告十文字土木代表者の供述等をもって,卯口が,原告十文字土木代表者に対して,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係を説明したと認めることはできない。
したがって,卯口が,本件会員権の内容に関し,原告十文字土木の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告十文字土木の主張は採用することができない。
(12)  原告なべやについて
原告なべやは,被告大多喜支店支店長の亥原が,原告平林物産代表者に対して,フジパンがバックのゴルフ場であると虚偽の説明を行い,それを信用した原告平林物産代表者がさらに原告なべや代表者に同旨の説明をしたため,原告なべやもその虚偽の説明を信用したと主張する。
そして,原告なべや代表者は,その調査回答書(甲46の10)において,高校時代の友人である原告平林物産代表者から本件会員権の購入の勧誘を受け,その際,原告平林物産代表者から「フジパンがバックで絶対安心な所である」と説明を受けた,原告平林物産代表者は亥原から「バックがフジパンだから絶対安心だ。オープンしたら,倍とは言わないが,すぐに2~3千万はあがる。預託金はフジパンがバックだから,絶対に戻ってくる」と聞いたと述べていた旨を述べ,代表者尋問においても,同趣旨の供述をする。
しかし,原告なべや代表者自身,被告大多喜支店の担当者から本件会員権の説明を受けたことはないというのであって,本件会員権の内容に関して,辰上が原告なべやに対して送付した資料は,本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)にとどまるところ,同パンフレットには,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるから,被告の担当者が原告なべやに対し,購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとは到底認められない。
また,亥原の原告平林物産代表者に対する説明をもって,被告による原告なべやに対する勧誘行為と評価することもできない。
念のため,亥原の原告平林物産代表者に対する説明内容を検討しても,亥原が,本件会員権の内容に関し,平林種苗の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないことは,後記2(17)のとおりである。
したがって,亥原が,本件会員権の内容に関し,原告なべやの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告なべやの主張は採用することができない。
(13)  原告小原組について
原告小原組は,巳下が,勧誘に際して,本件ゴルフ場はフジパンが土台という説明を行ったと主張する。
そして,原告小原組代表者は,その調査回答書(甲46の11)及び陳述書(甲J21)において,原告小原組代表者の夫であった丑木が「フジパンがついているから絶対に大丈夫と聞いている」「房総カントリーと同じでフジパンが土台という話だ,フジパンだから絶対大丈夫と言われている」と述べていた旨を述べ,代表者尋問においても,房総カントリーの会員権を保有しており,房総カントリーはフジパンが土台でありしっかりしているし,その系列の富士カントリーだから,買おうと思っていると丑木から聞いた旨供述している。
他方,巳下は,その陳述書(乙J11)において,「私はフジパンという会社について知識がなく,また富士カントリーとフジパンの関係についても全く知識がなかったので,そのようなことを言うことはそもそもできませんでした」と述べ,証人尋問においても,房総カントリーがフジパン系列だということは知らなかった旨を証言する。また,原告小原組代表者は,本件会員権の購入は被告の紹介によることを丑木から聞いたことはなく,丑木と被告五井支店支店長が親しかったこと及び被告の提携ローンが利用されていることから被告の紹介で本件会員権を購入したものと推測するにすぎない。さらに,原告小原組代表者は,巳下の説明を自ら聞いてはおらず,丑木からの伝聞を述べるにすぎない上,その述べるところによっても,丑木から「房総カントリーを実際持ってましたので,房総カントリーはフジパンが土台でありしっかりしているし,その系列の富士カントリーだから,それを買おうと今思っているところだ」と聞いたというのであり,巳下の丑木に対する説明内容については何ら触れるところがない。これらの諸点に加え,巳下が丑木に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないことに照らすと,原告小原組代表者の供述等をもって,巳下が,丑木に対して,本件ゴルフ場はフジパンが土台だから絶対大丈夫と説明したと認めるには足りない。
したがって,巳下が,本件会員権の内容に関し,原告小原組の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告小原組の主張は採用することができない。
(14)  原告安藤建材について
原告安藤建材は,未川が,勧誘に際して,経営母体がフジパンだから全く問題ないという説明を行ったと主張する。
そして,原告安藤建材代表者は,その調査回答書(甲46の12)において,「経営母体がフジパンであるのでまったく心配御座いません」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,経営母体がフジパンだから全く問題ないとか,実質フジパンがバックですよという意味合いの言葉を聞いた旨供述している。
他方,未川は,その陳述書(乙J12)において,「私は,この会員権について説明したり,富士カントリーやフジパンのことについて社長に話したりしたことは全くありません。私はこのようなことについて知らないのですから話したりすることは出来ません」「そもそも私から,社長に対して,この会員権をお勧めしたこともありません。社長から本件会員権を購入したいからゴルフローンをつけて欲しいという要請が当店にあり,そこで私がゴルフローンの所定の手続をしたのです」と述べ,証人尋問においても経営母体がフジパンとの説明をしたことを否定する。また,原告安藤建材代表者自身,代表者尋問において,取引先である小林土木代表者から,同社が本件会員権を購入したこと,本件会員権は被告も取り扱っていることを聞いたので,原告安藤建材の担当であった未川に本件会員権のことを尋ねた旨述べており,これは未川の供述等を裏付けるものということができる。そうであれば,未川の供述等に照らして,原告安藤建材代表者の供述等をもって,未川が,原告安藤建材代表者に対して,大多喜城ゴルフ倶楽部の経営母体がフジパンである旨の説明をしたとは認めるには足りない。
念のため,仮に未川がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告安藤建材代表者は,代表者尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由として,取引先にゴルフをする人が多いので,接待用に利用するゴルフ場が必要と考えたことがあったと述べ,実際にもこれまで接待のため本件ゴルフ場を利用していたことがある一方で,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンのことは知らず,自らフジパンの経営状況等について確認したことはなかったし,銀行を全く信用したと供述しているから,原告安藤建材が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係が重要な事項であったと認めることは困難である。
上記の諸点に加えて,本件会員権購入に伴い原告安藤建材が大多喜城ゴルフ倶楽部から受領した保証委託並担保差入契約書,預り証書,入会通知書,仮領収書,領収書のいずれにも,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないことをあわせ考えると,未川がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとしても,それが,購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,未川が,本件会員権の内容に関し,原告安藤建材の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告安藤建材の主張は採用することができない。
(15)  原告知久商会について
原告知久商会は,申谷又は辛井が,勧誘に際して,フジパンがバックについているという説明を行ったと主張する。
そして,原告知久商会代表者は,その調査回答書(甲46の13)において,「フジパンがバックについている」と辛井から説明された旨を述べ,代表者尋問においても,本件会員権購入の前に辛井の勧誘で房総カントリーの会員権を購入したが,その際,辛井から房総カントリーはフジパンがやっているから大丈夫だと聞いた,本件会員権についても同じように辛井からフジパンが経営していると聞いた旨供述する。
他方,申谷は,その陳述書(乙J13)において,「当行の提携ローンが開始される以前から,社長は,このゴルフ場のことをご存知で,私に紹介できるようになったら教えるように依頼されていました」「原告が富士カントリー系列の房総カントリーの会員でもあったことから,何らかのルートで大多喜城ゴルフ倶楽部のことを聞き知っておられたものと思います」「むしろ,私が説明に行ったとき,社長からフジパンがバックについているという話を聞きました」と述べ,証人尋問においても,同趣旨の証言をする。
そこで検討すると,原告知久商会代表者は,房総カントリーの会員権及び本件会員権の勧誘をしたのは辛井であって,他の人が来たことはない旨述べる(甲46の13,原告知久商会代表者)。しかしながら,原告知久商会が房総カントリーの会員権を購入したのは昭和60年4月であり(甲J29),本件会員権を購入したのは平成2年3月であるのに対し,辛井が被告津田沼駅前支店に在籍したのは昭和53年5月から昭和58年7月までであり,平成2年ころは辛井は本店営業部に在籍していたのであるところ(証人申谷),原告知久商会代表者自身,辛井は本店からは来ておらず,津田沼駅前支店から来ていたと供述するのであるから(原告知久商会代表者),辛井が原告知久商会に対して房総カントリーの会員権及び本件会員権の購入を勧誘したことはあり得ないのであって,原告知久商会に対して本件会員権購入の勧誘をしたのは申谷であったこと(証人申谷)が認められる。そうすると,原告知久商会代表者の記憶は,勧誘者が誰であったかという最も重要な点において誤りがあるのであって,その供述の証拠価値は乏しいといわざるを得ない。また,原告知久商会代表者自身,本件会員権購入の勧誘当時,既に房総カントリーの会員であって富士カントリーのことは知っていたので,本件会員権についてはあまり説明は聞かなかった,申谷が尋ねてきたことは記憶がないというのである(原告知久商会代表者)。これらの諸点及び申谷の供述等に照らすと,原告知久商会代表者の供述等をもって,申谷が,原告知久商会代表者に対して,フジパンがバックについていると説明したと認めることはできない。
念のため,仮に申谷がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
これに加えて,本件会員権購入の勧誘に際し申谷が原告知久商会代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に申谷がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,申谷が,本件会員権の内容に関し,原告知久商会の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告知久商会の主張は採用することができない。
(16)  原告安田総業について
原告安田総業は,酉沢が,勧誘に際して,経営母体は関西で大手のフジパンであるという説明を行ったと主張する。
そして,当時の原告安田総業代表者辰口は,証人尋問において,大多喜城ゴルフ倶楽部はフジパンが母体であり,関西で大手であると説明された旨を証言し,原告安田総業代表者の調査回答書(甲46の14)においても,原告安田総業代表者は,「フジパンの経営だから絶対大丈夫と行員が説明した」と供述している。
他方,酉沢は,その陳述書(乙J14)において,「富士カントリーがどれほどの規模の会社かも知りませんでしたし,勿論フジパンとの関係など分かっていなかった」「したがって,私がこのような説明をすることはありえないことです」と述べ,証人尋問においても,同趣旨の証言をする。この点について,辰口は,証人尋問において,勧誘を受けた被告姉崎支店の担当者を記憶していないばかりか,自ら作成したという調査回答書(甲46の14)の記載についても間違っていると証言し,当時の記憶がはっきりしないというのであり,その証言にはあいまいな点が少なくない。また,辰口は,富士カントリーに勤務していた知人から,大多喜城ゴルフ倶楽部を経営しているのはフジパンで,フジパンは関西の方のパン屋だと聞いたことがあると証言しており,辰口が大多喜城ゴルフ倶楽部の経営母体がフジパンである旨聞いた記憶があるとしても,それは知人の話が契機となっている可能性も否定できない。さらに,本件会員権購入の勧誘に際し,酉沢は,辰口に対し,「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」と題する書面(甲41)を示しながら説明を行ったところ(証人酉沢),同書面には,縁故会員の募集口数が800口の法人専用のゴルフ場であり,事業母体が富士カントリー,運営会社が大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しない。これらの諸点に照らすと,辰口の証言等をもって,酉沢が,辰口に対して,大多喜城ゴルフ倶楽部の経営母体はフジパンだと説明したと認めることはできない。
念のため,仮に酉沢がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,辰口は,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンという会社は知らなかったこと,辰口は,本件会員権購入前に2つのゴルフ会員権を購入しており,当時,所有していたゴルフ会員権が大幅に値上がりし,会員権相場が高騰しているという認識を有していたところ,本件会員権を購入した目的は,会員権の値上がりを期待する投機であったこと(以上の各事実は,証人辰口)を考え合わせると,原告安田総業が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係が重要な事項であったと認めることも困難である。
したがって,酉沢が,本件会員権の内容に関し,原告安田総業の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告安田総業の主張は採用することができない。
(17)  原告平林物産について
原告平林物産は,亥原が,平林種苗に対する勧誘に際して,フジパンという大きな会社が母体にあるから,預託金の返還については問題ないという説明を行ったと主張する。
そして,原告平林物産代表者は,その調査回答書(甲46の15)において,「フジパンが母体となっているので万一の事があっても全く心配無いと聞いていた」旨を述べ,代表者尋問においても,「フジパンさんという大きな会社が母体にあるから,預託金の返還については全く問題ないよ,心配ないよ」という説明を聞いた旨供述している。
他方,亥原は,陳述書(乙J15)において,平林種苗代表者(原告平林物産代表者の父)は富士カントリーがフジパンと関係があることを既に知っていたが,自分は,両者の関係を知らなかったから,特に説明などしていない旨供述し,証人尋問においても,自らは富士カントリーもフジパンもよく知らなかった,平林種苗代表者は,富士カントリーとフジパンとは深い関係にあると言っていた,自分から平林種苗代表者にフジパンが母体になっていることは言ったことがないし,本件会員権購入の勧誘に関して原告平林物産代表者には会っていない旨証言する。また,亥原と特に話しをしていたのは平林種苗代表者であって,原告平林物産代表者は,その話の中にたまに入っていたにすぎず,平林種苗代表者は,原告平林物産代表者より前にフジパンの話を聞いていたというのであり(原告平林物産代表者),平林種苗代表者が以前からフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部の関係を知っていた可能性は否定できない。これらの供述等に照らすと,原告平林物産代表者の供述等をもって,亥原が,平林種苗代表者に対して,フジパンが母体となっている旨の説明をしたとは認めるには足りない。
なお,亥原は,その陳述書(乙J15)において,富士カントリーがフジパンと関係が深いことは地元のゴルフ愛好家の中では既に知られていた旨述べるので,念のため,仮に亥原がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告平林物産代表者は,その調査回答書(甲46の15)において,本件会員権購入を決断した理由として,経営母体がフジパンのために預託金の返金には心配は無いと勧められた為である旨述べるが,最終的に本件会員権購入を決断したのは平林種苗代表者であること,原告平林物産代表者は,平林種苗代表者から相談を受けていたが,原告平林物産代表者自身,フジパンそのものは余り認識はなかったし,自ら確認するようなことは全くしていないこと,原告平林物産代表者は,本件会員権を購入した理由について,「地元に立派なゴルフ場ができるということで,もう実際に工事も始まっておったように思います」「地元におりましたので,地元のステータスという意味で,ひとつ立派なゴルフ場を入手しておいたほうが,後々のこともいいんじゃないかというようなことで購入は決定しました」と述べていること(以上の事実は,原告平林物産代表者)の各事実を考慮すると,平林種苗が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係が重要な事項であったと認めることも困難である。
以上の諸点に加えて,本件会員権購入の勧誘に際し亥原が平林種苗代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に亥原が大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンが何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,亥原が,本件会員権の内容に関し,平林種苗の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告平林物産の主張は採用することができない。
(18)  原告富士無線について
原告富士無線は,亥原が,勧誘に際して,無借金経営のフジパンの経営なので安心だという説明を行ったと主張する。
そして,原告富士無線代表者は,その調査回答書(甲46の16)及び反論書(甲J14)において,「フジパンの経営で安心安全です」「フジパンの経営母体」「フジパンは無借金経営ですので安心です」と説明された旨を述べる。
他方,亥原は,その陳述書(乙J15)において,「午下社長も大多喜城のことは知っておられ,募集が始まれば購入したいと言っておられると部下から聞いていました」「富士カントリーが全国でゴルフ場を経営している大手であることは午下社長が承知しており,フジパンとも関係があるということもご自身で話していたことです」と述べ,証人尋問においても,原告富士無線代表者は,フジパンが富士カントリーをやっているようだということを言っており,自分はフジパンとの関係は知らなかったので,そうですかと答えただけで,フジパンとの関係の説明はしていない旨証言する。この証言等に照らすと,原告富士無線代表者の供述をもって,亥原が,原告富士無線代表者に対して,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係を説明したと認めることはできない。
なお,亥原は,その陳述書(乙J15)において,富士カントリーがフジパンと関係が深いことは地元のゴルフ愛好家の中では既に知られていた旨述べるので,念のため,仮に亥原がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
これに加えて,本件会員権購入の勧誘に際し亥原が原告富士無線代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に亥原がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,亥原が,本件会員権の内容に関し,原告富士無線の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告富士無線の主張は採用することができない。
(19)  原告愛郷ホームについて
原告愛郷ホームは,甲谷が,勧誘に際して,本件ゴルフ場はフジパンが経営母体であるという説明を行ったと主張する。
そして,原告愛郷ホーム代表者は,その調査回答書(甲72の1)において,甲谷から,「フジパンが母体の新設ゴルフ場で,法人会員限定の会員権との説明を受けました」「フジパンが親会社なので,倒産する事は考えづらく,万一の事があってもフジパンが母体なので大丈夫との説明を受けました」と述べ,証人乙沢は,証人尋問において,フジパンが経営母体になっているし,被告が何か経営のほうに参加しているみたいな話を聞いた旨証言している。
他方,甲谷は,その陳述書(乙J17)において,「万一の事があってもフジパンが母体なので大丈夫との説明をしたこともありません」「大多喜城ゴルフ倶楽部の事業母体が富士カントリーであるとは説明していますが,フジパンとの関係は分かりませんでした」と述べ,証人尋問においても,フジパンが経営母体であるとの説明はしていない旨証言する。乙沢は,本件ゴルフ場の運営会社は富士カントリーと理解していたのであるから(証人乙沢),甲谷の証言等に照らすと,乙沢の証言等をもって,甲谷が,原告愛郷ホーム代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部を経営していると説明したと認めることはできない。
念のため,仮に甲谷がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
これに加えて,本件会員権購入の勧誘に際し甲谷が原告愛郷ホーム代表者及び乙沢に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に甲谷がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,甲谷が,本件会員権の内容に関し,原告愛郷ホームの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告愛郷ホームの主張は採用することができない。
(20)  原告明治神宮について
原告明治神宮は,丙野が,勧誘に際して,フジパンが経営母体であるという説明を行ったと主張する。
そして,丁原は,その陳述書(甲J31)において,「丙野さんがフジパンが経営しているという趣旨の説明をした」旨述べ,証人尋問においても,フジパンが経営するゴルフ場であると説明された旨証言している。また,本件会員権購入の勧誘に際し,丙野は,丁原に対し,「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」と題する書面(甲72の2)を交付して説明を行ったこと,同書面中に印刷された「富士カントリー(株)」との記載の上部には手書きで「フジパン」との記載があることが認められ(甲72の2,証人丙野),これは丁原の証言を裏付けるものということができる。さらに,丙野も,その陳述書(乙J18)において,「富士カントリーとフジパンとは何らかの関係があると理解していましたので,あるいはフジパンの関係会社であると話したかもしれません。」と述べる。これらの証言等によれば,本件会員権購入の勧誘に際し,丙野が,丁原に対して,大多喜城ゴルフ倶楽部がフジパンの関係会社であると述べたことが認められる。
そこで検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,大多喜城ゴルフ倶楽部がフジパンの関係会社であるという説明は,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽とまでいうことはできない。
また,丁原は,証人尋問において,本件会員権を購入すると決断した理由は,本件ゴルフ場が明幸苑から車で約40分という便利な場所に位置する点,高級なゴルフ場である点,27ホールを有する点であった旨述べていること,原告明治神宮内における本件会員権購入の稟議書(甲72の2)にも「当館千葉県に在る明幸苑とも近く,宿泊客の便宜を謀ることもできる」と記載されている一方で,稟議書にはフジパンが経営母体であることの記載はないこと,また,丁原は,本件会員権購入の勧誘を受ける以前,旅館業協同組合及び観光協会の関係者から,房総カントリーや市原倶楽部はフジパンが経営母体であると聞いていたこと(証人丁原)に照らすと,原告明治神宮が本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって,大多喜城ゴルフ倶楽部はフジパンの関係会社であるという説明を丙野が行ったことが重要な要素であったと認めることは困難である。
これに加え,本件会員権購入の勧誘に際し丙野が丁原に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえること,丙野が丁原に交付した「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」と題する書面(甲72の2)においても事業母体は富士カントリー(株)と明確に表示されており,丁原においても事業母体が富士カントリーであることは承知していたこと(証人丁原)をあわせ考えると,大多喜城ゴルフ倶楽部がフジパンの関係会社であるという丙野の説明が,購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
このほか,甲72の2,甲J31,証人丁原の証言によっても,丙野が,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部の経営に責任を負うとか,経営を保証しているなど,本件会員権の安全性を過度に強調し,原告明治神宮の判断を誤らせるような虚偽の説明をしたとは認めることはできない。
したがって,丙野が,本件会員権の内容に関し,原告明治神宮の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告明治神宮の主張は採用することができない。
(21)  原告伊藤商店について
原告伊藤商店は,戌崎が,勧誘に際して,大多喜城ゴルフ倶楽部のバック会社はフジパンであるという説明を行ったと主張する。
そして,原告伊藤商店代表者は,その調査回答書(甲72の3)において,「フジパンが出資する事云った」「フジパン出資という言葉に安心と安全を感じて購入したつもりでいた」と述べ,代表者尋問において,「出資すると言ったかどうかははっきりは覚えてません。ただフジパンがバックだということは聞いてました」と供述する。
他方,戌崎は,証人尋問において,フジパンに関する説明を行ったことは否定し,富士カントリーの系列であると説明した旨証言する。原告伊藤商店代表者の供述等には,上記のとおり記憶に曖昧な点があること及び戌崎の証言に照らすと,原告伊藤商店代表者の供述等をもって,戌崎が,原告伊藤商店代表者に対して,フジパンが大多喜城ゴルフ倶楽部のバックにある旨を説明したと認めるには足りない。
念のため,仮に戌崎がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
これに加えて,本件会員権購入の勧誘に際し戌崎が原告伊藤商店代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえること,原告伊藤商店代表者自身,フジパンがバックにいるというのは,後ろ盾という意味であって,フジパンそのものが本件ゴルフ場の経営をしているという意味ではないし,フジパンが保証しているという意味ではないことは理解していたこと(原告伊藤商店代表者)をあわせ考えると,仮に戌崎がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったということはできない。
したがって,戌崎が,本件会員権の内容に関し,原告伊藤商店の判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告伊藤商店の主張は採用することができない。
(22)  原告三協ハウジングについて
原告三協ハウジングは,己田が,勧誘に際して,房総カントリーと同じフジパンのゴルフ場であるという説明を行ったと主張する。
そして,原告三協ハウジング代表者は,その調査回答書(甲72の4)において,「フジパン経営のゴルフ場と説明を受けました」と述べ,代表者尋問においても,被告の担当者に対し,本件ゴルフ場の経営母体がフジパンであることを確認した旨供述している。
他方,原告三協ハウジング代表者尋問の結果によれば,同人は,本件会員権購入の勧誘を受ける10年位前から房総カントリーの会員権を所有しており,同クラブでプレーをした際にお土産としてフジパンのパンを貰っていたことから,富士カントリーとフジパンが同一だと認識していたこと,房総カントリーでプレーをした際に,本件ゴルフ場が建設されるとの情報を得て本件会員権を購入しようと思ったこと,本件ゴルフ場と房総カントリーの経営主体が同じであると認識していたこと,そこで,被告津田沼支店を訪れて提携ローンの申込みをしたことが認められ,仮に己田がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部の関係を説明していないとしても,原告三協ハウジング代表者が本件ゴルフ場の経営母体はフジパンであるという認識を有していることと齟齬するものではない。これに加え,原告三協ハウジング代表者は,本件ゴルフ場の経営母体について被告の担当者に質問した際の具体的なやり取りは覚えていない旨述べていることに照らすと,原告三協ハウジング代表者の供述等をもって,己田が,原告三協ハウジング代表者に対して,本件ゴルフ場の経営母体がフジパンであることを説明したと認めることはできない。
念のため,仮に己田がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部との関係に言及したことがあるとして検討すると,本件会員権購入の勧誘当時,フジパンと富士カントリー及び大多喜城ゴルフ倶楽部との間において,前記第2の1(1)イ及びウのとおり,代表取締役や取締役の経営陣が共通していたという人的関係が存在していたことからすると,フジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,その人的関係を説明する趣旨においては必ずしも虚偽ということはできない。
また,原告三協ハウジング代表者は,己田が本件会員権についての説明をする以前から,本件ゴルフ場の経営母体がフジパンであるとの認識を有しており,本件会員権の購入を決断して提携ローンの申込みのため被告津田沼支店を訪れたものであるから,仮に己田が大多喜城ゴルフ倶楽部とフジパンとの関係を説明したとしても,原告三協ハウジングが本件会員権を購入するという投資判断をするにあたって己田の説明内容が重要な要素となったと認めることは困難である。
これに加えて,本件会員権購入の説明に際し己田が原告三協ハウジング代表者に交付した本件ゴルフ場のパンフレット(甲70の1,2)には,本件ゴルフ場の経営会社は大多喜城ゴルフ倶楽部であることが明確に表示されている一方,フジパンが本件ゴルフ場に関連していることを示す記載は何ら存在しないこと,ゴルフ会員権の購入を検討している一般的な顧客は,当該ゴルフ場のパンフレットに目を通し,それを1つの重要な資料として購入の是非を検討すると考えられるところ,上記パンフレットを読めば,本件ゴルフ場の運営主体は大多喜城ゴルフ倶楽部であることを容易に理解できるものといえることをあわせ考えると,仮に己田がフジパンと大多喜城ゴルフ倶楽部が何らかの関係を有することを説明したとしても,それが,購入希望者の判断を誤らせるような虚偽の説明であったと認めることはできない。
したがって,己田が,本件会員権の内容に関し,原告三協ハウジングの判断を誤らせるような虚偽の説明を行ったとはいえないから,原告三協ハウジングの主張は採用することができない。
3  争点1イ(本件会員権に関する断定的な説明の有無)について
(1)  原告らは,被告が,本件会員権購入の勧誘に際し,本件会員権が将来値崩れしない確実なものであり,預託金の返還も確実であると説明し,将来の不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そこで検討するに,被告が,その取引先等に対して本件ゴルフ場を紹介し,本件会員権の購入希望者に対して,その購入資金を融資しようとする場合において,購入希望者に対して自ら本件会員権の内容を説明する際には,信義則上,できる限り正確な説明をすべき義務を負うことは前記2(1)に判示のとおりであり,預託金返還の可能性やゴルフ会員権相場の動向等の投資判断を左右するような重要な事実について,不確実なものをあたかも確実な事実として断定的に説明した結果,購入希望者の任意かつ自由な判断を誤らせたときは,これを信用して本件会員権を購入した者に対し,上記断定的説明と相当因果関係のある損害を賠償すべき義務を負うというべきである。
(2)  原告千代不動産について
原告千代不動産は,丙沢が,原告千代不動産代表者に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部は,銀行が推薦するゴルフ場であるから間違いがなく,将来絶対につぶれない確実なゴルフ場であるかのように不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告千代不動産代表者は,その調査回答書(甲46の1)において,「千葉銀行が推薦するゴルフ場だから間違いない」「このゴルフ場はつぶれないから大丈夫だと言った」旨を述べ,代表者尋問においても,大多喜城ゴルフ倶楽部は銀行が推薦するような会社だから絶対つぶれない大丈夫だと説明されたと供述する。
他方,原告千代不動産代表者は,代表者尋問において,本件会員権の購入を勧誘したのは巳山I介副支店長と丙沢又は申谷であると述べるところ,本件会員権の勧誘当時,巳山I介副支店長や申谷という職員は被告松ケ丘支店には在職していなかったのであって(証人丙沢),その記憶は必ずしも正確ではなく,また,勧誘方法についても,パンフレットを見たんじゃないかとは思うが見た状況は思い浮かばないと述べるなど,あいまいな点もあるから,同代表者の供述等をもってたやすく丙沢の具体的な説明内容を認定することはできない。
念のため,仮に丙沢が本件会員権は銀行が推薦するゴルフ場であると説明したとして検討すると,原告千代不動産代表者の述べるところによっても,ゴルフ会員権価格につき被告が一定額での買取りを約束するとか,預託金返還請求権の履行を保証するといった具体的な内容ではないことからすると,その意味するところは,被告が本件ゴルフ場を優良なゴルフ倶楽部であると評価していることを述べたものとみるのが相当であり,丙沢の行った説明が,本件会員権の安全性を過度に強調したものであって,原告千代不動産が本件会員権を購入する際の判断を誤らせるような不適切なものであったとは認めることはできない。また,丙沢が,本件会員権は銀行が推薦する会社しか買えない旨の説明をしたとしても,これをもって本件会員権の安全性を過度に強調したものということもできない。
したがって,丙沢が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性の不確実な事実について断定的説明を行い,原告千代不動産の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告千代不動産の主張は採用することができない。
(3)  原告鶴岡興産について
原告鶴岡興産は,丁野が,原告鶴岡興産代表者に対し,大多喜城ゴルフ倶楽部は,経営上の不安はなく,将来値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように,不確実なことを断定的に説明したと主張する。
そして,原告鶴岡興産代表者は,その調査回答書(甲46の2)において,「経営上不安はなく,千葉銀行としてお客に勧めるコースである」「入会保証金返還頃には金利を含んだ金額位の相場になっておると思われるので,銀行側はお薦めします」と説明されたと述べ,代表者尋問においても,会員権の値段については「恐らく金利を入れて満額納めたときには,恐らく5000万円くらいの金を納めているようになる」と説明されたと供述する。
しかしながら,丁野は,原告鶴岡興産代表者に対してどのような話をしたかは記憶がない旨述べ(乙J2の1,3,証人戌原),また,丁野の上司であった戌原J作は,この会員権は値上がりするといった断定的売り込みはしてはならない旨指示をしていたので,そのような説明はなかったと思う旨証言しており,原告鶴岡興産代表者の供述等のみをもってたやすく丁野の具体的な説明内容を認めることはできない。
念のため,仮に丁野が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,丁野が原告鶴岡興産に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),丁野が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものである上,原告鶴岡興産代表者は,本件会員権購入以前に既に別のゴルフ会員権を三つ所有しており,そのうちの一つは売却により利益を得ることができた一方,他の一つはゴルフ場運営会社の倒産により預託金が戻ってこなかったという経験を有していたのであるから(原告鶴岡興産代表者),原告鶴岡興産がゴルフ会員権の価格変動により損失を被る可能性を理解していなかったとは到底認められないところ,原告鶴岡興産代表者自身,「当時として,バブルの絶頂期でございましたし,世の中いろんなものが値上がりしている右肩上がりのときでございましたから,その辺は一応私もそれなりの理解はしたつもりでございます」と述べていることからすれば,丁野が本件会員権の価格上昇について述べたとしても,原告鶴岡興産代表者においても,ゴルフ会員権価格相場を背景に主観的な評価を述べたものであるという趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告鶴岡興産の任意かつ自由な判断が誤らされたものと認めることはできない。
さらに,原告鶴岡興産代表者は,丁野が銀行として客に勧めるコースであると述べた旨供述するけれども,原告鶴岡興産代表者の述べるところによっても,本件会員権につき被告が一定額での買取りを約束するとか,預託金返還請求権の履行を保証するといった具体的な内容ではないことからすると,その意味するところは,被告が本件ゴルフ場を優良なゴルフ場と評価していることを述べたものとみるのが相当であり,丁野の行った説明が,本件会員権の安全性を過度に強調したものであって,原告鶴岡興産が本件会員権を購入する際の判断を誤らせるような不適切なものであったと認めることもできない。
したがって,丁野が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告鶴岡興産の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告鶴岡興産の主張は採用することができない。
(4)  原告エルヴェについて
原告エルヴェは,己崎が,当時の原告エルヴェ代表者庚田に対し,大多喜城も優良ゴルフ場になる,資産としての保有価値が高い,支店長特別推薦枠であり,将来の事業財産として価値が出ると断定的に説明したと主張する。
そして,庚田は,その陳述書(甲J11)において,「フジパン系列のゴルフ場は,どこも経営が安定しており,資産としての保有価値が高い。大多喜城も必ず資産価値の高いゴルフ場になる。将来会員権の価値が上がれば,事業用資産としての担保にもなり,銀行としても融資がやりやすくなる。今回は,銀行が選んだ優良企業に支店長特別推薦枠で案内している」という説明があった旨述べている。
しかしながら,己崎は,その陳述書(乙J3)において,庚田が述べるような説明をしたことを否定している上,庚田の陳述書も,あいまいな点が少なくないことは,前記2(5)のとおりであるから,庚田の供述をもって,己崎が,上記のような説明をしたと認めることはできない。
念のため,仮に己崎が本件会員権の資産価値について言及したことがあるとして検討すると,己崎が原告エルヴェに対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),己崎が本件会員権の資産価値の上昇の可能性について言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告エルヴェ代表者及び庚田自身,本件会員権購入以前に既に複数のゴルフ場の会員権を所有していたのであって(甲J25,乙J29,原告エルヴェ代表者),原告エルヴェがゴルフ会員権の価格変動があり得ることを理解していなかったとは到底認められないから,己崎が本件会員権の資産価値の上昇の可能性について言及したとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測にとどまり,庚田においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告エルヴェの任意かつ自由な判断が誤らされたものと認めることはできない。
さらに,庚田は,その陳述書(甲J11)において,己崎が将来本件会員権の価値が上がれば事業用資産としての担保にもなり,銀行としても融資がやりやすくなる旨説明したと述べるけれども,庚田の述べるところによっても,ゴルフ会員権価格につき被告が一定額での買取りを約束するとか,預託金返還請求権の履行を保証するといった具体的な内容ではないことからすると,その意味するところは,被告が本件ゴルフ場を優良なゴルフ倶楽部であると評価していることを述べたものとみるのが相当であり,己崎の行った説明が,本件会員権の安全性を過度に強調したものであって,原告エルヴェが本件会員権を購入する際の判断を誤らせるような不適切なものであったと認めることもできない。
したがって,己崎が,本件会員権の内容に関し,会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告エルヴェの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告エルヴェの主張は採用することができない。
(5)  原告石山商事について
原告石山商事は,被告誉田支店支店長又は辛岡が,原告石山商事代表者に対し,本件ゴルフ場は,優良なゴルフ場で絶対に損をすることはない,預託金もフジパンがついているから大丈夫,担保価値も高いので今後色々有利であると断定的に説明したと主張する。
そして,原告石山商事代表者は,その調査回答書(甲46の4)において,「絶対に損するような物件ではありません」「変な土地を買うより富士カントリーの方が担保に使えるので得ですよ」と説明されたし,預託金返還の可能性についても「富士カントリーはオーナーがしっかりしているので絶対心配しないで下さい」「フジパンのオーナーがついているゴルフ場ですから担保価値も高いので今後色々と有利である」と説明されたと述べ,代表者尋問においても,土地よりはゴルフ会員権の方が担保にもなるし,よっぽど今後の使い道があるとの説明を受けた旨供述する。
他方,辛岡は,その陳述書(乙J4)において,「原告の平成2年3月期の決算が非常に好調であって大幅な利益が出ることが確認されました」「私はゴルフローンをつけることで利息を経費で落とせると社長に説明しました。これが原告において本件ゴルフ会員権に関心を持たれたきっかけであると思います」「将来の会員権の価値については,こうなると断言することはできませんから,本件のゴルフ会員権で絶対に心配ないと話したことはありません」「担保に関して言えば,私は,ゴルフ会員権が担保として使えるといったのではありません。本件ローンはゴルフ会社が保証します。その代わり会員権をゴルフ会社に担保に入れていただきますと説明したのです」と述べ,証人尋問においても,会社の資産になるということや,富士カントリーというのはいい経営会社だということは説明したが,変な土地を買うより富士カントリーの方が担保に使えるので得だということは言っていない旨証言する。
そこで検討すると,原告石山商事代表者の供述にはあいまいな点が少なくないことは前記2(6)のとおりであり,辛岡の証言等に照らすと,原告石山商事代表者の供述等をもって,直ちに,被告誉田支店支店長又は辛岡が本件会員権について絶対に損することはないという断定的な説明をしたと認めることはできない。
なお,辛岡は,証人尋問において,本件会員権が会社の資産になることや,富士カントリーというのはいい経営会社だということを説明していると証言するから,念のため,仮に辛岡が本件会員権の資産価値の上昇の可能性について言及したことがあるとして検討すると,辛岡が原告石山商事に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告石山商事代表者自身,本件会員権購入以前にゴルフ会員権に興味を持っていた友人たちからゴルフ会員権の価格が高騰していることを聞いていたのであって(原告石山商事代表者),ゴルフ会員権の価格変動があり得ることを理解していなかったとは認められない。そうであるならば,辛岡が本件会員権の資産価値の上昇の可能性について言及したとしても,これにより原告石山商事の任意かつ自由な判断が誤らされたとまでは認めることができない。
さらに,原告石山商事代表者は,被告誉田支店支店長又は辛岡が本件会員権は担保となると説明した旨供述するが,辛岡は,本件会員権を提携ローンの保証をするゴルフ会社の担保に入れることを説明したのであり,本件会員権を担保として使えると説明したものではない旨供述しており,この供述に照らすと,原告石山商事代表者の供述をもって,被告誉田支店支店長又は辛岡が上記の説明をしたとは認められない。また,原告石山商事代表者の述べるところによっても,ゴルフ会員権価格につき被告が一定額での買取りを約束するとか,預託金返還請求権の履行を保証するといった具体的な内容ではないことからすると辛岡の行った説明が原告石山商事が本件会員権を購入する際の判断を誤らせるような不適切なものであったと認めることもできない。
したがって,被告誉田支店支店長又は辛岡が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性の不確実な事実について断定的説明を行い,原告石山商事の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告石山商事の主張は採用することができない。
(6)  原告井上農機について
原告井上農機は,壬井又は長者支店担当者が,原告井上農機代表者に対し,本件ゴルフ場は,非常に堅い企業がバックに付いているので全く心配いらない,堅実な経営のゴルフ場だ,金利分としてプレーが安く行えるなどと説明したと主張する。
そして,原告井上農機代表者は,その調査回答書(甲46の5)において,壬井から「フジパンは上場された堅実な企業であり,その経営するゴルフ場なのだから心配ない」「良い堅実な経営のゴルフ場だ」「金利分としてプレーが安く行える」と聞いた旨を述べ,代表者尋問においても,預託金返還の確実性について「非常に堅い企業がバックについているので,全く心配ないよというような説明を受けた」旨供述する。
しかしながら,壬井はその陳述書(乙J5)及び証人尋問において,原告井上農機代表者に対して本件会員権についての説明をしたことを否定していること,原告井上農機代表者の供述にはあいまいな点が少なくないことは前記2(7)のとおりであり,原告井上農機代表者の供述等をもって,たやすく具体的な説明内容を認定することはできない。
また,原告井上農機代表者は,壬井から堅実な経営のゴルフ場だから心配ないと説明を受けた旨供述するけれども,原告井上農機代表者の述べるところによっても,ゴルフ会員権価格につき被告が一定額での買取りを約束するとか,預託金返還請求権の履行を保証するといった具体的な内容ではないことからすると,その意味するところは,被告が本件ゴルフ場を優良なゴルフ倶楽部であると評価していることを述べたものとみるのが相当であり,仮に壬井又は長者支店担当者が,本件ゴルフ場は堅実な経営のゴルフ場である旨を説明したとしても,それが,本件会員権の安全性を過度に強調したものであって,原告井上農機が本件会員権を購入する際の判断を誤らせるような不適切なものであったと認めることはできない。
したがって,壬井又は長者支店担当者が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性という不確実な事実について断定的説明を行い,原告井上農機の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告井上農機の主張は採用することができない。
(7)  原告横堀本店について
原告横堀本店は,茂原支店担当者が,原告横堀本店代表者に対し,将来的にも値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように断定的に説明したと主張する。
そして,原告横堀本店代表者は,その調査回答書(甲46の6)において,「フジパンという大手がバックに付いており預託金については全く心配がいらない。又会員券相場もゴルフ場がオープンすればじきに2~3倍に値上がりするから絶対お買い得ですよ」「投資物件としても最高だ」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,預託金は間違いなく返還される,オープンしたら間違いなく値上がりすると説明された旨供述する。
しかしながら,原告横堀本店代表者の供述等には変遷があることは前記2(8)のとおりであり,その供述等のみをもってたやすく茂原支店担当者の具体的な説明内容を認めることはできない。
念のため,仮に茂原支店担当者が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,茂原支店担当者が原告横堀本店に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),茂原支店担当者が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告横堀本店代表者は,原告横堀本店及び個人名義で本件会員権購入以前に既に別のゴルフ会員権を五つ所有しており,本件会員権購入当時のゴルフ会員権の相場が値上がりしていたことについては新聞等を読んで知っていたというのであるから(甲46の6,原告横堀本店代表者),原告横堀本店代表者がゴルフ会員権の価格変動により損失を被る可能性を理解していなかったとは到底認められない。そうであるならば,茂原支店担当者が本件会員権の価格の値上がりの可能性について言及したとしても,これにより原告横堀本店の任意かつ自由な判断が誤らされたとまでは認めることができない。
したがって,茂原支店担当者が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告横堀本店の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告横堀本店の主張は採用することができない。
(8)  原告ミツワについて
原告ミツワは,癸木が,原告ミツワ代表者に対し,将来的にも値崩れしない確実なゴルフ場であると断定的に説明したと主張する。
そして,原告ミツワ代表者は,代表者尋問において,癸木が,本件会員権は最初の販売なのでどんどん高くなる,預託金の返還もフジパンがやっているので大丈夫であると説明したと供述する。他方,癸木は,その陳述書(乙J7)において,当時,富士カントリーは,県内外でゴルフ場をいくつか経営し,そのゴルフ場は良い評価を受けていると考えており,大多喜城ゴルフ倶楽部も良いゴルフ場になるでしょうというようなことは述べたとしており,証人尋問においても,値崩れもせず,ある程度プレーもできて,それなりの評判のゴルフ場になると述べた旨を証言する。これらの供述等によれば,癸木が,原告ミツワ代表者に対し,本件会員権について値崩れをしないでしょうといった楽観的な見通しを述べたことが認められる。
しかしながら,癸木が原告ミツワに対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いており(甲J33の8),癸木は当時今日のような状態になるとは夢にも思わなかったというのであるから(甲J7),癸木が本件会員権の価格の動向について楽観的な見通しを述べたとしても,それが,当時の状況の下において,全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告ミツワ代表者は,ある程度ゴルフ会員権の相場の知識があったのであるから(原告ミツワ代表者),癸木が本件会員権の価格の動向について楽観的な見通しを述べたとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測にとどまり,原告ミツワ代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告ミツワの任意かつ自由な判断が誤らされたものと認めることはできない。
したがって,癸木が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告ミツワの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告ミツワの主張は採用することができない。
(9)  原告花澤電装について
原告花澤電装は,丑葉が,原告花澤電装代表者に対し,将来的に値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように断定的に説明したと主張する。
そして,原告花澤電装代表者は,その調査回答書(甲46の8)において,「開場すれば,すぐに7000万円から1億円ぐらいの値上がりが見込めるから預託金返還など問題にならない」と聞いた旨を述べ,代表者尋問においても,被告が窓口になって縁故募集をする間違いのないゴルフ場だから安心して買って欲しいと説明されたと供述する。
他方,丑葉は,その陳述書(乙J8)において,「会員権相場が高騰していた当時ですから,ゴルフ談義の中で相場の話が出たことはあったと思います。しかし,相場のある会員権の価格について,断定的なことや,約束するようなことは言えません」と述べ,証人尋問においても,本件会員権の値上がりが見込めるから預託金の返還について問題にならないと言ったことはないと証言する。また,原告花澤電装代表者も,代表者尋問において,本件ゴルフ場が確実なゴルフ場であるという理由については,丑葉から特に説明はなかった,ただ本件会員権は銀行が募集して,提携ローンは会員権担保で全額融資が受けられるので,本件会員権が確実な担保になるという認識があった旨供述している。これらの供述等に照らせば,原告花澤電装代表者の供述等をもって,丑葉が,原告花澤電装代表者に対し,本件会員権の価格上昇について具体的な価格を示して説明したことや預託金返還に問題がない旨を述べたことを認めることはできない。
なお,丑葉は,その陳述書(乙J8)において,ゴルフ談義の中で相場の話が出たことはあった,大多喜城ゴルフ倶楽部はいいゴルフ場になるだろうと話していた旨述べるので,念のため,仮に丑葉が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,丑葉が原告花澤電装に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),丑葉が原告花澤電装代表者との話の中で本件会員権の価格の値上がりの可能性について言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告花澤電装は,本件会員権購入以前に別のゴルフ会員権を350万円で購入したところ,そのゴルフ場の新会員権の募集金額が2000万円を超えたという経験を有しており,ゴルフ場の会員権相場については多少は関心を有していたのであって(甲46の8,原告花澤電装代表者),原告花澤電装代表者がゴルフ会員権の価格変動により損失を被る可能性を理解していなかったとは到底認められない。そうであれば,丑葉が本件会員権の価格上昇について述べたとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測にとどまり,原告花澤電装代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告花澤電装の任意かつ自由な判断が誤らされたものと認めることはできない。
したがって,丑葉が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告花澤電装の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告花澤電装の主張は採用することができない。
(10)  原告十文字土木について
原告十文字土木は,卯口が,原告十文字土木代表者に対し,本件ゴルフ場は経営基盤のしっかりしたところだと断定的に説明したと主張する。
そして,原告十文字土木代表者は,その調査回答書(甲46の9)において,「千葉銀行が扱うことになったのも,そうした経営基盤のしっかりしたところだから」「会員権のローンに対してカントリークラブが保証するというやり方も,フジパングループという大きな資本がなせることであり,返還開始は通常10年なので5年長くなるが,経営基盤のしっかりしたとこなので,それだけ長く預からせてもらうことを打ちだせる」と聞いた旨を述べる。
他方,卯口は,その陳述書(乙J9)において,「原告が入会することを希望したのですから,私は,融資の条件は説明しましたが,それ以外のゴルフ場や預託金について特に説明などしていません」と述べ,証人尋問においても,同趣旨の証言をする。
そこで検討すると,卯口が原告十文字土木に対して本件会員権購入を積極的に勧誘すべき事情は認められないこと及び原告十文字土木代表者の供述が具体性を欠くことは前記2(11)のとおりであり,原告十文字土木代表者の供述等をもって,卯口が原告十文字土木代表者に対して被告が本件会員権を扱った経緯や預託金の返還の確実性について説明をしたと認めることはできない。
したがって,卯口が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性等の不確実な事実について断定的説明を行い,原告十文字土木の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告十文字土木の主張は採用することができない。
(11)  原告なべやについて
原告なべや代表者は,亥原は,原告平林物産代表者に対して,預託金の返金は全く問題ないし,会員権の価格は上昇すると断定的に説明したが,それを信用した原告平林物産代表者がさらに原告なべや代表者に同旨の説明をしたため,原告なべや代表者もその説明を信用したと主張する。
そして,原告なべや代表者は,その調査回答書(甲46の10)において,高校時代の友人である原告平林物産代表者から本件会員権の購入の勧誘を受け,その際,原告平林物産代表者は被告大多喜支店長亥原から「バックがフジパンだから絶対安心だ。オープンしたら,倍とは言わないが,すぐに2~3千万はあがる。預託金はフジパンがバックだから,絶対に戻ってくる」と聞いたと述べていた旨を述べ,代表者尋問においても,同趣旨の供述をする。
しかし,原告なべや代表者自身,被告の担当者から本件会員権の説明を受けたことはないというのであって,被告の原告なべやに対する勧誘行為を認めることはできず,また,亥原の原告平林物産代表者に対する説明をもって,被告による原告なべやに対する勧誘行為と評価することもできない。
念のため,亥原の原告平林物産代表者に対する説明内容を検討しても,亥原が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,平林種苗の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないことは,後記3(16)のとおりである。
したがって,亥原が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告なべやの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告なべやの主張は採用することができない。
(12)  原告小原組について
原告小原組は,巳下が,丑木に対し,フジパンだから絶対大丈夫と断定的に説明したと主張する。
そして,原告小原組代表者は,その陳述書(甲J21)において,原告小原組代表者の夫であった丑木が「法人だけが入れるゴルフ場で一般の人は入れない。フジパンだから絶対大丈夫と言われている」と述べていた旨を述べる。
他方,巳下は,その陳述書(乙J11)において,「私はゴルフ場についてパンフレットをお渡しした程度で殆ど説明していない」と述べ,証人尋問においても,大多喜城ゴルフ倶楽部についてはほとんど説明しなかったと証言する。また,原告小原組代表者は,丑木からの伝聞を述べるにすぎない上,巳下の丑木に対する説明内容については何ら触れるところがないことは前記2(13)のとおりである。そうすると,巳下の供述等に照らして,原告小原組代表者の供述等をもって,巳下が,丑木に対し,フジパンだから絶対大丈夫と説明したと認めるには足りない。
したがって,巳下が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性の不確実な事実について断定的説明を行い,原告小原組の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告小原組の主張は採用することができない。
(13)  原告安藤建材について
原告安藤建材は,未川が,原告安藤建材代表者に対し,預託金返還の可能性について,預託金は間違いなく戻ってくると断定的に説明したと主張する。
そして,原告安藤建材代表者は,その調査回答書(甲46の12)において,「15年後の退職金が貰えると思って買っていただけませんか。預託金の3500万円は間違いなく戻って来ます」と説明された旨を述べ,代表者尋問においても,申込みをして2か月ぐらいたってから,購入をやめると言ったところ,未川から15年後の退職金と思ってという話をされたと供述する。
他方,未川は,陳述書(乙J12)において,「社長から本件会員権を購入したいからゴルフローンをつけて欲しいという要請が当店にあり,そこで私がゴルフローンの予定の手続をしたのです。15年後の退職金と思って買っていただけないかという話は一切しておりません」と述べ,証人尋問においても預託金が退職金代わりになる旨の説明をしたことはない旨証言する。また,原告安藤建材代表者自身,代表者尋問において,取引先から,本件会員権のことを聞き,自ら未川に対して本件会員権のことを尋ねた旨述べており,未川から積極的に本件会員権購入の勧誘を行ったものではないことが窺われ,原告安藤建材代表者も,退職金という一言があっただけで,具体的に退職金という意味の説明はなかったというのである。そうであれば,未川の証言等に照らして,原告安藤建材代表者の供述等をもって,未川が預託金返還について,間違いなく戻ってくるとか,15年後の退職金が貰えると思って買っていただけませんかとの説明をしたと認めることはできない。
また,仮に未川が預託金は15年後に返還される旨述べたとしても,その範囲では預託金制度の一般的仕組を述べたにすぎず,これをもって断定的説明と評価することはできないし,原告安藤建材代表者の述べるところによっても,被告が本件会員権の預託金返還請求権の履行を保証するといった具体的な内容ではないことからすると,未川の行った説明が,本件会員権の安全性を過度に強調したものであって,原告安藤建材が本件会員権を購入する際の判断を誤らせるような不適切なものであったと認めることもできない。
したがって,未川が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性という不確実な事実について断定的説明を行い,原告安藤建材の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告安藤建材の主張は採用することができない。
(14)  原告知久商会について
原告知久商会は,申谷又は辛井が,原告知久商会代表者に対し,将来的にも値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように断定的に説明したと主張する。
そして,原告知久商会代表者は,その陳述書(甲46の13)において,「15年後=退職金に」と辛井と話した旨を述べ,代表者尋問においても,この次の募集で500万か600万上がりますよと説明された旨供述している。
他方,申谷は,その陳述書(乙J13)において,「退職金の話もしていません」と述べ,証人尋問において,15年後の退職金にというような説明はしていない旨証言する。原告知久商会代表者の供述等が証拠価値に乏しいことは,前記2(15)のとおりであり,申谷の証言等に照らすと,原告知久商会代表者の供述等をもって,申谷が預託金の返還の確実性や本件会員権の値上がりの可能性を説明したと認めることはできない。
したがって,申谷が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性の不確実な事実について断定的説明を行い,原告知久商会の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告知久商会の主張は採用することができない。
(15)  原告安田総業について
原告安田総業は,酉沢が,辰口に対し,将来的にも値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように断定的に説明したと主張する。
そして,辰口は,その証人尋問において,投機としてどうか,本件会員権は値上がりすると説明された旨証言する。
他方,酉沢は,証人尋問において,辰口に対してどのような説明をしたかは覚えていない旨証言するものの,本件会員権の募集は縁故募集であり,縁故募集は一般募集よりも割安で販売するから,資産形成になるとの認識を有していたと証言するところ,本件会員権購入の勧誘に際し,酉沢が,辰口に対して示した「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」と題する書面(甲41)には,縁故会員の募集口数が800口の法人専用のゴルフ場である旨の記載があるから,酉沢が本件会員権の値上がりの可能性について言及した可能性は否定できない。
しかしながら,酉沢が原告安田総業に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),酉沢が本件会員権の価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであるところ,辰口は,本件会員権購入前に二つのゴルフ会員権を購入しており,当時,所有していたゴルフ会員権が大幅に値上がりし,会員権相場が高騰しているという認識を有していたというのであるから(証人辰口),辰口がゴルフ会員権の価格変動により損失を被る可能性を理解していなかったとは到底認められない。そうであるならば,酉沢が本件会員権の値上がりの可能性について言及したとしても,これにより原告安田総業の任意かつ自由な判断が誤らされたとまでは認めることができない。
したがって,酉沢が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告安田総業の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告安田総業の主張は採用することができない。
(16)  原告平林物産について
原告平林物産は,亥原が,平林種苗代表者及び原告平林物産代表者に対し,預託金の返還は心配ないし,本件会員権の価格は二,三千万円上がると断定的に説明したと主張する。
そして,原告平林物産代表者は,その調査回答書(甲46の15)において,「預託金の返金には心配は無いと勧められた」旨を述べ,代表者尋問においても,預託金の返還については全く問題ないよ,心配ないよと説明され,多分オープンしたら倍になるよというような話を聞いたと供述する。
他方,亥原は,その陳述書(乙J15)において,預託金は全く心配ないというような将来の保証になるようなことは言っていない,当時は,ゴルフ会員権の高騰が続き,資産として持ってよいものという理解が通例であり,今日のような事態になるとは誰もが思いもしなかったので,預託金が大丈夫などという質問を受けたこと自体がない旨を述べ,証人尋問においても,平林種苗代表者から預託金に関する質問はなく,預託金は全く心配ないというような将来の保証になるような説明はしていないし,二,三千万円上がるというようなことを言ったことはない,本件会員権の勧誘に関して原告平林物産代表者には会っていない旨証言する。また,原告平林物産代表者の述べるところによっても,亥原と特に話しをしていたのは平林種苗代表者であって,原告平林物産代表者は,その話の中にたまに入っていたという状況であったというのであり(原告平林物産代表者),これらの供述等に照らすと,原告平林物産代表者の供述等をもって,亥原が預託金の返還は心配ないとか,本件会員権の価格は二,三千万円上がると説明したと認めるには足りない。
念のため,仮に亥原が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,亥原が平林種苗に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),亥原が本件会員権価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,平林種苗代表者から相談を受けていた原告平林物産代表者自身,「当初,オープンしたら倍ぐらいになるだろうというような,当然その頃はそういうふうになってましたので,当然今後ゴルフ場もそうなるよというような認識もありました」というのであるから(原告平林物産代表者),亥原が本件会員権の価格上昇について述べたとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測にとどまり,平林種苗代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより平林種苗の任意かつ自由な判断が誤らされたものと認めることもできない。
したがって,亥原が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,平林種苗の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告平林物産の主張は採用することができない。
(17)  原告富士無線について
原告富士無線は,亥原が,原告富士無線代表者に対し,預託金の返還は安心だし,本件会員権の価格はオープン1年後には6000万円くらいになると断定的に説明したと主張する。
そして,原告富士無線代表者は,その調査回答書(甲46の16)及び反論書(甲J14)において,「フジパンは無借金経営ですので安心です」「あと2枚しかない,あと1枚しかない。早くしたほうが得をする」「オープン1年後には6000万円くらいになるのでその時に売れば良い」と説明された旨述べる。
他方,亥原は,その陳述書(乙J15)において,「当時,富士カントリーのゴルフ場に預ける預託金については,誰も不安に思うような状態ではなく,大丈夫などということは話題にすらなっていません」「ゴルフ会員権を資産として保有することは不利な運用とは思っていませんでしたが,本件ゴルフ場の会員権が1年後6000万円になるといったりしていません」と述べ,証人尋問においても預託金の返還は大丈夫だということは言ったことがないし,その当時は預託金は当然戻るだろうというような考え方であって,本当に戻るんですかという質問はなかった旨証言する。この点,原告富士無線代表者は事情により出廷できず,その主張に沿う証拠は,調査回答書及び反論書しか存在しないため,亥原による具体的な勧誘状況は必ずしも明らかではないのであり,亥原の供述等に照らすと,原告富士無線代表者の供述をもって亥原が預託金の返還は安心だとか,本件会員権の価格はオープン1年後には6000万円くらいになると説明したと認めるには足りない。
念のため,仮に亥原が本件会員権の価格の動向について言及したことがあるとして検討すると,亥原が原告富士無線に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),亥原が本件会員権価格の値上がりの可能性に言及したとしても,それが,全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告富士無線代表者自身,ゴルフ場支配人等に知己を有し,ゴルフ場の開発情報に詳しかったのであるから(証人亥原),亥原が本件会員権の価格上昇について述べたとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測にとどまり,原告富士無線代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告富士無線の任意かつ自由な判断が誤らされたものと認めることもできない。
したがって,亥原が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告富士無線の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告富士無線の主張は採用することができない。
(18)  原告愛郷ホームについて
原告愛郷ホームは,甲谷が,原告愛郷ホーム代表者及び乙沢に対し,万一の事があってもフジパンが母体なので大丈夫と将来的に確実なゴルフ場であるかのように断定的に説明したと主張する。
そして,原告愛郷ホーム代表者は,その調査回答書(甲72の1)において,「フジパンが親会社なので,倒産することは考えづらく,万一の事があってもフジパンが母体なので大丈夫」と説明され,「千葉銀行が融資をしており,特別縁故枠が1つあいているので,買うように勧められた」旨述べる。
しかしながら,フジパンとの関係について甲谷が原告愛郷ホームの判断を誤らせるような説明を行ったと認められないことは前記2(19)のとおりである。また,甲谷は,その陳述書(乙J17)において,「未山社長らとの話で預託金の返還が問題になったこと自体ありませんでした。したがって私は,大丈夫などと言っておりません。もちろん仮に質問があったとしても将来のことを大丈夫などと請合うことはありえないことです」と述べ,証人尋問においても同趣旨の証言をしており,これらの証言等に照らすと,原告愛郷ホーム代表者の供述をもって甲谷が預託金の返還が確実との説明を行ったと認めるには足りない。
したがって,甲谷が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性について断定的説明を行い,原告愛郷ホームの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告愛郷ホームの主張は採用することができない。
(19)  原告明治神宮について
原告明治神宮は,丙野が,丁原に対し,一次募集で4800万,二次募集で5500から6000万ぐらいになるだろうと将来的にも値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように断定的に説明したと主張する。
そして,丁原は,証人尋問において,次の一次募集でおそらく4800万円,二次募集になると5500万円から6000万円まで値上がりする旨説明されたと証言する。また,本件会員権購入の勧誘に際し,丙野は,丁原に対し,「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」と題する書面(甲72の2)を交付して説明を行ったこと,同書面中に印刷された「募集金額3800万円(入会保証金3500万円,登録料300万円)」との記載の右側の余白には手書きで「1次4800万円,2次5500~6000万?」との記載があることが認められ(,甲72の2,証人丙野),これは丁原の証言を裏付けるものということができる。さらに,丙野は,証人尋問において,断定的ではないけれども,一次募集,二次募集の金額について話をしたかもしれない旨証言する。これらの事実によれば,丙野が,丁原に対して,本件会員権の一次募集の金額が4800万円,二次募集の金額が5500万円から6000万円となるだろうという主観的予測を述べたことが認められるものの,手書きの記載の最後に「?」の記載があること,丁原も,丙野の説明はおおよそとか大体というものであったと証言していることに照らすと,丙野の説明が,本件会員権の一次募集の金額が4800万円,二次募集の金額が5500万円から6000万円となるという断定的なものであったとまでは認められない。
そして,丙野が原告明治神宮に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),丙野が本件ゴルフ場の会員権価格の募集金額の値上がりの可能性に言及したことが,全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。また,縁故会員の募集の後の本件会員権の一次募集の金額は,預託金が4000万円,入会金が500万円の合計4500万円であったのであるから(甲46の10),本件会員権の一次募集の金額が4800万円となるだろうという丙野の予測が,不合理だったということもできない。
さらに,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであるところ,丙野が丁原に交付した「富士カントリー大多喜城倶楽部の縁故会員の募集について(初回募集)」と題する書面にも縁故会員の募集内容の説明の後に「次回募集内容については時期,金額口数ともに未定です。」との記載があり,丁原においても,丙野が説明した本件会員権の募集金額の予測については,それがまだ未確定なものだということは理解していたというのである(証人丁原)。そうであるならば,丙野が本件会員権の募集価格の値上がりの可能性について説明したことは,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測にとどまり,丁原においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告明治神宮の任意かつ自由な判断が誤らされたものと認めることもできない。
したがって,丙野が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告明治神宮の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告明治神宮の主張は採用することができない。
(20)  原告伊藤商店について
原告伊藤商店は,戌崎が,原告伊藤商店代表者に対し,本件会員権は値上がりする,倍ぐらいにはなると将来的にも値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように断定的に説明したと主張する。
そして,原告伊藤商店代表者は,その調査回答書(甲72の3)において,「将来の退職金のかわりになる」「1億になると言われた。又倍以上になるとも言われました」旨を述べ,代表者尋問においても同趣旨の供述をする。
他方,戌崎は,その陳述書(乙J19)において,退職金代わりになるとか,1億円になる,倍以上になるとは話していないけれども,本件会員権が原告伊藤商店の資産になると説明したと述べ,証人尋問においても,縁故募集だから一次募集,二次募集と値が上がるので有利な資産であると説明した旨証言する。また,原告伊藤商店代表者の供述によっても,退職金代わりになるという説明は,「これ将来買って金利払っても,元本プラス金利分ぐらいの退職金になるかなと言ったら,はい,そのぐらいになるでしょうと言われました」というものであり,戌崎からの積極的な説明ではなく,その内容も推測を述べるにすぎず,1億円になるという説明も,具体的には「1億も夢じゃないかもしれないよ」というものにすぎない。これに加えて,前記2(21)のとおり,原告伊藤商店代表者の供述等には記憶にあいまいな点があること及び戌崎の証言等に照らすと,原告伊藤商店代表者の供述等をもって,戌崎が,将来の退職金の代わりになると説明し,また,具体的な額を示して本件会員権の値上がりを断定的に説明したと認めることはできない。
もっとも,戌崎は,本件会員権は縁故募集だから一次募集,二次募集と値が上がるので有利な資産になる旨の説明をしたというのであるから,戌崎が本件会員権の値上がりの可能性を説明したことが認められるので,検討すると,戌崎が原告伊藤商店に対する勧誘を行った当時において,ゴルフ会員権価格相場は未だ高騰が続いていたのであるから(甲J33の8),戌崎が本件会員権の値上がりの可能性について言及したとしても,それが全く不合理な主観的予測に基づく評価であったとは言い難い。
また,将来におけるゴルフ会員権の価格が経済情勢によって上下することは何ら専門的知識を有しない者でも当然推知し得るものであり,原告伊藤商店代表者自身,新聞等によってゴルフ会員権の相場の変動があり得ることは理解していたというのであるから(原告伊藤商店代表者),戌崎が本件会員権の資産価値について述べたとしても,当時の社会情勢を踏まえた上での一般的な予測にとどまり,原告伊藤商店代表者においてもその趣旨を理解していたと推認することができ,これにより原告伊藤商店の任意かつ自由な判断が誤らされたものと認めることもできない。
したがって,戌崎が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性や会員権相場等の将来における変動が不確実な事実について断定的説明を行い,原告伊藤商店の任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告伊藤商店の主張は採用することができない。
(21)  原告三協ハウジングについて
原告三協ハウジングは,己田が,原告三協ハウジング代表者に対し,フジパンだから確実であると将来的にも値崩れしない確実なゴルフ場であるかのように断定的に説明したと主張する。
そして,原告三協ハウジング代表者は,その調査回答書(甲72の4)において,預託金の返還について「フジパンだから確実である」と説明されたと述べる。
しかしながら,原告三協ハウジングは,己田から説明を受ける前から本件ゴルフ場はフジパンの経営であると認識していたのであり,己田の説明が原告三協ハウジングの判断を誤らせたと認められないことは前記2(22)のとおりである。
したがって,己田が,本件会員権の内容に関し,預託金返還の可能性について断定的説明を行い,原告三協ハウジングの任意かつ自由な判断を誤らせたとはいえないから,原告三協ハウジングの主張は採用することができない。
4  争点1ウ(本件会員権の危険性に関する説明義務違反の有無)について
(1)  原告らは,富士カントリーが大多喜城ゴルフ倶楽部の預託金を含めた資金を海外ゴルフ場開発や各種の投資,絵画の購入等の事業に支出しており,それら事業が頓挫した場合にはゴルフ場経営や預託金の償還に支障が生じることや,今後のゴルフ事業には不確定要素が多く,預託金の将来の償還については危険性がある状況であったことを,被告は知り又は知り得たにもかかわらず,原告ら(原告平林物産については被勧誘者及び購入者である平林種苗をいう。以下,本項(2)ア,イ及びオにおいて同じ。)にこれらの危険性を説明しなかった義務違反があると主張する。
しかしながら,金融機関の従業員が,その取引先等に対して融資を受けてゴルフ会員権を購入するように積極的に勧誘し,その結果として,当該取引先等がゴルフ会員権を購入するに至ったものの,自ら虚偽の説明や,不確実なものをあたかも確実な事実とする断定的な説明を行ったことにより当該取引先等の判断を誤らせたという事情は存在しない場合においては,当該従業員がゴルフ会員権の預託金の償還が見込まれないことを認識していながらこれを当該取引先等に殊更に知らせなかったことなど,信義則上,当該従業員の当該取引先等に対する説明義務を肯認する根拠となり得るような特段の事情のない限り,当該従業員がゴルフ場運営会社の経営内容や預託金の償還可能性等について調査した上で顧客に説明しなかったとしても,それが法的義務に違反し,当該取引先等に対する不法行為を構成するものということはできないものというべきである。
(2)ア  これを本件についてみると,被告担当者は,本件提携ローン合意に基づき,原告らに対して本件会員権の購入を勧誘したものであり,原告らによる本件会員権の購入と被告からの融資は極めて密接な関連性を有していることは前記2(1)のとおりであり,この事実は,上記の特段の事情を肯定する方向の一要素ということができる。
イ  しかしながら,証拠(甲120,甲J23の2,甲J32の6,甲J33の2から8まで,甲J40の5)によれば,昭和60年ころから,ゴルフ場の開発がブームになり,ゴルフ会員権の相場も高騰を始め,昭和63年ころから平成元年ころにかけては,さらに相場が上昇し,千葉県内のゴルフ会員権が数千万円で販売されることも珍しくない状態であったことが認められ,一部にゴルフ場の供給過剰を懸念する指摘もあったものの,本件会員権購入の勧誘当時において,ゴルフ場を経営する会社の倒産やゴルフ場の開発の著しい遅延という具体的な状況が存し,社会的な問題となっていたという状況はうかがうことはできず,一般に大多喜城ゴルフ倶楽部を含むゴルフ場運営会社が破たんするおそれがあると予見できる状況にはなかったことが認められる。
大多喜城ゴルフ倶楽部が民事再生手続開始の申立てをするに至った原因をみても,その主たる要因は,富士カントリー関係の海外ゴルフ場等への投融資が回収不能に陥ったこと,バブル経済崩壊後における経済不況の深刻化・長期化によって,会員権購入のためのローンの支払が困難となる会員が続出した結果,金融機関から大多喜城ゴルフ倶楽部への保証債務の履行請求が相次いだこと,本件会員権の相場の大幅な下落により会員からの預託金の返還請求が避けられない見込みとなったことによるものであり,いずれも,原告らが本件会員権を購入した後に生じたものである。
このほか,本件会員権購入の勧誘当時,大多喜城ゴルフ倶楽部や富士カントリーが,他のゴルフ場運営会社と比較して特に経営基盤が脆弱で預託金の返還の実行余力に乏しいと認識されていたとか,被告が大多喜城ゴルフ倶楽部や富士カントリーの将来における破綻を予測させるような事実ないしその兆候を認識していたと認めるに足りる証拠もなく,これを予測することは極めて困難であったというべきである。
ウ  この点,原告らは,被告は,昭和52年ころから富士カントリーの関連会社に被告の出身者を出向させており,平成元年ころには,被告出身の5名が,富士カントリーの推進するゴルフ事業の極めて重要な役割を占めていたこと,被告が,提携ローンのほかにも,富士カントリー本体に25億円程度の融資をしていたことから,被告は,富士カントリーが大多喜城ゴルフ倶楽部の預託金を含めた資金を海外ゴルフ場開発や各種の投資,絵画の購入等の事業に支出しており,それらの事業が頓挫した場合にはゴルフ場経営や預託金の償還に支障が生じることを知っていたか又は当然に知ることができたと主張する。
なるほど,平成元年には,被告における勤務経験を有する者5名が,富士カントリーの取締役,房総カントリーの取締役,監査役,大多喜城ゴルフ倶楽部の取締役,エフシーゴルフの取締役に就任していることが認められ(甲5の2,甲84の1,甲J37,弁論の全趣旨),また,平成10年の富士カントリーの計算書類附属書類(甲81の1B)には被告が富士カントリーに対して25億円の融資残高を有している記載があり,このことからすれば,平成元年当時においても,被告が富士カントリーに対して相応の融資を行っていたことが推認できないではないが,これらの事実をもって,直ちに,本件会員権購入の勧誘当時,被告が大多喜城ゴルフ倶楽部や富士カントリーの将来における破綻を予測させるような事実ないしその兆候を認識していたと推認することはできない。
また,原告らは,被告自身,自らのシンクタンクにおいてゴルフ市場の先行についての不安定さを公表していたのであるから,被告は,ゴルフ会員権の価格暴落の危険が指摘されていることを認識しており,ゴルフ事業の今後について不確定要素が多い状況にあり,長期に亘る預託金の償還については危険性がある状況であることを知っていたと主張する。
しかしながら,原告らが指摘する千葉経済センター作成の「ゴルフ場」と題する報告書(甲J50の1)は,昭和62年当時のゴルフ場についての沿革やブームの背景,千葉県におけるゴルフ場の現状を分析した資料であるが,同報告書においても,「現在1ゴルフ場当たり平均利用者数が4万人を超えている状況からみると,ゴルフ場経営は充実期を迎えていると言えるが,今後のゴルフ場市場が未だ成長の途中にあるのか,成熟期を迎えてこれ以上の成長がむずかしいのか,どちらの方向にいくのかを判断するのは意見の分れるところである。」というにとどまり,これをもって,被告が大多喜城ゴルフ倶楽部や富士カントリーの将来における破綻を予測させるような事実ないしその兆候を認識していたと推認することもできない。
以上のほか,本件記録を精査しても,被告が大多喜城ゴルフ倶楽部や富士カントリーの将来における破綻を予測させるような事実ないしその兆候を認識していたと認めるに足りる証拠はない。
エ(ア)  原告千代不動産について
原告千代不動産代表者は,不動産の売買等を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,二つのゴルフ会員権を所有していたこと,原告千代不動産代表者は,株式会社千葉興業銀行に勤務した経験を有する息子とともに丙沢からの説明を受けた後,直ちに即答することなく,相当の時間をかけて本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲46の1,原告千代不動産代表者)に照らすと,原告千代不動産代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,丙沢が原告千代不動産代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(イ) 原告鶴岡興産について
原告鶴岡興産代表者は,保温・保冷・耐火工事の設計・施工を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,しかも,本件会員権購入の勧誘当時,既に別のゴルフ会員権を三つ購入したことがあり,そのうちの一つは売却により利益を得ることができた一方,他の一つはゴルフ場運営会社の倒産により預託金が戻ってこなかったという経験を有していたこと(以上の事実は,甲46の2,原告鶴岡興産代表者)に照らすと,原告鶴岡興産代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,丁野が原告鶴岡興産代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ウ) 原告エルヴェについて
本件会員権購入の勧誘当時の原告エルヴェ代表者庚田は,学習塾チェーン事業を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,しかも,その当時,原告エルヴェは,別のゴルフ会員権を一つ所有していたほか,庚田は,個人で二つのゴルフ会員権を所有していたこと(以上の事実は,甲J25,乙J29,原告エルヴェ代表者),庚田は,己崎から説明を受けた後,事業拡張のための資金が必要であったので,しばらく躊躇したものの,事業資金とは別枠で本件会員権の購入資金を融資する旨の説明を受けて本件会員権を購入することを決めたこと(甲J11)に照らすと,庚田が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,己崎が庚田の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(エ) 原告石山商事について
原告石山商事代表者は,一般貨物自動車運送を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者であること,辛岡からの説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,辛岡は,原告石山商事代表者に対し,ゴルフ会員権をローンで購入すると節税できる旨説明して本件会員権購入を勧誘しており(乙J4,証人辛岡),購入の目的として,担保となる資産の保有のほか,節税対策もあったこと(以上の事実は,甲46の4,原告石山商事代表者)に照らすと,原告石山商事代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,辛岡が原告石山商事代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(オ) 原告井上農機について
原告井上農機代表者は,農業機械の販売及び修理を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,しかも,ゴルフを趣味とし,本件会員権購入の勧誘当時,別のゴルフ会員権を所有していたこと,壬井又は長者支店担当者の説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,購入の目的として,本件ゴルフ場が都内の顧客の接待に便利がよかったことに加え,値上がりの期待もあったこと(以上の事実は,甲46の5,原告井上農機代表者)に照らすと,原告井上農機代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,壬井又は長者支店担当者が原告井上農機代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(カ) 原告横堀本店について
原告横堀本店代表者は,食料品及び荒物雑貨等の販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,20年以上のゴルフ歴を有しており,原告横堀本店及び代表者名義で五つのゴルフ会員権を所有していたこと,茂原支店担当者からの説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,購入の目的として会員となったゴルフ場に原告横堀本店の商品を納入することもあり,現実に会員となって商品を納入していたゴルフ場が複数あったこと(以上の事実は,甲46の6,原告横堀本店代表者)に照らすと,原告横堀本店代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,茂原支店担当者が原告横堀本店代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(キ) 原告ミツワについて
原告ミツワ代表者は,化粧品等の卸売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,約10年のゴルフ歴を有していたこと,癸木から説明を受けた後,約3か月程度検討して,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲46の7,原告ミツワ代表者)に照らすと,原告ミツワ代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,癸木が原告ミツワ代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ク) 原告花澤電装について
原告花澤電装代表者は,自動車電装部品販売及び修理サービスを主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,約15,6年のゴルフ歴を有し,別のゴルフ会員権を所有しており,ゴルフ会員権相場にも多少の関心を有していたこと,丑葉からの説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲46の8,原告花澤電装代表者)に照らすと,原告花澤電装代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,丑葉が原告花澤電装代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ケ) 原告十文字土木について
原告十文字土木代表者は,建設業を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,原告十文字土木は,本件会員権購入の勧誘当時,別のゴルフ会員権を所有していたこと,原告十文字土木では,取締役会に諮って本件会員権の購入を決めたこと,購入の目的として,東京方面の取引先の接待として利用することもあったこと(以上の事実は,甲46の9,原告十文字土木代表者),卯口は,本件会員権を購入したいという原告十文字土木の希望に応えるという認識で本件会員権を紹介したものであること(証人卯口)に照らすと,原告十文字土木代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,卯口が原告十文字土木代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(コ) 原告なべやについて
原告なべや代表者は,芸能人のマネジメントを主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,ゴルフを趣味としていたこと,高校時代の友人である原告平林物産代表者から本件会員権の情報を得て,自ら本件会員権の購入を決断し,原告平林物産代表者を通じて被告大多喜支店に提携ローンの申込みをしたこと(以上の事実は,甲46の10,原告なべや代表者)に照らすと,原告なべや代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,辰上が原告なべや代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(サ) 原告小原組について
本件会員権購入の勧誘当時,原告小原組代表者であった丑木は,足場仮設工事を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,その当時,毎月1回程度ゴルフを行い,既に別の三つのゴルフ会員権を所有していたこと,巳下からの説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲46の11,乙J11,原告小原組代表者)に照らすと,丑木が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,巳下が丑木の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(シ) 原告安藤建材について
原告安藤建材代表者は,建築資材の販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,取引先から本件会員権の話を聞いて本件会員権に関心を持つに至ったこと,未川からの説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,原告安藤建材代表者自身はゴルフをしないが,購入の動機は,取引先を接待できるゴルフ場が欲しかったということであったこと(甲46の12)に照らすと,原告安藤建材代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,未川が原告安藤建材代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ス) 原告知久商会について
原告知久商会代表者は,自転車・オートバイク販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,約15年のゴルフ歴を有し,既に別の三つのゴルフ会員権を所有していたこと,所有していたゴルフ会員権が値上がりしていることを認識しており,本件会員権についても値上がりを期待していたこと,申谷からの説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲46の13,原告知久商会代表者)に照らすと,原告知久商会代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,申谷が原告知久商会代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(セ) 原告安田総業について
本件会員権購入の勧誘当時,原告安田総業の代表者であった辰口は,ガソリンスタンド営業を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,既に別の二つのゴルフ会員権を所有していたが,それが大幅に値上がりし,会員権相場が高騰しているという認識を有していたこと,酉沢からの説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,購入の目的は,主として会員権の値上がりを期待する投機であったこと(以上の事実は,証人辰口)に照らすと,辰口が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,酉沢が辰口の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ソ) 原告平林物産について
平林種苗代表者は,農業資材の販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者であること,原告平林物産代表者は,本件会員権購入の勧誘当時,2,3年のゴルフ歴を有していたこと,購入の動機は,地元のステータスという意味で立派なゴルフ場の会員権を購入しておこうと考えたことであったこと(以上の事実は,原告平林物産代表者)に照らすと,平林種苗代表者又は原告平林物産代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,亥原が平林種苗代表者又は原告平林物産代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(タ) 原告富士無線について
原告富士無線代表者は,無線通信,音響機器部品製作及び組立配線を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,長いゴルフ歴を有し,ゴルフ場支配人等の知己も多く,ゴルフ場の開発情報に詳しかったこと,亥原からの説明を受けた後,自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと(以上の事実は,甲46の16,証人亥原)に照らすと,原告富士無線代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,亥原が原告富士無線代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(チ) 原告愛郷ホームについて
原告愛郷ホーム代表者は,不動産の仲介業務を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,甲谷からの説明を受けた後,乙沢と相談して本件会員権を購入することを決めたこと,購入の目的は接待用としてゴルフ会員権を一つ持っておきたいということであったこと(以上の事実は,甲72の1,証人乙沢)に照らすと,原告愛郷ホーム代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,甲谷が原告愛郷ホーム代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ツ) 原告明治神宮について
原告明治神宮の宿泊施設である明幸苑の支配人であった丁原は,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,明幸苑が加盟していた旅館業協同組合の誘いでゴルフを行っていたこと,原告明治神宮は,丙野からの説明を受けた後,原告明治神宮の宮司等の禀議による決裁を得て,本件会員権を購入することを決めたこと,購入の目的は明幸苑の宿泊客に対するサービスとして営業に使用することであったこと(以上の事実は,甲72の2,甲J31,証人丁原)に照らすと,丁原が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,丙野が丁原の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(テ) 原告伊藤商店について
原告伊藤商店代表者は,青果販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,戌崎からの説明を受けた後,2か月程度妻と相談して自己の意思に従って本件会員権を購入することを決めたこと,原告伊藤商店代表者は,自らゴルフをすることはないが,当時ゴルフ会員権の相場が高騰していることは認識しており,購入の動機は,値上がりへの期待であったこと(以上の事実は,甲72の3,原告伊藤商店代表者)に照らすと,原告伊藤商店代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,戌崎が原告伊藤商店代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
(ト) 原告三協ハウジングについて
原告三協ハウジング代表者は,住宅資材の販売を主な業務とする会社を営み,社会的に豊富な経験ないし知識を有している者で,本件会員権購入の勧誘当時,約10年のゴルフ歴を有し,原告三協ハウジング及び代表者名義で7か所のゴルフ場のゴルフ会員権を所有していたこと,当時ゴルフ会員権の相場が高騰しており,自らのゴルフ会員権も値上がりしているという認識を有していたこと,原告三協ハウジング代表者は,自ら本件ゴルフ場の情報を得て本件会員権を購入することを決断した上で,被告津田沼支店を訪れて提携ローンの申込みをしたこと(以上の事実は,甲72の4,原告三協ハウジング代表者)に照らすと,原告三協ハウジング代表者が,本件会員権の預託金の償還可能性について誤った思いこみをしている状況にあったということもできないし,己田が原告三協ハウジング代表者の思いこみをしている状況を認識しつつ,放置したということもできない。
オ  以上の諸点にかんがみると,本件において,信義則上,被告担当者の原告らに対する説明義務を肯認する根拠となり得るような特段の事情を認めることはできず,被告担当者が大多喜城ゴルフ倶楽部の経営内容や預託金の償還可能性等について調査した上で原告らに説明しなかったとしても,それが法的義務に違反し,被告の原告らに対する不法行為を構成するものということはできない。
5  争点1エ(金融機関の優越的地位の濫用の有無)について
(1)  原告らは,被告担当者は,著名金融機関の行員としての社会的な信用に加えて,原告なべやを除く原告ら(原告平林物産については被勧誘者及び購入者である平林種苗をいう。)との継続的な銀行取引によって信頼関係を培い,その経営内容や資産状況などの内情を把握し,これまで融資している又は今後も融資の可否を判断する立場にあるという総合的な優越的地位を有しており,被告は,その立場を利用して本件会員権の販売を媒介したと主張する。
なるほど,金融機関が,顧客に対し,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,不利益な条件での取引を余儀なくさせた場合には,不法行為を構成する余地があるものと解すべきである(独占禁止法2条9項5号,19条及び一般指定14項1号)。
(2)  原告千代不動産について
原告千代不動産代表者は,その調査回答書(甲46の1)において,「当時は,多額の借入れがあり,千葉銀行松ヶ丘支店で紹介できる一つしかないゴルフ会員権だとの強い勧めがあって取引の継続を考慮した」と述べ,代表者尋問において,銀行の融資がつまずくと1か月とか3か月仕事ができなくなるようなことがあったので,買って下さいと言われて買った旨供述する。
しかしながら,丙沢は,その陳述書(乙J1)において,「取引継続困難を仄めかすようなようなことは断じて言っておりません。当時千代さんは業績好調で,大切なお得意様でした。13億円も融資している一方で,定期預金も多額にお預かりしていました。当時は,銀行間の融資競争が激しく,本件ゴルフローンを無理強いできるような先ではありませんでした」と述べており,この供述に加え,原告千代不動産は,鎌取駅周辺に広大な土地を所有する優良な企業であって,本件会員権購入の勧誘のころ,株式会社常陽銀行からも1億円近くの融資を受けて自宅を新築していたこと(証人丙沢,原告千代不動産代表者)に照らすと,丙沢が,原告千代不動産代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後融資をしないとか,既存の融資の早期返済を迫る等の不利益を与える態度を示していたとは認められない。
(3)  原告鶴岡興産について
原告鶴岡興産代表者は,その調査回答書(甲46の2)において,「千葉銀行(姉崎支店,支店長以下関係者)の強い要請があり当時として事業拡大中であり,事業資金でお世話になっており断れなかった」と述べ,代表者尋問において,本件会員権購入の勧誘を受けた当時は事業が大きく拡大しつつある時期で,運転資金として毎月2回の融資を被告に頼んでいたときだったので,被告から商品を持ってこられるとものすごい重圧で断りづらかった旨供述する。
しかしながら,被告姉崎支店の資料(乙J2の4)によれば,丁野が本件会員権購入を勧誘した平成元年12月11日に,原告鶴岡興産代表者は法人会員権である本件会員権に興味を示し,予約申込みを行っていること,原告鶴岡興産代表者は,提携ローンの契約書を作成した平成2年3月29日に法人会員権が購入できることに満足していたことが窺われ,この事実に照らすと,原告鶴岡興産代表者の供述等をもって,丁野が,原告鶴岡興産代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示して,原告鶴岡興産の事務所を数回にわたり訪問するなどして執拗に勧誘したと認めることはできない。
(4)  原告エルヴェについて
原告エルヴェ代表者は,その調査回答書(甲46の3)において,「学習塾を開設するために設備資金が入用であった」と述べている。
しかしながら,庚田は,その陳述書(甲J11)において,己崎から,本件会員権購入のための融資を通常の事業資金とは別枠で融資するので事業に支障はないと説明を受けたというのであって,己崎が,庚田に対し,本件会員権を購入しなければ融資をしない等の不利益を与える態度を示していたとは認められない。
また,原告エルヴェは,平成元年12月当時,株式会社東京都民銀行及び被告のほか,株式会社富士銀行及び株式会社三和銀行からも設備投資のために融資を受けており,本件会員権購入後の平成3年又は4年ころ,被告以外の金融機関の融資により西山荘カントリークラブ,富士中央カントリークラブの会員権を購入していることからすると(甲46の3,甲J11,25,乙J30の2,原告エルヴェ代表者),被告が原告エルヴェに対して取引上の優越的地位を有していたとは到底認められない。
(5)  原告石山商事について
原告石山商事代表者は,その調査回答書(甲46の4)において,「千葉銀行がこんなに熱心に進めるのだから今後の付き合いも考えるとことわり切れなかった」と述べ,代表者尋問において,メインで取引している銀行からの勧誘だから断り切れなかった旨供述する。
しかしながら,辛岡は,その陳述書(乙J4)において,原告石山商事は,ゴルフ会員権をローンで購入すると節税できるとして本件会員権購入を勧誘した旨述べ,証人尋問においても,同趣旨の証言をする。また,原告石山商事代表者の述べるところによっても,原告石山商事が本件会員権購入を決意した一番の理由は,本件会員権が将来,資産となって担保価値を有すると判断したことであったというのであって,これらの供述等に照らすと,原告石山商事代表者の供述等をもって,辛岡が,原告石山商事代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(6)  原告井上農機について
原告井上農機代表者は,代表者尋問において,被告との関係について,原告井上農機のメインバンクであり,被告との関係が意思決定に影響している旨述べる。
しかしながら,原告井上農機代表者は,その調査回答書(甲46の5)において,本件会員権購入の勧誘に応じた理由について「信頼感が強かったので,何ら心配はしていなかった。日常の付合から,私どもに有利なものを斡旋してくれると思っていた」と述べ,代表者尋問においても,現金で購入した方が安いとは思うが,被告の立場を考えておつきあいした方がいいと思ってローンを利用した旨供述していること,本件会員権購入に当たっても,購入代金全額ではなく2000万円の融資を受けるにとどまっていること(甲46の5)に照らすと,壬井又は長者支店担当者が,原告井上農機代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(7)  原告横堀本店について
原告横堀本店代表者の調査回答書(甲46の6)及び代表者尋問において,茂原支店担当者が,原告横堀本店代表者に対し,本件会員権購入の有無によって他の融資に影響があることを示唆したなどの事情を示す供述はなく,茂原支店担当者が,原告横堀本店代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(8)  原告ミツワについて
原告ミツワ代表者は,その調査回答書(甲46の7)において,「千葉銀行中央支店は,当社にとって,メインバンクであり,当時で2億円以上融資を受けており,担当者たってのお願いの申し出を断るわけにいかず」「10口販売しないといけないと言われ,今後の融資の件があるのでむげに断ることができなかった」と述べる。
他方,癸木は,その陳述書(乙J7)において,「10口のゴルフローン契約を締結するノルマなど全くありませんでした。社長に対し,そのようなことは言っておりませんし,今後の融資の話を引き合いに出したことはありません」と述べ,証人尋問においても,ノルマはなかった旨証言する。この証言等に加え,原告ミツワは,本件会員権購入に係る融資の後,平成4年まで被告から融資を受けておらず,本件会員権購入の勧誘当時,被告からの具体的な融資の予定はなかったこと(原告ミツワ代表者)に照らすと,原告ミツワ代表者の供述等をもって,癸木が,原告ミツワ代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生じるかのような態度を示していたとは認められない。
また,原告ミツワは,本件会員権購入の勧誘当時,被告のほかに,株式会社さくら銀行,中央信用金庫及び西武信用組合とも取引を有しており,平成3年及び4年には,第一勧業銀行からの融資により,3500万円のマンション,2800万円のゴルフ会員権を購入しているのであって(原告ミツワ代表者),被告以外の金融機関からの資金調達が容易であったことが窺われるから,被告が原告ミツワに対して取引上の優越的な地位を有していたとも認められない。
(9)  原告花澤電装について
原告花澤電装代表者は,その調査回答書(甲46の8)において,本件会員権購入について,「ビルのテナントの紹介の義理で,千葉銀行から何らかの融資を受け入れる必要があると思い決断した」と述べる。
しかしながら,原告花澤電装と被告本店営業部との取引は,当座預金口座等での預金取引のみであり,本件会員権購入資金の融資まで被告からの借入れはなかったこと,丑葉は,本件会員権購入の勧誘前,原告花澤電装のビル建築資金の半分である3億5000万円の融資を申し入れていたところ,原告花澤電装はこれを断ったこと,そこで,丑葉は,どんな融資でもいいから,何としても資金を使って欲しい旨要請していたことの各事実に照らせば(以上の事実は,証人丑葉,原告花澤電装代表者),被告は,原告花澤電装に対して融資の受入れを要請する立場にあったのであり,被告が原告花澤電装に対して取引上の優越的な地位を有していたとは到底認めることができない。
(10)  原告十文字土木について
原告十文字土木代表者は,その調査回答書(甲46の9)において,本件会員権購入について,「キャンセルが出たものを持って来られたので安い買い物ではないが断るわけにもいかないだろうということで購入を考える流れになった」と述べる。
しかしながら,原告十文字土木からの問い合わせを契機として,卯口は,その要請に応じるという認識で本件会員権を紹介したことは,前記2(11)のとおりであり,卯口が,原告十文字土木代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生じるかのような態度を示していたとは到底認められない。
また,原告十文字土木は,本件会員権購入の勧誘当時,被告鴨川支店との取引において,融資額が1億円弱であるのに対して預金額は3億円以上であり,被告鴨川支店において1,2位を争う優良な取引先であったこと,原告十文字土木においては,株式会社京葉銀行がメインバンクであったこと,原告十文字土木は,被告とのローン締結後9か月でローンを前倒し完済していること(乙J9)からすると,被告が取引上優越的な地位を有していたとは到底認められない。
(11)  原告なべやについて
原告なべやは,被告は,原告なべやが金融機関の社会的信用と支店長の説明を絶対的に信用して購入を希望していることを知りながら,その信用に乗じて,原告なべやに対して直接勧誘して本件ゴルフ場の入会契約を締結したと主張する。
しかしながら,原告なべや代表者は,高校時代の友人である原告平林物産代表者から本件会員権の情報を得て,本件会員権の購入を決断し,原告平林物産代表者を通じて被告大多喜支店に提携ローンの申込みをしたのであり,被告大多喜支店の担当者は,原告なべや代表者と面会したことはなく(以上の事実は,原告なべや代表者),被告による勧誘行為は存在しないのであるから,原告なべやの主張は前提を欠くというべきである。
(12)  原告小原組について
原告小原組代表者は,その調査回答書(甲46の11)において,本件会員権購入について,取引銀行の勧誘ということで特別なものがあったと思うと述べる。
しかしながら,原告小原組代表者は,丑木から,銀行から強く勧められているとか,無理強いされているということは聞いていないというのであり(原告小原組代表者),調査回答書(甲46の11)及び陳述書(甲J21)によっても,巳下が,丑木に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(13)  原告安藤建材について
原告安藤建材代表者は,その調査回答書(甲46の12)において,取引銀行の勧誘と言うことで特別なものがあったと述べる。
しかしながら,原告安藤建材代表者の上記供述は,具体性に乏しい上,原告安藤建材代表者は,取引先から本件会員権の話を聞いて本件会員権に興味を持ち,自ら未川に本件会員権のことを尋ねたというのであり,未川から購入の働きかけをしたものではないから(原告安藤建材代表者),未川が,原告安藤建材代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(14)  原告知久商会について
原告知久商会代表者自身,その調査回答書(甲46の13)において,本件会員権購入について,取引の流れで特別なものではないと思うと述べており,申谷が,原告知久商会代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
また,原告知久商会は,本件会員権購入の勧誘当時,被告津田沼駅前支店との取引は預金取引のみであり,被告から融資を受けておらず(原告知久商会代表者),また,他に融資を受ける予定があったことも窺われないから,被告が原告知久商会に対して取引上優越的な地位を有していたとは到底認めることができない。
(15)  原告安田総業について
原告安田総業代表者は,その調査回答書(甲46の14)において,取引銀行の勧誘と言うことで特別なものがあったと述べる。
しかしながら,原告安田総業代表者の調査回答書(甲46の14)及び証人辰口の証言には,酉沢が,辰口に対し,取引上の地位を不当に利用したことに関する具体的な供述等はなく,かえって,酉沢は,証人尋問において,原告安田総業は,被告姉崎支店からの要請を簡単に受けてもらえない取引先であり,被告姉崎支店が取引を拡大しようとしても拡大できなかった旨証言しているから,酉沢が,辰口に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(16)  原告平林物産について
被告は,平林種苗のメインバンクであったが(原告平林物産代表者),原告平林物産代表者は,その調査回答書(甲46の15)において,取引銀行の勧誘ということで特別なものがあったかという問いに対し「信頼関係は有りましたので疑うことはありませんでした」と述べるのみであり,亥原が,取引上の地位を不当に利用したことに関する具体的な主張又は証拠はないので,亥原が,平林種苗代表者又は原告平林物産代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(17)  原告富士無線について
原告富士無線代表者は,その調査回答書(甲46の16)において,「あまりに支店長がすすめるのでしかたなしに了承した」と述べる。
しかしながら,原告富士無線代表者の調査回答書(甲46の16)及び反論書(甲J14)にも,亥原が,取引上の地位を不当に利用したことに関する具体的な記載はないから,亥原が,原告富士無線代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
(18)  原告愛郷ホームについて
原告愛郷ホーム代表者は,その調査回答書(甲72の1)において,取引銀行の勧誘と言うことで特別なものがあったかという質問に対し,「会員権の購入については,当時,銀行を信用していましたので購入をしました」と述べるのみであり,甲谷が,取引上の地位を不当に利用したことに関する具体的な主張又は証拠はないから,甲谷が,原告愛郷代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
また,原告愛郷ホームは,本件会員権購入の勧誘当時,被告本八幡支店との取引は預金取引のみであり,被告から融資を受けておらず(証人乙沢),また他に融資を受ける予定があったことも窺わないから,被告が原告愛郷ホームに対して取引上優越的な地位を有していたとは到底認めることができない。
(19)  原告明治神宮について
原告明治神宮は,その調査回答書(甲72の1)において,取引銀行の勧誘と言うことで特別なものがあったかという質問に対し,「銀行の依頼ということで,信用していました」と述べるのみであり,丙野が,取引上の地位を不当に利用したことに関する具体的な主張又は証拠はないから,丙野が,その地位を濫用したとは認められない。
また,原告明治神宮は,本件会員権購入の勧誘当時,被告天津支店との取引は預金取引のみであり,被告から融資を受けておらず,また,本件会員権の購入に際しても提携ローンの利用を勧誘されたにもかかわらず,提携ローンは利用しなかったのであるから(証人丁原),被告が原告明治神宮に対して取引上優越的な地位を有していたとは到底認めることができない。
(20)  原告伊藤商店について
原告伊藤商店代表者は,その調査回答書(甲72の3)において,「とにかく強引な勧誘でした。自営で忙しい中毎日営業に来たので。又,納めをしていた手前もあり困った事を覚えております」と述べる。
他方,戌崎は,陳述書(乙J19)において,「パンフレットなどを持参して原告の店にご説明に伺ったのですが,ご不在であったり,仕事が忙しくて説明できるような時間をとっていただけなかったりして,面談できませんでした」と述べ,証人尋問においても,強引な勧誘を行ったことを否定する。原告伊藤商店代表者自身,代表者尋問において,強引ということはしょっちゅう来たという意味であると述べ,他に戌崎が強圧的な勧誘を行ったことについて触れるところはないから,戌崎が,原告伊藤商店に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは認められない。
また,原告伊藤商店の当時のメイン銀行は株式会社千葉興業銀行であり,平成2年5月期の売上が1億6000万円程度に対して,本件会員権購入前の被告からの融資は平成元年締結の200万円のローンがあるだけであって,他に融資を受ける予定はなかったのであるから(乙J19,証人戌崎,原告伊藤商店代表者),被告が,原告伊藤商店に対して取引上優越的な地位を有していたと認めることもできない。
(21)  原告三協ハウジングについて
原告三協ハウジング代表者は,その調査回答書(甲72の4)において,被告はメインバンクである旨述べ,代表者尋問において,被告が唯一の取引銀行である旨供述する。
しかしながら,原告三協ハウジング代表者の調査回答書(甲72の4)には,己田が,取引上の地位を不当に利用したことに関する具体的な記載はない上,そもそも三協ハウジング代表者は,自ら本件会員権購入を決断した上,被告津田沼支店を訪れて提携ローンの申込みをしたものであるから,己田が,原告三協ハウジング代表者に対し,本件会員権を購入しなければ今後の取引に不都合が生ずるかのような態度を示していたとは到底認められない。
(22)  したがって,被告が金融機関としての取引上の優越的地位を不当に利用したものとは認められず,原告らの主張は,理由がない。
6  争点1オ(販売媒介行為の銀行法違反の有無)について
原告らは,ゴルフ場関係者の説明や勧誘など一切介在しない入会手続は,銀行法及び大蔵省の通達によって禁止されている銀行の目的外行為であり,その行為に対して協力預金という名のもとに対価が支払われていたから,違法であると主張する。
そこで検討するに,被告担当者は,原告ら(原告平林物産については被勧誘者及び購入者である平林種苗をいう。)の本件会員権購入に際し,同人らから大多喜城ゴルフ倶楽部に対する入会申込書を受領して大多喜城ゴルフ倶楽部に送付したこと,他方,同人らは,本件会員権を購入するにあたって,被告担当者から説明を受けたのみで,富士カントリーや大多喜城ゴルフ倶楽部の関係者が関与したことがなかったことは,前記第2の1(2)及び(3)のとおりである。
なるほど,銀行法は,10条1項1号ないし3号において,銀行の営む業務を列挙した上,同条2項において,同項に掲げる業務その他の銀行業に付随する業務を営むことができると規定し,12条において,10条及び11条の規定により営む業務及び担保付社債信託法その他の法律により営む業務のほか,他の業務を営むことはできないと規定して,銀行が法の定める業務のほか,他の業務を営むことを禁止している。
しかしながら,本件において,被告自身はゴルフ場運営事業を営むものではなく,本件会員権購入の勧誘は,被告の業務そのものである融資契約の締結を勧誘する目的で行われたものであるから,本件会員権購入の勧誘行為自体は,銀行法10条2項の定める銀行業に付随する業務とみることができないではない。
また,銀行法が,銀行の行う業務を制限した趣旨は,銀行に無制限の業務を許した場合には,その業務の内容及び遂行如何によって,銀行が多大な損失を被り,経営基盤を危うくする事態も想定されることから,銀行の行うことができる業務を一定の範囲に制限し,もって,銀行経営の健全性を確保することにあると解されるところ,被告の従業員が本件会員権購入の媒介をしたとしても,直接,被告が何らかの債務を負担するものではないから,本件会員権購入の媒介をすることにより,直ちに被告の経営の健全性が損われるおそれがあるということもできない。そうすると,本件会員権購入の勧誘は,大多喜城ゴルフ倶楽部又は富士カントリーの関係者の関与がなかったとしても,銀行法12条の趣旨に違反するとまでいうことはできない。
さらに,原告らは,本件会員権購入の勧誘が,大蔵省の発出した通達に違反すると主張し,「普通銀行の業務運営に関する基本事項等について」(昭和57年4月1日蔵銀第901号)の別紙1「銀行経営のあり方」1(3)「社会的批判を受けかねない過剰サービスの自粛」中の「他金融機関への過度な預金紹介,顧客に対する金融商品以外の商品の紹介・斡旋,顧客が振り出した他店券の見做現金扱いによる不当な便益供与,顧客の印鑑及び押印済預金払戻請求書の預かりなど正常な取引慣行に反する行為,その他過当競争の弊害を招き社会的批判を受けかねない行為は厳に慎しむものとする。」との記載部分を指摘する。しかしながら,同通達の別紙1は,平成4年4月30日に定められたものであって,本件会員権購入の勧誘当時には存在しないものであったから,原告らの主張は,その前提を欠くといわざるを得ない。
したがって,被告の行った本件会員権購入の勧誘が,銀行法12条に違反し,不法行為に該当するという原告らの主張は,採用することができない。
第4  結論
以上のとおり,被告の勧誘行為について違法性があるということはできず,その余について判断するまでもなく,原告らの請求は理由がないから,これをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鹿子木康 裁判官 小川雅敏 裁判官 進藤光慶)

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Notice: Undefined index: show_google_top in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296

Notice: Undefined index: show_google_btm in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296